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  • 特開-金属管継手 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005928
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】金属管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/08 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
F16L21/08 G
F16L21/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106405
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】林 直輝
【テーマコード(参考)】
3H015
【Fターム(参考)】
3H015FA01
3H015FA04
3H015FA06
3H015JA02
(57)【要約】
【課題】継手に対する金属管の挿入抵抗を大きくせずに抜け止め性能を向上させた金属管継手の提供。
【解決手段】筒体部2にロックリング3とチャックリング4を内蔵し、前記ロックリング3は、第1爪部32が外周部に噛み込んだ金属管Pに前記筒体部2から抜けようとする変位が生じた際、前記チャックリング4を管挿入方向手前側に押圧し、前記チャックリング4は、挿入直後は第2爪部42が前記金属管Pの外周面に噛み込まずに当接しており、前記ロックリング3の押圧を受けて縮径するに伴い前記第2爪部42が前記金属管Pの外周部に噛み込むことで抜け止めをなす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入された金属管を受容する筒体部と、
前記筒体部の内部に配置されるロックリングと、
前記筒体部の内部であって前記ロックリングよりも管挿入方向手前側に配置されるチャックリングと、
前記筒体部の内部であって前記ロックリング及び前記チャックリングよりも管挿入方向手前側に配置され、挿入状態の前記金属管の外周面に当接する漏れ止めリングと、を備え、
前記筒体部の内周には、前記ロックリング及び前記チャックリングが嵌められるリング配置凹部を備え、
前記リング配置凹部は、管挿入方向奥側の内周に、管挿入直後では前記ロックリングに当接する第1面を備えると共に、管挿入方向手前側の内周に、前記第1面よりも小径とされた第2面を備え、
前記ロックリングは、挿入直後から前記金属管の外周部に対し、管挿入方向を向いて噛み込む第1爪部を備え、
前記チャックリングは、前記筒体部の軸心に対して縮径可能であり、径外位置に、前記リング配置凹部の前記内周に当接可能な押圧部と、径内方向に突出する第2爪部とを備え、
前記ロックリングは、前記金属管に前記筒体部から抜けようとする変位が生じた際、前記チャックリングを管挿入方向手前側に押圧し、
前記チャックリングは、挿入直後は前記第1面に当接していて、前記第2爪部が前記金属管の外周面に噛み込まずに当接しており、前記ロックリングの押圧を受けて管挿入方向手前側に移動して、前記押圧部が前記第2面に当接することで縮径し、この縮径に伴い前記第2爪部が前記金属管の外周部に噛み込む、金属管継手。
【請求項2】
前記チャックリングにおいて、前記第2爪部は前記押圧部と管挿入方向において重なる位置に設けられている、請求項1に記載の金属管継手。
【請求項3】
前記チャックリングは前記筒体部の軸心に対して周回する本体部を備え、前記第2爪部は前記本体部から径内方向に延びており、
前記第2爪部は、管挿入方向に沿う成分を含む面を有する、請求項1または2に記載の金属管継手。
【請求項4】
前記ロックリングと前記チャックリングとの間に、両者に当接するスペーサーが設けられている、請求項1または2に記載の金属管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅管等の金属管を接続する際に用いる金属管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属管継手として、例えば特許文献1に示した構成のものが提案されている。この継手では、継手からの金属管の抜けを防止する爪部を有したロックリングが設けられている。ロックリングは挿入された金属管の外周部に食い込むことで抜け止め性能を発揮する。
【0003】
ところで、特に金属管を冷媒配管として用いる場合、使用圧力が他のガス配管や水道配管よりも高いことから、高い抜け止め性能が要求される。
【0004】
