(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059402
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】二酸化炭素を回収するためのアミン溶液、及びそれを用いた二酸化炭素を分離回収する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240423BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240423BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240423BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240423BHJP
C07C 211/14 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/14 220
C01B32/50
C07C211/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167063
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】591178012
【氏名又は名称】公益財団法人地球環境産業技術研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョウドリ フィロツ アラム
(72)【発明者】
【氏名】村岡 利紀
(72)【発明者】
【氏名】余語 克則
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
4H006
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA31
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB11
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB04
4D020BC01
4D020CB01
4D020DA03
4D020DB06
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC28
4G146JC29
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB80
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を吸収しても、沈殿物を形成せず、二酸化炭素の吸収及び回収の全動作範囲で、高い二酸化炭素溶解度と低い粘度を持つアミン溶液を提供する。
【解決手段】二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収するアミン溶液であって、前記アミン溶液は、アミン化合物を含み、前記アミン化合物は、所定の7種のアミン化合物の少なくとも1種であることを特徴とする二酸化炭素を回収するためのアミン溶液。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収するアミン溶液であって、
前記アミン溶液は、アミン化合物を含み、
前記アミン化合物は、
下記式(1):
【化1】
下記式(2):
【化2】
下記式(3):
【化3】
下記式(4):
【化4】
下記式(5):
【化5】
下記式(6):
【化6】
および下記式(7):
【化7】
で表されるアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、二酸化炭素を回収するためのアミン溶液。
【請求項2】
前記アミン溶液が、更に、前記アミン化合物を溶解する溶媒を含み、
前記溶媒は、エチレングリコール(EGL)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGMER)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および1-メチルイミダゾール(1MIm)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の二酸化炭素を回収するためのアミン溶液。
【請求項3】
前記溶媒が、更に、20質量%以下の水を含む、請求項2に記載の二酸化炭素を回収するためのアミン溶液。
【請求項4】
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収する方法であって、
アミン溶液に二酸化炭素を吸収させる第1工程と、
前記第1工程後、前記アミン溶液を加熱して前記二酸化炭素を前記アミン溶液から脱離させて回収する第2工程と、を含み、
前記アミン溶液は、アミン化合物を含み、
前記アミン化合物は、請求項1に記載のアミン化合物である、二酸化炭素の回収方法。
【請求項5】
前記第1工程において、前記ガスを60℃以下の温度の前記アミン溶液に接触させ、かつ前記第2工程において、前記アミン溶液を70℃以上100℃以下の温度に加熱する、請求項4に記載の二酸化炭素の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収するための吸収液、及び当該吸収液を用いた二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に起因すると考えられている気候変動や自然災害が、農業生産、住環境、エネルギー消費等に多大な影響を及ぼしている。この地球温暖化は、人類の社会活動が活発になることに付随して増大する二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、フロン等の温室効果ガスが大気中に増大することが原因と考えられている。その温室効果ガスの中で最も主要なものとして大気中の二酸化炭素が挙げられており、二酸化炭素の大気中への排出量の削減に向けての対策が世界的な課題となっている。
