(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059619
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】発酵装置、発酵装置の使用方法及びメタンガス製造方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20240423BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20240423BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20240423BHJP
B09B 101/70 20220101ALN20240423BHJP
【FI】
B09B3/65
B09B3/35
C02F11/04 A ZAB
B09B101:70
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008298
(22)【出願日】2024-01-23
(62)【分割の表示】P 2020094179の分割
【原出願日】2020-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】上山 真喜
(72)【発明者】
【氏名】加藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】畠中 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】深川 孝博
(72)【発明者】
【氏名】坂手 貴志
(57)【要約】
【課題】上水等の清浄な水の消費量を抑制することが可能な発酵装置を提案することを課題とする。
【解決手段】発酵原料を破砕する破砕工程部10と、発酵槽2を有し、前記破砕工程部10で破砕された発酵原料を前記発酵槽2に導入し、前記発酵槽2内で発酵原料を発酵させる発酵装置1において、発酵槽2内の水分を前記破砕工程部10に戻す還流搬送路60を有することを特徴とする発酵装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵原料を破砕する破砕工程部と、発酵槽を有し、前記破砕工程部で破砕された発酵原料を前記発酵槽に導入し、発酵槽内で発酵原料を発酵させる発酵装置において、
前記発酵槽内の水分を前記破砕工程部に戻す還流搬送路を有することを特徴とする発酵装置。
【請求項2】
温調循環搬送路を有し、当該温調循環搬送路は中途に熱交換部があり、前記温調循環搬送路は、前記発酵槽内の水分を取り出して前記熱交換部に導いて温度調節し、発酵槽に戻すものであり、
ポンプを有し、当該ポンプの吸引側が前記発酵槽に接続されており、前記ポンプの吐出側が分岐され、当該分岐の一つが前記熱交換部に接続されていて前記温調循環搬送路が構成され、前記分岐の他の一つによって前記還流搬送路が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発酵装置。
【請求項3】
動物の糞尿を貯留するし尿貯留槽を有し、当該し尿貯留槽に貯留されたし尿を前記破砕工程部に送る、し尿供給搬送路を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の発酵装置。
【請求項4】
前記破砕工程部は、粗破砕装置と、湿式破砕装置を有し、前記粗破砕装置の下流側に前記湿式破砕装置が配されていて、前記粗破砕装置で破砕された発酵原料が、さらに前記湿式破砕装置で破砕されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発酵装置。
【請求項5】
前記破砕工程部は、前記粗破砕装置と前記湿式破砕装置が上下の位置に配置されていて、両者の間が直接的に又は管路を介して接続されており、
前記粗破砕装置において発酵原料が破断される粗破砕装置側破断部と、前記湿式破砕装置において発酵原料が破断される湿式側破断部との間に水位センサーが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の発酵装置。
【請求項6】
発酵原料を一時的に保管する保管槽を有し、
前記破砕工程部と前記発酵槽を繋ぐ第1投入搬送路と、
前記破砕工程部と前記保管槽を繋ぐ備蓄用搬送路と、
前記保管槽と前記発酵槽を繋ぐ第2投入搬送路を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の発酵装置。
