IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋紡株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059374
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20240423BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240423BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240423BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240423BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240423BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/00 L
B32B27/20 A
B32B27/36
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167012
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】西尾 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA21A
4F100AA21B
4F100AK03D
4F100AK07C
4F100AK17D
4F100AK25D
4F100AK36D
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA13A
4F100CA13B
4F100DE01A
4F100DE01B
4F100DJ06C
4F100EH20
4F100EJ38
4F100GB41
4F100JA06C
4F100JA13
4F100JL14D
4F100JN02
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】空洞発現剤としてポリオレフィン樹脂を主に含有し、環境対応性、軽量性、製膜性、隠蔽性、白色度、および離型性に優れた離型フィルムを提供する。
【解決手段】離型フィルムは、無機顔料を含有するポリエステル樹脂で構成される第1被覆層B1と、内部に空洞を含有する空洞含有層Aと、無機顔料を含有するポリエステル樹脂で構成される第2被覆層B2と、がこの順序に積層された積層体の少なくとも片面に離型層Cを塗布したフィルムである。空洞含有層Aは、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂を含有する第1組成物からなる。離型層Cは、非シリコーン系の離型性樹脂を含有する第2組成物からなる。また、この離型フィルムの見かけ密度は0.80g/cm以上1.20g/cm以下である。第1被覆層B1及び第2被覆層B2中の無機顔料は例えば酸化チタンである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機顔料を含有するポリエステル樹脂で構成される第1被覆層B1と、内部に空洞を含有する空洞含有層Aと、無機顔料を含有するポリエステル樹脂で構成される第2被覆層B2と、がこの順序に少なくとも積層された積層フィルムと、積層フィルムの少なくとも片面に離型層Cとを有する離型フィルムであって、
空洞含有層Aは、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂を含有する第1組成物からなり、
離型層Cは、非シリコーン系の離型性樹脂を含有する第2組成物からなり、
見かけ密度が0.80g/cm以上1.20g/cm以下である、離型フィルム。
【請求項2】
非シリコーン系の離型性樹脂は、ポリオレフィン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、長鎖アルキル基を有するアクリル系樹脂、フッ素系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種以上を含有する樹脂である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
空洞含有層A層に含有されるポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂が、下記要件(1)~(3)を満たす請求項1に記載の離型フィルム。
(1)前記ポリエステル樹脂の溶融温度280℃、せん断速度121.6sec-1における溶融粘度(η1)が90Pa・s以上400Pa・s以下である。
(2)前記ポリオレフィン樹脂の溶融温度280℃、せん断速度121.6sec-1における溶融粘度(η2)が300Pa・s以上700Pa・s以下である。
(3)前記ポリエステル樹脂と前記ポリオレフィン樹脂の溶融温度280℃、せん断速度121.6sec-1における溶融粘度比(η2/η1)が1.5以上4.5以下である。
【請求項4】
第1被覆層B1及び第2被覆層B2中の無機顔料が酸化チタンである、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項5】
第1被覆層B1の厚み、空洞含有層Aの厚み及び第2被覆層B2の厚みの合計に対する第1被覆層B1の厚み及び第2被覆層B2の厚みの合計の比率は、6%以上40%以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項6】
離型層C表面の常態剥離力が400mN/50mm以上6000mN/50mm以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項7】
ラベル用セパレーター又は工程用離型フィルムの用途に用いられることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に空洞を含有する離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙と類似した機能を有するフィルムを得る方法として、微細な空洞をフィルム内部に多量に含有させる方法が知られている。
【0003】
