(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059512
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】漏洩箇所補修装置及び漏洩箇所補修方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/18 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
F16L55/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167225
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】星野 洋一郎
(57)【要約】
【課題】密封状態を維持したまま漏洩箇所の補修を確実に行うことができる漏洩箇所補修装置及び漏洩箇所補修方法を提供すること。
【解決手段】既設の流体管2に連通し、接続部材としての補修弁11が接続された連結用のフランジ部3aを備えた連通管3及びその近傍における漏洩箇所を補修する漏洩箇所補修装置1であって、流体管2における連通管3側の外面を覆う基部61Aと、該基部61Aに一端が接続され連通管3を囲繞する筒状部61Bと、基部61A及び筒状部61Bを連通管3の管軸方向に沿って流体管2側に押圧する押圧手段としてのU字ボルト62a及びナット62bと、を有する補修体60と、フランジ部3aに接続されるフランジ部材50と、補修体60の筒状部61Bとフランジ部材50との間に介在し、両者を密封状態で相対移動可能とするシール部材としてのOリング52と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設流体管に連通し、接続部材が接続された連結用フランジ部を備えた連通管及びその近傍における漏洩箇所を補修する漏洩箇所補修装置であって、
前記既設流体管における前記連通管側の外面を覆う基部と、該基部に一端が接続され前記連通管を囲繞する筒状部と、前記基部及び前記筒状部を前記連通管の管軸方向に沿って前記既設流体管側に押圧する押圧手段と、を有する補修体と、
前記連結用フランジ部に接続されるフランジ部と、
前記補修体の筒状部と前記フランジ部との間に介在し、両者を密封状態で相対移動可能とするシール部材と、
を備えることを特徴とする漏洩箇所補修装置。
【請求項2】
前記フランジ部の外周面に前記シール部材が取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の漏洩箇所補修装置。
【請求項3】
前記フランジ部は、接続部材のフランジ部と前記連結用フランジ部との間に配置され前記シール部材が取付けられた環状部材を含むことを特徴とする請求項2に記載の漏洩箇所補修装置。
【請求項4】
前記筒状部には排出孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の漏洩箇所補修装置。
【請求項5】
前記押圧手段は、U字ボルトを含むことを特徴とする請求項1に記載の漏洩箇所補修装置。
【請求項6】
前記フランジ部の前記筒状部からの逸脱を防止する逸脱防止手段を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の漏洩箇所補修装置。
【請求項7】
既設流体管に連通し、接続部材が接続された連結用フランジ部を備えた連通管及びその近傍における漏洩箇所を不断流状態で補修する漏洩箇所補修方法であって、
前記連結用フランジ部に、シール部材を備えたフランジ部を接続する工程と、
前記フランジ部に補修体を挿入し、該補修体及び前記フランジ部により前記連通管を囲繞する工程と、
押圧手段によって、前記補修体を前記連通管の管軸方向に沿って前記既設流体管側に押圧して、前記連通管を前記補修体及び前記フランジ部により密封状態で覆う工程と、
を有することを特徴とする漏洩箇所補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設流体管に連通する連通管の連結用フランジ部に接続された接続部材の近傍における漏洩箇所を補修する漏洩箇所補修装置及び漏洩箇所補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設流体管に一端が連通する連通管の他端に補修弁や空気弁等の接続部材が接続される配管構造がある。このような配管構造では、長期の使用による錆や経年劣化等の発生により、既設流体管と連通管との接続部にて流体の漏洩が発生することがある。
【0003】
このように、既設流体管と連通管との接続部における流体の漏洩を防止するために連通管を補修する連通管補修装置として、例えば、連通管の連結用フランジ部の外周面と対向する貫通孔を有する天井壁形成板部と、連通管の外周面を覆う周壁形成板部と、をからなる分岐密閉部材を備え、この分岐密閉部材を既設流体管の外周面に沿って溶接するとともに、天井形成板部の貫通孔と分岐管のフランジ部の外周面とを溶接し、分岐密閉部材の内部にモルタルを充填することにより補修するものがある(例えば、特許文献1の第3実施形態参照)。
【0004】
また、既設流体管の外周面と対向する分割継手体と、該分割継手体に連結され連通管の外周面を覆う連通筒部と、を備え、この分割継手体及び連通筒部を既設流体管及び連通管の外周側に連結した後、既設流体管の外周面と分割継手体との間及び連通管の外周面と連通筒部との間にモルタルを充填することにより補修するものがある(例えば、特許文献1の第4実施形態参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-24729号(第11~15頁、第12~23図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の漏洩箇所補修装置にあっては、分岐密閉部材または連通筒部の内部にモルタルを充填することにより連通管を補修しており、モルタルが完全に固化するまで連通管の補修が完了せず、補修コストや補修期間を要するばかりか、第4実施形態では、連通筒部の内部でモルタルが完全に固化してしまうと、既設流体管に対する連通筒部の位置が固定化されるため、分割継手体と連通筒部とをボルト・ナットにより緊締することが難しくなり、良好な密封状態を維持することができない虞があるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、密封状態を維持したまま漏洩箇所の補修を確実に行うことができる漏洩箇所補修装置及び漏洩箇所補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の漏洩箇所補修装置は、
