(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059633
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】遺伝子改変細胞で使用するための共刺激ドメイン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240423BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240423BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240423BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240423BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20240423BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
A61P35/02
A61P35/00
A61K35/17
C12N15/63
C12N15/13
C12N15/861 Z
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024013162
(22)【出願日】2024-01-31
(62)【分割の表示】P 2022112159の分割
【原出願日】2017-10-04
(31)【優先権主張番号】62/403,880
(32)【優先日】2016-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/501,475
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/556,199
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508117721
【氏名又は名称】プレシジョン バイオサイエンシズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャンツ,デレック
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】マクラウド,ダニエル,ティー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】細胞増殖を促進するため及び/又は抗原認識後のサイトカイン分泌を促進するために遺伝子改変細胞において有用な新規共刺激ドメインを提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有する共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。前記共刺激ドメインが組み入れられているキメラ抗原受容体又は誘導性調節構築物を含む遺伝子改変細胞、前記共刺激ドメインをコードする核酸配列を含むプラスミド及びウイルスベクター、並びにがん等の疾患の症状、進行、又は発生を軽減するために新規共刺激ドメインを含む組成物を対象に投与する方法も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号8、5、6、又は7のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する共刺激ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項2】
前記共刺激ドメインが少なくとも1つのTRAF結合モチーフを含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記TRAF結合モチーフが、配列番号10、9、及び11からなる群から選択される、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記共刺激ドメインが、スペーサ配列によって分離された2つのTRAF結合モチーフを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記スペーサが、配列番号15および12~14からなる群から選択される、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記共刺激ドメインが、スペーサ配列によって分離された配列番号10、9、及び11からなる群から選択される2つのTRAF結合モチーフを含み、前記スペーサ配列は配列番号15及び12~14からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記共刺激ドメインが、スペーサ配列によって分離された、配列番号9及び11のTRAF結合モチーフを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記スペーサ配列が配列番号12を含む、請求項7に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記核酸分子が、配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列が共刺激ドメインをコードする、請求項7又は請求項8に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む共刺激ドメインをコードする、請求項7~9のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項11】
前記共刺激ドメインが、スペーサ配列によって分離された、配列番号10及び11のTRAF結合モチーフを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記スペーサ配列が、配列番号15、13、及び14からなる群から選択される、請求項11に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記核酸分子が、配列番号4、2、又は3のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列が共刺激ドメインをコードする、請求項11又は12に記載の核酸分子。
【請求項14】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号8、6、又は7のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む共刺激ドメインをコードする、請求項11~13のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項15】
前記核酸分子がキメラ抗原受容体(CAR)をコードするヌクレオチド配列を含み、前
記CARが請求項1~14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの共刺激ドメインを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項16】
前記CARが、配列番号8、5、6、又は7のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも1つの共刺激ドメインを含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項17】
前記CARが少なくとも2つの共刺激ドメインを含み、前記共刺激ドメインの少なくとも1つが請求項1~14のいずれか1項に記載の共刺激ドメインである、請求項15又は請求項16に記載の核酸分子。
【請求項18】
前記CARが請求項1~14のいずれか1項に記載の少なくとも2つの共刺激ドメインを含む、請求項17に記載の核酸分子。
【請求項19】
前記CARが少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを更に含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項20】
前記細胞内シグナル伝達ドメインがCD3ζドメインである、請求項19に記載の核酸分子。
【請求項21】
前記核酸分子が誘導性調節構築物をコードするヌクレオチド配列を含み、前記誘導性調節構築物が請求項1~14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの共刺激ドメインを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項22】
前記誘導性調節構築物が、前記誘導性調節構築物のうちの2つを二量体化させる結合ドメインを更に含み、二量体化が細胞への共刺激シグナルを開始する、請求項21に記載の核酸分子。
【請求項23】
前記結合ドメインが小分子又は抗体に結合する、請求項22に記載の核酸分子。
【請求項24】
前記結合ドメインがFKBP12の類似体を含む、請求項22又は23に記載の核酸分子。
【請求項25】
前記核酸分子が、mRNA、組換えDNA構築物、又はウイルスベクターのウイルスゲノムである、請求項1~24のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか1項に記載の前記核酸分子を含む組換えDNA構築物。
【請求項27】
前記組換えDNA構築物がウイルスベクターをコードし、前記ウイルスベクターが請求項1~24のいずれか1項に記載の前記核酸分子を含む、請求項26に記載の組換えDNA構築物。
【請求項28】
前記ウイルスベクターが組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項27に記載の組換えDNA構築物。
【請求項29】
請求項1~24のいずれか1項に記載の前記核酸分子を含むウイルスベクター。
【請求項30】
前記ウイルスベクターが組換えAAVベクターである、請求項29に記載のウイルスベクター。
【請求項31】
請求項1~24のいずれか1項に記載の前記核酸分子を含む遺伝子改変細胞。
【請求項32】
前記遺伝子改変細胞が、請求項1~24のいずれか1項に記載の前記核酸分子を含む発現カセットを含む、請求項31に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項33】
前記核酸分子又は前記発現カセットが前記遺伝子改変細胞のゲノム内に存在する、請求項32に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項34】
前記核酸分子又は前記発現カセットが前記遺伝子改変細胞のゲノムに組み込まれていない、請求項32に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項35】
前記核酸分子又は前記発現カセットが、前記遺伝子改変細胞中の前記組換えDNA構築物において、mRNA中、又はウイルスゲノム中に存在し、前記遺伝子改変細胞のゲノムに組み込まれていない、請求項34に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項36】
前記遺伝子改変細胞が、請求項1~24のいずれか一項に記載の前記共刺激ドメインを含むCARをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む、請求項31~35のいずれか1項に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項37】
前記遺伝子改変細胞が、
(i)請求項1~24のいずれか1項に記載の共刺激ドメインを含まないCARをコードするヌクレオチド配列を含むCAR発現カセットと、
(ii)請求項21~24のいずれか一項に記載の誘導性調節構築物をコードする調節発現カセットと、
を含む、請求項31~35のいずれか1項に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項38】
前記遺伝子改変細胞が、
(i)請求項1~24のいずれか1項に記載の共刺激ドメインを含まないCARをコードするヌクレオチド配列と、
(ii)請求項21~24のいずれか1項に記載の誘導性調節構築物をコードするヌクレオチド配列と、
を含む発現カセットを含む、請求項31~35のいずれか1項に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項39】
前記遺伝子改変細胞が、
(i)請求項1~24のいずれか1項に記載の前記共刺激ドメインを含まないCARと、
(ii)請求項21~24のいずれか1項に記載の誘導性調節ドメインと、
を含む、請求項31~35のいずれか1項に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項40】
前記遺伝子改変細胞が遺伝子改変真核細胞である、請求項31~39のいずれか1項に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項41】
前記遺伝子改変細胞が遺伝子改変ヒトT細胞である、請求項31~40のいずれか1項に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項42】
前記遺伝子改変細胞が、配列番号8、5、6、又は7のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する共刺激ドメインを含まない対照細胞と比較して、増加した増殖及び/又はサイトカイン分泌を示す、請求項31~41のいずれか1項に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項43】
請求項1~24のいずれか1項に記載の少なくとも1つの共刺激ドメインを含む遺伝子改変細胞の作製方法であって、前記方法が請求項1~24のいずれか1項に記載の少なくとも1つの核酸分子を細胞に導入することを含む、方法。
【請求項44】
前記核酸分子が、CARをコードする、請求項15~20のいずれか1項に記載の前記核酸分子である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記核酸分子が、誘導性調節構築物をコードする請求項21~24のいずれか1項に記載の前記核酸分子である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
請求項43~45のいずれか1項に記載の方法であって、前記方法が、
(i)操作されたヌクレアーゼをコードする第2の核酸分子であって、前記操作されたヌクレアーゼが前記細胞中で発現される、第2の核酸分子、又は、
(ii)操作されたヌクレアーゼタンパク質
を前記細胞に導入することを更に含み、
前記操作されたヌクレアーゼは、切断部位を生成するために前記細胞のゲノム中の認識配列を認識して切断し、
前記少なくとも1つの共刺激ドメインをコードする前記核酸分子は、前記切断部位で前記細胞のゲノムに挿入される、方法。
【請求項47】
前記操作されたヌクレアーゼが、操作されたメガヌクレアーゼ、組換えジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、組換え転写活性化剤様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Casヌクレアーゼ、またはmegaTALヌクレアーゼである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記操作されたヌクレアーゼが操作されたメガヌクレアーゼである、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
請求項1~24のいずれか1項に記載の前記核酸分子は、前記核酸分子が相同組換えによって前記切断部位で前記細胞のゲノムに挿入されるように、前記切断部位に隣接する配列に相同な配列を更に含む、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
請求項1~24のいずれか1項に記載の前記核酸分子は、前記核酸分子が非相同の末端結合によって前記細胞のゲノムに挿入されるように、前記切断部位に対して実質的な相同性を欠く、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記遺伝子改変細胞が遺伝子改変真核細胞である、請求項43~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記遺伝子改変細胞が遺伝子改変ヒトT細胞である、請求項43~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
請求項1~24のいずれか1項に記載の前記核酸分子が、請求項25に記載の前記mRNAを用いて前記細胞に導入される、請求項43~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
請求項1~24のいずれか1項に記載の前記核酸分子が、請求項26~28のいずれか1項に記載の前記組換えDNA構築物を用いて前記細胞に導入される、請求項43~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
請求項1~24のいずれか1項に記載の前記核酸分子が、請求項29又は請求項30に
記載の前記ウイルスベクターを用いて前記細胞に導入される、請求項43~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記遺伝子改変細胞は、共刺激ドメインを含まない対照細胞と比較した場合に、請求項1~24のいずれか1項に記載の核酸分子の導入後に活性化、増殖、及び/又はサイトカイン分泌の増加を示す、請求項43~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
薬学的に許容される担体と、請求項31~42のいずれか1項に記載の前記遺伝子改変細胞と、を含む医薬組成物。
【請求項58】
それを必要とする対象においてがんを治療するための免疫療法の方法であって、前記方法が前記対象に請求項36~42のいずれか1項に記載の前記遺伝子改変細胞を投与することを含む、方法。
【請求項59】
前記方法は請求項57に記載の前記医薬組成物を投与することを含み、前記医薬組成物は請求項36~42のいずれか1項に記載の前記遺伝子改変細胞を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記がんが癌腫、リンパ腫、肉腫、芽細胞腫、又は白血病である、請求項58又は請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記がんが、B細胞起源のがん、乳癌、胃癌、神経芽細胞腫、骨肉腫、肺癌、黒色腫、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、卵巣癌、横紋筋肉腫、白血病、及びホジキンリンパ腫からなる群から選択される、請求項58~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記B細胞起源のがんが、B系統急性リンパ芽球性白血病、B細胞慢性リンパ性白血病、及びB細胞非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分子生物学及び組換え核酸技術の分野に関する。特に、本開示は、T細胞増殖を刺激しT細胞枯渇を回避するように操作された新規共刺激ドメインに関する。本開示は更に、新規共刺激ドメインを含む遺伝子改変細胞、及びがん等の疾患の治療におけるそのような細胞の使用に関する。
【0002】
EFS-Webを介してテキストファイルとして提出された配列表への参照
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。2017年10月4日に作成された上記のASCIIコピーは、P109070017WO00SEQ.txtという名称で、サイズが124,207バイトである。
【背景技術】
【0003】
