(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059582
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】剛性を調整する手段を備える計時器用共振器機構のための渦巻きばね
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
G04B17/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023172640
(22)【出願日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】22202272.5
(32)【優先日】2022-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】イバン・エルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・ル モアル
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・フロジオ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キュザン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】効果的かつ正確な調整手段を備える渦巻きばねを提供する。
【解決手段】計時器用共振器機構のための、渦巻きばね1は、自身のまわりに巻かれた複数の巻きを形成するフレキシブル細長材2を備え、細長材2は、所定の剛性を有し、渦巻きばね1は、その剛性を調整するための調整手段を備え、調整手段は、第1の細長フレキシブル要素5と、細長材2と直列に配置される第2の細長フレキシブル要素15とを備え、各細長フレキシブル要素5は、細長材2の同じ端4を固定支持体11に接続して、細長材2に付加的な剛性を付加し、各細長フレキシブル要素5は、好ましくは、細長材2の剛性よりも高い剛性を有し、調整手段は、少なくとも2つの異なる調整可能な応力を及ぼすための予応力手段6を備え、応力は、第1の細長フレキシブル要素5に及ぼされて、第1の細長フレキシブル要素5の剛性を予応力のレベルに応じて変える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に計時器用共振器機構のための、渦巻きばねであって、
前記渦巻きばね(1、10)は、自身のまわりに巻かれた複数の巻きを形成するフレキシブル細長材(2)を備え、
前記細長材(2)は、所定の剛性を有し、
前記渦巻きばね(1、10)は、その剛性を調整するための調整手段を備え、
前記調整手段は、第1の細長フレキシブル要素(5)と、前記細長材(2)と直列に配置される第2の細長フレキシブル要素(15)とを備え、
各細長フレキシブル要素(5、15)は、前記細長材(2)の同じ端(4、9)を固定支持体(11、14)に接続して、前記細長材(2)に付加的な剛性を付加し、
各細長フレキシブル要素(5)は、好ましくは、前記細長材(2)の剛性よりも高い剛性を有し、
前記調整手段は、少なくとも2つの異なる調整可能な応力を及ぼすための予応力手段(6)を備え、
前記応力は、前記第1の細長フレキシブル要素(5)に及ぼされて、前記第1の細長フレキシブル要素(5)の剛性を予応力のレベルに応じて変える
ことを特徴とする渦巻きばね。
【請求項2】
前記第1の応力は、実質的に前記第1の細長フレキシブル要素(5)の長手方向の方を向いている第1の引張/圧縮力FLによって及ぼされる
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項3】
前記第1の応力は、さらに、実質的に前記第2の細長フレキシブル要素(15)の長手方向に直交する方向に向いている第1の力を及ぼす
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項4】
前記第2の応力は、実質的に前記第1の細長フレキシブル要素(5)の長手方向に実質的に直交する方向に向いている第2の力FTによって及ぼされる
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項5】
前記第2の応力は、さらに、実質的に前記第2の細長フレキシブル要素(15)の長手方向に向いている第2の引張/圧縮力を及ぼす
ことを特徴とする請求項4に記載の渦巻きばね。
【請求項6】
前記第1の細長フレキシブル要素(5)と前記第2の細長フレキシブル要素(15)はそれぞれ、固有なフレキシブルブレード(13、18)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項7】
