(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059339
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】乗物用把持部材
(51)【国際特許分類】
B60N 3/02 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
B60N3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166959
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】308016242
【氏名又は名称】豊和化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594000882
【氏名又は名称】愛知皮革工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒砂 孝志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淑人
(72)【発明者】
【氏名】梶尾 英樹
(72)【発明者】
【氏名】造隼 和邦
【テーマコード(参考)】
3B088
【Fターム(参考)】
3B088DA05
3B088DB00
(57)【要約】
【課題】意匠性が向上できる乗物用把持部材を提供する。
【解決手段】基材35と、基材35の表面側に配された第1表皮材71と、第1表皮材71の表面側に配された第2表皮材72と、を備え、第2表皮材72は、その表面を構成する本体部76と、当該第2表皮材72の端部を本体部76の裏側に折り返すことで形成される折返部77,78であって、本体部76の裏面に重なる折返部77,78と、を備え、折返部77,78において、本体部76の裏面に対向する対向面77A,78Aとは反対側の面77B,78Bが、第1表皮材71の表面に取り付けられている、アシストグリップ3。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表面側に配された第1表皮材と、
前記第1表皮材の表面側に配された第2表皮材と、を備え、
前記第2表皮材は、
その表面を構成する本体部と、
当該第2表皮材の端部を前記本体部の裏側に折り返すことで形成される折返部であって、前記本体部の裏面に重なる折返部と、を備え、
前記折返部において、前記本体部の裏面に対向する対向面とは反対側の面が、前記第1表皮材の表面に取り付けられている、乗物用把持部材。
【請求項2】
前記第1表皮材において、前記折返部に対向する面とは反対側の面が、前記基材の表面に取り付けられている、請求項1に記載の乗物用把持部材。
【請求項3】
前記対向面は、前記本体部の裏面に取り付けられている、請求項1または請求項2に記載の乗物用把持部材。
【請求項4】
前記折返部は、
前記第2表皮材の一方の端部を折り返すことで形成される第1折返部と、
前記第2表皮材の他方の端部を折り返すことで形成される第2折返部と、を含み、
当該乗物用把持部材は、前記本体部の裏面側であって、前記第1折返部と前記第2折返部との間に配され、前記基材よりも弾性率が低い弾性体を備える、請求項1または請求項2に記載の乗物用把持部材。
【請求項5】
前記第1表皮材は、一端部が前記第2表皮材に取り付けられた2つの表皮部を含み、
前記2つの表皮部は、前記一端部とは反対側の他端部同士が取り付けられていることにより、前記第2表皮材と共に前記基材を囲む構成とされ、
取り付けられた前記他端部同士は、前記基材を基準として前記第2表皮材の反対側となる位置に配されている、請求項1または請求項2に記載の乗物用把持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用把持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用把持部材として、特許文献1に記載の技術が知られている。具体的に、特許文献1には、乗物用把持部材(アシストグリップ)においては、硬質の熱可塑性樹脂よりなるコア芯材の表面を軟質PVC等軟質樹脂よりなる表皮材にて被包する構造が知られている、との記載がある。また、特許文献1に記載の乗物用把持部材は、細長く湾曲した棒形状を有し、その両端部分に空洞及びこれを被覆するキャップが形成されていることで、当該両端部分が中央部分よりも太い形をなしている。