(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059364
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20240423BHJP
F25B 9/14 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
F25B9/00 A
F25B9/14 530Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167002
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
(57)【要約】
【課題】冷却器の負荷低減を可能にする極低温冷凍機用圧縮機を提供する。
【解決手段】極低温冷凍機10の冷媒ガスを圧縮するオイル潤滑式の極低温冷凍機用の圧縮機12が提供される。圧縮機12は、冷媒ガス及び/またはオイルを冷却液との熱交換により冷却する液冷熱交換器24と、液冷熱交換器24に供給される冷却液の供給温度を取得し、取得された冷却液の供給温度に基づいて、液冷熱交換器24の冷却液流量及び/または圧縮機12の排熱量を制御するように構成された冷却コントローラ70と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温冷凍機の冷媒ガスを圧縮するオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機であって、
冷媒ガス及び/またはオイルを冷却液との熱交換により冷却する液冷熱交換器と、
前記液冷熱交換器に供給される冷却液の供給温度を取得し、取得された冷却液の供給温度に基づいて、前記液冷熱交換器の冷却液流量及び/または前記極低温冷凍機用圧縮機の排熱量を制御するように構成された冷却コントローラと、を備えることを特徴とする極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項2】
前記冷却コントローラは、取得された冷却液の供給温度を温度しきい値と比較し、前記供給温度が前記温度しきい値を超える場合、前記液冷熱交換器の冷却液流量を制限するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項3】
前記冷却コントローラは、
前記液冷熱交換器と直列に接続された制御弁と、
前記冷却液の供給温度が前記温度しきい値を超える場合、前記制御弁を閉じまたは前記制御弁の開度を小さくするように構成されたバルブコントローラと、を備えることを特徴とする請求項2に記載の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項4】
前記冷却コントローラは、
前記液冷熱交換器と並列に接続されたバイパス弁と、
前記冷却液の供給温度が前記温度しきい値を超える場合、前記バイパス弁を開きまたは前記バイパス弁の開度を大きくするように構成されたバルブコントローラと、を備えることを特徴とする請求項2に記載の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項5】
前記冷媒ガス及び/または前記オイルを冷却する空冷熱交換器をさらに備え、
前記冷却コントローラは、前記供給温度が前記温度しきい値を超える場合、前記空冷熱交換器を作動させるように構成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項6】
前記冷却コントローラは、周囲温度を取得し、取得された周囲温度に基づいて前記空冷熱交換器を停止し及び/または前記冷却液流量の制限を解除するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項7】
前記冷却コントローラは、
前記液冷熱交換器から排出される冷却液の排出温度および前記液冷熱交換器の冷却液流量を取得し、
取得された供給温度、排出温度および冷却液流量に基づいて前記液冷熱交換器への放熱量を演算し、
演算された放熱量が許容放熱量以下となるように前記液冷熱交換器の冷却液流量を制限するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項8】
前記冷媒ガスを圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体を駆動する、運転周波数を可変とする圧縮機モータと、をさらに備え、
前記冷却コントローラは、取得された冷却液の供給温度を温度しきい値と比較し、前記供給温度が前記温度しきい値を超える場合、前記圧縮機モータの運転周波数を制限するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機用圧縮機。
【請求項9】
極低温冷凍機の冷媒ガスを圧縮するオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機の運転方法であって、前記極低温冷凍機用圧縮機は、冷媒ガス及び/またはオイルを冷却液との熱交換により冷却する液冷熱交換器を備えており、前記方法は、
前記液冷熱交換器に供給される冷却液の供給温度を取得することと、
