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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059540
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】T形断面の強化型鋼板ダンパー
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20240423BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240423BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
E04H9/02 351
F16F15/02 Z
F16F7/12
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014357
(22)【出願日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】111139533
(32)【優先日】2022-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】512107846
【氏名又は名称】財團法人國家實驗研究院
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL APPLIED RESEARCH LABORATORIES
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲蔡▼克銓
(72)【発明者】
【氏名】陳▲緯▼達
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼安傑
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139BA04
2E139BA08
3J048BC09
3J048BE10
3J048EA38
3J066AA26
3J066BD07
3J066BF01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】建築構造体を補強する特に建築物の構造体の間に設置される鋼板ダンパーを提供する。
【解決手段】前記鋼板ダンパーは、前記建築構造体の第1部材61と、第1部材61に対向する第2部材62との間に設置され、第1弾性部1、第2弾性部2、エネルギー散逸部3、第1端板4、第2端板5を備える。前記第1弾性部1または前記第2弾性部2における第1方向D1に垂直な断面の面積は、前記エネルギー散逸部3における前記第1方向D1に垂直な断面の面積より大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造体を補強するための鋼板ダンパーであって、前記鋼板ダンパーは、第1方向に沿って前記建築構造体の第1部材と第2部材との間に設置され、
前記建築構造体の前記第1部材に連結され、第1主板、及び前記第1主板の両側に対称に設置される2つの第1側板を有する第1弾性部と、
前記建築構造体の前記第2部材に連結され、第2主板、及び前記第2主板の両側に対称に設置される2つの第2側板を有する第2弾性部と、
前記第1弾性部と前記第2弾性部の間に設置され、腹板、及び前記腹板の少なくとも1つの表面に垂直に設置される少なくとも1つの強化板を有するエネルギー散逸部と、
前記第1弾性部と前記エネルギー散逸部との間に設置され、前記第1主板、前記第1側板、及び前記腹板に垂直に連結される第1端板と、
前記第2弾性部と前記エネルギー散逸部との間に設置され、前記第2主板、前記第2側板、及び前記腹板に垂直に連結される第2端板と、を備え、
前記第1弾性部または前記第2弾性部における前記第1方向に垂直な断面の面積は、前記エネルギー散逸部における前記第1方向に垂直な断面の面積より大きい、鋼板ダンパー。
【請求項2】
前記第1弾性部と前記第2弾性部の剛性及び強度は、いずれも前記エネルギー散逸部の剛性及び強度より大きいことを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【請求項3】
前記第1弾性部の幅は前記第2弾性部の幅と実質的に等しく、前記第1弾性部の幅及び前記第2弾性部の幅は前記エネルギー散逸部の幅より大きいことを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【請求項4】