空洞にはネジ孔が形成されており、これにボルトが差し込まれ、ルーフトリムにネジ止めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、コア芯材の表面に取り付けられた表皮材が平坦になり易いので、表皮材によって立体形状を形作り、意匠性を向上させることが難しい。一方、アシストグリップのように、乗員に把持される部材においては、握り心地や触感が向上できることが望まれる。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成された技術であって、意匠性が向上できる乗物用把持部材を提供することを目的の一つとする。また、握り心地や触感が向上できる乗物用把持部材を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、基材と、前記基材の表面側に配された第1表皮材と、前記第1表皮材の表面側に配された第2表皮材と、を備え、前記第2表皮材は、その表面を構成する本体部と、当該第2表皮材の端部を前記本体部の裏側に折り返すことで形成される折返部であって、前記本体部の裏面に重なる折返部と、を備え、前記折返部において、前記本体部の裏面に対向する対向面とは反対側の面が、前記第1表皮材の表面に取り付けられている、乗物用把持部材である。
【0007】
このような乗物用把持部材によると、第1表皮材の表面に、折返部による立体形状を形作ることができる。また、折返部において、本体部の裏面に対向する対向面とは反対側の面が、第1表皮材の表面に取り付けられているので、折返部やその周辺部分によって形成される立体形状が保持され易く、平坦になり難い。これにより、乗物用把持部材がメリハリのある形状となって、デザインの幅を広げることが可能となり、意匠性を向上することができる。
【0008】
また、上記構成において、前記第1表皮材において、前記折返部に対向する面とは反対側の面が、前記基材の表面に取り付けられていてもよい。
【0009】
このような乗物用把持部材によると、第1表皮材に対して引っ張られるような力が加わったとしても、第1表皮材において、折返部に対向する面とは反対側の面が、基材の表面に取り付けられているので、その引っ張られる力が第2表皮材に加わり難い。これにより、折返部やその周辺部分における形状が平坦になることを抑制し、立体形状をより保持し易い構造とすることができる。
【0010】
また、上記構成において、前記対向面は、前記本体部の裏面に取り付けられていてもよい。
【0011】
このような乗物用把持部材によると、折返部やその周辺部分の形状を一層保持し易くなり、好適である。
【0012】
また、上記構成において、前記折返部は、前記第2表皮材の一方の端部を折り返すことで形成される第1折返部と、前記第2表皮材の他方の端部を折り返すことで形成される第2折返部と、を含み、当該乗物用把持部材は、前記本体部の裏面側であって、前記第1折返部と前記第2折返部との間に配され、前記基材よりも弾性率が低い弾性体を備えていてもよい。
【0013】
このような乗物用把持部材によると、本体部において、2つの折返部とは重なっていない部分であっても、その裏面側に位置する弾性体によって立体形状を保持することができる。また、弾性体の弾性率が基材よりも低いので、適度な弾性を有しつつ柔らかい構造とすることができ、乗物用把持部材の握り心地や触感を向上することができる。さらに、折返部の端部を本体部の裏面側に隠すことが可能となり、さらなる意匠性の向上が可能となる。
【0014】
また、上記構成において、前記第1表皮材は、一端部が前記第2表皮材に取り付けられた2つの表皮部を含み、前記2つの表皮部は、前記一端部とは反対側の他端部同士が取り付けられていることにより、前記第2表皮材と共に前記基材を囲む構成とされ、取り付けられた前記他端部同士は、前記基材を基準として前記第2表皮材の反対側となる位置に配されていてもよい。
【0015】
