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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059329
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】顕微鏡システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20240423BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20240423BHJP
   G02B 21/18 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/36
G02B21/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166945
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平賀 千尋
(72)【発明者】
【氏名】日下 健一
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AA13
2H052AB05
2H052AB19
2H052AB27
2H052AC05
2H052AC12
2H052AC13
2H052AC14
2H052AF14
2H052AF22
2H052AF25
(57)【要約】
【課題】顕微鏡の視野内に存在する対象物を見逃すことなく素早く発見する。
【解決手段】顕微鏡システム1は、対象物を含む試料を試料の鉛直上方から観察する顕微鏡100と、試料を試料の鉛直上方から撮影するカメラ200と、試料を試料の鉛直下方から撮影するカメラ300と、カメラ200で取得した第1画像とカメラ300で取得した第2画像の少なくとも一方に対して物体検出を行い、対象物の存在が推定された存在領域を特定する情報を含む補助画像を出力する処理装置500と、顕微鏡100の光路上に形成される試料の光学画像上に処理装置500が出力した補助画像を重ねるARディスプレイ400と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を含む試料を前記試料の鉛直上方から観察する顕微鏡と、
前記試料を前記試料の鉛直上方から撮影する第1イメージング装置と、
前記試料を前記試料の鉛直下方から撮影する第2イメージング装置と、
前記第1イメージング装置で取得した第1画像と前記第2イメージング装置で取得した第2画像の少なくとも一方に対して物体検出を行い、前記対象物の存在が推定された存在領域を特定する情報を含む補助画像を出力する処理装置と、
前記顕微鏡の光路上に形成される前記試料の光学画像上に前記処理装置が出力した前記補助画像を重ねる重畳装置と、を備える
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記処理装置は、前記第1画像と前記第2画像に対して前記物体検出を行い、前記存在領域を特定する前記情報を含む前記補助画像を出力する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項3】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記補助画像に含まれる前記情報が、前記顕微鏡システムの設定に応じて、少なくとも、前記第1画像に対する前記物体検出により前記存在領域を特定した第1情報と、前記第2画像に対する前記物体検出により前記存在領域を特定した第2情報と、前記第1画像に対する前記物体検出と前記第2画像に対する前記物体検出の両方により前記存在領域を特定した第3情報、の間で切り替わる
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項4】
請求項3に記載の顕微鏡システムにおいて、さらに、
少なくとも、前記試料の鉛直上方からの撮影による第1サポートと、前記試料の鉛直下方からの撮影による第2サポートと、前記試料の鉛直上方からの撮影と前記試料の鉛直下方からの撮影による第3サポート、の中からの利用者による選択を受け付ける操作装置を備え、
前記処理装置は、前記利用者が前記操作装置を用いて行う選択に応じて、前記補助画像に含まれる前記情報を前記第1情報、前記第2情報、前記第3情報の間で切り替える
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項5】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記処理装置は、前記第2画像に対して前記顕微鏡の光学倍率に応じた範囲をトリミングして拡大するデジタルズーム処理を実行する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項6】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記処理装置は、前記顕微鏡の光学倍率に応じたデジタルズーム倍率を、前記第2イメージング装置に設定する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項7】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記顕微鏡は、
前記試料の鉛直下方から前記試料に照明光を照射する第1照明装置と、
前記試料の鉛直上方から前記試料に照明光を照射する第2照明装置と、を備え、
前記第1イメージング装置は、前記第1照明装置の発光期間中に前記試料を撮影し、
