(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059488
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ、および、アテレクトミーシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240423BHJP
A61B 17/3207 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61M25/09 516
A61M25/09 514
A61B17/3207
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167181
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】西木 賢志郎
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160MM36
4C267AA29
4C267BB02
4C267BB18
4C267BB38
4C267CC08
4C267EE01
4C267HH02
4C267HH06
(57)【要約】
【課題】ガイドワイヤに沿って体内に挿入される医療機器の体内での位置調整を容易にすることが可能なガイドワイヤおよび、アテレクトミーシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】ガイドワイヤであって、コアシャフトと、コアシャフトの先端側に配置され、内側にコアシャフトが配置される貫通孔と、コアシャフトの後端側からコアシャフトに沿って移動する外部デバイスの先端部と係合する係合部と、を有する係合体であって、コアシャフトの軸方向に沿って移動可能な係合体と、係合体と接触し、係合体がコアシャフト上の特定位置から移動したときに、係合体に対して、特定位置に向かう方向の力を付与する力付与部材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、
コアシャフトと、
前記コアシャフトの先端側に配置され、内側に前記コアシャフトが配置される貫通孔と、前記コアシャフトの後端側から前記コアシャフトに沿って移動する外部デバイスの先端部と係合する係合部と、を有する係合体であって、前記コアシャフトの軸方向に沿って移動可能な係合体と、
前記係合体と接触し、前記係合体が前記コアシャフト上の特定位置から移動したときに、前記係合体に対して、前記特定位置に向かう方向の力を付与する力付与部材と、を備える、ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記貫通孔の内径は、前記コアシャフトの最大外径よりも小さい、ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記係合体の後端の外径は、前記コアシャフトの最大外径よりも小さい、ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記係合部は、前記コアシャフトよりも硬い、ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記係合部は、先端側から後端側に向かうにつれて外径の減少度が大きくなる、ガイドワイヤ。
【請求項6】
アテレクトミーシステムであって、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のガイドワイヤと、
前記コアシャフトの後端側から前記コアシャフトに沿って移動し、先端部が前記係合体と係合するアテレクトミーデバイスと、を備える、アテレクトミーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤ、および、アテレクトミーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