【0003】
二酸化炭素の発生源としては、石炭、重油、天然ガス等を燃料とする火力発電所、コークスで酸化鉄を還元する製鐵所の高炉、銑鉄中の炭素を燃焼して製鋼する製鐵所の転炉、各種製造所におけるボイラー、セメント工場におけるキルン等、更には、ガソリン、重油、軽油等を燃料とする自動車、船舶、航空機等の輸送機器がある。これらのうち、輸送機器以外は定置的な設備であり、二酸化炭素の大気中への排出量を削減する対策を施しやすい設備である。
【0004】
上記で例示される発生源から排出されるガスから二酸化炭素を分離回収する方法としては、従来からいくつかの方法が知られている。例えば、二酸化炭素を含むガスを吸収塔内でアルカノールアミン類の水溶液と接触させて二酸化炭素を吸収させる方法が知られている。ここでアルカノールアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン等が知られているが、この中でもモノエタノールアミン(MEA)が汎用されている。
【0005】
しかし、これらのアミン水溶液プロセスの場合、揮発性アミンの損失による環境及び健康上の問題、装置への腐食、溶媒再生のための高いエネルギー消費といった課題が内在しており、実用化のために、より少ない再生エネルギーで、大量の二酸化炭素を処理できる代替吸収液の開発が、強く望まれている。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らは、特許文献1から3において、吸収液および固体吸収剤の研究開発の中で、アルカノールアミンまたはポリアミン吸収剤にヒンダードアルキル基を導入することにより、二酸化炭素が吸収された溶液(リッチ溶液)の粘度だけでなく、希薄溶液(リーン溶液)の粘度も低下し、さらに、大きな二酸化炭素ローディング量と長期安定性が得られることを見出している。
【0007】
さらに、最近の研究開発では、非水溶媒システム、または、それに少量の水を添加した非水溶媒/水希薄溶媒システムが焦点となっている。非水溶媒/水希薄溶媒システムには、RTIの非水溶媒、ION Engineeringの溶媒、GEのアミノシリコーン、およびPNNL CO2 Binding Organic Liquids(CO2BOL)などの多くの形態がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2016/152782号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2021/193963号パンフレット
【特許文献3】特開2015-009185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これらの非水溶媒/水希薄溶媒吸収液の主な課題は、二酸化炭素の吸収に伴って発生する粘度の急激で非線形な増加である。CAPEXの観点からは、粘度が高いと設備コストが倍増する場合がある。そこで、全体的な粘度の上昇を抑えようとすると、吸収液のアミン濃度を低くする必要があり、その結果、再生器の温度や吸収液の循環速度を高くする必要がある。さらに、粘度が高いとRich-Leanのローディング幅が狭くなる。また、最近、市販されているさまざまなポリアミンが、燃焼後の二酸化炭素回収のために提案されている。しかし、これらのポリアミンの非水溶媒/水溶液吸収液は、二酸化炭素を容易に吸収できるが、強固なカルバメートを形成するため放散が難しく、さらに、吸収液合成コストと大量生産性の観点から産業用途には適していない。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決するため、二酸化炭素吸収後の吸収液の粘度を下げ、二酸化炭素のRich-Leanローディング幅を広くすることができる新しい非水溶媒系吸収液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、二酸化炭素を吸収しても、沈殿物を形成せず、二酸化炭素の吸収及び回収のローディング範囲で高い二酸化炭素吸収能と低い粘度を持つ新しいアルキル基ポリアミンベースの非水溶媒系吸収液を見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の二酸化炭素を回収するためのアミン溶液、及び二酸化炭素を回収する方法を提供するものである。
【0013】
項1.二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収するアミン溶液であって、
前記アミン溶液は、アミン化合物を含み、
前記アミン化合物は、
下記式(1):
【化1】
下記式(2):
【化2】
下記式(3):
【化3】
下記式(4):
【化4】
下記式(5):
【化5】
下記式(6):
【化6】
および下記式(7):
【化7】
で表されるアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、二酸化炭素を回収するためのアミン溶液。
【0014】
項2.前記アミン溶液が、更に、前記アミン化合物を溶解する溶媒を含み、
前記溶媒は、エチレングリコール(EGL)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGMER)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および1-メチルイミダゾール(1MIm)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1に記載の二酸化炭素を回収するためのアミン溶液。