前記第2イメージング装置は、前記第2照明装置の発光期間中に前記試料を撮影する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項8】
請求項7に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記処理装置は、前記第1照明装置と前記第2照明装置が前記試料に前記照明光を交互に照射するように、前記第1照明装置と前記第2照明装置を制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項9】
請求項8に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記処理装置は、前記第1照明装置の発光期間が前記第2照明装置の発光期間よりも長くなるように、前記第1照明装置と前記第2照明装置を制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項10】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記顕微鏡は、
前記試料の鉛直下方から前記試料に可視光を照射する第1照明装置と、
前記試料の鉛直上方から前記試料に非可視光を照射する第2照明装置と、を備え、
前記第1イメージング装置は、前記可視光で前記試料を撮影し、
前記第2イメージング装置は、前記非可視光で前記試料を撮影する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項11】
請求項10に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記第2照明装置が前記試料に照射する前記非可視光は、近赤外光を含む
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項12】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記試料は、卵胞液であり、
前記対象物は、卵子であり、
前記重畳装置は、前記卵胞液から前記卵子を見つけ出す検卵作業中に、前記卵子が存在する領域を特定する情報を含む前記補助画像を、前記卵胞液の光学画像上に重畳する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項13】
請求項12に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記顕微鏡は、実体顕微鏡である
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項14】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記処理装置が行う前記物体検出は、深層学習で前記対象物を学習したニューラルネットワークを用いた学習済みモデルを用いて行われる
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項15】
請求項14に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記学習済みモデルの学習に用いられた教師データは、画像中の放射冠細胞に囲まれた卵子がラベル付けされた画像データである
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
晩婚化・晩産化が進む現在、不妊治療を受ける患者の数は増加しており、生殖補助医療(ART:Assisted Reproductive Technology)の需要もますます高まっている。
【0003】
ARTは、体外受精(IVF:In vitro fertilization)や、卵細胞質内精子注入法(ICSI:Intracytoplasmic sperm injection)に代表される顕微授精など、ヒトから取り出した卵子と精子を体外で受精させる技術の総称であり、採取した精子を子宮に注入し体内で卵子と受精させる一般的な人工授精とは区別される。
【0004】
ARTに関連する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、ARTの一種である顕微授精に好適な顕微鏡が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/150689号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、卵子と精子を体外で受精させるARTでは、予め母体から卵子を取り出す必要がある。このため、医師が卵巣内の卵胞から卵胞液を採取し(これを採卵という。)、胚培養士が採取された卵胞液から卵子を見つけ出して回収する(これを検卵という)、といった作業が行われる。
【0007】
採卵において採取された卵胞液中から卵子を見逃すことなく見つけ出して回収することは容易ではない。これは、卵胞から採取された卵胞液には卵子以外にも血液やその他の組織片など様々な細胞が含まれているためである。このため、卵子を正しく認識して回収することは熟練者であっても必ずしも容易ではなく、経験の浅い胚培養士にとっては困難な作業である。
【0008】
また、検卵には実体顕微鏡が用いられるため、卵子を含む卵胞液は、検卵中インキュベータから取り出されて室内の雰囲気下で暴露される。卵子が暴露される期間は短ければ短いほどよい。従って、胚培養士には、検卵を可能な限り素早く、且つ、確実に行うことが求められる。
【0009】