前記第1の細長フレキシブル要素(5)と前記第2の細長フレキシブル要素(15)はそれぞれ、一対の第1のフレキシブルブレード(23、25)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項8】
前記第1の細長フレキシブル要素(5)と前記第2の細長フレキシブル要素(15)は、実質的に互いに垂直である
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項9】
前記第1の細長フレキシブル要素(5)は、前記渦巻きばね(1、10)の半径方向に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項10】
前記第2の細長フレキシブル要素(15)は、前記渦巻きばね(1、10)に接する方向に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項11】
前記予応力手段(6)は、前記端(4)において接続される2つの第2のフレキシブルブレード(12、13)を備え、
各第2のフレキシブルブレード(12、13)は、前記細長フレキシブル要素(5、15)のうちの1つの直線上に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項12】
前記予応力手段(6)には、2つの剛体(14、16)があり、その各剛体(14、16)は、各第2のフレキシブルブレード(12、13)の端に配置される
ことを特徴とする請求項11に記載の渦巻きばね。
【請求項13】
前記予応力手段(6)は、各剛体(14、16)上に可変支持手段を備える
ことを特徴とする請求項12に記載の渦巻きばね。
【請求項14】
前記応力は、前記予応力手段(6)によって連続的に調整可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項15】
前記第1の細長フレキシブル要素(5)と前記第2の細長フレキシブル要素(15)は、前記細長材(2)の外端(4)に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項16】
前記予応力手段(6)は、異なる強度での2つの応力の調整を可能にするように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の渦巻きばね。
【請求項17】
特に振動錘を備える計時器用ムーブメントのための、回転式共振器機構であって、
請求項1に記載の渦巻きばね(1、10)を備える
ことを特徴とする回転式共振器機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器用共振器機構の渦巻きばねであって、この渦巻きばねの剛性をセッティングする手段を備えるものに関する。本発明は、さらに、このような渦巻きばねを備える計時器用共振器機構に関する。
【背景技術】
【0002】
現状の機械式の携行型時計(例、腕時計、懐中時計)のほとんどは、スイス式パレットのタイプの渦巻きバランスとエスケープ機構を備える。この渦巻きバランスは、携行型時計のタイムベースを形成する。この渦巻きバランスは、共振器とも呼ばれる。
【0003】
次に、エスケープは、
- 共振器の往復運動を維持する機能
- これらの往復運動をカウントする機能
の2つの主な機能を発揮する。
【0004】
機械的共振器を形成するためには、慣性要素、ガイド、及び弾性戻し要素が必要である。伝統的に、渦巻きばねは、バランスによって形成される慣性要素の弾性戻し要素として機能する。このバランスは、ルビーによって作られたプレーンベアリング内にて回転するピボットによって回転可能にガイドされる。
【0005】
一般的には、バランスの渦巻きばねは、携行型時計の精度を向上させるためにセッティング可能であるべきである。このために、ばねの有効長を変えるためのインデックスのような、渦巻きばねの剛性を調整するための調整手段を用いる。このようにして、携行型時計のランニングの精度を調整するために渦巻きばねの剛性が変えられる。しかし、ランニングを調整するための伝統的なインデックスの有効性は限られ、1日当たり数秒や数十秒の範囲までにセッティングを十分に正確にするためには必ずしも有効ではない。
【0006】
ランニングをより精密に調整するために、バランスの周縁に配置される一又は複数のねじを備えるセッティング手段がある。ねじに作用することによって、バランスの慣性が変わり、これによって、バランスのランニングが変わる。
【0007】
