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特開2024-59307インナーパンツ、及びインナーパンツ付きズボン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059307
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】インナーパンツ、及びインナーパンツ付きズボン
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/02 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
A41B9/02 P
A41B9/02 K
A41B9/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166916
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】521012522
【氏名又は名称】株式会社三天被服
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100199347
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】東谷 麗子
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 武志
(72)【発明者】
【氏名】村山 由佳
【テーマコード(参考)】
3B128
【Fターム(参考)】
3B128EA01
3B128EB12
3B128EB17
3B128EB18
3B128EB26
3B128EC12
(57)【要約】
【課題】体液の横漏れを抑制するインナーパンツ、及びインナーパンツ付きズボンを提供する。
【解決手段】体液を吸水するインナーパンツ1であって、身生地部2と、クロッチ部3と、一対の開口部4a、4bを有するレッグ開口部4と、一対の前記開口部4a、4bのそれぞれの開口部周縁5に配置された張力伝達部7と、前記クロッチ部3から前記開口部周縁5まで延在するように配置されたパッド6と、を備える。前記張力伝達部7は、前記開口部周縁5の内部から外部に延在する張力印加部を含むことを特徴とする。例えば、前記張力伝達部7は、前身頃張力伝達部と後身頃張力伝達部とを含み、前記張力印加部は、前記前身頃張力伝達部と前記後身頃張力伝達部との間に設けられることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を吸水するインナーパンツであって、
身生地部と、
クロッチ部と、
一対の開口部を有するレッグ開口部と、
一対の前記開口部のそれぞれの開口部周縁に配置された張力伝達部と、
前記クロッチ部から前記開口部周縁まで延在するように配置されたパッドと、
を備え、
前記張力伝達部は、前記開口部周縁の内部から外部に延在する張力印加部を含むこと
を特徴とするインナーパンツ。
【請求項2】
前記張力伝達部は、前身頃張力伝達部と後身頃張力伝達部とを含み、
前記張力印加部は、前記前身頃張力伝達部と前記後身頃張力伝達部との間に設けられること
を特徴とする請求項1記載のインナーパンツ。
【請求項3】
前記張力印加部は、前記前身頃張力伝達部、及び前記後身頃張力伝達部と一体に形成され、折り返し形状を有すること
を特徴とする請求項2記載のインナーパンツ。
【請求項4】
前記張力伝達部は、
10N荷重伸びが50%以下であること
を特徴とする請求項2記載のインナーパンツ。
【請求項5】
前記パッドは、
肌対向面に配置された吸水材と、
前記肌対向面とは異なる反対面に配置された防漏材と、
前記吸水材を内側に折り返した形状を有する吸水ポケットと、
を含むこと
を特徴とする請求項2記載のインナーパンツ。
【請求項6】
前記身生地部は、メッシュ生地であり、
前記パッドは、前記身生地部の外側に配置されること
を特徴とする請求項2記載のインナーパンツ。
【請求項7】
前記パッドは、前記クロッチ部及び前記身生地部に縫製又は接着により接合されること
を特徴とする請求項2記載のインナーパンツ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のインナーパンツと、
前記インナーパンツを内部に有し、股止まり部と膝部との間の高さに貫通孔が形成されたズボンと、
