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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059389
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/075 20060101AFI20240423BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20240423BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240423BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H03H7/075 Z
H03H7/09 Z
H01F17/00 D
H01F27/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167044
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 俊志
【テーマコード(参考)】
5E070
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070CB13
5J024AA01
5J024CA01
5J024CA03
5J024CA10
5J024DA04
5J024DA29
5J024DA33
5J024EA03
5J024KA03
(57)【要約】
【課題】並列共振回路と直列共振回路との間の電磁界結合の影響を抑制しながら、小型化が可能な積層型電子部品を実現する。
【解決手段】電子部品1は、複数の第1の導体と複数の第2の導体を含む積層体50を備えている。複数の第1の導体は、第1の導体群G1を含んでいる。複数の第2の導体は、第1の導体群G1が配置された領域R1に隣接する領域R4に配置された第2の導体群G4を含んでいる。複数の第1の導体は、更に、第2の導体群G4が配置された領域R4に隣接すると共に第1の導体群G1が配置された領域R1との間に第2の導体群G4が配置された領域R4を挟む位置にある領域R3に配置された第3の導体群を含んでいる。第1の導体群G1は、並列共振回路21A,31Aを構成する。第2の導体群G4は、直列共振回路32Bを構成する。第3の導体群G3は、他の並列共振回路41Aを構成する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、
複数の出力端子と、
複数の並列共振回路と、
複数の直列共振回路と、
積層された複数の誘電体層と、複数の第1の導体と、複数の第2の導体とを含む積層体とを備え、
前記複数の第1の導体は、前記複数の並列共振回路と前記複数の直列共振回路のうちの一方を構成し、
前記複数の第2の導体は、前記複数の並列共振回路と前記複数の直列共振回路のうちの他方を構成し、
前記複数の第1の導体は、第1の導体群を含み、
前記複数の第2の導体は、前記第1の導体群が配置された領域に隣接する領域に配置された第2の導体群を含み、
前記複数の第1の導体は、更に、前記第2の導体群が配置された領域に隣接すると共に前記第1の導体群が配置された領域との間に前記第2の導体群が配置された領域を挟む位置にある領域に配置された第3の導体群を含み、
前記複数の出力端子は、第1の端子と第2の端子と第3の端子とを含み、
前記第1の導体群は、前記入力端子と前記第1の端子とを接続する経路に設けられた回路の少なくとも一部を構成し、
前記第2の導体群は、前記入力端子と前記第2の端子とを接続する経路に設けられた回路の少なくとも一部を構成し、
前記第3の導体群は、前記入力端子と前記第3の端子とを接続する経路に設けられた回路の少なくとも一部を構成することを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記積層体は、第1の側面と第2の側面とを有し、
前記複数の第1の導体の一部は、前記第1の側面に沿った第1の領域に配置され、
前記複数の第2の導体の一部は、前記第2の側面に沿った第2の領域に配置されていることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1の領域に配置された前記複数の第1の導体の前記一部は、前記第1の導体群を含むことを特徴とする請求項2記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第2の導体群は、前記第1の領域に隣接する領域に配置されていることを特徴とする請求項2記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第3の導体群は、前記第2の領域に隣接する領域に配置されていることを特徴とする請求項2記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記複数の出力端子は、更に、第4の端子を含み、
前記第2の領域に配置された前記複数の第2の導体の前記一部は、前記入力端子と前記第4の端子とを接続する経路に設けられた回路の少なくとも一部を構成することを特徴とする請求項2記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記複数の第1の導体は、前記複数の並列共振回路を構成し、
前記複数の第2の導体は、前記複数の直列共振回路を構成することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の並列共振回路と複数の直列共振回路とを備えた積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
小型移動体通信機器では、システムおよび使用周波数帯域が異なる複数のアプリケーションで共通に使用されるアンテナを設け、このアンテナが送受信する複数の信号を、分波器を用いて分離する構成が広く用いられている。
【0003】
一般的に、第1の周波数帯域内の周波数の第1の信号と、第1の周波数帯域よりも高い第2の周波数帯域内の周波数の第2の信号を分離する分波器は、共通ポートと、第1の信号ポートと、第2の信号ポートと、共通ポートから第1の信号ポートに至る第1の信号経路に設けられた第1のフィルタと、共通ポートから第2の信号ポートに至る第2の信号経路に設けられた第2のフィルタとを備えている。第1および第2のフィルタとしては、例えば、インダクタとキャパシタを用いて構成されたLC並列共振器およびLC直列共振器が用いられる。
【0004】
近年、小型移動体通信機器の小型化、省スペース化が市場から要求されており、その通信機器に用いられる分波器の小型化も要求されている。分波器が小型化すると、共振器間の電磁界結合が強くなりすぎる場合がある。これにより、所望の特性を実現することができない場合があった。
【0005】
