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特開2024-59621がんの診断及び治療のための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059621
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】がんの診断及び治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20240423BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240423BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20240423BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20240423BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
G01N33/574 A ZNA
G01N33/48 M
G01N33/48 P
C12Q1/04
C07K16/30
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024009618
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2020564673の分割
【原出願日】2019-05-16
(31)【優先権主張番号】62/672,319
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518242019
【氏名又は名称】アーベル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ARBELE LIMITED
【住所又は居所原語表記】#522, Biotech Center 2, 11 Science Park West Ave., Shatin, N.T. Hong Kong (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ストーントン, ドナルド イー.
(72)【発明者】
【氏名】ルク, ジョン, ムーンチン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対象のCDH17陽性腫瘍細胞及びがんの診断方法の提供。
【解決手段】対象からサンプルを得る工程、サンプルを捕捉抗体と接触させ、捕捉サンプルを提供する工程、捕捉サンプルを検出抗体又は脂質ナノプローブ(LNP)と接触させ、検出サンプルを提供する工程、検出サンプル中の検出抗体又はLNPの量を決定する工程、及び検出抗体又はLNPの量に基づいて、対象が腫瘍を有する確率を決定する工程、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のCDH17陽性腫瘍の診断方法であって、
前記対象からのサンプルを捕捉抗体と接触させ、捕捉サンプルを提供する工程、ここで、前記捕捉抗体がエキソソーム、マイクロベシクル、又は可溶性CDH17フラグメントに対する結合親和性を有する、
前記捕捉サンプルを検出抗体又は脂質ナノプローブ(LNP)と接触させ、検出サンプルを提供する工程、
前記検出サンプル中の前記検出抗体又は脂質ナノプローブ(LNP)の量を決定する工程、及び
前記検出抗体又はLNPの量に基づいて、対象がCDH17陽性腫瘍を有する確率を決定する工程、
を含む、診断方法。
【請求項2】
対象のCDH17陽性腫瘍の診断方法であって、
前記対象からのサンプルを捕捉抗体と接触させて捕捉サンプルを提供する工程、ここで、前記捕捉抗体は、エキソソソーム、マイクロベシクル、又は可溶性CDH17フラグメントに対する結合親和性を有する、
前記捕捉サンプルの量を決定する工程、及び
前記捕捉サンプルの量に基づいて、対象がCDH17陽性腫瘍を有する確率を決定する工程、
を含む、方法。
【請求項3】
対象のCDH17陽性腫瘍の診断方法であって、
前記対象からのサンプルを蛍光DNA/RNA染色で標識し、標識サンプルを提供する工程、
標識サンプルを捕捉抗体と接触させ、捕捉サンプルを提供する工程、ここで、前記捕捉抗体は、エキソソーム、マイクロベシクル、又は可溶性CDH17フラグメントに対する結合親和性を有する、
前記捕捉サンプルの量を決定する工程、及び
前記捕捉サンプルの量に基づいて、対象がCDH17陽性腫瘍を有する確率を決定する工程、
を含む、方法。
【請求項4】
前記捕捉抗体が、CDH17に対する結合親和性を有するモノクローナル抗体を含む、請求項1~3の方法。
【請求項5】
前記捕捉抗体が、配列番号1~6と少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~3の方法。
【請求項6】
前記捕捉抗体が、CD9、CD63、CD81、CD45又はそれらの組み合わせに対する結合親和性を有するモノクローナル抗体を含む、請求項1の方法。
【請求項7】
前記検出抗体が、CDH17、TROP2、CD63、CD9、CD81、CD45、腫瘍マーカー、組織マーカー、又はそれらの組み合わせに対する結合親和性を有する抗体を含む、請求項1の方法。
【請求項8】
前記捕捉サンプルを接触させる工程が、捕捉サンプルを脂質ナノプローブ(LNP)と接触させる工程からなる、請求項1の方法。
