IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オメガ・エス アーの特許一覧

特開2024-59581剛性を調整する手段を備える計時器用共振器機構のための渦巻きばね
<>
  • 特開-剛性を調整する手段を備える計時器用共振器機構のための渦巻きばね 図1
  • 特開-剛性を調整する手段を備える計時器用共振器機構のための渦巻きばね 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059581
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】剛性を調整する手段を備える計時器用共振器機構のための渦巻きばね
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/06 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
G04B17/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023172639
(22)【出願日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】22202267.5
(32)【優先日】2022-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】イバン・エルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・ル モアル
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・フロジオ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キュザン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】効果的かつ正確な調整手段を備える渦巻きばねを提供する。
【解決手段】計時器用共振器機構のための、渦巻きばねは、自身のまわりに巻かれた複数の巻きを形成するフレキシブル細長材2を備え、細長材2は、所定の剛性を有し、渦巻きばねは、その剛性を調整するための調整手段を備え、調整手段は、細長材2と直列に配置される固有な細長フレキシブル要素5を備え、細長フレキシブル要素5は、細長材2の1つの端4を固定支持体11に接続して、細長材2に付加的な剛性を付加し、細長フレキシブル要素5は、好ましくは、細長材2の剛性よりも高い剛性を有し、調整手段は、少なくとも2つの異なる応力を及ぼすための予応力手段6を備え、予応力手段6は、細長材2の端4に取り付けられて、第1の応力の調整を可能にし、予応力手段6は、細長材2の端4に取り付けられて、第1の応力とは独立に第2の応力の調整を可能にする、第2のレバー15を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に計時器用共振器機構のための、渦巻きばねであって、
前記渦巻きばね(1)は、自身のまわりに巻かれた複数の巻きを形成するフレキシブル細長材(2)を備え、
前記細長材(2)は、所定の剛性を有し、
前記渦巻きばね(1)は、その剛性を調整するための調整手段を備え、
前記調整手段は、前記細長材(2)と直列に配置される固有な細長フレキシブル要素(5)を備え、
前記細長フレキシブル要素(5)は、前記細長材(2)の1つの端(4、19)を固定支持体(11)に接続して、前記細長材(2)に付加的な剛性を付加し、
前記細長フレキシブル要素(5)は、好ましくは、前記細長材(2)の剛性よりも高い剛性を有し、
前記調整手段は、少なくとも2つの異なる応力を及ぼすための予応力手段(6)を備え、
前記予応力手段(6)は、前記細長材(2)の前記端(4、19)に取り付けられて、第1の応力の調整を可能にする第1のレバー(8)を備え、
前記予応力手段(6)は、前記細長材(2)の前記端(4、19)に取り付けられて、前記第1の応力とは独立に第2の応力の調整を可能にする、第2のレバー(15)を備える
ことを特徴とする渦巻きばね。
【請求項2】
前記第1の応力は、前記細長フレキシブル要素(5)の長手方向に実質的に向いている第1の引張/圧縮力FL1、又は前記細長フレキシブル要素(5)の長手方向に実質的に直交する方向に実質的に向いている第1の力FT1、又は好ましくは曲げモーメントである、第1のトルクM1、のいずれかによって及ぼされ、
これによって、予応力のレベルに応じて前記細長フレキシブル要素(5)の剛性を変える
