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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059355
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】防水構造体
(51)【国際特許分類】
   E04D 7/00 20060101AFI20240423BHJP
   E04D 5/10 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
E04D7/00 G
E04D5/10 B
E04D5/10 E
E04D7/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166982
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591022656
【氏名又は名称】静岡瀝青工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 賢一
(72)【発明者】
【氏名】生村 公徳
(72)【発明者】
【氏名】谷本 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】神谷 慎吾
(57)【要約】      (修正有)
【課題】クラックや破断が生じにくい防水構造体を提供する。
【解決手段】下地に配置される防水シートと、防水シートの下地側とは反対側に設けられている防水材層とを有する防水構造体であって、防水シートは、第1防水シートと、第1防水シートに隣接する第2防水シートとを有し、第1防水シートおよび第2防水シートは、シート部材と、シート部材の下地側に配置されているアスファルト層とを備え、アスファルト層は、中央部と、中央部よりも厚みの小さい辺縁部とを有し、第1防水シートの辺縁部と、第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っている部分と、重なり合っていない部分の両方を有しており、第1防水シートの辺縁部と第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っていない部分に設けられている防水材層の厚みは、第1防水シートの辺縁部と第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っている部分に設けられている防水材層の厚みよりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に配置される防水シートと、前記防水シートの下地側とは反対側に設けられている防水材層とを有する防水構造体であって、
前記防水シートは、第1防水シートと、前記第1防水シートに隣接する第2防水シートとを有し、
前記第1防水シートおよび前記第2防水シートは、シート部材と、前記シート部材の下地側に配置されているアスファルト層とを備え、
前記アスファルト層は、中央部と、前記中央部よりも厚みの小さい辺縁部とを有し、
前記第1防水シートの前記辺縁部と、前記第2防水シートの前記辺縁部とが互いに重なり合っている部分と、重なり合っていない部分の両方を有しており、
前記第1防水シートの前記辺縁部と前記第2防水シートの前記辺縁部とが互いに重なり合っていない部分に設けられている前記防水材層の厚みは、前記第1防水シートの前記辺縁部と前記第2防水シートの前記辺縁部とが互いに重なり合っている部分に設けられている前記防水材層の厚みよりも大きいことを特徴とする防水構造体。
【請求項2】
前記第1防水シートの前記辺縁部は、前記第2防水シートの前記中央部と互いに重なり合っておらず、
前記第2防水シートの前記辺縁部は、前記第1防水シートの前記中央部と互いに重なり合っていない請求項1に記載の防水構造体。
【請求項3】
前記第1防水シートは、前記第2防水シートの下地側に配置されており、
前記第1防水シートの一方端は、前記第2防水シートの前記中央部よりも他方端側に位置している請求項1または2に記載の防水構造体。
【請求項4】
前記アスファルト層の端部は、前記シート部材の端部よりも内方にある請求項1または2に記載の防水構造体。
【請求項5】
前記第1防水シートの前記辺縁部と前記第2防水シートの前記辺縁部とが互いに重なり合っている部分の大きさは、前記第1防水シートの前記辺縁部と前記第2防水シートの前記辺縁部とが互いに重なり合っていない部分の大きさよりも大きい請求項1または2に記載の防水構造体。
【請求項6】
前記シート部材は、合成繊維、ガラス繊維、および合成樹脂フィルムの少なくとも1つを含む請求項1または2に記載の防水構造体。
【請求項7】
前記アスファルト層の下地側に不織布層が配置されている請求項1または2に記載の防水構造体。
【請求項8】
前記不織布層の下地側に粘着剤層が配置されており、
前記粘着剤層は、通気路が設けられている請求項7に記載の防水構造体。
【請求項9】
前記粘着剤層は、アスファルトを含んでいる請求項8に記載の防水構造体。
【請求項10】
前記防水材層は、ウレタン系防水材を含んでいる請求項1または2に記載の防水構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水工法等において下地に設ける防水構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上等の防水工法の1つとして、下地に防水塗料を塗布して防水構造体を形成する塗膜防水工法がある。この塗膜防水工法としては、例えば、密着工法、通気緩衝工法等がある。
【0003】
通気緩衝工法は、建築物の屋上等の下地に、複数枚の通気緩衝シート(通常、幅1m、長さ5~50m程度)を隣接して敷設することにより通気緩衝シートの層を形成し、この通気緩衝材シートの層の上から防水材を塗布して防水材層を形成し、防水構造体を構成するものである。通気緩衝シートは、防水構造体の上を人が歩行する等により加えられる力や、コンクリート等の収縮・膨張により生じる力等を緩衝する機能を有すると共に、下地等から発生する水蒸気等の気体を通気緩衝シートの平面方向に通気させる機能を有する。例えば、建築物の屋上等に敷設される下地コンクリートは、夏場は約60℃、冬場は約-20℃という激しい温度変化にさらされる。そのため、温度が高くなると、コンクリートに含有される水蒸気等の気体が大量に外部へ放出される。