基材の表面に対し2つの表皮部を引っ張りながら当接させ、基材を基準として第2表皮材の反対側となる位置に配された他端部同士を取り付けた場合、2つの表皮部の一端部が第2表皮材に取り付けられているので、第2表皮材に対し引っ張られる力が加わり易く、第2表皮材が平坦になり易い。しかしながら、上記のような乗物用把持部材によると、第2表皮材における形状を保持することができるので、引っ張られるようにして基材に取り付けられた第1表皮材に対し、第2表皮材の形状を際立たせて、メリハリのある意匠を呈した乗物用把持部材とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、意匠性が向上できる乗物用把持部材を提供することが可能となる。また、握り心地や触感が向上できる乗物用把持部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るピラーガーニッシュ周辺を車室内側から視た斜視図
【
図2】ピラーガーニッシュとアシストグリップを分解して示す斜視図
【
図3】第1部材にアシストグリップを差し込んだ状態を示す斜視図
【
図4】ピラーガーニッシュ周辺の縦断面図(
図1のIV-IV線断面)
【
図5】アシストグリップの横断面図(
図1のV-V線断面)
【
図6】
図5において、右側の折返部周辺を拡大した図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
本開示の実施形態を
図1から
図6によって説明する。本実施形態では、乗物としての自動車(車両)の板金を構成する乗物ボデー5(
図4参照)に対するアシストグリップ(乗物用把持部材)3の取付部1、及びアシストグリップ3について説明する。本実施形態では、車両の右側に配されたアシストグリップ3及びその取付部1を説明するが、車両の左側においても、当該アシストグリップ3及びその取付部1が左右対称の構造で配されていることとする。尚、矢印方向Fを前方、矢印方向Bを後方、矢印方向Uを上方、矢印方向Dを下方、矢印方向Lを左方、矢印方向Rを右方として各図を説明する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、取付部1は、アシストグリップ3と、車両の高さ方向(上下方向)において隣接して配される第1部材10と第2部材20とにより構成され、高さ方向に延びたピラーガーニッシュ2と、を備える。ピラーガーニッシュ2は、車両の前側ドアと後側ドアとの間に設けられたBピラー部とされる。第1部材10は、その上方に設けられた天井材4に取り付けられている。第2部材20は、その上方に設けられた第1部材10に取り付けられている。アシストグリップ3の上端部3Aは、カバー6の車室外側(前側)において第1部材10における後方を向いた後壁部10Bを介して、ボデー(乗物ボデー)5(
図4参照)に取り付けられている。第1部材10や第2部材20の材料としては、特に限定されないが、例えばポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を採用することができる。
【0020】
第1部材10は、第2部材20との境界をなす第1境界部11と、第1境界部11から下方に延びた第1端部12と、を備える。第1境界部11は、第1端部12よりも車室内側に一段上がった部分とされる。第1境界部11は、第1部材10において意匠面(車室内側に露出した面)を構成する壁部10A,10Bの下端部である。壁部10A,10Bは、車幅方向における内側(左方)を向く面を構成する内側壁部10Aと、内側壁部10Aの後端部において車幅方向における外側(右方)に延び、後方を向く面を構成する後壁部10Bと、を含む。第1境界部11は、後壁部10Bの下端部(第1境界部11の一部)10B1を凹状に切り欠いてなり、車室内外方向(前後方向)に開口して形成される開口部13を備える。
【0021】
第1端部12は、左方を向く面を構成する壁部において、車幅方向(左右方向)に貫通した孔部19と、後方を向く面を構成する壁部において、アシストグリップ3の後述する延設部31を受容可能な受容部14と、を備える。孔部19には、第2部材20の内側壁部20Aにおいて車幅方向における外側に設けられた爪部22が挿入される。受容部14は、第1端部12において車室内側を向く内側面12Aから車室外側に立ち下がった立下壁部15と、立下壁部15の車室外側端部に接続し、当該受容部14の底を構成する底壁部16と、底壁部16から車室内側(後方)に延びた3つのリブ17A,17B,17Cと、を備える。リブ17A,17Bは、立下壁部15の表面に突設されている。リブ17Cは、立下壁部15の表面に突設されておらず、自立している。底壁部16は、上部中央において凹状に切り欠かれた凹部18を備え、全体として後方視U字状をなした板状をなしている。凹部18は、開口部13と共に、車室内外方向に貫通した開口を形成している。
【0022】
