(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059380
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】フィルタデバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/01 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
A61F2/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167024
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 健児
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM37
(57)【要約】
【課題】他のデバイスを支持するガイドワイヤに支持された状態で使用することが可能なフィルタを有するフィルタデバイスを実現する。
【解決手段】フィルタデバイスは、フィルタと、プッシャーと、ストッパとを備える。フィルタは、収縮状態と、収縮状態より径方向に拡張した拡張状態と、になり得る。プッシャーは、フィルタの基端側に配置され、フィルタを先端側に押し出すために用いられる。ストッパは、フィルタに取り付けられ、ガイドワイヤが挿通される空間が形成されている。ストッパは、フィルタが収縮状態から拡張状態に移行するのに伴い、該空間に挿通されたガイドワイヤにおけるストッパより先端側に位置する特定部分と軸方向において重ならない非重複状態から、特定部分と軸方向において重なる重複状態に移行するように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタデバイスであって、
収縮状態と、前記収縮状態より径方向に拡張した拡張状態と、になり得るように構成されたフィルタと、
前記フィルタの基端側に配置され、前記フィルタを先端側に押し出すためのプッシャーと、
前記フィルタに取り付けられ、ガイドワイヤが挿通される空間が形成されたストッパと、
を備え、
前記ストッパは、前記フィルタが前記収縮状態から前記拡張状態に移行するのに伴い、前記空間に挿通された前記ガイドワイヤにおける前記ストッパより先端側に位置する特定部分と軸方向において重ならない非重複状態から、前記特定部分と軸方向において重なる重複状態に移行するように構成されている、フィルタデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタデバイスであって、
前記ストッパは、複数のワイヤを含み、前記フィルタが前記収縮状態から前記拡張状態に移行するのに伴い、前記複数のワイヤのうちの少なくとも一部の先端が軸方向視での前記ストッパの中心に向かって移動することにより、前記非重複状態から前記重複状態に移行するように構成されている、フィルタデバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフィルタデバイスであって、
前記ストッパは、前記フィルタが前記拡張状態から前記収縮状態に移行しても前記重複状態を維持するように構成されている、フィルタデバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフィルタデバイスであって、
前記重複状態において、前記ストッパの前記ガイドワイヤが挿通される空間の最小径は、前記特定部分の外径よりも小さい、フィルタデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、フィルタデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等の生体管腔内においてフィルタにより塞栓細片(デブリ)を捕捉するフィルタデバイスが知られている。例えば特許文献1には、デリバリー用ワイヤと、デリバリー用ワイヤに固定されたフィルタと、を有するフィルタデバイスが開示されている。このような構成のフィルタデバイスでは、デリバリー用ワイヤを遠位側に進行させることによってフィルタを生体管腔内の所望の位置にデリバリーし、手技後は該デリバリー用ワイヤを近位側に引くことによってフィルタを回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタを、他のデバイスを支持するガイドワイヤに支持された状態で使用することが望まれる場合がある。例えば、回転体を高速で回転させることによって血管内の病変部(狭窄部や閉塞部)を削る治療法であるアテレクトミー(Atherectomy)の際には、病変部より遠位側(抹消側)に、病変部を削ることによって生じ得る塞栓細片を捕捉するためのフィルタを配置することが好ましい。このような場合には、フィルタが、アテレクトミー用デバイスを支持するガイドワイヤに支持された状態で使用される。上記従来のフィルタデバイスでは、フィルタがデリバリー用ワイヤに固定されているため、フィルタをガイドワイヤに支持された状態で使用する手技には適用することができない。