【請求項7】
搬送路切り替え手段を有し、
前記破砕工程部で破砕された発酵原料の全量を前記発酵槽に搬入する全量投入と、
前記破砕工程部で破砕された発酵原料の一部を前記発酵槽に搬入し残部を前記保管槽に搬入する一部投入と、
前記破砕工程部で破砕された発酵原料の全量に加えて前記保管槽内の発酵原料を同時に前記発酵槽に搬入する追加投入を実施することが可能であることを特徴とする請求項6のいずれかに記載の発酵装置。
【請求項8】
前記破砕工程部で破砕されている発酵原料の一定時間あたりの破砕量が、前記発酵槽に対する一定時間あたりの発酵原料の予定投入量よりも多い場合に、前記破砕工程部で破砕された発酵原料の一部を前記発酵槽に搬入し残部を前記保管槽に搬入する一部投入を実施し、
前記破砕工程部で破砕されている発酵原料の一定時間あたりの破砕量が、前記発酵槽に対する一定時間あたりの発酵原料の予定投入量よりも少ない場合に、前記破砕工程部で破砕された発酵原料の全量に加えて前記保管槽内の発酵原料を同時に前記発酵槽に搬入する追加投入を実施することを特徴とする請求項7に記載の発酵装置の使用方法。
【請求項9】
生ごみを含む発酵原料を破砕してスラリー化するスラリー化工程と、前記スラリー化工程によってスラリー化された発酵原料を発酵槽に導入してメタン発酵させ、メタンガスと消化液を得る発酵工程を有するメタンガス製造方法において、
前記スラリー化工程の際に、発酵槽で得た消化液を発酵原料に加えて破砕することを特徴とするメタンガス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみ等を発酵原料とする発酵装置及びメタンガス製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生ごみ等を有効利用する方策の一つとして、嫌気性消化法(メタンガス発酵)によってメタンガスを発生させ、当該メタンガスを収集して利用することが提案されている。
即ち生ごみ等を原料として嫌気性菌により発酵させ、メタンガスを発生させて発電等に供する。
生ごみ等は、あらかじめ細かく破砕されて発酵槽に投入される。生ごみ等の粉砕には、湿式破砕装置が利用される場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
湿式破砕装置は、液中で対象物を破砕する装置であり、乾式破砕装置に比べてより細かく破砕することができる。
従来技術のおいては、湿式破砕装置に生ごみ等と共に上水や地下水の様な清浄な水を注入し、湿式破砕装置のチャンパー内に水を満たした状態で、回転刃等を駆動し、生ごみ等を破砕する。
【0005】
従来技術の発酵装置は、前記した様に湿式破砕装置に上水等を注入していた。そのため、上水等の消費量が多いという問題があった。
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、上水等の清浄な水の消費量を抑制することが可能な発酵装置及びメタンガス製造方法を提案することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための態様は、発酵原料を破砕する破砕工程部と、発酵槽を有し、前記破砕工程部で破砕された発酵原料を前記発酵槽に導入し、発酵槽内で発酵原料を発酵させる発酵装置において、前記発酵槽内の水分を前記破砕工程部に戻す還流搬送路を有することを特徴とする発酵装置である。
【0007】
ここで、「水分」は、「水を含む」という意味である。還流搬送路によって破砕工程部に戻されるものには消化液が含まれている。本態様は、消化液の水分を利用して破砕時に必要な水分を補うものである。還流搬送路によって破砕工程部に戻されるのは、多くの場合、固形分と水が混合されたスラリーである。
「搬送路」は、鋼管やホース等によって構成された管路であってもよく、スクリューコンベヤや、バケットコンベヤ等の水分を含む物を搬送できるコンベヤであってもよい。
本態様によると、発酵槽内の水分が、破砕工程部に供給されるので、上水等の使用料を減らすことができる。
場合によっては、上水等を使用せずに破砕装置のチャンバーを液体で満たすこともできる。
【0008】
上記した態様において、温調循環搬送路を有し、当該温調循環搬送路は中途に熱交換部があり、前記温調循環搬送路は、前記発酵槽内の水分を取り出して前記熱交換部に導いて温度調節し、発酵槽に戻すものであり、ポンプを有し、当該ポンプの吸引側が前記発酵槽に接続されており、前記ポンプの吐出側が分岐され、当該分岐の一つが前記熱交換部に接続されていて前記温調循環搬送路が構成され、前記分岐の他の一つによって前記還流搬送路が構成されていることが望ましい。