【0004】
通気緩衝工法においては、通気緩衝シートを下地に敷き詰めて通気緩衝シートの層を形成する際に、隣接して敷設される複数枚の通気緩衝シートの端部同士を重ね合わせる、または突き合わせて、この重ね合わせ部分または突き合わせ部分の上に防水下地用目地テープを貼り付けて、複数枚の通気緩衝シートを接合させて一体化させることが一般的に行われている(例えば、特許文献1参照)。防水下地用目地テープは、通気緩衝シート同士がずれることや、通気緩衝シートの重ね合わせ部分または突き合わせ部分の隙間に防水材等が入り込むことを防止している。また、隣接している複数枚の通気緩衝シートの端部同士の重ね合わせ部分に釘等を打ち付けて、複数枚の通気緩衝シートを下地に固定することも行われている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-170017号公報
【特許文献2】特開2007-170015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2のような防水構造体では、隣接している複数の通気緩衝シートの端部の重ね合わせ部分や突き合わせ部分での防水構造体の強度が低く、重ね合わせ部分または突き合わせ部分の上の防水材層にクラックが入ることや破断することがあり、通気緩衝シートの端部における防水性能が十分でないという問題があった。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、隣接している複数の通気緩衝シートの端部に位置する防水材層の強度が高く、防水材層にクラックや破断が生じにくい防水構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る防水構造体は、以下の通りである。
[1]下地に配置される防水シートと、前記防水シートの下地側とは反対側に設けられている防水材層とを有する防水構造体であって、
前記防水シートは、第1防水シートと、前記第1防水シートに隣接する第2防水シートとを有し、
前記第1防水シートおよび前記第2防水シートは、シート部材と、前記シート部材の下地側に配置されているアスファルト層とを備え、
前記アスファルト層は、中央部と、前記中央部よりも厚みの小さい辺縁部とを有し、
前記第1防水シートの前記辺縁部と、前記第2防水シートの前記辺縁部とが互いに重なり合っている部分と、重なり合っていない部分の両方を有しており、
前記第1防水シートの前記辺縁部と前記第2防水シートの前記辺縁部とが互いに重なり合っていない部分に設けられている前記防水材層の厚みは、前記第1防水シートの前記辺縁部と前記第2防水シートの前記辺縁部とが互いに重なり合っている部分に設けられている前記防水材層の厚みよりも大きいことを特徴とする防水構造体。
[2]前記第1防水シートの前記辺縁部は、前記第2防水シートの前記中央部と互いに重なり合っておらず、
前記第2防水シートの前記辺縁部は、前記第1防水シートの前記中央部と互いに重なり合っていない[1]に記載の防水構造体。
[3]前記第1防水シートは、前記第2防水シートの下地側に配置されており、
前記第1防水シートの一方端は、前記第2防水シートの前記中央部よりも他方端側に位置している[1]または[2]に記載の防水構造体。
[4]前記アスファルト層の端部は、前記シート部材の端部よりも内方にある[1]~[3]のいずれかに記載の防水構造体。
[5]前記第1防水シートの前記辺縁部と前記第2防水シートの前記辺縁部とが互いに重なり合っている部分の大きさは、前記第1防水シートの前記辺縁部と前記第2防水シートの前記辺縁部とが互いに重なり合っていない部分の大きさよりも大きい[1]~[4]のいずれかに記載の防水構造体。
[6]前記シート部材は、合成繊維、ガラス繊維、および合成樹脂フィルムの少なくとも1つを含む[1]~[5]のいずれかに記載の防水構造体。
[7]前記アスファルト層の下地側に不織布層が配置されている請求項[1]~[6]のいずれかに記載の防水構造体。
[8]前記不織布層の下地側に粘着剤層が配置されており、
前記粘着剤層は、通気路が設けられている[7]に記載の防水構造体。
[9]前記粘着剤層は、アスファルトを含んでいる[8]に記載の防水構造体。
[10]前記防水材層は、ウレタン系防水材を含んでいる[1]~[9]のいずれかに記載の防水構造体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防水構造体は、第1防水シートの辺縁部と第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っていない部分に設けられている防水材層の厚みが、第1防水シートの辺縁部と第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っている部分に設けられている防水材層の厚みよりも大きいことにより、互いに重なり合っている第1防水シートと第2防水シートの辺縁部に位置する防水材層の強度を高めることができ、防水材層にクラックや破断を生じることを防止することが可能となる。また、本発明の防水構造体において、アスファルト層の端部がシート部材の端部よりも内方にあることにより、下地に配置されている防水シート全体の厚みの変化がなだらかとなる。その結果、防水シートの下地とは反対側に設けられている防水材層全体の厚みの変化もなだらかなものとなり、防水材層にクラックや破断が生じにくくなって、強度の高い防水構造体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態における防水構造体の斜視図を表す。
図2】本発明の実施の形態における防水構造体の断面図を表す。
図3】本発明の実施の形態における防水シートの断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る防水構造体に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0012】
図1は本発明に係る防水構造体の斜視図を表しており、図2は防水構造体の断面図を表している。図1および図2に示すように、本発明の実施形態に係る防水構造体1は、下地10に配置される防水シート20と、防水シート20の下地側とは反対側に設けられている防水材層30とを有するものである。つまり、防水構造体1は、下地10側である下側に防水シート20を有しており、下地10側とは反対側である防水シート20の上側に防水材層30を有している。なお、防水材層30は、下地10を防水するための層である。また、防水シート20は、防水材層30と同様に下地10を防水しつつ、防水構造体1に加わる力を緩衝させ、防水構造体1にクラックが入ることや防水構造体1が破断することを防止する効果を有している。