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項3】
前記第2の応力は、実質的に前記細長フレキシブル要素(5)の長手方向に向いている第2の引張/圧縮力FL2、又は実質的に前記細長フレキシブル要素(5)の長手方向に直交する方向に実質的に向いている第2の力FT2、又は好ましくは曲げモーメントである、第2のトルクM2、のいずれかによって及ぼされ、
これによって、予応力のレベルに応じて前記細長フレキシブル要素(5)の剛性を変える
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項4】
前記予応力手段(6)は、前記細長フレキシブル要素(5)に第3の応力を及ぼすように構成しており、
前記第3の応力は、前記第1の応力が及ぼされるところに、前記第1の引張/圧縮力FL1、又は前記実質的に直交方向の第1の力FT1、又は前記第1のトルクM1、のいずれかによって、及ぼされる
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項5】
前記第3の応力は、前記第1のレバー(8)によって調整可能である
ことを特徴とする請求項4に記載の渦巻きばね。
【請求項6】
前記予応力手段(6)は、前記細長フレキシブル要素(5)に第4の応力を及ぼすように構成しており、
前記第4の応力は、前記第2の応力が及ぼされるところに、前記第2の引張/圧縮力FL2、又は前記実質的に直交方向の第2の力FT2、又は前記第2のトルクM2、のいずれかによって、及ぼされる
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項7】
前記第4の応力は、前記第2のレバー(15)によって調整可能である
ことを特徴とする請求項6に記載の渦巻きばね。
【請求項8】
前記予応力手段(6)は、前記細長フレキシブル要素(5)に第5の応力を及ぼすように構成しており、
前記第5の応力は、前記第1の応力が及ぼされるところに、前記第1の引張/圧縮力FL1、又は前記実質的に直交方向の第1の力FT1、又は前記第1のトルクM1、のいずれかによって、及ぼされる
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項9】
前記第5の応力は、前記第1のレバー(8)によって調整可能である
ことを特徴とする請求項8に記載の渦巻きばね。
【請求項10】
前記予応力手段(6)は、前記細長フレキシブル要素(5)に第6の応力を及ぼすように構成しており、
前記第6の応力は、前記第2の応力と前記第4の応力が及ぼされるところに、前記第2の引張/圧縮力FL2、又は前記実質的に直交方向の第2の力FT2、又は前記第2のトルクM2、のいずれかによって、及ぼされる
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項11】
前記第6の応力は、前記第2のレバー(15)によって調整可能である
ことを特徴とする請求項10に記載の渦巻きばね。
【請求項12】
前記細長フレキシブル要素(5)は、固有なフレキシブルブレード(13)である
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項13】
前記細長フレキシブル要素(5)は、前記渦巻きばね(1)の半径方向に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項14】
前記第1のレバー(8)と前記第2のレバー(15)は、フレキシブルである
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項15】
前記第1のレバー(8)には、第1の自由端(12)があり、この第1の自由端(12)は、この第1の自由端(12)の運動によってアクチュエートされて、前記応力を前記細長フレキシブル要素(5)に及ぼすことができ、
前記第2のレバー(15)には、第2の自由端(16)があり、この第2の自由端(16)は、前記第2の自由端(16)の運動によってアクチュエートされて、前記応力を前記細長フレキシブル要素(5)に及ぼすことができる
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の渦巻きばね。
【請求項16】
前記第1のレバー(8)と第2のレバー(15)は、異なる強度を有する前記応力の調整を可能にするように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項17】
前記第1のレバー(8)と第2のレバー(15)は、互いに異なる断面又は強度を有する