検卵を例に説明したが、上記のような顕微鏡の視野内から素早く確実に対象物を発見するという技術的な課題は、検卵に限らず、生体試料中から任意の対象物を探し出す作業において生じ得る。以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、顕微鏡の視野内に存在する対象物を見逃すことなく素早く発見することを可能とする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る顕微鏡システムは、対象物を含む試料を前記試料の鉛直上方から観察する顕微鏡と、前記試料を前記試料の鉛直上方から撮影する第1イメージング装置と、前記試料を前記試料の鉛直下方から撮影する第2イメージング装置と、前記第1イメージング装置で取得した第1画像と前記第2イメージング装置で取得した第2画像の少なくとも一方に対して物体検出を行い、前記対象物の存在が推定された存在領域を特定する情報を含む補助画像を出力する処理装置と、前記顕微鏡の光路上に形成される前記試料の光学画像上に前記処理装置が出力した前記補助画像を重ねる重畳装置と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
上記の態様によれば、顕微鏡の視野内に存在する対象物を見逃すことなく素早く発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る顕微鏡システムを例示した図である。
図2】容器内の試料を例示した図である。
図3図2に示す試料観察時における補助画像の表示例を示した図である。
図4】容器内の試料を別の例を示した図である。
図5図4に示す試料観察時における補助画像の表示例を示した図である。
図6】容器内の試料をさらに別の例を示した図である。
図7図6に示す試料観察時における補助画像の表示例を示した図である。
図8】ARサポート設定の変更例を示した図である。
図9】第2の実施形態に係る顕微鏡システムを例示した図である。
図10図9に示す顕微鏡システムにおける照明と露光に関するタイミングチャートの一例を示した図である。
図11】第3の実施形態に係る顕微鏡システムの照明光の波長について説明するための図である。
図12】第4の実施形態に係る顕微鏡システムを例示した図である。
図13】処理装置を実現するためのコンピュータのハードウェア構成を例示した図である。
図14】教師データについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る顕微鏡システム1を例示した図である。顕微鏡システム1は、接眼レンズ111を覗いて試料を観察するためのシステムであり、図1に示すように、顕微鏡100と、2つのカメラ(カメラ200、カメラ300)と、ARディスプレイ400と、処理装置500を備えている。以下では、検卵に用いる場合を例にして顕微鏡システム1を説明する。この場合、試料は、容器Cに収容された卵胞液である。顕微鏡システム1は、卵胞液の中から卵子を見つけ出す利用者の作業を接眼レンズ111の視野内へのAR表示を用いて支援する。
【0014】
顕微鏡100は、卵子を含む卵胞液を試料の鉛直上方から観察する正立顕微鏡である。顕微鏡100は、より具体的には、双眼鏡筒110を備える実体顕微鏡であり、対物レンズ102によって作られる互いに平行な2つの観察光路(右目用光路と左目用光路)を有している。顕微鏡100は、接眼レンズ111を覗くことで試料を立体的に観察することが可能なため、検卵における卵子のピックアップ作業に好適である。
【0015】
カメラ200とカメラ300は、それぞれ撮像素子を備えたデジタルカメラである。撮像素子は、例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなどの二次元イメージセンサである。
【0016】
カメラ200は、試料を試料の鉛直上方から撮影する第1イメージング装置である。カメラ200は、対物レンズ102と接眼レンズ111の間の光路上に配置されたビームスプリッタ201を用いることで、顕微鏡100と同じ方向から試料を撮影する。一方で、カメラ300は、試料を試料の鉛直下方から撮影する第2イメージング装置である。カメラ200とカメラ300で取得した画像は、処理装置500へ出力される。
【0017】
処理装置500は、カメラ200で取得した第1の画像とカメラ300で取得した第2の画像の少なくとも一方に基づいて補助画像を生成し、生成した補助画像をARディスプレイ400へ出力する。補助画像は、対象物の存在が推定された存在領域を特定する情報を含んでいる。具体的には、処理装置500は、第1の画像と第2の画像の少なくとも一方に対して物体検出を行い、対象物(この例では卵子)の存在が推定された存在領域を特定する情報を含む補助画像を出力する。
【0018】
処理装置500が行う物体検出は、深層学習で対象物を学習したニューラルネットワークを用いた学習済みモデルを用いて行われる。なお、学習済みモデルは、CNNなどのニューラルネットワークを用いていればよく、さらに、SVMなどを用いてもよい。検卵作業を行う例では、処理装置500は、卵子を学習した学習済みモデルを用いて物体検出を行えばよい。処理装置500は、第1の画像と第2の画像の少なくとも一方に対して物体検出を行い、卵子の存在が推定された存在領域を特定する情報を含む補助画像を出力すればよい。ただし、後述するように、様々な環境で高い精度の推定を行うためには、第1の画像と第2の画像のそれぞれに対して物体検出を行い、存在領域を特定する情報を含む補助画像を出力することが望ましい。なお、物体検出のアルゴリズムは、特に限定しない。既知の任意のアルゴリズムが採用され得る。
【0019】
ARディスプレイ400は、顕微鏡100の光路上に形成される試料の光学画像上に処理装置500が出力した補助画像を重ねる重畳装置である。より具体的には、ARディスプレイ400は、卵胞液から卵子を見つけ出す検卵作業中に、卵子が存在する領域を特定する情報を含む補助画像を、卵胞液の光学画像上に重畳する。これにより、検卵作業中の胚培養士が卵子を探す作業を支援する。