【請求項9】
前記CDH17陽性腫瘍が消化器系のがんを含む、請求項1~3の方法。
【請求項10】
前記CDH17陽性腫瘍が結腸がんである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルが体液を含む、請求項1~3の方法。
【請求項12】
前記体液が、末梢血、血清、血漿、尿、骨髄、胸膜及び腹膜液、又は腸液を含む、請求項11の方法。
【請求項13】
前記体液のボリュームが10mL未満である、請求項12の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、35 U.S.C. 119(e)に基づき2018年5月16日に出願された米国仮出願第62/672,319号の出願日の利益を主張し、その開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
技術分野
本明細書の開示は、典型的には、がん診断の分野に関連し、より具体的には、CDH17-陽性がんを診断するための試薬及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消化器(GI)がんは、世界的に病的状態と死亡の主要な原因となっている。大腸がん(CRC)だけでも、全てのがん診断の約10%を占め、世界的ながんによる死亡原因の第2位である(Verdaguer 2017)。局所腫瘍の早期発見、理想的には1期であれば、ほとんどの腫瘍に対して根治的な手術が可能である(Siegel 2017)。CEA及びCA19-9などの従来の血液ベースの腫瘍マーカーアッセイは、GIがんの早期発見に必要な感度及び特異性を欠く(Lech 2016)。非侵襲的血液検査及び液体生検(循環腫瘍DNA又はctDNAを分析する)は最近進歩しているが、GIがん、特に初期段階のがんをより多くの割合で正確に検出し、病期を決定する必要性が依然として存在する。例えば、血漿蛋白質とctDNAマーカーのための非常に最近の血液検査であるCancerSEEKは、検出されるがんの割合が増加する(Cohen 2018)。しかし、I期のがんの約40%(食道では20%)しか検出されない。一般に、非常に感度の高い技術を使用しているにもかかわらず、これらの腫瘍は血漿中に十分な量のctDNAを放出していないようであるため、液体生検による早期がんの検出は依然として困難である(Bettegowda 2014、Cohen 2017)。生検又は大腸内視鏡検査などの他の承認された検査は侵襲的であり、生検のための組織は臨床治療の過程で常にアクセスできるとは限らない。従って、GIがんの早期発見を可能にする、より優れた、より感度の高い血液ベースのバイオマーカーアッセイの必要性は明白である。
【発明の概要】
【0003】
以下のサマリーは、例示的なものに過ぎず、いかなる意味でも限定することを意図していない。上述の例示的な態様、実施形態、及び特徴に加えて、さらなる態様、実施形態、及び特徴が、図面及び以下の詳細な説明を参照することによって明らかになるであろう。
【0004】
本明細書の開示は、対象の腫瘍の診断方法を提供する。一実施形態では、方法は、対象からサンプルを得る工程、サンプルを捕捉抗体と接触させ、捕捉サンプルを提供する工程、捕捉サンプルを検出抗体又は脂質ナノプローブ(LNP)と接触させ、検出サンプルを提供する工程、検出サンプル中の検出抗体又はLNPの量を決定する工程、及び検出抗体又はLNPの量に基づいて、対象が腫瘍を有する確率を決定する工程、を含む。捕捉抗体は、抗CDH17モノクローナル抗体を含んでもよい。抗CDH17モノクローナル抗体は、エキソソソーム、マイクロベシクル、又は可溶性CDH17フラグメントに対する高度に特異的な結合活性を有していてもよい。一実施形態では、捕捉抗体は、CD9、CD63、CD81、CD45、又はそれらの組み合わせに対する結合活性を有するモノクローナル抗体であってもよい。一実施形態では、検出抗体は、CDH17、TROP2、CD63、CD9、CD81、CD45、腫瘍マーカー、組織マーカー抗体、又はそれらの組み合わせに対する親和性を有する抗体を含んでもよい。
【0005】
一実施形態では、方法中の工程は、任意の順序であってもよい。一実施形態では、方法中の工程は順次であってもよい。一実施形態では、方法中の2つ以上の工程が同時に行われてもよい。一実施形態では、方法中の2つ以上の工程は、1つの反応容器内で行われてもよい。
【0006】
少なくとも1つの実施形態において、方法は、対象からサンプルを得る工程、サンプルを捕捉抗体と接触させ、捕捉サンプルを提供する工程、捕捉サンプルを検出抗体又は新規脂質ベースナノプローブ(LNP)と接触させ、検出サンプルを提供する工程、検出サンプル中の検出抗体又はLNPの量を決定する工程、及び検出抗体又はLNPの量に基づいて、対象が腫瘍を有する確率を決定する工程、を含んでもよい。
【0007】
少なくとも1つの実施形態では、方法は、対象からサンプルを得る工程、サンプルを捕捉抗体と接触させ、捕捉サンプルを提供する工程、捕捉サンプルの量を決定する工程、及び捕捉サンプルの量に基づいて、対象が腫瘍を有する確率を決定する工程、を含む。
【0008】
少なくとも1つの実施形態では、方法は、対象からサンプルを得る工程、サンプルを蛍光DNA/RNA染色で標識し、標識サンプルを提供する工程、標識サンプルを捕捉抗体と接触させ、捕捉サンプルを提供する工程、捕捉サンプルの量を決定する工程、及び捕捉サンプルの量に基づいて、対象が腫瘍を有する確率を決定する工程、を含む。