【0005】
なお、このような課題は、アテレクトミーに限らず、生体管腔内においてガイドワイヤにフィルタと他のデバイスとを支持させて使用する際に共通の課題である。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示されるフィルタデバイスは、フィルタと、プッシャーと、ストッパとを備える。フィルタは、収縮状態と、収縮状態より径方向に拡張した拡張状態と、になり得るように構成されている。プッシャーは、フィルタの基端側に配置され、フィルタを先端側に押し出すために用いられる。ストッパは、フィルタに取り付けられ、ガイドワイヤが挿通される空間が形成されている。ストッパは、フィルタが収縮状態から拡張状態に移行するのに伴い、該空間に挿通されたガイドワイヤにおけるストッパより先端側に位置する特定部分と軸方向において重ならない非重複状態から、特定部分と軸方向において重なる重複状態に移行するように構成されている。
【0009】
本フィルタデバイスでは、フィルタが収縮状態から拡張状態に移行するのに伴い、ストッパが、ガイドワイヤの特定部分と軸方向において重ならない非重複状態から、特定部分と軸方向において重なる重複状態に移行する。そのため、フィルタを回収する際には、ストッパの空間に挿通されたガイドワイヤを基端側に引き、ガイドワイヤの特定部分とストッパとを当接させ、その状態を維持しつつガイドワイヤによってフィルタを基端側に移動させればよい。すなわち、ガイドワイヤに例えばフィルタと干渉する突起を設ける等の特別な加工が必要ではなく、汎用的なガイドワイヤを用いてフィルタを回収することができる。このように、本フィルタデバイスによれば、他のデバイスを支持するガイドワイヤに支持された状態で使用することが可能なフィルタを有するフィルタデバイスを実現することができる。さらに、本フィルタデバイスによれば、フィルタがデリバリー用デバイスから切り離され、ガイドワイヤに支持されて使用される場合においても、専用品ではなく汎用的なガイドワイヤを用いてフィルタを回収することができる。
【0010】
(2)上記フィルタデバイスにおいて、前記ストッパは、複数のワイヤを含み、前記フィルタが前記収縮状態から前記拡張状態に移行するのに伴い、前記複数のワイヤのうちの少なくとも一部の先端が軸方向視での前記ストッパの中心に向かって移動することにより、前記非重複状態から前記重複状態に移行するように構成されている構成としてもよい。本構成を採用すれば、構成の複雑化を回避しつつ、フィルタが収縮状態から拡張状態に移行するのに伴いストッパが非重複状態から重複状態に移行する構成を実現することができる。
【0011】
(3)上記フィルタデバイスにおいて、前記ストッパは、前記フィルタが前記拡張状態から前記収縮状態に移行しても前記重複状態を維持するように構成されている構成としてもよい。本構成を採用すれば、フィルタを回収用デバイスに収容した後に、フィルタが回収用デバイスから誤って脱離することを抑制することができる。
【0012】
(4)上記フィルタデバイスにおいて、前記重複状態において、前記ストッパの前記ガイドワイヤが挿通される空間の最小径は、前記特定部分の外径よりも小さい構成としてもよい。本構成を採用すれば、構成の複雑化を回避しつつ、ストッパがガイドワイヤの特定部分と軸方向において重なる重複状態を確実に実現することができる。
【0013】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、フィルタデバイス、フィルタデバイスを備える医療機器、それらの製造方法や使用方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態のフィルタデバイス10の構成を概略的に示す説明図
【
図2】本実施形態のフィルタデバイス10の構成を詳細に示す説明図
【
図3】本実施形態のフィルタデバイス10の構成を詳細に示す説明図
【
図4】フィルタユニット100の構成を詳細に示す説明図
【
図5】フィルタユニット100の構成を詳細に示す説明図
【
図6】フィルタユニット100の構成を詳細に示す説明図
【
図7】フィルタユニット100の構成を詳細に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.実施形態:
A-1.フィルタデバイス10の構成:
図1は、本実施形態のフィルタデバイス10の構成を概略的に示す説明図である。