特許文献1には、LC並列共振回路とLC直列共振回路とを備えた高周波フィルタが開示されている。LC並列共振回路とLC直列共振回路は、2つの入出力端子を結ぶ経路に設けられている。特許文献1には、LC並列共振回路のインダクタの磁束の方向とLC直列共振回路のインダクタの磁束の方向を直交させることにより、LC並列共振回路のインダクタとLC直列共振回路のインダクタが電磁界結合しないようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2019/064990号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
小型化に適した分波器としては、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含む積層体を用いたものが知られている。特許文献1に開示された技術では、2つのインダクタの向きを変えて配置するためのスペースが必要になる。そのため、特許文献1に開示された技術を、積層体を用いて構成された分波器に適用した場合、積層体内に無駄なスペースが生じてしまうため、分波器の小型化が難しいという問題があった。
【0008】
また、分波器が分波する信号の数が多くなるに従って、LC並列共振器の数とLC直列共振器の数が多くなる。そのため、上記の問題は、トリプレクサやクアッドプレクサ等のマルチプレクサにおいて顕著になる。
【0009】
上記の問題は、分波器に限らず、複数の並列共振回路と複数の直列共振回路を含む積層型電子部品全般に当てはまる。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、並列共振回路と直列共振回路との間の電磁界結合の影響を抑制しながら、小型化が可能な積層型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の積層型電子部品は、入力端子と、複数の出力端子と、複数の並列共振回路と、複数の直列共振回路と、積層された複数の誘電体層と、複数の第1の導体と、複数の第2の導体とを含む積層体とを備えている。複数の第1の導体は、複数の並列共振回路と複数の直列共振回路のうちの一方を構成する。複数の第2の導体は、複数の並列共振回路と複数の直列共振回路のうちの他方を構成する。複数の第1の導体は、第1の導体群を含んでいる。複数の第2の導体は、第1の導体群が配置された領域に隣接する領域に配置された第2の導体群を含んでいる。複数の第1の導体は、更に、第2の導体群が配置された領域に隣接すると共に第1の導体群が配置された領域との間に第2の導体群が配置された領域を挟む位置にある領域に配置された第3の導体群を含んでいる。
【0012】
複数の出力端子は、第1の端子と第2の端子と第3の端子とを含んでいる。第1の導体群は、入力端子と第1の端子とを接続する経路に設けられた回路の少なくとも一部を構成する。第2の導体群は、入力端子と第2の端子とを接続する経路に設けられた回路の少なくとも一部を構成する。第3の導体群は、入力端子と第3の端子とを接続する経路に設けられた回路の少なくとも一部を構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の積層型電子部品では、第1の導体群と第2の導体群と第3の導体群が前述のように配置されている。これにより、本発明によれば、並列共振回路と直列共振回路との間の電磁界結合の影響を抑制しながら、積層型電子部品を小型化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の回路構成の一例を示す回路図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の外観を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における1層目ないし3層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における4層目ないし6層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における7層目ないし9層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における10層目ないし12層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における13層目ないし15層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図9】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における16層目ないし18層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図10】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における19層目ないし21層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図11】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における22層目ないし24層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図12】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における25層目ないし27層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図13】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における28層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図14】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体の内部を示す斜視図である。
図15】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品の積層体の内部を示す平面図である。
図16】本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品における通過減衰特性の一例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る積層型電子部品(以下、単に電子部品と記す。)1の構成の概略について説明する。図1は、電子部品1の構成を示すブロック図である。図1には、電子部品1の例として、分波器(クアッドプレクサ)を示している。
【0016】
電子部品1は、入力ポート10と、複数の出力ポートとを備えている。本実施の形態では、複数の出力ポートは、第1の出力ポート11と、第2の出力ポート12と、第3の出力ポート13と、第4の出力ポート14とを含んでいる。第1の出力ポート11は、第1の通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させる。第2の出力ポート12は、第2の通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させる。第3の出力ポート13は、第3の通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させる。第4の出力ポート14は、第4の通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させる。