この方法は、ポリエステル樹脂中に非相溶な熱可塑性樹脂(以下、非相溶樹脂と呼ぶ)を混合し、ポリエステル樹脂中に該非相溶樹脂を分散させたシートを得て、少なくとも1軸方向に延伸する。これによりこの方法は、ポリエステル樹脂と非相溶樹脂との間での界面剥離によって、空洞を発現させる。このような非相溶樹脂として例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂などのポリオレフィン樹脂(例えば、特許文献1~3参照)やポリスチレン樹脂(例えば、特許文献4、5参照)が提案されている。特に、これらの中で空洞発現性やコストパフォーマンスの点で、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0004】
ここで、ポリプロピレン樹脂を含むポリオレフィン樹脂を単純にポリエステル樹脂に分散させた場合、ポリオレフィン分散粒子の分散径が大きくなる。そのため、空洞は発現し易いが、一方で空洞が大きくなってしまい、十分な隠蔽性が得られず、また製膜性も悪くなる。そのため、ポリオレフィン樹脂を微分散化させる方法が採用されてきた。これまで、この微分散化させる方法として、界面活性剤やポリエチレングリコールなどの分散剤を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献6、7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭49-134755号公報
【特許文献2】特開平2-284929号公報
【特許文献3】特開平2-180933号公報
【特許文献4】特公昭54-29550号公報
【特許文献5】特開平11-116716号公報
【特許文献6】特公平7-17779号公報
【特許文献7】特開平8-252857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、界面活性剤やポリエチレングリコールなどの分散剤を添加した場合、ポリオレフィン樹脂に対して、微分散化効果はあるものの、加熱延伸工程や熱固定工程でポリオレフィン樹脂が変形してしまう。そのため、得られる空洞も潰れ易くなり、十分な軽量性やクッション性が得られない。また、界面活性剤やポリエチレングリコールは耐熱性に劣るため、ポリエステル樹脂に合わせた溶融押出工程において、熱劣化が生じ易く、得られるフィルムの白色度が低下してしまう。場合によっては、ポリエステル樹脂の劣化を促進し、製膜性が悪化する問題がある。
【0007】
近年、ディスプレイ構成部材の保護等に使用する離型フィルムや各種電子部品製造用工程フィルムにおいて、離型フィルムの剥離識別性が必要とされる場合がある。また各種電子部品製造工程においては熱処理工程を伴う場合もあり、工程用離型フィルムには耐熱性・寸法安定性が求められる場合がある。また近年、環境面から原材料の使用削減・軽量化や資源循環が求められている。無色透明なポリエステルフィルムで構成される離型フィルムにあっては、耐熱性や寸法安定性は十分に満足できるが、フィルムの剥離識性や原材料量の削減・軽量化を満足することが難しいという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点を改善し、空洞発現剤としてポリオレフィン樹脂を主に含有し、環境対応性、軽量性、耐熱性、寸法安定性、製膜性、隠蔽性、白色度、および剥離体に対する離型性に優れた離型フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ポリエステル樹脂およびポリオレフィン樹脂の溶融粘度および溶融粘度比を特定の範囲内に調整した条件で製膜することで、ポリエステル樹脂中のポリオレフィン樹脂の分散粒子径を適切なサイズに制御でき、更に少なくとも積層フィルムの片面に離型層を有することで、軽量性、耐熱性、寸法安定性、製膜性、隠蔽性、白色度、および離型性に優れた空洞含有ポリエステル系フィルムが得られることを見出した。この離型性は、例えば粘着ラベル等である剥離体に対する離型性である。
【0010】
すなわち、本発明の離型フィルムは、以下の構成よりなる。
1.無機顔料を含有するポリエステル樹脂で構成される第1被覆層B1と、内部に空洞を含有する空洞含有層Aと、無機顔料を含有するポリエステル樹脂で構成される第2被覆層B2と、がこの順序に少なくとも積層された積層フィルムと、積層フィルムの少なくとも片面に離型層Cとを有する離型フィルムであって、
空洞含有層Aは、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂を含有する第1組成物からなり、
離型層Cは、非シリコーン系の離型性樹脂を含有する第2組成物からなり、
見かけ密度が0.80g/cm以上1.20g/cm以下である、離型フィルム。
2.非シリコーン系の離型性樹脂は、ポリオレフィン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、長鎖アルキル基を有するアクリル系樹脂、フッ素系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種以上を含有する樹脂である上記1.に記載の離型フィルム。
3.空洞含有層A層に含有されるポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂が、下記要件(1)~(3)を満たす上記1.に記載の離型フィルム。
(1)前記ポリエステル樹脂の溶融温度280℃、せん断速度121.6sec-1における溶融粘度(η1)が90Pa・s以上400Pa・s以下である。
(2)前記ポリオレフィン樹脂の溶融温度280℃、せん断速度121.6sec-1における溶融粘度(η2)が300Pa・s以上700Pa・s以下である。
(3)前記ポリエステル樹脂と前記ポリオレフィン樹脂の溶融温度280℃、せん断速度121.6sec-1における溶融粘度比(η2/η1)が1.5以上4.5以下である。
4.第1被覆層B1及び第2被覆層B2中の無機顔料が酸化チタンである、上記1.に記載の離型フィルム。
5.第1被覆層B1の厚み、空洞含有層Aの厚み及び第2被覆層B2の厚みの合計に対する第1被覆層B1の厚み及び第2被覆層B2の厚みの合計の比率は、6%以上40%以下である上記1.に記載の離型フィルム。
6.離型層C表面の常態剥離力が400mN/50mm以上6000mN/50mm以下である上記1.に記載の離型フィルム。
