(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059426
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】リラクタンス回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/18 20060101AFI20240423BHJP
H02K 19/10 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H02K9/18 A
H02K19/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167100
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 倫也
【テーマコード(参考)】
5H609
5H619
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609BB19
5H609PP06
5H609QQ02
5H609QQ10
5H609QQ14
5H609QQ18
5H609RR11
5H609RR43
5H609RR52
5H619AA11
5H619BB01
5H619BB02
5H619BB24
5H619PP01
5H619PP02
5H619PP04
5H619PP25
5H619PP26
(57)【要約】
【課題】固定子を効率的に冷却できる新規な構成のリラクタンス回転電機を得る。
【解決手段】リラクタンス回転電機は、固定子と、回転子と、を備える。回転子の回転子鉄心31は、複数の磁性板51と、複数の磁性板51を軸方向に挟んだ二つの押さえ板と、二つの磁性板51の間に配置された間隔板71と、を有する。間隔板71には、回転中心軸の周方向に間隔をあけて位置した複数の凸部71eと、回転中心軸の径方向の外側に開放された凹部71fとが周方向に交互に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、
一部が前記固定子の内側に位置し回転中心軸まわりに回転可能なシャフトと、前記固定子の内側に位置し前記シャフトに固定された回転子鉄心と、を有した回転子と、
を備え、
前記回転子鉄心は、
前記回転中心軸の軸方向に並び、磁性体によって構成され、フラックスバリアが設けられた複数の磁性板と、
前記複数の磁性板を前記軸方向に挟んだ二つの押さえ板と、
前記軸方向で隣り合う二つの前記磁性板の間に配置された間隔板と、
を有し、
前記押さえ板には、当該押さえ板を前記軸方向に貫通し前記フラックスバリアと前記軸方向に並んだ開口部が設けられ、
前記間隔板には、前記回転中心軸の周方向に間隔をあけて位置した複数の凸部と、前記間隔板を前記軸方向に貫通するとともに前記回転中心軸の径方向の外側に開放され前記フラックスバリアおよび前記開口部と前記軸方向に並んだ凹部と、が周方向に交互に設けられた、
リラクタンス回転電機。
【請求項2】
前記複数の凸部の少なくとも一部は、前記フラックスバリアと前記軸方向に並んだ、
請求項1に記載のリラクタンス回転電機。
【請求項3】
前記開口部は、孔であり、
前記押さえ板には、それぞれが、前記周方向に間隔をあけて並んだ複数の前記開口部によって構成され、前記径方向に間隔をあけて並べられた複数の開口部列が設けられた、
請求項1に記載のリラクタンス回転電機。
【請求項4】
前記複数の開口部列は、前記径方向の外側に位置するほど前記開口部の数が少ない、
請求項3に記載のリラクタンス回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リラクタンス回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定子と、回転子とを備えるリラクタンス回転電機がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のリラクタンス回転電機では、固定子を効率的に冷却できれば有益である。