【0020】
ARディスプレイ400は、例えば、液晶ディスプレイであるが、例えば、デジタルミラーデバイスなどのMEMSであってもよい。ARディスプレイ400は、図示しない投影光学系とともに、ARディスプレイ400に表示した補助画像を観察光路上の像面に投影する投影装置を構成してもよい。なお、観察光路上の像面は、試料の光学画像が形成される面であり、例えば、結像レンズ112と接眼レンズ111の間にある。
【0021】
図1では、ARディスプレイ400は観察光路から分岐した光路上に配置され、ARディスプレイ400から出射した光が観察光路上に配置されたビームスプリッタ401によって観察光路に合流する例を示した。しかしながら、ARディスプレイ400は、像面に補助画像を重畳するものであればよく、投影装置を構成するものに限らない。例えば、ARディスプレイ400が透過型液晶ディスプレイであれば、像面に配置されてもよい。この場合、ARディスプレイ400が像面に直接表示した補助画像が光学画像上に重なることになる。
【0022】
以下、顕微鏡100の構成についてさらに詳細に説明する。顕微鏡100は、ステージ101と、対物レンズ102と、コンデンサレンズ103と、結像レンズ104と、双眼鏡筒110と、照明装置120と、照明装置130と、ズームレンズ140を備えている。
【0023】
照明装置120は、試料の鉛直下方から試料に照明光を照射する第1照明装置である。照明装置120は、光源121とビームスプリッタ122を備えている。光源121から出射した照明光は、ビームスプリッタ122及びコンデンサレンズ103を経由して、試料を下方から照明する。
【0024】
顕微鏡100では、照明装置120による透過照明光を利用して試料を観察する。これは、対象物である卵子が透明な位相物体だからである。具体的には、試料を透過し対物レンズ102へ入射した光は、ズームレンズ140へ経由して双眼鏡筒110に入射し、双眼鏡筒110に設けられた結像レンズ112によって結像する。これにより、顕微鏡システム1の利用者は、接眼レンズ111を覗くことで、結像レンズ112が像面に形成した試料の光学画像を接眼レンズ111で拡大して観察することができる。
【0025】
また、カメラ200でも、照明装置120による透過照明光を利用して試料を撮影する。透過光を利用する理由は、顕微鏡100と同様である。具体的には、試料を透過し対物レンズ102へ入射した光の一部が、ズームレンズ140とビームスプリッタ201を経由してカメラ200へ入射し、カメラ200での撮影に利用される。
【0026】
照明装置130は、試料の鉛直上方から試料に照明光を照射する第2照明装置である。照明装置130は、光源131とビームスプリッタ132を備えている。光源131から出射した照明光は、ビームスプリッタ132、ズームレンズ140及び対物レンズ102を経由して、試料を上方から照明する。
【0027】
カメラ300では、照明装置130による透過照明光を利用して試料を撮影する。透過光を利用する理由は、顕微鏡100と同様である。具体的には、試料を透過しコンデンサレンズ103へ入射した光を結像レンズ104でカメラ300上に結像する。カメラ300は、結像レンズ104経由で入射した光を利用して試料を撮影する。
【0028】
以上の様に構成された顕微鏡システム1は、試料を鉛直上方から撮影するカメラ200と試料を鉛直下方から撮影するカメラ300を有している。このように2方向、特に、鉛直上方と下方の2方向にカメラを有することで、顕微鏡システム1の利用者は、顕微鏡100の視野内に存在する対象物(卵子)を見逃すことなく素早く発見することが可能である。以下、この点について図2から図7を参照しながら説明する。
【0029】
図2は、容器内の試料を例示した図である。図2は、卵胞液S2内において卵子S1と組織片S3が観察方向(鉛直方向)において重なっていない場合を例示している。この場合、図3に示すように、カメラ200で取得した画像D1とカメラ300で取得した画像D2は、どちらも卵子S1を比較的高いコントラストで捉えることができる。このため、処理装置500では、どちらの画像に対して物体検出を行っても卵子S1を高い精度で検出可能であり、図3に示すような卵子S1の位置や大きさを示すバウンディングボックスを含む補助画像D3を生成することができる。
【0030】
ARディスプレイ400が処理装置500から出力された補助画像D3を試料Sの光学画像に重畳することで、利用者が接眼レンズ111を覗いてみる図3に示す顕微鏡100の視野F内において、光学画像とバウンディングボックスBが重なって表示される。これにより、胚培養士などの利用者は、顕微鏡100の視野内に存在する卵子S1を見逃すことなく素早く発見することができる。
【0031】
なお、図2に示すように、組織片S3が卵子S1を遮る位置にない場合には、光学画像だけでも利用者は卵子S1を発見可能である。ただし、バウンディングボックスBが表示されることでより素早く卵子S1の存在に気付くことができる。
【0032】
また、組織片S3が重なっていない場合でも、卵胞液S2に血液などが混じっているなどの理由で卵子S1が見えづらいといった事態も生じ得る。処理装置500が行う物体検出に深層学習などで十分に卵子の特徴を学習したモデルを利用することで、人間であれば熟練者でなければ卵子と特定することが難しい画像からでも高精度に卵子の存在を推定することができる。従って、組織片S3が卵子S1を遮る位置にない場合でも、補助画像を用いることで利用者の検卵作業を支援することができる。
【0033】
