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特開2024-59400解析装置、解析方法及び解析プログラム
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  • 特開-解析装置、解析方法及び解析プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059400
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法及び解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20230101AFI20240423BHJP
   G06Q 40/12 20230101ALI20240423BHJP
【FI】
G06Q10/00
G06Q40/00 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167061
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝口 修司
(72)【発明者】
【氏名】澤野井 明裕
(72)【発明者】
【氏名】江田 裕和
(72)【発明者】
【氏名】笠野 学
(72)【発明者】
【氏名】田村 和久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 篤史
(72)【発明者】
【氏名】河内 駿
【テーマコード(参考)】
5L010
5L040
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L010AA01
5L040BB64
5L049AA01
5L055BB64
(57)【要約】
【課題】財務の評価指標と、現場の評価指標との相関を適切に評価し、現場の評価指標が事業経営に与える影響を適切に解析でき、経営施策の意思決定に好適に用いることができることにある。
【解決手段】企業の事業の財務に関する財務評価指標を取得する財務データ取得部と、企業の事業の現場の業務に関する現場評価指標を取得する現場データ取得部と、財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と、現場評価指標の相関を分析し、相関関係を算出する相関分析部と、相関関係と、シミュレーション対象の現場評価指標の値に基づいて、最下層の財務評価指標を算出し、算出した財務評価指標と財務相関関係に基づいて、財務評価指標の各値を算出するシミュレーション部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
企業の事業の財務に関する財務評価指標を取得する財務データ取得部と、
前記企業の事業の現場の業務に関する現場評価指標を取得する現場データ取得部と、
前記財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と、現場評価指標の相関を分析し、相関関係を算出する相関分析部と、
前記相関関係と、シミュレーション対象の現場評価指標の値に基づいて、最下層の財務評価指標を算出し、算出した財務評価指標と財務相関関係に基づいて、財務評価指標の各値を算出するシミュレーション部と、を含む解析装置。
【請求項2】
前記相関分析部は、同一時点の前記財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と現場評価指標とを標準化し、最下層に対応する財務評価指標と、全ての現場評価指標との相関分析を、全ての最下層に対応する財務評価指標で実行する請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記相関分析部は、相関分析の結果の相関値が有意な値と判定した最下層に対応する財務評価指標と現場評価指標とでマトリクスと作成する請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記相関分析部は、作成したマトリクスを重回帰分析して相関関係を算出する請求項3に記載の解析装置。
【請求項5】
企業の事業の財務に関する財務評価指標を取得するステップと、
前記企業の事業の現場の業務に関する現場評価指標を取得するステップと、
前記財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と、現場評価指標の相関を分析し、相関関係を算出するステップと、