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、固定子を効率的に冷却できる新規な構成のリラクタンス回転電機を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態のリラクタンス回転電機は、固定子と、一部が前記固定子の内側に位置し回転中心軸まわりに回転可能なシャフトと、前記固定子の内側に位置し前記シャフトに固定された回転子鉄心と、を有した回転子と、を備え、前記回転子鉄心は、前記回転中心軸の軸方向に並び、磁性体によって構成され、フラックスバリアが設けられた複数の磁性板と、前記複数の磁性板を前記軸方向に挟んだ二つの押さえ板と、前記軸方向で隣り合う二つの前記磁性板の間に配置された間隔板と、を有し、前記押さえ板には、当該押さえ板を前記軸方向に貫通し前記フラックスバリアと前記軸方向に並んだ開口部が設けられ、前記間隔板には、前記回転中心軸の周方向に間隔をあけて位置した複数の凸部と、前記間隔板を前記軸方向に貫通するとともに前記回転中心軸の径方向の外側に開放され前記フラックスバリアおよび前記開口部と前記軸方向に並んだ凹部と、が周方向に交互に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、固定子を効率的に冷却できる新規な構成のリラクタンス回転電機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の全閉外扇形回転電機の構成の例示的な断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の全閉外扇形回転電機における回転電機本体の例示的な断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の回転電機本体の回転子鉄心の一部の例示的な斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態の回転子鉄心の回転子鋼板の例示的な正面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の回転子鉄心の間隔板の例示的な正面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の回転子鉄心の押さえ板の例示的な正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態の回転子鉄心のシールド板の例示的な正面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の回転電機本体の回転子鉄心の一部の例示的な平面図である。
【
図9】
図9は、実施形態の回転電機本体の回転子鉄心の一部の例示的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0010】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0011】
<全閉外扇形回転電機1の構成>
図1は、実施形態の全閉外扇形回転電機1の構成の例示的な断面図である。
【0012】
図1に示されるように、全閉外扇形回転電機1は、回転動作を行う回転電機本体2と、冷却器3と、を備える。また、全閉外扇形回転電機1の内部には、回転電機本体2と冷却器3とに亘って、空気などの冷却用気体で満たされた閉空間4が設けられている。回転電機本体2の発熱によって加熱された閉空間4の気体(以後、冷却用気体とも称する)が冷却器3にて外気と熱交換されることにより、回転電機本体2が冷却される。全閉外扇形回転電機1は、リラクタンス回転電機の一例である。冷却用気体は、気体の一例である。
【0013】
<回転電機本体2の構成>
回転電機本体2は、例えば、リラクタンスモータ(電動機)である。なお、回転電機本体2は、発電機であってもよい。
【0014】
回転電機本体2は、筐体11と、回転子12と、固定子13と、二つの軸受16とを備える。
【0015】
本明細書において、便宜上、軸方向、径方向、および周方向が定義される。軸方向は、回転中心軸Ax1に沿う方向である。径方向は、回転中心軸Ax1と直交する方向である。周方向は、回転中心軸Ax1まわりに回転する方向である。
【0016】
回転中心軸Ax1は、回転電機本体2における回転子12の回転の中心であり、例えば回転子12のシャフト14の中心を通る仮想的な直線である。
【0017】
筐体11は、フレーム21と、二つの軸受ブラケット122とを有する。フレーム21は、回転中心軸Ax1を囲む略円筒状に形成されている。固定子13と、回転子12の一部とは、フレーム21の内側に配置されている。
【0018】
二つの軸受ブラケット122は、軸方向におけるフレーム21の両端部に接続されている。軸受ブラケット122は、フレーム21の内部の空間を塞ぐ。軸受ブラケット122のそれぞれは、対応する軸受16を支持している。軸受ブラケット122は、壁とも称される。