図4は、容器内の試料の別の例を示した図である。図4は、卵胞液S2内において卵子S1と組織片S3が観察方向において重なっている場合、特に、卵子S1に対して組織片S3が鉛直上方に位置する場合を例示している。卵子S1は採取された卵胞液S2内において、底面に沈んでいることが多い。これに対して、検卵では、卵子S1をピックアップするために卵子S1を立体視可能な実体顕微鏡が用いられるため、観察は鉛直上方向から行われる。このような観察環境においては、卵胞液S2の表面に浮遊している組織片S3が容器C底面付近に沈んだ卵子S1の上方に位置すると、光学画像上では、卵子S1が組織片S3の影に隠れてしまい、全く見えない又はコントラスト良く観察できない。
【0034】
この点は、図5に示すように、カメラ200で取得した画像D11についても同様である。しかしながら、図5に示すように、カメラ300で取得した画像D12では、卵子S1と組織片S3の深さ方向の位置関係が画像D11とは逆転しているため、卵子S1を比較的高いコントラストで捉えることができる。従って、処理装置500では、少なくとも画像D12に対する物体検出を行うことで卵子S1を高い精度で検出可能であり、図5に示すような卵子S1の位置や大きさを示すバウンディングボックスを含む補助画像D13を生成することができる。
【0035】
ARディスプレイ400が処理装置500から出力された補助画像D13を試料Sの光学画像に重畳することで、利用者が接眼レンズ111を覗いてみる図5に示す顕微鏡100の視野F内において、光学画像とバウンディングボックスBが重なって表示される。これにより、胚培養士などの利用者は、光学画像上では組織片S3の存在によって卵子S1が視認しづらい状態であっても卵子S1の存在に容易に気付くことが可能である。このため、組織片S3などをよけて卵子S1をピペットなどで素早く採取することが可能できる。
【0036】
図6は、容器内の試料のさらに別の例を示した図である。図6は、卵胞液S2内において卵子S1の鉛直上下両方向に組織片(組織片S3、組織片S4)が重なっている場合を例示している。組織片S4は卵子S1と同様に底面に沈んでいる場合があるため、図6に示すように、卵子S1の上下に組織片が位置する状況も起こり得る。このような観察環境においては、図7に示すように、光学画像上だけではなくカメラで撮影した画像(画像D21、画像D22)上でも、卵子S1が組織片S3の影に隠れてしまい、コントラスト良く観察できない。
【0037】
しかしながら、処理装置500では、卵子S1の一部でも見えれば卵子S1の存在を推定可能である。また、画像D21、画像D22に対する物体検出で得られた存在領域の確率が低い場合であっても、2枚の画像から得られた存在領域が実質的に一致している場合には、それぞれで算出された確率よりも高い確率で卵子が存在すると見做し得る。このように、処理装置500は、上下両方から撮影した画像に対するそれぞれの物体検出結果を合成して存在領域(卵子S1の位置や大きさ)を特定してもよい。処理装置500は、特定した卵子S1の位置や大きさを示すバウンディングボックスを含む補助画像D23を生成してもよい。
【0038】
ARディスプレイ400が処理装置500から出力された補助画像D23を試料Sの光学画像に重畳することで、利用者が接眼レンズ111を覗いてみる図7に示す顕微鏡100の視野F内において、光学画像とバウンディングボックスBが重なって表示される。これにより、胚培養士などの利用者は、光学画像上では組織片S3、S4の存在によって卵子S1が視認しづらい状態であっても卵子S1の存在に容易に気付くことが可能である。このため、組織片S3、S4などをよけて卵子S1をピペットなどで素早く採取することが可能できる。
【0039】
以上の例で示すように、卵子をコントラスト良く撮影できる方向は、試料の状態によって異なり得る。この点に関して、顕微鏡システム1では、鉛直上方から撮影するカメラ200と鉛直下方から撮影するカメラ300の両方を備えることで、コントラスト良く卵子を撮影できる可能性を大幅に高めることができる。さらに、顕微鏡システム1では、カメラ200で取得した画像とカメラ300で取得した画像の両方に対して物体検出を行って存在領域を特定してもよい。図2図4図6では、卵子はシャーレの下に沈んでいる例で説明した。卵子は卵胞液よりも重いためシャーレの下側にいることが多いが、上方にいることもある。その場合、卵胞液に血液が混入していると卵子を下側から見るより、上側から見る方が見やすい場合もありえる。このような場合、鉛直下方から撮影するカメラ200と鉛直下方から撮影するカメラ300の両方を持つことでより卵子の見落としを防ぐことができる。これにより、特に、それぞれの画像単体からでは高い精度の検出結果が得られにくい環境においても、2枚の画像の物体検出結果を用いてそれぞれの画像から得られる検出結果よりも高精度な結果を得ることができる。従って、顕微鏡システム1によれば、試料内における卵子の状況によらず、卵子を高い確率で素早く発見することが可能であり、従来に比べて卵子の見逃しを大幅に減らすことができる。
【0040】
本実施形態では、カメラ200で撮影した画像とカメラ300で撮影した画像の両方に対して物体検出を行う例を示したが、物体検出結果を用いた検卵支援の内容は、適宜切り替わってもよい。即ち、補助画像に含まれる情報が、顕微鏡システム1の設定に応じて、少なくとも、第1画像に対する物体検出により存在領域を特定した第1情報と、第2画像に対する物体検出により存在領域を特定した第2情報と、第1画像に対する物体検出と第2画像に対する物体検出の両方により存在領域を特定した第3情報、の間で切り替わってもよい。これらは、例えば、予め決められた作業内容や観察対象に応じて自動的に切り替わってもよい。例えば、検卵のように対象物が静止している場合には、処理装置500は、第3情報を含む補助画像を生成してもよい。一方で、精子の選別作業のように対象物(精子)が動くものの場合には、処理装置500は、第1情報又は第2情報を含む補助画像を生成することで、処理装置500の計算量を抑えてもよい。