前記貫通孔を挿通して配置される貫通ベルトと、
を備え、
前記インナーパンツの前記張力印加部が、前記貫通孔を介して前記貫通ベルトと接続されること
を特徴とするインナーパンツ付きズボン。
【請求項9】
前記インナーパンツは、上端に配置された被係合部を含み、
前記ズボンは、前記ズボンの内側に配置され、前記被係合部と係合する係合部を含むこと
を特徴とする請求項8記載のインナーパンツ付きズボン。
【請求項10】
前記貫通ベルトは、前記張力印加部と接続するインナーパンツ接続用フックを含むこと
を特徴とする請求項9記載のインナーパンツ付きズボン。
【請求項11】
前記貫通ベルトは、
前記ズボンの外側に配置したバックルと係合すること
を特徴とする請求項10記載のインナーパンツ付きズボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーパンツ、及びインナーパンツ付きズボンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経血の外部への漏れを防止する衣料として、例えば特許文献1の生理用ショーツ等が提案されている。
【0003】
特許文献1では、股下防水布と、レッグ回り方向へ環状に延びる円筒状部とを備える生理用ショーツが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-075313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の生理用ショーツは、レッグ開口回りに延びる円筒状部の内側部分が防水性を有する股部の一部から形成されており、内側部分を外側部分よりも伸縮性を低くすることにより、円筒状部と身体との間に経血の横漏れを生じるような隙間の形成を抑制できる旨が開示されている。
【0006】
また、特許文献1の生理用ショーツは、股下防水布に加えて当て布も防水性を有するので、股部は2重の防水布とし、生理用ナプキンの両側から経血が漏出しても生理用ショーツの外部に流れ出て衣服を汚したりするのを抑制できる旨が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献1の生理用ショーツでは、生理用ナプキンを身体に押し当てることで、経血の外部への漏れが防止される効果が期待できるが、強く締め付けられすぎてしまう。かかる圧迫感を軽減するために、身生地を高い伸縮性の生地で形成した場合には、生理用ショーツのフィット性が低下して、身体とショーツとの間に経血の横漏れを生じるような隙間が形成されるおそれがあるという課題が挙げられている。このため、経血のような体液の横漏れを抑制する方法が望まれている。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、体液の横漏れを抑制するインナーパンツ、及びインナーパンツ付きズボンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係るインナーパンツは、体液を吸水するインナーパンツであって、身生地部と、クロッチ部と、一対の開口部を有するレッグ開口部と、一対の前記開口部のそれぞれの開口部周縁に配置された張力伝達部と、前記クロッチ部から前記開口部周縁まで延在するように配置されたパッドと、を備え、前記張力伝達部は、前記開口部周縁の内部から外部に延在する張力印加部を含むことを特徴とする。
【0010】
第2発明に係るインナーパンツは、第1発明において、前記張力伝達部は、前身頃張力伝達部と後身頃張力伝達部とを含み、前記張力印加部は、前記前身頃張力伝達部と前記後身頃張力伝達部との間に設けられることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係るインナーパンツは、第2発明において、前記張力印加部は、前記前身頃張力伝達部、及び前記後身頃張力伝達部と一体に形成され、折り返し形状を有することを特徴とする。
【0012】
第4発明に係るインナーパンツは、第2発明において、前記張力伝達部は、10N荷重伸びが50%以下であることを特徴とする。
【0013】
第5発明に係るインナーパンツは、第2発明において、前記パッドは、肌対向面に配置された吸水材と、前記肌対向面とは異なる反対面に配置された防漏材と、前記吸水材を内側に折り返した形状を有する吸水ポケットと、を含むことを特徴とする。
【0014】
