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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005960
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】立柱及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/01 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B23Q1/01 W
B23Q1/01 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106458
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】天野 真仁
【テーマコード(参考)】
3C048
【Fターム(参考)】
3C048BB01
3C048BB03
3C048BC02
3C048BC03
3C048DD10
(57)【要約】
【課題】ねじれによる変位を小さくできる立柱及び工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械において、主軸ヘッドはZ軸方向に延び、Y軸移動機構により立柱5前面に配置する。回転テーブルは主軸ヘッド前方に位置する。主軸ヘッドは立柱5の取付面52R,52Lに取り付けられる一対のガイド24に案内されて、Y軸方向(上下方向)に移動可能である。取付面52Rは右壁51Aにおける左前端に配置される。取付面52Lは左壁51Bにおける右前端に配置される。立柱5は、摺動部材57,58が一対のガイドに案内されて、Z軸方向(前後方向)に移動可能である。摺動部材57は、平面視において、其の一部が取付面52R,52Lよりも前方に位置する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の基台の上側において、被削材を固定する作業台と間隔をあけて配置され、主軸を保持する主軸ヘッドを支持する立柱において、
前記作業台に対向する面に配置され、前記主軸ヘッドの上下方向への移動を案内する上下案内部を取り付ける為の取付面と、
下壁に配置され、前記立柱の前記上下方向と交差する交差方向への移動を案内する交差案内部とを備え、
平面視において、前記交差案内部の少なくとも一部は、前記取付面よりも前記作業台に近いことを特徴とする立柱。
【請求項2】
前記交差案内部は、第一交差案内部と、前記第一交差案内部よりも前記作業台に対して反対側に配置される第二交差案内部とを備え、
平面視において、
前記第一交差案内部は、前記取付面よりも前記作業台に近いことを特徴とする請求項1に記載の立柱。
【請求項3】
前記下壁は前記取付面よりも前記作業台側に突出した突出部を有し、
前記突出部は、前記第一交差案内部に下方から支持され、且つ其の上端が前記作業台側に向かうにつれて下方に傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の立柱。
【請求項4】
請求項3に記載の前記立柱を備えることを特徴とする工作機械。
【請求項5】
前記主軸は、水平方向に延びることを特徴とする請求項4に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立柱及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回転テーブル上に固定されたワークに対して水平方向に延びる主軸により切削その他の加工を行う横形の工作機械を開示する。工作機械のベース上には、X軸(左右)方向に移動可能なキャリッジが設けられる。キャリッジ上には、Z軸(前後)方向に移動可能な立柱が設けられる。立柱に対してY軸(上下)方向に移動可能な主軸ヘッドが設けられる。主軸ヘッドには主軸が回転可能に支持され、該主軸には工具が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-108340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
