(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059623
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】液状化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20240423BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240423BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240423BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240423BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/73
A61K8/81
A61Q19/00
A61Q1/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024010308
(22)【出願日】2024-01-26
(62)【分割の表示】P 2021535087の分割
【原出願日】2018-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】菊池 真弘
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】迫田 剛嘉
(57)【要約】 (修正有)
【課題】経時的な濁りの発生が抑制され、化粧料本来の効果が長期間に亘って維持される液状化粧料(カプセル含有液状化粧料)を提供する。
【解決手段】水相中に少なくともカプセルを含有する液状化粧料であって、カプセルは、油性成分を封入した寒天外殻のカプセルであり、前記水相は、(メタ)アクリルポリマー、多糖類及びこれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの増粘剤と、HLB値が13以下の両親媒性物質と、を含む、液状化粧料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相中にカプセルを含有する液状化粧料であって、
前記カプセルは、油性成分を封入した寒天外殻のカプセルであり、
前記水相は、(メタ)アクリルポリマー、多糖類及びこれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの増粘剤と、HLB値が13以下の両親媒性物質と、を含む、液状化粧料。
【請求項2】
前記油性成分は、(1)炭化水素油、脂肪油、ワックス、水素添加油、エステル油、脂肪酸、シリコーン油、フッ素系油、及びこれらの混合物から特に選択される油、(2)着色剤、活性成分及びこれらの混合物から特に選択される油溶性又は油分散性成分、又は(3)これらの組み合わせである、請求項1に記載の液状化粧料。
【請求項3】
前記(メタ)アクリルポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸・アルキル(メタ)アクリレート共重合体又はその塩、(メタ)アクリル酸・アルキル(メタ)アクリレート共重合体の誘導体又はその塩、及びそれらの架橋形態、並びにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の液状化粧料。
【請求項4】
前記多糖類は、キサンタンゴム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム又はアセチル化ヒアルロン酸、及びこれらの有機誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の液状化粧料。
【請求項5】
HLB値が13以下の前記両親媒性物質は、POE水添ヒマシ油50(PEG-50水添ヒマシ油)及びPOE水添ヒマシ油40(PEG-40水添ヒマシ油)等のPOE水添ヒマシ油、POEヒマシ油50(PEG-50ヒマシ油)等のPOEヒマシ油、及びPOE(20)ソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)及びPOE(6)ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート81)並びにこれらの混合物からなる群より選択され、好ましくはPOE水添ヒマシ油40である、請求項1に記載の液状化粧料。
【請求項6】
前記水相は香料を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の液状化粧料。
【請求項7】
前記水相は、グリコール、グリセロール、糖アルコール、及びこれらの混合物、好ましくはグリコール、グリセロール、及びこれらの混合物からなる群から特に選択される低分子ポリオールを含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の液状化粧料。
【請求項8】
前記水相は、アリールオキシアルカノール、特に、フェノキシエタノールを含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の液状化粧料。