【0041】
また、このような切り替えは利用者の操作に従って行われてもよい。顕微鏡システム1は、少なくとも、試料の鉛直上方からの撮影による第1サポートと、試料の鉛直下方からの撮影による第2サポートと、試料の鉛直上方からの撮影と前記試料の鉛直下方からの撮影による第3サポート、の中からの利用者による選択を受け付ける操作装置を備えてもよい。そして、処理装置500は、利用者が操作装置を用いて行う選択に応じて、補助画像に含まれる情報を上述した第1情報、第2情報、第3情報の間で切り替えてもよい。
【0042】
なお、操作装置は、例えば、処理装置500に接続される任意の入力装置であってもよく、例えば、キーボードやマウスなどであってもよい。また、操作装置は、顕微鏡100に設けられてもよく、例えば、接眼レンズ111を覗きながら操作しやすいように双眼鏡筒110に設けられてもよい。顕微鏡100に設けられた操作装置への入力を処理装置500へ出力することで、処理装置500が利用者による選択を検出してもよい。
【0043】
また、補助画像に現在のサポート設定を表す情報を含めることで、顕微鏡100の視野内にサポート設定を表示してもよい。図8は、サポート設定の変更例を示した図である。処理装置500は、顕微鏡システム1により検卵支援が行われているかどうかを示す情報C1と、検卵支援の種類を示す情報C2を含む補助画像を生成し、ARディスプレイ400へ出力してもよい。これにより、図8に示すように、利用者は、接眼レンズ111から目を離すことなく現在の支援状況を把握することができる。また、情報C2をソフトウェアボタンとして利用してもよい。情報C2を上述した操作装置(例えば、マウス)を用いて押下することで、図8に示すように、「上方」、「下方」、「両方」などサポート設定の種類が切り替わってもよい。例えば、処理装置500に接続されたマウスを操作することで、マウスポインターが視野内に表示されてもよく、マウスポインターを情報C2に合わせた状態でクリック操作を行うことでサポート設定が切り替わってもよい。
【0044】
(第2の実施形態)
図9は、本実施形態に係る顕微鏡システム2を例示した図である。本実施形態に係る顕微鏡システム2は、照明装置120と照明装置130の発光が処理装置500によって制御される点が、顕微鏡システム1とは異なっている。その他の点は、顕微鏡システム1と同様である。
【0045】
顕微鏡システム1では、検卵時に照明装置(照明装置120、照明装置130)の電源をONにすると、その後、照明装置(照明装置120、照明装置130)が常時発光し、顕微鏡100での観察と2方向からの撮影が同時に行われる例を示した。これに対して、顕微鏡システム2では、処理装置500が照明装置120と照明装置130を制御することで、照明装置120と照明装置130を同時に発光させない。この点が、顕微鏡システム1とは大きく異なっている。このような発光制御を行う理由は、反射光(迷光)による画像のコントラスト低下を避けるためである。
【0046】
図10は、図9に示す顕微鏡システム2における照明と露光に関するタイミングチャートの一例を示した図である。以下、図10を参照しながら、以下、顕微鏡システム2で行われる発光制御と露光制御について説明する。
【0047】
顕微鏡システム2では、処理装置500は、図10に示すように、照明装置120と照明装置130が試料に照明光を交互に照射するように、照明装置120と照明装置130を制御する。図10には、光源121と光源131が時間的に交互に発光している様子が示されている。さらに、処理装置500は、図10に示すように、カメラ200とカメラ300の露光期間を照明装置120と照明装置130の発光期間に合わせて制御する。つまり、カメラ200は、照明装置120の発光期間中に試料を撮影し、カメラ300は、照明装置130の発光期間中に試料を撮影する。
【0048】
照明装置130からの照明光の殆どは試料に照射される。しかし、一部の光は、試料に至る途中の光学素子で反射する。例えば、ズームレンズ140や対物レンズ102で反射した光(迷光)がビームスプリッタ201を反射してカメラ200に入射すると、透過照明を用いてカメラ200で撮影した試料の画像のコントラストが低下してしまう。なお、この点は、照明装置120から照明光を発光中にカメラ300で撮影する場合も同様である。
【0049】
画像のコントラストの低下は物体検出に悪影響を及ぼし兼ねないため、迷光によるコントラスト低下は避けることが望ましい。この点を踏まえて、顕微鏡システム2では、処理装置500で発光制御を行うことにより、カメラ200の撮影期間中に照明装置130の発光が停止される。また、カメラ300の撮影期間中に照明装置120の発光が停止される。従って、顕微鏡システム2によれば、迷光による撮影画像のコントラスト低下を避けることが可能であり、ひいては補助画像によるAR表示の信頼性を高めることができる。
【0050】
なお、図10では、カメラ200の露光期間と照明装置120の発光期間が一致し、カメラ300の露光期間と照明装置130の発光期間が一致する例を示したが、カメラの露光期間は、照明装置の発光期間内に収まっていればよく、必ずしも一致しなくてもよい。
【0051】