T細胞養子免疫療法は、がん治療のための有望なアプローチである。この戦略は、特定の腫瘍関連抗原に対する特異性を増強するために遺伝的に改変されている単離されたヒトT細胞を利用する。遺伝子改変は、抗原特異性をT細胞に移植するためのキメラ抗原受容体(CAR)又は外因性T細胞受容体の発現を含み得る。外因性T細胞受容体とは対照的に、CARは、モノクローナル抗体の可変ドメインからそれらの特異性を引き出す。従って、CARを発現するT細胞は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の非限定的な様式で腫瘍免疫反応性を誘導する。今日まで、T細胞養子免疫療法は、B細胞悪性腫瘍(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、及び慢性リンパ性白血病)、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、進行神経膠腫、卵巣癌、中皮腫、黒色腫、及び膵臓癌を含む多くのがんの臨床治療として利用されてきた。
【0004】
T細胞活性化は内因性T細胞受容体によって開始され、それにより細胞に抗原特異性も提供される。T細胞によるシグナル伝達は、CD28等の細胞表面共刺激受容体によって増幅される。共刺激がないと、T細胞受容体を介する刺激はT細胞増殖を促進するのに不十分であり、細胞アネルギーをもたらし得る。共刺激はまた、T細胞枯渇及びいくつかの形態の活性化誘導細胞死を回避するのにも役立つ。初期のキメラT細胞活性化受容体は、CD3のζ鎖をCD4、CD8、及びCD25を含むT細胞共受容体の細胞外ドメインに融合することによって生成された。
【0005】
次いで、CD3ζ鎖を一本鎖可変断片(scFv)に融合することによって、いわゆる「第1世代」キメラ抗原受容体を生成し、これにより、抗原特異性及び抗原誘導性T細胞活性化が得られた。第1世代CARは細胞傷害性を媒介することができたが、修飾された初代T細胞の抗原誘導性の拡大を指示することができなかった。実際、初期のトランスジェニックマウスモデルにおける研究は、アネルギー及び少量のインターフェロンガンマ(IFN-γ)の産生のために、第一世代CARを発現するT細胞が、インビボでの腫瘍進行に対して中程度の効果しかもたらさないことを明らかにした。「第2世代」キメラ抗原受容体は、シスにおいて単一の共刺激ドメインを細胞質CD3ζ鎖と更に融合させることによって生成された。研究は、共刺激ドメインの付加が、抗原曝露を繰り返した後の初代CAR-T細胞の拡大、及びIFN-γ等のサイトカインの分泌増加を可能にすることを実証した。実際、第2世代CAR-T細胞を利用した初期の臨床試験は、B細胞リンパ腫、CLL、及びB細胞ALLに罹患した患者において有意に増強された持続性及び拡大を示した。CD28、4-1BB、又はOX-40要素等の多数の共刺激ドメインがCARに導入されており、これらはB細胞悪性腫瘍患者に投与されるCAR-T細胞に利用されてきた。いわゆる「第3世代」キメラ抗原受容体は、細胞質CD3ζ鎖と共に2つの共刺
激ドメインを導入して、抗原曝露を繰り返した後の細胞拡大及び/又はサイトカイン分泌の更なる増強を可能にした。
【0006】
CAR構築物内の共刺激ドメインの使用に加えて、グループはまた、CARから分離することができる様々な「安全スイッチ」に共刺激ドメインを組み入れている。そのような安全スイッチの1つは、rimiducid等の小分子によって結合されると二量体化する結合ドメインに融合された、MyD88及びCD40シグナル伝達ドメインを含む。この安全スイッチは、細胞活性化を促進するために細胞質CD3ζ鎖のみを含むCAR構築物と共に使用される。小分子を投与することにより、安全スイッチは二量体化し、MyD88/CD40共刺激シグナル伝達が別個のCAR構築物による抗原認識の後にCAR-T細胞拡大及びサイトカイン分泌を促進することを可能にする。
【0007】
多数の共刺激ドメインが、特許及び文献の両方に以前から開示されている。例えば、特許文献1は、4-1BBシグナル伝達ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインの両方を含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを特許請求している。しかしながら、本開示のドメイン、又は本開示のドメインに対して80%の配列同一性を有する任意のドメインを開示したものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、細胞増殖を促進するため及び/又はサイトカイン分泌を促進するために遺伝子改変細胞を提供するのに有用な新規共刺激ドメインを提供する。本開示は、抗原誘導性細胞活性化後に異なる程度の細胞増殖及び/又はサイトカイン分泌を促進する新しい共刺激ドメインを提供することによって技術を進歩させる。例えば、本明細書に開示の共刺激ドメインは、4-1BB及びCD28等の共刺激ドメインと比較した場合に優れた活性を提供する。また、本明細書には、本明細書に開示の1以上の共刺激ドメインが組み入れられているキメラ抗原受容体(CAR)を含む遺伝子改変細胞も開示されている。他の例では、本明細書に開示の遺伝子改変細胞は、本明細書に開示の1以上の共刺激ドメインが組み入れられている誘導性調節構築物を含む。また、本明細書では、共刺激ドメインをコードする核酸配列を含む核酸分子、組換えDNA構築物(例えば、プラスミド)、及びウイルスベクター、並びに疾患の症状、進行、又は発生を軽減するために対象に新規共刺激ドメインを含む組成物を投与する方法も提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の新規共刺激ドメインを含む遺伝子改変細胞は、医薬組成物として処方され、例えばがんの治療における免疫療法として使用される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、一態様では、本開示は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。本開示の様々な態様では、本明細書に開示の共刺激ドメインの活性変異体又は断片は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、共刺激ドメインをコードする活性変異体又は断片アミノ酸配列は少なくとも1つのTRAF結合モチーフを含む。特定の実施形態では、TRAF結合
モチーフは、配列番号9~11からなる群から選択される。特定の実施形態では、共刺激ドメインをコードする活性変異体又は断片アミノ酸配列は、スペーサ配列によって分離された2つのTRAF結合モチーフを含む。いくつかのそのような実施形態において、スペーサ配列は、配列番号12~15からなる群から選択される。特定の実施形態では、共刺激ドメインをコードする変異体又は断片アミノ酸配列は、スペーサ配列で分離された、配列番号9~11からなる群から選択される2つのTRAF結合モチーフを含み、スペーサ配列は配列番号12~15からなる群から選択される。
【0012】
特定の実施形態では、共刺激ドメインをコードする変異体又は断片アミノ酸配列は、配列番号12に記載のスペーサ配列等のスペーサ配列によって分離された、配列番号9及び11のTRAF結合モチーフを含む。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインをコードする変異体又は断片アミノ酸配列は、配列番号13~15のいずれかに記載のスペーサ配列等のスペーサ配列によって分離された、配列番号10及び11のTRAF結合モチーフを含む。
【0013】
特定の実施形態では、核酸分子は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む共刺激ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号1~4のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列、又は配列番号1~4のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の同一性を有するその変異体若しくは断片を含み、ヌクレオチド配列は共刺激ドメインをコードする。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号1~4のいずれか1つに記載の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号1~4のいずれか1つの変異体又は断片を含むヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は活性共刺激ドメインをコードする。
【0015】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするヌクレオチド配列を含み、CARは、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する本明細書に記載の少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む。いくつかのそのような実施形態では、核酸分子は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも1つの共刺激ドメインを含むCARをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0016】
他のそのような実施形態では、CARは細胞外抗原結合ドメインを含む。特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは一本鎖可変断片(scFv)である。様々な実施形態において、抗原結合ドメインはがん又は腫瘍抗原に対する特異性を有する。特定の実施形態では、コードされたCARはCD19特異的抗原結合ドメインを含む。
【0017】
更なるそのような実施形態では、コードされたCARは少なくとも2つの共刺激ドメインを含む。そのような実施形態では、少なくとも2つの共刺激ドメインは、本明細書に記載の共刺激ドメインであるか、あるいは本明細書に記載の少なくとも1つの共刺激ドメインと、当該分野で公知の少なくとも1つの追加の共刺激ドメインである(例えば、4-1BB、CD28、OX40、ICOS)。いくつかの実施形態では、コードされたCARは少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを更に含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζドメインである。
【0018】
他の実施形態では、核酸分子は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はそ
の活性変異体若しくは断片を含む誘導性調節構築物をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも1つの共刺激ドメインを含む誘導性調節構築物をコードするヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、コードされた誘導性調節構築物は、2つの誘導性調節構築物が二量体化することを可能にする結合ドメインを更に含み、二量体化は細胞への共刺激シグナルを開始する。いくつかの実施形態では、結合ドメインは、小分子(例えば、rimiducid)、抗体、又は二量体化を可能にする他の分子に結合する。結合ドメインが小分子に結合する特定の実施形態では、結合ドメインはFKBP12の類似体を含み(例えば、F36V置換を含む)、小分子はrimiducid(即ち、AP1903)である。
【0019】
特定の実施形態では、核酸分子は、mRNA、組換えDNA構築物(例えば、プラスミド)であるか、又はウイルスベクターのウイルスゲノム内に含まれる。
【0020】
別の態様では、本開示は組換えDNA構築物を提供し、組換えDNA構築物は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片をコードするヌクレオチド配列を含む本明細書に記載の核酸分子を含む。特定の実施形態では、組換えDNA構築物は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む共刺激ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物は、本明細書に記載のCARをコードするヌクレオチド配列を含み、CARは、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む。他の実施形態では、組換えDNA構築物は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む本明細書に記載の誘導性調節構築物をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0021】
いくつかのそのような実施形態において、組換えDNA構築物は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片をコードするヌクレオチド配列を含むウイルスベクターをコードする。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。特定の実施形態では、ウイルスベクターは組換えAAVベクターである。
【0022】
いくつかの態様では、本開示は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片をコードするヌクレオチド配列を含む本明細書に記載の核酸分子を含むウイルスベクターを提供する。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む共刺激ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは本明細書に記載のCARをコードするヌクレオチド配列を含み、CARは、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む。他の実施形態では、ウイルスベクターは、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む本明細書に記載の誘導性調節構築物をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0023】
特定の実施形態では、ウイルスベクターはレトロウイルスベクター、レンチウイルスベ
クター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。特定の実施形態では、ウイルスベクターは組換えAAVベクターである。
【0024】
別の態様では、本開示は遺伝子改変細胞を提供し、遺伝子改変細胞は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片をコードするヌクレオチド配列を含む本明細書に記載の核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞は、本明細書に記載のCARをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットを含み、CARは、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む。特定の実施形態では、遺伝子改変細胞は本明細書に記載の誘導性調節構築物をコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットを含み、誘導性調節構築物は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の核酸分子、又は本明細書に記載の発現カセットは、遺伝子改変細胞のゲノム内に存在するか、あるいは細胞のゲノムに組み込まれていない。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の核酸分子、又は本明細書に記載の発現カセットは、組換えDNA構築物中、mRNA中、又はウイルスゲノム中の遺伝子改変細胞に存在し、細胞のゲノムには組み込まれていない。
【0025】
更なる実施形態では、遺伝子改変細胞は、(i)本明細書に記載の共刺激ドメインを含まないCARをコードするヌクレオチド配列を含むCAR発現カセットと、(ii)配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む、本明細書に記載の誘導性調節構築物をコードする調節発現カセットとを含む。従って、特定の実施形態では、遺伝子改変細胞は、(i)本明細書に記載の共刺激ドメインが組み入れられていないCARと、(ii)本明細書に記載の少なくとも1つの共刺激ドメインを含む誘導性調節ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞は、(i)本明細書に記載の共刺激ドメインを含まないCARをコードするヌクレオチド配列と、(ii)本明細書に記載の少なくとも1つの共刺激ドメインを含む誘導性調節ドメインをコードするヌクレオチド配列とを含む発現カセットを含む。各実施形態では、CAR発現カセット及び/又は調節発現カセットは、遺伝子改変真核細胞のゲノム内にあるか、あるいは細胞のゲノムに組み込まれていない。いくつかのそのような実施形態において、CAR発現カセット及び/又は調節発現カセットは、組換えDNA構築物中、mRNA中、又はウイルスゲノム中の遺伝子改変真核細胞に存在し、細胞のゲノムに組み込まれていない。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変細胞は、遺伝子改変真核細胞である。特定の実施形態では、細胞はT細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞である。他の実施形態では、遺伝子改変細胞は初代ヒトT細胞又は初代ヒトNK細胞である。更なる実施形態では、遺伝子改変細胞はヒトCAR-T細胞又はヒトCAR-NK細胞である。
【0027】
特定の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変細胞は、本明細書に記載の共刺激ドメインを含まない対照細胞と比較して、増加した増殖及び/又はサイトカイン分泌を示す。いくつかの実施形態において、増加した増殖及び/又はサイトカイン分泌はインビトロ及び/又はインビボで示される。特定の実施形態では、サイトカイン分泌の増加は、本明細書に記載の共刺激ドメインを含まない対照細胞と比較して、細胞活性化及び/又は増殖に関連するIFN-γ、IL-2、TNF-アルファ、又は他のサイトカインの増加を含む。
【0028】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその
活性変異体若しくは断片を含む遺伝子改変細胞の作製方法を提供し、この方法は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片をコードする本明細書に記載の少なくとも1つの核酸分子を細胞に導入することを含む。
【0029】
本方法のいくつかの実施形態では、導入された核酸分子は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む本明細書に記載のCARをコードする。
【0030】
本方法のいくつかの実施形態では、導入された核酸分子は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む本明細書に記載の誘導性調節構築物をコードする。
【0031】
いくつかの実施形態では、この方法は更に、(i)操作されたヌクレアーゼをコードする第2の核酸分子であって、操作されたヌクレアーゼが細胞内で発現される第2の核酸分子、又は(ii)操作されたヌクレアーゼタンパク質を、細胞に導入することを含み、ここで、操作されたヌクレアーゼは、認識配列を認識し切断して細胞のゲノムに切断部位を生成し、少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片をコードする核酸は、切断部位でゲノムに挿入される。いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼは、操作されたメガヌクレアーゼ、組換えジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、組換え転写活性化剤様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Casヌクレアーゼ、又はmegaTALヌクレアーゼである。本方法の特定の実施形態では、操作されたヌクレアーゼは操作されたメガヌクレアーゼである。特定の実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは一本鎖メガヌクレアーゼである。
【0032】