第6発明に係るインナーパンツは、第2発明において、前記身生地部は、メッシュ生地であり、前記パッドは、前記身生地部の外側に配置されることを特徴とする。
【0015】
第7発明に係るインナーパンツは、第2発明において、前記パッドは、前記クロッチ部及び前記身生地部に縫製又は接着により接合されることを特徴とする。
【0016】
第8発明に係るインナーパンツ付きズボンは、第1発明~第7発明のいずれかに記載のインナーパンツと、前記インナーパンツを内部に有し、股止まり部と膝部との間の高さに貫通孔が形成されたズボンと、前記貫通孔を挿通して配置される貫通ベルトと、を備え、前記インナーパンツの前記張力印加部が、前記貫通孔を介して前記貫通ベルトと接続されることを特徴とする。
【0017】
第9発明に係るインナーパンツ付きズボンは、第8発明において、前記インナーパンツは、上端に配置された被係合部を含み、前記ズボンは、前記被係合部と係合する係合部を含むことを特徴とする。
【0018】
第10発明に係るインナーパンツ付きズボンは、第9発明において、前記貫通ベルトは、前記張力印加部と接続するインナーパンツ接続用フックを含むことを特徴とする。
【0019】
第11発明に係るインナーパンツ付きズボンは、第10発明において、前記貫通ベルトは、前記ズボンの外側に配置したバックルと係合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1発明~第11発明によれば、パッドは、クロッチ部から開口部周縁まで延在するように配置される。また、張力伝達部は、開口部周縁の内部から外部に延在する張力印加部を含む。即ち、張力印加部及び張力伝達部により、パッドに任意の張力を伝達することが出来る。このため、パッドを太もも等の身体に適切な力で押し当てることが出来る。これにより、体液の横漏れを抑制することを実現することが可能となる。
【0021】
特に、第2発明によれば、前身頃張力伝達部と後身頃張力伝達部との間に張力印加部が設けられる。このため、パッドを身体へ向かって押し当てることができる。これにより、太ももを伝って垂れ落ちる生理による経血がズボンに滲むおそれが低減される。
【0022】
特に、第3発明によれば、張力印加部は、開口部周縁の内部から外部に延在し折り返される形状とする。これにより、インナーパンツ接続用フック等のような、ズボンの一部との係合を可能とし、インナーパンツ接続用フックを介して張力を印加することが可能となる。
【0023】
特に、第4発明によれば、張力伝達部は伸縮性の低い紐状素材にて構成される。張力印加部に印加された力は、張力伝達部に直接的に伝わり、そして、太ももの内側に配置されたパッドを身体へ向かって押し当てることが可能となる。
【0024】
特に、第5発明によれば、パッドの先端部は折り返すことでポケット構造を形成する。このため、太ももを伝って垂れ落ちる経血の量が多い場合でも、ポケット構造により受け止めることでズボンに滲むおそれが低減される。
【0025】
特に、第6発明によれば、身生地はメッシュ素材であり、かつ、パッドは身生地の外側に配置されることにより、肌対向面はすべてメッシュ素材となり、蒸れを防止することが可能となる。
【0026】
特に、第7発明によれば、パッドは、クロッチ部及び身生地に縫製又は接着して接合される。このため、メッシュ素材である身生地とパッドが一体の立体構造にて一体加工することができ、身体に安定的にフィットさせることが可能となる。
【0027】
特に、第8発明によれば、インナーパンツは、ズボンの内側に装着され、インナーパンツの張力印加部は、ズボンを貫通するベルトと接続される。このため、ズボンを履いた状態にて、インナーパンツのパッドへの張力を調整することができる。これにより、ズボンを履いた状態にて、太ももの内側に配置されたパッドを身体へ向かって押し当てる力を調整することが可能となる。
【0028】
特に、第9発明によれば、インナーパンツは、ズボンの内側に配置された係合部と係合する被係合部を含む。このため、インナーパンツは、ズボンとの位置関係が適切に固定される。また、股部へのクロッチ部のパッドを押し当てることが可能となる。
【0029】
特に、第10発明によれば、貫通ベルトは、インナーパンツ接続用フックにより連結される。これにより、ズボンを履いた状態にて、インナーパンツのパッドへの張力を調整する機能を有しつつ、ズボンとインナーパンツが取外し可能となる。
【0030】
