(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059440
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】型枠ユニット
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20240423BHJP
E04G 15/04 20060101ALI20240423BHJP
E04G 11/06 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
E04G15/04
E04G11/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167116
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000128038
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】島袋 孝博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 欣也
【テーマコード(参考)】
2D046
2E150
【Fターム(参考)】
2D046BA11
2E150BA02
2E150BA32
2E150BA42
2E150BA52
2E150BA53
2E150DA03
2E150DA13
2E150HC06
2E150HC13
2E150HF00
2E150MA02X
2E150MA11Z
(57)【要約】
【課題】基礎コンクリートの打設後に、従来よりも型枠を容易に取り外すことが可能な型枠ユニットを提供する。
【解決手段】型枠ユニット1は、基礎コンクリートを打設して建物の基礎を形成するために用いられ、基礎コンクリートの打設後に基礎に対して上方に取り外される箱抜き用の型枠ユニットである。型枠ユニット1は、上下方向に長尺な箱状の型枠10と、上面視において型枠の中央部に取り付けられ、型枠を上下方向に貫通するように延びている長尺部材20とを備えている。長尺部材20は、型枠10に対して長尺部材の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられている。型枠ユニット1は、型枠10に対する長尺部材20の高さ位置を下げて、型枠の下端部から長尺部材を下方に突出させることで、基礎に埋設された状態の型枠を基礎から上方に取り外すことが可能となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートを打設して建物の基礎を形成するために用いられ、基礎コンクリートの打設後に前記基礎に対して上方に取り外される箱抜き用の型枠ユニットであって、
上下方向に長尺な箱状の型枠と、
上面視において前記型枠の中央部に取り付けられ、前記型枠を上下方向に貫通するように延びている長尺部材と、を備え、
前記長尺部材は、前記型枠に対して前記長尺部材の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられ、
前記型枠に対する前記長尺部材の高さ位置を下げて、前記型枠の下端部から前記長尺部材を下方に突出させることで、前記基礎に埋設された前記型枠を前記基礎から上方に取り外すことを特徴とする型枠ユニット。
【請求項2】
前記長尺部材は、長尺に延びている長尺ボルトであって、
前記型枠は、上面視において前記型枠の中央部に設けられ、前記長尺ボルトの軸部に対して螺合されるナット又はネジ穴を有し、
前記長尺ボルトは、前記長尺ボルトの軸部と前記ナット又はネジ穴との螺合位置を調整することで高さ位置を変更可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の型枠ユニット。
【請求項3】
前記型枠は、
前記型枠の上面が開放された箱状の型枠であって、
前記型枠の上端部に取り付けブラケットを介して固定される前記ナットと、
前記型枠の底壁部の上面又は底面に固定される第2ナットと、を有し、
前記長尺ボルトは、前記長尺ボルトの軸部が前記ナット及び前記第2ナットに螺合されることで前記型枠に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の型枠ユニット。
【請求項4】