前記相関関係と、シミュレーション対象の現場評価指標の値に基づいて、最下層の財務評価指標を算出し、算出した財務評価指標と財務相関関係に基づいて、財務評価指標の各値を算出するステップと、を含む解析方法。
【請求項6】
企業の事業の財務に関する財務評価指標を取得するステップと、
前記企業の事業の現場の業務に関する現場評価指標を取得するステップと、
前記財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と、現場評価指標の相関を分析し、相関関係を算出するステップと、
前記相関関係と、シミュレーション対象の現場評価指標の値に基づいて、最下層の財務評価指標を算出し、算出した財務評価指標と財務相関関係に基づいて、財務評価指標の各値を算出するステップと、を含むコンピュータに実行させる解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析装置、解析方法及び解析プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
企業の事業経営の分析として、財務データを加味した分析がある。特許文献1には、財務データと非財務データとを取得するデータ取得手段と、該データ取得手段で取得したデータを分析するデータ分析手段と、財務データと非財務データとを関連づける関連データベースと、該データ分析手段により分析した結果から、関連データベースのデータに基づいて、財務データに関連する非財務データを選択して、経営戦略として表示する出力手段とを有し、経営戦略の具体的実施項目と、その実行状況を視覚化し、更に、それらを関連付けて管理することができる経営サポート装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-176392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、財務データと非財務データを関連データベースで関連付けている。しかしながら、企業の業務により、財務データと非財務データとの相関関係が異なる。非財務データが財務データのどの項目にどう影響するかの評価が不適切である場合、企業の事業経営を適切に解析することができず、経営施策の意思決定に好適に用いることができない。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するために、財務の評価指標と、現場の評価指標との相関を適切に評価し、現場の評価指標が事業経営に与える影響を適切に解析でき、経営施策の意思決定に好適に用いることができる解析装置、解析方法及び解析プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、企業の事業の財務に関する財務評価指標を取得する財務データ取得部と、企業の事業の現場の業務に関する現場評価指標を取得する現場データ取得部と、前記財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と、現場評価指標の相関を分析し、相関関係を算出する相関分析部と、前記相関関係と、シミュレーション対象の現場評価指標の値に基づいて、最下層の財務評価指標を算出し、算出した財務評価指標と財務相関関係に基づいて、財務評価指標の各値を算出するシミュレーション部と、を含む解析装置を提供する。
【0007】
また、本開示は、企業の事業の財務に関する財務評価指標を取得するステップと、前記企業の事業の現場の業務に関する現場評価指標を取得するステップと、前記財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と、現場評価指標の相関を分析し、相関関係を算出するステップと、前記相関関係と、シミュレーション対象の現場評価指標の値に基づいて、最下層の財務評価指標を算出し、算出した財務評価指標と財務相関関係に基づいて、財務評価指標の各値を算出するステップと、を含む解析方法を提供する。
【0008】
また、本開示は、企業の事業の財務に関する財務評価指標を取得するステップと、前記企業の事業の現場の業務に関する現場評価指標を取得するステップと、前記財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と、現場評価指標の相関を分析し、相関関係を算出するステップと、前記相関関係と、シミュレーション対象の現場評価指標の値に基づいて、最下層の財務評価指標を算出し、算出した財務評価指標と財務相関関係に基づいて、財務評価指標の各値を算出するステップと、を含むコンピュータに実行させる解析プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成とすることで、財務の評価指標と、現場の評価指標との相関を適切に評価し、現場の評価指標が事業経営に与える影響を適切に解析でき、経営施策の意思決定に好適に用いることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、解析システムの一例を示すブロック図である。