第11発明によれば、前記貫通ベルトは、ズボンの外側に配置したバックルと係合される。これにより、任意の多段階の長さで貫通ベルトを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1(a)は、本実施形態におけるインナーパンツの一例を示す正面図である。図1(b)は、本実施形態におけるインナーパンツの一例を示す背面図であり、図1(c)は、本実施形態におけるインナーパンツの一例を示す右側面図である。
図2図2(a)は、本実施形態におけるインナーパンツの一例を示す斜視図であり、図2(b)は、本実施形態におけるインナーパンツの着衣時の一例を示す斜視図である。
図3図3(a)は、本実施形態におけるインナーパンツの一例を示す上部から見た平面図であり、図3(b)は、本実施形態におけるインナーパンツの下部から見た底面図であり、図3(c)は、本実施形態におけるインナーパンツのパッドの先端を折り返し形状とする一例を示す斜視図である。
図4図4(a)は、本実施形態におけるインナーパンツの一例を示す右側面図であり、図4(b)は、前後結合帯を有するインナーパンツの一例を示す右側面図であり、図4(c)は、前身頃身生地部と後身頃身生地部とが離間したインナーパンツの一例を示す右側面図である。
図5図5(a)は、本実施形態における張力印加部の一例を示す斜視図であり、図5(b)は、リングゴムを有する張力印加部の一例を示す斜視図である。
図6図6(a)は、本実施形態におけるインナーパンツ付きズボンの一例を示す正面図であり、図6(b)は、本実施形態におけるインナーパンツ付きズボンの背面面図であり、図6(c)は、本実施形態におけるインナーパンツ付きズボンの右側面図である。
図7図7(a)は、本実施形態における貫通ベルトの一例を示す図であり、図7(b)は、本実施形態における貫通ベルトをインナーパンツに装着した一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態におけるインナーパンツ、及びインナーパンツ付きズボンの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
(実施形態:インナーパンツ1)
図1(a)~図3(c)を参照して、本実施形態であるインナーパンツ1の一例を説明する。図1(a)は、本実施形態におけるインナーパンツ1の一例を示す正面図であり、図1(b)は、本実施形態におけるインナーパンツ1の一例を示す背面図であり、図1(c)は、本実施形態におけるインナーパンツ1の一例を示す右側面図である。図2(a)は、本実施形態におけるインナーパンツ1の一例を示す斜視図であり、図2(b)は、本実施形態におけるインナーパンツ1の着衣時の一例を示す斜視図である。図3(a)は、本実施形態におけるインナーパンツ1の一例を示す上部から見た平面図であり、図3(b)は、本実施形態におけるインナーパンツ1の下部から見た底面図であり、図3(c)は、本実施形態におけるインナーパンツ1のパッド6の先端を折り返し形状とする一例を示す斜視図である。
【0034】
インナーパンツ1は、体液を吸水するために用いられる。例えば、生理や尿漏れのケアとして、例えば肌に直接触れる最も内側に生理用ショーツや尿漏れ用ショーツが着用される。インナーパンツ1は、生理用ショーツや尿漏れ用ショーツの外側に配置され、さらにその外側にはズボン等が着用される。即ち、インナーパンツ1は、肌に直接触れて着用される生理用ショーツや尿漏れ用ショーツとは異なり、生理用ショーツや尿漏れ用ショーツの外側に位置する状態で利用される。
【0035】
インナーパンツ1は、身生地部2と、クロッチ部3と、一対の開口部4a、4bを有するレッグ開口部4と、張力伝達部7と、パッド6とを備える。張力伝達部7は、一対の開口部4a、4bのそれぞれの開口部周縁5a、5bに配置される。張力伝達部7は、開口部周縁5の内部から外部に延在する張力印加部7biを含む。パッド6は、クロッチ部3から開口部周縁5まで延在するように配置される。
【0036】
<身生地部2>
例えば図1に示すように、身生地部2は、インナーパンツ1の前部分である前身頃身生地部2aと、後部分である後身頃身生地部2bを有する。身生地部2は、例えばコットンやメッシュ素材からなる。身生地部2として、例えば吸汗速乾素材等の機能性素材が用いられてもよい。
【0037】
<クロッチ部3>
クロッチ部3は、インナーパンツ1を履いた際に、股の部分にあたる部分である。
【0038】