【0009】
本態様の発酵装置は、温調循環搬送路を有している。温調循環搬送路は、熱交換器を経由して発酵槽の内容物を循環させるものである。
本態様の発酵装置は、温調循環搬送路内の熱交換器で内容物の温度調節をすることができるので、発酵槽内の発酵原料を発酵に適した温度に保つことができる。
また本態様の発酵装置は、温調循環搬送路のポンプと還流搬送路のポンプが共用されているので、部品点数が少ない。
【0010】
上記した各態様において、動物の糞尿を貯留するし尿貯留槽を有し、当該し尿貯留槽に貯留されたし尿を前記破砕工程部に送る、し尿供給搬送路を有することが望ましい。
【0011】
「動物」には、牛、馬、豚、羊その他の哺乳類、鶏等の鳥類が含まれる。また「動物」には、人も含まれる。
し尿には、水が多く含まれている。
本態様の発酵装置は、し尿が、破砕工程部に供給され、し尿の水分が発酵原料のスラリー化に利用されるので、上水等の使用量を減らすことができる。
【0012】
上記した各態様において、前記破砕工程部は、粗破砕装置と、湿式破砕装置を有し、前記粗破砕装置の下流側に前記湿式破砕装置が配されていて、前記粗破砕装置で破砕された発酵原料が、さらに前記湿式破砕装置で破砕されることが望ましい。
【0013】
本態様によると、粗破砕装置によって、生ごみ等が砕かれ、さらに湿式破砕装置によって、細かく粉砕される。
本態様の発酵装置では、粗破砕装置で破砕された発酵原料が、湿式破砕装置に送られる。そのため発酵原料が、湿式破砕装置に巻き込まれやすい。
即ち、発酵原料が大きい場合、湿式破砕装置の中で当該発酵原料が浮き、湿式破砕装置の刃に巻き込まれにくい場合がある。
本態様の発酵装置では、粗破砕装置で破砕された発酵原料が、湿式破砕装置に送られるので、発酵原料が湿式破砕装置に巻き込まれやすく、湿式破砕装置で細かく砕かれる。
本態様によると、発酵原料を細かく粉砕された状態にして発酵槽に搬送されるので、発酵が進みやすい。
【0014】
上記した態様において、前記破砕工程部は、前記粗破砕装置と前記湿式破砕装置が上下の位置に配置されていて、両者の間が直接的に又は管路を介して接続されており、前記粗破砕装置において発酵原料が破断される粗破砕装置側破断部と、前記湿式破砕装置において発酵原料が破断される湿式側破断部との間に水位センサーが設けられていることが望ましい。
【0015】
本態様の発酵装置では、発酵原料が破断される湿式側破断部との間に水位センサーが設けられているので、湿式側破断部に十分に液体が有るか否かを正確に検知することができる。
【0016】
上記した各態様において、発酵原料を一時的に保管する保管槽を有し、前記破砕工程部と前記発酵槽を繋ぐ第1投入搬送路と、前記破砕工程部と前記保管槽を繋ぐ備蓄用搬送路と、前記保管槽と前記発酵槽を繋ぐ第2投入搬送路を有することが望ましい。
【0017】
ここで「保管槽」は、例えばプールの様な上部空間が解放されたものであってもよく、タンクの様な密閉されたものであってもよい。
本態様の発酵装置では、発酵原料を一時的に保管する保管槽を有している。そのため、外部から発酵装置に運ばれてくる発酵原料の量が多い場合は、当該発酵原料を破砕し、備蓄用搬送路を経由して保管槽に貯めておくことができる。
また必要に応じて、保管槽から第2投入搬送路を経由して発酵槽に搬入することができる。
【0018】
上記した態様において、搬送路切り替え手段を有し、前記破砕工程部で破砕された発酵原料の全量を前記発酵槽に搬入する全量投入と、前記破砕工程部で破砕された発酵原料の一部を前記発酵槽に搬入し残部を前記保管槽に搬入する一部投入と、前記破砕工程部で破砕された発酵原料の全量に加えて前記保管槽内の発酵原料を同時に前記発酵槽に搬入する追加投入を実施することが可能であることが望ましい。
【0019】
本態様によると、発酵装置に導入される発酵原料の量や、集められた生ごみ等の量にばらつきがあっても、発酵槽に投入する発酵原料の量を平準化することができる。
【0020】
