(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059401
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】吊り上げ装置及び箱桁橋の架設方法
(51)【国際特許分類】
E01D 2/04 20060101AFI20240423BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
E01D2/04
E01D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167062
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】落合 博幸
(72)【発明者】
【氏名】永元 直樹
(72)【発明者】
【氏名】緒方 辰男
(72)【発明者】
【氏名】福田 雅人
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA08
2D059CC03
2D059DD02
(57)【要約】
【課題】箱桁ブロックの将来の劣化を抑制する。
【解決手段】上床版5、下床版6及び複数のウェブ7を備える箱桁ブロック14のための吊り上げ装置20は、箱桁ブロック14の橋軸直角方向に互いに離間して配置され、連結部材21によって互いに連結された1対の吊り上げユニット22を備える。吊り上げユニットのそれぞれは、上床版5の橋軸方向の長さよりも長く、上床版5の上方に橋軸方向に沿って配置されるビーム23と、ビーム23の一端に設けられ、上床版5を下方から支持する第1支持片26を下端に備える第1支持アーム24と、ビーム23の他端側にスライド可能に設けられ、上床版5を下方から支持する第2支持片27を下端に備える第2支持アーム25とを含む。箱桁ブロック14を下方から支持して吊り上げ可能であることから、箱桁ブロック14の上面にインサート部材を設ける必要がない。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上床版、下床版及び複数のウェブを備える箱桁ブロックのための吊り上げ装置であって、
前記箱桁ブロックの橋軸直角方向に互いに離間して配置され、連結部材によって互いに連結された1対の吊り上げユニットを備え、
前記吊り上げユニットのそれぞれが、
前記上床版の橋軸方向の長さよりも長く、前記上床版の上方に前記橋軸方向に沿って配置されるビームと、
前記ビームの一端に設けられ、前記上床版を下方から支持する第1支持片を下端に備える第1支持アームと、
前記ビームの他端側にスライド可能に設けられ、前記上床版を下方から支持する第2支持片を下端に備える第2支持アームとを含む吊り上げ装置。
【請求項2】
前記上床版の下面には、前記ウェブの増厚部又は前記橋軸直角方向に延在する1対のリブが形成され、
前記第1支持片及び前記第2支持片が前記増厚部の下面又は前記リブの下面に当接する請求項1に記載の吊り上げ装置。
【請求項3】
前記ビームには、長手方向に離間するように配置された複数の貫通孔が形成され、
前記第2支持アームは、前記貫通孔に抜き差しされるピンによって前記ビームに固定される請求項1に記載の吊り上げ装置。
【請求項4】
前記吊り上げユニットのそれぞれが、前記上床版を上方から押さえる少なくとも1つの押さえ部材を更に含む請求項1に記載の吊り上げ装置。
【請求項5】
前記押さえ部材は、前記ビームに設けられたベース部材と、前記ベース部材に上下方向に移動可能に設けられ、前記上床版の上面に当接する当接部材とを有する請求項4に記載の吊り上げ装置。
【請求項6】
橋軸方向に並べられる複数の箱桁ブロックを連結して構成される箱桁橋の架設方法であって、
前記箱桁橋の架設位置の下方に架設架台を配置するステップと、
前記架設架台の上に、前記橋軸方向に延在する1対のレールを設けるステップと、
前記レールの上に走行台車を設けるステップと、
請求項1~5のいずれか1項に記載の吊り上げ装置を用いて前記箱桁ブロックを吊り上げ、前記走行台車の上に前記箱桁ブロックを載置するステップと、
前記箱桁ブロックが載置された前記走行台車を走行させ、前記箱桁ブロックを前記架設架台の上方の所定位置に移動させるステップと、
前記架設架台の上に支持部材を配置し、前記所定位置に配置された前記箱桁ブロックの支持を前記走行台車から前記支持部材に切り替えるステップと、
前記箱桁ブロックを載置するステップから前記箱桁ブロックの支持を切り替えるステップまでのステップを繰り返すステップと、
