(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005961
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】インキ瓶用アダプタ
(51)【国際特許分類】
B43L 25/06 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B43L25/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106461
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】守屋 知巳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 光樹
(57)【要約】
【課題】複数のサイズや形状の万年筆等の筆記具に対応可能で、それぞれのペン先を適切に保護することができるインキ瓶用アダプタを提供する。
【解決手段】本発明のインキ瓶用アダプタ9は、インキ瓶7の内部に配置され、先端にペン先を有する首部を備えた筆記具が挿し込まれるものである。インキ瓶用アダプタ9は、底壁3と側周壁10とを有し、側周壁10に貫通孔11が形成された有底円筒形状の筒状体1を備え、筒状体1の内部Sには、筆記具の首部が当接する当接部5が設けられており、当接部5が、外径の異なる少なくとも2つ以上の筆記具の首部が選択的に当接可能な複数の当接面を備えた多段構造を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ瓶の内部に配置され、ペン先を備えた首部を有する筆記具が挿し込まれるインキ瓶用アダプタであって、
底壁と側周壁とを有し、前記側周壁に貫通孔が形成された有底略円筒形状の筒状体を備え、
前記筒状体の内部には、前記筆記具の前記首部の先端面が当接する当接部が設けられており、
前記当接部が、外径の異なる少なくとも2つ以上の筆記具の首部の先端面が選択的に当接可能な複数の当接面を備えた多段構造を有する、インキ瓶用アダプタ。
【請求項2】
前記当接部が、前記複数の当接面として少なくとも第1当接面及び第2当接面を有し、
前記第1当接面が前記筒状体の前記側周壁の内周面に沿った外縁を有し、
前記第2当接面が前記第1当接面の外縁よりも縮径された外縁を有し、
前記第2当接面が前記第1当接面よりも前記筒状体の軸方向前記底壁側に位置している、請求項1に記載のインキ瓶用アダプタ。
【請求項3】
前記当接部が、前記筒状体の前記側周壁から前記筒状体の中心軸方向に延設された複数のリブで構成されている、請求項1に記載のインキ瓶用アダプタ。
【請求項4】
前記複数のリブが少なくとも3つ以上のリブである、請求項3に記載のインキ瓶用アダプタ。
【請求項5】
前記複数のリブが等間隔に配置されている、請求項3又は4に記載のインキ瓶用アダプタ。
【請求項6】
前記底壁と平行な仮想面であって、前記貫通孔の前記筒状体の軸方向前記底壁側の端部を通る仮想面が、前記複数の当接面のうち、前記筒状体の軸方向において前記底壁の最も近くに位置する当接面よりも、前記筒状体の軸方向前記底壁側に位置している、請求項1に記載のインキ瓶用アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ瓶の内部に配置して用いられるインキ瓶用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
万年筆等の筆記具用インキを収容したインキ瓶は、一般に硬質のガラスで形成されている。例えば万年筆に筆記具用インキを補給するには、万年筆のペン先部をインキ瓶の口から瓶内に挿し込み、筆記具用インキを吸入して補給するが、インキ瓶内のインキが少なくなると、万年筆でうまく吸入することができず、利用できないインキが残ってしまうという問題や、万年筆のペン先を瓶の底面や内壁面に当ててしまい、ペン先を破損してしまうという問題がある。
【0003】
