(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059482
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】スポット溶接装置及びスポット溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/11 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
B23K11/11 570Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167173
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】平井 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】田所 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】林 哲史
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一
(72)【発明者】
【氏名】熊野 正幸
【テーマコード(参考)】
4E165
【Fターム(参考)】
4E165BA01
4E165BB02
4E165BB12
4E165EA16
(57)【要約】
【課題】ティーチング工数を低減できること。
【解決手段】スポット溶接装置は、ロボットアームと、ロボットアームの先端に設けられた一対のガンアームと、一対のガンアームの先端に夫々設けられ対向する一対の電極チップと、を備え、被溶接物を一対の電極チップ間で挟持しつつ通電して被溶接物をスポット溶接する。スポット溶接装置は、ロボットアームの先端に設けられ、一対のガンアームを、ロボットアームの先端側部分の長手方向の中心軸に対して垂直な軸を中心にして、回転させる回転機構を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられた一対のガンアームと、
前記一対のガンアームの先端に夫々設けられ対向する一対の電極チップと、
を備え、被溶接物を前記一対の電極チップ間で挟持しつつ通電して被溶接物をスポット溶接するスポット溶接装置であって、
前記ロボットアームの先端に設けられ、前記一対のガンアームを、前記ロボットアームの先端側部分の長手方向の中心軸に対して垂直な軸を中心にして、回転させる回転機構を備える、
スポット溶接装置。
【請求項2】
請求項1記載のスポット溶接装置であって、
前記一対のガンアームは、
側面視L字状に成形され、他端側の先端部に前記電極チップに取付けられた固定ガンアーム、及び、一端がスライド機構を介して前記固定ガンアームの一端に取付けられ、他端に前記電極チップに取付けられた可動ガンアームであり、
前記スライド機構は、前記可動ガンアームの電極チップを、前記固定ガンアームの電極チップに向けてスライドさせるように構成され、
前記固定ガンアームは、前記回転機構に回転可能に取付けられている、
スポット溶接装置。
【請求項3】
請求項2記載のスポット溶接装置であって、
前記回転機構のアクチュエータを制御する制御装置を更に備え、
前記制御装置は、前記回転機構のアクチュエータを制御して、前記垂直な軸であるキネティック軸を回転させ、固定及び可動ガンアームの角度を調整する、
スポット溶接装置。
【請求項4】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられた一対のガンアームと、
前記一対のガンアームの先端に夫々設けられ対向する一対の電極チップと、
を備え、被溶接物を前記一対の電極チップ間で挟持しつつ通電して被溶接物をスポット溶接するスポット溶接装置のスポット溶接方法であって、
前記ロボットアームの先端に設けられた回転機構により、前記一対のガンアームを、前記ロボットアームの先端側部分の長手方向の中心軸に対して垂直な軸を中心にして、回転させる、
スポット溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スポット溶接を行うスポット溶接装置及びスポット溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のガンアームの先端に夫々設けられ対向する一対の電極チップ間で被溶接物を挟持しつつ通電して被溶接物をスポット溶接するスポット溶接装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。一方のガンアームには、異なる方向を向く別の電極チップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記異なる方向の電極チップが設けられたガンアームについては、使用しない電極チップが被溶接物に干渉しないようにティーチングを行う必要がある。このため、ティーチング工数が増加する虞がある。
【0005】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ティーチング工数を低減できるスポット溶接装置及びスポット溶接方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本開示の一態様は、
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられた一対のガンアームと、
前記一対のガンアームの先端に夫々設けられ対向する一対の電極チップと、
を備え、被溶接物を前記一対の電極チップ間で挟持しつつ通電して被溶接物をスポット溶接するスポット溶接装置であって、