高い抜け止め性能を発揮するため、ロックリングの数量を増やすことが考えられる。しかし、ロックリングは金属管の外周部に食い込ませるため、径内方向に付勢力が働くことから、ロックリングの数量を増やすと、継手に対する金属管の挿入抵抗が大きくなってしまい、挿入作業が行いにくくなる。挿入作業が行いにくいと、金属管の挿入が不完全になってしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-120309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、継手に対する金属管の挿入抵抗を大きくせずに抜け止め性能を向上させた金属管継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの構成は、挿入された金属管を受容する筒体部と、前記筒体部の内部に配置されるロックリングと、前記筒体部の内部であって前記ロックリングよりも管挿入方向手前側に配置されるチャックリングと、前記筒体部の内部であって前記ロックリング及び前記チャックリングよりも管挿入方向手前側に配置され、挿入状態の前記金属管の外周面に当接する漏れ止めリングと、を備え、前記筒体部の内周には、前記ロックリング及び前記チャックリングが嵌められるリング配置凹部を備え、前記リング配置凹部は、管挿入方向奥側の内周に、管挿入直後では前記ロックリングに当接する第1面を備えると共に、管挿入方向手前側の内周に、前記第1面よりも小径とされた第2面を備え、前記ロックリングは、挿入直後から前記金属管の外周部に対し、管挿入方向を向いて噛み込む第1爪部を備え、前記チャックリングは、前記筒体部の軸心に対して縮径可能であり、径外位置に、前記リング配置凹部の前記内周に当接可能な押圧部と、径内方向に突出する第2爪部とを備え、前記ロックリングは、前記金属管に前記筒体部から抜けようとする変位が生じた際、前記チャックリングを管挿入方向手前側に押圧し、前記チャックリングは、挿入直後は前記第1面に当接していて、前記第2爪部が前記金属管の外周面に噛み込まずに当接しており、前記ロックリングの押圧を受けて管挿入方向手前側に移動して、前記押圧部が前記第2面に当接することで縮径し、この縮径に伴い前記第2爪部が前記金属管の外周部に噛み込む、金属管継手である。
【0008】
この構成によれば、金属管が筒体部から抜けようとする力が、筒体部の第2面とチャックリングの押圧部とにより、チャックリングを縮径させ、これに伴い第2爪部が金属管の外周部に噛み込む。このため、ロックリングでの抜け止めをチャックリングの噛み込みによって補完できる。
【0009】
また、前記チャックリングにおいて、前記第2爪部は前記押圧部と管挿入方向において重なる位置に設けられることができる。
【0010】
この構成によれば、筒体部の第2面にチャックリングの押圧部が当接したことによりチャックリングが縮径して、生じた径内方向に向かう力を、直接的に第2爪部に伝え、第2爪部が金属管の外周部に噛み込む力とできる。
【0011】
また、前記チャックリングは前記筒体部の軸心に対して周回する本体部を備え、前記第2爪部は前記本体部から径内方向に延びており、前記第2爪部は、管挿入方向に沿う成分を含む面を有することができる。
【0012】
この構成によれば、管挿入方向に沿う成分を含む面を有する第2爪部が金属管の外周部に、抜け方向とは逆である管挿入方向に噛み込むようにできるので、強い抜け止め作用を発揮できる。
【0013】
また、前記ロックリングと前記チャックリングとの間に、両者に当接するスペーサーが設けられていることができる。
【0014】
この構成によれば、金属管に筒体部から抜けようとする変位が生じた際、当該変位がロックリングとスペーサーとを経由して、確実にチャックリングに伝達される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によると、ロックリングでの抜け止めをチャックリングの噛み込みによって補完できる。このため、継手に対する金属管の挿入抵抗を大きくせずに抜け止め性能を向上させた金属管継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る金属管継手の、管挿入前の状態を示す径方向断面図である。
図2】前記金属管継手(挿入後の金属管に引抜負荷がかかった場合)の径方向断面図である。
図3】前記金属管継手に用いられるロックリングを示し、(a)は正面図、(b)は右側面図(一部を径方向断面表示)である。
図4】前記金属管継手に用いられるチャックリングを示し、(a)は正面図、(b)は右側面図(一部を径方向断面表示)である。
図5】前記金属管継手に用いられるスペーサーを示し、(a)は正面図、(b)は右側面図(一部を径方向断面表示)である。
