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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059519
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】モールド金型部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20240423BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/04
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167242
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】394006004
【氏名又は名称】パンチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】石倉 英昭
(72)【発明者】
【氏名】生山 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】今野 真
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AG08
4F202AJ01
4F202AJ11
4F202AM10
4F202AR07
4F202CA11
4F202CB01
4F202CD22
4F202CD27
4F202CD30
4F202CK90
(57)【要約】
【課題】水管内部の錆の発生を抑制するとともに、水分に含まれる不純物成分等の堆積物の発生を抑制する。
【解決手段】モールド金型部品を第1のモールド金型部品片11と第2のモールド金型部品片12とに分割する分割工程と、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12の内部に、溝加工によって水路を形成する水路形成工程と、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12の内部に形成された水路の内面に、防錆・堆積物付着防止加工が施す加工工程と、加工工程において、防錆・堆積物付着防止加工された第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12を位置決めピンにより位置決めし、金属接合により一体化する接合工程と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド金型部品を第1のモールド金型部品片と第2のモールド金型部品片とに分割する分割工程と、
前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の内部に、溝加工によって水路を形成する水路形成工程と、
前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の内部に形成された水路の内面に、防錆・堆積物付着防止加工が施す加工工程と、
前記加工工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片を位置決めピンにより位置決めし、金属接合により一体化する接合工程と、
を備えたことを特徴とするモールド金型部品の製造方法。
【請求項2】
前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の外周に位置決め用の貫通孔が複数設けられ、
前記接合工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記貫通孔に前記位置決めピンを挿入して位置決めし、金属接合により一体化することを特徴とする請求項1に記載のモールド金型部品の製造方法。
【請求項3】
前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の内部外周に前記位置決めピンの両端部を保持する凹部が複数設けられ、
前記接合工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記凹部に前記位置決めピンを保持させて位置決めし、金属接合により一体化することを特徴とする請求項1に記載のモールド金型部品の製造方法。
【請求項4】
前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片は、製品外形に対して接合ブランク領域を有する大きさであり、中央部には、位置決め用の貫通孔が設けられ、前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記製品外形の外側側面の一部は、前記製品外形に沿うような平面となっており、
前記接合工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記貫通孔に前記位置決めピンを挿入し、前記平面に板状の磁石を貼り付けて位置決めし、金属接合により一体化することを特徴とする請求項1に記載のモールド金型部品の製造方法。
【請求項5】
前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の内部中央部に前記位置決めピンの両端部を保持する凹部が設けられ、前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の製品外形の外側側面の一部が平面となっており、
前記接合工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記凹部に前記位置決めピンを保持させ、前記平面に板状の磁石を貼り付けて位置決めし、金属接合により一体化することを特徴とする請求項1に記載のモールド金型部品の製造方法。
【請求項6】
前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の製品外形の外側側面に複数の位置決め用の貫通孔が設けられ、
前記接合工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記貫通孔に前記位置決めピンを挿入して位置決めし、金属接合により一体化することを特徴とする請求項1に記載のモールド金型部品の製造方法。
【請求項7】
前記防錆・堆積物付着防止加工がメッキ処理であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のモールド金型部品の製造方法。
【請求項8】
前記防錆・堆積物付着防止加工がコーティング処理であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のモールド金型部品の製造方法。
【請求項9】
前記防錆・堆積物付着防止加工が溶射膜処理であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のモールド金型部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド金型部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固定側入子と進退自在に取り付けられている可動側入子と、可動側入子と同方向に進退自在に取り付けられ、可動側入子の温度を調整するための冷却管等からなる温度調整手段を備えた金型部品が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一般に、モールド金型部品では、成形品の冷却を早めるために、成型品の蓄熱部位に当接するモールド金型部品に水管を配置して、成形サイクルを早めるようにしている。