7.ラベル用セパレーター又は工程用離型フィルムの用途に用いられることを特徴とする上記1.に記載の離型フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、空洞発現剤としてポリオレフィン樹脂を主に含有し、環境対応性、軽量性、製膜性、隠蔽性、白色度、および離型性に優れた離型フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の離型フィルムは少なくとも、積層フィルム、離型層Cがこの順序で積層されたフィルムである。積層フィルムは、無機顔料を含有するポリエステル樹脂で構成される第1被覆層B1と、内部に空洞を含有する空洞含有層Aと、無機顔料を含有するポリエステル樹脂で構成される第2被覆層B2と、がこの順序に少なくとも積層された空洞含有ポリエステルフィルムである。離型層Cは、積層フィルムの少なくとも片面に設けられている。この空洞含有層Aは、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂を含有する第1組成物からなる。離型層Cは、非シリコーン系の離型性樹脂を含有する第2組成物からなる。また、この離型フィルムの見かけ密度は0.80g/cm以上1.20g/cm以下である。
【0014】
空洞含有層A、第1被覆層B1及び第2被覆層B2の主成分となるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。このようなポリエステル樹脂の代表例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートが挙げられる。これらのうち、機械的特性および耐熱性、コストなどの観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0015】
また、これらのポリエステル樹脂には、本発明の目的が損なわれない範囲であれば、他の成分が共重合されていてもよい。具体的には、共重合成分としては、ジカルボン酸成分では、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4-ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。また、ジオール成分としてはジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールも挙げられる。共重合量としては、構成する繰り返し単位あたり10モル%以内が好ましく、5モル%以内がより好ましい。
【0016】
ポリエステル樹脂の製造方法としては例えば、まず、前述のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成誘導体とを主たる出発原料とする。次に常法に従い、エステル化またはエステル交換反応を行った後、さらに高温・減圧下で重縮合反応を行うことによって製造する。
【0017】
ポリエステル樹脂の極限粘度は、製膜性や回収利用性などの点から0.50dl/g以上0.9dl/g以下が好ましく、より好ましくは0.55dl/g以上0.85dl/g以下である。
【0018】
ポリエステル樹脂の含有量は、空洞含有層A中に含まれる全成分の合計100質量%に対して、70質量%以上97質量%以下が好ましく、75質量%以上95質量%以下が更に好ましい。ポリエステル樹脂の含有量が70質量%以上である場合、離型フィルムは、製膜性の悪化を抑制することができる。ポリエステル樹脂の含有量が97%以下である場合、離型フィルムは、ポリオレフィン樹脂及の添加により、空洞を形成させることができる。
【0019】
空洞含有層A、第1被覆層B1及び第2被覆層B2の主成分となるポリエステル樹脂の、溶融温度280℃、せん断速度121.6sec-1における溶融粘度(η1)は、製膜性や白色度の観点から、90Pa・s以上400Pa・s以下であることが好ましい。より好ましくは130Pa・s以上350Pa・s以下である。η1が90Pa・s以上である場合、本発明は、得られるフィルムの白色度が低下したり、製膜性が悪化することを防止できる。一方、η1が400Pa・s以下である場合、本発明は、溶融押出工程での混練性悪化や背圧上昇などの問題を防止できる。
【0020】
次に、本発明で空洞発現剤として使用される非相溶樹脂であるポリオレフィン樹脂について説明する。本発明の離型フィルムは、特定の層構成を採用し、特定のポリオレフィン樹脂を用いることで空洞発現性を維持できる。ポリオレフィン樹脂は例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などであり、ポリプロピレン樹脂が好ましい。これにより、本発明の離型フィルムは、十分な軽量性やクッション性が得られるとともに、製膜性、隠蔽性、及び白色度に優れる。
【0021】
本発明で使用するポリオレフィン樹脂は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のオレフィン単位を有する結晶性ポリオレフィンが好ましい。特に好ましくは、オレフィン単位が100モル%の結晶性ポリオレフィンホモポリマーである。
【0022】
本発明で使用するポリオレフィン樹脂は、空洞発現性や製膜性の観点から、メルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以上10.0g/10分以下が好ましく、1.5g/10分以上7.0g/分以下が更に好ましい。MFRが1.0g/10分以上10.0g/10分以下である場合、ダイスから押し出されるときにポリオレフィン分散粒子が変形し難くなるため、空洞を形成し易くなる。さらに、MFRが1.0g/10分以上10.0g/10分以下である場合、ポリオレフィン分散粒子の分散性も優れ、十分な隠蔽性が得られ、製膜性も優れる。尚、メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準じ、230℃、荷重2.16kgの条件下での測定値である。
【0023】
本発明で使用するポリオレフィン樹脂では、空洞発現性の観点から、荷重たわみ温度が85℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、95℃以上であることが更に好ましい。上限としては、特に制限する必要はないが、135℃以下が好ましい。荷重たわみ温度が85℃以上である場合、特に、後述するポリエステル樹脂のガラス転移温度以上で加熱してフィルムを延伸する縦延伸工程において、ポリオレフィン分散粒子が潰れ難くなるため、空洞が形成し易くなる。尚、荷重たわみ温度は、JIS K 7191-1、2のB法に準じ、試験片の曲げ応力が0.45MPaのときの測定値である。