図2図2は、価値評価指標の一例を示す説明図である。
図3図3は、解析装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、解析装置の処理の一例を説明する説明図である。
図5図5は、解析装置の処理の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0012】
<解析システム>
図1は、解析システムの一例を示すブロック図である。図2は、価値評価指標の一例を示す説明図である。解析システム10は、企業の事業の財務情報と財務以外(現場)の情報を解析して、事業の状態を解析する。解析システム10は、解析装置12と、財務KPIDB(データベース)14と、現場KPIDB16と、を含む。
【0013】
財務KPIDB14は、企業の事業の財務に関する各種情報の実績データを記憶する。財務KPIDB14は、実績データの各項目を評価指標に基づいて換算した数値で記憶する。本実施形態では、評価指標を、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)とする。財務KPIDB16は、受注高、売上、資本コスト、投下資本、営業利益、販売管理費、粗利などの財務会計上の指標(財務評価指標)を記憶する。また、図2に示すように、財務KPIDB16の財務評価指標は、各項目の相関関係があり、階層化されている。本実施形態の財務評価指標66は、トップKPI層60、中間KPI層62、最下層KPI層64に分類される。各層の財務評価指標66は、他の層の財務評価指標66の一部と相関がある。トップKPI層60の財務評価指標66は、相関がある中間KPI層62、最下層KPI層64の財務評価指標66の値に基づいて算出される。トップKPI層60の財務評価指標66は、ROIC、受注、事業利益率、固定費、CCC等である。中間KPI層62の財務評価指標66は、相関がある最下層KPI層64の財務評価指標66の値に基づいて算出される。中間KPI層62の財務評価指標66は、純利益、営業利益、設備投資費等である。最下層KPIの財務評価指標66は、財務評価指標66をツリー構造に分解したときに、それ以上細分化できない財務評価指標66となる。最下層KPIの財務評価指標66は、売上、労務費、原材料費などである。
【0014】
現場KPIDB16は、企業の事業の業務(現場)に関する各種情報の実績データを記憶する。現場KPIDB16は、実績データの各項目を評価指標に基づいて換算した数値で記憶する。現場KPIDB16は、設計、工作、調達などバリューチェーンの各プロセスを担当する部門(実務部門)で管理している指標(現場評価指標)を記憶する。実務部門としては、製造部門、調達部門、品質評価部門、営業部門、設計部門等である。現場評価指標は、実務部門に関する、金銭以外で作成できる種々の指標が含まれる。現場評価指標70は、製造部門では、生産効率や納期遵守率などであり、設計部門では、図面改訂率や納期遵守率等である。
【0015】
次に、解析装置12について説明する。解析装置12は、財務KPIDB(データベース)14及び現場KPIDB16から取得した実績データを処理して、財務評価指標と現場評価指標に基づいて企業の事業を評価するロジックを作成し、企業の事業を解析する。
【0016】
解析装置12は、入力部20と、出力部22と、通信部24と、制御部26と、記憶部28と、を含む。入力部20は、キーボード及びマウス、タッチパネル、またはオペレータからの発話を集音するマイク等の入力装置を含み、オペレータが入力装置に対して行う操作に対応する信号を制御部26へ出力する。出力部22は、ディスプレイ等の表示装置を含み、制御部26から出力される表示信号に基づいて、処理結果や処理対象の画像等、各種情報を含む画面を表示する。また、出力部22は、データを記録媒体で出力する記録装置を含んでもよい。通信部24は、通信インターフェースを用いて、データの送信を行う。通信部24は、財務KPIDB14及び現場KPIDB16と通信を行い、データの送受信を行う。通信部24は、外部機器と通信を行い取得した各種データ、プログラムを記憶部16に送り、保存する。通信部は、有線の通信回線で外部機器と接続しても、無線の通信回線で外部機器と接続してもよい。
