(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059277
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】農地集約候補特定装置、農地集約候補特定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240423BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166867
(22)【出願日】2022-10-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】502106820
【氏名又は名称】株式会社オーエムアイ
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】大川内 修
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】高さごとの農地の領域が分かっていなくても、複数の高さの農地の集約について提案することができる農地集約候補特定装置を提供する。
【解決手段】農地集約候補特定装置1は、土地の区画ごとの境界を示す地図情報と、土地の3次元の測定結果と、地図情報に含まれる区画ごとの地目を示す土地情報とが記憶される記憶部11と、地図情報、3次元の測定結果、及び土地情報に基づいて、高さごとに農地である領域を特定する領域特定部12と、領域特定部12によって特定された複数の連続した領域のうち、高低差が閾値より小さい複数の連続した領域である集約候補領域を特定する集約候補領域特定部13とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土地の区画ごとの境界を示す地図情報と、前記土地の3次元の測定結果と、前記地図情報に含まれる区画ごとの地目を示す土地情報とが記憶される記憶部と、
前記地図情報、前記3次元の測定結果、及び前記土地情報に基づいて、高さごとに農地である領域を特定する領域特定部と、
前記領域特定部によって特定された複数の連続した領域のうち、高低差が閾値より小さい複数の連続した領域である集約候補領域を特定する集約候補領域特定部と、を備えた農地集約候補特定装置。
【請求項2】
前記土地情報は、区画ごとの所有者をも示す情報であり、
前記集約候補領域特定部は、前記地図情報及び前記土地情報によって土地の所有者が所定人数以下であることが示される集約候補領域を特定する、請求項1記載の農地集約候補特定装置。
【請求項3】
前記所定人数は2人である、請求項2記載の農地集約候補特定装置。
【請求項4】
前記地図情報には、水路の位置が含まれており、
前記集約候補領域特定部は、水路を含まないように集約候補領域を特定する、請求項1から請求項3のいずれか記載の農地集約候補特定装置。
【請求項5】
前記地図情報には、里道以外の道路の位置が含まれており、
前記集約候補領域特定部は、里道以外の道路を含まないように集約候補領域を特定する、請求項1から請求項3のいずれか記載の農地集約候補特定装置。
【請求項6】
前記地図情報には、里道の位置が含まれており、
前記集約候補領域特定部は、里道を含む集約候補領域を特定する場合に、移動後の里道を集約候補領域の外縁に生成する、請求項1から請求項3のいずれか記載の農地集約候補特定装置。
【請求項7】
前記集約候補領域特定部は、里道を含む集約候補領域を特定する場合に、当該里道の含まれる領域の所有者と同じ所有者の領域の外縁に移動後の里道を生成する、請求項6記載の農地集約候補特定装置。
【請求項8】
土地の区画ごとの境界を示す地図情報と、前記土地の3次元の測定結果と、前記地図情報に含まれる区画ごとの地目を示す土地情報とが記憶される記憶部と、領域特定部と、集約候補領域特定部とを用いて処理される農地集約候補特定方法であって、
前記領域特定部が、前記地図情報、前記3次元の測定結果、及び前記土地情報に基づいて、高さごとに農地である領域を特定するステップと、
前記集約候補領域特定部が、特定された複数の連続した領域のうち、高低差が閾値より小さい複数の連続した領域である集約候補領域を特定するステップと、を備えた農地集約候補特定方法。
【請求項9】
土地の区画ごとの境界を示す地図情報と、前記土地の3次元の測定結果と、前記地図情報に含まれる区画ごとの地目を示す土地情報とが記憶される記憶部にアクセス可能なコンピュータを、
前記地図情報、前記3次元の測定結果、及び前記土地情報に基づいて、高さごとに農地である領域を特定する領域特定部、
前記領域特定部によって特定された複数の連続した領域のうち、高低差が閾値より小さい複数の連続した領域である集約候補領域を特定する集約候補領域特定部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土地の3次元の測定結果を用いて、高さの異なる複数の連続した農地である集約候補領域を特定する農地集約候補特定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農地を集約して大規模化することにより、農業生産性を向上させる試みがなされている。その際に、農地の集約のコストなどを取得することによって、農地の集約が適切であるかどうかを判断することも行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の手法は、高さごとの農地の領域が分かっている場合に適用することができるものである。そのため、段々畑や棚田などにおいて、高さごとの農地の領域が分かっていない場合には、適用することができない。一方、段々畑や棚田などの高さごとの領域が分かっていない農地であっても、盛土や切土を行うことによって平坦な領域の面積を拡張することによって、農業生産性を向上させたいという要望があった。
【0005】
本発明は、上記状況に応じてなされたものであり、高さごとの農地の領域が分かっていなくても、複数の高さの農地の集約について提案することができる農地集約候補特定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による農地集約候補特定装置は、土地の区画ごとの境界を示す地図情報と、土地の3次元の測定結果と、地図情報に含まれる区画ごとの地目を示す土地情報とが記憶される記憶部と、地図情報、3次元の測定結果、及び土地情報に基づいて、高さごとに農地である領域を特定する領域特定部と、領域特定部によって特定された複数の連続した領域のうち、高低差が閾値より小さい複数の連続した領域である集約候補領域を特定する集約候補領域特定部と、を備えたものである。