上記した態様の発酵装置を使用する方法の態様は、前記破砕工程部で破砕されている発酵原料の一定時間あたりの破砕量が、前記発酵槽に対する一定時間あたりの発酵原料の予定投入量よりも多い場合に、前記破砕工程部で破砕された発酵原料の一部を前記発酵槽に搬入し残部を前記保管槽に搬入する一部投入を実施し、前記破砕工程部で破砕されている発酵原料の一定時間あたりの破砕量が、前記発酵槽に対する一定時間あたりの発酵原料の予定投入量よりも少ない場合に、前記破砕工程部で破砕された発酵原料の全量に加えて前記保管槽内の発酵原料を同時に前記発酵槽に搬入する追加投入を実施することを特徴とする。
【0021】
「一定時間」は、比較的長いスパンであり、例えば1時間とか、3時間とか、半日という様な単位である。
本態様によると、発酵装置に導入される発酵原料の量にばらつきがあっても、発酵槽に投入する発酵原料の量を平滑化することができる。
【0022】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、生ごみを含む発酵原料を破砕してスラリー化するスラリー化工程と、前記スラリー化工程によってスラリー化された発酵原料を発酵槽に導入してメタン発酵させ、メタンガスと消化液を得る発酵工程を有するメタンガス製造方法において、前記スラリー化工程の際に、発酵槽で得た消化液を発酵原料に加えて破砕することを特徴とするメタンガス製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の発酵装置及びメタンガス製造方法は、上水等の消費量を抑制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態の発酵装置の系統図である。
【
図2】
図1の発酵装置の破砕工程部近傍の拡大図である。
【
図3】
図1の発酵装置のし尿タンク近傍の拡大図である。
【
図4】
図1の発酵装置の保管槽近傍の拡大図である。
【
図5】
図1の発酵装置の系統図であり、発酵原料を発酵槽に全量投入する際における発酵原料及び消化液の流れを示す。
【
図6】
図1の発酵装置の系統図であり、発酵原料を発酵槽に一部投入する際における発酵原料の流れを示す。
【
図7】
図1の発酵装置の系統図であり、破砕した発酵原料を全量、保管槽に搬入する際における発酵原料の流れを示す。
【
図8】
図1の発酵装置の系統図であり、発酵原料を発酵槽に追加投入する際における発酵原料の流れを示す。
【
図9】
図1の発酵装置の系統図であり、発酵槽の発酵原料を温調する際における発酵原料流れを示す。
【
図10】
図1の発酵装置の制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の発酵装置1は、生ごみや、し尿を発酵原料とし、これを破砕して発酵槽2に投入し、メタン発酵させてメタンガスを得るものである。
本実施形態の発酵装置1は、
図1の様に、発酵槽2と、発酵燃料供給部3に区分することができる、
発酵燃料供給部3は、破砕工程部10と、し尿貯留槽11と、保管槽12によって構成されている。
【0026】
以下、各部について説明する。
発酵槽2は、密閉タンクである。発酵槽2の内部には、攪拌装置17がある。
発酵槽2には、公知のそれと同様に、液面計、温度センサー、圧力センサー等(いずれも図示せず)が取り付けられている。
また発酵槽2には、多数の開口(図示せず)があり、これらは、発酵原料の投入口や、発酵原料を取り出す取り出し口として機能する。
【0027】
発酵槽2には、
図1、
図9の様に温調循環搬送路20が設けられている。
温調循環搬送路20は、発酵槽2に設けられた原料抜き出し孔21と、原料戻し孔22の間をつなぐ配管であり、中間部に循環ポンプ25と、熱交換器26の二次側が介在されている。
熱交換器26の一次側は、図示しない温水器に接続されている。
また温調循環搬送路20には、流路調整弁23が介在されている。流路調整弁23は、モータによって開度を調節することができるものであり、全閉にすることもできる。
【0028】
発酵槽2は、内部に生ごみやし尿が投入され、嫌気性菌の作用によってメタン発酵させ、メタンガスを発生させるものである(嫌気性消化法)。
また発酵の副産物として、消化液ができる。
【0029】
次に破砕工程部10について説明する。
破砕工程部10は、
図2の様に、二つの破砕装置によって構成された破砕部15を有している。
本実施形態では、破砕部15は、乾式破砕装置30と、湿式破砕装置31を有している。
乾式破砕装置30の形式や刃の構造等は、限定するものではないが、本実施形態では、2軸式の乾式破砕装置が採用されている。また、乾式破砕装置30は、粗破砕装置として機能する。
湿式破砕装置31についても、形式や刃の構造等を限定するものではないが、本実施形態では、チャンバー内に回転刃が設けられたものが採用されている。