【0019】
二つの軸受16は、二つの軸受ブラケット122に設けられ、回転子鉄心31に対して軸方向の一方側と他方側とに位置している。すなわち、二つの軸受16の間に回転子鉄心31が位置している。
【0020】
固定子13は、固定子鉄心19と、固定子巻線20とを有する。固定子鉄心19は、フレーム21に固定されている。
【0021】
図2は、実施形態の全閉外扇形回転電機1における回転電機本体2の例示的な断面図である。
【0022】
図1および
図2に示されるように、固定子鉄心19は、回転中心軸Ax1を囲む略円筒状に形成されている。
図2に示されるように、固定子鉄心19は、互いに軸方向に重ねられた複数の固定子鋼板22を有する。固定子鋼板22は、例えば、電磁鋼板であり、磁性体(磁性材料)によって構成されている。また、固定子鉄心19には、当該固定子鉄心19を径方向に貫通した複数の通路23が軸方向に間隔をあけて設けられている。なお、
図2では、固定子巻線20の図示が省略されている。
【0023】
図1および
図2に示されるように、回転子12は、シャフト14と、回転子鉄心31とを有する。回転子12は、一部が固定子13の内側に位置し、回転中心軸Ax1まわりに回転可能である。
【0024】
図1に示されるように、シャフト14は、回転中心軸Ax1に沿って延びる略円柱状に形成される。シャフト14は、軸受ブラケット122を貫通して、筐体11の内部と外部とに亘って延びている。シャフト14は、軸受16によって回転中心軸Ax1まわりに回転可能に支持されている。
【0025】
シャフト14は、固定子13および回転子鉄心31の内側を通って軸方向に延びている。シャフト14は、回転子鉄心31と結合されている。
【0026】
回転子鉄心31は、固定子鉄心19の内側に配置されている。回転子鉄心31は、回転中心軸Ax1を囲む略円筒状に形成されている。すなわち、回転子鉄心31には、回転子鉄心31を軸方向に貫通した孔31aが設けられている。孔31aには、シャフト14が入れられている。
【0027】
図3は、実施形態の回転電機本体2の回転子鉄心31の一部の例示的な斜視図である。
【0028】
図2および
図3に示されるように、回転子鉄心31は、鉄心本体50と、二つの押さえ板52と、二つのシールド板72とを有する。押さえ板52は、端板とも称される。
【0029】
鉄心本体50は、回転中心軸Ax1まわりの円筒状に形成されている。鉄心本体50には、鉄心本体50を軸方向に貫通した孔50aが設けられている。
【0030】
鉄心本体50は、複数の回転子鋼板51と、複数の間隔板71とを有する。
【0031】
回転子鋼板51は、電磁鋼板であり、磁性体(磁性材料)によって構成されている。回転子鋼板51は、回転中心軸Ax1回りの環状である。具体的には、回転子鋼板51は、円板状である。回転子鋼板51の厚さ方向は、軸方向に沿う。複数の回転子鋼板51は、軸方向に重ねられている。複数の回転子鋼板51は、固定部60によって互いに固定されて一体化されている。複数の回転子鋼板51の内側にシャフト14が入れられている。回転子鋼板51は、板の一例である。回転子鋼板51は、抜き板とも称される。回転子鋼板51は、磁性板の一例である。回転子鋼板51は、電磁鋼板であり、磁性体(磁性材料)によって構成されている。磁性体は、例えば、SS400等の鋼である。回転子鋼板51は、回転中心軸Ax1回りの環状である。具体的には、回転子鋼板51は、円板状である。回転子鋼板51の厚さ方向は、軸方向に沿う。複数の回転子鋼板51は、軸方向に重ねられている。複数の回転子鋼板51は、固定部60によって互いに固定されて一体化されている。複数の回転子鋼板51の内側にシャフト14が入れられている。回転子鋼板51は、板の一例である。回転子鋼板51は、抜き板とも称される。回転子鋼板51は、磁性板の一例である。
【0032】
図4は、実施形態の回転子鉄心31の回転子鋼板51の例示的な正面図である。
図4に示されるように、回転子鉄心31の鉄心本体50の回転子鋼板51には、複数のフラックスバリア群53が設けられている。フラックスバリア群53の数は、鉄心本体50の極数(一例として、六つ)と一致する。複数の回転子鋼板51のフラックスバリア群53は、軸方向に並んでいる。
【0033】