このような構成により、3次元の測定結果を用いて高さごとに領域を特定することによって、高さごとの農地の領域が分かっていなくても、複数の高さの農地の集約について提案することができるようになる。
【0007】
また、本発明の一態様による農地集約候補特定装置では、土地情報は、区画ごとの所有者をも示す情報であり、集約候補領域特定部は、地図情報及び土地情報によって土地の所有者が所定人数以下であることが示される集約候補領域を特定してもよい。一例として、所定人数は2人であってもよい。
このような構成により、集約候補領域に含まれる農地の所有者が所定人数以下となるため、農地の集約について、所有者の合意を取りやすくなる。
【0008】
また、本発明の一態様による農地集約候補特定装置では、地図情報には、水路の位置が含まれており、集約候補領域特定部は、水路を含まないように集約候補領域を特定してもよい。
このような構成により、水路を移動させないで農地を集約することができるようになる。そのため、集約のコストを低減することができる。
【0009】
また、本発明の一態様による農地集約候補特定装置では、地図情報には、里道以外の道路の位置が含まれており、集約候補領域特定部は、里道以外の道路を含まないように集約候補領域を特定してもよい。
このような構成により、里道以外の道路を移動させないで農地を集約することができるようになる。そのため、集約のコストを低減することができる。
【0010】
また、本発明の一態様による農地集約候補特定装置では、地図情報には、里道の位置が含まれており、集約候補領域特定部は、里道を含む集約候補領域を特定する場合に、移動後の里道を集約候補領域の外縁に生成してもよい。
このような構成により、移動後の里道の位置を容易に確認することができる。
【0011】
また、本発明の一態様による農地集約候補特定装置では、集約候補領域特定部は、里道を含む集約候補領域を特定する場合に、その里道の含まれる領域の所有者と同じ所有者の領域の外縁に移動後の里道を生成してもよい。
このような構成により、里道の移動に応じて、集約候補領域の各所有者に土地の増減が生じないようにすることができる。
【0012】
また、本発明の一態様による農地集約候補特定方法は、土地の区画ごとの境界を示す地図情報と、土地の3次元の測定結果と、地図情報に含まれる区画ごとの地目を示す土地情報とが記憶される記憶部と、領域特定部と、集約候補領域特定部とを用いて処理される農地集約候補特定方法であって、領域特定部が、地図情報、3次元の測定結果、及び土地情報に基づいて、高さごとに農地である領域を特定するステップと、集約候補領域特定部が、特定された複数の連続した領域のうち、高低差が閾値より小さい複数の連続した領域である集約候補領域を特定するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様による農地集約候補特定装置等によれば、3次元の測定結果を用いて高さごとに領域を特定することによって、高さごとの農地の領域が分かっていなくても、複数の高さの農地の集約について提案することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態による農地集約候補特定装置の構成を示すブロック図
【
図2】同実施の形態による農地集約候補特定装置の動作を示すフローチャート
【
図3】同実施の形態における地図情報の一例を示す図
【
図4】同実施の形態における土地情報の一例を示す図
【
図5】同実施の形態における3次元の測定結果を用いて特定された領域を示す図
【
図8】同実施の形態におけるコンピュータシステムの外観一例を示す模式図
【
図9】同実施の形態におけるコンピュータシステムの構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による農地集約候補特定装置、及び農地集約候補特定方法について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による農地集約候補特定装置は、土地の3次元の測定結果を用いて高さごとの農地の領域を特定し、その特定した領域を用いて、集約の候補となる集約候補領域を特定するものである。
【0016】
図1は、本実施の形態による農地集約候補特定装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による農地集約候補特定装置1は、記憶部11と、領域特定部12と、集約候補領域特定部13と、出力部14とを備える。農地集約候補特定装置1は、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末などの汎用の装置であってもよく、または、集約候補領域を特定する専用の装置であってもよい。
【0017】
記憶部11では、地図情報と、3次元の測定結果と、土地情報とが記憶される。地図情報は、土地の区画ごとの境界を示す地図の情報である。区画は、一例として、登記されている区画であってもよい。地図情報は、例えば、地籍図であってもよい。また、地図情報は、緯度、経度の情報を有していることが好適である。3次元の測定結果と位置合わせを行うことができるようにするためである。区画は、例えば、番地などの区画識別子によって識別されてもよい。また、地図情報では、各区画の範囲が分かるようになっていることが好適である。そのため、地図情報は、一例として、各区画の輪郭を示す情報を有していてもよい。また、地図情報には、例えば、水路の位置が含まれていてもよい。この水路は、例えば、地籍図において青色に着色されている法定外公共物の水路であってもよい。この水路は、例えば、青線、青道などと呼ばれるものであり、通常、登記されていない。また、地図情報には、例えば、里道の位置が含まれていてもよい。この里道は、例えば、地籍図において赤色に着色されている法定外公共物の道であってもよい。この里道は、例えば、赤線、赤道などと呼ばれるものであり、通常、登記されていない。また、地図情報には、里道以外の道路の位置が含まれていてもよい。里道以外の道路は、一例として、土地情報に含まれる地目が公衆用道路となっている区画であってもよい。すなわち、里道以外の道路は、例えば、登記された道路であってもよい。地図情報には、水路や里道、里道以外の道路の位置を示す情報が含まれていてもよい。地図情報は、一例として、ベクタデータによって区画の輪郭や、水路、里道、里道以外の道路を示すものであってもよい。
【0018】
