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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059424
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】内部抵抗推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/389 20190101AFI20240423BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240423BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240423BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240423BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20240423BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20240423BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01R31/389
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/367
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167088
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大渕 浩司
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
2G216BA54
2G216BA58
2G216BA59
2G216CB12
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CB11
5G503DA04
5G503EA05
5G503EA09
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA09
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
(57)【要約】
【課題】大きな計算コストをかけずに内部抵抗を推定することができる内部抵抗推定装置を提供する。
【解決手段】内部抵抗推定装置は、二次電池の内部抵抗を測定する測定部と、測定された前記内部抵抗の値と、前記二次電池の劣化の度合いを比率で表した劣化比率との関係を表す劣化比率算出マップとに基づいて、前記内部抵抗劣化比率を算出する算出部と、前記二次電池の温度及び前記二次電池の充電率を取得する取得部と、算出された前記劣化比率と、取得された前記温度及び前記充電率と、前記内部抵抗の劣化率が最大である状態及び最小である状態における、前記内部抵抗の値と前記充電率の値との関係を表した内部抵抗推定マップとに基づいて、前記二次電池の前記内部抵抗を推定する第1推定部と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の条件下で二次電池の内部抵抗を測定する測定部と、
測定された前記内部抵抗の値と、前記二次電池の劣化の度合いを比率で表した劣化比率との関係を表す劣化比率算出マップとに基づいて、前記劣化比率を算出する算出部と、
前記二次電池の温度及び前記二次電池の充電率を取得する取得部と、
算出された前記劣化比率と、取得された前記温度及び前記充電率と、前記内部抵抗の劣化率が最大である最大劣化状態及び前記内部抵抗の劣化率が最小である最小劣化状態における、前記温度と前記内部抵抗の値と前記充電率の値との関係を表した内部抵抗推定マップとに基づいて、前記二次電池の前記内部抵抗を推定する第1推定部と、
を備える内部抵抗推定装置。
【請求項2】
前記内部抵抗の測定条件を、前記劣化比率算出マップを生成するために行われる前記内部抵抗の値の経時的な測定における測定条件と合わせるための補正係数を用いて、測定された前記内部抵抗の値を補正する補正部を更に備える、
請求項1に記載の内部抵抗推定装置。
【請求項3】
前記補正係数には、温度の条件を合わせるための係数、充電率の条件を合わせるための係数、及び充電速度の条件を合わせるための係数のうち、少なくとも一つが含まれる、