前記型枠は、テーパー形状を有し、前記型枠の上端部から下端部に向かうほど狭くなるように形成されており、
前記型枠の外側面には、前記基礎コンクリートとの摩擦を低減するための摩擦低減材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の型枠ユニット。
【請求項5】
前記型枠ユニットは、前記型枠を囲むように設置され、前記型枠とで前記基礎を形成するための枠状の第2型枠と、前記型枠及び前記第2型枠それぞれの上端部に架け渡される複数の型枠保持具と、をさらに備え、
前記型枠は、前記型枠の上端部に複数設けられ、前記型枠保持具の一端部を取り付けるための保持具取り付け部を有し、
前記長尺部材は、上面視において複数の前記保持具取り付け部によって囲まれた中央位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の型枠ユニット。
【請求項6】
前記型枠ユニットは、前記型枠を囲むように設置され、前記型枠とで前記基礎を形成するための枠状の第2型枠と、前記型枠及び前記第2型枠を下方から支持する型枠支持台と、をさらに備え、
前記型枠支持台は、
前記型枠を下方から支持する支持ベースと、
前記支持ベース上に設けられ、前記型枠の下端部を囲むように保持する枠状の保持部と、
前記支持ベースから外側に向かって延出する複数の延出部と、
複数の前記延出部の延出端部にそれぞれ設けられ、前記第2型枠を下方から支持する第2支持部と、
前記第2支持部上に設けられ、前記第2型枠の下端部を保持する第2保持部と、を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の型枠ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠ユニットに係り、特に基礎コンクリートを打設して建物の基礎を形成するために用いられる箱抜き用の型枠ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の基礎工事において型枠ユニットが用いられている。
主な基礎工事の流れとしては、基礎の形状に合わせて型枠ユニットを組み、当該型枠ユニット内に基礎コンクリートを打設する。そして、基礎コンクリートの十分な養生期間を経た後、組み立てられた型枠ユニットを解体する。
上記基礎工事において、箱抜き空間(開口部)を有する基礎を形成するために用いられ、基礎コンクリートの打設後に基礎に対して上方に取り外される箱抜き用の型枠ユニットが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
なお、基礎の箱抜き空間は、例えば建物の配管やガス管を通過させる目的で形成される。
【0003】
特許文献1に記載の箱抜き用の型枠は、上下方向に長尺な箱状の型枠であって、抜き勾配を有する断面矩形状の型枠本体と、型枠本体の上部に固定された吊りフックと、から主に構成されている。基礎コンクリートの打設後には、吊フックを用いて吊り上げることで、型枠を基礎から上方に取り外すことができる。
また、特許文献2に記載の箱抜き用の型枠は、上下方向に長尺な箱状の型枠であって、複数の型枠パーツに分割することが可能となっている。基礎コンクリートの打設後には、型枠の中央部に位置する型枠パーツを吊り上げることで型枠を解体することができ、残りの型枠パーツを基礎から上方に取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-127873号公報
【特許文献2】特開2020-76284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2のような箱抜き用の型枠において、従来よりも型枠を容易に組み立てることができ、また基礎コンクリートの打設後には、型枠を容易に取り外すことが可能な型枠ユニットが求められていた。