【0009】
少なくとも1つの実施形態において、捕捉抗体は、捕捉抗CDH17モノクローナル抗体を含んでもよい。少なくとも1つの実施形態において、捕捉抗体は、エキソソソーム、マイクロベシクル、又は可溶性CDH17フラグメントへの結合活性を有するモノクローナル抗体を含んでもよい。一実施形態では、捕捉抗体は、CDH17又はそのフラグメントに対する結合親和性を有していてもよい。
【0010】
少なくとも一つの実施形態では、捕捉抗体は、CD9、CD63、CD81、CD45、又はそれらの組み合わせに対する結合活性を有するモノクローナル抗体を含んでもよい。
【0011】
少なくとも一つの実施形態では、検出抗体は、CDH17、TROP2、CD63、CD9、CD81、CD45、腫瘍マーカー、組織マーカー、又はそれらの組み合わせに対する結合親和性を有する抗体を含んでもよい。
【0012】
少なくとも1つの実施形態では、検出する工程は、新規脂質ベースナノプローブ(LNP)を使用して実施される。
【0013】
少なくとも1つの実施形態では、腫瘍はCD17陽性腫瘍である。一実施形態では、腫瘍は、消化器系のがんを含む。少なくとも1つの実施形態では、腫瘍は結腸がんを含む。
【0014】
少なくとも1つの実施形態では、サンプルは体液を含む。一実施形態では、体液は血液を含む。
【0015】
本明細書の開示は、アッセイ開発のための方法をさらに提供する。一実施形態では、3つのプラットフォームが開発され、最も安定なアッセイの比較のために使用された。これは、近接ルミネセンス、ELISA、及びフローサイトフルオロメトリック分析を含む。CDH17捕捉及び検出抗体は、抗CDH17抗体の大規模パネルから、最高レベルの感度の1つ以上の最適化された組み合わせをスクリーニングするために使用される。任意の診断アッセイの感度をさらに高めるために、機能的に方向付けられた組換えCDH17捕捉抗体が生成された。一実施形態では、新規脂質ベースナノプローブ(LNP)の効率を試験し、CDH17 EVの捕捉及び検出のための上述のアッセイと比較した。一実施形態では、cCDH17、CDH17 EV、及び全血CDH17のレベルをそれぞれ検出及び定量するためのアッセイが開発された。
【0016】
一実施形態では、本願は、患者からの生物学的サンプルをスクリーニング及び診断するための方法を提供する。患者及び正常な血液サンプル(血漿/血清)の大規模パネルを、本明細書に記載された新規かつ最適化されたアッセイを用いて診断及び比較した。一実施形態では、胃腸炎、膵炎、及び炎症性腸疾患(IBD)を有する患者からの血液サンプルを検査して、血液中のCDH17が、GI組織が関与する非がんの炎症性疾患において増加するかどうかを決定した。一実施形態では、診断されるがんは、大腸がん(CRC)である。一実施形態では、臨床サンプルバリデーションのエンドポイントは、GI患者の血液中のsCDH17、CDH17 EV、又は総CDH17の統計学的に有意な増加を実証することであった。別の実施形態では、エンドポイントは、腫瘍病期の増加に伴うCDH17血中レベルの有意な増加、及び/又は治療後に伴う任意の減少の実証を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書の開示の前記及び他の特徴は、添付の図面と併せて以下の説明及び添付の特許請求の範囲から、より完全に明らかになるであろう。これらの図面は、本明細書の開示に従って配置されたいくつかの実施形態のみを描いており、従って、その範囲を限定するものとは考えられないことが理解される。本明細書の開示は、添付の図面を使用して、さらに具体的及び詳細に説明される。
図1図1は、CDH17陽性免疫組織化学染色(A)、及びCDH17特異的血漿マーカー単位(B)のカウントによる、I~IV期のCRC患者からのサンプル中のCDH17発現の特性評価を示している。
図2図2は、I~III期のCRC患者からの血清サンプル中のCDH17蛋白質濃度の測定を示す。
図3図3は、個々のCRC患者におけるCDH17陽性循環腫瘍細胞(CTC)のレベルが腫瘍の病期とともに増加し、CRC患者の血液検体からのサンプルスライドを用いて術後5日後に減少することを示す。
図4図4は、腫瘍細胞株培養培地から超遠心分離によって精製されたエキソソーム上のCDH17の発現を示す。
図5図5は、ELISAによるがん細胞培養培地(A)及びCRC血漿(B)中のCDH17の濃度を示す。
図6図6は、液体サンプル中のCDH17 EV(A、B、及びC)、捕捉CDH17 EVs(D、E、及びF)、及びCDH17 EVs上の他の蛋白質(G、H、及びI)を定量するための3つのアッセイプラットフォーム、蛍光ELISA、フローサイトフロリメトリー、及び近接ルミネセンスを示す。
図7図7は、異なるCDH17エクトドメインに特異的なCDH17モノクローナル抗体の例を示す。