請求項2に記載の内部抵抗推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部抵抗推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車等の駆動用電池として、充電を行うことにより電気を蓄え繰り返し使用可能なリチウムイオンバッテリ等の二次電池が用いられている。二次電池は、経年変化により容量が低下し、その電池特性が劣化してしまうことが知られている。そこで、このような容量低下に応じて駆動用電池を制御するために、容量と密接な関係がある内部抵抗を算出し、これに基づいて容量低下の度合いを推定することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-135277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、二次電池を搭載する電気自動車等の走行中に駆動用電池の内部抵抗を推定する場合、推定処理が煩雑になってしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑み、大きな計算コストをかけずに内部抵抗を推定することができる内部抵抗推定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内部抵抗推定装置は、二次電池の内部抵抗を測定する測定部と、測定された前記内部抵抗の値と、前記二次電池の劣化の度合いを比率で表した劣化比率との関係を表す劣化比率算出マップとに基づいて、前記劣化比率を算出する算出部と、前記二次電池の温度及び前記二次電池の充電率を取得する取得部と、算出された前記劣化比率と、取得された前記温度及び前記充電率と、前記内部抵抗の劣化率が最大である状態及び最小である状態における、前記内部抵抗の値と前記充電率の値との関係を表した内部抵抗推定マップとに基づいて、前記二次電池の前記内部抵抗を推定する第1推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、大きな計算コストをかけずに内部抵抗を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るBMSの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る電池パックの等価回路の一例を示す回路図である。
図3図3は、実施形態に係るBMSのCPUの機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る内部抵抗変化率と経時的に測定した内部抵抗の値との関係の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る劣化比率算出マップの一例を説明する図である。
図6図6は、実施形態に係る内部抵抗推定マップの一例を説明する図である。
図7図7は、実施形態に係るBMSが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<電池パックの構成>
本発明の実施形態に係る内部抵抗推定装置を搭載する電池パックを図1に示す。図1は、BMS1の構成の一例を示すブロック図である。電池パック10は、BMS(Battery Management System)1と、電池モジュール2と、を有する。BMS1は、内部抵抗推定装置の一例である。
【0010】
BMS1は、電池パック10を制御する。BMS1は、電池パック10の内部抵抗を推定する処理を行う。また、例えば、BMS1は、電池モジュール2の電圧、電流、及び温度等を各種センサで検出し、電池パック10を過充電、過放電等から保護する制御を行う。BMSの構成については後述する。
【0011】
電池モジュール2は、例えば、n(n:2以上の整数)個の電池セルB1,B2,B3,B4,・・・Bnを直列に接続してモジュール化したものである。各電池セルB1,B2,B3,B4,・・・Bnは、例えば、リチウムイオンバッテリ等の二次電池からなる。
【0012】
また、電池モジュール2は、模擬的に図2に示す等価回路として表すこともできる。図2は、電池パック10の等価回路の一例を示す回路図である。図2に示すように、電池モジュール2の等価回路は、電池モジュール2の電圧要素Emと、抵抗R0と、この抵抗R0に複数個直列接続されコンデンサC1…Cn及び抵抗R1…Rnがそれぞれ並列接続されたRC直並列回路RCと、を備える。
【0013】
<BMSの構成>