それぞれの前記所定位置に支持された複数の前記箱桁ブロックを連結するステップとを含む箱桁橋の架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱桁ブロックのための吊り上げ装置及び、箱桁橋の架設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋等の構造物を製作するための工法として、プレキャストセグメント工法がある。この工法は、予めプレキャスト化されたコンクリートブロック(セグメント)を現場で継ぎ合わせ、緊張材によりプレストレスを導入することによって一体化させる方法である。重量が大きいプレキャストセグメントは、クレーンを用いて吊り上げられ、所定位置に架設される。箱桁橋のプレキャストセグメントの吊り上げ構造として、床版に貫通孔が形成され、この貫通孔に挿通されたPC鋼棒に固定式フレーム(吊り上げ治具)を取り付けてセグメントを吊り上げる構成が公知である(特許文献1の
図2)。
【0003】
また、プレキャスト部材の吊り上げ構造として、
図10(A)に示すように、部材本体51にアンカー材52が埋め込まれ、アンカー材52に吊り治具53を取り付けてプレキャスト部材を吊り上げる構成が採られることもある。アンカー材52は部材本体51に形成された箱抜き部54に設けられる。プレキャスト部材が吊り上げられて所定位置に架設された後、箱抜き部54は、
図10(B)に示すように無収縮モルタルや膨張コンクリート等の後埋め材55を充填されて平坦に処理される。特許文献1に開示されるような貫通孔も、プレキャスト部材の架設後に後埋め材55によって処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の吊り上げ構造では、箱桁ブロックの上面に後埋め材が露出する。長年の使用によって後埋め材が経年劣化すると、後埋め材にひび割れが生じたり、後埋め材と箱桁ブロックとの縁が切れたりする虞がある。或いは、後埋め材として膨張コンクリートを用いた場合に、充填時の環境条件によっては十分な膨張効果が得られないことがある。このような場合にも後埋め材と箱桁ブロックとの縁が切れやすく、ひび割れが生じやすい。上面にひび割れが生じると、そこから侵入する水による浸食や浸入した水の凍結、鉄筋等の金属部材の水による錆び等により、プレキャスト部材の劣化が進行する。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、箱桁ブロックの将来の劣化を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、上床版(5)、下床版(6)及び複数のウェブ(7)を備える箱桁ブロック(14)のための吊り上げ装置(20)であって、前記箱桁ブロックの橋軸直角方向に互いに離間して配置され、連結部材(21)によって互いに連結された1対の吊り上げユニット(22)を備え、前記吊り上げユニットのそれぞれが、前記上床版の橋軸方向の長さよりも長く、前記上床版の上方に前記橋軸方向に沿って配置されるビーム(23)と、前記ビームの一端に設けられ、前記上床版を下方から支持する第1支持片(26)を下端に備える第1支持アーム(24)と、前記ビームの他端側にスライド可能に設けられ、前記上床版を下方から支持する第2支持片(27)を下端に備える第2支持アーム(25)とを含む。
【0008】
この態様によれば、第1支持アームの第1支持片と第2支持アームの第2支持片とで上床版を下方から支持し、箱桁ブロックを吊り上げることができる。また、第2支持アームをスライドさせることで上床版の支持を容易に解除することができる。そして、この吊り上げ装置によって箱桁ブロックを下方から支持して吊り上げ可能であることから、箱桁ブロックの上面にインサート部材を設ける必要がなく、箱桁ブロックの上面の劣化が抑制される。
【0009】
上記の態様において、前記上床版の下面には、前記ウェブの増厚部(7b)又は記橋軸直角方向に延在する1対のリブ(8)が形成され、前記第1支持片及び前記第2支持片が前記ウェブの増厚部の下面又は前記リブの下面に当接すると良い。
【0010】
この態様によれば、上向きの力に対して曲げ剛性の高いウェブの増厚部又はリブを下方から支持することができる。そのため、吊り上げのために上床版の板部を厚くする必要がない。
【0011】
上記の態様において、前記ビームには、長手方向に離間するように配置された複数の貫通孔(29)が形成され、前記第2支持アームは、前記貫通孔に抜き差しされるピン(30)によって前記ビームに固定されると良い。
【0012】