【0013】
防水シート20は、第1防水シート21と、第1防水シート21に隣接する第2防水シート22とを有している。なお、防水シート20は、第1防水シート21および第2防水シート22とは異なる防水シートをさらに有していてもよい。
【0014】
図3は本発明に係る防水シート20の断面図を表す。図3に示すように、第1防水シート21および第2防水シート22は、シート部材210と、シート部材210の下地側に配置されているアスファルト層220とを備えている。即ち、防水シート20は、下地10側である下側にアスファルト層220を有しており、下地10側とは反対側であるアスファルト層220の上側にシート部材210を有している。
【0015】
シート部材210は、アスファルト層220を保持している。シート部材210は、アスファルト層220が意図せず他物へ付着することや、アスファルト層220同士が重なり合っている場合に、アスファルト層220同士が固着してしまう(所謂、ブロッキング)ことを防ぎ、防水シート20の取り扱いを容易とする効果を有している。また、シート部材210は、防水シート20を下地10へ配置する際にアスファルト層220が過度に伸びてしまうことを防止し、下地10への防水シート20の配置を行いやすくする効果も有している。
【0016】
シート部材210としては、織物、編物、および不織布等の布地、合成樹脂シート、フィルム、またはこれらの組み合わせが挙げられる。シート部材210は、中でも、布地およびフィルムを組み合わせたものであることが好ましい。シート部材210が布地およびフィルムを組み合わせたものであることより、シート部材210を下地10へ配置する際に、シート部材210が過度に伸びることや破損することを防ぎ、十分な防水性能や耐久性を有する防水構造体1とすることができる。
【0017】
図示していないが、シート部材210は、下地側から順に、不織布、織物、およびフィルムを積層したものであることがより好ましい。シート部材210が、下地側から不織布、織物、フィルムの順で積層されていることにより、不織布および織物の層がアスファルト層220と強固に接合して、かつアスファルト層220の強度を高め、フィルムの層が、防水シート20の下地とは反対側に設けられる防水材層30が防水シート20に浸透することを防ぎ、防水シート20と防水材層30とで二重に防水性能を下地10に付与することが可能となり、防水構造体1の最外層である防水材層30へ万が一破損が生じた場合であっても、防水シート20にて防水性能を保つことが可能となる。
【0018】
シート部材210が布地とフィルムを組み合わせたものである場合、布地の厚みはフィルムの厚みよりも大きいことが好ましい。シート部材210が有している布地の厚みがフィルムの厚みよりも大きいことにより、シート部材210が有している布地にアスファルト層220のアスファルトが浸透し、シート部材210とアスファルト層220との接合を強固なものとすることができる。
【0019】
シート部材210が有している布地の厚みは、フィルムの厚みの10倍以上であることが好ましく、12倍以上であることがより好ましく、15倍以上であることがさらに好ましい。シート部材210の布地とフィルムの厚みの比率の下限値を上記範囲に設定することにより、シート部材210の厚み方向において、シート部材210にアスファルト層220のアスファルトが浸透して接合している長さを大きくすることができ、シート部材210にアスファルト層220を強固に接合することが可能となる。さらに、シート部材210の厚みが大きくなることにより、防水シート20の強度を高めることもできる。また、シート部材210が有している布地の厚みは、フィルムの厚みの30倍以下であることが好ましく、25倍以下であることがより好ましく、20倍以下であることがさらに好ましい。シート部材210の布地とフィルムの厚みの比率の上限値を上記範囲に設定することにより、防水シート20の厚みが大きくなりすぎることを防ぎ、下地10へ防水シート20を配置する工程や、防水シート20の上に防水材層30を設ける工程が行いやすくなる。
【0020】
シート部材210の構成は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の合成樹脂または合成繊維、綿、麻等の天然繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属薄膜等を含むことが挙げられる。中でも、シート部材210は、合成繊維、ガラス繊維、および合成樹脂フィルムの少なくとも1つを含むことが好ましい。シート部材210が合成繊維、ガラス繊維、および合成樹脂フィルムの少なくとも1つを含むことにより、シート部材210の強度を高めることができ、シート部材210が保持しているアスファルト層220が過度に伸長することや穴があく等の破損することを防ぎ、十分な防水性能を有しながら取り扱いが容易である防水シート20とすることができる。
【0021】
シート部材210が布地を有する場合、シート部材210の布地を構成する材料は、ガラス繊維であることがより好ましい。シート部材210の布地を構成する材料がガラス繊維であることにより、シート部材210の強度を高めることができ、下地10へ防水シート20を配置する工程時に防水シート20を破損しにくくすることができ、施工が容易となる。
【0022】
シート部材210がフィルムを有する場合、シート部材210のフィルムを構成する材料は、合成樹脂であることが好ましく、PET等のポリエステル系樹脂であることがより好ましい。シート部材210のフィルムを構成する材料が合成樹脂であることにより、防水シート20の上に設けられる防水材層30との接合強度を容易に強固なものとし、また、シート部材210に接合されているアスファルト層220が過度に伸びることを防止し、アスファルト層220の厚みが薄くなることによる防水性能の低下を防ぐことができる。
【0023】