図1に戻り、BMS1の構成について説明する。BMS1は、CPU11を有する。また、図示しないが、BMS1は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置を有していてもよい。CPU11は、電池パック10を統括的に制御する。以下、図3を用いて、BMS1のCPU11が有する機能について説明する。
【0014】
図3は、BMS1のCPU11の機能構成の一例を示すブロック図である。CPU11は、測定部111と、補正部112と、算出部113と、更新部114と、第1推定部115と、第2推定部116とを機能部として備える。
【0015】
測定部111は、電池パック10に設けられた各種センサを制御して、電池パック10の内部抵抗を測定する。例えば、測定部111は、電池パック10が内部抵抗の測定条件を充足している場合に内部抵抗の測定処理を実行する。本実施形態において、内部抵抗の測定条件は、電池パック10が充電状態であることであるが、内部抵抗の測定条件はこれに限定されない。なお、内部抵抗の測定条件は、外乱がない状態であることが好ましい。
【0016】
補正部112は、測定部111で測定した電池パック10の内部抵抗の値を補正する。例えば、補正部112は、後述する内部抵抗劣化比率算出マップを生成するために行った内部抵抗測定時の測定条件に合わせるための補正係数を乗じて測定部111で測定した電池パック10の内部抵抗の値を補正する。
【0017】
補正係数としては、例えば、電池パック10の温度を測定時の温度に合わせるための温度補正係数、電池パック10の充電率SOC(state of charge)を測定時のSOCに合わせるためのSOC補正係数、電池パック10の充電速度を測定時の充電速度に合わせるためのCレート補正係数等が挙げられる。
【0018】
算出部113は、補正部112で補正された電池パック10の内部抵抗の値から、電池パック10の内部抵抗劣化比率を算出する。例えば、算出部113は、劣化比率算出マップと、補正された電池パック10の内部抵抗の値とに基づいて、電池パック10の内部抵抗劣化比率を算出する。
【0019】
ここで、劣化比率算出マップは、後述する電池パック10の内部抵抗劣化比率を算出するためのマップである。例えば、劣化比率算出マップは、内部抵抗変化率と内部抵抗劣化比率との関係を表すグラフである。劣化比率算出マップは、電池パック10の出荷前にBMS1が有する記憶装置等に記憶される。
【0020】
以下、図4及び図5を用いて、劣化比率算出マップについて説明する。まず、劣化比率算出マップを生成するため、事前に所定条件下において、電池パック10の内部抵抗の値の経時的な測定が行われる。所定条件とは、例えば、安定した長時間の充電が行われている状態の電池パック10の、温度、SOC、及びCレート等を表す条件である。なお、本実施形態では、上述した補正係数は、この経時的な内部抵抗の測定時における所定条件を基に定められる。
【0021】
ここで、図4は、内部抵抗変化率と経時的に測定された内部抵抗の値との関係について説明する図である。図4のグラフxは、縦軸に内部抵抗変化率、横軸に所定条件下で経時的に測定された内部抵抗の値を取って、両者の関係を表したグラフである。
【0022】
本実施形態において、内部抵抗変化率は、電池パック10の使用により、所定条件下における電池パック10の内部抵抗が、新品状態からどの程度増加したかを割合で示したものである。例えば、所定条件下における新品状態の電池パック10の内部抵抗の値(初期値)をR0、現時点における電池パック10の内部抵抗をRxとした場合、現時点における内部抵抗変化率Cxは、Cx=(Rx-R0)/R0で表すことができる。
【0023】
劣化比率算出マップは、例えば、図4のグラフxを基に生成される。図5は、劣化比率算出マップの一例を説明する図である。図5のグラフxaは、縦軸に内部抵抗劣化比率、横軸に所定条件下での電池パック10の内部抵抗の値を取って、両者の関係を表したグラフである。
【0024】
本実施形態において、内部抵抗劣化比率は、電池パック10の内部抵抗が新品の状態からどの程度劣化したのかを比率で表したものである。図5の例では、新品状態を比率0、最大劣化状態を比率1としている。
【0025】
本実施形態では、図4における、新品状態の電池パック10の内部抵抗変化率C0の位置を劣化比率0(最小値)、電池パック10が最大に劣化したと想定される内部抵抗の値を表す想定最大劣化値Rmから算出される内部抵抗変化率の値であるCmの位置を劣化比率1(最大値)として、図4のグラフxに基づいて、図5のグラフxaを生成する。
【0026】