この態様によれば、貫通孔に対するピンの抜き差しによって第2支持アームのビームに対する固定及び固定解除を容易に行うことができる。
【0013】
上記の態様において、前記吊り上げユニットのそれぞれが、前記上床版を上方から押さえる少なくとも1つの押さえ部材(31)を更に含むと良い。
【0014】
この態様によれば、上床版を下方から支持する第1支持アームの第1支持片及び第2支持アームの第2支持片と、上床版を上方から押さえる押さえ部材とにより上床版を挟み込むことができる。よって、吊り上げた状態での箱桁ブロックのがたつきが抑制される。
【0015】
上記の態様において、前記押さえ部材は、前記ビームに設けられたベース部材(33)と、前記ベース部材に上下方向に移動可能に設けられ、前記上床版の上面に当接する当接部材(34)とを有すると良い。
【0016】
この態様によれば、当接部材をベース部材に対して上下方向に移動させることによって容易に上床版に対する上方からの押さえ及び押さえ解除を行うことができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために本発明のある態様は、橋軸方向に並べられる複数の箱桁ブロック(14)を連結して構成される箱桁橋(4)の架設方法であって、前記箱桁橋の架設位置の下方に架設架台(40)を配置するステップと、前記架設架台の上に、前記橋軸方向に延在する1対のレール(42)を設けるステップと、前記レールの上に走行台車(43)を設けるステップと、上記構成の吊り上げ装置を用いて前記箱桁ブロックを吊り上げ、前記走行台車の上に前記箱桁ブロックを載置するステップと、前記箱桁ブロックが載置された前記走行台車を走行させ、前記箱桁ブロックを前記架設架台の上方の所定位置に移動させるステップと、前記架設架台の上に支持部材(45)を配置し、前記所定位置に配置された前記箱桁ブロックの支持を前記走行台車から前記支持部材に切り替えるステップと、前記箱桁ブロックを載置するステップから前記箱桁ブロックの支持を切り替えるステップまでのステップを繰り返すステップと、それぞれの前記所定位置に支持された複数の前記箱桁ブロックを連結するステップとを含む。
【0018】
上記構成の吊り上げ装置は、上床版の橋軸方向の両側に第1支持アーム及び第2支持アームを配置した状態で箱桁ブロックを吊り上げる。したがって、隣接する箱桁ブロックが所定位置に配置されているときに、吊り上げ装置によって吊り上げられた箱桁ブロックを所定位置に配置することができない。一方、この態様によれば、吊り上げ装置によって吊り上げられた箱桁ブロックを走行台車の上に載置し、走行台車によって所定位置に移動させることができる。また、所定位置においては、箱桁ブロックの支持が走行台車から支持部材に切り替えられるため、走行台車を他の箱桁ブロックの移動に繰り返し転用することができる。そして、箱桁ブロックの上面にインサート部材が設けられないため、箱桁ブロックの上面の劣化が抑制される。
【発明の効果】
【0019】
以上の態様によれば、プレキャスト部材の将来の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図1中のII-II線に沿って示す箱桁橋の断面図
【
図10】従来技術に係るプレキャスト部材の吊り上げ構造の説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は実施形態に係る箱桁橋4の側面図である。
図1に示すように、橋梁1は、道路橋や鉄道橋として利用されるものであり、2つの橋台2(図には右側の橋台2のみ示す。)と、両橋台2間に構築された1つ以上の橋脚3と、これらに亘って架け渡されて連続桁をなす箱桁橋4とを有する。なお、
図1には、右側の橋台2からこれに隣接する橋脚3までの1スパンを中心にして概略側面を示している。
【0023】
図2は、
図1中のII-II線に沿って示す箱桁橋4の断面図である。
図1及び
図2に併せて示すように、箱桁橋4は、上床版5と、下床版6と、概ね鉛直に延在する1対のウェブ7を有している。1対のウェブ7は、上端にて上床版5の橋軸直角方向の中間部に連結され、下端にて下床版6の両端部に連結されている。上床版5は、1対のウェブ7から張り出すように構成されている。上床版5の下面には、橋軸直角方向に延在するリブ8(
図2)が一体に形成されている。上床版5の橋軸直角方向の両端部には壁高欄9(
図1)が構築される。本実施形態では、箱桁橋4は、1対のウェブ7、上床版5及び下床版6によって囲まれる内部空間が矩形を呈する箱状断面形状の単一箱桁橋として構成されている。
【0024】