【0017】
制御部26は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の集積回路(プロセッサ)と、作業領域となるメモリとを含み、これらのハードウェア資源を用いて各種プログラムを実行することによって各種処理を実行する。具体的に、制御部26は、記憶部28に記憶されているプログラムを読み出してメモリに展開し、メモリに展開されたプログラムに含まれる命令をプロセッサに実行させることで、各種処理を実行する。制御部26は、データ処理部32と、相関分析部34と、ロジック作成部36と、シミュレーション部38と、を含む。制御部26の各部の説明の前に記憶部28について説明する。
【0018】
記憶部28は、磁気記憶装置や半導体記憶装置等の不揮発性を有する記憶装置からなり、各種のプログラムおよびデータを記憶する。記憶部28は、相関分析プログラム42と、シミュレーションプログラム44と、保管データベース46と、条件テーブル48と、を含む。
【0019】
記憶部28に記憶されるプログラムとしては、相関分析プログラム42と、シミュレーションプログラム44と、がある。相関分析プログラム42と、シミュレーションプログラム44と、を統合したプログラムが解析プログラムとなる。
【0020】
相関分析プログラム42は、財務KPIDB14及び現場KPIDB16から取得した実績データを解析して、現場評価指標と財務評価指標との相関を分析する処理を実行するプログラムである。相関分析プログラム42は、一部処理を機械学習を用いて実行するプログラムとしてもよい。
【0021】
シミュレーションプログラム44は、相関分析プログラム42で分析した現場評価指標と、財務評価指標との関係のロジックに基づいて、事業の状況をシミュレーションする。シミュレーションプログラム44は、仮想の現場評価指標の入力を、現場評価指標と財務評価指標との関係のロジックに基づいて処理して、財務評価指標を算出する。シミュレーションプログラム44は、一部処理を機械学習を用いて実行するプログラムとしてもよい。
【0022】
記憶部28は、記録媒体に記録された相関分析プログラム42と、シミュレーションプログラム44と、を読み込むことで、相関分析プログラム42と、シミュレーションプログラム44と、がインストールされてもよいし、ネットワーク上で提供される相関分析プログラム42と、シミュレーションプログラム44と、を読み込むことで、相関分析プログラム42と、シミュレーションプログラム44と、がインストールされてもよい。
【0023】
記憶部28に記憶されるデータとしては、保管データベース46、条件テーブル48が含まれる。保管データベース46、条件テーブル48は、それぞれ複数備え、使用するデータ、テーブルを選択することができる。
【0024】
保管データベース46は、財務KPIDB14及び現場KPIDB16から取得した実績データを記憶したデータベースである。保管データベース46は、さらに、処理時の各種データを記憶してもよい。
【0025】
条件テーブル46は、相関分析プログラム42と、シミュレーションプログラム44と、で実行する処理の処理条件を記憶する。条件テーブル46は、演算処理の処理条件として、処理の繰り返し回数や、閾値等の判定条件を記憶する。また、条件テーブル46は、財務評価指標66に対して設定された財務相関関係、つまり、財務評価指標66の層の情報と関連する財務評価指標66の情報を記憶する。
【0026】
制御部26の各部の機能について説明する。制御部26の各部は、記憶部28に記憶されるプログラムを実行することで、実行することができる。
【0027】
データ処理部32は、通信部24を介して財務KPIDB14及び現場KPIDB16から取得したデータを処理する。具体的には、データ処理部32は、財務KPIDB14及び現場KPIDB16から取得したデータを保管データベース46に記憶させる。また、データ処理部32は、保管データベース46、条件テーブル48の情報を読み出して、制御部26の各部に供給する。
【0028】