第2部材20は、車幅方向における内側(左方)を向く面を構成する内側壁部20Aと、内側壁部20Aの後端部において車幅方向における外側(右方)に延び、後方を向く面を構成する後壁部20Bと、を含んで構成される。第2部材20は、第1部材10との境界をなし、壁部20A,20Bの上端部を構成する第2境界部21と、内側壁部20Aの車室外側面に立設した爪部22と、を備える。第2境界部21は、後壁部20Bの上端部(第2境界部21の一部)20B1を凹状に切り欠いてなり、車室内外方向(前後方向)に開口して形成される切欠部23を備える。切欠部23は、第1部材10の開口部13よりも小さい形で(上下方向における長さが短くなるように)切り欠かれている。
【0023】
アシストグリップ3は、第1部材10の車室内側に配されて、車両の乗員が把持可能な把持部30と、把持部30の下端部30Aから後述する第2取付状態における開口部13と切欠部23との間を通して(開口部13を介して)第2部材20の車室外側(前方)に延設した延設部31と、を備える。
図4に示すように、把持部30は、断面視楕円形状(
図5参照)であって上下方向に延びた棒状をなす基材35と、環状をなし基材35よりも弾性率が低い第4弾性体44と、を備える。基材35は、下端部30Aの外周表面から凹状に窪んだ凹部35Xを備える。凹部35Xは、環状となるように形成されている。第4弾性体44は、凹部35Xに嵌め込まれている。第4弾性体44は、基材35のうち下端部30Aを構成する部分と開口部13との間、及び基材35のうち下端部30Aを構成する部分と切欠部23との間に位置するように配されている。第4弾性体44と凹部35Xとの間には、図示しない両面テープ(接着剤でもよい)が介在しており、これにより、両部材が貼り付けられている。
【0024】
基材35の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンやポリアミド等の熱可塑性樹脂を採用してもよい。その中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、ナイロン樹脂がより好ましい。第4弾性体44の材料としては、基材35よりも弾性率が低ければ、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、又は合成ゴムを採用することができる。合成ゴムとしては、シリコンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、及びクロロプレンゴム(ネオプレン(登録商標))等からなる群のうち1種又は2種以上を採用することができる。その中でも、クロロプレンゴムが好ましい。
【0025】
図2及び
図4に示すように、延設部31は、把持部30の下端部30Aから下方に立ち下がる形で延設した延設底部32と、延設底部32の周端部から車室内側に立ち上がった延設立上部33と、を備える。延設部31は、延設底部32を底とし延設立上部33を側壁として窪んだ形をなしている。延設底部32には、車室内外方向に貫通した孔部34が設けられている。
【0026】
アシストグリップ3をボデー5に取り付けて取付部1とする場合は、まず、第1部材10をボデー5に取り付け、
図2に示すように、延設部31を受容部14に対し車室内側(後方)から差し込むことにより、
図3に示す第1取付状態とする。第1取付状態では、開口部13に把持部30の下端部30Aが当接し(
図4参照)、延設底部32が底壁部16に対向し、孔部34が凹部18と共に車室内外方向に連通し、延設立上部33がリブ17A,17B,17Cに当接している。
【0027】
図4に示すように、ボデー5は、ピラーガーニッシュ2の車室外側に配されたボデー本体部50と、ボデー本体部50の車室内側に立設したブラケット(取付座)51と、を備える。第1取付状態では、孔部34とブラケット51とを、ビス60(取付部材の一つ)及びナット61の螺合によって共締めすることで、アシストグリップ3がボデー5に取り付けられる。このとき、底壁部16は、延設底部32とブラケット51との間に挟み込まれることで、孔部34及びブラケット51と共に共締めされる。
【0028】
次に、
図3に示すように、爪部22が孔部19に差し込まれることで、第2部材20が第1部材10に取り付けられた、第2取付状態となる。
図1及び
図4に示すように、第2取付状態では、第1境界部11と第2境界部21とが対向することでピラーガーニッシュ2を横断する形の境界線を形成し、第2部材20の上部が第1部材10の第1端部12の車室内側に重畳する。また、