血管や消化器官などを治療するために用いられる医療機器としてガイドワイヤが知られている。特許文献1には、ガイドワイヤに先端側ストップが設けられ、併用される医療機器が先端側ストップを超えて先端側に移動することを妨ぐ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガイドワイヤには、ガイドワイヤに沿って体内に挿入される医療機器の体内での位置調整を容易にするという点で改善の余地があった。この課題は、ガイドワイヤと、医療機器としてのアテレクトミーデバイスと、を備えるアテレクトミーシステムについても適用される。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ガイドワイヤに沿って体内に挿入される医療機器の体内での位置調整を容易にすることが可能なガイドワイヤおよび、アテレクトミーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態は、ガイドワイヤであって、コアシャフトと、コアシャフトの先端側に配置され、内側にコアシャフトが配置される貫通孔と、コアシャフトの後端側からコアシャフトに沿って移動する外部デバイスの先端部と係合する係合部と、を有する係合体であって、コアシャフトの軸方向に沿って移動可能な係合体と、係合体と接触し、係合体がコアシャフト上の特定位置から移動したときに、係合体に対して、特定位置に向かう方向の力を付与する力付与部材と、を備える。
【0008】
この構成によれば、ガイドワイヤは外部デバイスと係合する係合体を有している。係合体がコアシャフトの軸方向に沿って移動可能であることにより、外部デバイスの移動を制御しながらも外部デバイスの位置調整をより容易に行うことができる。また、ガイドワイヤは係合体に対して、特定位置に向かう方向の力を付与する力付与部材を有している。係合体が特定位置から移動したときに、力付与部材が係合体を特定位置に戻すように力を加えることで、係合体と係合している外部デバイスの移動を制御できる。
【0009】
(2)上記形態のガイドワイヤにおいて、貫通孔の内径は、コアシャフトの最大外径よりも小さくてもよい。
【0010】
この構成によれば、外部デバイスがコアシャフトの後端側に位置する最大外径部を通ることを考慮すると、コアシャフトの最大外径部より小さい貫通孔の内径は、外部デバイスの内径よりも小さいこととなる。従って、係合体とコアシャフトのクリアランスは外部デバイスとコアシャフトのクリアランスよりも小さくなる。これにより、外部デバイスの稼働により発生する振動を、外部デバイスと係合する係合体により抑制することができる。
【0011】
(3)上記形態のガイドワイヤにおいて、係合体の後端の外径は、コアシャフトの最大外径よりも小さくてもよい。
【0012】
この構成によれば、外部デバイスがコアシャフトの後端側に位置する最大外径部を通ることを考慮すると、コアシャフトの最大外径部より小さい係合体の後端の外径は、外部デバイスの内径よりも小さくなる。これにより、係合体の後端が外部デバイスの内周とコアシャフトの外周の間に入り込み、外部デバイスとコアシャフトの間の隙間を維持することができ、外部デバイスがコアシャフトと接触することによるコアシャフトの摩耗などを低減することができる。
【0013】
(4)上記形態のガイドワイヤにおいて、係合部は、コアシャフトよりも硬くてもよい。
【0014】
この構成によれば、係合部がコアシャフトよりも硬いことで、係合部が外部デバイスとの接触により発生する摩耗などを低減することができる。
【0015】
(5)上記形態のガイドワイヤにおいて、係合部は、先端側から後端側に向かうにつれて外径の減少度が大きくなってもよい。
【0016】
この構成によれば、外部デバイスと接触する係合部は、先端側から後端側に向かうにつれて外径の減少度が大きくなるように形成されている。これにより、外部デバイスと係合部が接触する面積が小さくなり、係合部の摩耗などを低減することができる。
【0017】
(6)本発明の一形態はアテレクトミーシステムとして提供される。このアテレクトミーシステムは、上記形態のガイドワイヤと、コアシャフトの後端側からコアシャフトに沿って移動し、先端部が係合体と係合するアテレクトミーデバイスと、を備えてもよい。
【0018】
この構成によれば、アテレクトミーシステムは、上記形態のガイドワイヤとアテレクトミーデバイスを有している。ガイドワイヤ上で回転、摺動などされるアテレクトミーデバイスが係合体と係合することで、アテレクトミーデバイスが意図せず先端側に進むことを制御し、さらにアテレクトミーデバイスがコアシャフトと接触することにより発生する摩耗なども低減することができる。