【請求項9】
前記カプセルは、前記水相中に分散して存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の液状化粧料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の液状化粧料を、ケラチン物質、特に皮膚に塗布することを含む、ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための、特に保湿、ナリシング及びエモリエント効果を提供するための化粧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌を保湿し、肌荒れ等のトラブルを改善するために、化粧水、乳液、美容液等の化粧料が用いられている。近年では、ゲル状の粒子又は美容成分等を包含するカプセルを化粧料中に分散させた化粧料が開発されている。特開2000-302662号公報には、寒天とアルギン酸の多価金属塩により形成されるカプセルに化粧料成分を内包又は含浸させ、当該カプセルを水溶性ゲル中に分散して成る、カプセル含有ゲル状化粧料が開示されている。
【0003】
[発明が解決しようとする課題]
しかし、液相にカプセルを分散させた化粧料を調製した場合、経時的に濁りが生じてしまうことが多く、外観上問題になるのみならず、化粧料としての均一性も劣るため、肌等に適用した場合、保湿やエモリエント(emollient)効果等の本来の目的を発揮しづらくなる。
【0004】
本出願人は、カプセルが液状の水相に添加されると、カプセルが、衝撃や経時変化の影響によって損傷を受ける傾向があることを見出した。その結果、損傷したカプセルの外殻およびカプセルから漏出した内容物は、水中で濁りを生じる傾向がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、水相にカプセルを含有する液状化粧料であって、経時的な濁りの発生が抑制され、化粧料本来の効果が長期間に亘って維持される液状化粧料(カプセル含有液状化粧料)を提供することにある。
【0006】
[発明の概要]
本発明は、水相中に少なくともカプセルを含有する液状化粧料であって、このカプセルは、油性成分を封入した寒天外殻のカプセルであり、水相は、(メタ)アクリルポリマー及び多糖類からなる群より選ばれる少なくとも1種と、HLB値が13以下の両親媒性物質と、を含む、液状化粧料を提供する。
【0007】
本出願人は、本発明によるこのような液状化粧料が、長期間にわたってその本来の化粧効果を維持しながら、経時的により少ない濁りを示すことを見出した。
【0008】
本発明の液状化粧料によれば、カプセルとして寒天外殻のものを用いたこと、また、水相に(メタ)アクリルポリマー及び多糖類からなる群より選ばれる少なくとも1つの増粘剤と、HLB値が13以下の両親媒性物質と、を含有させたことにより、カプセル同士の衝突による損傷や、カプセルの内容物の漏出が抑制され、水相の濁りが抑制される。また、本発明の液状化粧料はこのように経時的な安定性が高いため、化粧料本来の効果が長期間に亘って維持される。
【0009】
また、上記の液状化粧料は、カプセルの外殻に寒天を含むが、寒天自身に水分保持力があることにより、肌への保湿効果が高くなり、保湿効果が持続しやすい。また、カプセルに油性成分が封入されているため、肌に対して保湿効果、ナリシング効果、エモリエント効果等を与えることができる。
【0010】
さらに、上記の両親媒性物質は、それ自身が肌への保湿効果を有する。そのため、上記の液状化粧料によれば、肌への保湿効果を更に高めることができる。
【0011】
水相は香料を含有していてもよい。液状化粧料において水相中に香料を含有させるためには、香料を可溶化させるための可溶化剤が必要となる場合がある。可溶化剤はカプセルの損傷を促進するため、カプセルを含有する液状化粧料においては、水相中に可溶化剤を添加し、更に香料を添加することは困難であった。一方、本発明の液状化粧料においては、特定の両親媒性物質がカプセルの損傷防止と香料の可溶化を共に可能にする。そのため、香料を水相中に添加しても、カプセルの損傷を抑制することができる。さらに、香料を水相中に添加することにより、少量の添加によって香り立ちに優れた化粧料を得ることができる。
【0012】
水相は、低分子ポリオールを含有してもよい。水相は、アリールオキシアルカノールを含有してもよい。
【0013】
カプセルは水相中に分散して存在していてもよい。このような液状化粧料においては、カプセルと水相がバランスよく含まれた状態で液状化粧料を使用することができ、化粧料の機能が容易且つ確実に発揮される。また、液状化粧料として優れた美観も発揮される。
【0014】
本発明はまた、ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための、特に保湿、ナリシング(nourishing)及びエモリエント効果を提供するための化粧方法であって、ケラチン物質上への、特に皮膚上への、本発明で定義される液状化粧料の適用を含む方法に関する。「ケラチン物質」とは、皮膚及び/又は唇、好ましくは皮膚を意味する。
【0015】
[発明の詳細な説明]