複数のフラックスバリア群53は、周方向に間隔をあけて設けられている。各フラックスバリア群53は、複数のフラックスバリア53aを有する。各フラックスバリア53aは、鉄心本体50を軸方向に貫通した貫通孔(空洞部)である。換言すると、フラックスバリア53aは、回転子鋼板51に設けられた開口部である。フラックスバリア53aは、固定子巻線20に通電がされた場合に形成される磁束の流れに沿うように略円弧状に形成されている。これにより、回転子鋼板51には、磁束の流れやすい部分(方向)と磁束の流れにくい部分(方向)が形成される。なお、フラックスバリア53aは、上記に限定されない。フラックスバリア53aは、切り欠きであってもよい。
【0034】
回転電機本体2では、フラックスバリア53aにより磁束の流路を制御することにより、回転力を発生させることができる。すなわち、回転電機本体2は、回転子12に永久磁石や巻線(導体)を設けることなく、回転子鉄心31の突極性を利用することにより回転子12を回転させることができる。
【0035】
また、
図4に示されるように、各回転子鋼板51の内周部51a(内周面)には、凹部51bが設けられている。凹部51bは、回転子鋼板51を軸方向に貫通しシャフト14の径方向の内側に向けて開口している。
【0036】
複数の間隔板71は、軸方向に間隔をあけて配置されている。間隔板71は、軸方向で隣り合う二つの回転子鋼板51に挟まれている。間隔板71は、例えば、金属材料によって構成されている。
【0037】
図5は、実施形態の回転子鉄心31の間隔板71の例示的な正面図である。
図5に示されるように、間隔板71は、回転中心軸Ax1回りの環状である。具体的には、間隔板71は、円板状である。間隔板71の厚さ方向は、軸方向に沿う。回転子鋼板51には、シャフト14が入れられた孔71aが設けられている。また、各間隔板71の内周部71c(内周面)には、凹部71bが設けられている。凹部71bは、間隔板71を軸方向に貫通しシャフト14の径方向の内側に向けて開口している。
【0038】
間隔板71は、ベース部71dと、複数の凸部71eと、を有する。ベース部71dは、回転中心軸Ax1まわりの円環状に形成されている。複数の凸部71eは、ベース部71dから径方向外側に突出している。複数の凸部71eは、回転中心軸Ax1の周方向に間隔をあけて配置されている。周方向に隣り合う二つの凸部71eの間にはと凹部71fが形成されている。すなわち、間隔板71には、凸部71eと凹部72fとが周方向に交互に設けられている。凹部71fは、間隔板71を軸方向に貫通するとともに回転中心軸Ax1の径方向の外側に開放されている。凹部71fは、フラックスバリア53a、後述の第1の開口部52e、および第2の開口部72eと軸方向に並んでいる。
【0039】
図2に示されるように、二つの押さえ板52は、押さえ板52Aと押さえ板52Bとである。押さえ板52Aは、鉄心本体50に対して軸方向の一方側(
図2における右方側)に位置して、複数の回転子鋼板51のうち軸方向の一方側の端に位置する回転子鋼板51に重ねられている。押さえ板52Bは、鉄心本体50に対して軸方向の他方側(
図2における左方側)に位置して、複数の回転子鋼板51のうち軸方向の他方側の端に位置する回転子鋼板51に重ねられている。二つの押さえ板52は、鉄心本体50を挟んでいる。
【0040】
図6は、実施形態の回転子鉄心31の押さえ板52の例示的な正面図である。
図6に示されるように、押さえ板52は、回転中心軸Ax1まわりの環状である。具体的には、押さえ板52は、円板状である。押さえ板52にはシャフト14が入れられた孔52aが形成されている。また、各押さえ板52の内周部52c(内周面)には、凹部52bが設けられている。凹部52bは、押さえ板52を軸方向に貫通しシャフト14の径方向の内側に向けて開口している。
【0041】
また、押さえ板52には、当該押さえ板52を軸方向に貫通した複数の第1の開口部52eが設けられている。第1の開口部52eは、フラックスバリア53aと軸方向に並んでいる。第1の開口部52eは、孔である。
【0042】
押さえ板52には、複数の押さえ板開口部列E1a,E1bが設けられている。各押さえ板開口部列E1a,E1bは、周方向に間隔をあけて並んだ複数の第1の開口部52eによって構成されている。また、押さえ板開口部列E1aは、複数の第1の開口部52eaによって構成されている。押さえ板開口部列E1bは、押さえ板開口部列E1bの径方向外側に位置している。押さえ板開口部列E1bは、複数の第1の開口部52ebによって構成されている。第1の開口部52ebの数は、第1の開口部52eaの数よりも少ない。また、第1の開口部52eは、鉄心本体50の極数(一例として、六つ)ごとに設けられている。一つの極に対して、