アスファルト層220は、アスファルトを含んでいる。アスファルト層220は粘弾性を有しているため、下地10にシート部材210を配置した際に、下地10の表面の凹凸によってシート部材210の表面も凹凸となることを防ぐことができる。つまり、防水シート20がアスファルト層220を有していることにより、防水構造体1の表面を平滑にすることが可能となる。また、アスファルトは防水性能を有しているため、アスファルト層220を有する防水シート20を下地10に配置することによって、防水材層30だけでなく防水シート20も、下地10に防水効果を与えることに寄与する。
【0024】
アスファルト層220が含有するアスファルトは、例えば、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト等の石油アスファルト、レイクアスファルト、ロックアスファルト、オイルサンド、アスファルトタイト等の天然アスファルト、石油アスファルトにポリマーや天然アスファルト等を添加した改質アスファルト等が挙げられる。また、これらのアスファルトは、単独または2種以上の混合物として使用することができる。アスファルト層220が含有するアスファルトは、中でも、改質アスファルトであることが好ましい。アスファルト層220に改質アスファルトを用いることにより、下地10へ高い防水性能を付与することができる。
【0025】
アスファルト層220の厚みは、シート部材210の厚みよりも大きいことが好ましい。防水シート20のアスファルト層220がシート部材210よりも厚いことにより、シート部材210の防水性能を高めつつ、シート部材210の柔軟性を向上させて、下地10の表面の凹凸をシート部材210の表面に表れにくくすることができ、防水構造体1の表面を平滑なものにしやすくなる。なお、アスファルト層220の厚みは、アスファルト層220の最大厚みを指し、シート部材210の厚みは、シート部材210の最大厚みを指す。
【0026】
アスファルト層220の厚みは、シート部材210の厚みの1.5倍以上であることが好ましく、1.7倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることがさらに好ましい。防水シート20のアスファルト層220とシート部材210との厚みの比率の下限値を上記範囲に設定することにより、下地10の表面に大きな凹凸がある場合でもアスファルト層220がこの凹凸を吸収し、防水シート20の表面に下地10の表面の凹凸が出にくくなるため、防水構造体1の表面を平滑にすることができる。また、アスファルト層220の厚みは、シート部材210の厚みの5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることがさらに好ましい。防水シート20のアスファルト層220とシート部材210との厚みの比率の上限値を上記範囲に設定することにより、アスファルト層220の厚みが過度に厚くなって防水シート20の重みが増すことを防ぎ、下地10に防水シート20を配置する工程の作業性を向上させることができる。
【0027】
図2および図3に示すように、アスファルト層220は、中央部221と、中央部221よりも厚みの小さい辺縁部222とを有している。つまり、防水シート20の幅方向において、アスファルト層220の両端部に辺縁部222を有しており、2つの辺縁部222の間に中央部221を有している。中央部221防水シート20は、下地10へ十分な防水性能を付与するために、複数の防水シート20を用いる場合には、各防水シート20の端部同士を重ね合わせて下地10へ配置する。防水シート20のアスファルト層220の厚みが均一であれば、複数の防水シート20を重ね合わせた部分が他の部分よりも厚くなり、平滑な防水構造体1を形成することが難しくなる。防水構造体1が平滑でない場合、防水構造体1の上を歩行する際に防水構造体1の凹み部分につまずく等、安全性を確保することが困難となるおそれがある。防水シート20のアスファルト層220が、中央部221よりも厚みの小さい辺縁部222を有していることより、各防水シート20の辺縁部222を互いに重ね合わせた際に、この重ね合わせた部分の厚みが他の部分の厚みよりも過度に大きくなりにくく、防水構造体1を平滑にすることが可能となる。
【0028】
アスファルト層220の辺縁部222の厚みは、中央部221の厚みの80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。辺縁部222と中央部221の厚みの比率の上限値を上記範囲に設定することにより、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とを重ね合わせた際に、この重ね合わせ部分の防水性を確保しながら、重ね合わせ部分の厚みを他の部分と同程度とすることができる。また、アスファルト層220の辺縁部222の厚みは、中央部221の厚みの20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。辺縁部222と中央部221の厚みの比率の下限値を上記範囲に設定することにより、第1防水シート21と第2防水シート22との辺縁部222同士を重ね合わせた際に、この重ね合わせ部分の厚みが他の部分の厚みよりも過度に薄くなることを防止し、防水構造体1の表面を平らなものとすることができる。
【0029】
アスファルト層220の中央部221の大きさは、辺縁部222の大きさよりも大きいことが好ましい。つまり、防水シート20において、中央部221が占める面積は、辺縁部222が占める面積よりも大きいことが好ましい。中央部221の大きさが辺縁部222の大きさよりも大きいことにより、第1防水シート21と第2防水シート22を下地10へ配置する際の重なり部分となる辺縁部222を確保しつつ、より広い面積の下地10へ防水性能を付与することができ、下地10へ配置する必要のある防水シート20の数を減らして防水工法の施工時間を短縮することができる。
【0030】
防水シート20の幅方向において、アスファルト層220の中央部221の長さは、辺縁部222の長さの3倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることがさらに好ましい。中央部221と辺縁部222との長さの比率の下限値を上記範囲に設定することにより、防水シート20を下地10へ配置した際に下地10へ防水性能を与えることができる面積を大きくすることができ、防水工法に用いる防水シート20の数を低減して防水工法の施工にかかる時間を短くすることができる。また、防水シート20の幅方向において、アスファルト層220の中央部221の長さは、辺縁部222の長さの15倍以下であることが好ましく、13倍以下であることがより好ましく、10倍以下であることがさらに好ましい。中央部221と辺縁部222との長さの比率の上限値を上記範囲に設定することにより、防水シート20における辺縁部222を十分に確保することができ、第1防水シート21および第2防水シート22を重ね合わせた部分の防水性を高めることできる。