【0017】
第2の通過帯域は、第1の通過帯域よりも高い周波数帯域である。第4の通過帯域は、第3通過帯域よりも高い周波数帯域である。第3の通過帯域は、第2の通過帯域よりも高い周波数帯域であってもよい。あるいは、第4の通過帯域は、第1の通過帯域よりも低い周波数帯域であってもよい。この場合、第3の通過帯域も、第1の通過帯域よりも低い周波数帯域になる。以下の説明では、第3の通過帯域は、第2の通過帯域よりも高い周波数帯域であるものとする。
【0018】
電子部品1は、更に、第1のダイプレクサ20と、第2のダイプレクサ30と、第3のダイプレクサ40とを備えている。第1のダイプレクサ20は、入力端20aと、2つの出力端20b,20cとを有している。第1のダイプレクサ20の入力端20aは、入力ポート10に接続されている。
【0019】
第2のダイプレクサ30は、入力端30aと、2つの出力端30b,30cとを有している。第2のダイプレクサ30は、回路構成上、第1のダイプレクサ20の出力端20bと第1および第2の出力ポート11,12との間に設けられている。第2のダイプレクサ30の入力端30aは、第1のダイプレクサ20の出力端20bに接続されている。第2のダイプレクサ30の出力端30bは、第1の出力ポート11に直接接続されている。第2のダイプレクサ30の出力端30cは、第2の出力ポート12に直接接続されている。
【0020】
第3のダイプレクサ40は、入力端40aと、2つの出力端40b,40cとを有している。第3のダイプレクサ40は、回路構成上、第1のダイプレクサ20の出力端20cと第3および第4の出力ポート13,14との間に設けられている。第3のダイプレクサ40の入力端40aは、第1のダイプレクサ20の出力端20cに接続されている。第3のダイプレクサ40の出力端40bは、第3の出力ポート13に直接接続されている。第3のダイプレクサ40の出力端40cは、第4の出力ポート14に直接接続されている。
【0021】
なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。
【0022】
第1のダイプレクサ20は、第2の通過帯域を含むが第3の通過帯域を含まない周波数帯域の信号が出力端20bを選択的に通過し、且つ第3の通過帯域を含むが第2の通過帯域を含まない周波数帯域の信号が出力端20cを選択的に通過するように構成されている。本実施の形態では特に、第1のダイプレクサ20は、回路構成上入力端20aと出力端20bとの間に設けられた第1のフィルタ21と、回路構成上入力端20aと出力端20cとの間に設けられた第2のフィルタ22とを含んでいる。第1のフィルタ21は、第1の通過帯域と第2の通過帯域を含むが第3の通過帯域を含まない周波数帯域の信号を選択的に通過させるフィルタである。第2のフィルタ22は、第3の通過帯域と第4の通過帯域を含むが第2の通過帯域を含まない周波数帯域の信号を選択的に通過させるフィルタである。
【0023】
第2のダイプレクサ30は、第1の通過帯域内の周波数の信号が出力端30bを選択的に通過し、且つ第2の通過帯域内の周波数の信号が出力端30cを選択的に通過するように構成されている。本実施の形態では特に、第2のダイプレクサ30は、回路構成上入力端30aと出力端30bとの間に設けられた第3のフィルタ31と、回路構成上入力端30aと出力端30cとの間に設けられた第4のフィルタ32とを含んでいる。第3のフィルタ31は、第1の通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させるフィルタである。第4のフィルタ32は、第2の通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させるフィルタである。
【0024】
第3のダイプレクサ40は、第3の通過帯域内の周波数の信号が出力端40bを選択的に通過し、且つ第4の通過帯域内の周波数の信号が出力端40cを選択的に通過するように構成されている。本実施の形態では特に、第3のダイプレクサ40は、回路構成上入力端40aと出力端40bとの間に設けられた第5のフィルタ41と、回路構成上入力端40aと出力端40cとの間に設けられた第6のフィルタ42とを備えている。第5のフィルタ41は、第3の通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させるフィルタである。第6のフィルタ42は、第4の通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させるフィルタである。
【0025】
電子部品1は、更に、入力ポート10と第1の出力ポート11とを接続する第1の経路P1と、入力ポート10と第2の出力ポート12とを接続する第2の経路P2と、入力ポート10と第3の出力ポート13とを接続する第3の経路P3と、入力ポート10と第4の出力ポート14とを接続する第4の経路P4とを備えている。第1および第2の経路P1,P2は、第1のダイプレクサ20の入力端20aから第2のダイプレクサ30の入力端30aまでは、同一の経路である。第3および第4の経路P3,P4は、第1のダイプレクサ20の入力端20aから第3のダイプレクサ40の入力端40aまでは、同一の経路である。
【0026】
第1のフィルタ21は、第1のダイプレクサ20の入力端20aと出力端20bとを接続する経路であって、第1および第2の経路P1,P2の各々の一部を構成する経路に設けられている。第2のフィルタ22は、第1のダイプレクサ20の入力端20aと出力端20cとを接続する経路であって、第3および第4の経路P3,P4の各々の一部を構成する経路に設けられている。
【0027】
第3および第4のフィルタ31,32は、第1のフィルタ21の後段に設けられている。また、第1および第2の経路P1,P2は、第1のフィルタ21の後段において分岐する。第3のフィルタ31は、第1の経路P1に設けられている。第4のフィルタ32は、第2の経路P2に設けられている。
【0028】
第5および第6のフィルタ41,42は、第2のフィルタ22の後段に設けられている。また、第3および第4の経路P3,P4は、第2のフィルタ22の後段において分岐する。第5のフィルタ41は、第3の経路P3に設けられている。第6のフィルタ42は、第4の経路P4に設けられている。
【0029】
入力ポート10に入力された第1の通過帯域内の周波数の第1の信号は、第1の経路P1すなわち第1および第3のフィルタ21,31を選択的に通過して、第1の出力ポート11から出力される。入力ポート10に入力された第2の通過帯域内の周波数の第2の信号は、第2の経路P2すなわち第1および第4のフィルタ21,32を選択的に通過して、第2の出力ポート12から出力される。入力ポート10に入力された第3の通過帯域内の周波数の第3の信号は、第3の経路P3すなわち第2および第5のフィルタ22,41を選択的に通過して、第3の出力ポート13から出力される。入力ポート10に入力された第4の通過帯域内の周波数の第4の信号は、第4の経路P4すなわち第2および第6のフィルタ22,42を選択的に通過して、第4の出力ポート14から出力される。このようにして、電子部品1は、第1ないし第4の信号を分離する。