既設流体管に連通し、接続部材が接続された連結用フランジ部を備えた連通管及びその近傍における漏洩箇所を補修する漏洩箇所補修装置であって、
前記既設流体管における前記連通管側の外面を覆う基部と、該基部に一端が接続され前記連通管を囲繞する筒状部と、前記基部及び前記筒状部を前記連通管の管軸方向に沿って前記既設流体管側に押圧する押圧手段と、を有する補修体と、
前記連結用フランジ部に接続されるフランジ部と、
前記補修体の筒状部と前記フランジ部との間に介在し、両者を密封状態で相対移動可能とするシール部材と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、密封状態を維持したまま漏洩箇所の補修を確実に行うことができる。
【0009】
前記フランジ部の外周面に前記シール部材が取付けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、フランジ部に対し筒状部が相対移動しても密封状態が維持される。
【0010】
前記フランジ部は、接続部材のフランジ部と前記連結用フランジ部との間に配置され前記シール部材が取付けられた環状部材を含むことを特徴としている。
この特徴によれば、接続部材のフランジ部と連結用フランジ部とは別個に、筒状部に対応するフランジ部を設けることができるため、筒状部とフランジ部との密封性を高めることができる。
【0011】
前記筒状部には排出孔が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、筒状部内の空気抜きができるとともに、筒状部内に漏洩する流体を外部に排出することができる。
【0012】
前記押圧手段は、U字ボルトを含むことを特徴としている。
この特徴によれば、筒状部を既設流体管側に向けて効率よく押圧することができる。
【0013】
前記フランジ部の前記筒状部からの逸脱を防止する逸脱防止手段を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、腐食等が進行することで既設流体管から連通管が離脱されたときに、管内の流体圧により筒状部から逸脱してしまうことを防止できる。
【0014】
本発明の漏洩箇所補修方法は、
既設流体管に連通し、接続部材が接続された連結用フランジ部を備えた連通管及びその近傍における漏洩箇所を不断流状態で補修する漏洩箇所補修方法であって、
前記連結用フランジ部に、シール部材を備えたフランジ部を接続する工程と、
前記フランジ部に補修体を挿入し、該補修体及び前記フランジ部により前記連通管を囲繞する工程と、
押圧手段によって、前記補修体を前記連通管の管軸方向に沿って前記既設流体管側に押圧して、前記連通管を前記補修体及び前記フランジ部により密封状態で覆う工程と、
を有することを特徴としている。
この特徴によれば、密封状態を維持したまま漏洩箇所の補修を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】流体管に連通する連通管に補修弁及び空気弁が接続されている状態を一部破断して示す側面図である。
【
図2】連通管を閉塞装置の閉塞部材にて止水した状態で補修弁を取外す状態を一部破断して示す拡大図である。
【
図3】連通管を閉塞装置の閉塞部材にて止水した状態でボールバルブを取付ける状態を一部破断して示す拡大図である。
【
図4】閉塞装置の閉塞部材を引き上げてボールバルブを閉塞した状態を一部破断して示す拡大図である。
【
図5】(a)はボールバルブから閉塞装置を取外した状態を一部破断して示す拡大図、(b)はフランジ部材を示す平面図、(c)は(b)のA-A断面図である。
【
図7】漏洩箇所補修装置を流体管及び連通管に装着する状態を一部破断して示す拡大図である。
【
図8】被覆部材を押圧手段により流体管に押圧した状態を一部破断して示す側面図である。
【
図9】被覆部材を押圧手段により流体管に押圧した状態を一部破断して示す正面図である。
【
図10】被覆部材を押圧手段により流体管に押圧した状態を一部破断して示す平面図である。
【
図11】連通管を閉塞装置の閉塞部材にて止水した状態でボールバルブを取外す状態を一部破断して示す正面図である。
【
図12】連通管を閉塞装置の閉塞部材にて止水した状態で補修弁を取付ける状態を一部破断して示す正面図である。
【
図13】閉塞装置の閉塞部材を引き上げて補修弁を閉塞した状態を一部破断して示す正面図である。
【
図14】補修弁から閉塞装置を取外した状態を一部破断して示す正面図である。
【
図15】被覆部材に補強リングを装着した状態を一部破断して示す側面図である。
【
図16】被覆部材に補強リングを装着した状態をフランジ部材の上方から視た状態を示す平面図である。
【
図17】(a)~(e)は補強リングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る漏洩箇所補修装置及び漏洩箇所補修方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0017】
本実施例では、既設流体管としての流体管2に一端が連通する連通管3の他端に接続部材が接続される配管構造において、流体管2と連通管3との接続部や連通管3の近傍にて生じた漏洩箇所を、不断流状態で補修する漏洩箇所補修装置1及び漏洩箇所補修方法について、
図1~
図17に基づいて説明する。尚、以下の説明において、
図1における流体管2の管軸方向を左右方向、連通管3の管軸方向を上下方向とし、
図1の右側を正面、左側を背面として説明する。
【0018】
図1に示されるように、上水輸送管として既設の流路を構成している流体管2の管内の空気を管外に排出するために、あるいは管内が負圧にならないようにするために、流体管2の所定箇所に、本発明における接続部材としての小型の空気弁10が設けられている。
【0019】
尚、流体管内の流体は、本実施例では上水であるが、これに限らず、例えば、工業用水、農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。また、本発明に係る流体管2は、鋼製であって、断面視略円筒状に形成されている。尚、本発明に係る流体管は、ダクタイル鋳鉄製であって、内周面がエポキシ樹脂層で被覆されていてもよく、その他鋳鉄、ステンレス等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層に限らず、例えば、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0020】
詳しくは、流体管2の所定箇所には、上下方向に延びる連通管3の下端が連通しており、溶接により密封状態で接続固定されている。