【0031】
図2に示すように、第1防水シート21の辺縁部222と、第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っている部分と、重なり合っていない部分の両方を有しており、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っていない部分に設けられている防水材層30の厚みT1は、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っている部分に設けられている防水材層30の厚みT2よりも大きい。第1防水シート21と第2防水シート22とを重ね合わせて下地10に配置すると、防水構造体1に力が加わった際に、第1防水シート21と第2防水シート22との重ね合わせ部分の境界部分に、第1防水シート21と第2防水シート22とが離れる方向の力が加わりやすい。第1防水シート21と第2防水シート22との重ね合わせ部分の境界部分に力が加わると、第1防水シート21と第2防水シート22との重ね合わせ部分の境界部分に位置する防水材層30へクラックが入ることや防水材層30が破断するという問題がある。第1防水シート21と第2防水シート22の辺縁部222同士が互いに重なり合っていない部分に設けられている防水材層30の厚みT1が、第1防水シート21と第2防水シート22の辺縁部222同士が互いに重なり合っている部分に設けられている防水材層30の厚みT2よりも大きいことにより、第1防水シート21と第2防水シート22との重ね合わせ部分に位置する防水材層30の中でも特に力が加わりやすく、防水材層30へのクラックや破断の起点となりやすい第1防水シート21と第2防水シート22との重ね合わせ部分の境界に位置する防水材層30の強度を他の部分の防水材層30の強度よりも高めることができ、防水構造体1に加わる力を分散して、防水構造体1にクラックが入ることや防水構造体1が破断することを防止できる。
【0032】
第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っていない部分に設けられている防水材層30の厚みT1は、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っている部分に設けられている防水材層30の厚みT2の1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.15倍以上であることがさらに好ましく、1.2倍以上であることが特に好ましく、1.25倍以上であることが最も好ましい。防水材層30の厚みT1と厚みT2との比率の下限値を上記範囲に設定することにより、第1防水シート21と第2防水シート22とが重なり合う部分の境界部分の強度を高めることができ、防水構造体1にクラックが入ることや破断が起こりにくい、耐久性の高い防水構造体1とすることが可能となる。また、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っていない部分に設けられている防水材層30の厚みT1は、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っている部分に設けられている防水材層30の厚みT2の3倍以下であることが好ましく、2.8倍以下であることがより好ましく、2.5倍以下であることがさらに好ましく、2.3倍以下であることが特に好ましく、2倍以下であることが最も好ましい。防水材層30の厚みT1と厚みT2との比率の上限値を上記範囲に設定することにより、第1防水シート21と第2防水シート22とが重なり合っている部分に凹凸が生じにくく、防水構造体1の表面が平滑で上を歩いた際等につまずきにくい、安全性の高い防水構造体1とすることができる。
【0033】
図2に示すように、第1防水シート21の辺縁部222は、第2防水シート22の中央部221と互いに重なり合っておらず、第2防水シート22の辺縁部222は、第1防水シート21の中央部221と互いに重なり合っていないことが好ましい。第1防水シート21および第2防水シート22の辺縁部222が、第2防水シート22および第1防水シート21の中央部221とそれぞれ互いに重なり合っていないことにより、第1防水シート21および第2防水シート22を下地10に配置した際に、第1防水シート21および第2防水シート22の、アスファルト層220の厚みが小さい部分である辺縁部222同士が重なり合うこととなり、下地10へ配置した防水シート20の表面に大きな凹凸が生じにくくなり、その結果、防水構造体1の表面も平滑なものとすることが可能となる。
【0034】
図2に示すように、第1防水シート21は、第2防水シート22の下地側に配置されており、第1防水シート21の一方端21xは、第2防水シート22の中央部221よりも他方端22y側に位置していることが好ましい。つまり、防水構造体1は、下地10の上に第1防水シート21が配置されており、第1防水シート21の一方端21xの上に第2防水シート22の他方端22yが配置されており、第1防水シート21の一方端21xが第2防水シート22の中央部221よりも他方端22y側にあることが好ましい。下地10の上にそれぞれの端部が重なり合うように複数の防水シート20を配置して、この防水シート20の上に防水材層30を設ける際に、下地10上へ配置した防水シート20に厚みのバラツキがあって、防水シート20の表面上に厚みのバラツキによる段差があると、この段差部分で防水材層30にクラックが入るおそれや、防水材層30が破断するおそれがある。第1防水シート21が第2防水シート22の下地側に配置されており、第1防水シート21の一方端21xが第2防水シート22の中央部221よりも他方端22y側に位置していることにより、一方の防水シート20の端部が、他方の防水シート20の厚みが厚い部分である中央部221に重ならないため、防水構造体1の全体において、他の部分よりも厚みが極度に厚い部分ができにくくなり、耐久性の高い防水材層30を形成することができる。
【0035】