<レッグ開口部4>
図2(b)に示すように、レッグ開口部4は、一対の開口部4a、4bを有する。一対の開口部4a、4bは、インナーパンツ1を履いた際に、右脚Rを通すための右側開口部4a、及び左脚Lを通すための左側開口部4bを示す。レッグ開口部4は、端部に開口部周縁5を有し、各開口部4a、4bは、それぞれ異なる開口部周縁5a、5bを有する。開口部周縁5は、例えばクロッチ部3と離間する。
【0039】
<パッド6>
パッド6は、クロッチ部3に配置される。例えば図2(a)及び図2(b)に示すように、パッド6は、クロッチ部3から開口部周縁5まで延在するように配置される。パッド6として、例えば耐水性を有する材料が用いられ、洗濯により複数回使用することができる。パッド6は、肌対向面側に例えばコットン素材等の吸水材が配置され、その反対面側に例えばポリエステル等の防漏材が配置される。なお、「肌対向面」は、インナーパンツ1の内面を示す。
【0040】
パッド6は、例えば前身頃パッド部6aと、後身頃パッド部6bとを含む。前身頃パッド部6aは、性器部分をカバーするように前身頃身生地部2aに配置される。後身頃パッド部6bは、臀部をカバーするように後身頃身生地部2bに配置される。
【0041】
パッド6は、例えばクロッチ部3からレッグ開口部4の周縁に延在するように配置される。より具体的には、パッド6は、クロッチ部3から太もも内側右脚側の開口部周縁5aまで延在する右脚パッド部6cと、クロッチ部3から太もも内側左脚側の開口部周縁5bまで延在する左脚パッド部6dとを含む。
【0042】
<張力伝達部7>
張力伝達部7は、例えば図1(a)に示すように、各開口部4a、4bの開口部周縁5に配置された右側伝達部7a及び左側伝達部7bを含む。張力伝達部7は、右脚と左脚のそれぞれの開口部周縁5a、5bに配置され、図3(c)に示すように、左脚における張力伝達部7bは、開口部周縁5bの内部から外部に延在する張力印加部7biを含む。右脚においても同様である。以下、右側伝達部7a及び左側伝達部7bに共通する内容は、張力伝達部7として説明する。
【0043】
張力伝達部7は、例えば図4(c)に示すように、前身頃張力伝達部7baと、後身頃張力伝達部7bbとを含む。張力印加部7biは、前身頃張力伝達部7baと後身頃張力伝達部7bbとの間に設けられる。図3(c)に示すように、張力伝達部7(図3(c)では左側伝達部7b)は、開口部周縁5(図3(c)では左側開口部周縁5b)のギャザー(図3(c)ではギャザーを図示しないが、図4(c)のように開口部周縁5はギャザーを形成する。)の内側に挿通して配置される。図4(c)では、左脚の前身頃部分5ba、左脚の後身頃部分5bbを挿通して配置される張力伝達部7を前身頃張力伝達部7ba、後身頃張力伝達部7bbとして図示している。張力伝達部7には、開口部周縁5の内部から外部に延在する張力印加部7biを含む。張力伝達部7は、例えば平ロープ素材からなる。例えば図3(c)に示すように、張力印加部7biから印加された力は、張力伝達部7bを伝達してパッド部6dの端部6duを含むパッド6を身体へ向かって押し当てる。このように、前身頃張力伝達部7baと後身頃張力伝達部7bbとの間に張力印加部7biが設けられることで、太もも内側の各パッド部6c、6dに対して矢状面に垂直外側方向に力を印加することができる。即ち、太もも内側の各パッド部6c、6dを身体へ向かって押し当てることができる。これにより、太ももを伝って垂れ落ちる生理による経血がズボンに滲むおそれが低減される。なお、図3(c)は左脚側の図として記載しているが、右脚側も同様である。
【0044】
<張力印加部7bi>
張力伝達部7は、開口部周縁5の内部から外部に延在する張力印加部7biを含む。張力印加部7biは、例えば前身頃張力伝達部7ba、及び後身頃張力伝達部7bbと一体に形成され、折り返し形状を有する。図3(c)に示すように、張力印加部7biは、張力伝達部7の一部から構成される。これにより、後述するインナーパンツ接続用フック101を取外し可能に係合することが可能となる。
【0045】
張力印加部7biは、前身頃張力伝達部7baと、後身頃張力伝達部7bbの間に設けられる。これにより、張力印加部7biに印加された力は、前身頃張力伝達部7baと後身頃張力伝達部7bbの両方に伝達することが可能となる。張力印加部7biは、前身頃張力伝達部7baの一部と後身頃張力伝達部7bbの一部を縫製又は接着により接合することで形成してもよい。