そのため、一般的なモールド金型部品の水管は、ドリル等で真っ直ぐな穴を多方向から設けて、冷却が必要な個所を冷やすように設計されている。
また、冷却には、水が使われることが多く、チラーを使いモールド金型部品内を循環させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-219445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成型品の生産が終了した後、モールド金型部品からは、冷却水が抜かれ、水管内の水は、除去される。
しかしながら、水管内の水を完全に除去することはできず、部分的に水が残ってしまい、これにより錆が発生するという課題があった。
【0006】
また、錆が酷い場合には、水管の一部または全部を塞ぐこともあり、以後、このモールド金型部品が使えなくなる場合も生じていた。
さらに、水に含まれる不純物成分も水管内に堆積をして、錆とともに水管を詰まらせる原因となっていた。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、水管内部の錆の発生を抑制するとともに、水分に含まれる不純物成分等の堆積物の発生を抑制するモールド金型部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、モールド金型部品を第1のモールド金型部品片と第2のモールド金型部品片とに分割する分割工程と、前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の内部に、溝加工によって水路を形成する水路形成工程と、前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の内部に形成された水路の内面に、防錆・堆積物付着防止加工が施す加工工程と、前記加工工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片を位置決めピンにより位置決めし、金属接合により一体化する接合工程と、を備えたことを特徴とするモールド金型部品の製造方法を提案している。
【0009】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の外周に位置決め用の貫通孔が複数設けられ、前記接合工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記貫通孔に前記位置決めピンを挿入して位置決めし、金属接合により一体化することを特徴とするモールド金型部品の製造方法を提案している。
【0010】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の内部外周に前記位置決めピンの両端部を保持する凹部が複数設けられ、前記接合工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記凹部に前記位置決めピンを保持させて位置決めし、金属接合により一体化することを特徴とするモールド金型部品の製造方法を提案している。
【0011】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片は、製品外形に対して接合ブランク領域を有する大きさであり、中央部には、位置決め用の貫通孔が設けられ、前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記製品外形の外側側面の一部は、前記製品外形に沿うような平面となっており、前記接合工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記貫通孔に前記位置決めピンを挿入し、前記平面に板状の磁石を貼り付けて位置決めし、金属接合により一体化することを特徴とするモールド金型部品の製造方法を提案している。
【0012】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の内部中央部に前記位置決めピンの両端部を保持する凹部が設けられ、前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の製品外形の外側側面の一部が平面となっており、前記接合工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記凹部に前記位置決めピンを保持させ、前記平面に板状の磁石を貼り付けて位置決めし、金属接合により一体化することを特徴とするモールド金型部品の製造方法を提案している。
【0013】
形態6;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の製品外形の外側側面に複数の位置決め用の貫通孔が設けられ、前記接合工程において、前記防錆・堆積物付着防止加工された前記第1のモールド金型部品片および前記第2のモールド金型部品片の前記貫通孔に前記位置決めピンを挿入して位置決めし、金属接合により一体化することを特徴とするモールド金型部品の製造方法を提案している。
【0014】
形態7;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記防錆・堆積物付着防止加工がメッキ処理であることを特徴とするモールド金型部品の製造方法を提案している。
【0015】
形態8;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記防錆・堆積物付着防止加工がコーティング処理であることを特徴とするモールド金型部品の製造方法を提案している。
【0016】
形態9;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記防錆・堆積物付着防止加工が溶射膜処理であることを特徴とするモールド金型部品の製造方法を提案している。
【発明の効果】
【0017】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、水管内部の錆の発生を抑制するとともに、水分に含まれる不純物成分等の堆積物の発生を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るモールド金型部品が用いられる射出成型機の模式化した構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るモールド金型部品の正面斜視図、上面平面図、正面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るモールド金型部品の製造方法についてのフロー図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るモールド金型部品の水管の断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るモールド金型部品の正面斜視図、上面平面図、正面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るモールド金型部品の製造方法についてのフロー図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係るモールド金型部品の正面斜視図、上面平面図、正面図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係るモールド金型部品の製造方法についてのフロー図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係るモールド金型部品の正面斜視図、上面平面図、正面図である。