なお、想定最大劣化値Rmは、例えば、電池パック10の内部抵抗の値の経時的な測定を行い、電池パック10が一定の性能を発揮することができなくなった際の電池パック10の内部抵抗の値である。電池パック10の性能は、例えば、電圧値、電流値、電池容量、劣化度SOH(States Of Health)等を測定することで評価可能である。
【0027】
また、例えば、複数の電池パック10について内部抵抗の値の経時的な測定を行い、R0、Rm、及びCmの情報を蓄積し、劣化比率算出マップを生成してもよい。一例として、Cmの平均値Cmaを算出し、Cmaの値の位置を劣化比率1として劣化比率算出マップを生成してもよい。これにより、電池パック10の個体差を考慮した上で、劣化比率算出マップを生成できる。
【0028】
図5の例では、例えば、測定・補正した内部抵抗の値がR0以下の場合、内部抵抗劣化比率は0(新品状態)となる。また、例えば、測定・補正した内部抵抗の値がRm以上の場合、内部抵抗劣化比率は1(最大劣化状態)となる。
【0029】
以下、図5の劣化比率算出マップを用いて、内部抵抗劣化比率を算出する場合の測定部111、補正部112、算出部113の動作について説明する。
【0030】
まず、測定部111は、電池パック10が充電中である場合、現時点における電池パック10の内部抵抗の値を測定する。次いで、補正部112は、測定部111で測定した電池パック10の内部抵抗の値Rxを補正する。
【0031】
そして、算出部113は、劣化比率算出マップを参照し、補正した電池パック10の内部抵抗の値Rxcに対応する劣化比率の値である0.5を現時点における内部抵抗劣化比率として算出する。
【0032】
図3に戻り、説明を続ける。更新部114は、BMS1が保持する電池パック10の内部抵抗劣化比率の更新処理を実行する。例えば、更新部114は、測定部111で電池パック10の内部抵抗が測定された場合に、BMS1の記憶装置等に記憶された電池パック10の内部抵抗劣化比率の値を、算出部113で算出された値に書き換える処理を行う。これにより、常に直近で測定された内部抵抗の値に基づいて算出された電池パック10の内部抵抗劣化比率がBMS1に保持される。
【0033】
第1推定部115は、電池パック10の内部抵抗を推定する。例えば、第1推定部115は、電池パック10の温度と、電池パック10のSOCと、算出部113で算出された劣化比率と、内部抵抗推定マップとに基づいて、電池パック10の内部抵抗を推定する。
【0034】
ここで、内部抵抗推定マップは、電池パック10の内部抵抗を推定するためのマップである。例えば、内部抵抗推定マップは、温度条件(電池パック10の温度)毎に規定される、電池パック10の内部抵抗の値と電池パック10のSOCとの関係を表すグラフである。内部抵抗推定マップは、電池パック10の出荷前にBMS1が有する記憶装置等に記憶される。
【0035】
以下、図6を用いて、内部抵抗推定マップについて説明する。図6は、内部抵抗推定マップの一例を説明する図である。図6の内部抵抗推定マップは、ある特定の温度T(温度帯であってもよい)における、内部抵抗の値と電池パック10のSOCの値との関係を表している。また、図6の内部抵抗推定マップの縦軸は内部抵抗の値、横軸はSOCの値を表している。
【0036】
また、図6のグラフaは、電池パック10が新品状態である場合の内部抵抗の値と電池パック10のSOCの値との関係を表している。また、図6のグラフbは、電池パック10の内部抵抗が最大劣化状態である場合の内部抵抗の値とSOCの値との関係を表している。
【0037】
ここで、図6のグラフa及びグラフbは、例えば、事前に、電池パック10が新品状態である場合及び最大劣化状態である場合において、SOCの値を変化させながら、電池パック10の内部抵抗の値を測定することで定めることができる。
【0038】
また、図6のグラフyについては後述するが、図6のグラフyは、予め規定されるものではなく、算出部113で算出された劣化比率、図6のグラフa、及び図6のグラフbに基づいて、導出されるものである。
【0039】
このように、新品状態及び最大劣化状態についてのみ、内部抵抗の値とSOCの値との関係を規定することにより、劣化状態毎に、内部抵抗の値とSOCの値との関係を規定する必要がなくなる。これにより、予め規定する内部抵抗推定マップの数を減らすことができるため、コストを削減することができる。
【0040】
以下、図6の内部抵抗推定マップを用いて、内部抵抗推定を行う場合の第1推定部115の動作について説明する。
【0041】