ことを特徴とする請求項16に記載の渦巻きばね。
【請求項18】
前記応力は、前記予応力手段(6)によって連続的に調整可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項19】
前記細長フレキシブル要素(5)と前記レバー(8、15)は、前記細長材(2)の外端(4)に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項20】
特に振動錘を備える計時器用ムーブメントのための、回転式共振器機構であって、
請求項1に記載の渦巻きばねを備える
ことを特徴とする回転式共振器機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器用共振器機構の渦巻きばねであって、この渦巻きばねの剛性をセッティングする手段を備えるものに関する。本発明は、さらに、このような渦巻きばねを備える計時器用共振器機構に関する。
【背景技術】
【0002】
現状の機械式の携行型時計(例、腕時計、懐中時計)のほとんどは、スイス式パレットのタイプの渦巻きバランスとエスケープ機構を備える。この渦巻きバランスは、携行型時計のタイムベースを形成する。この渦巻きバランスは、共振器とも呼ばれる。
【0003】
次に、エスケープは、
- 共振器の往復運動を維持する機能
- これらの往復運動をカウントする機能
の2つの主な機能を発揮する。
【0004】
機械的共振器を形成するためには、慣性要素、ガイド、及び弾性戻し要素が必要である。伝統的に、渦巻きばねは、バランスによって形成される慣性要素の弾性戻し要素として機能する。このバランスは、ルビーによって作られたプレーンベアリング内にて回転するピボットによって回転可能にガイドされる。
【0005】
一般的には、バランスの渦巻きばねは、携行型時計の精度を向上させるためにセッティング可能であるべきである。このために、ばねの有効長を変えるためのインデックスのような、渦巻きばねの剛性を調整するための調整手段を用いる。このようにして、携行型時計のランニングの精度を調整するために渦巻きばねの剛性が変えられる。しかし、ランニングを調整するための伝統的なインデックスの有効性は限られ、1日当たり数秒や数十秒の範囲までにセッティングを十分に正確にするためには必ずしも有効ではない。
【0006】
ランニングをより精密に調整するために、バランスの周縁に配置される一又は複数のねじを備えるセッティング手段がある。ねじに作用することによって、バランスの慣性が変わり、これによって、バランスのランニングが変わる。
【0007】
しかし、このセッティング方法は、実行が容易ではない。なぜなら、バランスの平衡を乱し、発振器のランニングのセッティングを十分に精密にすることを可能にしないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特に、渦巻きばねの有効剛性を変えることによって計時器のランニングをセッティングするように構成している、効果的かつ正確な調整手段を備える渦巻きばねを提供することによって、前記課題のすべて又は一部を克服するように意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、本発明は、特に計時器用共振器機構のための、渦巻きばねに関し、前記渦巻きばねは、自身のまわりに巻かれた複数の巻きを形成するフレキシブル細長材を備え、前記細長材は、所定の剛性を有し、前記渦巻きばねは、その剛性を調整するための調整手段を備え、前記調整手段は、前記細長材と直列に配置される固有な細長フレキシブル要素を備え、前記細長フレキシブル要素は、前記細長材の1つの端を固定支持体に接続して、前記細長材に付加的な剛性を付加し、前記細長フレキシブル要素は、好ましくは、前記細長材の剛性よりも高い剛性を有し、前記調整手段は、少なくとも2つの異なる応力(effort)を及ぼすための予応力手段を備える。
【0010】
前記予応力手段は、前記細長材の前記端に取り付けられて、第1の応力の調整を可能にする第1のレバーを備え、前記予応力手段は、前記細長材の前記端に取り付けられて、前記第1の応力とは独立に第2の応力の調整を可能にする、第2のレバーを備えるという点で、本発明は画期的である。
【0011】
本発明のおかげで、フレキシブルブレードのような細長フレキシブル要素の剛性を変えることができる。実際に、2つの応力が及ぼされたときに、細長フレキシブル要素の剛性が変わる。力であろうとトルク(couple)であろうと、1つの単一の応力を及ぼしたときには、細長フレキシブル要素の剛性は同じままである。ブレードに長手方向と直交方向の2つの垂直力が及ぼされると、全体的な力が得られ、これによって、細長フレキシブル要素の剛性が変わる。力とトルクによっても、剛性が変わる。2つの応力を組み合わせることが、剛性を変えることを可能にするためには不可欠である。