図8図8は、フローサイトメトリー(上)及び/又はELISA(下)の捕捉CDH17を定量するためのアッセイの標準化及び感度を示す。標準曲線は、ビーズ上に捕捉されたか、又は1つ以上のCDH17モノクローナル抗体で被覆されたウェルのいずれかの形態の組換えCDH17を使用することによって確立され得る。検出剤は、別のCH17モノクローナル抗体などの検出抗体を含む。アッセイの感度は約400~500pg/mLである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明では、添付の図面を参照するが、これは本明細書の一部である。図面では、文脈がそうでないことを指示しない限り、類似の記号は、典型的には類似の構成要素を識別する。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載された例示的な実施形態は、限定的であることを意図するものではない。本明細書に示された主題の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、他の変更が行われてもよい。本明細書の開示の態様は、本明細書に典型的に記載され、図示されているように、本明細書に明示的に企図されている全ての異なる構成の多種多様な配置、置換、組み合わせ、分離、及び設計が可能であることが容易に理解され得る。
【0019】
本明細書の開示は、特に、典型的には、がん診断に関連する組成物及び方法である。
【0020】
CDH17は、正常なGI組織において制限された発現を有するがん遺伝子及び細胞接着膜蛋白質である(Liu 2009、Wang 2013)。CDH17は、大腸がん(>95%)、胃腺がん(90%)及び食道腺がん(82%)の患者において、高レベルで、かつ高い割合で発現している(Altree-Tacha 2017; Ordonez 2014; Matsusaka 2016; Panarelli 2012; Su 2008)。cDNAマイクロアレイによって測定されるCDH17発現のレベルは、前胃がん腸管メタプラシア(IM)及びスパスモリティックポリペプチド発現メタプラシア(SPEM)のような前がん組織において増加しているようである(Lee HJ et al 2010)。しかしながら、現在のところ、GI腫瘍の種類及び/又は病期との関連において、CDH17発現のレベルの定量化は行われていない。広範な研究の結果として、本明細書の開示は、とりわけ、驚くべき精度及び感度で腫瘍におけるCDH17発現を定量するための組成物、試薬及び方法を提供する。
【0021】
CDH17は、異なるタイプのGIがんにおいて高レベルで発現している。がんゲノムアトラス(TCGA)RNAシーケンシングデータ(RNA Seq V2)を用いて、異なるタイプの悪性腫瘍におけるCDH17発現のレベルを低レベルから高レベルまでランク付けできる。高レベルのCDH17発現は、限定されないが、大腸がん、胃がん、膵臓がん、食道がんを含むGIがんと関連する。さらに、CDH17発現のレベルは、乳頭状腎細胞がん(PRCC)及び胆管がんにおいて高レベルであることが見出されている。
【0022】
大半の消化管がんにおけるCDH17の発現は、免疫組織化学(IHC)によって決定できる。大腸がんの約100%、胃腺がんの90%、食道腺がんの82%がCDH17を発現している。CRCにおけるCDH17発現のレベルとがんのステージI~IVとの間の相関関係は、図1~3に示されている。
【0023】
本明細書の開示は、血中CDH17のための感度の高い特異的アッセイの開発に関する。一実施形態では、本明細書に開示のアッセイは、臨床サンプルのバリデーションに有用である。がん細胞培養培地及び患者血液サンプルの両方を、アッセイの開発、バリデーション、及び最適化のために使用した。sCDH17及びCDH17EVの両方が培養がん細胞培地から容易に検出された(図4~5)。しかしながら、がん細胞培養培地又は患者血液中のsCDH17及びEV膜上の潜在的なCDH17の切断形態は、異なる可能性があり、即ち、1つ以上のエピトープを含むが全てのエピトープを含まないCDH17である可能性がある。従って、患者サンプルからCDH17の全ての形態を捕捉できる抗体のアレイを特定することに重点が置かれている。
【0024】
sCDH17、CDH17EV、及び総CDH17のための最大の感度とダイナミックレンジを持つアッセイを開発するために、図6に示すように、3つのプラットフォーム、近接ベースケミルミネセンス、ELISA、及びフローサイトフルオロメトリーを比較した。近接ルミネセンスには、少ない工程数のためにアッセイ時間がより短いという利点がある。また、必要とする分析物量が非常に少ない非常に感度の高いアッセイを可能にできる(Yoshioka 2014)。アッセイにより、固定化CDH17抗体又はLNP(EVに特異的)を介してsCDH17及び/又はCDH17EVを捕捉した。捕獲CDH17は、機能的に方向付けられた非競合的CDH17抗体(図8)又はLNP(EVを特異的に検出する)を用いて測定した。EVの精製を伴うアッセイは、可変収量、処理時間、及びコストのために臨床現場では困難であるため、回避される(Contreras-Naranjo 2017)。最も安定なアッセイは、臨床サンプルのバリデーションに有用である。一実施形態では、本明細書で開発されたアッセイは、血漿/血清のボリューム当たりのCDH17を定量する。このアッセイは、初期のスクリーニングとして機能してもよい。さらに、アッセイは、関連する遺伝子変異のためのEV DNA又はRNAの分析、及び由来組織のためのCDH17 EV膜蛋白質の評価をさらに組み込んでもよい。
【0025】
分析バリデーションのための主要な工程は、以下を含む。
【0026】
(A)CDH17の効率的な捕捉及び検出のために使用するCDH17抗体を特定する。
【0027】
捕捉抗体