図1には、フィルタデバイス10を構成するフィルタユニット100が拡張された状態の構成を示している。
【0016】
本実施形態のフィルタデバイス10は、血管50内を流れる血液を濾過することにより、血管50の閉塞等を引き起こすおそれのある塞栓細片62を捕捉するための装置である。フィルタデバイス10は、例えば、回転体42を含むアテレクトミーデバイス40を用いたアテレクトミーの際に使用される。より具体的には、アテレクトミーデバイス40の回転体42を高速で回転させることによって血管50の病変部60(狭窄部や閉塞部)を削る治療法であるアテレクトミーの際に生じ得る塞栓細片62を捕捉するために、病変部60より遠位側(抹消側)に、フィルタデバイス10のフィルタユニット100が拡張した状態で留置される。このとき、フィルタユニット100とアテレクトミーデバイス40とは、1本のガイドワイヤ200に支持されて使用される。
【0017】
図2および
図3は、本実施形態のフィルタデバイス10の構成を詳細に示す説明図である。
図2には、フィルタデバイス10の縦断面(YZ断面)の構成を示しており、
図3には、フィルタデバイス10の正面の構成を示している。
図2および
図3には、フィルタデバイス10がデリバリー用カテーテル310の中空部312内に収容されてフィルタユニット100が収縮した状態(以下、「デリバリー時収縮状態」という。)を示している。デリバリー時収縮状態は、特許請求の範囲における収縮状態の一例である。
【0018】
また、
図4から
図7は、フィルタユニット100の構成を詳細に示す説明図である。
図4,6には、フィルタユニット100の縦断面(YZ断面)の構成を示しており、
図5,7には、フィルタユニット100の正面の構成を示している。
図4および
図5には、フィルタユニット100がデリバリー用カテーテル310の外部に押し出されて拡張した状態(以下、「拡張状態」という。)を示しており、
図6および
図7には、フィルタユニット100が回収用カテーテル320の中空部322内に収容されて収縮した状態(以下、「回収時収縮状態」という。)を示している。回収時収縮状態は、特許請求の範囲における収縮状態の一例である。
【0019】
なお、各図において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。各図では、フィルタデバイス10等が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、フィルタデバイス10等は、湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。本明細書では、フィルタデバイス10等について、先端側の端を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0020】
また、各図には、フィルタデバイス10を支持するガイドワイヤ200が示されている。ガイドワイヤ200は、コアシャフト210と、コアシャフト210の先端部を覆うコイル体220と、コアシャフト210とコイル体220とを接合する先端側接合部242および基端側接合部244と、を有する。コアシャフト210は、太径部218と、太径部218の先端から縮径しつつ先端側に延伸する第1テーパー部216と、第1テーパー部216の先端と同径であり、該先端から先端側に延伸する細径部214と、細径部214の先端から縮径しつつ先端側に延伸する第2テーパー部212とを有する。コイル体220は、コアシャフト210の第2テーパー部212における先端側の少なくとも一部の外周を覆うように配置されている。コイル体220の外径D2は、コアシャフト210の細径部214の外径D1より大きい(
図3,5,7参照)。
【0021】
図2に示すように、フィルタデバイス10は、フィルタユニット100と、プッシャー130とを有する。
【0022】
フィルタユニット100は、血管50における病変部60より遠位側に留置される部位である(
図1参照)。フィルタユニット100は、フィルタ110と、ストッパ120とを含む。
【0023】
フィルタ110は、フィルタユニット100において濾過機能を発揮する部分である。フィルタ110は、フレーム部112と、シート部114とを含む。なお、各図において、便宜上、シート部114を破線で示している。
【0024】
フレーム部112は、例えばNi-Ti合金やステンレスにより形成された複数のワイヤが組み立てられて構成された骨組みである。フレーム部112における軸方向視略中央の位置には、ガイドワイヤ200が挿通されるガイドワイヤ挿通空間118が形成されている。フレーム部112に形成されたガイドワイヤ挿通空間118の最小径は、ガイドワイヤ200のコイル体220の外径D2より大きい。
