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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059333
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】コンバインの走行制御システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
A01B69/00 303K
A01B69/00 303M
A01B69/00 303A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166950
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】松澤 宏樹
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB14
2B043DA17
2B043DC01
2B043EA32
2B043EB05
2B043EB12
2B043EC02
2B043EC14
2B043EC15
2B043ED03
2B043ED12
(57)【要約】
【課題】収穫作業の機体旋回時に左右分草体の推奨移動軌跡をモニタに表示して操縦者の操縦をアシストする技術がある。然しながら、圃場内の指定位置座標を記録しておき、所定の条件を満たした時に指定位置座標に機体を自律走行させるものではない。そこで、所定の条件を満たした時に指定位置座標に機体を自律走行させるコンバインの走行制御システムを提供する。
【解決手段】機体の現在位置を取得する測位装置と任意の指定位置座標Aを記録する制御装置を備え、所定の条件を満たすと指定位置座標Aに機体を自律走行させるコンバインの走行制御システムにおいて、機体を自律走行させる際に、機体を指定位置座標Aに向けて直進走行可能となるように自動旋回させ、自動旋回させた後に指定位置座標Aまで機体を自動直進させ、自動直進時に指定位置座標Aの所定距離手前で走行速度を減速する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(4)と作物を圃場から刈り取る刈取装置(15)と作物を引き継いで脱穀する脱穀装置(6)と脱穀された穀粒を貯留する貯留装置(7)と機体の現在位置を取得する測位装置(27)と任意の指定位置座標(A)を記録する制御装置(26)を備え、所定の条件を満たすと指定位置座標(A)に機体を自律走行させるコンバインの走行制御システムにおいて、機体を自律走行させる際に、機体を指定位置座標(A)に向けて直進走行可能となるように自動旋回させ、自動旋回させた後に指定位置座標(A)まで機体を自動直進させ、自動直進時に指定位置座標(A)の所定距離手前で走行速度を減速することを特徴とするコンバインの走行制御システム。
【請求項2】
自動旋回時の走行速度を第1設定速度とし、自動直進時の走行速度を第1設定速度よりも速い第2設定速度としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの走行制御システム。
【請求項3】
作業経路に沿って自律走行にて収穫作業を行っているコンバイン(1)が現作業工程の終端位置(E)に到達すると次作業工程の始端位置(S)に移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバインの走行制御システム。
【請求項4】
現作業工程の終端位置(E)から次作業工程の始端位置(S)への移動走行速度を所定の第3設定速度とし、該移動時に主変速レバー(24)や操向レバー(25)や停止スイッチの操作があれば停車させることを特徴とする請求項3に記載のコンバインの走行制御システム。
【請求項5】
測位衛星からの信号を測位装置(27)が受信してGNSSが算出した移動距離が所定時間に亘って変化しない場合に、またはGNSSが算出した移動距離よりも走行装置(4)の動作を検出する走行距離センサから算出した移動距離が長い場合に異常と判断して停車させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバインの走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの走行制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