前記第1弾性部は、さらに2つの第1翼板と2つの第1側翼板を有し、前記2つの第1翼板は、それぞれ前記第1主板の両側に垂直に設置され、前記2つの第1側翼板のうちの一方は、前記2つの第1側板のうちの一方における前記第1主板から離れた側に位置し、前記2つの第1側翼板のうちの他方は、前記2つの第1側板のうちの他方における前記第1主板から離れた側に位置し、前記第2弾性部は、さらに2つの第2翼板と2つの第2側翼板を有し、前記2つの第2翼板は、それぞれ前記第2主板の両側に垂直に設置され、前記2つの第2側翼板のうちの一方は、前記2つの第2側板のうちの一方における前記第2主板から離れた側に位置し、前記2つの第2側翼板のうちの他方は、前記2つの第2側板のうちの他方における前記第2主板から離れた側に位置することを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【請求項5】
前記エネルギー散逸部は、前記腹板の両側にそれぞれ垂直に設置される2つのエネルギー散逸翼板を有することを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【請求項6】
前記第1弾性部、前記第2弾性部、及び前記エネルギー散逸部は、それぞれH形鋼、箱形鋼、L形鋼、I形鋼、またはU形鋼を切断して組み合わせることにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【請求項7】
前記第1弾性部、前記第2弾性部、及び前記エネルギー散逸部は、少なくとも1つのH形鋼を切断して組み合わせることにより構成されることを特徴とする請求項6に記載の鋼板ダンパー。
【請求項8】
前記強化板は、前記第1端板と前記第2端板に垂直に連結されることを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【請求項9】
前記強化板は、前記第1端板と前記第2端板に平行であることを特徴とする請求項1または8のいずれか一項に記載の鋼板ダンパー。
【請求項10】
前記強化板は、前記エネルギー散逸部の前記腹板の同一面または対向面にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項9に記載の鋼板ダンパー。
【請求項11】
前記強化板は、溶接接合により前記腹板に連結されることを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板ダンパーに関し、特に建築物の構造体の間に設置される鋼板ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
地震災害は常に人命や財産に甚大な損失を与えるため、建築物の耐震性の向上は、構造工学の発展において重要な課題の一つである。特に地震が頻発する地域では、地震は多くの建築物に損害を与え、人命や財産を危険にさらすことがある。そのため、既存の建築物の耐震補強だけでなく、新築の耐震性能の強化も減災対策として非常に重要な方法である。
【0003】
近年、様々な建築物の免震、制震、耐震技術が開発されている。一般的に、地震や風による水平方向の外力に抵抗できるように建築物の構造体の強度を確保するために、通常、制震・エネルギー散逸装置が必要である。主な原理は、これらの制震・エネルギー散逸装置によってエネルギーを散逸させ、強い外力が加わったときに、構造物の変形を低減し、構造物の損傷を避けることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋼板ダンパーを含む構造(SPD-MRF)は、金属降伏の制震構造の一つであり、従来の屈曲防止構造に鋼板ダンパーを追加して組み込むことで、剛性、強度、靭性、エネルギー散逸性能を向上させたシステムである。また、鋼板ダンパーも、せん断降伏型の耐震柱となっている。しかし、従来の鋼板ダンパーは、通常、弾性部とエネルギー散逸部を含む。一般的に、弾性部は普通鋼で作られており、エネルギー散逸部は低降伏強度鋼(LYP steel)で作られている。しかし、低降伏強度鋼は高価であり、工事が困難である。そのため、短期間に工事ができ、低コストで、建築物の耐震性能を大幅に向上できる耐震システムの開発が急務となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、建築構造体を補強するための鋼板ダンパーを提供する。前記鋼板ダンパーは、第1方向に沿って前記建築構造体の第1部材と第2部材との間に設置され、前記建築構造体の前記第1部材に連結され、第1主板、及び前記第1主板の両側に対称に設置される2つの第1側板を有する第1弾性部と、前記建築構造体の前記第2部材に連結され、第2主板、及び前記第2主板の両側に対称に設置される2つの第2側板を有する第2弾性部と、前記第1弾性部と前記第2弾性部の間に設置され、腹板、及び前記腹板の少なくとも1つの表面に垂直に設置される少なくとも1つの強化板を有するエネルギー散逸部と、前記第1弾性部と前記エネルギー散逸部との間に設置され、前記第1主板、前記第1側板、及び前記腹板に垂直に連結される第1端板と、前記第2弾性部と前記エネルギー散逸部との間に設置され、前記第2主板、前記第2側板、及び前記腹板に垂直に連結される第2端板と、を備え、前記第1弾性部または前記第2弾性部における前記第1方向に垂直な断面の断面積は、前記エネルギー散逸部における前記第1方向に垂直な断面の断面積より大きい。
【0006】