そのような問題を解決するために、インキ瓶の内部にアダプタを配置したものが知られている。例えば、特許文献1には、万年筆のペン先が差し込まれるペン先差し込み部を有し、瓶内に残り少なくなったインキをペン先差し込み部に導いて万年筆で吸引可能にするアダプタ(インキリザーバー)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、筆記具は様々なサイズ展開がされており、例えば万年筆であれば、胴軸や首軸、ペン先等の長さや太さ、大きさ等に様々なバリエーションが存在する。そのため、例えばある万年筆の首軸やペン先にとっては適切な大きさ、構造となっているアダプタが装着されているインキ瓶に、別の万年筆のペン先部を差し込んでインキを吸入しようとしても、適切なペン先部の保護ができないおそれがある。具体的には、別の万年筆の首軸が大き過ぎてアダプタに嵌まらなかったり、ペン先が大き過ぎて、あるいは長過ぎてインキ瓶に装着されたアダプタの底部や内壁部に干渉してしまい、その結果、ペン先が破損したり、うまくインキを吸引することができなかったりする可能性がある。また、別の万年筆の首軸が小さ過ぎても、アダプタ内に満たされたインキで首軸が汚れてしまったり、アダプタの底部や内壁部にペン先が当たってしまってペン先が破損してしまったりする可能性がある。
【0006】
インキを吸入して補給しようとしている万年筆に合わせたアダプタを複数用意しておき、使用している万年筆に最適なアダプタに都度交換する、あるいは使用している万年筆ごとに最適なアダプタを取り付けたインキ瓶を用意することも考えられるが、万年筆ごとにアダプタやインキ瓶を用意するのは非効率であるし、その都度手を汚しながらアダプタを交換することもかなりの手間である。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、複数のサイズや形状の万年筆等の筆記具に対応可能で、それぞれのペン先を適切に保護することができるインキ瓶用アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、インキ瓶の内部に配置され、ペン先を備えた首部を有する筆記具が挿し込まれるインキ瓶用アダプタであって、底壁と側周壁とを有し、前記側周壁に貫通孔が形成された有底略円筒形状の筒状体を備え、前記筒状体の内部には、前記筆記具の前記首部が当接する当接部が設けられており、前記当接部が、外径の異なる少なくとも2つ以上の筆記具の首部が選択的に当接可能な複数の当接面を備えた多段構造を有する、インキ瓶用アダプタを提供する(発明1)。
【0009】
かかる発明(発明1)によれば、挿し込まれる筆記具のサイズや形状に応じて、筆記具の首部を当接させるのに適切な当接面を、当接部の複数の当接面から選択することができるので、インキ瓶用アダプタを複数のサイズや形状の万年筆等の筆記具に対応させることができるとともに、複数のサイズや形状の万年筆等の筆記具のペン先を適切に保護することができる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記当接部が、前記複数の当接面として少なくとも第1当接面及び第2当接面を有し、前記第1当接面が前記筒状体の前記側周壁の内周面に沿った外縁を有し、前記第2当接面が前記第1当接面の外縁よりも前記筒状体の中心軸方向に配置された外縁を有し、前記第2当接面が前記第1当接面よりも前記筒状体の軸方向前記底壁側に位置していることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1、2)においては、前記当接部が、前記筒状体の前記側周壁から前記筒状体の中心軸方向に延設された複数のリブで構成されていることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明3)においては、前記複数のリブが少なくとも3つ以上のリブであることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明3,4)においては、前記複数のリブが等間隔に配置されていることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1-5)においては、前記底壁と平行な仮想面であって、前記貫通孔の前記筒状体の軸方向前記底壁側の端部を通る仮想面が、前記複数の当接面のうち、前記筒状体の軸方向において前記底壁の最も近くに位置する当接面よりも、前記筒状体の軸方向前記底壁側に位置していることが好ましい(発明6)。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のサイズや形状の万年筆等の筆記具に対応可能で、それぞれのペン先を適切に保護することができるインキ瓶用アダプタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインキ瓶用アダプタの全体構造を示す説明図である。