図10】本発明の第4の実施形態に係るモールド金型部品の製造方法についてのフロー図である。
図11】本発明の第5の実施形態に係るモールド金型部品の正面斜視図、上面平面図、正面図である。
図12】本発明の第5の実施形態に係るモールド金型部品の製造方法についてのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
以下、図1から図12を用いて、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
まず、図1を用いて、モールド金型部品の製造方法を説明するのに先立ち、全ての実施形態に係るモールド金型部品の製造方法により製造されたモールド金型部品に使用される射出成型、射出成型機の構成について説明する。
【0021】
<射出成型>
射出成形(Injection Molding)とは、加熱溶融させた材料を金型内に射出注入し、冷却・固化させる事によって、成形品を得る方法である。
射出成形は、複雑な形状の製品を大量に生産するのに適している。
射出成形の工程は大きく分けて、型締め工程、射出工程、保圧工程、冷却工程、型開き工程、製品取り出し工程の6つの工程で構成されている。
【0022】
<射出成型機の構成>
一般に、射出成形機は、主として、型締めユニット20と、射出ユニット30と、から構成されている。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る射出成型機1は、金型10と、型締めユニット20と、射出ユニット30と、を含んで構成されている。
また、射出ユニット30は、ホッパー31と、シリンダ32と、モータ33と、を含んで構成されている。
【0024】
型締めユニット20は、金型10の開閉、突き出し(エジェクター)を行い、トグル式と、油圧シリンダにより直接金型を開閉する直圧式とがある。
【0025】
射出ユニット30は、樹脂を加熱溶融させ、金型内へ射出する。
そして、シリンダ32内の図示しないスクリューを回転させ、ホッパー31から投入した樹脂をスクリュー前部へ溜め計量し、必要樹脂量に相当するストロークを溜めた後、射出する。
樹脂が金型10内を流動している時には、スクリューの移動速度(射出速度)を制御し、樹脂が充填された後は、圧力(保圧力)で制御する。
速度制御から圧力制御への切換えは、一定のスクリュー位置や一定の射出圧力に達した時に切換わるよう設定される。
【0026】
金型(Mold)10は、材料樹脂をある決まった形状にするため、樹脂を射出注入する金属製の型であり、可動モールド金型部品10Aと、固定モールド金型部品10Bとから構成されている。
可動モールド金型部品10Aは、型締めユニット20により可動する。
可動モールド金型部品10Aの内部には、図示しない水管が形成され、水管内を水がチラーにより循環し、成型品の蓄熱部位を冷却して、成型サイクルを早める作用をする。
溶融した材料はスプルーから金型10内に入り、図示しないランナー・ゲートを経て図示しないキャビティ内に充填される。
そして、その後、冷却工程を経て、金型10が開き成型機の図示しないエジェクタロッドに金型10の図示しないエジェクタプレートが押されて成形品が突き出される。
【0027】
<第1の実施形態>
以下、本実施形態に係る可動モールド金型部品10Aについて、図2から図4を用いて説明する。
【0028】
<可動モールド金型部品10Aの構成>
図2(A)に示すように、本実施形態に係る可動モールド金型部品10Aは、第1のモールド金型部品片11と、第2のモールド金型部品片12と、から構成されている。
図2(A)に示すように、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12には、例えば、溝加工により、第1のモールド金型部品片11と第2のモールド金型部品片12とに跨る水路13が形成されている。
水路13の形状は、図2(B)に示すように、例えば、直線と半円とを組み合わせた形状となっており、上記の水路13が、中心部で向き合うように形成されている。
また、図2(A)から図2(C)に示すように、可動モールド金型部品10Aの外縁と水路の外縁との間には、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12を貫き、位置決めピンを挿入する貫通孔14が形成されている。
【0029】
図4に示すように、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12に形成された水路13の内面は、メッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理がなされた防錆・堆積物付着防止加工16が施されている。
【0030】
防錆・堆積物付着防止加工16が施された後、第1のモールド金型部品片11と第2のモールド金型部品片12とは、例えば、拡散接合法により金属接合される。
【0031】
なお、防錆・堆積物付着防止加工16の処理は、金属接合に拡散接合法を採用する場合には、処理温度が600℃~1000℃となるため、接合後に熱処理が必要となることから、耐熱性が必要となる。
そのため、メッキ処理の場合には、硬質クロムメッキが好ましく、熱に対しては700℃を超えると、組成が変化するものの防錆・離型効果は期待できる。
また、コーティング処理の場合には、アルミを含有し、耐熱温度が高いTiAlNやAlCrN膜が好ましい。
さらに、溶射膜処理の場合には、耐熱性や離型性がある被膜は多々あり、選択肢は広い。
【0032】
<可動モールド金型部品10Aの製造方法>
図3を用いて、本実施形態に係る可動モールド金型部品10Aの製造方法について説明する。
【0033】
まず、水路13を含まない第1のモールド金型部品片11と、第2のモールド金型部品片12とを準備する(ステップS100)。
なお、第1のモールド金型部品片11と、第2のモールド金型部品片12との準備には、例えば、2つ別個の第1のモールド金型部品片11と、第2のモールド金型部品片12とを準備すること、および可動モールド金型部品10Aの最終製品外形あるいはこれに類似する金属の塊を分割して、2つの別個の第1のモールド金型部品片11と、第2のモールド金型部品片12とを準備することを含む。
【0034】
ステップS100において準備された第1のモールド金型部品片11と第2のモールド金型部品片12とに対して、溝加工により、その内部に水路13を形成する加工処理を行う(ステップS200)。
【0035】
ステップS200において作成された第1のモールド金型部品片11と、第2のモールド金型部品片12とに形成された水路13の内面にメッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理等により、防錆・堆積物付着防止加工16を施す(ステップS300)。
