(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059370
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】超音波接合装置、超音波接合方法、および接合体
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20240423BHJP
B06B 1/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B23K20/10
B06B1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167008
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水本 将弘
(72)【発明者】
【氏名】谷本 晃一
【テーマコード(参考)】
4E167
5D107
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA08
4E167BE01
4E167BE04
4E167BE06
5D107BB01
5D107FF03
(57)【要約】
【課題】被接合材の逃げを抑制しつつ接合を行うことができる超音波接合装置、超音波接合方法、およびその超音波接合技術により接合された接合体を提供すること。
【解決手段】本開示技術は、第1接合対象物6に超音波振動を印加することにより第1接合対象物6を第2接合対象物7に接合させる超音波接合装置1であって、超音波発振器2と、先端が第1接合対象物6に接触して超音波発振器2の超音波振動を第1接合対象物6へ伝達する加工ツール3と、加工ツール3の先端よりも前方側に突出しており第1接合対象物6のない場所における第2接合対象物7に先端が接触するストッパ部材4と、加工ツール3およびストッパ部材4を一体として前進させる荷重部5とを有する装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接合対象物に超音波振動を印加することにより第1接合対象物を第2接合対象物に接合させる超音波接合装置であって、
超音波発振器と、
先端が第1接合対象物に接触して前記超音波発振器の超音波振動を第1接合対象物へ伝達する加工ツールと、
前記加工ツールの先端よりも前方側に突出しており第1接合対象物のない場所における第2接合対象物に先端が接触するストッパ部材と、
前記加工ツールおよび前記ストッパ部材を一体として前進させる荷重部とを有する超音波接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波接合装置であって、
前記ストッパ部材の先端に、第2接合対象物に接触したときに第2接合対象物に打痕を形成する打痕チップを有する超音波接合装置。
【請求項3】
第1接合対象物に超音波振動を印加することにより前記第1接合対象物を第2接合対象物に接合させる超音波接合方法であって、
前記第1接合対象物を前記第2接合対象物の上に載せるとともに、前記第2接合対象物の上面の一部が前記第1接合対象物に覆われずに露出する状態とし、
前記第1接合対象物の上面に加工ツールの先端を押し当てるとともに、前記第2接合対象物の露出している上面に対してストッパ部材の先端を対面させ、前記ストッパ部材の先端が前記加工ツールの先端より突出しつつも前記第2接合対象物の上面に接触していない状態とし、
前記加工ツールを超音波発振器で加振しつつ、前記ストッパ部材の先端が前記第2接合対象物の上面に当たるまで前記加工ツールおよび前記ストッパ部材を一体として前進させ、
前記加工ツールおよび前記ストッパ部材が前進している間に、前記第1接合対象物の上面に沈み部を形成しつつ、前記超音波発振器の超音波振動を前記加工ツールを介して前記第1接合対象物へ伝達して、前記第1接合対象物の下面と前記第2接合対象物の上面とを接合させる超音波接合方法。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波接合方法であって、
前記ストッパ部材の先端が前記第2接合対象物の上面に当たったときに前記第2接合対象物の上面に打痕を形成する超音波接合方法。
【請求項5】
第1接合片を第2接合片に接合してなる接合体であって、
前記第1接合片が前記第2接合片の上に、前記第2接合片の上面の一部が前記第1接合片に覆われずに露出している状態で載っており、
前記第1接合片が前記第2接合片の上面を覆っている範囲内の一部の領域にて前記第1接合片の下面と前記第2接合片の上面とが接合されており、
前記第1接合片の下面と前記第2接合片の上面とが接合されている領域における前記第1接合片の上面に沈み部が形成されており、
前記第2接合片の上面が前記第1接合片に覆われていない範囲内に打痕が形成されている接合体。