また、顕微鏡システム2では、処理装置500は、図10に示すように、照明装置120の発光期間d1が照明装置130の発光期間d2よりも長くなるように、照明装置120と照明装置130を制御する。照明装置120の発光期間d1中は、カメラ200による撮影だけではなく顕微鏡100による観察も行うことができる。発光期間d1を発光期間d2よりも長くなるように制御することで、利用者の観察用の照明が停止される期間を短くすることができる。なお、発光期間d2を利用者が消灯を把握できない程度に短くすることで観察に及ぼす悪影響を実質的に回避することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
図11は、本実施形態に係る顕微鏡システムの照明光の波長について説明するための図である。本実施形態に係る顕微鏡システムは、カメラ200とカメラ300で撮影に用いる光の波長が異なる点が顕微鏡システム1とは異なっている。その他の点は、顕微鏡システム1と同様である。
【0053】
本実施形態に係る顕微鏡システムでは、顕微鏡システム1と同様に、検卵時に照明装置120と照明装置130が常時発光し、顕微鏡100での観察と2方向からの撮影が同時に行われる。ただし、照明装置120と照明装置130が異なる波長の照明光を試料に照射する。具体的には、照明装置120は、試料の鉛直下方から試料に可視光(図11に示すラインL1参照)を照射し、カメラ200は、その可視光で試料を撮影する。また、照明装置130は、試料の鉛直上方から試料に、近赤外光(図11に示すラインL2参照)を照射し、カメラ300は、その近赤外光で試料を撮影する。なお、カメラ200は、可視域に高い感度を有するカメラであり、カメラ300は、近赤外域に高い感度を有するカメラである。
【0054】
カメラ200とカメラ300で撮影に使用する波長を分けることで、一方のカメラに他方のカメラで撮影に使用する光が迷光として入射した場合であっても、カメラに設けられたフィルタ等で迷光を遮断することが可能である。また、カメラ200の前に近赤外光カットフィルタを配置し、カメラ300の前に可視光カットフィルタを配置してもよい。フィルタを配置することでよりコントラストの高いカメラ画像を得ることが可能となる。このため、顕微鏡システム1の場合とは異なり、2方向から同時に照明及び撮影を行っても、画像のコントラストが低下することを防止することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る顕微鏡システムでは、検卵中に照明光が停止することがないため、接眼レンズ111を介した観察中に利用者が違和感を感じる虞がない。また、接眼レンズ111に入射する迷光は人間の目が感度を有しない近赤外光であるため、目視観察の光学画像のコントラストの低下も生じない。
【0056】
本実施形態に係る顕微鏡システムによれば、顕微鏡システム1と顕微鏡システム2と同様に、利用者による検卵を支援することができる。さらに、本実施形態に係る顕微鏡システムによれば、観察と2方向からの撮影を同時に行っても、観察と撮影の何れにおいても画像のコントラスト低下を引き起こすことなく、良好な画像を得ることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、可視光と近赤外光を使用する例を示したが、可視光と非可視光とを組み合わせて使用すればよく、近赤外光の代わりにその他の非可視光、例えば、紫外光を用いられてもよい。
【0058】
(第4の実施形態)
図12は、本実施形態に係る顕微鏡システム4を例示した図である。本実施形態に係る顕微鏡システム4は、ズームカプラ141が処理装置500に接続されている点が、顕微鏡システム1とは異なっている。その他の点は、顕微鏡システム1と同様である。ズームカプラ141が処理装置500で接続されることで、顕微鏡システム4では、利用者がズームカプラ141を操作して行ったズーム倍率の変更を処理装置500が把握することができる。
【0059】
ズーム倍率が変更されると、顕微鏡100の光学倍率(光学画像の倍率)とカメラ200で取得した第1画像の倍率は同じだけ変化するが、カメラ300で取得した第2画像の倍率は変化しない。このため、3つの画像間の倍率の関係が変化してしまう。
【0060】
そこで、顕微鏡システム4では、処理装置500は、第2画像に対して顕微鏡100の光学倍率に応じた範囲をトリミングして拡大するデジタルズーム処理を実行し、第2画像の倍率を調整する。これにより、ズーム倍率変更前における光学画像と第1画像と第2画像の倍率比とズーム倍率変更後における光学画像と第1画像と第2画像の倍率比を一定に保つことができる。倍率比が一定であれば、ズーム倍率が変更されても、第2画像上で発見された卵子の位置を光学画像上の正しい位置に容易に変換することができる。従って、倍率が変わっても正しい位置にバウンディングボックスを表示することができる。
【0061】
本実施形態に係る顕微鏡システムによれば、第1から第3の実施形態に係る顕微鏡システム1と同様に、利用者による検卵を支援することができる。さらに、本実施形態に係る顕微鏡システム4によれば、顕微鏡100の光学倍率の変更に伴う混乱を回避することが可能であり、光学倍率によらず、検卵を正しく支援することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、ズーム倍率を変更することで、顕微鏡100の光学倍率を変更する例を示したが、光学倍率の変更は対物レンズを変更することで行われてもよい。この場合も、対物レンズを保持するレボルバに対物レンズを検出する構成を設けて検出結果を処理装置500へ出力することで、同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態では、デジタルズーム処理を処理装置500が行う例を示したが、デジタルズーム処理は、カメラ300で行われてもよい。この場合、処理装置500は、顕微鏡100の光学倍率に応じたデジタルズーム倍率を、カメラ300に設定すればよく、デジタルズーム処理が行われた後の第2画像をカメラ300から取得してもよい。カメラ300でデジタルズーム処理が行われた場合も処理装置500で行われた場合と同様の効果を得ることができる。