【0046】
図5(b)に示すように、前身頃張力伝達部7baと後身頃張力伝達部7bbをリングゴム12で束ねることで、張力印加部7biから印加した力を止めた後でも、リングゴム12にて保持することがでる。これにより、太ももの内側に配置されたパッドを身体へ向かって押し当てる力を保持することができる。
【0047】
張力伝達部7は、10N荷重伸びが50%以下である。漏れ防止パッドを平ゴム等の伸縮性の高い素材にて身体側にパッドを押し当てることは、特許文献1をはじめとして従来から行われている。パンツ等で用いられる平ゴムでは、伸びは150%程度の伸縮性の高い素材が用いられるが、本実施形態におけるインナーパンツ1に係る張力伝達部7は、張力印加部7biに印加する力を調整することによりパッド6を太もも等の身体に適切な力で押し当てることが出来るため、伸縮性は低いほうが好ましい。「10N荷重伸び」とは、JIS L1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」のJIS法(A法)に準じて測定される10N荷重時の伸び(%)を意味する。
【0048】
<吸水ポケット10>
パッド6は、肌対向面に配置された吸水材と、肌対向面とは異なる反対面に配置された防漏材と、吸水材を内側に折り返した形状を有する吸水ポケット10と、を含む。図3(c)に示すように、パッド部6dは、パッド6の肌対向面に配置された吸水材側を内側に折り返すことで、吸水ポケット10(図3(c)では左側吸水ポケット10d)を構成する。これにより、太ももを伝って垂れ落ちる経血の量が多い場合でも、ポケット構造に溜めることでズボンに滲むおそれを低減させることが可能になる。
【0049】
身生地部2は、メッシュ生地であり、パッド6は、身生地部2の外側に配置される。パッド6は身生地部2の、内側に配置されてもよいし、外側に配置されてもよいが、パッド6が身生地部2の外側に配置されることにより、肌対向面はすべてメッシュ素材となり、身生地部2の広範囲で蒸れを防止することが可能となる。
【0050】
パッド6は、クロッチ部3及び身生地部2に縫製又は接着により接合される。パッド6は身生地部2に、例えば縫製又は接着により接合される。縫製によれば、メッシュ素材である身生地とパッド6が一体の立体構造にて一体加工することができ、身体に安定的にフィットさせることが可能となる。
【0051】
インナーパンツ1をズボンの内側への装着した際に、ズボンの前開きと合わせるように前開き部2csを備えても良い。
【0052】
(実施形態:インナーパンツ20)
図4(b)を参照して、本実施形態であるインナーパンツ20の一例を説明する。図4(a)は、上述したインナーパンツ1であり、比較のために配置した図である。図4(b)に示すように、本実施形態では、インナーパンツ1の構成に加えて、前後結合帯8を有する。
【0053】
前後結合帯8は、例えば伸縮性のあるゴムベルトからなり、前身頃身生地部2aと後身頃身生地部2bとを接続する。この前後結合帯8により、前身頃身生地部2aと後身頃身生地部2bは一定の距離を確保できるため、装着時にレッグ開口部4を視認が容易になり利便性が向上する。
【0054】
(実施形態:インナーパンツ30)
インナーパンツは、図4(a)のように、前身頃身生地部2aと後身頃身生地部2bとがインナーパンツの裾において接続されている形態でもよいし、図4(c)のように、前身頃身生地部2aと後身頃身生地部2bと離間した形態であってもよい。前身頃身生地部2aと後身頃身生地部2bと離間した形態では、皮膚の表面から蒸発した水蒸気が通過する領域を多くとることができ、蒸れを防止することが可能となる。
【0055】
インナーパンツ30の構成では、張力伝達部7は開口部周縁5のギャザーから引き出された形態となる。張力印加部7biに印加された力は、前身頃張力伝達部7baと後身頃張力伝達部7bbの両方に伝達される。
【0056】
(実施形態:インナーパンツ付きズボン100)
図6及び図7を参照して、本実施形態であるインナーパンツ付きズボン100の一例を説明する。図6(a)は、本実施形態におけるインナーパンツ付きズボンの一例を示す正面図であり、図6(b)は、本実施形態におけるインナーパンツ付きズボンの背面面図であり、図6(c)は、本実施形態におけるインナーパンツ付きズボンの右側面図である。図7(a)は、本実施形態における貫通ベルトの一例を示す図であり、図7(b)は、本実施形態における貫通ベルトをインナーパンツに装着した一例を示す図である。