【0025】
フレーム部112は、折り畳まれた収縮状態と、収縮状態より径方向に拡張した(展開された)拡張状態と、になり得るように構成されている。フレーム部112は、例えばデリバリー用カテーテル310の中空部312や回収用カテーテル320の中空部322内に収容される際に径方向に収縮させるような外力を受けると、棒状に折り畳まれた収縮状態となり(
図2,6参照)、デリバリー用カテーテル310の中空部312から押し出されて上記外力を受けなくなると、例えば材料の形状記憶力および/またはバネ等の付勢力により、かご状に展開された拡張状態となる(
図4参照)。なお、本実施形態では、フレーム部112は、先端側環状部112aと、基端側環状部112bとを有する。収縮状態から拡張状態への移行の際には、先端側環状部112aの径は変化しない一方、基端側環状部112bは拡径する。
【0026】
シート部114は、フレーム部112を覆うようにフレーム部112に取り付けられた袋状の部材である。シート部114には、血液は通過可能であるが塞栓細片62は通過しないように設定された大きさの複数の孔116(
図1参照)が形成されている。
【0027】
このように、フィルタユニット100は、フィルタ110のフレーム部112の拡張・収縮に伴い拡張・収縮する。
図1に示すように、フィルタユニット100が拡張した状態では、フィルタ110の外周部が血管50の内壁に密着し、フィルタ110のシート部114によって血管50を流れる血液を濾過することが可能となる。
【0028】
ストッパ120は、例えばNi-Ti合金やステンレスにより形成された複数のワイヤが筒状に組み立てられて構成されており、フィルタ110の先端部に取り付けられている。ストッパ120における軸方向視略中央の位置には、ガイドワイヤ200が挿通されるガイドワイヤ挿通空間128が形成されている。ストッパ120の構成については、後に詳述する。
【0029】
図2に示すように、プッシャー130は、ガイドワイヤ200が挿通される中空部132が形成された筒状の部材であり、フィルタユニット100を構成するフィルタ110の基端側に配置されている。プッシャー130は、フィルタユニット100の基端部を先端側に押圧してフィルタユニット100を先端側に押し出すために使用される。
【0030】
A-2.ストッパ120の詳細構成:
次に、フィルタユニット100を構成するストッパ120の詳細構成について説明する。上述したように、ストッパ120は、複数のワイヤが筒状に組み立てられて構成されている。より詳細には、ストッパ120は、ワイヤがフレーム状に組まれた基端側フレーム124と、基端側フレーム124から先端側に延びる4本の軸方向ワイヤ122とを有する。4本の軸方向ワイヤ122は、軸方向視で周状に並べられている。複数の軸方向ワイヤ122は、特許請求の範囲における複数のワイヤの一例である。
【0031】
図3,5,7に示すように、ストッパ120に形成されたガイドワイヤ挿通空間128は、各軸方向ワイヤ122の先端の間の隙間である。ストッパ120はフィルタ110のフレーム部112に取り付けられており、フィルタ110(フィルタユニット100)の拡張・収縮に伴い、ストッパ120に形成されたガイドワイヤ挿通空間128の最小径L1は変化する。
【0032】
具体的には、
図3に示すように、フィルタユニット100がデリバリー時収縮状態にあるときには、ストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128の最小径L1は、ガイドワイヤ200のコイル体220の外径D2より大きい。換言すれば、ストッパ120は、ガイドワイヤ挿通空間128に挿通されたガイドワイヤ200におけるストッパ120より先端側に位置するコイル体220と軸方向において重ならない非重複状態にある。そのため、この状態では、ストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128をガイドワイヤ200のコイル体220が通過可能である。ガイドワイヤ200のコイル体220は、特許請求の範囲における特定部分の一例である。
【0033】
また、
図5に示すように、フィルタユニット100がデリバリー時収縮状態から拡張状態に移行すると、フィルタ110のフレーム部112の拡張に伴いストッパ120の基端側フレーム124が変形し、その結果、各軸方向ワイヤ122の先端部が軸方向視でのストッパ120の中心に向かって移動し、ガイドワイヤ挿通空間128の最小径L1が小さくなる。具体的には、この状態におけるストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128の最小径L1は、ガイドワイヤ200のコイル体220の外径D2より小さく、かつ、ガイドワイヤ200のコアシャフト210の細径部214の外径D1より大きい。換言すれば、ストッパ120は、ガイドワイヤ挿通空間128に挿通されたガイドワイヤ200におけるストッパ120より先端側に位置するコイル体220と軸方向において重なる重複状態に移行する。そのため、この状態では、ストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128を、ガイドワイヤ200のコアシャフト210の細径部214は通過可能であるが、ガイドワイヤ200のコイル体220は通過不能である。