【0064】
図13は、処理装置500を実現するためのコンピュータ1000のハードウェア構成を例示した図である。図13に示すハードウェア構成は、例えば、プロセッサ1001、メモリ1002、記憶装置1003、読取装置1004、通信インタフェース1006、及び入出力インタフェース1007を備える。なお、プロセッサ1001、メモリ1002、記憶装置1003、読取装置1004、通信インタフェース1006、及び入出力インタフェース1007は、例えば、バス1008を介して互いに接続されている。
【0065】
プロセッサ1001は、任意の電気回路であり、例えば、シングルプロセッサであっても、マルチプロセッサやマルチコアプロセッサであってもよい。プロセッサ1001は、記憶装置1003に格納されているプログラムを読み出して実行することで、上述した補助画像をAR表示する処理を行ってもよい。
【0066】
メモリ1002は、例えば、半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んでいてよい。記憶装置1003は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、または外部記憶装置である。
【0067】
読取装置1004は、例えば、プロセッサ1001の指示に従って記憶媒体1005にアクセスする。記憶媒体1005は、例えば、半導体デバイス、磁気的作用により情報が入出力される媒体、光学的作用により情報が入出力される媒体などにより実現される。なお、半導体デバイスは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリである。また、磁気的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、磁気ディスクである。光学的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray Disc等(Blu-rayは登録商標)である。
【0068】
通信インタフェース1006は、例えば、プロセッサ1001の指示に従って、他の装置と通信する。入出力インタフェース1007は、例えば、入力装置および出力装置との間のインタフェースである。入力装置は、例えば、ユーザからの指示を受け付けるキーボード、マウス、タッチパネルなどの操作装置であってもよい。出力装置は、例えばディスプレイなどの表示装置、およびスピーカなどの音声装置である。
【0069】
プロセッサ1001が実行するプログラムは、例えば、下記の形態でコンピュータ1000に提供される。
(1)記憶装置1003に予めインストールされている。
(2)記憶媒体1005により提供される。
(3)プログラムサーバなどのサーバから提供される。
【0070】
なお、図13を参照して述べた処理装置を実現するためのコンピュータ1000のハードウェア構成は例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の構成の一部が、削除されてもよく、また、新たな構成が追加されてもよい。また、別の実施形態では、例えば、上述の電気回路の一部または全部の機能がFPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System-on-a-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、およびPLD(Programmable Logic Device)などによるハードウェアとして実装されてもよい。
【0071】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。さらに、各実施形態に示す処理手順は、矛盾しない限り順序を入れ替えて行われてもよい。即ち、本発明の顕微鏡システムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0072】
上述した実施形態では、物体検出モデルについて深層学習で卵子を学習したモデルとして説明したが、検卵時の卵子は、卵子単独で存在せず、通常は放射冠細胞と卵丘細胞に覆われている。このため、物体検出モデルの学習に用いられた教師データは、図14に示すような、卵子E1とともに放射冠細胞E3や卵丘細胞E4が写っている画像データ(画像データT1、画像データT2)であることが望ましい。より具体的には、教師データは、アノテーションツールを用いて画像中の放射冠細胞E3に囲まれた卵子E1がラベル付けされた画像データであることが望ましい。なお、E2は透明帯である。このような教師データを用いることで、検卵作業における卵子の検出精度がより高まることが期待できる。
【0073】
本明細書において、“Aに基づいて”という表現は、“Aのみに基づいて”を意味するものではなく、“少なくともAに基づいて”を意味し、さらに、“少なくともAに部分的に基づいて”をも意味している。即ち、“Aに基づいて”はAに加えてBに基づいてもよく、Aの一部に基づいてよい。
【符号の説明】
【0074】
1、2、4 :顕微鏡システム
100 :顕微鏡
111 :接眼レンズ
120、130 :照明装置
121、131 :光源
200、300 :カメラ
400 :ARディスプレイ
500 :処理装置
1000 :コンピュータ
1001 :プロセッサ
1002 :メモリ
D3、D13、D23:補助画像
S :試料
S1 :卵子
S2 :卵胞液
S3、S4 :組織片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14