特に、幅が狭い箱抜き空間を有する基礎を形成するためには、できる限りシンプルな構成からなる型枠ユニットが求められていた。なお、幅狭な(狭隘な)箱抜き空間を形成する場合には、例えばウレタン樹脂を埋め込んでおき、基礎コンクリートの打設後に当該ウレタン樹脂を燃やすことで対応していた。そうすると、箱抜き空間の位置精度に影響することや、基礎工事が煩雑になる虞があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、基礎コンクリートの打設後には、従来よりも型枠を容易に取り外すことが可能な型枠ユニットを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、従来よりも型枠を容易に組み立てることが可能な型枠ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の型枠ユニットによれば、基礎コンクリートを打設して建物の基礎を形成するために用いられ、基礎コンクリートの打設後に前記基礎に対して上方に取り外される箱抜き用の型枠ユニットであって、上下方向に長尺な箱状の型枠と、上面視において前記型枠の中央部に取り付けられ、前記型枠を上下方向に貫通するように延びている長尺部材と、を備え、前記長尺部材は、前記型枠に対して前記長尺部材の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられ、前記型枠に対する前記長尺部材の高さ位置を下げて、前記型枠の下端部から前記長尺部材を下方に突出させることで、前記基礎に埋設された前記型枠を前記基礎から上方に取り外すこと、により解決される。
【0008】
上記構成により、基礎コンクリートの打設後には、従来よりも型枠を容易に取り外すことが可能な型枠ユニットを実現できる。
詳しく述べると、本発明に係る型枠ユニットは、型枠と、型枠に取り付けられる長尺部材とを備えており、型枠に対する長尺部材の高さ位置を下げて、型枠の下端部から長尺部材を下方に突出させることができる。そうすることで、作用・反作用の関係により、長尺部材によって加わる力(作用力)によって、型枠が型枠の設置面(地面)及び基礎から上方向の反力(反作用力)を受ける。その結果、型枠が浮き上がる又は浮き上がり易くなる。つまりは、作業者が長尺部材を利用しながら型枠を上方へ浮かせることで、基礎から型枠を容易に取り外すことができる。
また、型枠ユニットは、比較的シンプルな構成によって実現されるため、従来よりも型枠を容易に組み立てることができる。
【0009】
このとき、前記長尺部材は、長尺に延びている長尺ボルトであって、前記型枠は、上面視において前記型枠の中央部に設けられ、前記長尺ボルトの軸部に対して螺合されるナット又はネジ穴を有し、前記長尺ボルトは、前記長尺ボルトの軸部と前記ナット又はネジ穴との螺合位置を調整することで高さ位置を変更可能となっていると良い。
上記構成により、ボルト及びナット(ネジ穴)によるシンプルな構造によって型枠に対する長尺ボルトの高さ位置を調整することができる。つまりは、シンプルな構成からなる型枠ユニットを実現できる。
【0010】
このとき、前記型枠は、前記型枠の上面が開放された箱状の型枠であって、前記型枠の上端部に取り付けブラケットを介して固定される前記ナットと、前記型枠の底壁部の上面又は底面に固定される第2ナットと、を有し、前記長尺ボルトは、前記長尺ボルトの軸部が前記ナット及び前記第2ナットに螺合されることで前記型枠に取り付けられると良い。
上記構成により、型枠に対して長尺ボルトをより安定させて取り付けることができる。また、型枠に対する長尺ボルトの高さ位置の調整を容易に行うことができる。
【0011】
このとき、前記型枠は、テーパー形状を有し、前記型枠の上端部から下端部に向かうほど狭くなるように形成されており、前記型枠の外側面には、前記基礎コンクリートとの摩擦を低減するための摩擦低減材が設けられていると良い。
上記のように、型枠がテーパー形状を有しているため、基礎コンクリートの打設後に、基礎から型枠を一層容易に取り外すことができる。
また上記のように、型枠の外側面には、摩擦低減材が設けられているため、基礎から型枠を一層容易に取り外すことができる。
【0012】
このとき、前記型枠ユニットは、前記型枠を囲むように設置され、前記型枠とで前記基礎を形成するための枠状の第2型枠と、前記型枠及び前記第2型枠それぞれの上端部に架け渡される複数の型枠保持具と、をさらに備え、前記型枠は、前記型枠の上端部に複数設けられ、前記型枠保持具の一端部を取り付けるための保持具取り付け部を有し、前記長尺部材は、上面視において複数の前記保持具取り付け部によって囲まれた中央位置に配置されていると良い。
上記のように、長尺部材は、上面視において複数の保持具取り付け部によって囲まれた中央位置に配置されているため、型枠及び第2型枠に対して長尺ボルトをより安定させて取り付けることができる。そのため、長尺ボルトを利用して基礎から型枠を一層容易に取り外すことができる。
【0013】