立柱は主軸ヘッドをY軸方向に移動可能に支持する。ワーク加工時、立柱は工具、主軸、及び主軸ヘッドを介してワークから反作用の力を受ける。立柱は反作用の力によりベースに対して水平方向にねじれることがある。立柱が水平方向にねじれると、ワークに対して工具の位置がずれる。ねじれによる変位が大きい場合、工作機械はワークを精度よく加工できない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、ねじれによる変位を小さくできる立柱及び工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の立柱は、工作機械の基台の上側において、被削材を固定する作業台と間隔をあけて配置され、主軸を保持する主軸ヘッドを支持する立柱において、前記作業台に対向する面に配置され、前記主軸ヘッドの上下方向への移動を案内する上下案内部を取り付ける為の取付面と、下壁に配置され、前記立柱の前記上下方向と交差する交差方向への移動を案内する交差案内部とを備え、平面視において、前記交差案内部の少なくとも一部は、前記取付面よりも前記作業台に近いことを特徴とする。立柱において、交差案内部の少なくとも一部が平面視で取付面よりも作業台側に配置されていない場合と比較して、基台に対するねじれの回転中心の位置がより作業台側に近くなる。このとき、ねじれの回転中心から工具の先端までの距離はより短くなる。故に立柱は、加工時におけるねじれによる変位を小さくできる。
【0007】
請求項2の立柱において、前記交差案内部は、第一交差案内部と、前記第一交差案内部よりも前記作業台に対して反対側に配置される第二交差案内部とを備え、平面視において、前記第一交差案内部は、前記取付面よりも前記作業台に近くてもよい。立柱は、第一交差案内部と第二交差案内部とが取付面を間にして配置される。これにより、第一交差案内部及び第二交差案内部は、どちらも取付面よりも作業台側に配置される場合と比較して、立柱を安定して案内できる。故に立柱は、交差方向に安定して移動できる。
【0008】
請求項3の立柱において、前記下壁は前記取付面よりも前記作業台側に突出した突出部を有し、前記突出部は、前記第一交差案内部に下方から支持され、且つ其の上端が前記作業台側に向かうにつれて下方に傾斜してもよい。突出部の上端が作業台側に向かうにつれて下方に傾斜しているので、剛性を低下させることなく、立柱を支持できる。故に立柱は、交差方向に安定して移動できる。
【0009】
請求項4の工作機械は、請求項3に記載の前記立柱を備えることを特徴とする。故に工作機械は、請求項3と同様の効果を得ることができる。
【0010】
請求項5の工作機械において、前記主軸は、水平方向に延びてもよい。主軸が水平方向に延びる場合、ねじれが生じた際に工具の先端でのねじれの変位が大きくなる。工作機械は、ねじれの回転中心から工具の先端までの距離はより短くなる。故に工作機械は、軸方向が水平方向である場合でも、加工時におけるねじれによる変位を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】工作機械1(主軸ヘッド6:上昇)の斜視図。
図2】工作機械1(主軸ヘッド6:下降)の斜視図。
図3】工作機械1(主軸ヘッド6:上昇)の右側面図。
図4】工作機械1(主軸ヘッド6:下降)の右側面図。
図5】工作機械1の平面図。
図6】立柱5の斜視図。
図7】立柱5の右側面図。
図8】立柱5の平面図
図9】立柱5,60におけるワーク99の加工時のねじれの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を説明する。以下説明は図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。工作機械1の左右方向、上下方向、前後方向は夫々工作機械1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。図1に示す工作機械1は後述の主軸7(図3参照)が前後方向(Z軸方向)に延びる横形であり、後述の立柱5がX軸方向とZ軸方向に移動する。
【0013】
図1図5を参照し、工作機械1の構造を説明する。図1図2に示すように、工作機械1はベース2、立柱5、枠カバー10,20、主軸ヘッド6、主軸7(図3参照)、制御箱8、回転テーブル9、X軸移動機構11、Z軸移動機構12、Y軸移動機構13等を備える。ベース2はZ軸方向に長い略直方体状の鉄製土台である。X軸移動機構11はベース2上面後部に配置し、移動体15をX軸方向に移動可能に支持する。Z軸移動機構12は移動体15上面に配置し、立柱5をZ軸方向に移動可能に支持する。