【0015】
項3.前記溶媒が、更に、20質量%以下の水を含む、項2に記載の二酸化炭素を回収するためのアミン溶液。
【0016】
項4.二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収する方法であって、
アミン溶液に二酸化炭素を吸収させる第1工程と、
前記第1工程後、前記アミン溶液を加熱して前記二酸化炭素を前記アミン溶液から脱離させて回収する第2工程と、を含み、
前記アミン溶液は、アミン化合物を含み、
前記アミン化合物は項1に記載のアミン化合物である、二酸化炭素の回収方法。
【0017】
項5.前記第1工程において、前記ガスを60℃以下の温度の前記アミン溶液に接触させ、かつ前記第2工程において、前記アミン溶液を70℃以上100℃以下の温度に加熱する、項4に記載の二酸化炭素の回収方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、二酸化炭素を吸収しても、沈殿物を形成せず、二酸化炭素の吸収及び回収の全動作範囲で、高い二酸化炭素溶解度と低い粘度を持つアミン溶液が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実験1で用いた二酸化炭素吸収実験装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に述べる。
【0021】
この明細書において、アミン溶液中でのアミン化合物の含有率(質量%)は、アミン溶液に吸収されている二酸化炭素を除いたアミン溶液(非水溶媒と水とアミン化合物との合計)の質量に対するアミン化合物の百分率を意味する。
【0022】
本発明の二酸化炭素を回収するアミン溶液に含まれる化合物は、以下に示す7種のアミン化合物のそれぞれ単独またはそれらの混合物である。
式(1)で示されるジプロピルトリアミン(DPTA)
【化8】
式(2)で示されるメチルジプロピルトリアミン(MDPTA)
【化9】
式(3)で示されるジメチルジプロピルトリアミン(DMDPTA)
【化10】
式(4)で示されるトリメチルジプロピルトリアミン(TMDPTA)
【化11】
式(5)で示されるイソプロピル-ジメチルジプロピルトリアミン(IP-DMDPTA)
【化12】
式(6)で示されるセカンダリーブチル-ジメチルジプロピルトリアミン(SB-DMDPTA)
【化13】
式(7)で示されるイソブチル-ジメチルジプロピルトリアミン(IB-DMDPTA)
【化14】
式(1)~式(7)で示される化合物のうち、特に、式(5)で示されるIP-DMDPTAが好ましい。
【0023】
さらに、本発明のアミノ溶液には、これらアミン化合物を溶解する溶媒を含ませても良い。この溶媒には、エチレングリコール(EGL)、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGMER)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)および1-メチルイミダゾール(1MIm)などがあるが、その中でもEGL、DEGMER、NMPおよび1MImが好ましい。
【0024】
また、本発明のアミノ溶液に、水を加えても20質量%以下であれば、本発明の効果を妨げることなく、さらに粘度が下がるため好ましい。
【0025】
[実施例]
次に、本開示について実験例を用いて更に具体的に説明する。
【0026】
<実験1>
実験1で用いたDMDPTA、MEA、EGL、DEGMER、NMPおよび1MImは、いずれも東京化成工業株式会社製の試薬である。
【0027】
IP-DMDPTAに関しては、DMDPTAとアセトンを反応させて合成した。さらに、具体的に説明すると、オートクレーブにDMDPTAを159.28g(1.0mol)入れ、エタノール400mL、酸化白金(IV)1.0gおよびアセトン58.05g(1.0mol)を加えて、350kPaの水素雰囲気で8時間反応させた。セライトカラムで触媒を濾過した後、溶媒を除去し、真空乾燥させることにより、無色の液体であるIP-DMDPTA198.0g(純度98%)が得られた。反応スキームを以下に示す。
【0028】
【0029】
また、合成したIP-DMDPTAの構造に関しては、核磁気共鳴分光法(NMR)および液体クロマトグラフィー(LC-MS)を用いて同定した。それぞれの測定結果は、下記の通りである。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δH ppm: 2.81-2.75 (1H, m), 2.68-2.62 (6H, m), 2.31 (2H, t, J = 7.2Hz), 2.21 (6H, s), 1.94 (2H, bs), 1.66 (4H, dt, J = 13.2, 6.7Hz), 1.05 (6H, d, J = 6.3Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz) δC ppm: 58.0 (CH2), 48.8 (CH), 48.6 (CH2), 48.4 (CH2), 46.0 (CH2), 45.5 (CH3 x 2), 30.7 (CH2), 28.1 (CH2), 22.9 (CH3x 2);
LC-MS (ESI+): actual measured value m/z 202 [M+H]+ with respect to the theoretical molecular weight (C11H27N3) 201.