【0021】
また、連通管3の上端には、フランジ部3aが外径方向に突出形成されている。連通管3の上方には補修弁11がフランジ接続により固定され、補修弁11の上方には空気弁10がフランジ接続により固定されている。このように、連通管3に接続固定された補修弁11及び空気弁10は、連通管3に接続される本発明の接続部材を構成している。
【0022】
尚、これら連通管3、補修弁11及び空気弁10は、鋳鉄、鋼等の金属材にて構成されているが、ステンレス等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、各部材の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により各部材の内周面に被覆してもよい。
【0023】
補修弁11の上下部には、外径方向に突出するフランジ部11a,11bが突設されている。また、空気弁10の下部には、外径方向に突出するフランジ部10aが突設されている。連通管3のフランジ部3aと補修弁11のフランジ部11aとの間にはガスケット13が介設されており、これらフランジ部3a,11aをボルト・ナット5で締結することで、連通管3と補修弁11とは密封状態で接続される。また、補修弁11のフランジ部11bと空気弁10のフランジ部10aとの間にはガスケット14が介設されており、これらフランジ部11b,10aをボルト・ナット6で締結することで、補修弁11と空気弁10とは密封状態で接続される。このように空気弁10は、連通管3の上方に接続された補修弁11を介して連通管3に接続されており、補修弁11の内部を介して連通管3に連通している。
【0024】
次に、流体管2と連通管3の基端部との溶接部D(
図1の拡大図参照)や連通管3の周面などにおいて主に発生する漏洩箇所を補修するための補修装置及び補修方法について説明する。
【0025】
(補修弁の交換工程)
まず、本実施例の既設の補修弁11は、その外径が比較的大径に形成されており、以下に説明する筒状部61B(
図6参照)を挿通させることができないため、当該補修弁11に替えて、より小径の作業用のボールバルブ41に交換する。また、特に図示しないが、補修弁11が接続されていない場合、または、補修弁11以外が接続されている場合でも、ボールバルブ41に交換する工程を行う。
【0026】
ボールバルブ41に交換するにあたり、まず空気弁10の取外しを行う。取外すには、補修弁11の操作レバー11cを操作して該補修弁11を閉塞状態とした後、空気弁10を除去する。
【0027】
尚、補修弁11が錆や経年劣化等の何らかの要因により開放状態から閉塞状態に操作できない状態である場合には、例えば、一対のフランジ部3a,11aの対向面間に進退開閉可能な弁体を有する弁装置(図示略)を取付けて連通管3を閉塞状態とし、空気弁10及び補修弁11を取外し、補修弁11に替えてボールバルブ41を取付ければよい。
【0028】
次いで、
図2に示されるように、連通管3のフランジ部3aよりも下方位置にベース部材20を配設する。ベース部材20は、特に詳細な図示はしないが2分割されており、平面視略L字形の前後のベース板20a,20bをボルト・ナット20cにより連結することで、連通管3を囲むように平面視略四角枠状に形成される。そして、中央に形成された開口の周縁前後に溶接にて固定された複数の係止片20dを連通管3のフランジ部3aの下面に係止するとともに、連通管3の左右を挟む位置にて流体管2の上面に配置されたジャッキ21,21(一方のジャッキ21は図示せず)によりベース板20a,20bの下面左右側を支持して、略水平に配置する。また、ベース板20a,20bの上面前後側にロングボルト24,24を立設する。
【0029】
次いで、補修弁11の上端部に、閉塞装置25を密封状態で接続する。閉塞装置25は、補修弁11に水密に取付けられる収容ケース26と、収容ケース26の内部に収容され、連通管3内を閉塞可能な閉塞部材27と、閉塞部材27の上端部に一体に接続されて収容ケース26の上面から突出し、収容ケース26に対し水密に上下動可能に設けられた挿入部材28と、から主に構成されている。
【0030】
収容ケース26は、下端部に外径方向に突出するフランジ部26aを有し、該フランジ部26aと補修弁11のフランジ部11bとは、複数のボルト・ナット30によって緊締されることにより図示しないガスケットを介して密封状態で連結固定されている。また、収容ケース26の内部には閉塞部材27が収容されており、収容ケース26の上面には、挿入部材28を水密に挿通する挿通孔26bが形成されている。
【0031】
また、収容ケース26の上部には、収容ケース26内部と開閉可能に連通する排水バルブ26d,26eが設けられている。このうち排水バルブ26dは、排水バルブ26eよりも上方に設けられている。また、排水バルブ26eは、排水バルブ26dよりも大径に形成されており、後述する閉塞部材27の挿入の際に収容ケース26内部に水を充満したり、閉塞部材27の挿入後に開放することで止水状態の確認ができるようになっている。尚、止水状態の確認は排水バルブ26dで行ってもよい。
【0032】
挿入部材28は、内空の円筒形状に形成された外筒部28aと、外筒部28a内で回動可能に挿通された内杆部28bと、から主として構成され、外筒部28aの外周面がパッキン26cを介して収容ケース26の挿通孔26bに上下方向に摺動可能に挿通されている。内杆部28bの下端部には閉塞部材27が一体に接続されるとともに、内杆部28bの上端部には、後述する止水ゴム27aを径方向に伸縮可能とする送りネジ28cが設けられている。
【0033】
また、外筒部28aの上端部には、前後方向を向く移動アーム31が取付けられている。この移動アーム31の水平方向の両端部には、ロングボルト24,24を収容可能な凹溝31a,31aが、一方は左側面、他方は右側面に形成されている。
【0034】
このように構成された閉塞装置25を補修弁11の上端部に接続した後、連通管3内を閉塞するには、まず、排水バルブ26dを開放した後、操作レバー11cを操作して補修弁11を開放状態とし、収容ケース26内まで流体を充満させる。排水バルブ26dから流体が排出されたことを確認した後、排水バルブ26dを閉塞する。次いで、移動アーム31の凹溝31a,31aにロングボルト24,24を挿入し、これら凹溝31a,31aにロングボルト24,24を収容した状態で移動アーム31を下降させることで、挿入部材28がロングボルト24,24に沿って連通管3に向けて下降し、閉塞部材27が補修弁11の内部通路を通過して連通管3の内部通路に進入する(
図2参照)。
【0035】