図3に示すように、防水シート20のアスファルト層220の端部220aは、シート部材210の端部210aよりも内方にあることが好ましい。つまり、アスファルト層220の幅方向の長さは、シート部材210の幅方向の長さよりも短いことが好ましい。アスファルト層220の端部220aがシート部材210の端部210aよりも内方にあることにより、防水シート20の両端部にはアスファルト層220が存在せず、下地10へ防水シート20を配置した状態において防水シート20の端部からアスファルト層220のアスファルトが漏れ出ることを防ぎ、表面状態が均一かつ外観のよい防水構造体1とすることができる。
【0036】
アスファルト層220の幅方向の長さは、シート部材210の幅方向の長さの98.5%以下であることが好ましく、98%以下であることがより好ましく、97.5%以下であることがさらに好ましい。アスファルト層220とシート部材210との幅方向の長さの比率の上限値を上記範囲に設定することにより、防水シート20の端部においてアスファルト層220が存在していない部分の長さを十分に確保しやすくすることができる。そのため、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っている部分において大きな段差が生じにくくなり、防水シート20の全体の厚みの変化がなだらかなものとなりやすくなる。また、アスファルト層220の幅方向の長さは、シート部材210の幅方向の長さの90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。アスファルト層220とシート部材210との幅方向の長さの比率の下限値を上記範囲に設定することにより、防水シート20のアスファルト層220の幅方向の長さが短くなりすぎることを防止し、下地10に複数の防水シート20を配置した際に、防水シート20の重ね合わせ部分にも十分な防水性能を与えることが可能となる。
【0037】
図2に示すように、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っている部分の大きさは、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っていない部分の大きさよりも大きいことが好ましい。つまり、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っている部分の面積は、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っていない部分の面積よりも大きいことが好ましい。第1防水シート21および第2防水シート22と、これらの重ね合わせ部分との段差を小さくするために、辺縁部222のアスファルト層220の厚みを中央部221よりも小さくしているため、防水シート20の辺縁部222の防水性能は中央部221よりも劣ってしまう。しかし、第1防水シート21と第2防水シート22のそれぞれの辺縁部222が重なり合っている部分の大きさが、第1防水シート21と第2防水シート22のそれぞれの辺縁部222が重なり合っていない部分の大きさよりも大きいことにより、第1防水シート21および第2防水シート22の重ね合わせ部分のアスファルト層220の厚みを十分なものとすることができ、防水シート20の重ね合わせ部分にも高い防水性能を付与することが可能となる。
【0038】
防水シート20の幅方向において、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っている部分の長さは、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っていない部分の長さの2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることがさらに好ましい。第1防水シート21と第2防水シート22のそれぞれの辺縁部222が重なり合っている部分の長さと、第1防水シート21と第2防水シート22のそれぞれの辺縁部222が重なり合っていない部分の長さの比率の下限値を上記範囲に設定することにより、複数の防水シート20の辺縁部222同士の重ね合わせ部分において、広い範囲に防水性能を与えることができる。また、防水シート20の幅方向において、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っている部分の長さは、第1防水シート21の辺縁部222と第2防水シート22の辺縁部222とが互いに重なり合っていない部分の長さの10倍以下であることが好ましく、8倍以下であることがより好ましく、6倍以下であることがさらに好ましい。第1防水シート21と第2防水シート22のそれぞれの辺縁部222が重なり合っている部分の長さと、第1防水シート21と第2防水シート22のそれぞれの辺縁部222が重なり合っていない部分の長さの比率の上限値を上記範囲に設定することにより、防水シート20の幅方向の端部の厚みを薄くすることができ、複数の防水シート20の重ね合わせ部分に大きな凹凸が生じにくくなって、防水構造体1の表面を平らにすることができる。
【0039】
図2および図3に示すように、防水シート20は、アスファルト層220の下地10側に不織布層40が配置されていることが好ましい。防水シート20のアスファルト層220の下地10側に不織布層40が配置されていることにより、不織布層40が下地10から放出された水蒸気等の気体の通り道となることができ、下地10から発生した気体による防水構造体1の浮き上がりを防ぐことができる。
【0040】
不織布層40を構成する材料は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の合成繊維、綿、麻等の天然繊維、ガラス繊維等が挙げられる。不織布層40は、中でも、合成繊維を含むことが好ましく、ポリエステル系樹脂を含むことがより好ましい。不織布層40が合成繊維を含むことにより、不織布層40の剛性を高めて下地10から放出される気体の通気路を十分に広く確保することが可能となる。
【0041】
不織布層40の厚みは、アスファルト層220の厚みよりも小さいことが好ましい。不織布層40の厚みがアスファルト層220の厚みよりも小さいことにより、下地10から放出される気体の通気路は確保しながら、防水シート20のアスファルト層220と下地10との距離を小さくし、防水構造体1の上を人が歩行した際等に防水構造体1と下地10との間の間に大きなズレが生じにくくなり、このズレによって防水構造体1にたわみが発生して防水構造体1へクラックが入ることや防水構造体1が破損することを防止できる。