【0030】
次に、図2を参照して、電子部品1の回路構成の一例について説明する。図2は、電子部品1の回路構成の一例を示す回路図である。
【0031】
始めに、第1のダイプレクサ20の構成について説明する。第1のダイプレクサ20の第1のフィルタ21は、並列共振回路21Aを含んでいる。本実施の形態では特に、第1のフィルタ21の全体が、並列共振回路21Aによって構成されている。
【0032】
第1のダイプレクサ20の第2のフィルタ22は、直列共振回路22Bを含んでいる。本実施の形態では特に、第2のフィルタ22の全体が、直列共振回路22Bによって構成されている。
【0033】
並列共振回路は、特定の素子パラメータおよび特定の周波数において電流が最小になるように構成された共振回路である。並列共振回路では、信号経路(例えば、第1ないし第4の経路P1~P4)とグランドとの間に、キャパシタが設けられている。直列共振回路は、例えば、特定の素子パラメータおよび特定の周波数において電流が最大になるように構成された共振回路である。直列共振回路では、信号経路とグランドとの間に、キャパシタが設けられていない。
【0034】
第1のフィルタ21(並列共振回路21A)は、インダクタL21,L22と、キャパシタC21,C22とを含んでいる。インダクタL21の一端は、第1のダイプレクサ20の入力端20aに接続されている。インダクタL22の一端は、インダクタL21の他端に接続されている。インダクタL22の他端は、第1のダイプレクサ20の出力端20bに接続されている。
【0035】
キャパシタC21の一端は、インダクタL21,L22の接続点に接続されている。キャパシタC21の他端は、グランドに接続されている。キャパシタC22は、インダクタL22に対して並列に接続されている。
【0036】
第2のフィルタ22(直列共振回路22B)は、インダクタL23,L24,L25と、キャパシタC23,C24,C25,C26とを含んでいる。インダクタL23の一端は、第1のダイプレクサ20の入力端20aに接続されている。
【0037】
キャパシタC23の一端は、インダクタL23の他端に接続されている。キャパシタC24の一端は、キャパシタC23の他端に接続されている。キャパシタC25の一端は、キャパシタC23の一端に接続されている。キャパシタC25の他端とキャパシタC26の一端は、キャパシタC24の他端に接続されている。キャパシタC26の他端は、第1のダイプレクサ20の出力端20cに接続されている。
【0038】
インダクタL24の一端は、キャパシタC23とキャパシタC24の接続点に接続されている。インダクタL25の一端は、キャパシタC24とキャパシタC25の接続点に接続されている。インダクタL24,L25の各他端は、グランドに接続されている。
【0039】
次に、第2のダイプレクサ30の構成について説明する。第2のダイプレクサ30の第3のフィルタ31は、並列共振回路31Aを含んでいる。本実施の形態では特に、第3のフィルタ31の全体が、並列共振回路31Aによって構成されている。
【0040】
第2のダイプレクサ30の第4のフィルタ32は、直列共振回路32Bを含んでいる。本実施の形態では特に、第4のフィルタ32の全体が、直列共振回路32Bによって構成されている。
【0041】
第3のフィルタ31(並列共振回路31A)は、インダクタL31,L32と、キャパシタC31,C32とを含んでいる。インダクタL31の一端は、第2のダイプレクサ30の入力端30aに接続されている。インダクタL32の一端は、インダクタL31の他端に接続されている。インダクタL32の他端は、第2のダイプレクサ30の出力端30bに接続されている。
【0042】
キャパシタC31の一端は、インダクタL31,L32の接続点に接続されている。キャパシタC31の他端は、グランドに接続されている。キャパシタC32は、インダクタL32に対して並列に接続されている。
【0043】
第4のフィルタ32(直列共振回路32B)は、インダクタL33,L34と、キャパシタC33,C34,C35とを含んでいる。インダクタL33の一端は、第2のダイプレクサ30の入力端30aに接続されている。
【0044】
キャパシタC33の一端は、インダクタL33の他端に接続されている。キャパシタC34の一端は、キャパシタC33の他端に接続されている。キャパシタC34の他端は、第2のダイプレクサ30の出力端30cに接続されている。キャパシタC35の一端は、キャパシタC33の一端に接続されている。キャパシタC35の他端は、キャパシタC34の他端に接続されている。
【0045】
インダクタL34の一端は、キャパシタC33とキャパシタC34の接続点に接続されている。インダクタL34の他端は、グランドに接続されている。
【0046】
次に、第3のダイプレクサ40の構成について説明する。第3のダイプレクサ40の第5のフィルタ41は、並列共振回路41Aを含んでいる。本実施の形態では特に、第5のフィルタ41の全体が、並列共振回路41Aによって構成されている。
【0047】
第3のダイプレクサ40の第6のフィルタ42は、直列共振回路42Bと、並列共振回路42Aとを含んでいる。直列共振回路42Bと並列共振回路42Aは、回路構成上、第3のダイプレクサ40の入力端40a側からこの順に設けられている。
【0048】
第5のフィルタ41(並列共振回路41A)は、インダクタL41,L42と、キャパシタC41,C42とを含んでいる。インダクタL41の一端は、第3のダイプレクサ40の入力端40aに接続されている。インダクタL42の一端は、インダクタL41の他端に接続されている。インダクタL42の他端は、第3のダイプレクサ40の出力端40bに接続されている。
【0049】
キャパシタC41の一端は、インダクタL41,L42の接続点に接続されている。キャパシタC41の他端は、グランドに接続されている。キャパシタC42は、インダクタL42に対して並列に接続されている。
【0050】
第6のフィルタ42の直列共振回路42Bは、インダクタL43と、キャパシタC43,C44,C45とを含んでいる。キャパシタC43の一端は、第3のダイプレクサ40の入力端40aに接続されている。キャパシタC44の一端は、キャパシタC43の他端に接続されている。キャパシタC45の一端は、キャパシタC43の一端に接続されている。キャパシタC45の他端は、キャパシタC44の他端に接続されている。
【0051】
インダクタL43の一端は、キャパシタC43とキャパシタC44の接続点に接続されている。インダクタL43の他端は、グランドに接続されている。
【0052】
第6のフィルタ42の並列共振回路42Aは、インダクタL44,L45と、キャパシタC46,C47,C48とを含んでいる。インダクタL44の一端は、直列共振回路42BのキャパシタC44の他端に接続されている。インダクタL44の他端は、第3のダイプレクサ40の出力端40cに接続されている。
【0053】
キャパシタC46の一端とキャパシタC48の一端は、インダクタL44の一端に接続されている。キャパシタC47の一端とキャパシタC48の他端は、インダクタL44の他端に接続されている。