【0014】
立柱5は上下方向に延びる。立柱5の詳細な構造については後述する。枠カバー10は立柱5上部に取り付ける。枠カバー10は平面視矩形状の枠体であり、立柱5を外方から覆う。枠カバー20は立柱5前面に取り付ける。枠カバー20は正面視縦長矩形状の枠体であり、立柱5と後述の主軸ヘッド6の間の隙間を外方から覆う。枠カバー20の上面には、後述する台座21の外周形状に対応する孔を備える。Y軸移動機構13は立柱5前面に配置し、主軸ヘッド6をY軸方向に移動可能に支持する。
【0015】
X軸移動機構11は一対のガイド、ボールネジ、X軸モータを備える。Z軸移動機構12は一対のガイド25(図5参照)、ボールネジ、Z軸モータを備える。一対のガイド25は前後方向に延びるレール状であり、左右方向に互いに間隔をあけて配置される。Y軸移動機構13は一対のガイド24(図6参照)、ボールネジ27(図1参照)、Y軸モータを備える。一対のガイド24は上下方向に延びるレール状であり、左右方向に互いに間隔をあけて、立柱5の前側に取り付けられる(図6参照)。X軸移動機構11、Z軸移動機構12、Y軸移動機構13は各モータの動力で対象部品(移動体15、立柱5、主軸ヘッド6)を各ガイドに沿って移動する。
【0016】
枠カバー20は其の上部には、台座21を備える。台座21は平面視略矩形状である。台座21は其の上面を上下方向に貫通する支持穴21Aを備える。支持穴21AにはY軸移動機構13(図1参照)のY軸モータが挿入固定される。Y軸モータの回転軸は枠カバー20内を下方に突出し、ボールネジ27(図1参照)の上端部と連結する。
【0017】
図1図4に示す如く、主軸ヘッド6はZ軸方向に延び、Y軸移動機構13により立柱5前面に沿ってY軸方向に移動可能に配置する。主軸ヘッド6は上カバー28と下カバー85を備える。上カバー28は正面視略矩形状の金属板である。上カバー28の下端部は主軸ヘッド6上面後端部に固定する。
【0018】
上カバー28は、主軸ヘッド6上面後端部から上方に延出する。上カバー28は枠カバー20及び台座21の前側に配置される(図3図4参照)。上カバー28は主軸ヘッド6と一体して上下動することで、立柱5前面の主軸ヘッド6よりも上側の領域を前方から常時覆う。下カバー85は主軸ヘッド6下面後端部に吊り下げた状態で固定する。下カバー85は複数の金属板を上下方向に並べて備え、主軸ヘッド6の高さに応じて上下方向に伸縮することで、立柱5前面の主軸ヘッド6よりも下側の領域を前方から常時覆う(図1図2参照)。
【0019】
図3図4に示す如く、主軸7は主軸ヘッド6内に配置され、Z軸方向に延びる。主軸ヘッド6は主軸7を回転可能に支持する。主軸ヘッド6後部は、主軸モータ(図示略)を保持する。主軸モータの出力軸は前方に延び、主軸7後端部と同軸上に連結する。主軸モータの駆動により、主軸7はZ軸周りに回転する。主軸7には、工具ホルダ90(図5参照)が着脱自在に装着される。工具ホルダ90は前側で工具91を保持する。
【0020】
ベース2は後部に、一対の支持部材17,18(図5参照)を備える。支持部材17,18は左右方向に互いに離間し且つ上方に延び、制御箱8を下方から支持する。制御箱8は内部に制御盤(図示略)を収納する。制御盤は工作機械1の動作を制御する。
【0021】
ベース2は上面前側に固定台16を備える。固定台16はX軸移動機構11の前側に配置される。回転テーブル9は固定台16に回転可能に支持される。回転テーブル9は主軸ヘッド6前方に位置する。回転テーブル9は上面にワーク99(図9参照)を治具(図示略)で固定し、Y軸方向に平行な回転軸を中心に360°回転可能である。
【0022】
図6図8を参照し、立柱5の構造を説明する。立柱5は正面視縦長矩形状の角筒である。立柱5は右壁51A、左壁51B、上壁51C及び下壁51Dを備える。立柱5は右壁51A、左壁51B、上壁51C及び下壁51Dで囲まれた貫通口5Aを備える。貫通口5Aは正面視縦長矩形状である。
【0023】