400以上のCDH17モノクローナル抗体を、がん細胞培養培地からsCDH17、CDH17 EV、及び総CDH17を捕捉する能力についてスクリーニングした。正常血液(血清/血漿)及び陽性患者血液をELISA形式でCDH17の濃度を測定するために使用した(図2)。さらに、CDH17EVを捕捉するために、ポリクローナル抗体及びLNPを使用してもよい。がん細胞株は、CDH17陽性CRC(SNU-C1)及びPDAC(AsCP1)株、並びにSW480及びJurkatのようなCDH17陰性細胞株を含む(図4及び5)。捕捉抗体又はLNPをマイクロタイタープレートウェルに固定化した(図6)。捕捉sCDH17を特異的に測定するために、300kDaのmwcoフィルターを用いた遠心ろ過を用いてEVsを除去できる(CDH17=120kDa)。捕捉CDH17EVを特異的に測定するために、洗浄及び濾過されたEVsを使用した。代替のアプローチとして、捕捉CDH17EVを、図6に示すように、LNPを用いて特異的に測定した。捕捉EVsは、CD63及びCD9のようなエキソソームマーカーに特異的な抗体、及び/又はCDH17に直接結合することが知られていない他のEV膜蛋白質(TROP-2のような)に特異的な抗体を使用することによって、又はSYTO-13のような細胞透過性DNA/RNA染色でEVをプレラベリングすることによって測定された。ARB101、ARB102、及び9C6(配列番号1~6)のような最も効率的な個々の捕捉抗体を同定した後、アッセイの感度を改善し、最適化できるように、より大きな捕捉効率との組み合わせを特定するために、捕捉抗体の組み合わせをテストした。患者の血液サンプル中のCDH17のユニークな形態は、免疫ブロット及び免疫組織化学分析(図3、下パネル)によって特徴付けられ得、一方で捕捉ペプチドは質量分析によって特性評価され得る。
【0028】
検出抗体
捕捉sCDH17及びCDH17EVの最も感度の高い検出のためにCDH17抗体をスクリーニングした。精製可溶性、組換えCDH17-Fc又はCDH17hisを標準として使用して、図8に示すように、様々な段階でのアッセイの感度を決定できる。アッセイの標的感度は約500pg/ml以下である。候補となる捕捉及び検出抗体は、図7に示すように、1つ以上のCDH17エクトドメインにマッピングされたエピトープを有するものの中にあった。これら及び追加のエピトープマッピングされた抗体は、sCDH17及び潜在的にCDH17EV上の開裂部位を見積もるために使用される。
【0029】
(B)サンプル処理;血清と血漿の比較
同じ患者(n>10)から採取した血清及び血漿サンプルのセットを、sCDH17及びCDH17EVについてアッセイし、サンプル収集の1つの方法でCDH17の収量/検出率を向上させることができるかどうかを決定した。
【0030】
(C)アッセイ効率を高めるための組換えCDH17捕捉抗体の生成
組換えCDH17を生成し、アッセイの効率を向上させるために捕捉抗体の特性評価を行った。捕捉効率と感度をさらに高めるために、選択された捕捉抗体を改変組換えプローブに変換し、基質上での抗体のより大きなフレキシビリティと機能的な方向付けを可能にした。一方、検出抗体は、ビオチン化及びHRP-ストレプトアビジンへの高親和性結合のための少なくとも1つのAviタグ、又はフルオロフォア-ストレプトアビジンコンジュゲートを組み込んでもよい。キーアッセイ抗体の親和性に応じて、親和性成熟を考慮してもよい。
【実施例0031】
実施例1. サンプルの調製及び特性評価方法
CDH17陽性CRC(SNUC1)及びPDAC(AsPC1)細胞株の培地から、エキソソームを標準的な差動超遠心法(Bow2012)により精製した。蛋白質検出のために、10ugの可溶性エキソソーム蛋白質をSDS-PAGEゲルにロードし、CDH17及びCD63抗体でブロッティングし、プローブ化した。エキソソームの特性評価のために、ポリスチレンビーズ(10ミクロン)をヒト化CDH17抗体(mh10C12)又はhIgGでコーティングし、無細胞腫瘍培養培地でインキュベートした。ビーズを洗浄し、マウスCDH17抗体(7C5)又はCD63抗体と抗mIgAlex647で染色した。エキソソームマーカーCD63に対する抗体は、マイクロベシクルのマーカーではないため、CDH17 EVの50%を検出し得る。腫瘍細胞株の無細胞培地のCDH17 ELISAsを実施するために、SNUC1培地を100kDaのmwcoフィルターに通し、CDH17のレベルを試験した。
【0032】
正常又はCRC血漿サンプル及び可溶性CDH17(1ug/ml)を、ヒト化CDH17抗体又はCD68抗体でコーティングしたビーズとともにインキュベートし、洗浄し、非競合マウスCDH17抗体で染色した。正常又はCRC血漿サンプルを、CDH17ポリクローナル又は3つのヒト化CDH17 mAbのプールでコーティングしたウェルでインキュベートし、次いでマウスCDH17 mAbでプローブ化した。いくつかのサンプルでは、CDH17はポリクローナル抗体によって容易に捕捉された。この知見は、CDH17抗体の性質が、患者のサンプル又はがん細胞培地中のCDH17をアッセイするためのあらゆる診断法の品質において重要な役割を果たしていることを示している。
【0033】
EVsの捕捉効率を高めるために、分析物に向かって一様且つ機能的に方向付けられた選択された組換えCDH17抗体を生成した。これは、C末端ペプチドタグ(AviTag; Avidity LLC)の部位特異的ビオチン化により達成され、ニュートラバジンコーティング基質へのC末端結合を可能にした。高親和性CDH17抗体は、迅速かつ高アビディティの結合を促進するために、フレキシブルリンカーを介して固定された。LNPは、EV膜に挿入するジアシル脂質(DSPE)、ポリエチレングリコール(PEG)スペーサー、及びビオチンタグを有する。LNPはビオチンを介して様々な基質に結合し、EVを捕捉又は検出できる(Wan 2017)。