このとき、前記型枠ユニットは、前記型枠を囲むように設置され、前記型枠とで前記基礎を形成するための枠状の第2型枠と、前記型枠及び前記第2型枠を下方から支持する型枠支持台と、をさらに備え、前記型枠支持台は、前記型枠を下方から支持する支持ベースと、前記支持ベース上に設けられ、前記型枠の下端部を囲むように保持する枠状の保持部と、前記支持ベースから外側に向かって延出する複数の延出部と、複数の前記延出部の延出端部にそれぞれ設けられ、前記第2型枠を下方から支持する第2支持部と、前記第2支持部上に設けられ、前記第2型枠の下端部を保持する第2保持部と、を有していると良い。
上記のように、型枠ユニットが型枠支持台をさらに備えていることで、型枠及び第2型枠を位置決めし易くなる。また、型枠及び第2型枠を容易に組み立てることができ、より安定させて設置することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の型枠ユニットによれば、基礎コンクリートの打設後には、従来よりも型枠を容易に取り外すことが可能となる。また、従来よりも型枠を容易に組み立てることが可能となる。
また、シンプルな構成からなる型枠ユニットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】
図3の要部拡大図であって、型枠の上端部を示す図である。
【
図5】
図3の要部拡大図であって、型枠の下端部を示す図である。
【
図7】型枠支持台に対し第2型枠を組み付けた状態を示す図である。
【
図8】型枠支持台に対し型枠及び長尺部材を組み付けた状態を示す図である。
【
図9】型枠及び第2型枠に対し複数の型枠保持具を組み付けた状態を示す図である。
【
図10】基礎コンクリートを打設し、第2型枠を解体した状態を示す図である。
【
図11】長尺部材を下方に押し込むことで、型枠を上方へ浮かせた状態を示す図である。
【
図12】基礎から型枠を上方へ取り外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図12を参照して説明する。
本実施形態は、基礎コンクリートを打設して建物の基礎を形成するために用いられ、基礎コンクリートの打設後に基礎に対して上方に取り外される箱抜き用の型枠ユニットであって、箱状の型枠に対する長尺部材の高さ位置を下げて、型枠の下端部から長尺部材を下方に突出させることで、基礎から型枠を上方に取り外し易くしたことを主な特徴とする「型枠ユニット」に関するものである。
【0017】
<型枠ユニット>
本実施形態の型枠ユニット1は、
図1、
図12に示すように、鉄筋コンクリート製の建物の基礎を施工する際に用いられる治具である。
具体的には、型枠ユニット1は、箱抜き空間(開口部)を有する基礎を形成するために用いられる箱抜き用の型枠ユニットであって、箱状の型枠10は、基礎コンクリートの打設後に基礎に対して上方に取り外される。
【0018】
型枠ユニット1は、
図1に示すように、箱状の型枠10と、型枠10に取り付けられる長尺ボルト20と、型枠10を囲むように設置される枠状の第2型枠30と、型枠10及び第2型枠30それぞれの上端部に架け渡される複数の型枠保持具40と、型枠10及び第2型枠30を下方から支持する型枠支持台50と、から主に構成されている。
図1、
図12に示すように、鋼製の型枠10及び第2型枠30によって囲まれた領域に基礎コンクリートが打設されることで、当該領域に基礎Fが形成される。
【0019】
型枠10は、
図2~
図5に示すように、その上面が開放された箱状の型枠本体部11と、型枠本体部11の上端部に設けられる複数の保持具取り付け穴12と、型枠本体部11の上端部に取り付けブラケット13を介して取り付けられるナット14と、型枠本体部11の下端部に取り付けられる第2ナット17と、を備えている。
【0020】
型枠本体部11は、
図3~
図5に示すように、テーパー形状を有し、その上端部から下端部に向かうほど狭くなるように形成されている。
例えば、型枠本体部11の上端部の寸法が、型枠本体部11の下端部の寸法よりも片側10mm程度(両側20mm程度)小さくなっている。また、型枠本体部11の厚さは、3.2mm程度となっている。
【0021】
型枠本体部11は、上下方向に延びており、基礎コンクリートに当接する四方の側壁部11aと、四方の側壁部11aの下端部に連結される底壁部11bと、一対の側壁部11aの上端部から内側に突出している一対の上壁部11cと、を有している。