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書中、「POE」との略称はポリオキシエチレンを意味する。また「PEG」との略称はポリエチレングリコールを意味する。
【0017】
実施形態に係る液状化粧料(カプセル含有液状化粧料)は、水相中に、少なくとも、油性成分を封入した寒天外殻のカプセルを含有する。
【0018】
油性成分を封入した寒天外殻のカプセル
ここで、カプセルは、寒天外殻と内容物から構成され、外殻中に内容物が封入された粒子状物をいう。カプセルの形状は球状、紡錘形状等であってよい。
【0019】
寒天外殻は寒天を含有する外殻を意味し、寒天のみからなっていても、寒天以外の成分を含有していてもよい。寒天以外の成分としては、アルギン酸塩、カラギーナン等が挙げられ、アルギン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、リチウム塩などの無機塩が例示できる。寒天は水分を保持しやすいため、カプセルの外殻に寒天が含まれることにより、液状化粧料の肌に対する保湿効果を高めることができるとともに、保湿効果の持続時間も高めることができる。なお、外殻の耐久性を高めるためには、外殻は寒天のみからなることが好ましい。
【0020】
カプセルの内容物である油性成分は、(1)油分、(2)油溶性又は油分散性成分、又は(3)これらを組み合わせた成分、を含有する。油性成分は、(1)~(3)を含む限りにおいて、発明の効果を損なわない程度の量、他の成分を含有していてもよい。
【0021】
油分としては、炭化水素油、油脂、ロウ、硬化油、エステル油、脂肪酸、シリコーン油、フッ素系油、及びこれらの混合物等が挙げられる。カプセルに油分が封入されることにより、液状化粧料は、肌に対して高いナリシング効果を与えることができる。
【0022】
炭化水素油としては、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、ドデカン、イソドデカン、テトラデカン、イソテトラデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、植物性スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0023】
油脂としては、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、カメリア油、ローズピップ油、アボカド油等が挙げられる。
【0024】
ロウとしては、ミツロウ、ラノリン、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0025】
エステル油としては、ホホバ油、セチルイソオクタネート、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0026】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0027】
シリコーン油としては、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)、ポリメチルフェニルシロキサン(ジフェニルジメチコン)、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0028】
フッ素系油としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
油溶性又は油分散性成分としては、例えば、色素、有効成分、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0030】
油分の含有量は、油性成分(カプセルの内容物)全量を基準として、0~100質量%とできるが、好ましくは50~100質量%である。なお、油分の含有量が0質量%の場合は、油溶性又は油分散性成分を含むことになる。
【0031】
油性成分中に含有し得る色素としては、油溶性色素、油分散性色素、及びこれらの混合物が含まれる。油溶性色素は、油のみに溶解するものであっても、油及びアルコールに溶解するものであってもよい。油のみに溶解する色素としては、例えばマリーゴールド色素が挙げられる。油及びアルコールに溶解する色素としては、例えば青色403号(スダンブルーB)が挙げられる。油分散性色素は、油分に分散可能な色素であればよく、水溶性色素として分類されるものであってもよい。油分散性色素としては、例えば赤色104号-(1)、黄色4号、青色1号、紫色201号が挙げられる。
【0032】
色素の含有量は、油性成分(カプセルの内容物)全量を基準として、0~20質量%とすることができる。
【0033】
油性成分中に含有し得る有効成分としては、例えば、肌に対して肌荒れ抑制効果、しわ抑制効果といった美容効果をもたらす成分がある。このような有効成分としては、例えば、レチノール、パルミチン酸レチノール又は酢酸レチノール等のビタミンA、エルゴカルシフェロール又はコレカルシフェロール等のビタミンD、トコフェロール、トコトリエノール、及びこれらの混合物等のビタミンEといった脂溶性ビタミンが挙げられる。有効成分は、アスタキサンチン、リコピン、フコキサンチン、及びこれらの混合物等のカロチノイド等のように、色素としての機能を兼ね備えていてもよい。
【0034】