右壁51Aは取付面52R、取付面54Rを備える。取付面52Rは右壁51Aにおける左前端に配置される。取付面54Rは右壁51Aにおける右前端、且つ取付面52Rの右側に配置される。取付面54Rは取付面52Rよりも後側(図8参照)に配置される。取付面52R,54Rは正面視縦長矩形状である。
【0024】
取付面52Rは上下方向に並ぶ複数のネジ穴52Aが形成される。取付面52Rには、ネジがネジ穴52Aに螺合されて、一対のガイド24の一方が取り付けられる。取付面54Rは上下方向に並ぶ複数のネジ穴54Aが形成される。取付面54Rには、ネジがネジ穴54Aに螺合されて、枠カバー20が取り付けられる。
【0025】
取付面52Lは左壁51Bにおける右前端に配置される。取付面52R,取付面52Lは前後方向において同一位置に並ぶ。取付面54Lは取付面52Lよりも後側(図8参照)に配置される。取付面54Lは左壁51Bの左前端、且つ取付面52Lの左側に配置される。取付面54Lは取付面52Lよりも後側(図8参照)に配置される。取付面54R,取付面54Lは前後方向において同一位置に並ぶ。取付面52L,54Lは正面視縦長矩形状である。
【0026】
取付面52Lは上下方向に並ぶ複数のネジ穴52Bが形成される。取付面52Lには、ネジがネジ穴52Bに螺合されて、一対のガイド24の他方が取り付けられる。取付面54Lは上下方向に並ぶ複数のネジ穴(図示略)が形成される。取付面54Lには、ネジが該ネジ穴に螺合されて、枠カバー20が取り付けられる。
【0027】
取付面53R,53Lは上壁51Cに配置される。取付面53Rは取付面52Rの左上側に配置される。取付面53Lは取付面52Lの右上側に配置される。図8に示す如く、取付面53Rは取付面52Rよりも後側に配置され、取付面53Lは取付面52Lよりも後側に配置される。取付面53Rと取付面53Lは前後方向において同一位置に並ぶ。取付面53Rと取付面53Lは正面視縦長矩形状である。取付面53Rは複数のネジ穴53Aを備える。取付面53Lは複数のネジ穴53Bを備える。取付面53Rには、ネジがネジ穴53Aに螺合されて、台座21が取り付けられる。取付面53Lには、ネジがネジ穴53Bに螺合されて、台座21が取り付けられる。
【0028】
下壁51D前端は突出部55を有する。突出部55は、取付面52R,52Lよりも前方に突出する。突出部55の上面55Aは前方に向かうにつれて下方に傾斜している。枠カバー20及び下カバー85は上面55Aの上側に配置される(図1図4参照)。
【0029】
移動体56は板部材56A、摺動部材57R,57L,58R,58Lを備える。板部材56Aは立柱5の下端に配置される。
【0030】
摺動部材57R,57Lは板部材56Aの前端部に配置される。摺動部材57Rは板部材56Aの右前端部に配置される。摺動部材57Lは板部材56Aの左前端部に配置される。摺動部材57R,57Lは前後方向において同一位置に並ぶ。摺動部材57R,57Lは、平面視において、其の一部が取付面52R,52Lよりも前方に位置する(図8参照)。摺動部材57R,57Lは底面視矩形状の箱である。摺動部材57Rは一対のガイド25のうち右側のガイド25に案内されて、前後方向に摺動可能である(図5参照)。摺動部材57Lは一対のガイド25のうち左側のガイド25に案内されて、前後方向に摺動可能である(図5参照)。以下、摺動部材57R,57Lを区別しない場合、摺動部材57と総称する。摺動部材57R,57Lは、平面視において、少なくとも一部が取付面52R,52Lよりも前方に位置すればよく、図8のように全てが前方に位置していてもよい。
【0031】
摺動部材58R,58L(図8参照)は板部材56Aの後端部に配置される。摺動部材58Rは板部材56Aの右後端部に配置される。摺動部材58Lは板部材56Aの左後端部に配置される。摺動部材58R,58Lは前後方向において同一位置に並ぶ。摺動部材58R,58Lは、平面視において、取付面52R,52Lよりも後方に位置する(図8参照)。摺動部材58R,58Lは底面視矩形状の箱である。摺動部材58Rは一対のガイド25のうち右側のガイド25に案内されて、前後方向に摺動可能である(図5参照)。摺動部材58Lは一対のガイド25のうち左側のガイド25に案内されて、前後方向に摺動可能である(図5参照)。以下、摺動部材58R,58Lを区別しない場合、摺動部材58と総称する。
【0032】