【0012】
予応力手段に作用することによって、負荷の強度レベルが変えられ、これによって、フレキシブル要素と細長材を含む組み合わせの剛性が変わる。実際に、細長材と直列に設置されるフレキシブル要素は、剛性を増し、この剛性は細長材の剛性と組み合わされる。したがって、予応力手段は、細長フレキシブル要素に可変の応力を及ぼす場合、細長フレキシブル要素に及ぼされる可変の力にかかわらず、細長材の剛性を変えることなく、フレキシブル要素の剛性、したがって、細長材とフレキシブル要素を含む組み合わせの剛性、を変える。
【0013】
すなわち、細長材の一端と固定支持体の間にて、細長材と直列に、フレキシブル要素が配置される。このフレキシブル要素は、細長材と細長材の取り付け点の間に調整可能な付加的な剛性をもたらし、したがって、共振器のフレキシブル性を高くする。したがって、細長材の剛性及びフレキシブル要素の剛性は、共振器の有効剛性に寄与する。フレキシブル要素に予応力を及ぼすための可変な応力が、好ましくは細長材に予応力を及ぼすことなく、及ぼされる。フレキシブル要素に予応力を及ぼすことによって、その剛性は変わり、細長材の剛性は、実質的に変わらないままである。フレキシブル要素の剛性を変えることによって、共振器の剛性(細長材の剛性及びフレキシブル要素の剛性)が変わり、これによって、共振器のランニングが変わる。
【0014】
したがって、フレキシブル要素の剛性が変わることで、共振器全体の剛性が変わり、結果的に、そのランニングを精密にセッティングし、これによって、タイムベースの振動数を正確に調整することが可能になる。このように、1つの単一の追加要素が作用を受けて渦巻きばねの剛性を調整するために、ランニングのセッティングにおいて非常に高い精度が得られる。
【0015】
また、2つのレバーのそれぞれは、互いに独立に予応力のセッティングを実行して、より正確なセッティングを達成することを可能にする。さらに、レバーどうしが異なっていれば、2つの異なる強度セッティングを得ることができる。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、前記第1の応力は、前記細長フレキシブル要素の長手方向に実質的に向いている第1の引張/圧縮力、又は前記細長フレキシブル要素の長手方向に実質的に直交する方向に実質的に向いている第1の力、又は好ましくは曲げモーメントである、第1のトルクM、のいずれかによって及ぼされ、これによって、予応力のレベルに応じて前記細長フレキシブル要素の剛性を変える。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、前記第2の応力は、実質的に前記細長フレキシブル要素の長手方向に向いている第2の引張/圧縮力FL2、又は実質的に前記細長フレキシブル要素の長手方向に直交する方向に実質的に向いている第2の力FT2、又は好ましくは曲げモーメントである、第2のトルクM2、のいずれかによって及ぼされ、これによって、予応力のレベルに応じて前記細長フレキシブル要素の剛性を変える。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記細長フレキシブル要素に第3の応力を及ぼすように構成しており、前記第3の応力は、前記第1の応力が及ぼされるところに、前記細長フレキシブル要素の長手方向に実質的に直交する方向に実質的に向いている力、又は好ましくは曲げモーメントである、トルク、のいずれかによって、及ぼされる。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記細長フレキシブル要素に第3の応力を及ぼすように構成しており、前記第3の応力は、前記第1の応力が及ぼされるところに、前記第1の引張/圧縮力、又は前記第1のトルク、のいずれかによって、及ぼされる。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、前記第3の応力は、前記第1のレバーによって調整可能である。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記細長フレキシブル要素に第4の応力を及ぼすように構成しており、前記第4の応力は、前記第2の応力が及ぼされるところに、前記第2の引張/圧縮力、又は前記実質的に直交方向の第2の力、又は前記第2のトルク、のいずれかによって、及ぼされる。