湿式破砕装置31は、乾式破砕装置30の下流側に配置されている。
【0030】
本実施形態の破砕工程部10は、
図2の様に、乾式破砕装置30と湿式破砕装置31が上下に積み重ねられた位置関係にあって、両者が直接的に接続されている。
即ち乾式破砕装置30は、投入口と、排出口があるが、乾式破砕装置30の排出口が直接的に、湿式破砕装置31の投入口に接続されている。なお両者の間が管状の部材で繋がれていてもよい。
乾式破砕装置30と湿式破砕装置31の間は、水が漏れないように接続されている。
【0031】
本実施形態では、乾式破砕装置30と湿式破砕装置31の間に水位センサー33が設けられている。
水位センサー33の位置は、乾式破砕装置30の発酵原料が破断される粗破砕装置側破断部27と、湿式破砕装置31の発酵原料が破断される湿式側破断部28との間である。
発酵原料が破断される部位とは、例えば一軸破砕装置等であれば、刃とライナーとが接する部位であり、二軸破砕装置であれば、刃と刃が噛み合う部位である。
【0032】
破砕工程部10を構成する部材には、他に投入コンベヤ35と、排出コンベヤ36及び第1圧送ポンプ37がある。
投入コンベヤ35は、公知のバケットコンベヤやベルトコンベヤであり、トラック等によって持ち込まれた生ごみ等を、乾式破砕装置30の投入口に搬送するものである。
排出コンベヤ36は、例えばスクリューコンベヤであり、第1圧送ポンプ37にスラリー状の発酵原料を送り込むものである。
第1圧送ポンプ37は、ミキシングポンプである。
【0033】
次に、し尿貯留槽11について説明する。
し尿貯留槽11は、密閉可能なタンクであり、し尿投入口38と、し尿排出部72、73を有している。
【0034】
次に、保管槽12について説明する。
保管槽12は、導入槽40と、本貯留部41によって構成されている。導入槽40は、小型の槽である。
本貯留部41は、大型の槽である。導入槽40と本貯留部41は、いずれもプールの様な上部が開口した槽である。
導入槽40と本貯留部41の間には引上げコンベヤ42が設けられている。
また引上げコンベヤ42の最下流部には、スクリーン43が設けられている。
本貯留部41には、撹拌機45が設けられている。
【0035】
保管槽12には、付属部材として、生ごみ破砕装置47と、導入コンベヤ46が設置されている。導入コンベヤ46はスクリューコンベヤである。
【0036】
次に、各部材間の繋がりについて
図1を参照しつつ説明する。
なお各配管には、図示した配管部材の他、図示しないストレーナや、開閉弁、逆止弁等が設けられている。
最初に生ごみ(正確には、生ごみを粉砕して水と混合したスラリー)を搬送するラインについて説明する。
本実施形態の発酵装置1は、破砕工程部10と発酵槽2との間が、第1投入搬送路50によって接続されている。
具体的には、第1投入搬送路50は、破砕工程部10の第1圧送ポンプ37の吐出側と、発酵槽2の上部側を配管で繋ぐ管路である。
【0037】
第1投入搬送路50は、途中に分岐部76があり、分岐配管75が接続されている。当該分岐配管75は、保管槽12の上に開いている。
本実施経緯では、第1投入搬送路50の一部と、分岐配管75によって、
図1の様に、破砕工程部10と保管槽12を繋ぐ備蓄用搬送路78が構成されている。
備蓄用搬送路78の一部たる分岐配管75は、保管槽12の側面や底に接続されていてもよい。備蓄用搬送路78は、第1投入搬送路50から独立したものであってもよい。
【0038】
第1投入搬送路50の分岐部76の下流側(発酵槽2側)には、開閉弁51が設けられている。また分岐配管75にも、開閉弁53が設けられている。二つの開閉弁51、53は、搬送路切り替え手段57として機能する。
開閉弁51、53は、発酵原料の搬送先を切り替えたり、スラリーの分割割合を変えるものである。
【0039】
保管槽12と、発酵槽2との間は、第2投入搬送路55によって接続されている。第2投入搬送路55には、第2圧送ポンプ56が設けられている。
【0040】
次に、発酵槽2側から、破砕工程部10側に水分を含む発酵原料を戻す還流搬送路60について説明する。本実施形態の発酵装置1は、発酵槽2内の消化液を利用するものであり、発酵槽2から破砕工程部10に戻される「水分を含む発酵原料」には、未消化の発酵原料も多く含まれているが、説明を簡単にするため発酵槽2から破砕工程部10に戻される「水分を含む発酵原料」を「消化液」と称する。
【0041】