【0024】
本発明で使用するポリオレフィン樹脂は、空洞発現性や押出工程および回収工程での熱劣化を抑える観点から、重量平均分子量(Mw)は200000以上450000以下が好ましく、250000以上400000以下がより好ましい。Mwが450000以下である場合、ポリオレフィン分散粒子の分散性が良くなり、十分な隠蔽性が得られ、製膜性に優れる。Mwが200000以上である場合、ポリオレフィン分散粒子が変形し難くなるため、空洞を形成し易くなる。Mwが200000以上である場合、回収原料を使用した場合でも、空洞発現性が低下することを抑制できるため、好ましい。
【0025】
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、2以上6以下が好ましく、2以上5以下がより好ましい。Mw/Mnは、分子量分布の広がりを表す指標であり、この値が大きいほど、分子量分布が広いことを意味する。Mw/Mnが6以下である場合、低分子量成分が減るため、回収原料を使用した場合でも、白色度及び空洞発現性の低下を抑制でき、好ましい。また、Mw/Mnが2以上であればコスト上の観点から工業生産に適している。尚、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した値である。
【0026】
また本発明で使用するポリオレフィン樹脂の、溶融温度280℃、せん断速度121.6sec-1における溶融粘度(η2)は空洞発現性や製膜性の観点から300Pa・s以上700Pa・s以下であることが好ましい。より好ましくは350Pa・s以上650Pa・s以下である。η2が300Pa・s以上である場合、溶融押出工程でのダイスからの押出にてポリオレフィン樹脂が変形し難くなるため、空洞を形成し易くなる。また、回収原料を使用した場合、得られるフィルムの白色度が低下する。一方、η2が700Pa・s以下である場合、溶融押出工程での混練性悪化や背圧上昇などの問題を防止できる。
【0027】
本発明で使用するポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂の、溶融温度280℃、せん断速度121.6sec-1における溶融粘度比(η2/η1)は1.5以上4.5以下の範囲に制御することが好ましい。溶融粘度比(η2/η1)を大きくすれば、ポリエステル樹脂マトリックス(海成分)の中のポリオレフィン樹脂の分散体(島成分)の粒子径も大きくなることがWuの経験式で表されることが知られている(S.Wu,Polym.Eng.Sci.,27,335(1987)を参照)。ポリオレフィン樹脂の分散粒子径が大きい程、発現する空洞も大きくなり低比重化するので好ましいが、逆に上記分散粒子径が大きくなり過ぎると、フィルムの反射効率が低下し隠蔽性が低下してしまい好ましくない。そこで、本発明では、低比重化と高隠蔽性を両立させるとの観点から、溶融粘度比(η2/η1)を1.5以上4.5以下の範囲に制御することが好ましい。
【0028】
ポリオレフィン樹脂の含有量は、空洞発現性や製膜性の観点から、空洞含有層A中に含まれる全成分の合計100質量%に対して、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上25質量%以下が更に好ましい。ポリオレフィン樹脂の含有量が3質量%以上30質量%以下である場合、十分な軽量性やクッション性を得るための空洞を形成させることができるとともに、製膜性に優れる。
【0029】
また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、ポリオレフィン樹脂以外の非相溶樹脂が空洞含有層A中に含有されていてもよい。空洞含有層A中の非相溶樹脂合計100質量%に対して、ポリオレフィン樹脂が90質量%以上含有していることが好ましく、95質量%以上が更に好ましく、最も好ましくは100質量%である。また、白色度や空洞発現性の観点からポリエチレングリコールや界面活性剤等の分散剤を含まないことが好ましい。
【0030】
また、本発明の目的を損なわない範囲において、これらのポリエステル樹脂またはポリオレフィン樹脂中には、少量の他の重合体や酸化防止剤、熱安定剤、艶消し剤、顔料、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、可塑剤又はその他の添加剤などが含有されていてもよい。特に、ポリオレフィン樹脂の酸化劣化を抑えるために、酸化防止剤もしくは熱安定剤を含有させることが好ましい。酸化防止剤および熱安定剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダートフェノール系、リン系、ヒンダードアミン系などが挙げられ、これらは単体でも併用して使用してもよい。添加量としては、空洞含有層Aの全質量に対して1ppm以上50000ppm以下が好ましい。なお、本発明では、蛍光増白剤を空洞含有層A中に添加しなくても、優れた白色度を確保することができる。
【0031】
本発明において、離型フィルムには、隠蔽性や白色度を向上させるため、ポリエステル樹脂中またはポリオレフィン樹脂中に、無機顔料を必要に応じて含有させることができる。無機顔料としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、酸化チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。これらのうち、隠蔽性や白色度の観点から、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好ましい。また、これらの無機顔料は、単体で用いても、もしくは二種類以上併用してもよい。これらの無機顔料は、予めポリエステル樹脂中もしくはポリオレフィン樹脂中に添加することにより、離型フィルム内に含有させることができる。
【0032】
ポリエステル樹脂またはポリオレフィン樹脂に無機顔料を混合する方法としては、特に限定されないが、次の方法が挙げられる。すなわち、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂をドライブレンド後、そのまま製膜機に投入する方法、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂をドライブレンド後、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練しマスターバッチ化する方法などが挙げられる。