図4に示すように、第2取付状態では、第2部材20の車室外側に、延設部31、受容部14及びボデー5のブラケット51が配され、第2部材20の車室外側において、延設部31がブラケット51に取り付けられている。
【0029】
図5に示すように、把持部30は、基材35の表面側(把持部30の径方向における外側)に配された第1表皮材71と、第1表皮材71の表面側に配された第2表皮材72と、基材35よりも弾性率が低く、上下方向に延びた板状の複数の弾性体41,42,43と、を備える。基材35は、基材本体部35Aと、基材本体部35Aから右後方に凸状をなした凸部35Aと、基材本体部35Aから左後方に凸状をなした凸部35Bと、基材本体部35Aから前方に凸状をなした凸部35Cと、2つの凸部35A,35Cの間に配され、第2弾性体42が嵌め込まれた凹状の凹部35Rと、2つの凸部35B,35Cの間に配され、第3弾性体43が嵌め込まれた凹状の凹部35Lと、を備える。第2弾性体42と凹部35Rとの間には、図示しない両面テープ(接着剤でもよい)が介在しており、これにより、両部材が貼り付けられている。第3弾性体43と凹部35Lとの間においても、同様に、図示しない両面テープが介在しており、これにより、両部材が貼り付けられている。また、第2弾性体42や第3弾性体43に対し基材35を挟んで反対側に位置する第1弾性体41と、基材35と、の間においても、同様に、図示しない両面テープが介在している。これにより、第1弾性体41と、基材35とが貼り付けられている。
【0030】
第1表皮材71及び第2表皮材72の材料としては、特に限定されないが、本革、合成皮革、又は織布等を採用することができる。合成皮革としては、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン等からなる群のうち1種又は2種以上を採用することができる。第1表皮材71は、第2表皮材72と同じ材料でもよく、異なる材料でもよい。
【0031】
弾性体41,42,43の材料としては、基材35よりも弾性率が低ければ、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、又は合成ゴムを採用することができる。合成ゴムとしては、シリコンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、及びクロロプレンゴム等からなる群のうち1種又は2種以上を採用することができる。その中でも、クロロプレンゴムが好ましい。
【0032】
第1表皮材71は、一端部73C,74Cが第2表皮材72に取り付けられた2つの表皮部73,74を含んでいる。2つの表皮部73,74は、基材35の後側に配された一端部73C,74Cとは反対側に位置する他端部73D,74Dであって、基材35の前側に配された他端部73D,74D同士が、縫製されて取り付けられている。これにより、2つの表皮部73,74は、第2表皮材72と共に、基材35と弾性体41,42,43とを表面側から囲む構成とされる。縫製によって取り付けられた他端部73D,74D同士は、基材35を基準としてその後側に配された第2表皮材72に対しその反対側の位置である基材35の前側に配されている。一端部73C,74Cの間には、第1弾性体41が配されている。一端部73C,74Cにおいて、後述する折返部77,78に対向する面(
図6の一端部73Cにおける面73A参照。一端部74Cにおいても同様とする)とは反対側の面(
図6の一端部73Cにおける面73B参照。一端部74Cにおいても同様とする)が、基材35の表面に取り付けられている。一端部73C,74Cは、基材35との間に介在した図示しない接着剤(両面テープでもよい)によって、基材35の表面に貼り付けられている。
【0033】
第2表皮材72は、当該第2表皮材72の表面を構成する本体部76と、当該第2表皮材の左右両側の端部を本体部76の裏側(前側)に折り返すことで形成される折返部77,78であって、本体部76の裏面(把持部30の径方向における内側の面。
図6における面76R1参照)に重なる折返部77,78と、を備える。本体部76は、第1本体部76Xと、第1本体部76Xの左右両側に延在した第2本体部76R,76Lと、を備える。第1本体部76Xの裏面側には、第1弾性体41が配されており、折返部77,78が配されていない。第2本体部76R,76Lの裏面側には、それぞれ、折返部77,78が車室内外方向(前後方向)に重畳するように配されている。