【0034】
エキソソソームの測定は、フローサイトフロロメティック、ELISAアッセイ、及び近接バイオルミネセンスを用いて行い得る。
【0035】
実施例2. 循環腫瘍細胞及び細胞外ベシクルの特性評価方法
CDH17陽性サンプルを定量するために、病理組織学、免疫組織化学(IHC)、ELISA、免疫ブロッティング、免疫蛍光、フローサイトメトリー、及び近接バイオルミネセンスを含む多くの方法を採用した。全般に一致して、CDH17のレベルは容易に検出可能であるようであり、特に、CDH17陽性IHC数、血清レベル、又はCTC数のレベルは、腫瘍が各病期を経て進行するにつれて増加し、外科的治療後には減少した(図3)。がんの初期段階におけるCTCレベルは、腫瘍に由来する循環エキソソームと比較して非常に低くなり得る(Ferreira 2017)。従って、CDH17エキソソームはGI腫瘍細胞によって放出される可能性があり、それはその後、CTCよりも早く血中で検出可能となり、早期のGIがんを検出するためのより安定なアッセイを可能にし、それは任意のGI腫瘍の病期分類を支援するために使用できる。
【0036】
CDH17は、培養GI腫瘍細胞株から細胞外ベシクル膜蛋白質として放出されることが報告されている(Mathivanan S. 2010, Demory B 2013. Xu R 2015)。CDH17を保有する細胞外ベシクル(CDH17EV)は、エクソソーム(30~100nm)とマイクロベシクル(100~1000nm)の両方を含む。実際、CDH17EVは、図3~5に示すように、GIがん細胞の組織培養培地中で容易に検出された。抗CDH17抗体とELISAを用いて、分子量100kDa以下の可溶性の推定放出形態のCDH17(sCDH17)を同定した。インタクトなCDH17分子は、7つのターシャリーエクトドメイン(図7)を有し(図4)、120kDaである。腫瘍細胞培地中のこのsCDH17は、D6特異的抗体と結合しないため、ドメイン6(D6、図7)を欠くように見えた。また、100kDaを超えるCDH17もCDH17EVに分類さ得るGI腫瘍細胞用培地中に検出された。
【0037】
正常及びCRC患者からのいくつかの血漿サンプルを用いたアッセイ分析は、患者の血液がsCDH17及びCDH17EVの両方を含むことを示している(図2~3)。典型的には患者の血液にはほぼ1ug/mlのCDH17が含まれ得るが、正常な血液中のCDH17の量はバックグラウンドに近い。がん患者の血液中のCDH17EV又はsCDH17の特性評価は、培養がん細胞からの培地中でCDH17を効率的に捕捉するいくらかの抗体が、一部の患者の血液からCDH17を捕捉しない可能性があることを示している。従って、患者の血液中のCDH17の全ての形態を効率的に捕捉し得るCDH17抗体の同定は、患者サンプルをスクリーニングするための前提条件である。
【0038】
これまでにいくつかの研究で、腫瘍に関連したCDH17が有用で早期のバイオマーカーとして機能し得ることが示唆されているが、CDH17血液アッセイはまだ開発されておらず、又はバリデーションされていない(Lee 2010, Panarelli 2012)。これは、患者の血液中に含まれるCDH17の切断形態について、放出されたものとベシクルに関連したものの両方が特性評価されておらず、適切な捕捉及び検出プローブが利用可能となっていなかったためであろう。診断アッセイの開発のために、7つのCDH17エクトドメインすべてにマッピングされたエピトープを持つ400以上のCDH17抗体のパネルが生成されている(以下を参照)。
【0039】
健常者では、ベースラインの血中CDH17はサブ-ナノモルか無視できる程度である(図1~3)。E-カドへリンのような他の提案されたマーカーの正常な血中レベルは、高いことがあり得、患者の血中で2倍のみの増加を示し得る(Weib 2011)。CDH17アッセイは、捕捉EVを表現型化し、腫瘍の起源の決定を可能にするための組織特異的な抗体を使用することによって、さらに開発され得る(図3)。その結果は、捕捉されたCDH17EVにおける変異腫瘍遺伝子の分析を用いて治療を導くための予後アッセイとしてさらに開発されてもよい。例えば、CDH17エキソソーム又は総EV中のKRAS及びNRASコドン12及び13、BRAF p.V600、miRNA及び他の腫瘍ドライバー変異DNA/RNAを、予後又は予測評価のために分析してもよい(Sepulveda 2017, Ogata-Kawata 2014, Hao 2017)。血液ベースの細胞外ベシクル(EV)アッセイを開発する努力は、いくつかの異なるプラットフォームで腫瘍関連蛋白質、DNA及びRNAを検出する能力が実証されたことにより、最近増加している(Soung 2017)。最後に、CDH17血中濃度のアッセイは、CDH17を標的とするあらゆる臨床研究の薬力学的マーカーとしても機能する。
【0040】