【0054】
インダクタL45の一端は、キャパシタC46,C47の各他端に接続されている。インダクタL45の他端は、グランドに接続されている。
【0055】
並列共振回路21Aは、第1のダイプレクサ20の入力端20aと出力端20bとを接続する経路であって、第1および第2の経路P1,P2の各々の一部を構成する経路に設けられている。直列共振回路22Bは、第1のダイプレクサ20の入力端20aと出力端20cとを接続する経路であって、第3および第4の経路P3,P4の各々の一部を構成する経路に設けられている。
【0056】
並列共振回路31Aおよび直列共振回路32Bは、並列共振回路21Aの後段に設けられている。並列共振回路31Aは、第1の経路P1に設けられている。直列共振回路32Bは、第2の経路P2に設けられている。
【0057】
並列共振回路41Aおよび直列共振回路42Bは、直列共振回路22Bの後段に設けられている。並列共振回路41Aは、第3の経路P3に設けられている。直列共振回路42Bは、第4の経路P4に設けられている。
【0058】
並列共振回路42Aは、直列共振回路42Bの後段に設けられている。また、並列共振回路42Aは、第4の経路P4に設けられている。
【0059】
次に、図3を参照して、電子部品1のその他の構成について説明する。図3は、電子部品1の外観を示す斜視図である。
【0060】
電子部品1は、更に、積層された複数の誘電体層と複数の導体とを含む積層体50を備えている。積層体50は、入力ポート10、第1ないし第4の出力ポート11~14ならびに第1ないし第3のダイプレクサ20,30,40を一体化するためのものである。第1ないし第3のダイプレクサ20,30,40は、それぞれ複数の導体を用いて構成されている。
【0061】
積層体50は、複数の誘電体層の積層方向Tの両端に位置する底面50Aおよび上面50Bと、底面50Aと上面50Bを接続する4つの側面50C~50Fとを有している。側面50C,50Dは互いに反対側を向き、側面50E,50Fも互いに反対側を向いている。側面50C~50Fは、上面50Bおよび底面50Aに対して垂直になっている。
【0062】
ここで、図3に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、積層方向Tに平行な一方向を、Z方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。また、「積層方向Tから見たとき」という表現は、Z方向または-Z方向に離れた位置から対象物を見ることを意味する。
【0063】
図3に示したように、底面50Aは、積層体50における-Z方向の端に位置する。上面50Bは、積層体50におけるZ方向の端に位置する。側面50Cは、積層体50における-X方向の端に位置する。側面50Dは、積層体50におけるX方向の端に位置する。側面50Eは、積層体50における-Y方向の端に位置する。側面50Fは、積層体50におけるY方向の端に位置する。
【0064】
電子部品1は、更に、入力端子111と、複数の出力端子とを備えている。複数の出力端子は、出力端子113,115,116,117を含んでいる。電子部品1は、更に、グランドに接続されるグランド端子112,114,118,119を備えている。入力端子111、出力端子113,115,116,117およびグランド端子112,114,118,119は、積層体50の底面50Aに設けられている。
【0065】
入力端子111は、底面50Aと側面50Cと側面50Eが交差する位置に存在する角部の近傍に配置されている。出力端子113は、底面50Aと側面50Dと側面50Eが交差する位置に存在する角部の近傍に配置されている。出力端子115は、底面50Aと側面50Dと側面50Fが交差する位置に存在する角部の近傍に配置されている。出力端子117は、底面50Aと側面50Cと側面50Fが交差する位置に存在する角部の近傍に配置されている。
【0066】
グランド端子112は、入力端子111と出力端子113との間に配置されている。グランド端子114は、出力端子113と出力端子115との間に配置されている。出力端子116は、出力端子115と出力端子117との間に配置されている。グランド端子118は、入力端子111と出力端子117との間に配置されている。グランド端子119は、底面50Aの中央に配置されている。
【0067】
入力端子111は入力ポート10に対応し、出力端子113は第4の出力ポート14に対応し、出力端子115は第3の出力ポート13に対応し、出力端子116は第2の出力ポート12に対応し、出力端子117は第1の出力ポート11に対応している。従って、入力ポート10ならびに第1ないし第4の出力ポート11~14は、積層体50の底面50Aに設けられている。
【0068】
次に、図4(a)ないし図13を参照して、積層体50を構成する複数の誘電体層および複数の導体の一例について説明する。この例では、積層体50は、積層された28層の誘電体層を有している。以下、この28層の誘電体層を、下から順に1層目ないし28層目の誘電体層と呼ぶ。また、1層目ないし28層目の誘電体層を符号51~78で表す。
【0069】
図4(a)ないし図12(b)において、複数の円は複数のスルーホールを表している。誘電体層51~76の各々には、複数のスルーホールが形成されている。複数のスルーホールは、それぞれ、スルーホール用の孔に導体ペーストを充填することによって形成される。複数のスルーホールの各々は、導体層または他のスルーホールに接続されている。
【0070】
図4(a)は、1層目の誘電体層51のパターン形成面を示している。誘電体層51のパターン形成面には、入力端子111、出力端子113,115,116,117およびグランド端子112,114,118,119が形成されている。図4(b)は、2層目の誘電体層52のパターン形成面を示している。誘電体層52のパターン形成面には、導体層521,522,523,524,525,526が形成されている。
【0071】
図4(c)は、3層目の誘電体層53のパターン形成面を示している。誘電体層53のパターン形成面には、導体層531,532,533,534,535,536,537,538,539が形成されている。導体層532は、導体層531に接続されている。導体層538は、導体層537に接続されている。
【0072】
図5(a)は、4層目の誘電体層54のパターン形成面を示している。誘電体層54のパターン形成面には、導体層541,542,543,544,545,546が形成されている。図5(b)は、5層目の誘電体層55のパターン形成面を示している。誘電体層55のパターン形成面には、導体層551,552,553,554,555が形成されている。図5(c)は、6層目の誘電体層56のパターン形成面を示している。誘電体層56のパターン形成面には、導体層561,562が形成されている。
【0073】
図6(a)は、7層目の誘電体層57のパターン形成面を示している。誘電体層57のパターン形成面には、導体層571が形成されている。図6(b)は、8層目の誘電体層58のパターン形成面を示している。誘電体層58のパターン形成面には、導体層581,582,583,584,585,586が形成されている。図6(c)は、9層目の誘電体層59のパターン形成面を示している。誘電体層59のパターン形成面には、導体層592,594,595,596が形成されている。