まず、第1推定部115は、電池パック10の温度を取得する。例えば、第1推定部115は、電池パック10の内部に設けられた温度センサのセンシング結果を取得することにより、電池パック10の温度Tを取得する。次いで、第1推定部115は、BMS1の記憶装置等に記憶された内部抵抗推定マップのうち、取得した電池パック10の温度Tにおける内部抵抗の値とSOCの値との関係を表した内部抵抗推定マップを、内部抵抗推定処理に用いる内部抵抗推定マップとして特定する。
【0042】
次に、第1推定部115は、BMS1の記憶装置等に記憶された、現時点における電池パック10の内部抵抗劣化比率の値に基づいて、内部抵抗推定を行うための内部抵抗の値とSOCの値との関係を表すグラフを導出する。
【0043】
例えば、図6の例で、現時点における劣化比率が0.5である場合、図6のグラフaと図6のグラフbとの中央に位置するグラフyを、内部抵抗推定を行うための内部抵抗の値とSOCの値との関係を表すグラフとして導出する。
【0044】
ここで、本実施形態では、特定のSOC値Syにおける内部抵抗の値Ryが、新品状態でのSyにおける内部抵抗の値をay、最大劣化状態でのSyにおける内部抵抗の値をby、現時点における劣化比率をDとした場合に、Ry=ay+(by-ay)×Dとなるように、内部抵抗推定を行うための内部抵抗の値とSOCの値との関係を表すグラフを導出するものとする。
【0045】
次に、第1推定部115は、電池パック10のSOCを取得する。例えば、第1推定部115は、CAN(Controller Area Network)等により、BMS1と接続される車両制御装置等の外部装置から、電池パック10のSOCの値を取得する。そして、第1推定部115は、図6のグラフyを参照し、取得した電池パック10のSOCの値に対応する内部抵抗の値を、現在の電池パック10の内部抵抗の値として推定する。
【0046】
上記の例では、第1推定部115は、電池パック10の温度及びSOCを取得しているため、取得部の一例である。なお、電池パック10の温度及びSOCを取得する機能を第1推定部115とは別の機能部として構成してもよい。また、この場合に、電池パック10の温度を取得する機能と、SOCを取得する機能と、を夫々別の機能部として構成してもよい。
【0047】
なお、第1推定部115により取得されるSOCは、BMS1のCPU11により算出されたものであってもよい。
【0048】
ここで、本実施形態では、内部抵抗推定マップは、図2に示したR0、C1…Cn、及びR1…Rnの夫々について規定される。これにより、第1推定部115は、R0、C1…Cn、及びR1…Rnの夫々の値を推定できる。
【0049】
なお、内部抵抗推定マップは、R0、C1…Cn、及びR1…Rnの全てについて規定されていなくてもよい。例えば、内部抵抗推定マップは、RC直並列回路RCについては、予め定めた段数分のC、Rについてのみ規定されていてもよい。これにより、予め規定する内部抵抗推定マップの数を減らすことができるため、コストを削減することができる。
【0050】
図3に戻り、説明を続ける。第2推定部116は、第1推定部115で推定された内部抵抗に基づいて、SOCを推定する。ここで、SOC推定には、公知の手法を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。なお、SOC推定処理は、CAN等によりBMS1と接続される外部装置で実行されてもよい。
【0051】
<BMSの処理>
次に、本実施形態に係るBMS1のCPU11が実行する処理について説明する。図7は、実施形態に係るBMS1のCPU11が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0052】
まず、測定部111は、電池パック10が内部抵抗の測定条件を満たしているか否かを判定する(ステップS1)。例えば、測定部111は、電池パック10が充電中であるか否かを判定する。充電中である場合、測定部111は、内部抵抗の測定条件を満たしていると判定する。一方、充電中でない場合、測定部111は、内部抵抗の測定条件を満たしていないと判定する。
【0053】
内部抵抗の測定条件を満たしていない場合(ステップS1:No)、ステップS5の処理に移行する。一方、内部抵抗の測定条件を満たしている場合(ステップS1:Yes)、測定部111は、電池パック10の内部抵抗を測定する(ステップS2)。
【0054】
次いで、補正部112は、ステップS2で測定された電池パック10の内部抵抗を補正する(ステップS3)。例えば、補正部112は、測定された電池パック10の内部抵抗に、予め定められた、温度補正係数、SOC補正係数、及びCレート補正係数を夫々乗じることで電池パック10の内部抵抗の値を補正する。
【0055】