【0034】
折返部77,78は、第2表皮材72の一方の端部(右側の端部であって第2本体部76R側の端部)を折り返すことで形成される第1折返部77と、第2表皮材72の他方の端部(左側の端部であって第2本体部76L側の端部)を折り返すことで形成される第2折返部78と、を含む。折返部77,78において、第2本体部76R,76Lの裏面(右側の第2本体部76Rについては、
図6の面76R1参照)に対向する対向面77A,78Aは、図示しない接着剤によって、第2本体部76R,76Lの裏面に取り付けられている。折返部77,78において、対向面77A,78Aとは反対側の面77B,78Bは、第1表皮材71における2つの表皮部73,74の一端部73C,74Cの表面(右側の一端部73Cについては、
図6の面73A参照)に対し、図示しない接着剤によって取り付けられている。尚、
図6では、第1折返部77とその周辺部分との断面構成を拡大して示しているが、第2折返部78とその周辺部分の断面構成については、第1折返部77とその周辺部分の断面構成に比して左右対称の構成であるとする。
【0035】
図5及び
図6に示すように、第1弾性体41は、第1本体部76Xの裏面側であって、第1折返部77と第2折返部78との間、及び2つの一端部73C,74Cの間に配されている。第1折返部77において第1弾性体41に対向する端面77Cは、一端部73Cにおいて第1弾性体41に対向する端面73C1と面一になるように揃えられている。同様に、第2折返部78において第1弾性体41に対向する端面も、一端部74Cにおいて第1弾性体41に対向する端面と面一になるように揃えられている。第1折返部77において第1弾性体41に対し反対側の端部は、一端部73Cに対し縫製されて取り付けられている(この縫製された部分を縫製部S1として破線で示す)。同様に、第2折返部78において第1弾性体41に対し反対側の端部は、一端部74Cに対し縫製されて取り付けられている(この縫製された部分を縫製部S2として破線で示す)。
【0036】
アシストグリップ3の製造方法は、まず、第1表皮材71と第2表皮材72とを縫製部S1,S2において縫製して取り付ける。次に、折返部77,78と第2本体部76R,76Lとを接着して取り付ける。続いて、弾性体41,42,43が取り付けられた基材35の表面に一端部73C,74Cを接着して取り付けつつ、他端部73D,74D同士が近接するように第1表皮材71を基材35の表面に巻き付ける。最後に、他端部73D,74D同士を基材35の前側において縫製することにより、第1表皮材71及び第2表皮材72によって基材35及び弾性体41,42,43がその表面側から囲まれた、アシストグリップ3を得る。
【0037】
尚、把持部30は、その径が上下方向に亘り同じ大きさ(太さ)とされる。また、
図1及び
図4に示すように、第2表皮材72は、切欠部23に対し当接するように延在している。これにより、アシストグリップ3及びその取付部1の意匠性がより向上している。
【0038】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、ボデー5に対するアシストグリップ3の取付部1であって、アシストグリップ3は、隣接して配される第1部材10及び第2部材20のうち、少なくとも第1部材10の車室内側に配されて、乗員が把持可能な把持部30を備え、第2部材20の車室外側には、ボデー5が配されており、第1部材10と第2部材20の少なくとも一方には、車室内外方向に開口した開口部13が形成され、アシストグリップ3は、把持部30が開口部13を介して第2部材20の車室外側に延設され、第2部材20の車室外側にてボデー5に取り付けられている、アシストグリップ3の取付部1を示した。
【0039】
このようなアシストグリップ3の取付部1によると、第1部材10の車室内側に把持部30を設けつつ、把持部30のうち第2部材20の車室外側に延設した部分としての延設部31や当該延設部31をボデー5に取り付けるためのビス等の取付部材を、第2部材20の車室外側に隠すことができる。これにより、意匠性を向上したアシストグリップ3の取付部1とすることができる。また、第2部材20が、取付部材等を隠す機能を有するため、第2部材20とは別に、例えば取付部材等を隠すためだけの被覆部材を設ける必要が無いので、コストの削減が可能となる。さらに、アシストグリップ3やその周辺部分の意匠が被覆部材によって制限されることを回避して、意匠のバリエーションを多様なものにすることができる。