収穫作業の機体旋回時に左右分草体の推奨移動軌跡をモニタに表示して操縦者の操縦をアシストする技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-080496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、圃場内の指定位置座標を記録しておき、所定の条件を満たした時に指定位置座標に機体を自律走行させるものではない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、所定の条件を満たした時に指定位置座標に機体を自律走行させるコンバインの走行制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行装置4と作物を圃場から刈り取る刈取装置15と作物を引き継いで脱穀する脱穀装置6と脱穀された穀粒を貯留する貯留装置7と機体の現在位置を取得する測位装置27と任意の指定位置座標Aを記録する制御装置26を備え、所定の条件を満たすと指定位置座標Aに機体を自律走行させるコンバインの走行制御システムにおいて、機体を自律走行させる際に、機体を指定位置座標Aに向けて直進走行可能となるように自動旋回させ、自動旋回させた後に指定位置座標Aまで機体を自動直進させ、自動直進時に指定位置座標Aの所定距離手前で走行速度を減速するコンバインの走行制御システムである。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、貯留装置7に穀粒が満杯になった時や燃料切れ時等の所定の条件を満たすと機体を指定位置座標Aに自律走行させることができるので、操縦者に余分な操作をさせる必要がなくなって作業性が向上する。
【0008】
また、指定位置座標Aの所定距離手前で走行速度を減速することにより、指定位置座標Aに確実に停車させることができるので、穀粒の排出作業や燃料の補給作業等を適切に且つ容易に行うことができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、自動旋回時の走行速度を第1設定速度とし、自動直進時の走行速度を第1設定速度よりも速い第2設定速度とした請求項1に記載のコンバインの走行制御システムである。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、自動旋回時の走行速度を第1設定速度とし、自動直進時の走行速度を第1設定速度よりも速い第2設定速度としたので、旋回時と直進時の走行速度が決まっていることにより、操縦者は機体の移動速度を把握できるので、移動が遅く感じられにくくなる。
【0011】
また、移動速度を過度に速く設定する必要が無く、自律走行であっても安全性が高いものとなる。
【0012】
請求項3記載の発明は、作業経路に沿って自律走行にて収穫作業を行っているコンバイン1が現作業工程の終端位置Eに到達すると次作業工程の始端位置Sに移動させる請求項1または請求項2に記載のコンバインの走行制御システムである。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、作業経路に沿って自律走行にて収穫作業を行っているコンバイン1が現作業工程の終端位置Eに到達すると次作業工程の始端位置Sに移動させるので、作業の無人化や作業者の操作工数を削減することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、現作業工程の終端位置Eから次作業工程の始端位置Sへの移動走行速度を所定の第3設定速度とし、該移動時に主変速レバー24や操向レバー25や停止スイッチの操作があれば停車させる請求項3に記載のコンバインの走行制御システムである。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、移動走行速度を所定の第3設定速度にすることにより、走行軌跡の可否や進路上の障害物等を確認し、問題がある際に停車操作することで軌跡が大きくずれる前、あるいは障害物への接触前に停車させることができる。
【0016】
また、移動時に主変速レバー24や操向レバー25や停止スイッチ等の操作があれば停車させるので、走行上の問題を確認した際により速やかに対応することができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、測位衛星からの信号を測位装置27が受信してGNSSが算出した移動距離が所定時間に亘って変化しない場合に、またはGNSSが算出した移動距離よりも走行装置4の動作を検出する走行距離センサから算出した移動距離が長い場合に異常と判断して停車させる請求項1または請求項2に記載のコンバインの走行制御システムである。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、GNSSによる移動距離またはGNSSと走行距離センサの移動距離の比較で旋回や移動の途中での異常を検出することにより、異常の発生時に走行を停止させることができるので、機体の破損が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明における実施の形態のコンバインの側面図である。