【
図2】同実施形態に係るインキ瓶用アダプタの内部構造を示す説明図である。
【
図3】同実施形態に係るインキ瓶用アダプタをインキ瓶に取り付けた状態を示す説明図である。
【
図4】同実施形態に係るインキ瓶用アダプタに様々なサイズの万年筆を挿し込んだ状態を示す説明図である。
【
図5】インキ瓶用アダプタ内部の形状の変形例1を示す説明図である。
【
図6】インキ瓶用アダプタ内部の形状の変形例2を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態にのみ限定されるものではなく、実施形態はあくまでも本発明の技術的特徴を説明するために記載された例示にすぎない。また、各図面に示す形状や寸法はあくまでも本発明の内容の理解を容易にするために示したものであり、実際の形状や寸法を正しく反映したものではない。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るインキ瓶用アダプタ9の全体構造を示す説明図である。また、
図2はインキ瓶用アダプタ9の内部構造を示す説明図であり、(a)はインキ瓶用アダプタ9を上方からみた平面図、(b)は(a)の平面図におけるA-A断面図、(c)は(a)の平面図におけるB-B断面図である。インキ瓶用アダプタ9は、インキ瓶の内部に配置され、先端にペン先を有する首部を備えた筆記具(万年筆)が挿し込まれるものであり、筆記具のペン先を保護しつつ、筆記具による瓶内のインキの吸入を容易にするために用いられるものである。
【0019】
インキ瓶用アダプタ9は、
図1及び
図2に示すように、円筒形状の本体部1と、本体部1の下側に連続して設けられ、下部に向かって縮径していく逆円錐筒形状(中空の逆円錐台形状)の底部2と、底部2の下側に連続して設けられた円板形状の脚部3とを備えている。本体部1の上部には、万年筆の先端部を挿し込むための開口4が設けられている。
【0020】
本体部1は、その外径及び内径が一定の円筒形状を有し、本体部1の側周壁10には、本体部1の内部から外部へと貫通した平面視正円形状の貫通孔11が2つ設けられている。2つの貫通孔11はいずれも同じ大きさであり、また、2つの貫通孔11は対向するように、同じ高さに設けられている。すなわち、インキ瓶用アダプタ9の脚部3の底面から貫通孔11の下端(最下点)までの高さh1と、インキ瓶用アダプタ9の脚部3の底面から貫通孔11の上端(最上点)までの高さh2は、2つの貫通孔11いずれも同一になっている。
【0021】
底部2は、本体部1の下側に連続して設けられ、本体部1側から脚部3側に向かってその外径及び内径が徐々に小さくなっていく逆円錐筒形状(中空の逆円錐台形状)を有する。
【0022】
本体部1及び底部2は内部が中空になっており、この内部の空間がインキの溜まる収容空間Sとして機能する。また、底部2の下側に連続して設けられた円板形状の脚部3が、本体部1及び底部2の内部の収容空間Sの底壁として機能している。すなわち、インキ瓶用アダプタ9の収容空間Sは、本体部1の側周壁10及び底部2の側周壁20と、底壁としての脚部3とによって形成されており、インキ瓶用アダプタ9は全体として有底略円筒形状の筒状体になっている。
【0023】
本実施形態において、インキ瓶用アダプタ9の本体部1、底部2及び脚部3は同一の材料で一体に形成されている。その材料は特に限定されるものではなく、例えば、樹脂材料、金属材料、セラミックス材料等を用いることができる。例えば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)等の熱可塑性合成樹脂材料を射出成形することにより、本体部1、底部2及び脚部3を一体に形成してもよいし、銅やアルミ、ステンレス合金等の金属材料を鋳造や射出成形することによって形成してもよい。
【0024】
インキ瓶用アダプタ9は、
図3に示すようにインキ瓶7に取り付けて用いられる。具体的には、インキ瓶7の蓋70を外してインキ瓶用アダプタ9をインキ瓶7の口から内部に入れ、インキ瓶用アダプタ9の脚部3をインキ瓶7の底面71上に載置し、インキ瓶用アダプタ9の本体部1の上部がインキ瓶7の口に嵌め込まれた状態でインキ瓶7の内部に略垂直状態の姿勢で配置される。この状態で蓋70を閉め(