次いで、算出部113は、ステップS3で補正された電池パック10の内部抵抗の値に基づいて、電池パック10の内部抵抗劣化比率を算出する(ステップS4)。例えば、算出部113は、BMS1の記憶装置等に記憶された劣化比率算出マップを参照し、ステップS3で補正された、電池パック10の内部抵抗の値に対応する値を電池パック10の内部抵抗劣化比率として算出する。
【0056】
次いで、更新部114は、測定部111で電池パック10の内部抵抗の測定処理が実行されたか否かを判定する(ステップS5)。内部抵抗の測定処理が実行されていない場合(ステップS5:No)、更新部114は、BMS1の記憶装置等に記憶された電池パック10の内部抵抗劣化比率の値を維持し(ステップS7)、ステップS8の処理に移行する。
【0057】
一方、内部抵抗の測定処理が実行されていた場合(ステップS5:Yes)、更新部114は、電池パック10の内部抵抗劣化比率の値を更新する(ステップS6)。例えば、更新部114は、BMS1の記憶装置等に記憶された電池パック10の内部抵抗劣化比率の値を、ステップS4で算出された値に書き換える。
【0058】
次いで、第1推定部115は、電池パック10の内部抵抗を推定する(ステップS8)。例えば、第1推定部115は、電池パック10の温度と、電池パック10のSOCと、BMS1の記憶装置等に記憶された劣化比率の値と、BMS1の記憶装置等に記憶された内部抵抗推定マップとに基づいて、電池パック10の内部抵抗を推定する。
【0059】
次いで、第2推定部116は、ステップS8で推定された電池パック10の内部抵抗に基づいて、電池パック10のSOCを推定し(ステップS9)、本処理を終了する。
【0060】
<作用効果>
以上のように、本実施形態に係るBMS1は、所定の条件下で電池パック10の内部抵抗を測定する。また、BMS1は、測定した内部抵抗と、内部抵抵抗と内部抵抗劣化比率との関係を表す劣化比率算出マップとに基づいて、電池パック10の劣化比率を算出する。また、BMS1は、電池パック10の温度及びSOCを取得し、算出した劣化比率算出マップと、取得した温度及びSOCと、最大劣化状態及び新品状態における、電池パック10の温度と内部抵抗とSOCとの関係を表す内部抵抗推定マップとに基づいて、電池パック10の内部抵抗を推定する。
【0061】
これにより、例えば、電池パック10が電気自動車等の車両に搭載されている場合、車両が走行中である場合等の外乱が存在するような状態であっても、外乱のない条件下で測定された内部抵抗に基づいて算出された劣化比率を用いて、電池パック10の内部抵抗を推定できる。つまり、本実施形態に係るBMS1によれば、計算コストをアップさせることなく、電池パック10の内部抵抗を推定できる。
【0062】
また、算出された劣化比率、及び、最大劣化状態及び新品状態における、電池パック10の温度と内部抵抗とSOCとの関係から電池パック10の内部抵抗を推定することができるため、劣化状態毎にマップを事前に用意しておく必要がなくなる。したがって、事前に実行する測定の回数を減らすことができる。つまり、本実施形態に係るBMS1によれば、費用的なコストも抑制することが可能である。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0064】
<変形例>
例えば、上述の実施形態では、BMS1のCPU11が測定部111、補正部112、算出部113、更新部114、第1推定部115、及び第2推定部116を機能部として備える形態について説明した。しかしながら、他の装置がこれらの全部又は一部の機能部を備えていてもよい。
【0065】
例えば、電池パック10がハイブリッド車に搭載される場合、ハイブリッド車全体を統括的に制御するECU(Electronic Control Unit)であるHEV-ECUが、測定部111、補正部112、算出部113、更新部114、第1推定部115、及び第2推定部116を機能部として備えていてもよい。また、例えば、HEV-ECUが、第2推定部116のみを機能部として備えていてもよい。
【0066】
その他、上述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 BMS
2 電池モジュール
10 電池パック
11 CPU
111 測定部
112 補正部
113 算出部
114 更新部
115 第1推定部
116 第2推定部
B1,B2,B3・・・Bn 電池セル
C1,C2,C3・・・Cn コンデンサ
Em 電圧要素
R0,R1,R3・・・Rn 抵抗
RC 直並列回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7