【0040】
アシストグリップ3は、基材35と、基材35よりも弾性率が低い第4弾性体44と、を備え、第4弾性体44は、基材35と、開口部13との間に配されている。
【0041】
このようなアシストグリップ3の取付部1によると、例えば、第1部材10と第2部材20の取付等に起因する開口部13の開口空間の誤差を、基材35と開口部13との間に配される第4弾性体44によって緩衝することができる。
【0042】
アシストグリップ3は、把持部30が開口部13を介して第2部材20の車室外側に延設されてなり、第2部材20の車室外側にてボデー5に取り付けられている延設部31を備え、第1部材10は、第2部材20の車室外側に配され、延設部31を受容可能な受容部14を備えている。
【0043】
このようなアシストグリップ3の取付部1によると、延設部31とボデー5との取り付けを受容部14によって安定させることができる。
【0044】
開口部13は、第1部材10において第2部材20との境界をなす第1境界部11の一部を切り欠いてなる形とされる。
【0045】
このような構成によると、意匠性を一層向上したアシストグリップ3の取付部1を提供することが可能となる。
【0046】
第2部材20において第1部材10との境界をなす第2境界部21の一部を、開口部13よりも小さい形に切り欠いてなる切欠部23を備え、アシストグリップ3は、把持部30が、開口部13と切欠部23との間を通して第2部材20の車室外側に延設されている。
【0047】
このようなアシストグリップ3の取付部1によると、第1部材10及び第2部材20に対するアシストグリップ3の位置決めを精確に行うこと可能となる。また、第1部材10、第2部材20、及びアシストグリップ3による一体的な意匠の向上が可能となる。
【0048】
第1部材10及び第2部材20は、乗物の高さ方向において隣接して配されることで、高さ方向に延びたピラーガーニッシュ2を構成している。
【0049】
このようなアシストグリップ3の取付部1によると、意匠性を向上できるピラーガーニッシュ2の提供が可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、基材35と、基材35の表面側に配された第1表皮材71と、第1表皮材71の表面側に配された第2表皮材72と、を備え、第2表皮材72は、その表面を構成する本体部76と、当該第2表皮材72の端部を本体部76の裏側に折り返すことで形成される折返部77,78であって、本体部76の裏面に重なる折返部77,78と、を備え、折返部77,78において、本体部76の裏面に対向する対向面77A,78Aとは反対側の面77B,78Bが、第1表皮材71の表面に取り付けられている、アシストグリップ3を示した。
【0051】
このようなアシストグリップ3によると、第1表皮材71の表面に、折返部77,78による立体形状を形作ることができる。また、折返部77,78において、本体部76の裏面に対向する対向面77A,78Aとは反対側の面77B,78Bが、第1表皮材71の表面に取り付けられているので、折返部77,78やその周辺部分によって形成される立体形状が保持され易く、平坦になり難い。これにより、アシストグリップ3がメリハリのある形状となって、デザインの幅を広げることが可能となり、意匠性を向上することができる。
【0052】
第1表皮材71において、折返部77,78に対向する面とは反対側の面が、基材35の表面に取り付けられている。
【0053】
このようなアシストグリップ3によると、第1表皮材71に対して引っ張られるような力が加わったとしても、第1表皮材71において、折返部77,78に対向する面とは反対側の面が、基材35の表面に取り付けられているので、その引っ張られる力が第2表皮材72に加わり難い。これにより、折返部77,78やその周辺部分における形状が平坦になることを抑制し、立体形状をより保持し易い構造とすることができる。
【0054】
対向面77A,78Aは、本体部76の裏面に取り付けられている。
【0055】
このようなアシストグリップ3によると、折返部77,78やその周辺部分の形状を一層保持し易くなり、好適である。
【0056】