【0019】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、医療器具、治療器具、アテレクトミーシステムおよびガイドワイヤの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態のガイドワイヤの全体構成と外部デバイスの一部構成の説明図である。
【
図2】第1実施形態のガイドワイヤと外部デバイスの一部構成の説明図である。
【
図3】第1実施形態のガイドワイヤと外部デバイスの一部構成の縦断面の説明図である。
【
図4】第1実施形態のガイドワイヤと外部デバイスの一部構成の縦断面の説明図である。
【
図5】第1実施形態のガイドワイヤの横断面の説明図である。
【
図6】第1実施形態のガイドワイヤと外部デバイスの一部構成の縦断面の説明図である。
【
図7】第2実施形態のガイドワイヤの外部デバイスの一部構成の縦断面の説明図である。
【
図8】第3実施形態のガイドワイヤの外部デバイスの一部構成の縦断面の説明図である。
【
図9】第4実施形態のガイドワイヤの外部デバイスの一部構成の縦断面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のガイドワイヤ1Aの全体構成と外部デバイス80の一部構成の説明図である。
図2は、ガイドワイヤ1Aと外部デバイス80の一部構成の説明図である。
図3および
図4は、ガイドワイヤ1Aと外部デバイス80の一部構成の縦断面の説明図である。
図5は、
図3のA-A断面図である。
図1~6で示されているガイドワイヤ1Aや外部デバイス80の各構成部材の大きさは例示であり、実際とは異なる尺度で表されている場合がある。以下では、ガイドワイヤ1Aや外部デバイス80の各構成部材の、先端側に位置する端部を「先端」と記載し、「先端」を含み先端から後端側に向かって中途まで延びる部位を「先端部」と記載する。同様に、各構成部材の、後端側に位置する端部を「後端」と記載し、「後端」を含み後端から先端側に向かって中途まで延びる部位を「後端部」と記載する。
【0022】
ガイドワイヤ1Aは、医師等によって血管や消化器官に挿入され、治療や検査に用いられる医療器具であり、コアシャフト10と、コイル20と、先端側接合部30と、後端側接合部40と、係合体50と、先端側コイル60と、後端側コイル70を有する。外部デバイス80は、ガイドワイヤ1Aに沿って体内に挿入される医療機器であり、回転体81と、ドライブシャフト83とを有する。外部デバイス80とは、ガイドワイヤ1Aとは別のデバイスという意味であり、ここでは、外部デバイス80は、血管内に形成される病変を切削して除去するためのアテレクトミーデバイスとして構成されている。また、ここでは、ガイドワイヤ1Aと外部デバイス80とを備えるシステムをアテレクトミーシステムとも呼ぶ。なお、外部デバイス80は、アテレクトミーデバイス以外の医療機器で構成されていてもよい。
【0023】
コアシャフト10は、ガイドワイヤ1Aの長軸方向に延びる長尺の部材である。コアシャフト10は、先端側に設けられた小径部11と、後端側に設けられた大径部12を有する。小径部11の外径は大径部12の外径よりも小さい。大径部12は、コアシャフト10のうちで最も外径が大きい部分である。大径部12はガイドワイヤ1Aの後端部まで延びており、外部デバイス80は最初に大径部12に沿って体内に挿入される。
【0024】
コアシャフト10の材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線などが用いられる。
【0025】
コイル20は、コアシャフト10の先端部の外周を覆う細い素線から形成される部材である。コイル20は、小径部11のうちの先端側の部分であり、最も外径が小さい部分を覆っている。コイル20の先端部は、コアシャフト10の先端に先端側接合部30によって接合されている。コイル20の後端部は、コアシャフト10の先端より後端側の位置に後端側接合部40によって接合されている。
【0026】
コイル20の材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、白金、金、タングステン、またはこれらの合金などが用いられる。
【0027】