図6図2のVI囲み部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明につき一実施形態を取り上げて説明を行う。接続の対象とする金属管Pは、図2において二点鎖線で示されており、例えば冷媒用の銅管(JIS H 3300に規定)である。
【0018】
本実施形態の金属管継手1(以下「継手」)は、図1に示すように構成されている。この継手1は、図示のように軸線方向につき対称形状とされている。各部の構成につき、軸線方向の一方側部分(図1に示した左方側)に着目して以下で説明を行うが、軸線方向の他方側(図1に示した右方側)も同一の構成とされている。継手1は、挿入された金属管Pの端部を受容する筒体部2と、筒体部2の内部に配置されるロックリング3と、筒体部2の内部であってロックリング3よりも管挿入方向手前側(図示左側)に配置されるチャックリング4と、ロックリング3とチャックリング4との間に介在し、両者に当接するスペーサー5と、筒体部2の内部であってロックリング3及びチャックリング4よりも管挿入方向手前側に配置され、挿入状態の金属管Pの外周面に当接する漏れ止めリング(具体的にはゴム等の軟質樹脂製のOリング6)と、を備える。少なくともロックリング3及びチャックリング4が組み合わされて抜け止め機構11が構成されている。本実施形態の抜け止め機構11は、2個のロックリング3、1個のチャックリング4、2個のスペーサー5が図示のように組み合わされて構成されている。
【0019】
筒体部2は、図示にて左右方向に直線状に延びる軸心を有するように形成された筒状の部材である。筒体部2は、本体部21と蓋部22とを備えている。本体部21には、内周に雌ねじが形成されており、筒状とされている蓋部22がねじ込まれる。本体部21と蓋部22との間にはOリング23が設けられていて液漏れを防止している。本実施形態における接続対象である金属管P(図2に挿入状態を二点鎖線で図示)は、軸線方向の両側(図示左右)から筒体部2に挿入される。金属管Pは蓋部22を貫通して、本体部21の内部に形成された段差211に先端が当接する状態となる。
【0020】
筒体部2(具体的には本体部21と蓋部22とに亘っている)の内周には、ロックリング3及びチャックリング4が嵌められるリング配置凹部24を備える。リング配置凹部24は周方向の全周に設けられている。リング配置凹部24は、管挿入方向奥側(図示右側)に、管挿入直後ではロックリング3に当接する奥側垂直面241を備える。奥側垂直面241は、筒体部2の軸心に対して直交する平面である。奥側垂直面241は本体部21に形成されている。またリング配置凹部24において周方向の全周に設けられた内周面は、第1面としての奥側周面242と、奥側周面242の管挿入方向手前側に隣接する第2面としての手前側周面243とされている。奥側周面242、手前側周面243のいずれも、軸心方向に直交する断面形状が真円とされており、かつ、軸心方向に平行な面とされている。チャックリング4が有する押圧部としての突起部43は、当初は奥側周面242に当接するが、金属管Pに引抜負荷がかかった場合、チャックリング4が移動し、突起部43が手前側周面243に当接する状態となる。なお、本実施形態と異なり、金属管Pに引抜負荷がかかるまではリング配置凹部24の内周面に当接しないように押圧部(突起部43)を構成してもよい。奥側周面242は本体部21に形成されている。また、手前側周面243は蓋部22に形成されている。手前側周面243は奥側周面242よりも径寸法が小さく形成されている。このため、奥側周面242と手前側周面243との間には段差が形成されている。この段差には面取り部244が形成されている。面取り部244は一定角度で傾斜するテーパ面を有している。奥側周面242から面取り部244を経て手前側周面243に向かうと径方向寸法が縮小する。このため、奥側周面242から手前側周面243に移動するチャックリング4は縮径させられる。
【0021】
ロックリング3は、図3(a)(b)に示すような形態であって、板状体が折り曲げられて形成されている。ロックリング3は金属管Pよりも硬質の材料で形成されている。本実施形態では金属管Pよりも硬質の金属材料で形成されている。ロックリング3は本体部31と第1爪部32とを一体に備える。本体部31は環状の部分であって、筒体部2の軸心に直交する平板状の部分と、軸心を取り巻く筒状の部分が一体とされた、径方向断面でL字状の部分とを有している。L字状とされたことから、例えば平板状に比べて本体部31にねじれが生じにくく、保形性に優れる。第1爪部32は、本体部31から径内方向に延びている。詳しくは、図3(b)に示すように、径内方向に向かうにつれ管挿入方向に向かうように斜めに延びている。