前記第2接合片の露出している上面に打痕が形成されている接合体。
【請求項6】
請求項5に記載の接合体であって、
前記第1接合片がアルミ材であり前記第2接合片が銅材である接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、超音波接合装置、超音波接合方法、および接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波接合技術の公知例として、特許文献1を挙げることができる。同文献の技術では、被接合材金属に直接に接する工具の表面に、炭化物層をコーティングすることとしている。被接合材に直接に接する工具とは、ホーンあるいはアンビルのことである。炭化物層により工具と被接合材との凝着が防止され、板厚の厚いアルミ材でも超音波接合を連続して行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術では、被接合材の接合箇所によっては、接合強度が想定したようには得られないという問題点があった。例えば、第1の被接合材の上にそれより小寸の第2の被接合材を接合する場合であって、接合箇所が第2の被接合材の端部付近である場合である。この場合、接合時に、第2の被接合材の材料がその端部が逃げてしまう。これにより、接合強度が十分には得られない結果となる。第2の被接合材が材質的に低強度のものである場合には、材料の逃げが特に顕著であった。
【0005】
本開示技術の課題は、被接合材の逃げを抑制しつつ接合を行うことができる超音波接合装置および超音波接合方法を提供することにある。さらに、その超音波接合技術により接合された接合体をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における超音波接合装置は、第1接合対象物に超音波振動を印加することにより第1接合対象物を第2接合対象物に接合させる装置であって、超音波発振器と、先端が第1接合対象物に接触して超音波発振器の超音波振動を第1接合対象物へ伝達する加工ツールと、加工ツールの先端よりも前方側に突出しており第1接合対象物のない場所における第2接合対象物に先端が接触するストッパ部材と、加工ツールおよびストッパ部材を一体として前進させる荷重部とを有するものである。
【0007】
本開示技術の別の一態様における超音波接合方法は、第1接合対象物に超音波振動を印加することにより第1接合対象物を第2接合対象物に接合させるに際して、第1接合対象物を第2接合対象物の上に載せるとともに、第2接合対象物の上面の一部が第1接合対象物に覆われずに露出する状態とし、第1接合対象物の上面に加工ツールの先端を押し当てるとともに、第2接合対象物の露出している上面に対してストッパ部材の先端を対面させ、ストッパ部材の先端が加工ツールの先端より突出しつつも第2接合対象物の上面に接触していない状態とし、加工ツールを超音波発振器で加振しつつ、ストッパ部材の先端が第2接合対象物の上面に当たるまで加工ツールおよびストッパ部材を一体として前進させ、加工ツールおよびストッパ部材が前進している間に、第1接合対象物の上面に沈み部を形成しつつ、超音波発振器の超音波振動を加工ツールを介して第1接合対象物へ伝達して、第1接合対象物の下面と第2接合対象物の上面とを接合させることを行う方法である。
【0008】
上記態様における超音波接合装置または超音波接合方法では、超音波発振器の超音波振動を加工ツールを介して第1接合対象物に印加することによる接合の工程が行われている間、加工ツールおよびストッパ部材が前進していく。前進が止まるとそれ以上は接合処理がなされない。このため加工量が、加工ツールおよびストッパ部材の前進量により規定される。前進量は、加工開始からストッパ部材の先端が第2接合対象物に当たるまでに加工ツールおよびストッパ部材が前進できる長さである。このため接合対象物の個体差にかかわらず加工量をほぼ一定とすることができ、加工不足や過加工が生じにくい。このため得られる接合体における接合強度が安定しており、歩留まりが高い。
【0009】
上記態様に係る超音波接合装置はさらに、ストッパ部材の先端に、第2接合対象物に接触したときに第2接合対象物に打痕を形成する打痕チップを有することが望ましい。上記態様に係る超音波接合方法では、ストッパ部材の先端が第2接合対象物の上面に当たったときに接合対象物の上面に打痕を形成することが望ましい。第2接合対象物に打痕が形成されることにより、接合後の接合体において、上記超音波接合装置もしくは上記超音波接合方法が用いられたものであることが分かる。
【0010】
本開示技術のさらに別の一態様における接合体は、第1接合片を第2接合片に接合してなる接合体であって、第1接合片が第2接合片の上に、第2接合片の上面の一部が第1接合片に覆われずに露出している状態で載っており、第1接合片が第2接合片の上面を覆っている範囲内の一部の領域にて第1接合片の下面と第2接合片の上面とが接合されており、第1接合片の下面と第2接合片の上面とが接合されている領域における第1接合片の上面に沈み部が形成されており、第2接合片の上面が第1接合片に覆われていない範囲内に打痕が形成されているものである。上記態様に係る超音波接合装置または超音波接合方法により得られる接合体である。