図1図5図9を参照し、ワーク99加工中の工作機械1の動作について説明する。制御盤のCPUはNCプログラム中のZ軸の送り指令を読込むと、Z軸移動機構12のモータを駆動する。摺動部材57,58が一対のガイド25に案内されて前方に摺動する。主軸7はZ軸において回転テーブル9上のワーク99と工具91とが近接する位置まで前進する。
【0033】
CPUは主軸モータを駆動し、主軸7を回転する。この状態で、CPUはNCプログラムの指令に基づき、X軸移動機構11、Z軸移動機構12、Y軸移動機構13のモータを駆動し、主軸7をワーク99に対して相対移動することで、ワーク99を加工する。
【0034】
主軸7がY軸移動機構13により上下方向に移動するとき、下カバー85は主軸ヘッド6の高さに応じて上下方向に伸縮する。主軸7が上下方向の移動範囲において下端に位置する時(図2図4参照)、下カバー85の複数の金属板は、主軸ヘッド6の下端から前方に向かうにつれて下方に傾斜した状態で重なる。下カバー85の下側に位置する突出部55において、上面55Aは前方に向かうにつれて下方に傾斜する。故に、主軸7がY軸移動機構13により上下方向に移動するとき、突出部55は下カバー85の上下方向の伸縮に干渉しない。
【0035】
図9(a)に示す如く、摺動部材57は、突出部55の下方に配置され、其の一部が取付面52よりも前方に配置される。図9(b)に示す立柱60は比較例としての従来構造を有する立柱である。立柱60は取付面72R、移動体76、主軸ヘッド6、枠カバー20を備える。移動体76は摺動部材77(77R,77L),78(78R,78L)を備える。取付面72R、移動体76、摺動部材77(77R,77L),78(78R,78L)は、夫々、本発明の立柱5の取付面52R、移動体56、摺動部材57(57R,57L),58(58R,58L)に対応する構成である。立柱60は、本発明の突出部55を備えず、摺動部材77全体が取付面72Rよりも後方に配置される点で、本発明の立柱5と異なる。
【0036】
図9(a)に示す如く、立柱5において、摺動部材57R,58Lを結ぶ仮想線と、摺動部材57L,58Rを結ぶ仮想線との交点をQ1とする。図9(b)に示す如く、立柱60において、摺動部材77R,78Lを結ぶ仮想線と、摺動部材77L,78Rを結ぶ仮想線との交点をQ2する。交点Q1と工具91の前端との間の距離L1は、交点Q2と工具91の前端との間の距離L2よりも短い。
【0037】
ここで、工作機械1がワーク99を加工する時、ワーク99から反作用の力により、立柱5,60はベース2に対して水平方向にねじれることがある。立柱5,60が水平方向にねじれることで、工具91は水平方向にねじれる。立柱5,60全体が水平方向にねじれる際のねじれの回転中心は、摺動部材57,58,77,78の位置関係により定義される交点Q1,Q2となる。工具91のねじれによる変位は、交点Q1,Q2と工具91の前端との間の距離L1,L2が短くなるほど小さくなる。距離L1は距離L2より短いので、立柱5における工具91のねじれによる変位は、立柱60における工具91のねじれによる変位よりも小さくなる。
【0038】
以上説明したように、工作機械1において、主軸ヘッド6はZ軸方向に延び、Y軸移動機構13により立柱5前面に配置する。回転テーブル9は主軸ヘッド6前方に位置する。主軸ヘッド6は立柱5の取付面52R,52Lに取り付けられる一対のガイド24に案内されて、Y軸方向(上下方向)に移動可能である。取付面52Rは右壁51Aにおける左前端に配置される。取付面52Lは左壁51Bにおける右前端に配置される。立柱5は、摺動部材57,58が一対のガイド25に案内されて、Z軸方向(前後方向)に移動可能である。摺動部材57は、平面視で、其の一部が取付面52よりも前方に位置する。立柱5における交点Q1と工具91の前端との間の距離L1は、従来構造の立柱60における交点Q2と工具91の前端との間の距離L2よりも短い。工具91のねじれによる変位は、ねじれの回転中心となる交点Q1,Q2と工具91の前端との間の距離L1,L2が短くなるほど小さくなる。距離L1は距離L2より短いので、立柱5における工具91のねじれによる変位は、従来構造の立柱60における工具91のねじれによる変位よりも小さくなる。故に立柱5は、ワーク99の加工時におけるねじれによる変位を小さくできる。
【0039】