上壁部11cの上面には、所定の間隔を空けて保持具取り付け穴12が形成されている。
側壁部11aの内側には、取り付けブラケット13及びナット14が溶接されている。
底壁部11bの上面には、第2ナット17が溶接されている。また、底壁部11bには、上下方向に貫通するネジ穴18が形成されている。第2ナット17のネジ穴と、ネジ穴18とは上下方向に連通している。
なお、第2ナット17は、底壁部11bの底面に溶接されても良い。
【0022】
保持具取り付け穴12は、
図4に示すように、型枠保持具40の一端部を取り付けるための取り付け穴である。
保持具取り付け穴12は、上壁部11cを上下方向に貫通することで設けられ、複数形成されている。
本実施形態では、保持具取り付け穴12が、上面視において型枠本体部11の中央位置を囲むように4つ形成されている。
【0023】
取り付けブラケット13は、型枠本体部11の内部に設けられ、一対の側壁部11aを連結するように延びている。
詳しく述べると、取り付けブラケット13は、一対の側壁部11aを連結するように延びている断面U字形状の下方ブラケット13aと、下方ブラケット13aの延出方向の中央部に固定され、上方に張り出している断面逆U字形状の上方ブラケット13bと、を有している。
上方ブラケット13bは、上面視において一対の上壁部11cの間に配置されており、かつ、複数の保持具取り付け穴12によって囲まれた中央位置に配置されている。
【0024】
下方ブラケット13a及び上方ブラケット13bによって囲まれた内部空間には、ナット14(高ナット)が固定されている。
ナット14は、下方ブラケット13aの上面に溶接され、また上方ブラケット13bの底面に溶接されている。
下方ブラケット13a、上方ブラケット13bには、それぞれ上下方向に貫通するネジ穴15、16が形成されている。ナット14のネジ穴と、ネジ穴15、16とは上下方向に連通している。
【0025】
上記構成において、型枠本体部11(側壁部11a)の外側面には、基礎コンクリートとの摩擦を低減するための摩擦低減材19が設けられている。
摩擦低減材19は、例えば摩擦低減効果を有する樹脂フィルム(フッ素樹脂フィルム)であって、側壁部11aの外側面の略全体にわたって貼り付けられている。
そうすることで、基礎から型枠10を取り外し易くすることができる。
なお、摩擦低減材19は、摩擦低減効果を有する樹脂シートであっても良いし、塗布可能な剥離剤であっても良い。
【0026】
長尺ボルト20は、
図3~
図5に示すように、上面視において型枠10の中央部に取り付けられ、型枠10を上下方向に貫通するように延びている長尺部材である。
長尺部材20は、型枠10に対して長尺部材20の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられている。
詳しく述べると、長尺ボルト20は、その軸部21が型枠10のナット14、第2ナット17それぞれに螺合されることで型枠10に取り付けられている。そして、長尺ボルト20は、その軸部21とナット14(第2ナット17)との螺合位置を調整することで高さ位置を変更可能となっている。
【0027】
長尺ボルト20は、長尺ボルト20の外面(外周面)に形成される軸部21と、長尺ボルトの20の上端部に形成される接続部22(工具接続部)と、長尺ボルト20の下端部に形成される押し当て部23と、を有している。
接続部22は、
図11に示すように、工具Tに接続される部分である。
押し当て部23は、型枠10の下端部から突出し、型枠10の設置面(具体的には、型枠支持台50)に押し当たる部分である。
【0028】
上記構成において、長尺ボルト20(軸部21)が型枠10(ナット14、第2ナット17)に螺合されることで、長尺ボルト20は、型枠10の中央位置に位置決めされ、鉛直方向に沿って延びるように構成される。
また、長尺ボルト20は、上面視において複数の保持具取り付け穴12によって囲まれた中央位置に配置されている。
そうすることで、型枠10に対して長尺ボルト20をより安定させて取り付けることができる。また、長尺ボルト20を利用して基礎から型枠10を取り外し易くすることができる。
【0029】
第2型枠30は、
図1、
図7に示すように、枠状の鋼製型枠であって、枠状に並べられた複数の型枠本体部31と、隣り合う型枠本体部31同士を連結する連結部材32と、を備えている。