先端側接合部30および後端側接合部40の材料は、特に限定されないが、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだや、エポキシ系接着剤などの接着剤などが用いられる。
【0028】
係合体50は、ガイドワイヤ1Aに沿って体内に挿入された外部デバイス80の先端部が係合する筒形状の部材であり、第1貫通孔51と、係合部52とを有している。係合体50は、コアシャフト10上を移動可能に構成されている。後述するように、係合体50は、先端側に先端側コイル60が接続され、後端側に後端側コイル70が接続されている。そのため、少なくとも一方のコイルの伸縮が限界に達するまでの範囲においてコアシャフト10の軸方向に沿って往復移行可能になっている。係合部52は、先端側コイル60と後端側コイル70のそれぞれ受ける力が均衡する位置において停止している。この位置を「初期位置」や「特定位置」とも呼ぶ。係合体50が配置される初期位置は特許請求の範囲の特定位置の一例である。係合体50は略球状であり、外周面の少なくとも先端側と基端側は曲面により形成されている。これにより、係合体50が体内を傷付けることを抑制することができる。係合体50は中心から外周までの距離が全て一様な球体ではなく、卵のように一方向に長い球体である。そのため
図3に記載の縦断面においては、係合体50の外縁は楕円に近い形状をしている。第1貫通孔51は、係合体50の長軸方向に沿って係合体50を貫通するように形成されている。第1貫通孔51は特許請求の範囲に記載の貫通孔の一例である。
【0029】
係合部52は、係合体50の後端部に形成され、係合体50のうち、外部デバイス80の先端部と接触する部分である。係合部52は曲面により形成され、後端側に向かって外径が小さくなる形状である。また、係合部52の外径の減少度は後端側に向かうほど大きくなる。係合部52の外周面は曲面であることから、
図3に示す係合部52の縦断面においては、係合部52の外縁は曲線を形成する。係合部52の外縁が形成する曲線の曲率は、係合体50の先端部の外縁が形成する曲線の曲率よりも大きい。
【0030】
係合体50の材料は、特に限定されないが、例えば、超硬合金等の耐摩耗性に優れる材料からなる。係合部52の材料も特に限定されないが、例えば、超硬合金等の耐摩耗性に優れる材料からなり、係合部52を形成する材料の硬さは、コアシャフト10を形成する材料の硬さよりも大きい。
【0031】
係合体50の先端部は先端側コイル60の後端部に接合されており、後端部は後端側コイル70の先端部に接合されている。
【0032】
先端側コイル60は、コアシャフト10の外周を覆う細い素線により形成されている。先端側コイル60の素線は、長軸方向に隙間を有するように螺旋状に疎に巻かれている。言い換えると、先端側コイル60のピッチは、素線径よりも大きい。先端側コイル60の先端部は後端側接合部40に接合されている。先端側コイル60の後端部は係合体50の先端部に接合されている。
【0033】
後端側コイル70は、コアシャフト10の外周を覆う細い素線により形成されている。後端側コイル70の素線は、長軸方向の隙間が小さくなるように螺旋状に密に巻かれている。言い換えると、後端側コイル70のピッチは、素線径と略同一である。後端側コイル70の先端部は係合体50の後端部に接合されている。後端側コイル70の後端部はコアシャフト10の外周に接合されている。後端側コイル70の外径は外部デバイス80の82の直径Dc1よりも小さい。
【0034】
係合体50が初期位置から先端側に移動すると、先端側コイル60の素線の隙間が縮むことにより、先端側コイル60の長軸方向の長さが小さくなる。先端側コイル60の素線同士が接触すると、係合体50の先端側への移動が制限される。また、先端側コイル60が縮むと同時に後端側コイル70は先端側に向かって伸びる。後端側コイル70に接合されている係合体50は、後端側コイル70が元の長さに戻ろうとすることにより、後端側に引っ張られる。また、係合体50が初期位置から後端側に移動しようとしても、後端側コイル70の素線の隙間は小さく密に巻かれているため、係合体50の後端側への移動が制限される。先端側コイル60と後端側コイル70は特許請求の範囲に記載の力付与部材の一例である。
【0035】