尚、収容ケース26内へ流体を充満させる方法として、排水バルブ26d及び排水バルブ26eを開放した状態で、排水バルブ26eから手動ポンプ等で水を流し込み、排水バルブ26dから空気抜きを行い、空気抜き完了後、排水バルブ26d及び排水バルブ26eを閉塞してから補修弁11を開放してもよい。また、移動アーム31とロングボルト24の取付工程は、収容ケース26内への流体の充満よりも先に行ってもよい。
【0036】
図2に示されるように、挿入部材28をロングボルト24,24に沿って連通管3に向けて所定距離押し込み、閉塞部材27が連通管3の内部通路上部に配置された後、移動アーム31の水平方向の両端部をロングボルト24,24に螺入されているナット32,32によって上下方向から挟圧することで、連通管3の内部通路に配置された挿入部材28の位置を固定する。
【0037】
次いで、送りネジ28cを図示しないラチェット等で回転操作し、内杆部28bの下端部に接続された閉塞部材27の止水ゴム27aを径方向に伸張させて、連通管3の内周面に周方向に亘って密着させ、連通管3の内部を閉塞する。この閉塞部材27による連通管3の内部の閉塞は、排水バルブ26eからの流体の排出が停止することで確認することができる。尚、流体の排出停止の確認は、排水バルブ26dからでもよい。
【0038】
次いで、ボルト・ナット5を取外し、連通管3のフランジ部3aから補修弁11のフランジ部11aを取外すことで、補修弁11及び収容ケース26を上方に若干引き上げ、2分割構造の抜け止め金具35(
図3参照)を、閉塞部材27と外筒部28aとの間に挟むように、各ロングボルト24,24に螺入されているボルト36,36によって上下方向から挟圧することで取付ける。この抜け止め金具35の内径部が閉塞部材27の上端に上下方向に係合することにより、閉塞部材27が流体管2内の流体圧により連通管3の内部通路から上方に抜け出すことが防止される。そして、抜け止め金具35により閉塞部材27の連通管3からの逸脱を防止した状態で、ナット32,32を回転により離間させて移動アーム31を取外して、補修弁11及び収容ケース26を引き上げて取外す。
【0039】
次いで、取外した収容ケース26の下端から補修弁11を取外し、補修弁11に替えて
図3に示されるように、作業用のボールバルブ41を取付けるとともに、該ボールバルブ41の下方にフランジ部材50を取付ける。
【0040】
詳しくは、ボールバルブ41の下端には管状のニップル継手42aが螺入されており、ニップル継手42aの下端にはフランジ部43aが螺入されている。また、ボールバルブ41の上端には管状のニップル継手42bが螺入されており、ニップル継手42bの上端にはフランジ部43bが螺入されている。尚、本実施例では、ボールバルブ41の上下にニップル継手42a,42bを介してフランジ部43a,43bが取付けられているが、ボールバルブ41の上下に一体にフランジ部が形成されていてもよい。
【0041】
そして、収容ケース26の下部のフランジ部26aとボールバルブ41の上部のフランジ部43bとをボルト・ナット44によって緊締することにより、収容ケース26とボールバルブ41とが、フランジ部26aの下面に取付けられたガスケットとしてのOリング45を介して密封状態で連結固定される。また、ボールバルブ41の下部のフランジ部43aと後述するフランジ部材50とを、ボルト51aとナット51bによって緊締することにより、ボールバルブ41とフランジ部材50とが、フランジ部43aの下面に取付けられたOリング46を介して密封状態で連結固定される。
【0042】
フランジ部材50は、
図5(b),(c)に示されるように、所定の板厚寸法を有し、中央に連通孔50aが形成された円環状部材にて構成され、予め後述する被覆部材61の筒状部61Bに対応した外径寸法にて形成されている。フランジ部材50の外周面に形成された凹溝50bには、パッキンとしてのOリング52が嵌合されており、下面に形成された凹溝50cには、ガスケットとしてのOリング47が嵌合されている。また、連通孔50aの周囲には、ボルト51aの取付孔53が形成されているとともに、取付孔53の下部には拡径部53aが形成されている。
【0043】
図5(c)に示されるように、ボルト51aは、フランジ部材50の板厚寸法よりも長寸とされ、外周面の上下部には、雄ネジ部51d,51dが形成されている。また、下部の雄ネジ部51dの上方には、環状の突条51eが外径方向に向けて突設されている。このように構成されたボルト51aは、フランジ部材50の取付孔53に下方から挿入され、拡径部53a内に挿入された突条51eが拡径部53aの上部に形成された段部に係止されることで上方への移動が規制される。また、上方への移動が規制された状態で、フランジ部材50の上方及び下方に雄ネジ部51d,51dが位置する。
【0044】
図3に戻って、挿入部材28の外筒部28aに、補修弁11よりも外径寸法が小径の作業用のボールバルブ41及びこのボールバルブ41に接続された収容ケース26を挿通して吊り下げ、ロングボルト24,24に移動アーム31を取付け、閉塞部材27が抜け出ないように移動アーム31により支持した状態で、抜け止め金具35を外す。
【0045】
(フランジ部の接続工程)
次に、連通管3のフランジ部3aにフランジ部材50を接続するフランジ部の接続工程について、
図4に基づいて説明する。
【0046】
図4に示されるように、抜け止め金具35を取外したら、ボールバルブ41及び収容ケース26を下降させて、フランジ部材50が連通管3のフランジ部3aの上面に当接したら、フランジ部3aの下端に延出されたボルト51aの下部にナット51cを取付けて緊締することにより、フランジ部材50と連通管3のフランジ部3aとが、フランジ部材50の下面に取付けられたOリング47を介して密封状態で連結固定(接続)される。
【0047】
このように、上方のボールバルブ41のフランジ部43aと、下方の連通管3のフランジ部3aとの間にフランジ部材50が配置された状態で、1つのボルト51a及びナット51b,51cにより緊締することで、フランジ部43aとフランジ部材50とフランジ部3aとが密封状態で一体化され、ボールバルブ41と連通管3とが連通する。そして、収容ケース26及びボールバルブ41内に流体を充満させた状態で、送りネジ28cを操作して止水ゴム27aを縮小させ、閉塞部材27を収容ケース26の内部まで引き上げたら、ボールバルブ41を閉塞状態にする(
図4参照)。
【0048】
次いで、
図5に示されるように、ボールバルブ41から閉塞装置25を取外す。また、ベース部材20からロングボルト24,24を取外し、ジャッキ21を下降させてベース部材20を連通管3から取外す。
【0049】