3次元の測定結果は、地図情報によって示される土地の3次元の測定結果である。3次元の測定結果は、例えば、ドローンなどの飛行体によって取得された3次元の点群データであってもよく、3次元の点群データを用いて取得された、3次元の面に関する情報(例えば、ポリゴンや、TIN(Triangulated Irregular Network)データ、非一様有理Bスプライン(NURBS)曲面等)であってもよい。なお、その3次元の点群データを取得する方法は問わない。例えば、地上に設置した3次元スキャナによって3次元の点群データが取得されてもよく、ドローンなどの飛行体に搭載された3次元スキャナによって3次元の点群データが取得されてもよく、ドローンなどの飛行体によって撮影された空中写真を用いることによって3次元の点群データが取得されてもよく、その他の方法によって3次元の点群データが取得されてもよい。この3次元の測定結果も、緯度、経度の情報を有していることが好適である。地図情報と位置合わせを行うことができるようにするためである。緯度、経度の情報は、例えば、3次元の点群データを取得する際に、GPSなどを用いて取得されてもよい。また、緯度、経度の情報以外を用いて、地図情報と3次元の測定結果との位置合わせが行われてもよい。この場合には、例えば、3次元スキャナによって形状を取得することができる立体的なマーカや視覚的に認識可能なマーカを既知の位置に配置して測定や撮影を行うことによって、マーカを用いた位置合わせが行われてもよい。
【0019】
土地情報は、地図情報に含まれる区画ごとの地目を示す情報である。土地情報は、例えば、区画ごとの所有者をも示す情報であってもよい。この土地情報は、例えば、土地の登記簿であってもよい。土地情報は、例えば、区画を識別する区画識別子と、その区画の地目を示す情報と、その区画の所有者を示す情報とを含む複数の情報を有していてもよい。なお、以下の説明では、地目を示す情報、及び所有者を示す情報を単に地目、及び所有者と呼ぶこともある。
【0020】
記憶部11には、上記以外の情報が記憶されてもよい。例えば、領域特定部12によって特定された領域を示す情報や、集約候補領域特定部13によって特定された集約候補領域を示す情報などが記憶されてもよい。また、地図情報に対応する航空写真なども記憶部11で記憶されてもよい。この航空写真も、例えば、緯度、経度の情報を有していてもよい。記憶部11に情報が記憶される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して情報が記憶部11で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された情報が記憶部11で記憶されるようになってもよい。記憶部11は、不揮発性の記録媒体によって実現されることが好適であるが、揮発性の記録媒体によって実現されてもよい。記録媒体は、例えば、半導体メモリや磁気ディスク、光ディスクなどであってもよい。
【0021】
領域特定部12は、記憶部11で記憶されている地図情報、3次元の測定結果、及び土地情報に基づいて、高さごとに農地である領域を特定する。すなわち、領域特定部12によって特定された領域は、高さが一定の領域となる。なお、高さが一定である領域は、厳密に高さが等しい領域であってもよく、または、高さの変化が所定の閾値以内である領域であってもよい。その所定の閾値は、特定された領域を平坦とみなすことができる程度に小さい値(例えば、20センチメートルや30センチメートルなど)であることが好適である。高さとは、鉛直方向の高さであり、例えば、海水面の高さなどを基準とした標高であってもよく、他の高さを基準とした高さであってもよい。領域特定部12は、例えば、土地情報を用いて、地目が農地である区画を特定してもよい。例えば、地目が「畑」である区画、及び地目が「田」である領域を、地目が農地である区画としてもよい。また、領域特定部12は、例えば、地図情報を用いて、その特定した区画の範囲を特定してもよい。区画の範囲の特定は、例えば、区画の輪郭の特定であってもよい。連続した複数の区画の範囲が特定される際には、例えば、1つの範囲として特定されてもよい。また、領域特定部12は、その特定した範囲において、3次元の測定結果によって示される高さ方向の情報を用いて、高さが一定である連続した箇所である領域を特定してもよい。領域の特定結果は、例えば、特定された領域ごとの輪郭を示す情報であってもよい。その情報は、例えば、記憶部11に蓄積されてもよい。
【0022】
領域特定部12による農地における領域の特定方法は特に限定されないが、例えば、次のようにして領域が特定されてもよい。領域特定部12は、例えば、農地である連続した区画を、格子(グリッド)状や網目(メッシュ)状などのように複数の領域に分割する。そのようにして分割された各領域を、分割領域と呼ぶ。そして、領域特定部12は、各分割領域について、3次元の測定結果の高さ方向の値を特定する。その値は、例えば、高さ方向の代表値であってもよい。代表値は、例えば、分割領域における各位置に関する高さ方向の値の平均値や中央値、最大値、最小値等であってもよい。次に、領域特定部12は、クラスタリングの手法により、各分割領域に対応する高さ方向の値を用いて、各分割領域をクラスタリングする。このクラスタリングによって、高さが同じである領域に対応する各分割領域は、一つのクラスに分類されることになる。そのため、領域特定部12は、同じクラスに分類された連続した分割領域によって構成される範囲を、高さが一定である1つの領域として特定してもよい。なお、分割領域は、領域特定部12によって特定される領域の面積と比較して十分小さい面積となっていることが好適である。すなわち、分割領域は、例えば、段々畑や棚田などの一段の面積よりも十分小さい面積であることが好適である。なお、これ以外の方法によって高さごとの領域の特定が行われてもよいことは言うまでもない。
【0023】