図2】本発明における実施の形態のコンバインの走行制御システムの作用を示す模式図である。
図3】本発明における実施の形態のコンバインの走行制御システムの作用を示す模式図である。
図4】本発明における実施の形態のコンバインの走行制御システムの作用を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態であるコンバイン1について添付図面を参照して説明する。なお、理解を容易にするために、操縦者から見て、前方を前側、後方を後側、右手側を右側、左手側を左側として便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、コンバイン1は、車台2の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ3を張設した走行装置4を配設すると共に、該車台2上の左右に、フィードチェン5に挟持して搬送供給される穀稈を脱穀選別処理する脱穀装置6と、その穀粒を一時貯留する貯留装置としてのグレンタンク7と、このグレンタンク7に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ8を載置配設し、この脱穀装置6の後端部に排藁処理装置9を装架する。排穀オーガ8は、穀粒の排出時にオーガ昇降シリンダ10を作動して起伏する。
【0022】
脱穀装置6の前方に、前端側から未刈穀稈を分草する分草体11と、分草した穀稈を引き起こす引起部12と、引き起こした穀稈を刈り取る刈刃部13と、刈り取った穀稈を掻き込むと共に搬送途中において扱深さを調節して前記フィードチェン5へ引き継ぎを行う供給調節搬送部14等を有する刈取装置15を、刈取昇降シリンダ16により土壌面に対して昇降自在となるように車台2の前端部へ懸架配設して構成する。
【0023】
前記刈取装置15の後側上部にコンバイン1の操作制御を行う操作装置20と、操縦者が座る操作席21を設け、この操作席21の下方側にエンジン22を搭載し、後方側に前記グレンタンク7を配置すると共に、該操作装置20と操作席21を覆うキャビン23を設け、これら走行装置4,脱穀装置6,刈取装置15,操作装置20,エンジン22,キャビン23等をコンバインの車台2に装着する。
【0024】
なお、グレンタンク7には、グレンタンク7内に穀粒が満杯(所定量は収納可能な程度に満杯になった状態、標準的な圃場で1作業工程分の収穫作業は行える程度に満杯になった状態)になったことを検出する満杯センサが設けられている。また、エンジン22の燃料タンクには、燃料が残り少なくなったことを検出する燃料切れセンサが設けられている。
【0025】
また、キャビン23内の操作パネルに設けたモニタには、満杯センサがグレンタンク7内に穀粒が満杯になったことを検出するとグレンタンク満杯の警報や燃料切れセンサが燃料タンク内の燃料が残り少なくなったことを検出すると燃料切れの警報等が表示される。
【0026】
操作装置20は、操作席21に着座した操縦者による前後操作により前後進及び停止の切換えと主変速切換えを行う変速アクチュエータを作動させる主変速レバー24と、左右側への傾倒操作により左右走行クローラ3,3の左右サイドクラッチ及び左右サイドブレーキを操作する左右走行アクチュエータを作動させて直進時の左右操向及び各種旋回モードによる旋回を行わせ、前後方向の操作で刈取昇降シリンダ16を作動させて刈取装置15を昇降させる操向レバー25と、刈脱クラッチアクチュエータを作動させて刈取装置15と脱穀装置6の駆動を入り切りする刈脱レバーと、排穀オーガ8先端部の排出口8aの位置をオーガ昇降シリンダ10の作動にて上下方向に移動し、左右旋回用アクチュエータの作動にて左右方向に移動させるオーガ操作レバーと、排穀オーガ8の駆動を入り切りするオーガ駆動電磁クラッチを作動させてグレンタンク7内の穀粒を排出口8aから機外に排出させるオーガ駆動切換えレバー等の各種操作具を備える。
【0027】
ここで、コンバイン1は、自律走行して収穫作業を自動で行う自動収穫作業モードとタブレット等の遠隔操作具で遠隔操作して収穫作業を行う遠隔操作モードと搭乗した操縦者が手動操作で収穫作業を行う手動操作モードに切換え自在であるので、以下に詳細に説明する。
【0028】
キャビン23内の操作パネルには、収穫モード切換えダイヤルが設けてあり、該収穫モード切換えダイヤルにて自動収穫作業モードと遠隔操作モードと手動操作モードに切換える。
【0029】
そして、キャビン23内部に制御装置26を設け、キャビン23上面に測位装置としてのGNSSアンテナ27と無線装置28が設けられている。
【0030】