回転体81は外部デバイス80の先端部に設けられ、ドライブシャフト83が接続されている。回転体81はドライブシャフト83から伝えられる回転により回転する。回転体81はコアシャフト10を挿通するための第2貫通孔82を有している。ドライブシャフト83は螺旋状に巻かれた素線により形成されるコイルである。ドライブシャフト83の先端部は回転体81の後端部に接続されている。外部デバイス80の使用時にはドライブシャフト83の後端部は体外まで延びており、医師等が外部デバイス80を操作するためのコントローラーなどに繋がれている。回転体81の先端部の内周面は、係合部52の外周面に沿うような形状である。
【0036】
外部デバイス80がガイドワイヤ1Aに沿って体内に挿入され、ガイドワイヤ1Aの先端側に向かって進められると、回転体81が係合体50に接触する。回転体81は特に係合部52と接触する。外部デバイス80がさらに先端側に進められると、回転体81に押されて係合体50が先端側に移動する。係合体50が先端側に移動すると、先端側コイル60は縮み、反対に後端側コイル70は伸びる。先端側コイル60は元の形状に戻ろうとすることで係合体50を後端側に押し戻そうとする。一方で後端側コイル70は元の形状に戻ろうとすることで係合体50を後端側に引き戻そうとする。これらによって、係合体50を初期位置に維持しようとする力が働く。回転体81が先端側コイル60を押すことで先端側コイル60の素線の隙間が小さくなり、素線同士が接触すると先端側コイル60の縮小は止まる。これにより、係合体50の先端側への移動が制限される。また、血管の壁面などに押されて係合体50を後端側に移動させるような力が加わったとき、後端側コイル70の素線が密であることで、係合体50の後端側への移動は制限される。
【0037】
回転体81は、ドライブシャフト83から伝えられる動力(回転力)により駆動(回転)する。このとき、回転体81は、駆動時(回転時)に、コアシャフト10に沿った方向(前後方向)や、コアシャフト10に直交する方向(左右方向および上下方向)に往復移動する振動が発生する。従来、この振動によって、回転体81はコアシャフト10を摺動し、摩擦によってコアシャフト10が削れて破断するおそれがあった。一方、本実施形態のガイドワイヤ1Aによれば、回転体81の振動は、係合体50を介して先端側コイル60と後端側コイル70に伝達されるため、先端側コイル60と後端側コイル70の復元力によって減衰される。これにより、回転体81との摩擦によってコアシャフト10破断するおそれを低減できる。
【0038】
図6は、第1実施形態のガイドワイヤ1Aと外部デバイス80の一部構成の縦断面の説明図である。
【0039】
第1貫通孔51は、係合体50の長軸方向に沿って係合体50を貫通するように形成されている。第1貫通孔51の直径Db1は長軸方向において略同一である。第1貫通孔51の直径Db1は、小径部11の外径Da1より大きい。第1貫通孔51の直径Db1は、大径部12の外径Da2よりも小さい。外部デバイス80は大径部12に沿ってガイドワイヤ1Aの後端側から挿入されるため、外部デバイス80の第2貫通孔82の直径Dc1は大径部12の外径Da2よりも大きい。これにより、大径部12の外径Da2よりも小さい第1貫通孔51の直径Db1は、第2貫通孔82の直径Dc1よりも小さいこととなる。このため、係合体50とコアシャフト10のクリアランスは、外部デバイス80とコアシャフト10のクリアランスよりも小さくなる。これによって、外部デバイス80は、直接、コアシャフト10の表面に接触し難くなり、摩擦の発生を抑制しつつ、外部デバイス80をコアシャフト10の軸上において安定して押し進めることができる。
【0040】
係合体50の後端の外径Db2は、大径部12の外径Da2よりも小さい。外部デバイス80は大径部12に沿ってガイドワイヤ1Aの後端側から挿入されるため、外部デバイス80の第2貫通孔82の直径Dc1は大径部12の外径Da2よりも大きい。これにより、大径部12の外径Da2よりも小さい係合体50の後端の外径Db2は、第2貫通孔82の直径Dc1よりも小さいこととなる。これにより、外部デバイス80が係合体50と係合するとき、係合体50の後端部の一部は第2貫通孔82に入り込む。これによって、外部デバイス80とコアシャフト10の間の隙間を維持することができ、外部デバイス80がコアシャフト10と接触することによるコアシャフト10の摩耗などを低減することができる。
【0041】