型枠本体部31は、上下方向に延びており、基礎コンクリートに当接する縦壁部31aと、縦壁部31aの上端部及び下端部からそれぞれ第2型枠30の外側に突出している上壁部31b及び底壁部31cと、縦壁部31aの幅方向の両端部からそれぞれ外側に突出している左右の側壁部31dと、を有している。
【0030】
連結部材32は、連結金具(連結ピン)であって、上下方向に所定の間隔を空けて複数取り付けられている。
連結部材32は、隣り合う型枠本体部31の側壁部31dにそれぞれ形成された挿通穴に挿通する軸部32aと、軸部32aの表面から外側に突出し、隣り合う型枠本体部31それぞれの側壁部31dを挟み込むフック形状のクリップ部32bと、を有している。
連結部材32は、軸部32aを中心軸としてクリップ部32bを回転可能となるように構成されている。そのため、連結部材32は、クリップ部32bを回転移動させることで、型枠本体部31同士を連結した「連結状態」と、型枠本体部31同士の連結状態を解除した「解除状態」との間で切り替えることができる。
【0031】
型枠保持具40は、
図1、
図2に示すように、型枠10及び第2型枠30に架け渡され、型枠10及び第2型枠30を上方から挟み込む治具(幅留め治具)である。
型枠保持具40は、型枠10、第2型枠30を連結するように延びて、それぞれの上面に当接する本体部41と、本体部41の延出方向の両端部にそれぞれ設けられた第1保持部42、第2保持部43と、を有している。
本実施形態では、4本の型枠保持具40Aと、2本の型枠保持具40Bとが、型枠10及び第2型枠30を連結している。
【0032】
まず、型枠保持具40Aについて説明する。
第1保持部42は、本体部41の一端部から下方に突出する外側突出部42aと、本体部41の一端部において外側突出部42aよりもやや内側の位置から下方に突出する内側突出部42bと、を有している。
外側突出部42aは、型枠本体部11のうち上壁部11cの側面に当接する。内側突出部42bは、型枠本体部11のうち側壁部11aの外側面に当接する。
つまりは、第1保持部42は、型枠本体部11のうち側壁部11a及び上壁部11cを上方から挟み込むように保持している。
なお、内側突出部42bは、本体部41の一部を切り欠くことで(切り起こすことで)形成されている。
【0033】
第2保持部43は、第1保持部42と同様の構成であって、外側突出部43aと、内側突出部43bと、を有している。第2保持部43は、第2型枠30を上方から挟み込むように保持している。
【0034】
続いて、型枠保持具40Bについて説明する。
型枠保持具40Bは、型枠保持具40Aと同様の構成であって、型枠保持具40Aとは交差(直交)するように延びている。型枠保持具40Bの一端部は、型枠保持具40Aの一端部の上面に重なっている。
つまり、型枠保持具40Bの第1保持部42は、型枠本体部11の側壁部11a及び上壁部11cと、型枠保持具40Aの一端部とを上方から挟み込むように保持している。
第2保持部43は、第2型枠30を上方から挟み込むように保持している。
なお、型枠保持具40の組み付けパターンについては適宜変更しても良い。
【0035】
上記構成において、
図2に示すように、型枠保持具40の両端部には、それぞれ上下方向に貫通した取り付け穴44、45が形成されている。
型枠保持具40の取り付け穴44と、型枠10の保持具取り付け穴12とが連通した状態で取り付けピン46(取り付け部材)が上方から取り付けられる。
また、型枠保持具40の取り付け穴45と、第2型枠30の保持具取り付け穴33とが連通した状態で取り付けピン46(取り付け部材)が上方から取り付けられる。
【0036】
型枠支持台50は、
図1、
図6に示すように、型枠10及び第2型枠30を下方から支持する治具である。
なお、型枠支持台50は、基礎コンクリートの打設に伴って基礎コンクリートに埋設される。
【0037】
型枠支持台50は、
図6に示すように、型枠10を下方から支持する支持ベース51と、支持ベース51上に設けられ、型枠10の下端部を囲むように保持する枠状の保持部52と、支持ベース51から外側に向かって延出する複数の延出部53と、複数の延出部53の延出端部にそれぞれ設けられ、第2型枠30を下方から支持する第2支持部54と、第2支持部54上に設けられ、第2型枠30の下端部を保持する第2保持部55と、を備えている。
【0038】