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、前記第4の応力は、前記第2のレバーによって調整可能である。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記細長フレキシブル要素に第5の応力を及ぼすように構成しており、前記第5の応力は、前記第1の応力が及ぼされるところに、前記第1の引張/圧縮力、又は前記実質的に直交方向の第1の力、又は前記第1のトルク、のいずれかによって、及ぼされる。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、前記第5の応力は、前記第1のレバーによって調整可能である。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記細長フレキシブル要素に第6の応力を及ぼすように構成しており、前記第6の応力は、前記第2の応力と前記第4の応力が及ぼされるところに、前記第2の引張/圧縮力FL2、又は前記実質的に直交方向の第2の力FT2、又は前記第2のトルクM2、のいずれかによって、及ぼされる。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、前記第6の応力は、前記第2のレバーによって調整可能である。
【0027】
本発明の特定の実施形態において、長手方向の前記フレキシブル要素は、固有なフレキシブルブレードである。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、前記細長フレキシブル要素は、前記渦巻きばねの半径方向に配置される。
【0029】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のレバーと前記第2のレバーは、フレキシブルである。
【0030】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のレバーと前記第2のレバーは、少なくとも部分的に、巻かれた細長材である。
【0031】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のレバーと前記第2のレバーには、第1の自由端があり、前記第1の自由端は、前記第1の自由端の運動によってアクチュエートすることができ、これによって、前記応力を前記細長フレキシブル要素に及ぼす。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、前記第2のレバーには、第2の自由端があり、前記第2の自由端は、前記第2の自由端の運動によってアクチュエートすることができ、これによって、前記応力を前記細長フレキシブル要素に及ぼす。
【0033】
本発明の特定の実施形態において、前記細長材の端には、アペンディクスがあり、前記予応力手段と前記細長フレキシブル要素は、前記アペンディクスに取り付けられる。
【0034】
本発明の特定の実施形態において、前記長手方向の力、そして、場合によっては前記トルクは、前記予応力手段によって連続的に調整可能である。
【0035】
本発明の特定の実施形態において、前記フレキシブル要素は、前記細長材の外端に配置される。
【0036】
本発明の特定の実施形態において、前記細長材の前記端は、前記細長フレキシブル要素と前記細長材よりも剛性が高い。
【0037】
本発明の特定の実施形態において、前記細長フレキシブル要素と前記レバーは、前記細長材の外端に配置される。
【0038】
本発明の特定の実施形態において、前記細長フレキシブル要素には、フレキシブルなネック部(首部)がある。
【0039】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のレバーと第2のレバーは、異なる強度を有する前記応力の調整を可能にするように構成している。
【0040】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のレバーと前記第2のレバーは、互いに異なる断面又は剛性を有する。
【0041】
本発明は、さらに、振動錘と、前記のような渦巻きばねとを備える、特に計時器用ムーブメントのための、回転式共振器機構に関する。
【0042】