本方法のそのような一実施形態では、細胞に導入された、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片をコードする核酸分子は、核酸分子が相同組換えによって切断部位でゲノムに挿入されるように、ヌクレアーゼ切断部位に隣接する配列に相同な配列をさらに含む。本方法の別のそのような実施形態では、核酸分子は、核酸分子が非相同末端結合によってゲノムに挿入されるように、ヌクレアーゼ切断部位に対する実質的な相同性を欠いている。
【0033】
本方法のいくつかの実施形態では、細胞は真核細胞である。特定の実施形態では、細胞は、初代ヒトT細胞、又は初代ヒトNK細胞等のT細胞若しくはナチュラルキラー(NK)細胞である。特定の実施形態では、この方法によって作製される遺伝子改変細胞は、ヒトCAR-T細胞又はヒトCAR-NK細胞である。
【0034】
本方法の特定の実施形態では、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片をコードする核酸分子は、本明細書に記載のmRNA、本明細書に記載の組換えDNA構築物、又は本明細書に記載のウイルスベクターを使用して細胞内に導入される。
【0035】
いくつかの実施形態では、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片をコードする本明細書に記載の少なくとも1つの核酸分子の導入は、遺伝子改変細胞の活性化、増殖、及び/又はサイトカイン分泌を増加させる。特定の実施
形態では、サイトカイン分泌の増加は、本明細書に記載の共刺激ドメインを含まない対照細胞と比較した場合に、細胞活性化及び/又は増殖に関連するIFN-γ、IL-2、TNF-アルファ、又は任意の他のサイトカインの分泌増加を含む。
【0036】
別の態様では、本開示は、薬学的に許容される担体と、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む本明細書に記載の遺伝子改変細胞とを含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、遺伝子改変細胞は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む本明細書に記載のCARを含む。他の実施形態では、遺伝子改変細胞は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む本明細書に記載の誘導性調節構築物を含む。
【0037】
特定の実施形態では、遺伝子改変細胞はCAR-T細胞である。いくつかのそのような実施形態では、CAR-T細胞は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する本明細書に記載の共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含むCARを含む。他のそのような実施形態では、CAR-T細胞は、本明細書に記載の共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含まないCARを含み、更に、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する本明細書に記載の少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む誘導性調節構築物を含む。様々な実施形態において、CAR-T細胞はがん又は腫瘍特異的抗原に対する特異性を有し、医薬組成物はがん免疫療法の方法において有用である。
【0038】
別の態様では、本開示は、遺伝子改変細胞を対象に投与する方法を提供し、遺伝子改変細胞は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む本明細書に記載のものである。本方法のいくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む本明細書に記載のCARを含む。本方法の他の実施形態では、遺伝子改変細胞は、配列番号5~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体若しくは断片を含む本明細書に記載の誘導性調節構築物を含む。
【0039】
本方法の特定の実施形態では、遺伝子改変細胞を投与される対象はがん等の疾患を有する。本方法のいくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞はCAR-T細胞である。いくつかのそのような実施形態では、CAR-T細胞はがん又は腫瘍特異的抗原に対する特異性を有し、がん免疫療法の方法において有用である。いくつかの実施形態において、がんは、B細胞悪性腫瘍(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、又は慢性リンパ性白血病)、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、進行神経膠腫、卵巣癌、中皮腫、黒色腫、又は膵臓癌である。特定の実施形態では、がんはB細胞リンパ腫である。
【0040】
別の態様では、本開示は、医薬品として使用するための本明細書に記載の遺伝子改変細胞を提供する。本開示は更に、それを必要とする対象において疾患を治療するための医薬品の製造における、本明細書に記載の遺伝子改変細胞の使用を提供する。そのような一態様では、医薬品はそれを必要とする対象におけるがん免疫療法に有用である。
【0041】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象においてがんを治療するための免疫療法の方法を提供し、本明細書に開示される方法によって作製される遺伝子改変細胞と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、がんは、癌腫、リンパ腫、肉腫、芽細胞腫、及び白血病のがんからなる群から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態において、がんは、B細胞起源のがん、乳癌、胃癌、神経芽細胞腫、骨肉腫、肺癌、黒色腫、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、卵巣癌、横紋筋肉腫、白血病、及びホジキンリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、B細胞起源のがんは、B系統急性リンパ芽球性白血病、B細胞慢性リンパ性白血病、及びB細胞非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0044】
本発明の前述及び他の態様及び実施形態は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによってより完全に理解することができる。明確にするために別々の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできる。実施形態の全ての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、あたかもそれぞれの全ての組み合わせが個別に且つ明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別々に又は任意の適切な下位組み合わせで提供することもできる。実施形態に列挙された特徴の全ての下位組み合わせもまた、本発明によって具体的に包含され、あたかもそれぞれの全てのそのような下位組み合わせが本明細書に個別に且つ明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。本明細書に開示された本発明の各態様の実施形態は、必要な変更を加えて本発明の他の各態様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】新規共刺激ドメイン新規1(配列番号5)、新規3(配列番号6)、新規5(配列番号7)、及び新規6(配列番号8)のアラインメントを示す。個々のTRAF結合モチーフが同定され、列挙された各共刺激ドメイン内のTRAF結合モチーフの間にスペーサ領域を見出すことができる。
【
図2】抗CD19scFv、CD8ヒンジ及び膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、並びにCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含むCAR構築物を示す。示される共刺激ドメインには、CD28、4-1BB、新規1(N1)、新規3(N3)、新規5(N5)、及び新規6(N6)が含まれる。共刺激ドメインを欠くCAR構築物も示されている。
【
図3A-H】ドナーヒトT細胞のレンチウイルス形質導入後のCAR発現を実証するGFP分析の結果を報告する。結果は、新規共刺激ドメイン新規1(N1)、新規3(N3)、新規5(N5)、及び新規6(N6)の各々について報告されている。
図3A)偽形質導入を示す。
図3B)4-1BB共刺激ドメインを含むCARによる形質導入を示す。
図3C)CD28共刺激ドメインを含むCARによる形質導入を示す。
図3D)共刺激ドメインを含まない(BB-)CARによる形質導入を示す。
図3E)新規1(N1)共刺激ドメインを含むCARによる形質導入を示す。
図3F)新規3(N3)共刺激ドメインを含むCARによる形質導入を示す。
図3G)新規5(N5)共刺激ドメインを含むCARによる形質導入を示す。
図3H)新規6(N6)共刺激ドメインを含むCARによる形質導入を示す。
【
図4A-C】Raji培養物中で抗原誘発活性化を繰り返した後に経時的に測定されたCAR-T細胞拡大数を示す。結果は、新規共刺激ドメイン新規1(N1)、新規3(N3)、新規5(N5)、及び新規6(N6)の各々について報告されている。
図4AはCD4
+及びCD8
+CAR-T細胞の混合集団について得られた結果を示す。
図4BはCD4
+CAR-T細胞集団について得られた結果を示す。
図4CはCD8
+CAR-T細胞集団について得られた結果を示す。
【
図5A-C】形質導入後3、7、10、及び14日目の各形質導入CAR-T細胞集団におけるサイトカイン分泌を示す。
図5Aはインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)分泌を示す。
図5BはTNF-アルファ(TNF-α)分泌を示す。
図5CはIL-2分泌を示す。
【
図6A-C】より頻繁な抗原遭遇及びより高い標的:エフェクター比を使用して、Raji培養物中の抗原誘発活性化を繰り返した後に経時的に測定されたCAR-T細胞拡大数を示す。結果は、新規共刺激ドメイン新規1(N1)、新規3(N3)、新規5(N5)、及び新規6(N6)の各々について報告されている。
図5AはCD4
+及びCD8
+CAR-T細胞の混合集団について得られた結果を示す。
図5BはCD4
+CAR-T細胞集団について得られた結果を示す。
図5CはCD8
+CAR-T細胞集団について得られた結果を示す。
【
図7】5’から3’に、5’逆方向末端反復配列(ITR)、5’相同性アーム、プロモータ、抗CD19scFvのコード配列、CD8ヒンジ及び膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン、SV40ポリAシグナル、3’相同性アーム、及び3’ITRを含むドナー鋳型構築物を示す。示されている共刺激ドメインは、4-1BB、新規1(N1)、及び新規6(N6)を含む。
【
図8A-B】2人の異なるドナーから調製したCAR-T細胞を用いた抗原に応答した経時的なCAR-T増殖を示す。増殖は、4-1BB、N1、又はN6共刺激ドメインを含むCAR-T細胞について測定した。新規共刺激シグナル伝達ドメインは、4-1BBシグナル伝達によって支持される増殖レベルと同等又はそれ以上の増殖レベルを支持することが見出された。
図8AはドナーK799から調製したCAR-T細胞を用いた結果を示す。
図8Bはドナーz4100から調製したCAR-T細胞を用いた結果を示す。
【
図9A-B】4-1BB、N1、又はN6共刺激ドメインを含むCAR-T細胞との24時間及び72時間の共培養における様々なエフェクター:標的(E:T)比でのK19細胞の殺傷を示す。
図9AはドナーK799から調製したCAR-T細胞を示す。
図9Bはドナーz4100から調製したCAR-T細胞を示す。
【
図10A-C】CD19
+標的細胞に応答した4-1BB、N1、又はN6共刺激ドメインを含むCAR-T細胞の相対的増殖を決定するために使用した細胞増殖アッセイの結果のヒストグラムを示す。
図10Aは2つの異なるE:T比での陰性対照TRC KO T細胞と比較したCAR-4-1BB CAR-T細胞の増殖を示す。
図10BはCAR-N1T細胞と比較したCAR-4-1BB T細胞の増殖を示す。
図10CはCAR-N6T細胞と比較したCAR-4-1BB T細胞の増殖を示す。
【
図11】5’から3’に、5’逆方向末端反復配列(ITR)、5’相同性アーム、プロモータ、抗CD19scFvのコード配列、CD8ヒンジ及び膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン、SV40ポリAシグナル又はSV40ビポリAシグナル、3’相同性アーム、及び3’ITRを含む7241、7205、及び7206ドナー鋳型構築物を示す。示されている共刺激ドメインは、4-1BB(構築物7241)及び新規6(N6;構築物7205及び7206)を含む。
【
図12A-G】Raji-ffluc細胞の生着及び成長並びにそれに続くTCR KO細胞、又は7205、7206、若しくは4-1BBのCAR構築物を有するCAR T細胞での処置後にマウスにおいてインビボで観察された背側及び腹側総フラックスの値を示す。
図12AはTCR KO細胞で処理した後の背側フラックスを示す。
図12Bは7205CAR T細胞で処理した後の背側フラックスを示す。
図12Cは7206CAR T細胞で処理した後の背側フラックスを示す。
図12Dは4-1BB CAR T細胞で処置した後の背側フラックスを示す。
図12EはTCR KO細胞で処理した後の腹側フラックスを示す。
図12Fは7205CAR T細胞で処理した後の腹側フラックスを示す。
図12Gは7206CAR T細胞で処理した後の腹側フラックスを示す。
図12Hは4-1BB CAR T細胞で処置した後の腹側フラックスを示す。
【
図13A-D】Raji-ffluc細胞の生着及び成長並びにそれに続くTCR KO細胞、又は7205、7206、若しくは4-1BBのCAR構築物を有するCAR T細胞での処置後にマウスにおいてインビボで観察された背側及び腹側総フラックスの画像化を示す。
図13Aは、TCR KO細胞、7205 CAR T細胞、7206CAR T細胞、及び4-1BB CAR T細胞で処置した群における7、10、及び16日目の背側フラックスの画像化を示す。
図13Bは、7205CAR T細胞、7206CAR T細胞、及び4-1BB CAR T細胞で処置した群における24、31、及び38日目の背側フラックスの画像化を示す。
図13Cは、TCR KO細胞、7205 CAR T細胞、7206CAR T細胞、及び4-1BB CAR T細胞で処置した群における7、10、及び16日目の腹側フラックスの画像化を示す。
図13Dは、7205CAR T細胞、7206CAR T細胞、及び4-1BB CAR T細胞で処置した群における24、31、及び38日目の腹側フラックスの画像化を示す。
【
図14】Raji-ffluc細胞の生着及び成長、並びにそれに続くTCR KO細胞、又は7205、7206、若しくは4-1BBのCAR構築物を有するCAR T細胞による処理後のマウスの生存曲線を示す。
【
図15】5’から3’に、5’逆方向末端反復配列(ITR)、5’相同性アーム、プロモータ、抗CD19scFvのコード配列、CD8ヒンジ及び膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、MyD88共刺激ドメイン、新規6(N6)共刺激ドメイン、並びにCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン、SV40ビポリAシグナル、3’相同性アーム、及び3’ITRを含む7240ドナー鋳型構築物を示す。
【
図16A-F】新規6(N6)共刺激ドメインを含む抗CD19 CAR、又はMyD88及び新規6(N6)共刺激ドメインの両方を含むCARを発現するようにトランスフェクトしたヒトT細胞を用いたセルトレースバイオレット増殖アッセイの結果を示す。トランスフェクトした細胞をセルトレースバイオレットで標識し、CD19陰性K562細胞又は操作されたCD19陽性K562細胞(K19細胞)と共培養した。増殖は、T細胞のCD4+及びCD8+サブセットについてフローサイトメトリによって評価した。
図16AはTRC1-2x.87EEメガヌクレアーゼのみでトランスフェクトしたCD4+細胞を示す。
図16BはTRC1-2x.87EEメガヌクレアーゼのみでトランスフェクトしたCD8+細胞を示す。
図16CはTRC1-2×.87EEメガヌクレアーゼ及びN6 CARドナー鋳型でトランスフェクトしたCD4+細胞を示す。
図16DはTRC1-2x.87EEメガヌクレアーゼ及びN6 CARドナー鋳型でトランスフェクトしたCD8+細胞を示す。
図16EはTRC1-2x.87EEメガヌクレアーゼ及びMyD88/N6 CARドナー鋳型でトランスフェクトしたCD4+細胞を示す。
図16FはTRC1-2x.87EEメガヌクレアーゼ及びMyD88/N6 CARドナー鋳型でトランスフェクトしたCD8+細胞を示す。
【
図17】5’から3’に、5’逆方向末端反復配列(ITR)、5’相同性アーム、プロモータ、MyD88共刺激ドメインのコード配列、新規6(N6)共刺激ドメイン、及びタンデムリガンド結合FKBP12v36ドメイン(Fv)、T2A要素、抗CD19scFv、CD8ヒンジ及び膜貫通ドメインをコードする配列、並びにCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン、SV40ビポリAシグナル、3’相同性アーム、及び3’ITRを含む7235ドナー鋳型構築物を示す。
【
図18A-B】ドナー鋳型なしでTRC1-2x.87EEメガヌクレアーゼのみを発現するようにトランスフェクトしたヒトT細胞を用いたセルトレースバイオレット増殖アッセイの結果を示す。トランスフェクトした細胞をセルトレースバイオレットで標識し、CD19陰性K562細胞又は操作されたCD19陽性K562細胞(K19細胞)と共培養した。増殖は、T細胞のCD4+及びCD8+サブセットについてフローサイトメトリによって評価した。
図18Aは細胞のCD4+サブセットを示す。
図18Bは細胞のCD8+サブセットを示す。
【
図19A-D】新規6(N6)ドメインを含む抗CD19 CARを発現するようにトランスフェクトしたヒトT細胞を用いたセルトレースバイオレット増殖アッセイの結果を示す。トランスフェクトした細胞をセルトレースバイオレットで標識し、CD19陰性K562細胞又は操作されたCD19陽性K562細胞(K19細胞)と共培養した。増殖は、T細胞のCD4+及びCD8+サブセットについてフローサイトメトリによって評価した。更に、rimiducidの存在下又は非存在下でのK19共培養において細胞を評価した。
図19AはK19又はK562細胞上で培養した細胞のCD4+サブセットを示す。
図19Bはrimiducidの存在下又は非存在下で、K19細胞上で培養した細胞のCD4+サブセットを示す。
図19CはK19又はK562細胞上で培養した細胞のCD8+サブセットを示す。
図19Dはrimiducidの存在下又は非存在下で、K19細胞上で培養した細胞のCD8+サブセットを示す。
【
図20A-D】MyD88及び新規6(N6)共刺激ドメイン(iMyD88/N6 CAR)の両方を含む誘導性構築物と組み合わせて、共刺激ドメインを欠く抗CD19 CARを発現するようにトランスフェクトしたヒトT細胞を用いたセルトレースバイオレット増殖アッセイの結果を示す。トランスフェクトした細胞をセルトレースバイオレットで標識し、CD19陰性K562細胞又は操作されたCD19陽性K562細胞(K19細胞)と共培養した。更に、rimiducidの存在下又は非存在下でのK19共培養において細胞を評価した。増殖は、T細胞のCD4+及びCD8+サブセットについてフローサイトメトリによって評価した。
図20AはK19又はK562細胞上で培養した細胞のCD4+サブセットを示す。