制御装置26は、変速アクチュエータを作動させて前後進及び停止の切換えと主変速切換えを行って前後進及び停止と車速の変速を自動制御し、左右走行アクチュエータを作動させて左右旋回を自動制御し、刈取昇降シリンダ16を作動させて刈取装置15を昇降制御し、刈脱クラッチアクチュエータを作動させて刈取装置15と脱穀装置6の駆動を自動制御する。
【0031】
また、制御装置26は、圃場Fの往復刈り作業経路または回り刈り作業経路及び指定位置座標A(グレンタンク7に貯留された穀粒を機外へ排出する位置及び燃料タンクに燃料を供給する位置)を付加した地図データを記憶している。
【0032】
なお、指定位置座標Aは、道路Rに面した圃場Fの端で、道路Rに停止した穀物搬送車にグレンタンク7に貯留された穀粒を排穀オーガ8にて移す作業を行う位置であり、道路Rから燃料タンクに燃料を供給する位置である。
【0033】
そして、収穫モード切換えダイヤルを自動収穫作業モードにすると、圃場で測位衛星からの信号をGNSSアンテナ27が受信してGNSS(衛星測位システム)にて位置情報を算出しながら作業経路に沿って自律走行して自動的に収穫作業をし、条件が満たされた時に指定位置座標Aに自動走行する。
【0034】
なお、自動走行中に主変速レバー24や操向レバー25や刈脱レバー等の操作装置20が操縦者により操作されると、自動収穫作業モードから手動操作モードに切換えられ、以後、手動操作にてコンバイン1を操縦者が操作する状態となる。
【0035】
収穫モード切換えダイヤルを遠隔操作モードにすると、タブレット等の遠隔操作具の各種操作を無線装置28にて受信し、コンバイン1を遠隔操作具にて遠隔操作して収穫作業が行える。
【0036】
遠隔操作具の各種操作とは、変速アクチュエータを作動させて前後進及び停止の切換えと主変速切換えを行う主変速操作と、左右走行アクチュエータを作動させて左右走行クローラ3,3の左右サイドクラッチ及び左右ブレーキを操作する直進時の左右操向及び各種旋回モードによる旋回操作と、刈取昇降シリンダ16を作動させて刈取装置15を昇降させる昇降操作と、刈脱クラッチアクチュエータを作動させて刈取装置15と脱穀装置6の駆動を入り切りする刈脱駆動の入り切り操作と、オーガ昇降シリンダ10を作動させて排穀オーガ8先端部の排出口8aの位置を上下方向に移動し、左右旋回用アクチュエータを作動させて左右方向に移動するオーガ操作と、オーガ駆動電磁クラッチを作動させて排穀オーガ8の駆動を入り切りするオーガ駆動入り切り操作等である。
【0037】
収穫モード切換えダイヤルを手動操作モードにすると、操縦者が操作装置20を操作して手動にて収穫作業が行える。
【0038】
また、制御装置26は、左右走行クローラ3を張設した走行装置4の駆動軸の回転数を検出する走行距離センサからの情報にて、コンバイン1の走行距離を算出する。
【0039】
<コンバインの走行制御システム>
収穫モード切換えダイヤルを自動収穫作業モードにした際の走行制御システムについて説明する。
【0040】
図2は、自律走行にて自動収穫作業を行っているコンバイン1が収穫作業を中断して指定位置座標A(グレンタンク7に貯留された穀粒を機外へ排出する位置及び燃料タンクに燃料を供給する位置)に自動走行する模式図を示す。
【0041】
圃場F内で往復刈り作業経路または回り刈り作業経路に沿って自律走行にて自動収穫作業を行っているコンバイン1の制御装置26は、グレンタンク7内の穀粒が満杯になったことの満杯センサから情報または燃料タンクの燃料が残り少なくなったことの燃料切れセンサからの情報を受けると、現作業工程の終端位置Eで変速アクチュエータを作動させて機体の進行を停止し、刈取装置15に設けた穀稈センサが搬送中の刈取り穀稈を検出しなくなると刈脱クラッチアクチュエータを作動させて刈取装置15の駆動を切り、刈取昇降シリンダ16を作動させて刈取装置15を非作業位置まで上昇させる。
【0042】
この機体の進行の停止により操縦者に安全が確保されているか確認を促して、操縦者は周りの安全を確認することができる。
【0043】
なお、安全が確保できていない場合は、操縦者が操作装置20を操作すると、自動収穫作業モードから手動操作モードに切換えられ、以後、手動操作にてコンバイン1を操縦者が操作する状態となる。
【0044】
そして、制御装置26は、変速アクチュエータを作動させて主変速を低速の第1設定速度にして、旋回内側の走行アクチュエータを作動させて旋回内側の走行クローラ3のサイドクラッチを切って旋回を開始し、測位衛星からの信号をGNSSアンテナ27が受信してGNSS(衛星測位システム)にて位置情報を算出しながら機体を指定位置座標Aに向けて直進できる位置まで旋回させる。
【0045】
なお、GNSS位置情報によらずに方位センサやジャイロセンサを用いて機体方向が指定位置座標Aに向く方向に一定距離間で一定旋回比(または、一定時間で一定旋回比)となるように旋回制御しても良い。
【0046】