本実施形態の発酵装置1は、前記した様に温調循環搬送路20を有している。そして温調循環搬送路20の循環ポンプ25の下流側が分岐されて、破砕工程部10側に至る還流搬送路60となっている。本実施形態では、還流搬送路60は、温調循環搬送路20と一部が重複し、同一の循環ポンプ25で消化液が送られる。
本実施形態の発酵装置1は、管とポンプが共用されるので、部品点数が少ない。
還流搬送路60には、流路調整弁67が介在されている。流路調整弁67は、モータによって開度を調節することができるものであり、全閉にすることもできる。
【0042】
還流搬送路60の末端は、
図1、
図2の様に分岐管60c、60dに分岐されて、破砕部15と、第1圧送ポンプ37に接続されている。第1圧送ポンプ37に至る分岐管60dには開閉弁87が設けられている。
分岐管60cは、さらに、分岐路60a、60bに分岐されて、破砕部15の乾式破砕装置30と湿式破砕装置31に接続されている。乾式破砕装置30に至る分岐管60aには開閉弁86が設けられている。
破砕部15は、前記した様に、乾式破砕装置30と湿式破砕装置31が接続されたものであり、還流搬送路60の末端は、
図1、
図2の様に乾式破砕装置30と湿式破砕装置31の双方に接続(分岐路60a、60b)されている。
【0043】
開閉弁86を開いて、環流搬送路60により送られてきた消化液の一部を分岐路60aに分岐することで、消化液を乾式破砕装置30に投入し、乾式破砕装置30のホッパや刃に残った生ごみを流すことができる。
【0044】
次に、し尿貯留槽11に関連する配管について説明する。
本実施形態では、一方のし尿排出部72がし尿導入路62によって還流搬送路60の合流部71に繋がれている。
本実施形態では、し尿貯留槽11は、し尿導入路62と還流搬送路60によって、破砕工程部10と繋がっている。本実施形態体では、し尿導入路62と還流搬送路60によって、し尿供給搬送路68が構成されている。
し尿供給搬送路68は、還流搬送路60から独立した流路であってもよい。
し尿導入路62には、し尿圧送ポンプ63が設けられている。還流搬送路60との合流部71であって発酵槽2側の位置に開閉弁65が設けられている。また、し尿導入路62にも開閉弁66が設けられている。開閉弁65、66は、切り替え手段81として機能する。
また、し尿貯留槽11の他方のし尿排出部73には、連絡配管77が接続されており、当該連絡配管77は、保管槽12の導入槽40の上部に開いている。連絡配管77には、開閉弁83が設けられている。連絡配管77は、保管槽12の側面や底に接続されていてもよい。
【0045】
次に上水回路85について説明する。
本実施形態の発酵装置1では、保管槽の導入槽40と本貯留部41に上水を供給することができる。
また破砕部15にも上水を供給することができる。
【0046】
本実施形態の発酵装置1は、全体を制御する制御装置70を有している。
制御装置70は、
図10の様に、温調制御部と、戻し流量制御部を有している。
温度制御部は、発酵槽2内の温度を温度センサー(図示せず)で検知し、これを温水器(図示せず)と流路調整弁23にフィードバックして発酵槽2内の温度を制御する機能を果たすものである。
戻し流量制御部は、水位センサー33の信号に基づいて、発酵槽2から戻される消化液の量を制御するものである。
【0047】
次に、発酵装置1における、発酵原料等の流れを説明する。
本実施形態の発酵装置1は、生ごみと、家畜のし尿を発酵原料として、発酵槽2内でメタンガス発酵させて、メタンガスを得るものである。
原料となる生ごみは、市街地等で集められ、トラックA、Bで発酵装置1に搬送される。
家畜のし尿は、農家から提供され、バキュームカーCで運搬されて、し尿貯留槽11に集められる。人の糞尿を使用してもよい。
【0048】
生ごみは、通常、破砕工程部10側に集められ、投入コンベヤ35によって破砕部15に投入されて破砕される(破砕工程)。
このとき、循環ポンプ25が駆動されると共に、還流搬送路60の発酵槽2から破砕工程部10に至る間に設けられた開閉弁(65、67)がすべて開かれる。
その結果、
図5の太線で示されるように、発酵槽2内の消化液が、破砕工程部10側に供給される。
【0049】
破砕部15内では、発酵槽2から戻された消化液と、新たに投入された生ごみが、破砕されて混合される。
即ち、上部の乾式破砕装置30によって、新たに投入された生ごみが粗破砕され、発酵槽2から戻された消化液と共に下流側の湿式破砕装置31に送られる。