集約候補領域特定部13は、領域特定部12によって特定された複数の連続した領域のうち、高低差が閾値より小さい複数の連続した領域である集約候補領域を特定する。この集約候補領域が、農地の集約の候補となる領域である。農地の集約は、例えば、高さの異なる複数の連続した農地を、盛土や切土によって平坦な農地にすることによって行われてもよい。その1つの集約対象となる複数の領域が、特定された集約候補領域によって示されることになる。1つの集約候補領域に含まれる領域の高低差が大きくなるほど、その集約候補領域を平坦にするための盛土や切土のコストが大きくなる。したがって、高低差が閾値より小さい複数の連続した領域が、集約候補領域として特定されることが好適である。閾値は、例えば、2メートルや3メートル、5メートルなどであってもよい。また、集約候補領域特定部13は、例えば、地図情報及び土地情報によって土地の所有者が所定人数以下であることが示される集約候補領域を特定してもよい。集約候補領域特定部13は、地図情報及び土地情報を用いて、領域特定部12によって特定された連続した複数の領域の所有者を特定することができ、その所有者の人数を特定することができる。したがって、集約候補領域特定部13は、その人数が所定人数以下である連続した複数の領域である集約候補領域を特定してもよい。この場合には、1つの集約候補領域の所有者は、所定人数以下となる。所定人数は、例えば、1人であってもよく、2人であってもよく、3人以上であってもよい。集約候補領域の所有者の人数が多い場合には、農地の集約の合意を形成することが難しくなるため、所定人数は、少ないことが好適である。本実施の形態では、高低差が閾値より小さく、土地の所有者が所定人数以下である集約候補領域が特定される場合について主に説明する。
【0024】
また、集約候補領域特定部13は、水路を含まないように集約候補領域を特定してもよい。水路を含まないように集約候補領域を特定するとは、特定結果である集約候補領域内に水路が含まれないようにすることである。集約候補領域に水路が含まれるとは、集約候補領域の範囲内に水路が含まれることであり、水路と集約候補領域の外縁との間に農地が存在することであってもよい。集約候補領域に里道や、里道以外の道路が含まれる場合にも同様である。
【0025】
集約候補領域特定部13は、里道以外の道路を含まないように集約候補領域を特定してもよい。里道以外の道路を含まないように集約候補領域を特定するとは、特定結果である集約候補領域内に里道以外の道路が含まれないようにすることである。里道以外の道路とは、里道でない道路であり、例えば、登記されている道路であってもよい。登記されている道路は、例えば、土地情報において地目が公衆用道路となっている区画であってもよい。
【0026】
水路や、里道以外の道路を含まないように集約候補領域を特定することによって、例えば、水路や、里道以外の道路に関する変更を行わなくてもよいことになり、農地を集約する際のコスト低減になる。例えば、水路の箇所や、里道以外の道路の箇所について盛土や切土を行う場合には、水路や、里道以外の道路の位置を変更したり、水路や、里道以外の道路の高さを変更したりする必要があり、それに応じてコストが高くなるからである。また、集約候補領域において、仮に水路の箇所や、里道以外の道路の箇所について盛土や切土を行わず、水路の位置や、里道以外の道路の位置を変更しなかった場合には、集約候補領域内に水路や、里道以外の道路が存在することになり、水路や、里道以外の道路によって農地が分断され、農業生産性が低下することになる。一方、水路や、里道以外の道路を含まないように集約候補領域を特定することによって、そのような状況を避けることができる。
【0027】
また、集約候補領域特定部13は、里道を含む集約候補領域を特定する場合に、移動後の里道を集約候補領域の外縁に生成してもよい。なお、移動後の里道は、集約候補領域の外縁に沿って、集約候補領域内に生成されるものとする。このようにすることで、移動後の里道の位置を容易に把握することができるようになる。また、里道を移動させることによって、里道によって集約候補領域が2以上の領域に分かれることを防止することができ、農業生産性を向上させることができる。また、集約候補領域特定部13は、里道を含む集約候補領域を特定する場合に、その里道の含まれる領域の所有者と同じ所有者の領域の外縁に移動後の里道を生成してもよい。この場合には、その里道の含まれる領域の所有者と同じ所有者の領域が、集約候補領域の外縁に接しているものとする。そうでない場合には、このような里道の移動は行われなくてもよい。すなわち、その里道の含まれる領域の所有者と異なる所有者の領域に移動後の里道が生成されてもよい。里道の移動に応じて、里道の含まれる領域の所有者は、里道の面積だけ農地が広くなることになる一方、新たに里道が存在するようになった領域の所有者は、里道の面積だけ農地が狭くなることになる。したがって、両領域の所有者が同じであるようにすることによって、集約候補領域の各所有者について損得が生じないようにすることができる。また、里道の移動先が複数存在する場合には、例えば、移動後の里道が最も短くなるように里道が移動されてもよい。
【0028】
水路や、里道以外の道路を含まないように集約候補領域を特定するため、集約候補領域特定部13は、例えば、集約候補領域を特定する際に、地図情報を用いて水路、及び里道以外の道路を特定し、水路や、里道以外の道路を挟んで存在する2つの領域は、隣接していないとして集約候補領域に含めないようにしてもよい。一方、集約候補領域特定部13は、例えば、集約候補領域を特定する際に、里道を挟んで存在する2つの領域は、隣接しているとして集約候補領域に含めてもよい。
【0029】
ここで、集約候補領域を特定する処理の一例について説明する。集約候補領域特定部13は、まず、領域特定部12によって特定された1つの領域(例えば、ランダムに選択された1つの領域であってもよく、所定の規則に応じて選択された1つの領域であってもよい)を集約候補領域に追加する。次に、集約候補領域特定部13は、集約候補領域に含まれる領域に隣接する領域である隣接領域の1つを選択し、その選択した隣接領域を集約候補領域に追加した場合に、高低差が閾値未満であるかどうか、また、集約候補領域の所有者が所定人数以下であるかどうかを判断する。そして、集約候補領域特定部13は、高低差が閾値未満であり、集約候補領域の所有者が所定人数以下である場合には、その選択した隣接領域を集約候補領域に追加し、そうでない場合、すなわち、高低差が閾値未満でない場合、または、集約候補領域の所有者が所定人数を超えている場合には、その選択した隣接領域を集約候補領域に追加しない。このような処理を、集約候補領域の周囲に未選択の隣接領域がなくなるまで繰り返して行い、繰り返しの終了時に集約候補領域に含まれる領域を、最終的な集約候補領域としてもよい。集約候補領域の特定結果は、結果として、集約候補領域の輪郭を知ることができる情報であればどのようなものであってもよい。例えば、集約候補領域の特定結果は、各集約候補領域に含まれる、領域特定部12によって特定された領域を識別する識別子であってもよく、集約候補領域ごとの輪郭を示す情報であってもよい。前者の場合には、例えば、領域の識別子と、特定された領域ごとの輪郭を示す情報とを用いて、集約候補領域の輪郭を特定することができる。集約候補領域の特定結果は、例えば、記憶部11に蓄積されてもよい。