【0036】
ステップS300において、防錆・堆積物付着防止加工16を施した第1のモールド金型部品片11と、第2のモールド金型部品片12とに対して、金属洗浄剤を用いて、防錆油やマーキング(マジック)等を除去するとともに、図4に示す接合面15にホコリ等の付着が無いように、エアブローを用いて清掃を行う(ステップS400)。
【0037】
拡散接合装置にセットする台座の上に、ステップS400において、脱脂・清掃処理が行われた第1のモールド金型部品片11と、第2のモールド金型部品片12とを配置する。
この時、第2のモールド金型部品片12の上に、位置をずらして、第1のモールド金型部品片11を置く。
なお、位置決めピン用穴(貫通孔)14の位置は、方向を合わせておく。
次に、第1のモールド金型部品片11と、第2のモールド金型部品片12との接面の空気を抜くように、第1のモールド金型部品片11をスライドさせ、概ね位置が合ったところで、位置決めピン用穴14の位置が合っているか確認、微調整を行い、位置合わせができたところで、位置決めピンをピンの尖った側から位置決めピン用穴14に挿入して位置出しを行う(ステップS500)。
【0038】
そして、ステップS500において、位置出しが完了すると、先程挿入した位置決めピンを1本抜いて、短いピンに差し替え、この作業を全ての位置決めピンに対して実行する。
さらに、新たに挿入した短い位置決めピンが、位置決めピン用穴14内に隠れていることを確認した上で、外形のズレを調整する。
なお、新たに挿入した位置決めピンは、抜かずに、金属接合処理の際に、焼結する(ステップS600)。
【0039】
次に、拡散接合装置に、第1のモールド金型部品片11と、第2のモールド金型部品片12とを設置する(ステップS700)。
【0040】
そして、拡散接合装置により、第1のモールド金型部品片11と第2のモールド金型部品片12とを金属接合させて、可動モールド金型部品10Aを製造する(ステップS800)。
【0041】
<作用・効果>
本実施形態に係る可動モールド金型部品10Aは、モールド金型部品を第1のモールド金型部品片11と第2のモールド金型部品片12とに分割し、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12の内部に、溝加工によって水路13を形成する。そして、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12の内部に形成された水路13の内面に、防錆・堆積物付着防止加工を施し、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12を位置決めピンにより位置決めし、金属接合により一体化する。
つまり、可動モールド金型部品10Aを第1のモールド金型部品片11と第2のモールド金型部品片12とに分割し、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12の内部に、溝加工によって水路13を形成して、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12の内部に形成された水路13の内面に、防錆・堆積物付着防止加工を施している。
そのため、メッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理を施す防錆・堆積物付着防止加工16を正確かつ容易に実施することができる。
また、2分割された部材(第1のモールド金型部品片11、第2のモールド金型部品片12)が金属接合により一体化される。
そのため、メッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理を施す防錆・堆積物付着防止加工16が適切に実施された水路13を内部に形成した可動モールド金型部品10Aを製造することができる。
これにより、水路13内部の錆の発生を抑制するとともに、水分に含まれる不純物成分等の堆積物の発生を抑制するモールド金型部品を得ることができる。
また、本実施形態に係る可動モールド金型部品10Aでは、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12の外周に位置決め用の貫通孔14が複数設けられ、接合工程において、防錆・堆積物付着防止加工された第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12の貫通孔14に位置決めピンを挿入して位置決めし、金属接合により一体化する。
つまり、第1のモールド金型部品片11および第2のモールド金型部品片12の外周に複数設けられ位置決め用の貫通孔14に位置決めピンを挿入した状態で金属接合が行われることから、第1のモールド金型部品片11と第2のモールド金型部品片12とが精度よく接合されるため、水路13がズレなく形成される。
また、水路13がズレなく形成されることから、水路13のズレにより生じる新たな錆等の発生を的確に防止することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る可動モールド金型部品10Aは、水路13が溝加工により形成されている。
そのため、曲線を含む様々な形状の水路をモールド金型部品の内部に形成することができる。
なお、溝加工により形成された水路13の内面は、面粗さを伴い、このままでは、錆の発生を促し、水分に含まれる不純物成分等の堆積物の発生を助長する。
しかしながら、本実施形態に係る可動モールド金型部品10Aでは、内部に形成された水路13にメッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理を施す防錆・堆積物付着防止加工16が施されている。
そのため、水路13内部の錆の発生を抑制するとともに、水分に含まれる不純物成分等の堆積物の発生を抑制する可動モールド金型部品10Aを得ることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る可動モールド金型部品10Aは、防錆・堆積物付着防止加工16がメッキ処理により実行される。
つまり、溝加工により形成された水路13の内面は、面粗さを伴うが、この面粗さに対して、メッキ処理が施される。
そのため、水路13内部の錆の発生を抑制するとともに、水分に含まれる不純物成分等の堆積物の発生を抑制する可動モールド金型部品10Aを得ることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る可動モールド金型部品10Aは、防錆・堆積物付着防止加工16がコーティング処理により実行される。
つまり、溝加工により形成された水路13の内面は、面粗さを伴うが、この面粗さに対して、コーティング処理が施される。
そのため、水路13内部の錆の発生を抑制するとともに、水分に含まれる不純物成分等の堆積物の発生を抑制する可動モールド金型部品10Aを得ることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る可動モールド金型部品10Aは、防錆・堆積物付着防止加工16が溶射膜処理により実行される。
つまり、溝加工により形成された水路13の内面は、面粗さを伴うが、この面粗さに対して、溶射膜処理が施される。