湿式破砕装置31のチャンバーは、消化液と生ごみで満たされ、生ごみは、液体の中で細かく破砕される。また、回転刃等によって攪拌された生ごみは、消化液と混ざってスラリー化する。
必要に応じて、破砕部15に上水が供給されるが、本実施形態の発酵装置1では、発酵槽2から消化液が破砕部15に戻されるので、仮に上水を供給する場合であっても、上水の量は少量で足る。
【0050】
また、し尿貯留槽11にし尿がある場合には、し尿も破砕工程部10に供給される。
即ち、本実施形態では、し尿貯留槽11は、し尿導入路62と還流搬送路60によって構成されるし尿供給搬送路68によって破砕工程部10に配管接続されている。
し尿を破砕工程部10に供給する場合には、し尿導入路62の開閉弁66を開いて、し尿導入路62から還流搬送路60に至る一連のし尿供給搬送路68を開く。そして、し尿圧送ポンプ63を駆動する。
その結果、し尿貯留槽11内のし尿が、
図5の太線の様に、発酵槽2から供給される消化液と共に、破砕工程部10に供給される。
し尿も、水分を多く含むので、湿式破砕装置31のチャンバーは、液体で満たされ、生ごみは、液体の中で細かく破砕される。
また、し尿内の固形分を破砕でき、スラリー化できる。
破砕部15で細かく破砕され、発酵槽2内から戻された消化液や、し尿と混合された生ごみは、
図5の矢印の様に、排出コンベヤ36によって第1圧送ポンプ37に送られ、第1圧送ポンプ37で加圧され、第1投入搬送路50を通って発酵槽2に投入される。また必要に応じて、第1圧送ポンプ37内においても、消化液が混入される。
【0051】
本実施形態では、破砕工程部10で破砕作業が行われている間、破砕部15に取り付けられた水位センサー33が、破砕部15内の水位を監視している。
仮に、破砕部15内の水位が、水位センサー33の位置を下回ると、還流搬送路60に設けられた流路調整弁67の開度を開き、破砕部15により多くの消化液を供給する。
逆に、破砕部15内の水位が、水位センサー33の位置を上回ると、還流搬送路60に設けられた流路調整弁67の開度を絞り、破砕部15に供給される消化液の量を減少させる。
これにより、湿式破砕装置31(湿式側破断部28)は、液体で満たされるが、乾式破砕装置30(粗破砕装置側破断部27)は、液体で満たされていないため、水に浮く生ごみが乾式破砕装置30内で浮き上がらず、当該生ごみを乾式破砕装置30で破砕してスラリー化することができる。
【0052】
以上は、通常の場合における、発酵材料の流れであるが、収集される生ごみの量には、ばらつきがある。
例えば、昼間は、生ごみを収集する作業員が就労しており、集められる生ごみの量が多い。
これに対して、夜間は、就労している作業員の数が少なく、集められる生ごみの量は少ない。
また、発酵槽2に投入すべき生ごみやし尿の量にもばらつきがある。
即ち、発酵槽2に要求される生ごみ等の需要と、生ごみ等の収集量たる供給は、ともにばらつきがある。
【0053】
本実施形態では、この需要と供給の関係を平準化するための方策として、破砕工程部10で破砕された発酵原料の全量を発酵槽2に搬入する全量投入と、破砕工程部10で破砕された発酵原料の一部を発酵槽2に搬入し残部を保管槽12に搬入する一部投入と、破砕工程部10で破砕された発酵原料の全量に加えて保管槽12内の発酵原料を同時に発酵槽2に搬入する追加投入を切り替えることができる。
また破砕工程部10で破砕された発酵原料の全量を保管槽12に搬入する全量保管を実施することもできる。
【0054】
望ましい使用方法として、破砕工程部10で破砕されている発酵原料の一定時間あたりの破砕量が、発酵槽2に対する一定時間あたりの発酵原料の予定投入量よりも多いか否かによって、発酵原料の行き先を決定する。
例えば、3時間や半日を一定時間とし、この間に破砕工程部10で破砕されている発酵原料の破砕量と、発酵槽2に投入すべき発酵原料の量を比較する。
破砕工程部10で破砕されている発酵原料の一定時間あたりの破砕量が、発酵槽2に対する一定時間あたりの発酵原料の予定投入量よりも多い場合に、破砕された発酵原料の一部を発酵槽2に搬入し残部を保管槽12に搬入する一部投入を実施する。
破砕工程部10で破砕されている発酵原料の一定時間あたりの破砕量が、発酵原料の予定投入量よりも少ない場合に、破砕された発酵原料の全量に加えて保管槽12内の発酵原料を同時に発酵槽2に搬入する追加投入を実施する。
発酵原料の行き先変更は、自動的に行われてもよいし、手動で行われてもよい。
【0055】