そして、制御装置26は、変速アクチュエータを作動させて主変速を第1設定速度よりも速い高速の第2設定速度にして、測位衛星からの信号をGNSSアンテナ27が受信してGNSS(衛星測位システム)にて位置情報を算出しながら機体を指定位置座標Aに向けて直進させる。
【0047】
なお、第2設定速度は、旋回後の位置と指定位置座標A間の距離に応じて、該距離が長いほど速い速度に設定する制御にすれば、効率的な作業形態となる。
【0048】
そして、制御装置26は、指定位置座標Aまでの距離が所定距離(指定位置座標Aに到達する少し手前の位置)になると、変速アクチュエータを作動させて主変速を高速の第2設定速度から減速し、指定位置座標Aに到達すると変速アクチュエータを作動させて主変速を中立として機体の進行を停止する。
【0049】
機体が指定位置座標Aで停止すると、操縦者は、キャビン23内の操作パネルに設けたモニタを見てグレンタンク満杯の警報が表示されていれば、オーガ操作レバーを操作して排穀オーガ8先端部の排出口8aを道路Rに停止した穀物搬送車の貯留タンク開口に合わせて、オーガ駆動切換えレバーを操作して排穀オーガ8の駆動を入りにしてグレンタンク7に貯留された穀粒を排穀オーガ8にて穀物搬送車の貯留タンクに排出する。
【0050】
また、操縦者は、キャビン23内の操作パネルに設けたモニタを見て燃料切れの警報が表示されていれば、道路Rに置いている燃料補給タンクにて燃料タンクに燃料を補給する。
【0051】
従って、走行制御システムにより、グレンタンク満杯時や燃料切れ時等の必要なタイミングで機体を指定位置座標Aに自律走行させることができるので、操縦者に余分な操作をさせる必要がなくなって作業性が向上する。
【0052】
また、指定位置座標Aの手前の所定距離の位置で走行速度を減速することにより、指定位置座標Aに確実に停車させることができるので、穀粒の排出作業や燃料の補給作業等を適切に且つ容易に行うことができる。
【0053】
また、現作業工程の終端位置Eから低速の第1設定速度にて旋回し、第1設定速度よりも速い高速の第2設定速度にて指定位置座標Aに向けて直進する制御で旋回時と直進走行時の走行速度がある程度決まっていることにより、操縦者は機体の移動速度をある程度把握できるので、移動が遅く感じられにくくなる。
【0054】
また、移動速度を過度に速く設定する必要が無く、自律走行であっても安全性が高いものとなる。
【0055】
なお、指定位置座標Aでの作業が終了して操作パネルに設けた自動収穫作業復帰スイッチを押すと、機体は、指定位置座標Aから往復刈り作業経路または回り刈り作業経路の次作業工程の始端位置Sに移動して、往復刈り作業経路または回り刈り作業経路に沿って自律走行にて自動収穫作業を継続する。
【0056】
図3は、圃場F内で往復刈り作業経路に沿って自律走行にて自動収穫作業を行っているコンバイン1が現作業工程から次作業工程に旋回する模式図を示す。
【0057】
圃場F内で往復刈り作業経路に沿って自律走行にて自動収穫作業を行っているコンバイン1の制御装置26は、コンバイン1が現作業工程の終端位置Eに到達すると、刈取昇降シリンダ16を作動させて刈取装置15を非作業位置まで上昇させ、変速アクチュエータを作動させて主変速を中速の第3設定速度にして、測位衛星からの信号をGNSSアンテナ27が受信してGNSS(衛星測位システム)にて位置情報を算出しながら機体を次作業工程の始端位置Sまで走行アクチュエータを作動させて走行クローラ3のサイドクラッチやサイドブレーキを操作して旋回させる。
【0058】
上記の旋回は、現作業工程の終端位置Eから未刈取区間に対して離れ方向に曲がってから旋回を開始、または、現作業工程の終端位置Eからそのまま直進して未刈取区間から離れてから旋回を開始する。
【0059】
また、旋回終了近くで、次作業工程の始端位置S後方の直線上に向けて曲がってから次作業工程の始端位置Sに直進する。
【0060】
また、旋回は、一定距離間で一定旋回比または一定時間で一定旋回比となるように旋回制御する。
【0061】
なお、方位センサやジャイロセンサを用いて一定距離間で一定旋回比または一定時間で一定旋回比となるように旋回制御しても良い。
【0062】
また、中速の第3設定速度は、前記低速の第1設定速度よりも速く、高速の第2設定速度よりも遅い速度に設定している。
【0063】
図4は、圃場F内で回り刈り作業経路に沿って自律走行にて自動収穫作業を行っているコンバイン1が現作業工程から次作業工程に移動する模式図を示す。
【0064】