支持ベース51は、型枠10の設置面(地面)に設置されるベースプレートであって、上面視において型枠10よりも大きな外形を有している。
保持部52は、支持ベース51上に固定され、支持ベース51から上方に突出する枠状プレートである。
保持部52は、型枠10の下端部に着脱可能に取り付けられ、型枠10の下端部を囲むように保持する。
【0039】
延出部53は、支持ベース51の外縁部分から放射状に延出する棒状部材である。
具体的には、延出部53は、支持ベース51から第2型枠30の下端部に向かって十字状に四方に延出している。
第2支持部54は、第2型枠30の設置面(地面)に設置されるプレートであって、第2型枠30を下方から支持する。
第2保持部55は、第2支持部54の先端部から上方に突出する外側突出部55aと、第2支持部54の先端部において外側突出部55aよりもやや内側の位置から上方に突出する内側突出部55bと、を有している。
つまりは、第2保持部55は、第2型枠30の下端部に着脱可能に取り付けられ、第2型枠30の幅方向において第2型枠30の下端部を挟持する。
【0040】
型枠支持台50を利用することで、型枠10及び第2型枠30を位置決めし易くなる。また、型枠10及び第2型枠30を容易に組み立てることができ、より安定させて設置することができる。さらには、型枠10を上方に取り外し易くなる。
【0041】
上記型枠ユニット1であれば、基礎コンクリートの打設後には、型枠10を容易に取り外すことができる。また、型枠10を容易に組み立てることができる。
詳しく述べると、
図10、
図11に示すように、型枠10に対する長尺ボルト20の高さ位置を下げて、型枠10の下端部から長尺ボルト20を下方に突出させることで、基礎Fに埋設された状態の型枠10を基礎Fから上方に取り外し易くすることができる。
より詳しく述べると、作用・反作用の関係により、長尺ボルト20によって加わる力(作用力)によって、型枠10が型枠支持台50及び基礎Fから上方向の反力(反作用力)を受ける。その結果、型枠10が浮き上がる又は浮き上がり易くなる。つまりは、作業者が長尺ボルト20を利用しながら型枠10を上方へ浮かせることで、基礎Fから型枠10を容易に取り外すことができる。
【0042】
<型枠ユニットを用いた基礎施工方法>
次に、型枠ユニット1を用いた基礎施工方法について、
図6~
図12に基づいて説明する。
当該基礎施工方法は、「支持台設置工程」と、「型枠組み立て工程」と、「型枠保持工程」と、「コンクリート打設工程」と、「第2型枠取り外し工程」と、「型枠取り外し工程」と、を少なくとも含むものである。以下、詳しく説明する。
なお、建物の基礎施工にあたって、上記以外の施工工程については説明を省略する。
【0043】
まず、「支持台設置工程」では、
図6に示すように、作業者が、建物の基礎を形成する位置に型枠支持台50を設置する。
型枠支持台50のうち、支持ベース51上に箱状の型枠10が設置される。また、型枠支持台50のうち、複数の第2支持部54上に枠状の第2型枠30が設置される。
【0044】
そして、「型枠組み立て工程」では、
図7、
図8に示すように、作業者が、所定の間隔を空けて対向する位置に型枠10及び第2型枠30を組み立てる。
具体的には、作業者は、型枠支持台50(支持ベース51)上に、長尺ボルト20が取り付けられた状態の型枠10を設置する。また、型枠支持台50(第2支持部54)上に第2型枠30を設置する。
型枠10が設置されたとき、型枠10は、支持ベース51及び保持部52によって保持される。また、第2型枠30は、第2支持部54及び第2保持部55によって保持される。
なお、この時点では、長尺ボルト20は、型枠10の下端部から突出させない状態で型枠10に取り付けておくと良い。
【0045】
そして、「型枠保持工程」では、
図9に示すように、作業者が、型枠10及び第2型枠30を上方から挟み込むように複数の型枠保持具40を組み付ける。
具体的には、型枠保持具40Aと型枠保持具40Bを交差させるように配置し、型枠保持具40A、40Bと、型枠10とを取り付けピンで固定する。また、型枠保持具40A、40Bと、第2型枠30とを取り付けピンで固定する。
【0046】
そして、「コンクリート打設工程」では、作業者が、型枠10及び第2型枠30によって囲まれた領域内に基礎コンクリートを打設する。
このとき、型枠保持具40、型枠支持台50が、型枠10及び第2型枠30を上下方向及び水平方向において好適に保持することができる。
【0047】