そのため、水路13内部の錆の発生を抑制するとともに、水分に含まれる不純物成分等の堆積物の発生を抑制する可動モールド金型部品10Aを得ることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る第1のモールド金型部品片11と、第2のモールド金型部品片12とは、散接合法により金属接合される。
ここで、拡散接合法は、1つの金属接合処理が短時間で実行可能であり、接合強度が100%近くになるという特色を有している。
そのため、強度が必要な可動モールド金型部品10Aの金属接合には、好適な方式である。
【0047】
<第2の実施形態>
以下、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A1について、図5図6を用いて説明する。
【0048】
<可動モールド金型部品10A1の構成>
図5(A)に示すように、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A1は、第1のモールド金型部品片11Aと、第2のモールド金型部品片12Aと、から構成されている。
図5(A)に示すように、第1のモールド金型部品片11Aおよび第2のモールド金型部品片12Aには、例えば、溝加工により、第1のモールド金型部品片11Aと第2のモールド金型部品片12Aとに跨る水路13が形成されている。
水路13の形状は、図5(B)に示すように、例えば、直線と半円とを組み合わせた形状となっており、上記の水路13が、中心部で向き合うように形成されている。
また、図5(C)に示すように、可動モールド金型部品10Aの外縁と水路の外縁との間には、第1のモールド金型部品片11Aおよび第2のモールド金型部品片12Aの内部において、位置決めピンを保持する凹部14aが、第1のモールド金型部品片11Aおよび第2のモールド金型部品片12Aの双方に形成されている。
【0049】
図4に示すように、第1のモールド金型部品片11Aおよび第2のモールド金型部品片12Aに形成された水路13の内面は、メッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理がなされた防錆・堆積物付着防止加工16が施されている。
【0050】
防錆・堆積物付着防止加工16が施された後、第1のモールド金型部品片11Aと第2のモールド金型部品片12Aとは、例えば、拡散接合法により金属接合される。
【0051】
なお、防錆・堆積物付着防止加工16の処理は、金属接合に拡散接合法を採用する場合には、処理温度が600℃~1000℃となるため、接合後に熱処理が必要となることから、耐熱性が必要となる。
そのため、メッキ処理の場合には、硬質クロムメッキが好ましく、熱に対しては700℃を超えると、組成が変化するものの防錆・離型効果は期待できる。
また、コーティング処理の場合には、アルミを含有し、耐熱温度が高いTiAlNやAlCrN膜が好ましい。
さらに、溶射膜処理の場合には、耐熱性や離型性がある被膜は多々あり、選択肢は広い。
【0052】
<可動モールド金型部品10A1の製造方法>
図6を用いて、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A1の製造方法について説明する。
【0053】
まず、水路13を含まない第1のモールド金型部品片11Aと、第2のモールド金型部品片12Aとを準備する(ステップS110)。
なお、第1のモールド金型部品片11Aと、第2のモールド金型部品片12Aとの準備には、例えば、2つ別個の第1のモールド金型部品片11Aと、第2のモールド金型部品片12Aとを準備すること、および可動モールド金型部品10A1の最終製品外形あるいはこれに類似する金属の塊を分割して、2つの別個の第1のモールド金型部品片11Aと、第2のモールド金型部品片12Aとを準備することを含む。
【0054】
ステップS110において準備された第1のモールド金型部品片11Aと第2のモールド金型部品片12Aとに対して、溝加工により、その内部に水路13を形成する加工処理を行う(ステップS210)。
【0055】
ステップS210において作成された第1のモールド金型部品片11Aと、第2のモールド金型部品片12Aとに形成された水路13の内面にメッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理等により、防錆・堆積物付着防止加工16を施す(ステップS310)。
【0056】
ステップS310において、防錆・堆積物付着防止加工16を施した第1のモールド金型部品片11Aと、第2のモールド金型部品片12Aに対して、金属洗浄剤を用いて、防錆油やマーキング(マジック)等を除去するとともに、接合面15にホコリ等の付着が無いように、エアブローを用いて清掃を行う(ステップS410)。
【0057】
拡散接合装置にセットする台座の上に、ステップS410において、脱脂・清掃処理が行われた第1のモールド金型部品片11Aと、第2のモールド金型部品片12Aとを配置する。
この時、第2のモールド金型部品片12Aの2つの位置決めピン用凹部14aに、位置決めピンの一端を挿入し、位置決めピンの他端が第1のモールド金型部品片11Aの2つの位置決めピン用凹部14aに挿入されるように、第1のモールド金型部品片11Aを置く。
次に、第1のモールド金型部品片11Aと、第2のモールド金型部品片12Aとの接面の空気を抜くように、第1のモールド金型部品片11Aを配置する(ステップS510)。
【0058】
次に、拡散接合装置に、第1のモールド金型部品片11Aと第2のモールド金型部品片12Aとを設置する(ステップS710)。
【0059】
そして、拡散接合装置により、第1のモールド金型部品片11Aと第2のモールド金型部品片12Aとを金属接合させて、可動モールド金型部品10A1を製造する(ステップS810)。
【0060】
<作用・効果>
本実施形態に係る可動モールド金型部品10A1では、第1のモールド金型部品片11Aおよび第2のモールド金型部品片12Aの内部外周に位置決めピンの両端部を保持する凹部14aが複数設けられ、接合工程において、防錆・堆積物付着防止加工された第1のモールド金型部品片11Aおよび第2のモールド金型部品片12Aの凹部14aに位置決めピンを保持させて位置決めし、金属接合により一体化する。
つまり、第1のモールド金型部品片11Aおよび第2のモールド金型部品片12Aの外周に複数設けられ位置決めピンを保持する凹部14aに位置決めピンを挿入した状態で金属接合が行われることから、第1のモールド金型部品片11Aと第2のモールド金型部品片12Aが精度よく接合されるため、水路13がズレなく形成される。
また、水路13がズレなく形成されることから、水路13のズレにより生じる新たな錆等の発生を的確に防止することができる。
また、位置決めピンが内部にあるため、製品の外観を損なうことがない。
【0061】
<第3の実施形態>
以下、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A2について、図7図8を用いて説明する。
【0062】
<可動モールド金型部品10A2の構成>
図7(A)に示すように、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A2は、第1のモールド金型部品片11Bと、第2のモールド金型部品片12Bと、から構成されている。
図7(B)に示すように、第1のモールド金型部品片11Bと、第2のモールド金型部品片12Bとは、製品外形に対して接合ブランク領域18を有する一回り大きな大きさとなっており、製品外形の外側側面の一部が製品外形に沿った平面10Wとなっている。