図20Bはrimiducidの存在下又は非存在下で、K19細胞上で培養した細胞のCD4+サブセットを示す。
図20CはK19又はK562細胞上で培養した細胞のCD8+サブセットを示す。
図20Dはrimiducidの存在下又は非存在下で、K19細胞上で培養した細胞のCD8+サブセットを示す。
【0046】
配列の簡単な説明
配列番号1は、新規1共刺激ドメインをコードする核酸配列を示す。
【0047】
配列番号2は、新規3共刺激ドメインをコードする核酸配列を示す。
【0048】
配列番号3は、新規5共刺激ドメインをコードする核酸配列を示す。
【0049】
配列番号4は、新規6共刺激ドメインをコードする核酸配列を示す。
【0050】
配列番号5は、新規1共刺激ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0051】
配列番号6は、新規3共刺激ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0052】
配列番号7は、新規5共刺激ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0053】
配列番号8は、新規6共刺激ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0054】
配列番号9は、新規共刺激ドメインに見出されるTRAF結合モチーフのアミノ酸配列を示す。
【0055】
配列番号10は、新規共刺激ドメインに見出されるTRAF結合モチーフのアミノ酸配列を示す。
【0056】
配列番号11は、新規共刺激ドメインに見出されるTRAF結合モチーフのアミノ酸配列を示す。
【0057】
配列番号12は、新規共刺激ドメインに見出されるスペーサ配列のアミノ酸配列を示す
。
【0058】
配列番号13は、新規共刺激ドメインに見出されるスペーサ配列のアミノ酸配列を示す。
【0059】
配列番号14は、新規共刺激ドメインに見出されるスペーサ配列のアミノ酸配列を示す。
【0060】
配列番号15は、新規共刺激ドメインに見出されるスペーサ配列のアミノ酸配列を示す。
【0061】
配列番号16は、キメラ抗原受容体シグナルペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0062】
配列番号17は、抗CD19キメラ抗原受容体scFvのアミノ酸配列を示す。
【0063】
配列番号18は、キメラ抗原受容体CD8ヒンジ及び膜貫通領域のアミノ酸配列を示す。
【0064】
配列番号19は、CD3-ζ細胞内シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0065】
配列番号20は、CD28共刺激ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0066】
配列番号21は、4-1BB共刺激ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0067】
配列番号22は、共刺激ドメインを欠く抗CD19キメラ抗原受容体のアミノ酸配列を示す。
【0068】
配列番号23は、CD28共刺激ドメインを含む抗CD19キメラ抗原受容体のアミノ酸配列を示す。
【0069】
配列番号24は、4-1BB共刺激ドメインを含む抗CD19キメラ抗原受容体のアミノ酸配列を示す。
【0070】
配列番号25は、新規1共刺激ドメインを含む抗CD19キメラ抗原受容体のアミノ酸配列を示す。
【0071】
配列番号26は、新規3共刺激ドメインを含む抗CD19キメラ抗原受容体のアミノ酸配列を示す。
【0072】
配列番号27は、新規5共刺激ドメインを含む抗CD19キメラ抗原受容体のアミノ酸配列を示す。
【0073】
配列番号28は、新規6共刺激ドメインを含む抗CD19キメラ抗原受容体のアミノ酸配列を示す。
【0074】
配列番号29は、4-1BB共刺激ドメインを含む抗CD19 CARをコードするベクターの核酸配列を示す。
【0075】
配列番号30は、新規1共刺激ドメインを含む抗CD19 CARをコードするベクターの核酸配列を示す。
【0076】
配列番号31は、新規6共刺激ドメインを含む抗CD19 CARをコードするベクターの核酸配列を示す。
【0077】
配列番号32は、JeTプロモータの核酸配列を示す。
【0078】
配列番号33は、SV40ポリAシグナル配列の核酸配列を示す。
【0079】
配列番号34は、第1のSV40ビポリAシグナル配列の核酸配列を示す。
【0080】
配列番号35は、第2のSV40ビポリAシグナル配列の核酸配列を示す。
【0081】
配列番号36は、4-1BB共刺激ドメイン及びSV40ポリAシグナルを含む7241抗CD19 CAR構築物をコードするベクターの核酸配列を示す。
【0082】
配列番号37は、新規6共刺激ドメイン及びSV40ポリAシグナルを含む7205抗CD19 CAR構築物をコードするベクターの核酸配列を示す。
【0083】
配列番号38は、新規6共刺激ドメイン及びSV40ビポリAシグナルを含む7206抗CD19 CAR構築物をコードするベクターの核酸配列を示す。
【0084】
配列番号39は、MyD88共刺激ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0085】
配列番号40は、MyD88及び新規6共刺激ドメインを含む7240抗CD19 CAR構築物をコードするベクターの核酸配列を示す。
【0086】
配列番号41は、タンデムリガンド結合FKBP12v36ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0087】
配列番号42は、第1世代CARをコードする7235抗CD19 CAR構築物と、MyD88及び新規6共刺激ドメイン並びにタンデムリガンド結合FKBP12v36ドメインを含む誘導性調節構築物とをコードするベクターの核酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0088】
1.1 参照と定義
本明細書で言及される特許及び科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用する発行された米国特許、許可された出願、公開された外国出願、及びGenBankデータベースの配列を含む参考文献は、あたかも各々が具体的且つ個別に参照により組み入れられることが示されるのと同じ程度に参照により本明細書に組み入れられる。
【0089】
本開示は異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。そうではなく、これらの実施形態は、この開示が徹底的且つ完全であり、且つ本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。例えば、一実施形態に関して例示した特徴を他の実施形態に組み入れることができ、特定の実施形態に関して例示した特徴をその実施形態から削除することができる。更に、本明細書に示唆された実施形態に対する本開示から逸脱しない多数の変形及び追加が、本開示に照らして当業者には明らかであろう。
【0090】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本開示
が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の本開示の説明に使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示を限定することを意図するものではない。
【0091】
本明細書に記載の全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0092】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、又は「the」は、1又は複数を意味し得る。例えば、「a」細胞は、単一細胞又は多数の細胞を意味し得る。
【0093】
本明細書で使用される場合、他に具体的に示されない限り、単語「又は」は、「及び/又は」の包括的な意味で使用され、「いずれか/又は」の排他的な意味では使用されない。
【0094】
本明細書で使用される場合、「共刺激ドメイン」とは、活性化の際に細胞内増殖シグナル及び/又は細胞生存シグナルを伝達するポリペプチドドメインを指す。共刺激ドメインの活性化は、2つの共刺激ドメインポリペプチドのホモ二量体化に続いて起こり得る。活性化はまた、例えば、共刺激ドメインを含む構築物(例えば、キメラ抗原受容体又は誘導性調節構築物)の活性化後にも起こり得る。一般に、共刺激ドメインは膜貫通共刺激受容体、特に共刺激受容体の細胞内部分から誘導することができる。共刺激ポリペプチドの非限定的な例には、本明細書に記載の共刺激ドメイン、4-1BB、CD28、ICOS、OX-40、及びCD27が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体」又は「CAR」とは、抗原又は他のリガンド若しくは分子に対する特異性を免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)に移植する操作された受容体を指す。キメラ抗原受容体は、典型的には、少なくとも細胞外リガンド結合ドメイン又は部分、並びに1又は複数のシグナル伝達ドメイン及び/又は共刺激ドメインを含む細胞内ドメインを含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、細胞外リガンド結合ドメイン又は部分は、特定のエピトープ又は抗原(例えば、がん細胞又は他の疾患を引き起こす細胞又は粒子等の細胞の表面上に優先的に存在するエピトープ又は抗原)に対する特異性を提供するモノクローナル抗体に由来する単鎖可変断片(scFv)の形態である。いくつかの実施形態では、scFvはリンカー配列を介して結合している。いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは任意の目的の抗原又はエピトープに特異的である。いくつかの実施形態では、scFvはヒト化されている。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体の細胞外ドメインは自己抗原を含み(Payneら(2016)Science、Vol.353(6295):179-184参照)、これはBリンパ球上の自己抗原特異的B細胞受容体によって認識され、従って、抗体を介した自己免疫疾患において自己反応性Bリンパ球を特異的に標的とし、殺すようにT細胞に指示する。そのようなCARはキメラ自己抗体受容体(CAAR)と呼ぶことができ、そのようなCAARへの本明細書に記載の1以上の共刺激ドメインの組み入れは本開示に包含される。
【0097】
細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞外ドメインの結合に続いて活性化シグナルを細胞に伝達する細胞質ドメインである。細胞内シグナル伝達ドメインは、当技術分野において公知の目的の任意の細胞内シグナル伝達ドメインであり得る。そのような細胞質シグナル伝達ドメインは、限定されないが、CD3ζを含み得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、細胞内ドメインはまた、細胞外ドメインの結合後に細胞増殖、細胞生存、及び/又はサイトカイン分泌を促進する共刺激シグナルを伝達する、本明細
書に記載のもの等の1以上の細胞内共刺激ドメインを含む。そのような細胞内共刺激ドメインは、限定されないが、本明細書に開示される任意の共刺激ドメイン又は当技術分野において公知のドメイン、例えば、CD28ドメイン、4-1BBドメイン、OX-40ドメイン、ICOSドメイン、又はCD27ドメイン等を含み得る。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、ヒンジ又は接合配列を介して細胞外リガンド結合ドメインに結合している膜貫通ドメインを含む追加の構造要素を更に含む。
【0099】
本明細書で使用される場合、「誘導性調節構築物」とは、細胞増殖、細胞生存、及び/又はサイトカイン分泌を促進するための誘導性共刺激シグナルを提供する、細胞内で発現される膜貫通又は細胞内構築物を指す。そのような構築物は、活性化の際に共刺激シグナルを提供する、本明細書に記載されるもの及び/又は当該分野で公知の他のもの等の1以上の共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナルは、例えば、2つの誘導性調節構築物ポリペプチドのホモ二量体化によって誘導される。誘導性調節構築物は、一般に、小分子、抗体、又は2つの構築物ポリペプチドのホモ二量体化を可能にする他の分子の結合後にホモ二量体化を可能にする結合ドメインを含む。
【0100】
本明細書で使用される場合、「共刺激シグナル」とは、インビトロ及び/又はインビボで細胞増殖、細胞集団の拡大を促進し、細胞生存を促進し、サイトカインの分泌を調節(例えば上方制御又は下方制御)し、及び/又は他の免疫調節分子の産生及び/又は分泌を調節する、共刺激ドメインによって誘導される細胞内シグナルを指す。いくつかの実施形態では、共刺激シグナルは、2つの共刺激ドメインポリペプチドのホモ二量体化に続いて誘導される。いくつかの実施形態では、共刺激シグナルは、共刺激ドメインを含む構築物(例えば、キメラ抗原受容体又は誘導性調節構築物)の活性化後に誘導される。
【0101】
本明細書で使用される場合、用語「活性化」とは、検出可能なエフェクター機能を誘導するために十分に刺激された細胞(例えば、T細胞)の状態を指す。いくつかの実施形態では、活性化は、誘導されたサイトカイン産生及び/又は誘導された細胞の増殖及び拡大と関連している。
【0102】
本明細書で使用される場合、用語「抗腫瘍活性」又は「抗腫瘍効果」とは、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の延長、又はがん性状態に関連する様々な生理学的症状の改善によって明示され得る生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」はまた、第一に腫瘍の発生の予防における本開示の遺伝子改変細胞の能力によって明らかにされ得る。
【0103】
本明細書で使用される場合、タンパク質に関して、用語「操作された」又は「組換え」は、タンパク質をコードする核酸、及びタンパク質を発現する細胞又は生物への遺伝子工学技術の適用の結果として変化したアミノ酸配列を有することを意味する。核酸に関して、用語「操作された」又は「組換え」は、遺伝子工学的技術の適用の結果として変化した核酸配列を有することを意味する。遺伝子工学技術には、PCR及びDNAクローニング技術、トランスフェクション、形質転換及び他の遺伝子移入技術、相同組換え、部位特異的変異誘発、並びに遺伝子融合が含まれるがこれらに限定されない。この定義によれば、天然に存在するタンパク質と同一のアミノ酸配列を有するが、異種宿主におけるクローニング及び発現によって産生されるタンパク質は、組換え体とは見なされない。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「野生型」とは、所与の表現型に関与する最も一般的な天然に存在するポリヌクレオチド又はポリペプチド配列を指す。野生型の対立遺伝子又はポリペプチドは生物に正常な表現型を付与することができるが、変種又は変異体の対立遺伝子又はポリペプチドは場合によっては変化した表現型を付与することができる。
【0105】
組換えタンパク質に関して本明細書で使用される場合、用語「改変」は、参照配列(例えば、野生型又は天然の配列)に対する組換え配列中のアミノ酸残基の任意の挿入、欠失、又は置換を意味する。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「相同組換え」又は「HR」は、ドナー鋳型として相同DNA配列を使用して二本鎖DNA切断が修復される天然の細胞プロセスを指す(例えば、Cahillら(2006)、Front.Biosci.11:1958-1976参照)。相同DNA配列は、細胞に送達された内因性染色体又はエピソーム配列又は外因性核酸であり得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、用語「非相同末端結合」又は「NHEJ」は、二本鎖DNA切断が2つの非相同DNAセグメントの直接結合によって修復される天然の細胞プロセスを指す(例えば、Cahillら(2006)、Front.Biosci 11:1958-1976参照)。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「減少した」とは、疾患の症状又は重症度の任意の減少、又はがん性細胞の増殖又は数の任意の減少を指す。いずれの場合も、そのような減少は、最大5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は最大100%であり得る。従って、用語「減少した」は、病状の部分的減少及び完全な減少の両方を包含する。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「増加する」とは、本明細書に開示の共刺激ドメイン、又はその活性断片若しくは変異体を含むように遺伝子改変された細胞の活性化、増殖、又はサイトカインシグナル伝達の任意の増加を指す。そのような増加は、最大5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は最大100%以上であり得る。細胞の活性化、増殖、又はサイトカインシグナル伝達の増加を測定するために任意の方法を使用することができる。例えば、活性化及び/又はサイトカイン発現の増加は、IFN-γ、IL-2、TNF-α、又は細胞の活性化及び/又は増殖における変化を決定するために使用され得る任意の他のサイトカインのいずれか1つの発現の増加を包含することができる。いくつかの実施形態では、増殖の増加は細胞数又は細胞分裂の増加を包含し、細胞集団の拡大を含む。
【0110】
アミノ酸配列及び核酸配列の両方に関して本明細書で使用される場合、用語「同一性パーセント」、「配列同一性」、「類似性パーセント」、「配列類似性」等は、整列したアミノ酸残基又はヌクレオチド間の類似性を最大にし、且つ同一又は類似の残基又はヌクレオチドの数、全残基又はヌクレオチドの数、並びに配列アラインメントにおけるギャップの存在及び長さの関数である配列アラインメントに基づく、2つの配列の類似性の程度の尺度を指す。標準的なパラメータを使用して配列類似性を決定するための様々なアルゴリズム及びコンピュータプログラムが利用可能である。本明細書で使用される場合、配列類似性は、アミノ酸配列についてのBLASTpプログラム及び核酸配列についてのBLASTnプログラムを使用して測定され、これらは両方とも国立バイオテクノロジー情報センター(www.ncbi.nlm.nih.gov)を通して入手可能であり、例えば、Altschulら(1990)、J.Mol.Biol.215:403~410;Gish and States(1993)、Nature Genet.3:266-272;Maddenら(1996)、Meth.Enzymol.266:131~141;Altschulら(1997)、Nucleic Acids Res.25:33 89-3402);Zhangら(2000)、J.Comput.Biol7(1-2):203-14に記載されている。本明細書で使用される場合、2つのアミノ酸配列の類似性パーセントは、BLASTpアルゴリズムのパラメータ、即ち語長=3、ギャップオープニングペナルティ=-11、ギャップエクステンションペナルティ=-1
、スコアリングマトリックス=BLOSUM62に基づくスコアである。本明細書で使用される場合、2つの核酸配列の類似性パーセントは、BLASTnアルゴリズムのパラメータ、即ち語長=11、ギャップオープニングペナルティ=-5、ギャップエクステンションペナルティ=-2、マッチリワード=1、ミスマッチペナルティ=-3に基づくスコアである。
【0111】
2つのタンパク質又はアミノ酸配列の修飾に関して本明細書で使用される場合、用語「対応する」は、第1のタンパク質における特定の修飾が第2のタンパク質における修飾におけるのと同じアミノ酸残基の置換であることを示し、また2つのタンパク質が(例えば、BLASTpプログラムを使用して)標準的な配列アラインメントを受けた場合に、第1のタンパク質中の修飾のアミノ酸位置が、第2のタンパク質中の修飾のアミノ酸位置に対応するか又は整列することを示すために使用される。従って、配列のアラインメントにおいて残基X及びYが互いに対応する場合、XとYは異なる数であるかもしれないという事実にもかかわらず、第1のタンパク質におけるアミノ酸「A」への残基「X」の修飾は、第2のタンパク質におけるアミノ酸「A」への残基「Y」の修飾に対応する。