ここで、ボールバルブ41のフランジ部43aと連通管3のフランジ部3aとの間に配置されたフランジ部材50の外径寸法L1は、連通管3のフランジ部3aの外径寸法L2よりも僅かに大径とされ(L1>L2)、ボールバルブ41のフランジ部43aの外径寸法L3aよりも大径とされ(L1>L3a)、ボールバルブ41のフランジ部43bの外径寸法L3bよりも大径とされている(L1>L3b)。また、ボールバルブ41のボール弁体41cの弁軸41dが側方に突出しているが、弁軸41dの先端はフランジ部材50の周縁よりも内径側に位置している。
【0050】
つまり、
図1に示されるように、連通管3の上方に補修弁11が固定されていた既設状態では、補修弁11の操作レバー11cなどが連通管3のフランジ部3aよりも外径側に位置していたが、
図5に示されるように、補修弁11をボールバルブ41に交換した状態では、フランジ部材50よりも外径側に位置する部分はなく、外径が短寸となりコンパクト化されている。
【0051】
(連通管の囲繞工程)
次に、連通管3をフランジ部材50及び補修体60により囲繞する工程について、
図6~
図10に基づいて説明する。
【0052】
図7に示されるように、上記囲繞工程に用いる補修体60は、流体管2の上面及び連通管3を被覆するように取付けられる鋼製の被覆部材61と、被覆部材61を連通管3の管軸方向に沿って流体管2側に押圧する押圧手段としてのステンレス製のU字ボルト62a及びナット62bと、から主に構成される。
【0053】
被覆部材61は、
図6(a)~(d)に示されるように、流体管2における連通管3側の外面、つまり、上面の一部を覆う基部61Aと、該基部61Aに下端が溶接により接続され連通管3の周面を囲繞する円筒状の筒状部61Bと、から主に構成されている。基部61Aは、流体管2の上面に沿うように形成された下面が配置される湾曲板63と、湾曲板63の上面における連通管3との接続部から前後方向に向けて各々延設される支持板64,64と、支持板64,64の上下に配置され、該支持板64,64と流体管2及び連通管3とを連結する複数のリブ65と、からなる。支持板64,64には、U字ボルト62aを挿通可能な挿通孔66が、流体管2の管軸方向(左右方向)に向けて所定間隔おきに複数(例えば、3個)形成されている。
【0054】
湾曲板63の上部に形成された貫通孔63a内には、筒状部61Bの下端が挿入されて溶接により固定されている。また、湾曲板63の下面における貫通孔63aの周囲には、流体管2の外面との間を密封するためのシール部材としてのOリング70が貫通孔63aを囲むように環状に配設されている。Oリング70は、該Oリング70の外側に環状に固定された取付片71の内側に沿うように取付けられている。
【0055】
筒状部61Bは、円筒形部材からなり、内径寸法L10は、フランジ部材50の外径寸法L1よりも大寸とされている(L10>L1)。また、筒状部61Bの上部には、内径寸法L10よりも短寸の内径寸法L10aを有する縮径部75が形成されており(L10a<L10)、この縮径部75の内径寸法L10aも、フランジ部材50の外径寸法L1よりも大寸とされている(L10a>L1)。
【0056】
筒状部61Bの縮径部75の下方近傍位置には、筒状部61B内部と開閉可能に連通する排水バルブ76d及び排水プラグ76eが前後に設けられている。また、筒状部61Bの外周面における排水バルブ76d及び排水プラグ76eの下方近傍位置には、外径方向に向けて円弧状のフランジ部77,77が突設されている。
【0057】
このように構成された被覆部材61は、
図7に示されるように、連通管3の上端に接続されたボールバルブ41の上方に、基部61Aを下方に向けた状態で配置し、筒状部61B内にボールバルブ41及び上下のフランジ部43a,43bが挿入されるように下降させていく。筒状部61Bの内径寸法L10,L10aは、フランジ部材50の外径寸法L1よりも大寸とされているため、筒状部61Bは、ボールバルブ41やその上下のフランジ部43a,43bに接触することなくその外径側を下降していく。
【0058】
また、フランジ部材50が連通管3の上面に同心に接続されていることで、フランジ部材50に筒状部61Bを挿通させるだけで、筒状部61Bが連通管3と同心をなすように容易に配置することができる。
【0059】
そして、筒状部61Bの下端がボールバルブ41の下方のフランジ部43aを通過してフランジ部材50に差し掛かると、筒状部61Bの内周面がフランジ部材50のOリング52に摺接する。また、筒状部61Bの内径寸法L10,L10aは、連通管3のフランジ部3aの外径寸法L2よりも大寸とされているため、筒状部61Bは、連通管3やフランジ部3aに接触することなくその外径側を下降していく。
【0060】
その後、基部61Aにおける湾曲板63の下面に配設されたOリング70が流体管2の外周面に当接すると、縮径部75にフランジ部材50が配置され、縮径部75の内周面によりOリング52がより強く押圧され、筒状部61Bの内周面とフランジ部材50の外周面との間がOリング52により密封される(
図8参照)。次いで、U字ボルト62aの両端を流体管2の前後に配置して、U字ボルト62aを流体管2の下方から上方に向けて上昇させ、前後の支持板64,64の挿通孔66,66各々に両端を挿入する。
【0061】
そして、
図8~
図10に示されるように、挿通孔66,66の上方に突出した雄ネジ部62c,62cにナット62b,62bを螺入して、U字ボルト62a及びナット62b,62bにより、被覆部材61を流体管2に取付ける。このように、被覆部材61及びU字ボルト62a・ナット62bを有する補修体60と、連通管3のフランジ部3aに接続されるフランジ部材50と、補修体60の筒状部61Bとフランジ部材50との間に介在し、両者を密封状態で相対移動可能とするシール部材としてのOリング52と、により、流体管2に連通する連通管3のフランジ部3aに接続されたボールバルブ41の近傍における漏洩箇所を補修する漏洩箇所補修装置1が構成される。
【0062】
被覆部材61が流体管2に取付けられた状態において、基部61Aの湾曲板63により流体管2の外周面における連通管3の周囲が覆われる。また、筒状部61Bにより連通管3の周面が囲繞されるとともに、筒状部61Bの上面開口がフランジ部材50により閉塞されることで、溶接部Dを含む連通管3及び流体管2の外周面の一部が筒状部61B及びフランジ部材50により囲繞される。
【0063】