相関分析部34は、保管データベース46から読み出した財務評価指標、現場評価指標の実績データを解析して、相関関係を算出する。本実施形態の相関分析部34は、財務評価指標のうち、最下層KPI層の財務評価指標を抽出し、最下層KPI層の財務評価指標と現場評価指標との相関を算出する。具体的には、相関分析部34は、最下層KPI層の財務評価指標と現場評価指標との相関分析を全ての組み合わせで実行する。相関分析部34は、相関分析の結果を評価し、例えばp値が閾値(0.05以下)である項目のみを抽出し、マトリクスを作成する。なお、p値の閾値は、0.05に限定されない。例えば、p値の閾値を例えば0.10としてもよい。次に、相関分析部34は、条件テーブル48からマスタのルールを読み出し、最下層KPI層の財務評価指標と現場評価指標との関係から、相関がないと設定されている相関関係をマトリクスから除外する。次に、相関分析部34は、作成したマトリクスを重回帰分析して、相関関係を算出する。
【0029】
ロジック作成部36は、相関分析部34で算出した相関関係に基づいて、最下層KPI層の財務評価指標と現場評価指標との相関のロジックを作成する。ロジック作成部36は、シミュレーション部38に入力された条件に基づいて、各種評価指標を算出する処理に用いるロジックを作成する。
【0030】
シミュレーション部38は、オペレータに入力された条件、具体的には現場評価指標の情報を、シミュレーションプログラムとロジック作成部36で作成したロジックで処理して、財務評価指標を算出する。
【0031】
<方法>
次に、図3から図4を用いて、評価用データ作成方法について説明する。図3は、解析装置の処理の一例を示すフローチャートである。図4及び図5は、解析装置の処理の一例を説明する説明図である。図3に示す処理は、解析装置の制御部26で各処理を実行することで実現できる。
【0032】
制御部26は、財務KPIDB14から財務KPI(財務評価指標)の実績データを取得する(ステップS12)。制御部26は、現場KPIDB16から現場KPI(現場評価指標)の実績データを取得する(ステップS14)。制御部26は、財務KPIの財務相関関係を取得する(ステップS16)。ここで、財務KPIの財務相関関係は、図2に示す財務評価指標の各項目について、階層化された相関関係である。なお、ステップS12からステップS16の処理は、どの順番で実行しても並列で実行してもよい。また、制御部26は、財務評価指標として、最下層KPI層の財務評価指標のみを取得してもよい。最下層の財務KPIと現場KPIの実績データは、図4に示すように、同一の時間軸での評価値となる。なお、図4は、四半期ごとの評価指標の値であるが、期間の単位は限定されない。月ごと、週ごと、半年ごと、年毎等、種々の単位とすることができる。
【0033】
制御部26は、最下層の財務KPI(財務評価指標)と現場KPI(現場評価指標)について、実績データを用いて総当たりの相関解析を実行する(ステップS18)。制御部26は、最下層の財務KPI(財務評価指標)と現場KPI(現場評価指標)を標準化する。次に、制御部26は、最下層の財務KPIから1つの最下層の財務KPIを選定し、最下層の財務KPIと全ての現場KPIとの相関分析を行う。制御部26は、選定する最下層の財務KPIを順番に選定し、全ての最下層の財務KPIのそれぞれについて、全ての現場KPIとの相関解析を行うことで、全ての組みあわせの相関分析を行う。
【0034】
制御部26は、最下層の財務KPIと現場KPIとの組み合わせを選定する(ステップS20)。制御部26は、選定した組み合わせの相関分析のp値が0.05以下であるかを判定する(ステップS22)。p値は、相関分析で算出される相関の有意差を評価する指標である。制御部26は、p値が0.05以下(ステップS22でYes)と判定した場合、マトリクスに関係を記入し(ステップS24)、ステップS26に進む。制御部26は、p値が0.05よりも大きい(ステップS22でNo)と判定した場合、マトリクスに関係を記入せず(ステップS26)、ステップS28に進む。
【0035】
制御部26は、ステップS24、ステップS26で、選定した組み合わせのマトリクスに対する処理を実行したら、全ての組み合わせの評価が終了したかを判定する(ステップS28)。制御部26は、全ての組み合わせが終了していない(ステップS28でNo)と判定した場合、ステップS20に戻る。これにより、制御部26は、全ての組み合わせの評価を行い、全ての組み合わせの最下層の財務KPIと現場KPIとの相関のうち、条件を満たす関係の値が含まれたマトリクスを作成できる。
【0036】
制御部26は、全ての組み合わせが終了した(ステップS28でYes)と判定した場合、マスタに基づいてマトリスクを修正する(ステップS30)。制御部26は、マスタに記憶されている最下層の財務KPIと現場KPIとの相関のルールを読み出す。ここで、相関のルールには、相関がない最下層の財務KPIと現場KPIとの組み合わせの情報が含まれる。制御部26は、p値が0.05以下でマトリクスに数値が記入されている、最下層の財務KPIと現場KPIとの組み合わせの中で、相関がない最下層の財務KPIと現場KPIとの組み合わせについては、値を削除する。