【0112】
用語「組換えDNA構築物」、「組換え構築物」、「発現カセット」、「発現構築物」、「キメラ構築物」、「構築物」、及び「組換えDNA断片」は、本明細書では互換的に用いられ、直鎖状又は環状核酸分子である。組換え構築物は、制限なく調節及びコード配列を含む核酸分子の人工の又は天然に存在しない組み合わせを含む。組換え構築物は全体として天然には存在しないが、構築物の一部は天然に見出され得る。例えば、組換えDNA構築物は、異なる供給源に由来する調節配列及びコード配列、又は同じ供給源に由来し天然に見出されるものとは異なる様式で配置された調節配列及びコード配列を含み得る。そのような構築物はそれ自体で使用されてもよく、又はベクターと共に使用されてもよい。
【0113】
本明細書で使用される場合、「ベクター」又は「組換えDNAベクター」は、所与の宿主細胞においてポリペプチドコード配列の転写及び翻訳が可能である複製系及び配列を含む構築物であり得る。ベクターが使用される場合、ベクターの選択は、当業者に周知のように宿主細胞を形質転換するために使用されるであろう方法に依存する。ベクターは、プラスミドベクター及び組換えレンチウイルス若しくは組換えAAVベクター、又は本開示の共刺激ドメインをコードする遺伝子を標的細胞に送達するのに適した当該分野で公知の任意の他のベクターを含み得るが、これらに限定されない。当業者は、本開示の任意の単離されたヌクレオチド又は核酸配列を含む宿主細胞を首尾よく形質転換、選択、及び増殖させるためにベクター上に存在しなければならない遺伝要素をよく知っている。
【0114】
本明細書で使用される場合、「ベクター」はまたウイルスベクターを指すことができる。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を含み得るが、これらに限定されない。
【0115】
本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結された」は、2つ以上の要素間の機能的連結を意味することを意図する。例えば、本明細書に開示されるようなヌクレアーゼをコードする核酸配列と調節配列(例えば、プロモータ)との間の作動可能な連結は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列の発現を可能にする機能的連結である。作動可能に連結された要素は、連続的又は非連続的であり得る。2つのタンパク質コード領域の結合を指すために使用される場合、作動可能に連結されているとは、コード領域が同じ読み枠内にあることを意図する。
【0116】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は
「形質導入された」又は「ヌクレオフェクトされた」とは、外因性核酸が宿主細胞に移入又は導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換、又は形質導入されたものである。細胞は、初代対象細胞及びその子孫を含む。
【0117】
本明細書で使用される場合、「ヒトT細胞」又は「T細胞」とは、ヒトドナーから単離されたT細胞を指す。ヒトT細胞、及びそれに由来する細胞には、培養で継代されていない単離されたT細胞、不死化せずに細胞培養条件下で継代され維持されたT細胞、及び不死化され無期限に細胞培養下で維持することができるT細胞が含まれる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「ヒトナチュラルキラー細胞」又は「ヒトNK細胞」又は「ナチュラルキラー細胞」又は「NK細胞」とは、先天性免疫系にとって重要な細胞傷害性リンパ球の一種を指す。NK細胞が果たす役割は、脊椎動物の適応免疫応答における細胞傷害性T細胞の役割と類似している。NK細胞は、ウイルス感染細胞に対して迅速な反応を示し、腫瘍形成に反応し、感染後約3日で作用する。ヒトNK細胞、及びそれに由来する細胞には、培養で継代されていない単離されたNK細胞、不死化せずに細胞培養条件下で継代され維持されたNK細胞、及び不死化され無期限に細胞培養下で維持することができるNK細胞が含まれる。
【0119】
本明細書で使用される場合、「対照」又は「対照細胞」とは、遺伝子改変細胞の遺伝子型又は表現型の変化を測定するための基準点を提供する細胞を指す。対照細胞は、例えば、(a)野生型細胞、即ち、遺伝子改変細胞をもたらした遺伝子変異のための出発材料と同じ遺伝子型の細胞、(b)遺伝子改変細胞と同じ遺伝子型であるが、ヌル構築物(即ち、対象となる形質に既知の効果を及ぼさない構築物)で形質転換されている細胞、あるいは(c)遺伝子改変細胞と遺伝的に同一であるが、変化した遺伝子型又は表現型の発現を誘導するであろう条件、刺激、又は更なる遺伝子改変に曝されない細胞を含み得る。
【0120】
用語「有効量」又は「治療有効量」は、有益な又は望ましい生物学的及び/又は臨床的結果をもたらすのに十分な量を指す。量は、治療用(例えば、遺伝子改変細胞、CAR-T細胞、CAR-NK細胞)製剤又は組成物、疾患及びその重症度、並びに治療される対象の年齢、体重、体調、及び応答性に応じて変わるであろう。特定の実施形態では、本明細書に開示の共刺激ドメイン又は本明細書に開示の医薬組成物を含む細胞の有効量は、少なくとも1つの症状又は疾患の進行を軽減する。
【0121】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」又は「治療」は、対象が経験する疾患又は障害の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度又は重症度を軽減することを意味する。
【0122】
本明細書で使用される場合、用語「がん」は、異常な細胞成長を特徴とする(浸潤性又は転移性か否かを問わず)あらゆる新生物性疾患を包含するものと理解されるべきである。侵襲性又は転移性のがんは、体の他の部分に広がる可能性がある。制御されていない細胞分裂を伴うがんは、悪性腫瘍又は腫瘍を引き起こす可能性があるが、ゆっくり分裂する細胞を有するがんは、良性腫瘍又は腫瘍を引き起こす可能性がある。
【0123】
本明細書で使用される場合、用語「癌腫」は、上皮細胞で構成される悪性腫瘍を指す。
【0124】
本明細書で使用される場合、用語「白血病」とは、造血器官/造血系の悪性腫瘍を指し、一般に、血液及び骨髄における白血球並びにそれらの前駆体の異常な増殖及び発達を特徴とする。
【0125】
本明細書で使用される場合、用語「肉腫」とは、胚結合組織のような物質から構成され
、一般に、原線維物質、不均一物質、又は均一物質に埋め込まれた密集した細胞で構成される腫瘍を指す。
【0126】
本明細書で使用される場合、用語「黒色腫」は、皮膚及び他の器官のメラニン細胞系から生じる腫瘍を指す。
【0127】
本明細書で使用される場合、用語「リンパ腫」とは、リンパ球から発生する一群の血球腫瘍を指す。
【0128】
本明細書で使用される場合、用語「芽細胞腫」は、前駆細胞又は芽細胞(未成熟組織又は胚組織)の悪性腫瘍によって引き起こされる癌の一種を指す。
【0129】
本明細書で使用される場合、用語「メガヌクレアーゼ」とは、12塩基対よりも大きい認識配列で二本鎖DNAに結合するエンドヌクレアーゼを指す。いくつかの実施形態では、本開示のメガヌクレアーゼの認識配列は22塩基対である。メガヌクレアーゼは、I-CreIに由来するエンドヌクレアーゼであり得、例えばDNA結合特異性、DNA切断活性、DNA結合親和性、又は二量体化特性に関して、天然のI-CreIに対して改変されているI-CreIの操作された変異体を指すことができる。そのような改変されたI-CreIの変異体を作製する方法は、当技術分野において公知である(例えば、国際公開第2007/047859号)。本明細書で使用されるメガヌクレアーゼは、ヘテロ二量体として二本鎖DNAに結合する。メガヌクレアーゼはまた、一対のDNA結合ドメインがペプチドリンカーを用いて単一のポリペプチドに結合されている「一本鎖メガヌクレアーゼ」であり得る。用語「ホーミングエンドヌクレアーゼ」は、用語「メガヌクレアーゼ」と同義である。本開示のメガヌクレアーゼは、細胞、特にヒトT細胞において発現された場合に実質的に無毒であり、そのため本明細書に記載の方法を使用して測定した場合に細胞生存率に対する有害な影響又はメガヌクレアーゼ切断活性の有意な減少を観察することなく細胞にトランスフェクトして37℃で維持することができる。
【0130】
本明細書で使用される場合、用語「単鎖メガヌクレアーゼ」は、リンカーによって結合された一対のヌクレアーゼサブユニットを含むポリペプチドを指す。一本鎖メガヌクレアーゼはN末端サブユニット-リンカー-C末端サブユニットの構成を有する。2つのメガヌクレアーゼサブユニットは一般にアミノ酸配列において同一ではなく、同一でないDNA配列を認識するであろう。従って、一本鎖メガヌクレアーゼは、典型的には、擬似パリンドローム認識配列又は非パリンドローム認識配列を切断する。一本鎖メガヌクレアーゼは、実際には二量体ではないが、「一本鎖ヘテロ二量体」又は「一本鎖ヘテロ二量体メガヌクレアーゼ」と呼ばれることがある。明確にするために、特に明記しない限り、用語「メガヌクレアーゼ」は、二量体又は単鎖メガヌクレアーゼを指すことができる。
【0131】
本明細書で使用される場合、用語「リンカー」とは、2つのメガヌクレアーゼサブユニットを単一のポリペプチドに結合させるために使用される外因性ペプチド配列を指す。リンカーは、天然タンパク質に見出される配列を有してもよく、又はいかなる天然タンパク質にも見出されない人工的な配列であってもよい。リンカーは柔軟で二次構造を欠いていてもよく、又は生理学的条件下で特定の3次元構造を形成する傾向を有してもよい。リンカーは、米国特許第8,445,251号及び第9,434,931号に包含されるもののいずれかを含むが、これらに限定されない。
【0132】
本明細書で使用される場合、用語「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」又は「ZFN」とは、制限エンドヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、S1ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、膵臓DNアーゼI、ミクロコッカスヌクレアーゼ、及び酵母HOエンドヌクレアーゼを含むがこれらに限定されない、エンドヌクレアーゼ又はエキソヌク
レアーゼからのヌクレアーゼドメインに融合したジンクフィンガーDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質を指す。ジンクフィンガーヌクレアーゼの設計に有用なヌクレアーゼドメインには、FokI、FoM、StsI制限酵素を含むがこれらに限定されない、IIs型制限エンドヌクレアーゼ由来のものが含まれる。追加のIIs型制限エンドヌクレアーゼは、国際公開第2007/014275号に記載されており、これはその全体が参照により組み入れられる。ジンクフィンガードメインの構造は、亜鉛イオンの配位によって安定化される。1以上のジンクフィンガードメインを含むDNA結合タンパク質は、配列特異的にDNAと結合する。ジンクフィンガードメインは、天然配列であり得るか、又は約18塩基対の長さの所定のDNA配列に結合するタンパク質を産生するために合理的又は実験的手段を通して再設計され得る。例えば、米国特許第5,789,538号、第5,925,523号、第6,007,988号、第6,013,453号、第6,200,759号、及び国際公開第95/19431号、国際公開第96/06166号、国際公開第98/53057号、国際公開第98/54311号、国際公開第00/27878号、国際公開第01/60970号、国際公開第01/88197号、及び国際公開第02/099084号(これらは各々その全体が参考として組み入れられる)を参照されたい。この操作されたタンパク質ドメインをFokIヌクレアーゼ等のヌクレアーゼドメインに融合することによって、ゲノムレベルの特異性でDNA切断を標的化することが可能である。標的部位の選択、ジンクフィンガータンパク質、及びジンクフィンガーヌクレアーゼの設計及び構築のための方法は当業者に公知であり、米国特許出願公開第20030232410号、第20050208489号、第2005064474号、第20050026157号、第20060188987号、及び国際公開第07/014275号に詳細に記載されており、これらは各々その全体が参照により組み入れられる。
【0133】
本明細書で使用される場合、用語「TALEN」とは、制限エンドヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、S1ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、膵臓DNアーゼI、ミクロコッカスヌクレアーゼ、及び酵母HOエンドヌクレアーゼを含むがこれらに限定されない、エンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼからのヌクレアーゼドメイン又はその活性部分に融合した複数のTALドメイン反復を含むDNA結合ドメインを含むエンドヌクレアーゼを指す。例えば、その全体が参考として組み入れられる、Christianら(2010)Genetics186:757-761を参照されたい。TALENの設計に有用なヌクレアーゼドメインには、FokI、FoM、StsI、HhaI、HindIII、Nod、BbvCI、EcoRI、BglI、及びAlwIを含むがこれらに限定されない、IIs型制限エンドヌクレアーゼ由来のものが含まれるがこれらに限定されない。更なるIIs型制限エンドヌクレアーゼは国際公開第2007/014275号に記載されている。いくつかの実施形態では、TALENのヌクレアーゼドメインは、FokIヌクレアーゼドメイン又はその活性部分である。TALドメイン反復は、キサントモナス属の植物病原体による感染過程で使用されるタンパク質のTALE(転写活性化剤様エフェクター)ファミリーに由来し得る。TALドメイン反復は、異なる12位及び13位のアミノ酸を有する33~34アミノ酸配列である。反復可変ジペプチド(RVD)と呼ばれるこれらの2つの位置は高度に可変的であり、特異的ヌクレオチド認識と強い相関を示す。DNA標的配列中の各塩基対は単一のTAL反復により接触し、その特異性はRVDから生じる。いくつかの実施形態では、TALENは16~22個のTALドメイン反復を含む。TALENによるDNA切断は、非特異的中央領域に隣接する2つのDNA認識領域(即ち「スペーサ」)を必要とする。TALENに関して用語「スペーサ」は、TALENを構成する各モノマーによって認識され結合される2つの核酸配列を分離する核酸配列を指す。TALドメイン反復は、天然に存在するTALEタンパク質由来の天然配列であり得るか、又は所定のDNA配列に結合するタンパク質を産生するために合理的又は実験的手段を通して再設計され得る(例えば、Bochら(2009)Science326(5959):1509-1512及びMoscou及びBogdanove(2009)Science326(5959):1501(各々その全体
が参考として組み入れられる)を参照)。RVD及びそれらの対応する標的ヌクレオチドの特定の配列及び例を認識するためにTALENを操作するための方法については、米国特許出願公開第20110145940号及び国際公開第2010/079430号も参照されたい。いくつかの実施形態では、各ヌクレアーゼ(例えば、FokI)モノマーは、異なるDNA配列を認識するTALエフェクター配列に融合することができ、2つの認識部位がごく接近している場合にのみ、不活性モノマーが一緒になって機能的酵素を作り出す。
【0134】
本明細書で使用される場合、用語「コンパクトTALEN」は、I-TevIホーミングエンドヌクレアーゼ又は米国特許出願第20130117869号(その全体が参考として組み入れられる)の表2に挙げられているいずれかのエンドヌクレアーゼの任意の部分に任意の方向で融合された1以上のTALドメイン反復を有するDNA結合ドメインを含むエンドヌクレアーゼを指し、MmeI、EndA、End1、I-BasI、I-TevII、I-TevIII、I-TwoI、MspI、MvaI、NucA、及びNucMを含むがこれらに限定されない。コンパクトTALENは、DNAプロセシング活性のために二量体化を必要とせず、介在するDNAスペーサを有する二重標的部位の必要性を軽減する。いくつかの実施形態では、コンパクトTALENは16~22個のTALドメイン反復を含む。
【0135】
本明細書で使用される場合、用語「CRISPR」は、Cas9等のカスパーゼ、及びゲノムDNA内の認識部位にハイブリダイズすることによってカスパーゼのDNA切断を指示するガイドRNAを含むカスパーゼベースのエンドヌクレアーゼを指す。CRISPRのカスパーゼ成分はRNA誘導DNAエンドヌクレアーゼである。特定の実施形態では、カスパーゼはクラスII Cas酵素である。これらの実施形態のいくつかにおいて、カスパーゼはクラスII、タイプII酵素、例えばCas9である。他の実施形態では、カスパーゼは、クラスII、タイプV酵素、例えばCpf1である。ガイドRNAは、標的認識部位に相補的である直接反復及びガイド配列(内因性CRISPRシステムの文脈ではしばしばスペーサと呼ばれる)を含む。特定の実施形態において、CRISPRは、ガイドRNA上に存在する直接反復配列(時にはtracr-mate配列と呼ばれる)に対して(完全に又は部分的に)相補的なtracrRNA(トランス活性化CRISPR RNA)を更に含む。特定の実施形態では、カスパーゼは、ニッカーゼとして機能し標的DNAの一本鎖のみを切断する標的ポリヌクレオチドの一本鎖を切断する能力を酵素が欠くように、対応する野生型酵素に関して変異させることができる。ニッカーゼとして機能するカスパーゼ酵素の非限定的な例には、RuvCl触媒ドメイン内にD10A突然変異を有するか、又はH840A、N854A、若しくはN863A突然変異を有するCas9酵素が含まれる。
【0136】
本明細書で使用される場合、用語「megaTAL」は、操作された配列特異的ホーミングエンドヌクレアーゼと共に転写活性化剤様エフェクター(TALE)DNA結合ドメインを含む一本鎖ヌクレアーゼを指す。
【0137】
本明細書で使用される場合、用語「認識配列」とは、エンドヌクレアーゼによって結合及び切断されるDNA配列を指す。メガヌクレアーゼの場合、認識配列は、4塩基対によって分離されている一対の反転した9塩基対の「半部位」を含む。一本鎖メガヌクレアーゼの場合、タンパク質のN末端ドメインは第1の半部位と接触し、タンパク質のC末端ドメインは第2の半部位と接触する。メガヌクレアーゼによる切断は、4つの塩基対3’「オーバーハング」を生じる。「オーバーハング」又は「粘着末端」は、二本鎖DNA配列のエンドヌクレアーゼ切断によって作製することができる短い一本鎖DNAセグメントである。I-CreI由来のメガヌクレアーゼ及び単鎖メガヌクレアーゼの場合、オーバーハングは22塩基対認識配列の10~13塩基を含む。コンパクトTALENの場合、認
識配列は、I-TevIドメインによって認識される第1のCNNNGN配列、それに続く長さが4~16塩基対の非特異的スペーサ、及びそれに続く、TAL-エフェクタードメインによって認識される(この配列は典型的には5’T塩基を有する)長さが16~22bpの第2の配列を含むことができる。コンパクトTALENによる切断は、2つの塩基対3’オーバーハングを生じる。CRISPRの場合、認識配列は、ガイドRNAが直接Cas9切断に結合する配列、典型的には16~24塩基対である。ガイド配列と認識配列との間の完全な相補性は、切断をもたらすために必ずしも必要ではない。CRISPRによる切断は、カスパーゼに応じて、平滑末端(クラスII、タイプIIカスパーゼによる等)又は突出末端(クラスII、タイプVカスパーゼによる等)を生じ得る。CpfIカスパーゼを利用する実施形態において、CpfIカスパーゼを含むCRISPR複合体による切断は、5’オーバーハングをもたらし、特定の実施形態では5ヌクレオチドの5’オーバーハングをもたらす。各カスパーゼ酵素はまた、ガイドRNAに相補的な認識配列に近いPAM(プロトスペーサ隣接モチーフ)配列の認識を必要とする。正確な配列、PAMに必要な長さ、及び標的配列からの距離はカスパーゼ酵素によって異なるが、PAMは典型的には標的/認識配列に隣接する2~5塩基対の配列である。特定のカスパーゼ酵素のPAM配列は当技術分野において公知であり(例えば、各々参照によりその全体が組み入れられる、米国特許第8,697,359号及び米国特許出願公開第20160208243号を参照)、新規又は操作されたカスパーゼ酵素のPAM配列は、PAM枯渇アッセイ(例えば、その全体が本明細書に組み入れられる、Karvelisら(2017)Methods121-122:3-8を参照)等の当技術分野において公知の方法を用いて同定することができる。