図6において線L1で囲む第1の開口部52eが設けられている。
【0043】
図2に示されるように、二つのシールド板72は、シールド板72Aとシールド板72Bとである。シールド板72Aは、複数の回転子鋼板51のうち軸方向の一方側の端に位置する回転子鋼板51と押さえ板52Aとの間に介在している。シールド板72Bは、複数の回転子鋼板51のうち軸方向の他方側の端に位置する回転子鋼板51と押さえ板52Bとの間に介在している。シールド板は、非磁性体(非磁性材料)によって構成されている。非磁性体は、例えばステンレス(SUS)である。なお、非磁性体は、これに限定されない。シールド板72は、回転子鋼板51に生じる磁束が軸方向に向かうのを抑制する。シールド板72は、回転子鋼板51の端面全体を覆っていてもよいし一部だけを覆っていてもよい。シールド板72は、少なくとも磁束が比較的強い回転子鋼板51の外周部を覆う構成であってもよい。
【0044】
図7は、実施形態の回転子鉄心31のシールド板72の例示的な正面図である。
図7に示されるように、シールド板72は、回転中心軸Ax1まわりの環状である。具体的には、シールド板72は、円板状である。シールド板72にはシャフト14が入れられた孔72aが形成されている。また、各シールド板72の内周部72c(内周面)には、凹部72bが設けられている。凹部72bは、シールド板72を軸方向に貫通しシャフト14の径方向の内側に向けて開口している。
【0045】
また、シールド板72には、当該押さえ板52を軸方向に貫通した複数の第2の開口部72eが設けられている。第2の開口部72eは、フラックスバリア53aおよび第1の開口部52eと軸方向に並んでいる。第2の開口部72eは、孔である。全ての第1の開口部52eと全ての第2の開口部72eとが軸方向に並んでいる。
【0046】
シールド板72には、複数のシールド板開口部列E2a,E2bが設けられている。各シールド板開口部列E2a,E2bは、周方向に間隔をあけて並んだ複数の第2の開口部72eによって構成されている。また、シールド板開口部列E2aは、複数の第2の開口部72eaによって構成されている。シールド板開口部列E2bは、シールド板開口部列E2bの径方向外側に位置している。シールド板開口部列E2bは、複数の第2の開口部72ebによって構成されている。第2の開口部72ebの数は、第2の開口部72eaの数よりも少ない。また、第2の開口部72eは、鉄心本体50の極数(一例として、六つ)ごとに設けられている。一つの極に対して、
図7において線L2で囲む第2の開口部72eが設けられている。
【0047】
図8は、実施形態の回転電機本体2の回転子鉄心31の一部の例示的な平面図である。
図9は、実施形態の回転電機本体2の回転子鉄心31の一部の例示的な平面図である。
【0048】
図8および
図9から分かるように、第1の開口部52e、第2の開口部72e、フラックスバリア53a、および凹部71fは、軸方向に並んで、互いに通じている。
【0049】
次に、シャフト14と回転子鉄心31との結合について説明する。
【0050】
図2に示されるように、シャフト14は、回転中心軸Ax1回りの円筒状の外周面14aを有する。シャフト14は、回転中心軸Ax1まわりの円柱状の複数の領域14b~14eを有する。
【0051】
領域14bは、シャフト14において回転子鉄心31の内側に位置する部分である。領域14cは、領域14bに対して軸方向の一方側に位置して領域14bと接続されている。領域14cの直径は、領域14bの直径よりも大きい。これにより、領域14cには、領域14bに対して径方向の外側に突出する面12mが形成されている。面12mは、軸方向の他方側すなわち回転子鉄心31側を向いている。面12mは、回転中心軸Ax1まわりの環状である。
【0052】
領域14dは、領域14bに対して軸方向の他方側に位置して領域14bと接続されている。領域14dの直径は、領域14bの直径よりも小さい。
【0053】
領域14eは、領域14dに対して軸方向の他方側に位置して領域14dと接続されている。領域14eの直径は、領域14dの直径よりも大きい。
【0054】
領域14bと領域14eとの間には、領域14dの外周面を底面とする凹部12nが設けられている。
【0055】
シャフト14と回転子鉄心31との結合は固定部60によってなされる。固定部60は、シャフト14の面12mと、キー61とを有する。面12mは、第1の挟み部の一例であり、キー61は、第2の挟み部の一例である。キー61は、挟み部材とも称される。