【0034】
また、
図7に示すように、フィルタユニット100が拡張状態から回収時収縮状態に移行しても、ストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128の最小径L1は、ガイドワイヤ200のコイル体220の外径D2より小さく、かつ、ガイドワイヤ200のコアシャフト210の細径部214の外径D1より大きい状態に維持される。換言すれば、ストッパ120は、ガイドワイヤ200のコイル体220と軸方向において重なる重複状態に維持される。そのため、この状態では、ストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128を、ガイドワイヤ200のコアシャフト210の細径部214は通過可能であるが、ガイドワイヤ200のコイル体220は通過不能である。このように、フィルタユニット100が拡張状態から回収時収縮状態に移行しても、ストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128の最小径L1が小さい値に維持される構成は、例えば、フィルタユニット100が拡張状態になったときのストッパ120の剛性をフィルタ110のフレーム部112の剛性より高く設定したり、回収用カテーテル320の中空部322の内径をデリバリー用カテーテル310の中空部312の内径より大きく設定したりすることにより実現することができる。
【0035】
A-3.フィルタデバイス10の使用方法:
次に、
図1から
図7を参照して、本実施形態のフィルタデバイス10の使用方法について説明する。はじめに、血管50にガイドワイヤ200を挿入し、病変部60を通過させる(
図1参照)。
【0036】
次に、
図2に示すように、フィルタデバイス10が搭載されたデリバリー用カテーテル310を、ガイドワイヤ200に沿って、フィルタユニット100が病変部60より遠位側(抹消側)に到達するまで進行させる。なお、フィルタデバイス10のデリバリーの際には、フィルタ110のガイドワイヤ挿通空間118、ストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128およびプッシャー130の中空部132に、ガイドワイヤ200が挿通された状態となる。また、デリバリー用カテーテル310の中空部312の内径は、フィルタユニット100のフィルタ110の拡張時の外径より小さく設定されており、フィルタデバイス10がデリバリー用カテーテル310の中空部312内に収容された状態では、フィルタユニット100は収縮状態となる。
【0037】
次に、プッシャー130を先端側に押圧することにより、フィルタ110を含むフィルタユニット100をデリバリー用カテーテル310の外部に押し出す。これにより、血管50における病変部60より遠位側で、フィルタユニット100のフィルタ110が拡張した状態となる(
図1,4参照)。その後、デリバリー用カテーテル310を基端側に引き抜いて回収する。これにより、フィルタユニット100は、デリバリー用カテーテル310から切り離された状態で、血管50内に留置される。
【0038】
次に、回転体42を含むアテレクトミーデバイス40を、ガイドワイヤ200に沿って病変部60の位置まで進行させ、回転体42を高速回転させることにより、病変部60を削る(
図1参照)。このとき、血管50における病変部60より遠位側に、フィルタユニット100のフィルタ110が拡張状態で留置されているため、アテレクトミーに伴い血管50内に放出され得る塞栓細片62は、フィルタ110によって捕捉される。アテレクトミーの完了後、アテレクトミーデバイス40を基端側に引き抜いて回収する。
【0039】