取得された冷却液の供給温度に基づいて、前記液冷熱交換器の冷却液流量及び/または前記極低温冷凍機用圧縮機の排熱量を制御することと、を備えることを特徴とする極低温冷凍機用圧縮機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デュアル・アフタークーラー付きのオイル潤滑ヘリウム圧縮機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この圧縮機には、ヘリウムおよびオイルを冷却する2つのアフタークーラー、すなわち水冷式アフタークーラーと空冷式アフタークーラーが内蔵される。空冷式アフタークーラーは、水冷式アフタークーラーと直列または並列に配置される。空冷式アフタークーラーのファンを作動させることにより、水冷式アフタークーラーの冷却水回路がブロックされた場合における冗長性が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
極低温冷凍機は、例えば超伝導磁石など極低温下で動作する極低温装置のための極低温冷却によく用いられている。極低温装置は、極低温冷凍機の圧縮機のように、発熱するさまざまな機器を含みうる。そうした発熱機器はしばしば、極低温装置に付設された共通の冷却器によって冷却される。冷却器は典型的には、例えば空冷チラーなど、各発熱機器に冷却液を供給する形式をとりうる。
【0005】
冷却器の冷却能力は、環境温度など外部要因に影響されうる。例えば夏期など環境温度が高い場合、冬期など温度が低い場合に比べて冷却能力が大きく低下しうる(例えば空冷チラーの場合数十%の低下に達することもある)。このような外部要因、あるいは極低温装置の運転状況に起因する発熱増加など諸要因により、冷却器の冷却能力が逼迫し又は不足するリスクが懸念される。冷却能力不足により発熱機器の温度が過剰に高まった場合には、その機器の性能低下や異常動作が起きることが懸念される。これは望ましくないことに、極低温装置の稼働の妨げとなりうる。
【0006】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、冷却器の負荷低減を可能にする極低温冷凍機用圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機の冷媒ガスを圧縮するオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機が提供される。極低温冷凍機用圧縮機は、冷媒ガス及び/またはオイルを冷却液との熱交換により冷却する液冷熱交換器と、液冷熱交換器に供給される冷却液の供給温度を取得し、取得された冷却液の供給温度に基づいて、液冷熱交換器の冷却液流量及び/または極低温冷凍機用圧縮機の排熱量を制御するように構成された冷却コントローラと、を備える。
【0008】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機の冷媒ガスを圧縮するオイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機の運転方法が提供される。極低温冷凍機用圧縮機は、冷媒ガス及び/またはオイルを冷却液との熱交換により冷却する液冷熱交換器を備える。方法は、液冷熱交換器に供給される冷却液の供給温度を取得することと、取得された冷却液の供給温度に基づいて、液冷熱交換器の冷却液流量及び/または極低温冷凍機用圧縮機の排熱量を制御することと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷却器の負荷低減を可能にする極低温冷凍機用圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る極低温装置を概略的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【
図3】実施の形態に係る冷却コントローラの他の一例を概略的に示す図である。
【
図4】実施の形態に係る冷却コントローラの他の一例を概略的に示す図である。
【
図5】実施の形態に係る冷却コントローラの他の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、実施の形態に係る極低温装置100を概略的に示す図である。極低温装置100は、例えば超伝導磁石装置であってもよい。超伝導磁石装置は、例えば単結晶引き上げ装置、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)システム、MRI(Magnetic Resonance Imaging)システム、サイクロトロンなどの加速器、核融合システムなどの高エネルギー物理システム、またはその他の高磁場利用機器(図示せず)の磁場源として高磁場利用機器に搭載され、その機器に必要とされる高磁場を発生させることができる。
【0014】
極低温装置100は、超伝導磁石の極低温冷却のために、極低温冷凍機10を備える。極低温冷凍機10は、オイル潤滑式の極低温冷凍機用圧縮機(以下、単に圧縮機ともいう)12と、コールドヘッド14とを備える。
【0015】
圧縮機12は、冷媒ガスを圧縮する際に圧縮熱を発生する。また、極低温装置100は、圧縮機12のほかにも、発熱しうる少なくとも1つの機器102_1~102_nを含みうる。例えば、極低温装置100がMRIシステム(またはその一部)である場合、機器102には、勾配磁場コイル、勾配磁場増幅器、RF増幅器などが含まれうる。
【0016】
圧縮機12をはじめ、これらの発熱しうる機器102を冷却するために、極低温装置100には、冷却液を温調するとともに循環させるように構成された冷却器110が設けられている。冷却器110は、圧縮機12および機器102に共用されている。冷却器110は、例えばチラーであり、例えば空冷式、またはその他の冷却方式のチラーであってもよい。例示的な構成として、冷却器110は、極低温装置100に設けられた熱交換器104に冷却液(例えば冷却水)を供給するように構成される。また、冷却器110は、冷却に使用された冷却液を熱交換器104から回収し、再び冷却するように構成される。
【0017】