【0033】
本発明の離型フィルムは、無機顔料を含有するポリエステル樹脂で構成される第1被覆層B1と、内部に空洞を含有する空洞含有層Aと、無機顔料を含有するポリエステル樹脂で構成される第2被覆層B2と、がこの順序に少なくとも積層された積層構造を有する。ここで、ポリオレフィン樹脂を含む空洞含有層Aが表層に露出した場合、一部の露出したポリオレフィン分散粒子が、ロール汚れなどの工程汚染を発生させてしまう。また、無機顔料を含んだ第1被覆層B1及び第2被覆層B2が、空洞含有層Aを被覆することで、白色度の低下を防ぐ効果を有する。第1被覆層B1及び第2被覆層B2は同じ構成の層であっても別の構成の層であっても構わない。
【0034】
第1被覆層B1の厚み、空洞含有層Aの厚み及び第2被覆層B2の厚みの合計に対する第1被覆層B1の厚み及び第2被覆層B2の厚みの合計の比率(以下、層比率と称することもある。)は、空洞発現性やポリオレフィン樹脂の露出抑制の観点から、6%以上40%以下が好ましく、8%以上30%以下であることがより好ましい。層比率が6%以上40%以下である場合、ポリオレフィン樹脂の露出を抑制でき、水の接触角及びジヨードメタンの接触角を低くできる。さらに、層比率が6%以上40%以下である場合、十分な軽量性やクッション性を得るための空洞を形成させることが容易である。
【0035】
第1被覆層B1及び第2被覆層B2に含有する無機顔料としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、酸化チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。これらのうち、隠蔽性や白色度の観点から、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好ましく、酸化チタンが特に好ましい。また、これらの無機顔料は、単体で用いても、もしくは二種類以上併用してもよい。これらの顔料は、予めポリエステル樹脂中に添加することにより、フィルム内に含有させることができる。
【0036】
第1被覆層B1中の無機顔料の添加量は、特に限定されないが、第1被覆層B1を構成する全成分100質量%に対して、1質量%以上35質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上30質量%以下である。無機顔料の添加量が1質量%以上35質量%以下である場合、離型フィルムの隠蔽性や白色度を向上させることが容易であるとともに、離型フィルムの製膜性や機械的強度を向上させることができる。
第2被覆層B2中の無機顔料の添加量は、特に限定されないが、第1被覆層B1中の無機顔料の添加量と同じであることが好ましい。
【0037】
無機顔料の平均粒子径は、0.01μm以上3μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.05μm以上2μm以下、特に好ましくは0.1μm1.5μm以下である。「平均粒子径」は例えば、レーザー回折・散乱法や電顕法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0038】
本発明の積層フィルムは少なくとも片面に離型層Cを有する。そのため離型フィルムは、次のような積層構造を有することができる。すなわち離型層C、第1被覆層B1、空洞含有層A、及び第2被覆層B2は例えば、C/B1/A/B2、又はB1/A/B2/Cの順になるよう積層された積層構造を有することができる。
【0039】
本発明における離型層Cは非シリコーン系の離型性樹脂を含む第2組成物で構成される。非シリコーン系の離型性樹脂としては例えば、ポリオレフィン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、長鎖アルキル基を有するアクリル系樹脂、フッ素系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種以上を含有する樹脂である。
【0040】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセンの単独重合体やこれらの共重合体が挙げられる。
【0041】
アルキド樹脂は多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られる樹脂であって、二塩基酸と二価アルコールとの縮合物又は不乾性油脂肪酸で変性したものである不転化性アルキド樹脂、及び二塩基酸と三価以上のアルコールとの縮合物である転化性アルキド樹脂があり、本発明においては、いずれも使用することができる。
【0042】
該アルキド樹脂の原料として用いられる多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビットなどの四価以上の多価アルコールを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また、多塩基酸としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメット酸などの芳香族多塩基酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸などの脂肪族不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン-無水マレイン酸付加物、テルペン-無水マレイン酸付加物、ロジン-無水マレイン酸付加物などのディールズ・アルダー反応による多塩基酸などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
一方、変性剤としては、例えばオクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸、あるいはヤシ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、サフラワー油及びこれらの脂肪酸などを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