【0042】
不織布層40の厚みは、アスファルト層220の厚みの40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。不織布層40とアスファルト層220との厚みの比率の上限値を上記範囲に設定することにより、下地10に防水シート20を配置した際における下地10と不織布層40との距離を小さくすることができ、防水構造体1に上方から力が加わった際に防水構造体1が下地10からずれてたわみが生じにくく、防水構造体1の耐久性を高めることが可能となる。また、不織布層40の厚みは、アスファルト層220の厚みの3%以上であることが好ましく、4%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。不織布層40とアスファルト層220との厚みの比率の下限値を上記範囲に設定することにより、下地10から放出された水蒸気等の気体が通過する空間を大きくすることができ、下地10に急激な温度変化が加わって大量の気体が下地10から放出された場合であっても、防水構造体1に浮き上がりが発生しにくくなる。
【0043】
不織布層40の目付は、5g/m以上であることが好ましく、7g/m以上であることがより好ましく、10g/m以上であることがさらに好ましい。不織布層40の目付の下限値を上記範囲に設定することにより、不織布層40の強度を高め、不織布層40の上方に位置するアスファルト層220や防水材層30の重みによって不織布層40が押し潰されて下地10から放出された気体が通過する空間を狭めることを防止する。また、不織布層40の目付は、30g/m以下であることが好ましく、25g/m以下であることがより好ましく、20g/m以下であることがさらに好ましい。不織布層40の目付の下限値を上記範囲に設定することにより、不織布層40が柔軟なものとなり、防水シート20を下地10に配置した際に防水シート20の表面に大きな凹凸が生じにくく、その結果、防水構造体1の表面が平滑なものとなりやすくなる。
【0044】
図示していないが、不織布層40は、アスファルト層220の中央部221の下地10側に配置されており、辺縁部222の下地10側には配置されていないことも好ましい。複数の防水シート20の各辺縁部222を互いに重ね合わせて下地10へ配置した際、中央部221の大部分は下地10と接するように配置されるため、不織布層40が中央部221の下地10側に配置されていることにより、防水シート20と下地10との間に、下地10から放出される気体の通気路を効果的に設けることができる。また、辺縁部222は複数の防水シート20の重ね合わせ部分であるため、不織布層40が辺縁部222の下地10側に配置されていないことにより、複数の防水シート20の重ね合わせ部分の厚みが小さくなって防水構造体1の表面に大きな凹凸ができにくくなる。
【0045】
図2および図3に示すように、不織布層40の下地10側に粘着剤層50が配置されており、粘着剤層50は、通気路60が設けられていることが好ましい。防水シート20の不織布40に粘着剤層50が配置されていることにより、下地10へ防水シート20を配置する際に、下地10に防水シート20を固定するための粘着剤等を塗布する工程を行う必要がなくなり、防水構造体1を形成する防水工法の工程数を削減することが可能となる。また、粘着剤層50に通気路60が設けられていることにより、下地10から放出された気体が粘着剤層50の通気路を通ることによって、下地10から放出された気体が防水シート20の下を通過することの妨げとなりにくく、下地10から放出された気体によって防水構造体1が浮き上がることを防止できる。
【0046】
防水シート20の幅方向において、通気路60の幅の長さは、粘着剤層50の幅の長さよりも小さいことが好ましい。通気路60の幅が粘着剤層50の幅よりも小さいことにより、防水シート20に下地10から放出された気体が通過する空間を確保しながら、防水シート20を下地10へ強固に固定することができ、下地10へ防水シート20を配置する工程や、防水シート20の上に防水材層30を設ける工程を行いやすくすることができる。
【0047】
防水シート20の幅方向において、通気路60の幅の長さは、粘着剤層50の幅の長さの80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。通気路60と粘着剤層50との幅の比率の上限値を上記範囲に設定することにより、粘着剤層50によって防水シート20を下地10へ強固に固定することができる。また、防水シート20の幅方向において、通気路60の幅の長さは、粘着剤層50の幅の長さの20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。通気路60と粘着剤層50との幅の比率の下限値を上記範囲に設定することにより、防水シート20と下地10との間の、下地10から放出された気体が通過する空間を十分に確保することができ、下地10に急激な温度変化が加わった場合等に下地10から大量の気体が放出された場合でも、この気体を円滑に通過させることができ、防水構造体1が下地10から浮き上がることを防ぐことができる。
【0048】
図示していないが、不織布層40が辺縁部222の下地10側に配置されていない場合、粘着剤層50は、不織布層40の下地10側に加えて、さらにアスファルト層220の辺縁部222にも配置されていることが好ましい。不織布層40が辺縁部222の下地10側に配置されていない場合、辺縁部222はアスファルト層220の厚みが中央部221よりも小さいため、辺縁部222自体の粘着力が弱く、下地10や該防水シート20と重ね合わせる別の防水シート20の状態等によっては辺縁部222が下地10や別の防水シート20へ十分に固定できないおそれがある。辺縁部222に粘着剤層50が配置されていることにより、アスファルト層220の厚みが薄く、粘着力が弱い傾向にある辺縁部222であっても、下地10や防水シート20へ十分な粘着力を発揮して固定することが可能となる。
【0049】
粘着剤層50を構成する材料は、例えば、アスファルト、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。中でも、粘着剤層50は、アスファルトを含んでいることが好ましい。粘着剤層50がアスファルトを含んでいることにより、下地10への粘着力を長期間にわたって強力なものとすることができる。