しかし、このセッティング方法は、実行が容易ではない。なぜなら、バランスの平衡を乱し、発振器のランニングのセッティングを十分に精密にすることを可能にしないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特に、渦巻きばねの有効剛性を変えることによって計時器のランニングをセッティングするように構成している、効果的かつ正確な調整手段を備える渦巻きばねを提供することによって、前記課題のすべて又は一部を克服するように意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、本発明は、特に計時器用共振器機構のための、渦巻きばねに関し、前記渦巻きばねは、自身のまわりに巻かれた複数の巻きを形成するフレキシブル細長材を備え、前記細長材は、所定の剛性を有し、前記渦巻きばねは、その剛性を調整するための調整手段を備える。
【0010】
前記調整手段は、第1の細長フレキシブル要素と、前記細長材と直列に配置される第2の細長フレキシブル要素とを備え、各細長フレキシブル要素は、前記細長材の同じ端を固定支持体に接続して、前記細長材に付加的な剛性を付加し、各細長フレキシブル要素は、好ましくは、前記細長材の剛性よりも高い剛性を有し、前記調整手段は、少なくとも2つの異なる調整可能な応力(effort)を及ぼすための予応力手段を備え、前記応力は、前記第1の細長フレキシブル要素に及ぼされて、前記第1の細長フレキシブル要素の剛性を予応力のレベルに応じて変えるという点で、本発明は画期的である。
【0011】
本発明によって、フレキシブルブレードのような細長フレキシブル要素のうちの少なくとも1つの剛性を変えることが可能となる。実際に、前記のような2つの応力が及ぼされたときに、細長フレキシブル要素の剛性が変わる。実際に、力であろうとトルクであろうと、1つの単一の応力を及ぼしたときには、細長フレキシブル要素の剛性は同じままである。一方のブレードに長手方向と直交方向の2つの垂直力が及ぼされると、全体的な力が得られ、これによって、細長フレキシブル要素の剛性が変わる。このためには、2つの応力を組み合わせることが不可欠である。
【0012】
予応力手段に作用することによって、負荷の強度レベルが変えられ、これによって、フレキシブル要素と細長材を含む組み合わせの剛性が変わる。実際に、細長材と直列に設置されるフレキシブル要素は、剛性を増し、この剛性は細長材の剛性と組み合わされる。したがって、予応力手段は、細長フレキシブル要素のうちの少なくとも1つに可変の応力を及ぼす場合、細長フレキシブル要素に及ぼされる可変の力にかかわらず、細長材の剛性を変えることなく、フレキシブル要素の剛性、したがって、細長材とフレキシブル要素を含む組み合わせの剛性、を変える。
【0013】
すなわち、細長材の一端と固定支持体の間にて、細長材と直列に、フレキシブル要素が配置される。このフレキシブル要素は、細長材と細長材の取り付け点の間に調整可能な付加的な剛性をもたらし、共振器のフレキシブル性を高くする。したがって、細長材の剛性及びフレキシブル要素の剛性は、共振器の有効剛性に寄与する。フレキシブル要素に予応力を及ぼすための可変な応力が、細長材に予応力を及ぼすことなく及ぼされる。フレキシブル要素に予応力を及ぼすことによって、その剛性は変わり、細長材の剛性は、実質的に変わらないままである。フレキシブル要素の剛性を変えることによって、共振器の剛性(細長材の剛性及びフレキシブル要素の剛性)が変わり、これによって、共振器のランニングが変わる。
【0014】
したがって、フレキシブル要素の剛性が変わることで、共振器全体の剛性が変わり、結果的に、そのランニングを精密にセッティングし、これによって、関心事のタイムベースの振動数を正確に調整することが可能になる。このように、1つの単一の追加要素が作用を受けて渦巻きばねの剛性を調整するために、ランニングのセッティングにおいて非常に高い精度が得られる。
【0015】
本発明の特定の実施形態において、前記第1の応力は、実質的に前記第1の細長フレキシブル要素の長手方向の方を向いている第1の引張/圧縮力FLによって及ぼされる。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、前記第1の応力は、さらに、実質的に前記第2の細長フレキシブル要素の長手方向に直交する方向に向いている第1の力を及ぼす。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、前記第2の応力は、実質的に前記第1の細長フレキシブル要素の長手方向に実質的に直交する方向に向いている第2の力FTによって及ぼされる。