また、筒状部61Bは、連通管3のフランジ部3aの上方に接続されたフランジ部材50の外周面を囲むように配置されることで、フランジ部材50に対し連通管3の管軸方向である上下方向に相対移動可能に設けられる。言い換えると、フランジ部材50は、筒状部61Bの内部に上下方向に相対移動可能に挿入されている。そして、フランジ部材50の外周面と筒状部61Bの内周面との間にはOリング52が介在していることで、フランジ部材50の外周面と筒状部61Bの内周面とを密封状態で上下方向に相対移動可能としている。より詳しくは、筒状部61Bの縮径部75は、その軸長に亘り一定の内径寸法L10aを有しているため、フランジ部材50に対し筒状部61Bを上下方向に移動した場合に、安定して密封状態を維持できる。
【0064】
(被覆部材の流体管への押圧工程)
次に、被覆部材61を流体管2側に押圧する工程について、
図8~
図10に基づいて説明する。
【0065】
図8~
図9に示されるように、各U字ボルト62aの前後の雄ネジ部62c,62cに螺入されたナット62b,62bを締め付けると、被覆部材61全体が流体管2側に押圧され、湾曲板63の下面のOリング70が流体管2の外周面に押し付けられて密封性が高くなる。
【0066】
詳しくは、連通管3に接続固定されたフランジ部材50に対し、筒状部61Bを含む被覆部材61全体の上下方向への相対移動が許容されていることで、フランジ部材50の外周面と筒状部61Bの内周面との間に介在するOリング52による密封状態を維持したまま、各U字ボルト62a及びナット62b,62bを緊締して、流体管2に被覆部材61を強固に取付けることができる。また、緊締により、流体管2の外周面と湾曲板63の下面との間に介在するOリング70が流体管2の外周面に圧し潰されて密封性が向上する。
【0067】
このように、漏洩箇所補修装置1が流体管2及び連通管3に装着された状態では、連通管3の周囲に、被覆部材61、フランジ部材50及び流体管2の外周面の一部により密封状態で覆われた空間部Sが形成され、溶接部Dから空間部S内に漏洩した流体を収容可能となる。
【0068】
(作業用ボールバルブの交換工程)
次に、作業用のボールバルブ41を除去して新設の補修弁110に交換する工程について、
図11~
図17に基づいて説明する。
【0069】
まず、
図11に示されるように、被覆部材61の筒状部61Bの外周上部に、ベース部材120を配設する。ベース部材120は、特に詳細な図示はしないが、左右方向に延びる2個の分割部材からなり、これら分割部材を筒状部61Bの前後から挟持するように連結することにより、筒状部61Bの外周上部に固定される。また、連通管3の左右側にて流体管2の上面に配置されたジャッキ121,121によりベース部材120の下面左右側を支持して、略水平に配置する。また、ベース部材120の上面左右側にロングボルト24,24を立設する。
【0070】
次いで、ボールバルブ41の上端部に、前述した閉塞装置25を密封状態で接続した後、連通管3内を閉塞するために、排水バルブ26dを開放した後、操作レバー(図示略)を操作してボールバルブ41を開放状態とし、収容ケース26内まで流体を充満させる。排水バルブ26dから流体が排出されたことを確認した後、排水バルブ26dを閉塞する。次いで、移動アーム31の凹溝31a,31aにロングボルト24,24を挿入させる。これら凹溝31a,31aにロングボルト24,24を収容した状態で移動アーム31を下降させることで、挿入部材28がロングボルト24,24に沿って連通管3に向けて下降し、閉塞部材27がボールバルブ41の内部通路を通過して、フランジ部材50の連通孔50a及び連通管3の内部通路上部に進入する。
【0071】
尚、収容ケース26内へ流体を充満させる方法として、排水バルブ26d及び排水バルブ26eを開放した状態で、排水バルブ26eから手動ポンプ等で水を流し込み、排水バルブ26dから空気抜きを行い、空気抜き完了後、排水バルブ26d及び排水バルブ26eを閉塞してからボールバルブ41を開放してもよい。また、移動アーム31とロングボルト24の取付工程は、収容ケース26内への流体の充満よりも先に行ってもよい。
【0072】
次いで、挿入部材28をロングボルト24,24に沿って連通管3に向けて所定距離押し込み、閉塞部材27がフランジ部材50の連通孔50a及び連通管3の内部通路上部に配置された後、移動アーム31の水平方向の両端部をロングボルト24,24に螺入されているナット32,32によって上下方向から挟圧することで、フランジ部材50の連通孔50a及び連通管3の内部通路に配置された挿入部材28の位置を固定する。
【0073】
次いで、送りネジ28cを図示しないラチェット等で回転操作し、内杆部28bの下端部に接続された閉塞部材27の止水ゴム27aを径方向に伸張させて、フランジ部材50の連通孔50a及び連通管3の内周面に周方向に亘って密着させ、フランジ部材50の連通孔50a及び連通管3の内部を閉塞する。この閉塞部材27によるフランジ部材50の連通孔50a及び連通管3の内部の閉塞は、排水バルブ26eからの流体の排出が停止することで確認することができる。尚、流体の排出停止の確認は、排水バルブ26dからでもよい。
【0074】
次いで、ボルト51aの上端からナット51bを取外し、フランジ部材50からボールバルブ41のフランジ部43aを取外すことで、ボールバルブ41及び収容ケース26を上方に若干引き上げ、2分割構造の抜け止め金具35を、閉塞部材27と外筒部28aとの間に挟むように、各ロングボルト24,24に螺入されているボルト36,36によって上下方向から挟圧することで取付ける。この抜け止め金具35の内径部が閉塞部材27の上端に上下方向に係合することにより、閉塞部材27が流体管2内の流体圧により連通管3の内部通路から上方に抜け出すことが防止される。そして、抜け止め金具35により閉塞部材27のフランジ部材50の連通孔50a及び連通管3からの逸脱を防止した状態で、ナット32,32を回転により離間させて移動アーム31を取外して、ボールバルブ41及び収容ケース26を引き上げて取外す。
【0075】
そして、取外した収容ケース26の下端からボールバルブ41を取外し、
図12に示されるように、新設の補修弁110を取付け、収容ケース26及び補修弁110を挿入部材28に挿入して吊り下げ、ロングボルト24,24に移動アーム31を取付け、閉塞部材27が抜け出ないように移動アーム31により支持した状態で、抜け止め金具35を外す。
【0076】
図13に示されるように、補修弁110及び収容ケース26を下降させて、補修弁110の下部のフランジ部110aがフランジ部材50の上面に当接したら、フランジ部材50の上方に突出したボルト51aの上部にナット51bを取付けて緊締することにより、補修弁110の下部のフランジ部110aとフランジ部材50とが、図示しないガスケットを介して密封状態で連結固定され、補修弁110と連通管3とが連通する。そして、収容ケース26及び補修弁110内に流体を充満させた状態で、送りネジ28cを操作して止水ゴム27aを縮小させ、閉塞部材27を収容ケース26の内部まで引き上げたら、補修弁110を閉塞状態にする。