【0057】
インナーパンツ付きズボン100は、インナーパンツ1を内部に有し、股止まり部と膝部との間の高さに貫通孔104が形成されたズボンと、貫通孔104を挿通して配置される貫通ベルト102と、を備え、インナーパンツの張力印加部7biが、貫通孔104を介して貫通ベルト102と接続される。
【0058】
<貫通孔104>
図7(b)に示すように、本実施形態ではズボンの身生地部106aに貫通孔104aがあいており、貫通ベルト102aを挿通して配置される。貫通孔104aは、ズボンの股止まり部と膝部との間の高さに形成されている。貫通孔104aは、ズボンの左右側であることが好ましいが、ズボンを履いた状態で側臥位姿勢となった際に、インナーパンツ接続用フック101が太ももに押し当てられることを防ぐために、ズボンの前方側に配置してもよい。
【0059】
<被係合部9>
インナーパンツ付きズボン100の内部に配置されるインナーパンツ1は、上端に配置された被係合部9を含む。ズボンは、被係合部9と係合する係合部105を含む。係合部105は、例えばズボンの内側に配置される。この場合、インナーパンツ1は、被係合部9及び係合部105を介し、ズボンの内部に吊り下げられた状態で構成される。図6(a)に示すように、例えばインナーパンツ1の上端には、複数の被係合部9(例えば右側被係合部9ar及び左側被係合部9al)が配置される。また、ズボンの身生地部106には、被係合部9に係合する係合部105(例えば右側係合部105ar、左側係合部105al)が配置されている。これにより、インナーパンツ1は、ズボンと着脱自在に構成される。
【0060】
被係合部9及び係合部105として、点ファスナーや面ファスナーのような、一対で係合する公知の係合部材を用いることができる。特に、係合部材としてドットボタンを用いた場合、被係合部9及び係合部105の配置箇所に自由度を持たせた上で、インナーパンツ1とズボンとの着脱を容易に実現することができる。
【0061】
<インナーパンツ接続用フック101>
インナーパンツ付きズボン100に形成された貫通孔104を挿通して配置される貫通ベルト102は、張力印加部7biと接続するインナーパンツ接続用フック101を含む。図7(b)に示すように、貫通ベルト102aのズボン内の端部には、インナーパンツ接続用フック101aが係合される。
【0062】
<貫通ベルト102>
図7(b)に示すように、貫通ベルト102aは、貫通孔104aを通るように配置される。インナーパンツ接続用フック101は、貫通孔104よりも大きい形状とすることが好ましい。このようにすることで、貫通孔104から貫通ベルト102が抜けてしまうことを防ぐことができる。
【0063】
<バックル103>
貫通ベルト102は、ズボンの外側に配置したバックル103と係合する。図7(b)に示すように、貫通ベルト102のズボンの外側には、バックル103が配置されており、貫通ベルト102はバックル103と係合して、多段階の任意の長さで固定することができる。
【0064】
貫通孔104には貫通ベルト102が挿通して配置されており、インナーパンツ接続用フック101は、インナーパンツ1の張力印加部に係合される。これにより、ズボンの外側から貫通ベルト102を引っ張ることで、インナーパンツ1のパッド6に力を伝達でき、パッド6を身体へ向かって押し当てることができ、その結果、太ももを伝って垂れ落ちる生理による経血がズボンに滲むおそれが低減できる。
【0065】
本実施形態におけるインナーパンツ付きズボン100によれば、例えば立位姿勢の場合と、座位姿勢の場合とで、バックル103により貫通ベルト102の位置を調整することで、ズボンを履いた状態で漏れ防止パッドの締め付け力を任意に調整できることが可能となる。
【0066】
本実施形態によれば、パッド6は、クロッチ部3から開口部周縁5まで延在するように配置される。また、張力伝達部7は、開口部周縁5の内部から外部に延在する張力印加部7biを含む。即ち、張力印加部7bi及び張力伝達部7により、パッド6に任意の張力を伝達することが出来る。このため、パッド6を太もも等の身体に適切な力で押し当てることが出来る。これにより、体液の横漏れを抑制することを実現することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態によれば、前身頃張力伝達部7baと後身頃張力伝達部7bbとの間に張力印加部7biが設けられる。このため、パッド6を身体へ向かって押し当てることができる。これにより、太ももを伝って垂れ落ちる生理による経血がズボンに滲むおそれが低減される。