図7(A)に示すように、第1のモールド金型部品片11Bおよび第2のモールド金型部品片12Bには、例えば、溝加工により、第1のモールド金型部品片11Bと第2のモールド金型部品片12Bとに跨る水路13が形成されている。
水路13の形状は、図7(B)に示すように、例えば、直線と半円とを組み合わせた形状となっており、上記の水路13が、中心部で向き合うように形成されている。
また、図7(C)に示すように、可動モールド金型部品10A2の中央部には、第1のモールド金型部品片11Bおよび第2のモールド金型部品片12Bを貫き、位置決めピンを挿入する貫通孔14Bが形成されている。
【0063】
図4に示すように、第1のモールド金型部品片11Bおよび第2のモールド金型部品片12Bに形成された水路13の内面は、メッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理がなされた防錆・堆積物付着防止加工16が施されている。
【0064】
防錆・堆積物付着防止加工16が施された後、第1のモールド金型部品片11Bと第2のモールド金型部品片12Bとは、例えば、拡散接合法により金属接合される。
【0065】
なお、防錆・堆積物付着防止加工16の処理は、金属接合に拡散接合法を採用する場合には、処理温度が600℃~1000℃となるため、接合後に熱処理が必要となることから、耐熱性が必要となる。
そのため、メッキ処理の場合には、硬質クロムメッキが好ましく、熱に対しては700℃を超えると、組成が変化するものの防錆・離型効果は期待できる。
また、コーティング処理の場合には、アルミを含有し、耐熱温度が高いTiAlNやAlCrN膜が好ましい。
さらに、溶射膜処理の場合には、耐熱性や離型性がある被膜は多々あり、選択肢は広い。
【0066】
<可動モールド金型部品10A2の製造方法>
図8を用いて、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A2の製造方法について説明する。
【0067】
まず、水路13を含まない第1のモールド金型部品片11Bと、第2のモールド金型部品片12Bとを準備する(ステップS120)。
なお、第1のモールド金型部品片11Bと、第2のモールド金型部品片12Bとの準備には、例えば、2つ別個の第1のモールド金型部品片11Bと、第2のモールド金型部品片12Bとを準備すること、および可動モールド金型部品10A2の最終製品外形あるいはこれに類似する金属の塊を分割して、2つの別個の第1のモールド金型部品片11Bと、第2のモールド金型部品片12Bとを準備することを含む。
【0068】
ステップS120において準備された第1のモールド金型部品片11Bと第2のモールド金型部品片12Bとに対して、溝加工により、その内部に水路13を形成する加工処理を行う(ステップS220)。
【0069】
ステップS220において作成された第1のモールド金型部品片11Bと、第2のモールド金型部品片12Bとに形成された水路13の内面にメッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理等により、防錆・堆積物付着防止加工16を施す(ステップS320)。
【0070】
ステップS320において、防錆・堆積物付着防止加工16を施した第1のモールド金型部品片11Bと、第2のモールド金型部品片12Bに対して、金属洗浄剤を用いて、防錆油やマーキング(マジック)等を除去するとともに、接合面15にホコリ等の付着が無いように、エアブローを用いて清掃を行う(ステップS420)。
【0071】
拡散接合装置にセットする台座の上に、ステップS420において、脱脂・清掃処理が行われた第1のモールド金型部品片11Bと、第2のモールド金型部品片12Bとを配置する。
この時、第2のモールド金型部品片12Bの上に、位置をずらして、第1のモールド金型部品片11Bを置く。
なお、位置決めピン用穴(貫通孔)14Bの位置は、方向を合わせておく。
次に、第1のモールド金型部品片11Bと、第2のモールド金型部品片12Bとの接面の空気を抜くように、第1のモールド金型部品片11Bをスライドさせ、概ね位置が合ったところで、位置決めピン用穴14Bの位置が合っているか確認、微調整を行い、位置合わせができたところで、位置決めピンのピンが尖った側から位置決めピン用穴14Bに位置決めピンを挿入し、さらに、第1のモールド金型部品片11Bおよび第2のモールド金型部品片12Bの製品外形の外側側面の一部に設けられた平面10Wに板状の磁石17を貼り付けて位置決めを行う(ステップS520)。
【0072】
そして、ステップS520において、位置出しが完了すると、先程挿入したピンを1本抜いて、短い位置決めピンに差し替え、この作業を全ての位置決めピンに対して実行する。
さらに、新たに挿入した短い位置決めピンが、位置決めピン用穴14B内に隠れていることを確認した上で、外形のズレを調整する。
なお、新たに挿入した位置決めピンは、抜かずに、金属接合処理の際に、焼結する(ステップS610)。
【0073】
次に、拡散接合装置に第1のモールド金型部品片11Bと第2のモールド金型部品片12Bとを設置して、磁石17を外す(ステップS720)。
【0074】
そして、拡散接合装置により、第1のモールド金型部品片11と第2のモールド金型部品片12とを金属接合させる(ステップS820)。
最後に、製品外形に対する接合ブランク領域18を削り、可動モールド金型部品10A2を製造する。
【0075】
<作用・効果>
本実施形態に係る可動モールド金型部品10A2では、第1のモールド金型部品片11Bおよび第2のモールド金型部品片12Bは、製品外形に対して接合ブランク領域18を有する大きさであり、中央部には、位置決め用の貫通孔14Bが設けられ、第1のモールド金型部品片11Bおよび第2のモールド金型部品片12Bの製品外形の外側側面の一部は、製品外形に沿うような平面10Wとなっており、接合工程において、防錆・堆積物付着防止加工された第1のモールド金型部品片11Bおよび第2のモールド金型部品片12Bの貫通孔14Bに位置決めピンを挿入し、平面10Wに板状の磁石17を貼り付けて位置決めし、金属接合により一体化する。
つまり、第1のモールド金型部品片11Bおよび第2のモールド金型部品片12Bの中央部に設けられた貫通孔14Bに位置決めピンを挿入し、かつ、第1のモールド金型部品片11Bおよび第2のモールド金型部品片12Bの製品外形の外側側面の一部に設けられた平面10Wに板状の磁石17を貼り付けて位置決めし、金属接合が行われることから、第1のモールド金型部品片11Aと第2のモールド金型部品片12Aが精度よく接合され、水路13がズレなく形成される。
また、水路13がズレなく形成されることから、水路13のズレにより生じる新たな錆等の発生を的確に防止することができる。
なお、磁石の代わりにクランプや治具などで機械的に抑え込むようにしてもよい。
【0076】
<第4の実施形態>
以下、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A3について、図9図10を用いて説明する。
【0077】
<可動モールド金型部品10A3の構成>
図9(A)に示すように、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A3は、第1のモールド金型部品片11Cと、第2のモールド金型部品片12Cと、から構成されている。