熱交換器104には、圧縮機12および機器102の各々への冷却液ライン106が接続されている。冷却器110から供給される冷却された冷却液と冷却液ライン106の冷却液との熱交換が熱交換器104にて行われ、それにより冷却液ライン106の冷却液が冷却される。冷却液は圧縮機12および機器102に供給され、これらを冷却する。冷却に使用された冷却液は冷却液ライン106を通じて熱交換器104に回収され、再び冷却される。
【0018】
図2は、実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。
【0019】
圧縮機12は、極低温冷凍機10の冷媒ガスをコールドヘッド14から回収し、回収した冷媒ガスを昇圧して、再び冷媒ガスをコールドヘッド14に供給するよう構成されている。圧縮機12は、圧縮機ユニットとも称される。コールドヘッド14は、膨張機とも称され、室温部14aと、冷却ステージとも称される低温部14bとを有する。冷媒ガスは、作動ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。圧縮機12とコールドヘッド14により極低温冷凍機10の冷凍サイクルが構成され、それにより低温部14bが所望の極低温に冷却される。低温部14bは例えば超伝導磁石など被冷却物を冷却することができる。
【0020】
極低温冷凍機10は、一例として、単段式または二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機であるが、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。コールドヘッド14は、極低温冷凍機10のタイプに応じて異なる構成を有するが、圧縮機12は、極低温冷凍機10のタイプによらず、以下に説明する構成を用いることができる。
【0021】
なお、一般に、圧縮機12からコールドヘッド14に供給される冷媒ガスの圧力と、コールドヘッド14から圧縮機12に回収される冷媒ガスの圧力は、ともに大気圧よりかなり高く、それぞれ第1高圧及び第2高圧と呼ぶことができる。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。典型的には、高圧は例えば2~3MPaである。低圧は例えば0.5~1.5MPaであり、例えば約0.8MPaである。
【0022】
圧縮機12は、圧縮機本体16、冷媒ガスライン18、オイル循環ライン20、圧縮機冷却系22を備える。
図2では、理解を容易にするために、冷媒ガスライン18を実線で示し、オイル循環ライン20を破線で示している。詳細は後述するが、圧縮機冷却系22は、液冷熱交換器24および空冷熱交換器26を備え、冷媒ガスライン18およびオイル循環ライン20を冷却するように構成されている。また、圧縮機12は、圧縮機本体16、冷媒ガスライン18、オイル循環ライン20、圧縮機冷却系22など、圧縮機12の各構成要素を収容する圧縮機筐体28を備える。
【0023】
圧縮機本体16は、その吸入口から吸入される冷媒ガスを内部で圧縮して吐出口から吐出するよう構成されている。圧縮機本体16では冷却と潤滑のためにオイルが使用され、吸入された冷媒ガスは圧縮機本体16内でこのオイルに直接さらされる。よって、冷媒ガスは、オイルが若干混入した状態で吐出口から送出される。
【0024】
圧縮機本体16は、例えば、スクロール方式、ロータリ式、または冷媒ガスを昇圧するそのほかのポンプであってもよい。圧縮機本体16は、固定された一定の冷媒ガス流量を吐出するよう構成されていてもよい。あるいは、圧縮機本体16は、吐出する冷媒ガス流量を可変とするよう構成されていてもよい。圧縮機本体16は、圧縮カプセルと称されることもある。
【0025】
冷媒ガスライン18は、吐出ポート30、吸入ポート31、吐出流路32、吸入流路33を備える。吐出ポート30は、圧縮機本体16により高圧に昇圧された冷媒ガスを圧縮機12から送出するために圧縮機筐体28に設置された冷媒ガスの出口であり、吸入ポート31は、低圧の冷媒ガスを圧縮機12に受け入れるために圧縮機筐体28に設置された冷媒ガスの入口である。吐出流路32および吸入流路33は、圧縮機筐体28に収容されている。圧縮機本体16の吐出口が吐出流路32により吐出ポート30に接続され、吸入ポート31が吸入流路33により圧縮機本体16の吸入口に接続されている。
【0026】
吐出流路32には、圧縮機冷却系22を構成する液冷熱交換器24および空冷熱交換器26が設けられている。加えて、吐出流路32には、圧縮機冷却系22の下流にオイルセパレータ34およびアドゾーバ35が設けられている。
【0027】
オイルセパレータ34は、圧縮機本体16を通ることによって冷媒ガスに混入するオイルを冷媒ガスから分離するために設けられている。アドゾーバ35は、冷媒ガスに残留している例えば気化したオイルそのほかの汚染成分を冷媒ガスから吸着により除去するために設けられている。オイルセパレータ34とアドゾーバ35は、直列に接続されている。吐出流路32において、オイルセパレータ34が圧縮機本体16側に配置され、アドゾーバ35が吐出ポート30側に配置されている。
【0028】
オイルセパレータ34を圧縮機本体16に接続するオイル戻りライン21が設けられている。オイル戻りライン21を通じて、オイルセパレータ34で回収されたオイルを圧縮機本体16に戻すことができる。オイル戻りライン21の途中には、オイルセパレータ34で分離されたオイルに含まれる塵埃を除去するフィルターと、圧縮機本体16へのオイルの戻り量を制御するオリフィスが設けられてもよい。
【0029】
一方、吸入流路33には、ストレージタンク36が設けられている。ストレージタンク36は、コールドヘッド14から圧縮機12へと戻る低圧の冷媒ガスに含まれる脈動を除去するための容積として設けられている。