有効成分の含有量は、油性成分(カプセルの内容物)全量を基準として0~100質量%とできるが、好ましくは0~50質量%である。
【0035】
カプセルの平均粒径は、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.3mm以上であり、更に好ましくは0.5mm以上であり、また、好ましくは8mm以下であり、より好ましくは6mm以下であり、更に好ましくは4mm以下である。換言すれば、カプセルは、0.1~8mm、特に0.3~6mm、より好ましくは0.5~4mmの平均粒径を有することができる。これにより、油性成分を十分に封入することができる膜厚を確保できるとともに、外観にも優れたカプセルとすることができる。カプセルの平均粒径は、例えば、液状化粧料の最低10個の粒子を含む領域を撮影し、その画像から数平均で求めることができる。
【0036】
カプセルの外殻の厚さは、カプセルの平均粒径の2~90%の厚さであることが好ましく、この割合は5~80%であることがより好ましい。外殻の厚さをこのような割合にすることで内容物である油性成分の漏出が効果的に防止でき、また衝突による破損も低減される。
【0037】
カプセルの含有量は、液状化粧料の保湿効果を更に高めるために、液状化粧料全量(重量)を基準として、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。カプセルの含有量は、カプセルの寒天外殻の崩壊をより効果的に抑制できるとともに、外観にも優れた液状化粧料を得るために、液状化粧料全量を基準として、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。カプセルの含有量は、液状化粧料全量(重量)を基準として、5~65質量%、5~60質量%、5~55質量%、10~65質量%、10~60質量%、10~55質量%、15~65質量%、15~60質量%、又は15~55質量%であってもよい。
【0038】
増粘剤(レオロジー調整剤)
水相は、水と、(メタ)アクリルポリマー及び多糖類からなる群より選ばれる少なくとも1つの増粘剤(レオロジー調整剤)と、HLB値が13以下の両親媒性物質と、を含む。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味し、他の類似の骨格においても同様である。
【0039】
水は、蒸留水、精製水、温泉水、深層水の他、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水等の植物由来の水蒸気蒸留水を用いることができる。水の含有量は、液状化粧料全量(重量)を基準として、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下であってよい。水の含有量は、液状化粧料全量(重量)を基準として、10~80質量%、10~75質量%、10~70質量%、15~80質量%、15~75質量%、15~70質量%、20~80質量%、20~75質量%、好ましくは20~70質量%であってもよい。
【0040】
(メタ)アクリルポリマー
(メタ)アクリルポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体又はその塩、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体の誘導体又はその塩、及びその混合物であってよい。また、共重合体は架橋型、及びその混合物のものも含まれる。
【0041】
アクリル酸アルキル共重合体としては、アキュリン33等(ローム・アンド・ハース社);アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(架橋型を含む)としては、ペムレンTR-1、ペムレンTR-2、カーボポールETD2020、カーボポール1382、カーボポール1342、ウルトレッツ20ポリマー、ウルトレッツ21ポリマー(Lubrizol Advanced Materials社);アクペックHV-501ER、アクペックSERW-300C、アクペックSER W-150C(住友精化(株));(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体の誘導体又はその塩としては、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体にポリオキシエチレンアルキルエーテルがエステル結合した、アクリル酸・メタクリル酸・アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・メタクリル酸のポリオキシエチレンアルキルエーテルエステル共重合体(例えばアクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル共重合体(アキュリン22(ローム・アンド・ハース社))等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリルポリマーとしては、アクリレーツ/C10-30アルキルアクリレート又はアクリレーツ/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマーが好ましい。