添付の図面を参照しながら、例としてのみ及ぼされる、以下のいくつかの実施形態を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴が明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の実施形態に係る渦巻きばねを上から見た概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る、アペンディクスと、このアペンディクスに及ぼされる応力を上から見た概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、特に計時器用共振器機構のための、渦巻きばね1の1つの実施形態についての概略図を示している。この場合、渦巻きばね1は、実質的に同じ平面内にて延在している。渦巻きばね1は、自身のまわりに巻かれた複数の巻きを形成するフレキシブル細長材2を備え、この細長材2は所定の剛性を有する。渦巻きばね1は、その剛性を調整するための調整手段を備える。特に、例えば、渦巻きばね1が計時器用ムーブメントのプレート(図示せず)上に取り付けられているときに、調整手段をアクチュエートすることができる。
【0045】
本発明によると、調整手段は、細長材2と直列に配置される、長手方向に延在している細長フレキシブル要素5を備え、このフレキシブル要素5は、前記細長材2の一端4を固定支持体11に接続する。すなわち、細長材2は、このフレキシブル要素5によってのみ固定支持体11に接続される。
【0046】
フレキシブル要素5は、細長材2の端4の一方に固定される。以下にて説明する実施形態は、細長材2の外端4に固定されるフレキシブル要素5を備える。細長材2の内端19は、共振器1の振動錘の支持体3に組み付けられるように意図されている。
【0047】
フレキシブル要素5は、細長材2の剛性に付加的な剛性を付加する。好ましくは、フレキシブル要素5は、細長材2の剛性よりも大きい剛性を有する。ここでは、フレキシブル要素5は、細長材2の直線上に配置される。好ましくは、調整手段5と細長材2は、一体的に作られ、場合によって同じ材料によって形成される。
【0048】
また、ここでは、細長材2の端は、アペンディクス9を形成するように垂直に曲がっている。アペンディクス9は、取り付け点として機能し、応力を受けることを可能にする。好ましくは、アペンディクス9は、高い剛性を有し、すなわち、細長材2及び/又は細長フレキシブル要素5、よりも高い剛性を有し、これによって、細長材2の剛性に対するアペンディクス9の影響を最小限に抑える。
【0049】
好ましくは、長手方向のフレキシブル要素5は、アペンディクス9を固定支持体11、14に接続する固有なフレキシブルブレード13、15である。
【0050】
固有なフレキシブルブレード13は、アペンディクス9の直線上に配置される。固有なフレキシブルブレード13は、細長材2の端に垂直の方向に配置される。
【0051】
したがって、固有なフレキシブルブレード13は、渦巻きばね1が休み状態にあるときに、好ましくは渦巻きばね1の中心を通過するように、半径方向に配置される。
【0052】
渦巻きばね1は、さらに、第1の応力と第2の応力である少なくとも2つの異なる応力をフレキシブル要素5に及ぼすために予応力手段6を備える。
【0053】
第1の応力は、細長フレキシブル要素の長手方向に実質的に向いている第1の引張/圧縮力FL1、又は細長フレキシブル要素の長手方向に実質的に直交する方向に実質的に向いている第1の力FT1、又は好ましくは曲げモーメントである、第1のトルクM1、のいずれかによって及ぼされ、これによって、予応力のレベルに応じて細長フレキシブル要素の剛性を変える。
【0054】
第2の応力は、細長フレキシブル要素の長手方向に実質的に向いている第2の引張/圧縮力FL2、又は実質的に細長フレキシブル要素5の長手方向に直交する方向に実質的に向いている第2の力FT2、又は好ましくは曲げモーメントである、第2のトルクM2、のいずれかによって及ぼされ、これによって、予応力のレベルに応じて細長フレキシブル要素の剛性を変える。
【0055】
この実施形態において、第1の応力は、第1の長手方向の引張-圧縮力FL1であり、第2の応力は、直交方向の第2の力FT2であり、これらは可変である。好ましくは、これらの2つの力は、渦巻ばね1の平面内にある。したがって、特にムーブメントのランニングの精度を改善するために、渦巻きばね1の剛性を精密に調整することができる。
【0056】
予応力手段6は、前記力の値に依存して圧縮又は引張応力をフレキシブル要素5が受けることを可能にする。このようにして、フレキシブル要素5の剛性が変わる。
【0057】
フレキシブル要素5のみが、その剛性を、細長材2に直接作用することなく、変えるように作用される。したがって、より高い精度を得ることができる。なぜなら、剛性を調整するために1つの単一の要素を用いるからである。振動の間に、細長材2の端4は、可動であることができる。