【0037】
制御部26は、マスタに基づいてマトリクスを修正した後、マトリクスに対する重回帰分析を行う(ステップS32)。制御部26は、最下層の財務KPIを選定し、選定した最下層の財務KPIと相関がある全ての現場KPIを対象に重回帰分析を行う。制御部26は、全ての最下層の財務KPIについて、重回帰分析を自順番に実行する。これにより、図5に示すように、それぞれの最下層の財務KPIについて、現場KPIに対する重回帰分析の重回帰式の回帰係数と、誤差項の値を算出できる。
【0038】
制御部26は、重回帰分析の結果に基づいて、シミュレーションロジックを作成する(ステップS34)。制御部26は、重回帰分析で算出した線形式に基づいて、現場KPIに基づいて算出する最下層の財務KPIを算出するロジックを作成する。重回帰分析で算出する関係は線形式に限定されず、例えば機械学習手法を用いた非線形モデルとしてもよい。
【0039】
次に、制御部26は、解析条件の現場KPIを取得する(ステップS36)。オペレータ等により入力された、評価対象の現場KPI、例えば目標とする現場KPIの値を取得する。
【0040】
制御部26は、解析条件の現場KPIと、シミュレーションロジックに基づいて、シミュレーションを実行し、解析結果を出力する(ステップS38)。つまり、制御部26は、解析条件の現場KPIと、シミュレーションロジックに基づいて、解析条件の現場KPIの場合の財務KPIを算出し、算出した財務KPIを出力する。なお、財務KPIとしては、トップKPI層の財務KPIを算出することが好ましいが、中間KPI層、最下層KPI層の財務KPIを出力してもよい。
【0041】
解析装置12は、財務KPIのうち最下層の財務KPIを抽出し、最下層の財務KPIと現場KPIとの相関を解析で算出することで、現場KPI(現場評価指標)と財務KPI(財務評価指標)との相関を高い精度で特定して評価を行うことができる。また、現場KPI(現場評価指標)と財務KPI(財務評価指標)との相関を高い精度で特定して、ロジックを生成できるため、シミュレーションで入力した現場KPIに対する財務KPIを高い精度で算出できる。これにより、財務KPIの目標達成に向けて、必要な現場KPIを把握することができるため、バリューチェーンの各プロセスのどの活動にどの程度注力する必要があるか、現場KPIの目標値として把握することができる。
【0042】
また、解析装置は、企業の事業ごとに、財務KPIと現場KPIの実績データを取得してロジックを作成できるため、事業の特性に応じてシミュレーションのロジックを作成することができる。これにより、高い精度の解析を行うことができる。財務KPIと現場KPIとの相関が把握できることで、例えば、財務KPIを注視する経営層と現場KPIを注視する経営層の間での目標設定、施策選択の方針を一致させやすくできる。
【0043】
なお、解析装置12は、ステップS36の数値を変化させて、ステップS38の処理を繰り返し実行してもよい。また、解析装置12は、ステップS36とステップS38の処理を別の処理として実行してもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、財務KPIと現場KPIの実績データを取得したが、財務KPIと現場KPIの実績データを用いて、仮想の実績データを作成してもよい。つまり、相関関係の算出に用いるデータとして、仮想のデータを加えてもよい。例えば、最下層KPI層の財務KPIや現場KPIの母集団を所定の分布、例えば正規分布に従うとしてアップサンプリングして、作成してもよい。
【0045】
また、本実施形態では、最下層の財務KPIと現場KPIの相関関係(対応関係)を相関分析で探索したがこれに限定されない。最下層の財務KPIと現場KPIの相関関係を求められる種々の解析を用いることができ、因果分析の手法であるLiNGAMやベイジアンネットワークなどを用い、最下層の財務KPIが目的変数になるよう制約を与えた上でグラフ推定を行い、最下層の財務KPIと現場KPIとの対応関係を推測してもよい。
【0046】
また、マトリクスから除去する最下層の財務KPIと現場KPIの組み合わせを選定するマスタは、任意の経営指標を対象とした管理会計で定義されたKPIツリーと財務KPIツリーを比較し、財務KPIツリーに存在するKPIと管理会計のKPIツリーをマッピングし、管理会計のKPIに現場KPIを対応付けることで作成することができる。