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、前記第2の応力は、さらに、実質的に前記第2の細長フレキシブル要素の長手方向に向いている第2の引張/圧縮力FLを及ぼす。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、前記第1の細長フレキシブル要素と前記第2の細長フレキシブル要素はそれぞれ、固有なフレキシブルブレードを備える。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、前記第1の細長フレキシブル要素と前記第2の細長フレキシブル要素はそれぞれ、一対の第1のフレキシブルブレードを備える。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、前記第1の細長フレキシブル要素は、前記渦巻きばねの半径方向に配置される。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、前記第2の細長フレキシブル要素は、前記渦巻きばねに接する方向に配置される。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、前記第1の細長フレキシブル要素と前記第2の細長フレキシブル要素は、実質的に互いに垂直である。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記端において接続される2つの第2のフレキシブルブレードを備え、各第2のフレキシブルブレードは、前記細長フレキシブル要素のうちの1つの直線上に配置される。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段には、2つの剛体があり、その各剛体は、各第2のフレキシブルブレードの端に配置される。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、各剛体上に可変支持手段を備える。
【0027】
本発明の特定の実施形態において、前記応力は、前記予応力手段によって連続的に調整可能である。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、前記第1の細長フレキシブル要素と前記第2の細長フレキシブル要素は、前記細長材の外端に配置される。
【0029】
本発明の特定の実施形態において、前記細長材の端には、アペンディクスがあり、前記予応力手段と前記細長フレキシブル要素は、前記アペンディクスに取り付けられる。
【0030】
本発明の特定の実施形態において、前記細長材の端は、前記細長フレキシブル要素と前記細長材よりも剛性が高い。
【0031】
本発明の特定の実施形態において、前記細長フレキシブル要素には、フレキシブルなネック部(首部)がある。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、異なる強度での2つの応力の調整を可能にするように構成している。
【0033】
本発明は、さらに、振動錘と、前記のような渦巻きばねとを備える、特に計時器用ムーブメントのための、回転式共振器機構に関する。
【0034】
添付の図面を参照しながら、例としてのみ与えられる、以下のいくつかの実施形態を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴が明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る渦巻きばねを上から見た概略図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る渦巻きばねを上から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1及び2はそれぞれ、特に計時器用共振器機構のための、渦巻きばね1、10の異なる実施形態についての概略図を示している。この場合、渦巻きばねは、実質的に同じ平面内にて延在している。渦巻きばね1、10は、自身のまわりに巻かれた複数の巻きを形成するフレキシブル細長材2を備え、この細長材2は所定の剛性を有する。渦巻きばね1、10は、その剛性を調整するための調整手段を備える。特に、例えば、渦巻きばね1、10が計時器用ムーブメントのプレート(図示せず)上に取り付けられているときに、調整手段をアクチュエートすることができる。
【0037】
本発明によると、前記調整手段は、長手方向に延在している第1の細長フレキシブル要素5と第2の細長フレキシブル要素15を備える。各フレキシブル要素5、15は、細長材2と直列に配置され、第1のフレキシブル要素5と第2のフレキシブル要素15は、前記細長材2の同じ端4を固定支持体11、14に接続する。すなわち、細長材2は、これらのフレキシブル要素5、15によってのみ固定支持体11、14に接続される。