【0058】
また、長手方向の力FL1、FL2及び直交方向の力FT1、FT2のような応力は、予応力手段6によって、連続的に調整可能である。すなわち、これらの力は離散値に限定されない。したがって、フレキシブル要素5の剛性を高い精度で調整することができる。
【0059】
予応力手段6は、細長材2の外端4に取り付けられた第1のレバー8を備える。第1のレバー8は、曲がっており、巻かれた細長材2の一部を囲む。第1のレバー8は、準円の形であり、又は中心角が180°に近い円弧の形であり、細長材2の端4のアペンディクス9に取り付けられる。
【0060】
第1のレバー8には、さらに、第1の自由端12があり、この第1の自由端12は、この第1の自由端12の運動によってアクチュエートされて、前記応力を及ぼすことができる。好ましくは、第1のレバー8は、フレキシブルである。第1の自由端12は、アペンディクス9とは反対側に配置される。好ましくは、第1のレバー8は、渦巻ばね1の平面内に配置される。このようにして、第1のレバー8は、第1の応力を調整することを可能にする。
【0061】
予応力手段6は、細長材2の外端4に取り付けられた第2のレバー15を備える。この第2のレバー15は、曲がっており、好ましくは第1のレバー8に対して細長材2の他方の側にて、巻かれた細長材2の一部を囲む。第2のレバー15は、準円の形であり、又は中心角が90°に近い円弧の形であり、細長材2の端4のアペンディクス9に取り付けられる。
【0062】
第2のレバー15には、さらに、第2の自由端16があり、この第2の自由端16は、前記第1の自由端12の運動によってアクチュエートされて、前記応力を及ぼすことができる。第2の自由端16は、アペンディクス9とは反対側に配置される。
【0063】
好ましくは、第2のレバー15は、フレキシブルである。好ましくは、第2のレバー15は、渦巻ばね1の平面内に配置される。このようにして、第2のレバー15は、第2の応力を調整することを可能にする。このように、第1のレバー8と第2のレバー15は、結合して一緒になり、細長材2の端4の曲がった部分の同じアペンディクス9に取り付けられる。
【0064】
第1のレバー8は、第1の応力を調整することを可能にし、第2のレバー15は、第2の応力を調整することを可能にする。このように、これらの2つの応力は、互いに独立に調整可能である。
【0065】
好ましくは、予応力手段6は、第1のレバー8と第2のレバー15を利用して、細長フレキシブル要素5に他の応力を及ぼすように構成している。好ましくは、各レバー8、15は、互いに独立ないくつかの応力、ここでは3つの応力、を同時に及ぼす。
【0066】
前記予応力手段6は、細長フレキシブル要素に第3の応力を及ぼすように構成している。第3の応力は、第1の応力が及ぼされるところに、第1の引張/圧縮力FL1、又は実質的に直交方向の第1の力FT1、又は第1のトルクM1、によって及ぼされる。この実施形態において、第3の応力は、実質的に直交方向の第1の力FT1である。第1のレバーのおかげで、第3の応力が調整可能である。
【0067】
このようにして、第1のレバー8は、第1の応力と第3の応力を同時に調整することを可能にする。
【0068】
予応力手段6は、さらに、細長フレキシブル要素5に第4の応力を及ぼすように構成しており、この第4の応力は、第2の応力が及ぼされるところに、第2の引張/圧縮力FL2、又は実質的に直交方向の第2の力FT2、又は第2のトルクM2、のいずれかによって、及ぼされる。この実施形態において、第4の応力は、実質的に長手方向の第2の力FL2である。第2のレバーのおかげで、第4の応力が調整可能である。
【0069】
予応力手段6は、さらに、細長フレキシブル要素5に第5の応力を及ぼすように構成しており、この第5の応力は、第1の応力と第3の応力が及ぼされるところに、第1の引張/圧縮力FL1、又は実質的に直交方向の第1の力FT1、又は第1のトルクM1、のいずれかによって、及ぼされる。
【0070】
この実施形態において、第5の応力は、第1のトルクM1である。第1のレバー8のおかげで、第5の応力が調整可能である。第1のレバー8のおかげで、第5の応力が調整可能である。
【0071】
予応力手段6は、さらに、細長フレキシブル要素5に第6の応力を及ぼすように構成しており、この第6の応力は、第2の応力と第4の応力が及ぼされるところに、第2の引張/圧縮力FL2、又は実質的に直交方向の第2の力FT2、又は第2のトルクM2、のいずれかによって、及ぼされる。この実施形態において、第6の応力は、第2のトルクM2である。第2のレバー15のおかげで、第2の応力が調整可能である。
【0072】