【0030】
IP-DMDPTAベースのアミン溶液は、吸収剤としてのIP-DMDPTA20質量%に、前述した市販のEGL、DEGMER、NMPおよび1MImを、非水溶媒として、80質量%混合して作成した。それぞれ、アミン溶液NAS1、NAS2、NAS3、NAS4とする。また、比較のため、MEA30質量%に水70質量%混合したアミン水溶液MEA1を作成した。
【0031】
図1に、実験1で用いた二酸化炭素吸収実験装置1の概略構成図を示す。
【0032】
二酸化炭素吸収実験装置1は、ガラス製のガス吸収ビン2と、ガス導入路4と連通したガラスフィルター3と、ガス排出路5とからなり、ガス排出路5は、トラップ6を介して二酸化炭素解析器7に繋がっている。
図1では、図示していないが、磁気式撹拌機を用いて撹拌することができる。
【0033】
実験に用いるアミン溶液の温度が40℃になるように設定した吸収用恒温水槽8内に、ガス吸収ビン2を浸し、ガス吸収ビン2内に、これらのアミン溶液100gを充填した。アミン溶液中に、ガス導入路4と連通した目の粗さ100μm、直径13mmのガラスフィルター3を通して、二酸化炭素濃度が20%になるように窒素で調整した混合ガスを0.7リットル/分でバブリングさせ、撹拌速度700rpmで、二酸化炭素をアミン溶液に120分間吸収させた。
【0034】
放散工程は、二酸化炭素吸収実験装置1をアミン溶液の温度が90℃になるように設定した放散用恒温水槽9内に移し替え、撹拌速度700rpmで、二酸化炭素をアミン溶液から120分間放出させた。この実験において、全てのIP-DMDPTAベースのアミン溶液は、均質な溶液のままであった。結果を表1に示す。
【0035】
なお、表1において、吸収量は、40℃での120分間の二酸化炭素の吸収量、吸収速度は、前記吸収量の50%時点で計算された速度、サイクル容量は、40℃と90℃での吸収量の差である。
【0036】
また、二酸化炭素を吸収したアミン溶液の粘度を大気圧下40℃で測定した。さらに、全てのアミン溶液の比熱を大気圧下40℃で測定した。
【0037】
表1に示す通り、全てのIP-DMDPTAベースのアミン溶液は、低い粘度、優れた二酸化炭素吸収性、高いサイクル容量、低い比熱容量を示し、比較例のMEA1水溶液と比べても合理的な吸収率を示している。
【0038】
【0039】
<実験2>
さらに、実験1と同様な方法で、二酸化炭素吸収実験装置1を用いて、表2に示すアミン化合物と非水溶媒を用い、混合量などを変えて実験を行った。また、表2に示すように、放散温度に関しても、実験1と同じ90℃以外に、70℃および80℃でも実験を行った。
【0040】
実験2で用いた試薬のうち、実験1でも用いたDMDPTA、MEA、EGL、DEGMER、NMP、1MImおよびIP-DMDPTAは、実験1と同様の方法で調達した。
【0041】
その他の試薬のうち、DPTA、MDPTA、およびTMDPTAは、実験1と同様に東京化成工業株式会社製の試薬を使用した。
【0042】
SB-DMDPTAに関しては、DMDPTAと2-ブタノンを反応させて合成した。さらに、具体的に説明すると、オートクレーブにDMDPTAを159.28g(1.0mol)入れ、エタノール400mL、酸化白金(IV)1.0gおよび2-ブタノン72.11g(1.0mol)を加えて、350kPaの水素雰囲気で8時間反応させた。セライトカラムで触媒を濾過した後、溶媒を除去し、真空乾燥させることにより、無色の液体であるSB-DMDPTA211.0g(純度98%)が得られた。反応スキームを以下に示す。
【0043】
【0044】