本発明の実施形態において、前記第1弾性部と前記第2弾性部の剛性及び強度は、いずれも前記エネルギー散逸部の剛性及び強度より大きい。
【0007】
本発明の実施形態において、前記第1弾性部の幅は前記第2弾性部の幅と実質的に等しく、前記第1弾性部の幅及び前記第2弾性部の幅は前記エネルギー散逸部の幅より大きい。
【0008】
本発明の実施形態において、前記第1弾性部は、さらに2つの第1翼板と2つの第1側翼板を有し、前記2つの第1翼板は、それぞれ前記第1主板の両側に垂直に設置され、前記2つの第1側翼板のうちの一方は、前記2つの第1側板のうちの一方における前記第1主板から離れた側に位置し、前記2つの第1側翼板のうちの他方は、前記2つの第1側板のうちの他方における前記第1主板から離れた側に位置し、前記第2弾性部は、さらに2つの第2翼板と2つの第2側翼板を有し、前記2つの第2翼板は、それぞれ前記第2主板の両側に垂直に設置され、前記2つの第2側翼板のうちの一方は、前記2つの第2側板のうちの一方における前記第2主板から離れた側に位置し、前記2つの第2側翼板のうちの他方は、前記2つの第2側板のうちの他方における前記第2主板から離れた側に位置する。
【0009】
本発明の実施形態において、前記エネルギー散逸部は、前記腹板の両側にそれぞれ垂直に設置される2つのエネルギー散逸翼板を有する。
【0010】
本発明の実施形態において、前記第1弾性部、前記第2弾性部、及び前記エネルギー散逸部は、それぞれH形鋼、箱形鋼、L形鋼、I形鋼、またはU形鋼を切断して組み合わせることにより構成される。
【0011】
本発明の実施形態において、前記第1弾性部、前記第2弾性部、及び前記エネルギー散逸部は、少なくとも1つのH形鋼を切断して組み合わせることにより構成される。
【0012】
本発明の実施形態において、前記強化板は、前記第1端板と前記第2端板に垂直に連結される。
【0013】
本発明の実施形態において、前記強化板は、前記第1端板と前記第2端板に平行である。
【0014】
本発明の実施形態において、前記少なくとも1つの強化板は、前記エネルギー散逸部の前記腹板の同一面または対向面にそれぞれ形成されている。
【0015】
本発明の実施形態において、前記強化板は、溶接接合により前記腹板に連結される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る鋼板ダンパーは、一般に使用されている鋼材で作製することができる。低降伏強度鋼のような特殊鋼を使用する必要がないため、作製コストを大幅に削減することが可能である。なお、本発明に係る鋼板ダンパーは、構造体の上梁及び下梁と溶接接合によって接合することが好ましい。前記鋼板ダンパーの第1弾性部、エネルギー散逸部、及び第2弾性部は、H形鋼を切断して溶接接合することによって作製される。そのため、本発明に係る鋼板ダンパーは、作製と組立が簡単であり、作製時間とコストを大幅に削減し、生産率を向上させることが可能である。両側のT形断面は全体の横方向の剛性を効率的に高めるため、実用上に高い競争力がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る鋼板ダンパーを示す正面模式図。
図2】本発明の実施形態に係る鋼板ダンパーを示す斜視図。
図3】本発明の実施形態に係る鋼板ダンパーの作製工程を示す模式図。
図4】本発明の実施形態に係る鋼板ダンパーの作製工程を示す模式図。
図5】本発明の実施形態に係る鋼板ダンパーの第1弾性部及び第2弾性部を示す断面図。
図6】本発明の実施形態に係る鋼板ダンパーのエネルギー散逸部を示す断面図。
図7】本発明の試験例における試験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施態様を詳細に説明するために実施例を示す。本発明に開示されている内容により、本発明の利点及び効果はより明らかになるであろう。添付の図は、例示のものであり、説明のために簡略化されたものである。図に示された構成要素の数、形状、及び寸法は、実際の状況に応じて変更することができ、各構成要素の構成はより複雑なものになる可能性がある。本発明は、他の態様で実施または適用することが可能であり、本発明の原理及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び調整を行うことができる。
【0019】
[鋼板ダンパーの作製方法]
【0020】
本発明の実施形態において、鋼板ダンパーはH形鋼を切断して溶接接合することによって作製される。詳細な作製工程を以下の図1乃至図6に示す。
【0021】
まず、図3の切断面(P1、P2)に沿ってH形鋼を切断し、図3に示すブロックA~Eを得る。次に、図4に示すように、ブロックBとブロックCをブロックAの上端の両側に溶接接合し、ブロックDとブロックEをブロックAの下端の両側に溶接接合することで、第1弾性部1、第2弾性部2、及びエネルギー散逸部3を定義する。次に、図1および図2に示すように、第1弾性部1とエネルギー散逸部3との間、第2弾性体部2とエネルギー散逸部3との間、及びエネルギー散逸部3の腹板11の表裏面には、複数の鋼板が溶接接合され、第1端板4、第2端板5、及び強化板32がそれぞれ形成される。これによって、本実施例に係る鋼板ダンパー1000が完成する。