【0030】
なお、上記の処理において、集約候補領域に追加される1つ目の領域を所定の規則に応じて選択する場合には、例えば、それまでに特定された集約候補領域に含まれていない領域であって、高さが最も低い領域を集約候補領域に追加する1つ目の領域としてもよく、それまでに特定された集約候補領域に含まれていない領域であって、高さが最も高い領域を集約候補領域に追加する1つ目の領域としてもよい。このようにすることで、例えば、低い領域から順番に、または高い領域から順番に集約候補領域を特定することができる。低い領域から順番に集約候補領域を特定する場合には、隣接領域を選択する際にも、例えば、低い領域から順番に隣接領域を選択してもよい。また、高い領域から順番に集約候補領域を特定する場合には、隣接領域を選択する際にも、例えば、高い領域から順番に隣接領域を選択してもよい。
【0031】
また、集約候補領域特定部13は、2以上のパターンの集約候補領域の特定を行ってもよい。このようにすることで、例えば、農地の所有者に複数パターンの農地の集約方法について提案することができるようになる。この場合には、集約候補領域特定部13は、例えば、低い領域から順番に集約候補領域を特定する第1のパターンと、高い領域から順番に集約候補領域を特定する第2のパターンとのそれぞれについて集約候補領域の特定を行ってもよい。
【0032】
出力部14は、集約候補領域特定部13による特定結果に関する出力を行う。この出力は、例えば、特定された集約候補領域を示す情報の出力であってもよい。特定された集約候補領域を示す情報、例えば、集約候補領域の輪郭を示す図形は、記憶部11で記憶されている地図情報や航空写真などに重ねて表示されてもよい。また、特定された集約候補領域の輪郭を示す情報が、送信されたり、蓄積されたりしてもよい。また、移動後の里道が生成された場合には、その生成された里道の位置を示す情報が出力されてもよい。その移動後の里道の位置は、例えば、地図上に示されてもよい。
【0033】
ここで、この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。なお、出力部14は、出力を行うデバイス(例えば、表示デバイスやプリンタなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、出力部14は、ハードウェアによって実現されてもよく、または、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0034】
次に、農地集約候補特定装置1の動作について
図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)領域特定部12は、地図情報と土地情報とを用いて、農地を特定する。
【0035】
(ステップS102)領域特定部12は、農地の特定結果と3次元の測定結果とを用いて、農地において、高さごとの領域を特定する。
【0036】
(ステップS103)集約候補領域特定部13は、地図情報と土地情報とを用いて、水路、及び里道以外の道路を特定する。例えば、水路の位置は地図情報によって示されている。また、里道以外の道路は、例えば、地目が公衆用道路である区画を特定することによって特定することができる。
【0037】
(ステップS104)集約候補領域特定部13は、新たな集約候補領域に1つの特定された領域を追加する。この追加対象の領域は、それまでに特定した集約候補領域に含まれていない領域であり、例えば、ランダムに選択されてもよく、所定の規則に応じて選択されてもよい。
【0038】
(ステップS105)集約候補領域特定部13は、その時点の特定対象の集約候補領域に含まれる領域に隣接する領域であって、それまでに選択していない領域があるかどうか判断する。そして、そのような領域がある場合には、ステップS106に進み、そうでない場合には、ステップS110に進む。なお、ステップS110に進む際に、その時点の特定対象の集約候補領域への領域の追加が終了されることになる。したがって、その時点に集約候補領域に含まれる領域が、最終的に集約の候補となる農地となる。このように、ステップS105からステップS110に進むごとに、1個の集約候補領域が新たに特定されることになる。
【0039】
(ステップS106)集約候補領域特定部13は、集約候補領域に含まれる領域に隣接する領域であって、それまでに選択していない領域のうち、1つの領域を選択する。選択対象の領域が2以上存在する場合には、集約候補領域特定部13は、例えば、ランダムに1つの領域を選択してもよく、所定の規則に応じて1つの領域を選択してもよい。
【0040】
(ステップS107)集約候補領域特定部13は、ステップS106で選択した領域を集約候補領域に追加した際に、高低差が閾値未満であるかどうか判断する。高低差は、集約候補領域に含まれる最も高い領域と、最も低い領域との高さの差である。各領域の高さは、例えば、3次元の測定結果によって示される各領域の高さの代表値であってもよい。代表値は、例えば、平均値や中央値、最大値、最小値等であってもよい。そして、高低差が閾値未満である場合には、ステップS108に進み、そうでない場合には、ステップS105に戻る。
【0041】
(ステップS108)集約候補領域特定部13は、ステップS106で選択した領域を集約候補領域に追加した際に、その集約候補領域の所有者が所定人数以下であるかどうか判断する。集約候補領域の所有者とは、集約候補領域に含まれる各領域の所有者のことである。集約候補領域特定部13は、例えば、地図情報を用いて、集約候補領域に含まれる各領域をカバーする区画を特定し、土地情報を用いて、その特定した区画の所有者を特定し、その所有者の人数をカウントすることによって、集約候補領域の所有者の人数を特定してもよい。その後、集約候補領域特定部13は、その特定した所有者の人数と、あらかじめ決められている所定人数との大小を比較することによって、集約候補領域の所有者が所定人数以下であるかどうか判断してもよい。そして、集約候補領域の所有者が所定人数以下である場合には、ステップS109に進み、そうでない場合には、ステップS105に戻る。
【0042】
(ステップS109)集約候補領域特定部13は、選択した領域を集約候補領域に追加する。そして、ステップS105に戻る。
【0043】
(ステップS110)集約候補領域特定部13は、未処理の領域が存在するかどうか判断する。未処理の領域とは、領域特定部12によって特定された領域のうち、それまでに特定した集約候補領域に含まれていない領域のことである。未処理の領域が存在する場合には、ステップS104に戻り、そうでない場合には、ステップS111に進む。