【0038】
フレキシブル要素5、15は、細長材2の端4の一方に固定される。好ましくは、2つのフレキシブル要素5、15は、互いに垂直に配置される。
【0039】
以下にて説明する実施形態は、細長材2の外端4に固定されるフレキシブル要素5、15を備える。細長材2の内端19は、共振器1の振動錘の支持体3に組み付けられるように意図されている。
【0040】
フレキシブル要素5、15は、細長材2の剛性に付加的な剛性を付加する。好ましくは、フレキシブル要素5、15は、細長材2の剛性よりも大きい剛性を有する。ここでは、第1のフレキシブル要素5は、細長材2の直線上に配置されており、第2のフレキシブル要素15は、第1のフレキシブル要素5に垂直に配置されている。好ましくは、調整手段と細長材2は、一体的に作られ、場合によって同じ材料によって形成される。
【0041】
また、ここでは、細長材2の外端4は、アペンディクス9を形成するように垂直に曲がっている。アペンディクス9は、取り付け点として機能し、応力を受けることを可能にする。好ましくは、アペンディクス9は、高い剛性を有し、すなわち、細長材2及び/又は細長フレキシブル要素5、15よりも高い剛性を有し、これによって、細長材2の剛性に対するアペンディクス9の影響を最小限に抑える。
【0042】
第1の実施形態において、各細長フレキシブル要素5、15は、アペンディクス9を固定支持体11に接続する固有なフレキシブルブレード13、15である。固有な第1のフレキシブルブレード13は、アペンディクス9の直線上に配置され、固有な第2のフレキシブルブレード13は、アペンディクス9に実質的に垂直な方向に配置される。
【0043】
したがって、固有な第1のフレキシブルブレード13は、渦巻きばね1が休み状態にあるときに、好ましくは渦巻きばね1の中心を通過するように、半径方向に配置され、第2のフレキシブルブレードは、細長材2に対して接線方向に配置される。
【0044】
図2の第2の実施形態において、各細長フレキシブル要素5、15は、アペンディクス9から固定支持体11まで延在している第1のフレキシブルブレード23、25の対を備える。各対の第1のフレキシブルブレード23、25は、アペンディクス9から固定支持体11へと移るに従って互いから離れ、例えば、互いの間に10°~40°の範囲内の角度を形成する。
【0045】
渦巻きばね1は、さらに、フレキシブル要素5、15のうちの少なくとも1つに、好ましくは2つのフレキシブル要素5、15に、少なくとも2つの異なる応力を及ぼすための予応力手段6を備える。例えば、この2つの応力は、第1のフレキシブル要素5に及ぼされる。
【0046】
好ましくは、前記2つの応力は、可変である、引張-圧縮の長手方向の力FLと、直交方向の力FTである。前記長手方向の力FLは、第1のフレキシブル要素5の長手方向に向いており、前記直交方向の力FTは、第1のフレキシブル要素5の長手方向に垂直な方向に向いており、この2つの力は、好ましくは、渦巻きばね1、10の平面内に属する。したがって、第1のフレキシブル要素5の剛性を変えて、特に、ムーブメントのランニング精度を改善するために、渦巻きばね1、10のランニングを調整することが可能となる。
【0047】
第1のフレキシブル要素5は、その剛性を、細長材2に直接作用することなく、変えるように作用される。しかし、振動の間に、細長材2の端4は、可動であることができる。
【0048】
また、予応力手段6によって、長手方向の力FL及び直交方向の力FTを連続的に調整可能である。すなわち、これらの力FL、FTは離散値に限定されない。したがって、フレキシブル要素5の剛性を高い精度で精密に調整することができる。
【0049】
また、予応力手段6は、第2のフレキシブル要素15の剛性を変えるように構成している。
【0050】
実際に、第1の応力は、さらに、実質的に第2の細長フレキシブル要素15の長手方向に直交する方向に実質的に向いている第1の力を及ぼす。2つのフレキシブル要素5、15が互いに垂直に配置されているので、細長フレキシブル要素5、15の一方に及ぼされる長手方向の力は、他方のフレキシブル要素に及ぼされる実質的に直交する力を発生させる。
【0051】
同様に、第2の応力は、さらに、実質的に第2の細長フレキシブル要素15の長手方向に向いている第2の引張/圧縮力を及ぼす。
【0052】
これらの調整可能な力を及ぼすために、予応力手段6は、細長フレキシブル要素5、15に力を及ぼすための2つの付与手段を備える。
【0053】