現在のところ、血清又は細胞培養物中のCDH17のレベルを測定するための利用可能な血液ベースのアッセイはない。この障壁は、sCDH17、CDH17EV、及び総CDH17のレベルを優れた感度で定量するために不可欠であろう高親和性エピトープマッピングCDH17抗体の欠如に起因し得る。このような抗体に代わるものとして、新規脂質ナノプローブ(LNP)(Wan 2017、図7)は、CDH17EVの捕捉及び検出のためのインテグレート部分として考慮され得る。そのようなアッセイは、血清/血漿からの循環CDH17EVのより効率的なsCDH17結合及び高アビディティ捕獲を可能にする新規改変組換えCDH17抗体を含む(図2~3)。さらに、このアッセイは、CDH17EVの由来組織及び遺伝子変異を同定するためにさらに開発され、GIがん患者のための現在及び新興の標的治療法の選択に役立ち得る。
【0041】
実施例3. CDH17EVアッセイプラットフォーム
EV総集団に対する相対的なCDH17 EVを定量するために、図3に示すように、LNPによってEVを捕捉する。次に、CDH17のレベルを、特異的で高親和性のCDH17抗体及びその二次試薬、例えば、抗Igペルオキシダーゼ(ELISA)、抗Igフィコエリトリン(フローサイトフロリメトリー)、又はCDH17抗体コンジュゲートビーズ(近接ルミネセンス)を用いて定量する。捕捉CDH17EVを定量するために、EVを異なる非重複エピトープ(CDH17 mAb2)に結合するCDH17抗体に結合する(図3)。CDH17EVを定量するための2つの方法があり、それぞれが比較優位性を示した。第一の方法は、LNPプローブとストレプトアビジンペルオキシダーゼ(SA-HRP、ELISA)、ストレパビジンフィコエリチン(SA-PE、フローサイトフルオロメトリー)、ストレパビジンコンジュゲートビーズ(近接ルミネセンス)のような二次試薬を使用する。第二の方法は、CDH17 mAb2をそのファーストラインのAbとして使用し、記載の第二検出試薬を使用する。CDH17 EV上の他の蛋白質を定量するために、CDH17 EVをヒト化CDH17特異的抗体(huCDH17 mAB)で捕捉する。抗原に特異的なマウス抗体(例えば、TROP2)が結合できる。その結合を抗マウスIgHRP(ELISA)、又は抗マウスIgPE(フローサイトフルオロメトリー)を用いて検出する。近接ルミネセンスについては、CDH17をCDH17 mAb2カップリングビーズで捕捉し、第二の蛋白質をプロテイン-A/Gビーズ(近接ルミネセンス)で検出できる。
【0042】
実施例4. 臨床サンプルバリデーションのためのアッセイプラットフォーム及びプロトコルの選択
ELISAにおける最適な捕捉及び検出抗体の選択に続いて、近接ルミネセンス及びフローサイトメトリーのプラットフォームにおいて抗体及びLNPを使用した。3つのプラットフォームのそれぞれを、がん細胞培養培地、陽性血液サンプル、正常血液サンプル、及び組換え可溶性CDH17の比較に適用した。1つ又は2つのプラットフォームをその性能、即ち感度、安定性、再現性に応じて、臨床サンプルバリデーションアッセイのために選択した。非最適化アッセイの感度は400pg/mlに近かった。アッセイバリデーションの目標基準は、高感度(<20 pg/ml)、特異度(正常血清に比べて>50倍)、再現性、ダイナミックレンジ(4 logs超)、高スループット、及び実行時間の最小化(1~2時間)を含む。
【0043】
臨床サンプルバリデーションのプライマリエンドポイントは、GIがん患者の血液サンプル中のsCDH17、CDH17 EV、又は総CDH17のレベルの上昇を識別する統計的に有意な値、例えば、CDH17血中濃度の有意な上昇、腫瘍ステージの変化、治療後の有意な減少を有することである(図3)。sCDH17、CDH17 EV、及び総CDH17の基準を最適化する必要性が常にあることが予想される。これに関して、各血液サンプルに対して安定なアッセイ結果を保証するために、2つ以上のアッセイプラットフォームを採用してもよい。
【0044】
本明細書の開示は、様々な側面の例示として意図された本願に記載された特定の実施形態に限定されるものではない。当業者には明らかであろうように、その精神及び範囲から逸脱することなく、多くの改変及び変形がなされ得る。本明細書に列挙されたものに加えて、本明細書の開示の範囲内の機能的に等価な方法及び装置は、上述の説明から当業者には明らかであろう。そのような改変及び変形は、添付の特許請求の範囲内に該当することが意図されている。本明細書の開示は、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる同等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されることが意図されている。本明細書の開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物学的システムに限定されないことが理解されるであろう。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記述する目的のためのものであり、限定することを意図していないことが理解される。
【0045】
本明細書の開示は、特にその実施形態を参照して示され、説明されてきたが、当業者であれば、本明細書の開示の精神及び範囲から逸脱することなく、前述及び他の形態及び詳細の変更が、本明細書の開示においてなされ得ることを理解し得る。
【表1】
図1. CDH17陽性免疫組織化学染色(A)及びCDH17特異的血漿マーカー単位(B)のカウントによる、CRC患者サンプル中のCDH17発現の特性評価。腫瘍病期は、腫瘍病期分類、TNM(腫瘍-結節-転移)によって定義した。