すなわち、(a)アルキル基の炭素数が10~30の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸とをモノマー単位として含む共重合体、(b)アルキル基の炭素数が10~30の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、ペンタエリスリトールアリルエーテルとをモノマー単位として含む架橋型共重合体、(c)アルキル基の炭素数が10~30の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、スクロースアリルエーテルと、をモノマー単位として含む架橋型共重合体、及び(d)アルキル基の炭素数が10~30の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、ペンタエリスリトールアリルエーテルと、スクロースアリルエーテルとをモノマー単位として含む架橋型共重合体、からなる群より選ばれる少なくとも1つの共重合体が好ましい。上述した、ペムレンTR-1、ペムレンTR-2、カーボポールETD2020、カーボポール1342、カーボポール1382、ウルトレッツ20ポリマー、ウルトレッツ21ポリマー、アクペックSERW-300C、アクペックSER W-150Cは、このような共重合体に相当する。
【0043】
(メタ)アクリルポリマーの含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.08質量%以上であり、また、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。(メタ)アクリルポリマーの含有量は、液状化粧料全量を基準として、0.01~0.8質量%、0.01~0.5質量%、0.01~0.3質量%、0.05~0.8質量%、0.05~0.5質量%、0.05~0.3質量%、0.08~0.8質量%、0.08~0.5質量%、好ましくは0.08~0.3質量%であってもよい。これにより、水相の粘度を高めることができ、カプセル同士の衝突を更に抑制することができる。また、カプセルの外殻の損傷を抑制し、経時的な濁りの発生を更に抑制することができる。
【0044】
多糖類
多糖類は、例えば、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸及びこれらの混合物からなる群より選ばれてもよく、また、生物由来ポリサッカライドであってもよい。生物由来ポリサッカライドとしては、アルカリゲネス産生多糖体(例えば、商品名アルカシーラン(伯東株式会社))グルクロン酸、マンノース及びキシロースを構成単糖とし、シロキクラゲから抽出されるシロキクラゲ多糖体(例えば、商品名Tremoist TP(日本精化株式会社製))等が挙げられる。
【0045】
多糖類の含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.08質量%以上であり、また、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。多糖類の含有量は、液状化粧料全量を基準として、0.01~0.8質量%、0.01~0.5質量%、0.01~0.3質量%、0.05~0.8質量%、0.05~0.5質量%、0.05~0.3質量%、0.08~0.8質量%、0.08~0.5質量%、好ましくは0.08~0.3質量%であってもよい。これにより、カプセルの寒天外殻の損傷又はカプセル中の油性成分の漏出を更に抑制しやすくすることができる。
【0046】
両親媒性物質は、親水性の骨格と疎水性(親油性)の骨格を有する化合物であり、親水性の骨格としてはポリオキシエチレン骨格が、疎水性の骨格としては炭化水素骨格(長鎖アルキル基等)が例示できる。両親媒性物質はノニオン性のものが好ましく、このような両親媒性物質としては、飽和及び/又は不飽和脂肪酸グリセリドにエチレンオキサイドを付加重合させた化合物が挙げられる。ここで、飽和及び/又は不飽和脂肪酸グリセリドは2種以上からなっていてもよく、飽和及び/又は不飽和脂肪酸グリセリドは、部分又は完全水添物であってもよい。付加重合により形成される、エチレンオキサイド由来のオキシエチレン骨格の繰返し数は、4~80とすることができ、より好ましい繰返し数として10~80、20~80、30~70、好ましくは40~60が挙げられる。両親媒性物質は、香料等の成分を水相に溶解させるための可溶化剤としての役割も有する。
【0047】
HLB値が13以下の両親媒性物質
本実施形態に係る液状化粧料は、HLB値が13以下の両親媒性物質を含む。HLB(Hydrophile-Lipophile Balance:親水親油バランス)値は、有機概念図法(例えば、甲田善生 著、「有機概念図-基礎と応用-」11頁~17頁、三共出版 1984年発行)で得られる無機性値/有機性値(Inorganic-OrganicBalance(IOB)値)より算出されるものであり、以下の式で表される。
HLB値=IOB値×10
なお、両親媒性物質が2種類以上の混合物である場合、HLB値は各成分のHLB値の加重平均として定義される。
【0048】