次に、回収用カテーテル320を、ガイドワイヤ200に沿ってフィルタユニット100の直前の位置まで進行させる。そして、ガイドワイヤ200を基端側に引く。上述したように、フィルタユニット100が拡張状態にあるときには、ストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128の最小径L1は、ガイドワイヤ200のコイル体220の外径D2より小さく、かつ、ガイドワイヤ200のコアシャフト210の細径部214の外径D1より大きい。換言すれば、ストッパ120は、ガイドワイヤ200のコイル体220と軸方向において重なる重複状態にある。そのため、ガイドワイヤ200を基端側に引くと、ガイドワイヤ200のコイル体220の基端部がストッパ120に当接し、ストッパ120を含むフィルタユニット100が基端側に引き寄せられる。フィルタユニット100が基端側に移動して回収用カテーテル320の先端部に当接すると、フィルタ110のフレーム部112が回収用カテーテル320からの外力を受けて折り畳まれ、収縮状態となる。フィルタユニット100は、縮小状態のままさらに基端側に移動して、回収用カテーテル320の中空部322内に収容される(
図6参照)。
【0040】
なお、上述したように、フィルタユニット100が拡張状態から回収時収縮状態に移行しても、ストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128の最小径L1は、ガイドワイヤ200のコイル体220の外径D2より小さく、かつ、ガイドワイヤ200のコアシャフト210の細径部214の外径D1より大きい状態に維持される。換言すれば、ストッパ120は、ガイドワイヤ200のコイル体220と軸方向において重なる重複状態に維持される。そのため、フィルタユニット100が回収用カテーテル320の中空部322内に収容された後、フィルタユニット100がガイドワイヤ200に対して相対的に先端側に移動することが抑制され、フィルタユニット100が回収用カテーテル320から誤って脱離することが抑制される。
【0041】
最後に、フィルタユニット100が収容された回収用カテーテル320を、ガイドワイヤ200に沿って基端側に移動させることにより、フィルタユニット100および回収用カテーテル320を回収する。
【0042】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のフィルタデバイス10は、フィルタ110と、プッシャー130と、ストッパ120とを備える。フィルタ110は、収縮状態と、収縮状態より径方向に拡張した拡張状態と、になり得るように構成されている。プッシャー130は、フィルタ110の基端側に配置され、フィルタ110を先端側に押し出すために用いられる。ストッパ120は、フィルタ110に取り付けられ、ガイドワイヤ200が挿通されるガイドワイヤ挿通空間128が形成されている。ストッパ120は、フィルタ110が収縮状態から拡張状態に移行するのに伴い、ガイドワイヤ挿通空間128に挿通されたガイドワイヤ200におけるストッパ120より先端側に位置するコイル体220と軸方向において重ならない非重複状態から、コイル体220と軸方向において重なる重複状態に移行するように構成されている。
【0043】
このように、本実施形態のフィルタデバイス10では、フィルタ110が収縮状態から拡張状態に移行するのに伴い、ストッパ120が、ガイドワイヤ200のコイル体220と軸方向において重ならない非重複状態から、コイル体220と軸方向において重なる重複状態に移行する。そのため、フィルタ110(フィルタユニット100)を回収する際には、ストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128に挿通されたガイドワイヤ200を基端側に引き、ガイドワイヤ200のコイル体220とストッパ120とを当接させ、その状態を維持しつつガイドワイヤ200によってフィルタ110を基端側に移動させればよい。すなわち、ガイドワイヤ200に例えばフィルタ110と干渉する突起を設ける等の特別な加工が必要ではなく、汎用的なガイドワイヤ200を用いてフィルタ110を回収することができる。このように、本実施形態のフィルタデバイス10によれば、他のデバイスを支持するガイドワイヤ200に支持された状態で使用することが可能なフィルタ110を有するフィルタデバイス10を実現することができる。さらに、本実施形態のフィルタデバイス10によれば、フィルタ110がデリバリー用デバイス(デリバリー用カテーテル310)から切り離され、ガイドワイヤ200に支持されて使用される場合においても、専用品ではなく汎用的なガイドワイヤ200を用いてフィルタ110を回収することができる。
【0044】
また、本実施形態のフィルタデバイス10では、ストッパ120は、複数の軸方向ワイヤ122を含む。ストッパ120は、フィルタ110が収縮状態から拡張状態に移行するのに伴い、複数の軸方向ワイヤ122のうちの少なくとも一部の先端が軸方向視でのストッパ120の中心に向かって移動することにより、非重複状態から重複状態に移行するように構成されている。そのため、本実施形態のフィルタデバイス10によれば、構成の複雑化を回避しつつ、フィルタ110が収縮状態から拡張状態に移行するのに伴いストッパ120が非重複状態から重複状態に移行する構成を実現することができる。