【0138】
本明細書で使用される場合、用語「標的部位」又は「標的配列」とは、ヌクレアーゼの認識配列を含む細胞の染色体DNAの領域を指す。
【0139】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞受容体アルファ遺伝子」又は「TCRアルファ遺伝子」は交換可能であり、T細胞受容体αサブユニットをコードするT細胞中の遺伝子座を指す。T細胞受容体アルファは、再構成の前又は後に、NCBI遺伝子ID番号6955を指すことができる。再構成後、T細胞受容体アルファ遺伝子は、内因性プロモータ、再構成されたV及びJセグメント、内因性スプライス供与部位、イントロン、内因性スプライス受容部位、並びにサブユニットコーディングエクソンを含むT細胞受容体アルファ定常領域遺伝子座を含む。
【0140】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞受容体アルファ定常領域遺伝子」とは、T細胞受容体アルファ遺伝子のコード配列を指す。T細胞受容体アルファ定常領域遺伝子には、NCBI 遺伝子ID番号28755によって同定される野生型配列及びその機能的変異体が含まれる。
【0141】
本明細書で使用される場合、変数についての数値範囲の列挙は、本開示がその範囲内の値のうちのいずれかに等しい変数で実施され得ることを伝えることを意図している。従って、本質的に離散的な変数については、その変数は、その範囲の端点を含む、数値範囲内の任意の整数値に等しくなり得る。同様に、本質的に連続的な変数については、その変数は、その範囲の端点を含む、その数値範囲内の任意の実数値に等しくなり得る。限定ではなく例として、0から2の間の値を有すると記載された変数は、その変数が本質的に離散的である場合には0、1、又は2の値を取り得、その変数が本質的に連続的である場合には0.0、0.1、0.01、0.001の値又は0以上2以下の任意の他の実数値を取り得る。
【0142】
2.1 発明の原理
本開示は、部分的には、操作された共刺激ドメインが従来の共刺激ドメインと比較して
同等又は優れた活性を示すことができるという発見に基づいている。特定の例において、本明細書に開示の共刺激ドメインは、抗原誘導活性化後の細胞増殖及び/又はサイトカイン分泌に関して同等又は優れた共刺激活性を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される共刺激ドメインのうちの1つをコードする核酸配列を含む核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、例えばキメラ抗原受容体又は誘導性調節構築物等の構築物の一部として遺伝子改変細胞中で発現される。従って、本明細書に開示の新規共刺激ドメインを含む細胞及び新規共刺激ドメインを含む細胞を作成する方法が提供される。更に本明細書では、疾患の症状又は重症度を軽減するために本明細書に開示の共刺激ドメインを含む遺伝子改変細胞を投与する方法が開示される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の共刺激ドメインを含む遺伝子改変細胞の投与は、がん、自己免疫障害、及び本開示の遺伝子改変細胞によって標的とされ得る他の状態等の疾患の症状又は重症度を軽減する。本明細書では、本明細書に開示の遺伝子改変細胞と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象においてがんを治療するための免疫療法の方法も開示される。
【0143】
2.2 共刺激ドメインをコードする核酸分子
本明細書では、新規共刺激ドメインをコードする核酸分子、及び共刺激活性を有するその変異体(即ち、活性変異体)が提供される。個々のドメインの共刺激活性は、免疫細胞等の細胞の活性化、増殖、及びサイトカイン分泌を測定する当技術分野において公知の任意の方法を使用して決定することができる。そのような方法の一例は、Linsleyら、Journal of Experimental Medicine176(1992)、1595-604に開示されているものである。更なる例には、細胞増殖及びサイトカイン分泌を測定するための本明細書に記載の方法が含まれる。
【0144】
従って、配列番号5~8に記載の共刺激ドメインをコードする核酸配列を含む核酸分子及びその活性変異体が提供される。具体的には、配列番号1に記載の核酸配列は、本明細書で新規1ドメインと呼ぶ配列番号5の共刺激ドメインをコードする。配列番号2に記載の核酸配列は、本明細書で新規3ドメインと呼ぶ配列番号6の共刺激ドメインをコードする。配列番号3に記載の核酸配列は、本明細書で新規5ドメインと呼ぶ配列番号7の共刺激ドメインをコードする。配列番号4に記載の核酸配列は、本明細書で新規6ドメインと呼ぶ配列番号8の共刺激ドメインをコードする。
【0145】
本明細書には、本明細書に開示の共刺激ドメインをコードする核酸配列の活性変異体も提供され、変異体核酸配列は共刺激活性を有するドメインをコードする。共刺激活性を保持する、本明細書に開示の共刺激ドメインの変異体が更に提供される。本明細書で使用される場合、「変異体」は実質的に類似の配列を意味することを意図している。「変異体」ポリペプチドは、天然タンパク質の1以上の内部部位における1以上のアミノ酸の欠失及び/又は付加によって、及び/又は天然ポリペプチドの1以上の部位における1以上のアミノ酸の置換によって、「天然」ポリペプチドから誘導されるポリペプチドを意味することを意図する。同様に、「変異体」ポリヌクレオチドは、天然ヌクレオチド配列中の1以上の部位における1以上の核酸の欠失及び/又は付加によって「天然」ポリヌクレオチドから誘導されるポリヌクレオチドである。本明細書で使用される場合、「天然」ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、変異体が由来する親配列を含む。特定の実施形態では、共刺激ドメインをコードする変異体ポリヌクレオチドの親核酸配列は配列番号1~4を含む。同様に、いくつかの実施形態では、新規共刺激ドメインをコードする変異体ポリペプチドの親ポリペプチド配列は配列番号5~8を含む。
【0146】
実施形態に包含される変異体ポリペプチドは生物学的に活性である。即ち、それらは天然タンパク質の所望の生物学的活性、即ち、共刺激活性を保有し続けている。そのような変異体は、例えば、ヒトによる操作から生じ得る。実施形態の天然共刺激ドメインの生物
学的に活性な変異体(例えば、配列番号5~8)、又は本明細書に開示の共刺激ドメインをコードする天然核酸配列の変異体(例えば、配列番号1~4)は、本明細書の他の箇所に記載されている配列アラインメントプログラム及びパラメータにより決定されるように、天然ポリペプチドのアミノ酸配列又は天然ポリヌクレオチドの核酸配列に対して少なくとも約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を有するであろう。実施形態の共刺激ドメインの生物学的に活性な変異体は、そのような共刺激ドメインと、わずか約1~20個のアミノ酸残基、わずか約1~10個、わずか約1~5個、わずか約4個、わずか3個、2個、又は更には1個のアミノ酸残基で異なり得る。
【0147】
実施形態のポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、切断、及び挿入を含む様々な方法で変化させることができる。そのような操作の方法は当該分野で一般的に知られている。例えば、アミノ酸配列変異体は、DNA中の突然変異によって調製することができる。突然変異誘発及びポリヌクレオチド改変の方法は当技術分野において周知である。例えば、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:488-492;Kunkelら(1987)Methods in Enzymol.154:367-382;米国特許第4,873,192号;Walker及びGaastra編(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company、ニューヨーク州)及びそこに引用されている参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関する指針は、Dayhoffら(1978)Atlas
of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found、Washington、D.C.)のモデルに見出すことができ、これは参照により本明細書に組み入れられる。アミノ酸を類似の特性を有するものと交換する等の保存的置換が最適であり得る。
【0148】
文脈に応じて、「断片」とは、ポリペプチド若しくはタンパク質のアミノ酸配列の一部、又はポリペプチド若しくはタンパク質のアミノ酸配列の一部をコードするポリヌクレオチドを指す。断片は元のタンパク質の活性を保持することができ、従って、そのような「活性」断片は、例えば、共刺激活性を保持する配列番号5~8のいずれか1つの断片等の共刺激ドメインの断片を含む。配列番号1~4のいずれか1つの断片等の共刺激ドメインをコードするヌクレオチド配列の断片は、生物学的に活性なタンパク質断片をコードし得る。生物学的に活性なヌクレオチド断片は、共刺激ドメインをコードする核酸配列の一部を単離し、共刺激ドメインのコードされた部分を発現させ、共刺激ドメインのコードされた部分の活性を評価することによって調製できる。共刺激ドメインの断片は、配列番号5~8の断片を含む。共刺激ドメインの断片は、少なくとも約15、20、30、35、36、37、38、39、40、41、又は42のアミノ酸を含む。
【0149】
特定の実施形態において、本明細書に開示される共刺激ドメインの変異体又は断片は、本明細書においてTRAFモチーフと呼ぶ少なくとも1つのTNFR関連因子(TRAF)結合モチーフを含む。本明細書に提供されるTRAFモチーフの例には、QMED(配列番号9)、QEED(配列番号10)、及びEEEG(配列番号11)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に開示の共刺激ドメインの活性変異体又は断片は、配列番号9及び11又は配列番号10及び11を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、共刺激ドメイン又はその変異体若しくは断片は、スペーサ領域によって分離された2つのTRAFモチーフを含む。本明細書で使用される場合、用語「スペーサ領域」とは、共刺激ドメインの2つの予測TRAFモチーフの間の領域を指す。特定の実施形態では、スペーサ領域は、アミノ酸配列ASSCRCPQ(配列番号12
)、ASSCRFPE(配列番号13)、ASSCRFPQ(配列番号14)、及びASSCRAPS(配列番号15)のうちの1つを含む。特定の活性変異体共刺激ドメインにおいて、配列番号12のスペーサ領域は、配列番号9と配列番号11のTRAF結合モチーフの間に位置する。他の活性変異体共刺激ドメインにおいて、配列番号13のスペーサ領域は、配列番号10と配列番号11のTRAF結合モチーフの間に位置する。いくつかの活性変異体共刺激ドメインにおいて、配列番号14のスペーサ領域は、配列番号10と配列番号11のTRAF結合モチーフの間に位置する。他の活性変異体共刺激ドメインにおいて、配列番号15のスペーサ領域は、配列番号10と配列番号11のTRAF結合モチーフの間に位置する。あるいは、スペーサ領域は、変異体ドメインの共刺激活性を維持する任意の配列であり得る。
【0151】
特定の実施形態では、発現カセット又は発現構築物は、細胞内で、本明細書に開示の少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体を発現させるために提供される。いくつかの実施形態において、カセットは、新規共刺激ドメイン又はその活性変異体をコードする本明細書に提供される核酸分子に作動可能に連結された5’及び3’調節配列を含む。「作動可能に連結された」とは、2以上の要素間の機能的連結を意味することを意図している。例えば、本明細書に開示の共刺激ドメインをコードする核酸配列と調節配列(例えば、プロモータ)との間の作動可能な連結は、共刺激ドメインをコードする核酸配列の発現を可能にする機能的連結である。作動可能に連結された要素は、連続的又は非連続的であり得る。2つのタンパク質コード領域の結合を指すために使用される場合、作動可能に連結されているとは、コード領域が同じ読み枠内にあることを意図する。
【0152】
いくつかの実施形態では、カセットは更に、細胞に同時形質転換される少なくとも1つのさらなる遺伝子を含む。更なる実施形態では、更なる遺伝子は複数の発現カセット上に提供される。いくつかの実施形態では、そのような発現カセットは、調節領域の転写調節下にあるように組換えポリヌクレオチドを挿入するための複数の制限部位及び/又は組換え部位を備える。いくつかの実施形態では、発現カセットは選択マーカー遺伝子を更に含む。
【0153】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、転写の5’~3’方向に、転写及び翻訳開始領域(即ち、プロモータ)、本明細書で開示されるような共刺激ドメインをコードする核酸配列又はその活性変異体、並びに本開示の遺伝子改変細胞において機能的な転写及び翻訳終止領域(即ち、終止領域)を含む。本明細書で提供される調節領域(即ち、プロモータ、転写調節領域、及び翻訳終止領域)及び/又は核酸分子は、天然であるか、宿主細胞に対して又は互いに類似していてもよい。あるいは、本明細書に提供される調節領域及び/又は核酸分子は、宿主細胞に対して又は互いに異種であってもよい。本明細書で使用される場合、配列に関して「異種」とは、外来種に由来するか、又は同じ種に由来する場合、意図的なヒトの介入によって組成及び/又はゲノム遺伝子座においてその天然型から実質的に改変されている配列である。例えば、異種核酸分子に作動可能に連結されたプロモータは、その核酸分子が由来した種とは異なる種に由来するか、又は同じ/類似の種に由来する場合、一方又は両方がその元の形態及び/又はゲノム遺伝子座から実質的に改変されているか、あるいはそのプロモータは作動可能に連結された核酸分子に対する天然のプロモータではない。あるいは、本明細書に提供される調節領域及び/又は核酸分子は完全に合成的であってもよい。
【0154】
終止領域は、転写開始領域に対して天然であり得るか、作動可能に連結された核酸分子に対して天然であり得るか、細胞宿主に対して天然であり得るか、又はプロモータ、核酸分子、細胞宿主、若しくはそれらの任意の組み合わせに対して別の供給源(即ち外来又は異種)に由来し得る。発現カセットを調製する際に、DNA配列を適切な向きにするために、様々なDNA断片を操作することができる。この目的のために、アダプター又はリン
カーを使用してDNA断片を結合させることができ、あるいは他の操作を用いて都合のよい制限部位、余分なDNAの除去、制限部位の除去等を提供することができる。この目的のために、インビトロでの突然変異誘発、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換、例えば遷移及びトランスバージョンが関与し得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される発現カセットにおいていくつかのプロモータが使用される。適切なプロモータの一例は前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ配列である。このプロモータ配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる強力な構成的プロモータ配列である。適切なプロモータの別の例は、伸長成長因子-1α(EF-1α)である。しかしながら、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモータ、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモータ、MoMuLVプロモータ、トリ白血病ウイルスプロモータ、エプスタインバーウイルス前初期プロモータ、ラウス肉腫ウイルスプロモータ、並びに、例えば、限定されるものではないがアクチンプロモータ、ミオシンプロモータ、ヘモグロビンプロモータ、及びクレアチンキナーゼプロモータ等のヒト遺伝子プロモータを含むがこれらに限定されない、他の構成的プロモータ配列も使用され得る。更に、本開示は構成的プロモータの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモータも本開示の一部として企図される。誘導性プロモータの使用は、作動可能に連結されるポリヌクレオチド配列の発現をそのような発現が望まれるときにオンにすることができる、又は発現が望まれないときに発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモータの例には、メタロチオニンプロモータ、グルココルチコイドプロモータ、プロゲステロンプロモータ、及びテトラサイクリンプロモータが含まれるがこれらに限定されない。合成プロモータ、例えば、JeTプロモータも本開示の一部として企図されている(国際公開第2002/012514号参照)。
【0156】
いくつかの実施形態では、プロモータは所望の結果に基づいて選択される。本明細書に開示されるポリヌクレオチドの発現のタイミング、位置及び/又はレベルを調節するために発現カセット中に異なるプロモータを使用することによって、異なる用途が増強され得ることが認識される。そのような発現構築物はまた、所望であれば、プロモータ調節領域(例えば、誘導的、構成的、環境的に、若しくは発生的に調節される、又は細胞若しくは組織特異的/選択的発現を付与するもの)、転写開始部位、リボソーム結合部位、RNAプロセシングシグナル、転写終止部位、及び/又はポリアデニル化シグナルを含み得る。
【0157】
共刺激ドメイン又は共刺激ドメインを含むCARポリペプチドの発現を評価するために、発現カセットはまた、選択マーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子、又はその両方を含み、ウイルスベクターを介してトランスフェクト又は感染させることを目的とした細胞の集団から発現細胞を同定及び選択することを容易にすることができる。他の態様では、選択マーカーは別のDNA片上に担持され、同時トランスフェクション手順において使用され得る。選択マーカー及びレポーター遺伝子の両方は、宿主細胞における発現を可能にするために適切な調節配列と隣接し得る。有用な選択マーカーには、例えば、抗生物質耐性遺伝子及び蛍光マーカー遺伝子が含まれる。
【0158】
特定の実施形態では、本明細書に開示の少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体を含むCARをコードする核酸分子を含む発現カセットが提供される。本明細書で使用される場合、「CAR発現カセット」とは、CARをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む発現カセットを指す。いくつかの実施形態では、CAR発現カセットは、共刺激ドメインを含まないCARをコードする。CAR発現カセットはまた、本明細書に開示の共刺激ドメインを含むCARをコードし得るか、又は本明細書に開示されない共刺激ドメインを含むCARをコードし得る。例えば、いくつかの実施形態では、発現カセットは、本明細書に開示されるように、細胞外リガンド結合ドメイン及び共刺激ドメインを含
む細胞内刺激ドメイン、又はその活性変異体をコードする1つ以上の配列を含む。特定の実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、例えばB細胞リンパ腫に特異的な抗原等、がん細胞の抗原に特異的である。
【0159】