【0030】
また、冷媒ガスライン18には、圧縮機本体16を迂回するように吐出流路32を吸入流路33に接続する冷媒ガスバイパス弁38が設けられている。一例として、冷媒ガスバイパス弁38は、オイルセパレータ34とアドゾーバ35の間で吐出流路32から分岐し、圧縮機本体16とストレージタンク36の間で吸入流路33に接続される。冷媒ガスバイパス弁38は、冷媒ガス流量制御のために、及び/または、圧縮機12を停止する際の吐出流路32と吸入流路33との均圧化のために設けられている。
【0031】
圧縮機12の冷媒ガスライン18は、コールドヘッド14に接続される。コールドヘッド14の室温部14aには、高圧ポート40および低圧ポート41が設けられている。高圧ポート40は、高圧配管42によって吐出ポート30に接続され、低圧ポート41は、低圧配管43によって吸入ポート31に接続されている。
【0032】
オイル循環ライン20は、圧縮機冷却系22(すなわち液冷熱交換器24および空冷熱交換器26)を経由するように、圧縮機本体16のオイル出口をオイル入口に接続する。よって、圧縮機本体16から流出するオイルが圧縮機冷却系22により冷却され再び圧縮機本体16に流入することができる。
【0033】
この実施の形態では、オイル循環ライン20は、後述のように、圧縮機冷却系22において複数(この例では2つ)のオイル流路に分岐している。これら分岐したオイル流路は、圧縮機冷却系22と圧縮機本体16のオイル入口との間で再び合流している。
【0034】
オイル循環ライン20には、内部を流れるオイル流量を制御するオリフィスが設けられていてもよい。また、オイル循環ライン20には、オイルに含まれる塵埃を除去するフィルターが設けられてもよい。こうしたオリフィスとフィルターは、例えば、オイル循環ライン20の下流側、つまり圧縮機冷却系22と圧縮機本体16のオイル入口との間に設けられてもよい。
【0035】
圧縮機冷却系22は上述のように、液冷熱交換器24および空冷熱交換器26を備える。液冷熱交換器24と空冷熱交換器26は直列に接続され、液冷熱交換器24が空冷熱交換器26の上流に設けられている。よって、圧縮機本体16での冷媒ガスの圧縮に伴って生じる圧縮熱により加熱されたオイルおよび高圧の冷媒ガスは、圧縮機本体16から最初に液冷熱交換器24に流入して冷却され、次に空冷熱交換器26に流入する。
【0036】
この実施の形態では、液冷熱交換器24は、圧縮機12の主冷却装置として圧縮機12に搭載され、空冷熱交換器26は、圧縮機12の予備冷却装置として圧縮機12に搭載されている。よって、液冷熱交換器24は、圧縮機12の運転中常時作動し、空冷熱交換器26は、液冷熱交換器24が正常に作動しているときには作動せず、液冷熱交換器24が故障等により作動しないときまたはその冷却能力が低下したとき作動してもよい。そこで、空冷熱交換器26は、オイルまたは冷媒ガスの温度センサなど圧縮機12に設けられたセンサの出力に基づいて自身のオンオフを切り替えるように構成されてもよい。
【0037】
液冷熱交換器24は、冷媒ガスと冷却液との熱交換により冷媒ガスを冷却する第1部分24aと、オイルと冷却液との熱交換によりオイルを冷却する第2部分24bとを備える。第1部分24aは、吐出流路32において圧縮機本体16とオイルセパレータ34の間、より具体的には、圧縮機本体16の吐出口と空冷熱交換器26の間に配置され、吐出流路32を流れる冷媒ガスを冷却する。第2部分24bは、オイル循環ライン20において圧縮機本体16のオイル出口と空冷熱交換器26の間に配置され、オイル循環ライン20を流れるオイルを冷却する。
【0038】
冷却液としては典型的に、水(例えば、水道水、工業用水など)が使用されるが、適切な他の冷却液が使用されてもよい。冷却液ライン106の供給側が圧縮機12の冷却液入口ポート60に接続され、冷却液ライン106の回収側が圧縮機12の冷却液出口ポート61に接続されている。よって、冷却液は、冷却液ライン106の供給側から冷却液入口ポート60を通じて圧縮機12に供給される。冷却液入口ポート60からの冷却液は、液冷熱交換器24の第1部分24aおよび第2部分24bに冷媒ガスおよびオイルの冷却のために供給される。液冷熱交換器24で冷却に使用された冷却液は、冷却液出口ポート61を通じて圧縮機12から冷却液ライン106の回収側に排出される。このようにして、圧縮機本体16で生じる圧縮熱は、冷却液とともに圧縮機12の外へと除去される。冷却液は、例えば公知の水チラーなどの冷却液循環装置(例えば
図1に示される冷却器110)により冷却され、冷却液ライン106を通じて再び圧縮機12に供給されてもよい。
【0039】
また、空冷熱交換器26は、冷却ファン50と、冷却ファン50によって強制冷却されるように配置された第1オイルライン46と、第1オイルライン46をバイパスし、冷却ファン50によって強制冷却されるように配置された第2オイルライン48とを備える。
【0040】
第1オイルライン46と第2オイルライン48は空冷熱交換器26内に配置されたオイル循環ライン20の一部分である。第2オイルライン48は、空冷熱交換器26の上流、つまり液冷熱交換器24と空冷熱交換器26との間で、オイル循環ライン20から分岐し、空冷熱交換器26の下流、つまり空冷熱交換器26と圧縮機本体16のオイル入口との間で、第1オイルライン46と再び合流する。
【0041】
例示的な構成として、冷却ファン50は、その作動により、空冷熱交換器26から外部へと空気を排出するように圧縮機筐体28に設置されている。圧縮機筐体28のうち空冷熱交換器26を囲む部分には、2つの空気取入口52が設けられており、冷却ファン50の作動により、外部からこれら空気取入口52を通じて空冷熱交換器26に空気が取り込まれる。一方の空気取入口52から空冷熱交換器26内に吹き込む空気流れは、冷媒ガスライン18と第1オイルライン46の強制空冷に使用され、他方の空気取入口52から空冷熱交換器26内に吹き込むもう一つの空気流れは、第2オイルライン48の強制空冷に使用される。