これらの付与手段はそれぞれ、2つの第2のフレキシブルブレード12、13を備える。各第2のフレキシブルブレード12、13は、細長フレキシブル要素5、15の直線上に配置され、アペンディクス9の反対側にて固定される。
【0054】
これらの2つの第2のフレキシブルブレード12、13は、互いに垂直に配置される。
【0055】
代わりに、第2のフレキシブルブレード12、13を伝統的なばねに置き換えてもよい。
【0056】
各第2のフレキシブルブレード12、13は、自由端にて剛体14、16を備える。剛体14、16は、第2のフレキシブルブレード12、13に可変力を及ぼして、細長フレキシブル要素5、15に伝達される力を調整することを可能にする。
【0057】
剛体14、16を動かすことによって、各剛体14、16の各運動方向に応じて、可変な長手方向の力FLと可変な直交方向の力FTがアペンディクス9に及ぼされる。このようにして、細長フレキシブル要素5、15の剛性が変わる。剛体14、16を動かすことによって、固有なフレキシブルブレード15に及ぼされる力の値が変わる。
【0058】
予応力手段6は、さらに、剛体14、16に可変支持手段を備える。この可変支持手段をアクチュエートすることによって、剛体14、16は、第2のフレキシブルブレード12、13が多かれ少なかれ曲げられ、これによって、細長フレキシブル要素5、15に対して多かれ少なかれ実効的な力を伝達するように、動く。したがって、細長フレキシブル要素5、15の剛性は、渦巻きばねのランニングが変わり調整することができるように、変わる。
【0059】
例えば、可変支持手段は、剛体14、16に接触し第2のフレキシブルブレード12、13の方向に長手方向に配置されるねじ24によって構成している。したがって、ねじ24を動かすことによって、第2のフレキシブルブレード12、13は、アペンディクス9、したがって、細長フレキシブル要素5、15、に対して、多かれ少なかれ実効的な力を及ぼす。
【0060】
代わりに、可変支持手段は、一方の側で剛体に固定されるばねと、このばねの他方の端に配置される可動体とを備える。したがって、可動体を動かすことによって、前記ばねは、第2のフレキシブルブレードに多かれ少なかれ実効的な力を及ぼす。
【0061】
別の変異形態において、予応力手段は、剛体上に配置される第1の磁石と、剛体から離れた位置に配置される第2の可動磁石とを備える。したがって、第1の磁石に対する第2の磁石の距離を変えることによって、第2のフレキシブルブレードに及ぼされる力が変わる。
【0062】
代わりに、第1の端が剛体に組み付けられる回転レバーを用いることができ、この回転レバーの他端は自由であり、前記自由端を動かすことによってレバーをアクチュエートする手段として機能する。
【0063】
好ましくは、予応力手段は、2つの応力、ここでは異なる強度の2つの長手方向の引張/圧縮力、の調整を可能にするように構成している。このように、第1の付与手段は、より広いセッティング範囲での調整を可能にし、第2の付与手段は、より微細なセッティング範囲での調整を可能にする。
【0064】
このために、第2のフレキシブルブレード12、13は、例えば、異なる断面又は長さを有する。代わりに、剛体14、16上の可変支持手段は、例えば異なるねじピッチを有する、異なるセッティング範囲、を得るように構成している。
【0065】
本発明は、さらに、このような渦巻きばねを備える計時器用ムーブメントに関する。特に、渦巻きばねは、バランスの運動をアクチュエートするように用いられる。
【0066】
当然、本発明は、図面を参照しながら説明した実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱せずに変異形態を考えることができる。
【0067】
長手方向の要素に関して、渦巻きばねのいくつかの異なる実施形態に関連して説明したフレキシブルブレードは、図面の場合に概して該当する、連続的なフレキシブルブレードであることができ、また、剛性が高い断面があり、その断面を接続するフレキシブルなネック部があるブレードであることができる。
【0068】
また、固有なフレキシブルブレードは、渦巻きばねに対して半径方向又は直交方向ではない方向に向いていることができる。したがって、半径方向と直交方向の間の任意の方向に向いていることができる。
【符号の説明】
【0069】
1、10 渦巻きばね
2 細長材
3 支持体
4、19 細長材の端
5 第1の細長フレキシブル要素
6 予応力手段
9 アペンディクス
11 固定支持体
12、13 第2のフレキシブルブレード
14、16 剛体
15 第2の細長フレキシブル要素
23、25 第1のフレキシブルブレード
24 ねじ
【外国語明細書】