特定の実施形態では、発現カセットは、抗CD19scFv、新規1共刺激ドメイン(配列番号5)又はその活性変異体、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含むCARをコードする。他の実施形態では、発現カセットは、抗CD19scFv、新規3共刺激ドメイン(配列番号6)又はその活性変異体、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含むCARをコードする。他の実施形態では、発現カセットは、抗CD19scFv、新規5共刺激ドメイン(配列番号7)又はその活性変異体、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含むCARをコードする。他の実施形態では、発現カセットは、抗CD19scFv、新規6共刺激ドメイン(配列番号8)又はその活性変異体、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含むCARをコードする。これらの発現カセットは、任意の適切な疾患特異的抗原又は分子に対する特異性を有するように操作することができると考えられる。
【0160】
他の特定の実施形態では、本明細書に開示の少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体を含む誘導性調節構築物をコードする核酸分子を含む発現カセットが提供される。本明細書で使用される場合、「調節発現カセット」とは、誘導性調節構築物をコードする核酸分子を含む発現カセットを指す。発現カセットは、CAR発現カセット及び調節発現カセットの両方であり得る。いくつかの実施形態では、単一の発現カセットは、配列番号5~8のいずれか1つの共刺激ドメイン又はその活性断片若しくは変異体、及び本明細書に記載の誘導性調節構築物をコードするヌクレオチド配列を含まないCARをコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0161】
例えば、いくつかの実施形態では、発現カセットは、本明細書に開示されるように、結合ドメイン及び少なくとも1つの共刺激ドメイン、又はその活性変異体をコードする配列を含み、小分子、抗体、又は他の分子は結合ドメインに結合して2つの誘導性調節構築物の二量体化を誘導する。いくつかの実施形態では、そのような二量体化は細胞への共刺激シグナルを開始して、増殖、生存、及び/又はサイトカイン分泌を促進する。結合ドメインが小分子に結合することができるいくつかの実施形態では、結合ドメインはFKBP12の類似体(例えば、F36V置換を含む)を含み、小分子はrimiducid(即ち、AP1903)である。CAR-T細胞安全スイッチ等、そのような誘導性調節構築物において有用であることが当技術分野において公知である任意の結合ドメインが本開示において企図される。
【0162】
特定の実施形態では、発現カセットは、結合ドメイン及び新規1共刺激ドメイン(配列番号5)又はその活性変異体を含む誘導性調節構築物をコードする。他の実施形態では、発現カセットは、結合ドメイン及び新規13共刺激ドメイン(配列番号6)又はその活性変異体を含む誘導性調節構築物をコードする。他の実施形態では、発現カセットは、結合ドメイン及び新規5共刺激ドメイン(配列番号7)又はその活性変異体を含む誘導性調節構築物をコードする。他の実施形態では、発現カセットは、結合ドメイン及び新規6共刺激ドメイン(配列番号8)又はその活性変異体を含む誘導性調節構築物をコードする。
【0163】
本明細書には、本開示の新規共刺激ドメインをコードする核酸分子を含むベクターも提供される。いくつかの実施形態では、ベクターは、本明細書に開示されているような新規共刺激ドメイン又は発現カセットをコードする核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の共刺激ドメインをコードする核酸は、いくつかの種類のベクターにクローニングされる。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドを含むがこれらに限定されないベクターにクローニングされる。特に関係のあるベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プ
ローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターを含む。
【0164】
特定の実施形態では、共刺激ドメインをコードする核酸分子は、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター等のウイルスベクター上に提供される。ウイルスベクター技術は当該分野で周知であり、例えばSambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor
Laboratory、ニューヨーク)、並びに他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが含まれるがこれらに限定されない。一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモータ配列、都合のよい制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1又は複数の選択マーカーを含む(例えば、国際公開第01/96584号、国際公開第01/29058号、及び米国特許第6,326,193号)。
【0165】
2.3 キメラ抗原受容体(CAR)と誘導性調節構築物
本明細書では、細胞表面キメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子改変細胞が提供される。一般に、本開示のCARは少なくとも細胞外ドメインと細胞内ドメインとを含むであろう。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、リガンド結合ドメイン又は部分とも呼ばれる標的特異的結合要素を含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメイン、又は細胞質ドメインは、本明細書に開示されているように、少なくとも1つの共刺激ドメイン又はその活性変異体、及び例えばCD3ζ等の1以上のシグナル伝達ドメインを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に開示のCARは、配列番号5~8に提供されるもの等、少なくとも1つの共刺激ドメインを含む細胞内ドメイン、又はその活性変異体を含む。特定の実施形態では、本明細書に開示のCARは、少なくとも2つの共刺激ドメイン(少なくとも1つの共刺激ドメインは配列番号5~8に記載されている)又は本明細書に開示の活性断片若しくは変異体を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、本開示のCARは、リガンド結合ドメイン又は部分とも呼ばれる細胞外の標的特異的結合要素を含む。リガンド結合ドメインの選択は、標的細胞の表面を規定するリガンドの種類及び数に依存する。例えば、リガンド結合ドメインは、特定の病状に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンドを認識するように選択され得る。従って、本開示のCARにおいてリガンド結合ドメインに対するリガンドとして作用し得る細胞表面マーカーの例には、ウイルス感染症、細菌感染症、及び寄生虫感染症、自己免疫疾患、並びにがん細胞に関連するものが含まれ得る。いくつかの実施形態では、本開示のCARは、腫瘍細胞上の抗原に特異的に結合する所望のリガンド結合部分を操作することによって、目的の腫瘍抗原を標的とするように操作される。本開示の文脈において、「腫瘍抗原」は、がん等の特定の過剰増殖性障害に共通の抗原を指す。
【0167】
いくつかの実施形態では、CARの細胞外リガンド結合ドメインは、対象となる任意の腫瘍抗原又はエピトープに対して特異的である。非限定的な例として、いくつかの実施形態では、標的の抗原は、腫瘍関連表面抗原、例えばErbB2(HER2/neu)、癌胎児性抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFR変異体III(EGFRvIII)、CD19、CD20、CD30、CD40、ジシアロガングリオシドGD2、乳管上皮ムチン、gp36、TAG-72、スフィンゴ糖脂質、神経膠腫関連抗原、Bヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、チログロブリン、RAGE-1、MN-CA
IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸管カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGA-la、p53、プロスタイン、PSMA、
生存及びテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGFl)-I、IGF-II、IGFI受容体、メソセリン、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、5T4、ROR1、Nkp30、NKG2D、腫瘍間質抗原、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)及びエクストラドメインB(EDB)、並びにテネイシンCのAlドメイン(TnC Al)及び線維芽細胞関連タンパク質(fap);系統特異的又は組織特異的抗原、例えばCD3、CD4、CD8、CD24、CD25、CD33、CD34、CD133、CD138、CTLA-4、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、エンドグリン、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、BCMA(CD269、TNFRSF17)、CS1、又はHIV特異的抗原(例えばHIV gpl20)等のウイルス特異的表面抗原;EBV特異的抗原、CMV特異的抗原、E6又はE7癌タンパク質等のHPV特異的抗原、Lasseウイルス特異的抗原、インフルエンザウイルス特異的抗原、並びにこれらの表面マーカーの任意の誘導体又は変異体である。本開示の特定の実施形態では、リガンド結合ドメインはCD19に特異的である。
【0168】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体の細胞外ドメインは、Bリンパ球上の自己抗原特異的B細胞によって認識され得る自己抗原を更に含み(Payneら(2016)Science、Vol.353(6295):179-184を参照)、抗体を介した自己免疫疾患において自己反応性Bリンパ球を特異的に標的とし殺すようにT細胞に指示する。そのようなCARはキメラ自己抗体受容体(CAAR)と呼ぶことができ、そのようなCAARへの本明細書に記載の1以上の共刺激ドメインの組み入れは本開示に包含される。
【0169】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のCARは、細胞外リガンド結合ドメイン又は自己抗原と細胞内シグナル伝達ドメイン及び共刺激ドメインとを連結する膜貫通ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはCD8α膜貫通ポリペプチドである。
【0170】
本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが配置されている細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化及び/又は増殖経路並びに細胞生存経路の活性化に関与している。用語「エフェクター機能」は、細胞の特殊化された機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性又はサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。CD3ζ等の細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞外ドメインの結合に応答して細胞に活性化シグナルを提供することができる。論じたように、活性化シグナルは、例えば細胞溶解活性又はサイトカイン分泌等、細胞のエフェクター機能を誘導することができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、細胞外ドメインの結合後に細胞増殖、細胞生存、及び/又はサイトカイン分泌を促進する共刺激シグナルを伝達する、本明細書に記載のもの等の1以上の細胞内共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、そのような細胞内共刺激ドメインは、限定されないが、本明細書に開示の任意の共刺激ドメイン又は当技術分野で公知のドメイン、例えばCD28ドメイン、4-1BBドメイン、OX-40ドメイン、ICOSドメイン、又はCD27ドメイン等を含む。
【0172】
本明細書には、誘導性調節構築物を発現する遺伝子改変細胞も提供されている。いくつかの実施形態では、誘導性調節構築物は、細胞増殖、細胞生存、及び/又はサイトカイン分泌を促進するための誘導性共刺激シグナルを提供する、細胞内で発現される膜貫通又は細胞内構築物である。いくつかの実施形態では、誘導性調節構築物は、活性化の際に共刺激シグナルを提供する、本明細書に記載のもの及び/又は当技術分野で公知の他のもの等
の1以上の共刺激ドメインを含む。一般に、共刺激シグナルは、例えば、2つの誘導性調節構築物ポリペプチドのホモ二量体化によって誘導することができる。誘導性調節構築物は、典型的には、小分子、抗体、又は2つの構築物ポリペプチドのホモ二量体化を可能にする他の分子の結合後にホモ二量体化を可能にする結合ドメインを含む。二量体化は細胞への共刺激シグナルを開始して、増殖、生存、及び/又はサイトカイン分泌を促進することができる。結合ドメインが小分子に結合するいくつかの実施形態では、結合ドメインはFKBP12の類似体(例えば、F36V置換を含む)を含み、小分子はrimiducid(即ち、AP1903)である。CAR-T細胞安全スイッチ等、そのような誘導性調節構築物において有用であることが当技術分野において公知である任意の結合ドメインが本開示において企図される。
【0173】
特定の実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメイン及び少なくとも1つの新規共刺激ドメイン、例えば配列番号5~8、又はそれらの活性変異体を含む。
【0174】
他の特定の実施形態では、本明細書に開示の誘導性調節構築物は、2つの構築物の二量体化を可能にする結合ドメイン、及び少なくとも1つの新規共刺激ドメイン(例えば、配列番号5~8)又はその活性変異体を含む。
【0175】
2.4 組換えウイルスベクターの作製方法
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の方法で使用するための組換えAAVベクターを提供する。組換えAAVベクターは、典型的には、HEK-293等の哺乳動物細胞株において作製される。ウイルスのcap遺伝子及びrep遺伝子は、その自己複製を防止して治療遺伝子(例えばエンドヌクレアーゼ遺伝子)を送達するための空間を空けるためにベクターから除去されるため、組換えAAVベクターはパッケージング細胞株内にトランスで提供する必要がある。更に、複製を支持するのに必要な「ヘルパー」(例えばアデノウイルス)成分を提供する必要がある(Cots D、Bosch A、Chillon M(2013)Curr.Gene Ther.13(5):370-81)。多くの場合、組換えAAVベクターは、「ヘルパー」成分をコードする第1のプラスミド、cap遺伝子及びrep遺伝子を含む第2のプラスミド、並びにウイルスにパッケージングされる介在DNA配列を含有するウイルスITRを含む第3のプラスミドで細胞株をトランスフェクトするトリプルトランスフェクションを用いて作製される。次いで、キャプシドに包まれたゲノム(ITR及び目的の介在遺伝子)を含むウイルス粒子を、凍結融解サイクル、超音波処理、界面活性剤、又は当該分野で公知の他の手段によって細胞から単離する。次いで、粒子を塩化セシウム密度勾配遠心分離又はアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製し、続いて細胞、組織、又はヒト患者等の生物に対して目的の遺伝子に送達する。従って、本明細書に記載の共刺激ドメインをコードする少なくとも1つの核酸配列、例えば配列番号5~8、又はそれらの活性変異体を含む組換えAAVベクターの作製方法が本明細書に提供される。同様に、本明細書ではCAR、又は本明細書に記載の少なくとも1つの共刺激ドメイン、例えば配列番号5~8、又はそれらの活性変異体を含む誘導性調節構築物をコードする組換えAAVベクターの作製方法が提供される。
【0176】
いくつかの実施形態では、遺伝子移入はレンチウイルスベクターを介して達成される。他のレトロウイルスとは対照的に、いくつかの状況において、レンチウイルスは、特定の非分裂細胞に形質導入するために使用され得る。レンチウイルスベクターの非限定的な例としては、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、HIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス1(HTLV-1)、HTLV-2、又はウマ感染性貧血ウイルス(E1AV)等のレンチウイルスに由来するものが含まれる。例えば、レンチウイルスベクターは、HIV毒性遺伝子を多重弱毒化することにより生成されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpu、及びnefは欠失し、治療目的
のためにベクターをより安全にしている。レンチウイルスベクターは当技術分野において公知であり、Naldiniら(1996及び1998);Zuffereyら(1997);Dullら、1998、米国特許第6,013,516号;及び第5,994,136号を参照されたい。いくつかの実施形態では、これらのウイルスベクターはプラスミドベース又はウイルスベースであり、外来核酸を組み入れるため、選択のため、及び核酸を宿主細胞に移入するための必須配列を保有するように構成される。既知のレンチウイルスは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(「ATCC」;10801ユニバーシティブルバード、マナッサス、バージニア州20110~2209)等の寄託機関又はコレクションから容易に入手することができ、又は一般に利用可能な技術を用いて既知の供給源から単離することができる。
【0177】
特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)からクローニングされたgag、pol、tat、及びrev遺伝子をコードするプラスミド、並びに偽型ウイルス粒子に使用される水疱性口内炎ウイルス(VSV-G)からのエンベロープタンパク質をコードする第2のプラスミドを用いて調製される。pCDH-EF1-MCSベクター等のトランスファーベクターは、JeTプロモータ又はEF1プロモータ等の適切なプロモータと共に使用することができる。次いで、CARシグナル伝達ドメイン、例えば本明細書に開示の共刺激ドメイン及びその活性変異体をプロモータの下流に挿入し、続いてIRES及びGFPを挿入することができる。次いで、3つ全てのプラスミドをLenti-X-293T細胞等のレンチウイルス細胞にトランスフェクトすることができ、次いで適切なインキュベーション時間の後にレンチウイルスを回収し、濃縮し、スクリーニングすることができる。従って、本明細書では、少なくとも1つの核酸配列、本明細書に記載の共刺激ドメイン、例えば配列番号5~8、又はそれらの活性変異体を含む組換えレンチウイルスベクターの作製方法が提供される。同様に、本明細書では、本明細書に記載の少なくとも1つの共刺激ドメイン(例えば配列番号5~8)又はその活性変異体を含むCAR又は誘導性調節構築物をコードする組換えレンチウイルスベクターの作製方法が提供される。
【0178】
2.5 遺伝子改変細胞及び新規共刺激ドメインを含むその集団