【0050】
防水材層30は、防水シート20の下地10側とは反対側に防水材を塗布することによって形成することが好ましい。防水材層30を形成する防水材としては、例えば、ウレタン系防水材、FRP系防水材、ポリマーセメント系防水材等が挙げられる。中でも、防水材層30は、ウレタン系防水材を含んでいることが好ましい。防水材層30がウレタン系防水材を含んでいることにより、防水材層30に適度な柔軟性を付与し、防水材層30にクラックが入りにくくすることや、防水材層30を破断しにくくすることが可能となる。
【0051】
図2に示すように、複数の防水シート20の辺縁部222同士の重ね合わせ部分に、帯状部材300を配置することが好ましい。防水シート20の重ね合わせ部分に帯状部材300を配置することにより、防水シート20の重ね合わせ部分の隙間に防水材層30を構成する防水材等が入り込むことを防止し、さらに、防水シート20の重ね合わせ部分の強度を高め、防水材層30にクラックが入ることを防止して防水性能を高めることができる。
【0052】
図示していないが、帯状部材300は、開口部を有していることが好ましい。帯状部材300が開口部を有していることにより、帯状部材300の上から塗布された防水材層30を構成する防水材が開口部を通り、防水シート20の表面に達して防水材が固化するため、複数の防水シート20同士の接合や、防水材層30と防水シート20との接合が強固なものとなり、耐久性の高い防水構造体1とすることが可能となる。開口部を有している帯状部材300としては、例えば、メッシュ状のもの、パンチング加工等によって孔があけられたもの等が挙げられる。
【0053】
帯状部材300の開口部の形状は特に限定されず、円形、半円形、楕円形、多角形等が挙げられる。開口部の形状は、中でも、円形または楕円形であることが好ましい、開口部の形状を円形または楕円形とすることにより、帯状部材300の幅方向の両側にかかる応力の集中を軽減し、帯状部材300が防水シート20から剥離することを防止できる。
【0054】
開口部の形状の長径は、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることがさらに好ましい。開口部の形状の長径の下限値を上記の範囲に設定することにより、帯状部材300が適度な柔軟性を有するものとなって防水シート20への追従性が高まり、帯状部材300が防水シート20に密着して防水材層30にクラックが生じることや剥離することを防止できる。また、開口部の形状の長径は、50mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましく、30mm以下であることがさらに好ましい。開口部の形状の長径の上限値を上記の範囲に設定することにより、帯状部材300の強度を十分なものとすることができる。
【0055】
帯状部材300は、帯状部材300の長さ方向および幅方向に開口部をそれぞれ複数有していることが好ましい。開口部が帯状部材300の長さ方向と幅方向の両方に複数設けられていることにより、帯状部材300の幅方向両端部にかかる応力をより軽減することが可能となる。
【0056】
帯状部材300は、幅方向の両側に複数の開口部を有していることが好ましい。防水シート20上に配置されている帯状部材300と、防水シート20との境界部分に段差がある場合、この段差部分に位置する防水材層30にクラックが入り、防水材層30が破断するおそれがある。帯状部材300の幅方向の両側に複数の開口部が設けられていることにより、防水シート20と帯状部材300との境界部分に段差が生じにくくなって防水材層30にクラックが発生しにくくなり、防水材層30の耐久性を高めることができる。
【0057】
以上のように、防水構造体は、下地に配置される防水シートと、防水シートの下地側とは反対側に設けられている防水材層とを有する防水構造体であって、防水シートは、第1防水シートと、第1防水シートに隣接する第2防水シートとを有し、第1防水シートおよび第2防水シートは、シート部材と、シート部材の下地側に配置されているアスファルト層とを備え、アスファルト層は、中央部と、中央部よりも厚みの小さい辺縁部とを有し、第1防水シートの辺縁部と、第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っている部分と、重なり合っていない部分の両方を有しており、第1防水シートの辺縁部と第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っていない部分に設けられている防水材層の厚みは、第1防水シートの辺縁部と第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っている部分に設けられている防水材層の厚みよりも大きい。防水構造体は、第1防水シートの辺縁部と第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っていない部分に設けられている防水材層の厚みが、第1防水シートの辺縁部と第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っている部分に設けられている防水材層の厚みよりも大きいことにより、互いに重なり合っている第1防水シートと第2防水シートの辺縁部に位置する防水材層の強度を高めることができ、防水材層にクラックや破断を生じることを防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1:防水構造体
10:下地
20:防水シート
21:第1防水シート
21x:第1防水シートの一方端
22:第2防水シート
22y:第2防水シートの他方端
30:防水材層
40:不織布層
50:粘着剤層
60:通気路
210:シート部材
210a:シート部材の端部
220:アスファルト層
220a:アスファルト層の端部
221:中央部
222:辺縁部
300:帯状部材
T1:第1防水シートの辺縁部と第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っていない部分に設けられている防水材層の厚み
T2:第1防水シートの辺縁部と第2防水シートの辺縁部とが互いに重なり合っている部分に設けられている防水材層の厚み
図1
図2
図3