図3(a)の状態)、インキ瓶7をひっくり返して蓋70が下側になるようにすると(
図3(b)の状態)、インキ瓶7内のインキがインキ瓶用アダプタ9の本体部1の貫通孔11から収容空間Sに流れ込む。その後、インキ瓶7を再度ひっくり返して蓋70が上側になるようにすると(
図3(a)の状態)、インキ瓶用アダプタ9に流れ込んだインキが収容空間Sに滞留したままの状態になるので、蓋70を外したインキ瓶7の万年筆の先端側をインキ瓶用アダプタ9に挿し込み、万年筆のペン先からインキを吸入することが可能になる。
【0025】
本体部1及び底部2の内部の収容空間Sには、当接部としての複数のリブ5が設けられている。本実施形態においては、本体部1の側周壁10及び底部2の側周壁20の内周面からインキ瓶用アダプタ9(の本体部1、底部2及び脚部3)の中心軸方向に延設された(すなわち、本体部1及び底部2の径方向内側に向かって突出した)3つの板状の突起部材がリブ5a、5b、5cとして配置されている。3つのリブ5a、5b、5cは同じ形状を有し、本体部1の側周壁10及び底部2の側周壁20の内周面において周方向に等間隔に配置されており、また、同じ高さに配置されている。
【0026】
なお、本実施形態において、3つのリブ5a、5b、5cは、本体部1、底部2及び脚部3と同じ材料で、本体部1及び底部2と一体に形成されているが、これに限られるものではなく、本体部1、底部2及び脚部3と同じ材料で形成されたリブや異なる材料で形成されたリブを、接着、溶接等の公知の固着手段を用いて本体部1の側周壁10及び底部2の側周壁20の内周面に固着させていてもよい。
【0027】
リブ5aは、第1当接面51a、第2当接面52a及び第3当接面53aの3つの当接面を有しており、第1当接面51a、第2当接面52a及び第3当接面53aは、それぞれインキ瓶用アダプタ9(の本体部1、底部2及び脚部3)の軸方向に対して垂直に形成されている。同様に、リブ5bも第1当接面51b、第2当接面52b及び第3当接面53bの3つの当接面を有しており、リブ5cも第1当接面51c、第2当接面52c及び第3当接面53cの3つの当接面を有している。本実施形態においては、リブ5a、5b、5cがそれぞれ3つの当接面を有するものとなっているが、これに限られるものではなく、リブ5a、5b、5cは当接面が2つの多段構造であってもよいし、当接面が4つ以上の多段構造であってもよい。
【0028】
図1に示すように、リブ5aの第1当接面51a、リブ5bの第1当接面51b及びリブ5cの第1当接面51cは同一面上にあり、リブ5aの第2当接面52a、リブ5bの第2当接面52b及びリブ5cの第2当接面52cは同一面上にあり、リブ5aの第3当接面53a、リブ5bの第3当接面53b及びリブ5cの第3当接面53cは同一面上にある。つまり、本実施形態では、1つの当接部が3つのリブ5a、5b、5cから構成され、当該当接部が3つの領域に分離された当接面を3つ備えた多段構造を有していることになる。
【0029】
3つのリブ5a、5b、5cは同じ形状を有するため、リブ5aについてのみ構造を詳細に説明すると、リブ5aの第1当接面51aは本体部1の側周壁10の内周面に沿った外縁511aを有し、第2当接面52aは第1当接面51aの外縁511aよりもインキ瓶用アダプタ9(の本体部1、底部2及び脚部3)の中心軸方向に配置された外縁521aを有し、第3当接面53aは第2当接面52aの外縁521aよりもインキ瓶用アダプタ9(の本体部1、底部2及び脚部3)の中心軸方向に配置された外縁531aを有している。
【0030】
3つのリブ5a、5b、5cそれぞれの第1当接面51(51a、51b、51c)の外縁、第2当接面52(52a、52b、52c)の外縁及び第3当接面53(53a、53b、53c)の外縁は、インキ瓶用アダプタ9に挿し込まれる万年筆の首部の外縁に合わせた形状、すなわち(万年筆の挿入方向から見て)平面視で略正円形の円周上に位置するようになっている。また、第3当接面53は第2当接面52よりもインキ瓶用アダプタ9(の本体部1、底部2及び脚部3)の軸方向底壁側(つまり脚部3側)に位置しており、第2当接面52は第1当接面51よりもインキ瓶用アダプタ9(の本体部1、底部2及び脚部3)の軸方向底壁側(つまり脚部3側)に位置している。