【0074】
図7(a)は、10層目の誘電体層60のパターン形成面を示している。誘電体層60のパターン形成面には、導体層602,604,605が形成されている。図7(b)は、11層目の誘電体層61のパターン形成面を示している。誘電体層61のパターン形成面には、導体層611,612,613,614,615が形成されている。図7(c)は、12層目の誘電体層62のパターン形成面を示している。誘電体層62のパターン形成面には、導体層621,622,623,624,625が形成されている。
【0075】
図8(a)は、13層目の誘電体層63のパターン形成面を示している。誘電体層63のパターン形成面には、導体層631,632,633,634が形成されている。図8(b)は、14層目の誘電体層64のパターン形成面を示している。誘電体層64のパターン形成面には、導体層641,642,643,644が形成されている。図8(c)は、15層目の誘電体層65のパターン形成面を示している。誘電体層65のパターン形成面には、導体層652,653が形成されている。
【0076】
図9(a)は、16層目の誘電体層66のパターン形成面を示している。誘電体層66のパターン形成面には、導体層662,663が形成されている。図9(b)は、17層目の誘電体層67のパターン形成面を示している。誘電体層67のパターン形成面には、導体層674,675が形成されている。図9(c)は、18層目の誘電体層68のパターン形成面を示している。誘電体層68のパターン形成面には、導体層684,685が形成されている。
【0077】
図10(a)は、19層目の誘電体層69のパターン形成面を示している。誘電体層69のパターン形成面には、導体層692,693,694,695が形成されている。図10(b)は、20層目の誘電体層70のパターン形成面を示している。誘電体層70のパターン形成面には、導体層702,703,704,705が形成されている。図10(c)は、21層目の誘電体層71のパターン形成面を示している。誘電体層71のパターン形成面には、導体層711,712,713,714,715が形成されている。
【0078】
図11(a)は、22層目の誘電体層72のパターン形成面を示している。誘電体層72のパターン形成面には、導体層721,722,723,724,725が形成されている。図11(b)は、23層目の誘電体層73のパターン形成面を示している。誘電体層73のパターン形成面には、導体層731,732,733,734,735,736が形成されている。図11(c)は、24層目の誘電体層74のパターン形成面を示している。誘電体層74のパターン形成面には、導体層741,742,743,744,745,746が形成されている。
【0079】
図12(a)は、25層目の誘電体層75のパターン形成面を示している。誘電体層75のパターン形成面には、導体層751,752,753,754が形成されている。導体層754は、導体層752に接続されている。図12(b)は、26層目の誘電体層76のパターン形成面を示している。誘電体層76のパターン形成面には、導体層761,762,763,764,765,766が形成されている。導体層764は、導体層763に接続されている。導体層766は、導体層764に接続されている。図12(b)では、2つの導体層の境界を点線で示している。図12(c)は、27層目の誘電体層77のパターン形成面を示している。誘電体層77のパターン形成面には、導体層771,772,773が形成されている。導体層773は、導体層772に接続されている。
【0080】
図13は、28層目の誘電体層78のパターン形成面を示している。誘電体層78のパターン形成面には、マーク781が形成されている。
【0081】
図3に示した積層体50は、1層目の誘電体層51のパターン形成面が積層体50の底面50Aになり、28層目の誘電体層78のパターン形成面とは反対側の面が積層体50の上面50Bになるように、1層目ないし28層目の誘電体層51~78が積層されて構成される。
【0082】
図4(a)ないし図12(b)に示した複数のスルーホールの各々は、1層目ないし27層目の誘電体層51~77を積層したときに、積層方向Tにおいて重なる導体層または積層方向Tにおいて重なる他のスルーホールに接続されている。また、図4(a)ないし図12(b)に示した複数のスルーホールのうち、端子内または導体層内に位置するスルーホールは、その端子またはその導体層に接続されている。
【0083】
図14は、1層目ないし28層目の誘電体層51~78が積層されて構成された積層体50の内部を示している。図14に示したように、積層体50の内部では、図4(a)ないし図12(c)に示した複数の導体層と複数のスルーホールが積層されている。なお、図14では、マーク781を省略している。
【0084】
積層体50は、例えば、誘電体層51~78の材料をセラミックとして、低温同時焼成法によって作製される。この場合には、まず、それぞれ後に誘電体層51~78になる複数のセラミックグリーンシートを作製する。各セラミックグリーンシートには、後に複数の導体層になる複数の焼成前導体層と、後に複数のスルーホールになる複数の焼成前スルーホールが形成されている。次に、複数のセラミックグリーンシートを積層して、グリーンシート積層体を作製する。次に、このグリーンシート積層体を切断して、焼成前積層体を作製する。次に、この焼成前積層体におけるセラミックと導体を低温同時焼成工程によって焼成して、積層体50を完成させる。
【0085】
以下、図2に示した電子部品1の回路の構成要素と、図4(b)ないし図12(c)に示した積層体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。始めに、第1のフィルタ21の並列共振回路21Aの構成要素について説明する。インダクタL21は、導体層711,721,731,741によって構成されている。インダクタL22は、導体層611,621,631,641によって構成されている。
【0086】
キャパシタC21は、導体層531,541と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。キャパシタC22は、導体層541,551と、これらの導体層の間の誘電体層54とによって構成されている。
【0087】
次に、第2のフィルタ22の直列共振回路22Bの構成要素について説明する。インダクタL23は、導体層692,702,712,722,732,742によって構成されている。インダクタL24は、導体層592,602,612,622,632,642,652,662によって構成されている。インダクタL25は、導体層613,623,633,643,653,663によって構成されている。
【0088】
キャパシタC23は、導体層761,771と、これらの導体層の間の誘電体層76とによって構成されている。キャパシタC24は、導体層761,772と、これらの導体層の間の誘電体層76とによって構成されている。キャパシタC25は、導体層762,772と、これらの導体層の間の誘電体層76とによって構成されている。キャパシタC26は、導体層763,773と、これらの導体層の間の誘電体層76とによって構成されている。