【0011】
上記態様に係る接合体の例として、第1接合片がアルミ材であり第2接合片が銅材であるものを挙げることができる。電池の集電部材を上記態様の接合体とすることができる。上記態様に係る超音波接合方法でも、第1接合対象物がアルミ材であり第2接合対象物が銅材である例を挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示技術によれば、被接合材の逃げを抑制しつつ接合を行うことができる超音波接合装置および超音波接合方法が提供されている。さらに、その超音波接合技術により接合された接合体も提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る超音波接合装置の構成を示す正面図である。
【
図2】超音波接合装置の主要部を示す正面図である。
【
図5】比較例における接合終了時の状況を示す正面図である。
【
図6】実施の形態に係る接合体の構成を示す断面図である。
【
図7】
図6の接合体における接合箇所付近を拡大して示す平面図(その1)である。
【
図8】
図6の接合体における接合箇所付近を拡大して示す平面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本形態は、
図1に示す超音波接合装置1として本開示技術を具体化したものである。超音波接合装置1は、ホーン2と、加工ツール3と、ストッパ部材4と、荷重部5とを有している。
【0015】
ホーン2は、超音波振動数の振動(以下、超音波振動)を発生する超音波発振器である。ホーン2が発生する超音波振動は加工ツール3に伝達されるようになっている。加工ツール3は、ホーン2の超音波振動を被接合材に伝達する部材である。ストッパ部材4は、加工ツール3に添えられている部材である。ストッパ部材4は加工ツール3と一体に設けられている。ストッパ部材4の先端は加工ツール3の先端よりも前方(
図1中で矢印Gの向き)に突出している。荷重部5は、加工ツール3およびストッパ部材4に荷重をかけて矢印Gの向きに沈み込ませる装置である。
【0016】
図1中には、超音波接合装置1により接合される被接合材として、第1接合対象物6と第2接合対象物7とが描かれている。本形態における第1接合対象物6は、アルミもしくはアルミを主成分とする合金(以下、アルミ材)である。本形態における第2接合対象物7は、銅もしくは銅を主成分とする合金(以下、銅材)である。本形態で対象とするアルミ材および銅材の主要な例は、電池における集電部材である。超音波接合装置1にはさらに、アンビル8が備えられている。第1接合対象物6および第2接合対象物7はアンビル8の上に載っている。アンビル8は、第1接合対象物6、第2接合対象物7の重量、荷重部5による加工荷重が掛かっても動かない固定部材である。
【0017】
アンビル8の上には第2接合対象物7が載っており、さらに第2接合対象物7の上に第1接合対象物6が載っている。
図1中における水平方向に関して、第1接合対象物6は第2接合対象物7より小寸である。
図1中には、第1接合対象物6を第2接合対象物7の上に載せるとともに、第2接合対象物7の上面の一部が第1接合対象物6に覆われずに露出する状態が描かれている。このため
図1中には、第1接合対象物6が第2接合対象物7の上面を覆っている範囲9と、第2接合対象物7の上面が第1接合対象物6に覆われていない範囲10とがある。
【0018】
範囲9では、第1接合対象物6の下面と第2接合対象物7の上面とが接触している。本形態で第1接合対象物6と第2接合対象物7とを接合しようとする対象箇所Xは、範囲9のうち範囲10に隣接する箇所である。対象箇所Xの真上に加工ツール3が位置している。ストッパ部材4が位置しているのは対象箇所Xの隣の箇所Yであり、範囲10のうち範囲9に隣接する箇所である。
図1中に第2接合対象物7の厚さを「T」で示している。
【0019】
ストッパ部材4の先端の加工ツール3の先端に対する突出量A(
図2参照)は、後述する加工時の沈み込み量に合わせてセットされている。突出量Aは第2接合対象物7の厚さTより小さい。加工ツール3の先端には加工チップ11が取り付けられている。ホーン2から加工ツール3に伝達された超音波振動は最終的に、加工チップ11を介して第1接合対象物6に印加される。ストッパ部材4の先端には打痕チップ12が取り付けられている。打痕チップ12は、ストッパ部材4の先端が第2接合対象物7に当たったときに第2接合対象物7にその痕跡形状を残すための部材である。
【0020】
ホーン2が発生する超音波振動は、