【0022】
本実施例に係る鋼板ダンパーにおいて、構成部品はすべてSN400B鋼で構成され、表1に示すような寸法になっている。
【0023】
【表1】
【0024】
本実施例で作製された鋼板ダンパー1000は、第1弾性部1、第2弾性部2、エネルギー散逸部3、第1端板4、及び第2端板5を備える。次に、第1弾性部1は、溶接接合によって建築構造体の第1部材(上梁)61に連結される。第2弾性部2は、溶接接合によって建築構造体の第2部材(下梁)62に連結される。鋼板ダンパー1000は、第1方向D1に沿って延在する。第1部材61及び第2部材62は、第1方向D1と垂直である。或いは、他の実施例において、第1弾性部1及び第2弾性部2は、それぞれボルトによって建築構造体の第1部材(上梁)61及び第2部材(下梁)62に連結されてもよく、特に制限はない。
【0025】
詳しくは、第1弾性部1は、第1主板11、2つの第1側板12、2つの第1翼板13、及び2つの第1側翼板14を有する。2つの第1側板12は、第1主板11の両側に対称に設置されている。2つの第1翼板13は、第1主板11の両側に垂直に設置されている。2つの第1側翼板14は、それぞれ第1側板12と垂直である。2つの第1側翼板14のうちの一方は、2つの第1側板12のうちの一方における第1主板11から離れた側に位置し、2つの第1側翼板14のうちの他方は、2つの第1側板12のうちの他方における第1主板11から離れた側に位置している。
【0026】
第2弾性部2は、第2主板21、2つの第2側板22、2つの第2翼板23、及び2つの第2側翼板24を有する。2つの第2側板22は、第2主板21の両側に対称に設置されている。2つの第2翼板23は、第2主板21の両側に垂直に設置されている。2つの第2側翼板24のうちの一方は、2つの第2側板22のうちの一方における第2主板21から離れた側に位置し、2つの第2側翼板24のうちの他方は、2つの第2側板22のうちの他方における第2主板21から離れた側に位置している。
【0027】
エネルギー散逸部3は、第1弾性部1と第2弾性部2の間に設置される。エネルギー散逸部3は、腹板31、強化板32、及び2つのエネルギー散逸翼板33を有する。この実施例において、強化板32の数は1つであり、腹板31の表面に横方向に設置され、エネルギー散逸翼板33と共に2つの矩形の領域を定義する。しかし、他の実施例において、強化板32の数は必要に応じて決めることができ、エネルギー散逸部の座屈の発生を遅らせることができるものであれば、腹板31のいずれの面に横方向または縦方向に設置されてもよく、特に制限はない。2つのエネルギー散逸翼板33は、腹板31の両側に垂直に設置されている。
【0028】
第1端板4は、第1弾性部1とエネルギー散逸部3との間に設置される。第1端板4は、第1主板11、第1側板12、及び腹板31に垂直に連結される。第2端板5は、第2弾性部2とエネルギー散逸部3との間に設置される。第2端板5は、第2主板21、第2側板22、及び腹板31に垂直に連結される。
【0029】
なお、第1弾性部1及び第2弾性部2における第1方向D1に垂直な断面、即ち図1のa-a’断面を図5に示す。エネルギー散逸部3における第1方向D1に垂直な断面、即ち図1のb-b’断面を図6に示す。図5に示すように、第1弾性部1と第2弾性部2の断面の面積は同じであり、図6に示すエネルギー散逸部3の断面の面積より大きい。図5、6に示すように、第1弾性部1の幅Wは第2弾性部2の幅Wと等しく、エネルギー散逸部3の幅Wより大きい。また、第1弾性部1と第2弾性部2の剛性及び強度は、いずれもエネルギー散逸部3の剛性及び強度より大きい。
【0030】
ところで、他の実施例において、鋼板ダンパーは、箱形鋼、L形鋼、I形鋼、またはU形鋼を切断して組み合わせることにより作製される。第1弾性部と第2弾性部の断面の面積を、エネルギー散逸部の断面の面積より大きくし、第1弾性部と第2弾性部の剛性及び強度を、いずれもエネルギー散逸部の剛性及び強度より大きくすればよい。
【0031】
[試験例1]鋼板ダンパーの繰返し荷重試験
【0032】
この試験例において、前記実施例の鋼板ダンパー1000を試験対象とし、多軸試験システム(Multi-Axial Testing System、MATS)で繰返し荷重試験を行う。MATSは、6自由度で垂直力、横力、傾き曲げモーメントをかけることが可能である。本試験の負荷時間は、梁部材の繰返し荷重試験に関する[AISC341-16 2016]基準に基づいている。面内変位角度は、0.375%、0.50%、0.75%、1.0%、1.5%、2%、3%、4%、5%とした。建物の高さを2.6メートルと想定し、各変位角で6回、6回、6回、4回、2回、2回、2回、2回、2回の循環で試験を行う。残りの境界条件として、MATSの上端と下端で回転しないことである。試験中、試験対象には500kNの軸圧がかかり、試験対象の上端と下端に面外方向の相対変位がない。