折返部77,78は、第2表皮材72の一方の端部を折り返すことで形成される第1折返部77と、第2表皮材72の他方の端部を折り返すことで形成される第2折返部78と、を含み、当該アシストグリップ3は、本体部76の裏面側であって、第1折返部77と第2折返部78との間に配され、基材35よりも弾性率が低い第1弾性体41を備えている。
【0057】
このようなアシストグリップ3によると、本体部76において、2つの折返部77,78とは重なっていない部分であっても、その裏面側に位置する第1弾性体41によって立体形状を保持することができる。また、第1弾性体41の弾性率が基材35よりも低いので、適度な弾性を有しつつ柔らかい構造とすることができ、アシストグリップ3の握り心地や触感を向上することができる。さらに、折返部77,78の端部を本体部76の裏面側に隠すことが可能となり、さらなる意匠性の向上が可能となる。
【0058】
第1表皮材71は、一端部73C,74Cが第2表皮材72に取り付けられた2つの表皮部を含み、2つの表皮部は、一端部73C,74Cとは反対側の他端部73D,74D同士が取り付けられていることにより、第2表皮材72と共に基材35を囲む構成とされ、取り付けられた他端部73D,74D同士は、基材35を基準として第2表皮材72の反対側となる位置に配されている。
【0059】
基材35の表面に対し2つの表皮部を引っ張りながら当接させ、基材35を基準として第2表皮材72の反対側となる位置に配された他端部73D,74D同士を取り付けた場合、2つの表皮部の一端部73C,74Cが第2表皮材72に取り付けられているので、第2表皮材72に対し引っ張られる力が加わり易く、第2表皮材72が平坦になり易い。しかしながら、上記のようなアシストグリップ3によると、第2表皮材72における形状を保持することができるので、引っ張られるようにして基材35に取り付けられた第1表皮材71に対し、第2表皮材72の形状を際立たせて、メリハリのある意匠を呈したアシストグリップ3とすることができる。
【0060】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0061】
(1)上記実施形態では、第1表皮材は、2つの表皮部を備えることとしたが、これに限定されない。例えば、第1表皮材は、1つの表皮部からなり、この表皮部が基材の表面を囲いつつ、基材の後側にてその端部同士が縫製された構成とされていてもよい。その場合、第1弾性体は、第1表皮材と、第2表皮材の本体部と、第1折返部と、第2折返部と、の間に配されていてもよい。
【0062】
(2)上記実施形態では、ピラーガーニッシュは、Bピラー部としたが、これに限定されない。例えば、ピラーガーニッシュは、Bピラー部の前方に配されたAピラー部や、Bピラー部の後方に配されたCピラー部等であってもよい。また、第1部材及び第2部材は、天井材を構成しており、乗物用把持部材が、天井のパネルに取り付けられた構成であってもよい。
【0063】
(3)上記実施形態において、乗物用把持部材の取付部は、第1部材の上方に隣接して配された第3部材を備え、第1部材と第3部材とのうち少なくとも一方には、車室内外方向に開口した開口部が形成され、アシストグリップの上端部が、当該開口部を介して第3部材の車室外側に延設され、第3部材の乗物室外側にて乗物ボデーに取り付けられている構成であってもよい。
【0064】
(4)第1部材に開口部が配されておらず、第2部材に開口部が配されていてもよい。
【0065】
(5)本技術は、乗物用把持部材としてのアシストグリップに限定されず、他にも、ステアリングハンドル、ドアハンドル、シフトノブ等、乗員が把持可能な部材に対して適用することができる。
【0066】
(6)上記実施形態で例示した乗物用把持部材、及びその取付部は、車両用に限定されず、種々の乗物において提供されてもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記乗物用把持部材、及びその取付部を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…取付部、2…ピラー、3…アシストグリップ(乗物用把持部材)、5…ボデー(乗物ボデー)、10…第1部材、11…第1境界部、13…開口部、14…受容部、20…第2部材、21…第2境界部、23…切欠部、30…把持部、31…延設部、35…基材、71…第1表皮材、72…第2表皮材、73,74…表皮部、73C,74C…一端部、73D,74D…他端部、76…本体部、77…第1折返部(折返部)、78…第2折返部(折返部)