これら1対のウェブ7、上床版5、下床版6及び壁高欄9は、同一配合の高強度コンクリートから形成されており、更にプレストレスを付与したプレストレスト無筋コンクリートとされている。高強度コンクリートとしては、設計基準強度80N/mm2のコンクリートに鋼繊維を混入して補強し、高いせん断強度特性を有するものなどを用いると良い。なお、上床版5、下床版6、ウェブ7は、鉄筋コンクリートから形成されても良い。また、ウェブ7は、鋼部材から形成されても良い。
【0025】
箱桁橋4の内部空間には複数の外ケーブル11が張設される。
図1に示すように、これら外ケーブル11は、橋台2及び橋脚3の直上部分である柱頭部12で最も高い位置に配置される。外ケーブル11は、柱頭部12から箱桁橋4の中間部に設けられた2つの隔壁10へ向けて斜め下方に延在し、両隔壁10間で最も低い位置を箱桁橋4と平行に延在するように張設される。これら外ケーブル11は、緊張力が加わった状態で両端がそれぞれ柱頭部12に定着される。このように、斜めに張設された外ケーブル11の緊張力によってプレストレスが導入されることで、箱桁橋4のせん断耐力及び曲げ耐力が向上する。
【0026】
箱桁橋4は、橋軸方向に並べられた複数の箱桁ブロック14(セグメント)によって構成される。各箱桁ブロック14の適所には橋軸方向に延在するポストテンション方式の緊張材15が埋設されている。箱桁ブロック14には、橋軸直角方向に延在する図示しない緊張材も埋設されている。緊張材15としては、例えばアラミド繊維を所望の形状(主に紐状)にして硬化性を有するプラスチック等の結合材によって固めたアラミドロッド(FRP緊張材)を用いることができる。
【0027】
図3は箱桁ブロック14の吊り上げ状態を示す正面図であり、
図4は箱桁ブロック14の吊り上げ状態を示す側断面図である。
図3及び
図4に示すように、各箱桁ブロック14は、上記上床版5の橋軸方向の一部(単に上床版5という)と、上記下床版6の橋軸方向の一部(単に下床版6という)と、上記1対のウェブ7の橋軸方向の一部(単にウェブ7という)とを有する。上床版5の下面には、橋軸方向の端部近傍に配置された2本のリブ8(
図4参照)が設けられている。
【0028】
図4に示すように、各ウェブ7は、高さ方向の中位からその上辺及び下辺に向けてその橋軸方向長さが徐々に増大するバタフライ(蝶)形状を呈する板状部7aを有している。板状部7aの上端には、板上部よりも厚く(橋軸直角方向の寸法について)形成された上増厚部7bが設けられている。板状部7aの下端には、板状部7aよりも厚く形成された下増厚部7cが設けられている。箱桁ブロック14の橋軸方向の接合面には、適所にシアキー17及びキー溝18が形成されている。
【0029】
箱桁ブロック14は、図示しないクレーン等の揚重装置のワイヤに懸吊された吊り上げ装置20を用いて吊り上げられる。吊り上げ装置20は、箱桁ブロック14の橋軸直角方向に互いに離間して配置され、連結部材21(
図3)によって互いに連結された1対の吊り上げユニット22を備えている。両吊り上げユニット22は同一又は対称的な構成を有している。以下、吊り上げユニット22について説明する。
【0030】
図4に示すように、吊り上げユニット22は、上床版5の上方に橋軸方向に沿って配置されるビーム23と、ビーム23の右側の端部(一端)に設けられた第1支持アーム24と、ビーム23の左側の端部(他端)に設けられた第2支持アーム25とを備えている。ビーム23は、上床版5の橋軸方向の長さよりも長い長さを有している。第1支持アーム24は、ビーム23の右端から垂下し、下端に第1支持片26を有している。第1支持片26は、第1支持アーム24から第2支持アーム25に向けて左方へ延出している。第1支持片26は、ウェブ7の上増厚部7bの右端部の下面に当接することで上床版5を下方から支持する。第2支持アーム25は、ビーム23の左側の中間部から垂下し、下端に第2支持片27を有している。第2支持片27は、第2支持アーム25から第1支持アーム24に向けて右方へ延出している。第2支持片27は、ウェブ7の上増厚部7bの左端部の下面に当接することで上床版5を下方から支持する。
【0031】
このように第1支持片26及び第2支持片27がウェブ7の上増厚部7bの下面に当接することにより、上向きの力に対して曲げ剛性の高いウェブ7が下方から支持される。そのため、吊り上げのために上床版5の板部を厚くする必要がない。なお、同様のことは、第1支持片26及び第2支持片27がリブ8の下面に当接し、リブ8を介して上床版5を支持する場合にも言える。したがって、他の実施形態では、第1支持片26及び第2支持片27が右側及び左側のリブ8の下面に当接することで上床版5を下方から支持しても良い。