前記ロボットアームの先端に設けられ、前記一対のガンアームを、前記ロボットアームの先端側部分の長手方向の中心軸に対して垂直な軸を中心にして、回転させる回転機構を備える、
スポット溶接装置
である。
この一態様において、
前記一対のガンアームは、
側面視L字状に成形され、他端側の先端部に前記電極チップに取付けられた固定ガンアーム、及び、一端がスライド機構を介して前記固定ガンアームの一端に取付けられ、他端に前記電極チップに取付けられた可動ガンアームであり、
前記スライド機構は、前記可動ガンアームの電極チップを、前記固定ガンアームの電極チップに向けてスライドさせるように構成され、
前記固定ガンアームは、前記回転機構に回転可能に取付けられていてもよい。
この一態様において、
前記回転機構のアクチュエータを制御する制御装置を更に備え、
前記制御装置は、前記回転機構のアクチュエータを制御して、前記垂直な軸であるキネティック軸を回転させ、固定及び可動ガンアームの角度を調整してもよい。
上記目的を達成するための本開示の一態様は、
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられた一対のガンアームと、
前記一対のガンアームの先端に夫々設けられ対向する一対の電極チップと、
を備え、被溶接物を前記一対の電極チップ間で挟持しつつ通電して被溶接物をスポット溶接するスポット溶接装置のスポット溶接方法であって、
前記ロボットアームの先端に設けられた回転機構により、前記一対のガンアームを、前記ロボットアームの先端側部分の長手方向の中心軸に対して垂直な軸を中心にして、回転させる、
スポット溶接方法
である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ティーチング工数を低減できるスポット溶接装置及びスポット溶接方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るスポット溶接装置の概略的な構成を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係るスポット溶接装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】固定及び可動ガンアームの回転動作の一例を示す図である。
【
図4】ワークの上下面、横側面の3平面に対してスポット溶接を行う場合について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るスポット溶接装置の概略的な構成を示す概略図である。
図2は、本実施形態に係るスポット溶接装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施形態に係るスポット溶接装置1は、被溶接物を一対の電極チップ7、8間で挟持しつつ通電して被溶接物をスポット溶接するものである。
【0010】
本実施形態に係るスポット溶接装置1は、ロボットアーム2と、制御装置3と、一対の固定及び可動ガンアーム4、5と、回転機構6と、一対の電極チップ7、8と、を備えている。
【0011】
ロボットアーム2は、例えば、6軸を有する多関節型のアームとして構成されている。ロボットアーム2の各関節部21には、各関節部21を駆動させるサーボモータなどのアクチュエータ22、各関節部の回転角やトルクを検出するセンサ23、などが設けられている。ロボットアーム2は、例えば、固定台24などを介して床面に固定されている。
【0012】
制御装置3は、センサ23からのセンサ値に基づいて、ロボットアーム2の各関節部21のアクチュエータ22を、例えば、フィードバック制御やロバスト制御を行う。これにより、ロボットアーム2の先端を所望の位置に移動させることができる。
【0013】
制御装置3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ31と、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの内部メモリ32と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージデバイス33と、ディスプレイなどの周辺機器を接続するための入出力I/F34と、装置外部の機器と通信を行う通信I/F35と、を備えた通常のコンピュータのハードウェア構成を有する。
【0014】
制御装置3には、配線などを介して操作部36が接続されている。操作部36は、ロボットアーム2に対し軌道を教示するティーチングを行う。ユーザは操作部36を操作することで、制御装置3を介して、ロボットアーム2に対してティーチングを行うことができる。
【0015】
固定及び可動ガンアーム4、5は、ロボットアーム2の先端に設けられている。固定ガンアーム4は、例えば、側面視L字状に成形されている。固定ガンアーム4の一端側は、ロボットアーム2の先端に回転機構6を介して回転可能に取付けられている。固定ガンアーム4の他端側の先端部には、電極チップ7に取付けられている。
【0016】
可動ガンアーム5は、棒状の部材で形成されている。可動ガンアーム5の他端には、電極チップ8に取付けられている。可動ガンアーム5の先端の電極チップ8と、固定ガンアーム4の先端の電極チップ7は、対向している。
【0017】
可動ガンアーム5の一端は、スライド機構9を介して、固定ガンアーム4の一端に取付けられている。スライド機構9は、可動ガンアーム5の先端の電極チップ8を、固定ガンアーム4の先端部の電極チップ7に向けてスライドさせるように構成されている。
【0018】
スライド機構9には、サーボモータなどのアクチュエータ91が設けられている。アクチュエータ91は、例えば、制御装置3からの制御信号に応じて回転駆動し、ラックアンドピニオン機構などを介して、可動ガンアーム5をスライドさせる。