図2では、理解のために、これら空気流れを太い矢印で模式的に示している。
【0042】
なお、空冷熱交換器26の冷却ファン50は、上述の例とは冷却ファンは逆向きの空気流れを生成してもよく、外部から空冷熱交換器26内へと送風するように構成されてもよい。冷却ファン50は、冷媒ガスライン18、第1オイルライン46、第2オイルライン48に空気を吹き付けるように構成されてもよい。
【0043】
極低温冷凍機10の運転中、コールドヘッド14から圧縮機12に回収される冷媒ガスは、低圧ポート41から低圧配管43を通じて圧縮機12の吸入ポート31に流入する。冷媒ガスは、吸入流路33上のストレージタンク36を経て、圧縮機本体16の吸入口へと回収される。冷媒ガスは、圧縮機本体16によって圧縮され昇圧される。圧縮機本体16の吐出口から送出される冷媒ガスは、液冷熱交換器24および空冷熱交換器26で冷却され、さらに、オイルセパレータ34、アドゾーバ35を経て、吐出ポート30から圧縮機12を出る。冷媒ガスは、高圧配管42と高圧ポート40を経てコールドヘッド14の内部に供給される。
【0044】
圧縮機本体16のオイル出口から流出するオイルは、オイル循環ライン20を通じて液冷熱交換器24に流入し、液冷熱交換器24でオイルと冷却液との熱交換により冷却される。冷却されたオイルは液冷熱交換器24から空冷熱交換器26に流入する。オイルは、空冷熱交換器26内で第1オイルライン46と第2オイルライン48に分岐して流れる。冷却ファン50が作動している場合、オイルは第1オイルライン46と第2オイルライン48を流れるとき空気で冷却される。空冷熱交換器26から流出するオイルは、オイル循環ライン20を通じて圧縮機本体16のオイル入口へと戻される。
【0045】
この実施の形態では、圧縮機12は、液冷熱交換器24に供給される冷却液の供給温度を取得し、取得された冷却液の供給温度に基づいて、液冷熱交換器24の冷却液流量を制御するように構成された冷却コントローラ70を備える。冷却コントローラ70は、取得された冷却液の供給温度を温度しきい値と比較し、供給温度が温度しきい値を超える場合、液冷熱交換器24の冷却液流量を制限するように構成されている。
【0046】
冷却コントローラ70は、液冷熱交換器24に供給される冷却液の供給温度を測定する温度センサ72を備える。温度センサ72は、冷却液ライン106の供給側、この例では、圧縮機12内で冷却液入口ポート60と液冷熱交換器24との間に設けられている。温度センサ72は、冷却液入口ポート60に設けられてもよい。温度センサは、例えばサーミスタであってもよい。
【0047】
加えて、冷却コントローラ70は、液冷熱交換器24と並列に接続された冷却液バイパス弁74と、冷却液の供給温度が温度しきい値を超える場合、冷却液バイパス弁74を開きまたはその開度を大きくするように構成されたバルブコントローラ76とを備える。
【0048】
冷却コントローラ70及び/またはバルブコントローラ76は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0049】
バルブコントローラ76は、バルブ駆動回路(バルブドライバ)であってもよく、冷却液バイパス弁74またはその他のバルブに内蔵されてもよい。あるいは、バルブコントローラ76は、バルブの外に設置され、バルブと接続されてもよい。
【0050】
冷却コントローラ70は、例えば以下のように動作する。まず、液冷熱交換器24に供給される冷却液の供給温度が取得される。この冷却液温度は、温度センサ72によって測定される。測定温度を示す信号が温度センサ72から出力され、バルブコントローラ76に伝送される。バルブコントローラ76は、温度センサ72からの測定温度信号を受信する。こうして、バルブコントローラ76は、液冷熱交換器24に供給される冷却液の供給温度を取得することができる。
【0051】
バルブコントローラ76は、取得された冷却液の供給温度に基づいて、液冷熱交換器24の冷却液流量を制御する。具体的には例えば、バルブコントローラ76は、取得された冷却液の供給温度を温度しきい値と比較する。冷却液バイパス弁74は、オンオフ弁であってもよい。この場合、バルブコントローラ76は、比較結果に基づいて冷却液バイパス弁74を開閉する。あるいは、冷却液バイパス弁74は、流量制御弁であってもよい。この場合、バルブコントローラ76は、比較結果に基づいて冷却液バイパス弁74を開閉し、またはその開度を調整してもよい。
【0052】
温度しきい値は、冷却器110が供給する冷却液温度の仕様上の上限温度(例えば30℃程度)に基づいて設定されてもよく、例えばこの上限温度に等しくてもよい。温度しきい値は、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。温度しきい値は、あらかじめ設定され、バルブコントローラ76に格納されていてもよい。
【0053】
冷却液の供給温度が温度しきい値を下回るとき、バルブコントローラ76は、冷却液バイパス弁74を閉じる。この場合、冷却液ライン106から供給される冷却液は、液冷熱交換器24に流入する。よって、冷却液は、液冷熱交換器24での冷媒ガスおよびオイルの冷却に利用される。
【0054】
一方、冷却液の供給温度が温度しきい値を超えるとき、バルブコントローラ76は、冷却液バイパス弁74を開く。この場合、冷却液ライン106から供給される冷却液は、冷却液バイパス弁74と液冷熱交換器24の両方に流れうる。しかし、一般に液冷熱交換器24の流路抵抗は大きいので、実際には、冷却液の大半または実質的に全量が液冷熱交換器24ではなく冷却液バイパス弁74に流れることになる。