摺動部材57は、平面視において、其の一部が取付面52R,52Lよりも前方に位置する。摺動部材58は、平面視において、取付面52R,52Lよりも後方に位置する。摺動部材57と摺動部材58とが平面視で前後方向において取付面52R,52Lを間にして配置される。これにより、摺動部材57,58は、双方が取付面52R,52Lよりも前方に配置される場合と比較して、立柱5を安定して案内できる。故に立柱5は、前後方向に安定して移動できる。
【0040】
突出部55は、取付面52よりも前方に位置する。突出部55の上面55Aは前方に向かうにつれて下方に傾斜している。下カバー85は上面55Aの上側に配置される。主軸7が上下方向の移動範囲において下端に位置する時、下カバー85の複数の金属板は、主軸ヘッド6の下端から前方に向かうにつれて下方に傾斜した状態で重なる。突出部55の上面55Aは前方に向かうにつれて下方に傾斜するので、主軸7がY軸移動機構13により上下方向に移動するとき、突出部55は下カバー85の上下方向の伸縮に干渉しない。突出部55は其の上面55Aが前方に向かうにつれて下方に傾斜しているので、剛性を低下させることなく、立柱5を支持できる。故に立柱5は、前後方向に安定して移動できる。
【0041】
主軸7はZ軸方向(前後方向)に延びる。主軸7が水平方向に延びる場合、立柱5が水平方向にねじれた際に、主軸7と同軸に延びる工具91も水平方向にねじれる。故に工具91の前端でのねじれの変位が大きくなりやすい。立柱5,60全体が水平方向にねじれる際のねじれの回転中心は、摺動部材57,58,77,78の位置関係により定義される交点Q1,Q2となる。工具91のねじれによる変位は、交点Q1,Q2と工具91の前端との間の距離L1,L2が短くなるほど小さくなる。距離L1は距離L2より短いので、立柱5における工具91のねじれによる変位は、従来構造の立柱60における工具91のねじれによる変位よりも小さくなる。故に工作機械1は、主軸7が水平方向に延びる場合でも、ワーク99の加工時におけるねじれによる変位を小さくできる。
【0042】
上記実施形態において、ベース2は本発明の基台の一例である。ワーク99が被削材の一例である。回転テーブル9は本発明の作業台の一例である。ガイド24は本発明の上下案内部の一例である。Z軸方向(前後方向)は本発明の交差方向の一例である。摺動部材57,58は本発明の交差案内部の一例である。摺動部材57は本発明の第一交差案内部の一例である。摺動部材58は本発明の第二交差案内部の一例である。
【0043】
本発明は上記実施形態に限らず各種変形が可能である。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限り夫々組合わせ可能である。例えば、本発明は上記実施形態の工作機械1は主軸7が水平方向に延びる横型工作機械であるが、主軸が上下方向に延びる縦型工作機械にも適用できる。
【0044】
立柱5において、摺動部材57,58と取付面52R,52Lとの位置関係は以下のように変更してもよい。摺動部材57R,57Lの少なくとも一部が取付面52R,52Lよりも前方に配置されていればよく、摺動部材57R,57Lの一部が取付面52R,52Lよりも後方に配置されてもよい。摺動部材57,58は何れも取付面52R,52Lよりも前方に配置されてもよい。この場合、摺動部材57,58は回転テーブル9よりも後方に配置されればよい。摺動部材58は板部材56Aの前後方向における中央部に配置されてもよい。この場合、交点Q1がより工具91の前端に近づき、距離L1が短くなる。故に立柱5は工具91のねじれによる変位を更に小さくすることができる。
【0045】
突出部55の上面55Aは前下方に傾斜していなくてもよい。例えば、上面55Aは水平面であってもよい。
【0046】
摺動部材57,58は一対のガイド25に沿って移動する構成であればよく例えば摺動部材57,58に代わり一対のガイド25を転動するローラでもよい。
【0047】
回転テーブル9はX軸方向、Y軸方向、又はZ軸方向の少なくとも一方に移動してもよい。回転テーブル9はX軸周りに回転してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 工作機械
5 立柱
7 主軸
52R,52L 取付面
55 突出部
56 移動体
57,58 摺動部材(交差案内部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9