【0056】
面12mは、回転子鉄心31(回転子鋼板51)に対して軸方向の一方側に位置している。面12mは、回転子鉄心31の一方の押さえ板52Aと軸方向に並び、当該押さえ板52Aと接触している。
【0057】
図8に示されるように、キー61は、複数設けられている。キー61の数は、鉄心本体50の極数と同じであり、一例として六つである。複数のキー61は、周方向に間隔あけて並べられている。キー61は、例えば直方体状に形成されている。キー61は、シャフト14の凹部12nに入れられた状態でシャフト14に溶接等によって固定されている。キー61は、回転子鉄心31(鉄心本体50)に対して軸方向の他方側に位置している。キー61は、回転子鉄心31の他方の押さえ板52Bと軸方向に並び、当該押さえ板52Bと接触している。キー61は、軸方向から見た場合に、フラックスバリア群53に対して径方向の内側に位置する。キー61は、回転子鉄心31においてフラックスバリア群53が設けられることにより比較的剛性(強度)が低い回転子鉄心31の部分の径方向の内側に位置し、回転子鉄心31を補強する。キー61は、回転子鉄心31の内側に位置したシャフト14、すなわち領域14bを介して面12mと接続されている。
【0058】
固定部60は、面12mとキー61とで回転子鉄心31(鉄心本体50)を軸方向に挟むことにより複数の回転子鋼板51および二つの押さえ板52を互いに固定している。これにより、複数の回転子鋼板51および二つの押さえ板52が一体化されている。また、固定部60により、シャフト14に対して回転子鉄心31の軸方向の位置決めがされる。ここで、回転子鉄心31(鉄心本体50)にはシャフト14が圧入されている。すなわち、回転子鉄心31(鉄心本体50)とシャフト14とはしばりばめによって嵌め合わされている。
【0059】
また、
図2に示されるように、回転子鉄心31(鉄心本体50)において面12mとキー61との間の部分31cは、中実である。すなわち、各回転子鋼板51の部分において面12mとキー61との間の部分(内周部51c)と、各押さえ板52において面12mとキー61との間の部分(内周部52c)は、中実である。換言すると、回転子鉄心31において面12mとキー61との間の部分31cには、回転子鉄心31を貫通する孔が設けられていない。
【0060】
<冷却器3の構成>
図1に示されるように、冷却器3は、熱交換器131と、外扇カバー32と、出口ガイド33と、を有する。冷却器3は、筐体11の内側を冷却する。
【0061】
熱交換器131は、筐体11の上方側に配置され、筐体11に搭載されている。熱交換器131は、筐体40と、複数の冷却管41と、を有する。
【0062】
筐体40は、筐体11は、箱型に形成されている。入口端板42と、出口端板43と、冷却器カバー45と、底板46と、を有する。筐体40の内部には、空間4bが設けられている。空間4bは、閉空間4を構成する。
【0063】
底板46は、Z方向と直交する方向(X-Y平面)に沿って延びている。底板46は、回転電機本体2の筐体11に対してZ方向側(上方側)に位置し筐体11の内部すなわち空間4aを覆っている。底板46には、例えば二つの通気口46aと、例えば二つの通気口46bと、が設けられている。通気口46aは、底板46におけるX方向の略中央部に設けられ、固定子13に対して上方側に位置している。二つの通気口46aは、X方向に間隔をあけて設けられている。二つの通気口46bは、X方向に間隔をあけて設けられている。二つの通気口46bは、筐体11における内扇18の斜め上方の部分に位置している。二つの通気口46bの間に、通気口46aが位置している。各通気口46a,46bは、筐体40の内部すなわち空間4bと、筐体11の内部すなわち空間4aとに通じており、空間4bと空間4aとを接続している。底板46は、覆壁の一例である。通気口46aおよび通気口46bの数は、二つに限定されるものではなく、一つでもよいし、三つあるいはそれ以上の数でもよい。
【0064】
入口端板42と出口端板43とは、いずれも、軸方向すなわちX方向と直交する方向(Y-Z平面)に沿って延びており、X方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。入口端板42は、底板46のX方向の反対方向の端部からZ方向に延び、出口端板43は、底壁11aのX方向の端部からZ方向に延びている。
【0065】
冷却器カバー45は、底板46、入口端板42、および出口端板43に亘って設けられている。