【0077】
次いで、
図14に示されるように、補修弁110から閉塞装置25を取外す。また、ベース部材120からロングボルト24,24を取外し、ジャッキ121を下降させてベース部材120を補修体60から取外す。そして、フランジ部材50の筒状部61Bからの逸脱を防止する逸脱防止手段としての補強リング90を筒状部61Bに装着する。
【0078】
図15~
図17に示されるように、補強リング90は、前後に分割された分割部材90a,90bからなる。分割部材90a,90bは同様に構成されているため、以下においては分割部材90aについて説明し、分割部材90bについての説明は省略する。
【0079】
図17に示されるように、分割部材90aは、被覆部材61の筒状部61Bの外周に沿って配置される半円弧状の外周部91と、外周部91の両端から外径方向に突出する連結部92,92と、外周部91の上辺から内径方向に延設される上係止部93と、外周部91の下辺から内径方向に延設される下係止部94と、から主に構成され、縦断面視略コ字形に形成されている。連結部92,92には、連結用のボルト・ナット95が取付けられる取付孔92aが各々形成されている。また、外周部91及び下係止部94の左右方向の略中央位置には切欠部96が形成されており、下係止部94は左右に分割されている。また、下係止部94には、調整用ボルト98が螺入される複数のネジ孔97が外周部91に沿うように複数形成されている。
【0080】
このように構成された補強リング90は、
図14~
図16に示されるように、各分割部材90a,90bを筒状部61Bの前後に配置し、上係止部93が筒状部61B及びフランジ部材50の上方に位置するとともに、下係止部94が筒状部61Bのフランジ部77の下方に位置するように内径方向に移動させる。そして、連結部92,92同士を突き合わせ、取付孔92a,92aに取付けたボルト・ナット95により緊締することにより、筒状部61Bの外周面上部に装着される。
【0081】
このように各分割部材90a,90bが一体化された状態で装着されると、筒状部61B及びフランジ部材50に上係止部93が規制されることにより、補強リング90の落下が防止されるとともに、筒状部61Bのフランジ部77に下係止部94が係止されることにより、補強リング90の上方への移動が規制される。
【0082】
さらに、下係止部94の各ネジ孔97に調整用ボルト98を下方から螺入し、上端をフランジ部77の下面に当接させて締め付けることで、各分割部材90a,90bの上方向への移動が規制されるため、補強リング90の脱落が防止される。
【0083】
ここで、例えば、上記のように漏洩箇所補修装置1により漏洩箇所の補修が完了し、新設の補修弁110の上方に新規の空気弁を接続して固定した後、流体管2と連通管3との接続部である溶接部Dの腐食が進み、流体管2から連通管3が離脱してしまった場合、流体管2の内圧により、離脱した連通管3及びフランジ部材50が筒状部61Bの開口から噴出してしまう虞があり危険である。
【0084】
よって、本実施例のように、筒状部61Bのフランジ部77と、筒状部61B内に上下方向に摺動可能に設けられたフランジ部材50と、に補強リング90が跨って係止されることにより、フランジ部材50の筒状部61Bからの逸脱が防止される。
【0085】
尚、前述した連通管の囲繞工程において、連通管3をフランジ部材50及び補修体60により囲繞した後、排水バルブ76d及び排水プラグ76eのうち少なくとも一方を開放して空気抜きをすることで、溶接部Dにおける漏洩箇所から漏洩した流体が空間部S内に貯留されていく。そして、空間部S内に流体が充満して排水バルブ76d及び排水プラグ76eのうち少なくとも一方から流体が排出されたら排水バルブ76d及び排水プラグ76eを閉塞すればよい。
【0086】
以上説明したように、本発明の実施例としての漏洩箇所補修装置は、既設の流体管2に連通し、接続部材としての補修弁11が接続された連結用のフランジ部3aを備えた連通管3及びその近傍における漏洩箇所(例えば、溶接部Dなど)を補修する漏洩箇所補修装置1であって、流体管2における連通管3側の外面を覆う基部61Aと、該基部61Aに一端が接続され連通管3を囲繞する筒状部61Bと、基部61A及び筒状部61Bを連通管3の管軸方向に沿って流体管2側に押圧する押圧手段としてのU字ボルト62a及びナット62bと、を有する補修体60と、フランジ部3aに接続されるフランジ部材50と、補修体60の筒状部61Bとフランジ部材50との間に介在し、両者を密封状態で相対移動可能とするシール部材としてのOリング52と、を備える。
【0087】
このようにすることで、密封状態を維持したまま漏洩箇所の補修を確実に行うことができる。
【0088】
また、フランジ部材50の外周面にOリング52が取付けられていることで、フランジ部材50に対し筒状部61Bが相対移動しても密封状態が維持される。
【0089】
より詳しくは、連通管3のフランジ部3aの上方にボルト51a及びナット51cにより連結固定されたフランジ部材50に対し、該フランジ部材50の外径側に筒状部61Bが上下方向に相対移動可能に設けられることで、Oリング52を介して密封状態を維持したまま、U字ボルト62a及びナット62bにより被覆部材61を流体管2側に好適に押し付けることができるため、漏洩箇所である溶接部Dの補修を確実に行うことができる。また、フランジ部材50と筒状部61Bとの間や、流体管2の外周面と基部61Aとの間を溶接等により密封することなく、シール部材としてのOリング52,70により、流体管2及び連通管3と被覆部材61との間を容易に密封状態とすることができる。
【0090】
また、フランジ部材50は、既設の補修弁11のフランジ部11aまたは新設の補修弁110のフランジ部110aやボールバルブ41のフランジ部43aとフランジ部3aとの間に配置され、Oリング52が取付けられた環状部材であることで、接続部材のフランジ部11a,110a,43aとフランジ部3aとは別個に、筒状部61Bに対応するフランジ部を設けることができるため、筒状部61Bとフランジ部材50との密封性を高めることができる。
【0091】
詳しくは、フランジ部材50を用いることなく、連通管3のフランジ部3aの外周面と筒状部61Bとの間にシール部材を設けて密封状態とすることもできるが、既設のフランジ部3aの外周面は、汚れが付着していたり錆により腐食していたりするなど、密封状態を形成することが困難な状態であることが多い。また、既設の連通管3のフランジ部3aの外径寸法L2や、流体管2からの上下長さ寸法は場所によって様々であり、各連通管3に対応する被覆部材61を製造していくと、工期が長引くばかりか製造コストが嵩むことになる。よって、既設のフランジ部3aを使うことなく、筒状部61Bに対応して別個に製造したフランジ部材50を用いることで、連通管3の周囲を容易に、かつ、好適な密封状態で囲繞して漏洩箇所を補修することができる。