【0044】
(ステップS111)集約候補領域特定部13は、里道を移動させる必要があるかどうか判断する。集約候補領域特定部13は、集約候補領域の外縁以外の位置に里道が存在する場合には、里道を移動させる必要があると判断してもよい。そして、里道を移動させる必要がある場合には、ステップS112に進み、そうでない場合には、ステップS113に進む。
【0045】
(ステップS112)集約候補領域特定部13は、集約候補領域の外縁以外の位置に存在する里道について、その集約候補領域の外縁に移動後の里道を生成する。
【0046】
(ステップS113)出力部14は、集約候補領域特定部13によって特定された集約候補領域に関する出力を行う。例えば、集約候補領域を示す情報が出力されてもよい。また、里道の生成も行われた場合には、生成された里道を示す情報も出力されてもよい。そして、集約候補領域を特定する一連の処理は終了となる。
【0047】
なお、2以上のパターンの集約候補領域の特定が行われる場合には、
図2のフローチャートにおいて、ステップS104~S113の処理が複数回、繰り返して行われてもよい。この場合には、例えば、ステップS104~S113の処理ごとに、ステップS104において集約候補領域に追加する1つ目の領域を選択する規則が変更されてもよい。また、集約候補領域を示す画像が出力される場合には、例えば、集約候補領域特定部13は、特定した集約候補領域ごとに、その範囲(輪郭)を示す画像を生成してもよい。また、1個の特定された領域のみを含む集約候補領域が特定された場合には、その集約候補領域に関する出力は行われなくてもよい。1個の領域のみを含む集約候補領域では、農地の集約が行われないからである。また、
図2のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。
【0048】
次に、本実施の形態による農地集約候補特定装置1の動作について、具体例を用いて説明する。本具体例では、
図3で一部が示される地図情報が記憶部11で記憶されているものとする。
図3の地図情報では、各区画が一点鎖線で区切られている。すなわち、一点鎖線が境界線となっている。なお、
図3の地図情報には、里道P101と、水路C101も含まれている。水路C101は境界線と重なっているものとする。一方、里道P101の位置は境界線ではないものとする。
図3の地図情報では、例えば、区画R101,R102などの範囲を知ることができる。この具体例では、区画R101を識別する区画識別子はR101であるとする。他の区画についても同様である。
【0049】
また、本具体例では、
図3の地図情報で示される土地の範囲に応じた3次元の測定結果である点群データも記憶部11で記憶されているものとする。
図3の地図情報と、3次元の測定結果とは、それぞれ緯度、経度の情報を介して位置合わせを行うことができるようになっているものとする。
【0050】
また、本具体例では、
図4で示される土地情報が記憶部11で記憶されているものとする。土地情報は、区画を識別する区画識別子と、その区画の地目と、その区画の所有者とを含む複数のレコードを有する情報である。なお、本具体例では、説明の便宜上、所有者がU001等で示されるものとするが、土地情報が土地の登記簿である場合には、所有者は、氏名と住所によって示されてもよい。
図4の土地情報では、例えば、区画R101の地目が宅地であり、その所有者がU001であることが示されている。
【0051】
ユーザが、集約候補領域を特定する処理を開始する旨の指示を農地集約候補特定装置1に入力すると、その入力に応じて領域特定部12は、記憶部11で記憶されてる地図情報と土地情報とを用いて農地を特定する(ステップS101)。具体的には、領域特定部12は、
図4の土地情報を参照し、地目が田または畑であるレコードを特定し、その特定したレコードに含まれる区画識別子を取得する。そして、領域特定部12は、その取得した区画識別子で識別される各区画を、
図3の地図情報において特定する。例えば、区画R110~R114などの範囲が地図情報において特定されることになる。
【0052】
次に、領域特定部12は、特定した区画に対応する3次元の測定結果を用いて、高さごとに領域を特定する(ステップS102)。その結果、
図5で示される破線で囲まれた各領域A101~A106,A110~A115などが特定されたとする。なお、領域特定部12は、例えば、特定した領域ごとに、領域の輪郭を示す情報と、その領域の高さ(例えば、領域に含まれる複数の位置の代表値など)とを取得して一時的に記憶してもよい。また、
図5では、一点鎖線で示される区画の境界線と、破線で示される特定された領域の境界線とを区別できるようにずらして記載しているが、両者は重なっていてもよい。他の図の境界線についても同様である。また、領域A103のように、複数の区画にまたがった領域が特定されてもよい。
【0053】
その後、集約候補領域特定部13は、
図3の地図情報において水路C101を特定し、また、
図4の土地情報を参照し、地目が公衆用道路であるレコードを特定し、その特定したレコードに含まれる区画識別子で識別される区画L101を、
図3の地図情報において特定する。このようにして、水路と里道でない道路とが特定される(ステップS103)。そして、以下の処理において、集約候補領域特定部13は、水路C101、及び区画L101の道路を挟んで存在する2個の領域は、隣接していない領域として扱うことになる。
【0054】
本具体例では、高さの低い領域から順番に集約候補領域に追加される規則になっていたとする。また、領域A101が最も低い領域であるとする。すると、集約候補領域特定部13は、まず、最も低い領域A101を集約候補領域に追加する(ステップS104)。具体的には、1番目の集約候補領域に含まれる領域の情報として、例えば、領域A101の識別子や、領域A101の輪郭を示す情報を記憶部11に蓄積してもよい。また、領域A101には、未選択の領域A102のみが隣接しているため、集約候補領域特定部13は、その領域A102を選択する(ステップS105、S106)。そして、集約候補領域特定部13は、1番目の集約候補領域に領域A102を追加した際に、集約候補領域における高低差が、あらかじめ決められた閾値未満であるかどうかを判断する(ステップS107)。この判断は、例えば、特定された領域ごとの高さを用いて、集約候補領域に含まれる領域の高さの最大値から、高さの最小値を減算した値、すなわち高低差と閾値とを比較することによって行われてもよい。この場合には、高低差は閾値より小さかったとする。