更に、メチル化メラミンの反応などで得られるアルキド系樹脂も挙げることができる。メチル化メラミンの反応などで得られるアミノアルキド樹脂としては、昭和電工マテリアルズ株式会社製のテスファイン303、テスファイン305、テスファイン314などが挙げられる。アミノアルキド樹脂は、第1被覆層B1及び第2被覆層B2を構成するポリエステル樹脂、すなわち積層フィルムの表面との密着性に優れる。また、アミノアルキド樹脂は熱反応によって三次元架橋構造を形成するため、剥離体への成分移行が少なく、剥離性が長期に持続するため好ましく用いることができる。
【0046】
本発明で使用されるメラミン樹脂としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン樹脂としては、単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール及びイソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂及び完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。
【0047】
長鎖アルキル基を有するアクリル系樹脂とは、側鎖に炭素数が6~20の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基を有したアクリル樹脂が挙げられる。前述の炭素数を有することで、得られる樹脂の表面自由エネルギーを低下させることができ好ましい。また長鎖アルキル基の側鎖数が多いほど樹脂の表面自由エネルギーを低下させることができ好ましく、例えば長鎖アルキルペンダントポリマーなどが挙げられる。
【0048】
フッ素樹脂としては、例えば、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン共重合体などが挙げられる。
なお、離型層Cを構成する第2組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、シリコーン系の離型剤成分を含んでもよい。
【0049】
離型層Cの塗布量は0.030g/m以上0.200g/m以下が好ましく、0.050g/m以上0.150g/m以下がより好ましい。0.030g/m以上にすることでラベルなどを剥がすときに、粘着残りなく剥がすことができる。0.200g/m以下にすることでラベルが容易にはがれないようにすることができる。
【0050】
塗布層を設ける方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法が適用できる。塗布する段階としては、フィルムの延伸前に塗布する方法、縦延伸後に塗布する方法、延伸処理の終了したフィルム表面に塗布する方法などのいずれの方法も可能である。
【0051】
離型層Cが塗布された離型面の25℃40%RH環境下での常態剥離力は400mN/50mm以上6000mN/50mm以下が好ましく、600mN/50mm以上5000mN/50mm以下がより好ましい。剥離力を400mN/50mm以上6000mN/50mm以下とすることで、離型層C上の剥離体との密着安定性と剥離性のバランスを良好に維持することができる。
すなわち、常態剥離力が400mN/50mm以上6000mN/50mm以下の範囲であれば、離型層Cは剥離体との適度な剥離力を有することとなる。本発明の離型フィルムはラベルのセパレーターや偏光板や積層セラミックコンデンサ製造時等に使用する離型フィルムなどの用途として好適に用いられる。
【0052】
また、本発明の離型フィルムには、帯電を防ぐために、離型層Cの表面とは反対面に塗布層を設けても構わない。該塗布層を構成する化合物としては、ポリエステル樹脂が好ましい。この他にも、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂などの通常のポリエステル系フィルムの接着性を向上させる手段として開示させている化合物が適用可能である。
【0053】
塗布層を設ける方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法が適用できる。塗布する段階としては、フィルムの延伸前に塗布する方法、縦延伸後に塗布する方法、延伸処理の終了したフィルム表面に塗布する方法などのいずれの方法も可能である。
【0054】
本発明における離型フィルムの製造方法について説明する。例えば、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂を含有する第1組成物からなる混合ペレットを乾燥した後、T字の口金からシート状に溶融押出し、静電印加法などにより、キャスティングドラムに密着させ冷却固化し、未延伸フィルムを得る。
【0055】
次いで、該未延伸フィルムを延伸・配向処理するが、以下では、最も一般的に用いられる逐次二軸延伸方法、特に未延伸フィルムを長手方向に縦延伸し、次いで幅方向に横延伸する方法を例に説明する。まず、長手方向への縦延伸工程では、フィルムを加熱し、周速が異なる2本あるいは多数本のロール間で2.5~5.0倍に延伸する。このときの加熱手段としては、加熱ロールを用いる方法でも非接触の加熱媒体を用いる方法でもよく、これらを併用してもよい。この際、フィルムの温度を(Tg-10℃)~(Tg+50℃)の範囲とすることが好ましい。次いで1軸延伸フィルムをテンターに導入し、幅方向に(Tg-10℃)~Tm-10℃以下の温度で2.5~5倍に延伸することで2軸延伸フィルムが得られる。
【0056】
ここで、Tgはポリエステル樹脂のガラス転移温度、Tmはポリエステルの融点である。また上記より得られるフィルムに対し、必要に応じて熱処理を施すことが好ましく、処理温度としては(Tm-60℃)~Tmの範囲で行うのが好ましい。
【0057】
また、本発明における積層フィルムは、製膜工程で発生した耳部や破断トラブルなどで生じた屑フィルムも回収原料として使用できる。
【0058】
回収原料の添加量としては、原料コスト低減、白色度および製膜性の観点から、空洞含有層Aの全質量100質量%に対して、5~80質量%が好ましい。
なお、第1被覆層B1又は第2被覆層B2が回収原料を含有してもかまわないが、白色度の悪化および回収原料中のポリオレフィン樹脂の露出の観点から、含有しないことが好ましい。
【0059】