図1中で水平な方向(矢印B)の振動成分を含んでいる。この振動は第1接合対象物6と第2接合対象物7との接触面と平行な振動である。この振動が加工ツール3を経て第1接合対象物6に伝えられると、第1接合対象物6と第2接合対象物7との間に局所的な摩擦が起こる。その摩擦熱により第1接合対象物6の下面と第2接合対象物7の上面との接触箇所が局所的に溶融し、接合される。
【0021】
この接合が行われているとき、加工ツール3は、荷重部5からの荷重により矢印Gの向きに沈み込んでいく。この沈み込みは「前進」の一例である。ストッパ部材4も加工ツール3とともに下降していく。この、加工ツール3による第1接合対象物6と第2接合対象物7との接合は、後述するように沈み部14(
図4参照)を形成しつつ行われる。沈み部14には後述する加工痕15(
図7参照)が形成される。
【0022】
図3に接合開始時の状況を示す。
図3の
図1に対する相違点は、ホーン2と加工ツール3とストッパ部材4との全体が少し下がっていることである。
図3に示される超音波接合装置1では、加工チップ11が第1接合対象物6の表面に押し当てられている。しかしながら打痕チップ12は、加工チップ11より突出しつつも第2接合対象物7の上面に対面しつつも接触してはいない。これは、前述の突出量Aと厚さTとの違いによる。
【0023】
図3の状況で、ホーン2による超音波振動の発生を開始する。これにより接合が開始される。接合が行われている間は、加工ツール3がホーン2により加振されつつ、前述のように加工ツール3およびストッパ部材4が一体として下降していく。このため、接合を開始するとやがて、
図4に示すように、ストッパ部材4の先端の打痕チップ12が第2接合対象物7の表面に接触する状態となる。この状態に至ったら加工を終了する。このとき第2接合対象物7の表面には、後述する打痕16(
図7参照)が形成される。
【0024】
図4の状況では
図3の状況と比して、ホーン2と加工ツール3とストッパ部材4との全体がさらに下がっている。打痕チップ12の先端が接合対象物7の表面に接触するまで加工ツール3およびストッパ部材4を沈み込ませたためである。その分、第1接合対象物6の表面が少し凹んで沈み部14が形成されている。
図4の状況では、第1接合対象物6の下面と第2接合対象物7の上面との接触面のうち太線13で示している範囲が、接合された領域である。この接合領域13は、範囲9のうちの範囲10に隣接する範囲である。また、加工ツール3の真下の位置である。
【0025】
本形態における上記の超音波接合方法では、加工量は基本的に、接合開始から接合終了までの加工ツール3の沈み込み量で決まる。この沈み込み量とは、
図3の状態における打痕チップ12の先端と第2接合対象物7の上面との間隔のことである。これは前述のように突出量Aと厚さTとの差により決まる。このため、突出量Aを厚さTに対して適切に設定しておけば、加工量は第1接合対象物6および第2接合対象物7の個体差に関わらず一定となる。したがって本形態では、接合不良となる確率が低く、歩留まりが高い。
【0026】
もし、加工量を加工ツール3の沈み込み量以外の手段で定めると、上記のようにはならない。例えば加工量を加工時間で定めると、実際の加工量が個体によりかなりばらつくことになる。接合箇所における第1接合対象物6および第2接合対象物7の表面状態にはかなり個体差があるからである。このため加工時間を一定に定めておいたとしても、個々の加工対象においては加工不足あるいは過加工のものが発生する。
【0027】
加工不足のものでは接合不良となることはもちろんであるが、過加工のものもまた接合不良となる。過加工のものでは
図5(ストッパ部材4がない)に示すように、第1接合対象物6の材料成分(アルミ材)の範囲10側への逃げが著しく、沈み部14の凹み量が過大となってしまう。これでは結局、狙った接合強度が得られないのである。
【0028】
加工時間ではなく加工ツール3の沈み込み量で加工量が管理される本形態では、第1接合対象物6および第2接合対象物7の表面状態の個体差に関わらず、狙い通りの加工量で接合が行われる。このため加工不足あるいは過加工のものが発生しにくく、狙った接合強度が安定して得られる。
【0029】
次に、本形態の超音波接合技術により接合した接合体について述べる。
図6に接合体20の断面図を示す。これは
図4のうち第1接合対象物6の部分および第2接合対象物7の部分を抜き出したものである。接合体20の説明としては以下、第1接合対象物6を第1接合片6といい、第2接合対象物7を第2接合片7という。
図6の接合体20は、第2接合片7の上に第2接合片7が載っている構造のものである。
図6中における水平方向に関して、第1接合片6は第2接合片7より小寸である。このため
図6中には、第1接合片6が第2接合片7の上面を覆っている範囲9と、第2接合片7の上面が第1接合片6に覆われていない範囲10とがある。
【0030】