【0092】
また、
図14に示されるように、連通管3と補修弁110との間にはフランジ部材50が配設され、該フランジ部材50の連通孔50aにより連通管3と補修弁110とが連通しており、連通管3内と空間部Sとは漏洩箇所以外で連通しないので、流体管2の管内の空気を筒状部61B内に流出させることなく、連通管3からフランジ部材50及び補修弁110を介して新規の空気弁(
図1参照)へ導くことができる。
【0093】
また、筒状部61Bの上端に補修弁110や新規の空気弁といった接続部材を直接接続することなく、連通管3のフランジ部3aに接続されたフランジ部材50を介して、筒状部61Bと補修弁110や空気弁といった接続部材とを接続するため、連通管3と補修弁110や空気弁といった接続部材との連通状態を維持することができる。
【0094】
また、筒状部61Bには排出孔としての排水バルブ76d及び排水プラグ76eが設けられていることで、筒状部61B内の空気抜きができるとともに、筒状部61B内に漏洩する流体を外部に排出することができる。
【0095】
また、押圧手段は、U字ボルト62aを含むことで、筒状部61Bを流体管2側に向けて効率よく押圧することができる。尚、本実施例では、押圧手段の一例としてU字ボルト62a及びナット62bを適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、押圧手段は筒状部61Bを流体管2側に向けて押圧できるものであればよく、例えば、U字ボルト62aに替えて、バンド等でもよいし、流体管2の外周面下部に沿って配置されるU字形の筐体と、この筐体と被覆部材61とを連結して緊締するボルト・ナットと、からなるものでもよく、種々に変更可能である。
【0096】
フランジ部材50の筒状部61Bからの逸脱を防止する逸脱防止手段としての補強リング90を備えることで、腐食等が進行することで流体管2から連通管3が離脱されたときに、管内の流体圧により筒状部から逸脱してしまうことを防止できる。尚、本実施例では、逸脱防止手段の一例として補強リング90を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、筒状部61Bの外側から内径方向に向けて挿入され、先端がフランジ部材50の上面に係止される複数のボルトにて逸脱を規制するものでもよく、種々に変更可能である。
【0097】
本発明の漏洩箇所補修方法は、既設の流体管2に連通し、接続部材としての補修弁11が接続された連結用のフランジ部3aを備えた連通管3及びその近傍における漏洩箇所(例えば、溶接部Dなど)を不断流状態で補修する漏洩箇所補修方法であって、フランジ部3aに、シール部材としてのOリング52を備えたフランジ部材50を接続する工程(フランジ部の接続工程。
図4参照)と、フランジ部材50に補修体60を挿入し、該補修体60及びフランジ部材50により連通管3を囲繞する工程(連通管の囲繞工程。
図6~
図10参照)と、押圧手段としてのU字ボルト62a及びナット62bによって、補修体60を連通管3の管軸方向に沿って流体管2側に押圧して、連通管3を補修体60及びフランジ部材50により密封状態で覆う工程(被覆部材の流体管への押圧工程。
図8~
図10参照)と、を有する。このようにすることで、密封状態を維持したまま漏洩箇所の補修を確実に行うことができる。
【0098】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0099】
例えば、前記実施例では、流体管2と連通管3との溶接部Dにおける漏洩箇所(
図1参照)を補修する装置及び方法について説明したが、漏洩箇所は上記した溶接部Dの所定箇所に限定されるものではなく、例えば、錆や腐食により連通管3やその近傍の流体管2の所定箇所に漏洩が生じた場合でも、本発明の漏洩箇所補修装置及び漏洩箇所補修方法を適用可能である。
【0100】
また、前記実施例では、既設の接続部材として補修弁11及び空気弁10を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、補修弁11や空気弁10の上流側に複数のフランジ部材や短管等が接続部材として接続されてもよい。つまり、接続部材は、連通管3に接続される部材であれば、フランジ部材や短管などの管状部材、補修弁や仕切弁装置や空気弁などの弁部材、あるいは上記以外の部材であってもよい。
【0101】
また、前記実施例では、筒状部の一例として筒状部61Bを適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、既設の連通管3を囲繞可能なものであれば、上記のような円筒管に限定されるものではなく、角管や筐体等を適用してもよい。また、被覆部材61の全体の形状等は種々に変更可能であり、上記実施例に記載の形状に限定されるものではない。
【0102】
また、前記実施例では、漏洩箇所を補修する際に、既設の補修弁11をボールバルブ41に交換し、補修が完了した後、新設の補修弁110に交換する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、取外した既設の補修弁11を再び取付けてもよいし、補修弁11,110とは別個の開閉手段としての補修弁を取付けてもよい。また、開閉手段の一例として、補修弁11,110、ボールバルブ41を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、バタフライ弁、ゲート弁、ボール弁等の種々の開閉弁を適用可能である。
【0103】
また、前記実施例では、既設の補修弁11に筒状部61Bを挿入できないため、補修弁11をボールバルブ41に交換してから漏洩箇所補修装置1を装着する工程で説明したが、既設の補修弁11の外径が比較的小径の場合など、筒状部61Bを挿入可能な大きさであれば、前述した補修弁の交換工程を行うことなく、当該補修弁11を取外すことなく、
図4以降のフランジ部の接続工程や連通管の囲繞工程を行い、漏洩箇所補修装置1を取付けるようにしてもよい。つまり、上記補修弁の交換工程は必ずしも行わなくてもよい。
【0104】
また、前記実施例では、既設の流体管としての流体管2及び連通管3に接続された接続部材は、プラント配管などのような地上に露出した状態で延設されていた形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、流体管2及び連通管3に接続された接続部材は地中に埋設されていてもよい。