例えば、収集された生ごみの量が、発酵槽2に供給すべき生ごみの量よりも多い場合には、
図6の矢印の様に、破砕工程部10で破砕された生ごみの一部が、備蓄用搬送路78を経由して保管槽12に送られる(一部投入)。
即ち、分岐配管75に設けられた開閉弁53を開いて、破砕工程部10の第1圧送ポンプ37から分岐配管75に流れる一連の備蓄用搬送路78を開く。
その結果、
図6の矢印の様に、第1投入搬送路50を通過する生ごみの一部が、分岐配管75に入り、保管槽12に導入される。
【0056】
発酵槽2が満杯状態(未消化物が多いとき)であって、新たに生ごみ等を供給する必要が無い場合には、第1投入搬送路50の開閉弁51を閉じ、
図7の太線の様に、破砕工程部10で破砕された生ごみが備蓄用搬送路78を経由して全量、保管槽12に導入する(全量保管)。
【0057】
集められた生ごみの量がさらに多い場合には、トラックBを、保管槽12側に駐車し、保管槽12に入れる。
トラックBから排出された生ごみは、生ごみ破砕装置47によって細かく破砕される。この際、上水回路85から、生ごみ破砕装置47に上水が供給され、生ごみは、上水と混合されてスラリー状となる。そして、スラリー状の生ごみは、導入コンベヤ46によって、保管槽12の導入槽40に投入される。
そして、導入槽40内のスラリー状の生ごみは、引上げコンベヤ42で、スクリーン43に運ばれ、粗大な粗ごみがスクリーン43で取り除かれ、細かく区砕かれた生ごみだけが、保管槽12に貯留される。
【0058】
逆に、生ごみの在庫が少なくなった場合には、
図8の太線の様に、保管槽12に貯留されていた破砕後の生ごみや、し尿が、発酵槽2に供給される。
即ち、
図8の太線の様に、破砕工程部10で破砕された生ごみが、全量、発酵槽2に供給され、さらに加えて、保管槽12内の生ごみも、発酵槽2に供給される(追加投入)。
なお、生ごみの在庫が、全くなくなってしまった場合は、保管槽12に貯留されていた破砕後の生ごみや、し尿だけが、発酵槽2に供給される。
【0059】
発酵槽2内の発酵原料の温度は、温調循環搬送路20によって制御されてメタン発酵する(発酵工程)。即ち、
図9の太線の様に、発酵槽2内の発酵原料は、常時、温調循環搬送路20によって外部に取り出され、熱交換器26によって温調される。
熱交換器26の一時側の温水の温度と、流路調整弁23の開度は、発酵槽2に取り付けられた温度センサーの検知温度がフィードバックされ、発酵槽2内の温度が一定に制御される。
【0060】
以上説明した実施形態の発酵装置1は、発酵槽2に要求される生ごみ等の需要と、生ごみ等の収集量たる供給にばらつきがあることに鑑み、破砕した発酵原料を一時的に貯留する保管槽を設置した。この技術は、他の構成の発酵装置にも応用できるものである。
即ち、本実施形態の発酵装置1は、発酵原料を破砕する破砕工程部10と、発酵槽2を有し、前記破砕工程部10で破砕された発酵原料を前記発酵槽2に導入し、前記発酵槽2内で発酵原料を発酵させる発酵装置1において、発酵原料を一時的に保管する保管槽12を有し、前記破砕工程部10と前記発酵槽2を繋ぐ第1投入搬送路50と、前記破砕工程部10と前記保管槽12を繋ぐ備蓄用搬送路78と、前記保管槽12と前記発酵槽2を繋ぐ第2投入搬送路55を有することを特徴とする発酵装置である。
【0061】
本実施形態の望ましい使用方法は次の通りである。
即ち、昼間の様に、生ごみや、し尿の受け入れ量が多い場合には、破砕処理した発酵原料の一部を保管槽12に貯留する。
夜間、生ごみ等の受け入れ量が減少すると、保管槽12に貯留していた発酵原料を取り出して発酵槽2に投入する。
仮に、受け入れた発酵原料をすべて保管槽12に貯めてから発酵槽2に投入する構成を採用すると、夜間に必要な量を確保した状況で、余分に生ごみを受け入れる必要が生じる。そのため、保管槽12は、相当に大きなものとする必要がある。
これに対して、本実施形態の方策は、昼間に発酵原料を発酵槽2に投入するのに際し、必要量を上回った場合に、発酵原料を保管槽12側に回す。
本実施形態の構成によると、保管槽12の容積を過度に大きくする必要がない。
【符号の説明】
【0062】
1 発酵装置
2 発酵槽
10 破砕工程部
11 し尿貯留槽
12 保管槽
15 破砕部
20 温調循環搬送路
25 循環ポンプ
26 熱交換器
30 乾式破砕装置(粗破砕装置)
31 湿式破砕装置
33 水位センサー
50 第1投入搬送路
55 第2投入搬送路
57 搬送路切り替え手段
60 還流搬送路
68 し尿供給搬送路
78 備蓄用搬送路