【0066】
複数の冷却管41は、互いに並列に配置されている。複数の冷却管41は、入口端板42と出口端板43とに亘って設けられており、冷却管41の両端部は、入口端板42と出口端板43とによって支持されている。
【0067】
また、冷却器カバー45内には、二つのガイド板44が設けられている。二つのガイド板44は、入口端板42と出口端板43との間で、X方向に互いに間隔を空けて並べられている。二つのガイド板44は、筐体40の空間4bにおける上部連通空間4cを除くように空間4bの底部から上方に延びて、冷却器カバー45の空間4bのうち上部連通空間4cを除く空間をX方向に仕切っている。
【0068】
外扇カバー32は、入口端板42に固定され、外扇17を収納している。外扇カバー32には、吸込口37が設けられており、外扇17が回転することにより、外気が吸込口37から外扇カバー32内に流入する。また、外扇17により外扇カバー32内に流入した外気が複数の冷却管41の内側に流入するように、外扇カバー32が入口端板42と接続されている。また、外扇カバー32内には、吸込口37から外扇カバー32内に流入した外気が外扇17を通過して複数の冷却管41に流れるように外気をガイドするガイド部材49が設けられている。
【0069】
出口ガイド33は、出口端板43に固定されている。出口ガイド33は、複数の冷却管41から流出する外気が所定の方向に流れるようにガイドする。
【0070】
<全閉外扇形回転電機1の気体の流れ>
次に、上記構成の全閉外扇形回転電機1の気体の流れについて説明する。
【0071】
まずは、閉空間4内の冷却用気体について説明する。
図1に示される閉空間4における筐体11内の空間4aの冷却用気体は、シャフト14と一体に回転する二つの内扇18により回転子12および固定子13に送られる。冷却用気体は、回転子12および固定子13に沿って流れて回転子12および固定子13を冷却した後、固定子鉄心19の径方向外側に流出する。このとき、冷却用気体は、回転子12および固定子13のそれぞれに設けられた通風路を通過する。詳細には、冷却用気体は、第1の開口部52e、第2の開口部72e、フラックスバリア53aを通って凹部71fに入る。凹部71fに入った冷却用気体は、凸部71eによって径方向の外側に案内されて、凹部71fから径方向の外側に流出する。そして冷却用気体は固定子鉄心19の通路23に径方向内側から入る。固定子鉄心19の径方向外側に流出した気体は、通気口46aを経由して冷却器3内の空間4bに流入する。冷却器3の空間4bに流入した気体は、冷却管41の外側を通過する過程で、冷却管41内を流れる外気と熱交換し冷却されながら、二つのガイド板44の間を上昇して上部連通空間4cに流出する。
【0072】
上部連通空間4cの冷却用気体は、冷却管41の軸方向に互いに反対方向に分流して、入口端板42とガイド板44との間と、出口端板43とガイド板44との間とを、それぞれ冷却管41内の外気と熱交換し冷却されながら下降する。その後、冷却用気体は、通気口46bを介して筐体11内の空間4aに戻り、再びそれぞれ内扇18に流入する。
【0073】
次に、外気について説明する。外気は、シャフト14と一体に回転する外扇17により吸込口37から外扇カバー32内に流入し、外扇カバー32内を通過し、入口端板42に到達する。入口端板42に到達した外気は、入口端板42で開口している各冷却管41内に流入し、冷却管41内で冷却管41外側の冷却用気体から熱を受け温度上昇しながら冷却管41内を通過した後、出口端板43での開口から冷却器3の外部に流出する。このように、冷却管41の内側の外気と冷却管41の外側の冷却用気体との間で熱交換が行われることにより、回転子12および固定子13の冷却が行われる。
【0074】
<実施形態の効果>
以上のように、全閉外扇形回転電機1(リラクタンス回転電機)は、固定子13と、回転子12と、を備える。回転子12は、一部が固定子13の内側に位置し回転中心軸Ax1まわりに回転可能なシャフト14と、固定子13の内側に位置しシャフト14に固定された回転子鉄心31と、を有する。回転子鉄心31は、複数の回転子鋼板51(磁性板)と、二つの押さえ板52と、シールド板72と、を有する。複数の回転子鋼板51は、回転中心軸Ax1の軸方向に並び、磁性体によって構成され、フラックスバリア53aが設けられている。二つの押さえ板52は、複数の回転子鋼板51を軸方向に挟んでいる。間隔板71は、軸方向で隣り合う二つの回転子鋼板51(磁性板)の間に配置されている。