【0055】
すると、集約候補領域特定部13は、1番目の集約候補領域に領域A102を追加した際に、集約候補領域の所有者が所定人数以下となるかどうかを判断する(ステップS108)。なお、本具体例では、所定人数は2人であるとする。集約候補領域特定部13は、具体的には、領域A101、A102をカバーする区画R112を特定し、
図4の土地情報を参照して、その区画R112の所有者U103を特定する。この場合には、集約候補領域の所有者は1人であるため、集約候補領域特定部13は、集約候補領域の所有者が所定人数以下であると判断して、領域A102を1番目の集約候補領域に追加する(ステップS109)。
【0056】
次に、1番目の集約候補領域に含まれる領域A101,A102には、未選択の領域A103のみが隣接しているため、集約候補領域特定部13は、その領域A103を選択し(ステップS105、S106)、1番目の集約候補領域に領域A103を追加した際に、集約候補領域における高低差が、あらかじめ決められた閾値未満であるかどうかを判断する(ステップS107)。この場合には、高低差が閾値を超えていたとする。すると、領域A103は1番目の集約候補領域に追加されず、また、選択されていない隣接する領域も存在しないため、1番目の集約候補領域は、領域A101,A102の範囲に決定される(ステップS105)。1番目の集約候補領域の特定結果は、例えば、記憶部11に蓄積されてもよい。他の集約候補領域の特定結果についても同様である。
【0057】
まだ集約候補領域に含まれていない領域が存在するため(ステップS110)、集約候補領域特定部13は、集約候補領域に含まれていない領域のうち、最も低い領域A110を2番目の集約候補領域に追加する(ステップS104)。そして、上記説明と同様に集約候補領域の特定を行う(ステップS105~S109)。2番目の集約候補領域は、領域A110,A111の範囲に決定されたとする(ステップS105)。
【0058】
まだ集約候補領域に含まれていない領域が存在するため(ステップS110)、集約候補領域特定部13は、集約候補領域に含まれていない領域のうち、最も低い領域A103を3番目の集約候補領域に追加する(ステップS104)。そして、上記説明と同様に集約候補領域の特定を行う(ステップS105~S109)。この場合には、3番目の集約候補領域に領域A104,A105が追加された後に、隣接する領域A106が選択されたとする(ステップS105、S106)。また、3番目の集約候補領域に領域A106を追加した際に、集約候補領域における高低差が、あらかじめ決められた閾値未満であると判断されたとする(ステップS107)。
【0059】
すると、集約候補領域特定部13は、3番目の集約候補領域に領域A106を追加した際に、集約候補領域の所有者が所定人数以下となるかどうかを判断する(ステップS108)。その時点の3番目の集約候補領域の所有者はU103,U104の2人であり、選択された領域A106の所有者はその2人とは異なるU105であるため、領域A106を3番目の集約候補領域に追加すると所有者が3人となり、所定人数である2人を超えることから、領域A106は3番目の集約候補領域に追加されない。また、選択されていない隣接する領域も存在しないとする。すると、3番目の集約候補領域は、領域A103,A104,A105の範囲に決定される(ステップS105)。
【0060】
また、同様にして、4番目の集約候補領域は、領域A112,A113,A114,AA115の範囲に決定されたとする(ステップS110,S105~S109)。このようにして、特定された各領域を集約する処理が終了すると(ステップS110)、集約候補領域特定部13は、里道を移動させる必要があるかどうか判断する(ステップS111)。この場合には、3番目の集約候補領域や4番目の集約候補領域において里道が外縁以外の位置に存在しているため、集約候補領域特定部13は、その里道を移動させる必要があると判断し、3番目の集約候補領域や4番目の集約候補領域の外縁に沿った位置であって、移動前の里道の含まれる領域の所有者と、移動後の里道の含まれる領域の所有者とが同じになるように、移動後の新たな里道を生成する(ステップS112)。そして、出力部14は、集約候補領域に関する出力を行う(ステップS113)。具体的には、出力部14は、
図6で示されるように、地図情報に重ねて、輪郭が実線で示される集約候補領域D101~D105や、新たな里道P102を表示する画像を出力してもよい。この画像は、例えば、集約候補領域特定部13によって生成されてもよい。このようにして、ユーザは、集約候補領域によって、農地をどのように集約すればよいのかについて知ることができる。また、移動後の里道の位置についても知ることができるようになる。
【0061】
以上のように、本実施の形態による農地集約候補特定装置1によれば、3次元の測定結果を用いて高さごとに領域を特定することによって、高さごとの農地の領域が分かっていなくても、複数の高さの農地の集約について、特定した集約候補領域による提案を行うことができるようになる。また、集約候補領域の所有者が所定人数以下となるようにすることによって、農地の集約について所有者の合意を取りやすくなる。また、集約候補領域に水路や里道でない道路が含まれないようにすることによって、水路や里道でない道路を移動させなくてもよくなり、農地の集約に関するコストを低減することができる。また、集約候補領域に里道が含まれる場合には、移動後の里道を集約候補領域の外縁に生成することによって、里道の移動先の候補を容易に把握することができるようになる。また、移動後の里道が、移動前の里道の含まれる領域の所有者と同じ所有者の領域の外縁となるようにすることによって、里道の移動に応じて所有者ごとの土地の増減が生じないようにすることもできる。
【0062】
なお、農地の集約に消極的な所有者がいることもある。また、相続等によって農地の所有者の連絡先がわからないこともある。このような場合には、例えば、農地の集約に消極的な所有者、及び連絡先の分からない所有者の少なくとも一方を示す情報が記憶部11で記憶されるようにしてもよい。そして、集約候補領域特定部13は、その情報に含まれる所有者以外の領域を、集約候補領域に追加するようにしてもよい。一例として、領域特定部12は、農地の集約に消極的な所有者の農地や、連絡先の分からない所有者の農地については、領域の特定を行わなくてもよい。このようにすることで、簡単に集約できないと考えられる農地が集約候補領域に含まれないようにすることができる。