以上、説明した本実施形態のガイドワイヤ1Aによれば、ガイドワイヤ1Aは、コアシャフト10の軸方向に沿って移動可能な係合体50を有している。係合体50がコアシャフト10の軸方向に沿って移動可能であることにより、外部デバイス80の移動を制御しながらも外部デバイス80の位置調整をより容易に行うことができる。例えば、係合体50がガイドワイヤ1Aに固定されている場合は、外部デバイス80が係合体50に係合した状態でさらに軸方向に移動すると、ガイドワイヤ1Aも軸方向に移動してしまう。これによって、ガイドワイヤ1Aが治療部位から外れてしまう可能性がある。これに対して、係合体50がガイドワイヤ1Aに対して相対的に移動可能なことにより、治療時にガイドワイヤ1Aの位置を治療部位に固定した状態で係合部52とともに外部デバイス80を軸方向に移動することができる。つまり、外部デバイス80が係合体50を先端側へ押すことによってガイドワイヤ1A全体が使用者の意図によらずに末端へ移動してしまうということや、外部デバイス80が係合部52を後端側に引っ張ることによってガイドワイヤ1A全体が使用者の意図によらずに後端側へ移動してしまうということが抑制される。これによって、ガイドワイヤ1Aが末端の血管などを傷付けたり、病変部から後端側へ抜けてしまうという可能性を低減することができる。
【0042】
ガイドワイヤ1Aは係合体50に対して、特定位置に向かう方向の力を付与する力付与部材として、先端側コイル60と後端側コイル70を有している。係合体50が特定位置から移動したときに、先端側コイル60と後端側コイル70が係合体50を特定位置に戻すように力を加えることで、係合体50と係合している外部デバイス80の移動を制御できる。先端側コイル60は素線間の隙間が小さくなり素線同士が接触すると係合体50の先端側への移動を制限することができる。これにより、使用者の意図しない外部デバイス80の先端側への移動を制限することができ、外部デバイス80がコイル20に乗り上げてしまうことを抑制できる。後端側コイル70は素線が密に巻かれていることにより、係合体50を後端側に移動させようとする力が加わったとしても、後端側コイル70の縮む量が小さいため係合体50の後端側への移動を制限することができる。例えば、係合体50がガイドワイヤ1A上に固定され、力付与部材を有さない場合は、回転や振動をしながら稼働する回転体81が係合体50に繰り返し接触することで、ガイドワイヤ1Aの位置が治療部位から外れてしまい外部デバイス80の位置調整が困難となる。これに対して、本実施形態のガイドワイヤ1Aは力付与部材を有することにより、回転体81の回転や振動を力付与部材が吸収し、減衰する。これによって、ガイドワイヤ1A全体に伝わる回転体81の稼働による力が低減される。従って、ガイドワイヤ1Aを治療部位に安定して配置することができ、外部デバイス80の位置調整が容易となる。
【0043】
係合体50の第1貫通孔51の直径Db1は、コアシャフト10のうち最も外径が大きい大径部12の外径Da2よりも小さい。これによって、第1貫通孔51の直径Db1は、コアシャフト10の大径部12を通じて挿入される外部デバイス80の第2貫通孔82の直径Dc1よりも小さくなる。従って、係合体50とコアシャフト10のクリアランスは外部デバイス80とコアシャフト10のクリアランスよりも小さくなる。これにより、係合体50に発生する振動などは、コアシャフト10と係合体50の内周が接触することにより抑制される。つまり、コアシャフト10に対して係合体50が径方向に動く幅は比較的小さくなる。このような係合体50と外部デバイス80が係合することにより、コアシャフト10に対して外部デバイス80が径方向に動く幅は小さくなる。これにより、外部デバイス80の稼働により発生する振動などを外部デバイス80と係合する係合体50により抑制することができる。外部デバイス80の振動などを抑制することで、外部デバイス80が安定した経路を走行することができ、手技の安全性や効率が向上する。また、外部デバイス80の振動などによってガイドワイヤ1Aが治療部位から外れてしまうことを抑制することができる。
【0044】