両親媒性物質のHLB値は、13以下である。HLB値が13以下であると、カプセルの損傷防止と香料の可溶化を共に可能にすることができる。また、HLB値が13以下であると、液状化粧料が高温(例えば50℃)下に置かれた際には、両親媒性物質が水相に含まれる水又は後述する低分子ポリオール等の成分と共にカプセル内に混入することによる、カプセルに含まれる油性成分の濁りが生ずることを抑制することもできる。
【0049】
両親媒性物質のHLB値は、上述の観点から13以下であり、好ましくは12.7以下、より好ましくは12.5以下、更に好ましくは12以下であり、7以上、8以上、9以上、又は10以上であってよい。両親媒性物質のHLB値は、7~13、7~12.7、7~12.5、7~12、8~13、8~12.7、8~12.5、8~12、9~13、9~12.7、9~12.5、9~12、10~13、10~12.7、10~12.5、好ましくは10~12であってもよい。
【0050】
HLB値が13以下の両親媒性物質としては、POE硬化ヒマシ油50(PEG-50水添ヒマシ油)POE硬化ヒマシ油40(PEG-40水添ヒマシ油)等のPOE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油50(PEG-50ヒマシ油)等のPOEヒマシ油、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(6)ソルビタン(ポリソルベート81)、などが挙げられる。両親媒性物質は、好ましくは、POE硬化ヒマシ油40である。
【0051】
両親媒性物質の含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。これにより、カプセルの外殻の損傷を抑制し、経時的な濁りの発生を更に抑制することができる。また、肌への保湿効果を高めることもできる。両親媒性物質の含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。すなわち、両親媒性物質の含有量は、液状化粧料の全質量に対して、0.05~20質量%、0.1~10質量%、より好ましくは0.3~5質量%であり得る。
【0052】
香料
水相は、香料を更に含有してもよい。香料は、化粧料に一般的に用いられるものを用いることができ、花、果実、ハーブ等の植物性原料に由来する天然香料、シベット、ビーバー等の動物性原料に由来する天然香料、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコール及び炭化水素型の合成香料、及びこれらの組む合わせ等を用いることができる。香料は、これらの香料のうち複数を組み合わせた調合香料であってもよい。
【0053】
香料の含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。これにより、少量の添加量にも関わらず液状化粧料の香り立ちが優れる。香料の含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.08質量%以上である。すなわち、香料の含有量は、液状化粧料の全質量に対して、0.01~2.0質量%、0.05~1.5質量%、より好ましくは0.08~1質量%であり得る。
【0054】
低分子ポリオール
水相は、低分子ポリオールを更に含有してもよい。低分子ポリオールは、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール、ソルビトール等の糖アルコール、及びこれらの組み合わせ等であってよい。低分子ポリオールは、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。本明細書において、低分子ポリオールは、数平均分子量が1000以下のポリオールをいう。
【0055】
低分子ポリオールの含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上である。これにより、液状化粧料の保湿効果を更に高めることができ、液状化粧料の腐敗を防ぎ長期間の保存を可能とすることもできる。低分子ポリオールの含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。すなわち、低分子ポリオールの含有量は、液状化粧料の全質量に対して、3~50質量%、5~40質量%、より好ましくは7~30質量%であり得る。
【0056】
上記実施形態の液状化粧料は、上述した原料以外に、モノアルコール(但し、後述する防腐剤に該当するものを除く。)、防腐剤(例えばフェノキシエタノール等のアリールオキシアルカノール)、pH調整剤、電解質、乳化剤、酸化防止剤、退色防止剤、安定化剤、及びこれらの混合物等を適宜含有してもよい。
【0057】
電解質は液状化粧料を安定化させる効果、また、肌に保湿効果や美白効果、消炎効果といった美容効果を与える成分であり、例えば、エデト酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、グリチルリチン酸及びこれらの塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。電解質は、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0058】