【0089】
次に、第3のフィルタ31の並列共振回路31Aの構成要素について説明する。インダクタL31は、導体層693,703,713,723,733,743によって構成されている。インダクタL32は、導体層594,604,614,624によって構成されている。
【0090】
キャパシタC31は、導体層532,542,552,561と、これらの導体層の間の誘電体層53,54,55とによって構成されている。キャパシタC32は、導体層533,542,561,571と、これらの導体層の間の誘電体層53,56とによって構成されている。
【0091】
次に、第4のフィルタ32の直列共振回路32Bの構成要素について説明する。インダクタL33は、導体層595,605,615,625によって構成されている。インダクタL34は、導体層674,684,694,704,714,724,734,744によって構成されている。
【0092】
キャパシタC33は、導体層553,562と、これらの導体層の間の誘電体層55とによって構成されている。キャパシタC34は、導体層534,543,553と、これらの導体層の間の誘電体層53,54とによって構成されている。キャパシタC35は、導体層535,543と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。
【0093】
次に、第5のフィルタ41の並列共振回路41Aの構成要素について説明する。インダクタL41は、導体層715,725,735,745によって構成されている。インダクタL42は、導体層736,746と、導体層554と導体層736とを接続する直列に接続された複数のスルーホールと、導体層544と導体層736とを接続する直列に接続された複数のスルーホールとによって構成されている。
【0094】
キャパシタC41は、導体層536,544と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。キャパシタC42は、導体層544,554と、これらの導体層の間の誘電体層54とによって構成されている。
【0095】
次に、第6のフィルタ42の直列共振回路42Bの構成要素について説明する。インダクタL43は、導体層675,685,695,705によって構成されている。
【0096】
キャパシタC43は、導体層752,764と、これらの導体層の間の誘電体層75とによって構成されている。キャパシタC44は、導体層753,764と、これらの導体層の間の誘電体層75とによって構成されている。キャパシタC45は、導体層754,765と、これらの導体層の間の誘電体層75とによって構成されている。
【0097】
次に、第6のフィルタ42の並列共振回路42Aの構成要素について説明する。インダクタL44は、導体層634,644と、導体層586と導体層634とを接続する直列に接続された複数のスルーホールと、導体層546と導体層634とを接続する直列に接続された複数のスルーホールとによって構成されている。インダクタL45は、導体層525によって構成されている。
【0098】
キャパシタC46は、導体層537,545と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。キャパシタC47は、導体層538,546と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。キャパシタC48は、導体層546,555と、これらの導体層の間の誘電体層54とによって構成されている。
【0099】
次に、図2図4(a)ないし図15を参照して、本実施の形態に係る電子部品1の構造上の特徴について説明する。図15は、積層体50の内部を示す平面図である。
【0100】
電子部品1は、複数の並列共振回路と、複数の直列共振回路とを備えている。本実施の形態では特に、複数の並列共振回路は、並列共振回路21A,31A,41A,42Aを含んでいる。複数の直列共振回路は、直列共振回路22B,32B,42Bを含んでいる。
【0101】
積層体50は、複数の導体すなわち複数の導体層および複数のスルーホールを含んでいる。本実施の形態では、積層体50は、複数の導体として、複数の第1の導体と複数の第2の導体とを含んでいる。複数の第1の導体は、複数の並列共振回路と複数の直列共振回路のうちの一方を構成する。複数の第2の導体は、複数の並列共振回路と複数の直列共振回路のうちの他方を構成する。以下、複数の第1の導体が複数の並列共振回路を構成し、複数の第2の導体が複数の直列共振回路を構成する場合を例にとって説明する。
【0102】
図15において、それぞれ破線で囲まれた4つの領域R1,R2,R3,R4は、複数の第1の導体と複数の第2の導体を所定のグループ毎に配置するための領域を示している。領域R1は、側面50Cに沿った領域である。領域R2は、領域R1と側面50Dとの間において側面50Eに沿った領域である。領域R3は、領域R2と側面50Fとの間に位置する。領域R4は、領域R1と領域R3との間且つ領域R3と側面50Fとの間に位置する。また、領域R4は、領域R1に隣接している。領域R3は、領域R1との間に領域R4を挟む位置に配置されている。
【0103】
複数の第1の導体は、第1の導体群G1を含んでいる。複数の第2の導体は、第1の導体群が配置された領域に隣接する領域に配置された第2の導体群G4を含んでいる。複数の第1の導体は、更に、第2の導体群が配置された領域に隣接すると共に第1の導体群G1が配置された領域との間に第2の導体群G4が配置された領域を挟む位置に配置された第3の導体群G3を含んでいる。本実施の形態では特に、第1の導体群G1は領域R1に配置され、第2の導体群G4は領域R4に配置され、第3の導体群G3は領域R3に配置されている。
【0104】
第1の導体群G1は、第1の経路P1に設けられた回路の少なくとも一部を構成する。本実施の形態では特に、第1の導体群G1は、並列共振回路21A,31Aを構成する。第1の導体群は、導体層531,532,533,541,542,551,552,561,571,594,604,611,614,621,624,631,641,693,703,711,713,721,723,731,733,741,743と、これらの導体層に接続された複数のスルーホールとを含んでいる。
【0105】
第2の導体群G4は、第2の経路P2に設けられた回路の少なくとも一部を構成する。本実施の形態では特に、第2の導体群は、直列共振回路32Bを構成する。第2の導体群G4は、導体層534,535,543,553,562,595,605,615,625,674,684,694,704,714,724,734,744と、これらの導体層に接続された複数のスルーホールとを含んでいる。
【0106】
第3の導体群G3は、第3の経路P3に設けられた回路の少なくとも一部を構成する。本実施の形態では特に、第3の導体群G3は、並列共振回路41Aを構成する。第3の導体群は、導体層536,544,554,715,725,735,736,745,746とこれらの導体層に接続された複数のスルーホールと、導体層554と導体層736とを接続する直列に接続された複数のスルーホールと、導体層544と導体層736とを接続する直列に接続された複数のスルーホールとを含んでいる。