図9(B)に示すように、第1のモールド金型部品片11Cと、第2のモールド金型部品片12Cとは、製品外形に対して接合ブランク領域18を有する一回り大きな大きさとなっており、製品外形の外側側面の一部が製品外形に沿った平面10Wとなっている。
図9(A)に示すように、第1のモールド金型部品片11Cおよび第2のモールド金型部品片12Cには、例えば、溝加工により、第1のモールド金型部品片11Cと第2のモールド金型部品片12Cとに跨る水路13が形成されている。
水路13の形状は、図9(B)に示すように、例えば、直線と半円とを組み合わせた形状となっており、上記の水路13が、中心部で向き合うように形成されている。
また、図9(C)に示すように、可動モールド金型部品10A3の中央部には、第1のモールド金型部品片11Cおよび第2のモールド金型部品片12Cの内部において、位置決めピンを保持する凹部14aが、第1のモールド金型部品片11Cおよび第2のモールド金型部品片12Cの双方に形成されている。
【0078】
図4に示すように、第1のモールド金型部品片11Cおよび第2のモールド金型部品片12Cに形成された水路13の内面は、メッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理がなされた防錆・堆積物付着防止加工16が施されている。
【0079】
防錆・堆積物付着防止加工16が施された後、第1のモールド金型部品片11Cと第2のモールド金型部品片12Cとは、例えば、拡散接合法により金属接合される。
【0080】
なお、防錆・堆積物付着防止加工16の処理は、金属接合に拡散接合法を採用する場合には、処理温度が600℃~1000℃となるため、接合後に熱処理が必要となることから、耐熱性が必要となる。
そのため、メッキ処理の場合には、硬質クロムメッキが好ましく、熱に対しては700℃を超えると、組成が変化するものの防錆・離型効果は期待できる。
また、コーティング処理の場合には、アルミを含有し、耐熱温度が高いTiAlNやAlCrN膜が好ましい。
さらに、溶射膜処理の場合には、耐熱性や離型性がある被膜は多々あり、選択肢は広い。
【0081】
<可動モールド金型部品10A3の製造方法>
図10を用いて、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A3の製造方法について説明する。
【0082】
まず、水路13を含まない第1のモールド金型部品片11Cと、第2のモールド金型部品片12Cとを準備する(ステップS130)。
なお、第1のモールド金型部品片11Cと、第2のモールド金型部品片12Cとの準備には、例えば、2つ別個の第1のモールド金型部品片11Cと、第2のモールド金型部品片12Cとを準備すること、および可動モールド金型部品10A3の最終製品外形あるいはこれに類似する金属の塊を分割して、2つの別個の第1のモールド金型部品片11Cと、第2のモールド金型部品片12Cとを準備することを含む。
【0083】
ステップS130において準備された第1のモールド金型部品片11Cと第2のモールド金型部品片12Cとに対して、溝加工により、その内部に水路13を形成する加工処理を行う(ステップS230)。
【0084】
ステップS230において作成された第1のモールド金型部品片11Cと、第2のモールド金型部品片12Cとに形成された水路13の内面にメッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理等により、防錆・堆積物付着防止加工16を施す(ステップS330)。
【0085】
ステップS330において、防錆・堆積物付着防止加工16を施した第1のモールド金型部品片11Cと、第2のモールド金型部品片12Cに対して、金属洗浄剤を用いて、防錆油やマーキング(マジック)等を除去するとともに、接合面15にホコリ等の付着が無いように、エアブローを用いて清掃を行う(ステップS430)。
【0086】
拡散接合装置にセットする台座の上に、ステップS430において、脱脂・清掃処理が行われた第1のモールド金型部品片11Cと、第2のモールド金型部品片12Cとを配置する。
この時、第2のモールド金型部品片12Cの位置決めピン用凹部14aに、位置決めピンの一端を挿入し、位置決めピンの他端が第1のモールド金型部品片11Cの位置決めピン用凹部14aに挿入されるように、第1のモールド金型部品片11Cを置く。
次に、第1のモールド金型部品片11Cと、第2のモールド金型部品片12Cとの接面の空気を抜くように、第1のモールド金型部品片11Cを配置して、概ね位置が合ったところで、第1のモールド金型部品片11Cおよび第2のモールド金型部品片12Cの製品外形の外側側面の一部に設けられた平面10Wに板状の磁石17を貼り付け、位置出しを行う(ステップS530)。
【0087】
次に、拡散接合装置に第1のモールド金型部品片11Cと第2のモールド金型部品片12Cとを設置して、磁石17を外す(ステップS730)。
【0088】
そして、拡散接合装置により、第1のモールド金型部品片11Cと第2のモールド金型部品片12Cとを金属接合させる(ステップS830)。
最後に、製品外形に対する接合ブランク領域18を削り、可動モールド金型部品10A3を製造する。
【0089】
<作用・効果>
本実施形態に係る可動モールド金型部品10A3では、第1のモールド金型部品片11Cおよび第2のモールド金型部品片12Cの内部中央部に位置決めピンの両端部を保持する凹部14aが設けられ、第1のモールド金型部品片11Cおよび第2のモールド金型部品片12Cの製品外形の外側側面の一部が平面10Wとなっており、接合工程において、防錆・堆積物付着防止加工された第1のモールド金型部品片11Cおよび第2のモールド金型部品片12Cの凹部14aに位置決めピンを保持させ、平面10Wに板状の磁石17を貼り付けて位置決めし、金属接合により一体化する。
つまり、第1のモールド金型部品片11Cおよび第2のモールド金型部品片12Cの内部中央部に設けられた位置決めピンの両端部を保持する凹部14aに位置決めピンを保持させ、かつ、第1のモールド金型部品片11Cおよび第2のモールド金型部品片12Cの製品外形の外側側面の一部に設けられた平面10Wに板状の磁石17を貼り付けて位置決めし、金属接合が行われることから、第1のモールド金型部品片11Cと第2のモールド金型部品片12Cが精度よく接合されることから、水路13がズレなく形成される。
また、水路13がズレなく形成されることから、水路13のズレにより生じる新たな錆等の発生を的確に防止することができる。
また、位置決めピンが内部にあるため、製品の外観を損なうことがない。
なお、磁石の代わりにクランプや治具などで機械的に抑え込むようにしてもよい。
【0090】
<第5の実施形態>
以下、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A4について、図11図12を用いて説明する。
【0091】
<可動モールド金型部品10A4の構成>
図11(A)に示すように、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A4は、第1のモールド金型部品片11Dと、第2のモールド金型部品片12Dと、から構成されている。
図11(B)に示すように、第1のモールド金型部品片11Dと、第2のモールド金型部品片12Dとは、製品外形に対して接合ブランク領域18を有する大きさとなっている。