図2. 正常及びCRCサンプルから捕捉したCDH17の血清濃度(A)とCRCサンプルの臨床病期との相関(B)。正常又はCRC血漿サンプルを、2つのヒト化CDH17 mAb(各抗体12.5 ng/ml)でコーティングしたウェルでインキュベートした後、2つのマウスCDH17 mAb(各抗体5 ng/ml)でプローブ化した。A) CRCサンプルから捕捉されたsCDH17の量は、正常サンプルからのものよりも有意に多かった(P=0.031)。B) パネルAのCRC患者をTNM病期に応じてさらに層別化した。健常者と比較して、II期(P=0.029)及びIII期(P=0.003)のCRC患者では、sCDH17の有意な上昇が認められた。
図3. CDH17陽性循環腫瘍細胞(CTC)の数は、腫瘍ステージとともに増加し(A)、比較のための同じ患者では術後5日で減少する(B)。大腸がん(CRC)患者の血液サンプル中のCDH17陽性循環腫瘍細胞(CTC)は、特異的抗体染色及び蛍光顕微鏡により、CDH17及びβ-カテニン陽性及びCD45陰性として同定された。顕微鏡写真(C~E)は、CRC患者の血液サンプルからの同じサンプルスライドの免疫蛍光及び免疫組織化学的染色を示す。抗CD45抗体は白血球(WBC)膜を黄色で染色し、青と赤の矢印はそれぞれWBC及びCTCを陽性及び陰性の細胞として示している(C)。抗Lic5抗体はCDH17陽性シグナルを緑色で染色し、WBC及びCTCはそれぞれCDH17陰性と陽性を示す(D)。抗β-カテニン抗体は、CTCシグナルのCRCオリジンを染色し、WBCは核赤カウンター染色であり、CTCは茶黒核β-カテニン染色である(E)。
図4. GIがん細胞株のエキソソーム上でのCDH17の発現。A. CDH17陰性SW480(大腸腺がん)。B. CDH17陽性OCUM-1(胃腺がん)。C. SNU-C1(大腸がん)。D. AsPC1(膵臓がん)。E. CDH17特異的抗体を用いた可溶化エキソソームからの10ugの総蛋白質のイムノブロット。
図5. ELISAによるがん細胞培養培地(A)及びCRC血漿(B)中のCDH17の検出。SNU-C1(CRC)及びAsPC1(膵臓がん)はCDH17陽性がん細胞であり、JurkatはCDH17陰性がん細胞である。CDH17の血清濃度は、ELISAベースのアッセイにおけるCDH17his標準曲線を用いて定量できる。
図6. 3つのアッセイプラットフォーム、蛍光ELISA、フローサイトフルオロメトリー、及び近接ルミネセンスは、液体サンプル(A、B、及びC)、捕捉CDH17 EV(D、E、及びF)、及びCDH17 EV上の他の蛋白質(G、H、及びI)におけるCDH17 EVの定量を可能にする。
図7. 異なるCDH17エクトドメインに特異的なCDH17抗体。CDH17抗体エピトープは、D1、D1-2、D3-4、D6及びD5-7を含む異なるターシャリーエクトドメインからなる組換えトランケートに結合することによってマッピングされた。少なくとも3つのエピトープ特異的mAbを捕捉及び検出剤として使用した。ARB101(Lic3~D1)、ARB102(10C12~D1-2)、及び9C6(D6)。300を超えるmAbのパネルから、これら及び他のCDH17 mAbをマッピングするために、追加のドメイントランケートが生成されている。
図8. 捕捉CDH17を定量するためのアッセイの標準化及び感度。標準曲線は、1つ以上のCDH17モノクローナル抗体でコーティングされたビーズ上のキャプチャー又はウェルのいずれかの形で、C末端Hisタグを有するエクトドメイン全体を含むCDH17の分泌形態である組換えCDH17hisを使用することによって確立され得る。検出剤は、別のCH17モノクローナル抗体などの検出抗体を含む。アッセイの感度は約500pg/mlである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2024059621000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象CDH17陽性腫瘍に罹患している可能性を評価する方法であって、
前記対象からのサンプルを捕捉抗体と接触させ、捕捉サンプルを提供する工程、ここで、前記捕捉抗体がエキソソーム、マイクロベシクル、又は可溶性CDH17フラグメントに対する結合親和性を有する、
前記捕捉サンプルを検出抗体又は脂質ナノプローブ(LNP)と接触させ、検出サンプルを提供する工程、
前記検出サンプル中の前記検出抗体又は脂質ナノプローブ(LNP)の量を決定する工程、及び
前記検出抗体又はLNPの量に基づいて、対象がCDH17陽性腫瘍を有する確率を決定する工程、
を含み、
前記捕捉抗体は、
配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する可変重鎖及び配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖、
配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する可変重鎖及び配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖、又は
配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する可変重鎖及び配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖、
を含む方法
【外国語明細書】