【0031】
このように、インキ瓶用アダプタ9の内部には、万年筆の首部が当接する当接部として機能するリブ5a、5b、5cが設けられており、リブ5a、5b、5cが、外径の異なる少なくとも2つ以上の万年筆の首部が選択的に当接可能な3つの当接面、すなわち第1当接面51、第2当接面52及び第3当接面53を備えた多段構造を有している。このような3つの当接面を備えた多段構造の当接部を設けたインキ瓶用アダプタ9であれば、少なくとも3つの異なるサイズや形状を有する万年筆に対して使用することができるとともに、それらの万年筆のペン先を適切に保護することができる。例えば、当接部において、第3当接面53の外径を9.8mm、第2当接面52の外径を10.6mm、第1当接面51の外径を12.3mmとすれば、首部の外径が9.8mmよりやや小さい万年筆、首部の外径が10.6mmよりやや小さい万年筆、首部の外径が12.3mmよりやや小さい万年筆の少なくとも3種類の万年筆を挿し込んで安定的に支持することができる。万年筆の首部の形状等によっては、3つの当接面を備えた多段構造の当接部を設けたインキ瓶用アダプタ9で、4種類以上の万年筆に対応させることも可能である。なお、当然ながら、各当接面の外径は使用予定の万年筆に合わせて適宜変更してもよい。
【0032】
図4は、インキ瓶用アダプタ9に様々なサイズの万年筆を挿し込んだ状態を示す説明図である。(a)では、万年筆8aの首部の先端面が第1当接面51に当接している。(b)では、万年筆8aよりも長さが短く、首部の径が小さく、ペン先の大きさが小さい万年筆8bが、インキ瓶用アダプタ9に挿し込まれており、万年筆8bの首部の先端面が第2当接面52に当接している。(c)では、万年筆8bよりも長さが短く、首部の径が小さく、ペン先の大きさが小さい万年筆8cが、インキ瓶用アダプタ9に挿し込まれており、万年筆8cの首部の先端近く、先端面よりもやや径が大きくなっている部分が第2当接面52に当接している。(d)では、万年筆8cよりも長さが短く、首部の径が小さく、ペン先の大きさが小さい万年筆8dが、インキ瓶用アダプタ9に挿し込まれており、万年筆8dの首部の先端面が第3当接面53に当接している。
【0033】
このような3つの当接面を備えた多段構造の当接部を設けたインキ瓶用アダプタ9であれば、挿し込まれる筆記具(万年筆)のサイズや形状に応じて、筆記具の首部の先端面を当接させるのに適切な当接面を、当接部の複数の当接面から選択することができるので、インキ瓶用アダプタ9を複数のサイズや形状の筆記具に対応させることができるとともに、複数のサイズや形状の万年筆等の筆記具のペン先を適切に保護することができる。
【0034】
本実施形態においては、当接部を3つのリブ5a、5b、5cで構成したが、これに限られるものではなく、当接部を4つ以上のリブで構成してもよい。ただし、リブの数を増やせば増やすほど安定的に筆記具を支持することができるものの、リブの数が増えると、それだけ収容空間Sの容積が小さくなるので、必要なインキの収容量が確保できなくなるおそれが出てくる。また、リブの数が増えると、筆記具のペン先が嵌ってしまい、筆記具の先端部の抜き挿しが速やかにできなくなるおそれもある。一方、リブが2つの場合は、筆記具を安定的に垂直に支持できないおそれがあるので、当接部を複数のリブで構成する場合、リブを3つにすることが最も好ましい。
【0035】
また、本実施形態においては、インキ瓶用アダプタ9の底壁(脚部3)と平行な仮想面であって、2つの貫通孔11のインキ瓶用アダプタ9(の本体部1、底部2及び脚部3)の軸方向底壁(脚部3)側の端部を通る仮想面が、複数の当接面のうち、インキ瓶用アダプタ9の軸方向において底壁(脚部3)の最も近くに位置する当接面である第3当接面53よりも、インキ瓶用アダプタ9の軸方向底壁(脚部3)側に位置している。すなわち、
図1に示すように、インキ瓶用アダプタ9の脚部3の底面から貫通孔11の下端(最下点)までの高さh
1は、インキ瓶用アダプタ9の脚部3の底面から第3当接面53までの高さHよりも低くなっている。このように高さh
1を高さHよりも低くすることで、インキ瓶用アダプタ9の収容空間Sに滞留しているインキの液面が第3当接面53よりも低くなるので、インキ瓶用アダプタ9に筆記具の先端部を挿し込んだ際、筆記具の首部がインキで汚れることを抑制することができる。
【0036】