図11(A)に示すように、第1のモールド金型部品片11Dおよび第2のモールド金型部品片12Dには、例えば、溝加工により、第1のモールド金型部品片11Dと第2のモールド金型部品片12Dとに跨る水路13が形成されている。
水路13の形状は、図11(B)に示すように、例えば、直線と半円とを組み合わせた形状となっており、上記の水路13が、中心部で向き合うように形成されている。
また、図11(A)および図11(B)に示すように、可動モールド金型部品10A4の製品外形と本体外形との間には、第1のモールド金型部品片11Dおよび第2のモールド金型部品片12Dを貫き、位置決めピンを挿入する貫通孔14が形成されている。
【0092】
図4に示すように、第1のモールド金型部品片11Dおよび第2のモールド金型部品片12Dに形成された水路13の内面は、メッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理がなされた防錆・堆積物付着防止加工16が施されている。
【0093】
防錆・堆積物付着防止加工16が施された後、第1のモールド金型部品片11Dと第2のモールド金型部品片12Dとは、例えば、拡散接合法により金属接合される。
【0094】
なお、防錆・堆積物付着防止加工16の処理は、金属接合に拡散接合法を採用する場合には、処理温度が600℃~1000℃となるため、接合後に熱処理が必要となることから、耐熱性が必要となる。
そのため、メッキ処理の場合には、硬質クロムメッキが好ましく、熱に対しては700℃を超えると、組成が変化するものの防錆・離型効果は期待できる。
また、コーティング処理の場合には、アルミを含有し、耐熱温度が高いTiAlNやAlCrN膜が好ましい。
さらに、溶射膜処理の場合には、耐熱性や離型性がある被膜は多々あり、選択肢は広い。
【0095】
<可動モールド金型部品10A4の製造方法>
図12を用いて、本実施形態に係る可動モールド金型部品10A4の製造方法について説明する。
【0096】
まず、水路13を含まない第1のモールド金型部品片11Dと、第2のモールド金型部品片12Dとを準備する(ステップS140)。
なお、第1のモールド金型部品片11Dと、第2のモールド金型部品片12Dとの準備には、例えば、2つ別個の第1のモールド金型部品片11Dと、第2のモールド金型部品片12Dとを準備すること、および可動モールド金型部品10A4の最終製品外形あるいはこれに類似する金属の塊を分割して、2つの別個の第1のモールド金型部品片11Dと、第2のモールド金型部品片12Dとを準備することを含む。
【0097】
ステップS140において準備作成された第1のモールド金型部品片11Dと第2のモールド金型部品片12Dとに対して、溝加工により、その内部に水路13を形成する加工処理を行う(ステップS240)。
【0098】
ステップS240において作成された第1のモールド金型部品片11Dと、第2のモールド金型部品片12Dとに形成された水路13の内面にメッキ処理やコーティング処理、溶射膜処理等により、防錆・堆積物付着防止加工16を施す(ステップS340)。
【0099】
ステップS340において、防錆・堆積物付着防止加工16を施した第1のモールド金型部品片11Dと、第2のモールド金型部品片12Dに対して、金属洗浄剤を用いて、防錆油やマーキング(マジック)等を除去するとともに、接合面15にホコリ等の付着が無いように、エアブローを用いて清掃を行う(ステップS440)。
【0100】
拡散接合装置にセットする台座の上に、ステップS440において、脱脂・清掃処理が行われた第1のモールド金型部品片11Dと、第2のモールド金型部品片12Dとを配置する。
この時、第2のモールド金型部品片12Dの上に、位置をずらして、第1のモールド金型部品片11Dを置く。
なお、位置決めピン用穴(貫通孔)14の位置は、方向を合わせておく。
次に、第1のモールド金型部品片11Dと、第2のモールド金型部品片12Dとの接面の空気を抜くように、第1のモールド金型部品片11Dをスライドさせ、概ね位置が合ったところで、位置決めピン用穴14の位置が合っているか確認、微調整を行い、位置合わせができたところで、位置決めピンのピンが尖った側から位置決めピンを位置決めピン用穴14に挿入して位置出しを行う(ステップS540)。
【0101】
そして、ステップS540において、位置出しが完了すると、先程挿入した位置決めピンを1本抜いて、短い位置決めピンに差し替え、この作業を全ての位置決めピンに対して実行する。
さらに、新たに挿入した短い位置決めピンが、位置決めピン用穴14内に隠れていることを確認した上で、外形のズレを調整する。
なお、新たに挿入した位置決めピンは、抜かずに、金属接合処理の際に、焼結する(ステップS620)。
【0102】
次に、拡散接合装置に第1のモールド金型部品片11Dと第2のモールド金型部品片12Dとを設置する(ステップS740)。
【0103】
そして、拡散接合装置により、第1のモールド金型部品片11Dと第2のモールド金型部品片12Dとを金属接合させる(ステップS840)。
最後に、製品外形に対する接合ブランク領域18を削り、最終製品としての可動モールド金型部品を完成させる。
【0104】
<作用・効果>
本実施形態に係る可動モールド金型部品10A4では、第1のモールド金型部品片11Dおよび第2のモールド金型部品片12Dの製品外形の外側側面に複数の位置決め用の貫通孔14が設けられ、接合工程において、防錆・堆積物付着防止加工された第1のモールド金型部品片11Dおよび第2のモールド金型部品片12Dの貫通孔14に位置決めピンを挿入して位置決めし、金属接合により一体化する。
つまり、第1のモールド金型部品片11Dおよび第2のモールド金型部品片12Dの製品外形の外側側面に設けられた複数の位置決め用の貫通孔14に位置決めピンを挿入して位置決めし、金属接合が行われることから、第1のモールド金型部品片11Dと第2のモールド金型部品片12Dが精度よく接合されることため、水路13がズレなく形成される。
また、水路13がズレなく形成されることから、水路13のズレにより生じる新たな錆等の発生を的確に防止することができる。
また、位置決めピンが挿入される貫通孔14が形成された接合ブランク領域18を削り落として、最終製品となるため、製品の外観を損なうことがない。
【0105】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0106】
1;射出成型機
10;金型
10A;可動モールド金型部品
10A1;可動モールド金型部品
10A2;可動モールド金型部品
10A3;可動モールド金型部品
10A4;可動モールド金型部品
10B;固定モールド金型部品
10W;平面
11;第1のモールド金型部品片
11A;第1のモールド金型部品片
11B;第1のモールド金型部品片
11C;第1のモールド金型部品片
11D;第1のモールド金型部品片
12;第2のモールド金型部品片
12A;第2のモールド金型部品片
12B;第2のモールド金型部品片
12C;第2のモールド金型部品片
12D;第2のモールド金型部品片
13;水管
14;位置決めピン用穴(貫通孔)
14A;位置決めピン用穴(貫通孔)
14B;位置決めピン用穴(貫通孔)
14a;凹部
15;接合面
16;防錆・堆積物付着防止加工
17;磁石
20;型締めユニット
30;射出ユニット
31;ホッパー
32;シリンダ
33;モータ
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