そして、「第2型枠取り外し工程」では、作業者が、型枠保持具40を取り外し、第2型枠30を解体する。
具体的には、作業者は、複数の型枠保持具40を上方に取り外した後に、第2型枠30を解体する。詳しく述べると、第2型枠30の連結部材32を回転させながら取り外した後に、第2型枠30を真横に倒し、それから引っ張り上げて取り外す。
【0048】
そして、「型枠取り外し工程」では、
図10、
図11に示すように、作業者が、長尺ボルト20を利用して型枠10を基礎Fから上方に取り外す。
具体的には、作業者は、長尺ボルト20の上端部(接続部22)に工具Tを組み付けて、工具Tを利用して長尺ボルト20を右回転させる。長尺ボルト20の回転動作に伴って、型枠10に対する長尺ボルト20の高さ位置を下げて、型枠10の下端部から長尺ボルト20を下方に突出させる。当該作業によって、
図11に示すように、基礎Fに埋設された状態の型枠10を基礎Fからやや浮き上がらせることができる。
そして、作業者は、長尺ボルト20を持ち上げて、基礎Fからやや浮き上がった状態の型枠10を上方に取り外す。
【0049】
上記基礎施工方法により、
図12に示すように、型枠ユニット1を利用して、箱抜き空間(開口部)を有する基礎Fを形成することができる。
上記基礎施工方法であれば、箱状の型枠10、枠状の第2型枠30を容易に組み立てることができ、基礎コンクリートの打設後には、型枠10を容易に取り外すことができる。
【0050】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図1に示すように、型枠ユニット1が、箱状の型枠10と、長尺ボルト20と、枠状の第2型枠30と、複数の型枠保持具40と、型枠支持台50と、を備えているが、型枠支持台50を不要の構成にしても良い。
また、型枠ユニット1は、少なくとも箱状の型枠10と、型枠10に取り付けられる長尺ボルト20と、を備えていれば良い。
【0051】
上記実施形態では、型枠10、第2型枠30が鋼製の型枠であったが、特に限定されるものではない。
すなわち、型枠10、第2型枠30が、木製の型枠であっても良いし、樹脂製の型枠であっても良い。
【0052】
上記実施形態では、
図4、
図5に示すように、型枠10が、ナット14及び第2ナット17を備えているが、必ずしもナット14、17を必要とするものではない。
箱状の型枠10が、長尺ボルト20に螺合されるネジ穴を有していれば良い。
例えば、6面体からなる箱状の型枠10の上面及び底面にそれぞれネジ穴が形成される構成としても良い。
【0053】
上記実施形態では、
図3に示すように、長尺ボルト20が、ネジ部を有する長尺部材であったが、特に限定されず、ネジ部を有さない棒状の長尺部材であっても良い。
例えば、型枠10が、長尺部材20の高さ位置を変更可能な状態で長尺部材20を保持しているシンプルな構造であっても良い。
その場合には、型枠10に対する長尺部材20の高さ位置を調整することはできないものの、例えば長尺部材20を上方から叩きこむことで同様の作用力を発生させ、型枠10に上方向の反力(反作用力)を与えることができる。
【0054】
上記実施形態では、主として本発明に係る型枠ユニットに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 型枠ユニット(箱抜き用の型枠ユニット)
10 型枠(箱状の型枠)
11 型枠本体部
11a 側壁部
11b 底壁部
11c 上壁部
12 保持具取り付け穴(保持具取り付け部)
13 取り付けブラケット
13a 下方ブラケット
13b 上方ブラケット
14 ナット
15、16 ネジ穴
17 第2ナット
18 ネジ穴
19 摩擦低減材
20 長尺ボルト(長尺部材)
21 軸部
22 接続部
23 押し当て部
30 第2型枠
31 型枠本体部
31a 縦壁部
31b 上壁部
31c 底壁部
31d 側壁部
32 連結部材(連結金具)
32a ベース軸部
32b クリップ部
40、40A、40B 型枠保持具
41 本体部
42 保持部
42a 外側突出部
42b 内側突出部
43 第2保持部
43a 外側突出部
43b 内側突出部
44、45 取り付け穴
46 取り付けピン
50 型枠支持台
51 支持ベース
52 保持部(枠状の保持部)
53 延出部
54 第2支持部
55 第2保持部
55a 外側突出部
55b 内側突出部
F 基礎(基礎コンクリート)
T 工具(インパクトドライバ)