【0055】
なお、冷却液バイパス弁74が開度を制御可能なタイプである場合には、冷却液の供給温度が温度しきい値を超えるとき、バルブコントローラ76は、冷却液バイパス弁74の開度を増加させてもよい。冷却液の供給温度が温度しきい値を下回るとき、バルブコントローラ76は、冷却液バイパス弁74の開度を減少させてもよい。このようにしても、液冷熱交換器24に供給される冷却液の温度が高いとき、液冷熱交換器24の冷却を制限することができる。また、冷却液温度が低下すればその制限を緩和または解除することができる。
【0056】
上述のように、環境温度などの外部要因またはその他の要因により冷却器110の冷却能力が不足し、冷却器110から圧縮機12への冷却液の供給温度が高まる事態が起こりうる。実施の形態によると、冷却コントローラ70は、冷却液バイパス弁74を利用して、液冷熱交換器24の冷却液流量を制限することができる。冷却液は冷却液バイパス弁74を通じて液冷熱交換器24をバイパスし、その結果、液冷熱交換器24に冷却液はほとんど(またはまったく)供給されず、液冷熱交換器24の冷却作用は限定的となるか、または事実上無くなる。圧縮機12は、冷却器110への放熱量を減らすことができ、すなわち冷却器110の負荷を低減することができる。
【0057】
こうして生み出された冷却器110の余力は、放熱が必要な極低温装置100内の他の機器102の冷却に利用できる。このようにして、冷却器110に起こりうる冷却能力不足およびこれに起因する問題に対処し、極低温装置100の運転を継続することができる。
【0058】
さらに、冷却コントローラ70は、液冷熱交換器24に供給される冷却液の供給温度が温度しきい値を超える場合、空冷熱交換器26を作動させるように構成されていてもよい。このようにすれば、上述の液冷熱交換器24への冷却液の供給制限にもかかわらず、圧縮機12は、空冷熱交換器26を使用して、または液冷熱交換器24と空冷熱交換器26を併用して、冷却を維持できる。
【0059】
この場合、例えば、バルブコントローラ76が、冷却液バイパス弁74だけでなく冷却ファン50も制御するように構成されてもよい。バルブコントローラ76は、冷却液の供給温度に基づく上述の冷却液バイパス弁74の動作に連動させて冷却ファン50を作動させてもよい。
【0060】
すなわち、冷却液の供給温度が温度しきい値を超えるとき、バルブコントローラ76は、冷却液バイパス弁74を開くとともに、空冷熱交換器26を作動させる(冷却ファン50をオンにする)。一方、冷却液の供給温度が温度しきい値を下回るとき、バルブコントローラ76は、冷却液バイパス弁74を閉じるとともに、空冷熱交換器26を作動させない(冷却ファン50をオフにする)。この温度しきい値は、冷却液バイパス弁74を開閉するために使用される上述の温度しきい値と同じ値であってもよい。
【0061】
空冷熱交換器26を作動させることにより、圧縮機12が発する熱は空冷熱交換器26の空気流とともに圧縮機12の周囲に放出されることになる。場合によっては、これが周囲温度の過剰な上昇をもたらし、周囲の機器に悪影響を及ぼすことも懸念される。
【0062】
これに対処すべく、冷却コントローラ70は、周囲温度を取得し、取得された周囲温度に基づいて空冷熱交換器26を停止するように構成されていてもよい。それとともに、またはそれに代えて、冷却コントローラ70は、周囲温度を取得し、取得された周囲温度に基づいて液冷熱交換器24の冷却液流量の制限を解除するように構成されていてもよい。
【0063】
周囲温度を取得するために、冷却コントローラ70は、周囲温度を測定する周囲温度センサ54を備えてもよい。周囲温度センサ54は、例えば、空冷熱交換器26の近傍で圧縮機筐体28に配置されてもよい。周囲温度センサ54は、冷却ファン50に設置されてもよい。
【0064】
例えば、冷却コントローラ70(例えばバルブコントローラ76)は、周囲温度センサ54によって測定された周囲温度を取得し、この周囲温度を所定の周囲温度しきい値と比較する。周囲温度が周囲温度しきい値を下回るとき、冷却コントローラ70は、空冷熱交換器26を作動させる。それとともに、またはそれに代えて、冷却コントローラ70は、液冷熱交換器24の冷却液流量を上述のように制限する(例えば、冷却液バイパス弁74を開く)。一方、周囲温度が周囲温度しきい値を超えるとき、冷却コントローラ70は、空冷熱交換器26を作動させない。それとともに、またはそれに代えて、冷却コントローラ70は、液冷熱交換器24の冷却液流量の制限を解除する(例えば、冷却液バイパス弁74を閉じる)。
【0065】
図3は、実施の形態に係る冷却コントローラ70の他の一例を概略的に示す図である。上述の温度センサ72およびバルブコントローラ76に加えて、冷却コントローラ70は、液冷熱交換器24と直列に接続された制御弁75を備えてもよい。制御弁75は、オンオフ弁であってもよい。あるいは、冷却液バイパス弁74は、流量制御弁であってもよい。冷却コントローラ70は、温度センサ72から取得された冷却液の供給温度に基づいて、制御弁75を開閉しまたはその開度を調整し、それにより液冷熱交換器24の冷却液流量を制御するように構成されてもよい。
【0066】
例えば、バルブコントローラ76は、温度センサ72から取得された冷却液の供給温度を温度しきい値と比較する。冷却液の供給温度が温度しきい値を下回るとき、バルブコントローラ76は、制御弁75を開く。この場合、冷却液ライン106から供給される冷却液は、液冷熱交換器24に流入する。よって、冷却液は、液冷熱交換器24での冷媒ガスおよびオイルの冷却に利用される。一方、冷却液の供給温度が温度しきい値を超えるとき、バルブコントローラ76は、制御弁75を閉じる。この場合、冷却液ライン106から供給される冷却液は遮断される。よって、冷却液は、液冷熱交換器24での冷却に利用されない。