係合体50の後端の外径Db2は、コアシャフト10のうち最も外径が大きい大径部12の外径Da2よりも小さい。これによって、係合体50の後端の外径Db2は、コアシャフト10の大径部12を通じて挿入される外部デバイス80の第2貫通孔82の直径Dc1よりも小さくなる。これにより、係合体50の後端が第2貫通孔82に入り込み、外部デバイス80とコアシャフト10の間の隙間を維持することで、外部デバイス80がコアシャフト10と接触することによるコアシャフト10の摩耗などを低減することができる。これにより、コアシャフト10の破断を抑制することができ、治療の安全性が向上する。また、外部デバイス80の使用中にコアシャフト10の剛性が減少することによるサポート力の低減を抑制することができる。
【0045】
係合部52の硬さは、コアシャフト10の硬さよりも大きい。係合部52がコアシャフト10よりも硬いことで、係合体50が外部デバイス80との接触により発生する摩耗などを低減することができる。これにより、係合体50の摩耗による金属片の発生などを抑制することができる。また、係合部52の形状が変化すると、係合部52と外部デバイス80の摩擦形態が変化し、外部デバイス80の稼働を阻害するような抵抗が発生するおそれがある。係合部52の摩耗が少ないことで、係合部52と外部デバイスの接触による抵抗の発生を抑制することができ、外部デバイス80を安定して稼働させることができる。
【0046】
係合部52は、先端側から後端側に向かうにつれて外径の減少度が大きくなっている。これにより、外部デバイス80と係合部52との接触面積が減少し、係合部52の摩耗などを低減することができる。特に、係合部52の外周面は曲面により形成されており、尚且つ後端側に向かって外径の減少度が大きくなるため、縦断面視において係合部52の後端部の曲線が形成する曲率は、係合部52の先端部の曲線が形成する曲率よりも大きい。これにより、係合部52の外周面と外部デバイス80との接触面積は減少し、係合部52の摩耗などを低減することができる。これにより、係合体50の摩耗による金属片の発生などを抑制することができる。また、係合部52の形状が変化することによって回転体81の稼働を妨げる可能性を低減することができる。また、係合部52と回転体81が係合することによって外部デバイス80の稼働効率が低減することを抑制することができる。
【0047】
アテレクトミーシステムは、ガイドワイヤ1Aと、アテレクトミーデバイスなどの外部デバイス80を含むことができる。アテレクトミーシステムは、ガイドワイヤ1Aを有することにより、アテレクトミーデバイスの位置調整を容易に行うことができる。特に、病変部にガイドワイヤ1Aを挿通し、ガイドワイヤ1Aに沿ってアテレクトミーデバイスを挿入する場合において、ガイドワイヤ1Aの位置を固定した状態でも係合部52と係合するアテレクトミーデバイスを軸方向に移動することができる。さらに、先端側コイル60や後端側コイル70によって使用者の意図しない外部デバイス80の移動が制限されるため、操作性に優れたアテレクトミーシステムを提供することができる。
【0048】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態のガイドワイヤ1Bと外部デバイス80の一部構成の縦断面の説明図である。
【0049】
第2実施形態のガイドワイヤ1Bは、第1実施形態のガイドワイヤ1Aと比較して、後端側コイル70を有していないという点で異なる。第1実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0050】
ガイドワイヤ1Bは、第1実施形態のガイドワイヤ1Aが有する後端側コイル70に相当する部材を有していない。例えば、先端側コイル60の剛性を高く設定することで、係合体50を初期位置に押し戻そうとする力が強くなり、先端側コイル60のみでも係合体50の移動を制御できる。ガイドワイヤ1Bにおいても、係合体50はコアシャフト10の軸方向に沿って移動可能であり、外部デバイス80の位置調整を容易に行うことができる。また、先端側コイル60が設けられていることにより、使用者が意図せず外部デバイス80が先端側に移動し、コイル20などに乗り上げてしまうことを抑制することができる。また、係合体50が後端側に移動した場合にも、先端側コイル60が係合体50を先端側に引っ張ることにより、係合体50の後端側への移動を制限することができる。
【0051】
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態のガイドワイヤ1Cと外部デバイス80の一部構成の縦断面の説明図である。
【0052】