この実施形態において、各レバー8、15が発生させる応力は、同じ方向に向いている長手方向の力FL1、FL2を除いて、反対方向に向いている。しかし、第1のレバー8と第2のレバー15は、細長フレキシブル要素5の剛性に対して同様な効果を発揮する。レバー8、15が動かされるほど、細長フレキシブル要素5の剛性が増加する。
【0073】
各レバーは、少なくとも2つの応力を及ぼすので、細長フレキシブル要素5の剛性を個別に変えることを可能にする。
【0074】
好ましくは、第1のレバー8と第2のレバー15は、前記によって及ぼされた異なる強度を有する応力の調整を可能にするように構成している。このように、一方のレバーが、より広いセッティング範囲での調整を可能にし、他方のレバーが、より微細なセッティング範囲での調整を可能にする。
【0075】
これらの2つのレバー8、15の間の細長フレキシブル要素5の剛性のセッティング強度における差を得るために、これらの2つのレバー8、15の断面は、例えば、異なるように選択され、又は各レバー8、15の剛性が異なるように選択される。
【0076】
したがって、及ぼされる力又はトルクは、断面又は剛性が大きい場合と比べて、断面又は剛性がより小さければ小さく、これによって、2つのレバー8、15は、2つの異なるスケールにて細長フレキシブル要素5の剛性を変えることを可能にする。
【0077】
このようなレバー8、15は、渦巻きばね1が小さい大きさであることを維持することを可能にし、その寸法は、計時器用ムーブメント内に挿入することが可能なように制限される。
【0078】
実際に、予応力手段6は、細長材2と合致する形を有し、これによって、十分に小さい寸法を維持する。なぜなら、予応力手段6の各部分は、細長材2に近いからである。したがって、渦巻きばね1が予応力手段によって変えられることは希にしかない。このように、渦巻きばね1は、ムーブメント内に容易に挿入することができるように十分に小さい。
【0079】
図2に示しているように、第1のレバー8をアクチュエートすることによって、細長材2の端4において、長手方向のフレキシブル要素5の長手方向の軸の方に向いた長手方向の力FL1、そして、直交方向に向いた直交方向の力FT1を発生させる。第1のレバー8をアクチュエートすることによって、さらに、曲がった矢印によって示した、トルク又は曲げモーメントM1を固有なブレード5に発生させる。
【0080】
第2のレバー15をアクチュエートすることによって、前記長手方向の力FL1と同様に向いている長手方向の力FL2、前記直交方向の力FT1とは反対側に向いている直交方向の力FT2、及び前記トルクM1とは反対方向のトルクM2、を発生させる。
【0081】
このように、固有なフレキシブルブレード13の剛性、そして、したがって、細長材2と固有なフレキシブルブレード13を含む組み合わせの剛性が、変わる。
【0082】
長手方向の力FL1、FL2と直交方向の力FT1、FT2、そして、トルクM1、M2は、第1のレバー8の第1の自由端12の運動によって、そして、第2のレバー15の第2の自由端16の運動によって、変わる。好ましくは、第1の自由端12と第2の自由端16は、そのアクチュエートを容易にするために剛体である。このように、フレキシブル要素5の剛性、そして、したがって、フレキシブル要素5と細長材2を含む組み合わせの剛性は、変わる。
【0083】
本発明は、さらに、このような渦巻きばね1を備える計時器用ムーブメントに関する。特に、渦巻きばねは、バランスの運動をアクチュエートするように用いられる。
【0084】
当然、本発明は、図面を参照しながら説明した実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱せずに変異形態を考えることができる。
【0085】
長手方向の要素に関して、渦巻きばねのいくつかの異なる実施形態に関連して説明したフレキシブルブレードは、図面の場合に概して該当する、連続的なフレキシブルブレードであることができ、また、剛性が高い断面があり、その断面を接続するフレキシブルなネック部があるブレードであることができる。
【0086】
また、固有なフレキシブルブレードは、渦巻きばねに対して半径方向又は直交方向ではない方向に向いていることができる。したがって、半径方向と直交方向の間の任意の方向に向いていることができる。
【符号の説明】
【0087】
2 細長材
3 振動錘の支持体
4、19 細長材の端
5 細長フレキシブル要素
6 予応力手段
8 第1のレバー
9 アペンディクス
11 固定支持体
12 第1の自由端
13 固有なフレキシブルブレード
15 第2のレバー
16 第2の自由端
図1
図2
【外国語明細書】