【0067】
このようにしても、圧縮機12は、冷却液の温度上昇への対処として冷却器110への放熱量を減らし、冷却器110の負荷を低減することができる。
【0068】
なお、制御弁75が開度を制御可能なタイプである場合には、冷却液の供給温度が温度しきい値を超えるとき、バルブコントローラ76は、制御弁75の開度を減少させてもよい。冷却液の供給温度が温度しきい値を下回るとき、バルブコントローラ76は、制御弁75の開度を増加させてもよい。このようにしても、液冷熱交換器24に供給される冷却液の温度が高いとき、液冷熱交換器24の冷却を制限することができる。また、冷却液温度が低下すればその制限を緩和または解除することができる。
【0069】
また、
図3に破線で示されるように、上述の冷却液バイパス弁74が制御弁75と併用されてもよい。冷却コントローラ70は、冷却液の供給温度に基づいて冷却液バイパス弁74と制御弁75を連動させるように構成されてもよい。例えば、バルブコントローラ76が、冷却液バイパス弁74と制御弁75の両方を制御してもよい。バルブコントローラ76は、冷却液の供給温度に基づく上述の冷却液バイパス弁74の動作に連動させて制御弁75を制御してもよい。すなわち、冷却液の供給温度が温度しきい値を超えるとき、バルブコントローラ76は、冷却液バイパス弁74を開きかつ制御弁75を閉じてもよい。一方、冷却液の供給温度が温度しきい値を下回るとき、バルブコントローラ76は、冷却液バイパス弁74を閉じかつ制御弁75を開いてもよい。
【0070】
図4は、実施の形態に係る冷却コントローラ70の他の一例を概略的に示す図である。冷却コントローラ70は、供給側の第1温度センサ72に加えて、回収側の第2温度センサ73と流量センサ78とを備える。第2温度センサ73は、液冷熱交換器24から排出される冷却液の排出温度を測定する。第2温度センサ73は、冷却液出口ポート61と液冷熱交換器24との間に、または冷却液出口ポート61に設けられてもよい。流量センサ78は、液冷熱交換器24の冷却液流量を測定する。流量センサ78は、冷却液ライン106の供給側、この例では、第1温度センサ72と制御弁75との間に設けられている。
【0071】
冷却コントローラ70は、以下に述べるように、液冷熱交換器24に供給される冷却液の供給温度、液冷熱交換器24から排出される冷却液の排出温度および液冷熱交換器24の冷却液流量を取得し、取得された供給温度、排出温度および冷却液流量に基づいて液冷熱交換器24への放熱量を演算し、演算された放熱量が許容放熱量以下となるように液冷熱交換器24の冷却液流量を制限するように構成されていてもよい。
【0072】
例えば、バルブコントローラ76は、まず、液冷熱交換器24に供給される冷却液の供給温度を第1温度センサ72から取得し、液冷熱交換器24から排出される冷却液の排出温度を第2温度センサ73から取得し、液冷熱交換器24の冷却液流量を流量センサ78から取得する。
【0073】
続いて、バルブコントローラ76は、取得された供給温度、排出温度および冷却液流量に基づいて液冷熱交換器24への放熱量を演算する。圧縮機12から液冷熱交換器24への放熱量は、液冷熱交換器24の出入口間の温度差と液冷熱交換器24を流れる冷却液流量とから公知の手法により演算することができる。
【0074】
そして、バルブコントローラ76は、演算された放熱量が許容放熱量以下となるように液冷熱交換器24の冷却液流量を制限する。許容放熱量は、圧縮機12から液冷熱交換器24により冷却器110に放熱することが許容される放熱量であり、例えば、冷却液の供給温度に相関する値であってもよいし、一定値であってもよい。許容放熱量は、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。
【0075】
バルブコントローラ76は、演算された放熱量をこの許容放熱量と比較する。演算された放熱量が許容放熱量を下回るとき、バルブコントローラ76は、制御弁75を開く。この場合、冷却液ライン106から供給される冷却液は、液冷熱交換器24に流入する。よって、冷却液は、液冷熱交換器24での冷媒ガスおよびオイルの冷却に利用される。一方、演算された放熱量が許容放熱量を超えるとき、バルブコントローラ76は、制御弁75を閉じる。この場合、冷却液ライン106から供給される冷却液は遮断される。よって、冷却液は、液冷熱交換器24での冷却に利用されない。
【0076】
このようにしても、圧縮機12は、冷却器110への放熱量を減らし、冷却器110の負荷を低減することができる。
【0077】
なお、制御弁75が開度を制御可能なタイプである場合には、演算された放熱量が許容放熱量を超えるとき、バルブコントローラ76は、制御弁75の開度を減少させてもよい。演算された放熱量が許容放熱量を下回るとき、バルブコントローラ76は、制御弁75の開度を増加させてもよい。このようにしても、圧縮機12から液冷熱交換器24への放熱量が大きいとき、液冷熱交換器24による冷却を制限することができる。また、放熱量が低下すればその制限を緩和または解除することができる。
【0078】
また、
図4の実施の形態においても、