【0019】
スライド機構9は、上述の如く、可動ガンアーム5をスライドさせることで、被溶接物を固定ガンアーム4の電極チップ7と可動ガンアーム5の電極チップ8間で挟持し、被溶接物に対してガン圧を付加する。このとき、固定及び可動ガンアーム4、5の電極チップ7、8には、例えば、制御装置3を介して電力が供給される。このようにして、スポット溶接装置1は、被溶接物を一対の電極チップ7、8間で挟持しつつ通電して被溶接物をスポット溶接することができる。
【0020】
回転機構6は、ロボットアーム2の先端に設けられている。回転機構6には、固定ガンアーム4が回転可能に取付けられている。回転機構6は、固定及び可動ガンアーム4、5を、ロボットアーム2の先端側部分(先端側リンク)の長手方向の中心軸Lに対して垂直なキネティック軸61を中心にして、回転させる。回転機構6のキネティック軸61は、固定ガンアーム4の一端側に形成された貫通孔を貫通し、固定ガンアーム4の一端側に連結されている。
【0021】
回転機構6には、サーボモータなどのアクチュエータ62が設けられている。アクチュエータは、例えば、制御装置3からの制御信号に応じて回転駆動し、歯車機構などを介して、キネティック軸61を回転させる。これにより、固定及び可動ガンアーム4、5をキネティック軸61を中心に回転させ、固定及び可動ガンアーム4、5を所望の角度に調整することができる。
【0022】
続いて、本実施形態に係るスポット溶接装置1によるスポット溶接方法について説明する。
図3は、固定及び可動ガンアームの回転動作の一例を示す図である。
【0023】
図3(a)に示す如く、縦壁面に対してスポット溶接が行われる場合、制御装置3は、回転機構6のアクチュエータ62を制御して、キネティック軸61を回転させ、固定及び可動ガンアーム4、5を0°の角度に調整する。
【0024】
図3(b)に示す如く、45°の傾斜面に対してスポット溶接が行われる場合、制御装置3は、回転機構6のアクチュエータ62を制御して、キネティック軸61を回転させ、固定及び可動ガンアーム4、5を45°の角度に調整する。
【0025】
図3(c)に示す如く、水平面に対してスポット溶接が行われる場合、制御装置3は、回転機構6のアクチュエータ62を制御して、キネティック軸61を回転させ、固定及び可動ガンアーム4、5を90°の角度に調整する。
【0026】
例えば、同工程で、縦壁面、傾斜面、水平面の3平面に対してスポット溶接が行われる場合、従来、スポット溶接装置を3台設置する必要があった。これに対し、本実施形態に係るスポット溶接装置1は、上述の如く、回転機構6のキネティック軸61を回転制御するだけで、縦壁面、傾斜面、水平面の3平面に対してスポット溶接を行うことができる。これにより、省スペース化を実現できる。また、回転機構6のキネティック軸61を回転制御するだけで、上記実現できることから、制御装置数の低減、及び省配線化を実現できる。
【0027】
図4に示す如く、ワークの上下面、横側面の3平面に対してスポット溶接を行う場合について説明する。
【0028】
ワークの上面(1)に対してスポット溶接が行われる場合、制御装置3は、回転機構6のアクチュエータ62を制御して、キネティック軸61を回転させ、固定及び可動ガンアーム4、5を90°の角度に調整した後、スポット溶接を行う。
【0029】
ワークの横側面(3)に対してスポット溶接が行われる場合、制御装置3は、回転機構6のアクチュエータ62を制御して、キネティック軸61を回転させ、固定及び可動ガンアーム4、5を0°の角度に調整した後、スポット溶接を行う。
【0030】
ワークの下面(2)に対してスポット溶接が行われる場合、制御装置3は、回転機構6のアクチュエータ62を制御して、キネティック軸61を回転させ、固定及び可動ガンアーム4、5を-90°の角度に調整した後、スポット溶接を行う。
【0031】
例えば、従来のスポット溶接装置では、2平面締結した後、治具を回転させ3平面目を締結する必要があった。しかし、本実施形態に係るスポット溶接装置1によれば、上述の如く、治具を回転させることなく、回転機構6のキネティック軸61を回転制御するだけで、3平面に対してスポット溶接を容易に行うことができる。したがって、治具を回転させる機構が不要になるため、コストダウン及び治具製作納期短縮が見込める。
【0032】
以上、本実施形態に係るスポット溶接装置1は、ロボットアーム2と、ロボットアーム2の先端に設けられた一対の固定及び可動ガンアーム4、5と、固定及び可動ガンアーム4、5の先端に夫々設けられ対向する一対の電極チップ7、8と、ロボットアーム2の先端に設けられ、固定及び可動ガンアーム4、5を、ロボットアーム2の先端側部分の長手方向の中心軸Lに対して垂直な軸を中心にして、回転させる回転機構6と、を備えている。そして、スポット溶接装置1は、被溶接物を一対の電極チップ7、8間で挟持しつつ通電して被溶接物をスポット溶接する。
【0033】
本実施形態に係るスポット溶接装置1によれば、従来のように、異なる方向の電極チップが設けられたガンアームについては、使用しない電極チップが被溶接物に干渉しないようにティーチングを行う必要がない。このため、ティーチング工数を低減することができる。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 スポット溶接装置、2 ロボットアーム、3 制御装置、4 固定ガンアーム、5 可動ガンアーム、6 回転機構、7 電極チップ、8 電極チップ、9 スライド機構、21 関節部、22 アクチュエータ、23 センサ、24 固定台、31 プロセッサ、32 内部メモリ、33 ストレージデバイス、36 操作部、61 キネティック軸、62 アクチュエータ、91 アクチュエータ