【0047】
また、上述したように、解析装置12は、機械学習で処理を行ってもよい。解析装置12は、最下層の財務KPIと現場KPIとを抽出し、最下層の財務KPIを入力(説明変数)とし、現場KPIを出力(目的変数)として、例えばラッソ回帰等の機械学習で、不要な説明変数を自動的に削減することで、シミュレーションに用いる内部ロジックを作成してもよい。
【0048】
また、本実施形態では、現場KPIの入力値に基づいてシミュレーションを行い、財務KPIを出力したが、現場KPIと最下層の財務KPIとの相関の解析結果に基づいて、各現場KPIが財務KPIに与える影響を算出して、解析結果として出力してもよい。つまり、図5に示すような現場KPIと最下層の財務KPIを処理することで算出した、現場KPIと財務KPIとの相関を出力してもよい。
【0049】
本開示は、以下の発明を開示している。なお、下記に限定されない。
(1)企業の事業の財務に関する財務評価指標を取得する財務データ取得部と、前記企業の事業の現場の業務に関する現場評価指標を取得する現場データ取得部と、前記財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と、現場評価指標の相関を分析し、相関関係を算出する相関分析部と、前記相関関係と、シミュレーション対象の現場評価指標の値に基づいて、最下層の財務評価指標を算出し、算出した財務評価指標と財務相関関係に基づいて、財務評価指標の各値を算出するシミュレーション部と、を含む解析装置。
【0050】
これにより、財務の評価指標と、現場の評価指標との相関を適切に評価し、現場の評価指標が事業経営に与える影響を適切に解析でき、経営目標に向けた施策の意思決定に好適に用いることができる。
【0051】
(2)前記相関分析部は、同一時点の前記財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と現場評価指標とを標準化し、最下層に対応する財務評価指標と、全ての現場評価指標との相関分析を、全ての最下層に対応する財務評価指標で実行する(1)に記載の解析装置。
【0052】
(3)前記相関分析部は、相関分析の結果の相関値が有意な値と判定した最下層に対応する財務評価指標と現場評価指標とでマトリクスと作成する(2)に記載の解析装置。
【0053】
(4)前記相関分析部は、作成したマトリクスを重回帰分析して相関関係を算出する(3)に記載の解析装置。
【0054】
(5)企業の事業の財務に関する財務評価指標を取得するステップと、前記企業の事業の現場の業務に関する現場評価指標を取得するステップと、前記財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と、現場評価指標の相関を分析し、相関関係を算出するステップと、前記相関関係と、シミュレーション対象の現場評価指標の値に基づいて、最下層の財務評価指標を算出し、算出した財務評価指標と財務相関関係に基づいて、財務評価指標の各値を算出するステップと、を含む解析方法。
【0055】
これにより、財務の評価指標と、現場の評価指標との相関を適切に評価し、現場の評価指標が事業経営に与える影響を適切に解析でき、経営目標に向けた施策の意思決定に好適に用いることができる。
【0056】
(6)企業の事業の財務に関する財務評価指標を取得するステップと、前記企業の事業の現場の業務に関する現場評価指標を取得するステップと、前記財務評価指標の財務相関関係の最下層に対応する財務評価指標と、現場評価指標の相関を分析し、相関関係を算出するステップと、前記相関関係と、シミュレーション対象の現場評価指標の値に基づいて、最下層の財務評価指標を算出し、算出した財務評価指標と財務相関関係に基づいて、財務評価指標の各値を算出するステップと、を含むコンピュータに実行させる解析プログラム。
【0057】
これにより、財務の評価指標と、現場の評価指標との相関を適切に評価し、現場の評価指標が事業経営に与える影響を適切に解析でき、経営目標に向けた施策の意思決定に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 解析システム
12 解析装置
14 財務KPIDB
16 現場KPIDB
20 入力部
22 出力部
24 通信部
26 制御部
28 記憶部
32 データ処理部
34 相関分析部
36 ロジック作成部
38 シミュレーション部
42 相関分析プログラム
44 シミュレーションプログラム
46 保管データベース
48 条件テーブル
図1
図2
図3
図4
図5