【0107】
また、複数の第1の導体の一部は、領域R1に配置されている。上記の複数の第1の導体の一部は、第1の導体群G1を含んでいる。本実施の形態では特に、上記の複数の第1の導体の一部は、第1の導体群G1そのものである。
【0108】
複数の第2の導体の一部G2は、領域R2に配置されている。複数の第2の導体の一部G2は、第4の経路P4に設けられた回路の少なくとも一部を構成する。本実施の形態では特に、複数の第2の導体の一部G2は、直列共振回路22B,42Bを構成する。複数の第2の導体の一部G2は、導体層592,602,612,613,622,623,632,633,642,643,652,653,662,663,675,685,692,695,702,705,712,722,732,742,752~754,761~765,771~773と、これらの導体層に接続された複数のスルーホールとを含んでいる。
【0109】
複数の第1の導体のうち、並列共振回路42Aを構成する複数の導体は、領域R2に配置されていてもよいし、領域R2と側面50Dとの間の領域に配置されていてもよい。上記の複数の導体は、導体層525,537,538,545,546,555,634,644と、これらの導体層に接続された複数のスルーホールと、導体層586と導体層634とを接続する直列に接続された複数のスルーホールと、導体層546と導体層634とを接続する直列に接続された複数のスルーホールである。
【0110】
次に、本実施の形態に係る電子部品1の特性の一例を示す。図16は、電子部品1の通過減衰特性を示す特性図である。図16において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。図16において、符号101は、入力ポート10と第1の出力ポート11との間の通過減衰特性を示している。符号102は、入力ポート10と第2の出力ポート12との間の通過減衰特性を示している。符号103は、入力ポート10と第3の出力ポート13との間の通過減衰特性を示している。符号104は、入力ポート10と第4の出力ポート14との間の通過減衰特性を示している。
【0111】
次に、本実施の形態に係る電子部品1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、領域R1に並列共振回路21A,31Aを構成する複数の導体が配置され、領域R4に直列共振回路32Bを構成する複数の導体が配置され、領域R3に並列共振回路41Aを構成する複数の導体が配置されている。本実施の形態では、側面50Dに沿って、並列共振回路と直列共振回路が交互に並んでいる。
【0112】
ここで、2つの直列共振回路が隣接する場合を考える。この場合、2つの直列共振回路の一方に含まれるインダクタと、2つの直列共振回路の他方に含まれるインダクタは、比較的、電磁界結合しやすい。そのため、この場合には、電磁界結合の影響によって、所望の特性が得られないおそれがある。電磁界結合の影響を低減するためには、2つの直列共振回路の間隔を大きくする必要がある。しかし、そうすると、2つの直列共振回路を備えた電子部品の小型化が難しくなるという問題がある。この問題は、2つの並列共振回路が隣接する場合にも当てはまる。
【0113】
これに対し、本実施の形態では、前述のように、並列共振回路と直列共振回路が交互に並んでいる。このように、異なる種類の共振回路が隣接する場合、同じ種類の共振回路が隣接する場合に比べて、電磁界結合の影響を低減することができると共に、2つの共振器間の間隔を小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、2つの共振回路の間の電磁界結合の影響を抑制しながら、電子部品1を小型化することができる。
【0114】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、複数の第1の導体が複数の直列共振回路を構成し、複数の第2の導体が複数の並列共振回路を構成してもよい。この場合、2つの直列共振回路の間に並列共振回路が配置されるように、並列共振回路と直列共振回路が交互に並んでいてもよい。
【0115】
以上説明したように、本発明の積層型電子部品は、入力端子と、複数の出力端子と、複数の並列共振回路と、複数の直列共振回路と、積層された複数の誘電体層と、複数の第1の導体と、複数の第2の導体とを含む積層体とを備えている。複数の第1の導体は、複数の並列共振回路と複数の直列共振回路のうちの一方を構成する。複数の第2の導体は、複数の並列共振回路と複数の直列共振回路のうちの他方を構成する。複数の第1の導体は、第1の導体群を含んでいる。複数の第2の導体は、第1の導体群が配置された領域に隣接する領域に配置された第2の導体群を含んでいる。複数の第1の導体は、更に、第2の導体群が配置された領域に隣接すると共に第1の導体群が配置された領域との間に第2の導体群が配置された領域を挟む位置にある領域に配置された第3の導体群を含んでいる。
【0116】
複数の出力端子は、第1の端子と第2の端子と第3の端子とを含んでいる。第1の導体群は、入力端子と第1の端子とを接続する経路に設けられた回路の少なくとも一部を構成する。第2の導体群は、入力端子と第2の端子とを接続する経路に設けられた回路の少なくとも一部を構成する。第3の導体群は、入力端子と第3の端子とを接続する経路に設けられた回路の少なくとも一部を構成する。
【0117】
本発明の積層型電子部品において、積層体は、第1の側面と第2の側面とを有していてもよい。複数の第1の導体の一部は、第1の側面に沿った第1の領域に配置されていてもよい。複数の第2の導体の一部は、第2の側面に沿った第2の領域に配置されていてもよい。第1の領域に配置された複数の第1の導体の一部は、第1の導体群を含んでいてもよい。第2の導体群は、第1の領域に隣接する領域に配置されていてもよい。第3の導体群は、第2の領域に隣接する領域に配置されていてもよい。複数の出力端子は、更に、第4の端子を含んでいてもよい。第2の領域に配置された複数の第2の導体の一部は、入力端子と第4の端子とを接続する経路に設けられた回路の少なくとも一部を構成してもよい。
【0118】
また、本発明の積層型電子部品において、複数の第1の導体は、複数の並列共振回路を構成してもよい。複数の第2の導体は、複数の直列共振回路を構成してもよい。
【符号の説明】
【0119】
1…電子部品、10…入力ポート、11…第1の出力ポート、12…第2の出力ポート、13…第3の出力ポート、14…第4の出力ポート、20…第1のダイプレクサ、21A…並列共振回路、22B…直列共振回路、30…第3のダイプレクサ、31A…並列共振回路、32B…直列共振回路、40…第3のダイプレクサ、41A…並列共振回路、42A…並列共振回路、42B…直列共振回路、50…積層体、111…入力端子、112,114,118,119…グランド端子、113,115,116,117…出力端子、R1~R4…領域。
図1
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