【0032】
また、第2支持アーム25は上端にスライダ28を有している。スライダ28はビーム23の長手方向に移動可能にビーム23に係合している。スライダ28がビーム23に沿って移動することにより、第2支持片27と第1支持片26との間隔が変化する。
図4に示す箱桁ブロック14の吊り上げ状態では、第1支持アーム24及び第2支持アーム25が箱桁ブロック14の橋軸方向の両端面に当接又は近接する位置で第2支持アーム25がビーム23に固定されている。ビーム23には長手方向に離間するように配置された複数の貫通孔29が形成され、第2支持アーム25のスライダ28にはピン30を挿入するための2つのピン挿入孔が形成されている。スライダ28のピン挿入孔及びビーム23の貫通孔29にピン30が差し込まれることにより、第2支持アーム25がビーム23に固定される。ピン30が貫通孔29から抜かれることにより、第2支持アーム25のビーム23に対する固定が解除され、第2支持アーム25はビーム23に沿ってスライド可能になる。このように貫通孔29に対するピン30の抜き差しによって第2支持アーム25のビーム23に対する固定及び固定解除が容易に行われる。
【0033】
ビーム23の中間部には、橋軸方向に離間する位置に配置された2つの押さえ部材31が設けられている。これにより、上床版5を下方から支持する第1支持アーム24の第1支持片26及び第2支持アーム25の第2支持片27と、上床版5を上方から押さえる押さえ部材31とにより上床版5が挟み込まれる。よって、吊り上げた状態での箱桁ブロック14のがたつきが抑制される。
【0034】
押さえ部材31は、ブラケット32を介してビーム23に固定されたベース部材33と、ベース部材33に設けられた当接部材34とを有する。当接部材34は、ベース部材33に対して上下方向に移動可能に設けられており、下方に移動することによって上床版5の上面に当接する。当接部材34をベース部材33に対して上下方向に移動させることによって容易に上床版5に対する上方からの押さえ及び押さえ解除を行うことができる。
【0035】
当接部材34は、ねじによって上下に移動可能とされると良い。これにより、所定の押圧力をもって当接部材34を上床版5に当接させることができる。また、当接部材34は、ベース部材33に対してスライド可能且つピン30によって固定可能に設けられると良い。これにより、当接部材34の上下位置をスライドによって短時間で行い、ねじによって所望の押圧力を発生することができる。
【0036】
吊り上げ装置20は以上のように構成されている。次に、
図5及び
図6を参照して、吊り上げ装置20によって箱桁ブロック14を吊り上げる際の手順を説明する。以下に説明する各ステップの作業は作業員によって行われる。
【0037】
図5及び
図6は箱桁ブロック14の吊り上げ手順の説明図である。
図5に示すように、作業員は、当接部材34を上方に移動させて押さえ部材31を短縮させる。また作業員は、第2支持アーム25をビーム23の左側の端部に移動させてビーム23に固定する。第1支持片26及び第2支持片27間の隙間が上床版5の橋軸方向の長さよりも長い。第1支持アーム24及び第2支持アーム25を箱桁ブロック14の橋軸方向の両側に配置される位置で吊り上げ装置20を降下させ、更に第1支持アーム24が上床版5の接合面に当接するように吊り上げ装置20を水平方向に移動させる。これにより、箱桁ブロック14及び吊り上げ装置20が
図6に示す状態になる。
【0038】
この状態で、第2支持アーム25を箱桁ブロック14に向けてスライド移動させ、上床版5の接合面に当接させる。続いて、第1支持片26及び第2支持片27が対応するウェブ7の上増厚部7bの下面に当接するまで吊り上げ装置20を上昇させ、その状態で当接部材34が上床版5の上面に当接するまで当接部材34を下方に移動させて押さえ部材31を伸長させる。これにより、箱桁ブロック14及び吊り上げ装置20が
図4に示す吊り上げに適した状態になる。
【0039】
箱桁ブロック14を吊り上げ装置20により吊り上げて所定の運搬位置に移動させた後には、上記と逆の手順を行うことにより、吊り上げ装置20を箱桁ブロック14から取り外すことができる。
【0040】