押さえ板52には、当該押さえ板52を軸方向に貫通しフラックスバリア53aと軸方向に並んだ第1の開口部52eが設けられている。シールド板72は、複数の回転子鋼板51のうち軸方向の端に位置する回転子鋼板51と押さえ板52との間に位置している。シールド板72は、非磁性体によって構成されている。シールド板72には、当該シールド板72を軸方向に貫通しフラックスバリア53aおよび第1の開口部52eと軸方向に並んだ第2の開口部72eが設けられている。間隔板71には、回転中心軸Ax1の周方向に間隔をあけて位置した複数の凸部71eと、間隔板71を軸方向に貫通するとともに回転中心軸Ax1の径方向の外側に開放され、フラックスバリア53a、第1の開口部52e、および第2の開口部72eと軸方向に並んだ凹部71fと、が周方向に交互に設けられている。
【0075】
このような構成によれば、押さえ板52の第1の開口部52eに冷却用気体を送ることにより、冷却用気体が、押さえ板52の第1の開口部52eから、シールド板72の第2の開口部72eおよび回転子鋼板51のフラックスバリア53aを通って間隔板71の凹部71fに流れ、凸部71eによって径方向の外側に案内され、固定子13に流れる。よって、上記構成によれば、固定子13を効率的に冷却することができる。また、上記構成によれば、回転子鋼板51に生じる磁束が軸方向に向かうのをシールド板72が抑制するので、回転子鉄心31からの磁束の漏れを抑制することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、シールド板72に第2の開口部72eが設けられているが、第2の開口部72eは、磁束が生じないフラックスバリア53aと軸方向に並んでいるので、第2の開口部72eからの磁束漏れが抑制される。また、シールド板72の幅(径方向の幅)を広げてシールド板72に沿って磁束が移動する距離を長くすることで、磁束漏れをより一層抑制することができる。
【0077】
また、複数の凸部71eの少なくとも一部は、フラックスバリア53aと軸方向に並んでいる。
【0078】
このような構成によれば、凹部71fに流れた冷却用気体が凸部71eによって径方向の外側により一層案内されやすい。
【0079】
また、第1の開口部52eおよび第2の開口部72eは、孔である。押さえ板52には、それぞれが、周方向に間隔をあけて並んだ複数の第1の開口部52eによって構成され、径方向に間隔をあけて並べられた複数の押さえ板開口部列E1a,E1bが設けられている。シールド板72には、それぞれが、周方向に間隔をあけて並んだ複数の第2の開口部72eによって構成され、径方向に間隔をあけて並べられた複数のシールド板開口部列E2a,E2bが設けられている。
【0080】
このような構成によれば、押さえ板開口部列E1a,E1bおよびシールド板開口部列E2a,E2bがそれぞれ一つの構成に比べて、固定子13へ流れる冷却用気体の量を増大させることができる。
【0081】
また、複数の押さえ板開口部列E1a,E1bは、径方向の外側に位置するほど第1の開口部52eの数が少ない。複数のシールド板開口部列E2a,E2bは、それぞれ、径方向の外側に位置するほど第2の開口部72eの数が少ない。
【0082】
このような構成によれば、押さえ板52およびシールド板72において作用する遠心力が比較的大きい部分(径方向外側の部分)の強度の低下を抑制しつつ固定子13へ流れる冷却用気体を増大させることができる。
【0083】
なお、各上記各実施形態では、冷却部の一例として熱交換器131の例が示されたがこれに限定されない。例えば、冷却部は、筐体11内を換気することにより冷却可能な風道であってもよい。
【0084】
また、上記実施形態において、シールド板72に押さえ板52と同等の強度を持たせることで、押さえ板52を設けない構成としてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、シールド板72を設けなくてもよい。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1…全閉外扇形回転電機(リラクタンス回転電機)、12…回転子、13…固定子、14…シャフト、31…回転子鉄心、51…回転子鋼板(磁性板)、52…押さえ板、52e…第1の開口部、53a…フラックスバリア、71e…凸部、71f…凹部、72…シールド板、72e…第2の開口部、Ax1…回転中心軸、E1a,E1b…押さえ板開口部列、E2a,E2b…シールド板開口部列。