圃場F内で回り刈り作業経路に沿って自律走行にて自動収穫作業を行っているコンバイン1の制御装置26は、コンバイン1が現作業工程の終端位置Eに到達すると、刈取昇降シリンダ16を作動させて刈取装置15を非作業位置まで上昇させ、変速アクチュエータを作動させて主変速を中速の第3設定速度にして、測位衛星からの信号をGNSSアンテナ27が受信してGNSS(衛星測位システム)にて位置情報を算出しながら機体を次作業工程の始端位置Sまで走行アクチュエータを作動させて走行クローラ3のサイドクラッチやサイドブレーキを操作し、変速アクチュエータを作動させて前後進操作して前進及び後進により移動させる。
【0065】
上記の移動は、現作業工程の終端位置Eから未刈取区間側に曲がるように前進して停止し、未刈取区間から離れるように後進して次作業工程の始端位置Sに移動する。
【0066】
中速の第3設定速度は、前記低速の第1設定速度よりも速く、高速の第2設定速度よりも遅い速度に設定している。
【0067】
また、現作業工程の終端位置Eから次作業工程の始端位置Sへの旋回及び移動時に、操縦者が主変速レバー24や操向レバー25を操作すると、または、タブレット等の遠隔操作具に設けた停止スイッチを操作すると、制御装置26は、機体を停止し自動収穫作業モードから手動操作モードに切換え、以後、手動操作にてコンバイン1を操縦者が操作する状態となる。
【0068】
従って、旋回及び移動時の速度を中速の第3設定速度に保つことにより、走行軌跡の可否や進路上の障害物等を確認し、問題がある際に停車操作することで軌跡が大きくずれる前、あるいは障害物への接触前に停車させることができる。
【0069】
また、主変速レバー24や操向レバー25、または、停止スイッチ等の操作があればすぐに停車することにより、走行上の問題を確認した際により速やかに対応することができる。
【0070】
以上に記載した圃場F内で現作業工程の終端位置Eから指定位置座標Aへの自律走行による旋回及び移動または往復刈り作業経路または回り刈り作業経路に沿って自律走行にて自動収穫作業を行っている際の現作業工程の終端位置Eから次作業工程の始端位置Sへの旋回及び移動時に、GNSS(衛星測位システム)にて算出した移動距離が所定時間に亘って変化しない場合やGNSS(衛星測位システム)にて算出した移動距離よりも走行距離センサからの情報にて算出した走行距離(移動距離)が所定以上長くなると、制御装置26が異常と判断して停車制御する。
【0071】
従って、GNSSによる移動距離またはGNSSと走行距離センサの移動距離の比較で旋回や移動の途中での異常を検出することにより、異常の発生時に走行を停止させることができるので、機体の破損が防止できる。
【0072】
<他の実施態様>
【0073】
(1)上記の実施態様では、圃場F内で往復刈り作業経路または回り刈り作業経路に沿って自律走行にて自動収穫作業を行っているコンバイン1の制御装置26は、グレンタンク7内の穀粒が満杯になったことの満杯センサから情報または燃料タンクの燃料が残り少なくなったことの燃料切れセンサからの情報を受けることを指定位置座標Aに向かう条件としたが、他の条件にて指定位置座標Aに向かうように制御しても良い。
【0074】
即ち、刈取装置15に設けた穀稈センサが搬送中の刈取り穀稈を検出している時の累積走行距離が所定距離に達したことを指定位置座標Aに向かう条件としても良い。刈取り作業を行っている累積走行距離が所定距離に達すると、グレンタンク7内に穀粒が略満杯になっていると判断するものである。
【0075】
また、刈取装置15に設けた穀稈センサが搬送中の刈取り穀稈を検出している累積時間が所定時間に達したことを指定位置座標Aに向かう条件としても良い。刈取り作業を行っている累積時間が所定時間に達すると、グレンタンク7内に穀粒が略満杯になっていると判断するものである。
【0076】
また、刈取昇降シリンダ16を作動させて刈取装置15を非作業位置まで上昇させた回数をカウントして、該回数が所定回数に達したことを指定位置座標Aに向かう条件としても良い。刈取装置15を非作業位置まで上昇させるのは、現作業工程から次作業工程への旋回時であり、旋回の回数が所定回数に達すると、グレンタンク7内に穀粒が略満杯になっていると判断するものである。
【0077】
(2)上記までの実施態様では、圃場F内で往復刈り作業経路または回り刈り作業経路に沿って自律走行にて自動収穫作業を行っているコンバイン1の制御装置26は、指定位置座標Aに向かう条件を満たした後に、現作業工程の終端位置Eまで刈取り作業を行ってから指定位置座標Aに向かう制御としたが、指定位置座標Aから現在位置が所定距離以内であれば、指定位置座標Aに向かう条件を満たした時点で刈取り作業を中止して指定位置座標Aに向かう制御としても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 コンバイン
4 走行装置
6 脱穀装置
7 貯留装置(グレンタンク)
15 刈取装置
24 主変速レバー
25 操向レバー
26 制御装置
27 測位装置(GNSSアンテナ)
A 指定位置座標
E 終端位置
S 始端位置
図1
図2
図3
図4