液状化粧料の25℃における粘度は、例えば50mPas以上、60mPa・s以上、又は80mPa・s以上であってよく、また、10,000mPa・s以下、5,000mPa・s以下、又は3,000mPa・s以下であってよい。すなわち、液状化粧料の25℃における粘度は、50~10,000mPa・s、特に60~5,000mPa・s、好ましくは80~3,000mPa・sであり得る。液状化粧料の粘度は、回転粘度計(例えば、Rheolab QC;Anton Paar社製;スピンドル:CC-27;回転速度:200rpm、ST-22-4V-40;回転速度:100rpm、ST-24-2D/2V/2V-30;回転速度:50rpm)を用いて測定することができる。
【0059】
本実施形態の液状化粧料は、上述した粘度を有するため、カプセルが水相中に分散した状態で存在する。すなわち、液状化粧料において、カプセルは水相中に沈降又は浮上して存在していない。液状化粧料の粘度は、上述した、(メタ)アクリルポリマー及び/又は多糖類の含有量を変化させることにより調整することができる。
【0060】
液状化粧料は、例えば、水と、必要に応じてアリールオキシアルカノールとを混合し、ここに(メタ)アクリルポリマー及び/又は多糖類を添加して膨潤させる。その後、必要に応じてモノアルコール及び他の原料を添加、混合することによって製造することができる。(メタ)アクリルポリマー及び/又は多糖類を添加する前又は後に、必要に応じて低分子ポリオールを添加、混合してもよい。
【0061】
上記各実施形態の液状化粧料は、ローション(化粧水)、美容液等として特に好適に用いられる。
本発明は、本発明で定義される液状化粧料を、ケラチン物質、特に皮膚に塗布することを含む、ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための、特に保湿、ナリシング及びエモリエント効果を提供するための化粧方法にも関する。
【実施例0062】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特に断りのない限り、%は、組成物の総質量(重量)の重量%とも呼ばれる質量%で表される。
【0063】
<実施例1~5、比較例1~6>
表1に示す組成に基づき、水相中にカプセルを含有する液状化粧料を調製した。まず、フェノキシエタノール水溶液(A欄)を80~85℃に加熱し、(メタ)アクリルポリマー(B欄)及び/又は多糖類(C欄)を添加して、(メタ)アクリルポリマー及び/又は多糖類を膨潤させた。次に、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの水溶液(D欄)を添加してから、低分子ポリオール(E欄)、両親媒性物質(F欄)及び香料(G欄)を混合したものを添加して香料を可溶化させた後、油性成分を封入した寒天外殻のカプセル(H欄)を添加し、混合して、液状化粧料を得た。各成分の含有量(質量%)は、表1に示すとおりである。
【0064】
<安定性評価>
(1)50℃での1か月
透明容器に上記調製した各化粧料を収容し、蓋をして密閉したうえで、50℃で1か月保管した。保管後、各化粧料について、相又はカプセル中の濁り及びカプセルからの油性成分の漏洩の有無を観察した。相又はカプセル中の濁り及びカプセルからの油性成分の漏洩が観察されなかったものをA、相又はカプセル中に濁りが生じたものをB、カプセルから油性成分が漏洩していたものをCと評価した。結果を表1に示す。
【0065】
(2)サイクル条件での1か月
透明容器に上記調製した各化粧料を収容し、蓋をして密閉したうえで、-10℃~40℃の上昇下降を繰り返す条件で1か月保管した。保管後、各化粧料について、各化粧料について、相又はカプセル中の濁り及びカプセルからの油性成分の漏洩の有無を観察した。相又はカプセル中の濁り及びカプセルからの油性成分の漏洩が観察されなかったものをA、相又はカプセル中に濁りが生じたものをB、カプセルから油性成分が漏洩していたものをCと評価した。結果を表1に示す。
【0066】
上記の安定性評価に基づき、総合評価として、液状化粧料に濁りが生じず安定であったものをY、液状化粧料に濁りが生じたこと等により安定性が優れないものをNと評価した。結果を表1に示す。
【0067】
【0068】
実施例1~5については、4℃で1か月保管した場合の安定性も評価した。透明容器に実施例1~5の液状化粧料を収容し、蓋をして密閉したうえで、4℃で1か月保管した。保管後、各化粧料について、相又はカプセル中の濁り及びカプセルからの油性成分の漏洩の有無を観察した。相又はカプセル中の濁り及びカプセルからの油性成分の漏洩が観察されなかったものをA、相又はカプセル中に濁りが生じたものをB、カプセルから油性成分が漏洩していたものをCと評価した。その結果、実施例1~5の液状化粧料全てにおいて、A評価であった。
これらの結果は、水相中にカプセルを含有する本発明による液状化粧料であって、カプセルが、油成分を封入する寒天外殻を含み、水相が、(メタ)アクリルポリマー、多糖類、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる1つの増粘剤、並びにHLB値が13以下の両親媒性物質を含む液状化粧料が、他の比較例と比較して、経時的に高い安定性を維持し、したがって、その本来の効果(保湿、エモリエント、ナリシング効果)が長期間にわたって維持されることを示す。