【0033】
前記実施例の鋼板ダンパー1000の試験結果を図7に示す。エネルギー散逸部の最大せん断変形は12%ラジアンに達し、層間変位角は4%ラジアンであり、累積塑性変形量は降伏変形量の200倍以上である。以上の試験結果から、本発明に係る強化板がエネルギー散逸部の座屈を遅らせることができ、第1弾性部及び第2弾性部が設計通りに弾性を維持できることが確認された。
【0034】
この試験例の結果から、本発明に係る鋼板ダンパーは、高い靭性と高いエネルギー散逸能力を有することが分かった。そのため、地震時に、鋼板ダンパーのコアとなるエネルギー散逸部は、せん断変形を繰り返してエネルギーを散逸させることができ、エネルギー散逸部に設置された強化板は、座屈の発生を遅らせることができる。
【符号の説明】
【0035】
1000 鋼板ダンパー
1 第1弾性部
11 第1主板
12 第1側板
13 第1翼板
14 第1側翼板
2 第2弾性部
21 第2主板
22 第2側板
23 第2翼板
24 第2側翼板
3 エネルギー散逸部
31 腹板
32 強化板
33 エネルギー散逸翼板
4 第1端板
5 第2端板
61 第1部材
62 第2部材
D1 第1方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造体を補強するための鋼板ダンパーであって、前記鋼板ダンパーは、第1方向に沿って前記建築構造体の第1部材と第2部材との間に設置され、
前記建築構造体の前記第1部材に連結され、第1主板、及び前記第1主板の両側に対称に設置される2つの第1側板を有する第1弾性部と、
前記建築構造体の前記第2部材に連結され、第2主板、及び前記第2主板の両側に対称に設置される2つの第2側板を有する第2弾性部と、
前記第1弾性部と前記第2弾性部の間に設置され、腹板、及び前記腹板の少なくとも1つの表面に垂直に設置される少なくとも1つの強化板を有するエネルギー散逸部と、
前記第1弾性部と前記エネルギー散逸部との間に設置され、前記第1主板、前記第1側板、及び前記腹板に垂直に連結される第1端板と、
前記第2弾性部と前記エネルギー散逸部との間に設置され、前記第2主板、前記第2側板、及び前記腹板に垂直に連結される第2端板と、を備え、
前記第1弾性部または前記第2弾性部における前記第1方向に垂直な断面の面積は、前記エネルギー散逸部における前記第1方向に垂直な断面の面積より大きく、
前記第1弾性部、前記第2弾性部、及び前記エネルギー散逸部は、少なくとも1つの切断されたH形鋼で構成された部品である、鋼板ダンパー。
【請求項2】
前記第1弾性部と前記第2弾性部の剛性及び強度は、いずれも前記エネルギー散逸部の剛性及び強度より大きいことを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【請求項3】
前記第1弾性部の幅は前記第2弾性部の幅と実質的に等しく、前記第1弾性部の幅及び前記第2弾性部の幅は前記エネルギー散逸部の幅より大きいことを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【請求項4】
前記第1弾性部は、さらに2つの第1翼板と2つの第1側翼板を有し、前記2つの第1翼板は、それぞれ前記第1主板の両側に垂直に設置され、前記2つの第1側翼板のうちの一方は、前記2つの第1側板のうちの一方における前記第1主板から離れた側に位置し、前記2つの第1側翼板のうちの他方は、前記2つの第1側板のうちの他方における前記第1主板から離れた側に位置し、前記第2弾性部は、さらに2つの第2翼板と2つの第2側翼板を有し、前記2つの第2翼板は、それぞれ前記第2主板の両側に垂直に設置され、前記2つの第2側翼板のうちの一方は、前記2つの第2側板のうちの一方における前記第2主板から離れた側に位置し、前記2つの第2側翼板のうちの他方は、前記2つの第2側板のうちの他方における前記第2主板から離れた側に位置することを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【請求項5】
前記エネルギー散逸部は、前記腹板の両側にそれぞれ垂直に設置される2つのエネルギー散逸翼板を有することを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【請求項6】
前記強化板は、前記第1端板と前記第2端板に垂直に連結されることを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。
【請求項7】
前記強化板は、前記第1端板と前記第2端板に平行であることを特徴とする請求項1またはのいずれか一項に記載の鋼板ダンパー。
【請求項8】
前記強化板は、前記エネルギー散逸部の前記腹板の少なくとも一つの表面に形成されていることを特徴とする請求項に記載の鋼板ダンパー。
【請求項9】
前記強化板は、溶接接合により前記腹板に連結されることを特徴とする請求項1に記載の鋼板ダンパー。