第3実施形態のガイドワイヤ1Cは、第1実施形態のガイドワイヤ1Aと比較して、先端側コイル60を有していないという点で異なる。第1実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0053】
ガイドワイヤ1Cは、第1実施形態のガイドワイヤ1Aが有する先端側コイル60に相当する部材を有していない。例えば、後端側コイル70の剛性を高く設定することで、係合体50を初期位置に引き戻そうとする力が強くなり、後端側コイル70のみでも係合体50の移動を制御できる。ガイドワイヤ1Cにおいても、係合体50はコアシャフト10の軸方向に沿って移動可能であり、外部デバイス80の位置調整を容易に行うことができる。また、後端側コイル70が設けられていることにより、係合体50を後端側に移動させようとする力が加わったとしても、係合体50の後端側への移動を制限することができる。また、係合体50が先端側に移動した場合にも、後端側コイル70が係合体50を後端側に引っ張ることにより、係合体50の先端側への移動を制限することができる。
【0054】
<第4実施形態>
図9は、第4実施形態のガイドワイヤ1Dと外部デバイス80の一部構成の縦断面の説明図である。
【0055】
第4実施形態のガイドワイヤ1Dは、第1実施形態のガイドワイヤ1Aと比較して、先端側弾性部材61と後端側弾性部材71を有するという点で異なる。第1実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0056】
ガイドワイヤ1Dは、先端側弾性部材61および後端側弾性部材71を有する。先端側弾性部材61および後端側弾性部材71は、ガイドワイヤ1Dの長軸方向に伸縮する弾性の樹脂材料である。先端側弾性部材61の先端部は後端側接合部40に接合され、後端部は係合体50の先端部に接合されている。後端側弾性部材71の先端部は係合体50の後端部に接合され、後端部はコアシャフト10の外周に接合されている。ガイドワイヤ1Dにおいても、係合体50はコアシャフト10の軸方向に沿って移動可能であり、外部デバイス80の位置調整を容易に行うことができる。
【0057】
各実施形態は以下に示す例を含む変形が可能である。
【0058】
<変形例1>
各実施形態に含まれるコイル(コイル20、先端側コイル60、後端側コイル70、ドライブシャフト83)を構成する素線は、単線でもよく、撚線であってもよい。また、コイル20の代わりに、コアシャフト10を覆う第1コイルと、さらに第1コイルを覆う第2コイルを設けてもよい。また、コイル20に限らず金属や樹脂のチューブによりコアシャフト10の先端部を覆うことができる。また、コイル20を設けなくてもよい。
【0059】
<変形例2>
先端側コイル60は、後端接合部40によりコアシャフト10に接合されなくてもよい。後端接合部とは別の接合部によってコアシャフト10に接合されてもよい。
【0060】
<変形例3>
後端側コイル70は素線の間に隙間を有するように疎に巻かれていてもよい。後端側コイル70が疎に巻かれている場合でも、例えば、後端側コイル70の剛性を高く設定することで後端側コイル70が縮む量を小さくすることができ、係合体50が後端側へ移動することを制限することができる。
【0061】
<変形例4>
係合体50の形状は球状でなくてもよい、例えば、係合体50は外径が長軸方向に沿って略一定な円柱状であってもよい。また、係合体50の第1貫通孔51の直径Db1は、長軸方向において略一定でなくてもよい。
【0062】
<変形例5>
各実施形態に含まれる係合体50と外部デバイス80とは、単に互いが接触する構成としてもよく、互いが係合する構成としてもよい。係合する場合は、例えば、係合体50に設けられた窪みと外部デバイス80の先端部に設けられた凸部とが嵌め合うような構成でもよい。
【符号の説明】
【0063】
1A、1B、1C、1D…ガイドワイヤ
10…コアシャフト
11…小径部
12…大径部
20…コイル
30…先端側接合部
40…後端側接合部
50…係合体
51…第1貫通孔
52…係合部
60…先端側コイル
61…先端側弾性部材
70…後端側コイル
71…後端側弾性部材
80…外部デバイス
81…回転体
82…第2貫通孔
83…ドライブシャフト
Da1…小径部の外径
Da2…大径部の外径
Db1…第1貫通孔の直径
Db2…係合体の後端の外径
Dc1…第2貫通孔の直径