【0068】
また、本実施形態によれば、張力印加部7biは、開口部周縁5の内部から外部に延在し折り返される形状とする。これにより、インナーパンツ接続用フック101等のような、ズボンの一部との係合を可能とし、インナーパンツ接続用フック101を介して張力を印加することが可能となる。
【0069】
また、本実施形態によれば、張力伝達部7は伸縮性の低い紐状素材にて構成される。張力印加部7biに印加された力は、張力伝達部7に直接的に伝わり、そして、太ももの内側に配置されたパッド6を身体へ向かって押し当てることが可能となる。
【0070】
また、本実施形態によれば、パッド6の先端部は折り返すことでポケット構造を形成する。このため、太ももを伝って垂れ落ちる経血の量が多い場合でも、ポケット構造により受け止めることでズボンに滲むおそれが低減される。
【0071】
また、本実施形態によれば、身生地部2はメッシュ素材であり、かつ、パッド6は身生地の外側に配置されることにより、肌対向面はすべてメッシュ素材となり、蒸れを防止することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態によれば、パッド6は、クロッチ部3及び身生地部2に縫製又は接着して接合される。このため、メッシュ素材である身生地部2とパッド6が一体の立体構造にて一体加工することができ、身体に安定的にフィットさせることが可能となる。
【0073】
また、本実施形態によれば、インナーパンツ1は、ズボンの内側に装着され、インナーパンツ1の張力印加部7biは、ズボンを貫通する貫通ベルト102と接続される。このため、ズボンを履いた状態にて、インナーパンツ1のパッド6への張力を調整することができる。これにより、ズボンを履いた状態にて、太ももの内側に配置されたパッド6を身体へ向かって押し当てる力を調整することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態によれば、インナーパンツ1は、ズボンの内側に配置された係合部105と係合する被係合部9を含む。このため、インナーパンツ1は、ズボンとの位置関係が適切に固定される。また、股部へのクロッチ部3のパッド6を押し当てることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態によれば、貫通ベルト102は、インナーパンツ接続用フック101により連結される。これにより、ズボンを履いた状態にて、インナーパンツ1のパッド6への張力を調整する機能を有しつつ、ズボンとインナーパンツ1が取外し可能となる。
【0076】
また、本実施形態によれば、貫通ベルト102は、ズボンの外側に配置したバックル103と係合される。これにより、任意の多段階の長さで貫通ベルト102を固定することができる。
【0077】
なお、上述した実施形態におけるインナーパンツ1、及びインナーパンツ付きズボン100は、生理や尿漏れのケアとして用いられるほか、例えば産褥用途、医療用途等に用いられてもよい。その場合においても、体液の横漏れを抑制することを実現することが可能となる。
【0078】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。このような新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1 : インナーパンツ
2 : 身生地部
2a : 前身頃身生地部
2b : 後身頃身生地部
2cs : 前開き部
3 : クロッチ部
4 : レッグ開口部
5 : 開口部周縁
6 : パッド
6a : 前身頃パッド部
6b : 後身頃パッド部
6c : 右脚パッド部
6d : 左脚パッド部
7 : 張力伝達部
7ba : 前身頃張力伝達部
7bb : 後身頃張力伝達部
7bi : 張力印加部
8 : 結合帯
9 : 被係合部
10 : 吸水ポケット
12 : リングゴム
100 : インナーパンツ付きズボン
101 : インナーパンツ接続用フック
102 : 貫通ベルト
103 : バックル
104 : 貫通孔
105 : 係合部
106 : ズボンの身生地部



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7