また、合成したSB-DMDPTAの構造に関しては、核磁気共鳴分光法(NMR)および液体クロマトグラフィー(LC-MS)を用いて同定した。それぞれの測定結果は、下記の通りである。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δH ppm: 2.72-2.60 (6H, m), 2.57-2.50 (1H, m), 2.30 (2H, t, J = 7.3Hz), 2.21 (6H, s), 1.94 (2H, bs), 1.70-1.62 (4H, m), 1.53-1.25 (2H, m), 1.02 (3H, d, J = 6.3Hz), 0.88 (3H, d, J = 7.5Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz) δC ppm: 58.1 (CH2), 54.7 (CH), 48.9 (CH2), 48.6 (CH2), 46.0 (CH2), 45.6 (CH3x 2), 30.8 (CH2), 29.6 (CH2), 28.2 (CH2), 19.9 (CH3), 10.3 (CH3);
LC-MS (ESI+): actual measured value m/z 216 [M+H]+ with respect to the theoretical molecular weight (C12H29N3) 215.
【0045】
IB-DMDPTAに関しては、DMDPTAとイソブチルアルデヒドを反応させて合成した。さらに、具体的に説明すると、オートクレーブにDMDPTAを159.28g(1.0mol)入れ、エタノール400mL、酸化白金(IV)1.0gおよびイソブチルアルデヒド72.11g(1.0mol)を加えて、350kPaの水素雰囲気で8時間反応させた。セライトカラムで触媒を濾過した後、溶媒を除去し、真空乾燥させることにより、無色の液体であるIB-DMDPTA204.6g(純度98%)が得られた。反応スキームを以下に示す。
【0046】
【0047】
また、合成したIB-DMDPTAの構造に関しては、核磁気共鳴分光法(NMR)および液体クロマトグラフィー(LC-MS)を用いて同定した。それぞれの測定結果は、下記の通りである。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δH ppm: 2.68-2.62 (6H, m), 2.40 (1H, d, J = 7.0Hz), 2.30 (2H, t, J = 7.3Hz), 2.21 (6H, s), 1.94 (2H, bs), 1.78-1.71 (1H, m), 1.70-1.62 (4H, m), 1.50-1.25 (2H, m), 0.90 (6H, d, J = 6.5Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz) δC ppm: 58.2 (CH2), 58.1 (CH2), 48.8 (CH2), 48.7 (CH2), 46.6 (CH2), 45.6 (CH3x 2), 30.4 (CH2), 28.3 (CH), 28.2 (CH2), 20.7 (CH3x 2), 10;
LC-MS (ESI+): actual measured value m/z 216 [M+H]+ with respect to the theoretical molecular weight (C12H29N3) 215.
【0048】
実験2の結果を表2に合わせて示す。なお、表2においては、サイクル容量(mol/mol)の代わりに放散量(g-CO2/kg-吸収液)を使う。
【0049】
【0050】
表2に示す通り、本発明のアミン溶液は、優れた性能を示し、二酸化炭素を吸収しても、沈殿物を形成せず、二酸化炭素の吸収及び回収のローディング範囲で、高い二酸化炭素吸収能と低い粘度を持つ。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のアミン溶液は、高い二酸化炭素溶解度と低い粘度を有するため、種々の発生源から排出される二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収および回収する工程で使用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 二酸化炭素吸収実験装置
2 ガス吸収ビン
3 ガラスフィルター
4 ガス導入路
5 ガス排出路
6 トラップ
7 二酸化炭素解析器
8 吸収用恒温水槽
9 放散用恒温水槽