このように吊り上げ装置20の各ユニットは、ビーム23、上床版5を下方から支持する第1支持片26を下端に備える第1支持アーム24、及び、上床版5を下方から支持する第2支持片27を下端に備える第2支持アーム25を備える。これにより、第1支持アーム24の第1支持片26と第2支持アーム25の第2支持片27とで上床版5を下方から支持し、箱桁ブロック14を吊り上げることができる。また、第2支持アーム25がビーム23の他端側にスライド可能に設けられていることにより、第2支持アーム25をスライドさせることで上床版5の支持を容易に解除することができる。そして、この吊り上げ装置20によって箱桁ブロック14を下方から支持して吊り上げ可能であることから、箱桁ブロック14の上面にインサート部材を設ける必要がない。そのため、箱桁ブロック14の上面の劣化が抑制される。
【0041】
次に、
図7~
図9を参照して、この吊り上げ装置20を用いて構築する箱桁橋4の架設方法について説明する。
図7~
図9は、箱桁橋4の架設手順の説明図である。
図7は箱桁橋4の側面図であり、
図8は
図7中のVIII断面図であり、
図9は
図7中のIX断面図である。以下に説明する箱桁橋4の架設のための各ステップにおける作業は作業員によって行われる。
【0042】
図7~
図9に示すように、最初に箱桁橋4の架設位置の下方に架設架台40を配置する。架設架台40の上には、橋軸方向に延在する1対のレール架台41を設け、その上に1対のレール42を設ける。レール42の上には走行台車43が設けられる。走行台車43は電動駆動部を備えた電動車両であると良い。或いは、走行台車43が電動駆動部を備えず、作業員の力によってレール上を移動しても良い。この際、チェーンブロック等の工具が用いられると良い。レール架台41の幅方向の外側には橋軸方向に延在する1対の支持架台44が設けられる。
【0043】
次に作業員は、上記構成の吊り上げ装置20を用いて箱桁ブロック14を吊り上げ、走行台車43の上に箱桁ブロック14を載置する。その後、
図7及び
図8に示すように、箱桁ブロック14が載置された走行台車43を走行させ、箱桁ブロック14を架設架台40の上方の所定位置(所定の架設位置)に移動させる。その後、
図7及び
図9に示すように、架設架台40の上、具体的には1対の支持架台44の上に支持部材45を配置し、所定位置に配置された箱桁ブロック14の支持を走行台車43から支持部材45に切り替える。支持の切り替え後、次の箱桁ブロック14の移動のために箱桁ブロック14の下方から走行台車43を退避させる。各箱桁ブロック14について、走行台車43の上に載置する作業から、支持を走行台車43から支持架台44に切り替える作業までの作業を繰り返す。全ての箱桁ブロック14を所定位置に配置した後、緊張材15を用いてこれらの箱桁ブロック14を連結する。
【0044】
吊り上げ装置20は、上床版5の橋軸方向の両側に第1支持アーム24及び第2支持アーム25を配置した状態で箱桁ブロック14を吊り上げる。したがって、隣接する箱桁ブロック14が所定位置に配置されているときに、吊り上げ装置20によって吊り上げられた箱桁ブロック14を所定位置に配置することはできない。本実施形態では、吊り上げ装置20によって吊り上げられた箱桁ブロック14を走行台車43の上に載置し、走行台車43によって所定位置に移動させることができる。また、所定位置においては、箱桁ブロック14の支持が走行台車43から支持部材45に切り替えられるため、走行台車43を他の箱桁ブロック14の移動に繰り返し転用することができる。そして、箱桁ブロック14の上面にインサート部材が設けられないため、箱桁ブロック14の上面の劣化が抑制される。
【0045】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【0046】
例えば、上記実施形態の箱桁橋4は、上床版5及び下床版6が1対のウェブ7によって連結された単一箱桁橋として構成されている。他の実施形態では、箱桁橋4が、箱形断面部を2つ以上有する多主桁箱桁橋、箱形断面部が連続する多重箱桁橋等として構成されても良い。
【0047】
この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材、或いは構築手順等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。また、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0048】
4 :箱桁橋
5 :上床版
6 :下床版
7 :ウェブ
8 :リブ
14 :箱桁ブロック
20 :吊り上げ装置
21 :連結部材
22 :吊り上げユニット
23 :ビーム
24 :第1支持アーム
25 :第2支持アーム
26 :第1支持片
27 :第2支持片
29 :貫通孔
30 :ピン
31 :押さえ部材
33 :ベース部材
34 :当接部材
40 :架設架台
42 :レール
43 :走行台車
45 :支持部材