第1爪部32は、図3(a)に示すように、周方向に一定間隔で間欠的に形成されている。第1爪部32における径内部分は、挿入直後から(厳密には、金属管Pに筒体部2から抜けようとする変位が生じようとした瞬間以降に)金属管Pの外周部に対し、管挿入方向を向いて噛み込む。本実施形態の第1爪部32は、図示のように略半円形状とされているが、金属管Pの外周部に噛み込むことのできる形状であれば、種々の形状とすることができる。本実施形態では2個のロックリング3のうち、挿入方向奥側のものはリング配置凹部24に単体で配置される。挿入方向手前側のものは、図1に示すように、本体部31におけるL字状の部分に入り込むようにスペーサー5が組み合わされて配置される。スペーサー5における突出部52は、第1爪部32に沿うように配置される。
【0022】
チャックリング4は、図4(a)に示すように、軸心方向視でC形に形成されている。このため、筒体部2の軸心に対して容易に縮径可能とされている。具体的には、チャックリング4の径外側で当接するリング配置凹部24の内周面(奥側周面242、手前側周面243)の径寸法の差に応じて縮径可能である。チャックリング4は金属管P(本実施形態では銅管)よりも硬質の材料で形成されている。本実施形態では金属管Pよりも硬質の金属材料で形成されている。チャックリング4は筒体部2の軸心に対して周回する本体部41と、本体部41から径内方向に延びる第2爪部42と、本体部41から径外方向に突出する突起部43とを備える。本実施形態では、軸心方向の寸法につき、第2爪部42よりも本体部41の方が大きい。このため、第2爪部42は本体部41の内周面の一部から径内方向に突出している。第2爪部42は先端が尖った形状とされている。図2に示すように第2爪部42は、金属管Pに筒体部2から抜けようとする変位が生じた際、チャックリング4の縮径に伴って、金属管Pの外周部に噛み込む。
【0023】
また第2爪部42は、本体部41における管挿入方向手前側の端部から径内方向に突出している。なお、突起部43もまた、本体部41における管挿入方向手前側の端部における径外部分に形成されている。突起部43と第2爪部42とは、軸心方向において重なる位置に設けられている(図6参照)。このような位置関係により、金属管Pに筒体部2から抜けようとする変位が生じた際の力でチャックリング4が、奥側周面242に当接した状態から、奥側周面242に比べて径寸法の小さい手前側周面243に当接した状態に変化し、奥側周面242とチャックリング4の突起部43との当接によりチャックリング4を縮径させて、生じた径内方向に向かう力を、直接的に第2爪部42に伝え、第2爪部42が金属管Pの外周部に噛み込む力とできる。
【0024】
本実施形態では、第2爪部42の径断面形状が、径内方向に向かうにつれ絞られたくさび形とされている。第2爪部42の管挿入方向奥側における端面421は、筒体部2の軸心に直交する面(垂直面)とされている。一方、管挿入方向手前側における端面422は、径内方向に向かうにつれ管挿入方向奥側に向かう斜面とされている。すなわち、第2爪部42は、管挿入方向に沿う成分を含む面(前記斜面である端面422)を有する。このような、管挿入方向に沿う成分を含む面を有する第2爪部42の形状により、第2爪部42の縮径に伴い、第2爪部42が金属管Pの外周部に、抜け方向とは逆である管挿入方向に噛み込むようにできるので、強い抜け止め作用を発揮できる。
【0025】
突起部43は、本体部41の存在する範囲で、周方向に沿って延びる突条とされている。突起部43の径方向断面形状は半円形とされている。よって突起部43の外周形状は尖っておらず湾曲している。このため、リング配置凹部24の内部においてチャックリング4を軸線方向にスムーズに移動させることが可能である。本実施形態では、突起部43はチャックリング4における挿入方向手前側に片寄って形成されている。図1に示すように、突起部43は初期状態において、リング配置凹部24の奥側周面242と手前側周面243との間の段差(面取り部244)に当接している。これにより、金属管Pに引抜負荷がかかっていない場合には、前記段差に隣接して突起部43が位置するため、チャックリング4を安定して配置できる。
【0026】
スペーサー5は、図3に示すように、中実の環状体である。スペーサー5は金属または非金属(樹脂、セラミックス等)により形成できる。スペーサー5は、ロックリング3の本体部31に対しては面接触する。スペーサー5は、チャックリング4の本体部41に対しても面接触する。ロックリング3は板状体であるが、中実のスペーサー5が介在することにより、金属管Pに筒体部2から抜けようとする変位が生じた際、当該変位がロックリング3とスペーサー5とを経由して、確実にチャックリング4に伝達される。