【0063】
また、高さの異なる連続した農地を集約する際には、盛土や切土によって、高さを揃えることになる。また、盛土や切土を行う場合には、通常、集約後の農地の外縁に生じた段差の領域に法面(斜面)が設けられる。法面は通常、傾斜しているため、その法面の領域だけ集約後の農地の耕作可能な面積が減少することになる。したがって、集約候補領域を出力する際には、その法面を示す情報も出力してもよい。法面の傾斜角は、通常、段差の高低差に応じて決まる。その高低差は、集約対象の領域の高低差から取得することができる。また、盛土によって生じる法面については、その法面の下端側の位置は集約候補領域の外縁となり、その法面の上端側の位置は集約候補領域の外縁から所定の長さだけ内側に入った位置となる。切土によって生じる法面については、その法面の上端側の位置は集約候補領域の外縁となり、その法面の下端側の位置は集約候補領域の外縁から所定の長さだけ内側に入った位置となる。その所定の長さは、段差の高低差と、法面の傾斜角とを用いて算出することができる。したがって、各法面について、集約候補領域の外縁と反対側の位置を特定することができる。この特定は、例えば、集約候補領域特定部13によって行われてもよい。このようにして特定された法面の領域を示す情報は、
図7で示されるように、集約候補領域を示す情報と一緒に出力されてもよい。
図7では、盛土によって高さの異なる複数の農地が同じ高さになるように集約された際の法面の位置が、法面の境界線SLによって示されている。このようにして、集約後の農地において、法面によってどれぐらいの農地が耕作できない領域となるのかを容易に把握することができるようになる。
【0064】
また、上記実施の形態では、農地集約候補特定装置1がスタンドアロンである場合について説明したが、農地集約候補特定装置1は、スタンドアロンの装置であってもよく、サーバ・クライアントシステムにおけるサーバ装置であってもよい。後者の場合には、農地集約候補特定装置1は、通信回線を介して入力を受け付けたり、情報を出力したりしてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0068】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0069】
また、上記実施の形態において、農地集約候補特定装置1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0070】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。なお、上記実施の形態における農地集約候補特定装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、土地の区画ごとの境界を示す地図情報と、土地の3次元の測定結果と、地図情報に含まれる区画ごとの地目を示す土地情報とが記憶される記憶部にアクセス可能なコンピュータを、地図情報、3次元の測定結果、及び土地情報に基づいて、高さごとに農地である領域を特定する領域特定部、領域特定部によって特定された複数の連続した領域のうち、高低差が閾値より小さい複数の連続した領域である集約候補領域を特定する集約候補領域特定部として機能させるためのプログラムである。
【0071】
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を取得する取得部や、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれない。
【0072】
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD-ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
【0073】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0074】
図8は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による農地集約候補特定装置1を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
【0075】
図8において、コンピュータシステム900は、CD-ROMドライブ905を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
【0076】
図9は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。
図9において、コンピュータ901は、CD-ROMドライブ905に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、LANやWAN等への接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
【0077】
コンピュータシステム900に、上記実施の形態による農地集約候補特定装置1の機能を実行させるプログラムは、CD-ROM921に記憶されて、CD-ROMドライブ905に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD-ROM921、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。また、CD-ROM921に代えて他の記録媒体(例えば、DVD等)を介して、プログラムがコンピュータシステム900に読み込まれてもよい。
【0078】
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態による農地集約候補特定装置1の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能やモジュールを呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0079】
また、以上の実施の形態は、本発明を具体的に実施するための例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲及び均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1 農地集約候補特定装置
11 記憶部
12 領域特定部
13 集約候補領域特定部
14 出力部