本発明における離型フィルムの見かけ密度は、0.80g/cm以上1.2g/cm以下であることが好ましく、0.80g/cm以上1.10g/cm以下がより好ましい。見かけ密度が0.80g/cm以上1.20g/cm以下である場合、離型フィルム中に占める全空洞が適量となり、印刷加工などの後加工時や使用時において、取り扱い易くなる。また、見かけ密度が0.80g/cm以上1.20g/cm以下である場合、十分な軽量性やクッション性が得られる。
【0060】
尚、見かけ密度は、後述の評価方法にて記載した測定法より得られる値である。
【0061】
本発明における離型フィルムは、全光線透過率が30%以下であることが好ましく、25%以下がより好ましい。全光線透過率が30%以下である場合、十分な隠蔽性が得られる。例えばラベルなどに用いた場合、ラベルに印刷された画像が鮮明になる。尚、全光線透過率は、後述の評価方法にて記載した測定方法より得られる厚み50μm換算での値である。
【0062】
本発明における離型フィルムは、色調b値が4.0以下であることが好ましく、更に好ましくは3.0以下である。色調b値が4.0よりも大きい場合、白色度が劣り、ラベルなどにした場合、印刷時の鮮明性が落ち、商品価値を損ねるおそれがある。
【0063】
本発明の離型フィルムの厚みは任意であるが、20μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0064】
以上より、本発明に係る離型フィルムは、見かけ密度が0.80~1.20であっても優れた軽量性、製膜性、隠蔽性及び白色度を有する。また本発明に係る離型フィルムは、剥離体との適度な剥離力を有することで、ラベルのセパレーターや偏光板や積層セラミックコンデンサ製造時等に使用する離型フィルムなどの用途として好適に用いられる。特に、本発明に係る離型フィルムは、シリコーンが悪影響を与えやすい電子機器用途などで好適に用いられる。一般的に、シリコーン系離型剤では、シリコーン系樹脂組成物が剥離体に移行する現象が生じ、シロキサンガスの発生要因となり、電子機器内部の腐食、動作不良、誤作動を生じさせる可能性がある。シロキサンガス等の発生量については、実用上問題ない範囲の比較的低レベルには抑えられているが、シロキサンガス等の不純物が極微量でも誤作動などの要因になりうる電子機器用途の場合には適していない。
【実施例0065】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されない。なお、実施例および比較例における各評価項目は次の方法で測定した。
(1)溶融粘度(η1、η2)
ポリエステル系樹脂およびポリプロピレン系樹脂の各溶融粘度は、株式会社東洋精機製作所製キャピログラフ1D(キャピラリー長:10mm、キャピラリー径:1mm)を用いて、溶融温度280℃、せん断速度121.6sec-1の条件下で測定した。
【0066】
(2)製膜性
後述の積層フィルム作製において記載する製膜条件で、製膜時間2時間で製造したときの破断回数で以下の通り評価を行った。
○:破断なし
△:1~3回破断
×:4回以上破断し、製膜不可
【0067】
(3)見かけ密度
離型フィルムを5.0cm四方の正方形に4枚切り出し、4枚を重ね合わせマイクロメーターを用いて有効数字4桁で、総厚みの場所を変えて10点測定し、4枚重ね合わせた厚みの平均値を求めた。この平均値を4で除して有効数字3桁に丸め、一枚あたりの平均厚み(t:μm)とした。同試料4枚の質量(w:g)を有効数字4桁で自動上皿天秤を用いて測定し、次式より見かけ密度を求めた。なお、見かけ密度は有効数字3桁に丸めた。
見かけ密度(g/cm)=w/(5.0×5.0×t×10-4×4)
【0068】
(4)全光線透過率
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH5000)を用いて離型フィルムを測定し,フィルム厚み50μm当たりの値に換算した。同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
【0069】
(5)色調b値
色調b値は、日本電色工業株式会社製色差計(ZE6000)を用いて、JIS-8722により離型フィルムの離型層Cの反対面を測定した。色調b値が小さい程、白色度が高く、黄色味が弱いと判断する。
【0070】
(6)離型面の常態剥離力の評価
アクリル系粘着テープ(日東31B、25mm幅、日東電工株式会社製)の粘着層上に、離型フィルムの離型層Cの表面(以下、「離型面」と称することもある。)を貼り合わせ、その上から5kgの鉄の円柱体を1往復ころがした後(即ち圧着ローラで圧着した後)、20℃、15%RHの条件下で24時間放置し、次いで島津製作所製オートグラフ(登録商標)(AG-X)を用い、剥離角90度で300mm/minの引っ張り速度で剥離した時の剥離荷重を測定した。得られた値を2倍し、単位をmN/50mmに変換した。
【0071】
(実施例1)
[酸化チタンマスターペレット(M1)の製造]
極限粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂50質量%に平均粒径0.3μm(電顕法)のアナターゼ型二酸化チタンを50質量%混合した。そして、その混合物をベント式2軸押出機に供給し、混練りして酸化チタン含有マスターペレット(M1)を製造した。
【0072】
[未延伸フィルムの製造]
溶融粘度200Pa・sのポリエチレンテレフタレート樹脂87.5質量%、および溶融粘度500Pa・sのポリプロピレン樹脂12.5質量%を混合した。そして、その混合物を真空乾燥し、空洞含有層Aの原料とした。一方、前記酸化チタン含有マスターペレット(M1)30質量%と溶融粘度200Pa・sのポリエチレンテレフタレート樹脂70質量%とをペレット混合した。そして、その混合物に真空乾燥を施し、第1被覆層B1及び第2被覆層B2の原料とした。これらの原料を別々の押出機に供給し、285℃で溶融し、第1被覆層B1、空洞含有層A、及び第2被覆層B2がB1/A/B2の順になるよう積層した。その積層体を、厚み比率が10/80/10となるようにフィードブロックで接合した。その接合体を、Tダイから30℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、2種3層構成の未延伸フィルムを製造した。
【0073】
[積層フィルム作製]