【0027】
スペーサー5は、筒体部2の軸心に対して周回する本体部51と、ロックリング3の径内位置で第1爪部32に重なる突出部52を備える。突出部52の径外側の面は、挿入方向奥側に隣接するロックリング3の第1爪部32に当接する。金属管Pに筒体部2から抜けようとする変位が生じた際、突出部52が重ねられたことにより、第1爪部32が管挿入方向と逆を向くように反転する変形を生じ、金属管Pに噛み込んだ状態でなくなってしまうことを抑制できる。
【0028】
漏れ止めリングとしてのOリング6は、リング配置凹部24よりも管挿入方向手前側に複数(本実施形態では3個)設けられている。筒体部2(具体的には蓋部22)の内面にはOリング6が嵌められる凹溝が形成されている。なお、金属管Pはロックリング3が噛み込むことで外周部が傷つくが、その部分はOリング6よりも管挿入方向奥側であるので、Oリング6に接する金属管Pの外周は傷のない湾曲面であって、Oリング6の漏れ止め機能には影響しない。
【0029】
次に、金属管Pに筒体部2から抜けようとする変位が生じた際のことを説明する。この際、挿入方向奥側に位置するロックリング3は、金属管Pの変位を受け、奥側垂直面241から離反するように移動して、もう1個のロックリング3と2個のスペーサー5を介しチャックリング4を管挿入方向手前側に押圧する。なお、各ロックリング3全体が移動するまでは、第1爪部32だけが管挿入方向手前側に、湾曲するように変形する。一方、チャックリング4は、挿入直後は第2爪部42が金属管Pの外周面に噛み込まずに当接しており(図1参照)、本体部41がロックリング3の押圧を受けて突起部43が手前側周面243に押し付けられることで縮径し、この縮径に伴い第2爪部42が金属管Pの外周部に噛み込む(図2参照)。つまり、スペーサー5を経由したロックリング3による押圧力は、チャックリング4の内部において本体部41を管挿入方向手前側に向かい、段差(面取り部244)を越え、径寸法の小さい手前側周面243に当接した突起部43によって径内方向に向かい第2爪部42に伝達される。このように、金属管Pが筒体部2から抜けようとする力が、手前側周面243と突起部43とにより、チャックリング4を縮径させ、縮径によって径内方向に付勢された第2爪部42が金属管Pの外周部に噛み込む。このため、ロックリング3での抜け止めをチャックリング4の噛み込みによって補完できる。従って、ロックリング3とチャックリング4とが組み合わされた(本実施形態ではスペーサー5も組み合わされている)抜け止め機構11により、使用圧力が他のガス配管や水道配管よりも高い冷媒配管であっても、確実な抜け止めが可能である。
【0030】
以上、本発明の実施形態について、いくつかの例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0031】
例えば、前記実施形態の抜け止め機構11は、軸線方向につき対称形状とされていた。しかしこれに限定されず、軸線方向につき非対称形状とすることができる。例えば軸線方向の一方側または他方側と同一の構成が軸心方向の一方側にのみ設けられており、他方側は金属管Pに対してねじ接続を行うように構成されることもできる。この場合、ねじ部には、例えば金属管Pのフレア加工を施した管端に設けられた袋ナットがねじ込まれる。
【0032】
また、前記実施形態では、リング配置凹部24に設けられた内周面(奥側周面242、手前側周面243)は軸心方向に平行な面とされていた。しかしこれに限定されず、軸心方向に対して傾斜した面(例えば管挿入方向手前側に向かうにつれ縮径した斜面)であってもよい。この場合、奥側周面242と手前側周面243とが連続した一つの面で構成されていてもよい。また、内周面を傾斜した面とすると、チャックリング4の縮径は、チャックリング4の存在する軸心位置に応じて順次なされる。また、前記実施形態では、チャックリング4が有する押圧部として突起部43が形成されていた。しかしこれに限定されず、リング配置凹部24の前記斜面に対応した斜面であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 金属管継手
11 抜け止め機構
2 筒体部
21 本体部(筒体部)
22 蓋部
23 Oリング
24 リング配置凹部
241 奥側垂直面
242 第1面、奥側周面
243 第2面、手前側周面
3 ロックリング
31 本体部(ロックリング)
32 第1爪部
4 チャックリング
41 本体部(チャックリング)
42 第2爪部
422 管挿入方向に沿う成分を含む面、端面(第2爪部)
43 押圧部、突起部
5 スペーサー
51 本体部(スペーサー)
52 突出部
6 漏れ止めリング(Oリング)
図1
図2
図3
図4
図5
図6