【0045】
また、本実施形態のフィルタデバイス10では、ストッパ120は、フィルタ110が拡張状態から収縮状態に移行しても重複状態を維持するように構成されている。そのため、本実施形態のフィルタデバイス10によれば、フィルタ110を含むフィルタユニット100を回収用デバイス(回収用カテーテル320)に収容した後に、フィルタユニット100が回収用デバイスから誤って脱離することを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態のフィルタデバイス10では、重複状態において、ストッパ120のガイドワイヤ挿通空間128の最小径L1は、ガイドワイヤ200のコイル体220の外径D2よりも小さい。そのため、本実施形態のフィルタデバイス10によれば、構成の複雑化を回避しつつ、ストッパ120がガイドワイヤ200のコイル体220と軸方向において重なる重複状態を確実に実現することができる。
【0047】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
上記実施形態におけるフィルタデバイス10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、ストッパ120がフィルタ110の先端部に取り付けられているが、ストッパ120がフィルタ110における先端部以外の部分に取り付けられていてもよい。
【0049】
上記実施形態では、ストッパ120は複数の軸方向ワイヤ122を含み、フィルタ110が収縮状態から拡張状態に移行するのに伴い、すべての軸方向ワイヤ122の先端が軸方向視でのストッパ120の中心に向かって移動することにより、非重複状態から重複状態に移行するように構成されているが、ストッパ120の構成は他の構成であってもよい。例えば、ストッパ120は、フィルタ110が収縮状態から拡張状態に移行するのに伴い一部の軸方向ワイヤ122の先端が軸方向視でのストッパ120の中心に向かって移動するように構成されていてもよい。また、ストッパ120は、フィルタ110が収縮状態から拡張状態に移行するのに伴い非重複状態から重複状態に移行するように構成されていれば、複数の軸方向ワイヤ122を有さなくてもよい。
【0050】
上記実施形態では、ストッパ120は、フィルタ110が拡張状態から収縮状態に移行しても重複状態を維持するように構成されているが、フィルタ110が拡張状態から収縮状態に移行するのに伴いストッパ120が重複状態から非重複状態に移行するように構成されていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、ストッパ120は、重複状態において、ガイドワイヤ挿通空間128に挿通されたガイドワイヤ200のコイル体220と軸方向において重なるとしているが、ストッパ120が、重複状態において、ガイドワイヤ挿通空間128に挿通されたガイドワイヤ200におけるストッパ120より先端側に位置する他の部分と軸方向において重なるとしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、フィルタデバイス10がアテレクトミーデバイス40と共にガイドワイヤ200に支持されて使用される例を説明したが、本明細書に開示される技術は、フィルタデバイス10がバルーンやステントといったガイドワイヤ200に支持される他のデバイスと共に使用される場合にも同様に適用可能である。さらに、本明細書に開示される技術は、生体管腔(胆管、胆嚢、膵臓、食道、十二指腸、小腸、大腸等の消化器官、血管、尿管、気管等)内において、ガイドワイヤ200に支持されて使用されるフィルタデバイス10について同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
10:フィルタデバイス 40:アテレクトミーデバイス 42:回転体 50:血管 60:病変部 62:塞栓細片 100:フィルタユニット 110:フィルタ 112:フレーム部 112a:先端側環状部 112b:基端側環状部 114:シート部 116:孔 118:ガイドワイヤ挿通空間 120:ストッパ 122:軸方向ワイヤ 124:基端側フレーム 128:ガイドワイヤ挿通空間 130:プッシャー 132:中空部 200:ガイドワイヤ 210:コアシャフト 212:第2テーパー部 214:細径部 216:第1テーパー部 218:太径部 220:コイル体 242:先端側接合部 244:基端側接合部 310:デリバリー用カテーテル 312:中空部 320:回収用カテーテル 322:中空部