以上説明してきたインキ瓶用アダプタ9によれば、挿し込まれる筆記具のサイズや形状に応じて、筆記具の首部の先端面を当接させるのに適切な当接面を、当接部の複数の当接面から選択することができるので、インキ瓶用アダプタを複数のサイズや形状の万年筆等の筆記具に対応させることができるとともに、複数のサイズや形状の万年筆等の筆記具のペン先を適切に保護することができる。
【0037】
<変形例1>
外径の異なる少なくとも2つ以上の筆記具の首部が選択的に当接可能な複数の当接面を備えた多段構造を有する当接部の変形例を示す。
図5(a)は、変形例1のインキ瓶用アダプタ9aを上方からみた平面図であり、(b)は(a)の平面図におけるC-C断面図である。インキ瓶用アダプタ9aの本体部1aの側周壁10aの内周面には、中央部に正円形状の孔60を有する環状部材である当接部材6が配置されている。なお、本変形例における当接部材6は、本体部1aと一体に形成されてはおらず、本体部1aからは独立した部材として本体部1aの側周壁10aの内周面に取り付けられている。また、本変形例の本体部1aの側周壁10aには、長孔形状の貫通孔11aが形成されており、インキの液面が当接部材6よりも下側に来るように、貫通孔11aは当接部材6よりも下側に形成されている。その他の部分についてはインキ瓶用アダプタ9と同じ構造であるため、説明を省略する。
【0038】
本実施形態の当接部材6は、第1当接面61、第2当接面62及び第3当接面63の3つの当接面を有しており、第1当接面61、第2当接面62及び第3当接面63は、それぞれ本体部1の軸方向に対して垂直に形成されている。第1当接面61、第2当接面62及び第3当接面63はいずれも平面視リング形状になっており、各当接面が複数の領域には分離されていない。つまり、本変形例1では、1つの当接部が1つの当接部材6から構成され、当該当接部が単一領域からなる当接面を3つ備えた多段構造を有していることになる。
【0039】
<変形例2>
図6(a)は、変形例2のインキ瓶用アダプタ9bを上方からみた平面図であり、(b)は(a)の平面図におけるD-D断面図である。インキ瓶用アダプタ9bの本体部1bの側周壁10bの内周面には、変形例1の当接部材6に2箇所の切り欠きを形成することで2つに分離させた当接部材6a、6bが配置されている。本変形例の本体部1bの側周壁10bには、当接部材6a、6bが存在していない位置(つまり切り欠きの位置)に正円形状の貫通孔11bが形成されており、インキの液面が当接部材6a、6bよりも下側に来るように、少なくとも貫通孔11bの下端が当接部材6a、6bよりも下側に形成されている。その他の部分についてはインキ瓶用アダプタ9と同じ構造であるため、説明を省略する。
【0040】
本実施形態の当接部材6a、6bは、それぞれ第1当接面61、第2当接面62及び第3当接面63の3つの当接面を有しており、第1当接面61、第2当接面62及び第3当接面63は、それぞれ本体部1の軸方向に対して垂直に形成されている。第1当接面61、第2当接面62及び第3当接面63はいずれも平面視円弧形状になっており、各当接面が2つの領域に分離されている。つまり、本変形例2では、1つの当接部が2つの当接部材6a、6bから構成され、当該当接部が2つの領域からなる当接面を3つ備えた多段構造を有していることになる。
【0041】
以上、本発明に係るインキ瓶用アダプタについて図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。例えば、本実施形態におけるインキ瓶用アダプタ9は本体部1、底部2及び脚部3を有するように構成されていたが、これに限られるものではなく、例えば円筒形状の本体部と円板形状の脚部のみを有するように構成されていてもよい。
【0042】
また、脚部は、インキ瓶内にインキ瓶用アダプタを安定的に配置させることができるものであれば、円板形状以外の形状であってもよいし、例えばインキ瓶内にインキ瓶用アダプタを固定するための何らかの構造・機構を本体部に設けることにより、インキ瓶用アダプタに脚部そのものを設けないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
9 インキ瓶用アダプタ
1 本体部
11 貫通孔
2 底部
3 脚部
4 開口
5a、5b、5c リブ(当接部)
S 収容空間
7 インキ瓶
8a、8b、8c、8d 万年筆