次のような製膜条件で積層フィルムを作製した。すなわち、得られた未延伸フィルムを、加熱ロールを用いて70℃に均一加熱し、周速が異なる2対のニップロール間で3.4倍に縦延伸した。このとき、未延伸フィルムの補助加熱装置として、ニップロール中間部に金反射膜を備えた赤外線加熱ヒータ(定格20W/cm)をフィルムの両面に対向して設置(フィルム表面から1cmの距離)、加熱した。このようにして得られた1軸延伸フィルムをテンターに導き、140℃に加熱して4.0倍に横延伸し、幅固定して、235℃で熱処理を施し、更に210℃で幅方向に3%緩和させることにより、厚み50μmの積層フィルムを得た。
【0074】
[離型フィルム作製]
塗布溶液として、アミノアルキド樹脂(昭和電工マテリアルズ株式会社製 テスファイン305)をメチルエチルケトン,およびトルエンの混合溶剤に希釈し、その溶液に前記アミノアルキド樹脂100質量%に対し、パラトルエンスルホン酸を2.5質量%添加し、全固形分濃度が1.0質量% となるよう作製した。この溶液を常法のロールコーティング法により、乾燥後の離型層Cの厚さが0.10g/mとなるよう積層フィルムの片面に塗布した。これにより、離型層C、第1被覆層B1、空洞含有層A、及び第2被覆層B2がC/B1/A/B2の順になるよう積層された離型フィルムを得た。ロールコーティング法での加熱乾燥は、150℃にて20秒行なった。見かけ密度、離型面の常態剥離力、色調b値、全光線透過率、及び製膜性の結果を表1に示した。
【0075】
(実施例2、3、4、5、6、7)
実施例1において、空洞含有層Aの原料比率を表1のように変更した以外は実施例1と同様の方法で離型フィルムを得た。
【0076】
(実施例8)
実施例1において、第1被覆層B1、空洞含有層A、及び第2被覆層B2がB1/A/B2の順になるよう積層し、その積層体を、厚み比率が5/90/5となるように変更した以外は実施例1と同様の方法で離型フィルムを得た。
【0077】
(実施例9)
実施例1において、離型フィルム作製における塗布溶液として、長鎖アルキルペンダントポリマー(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 ピーロイル1010S)をトルエン、イソプロピルアルコール、およびシクロヘキサノンの混合溶剤に希釈し、全固形分濃度が1.0質量% となるよう作製した。この溶液を常法のロールコーティング法により、乾燥後の離型層Cの厚さが0.10g/mとなるよう積層フィルムの片面に塗布した以外は実施例1と同様の方法で離型フィルムを得た。
【0078】
(比較例1)
実施例1において、溶融粘度200Pa・sのポリエチレンテレフタレート樹脂87.5質量%、および溶融粘度200Pa・sのポリプロピレン樹脂12.5質量%を混合し、その混合物を真空乾燥し、空洞含有層Aの原料に変更した以外は実施例1と同様の方法で離型フィルムを得た。
比較例1の離型フィルムは、見かけ密度が1.20g/cmを超えるため、本発明の範囲外である。そのため実施例1では、軽量性やクッション性が悪かった。また実施例1では、質量が大きいことから製造コストも高くなる。また、比較例1の離型フィルムは、全光線透過率も高く、実施例1~8に比べて隠蔽性も悪かった。
【0079】
(参考例2)
実施例1において、溶融粘度78Pa・sのポリエチレンテレフタレート樹脂87.5質量%、および溶融粘度500Pa・sのポリプロピレン樹脂12.5質量%を混合し、その混合物を真空乾燥し、空洞含有層Aの原料に変更した以外は実施例1と同様の方法で離型フィルムを得た。
参考例2の離型フィルムは、溶融粘度比(η2/η1)が4.5を超える。参考例2ではTD延伸時に破断が多く発生し、製膜性が悪かった。そのため、参考例2では破断前のサンプルを少量採取し、各物性を測定した。参考例2ではポリエチレンテレフタレート樹脂の溶融粘度が低く、且つ溶融粘度比が大きい原料樹脂を用いたため、分散粒子径が大きくなり、隠蔽性も低下した。
【0080】
(比較例3)
実施例1において、第1被覆層B1、空洞含有層A、及び第2被覆層B2がB1/A/B2の順になるよう積層し、その積層体を、厚み比率が0/100/0となるように変更した以外は実施例1と同様の方法で離型フィルムを得た。
比較例3は、第1被覆層B1と第2被覆層B2を有さないため、本発明の範囲外である。比較例3では空洞含有層Aの空洞が表面に露出し、比較例3の表面は極めて粗くなる。比較例3のラベル付き離型フィルムでは、全光線透過率が高く、実施例1~8に比べて隠蔽性が悪かった。また比較例3では、色調b値が大きく、実施例1~8に比べて白色度が低く、黄色味が強かった。
【0081】
(比較例4)
実施例1において、離型層Cを得るための塗布溶液を以下の通り変更した以外は実施例1と同様の方法で離型フィルムを得た。分子鎖にビニル基とヒドロシリル基を含有するポリジメチルシロキサンを主成分とする硬化型シリコーン樹脂K S - 7 7 4(信越化学工業株式会社製)を、メチルエチルケトン,およびトルエンの混合溶剤に希釈し、その溶液に前記シリコーン樹脂100質量%に対し、白金含有硬化剤(信越化学工業株式会社製、CAT-PL-3)を3質量%添加し、全固形分濃度が1.5質量% となる溶液を作製した。
比較例4は非シリコーン系の離型性樹脂を含有しないため、本発明の範囲外である。常態剥離力も400mN/50mmよりも小さく本発明の範囲外である。常態剥離力が80mN/50mmになると、例えば工程用離型フィルムとしては剥離力が極めて弱く、剥離体が簡単に剥がれてしまった。すなわち、比較例4は工程用離型フィルムの用途として適さなかった。
【0082】
以上より、本願発明に係る離型フィルムは、空洞含有層Aを構成するポリエステル樹脂およびポリオレフィン樹脂の溶融粘度および溶融粘度比が特定の範囲内に調整されて、ポリエステル樹脂中のポリオレフィン樹脂の分散粒子径を適切なサイズに制御され、更に少なくとも積層フィルムの片面に離型層を有する。これらにより本願発明に係る離型フィルムは、見かけ密度が0.80~1.20であっても、優れた軽量性、耐熱性、寸法安定性、製膜性、隠蔽性、白色度、および離型性を有する。
【0083】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように本発明の離型フィルムは、環境対応性、軽量性、製膜性、隠蔽性、白色度、および離型性に優れるため、例えばラベルのセパレーターや偏光板や積層セラミックコンデンサ製造時等に使用する離型フィルムなどの用途として好適に用いられる。特に、本発明に係る離型フィルムは、シリコーンが悪影響を与えやすい電子機器用途などで好適に用いられる。