第1接合片6の下面と第2接合片7の上面とは、範囲9のうちの一部の領域である接合領域13にて接合されている。この接合はむろん、前述の超音波接合によるものである。接合領域13における第1接合片6の上面には沈み部14が形成されている。沈み部14は、超音波接合の際に加工ツール3の先端が当たったことにより形成された凹部である。
図6では、
図5で説明したストッパ部材4がない場合の第1接合対象物6の「逃げ」が見られない。本形態の接合体20では、超音波接合の加工量が前述のように加工ツール3の沈み込み量で管理されているため、過加工になっていることがないからである。
【0031】
接合体20を上方から見た平面図を
図7に示す。
図7に示されるのは、接合体20のうち、範囲9と範囲10との境目付近の、沈み部14およびその周辺の部位が示されている。
図7中における沈み部14の範囲内には、加工痕15が形成されている。加工痕15は、超音波接合の際に加工チップ11の形状の一部が転写されて形成された形状である。
【0032】
図7中における範囲10の中には、打痕16が形成されている。打痕16は、超音波接合の際にストッパ部材4の先端が当たったことにより、打痕チップ12の形状の一部が転写されて形成された形状である。ストッパ部材4に打痕チップ12が装着されているため、より認識しやすい打痕16が形成されている。
【0033】
打痕16が形成されている場所は、範囲10の中でもごく範囲9寄りの位置である。これは、
図1中に矢印Yで示した範囲内の位置である。かつ、範囲9に沈み部14が形成されている範囲と対応する範囲内の位置である。
図7でも
図6と同様に第1接合対象物6の「逃げ」は見られない。打痕16は、第2接合片7の露出している上面そのものに形成されている。
【0034】
本形態の接合体20では、第1接合対象物6の「逃げ」は、仮に発生したとしてもその量はごく僅かである。
図8に、僅かに逃げ材17が発生した場合の平面図を示す。
図8では、打痕16が、逃げ材17の範囲と第2接合片7が露出している範囲とに跨がって形成されている。打痕16の具体的形状は、そのとき使用した打痕チップ12の先端形状に依存する。
【0035】
本開示技術においては、逃げ材17は、仮に発生したとしても第1接合片6に含まれないものとする。したがって打痕16は、逃げ材17の範囲内に形成されていても、第2接合片7の露出している上面そのものに形成されていても、接合体20のうち第2接合片7の上面が第1接合片6に覆われていない範囲に形成されていることになる。
【0036】
本形態の接合体20では前述の理由により、接合領域13の接合強度が良好で、そのばらつきが少ない。また、打痕16が形成されていることにより、本開示技術に係る超音波接合方法により接合されたものであることが分かる。
【0037】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、第1接合対象物6に超音波振動を印加することにより第1接合対象物6を第2接合対象物7に接合させるに際して、加工ツール3の先端よりも前方側に突出しているストッパ部材4を加工ツール3とともに用いることしている。これにより、接合の加工量が、加工ツール3の沈み込み量によって定まるようにしている。これにより、加工不足あるいは過加工が発生しにくく、接合強度の良好な接合体20が歩留まりよく得られるようにしている。これにより、電池の良質な集電部材を製造することができる。さらに打痕チップ12により接合体20に痕跡を残すようにしている。
【0038】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、第1接合対象物6および第2接合対象物7の材種は、前述のアルミと銅に限らない。同じ種類の金属であることも妨げられない。ただし、第1接合対象物6の材種が第2接合対象物7の材種よりも柔らかい組み合わせであることが望ましい。
【0039】
荷重部5としては、錘の重量で加工ツール3およびストッパ部材4を沈み込ませるものが考えられる。ストッパ部材4自体がある程度重いものである場合には、ストッパ部材4が荷重部5を兼ねることもできる。荷重部5は、油圧または空気圧等により加工ツール3およびストッパ部材4を前進させる装置でもよい。その場合、「前進」の向きは下降方向には限定されない。ストッパ部材4の先端が第2接合対象物7に接触したときの加工の停止については、加工ツール3およびストッパ部材4の前進の停止を検知して自動的にホーン2の発振を停止させるようにしてもよい。突出量A(
図2参照)を被接合材に合わせて調節できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 超音波接合装置 9 覆っている範囲
2 ホーン 10 覆われていない範囲
3 加工ツール 12 打痕チップ
4 ストッパ部材 13 接合領域
5 荷重部 14 沈み部
6 第1接合対象物、第1接合片 16 打痕
7 第2接合対象物、第2接合片 20 接合体