図3の実施の形態と同様に、上述の冷却液バイパス弁74が制御弁75と併用されてもよい。冷却コントローラ70は、演算された放熱量に基づいて冷却液バイパス弁74と制御弁75を連動させるように構成されてもよい。例えば、バルブコントローラ76が、冷却液バイパス弁74と制御弁75の両方を制御してもよい。バルブコントローラ76は、演算された放熱量に基づく上述の制御弁75の動作に連動させて冷却液バイパス弁74を制御してもよい。すなわち、演算された放熱量が許容放熱量を超えるとき、バルブコントローラ76は、冷却液バイパス弁74を開きかつ制御弁75を閉じてもよい。一方、演算された放熱量が許容放熱量を下回るとき、バルブコントローラ76は、冷却液バイパス弁74を閉じかつ制御弁75を開いてもよい。
【0079】
図5は、実施の形態に係る冷却コントローラ70の他の一例を概略的に示す図である。圧縮機12は、運転周波数(すなわち回転数)を可変とする圧縮機モータ80を備え、圧縮機本体16は圧縮機モータ80によって駆動される。圧縮機モータ80は、例えば電気モータであり、またはそのほか任意の適切な形式のモータであってもよい。圧縮機モータ80の運転周波数を増加させることにより、圧縮機本体16の吐出流量が増加される。このとき、圧縮機12の排熱量も増加する。逆に、圧縮機モータ80の運転周波数を減少させることにより、圧縮機本体16の吐出流量が減少される。このとき、圧縮機12の排熱量も減少する。
【0080】
冷却コントローラ70は、圧縮機モータ80の運転周波数を制御するインバータ82を備える。圧縮機モータ80およびインバータ82は、商用電源(三相交流電源)などの外部電源から給電される。インバータ82は、後述のように冷却コントローラ70による制御のもとで、外部電源から入力される電力の周波数を調整し、任意の周波数で圧縮機モータ80に出力するように構成される。圧縮機モータ80の運転周波数は、インバータ82の出力周波数に相当し、例えば、30Hzから100Hzの範囲、または40Hzから70Hzの範囲で調整可能である。
【0081】
冷却コントローラ70は、液冷熱交換器24に供給される冷却液の供給温度を取得し、取得された冷却液の供給温度に基づいて、圧縮機12の排熱量を制御するように構成されている。冷却コントローラ70は、取得された冷却液の供給温度を温度しきい値と比較し、供給温度が温度しきい値を超える場合、圧縮機モータ80の運転周波数を制限するように構成されている。
【0082】
例えば、冷却コントローラ70は、温度センサ72から取得された冷却液の供給温度を温度しきい値と比較する。冷却液の供給温度が温度しきい値を下回るとき、冷却コントローラ70は、圧縮機モータ80の運転周波数を維持する。または、冷却コントローラ70は、圧縮機モータ80の運転周波数の増加を許容する。すなわち、圧縮機12の排熱量を増加することが許容される。
【0083】
一方、冷却液の供給温度が温度しきい値を超えるとき、冷却コントローラ70は、圧縮機モータ80の運転周波数を減少させる。運転周波数の減少量は、一定値であってもよいし、冷却液の供給温度と温度しきい値の差に応じて決定されてもよい。この場合、圧縮機12の排熱量を減少させることができる。
【0084】
このようにしても、圧縮機12は、自身が発する熱を少なくすることができ、冷却器110の負荷を低減することができる。
【0085】
圧縮機モータの運転周波数を制限する上述の実施の形態は、
図1から
図4を参照して説明した液冷熱交換器24の冷却液流量を制限する実施の形態と併用されてもよい。
【0086】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0087】
上述の実施の形態では、圧縮機冷却系22において液冷熱交換器24と空冷熱交換器26が直列接続され、液冷熱交換器24が空冷熱交換器26の上流に設けられている。しかし、圧縮機冷却系22は、他の構成もとりうる。例えば、液冷熱交換器24と空冷熱交換器26が直列接続され、空冷熱交換器26が液冷熱交換器24の上流に設けられてもよい。あるいは、液冷熱交換器24と空冷熱交換器26が並列接続されてもよい。
【0088】
また、液冷熱交換器24は、冷媒ガスとオイルのうち一方のみを冷却するように構成されてもよい。あるいは、液冷熱交換器24は、冷媒ガスを冷却する第1液冷熱交換器と、オイルを冷却する第2液冷熱交換器とを備えてもよい。同様に、空冷熱交換器26は、冷媒ガスとオイルのうち一方のみを冷却するように構成されてもよい。あるいは、空冷熱交換器26は、冷媒ガスを冷却する第1空冷熱交換器と、オイルを冷却する第2空冷熱交換器とを備えてもよい。
【0089】
上述の実施の形態では、冷却コントローラ70は、圧縮機12内、すなわち圧縮機12の圧縮機筐体28内に設けられている。これに代えて、冷却コントローラ70は、圧縮機12の外に設けられてもよい。例えば、冷却コントローラ70は、圧縮機筐体28とは別の筐体に収容されてもよく、圧縮機筐体28に隣接または近接して、あるいは圧縮機12から離れて配置されてもよい。
【0090】
冷却液の供給温度を測定するための温度センサ72は、圧縮機12とは別の場所に配置されてもよい。例えば、温度センサ72は、冷却器110に設けられてもよい。あるいは、温度センサ72は、他の機器102への冷却液ラインに設けられてもよい。冷却コントローラ70は、冷却器110及び/または他の機器102に設けられた温度センサ72から冷却液の供給温度を取得してもよい。
【0091】
冷却液バイパス弁74及び/または制御弁75の動作に伴って液冷熱交換器24の冷却液流量の急変を緩和または防止するために、冷却コントローラ70は、冷却液バイパス弁74と直列に、及び/または、制御弁75と直列に設けられたオリフィスまたは定流量弁を備えてもよい。
【0092】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0093】
10 極低温冷凍機、 12 圧縮機、 16 圧縮機本体、 24 液冷熱交換器、 26 空冷熱交換器、 70 冷却コントローラ、 75 制御弁、 76 バルブコントローラ、 80 圧縮機モータ。