本明細書では、本明細書に開示されるように少なくとも1つの新規共刺激ドメイン(例えば、配列番号5~8)又はその活性変異体を含むように遺伝子改変された細胞が提供される。特定の実施形態では、遺伝子改変細胞は、本明細書に記載の少なくとも1つの新規共刺激ドメイン(例えば、配列番号5~8)又はその活性変異体が組み入れられているCAR又は誘導性調節構築物をコードする核酸分子を含む。本開示の異なる変形形態では、本明細書に記載の新規共刺激ドメインをコードする核酸分子又は発現カセットは、遺伝子改変細胞のゲノム内に存在するか、あるいは細胞のゲノムに組み込まれていない。核酸分子又は発現カセットがゲノムに組み込まれていないいくつかの実施形態では、核酸分子又は発現カセットは、組換えDNA構築物中、mRNA中、ウイルスゲノム中、又は細胞のゲノムに組み込まれていない他の核酸の遺伝子改変細胞中に存在する。特定の実施形態では、遺伝子改変細胞は、本明細書に記載の共刺激ドメインをコードする核酸分子を含むことができ、更に、本明細書に開示された共刺激ドメインを含まないCARをコードするヌクレオチド配列及び/又は誘導性調節構築物をコードするヌクレオチド配列を含む本明細書に開示された少なくとも1つの発現カセットを含むことができる。
【0179】
本明細書で具体化されたいくつかの遺伝子改変細胞において、本明細書に記載の少なくとも1つの新規共刺激ドメインが組み入れられているCAR又は誘導性調節構築物をコードする核酸分子は、細胞の内因性T細胞受容体アルファ遺伝子と共に位置する。これらの実施形態のいくつかにおいて、核酸分子は、T細胞受容体アルファ定常領域遺伝子のエクソン1内等、内因性T細胞受容体アルファ定常領域遺伝子内に位置する。
【0180】
特定の実施形態では、新規共刺激ドメイン又はその活性変異体を含む細胞は真核細胞である。特定の実施形態では、新規共刺激ドメイン又はその活性変異体を含む細胞は、T細胞又はNK細胞、特にヒトT細胞又はNK細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は初代T細胞又は初代NK細胞である。
【0181】
T細胞及びNK細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む多数の供給源から得ることができる。本開示の特定の実施形態では、当該分野で利用可能な任意の数のT細胞株及びNK細胞株が使用され得る。本開示のいくつかの実施形態において、T細胞及びNK細胞は、当業者に公知の任意の数の技術を使用して対象から収集された血液の単位から得られる。一実施形態では、個体の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスによって得られる。
【0182】
本明細書に開示の新規共刺激ドメイン又はその活性変異体を含む遺伝子改変細胞は、新規共刺激ドメイン又はその活性変異体を含まない適切な対照細胞と比較した場合に、増殖の増加を示すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の新規共刺激ドメイン又はその活性変異体を含む細胞は、適切な抗原で刺激した後にインビトロ又はインビボで活性化及び増殖の増加を更に示す。例えば、CAR-T細胞及びCAR-NK細胞等の細胞は、本明細書に開示の新規共刺激ドメイン又はその活性変異体を含まない対照細胞と比較して、活性化、増殖、及び/又はサイトカイン分泌の増加を示すことができる。サイトカイン分泌の増加は、とりわけ、IFN-γ、IL-2、TNF-αの分泌の増加を含み得る。細胞活性化及びサイトカイン産生の測定方法は当技術分野において周知であり、いくつかの適切な方法は本明細書の実施例に提供されている。
【0183】
本開示は更に、本明細書に記載の少なくとも1つの新規共刺激ドメイン(例えば、配列番号5~8)又はその活性変異体が組み入れられているCAR又は誘導性調節構築物をコードする核酸分子をそのゲノム中に含む、本明細書に記載の複数の遺伝子改変細胞を含む遺伝子改変細胞の集団を提供する。従って、本発明の様々な実施形態では遺伝子改変細胞の集団が提供され、集団の細胞の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は最大100%が、本明細書に開示の新規共刺激ドメインを含む遺伝子改変細胞である。特定の実施形態では、遺伝子改変細胞の集団が提供され、集団の細胞の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は最大100%が、本明細書に記載の新規共刺激ドメインを含むCARを発現する。他の実施形態では、遺伝子改変細胞の集団が提供され、集団の細胞の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は最大100%が、本明細書に開示の新規共刺激ドメインを含む誘導性調節構築物と本明細書に記載の共刺激ドメインを含まないCARを発現する。
【0184】
2.6 遺伝子改変細胞の作製方法
本開示は、本明細書に開示の新規共刺激ドメイン又はその活性変異体を含む遺伝子改変細胞の作製方法を提供する。特定の実施形態では、少なくとも1つの新規共刺激ドメイン(例えば、配列番号5~8)又はその活性変異体が組み入れられているCARをコードする核酸配列分子を含むように細胞を改変する方法が提供される。他の実施形態では、少なくとも1つの新規共刺激ドメイン(例えば、配列番号5~8)又はその活性変異体が組み入れられている誘導性調節構築物をコードする核酸分子を含むように細胞を改変する方法が提供される。本開示の異なる態様では、本明細書に開示の新規共刺激ドメイン又はその活性変異体をコードする核酸分子又は発現カセットは、細胞のゲノムに組み込まれているか、あるいは細胞のゲノムに組み込まれていない。
【0185】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の新規共刺激ドメイン(又はCAR若しくは誘導性調節構築物)をコードするDNA又はRNAは、当技術分野において公知の任意の技術を用いて細胞に導入される。特定の実施形態では、本明細書に開示の新規共刺激ドメイン(又はCAR若しくは誘導性調節構築物)をコードする核酸を含むベクター又は発現カセットは、ウイルスベクターを用いて細胞に導入される。そのようなベクターは当技術分野において公知であり、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが含まれる(Vannucciら、(2013 New Microbiol.36:1-22に概説))。本開示において有用な組換えAAVベクターは、ウイルスの細胞内への形質導入、及びヌクレアーゼ遺伝子の細胞内への挿入、そして特定の実施形態においては細胞ゲノム内への挿入を可能にする任意の血清型を有することができる。特定の実施形態では、組換えAAVベクターは、AAV2又はAAV6の血清型を有する。組換えAAVベクターはまた、それらが宿主細胞中で第2鎖DNA合成を必要としないように自己相補的であり得る(McCartyら(2001)Gene Ther.8:1248-54)。
【0186】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の核酸分子又は発現カセットは、DNA(例えば、環状又は線状化プラスミドDNA又はPCR産物)又はRNAの形態で細胞内に送達される。操作されたヌクレアーゼ遺伝子がDNA形態で(例えばプラスミド)及び/又はウイルスベクター(例えばAAV又はレンチウイルスベクター)を介して送達されるいくつかの実施形態では、それらはプロモータに作動可能に連結されるか又は本明細書に開示の発現カセットに見出される。いくつかの実施形態では、プロモータは、ウイルスベクター由来の内因性プロモータ(例えば、レンチウイルスベクターのLTR)又は周知のサイトメガロウイルス又はSV40ウイルス初期プロモータ等のウイルスプロモータである。他の実施形態では、プロモータは、JeTプロモータ等の合成プロモータである。特定の実施形態では、本明細書に開示の新規共刺激ドメイン又はCARをコードする遺伝子は、標的細胞(例えば、ヒトT細胞)において優先的に遺伝子発現を駆動するプロモータに作動可能に連結されている。
【0187】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の共刺激ドメイン(又はCAR若しくは誘導性調節構築物)をコードする核酸分子又は発現カセットは、当技術分野で公知の方法を用いてナノ粒子に共有結合又は非共有結合するか、又はそのようなナノ粒子内に封入される(Sharmaら、(2014)Biomed Res Int.2014)。ナノ粒子は、その長さスケールが<1μm、好ましくは<100nmであるナノスケール送達システムである。そのようなナノ粒子は、金属、脂質、ポリマー、又は生体高分子で構成されるコアを用いて設計することができ、核酸分子又は発現カセットの複数のコピーをナノ粒子コアに付着させるか又は封入することができる。これは、各細胞に送達されるDNAのコピー数を増加させ、従って、操作された各ヌクレアーゼの細胞内発現を増加させて、共刺激ドメイン(又はCAR若しくは誘導性調節構築物)が発現される可能性を最大にする。そのようなナノ粒子の表面をポリマー又は脂質(例えば、キトサン、カチオン性ポリマー、又はカチオン性脂質)で更に修飾して、その表面が細胞送達及びペイロードの取
り込みを増強する更なる機能性を付与するコア-シェルナノ粒子を形成し得る(Jianら(2012)Biomaterials、33(30):7621-30)。ナノ粒子を適切な細胞型に向かわせるために、及び/又は細胞取り込みの可能性を高めるために、ナノ粒子を更にターゲティング分子に有利に結合させることができる。そのようなターゲティング分子の例には、細胞表面受容体に特異的な抗体及び細胞表面受容体に天然のリガンド(又は天然のリガンドの一部)が含まれる。
【0188】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の共刺激ドメイン(又はCAR若しくは誘導性調節構築物)をコードする核酸分子又は発現カセットは、リポソーム内にカプセル化されるか、カチオン性脂質を用いて複合体化される(例えば、LIPOFECTAMINE、Life Technologies Corp.Carlsbad、CA;Zurisら(2015)Nat Biotechnol.33:73-80;Mishraら(2011)J Drug Deliv.2011:863734を参照)。リポソーム製剤及びリポプレックス製剤は、ペイロードを分解から保護し、細胞の細胞膜との融合及び/又は細胞膜の破壊を介して細胞取り込み及び送達効率を促進することができる。
【0189】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の共刺激ドメイン(又はCAR若しくは誘導性調節構築物)をコードする核酸分子又は発現カセットは、ポリマー足場(例えばPLGA)内にカプセル化されるか、カチオン性ポリマー(例えばPEI、PLL)を用いて複合体化される(Tamboliら(2011)Ther Deliv.2(4):523-536)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の共刺激ドメイン(又はCAR若しくは誘導性調節構築物)をコードする核酸分子又は発現カセットは、ミセルに自己集合する両親媒性分子と組み合わされる(Tongら(2007)J Gene Med.9(11):956-66)。ポリマーミセルは、凝集を防ぎ、且つ電荷相互作用をマスクし、且つ細胞外の非特異的相互作用を減少させることができる親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)で形成されたミセルシェルを含み得る。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の共刺激ドメイン(又はCAR若しくは誘導性調節構築物)をコードする核酸分子又は発現カセットは、細胞への送達用のエマルジョンとして処方される。用語「エマルジョン」は、限定するものではないが、脂質構造を含む任意の水中油型、油中水型、水中油中水型、又は油中水中油型の分散液又は液滴を指し、水不混和性相が水相と混合されたときに、無極性残基(例えば長い炭化水素鎖)を水から遠ざけ、極性頭部基を水に向かわせる疎水性力の結果として形成することができる。これらの他の脂質構造には、単層、少層、及び多層脂質小胞、ミセル、及びラメラ相が含まれるがこれらに限定されない。エマルジョンは、水相と親油性相(典型的には油と有機溶媒を含む)で構成される。エマルジョンはまた、1以上の界面活性剤をしばしば含有する。ナノエマルジョン配合物はよく知られており、例えば、米国特許出願第2002/0045667号及び第2004/0043041号、並びに米国特許第6,015,832号、第6,506,803号、第6,635,676号、及び第6,559,189号に記載され、これらは各々参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の共刺激ドメイン(又はCAR若しくは誘導性調節構築物)をコードする核酸分子又は発現カセットは、多機能ポリマーコンジュゲート、DNAデンドリマー、及びポリマーデンドリマーに共有結合又は非共有結合する(Mastorakosら(2015)Nanoscale.7(9):3845-56;Chengら(2008)J Pharm Sci.97(1):123-43)。デンドリマーの生成は、ペイロード容量及びサイズを制御することができ、高いペイロード容量を提供することができる。更に、複数の表面基の表示を利用して安定性を改善し、非特異的相互作用を減らすことができる。
【0192】
細胞内に遺伝子を導入し発現させる方法は当技術分野において公知である。発現ベクターの文脈では、ベクターは当該技術分野の任意の方法により宿主細胞、例えば哺乳動物、細菌、酵母、又は昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等が含まれる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞の作製方法は当技術分野において周知である。例えば、Sambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク)を参照されたい。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法は、DNA及びRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス等に由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号及び第5,585,362号を参照されたい。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア及びビーズ等のコロイド分散系、並びに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質系が含まれる。インビトロ及びインビボで送達媒体として使用するための例示的なコロイド系はリポソーム(例えば人工膜小胞)である。
【0193】
いくつかの実施形態において、本発明は更に、本明細書に開示された核酸分子又は発現カセットのT細胞受容体アルファ遺伝子への導入を提供する。特定の実施形態では、核酸分子又は発現カセットは、T細胞受容体αサブユニットのコード配列を含むT細胞受容体アルファ定常領域遺伝子に存在する認識配列に導入される。そのように、核酸分子又は発現カセットの導入は、内因性T細胞受容体αサブユニットの発現を破壊し、結果として内因性T細胞受容体の発現を破壊する。特定の実施形態では、そのような認識配列は、T細胞受容体アルファ定常領域遺伝子のエクソン1内に存在し得る。
【0194】
特定の実施形態では、本明細書に開示の共刺激ドメインをコードする核酸分子をT細胞又はNK細胞等の細胞に導入することにより、本明細書に開示の共刺激ドメインを含まない対照細胞と比較した場合に、細胞の活性化、増殖、及び/又はサイトカイン分泌を増加させることができる。いくつかの実施形態では、細胞の活性化、増殖、及び/又はサイトカイン分泌は、本明細書に開示の共刺激ドメインをコードする核酸分子を導入することによってインビトロ又はインビボで増加させることができる。
【0195】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの新規共刺激ドメイン又はその活性断片若しくは変異体をT細胞又はNK細胞等の細胞に導入することは、本明細書に開示の新規共刺激ドメインを含まない対照細胞と比較した場合に、細胞増殖期間及び/又は細胞集団の拡大を延長する、及び/又は細胞枯渇を遅らせる。細胞の拡大及び枯渇(T細胞又はNK細胞の拡大及び枯渇等)を測定する方法は、当技術分野において公知であり、本明細書の他の箇所に開示されている。
【0196】
2.7 医薬組成物
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の遺伝子改変細胞又は遺伝子改変細胞の集団と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。そのような医薬組成物は既知の技術に従って調製することができる。例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy(21sted.2005)を参照されたい。本開示による医薬製剤の製造において、細胞は典型的には薬学的に
許容される担体と混合され、得られた組成物は対象に投与される。担体は、もちろん、製剤中の他の任意の成分と相溶性であるという意味で許容されなければならず、対象にとって有害であってはならない。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、対象における疾患の治療に有用な1以上の追加の薬剤を更に含む。遺伝子改変細胞が遺伝子改変ヒトT細胞若しくはNK細胞(又はそれらに由来する細胞)である更なる実施形態では、本開示の医薬組成物は、インビボでの細胞増殖及び生着を促進するサイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、IL-15、及び/又はIL-21)等の生体分子を更に含む。本開示の遺伝子改変細胞を含む医薬組成物は、追加の薬剤又は生物学的分子と同じ組成物中で投与され得るか、あるいは、別々の組成物中で同時投与され得る。
【0197】
本開示はまた、医薬品として使用するための本明細書に記載の遺伝子改変細胞又はその集団を提供する。本開示は更に、それを必要とする対象において疾患を治療するための医薬品の製造における、本明細書に記載の遺伝子改変細胞又はその集団の使用を提供する。そのような一態様では、医薬品はそれを必要とする対象におけるがん免疫療法に有用である。
【0198】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物及び医薬品は、T細胞養子免疫療法によって標的とされ得るあらゆる病状を治療するために有用である。特定の実施形態では、本開示の医薬組成物及び医薬品は癌治療における免疫療法として有用である。本開示の医薬組成物及び医薬品で治療することができるがんの非限定的な例は、癌腫、リンパ腫、肉腫、黒色腫、芽細胞腫、白血病、及び胚細胞腫瘍であり、限定されるものではないが、B細胞起源のがん、神経芽細胞腫、骨肉腫、前立腺癌、腎細胞癌、横紋筋肉腫、肝臓癌、胃癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、皮膚又は眼内悪性黒色腫、腎臓癌、子宮癌、卵巣癌、結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形腫瘍、リンパ性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、アスベストによって誘発されるものを含む環境誘発性がん、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、菌状息肉症、未分化大細胞型リンパ腫、及びT細胞リンパ腫並びにこれらのがんの任意の組み合わせを含む。特定の実施形態では、B細胞起源のがんは、非限定的に、B系統急性リンパ芽球性白血病、B細胞慢性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、プレB ALL(小児適応症)、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、及びB細胞非ホジキンリンパ腫を含む。
【0199】
2.8 遺伝子改変細胞の投与方法
本明細書に開示される別の態様は、本開示の遺伝子改変細胞のそれを必要とする対象への投与である。特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物はそれを必要とする対象に投与される。例えば、本明細書に記載の新規共刺激ドメイン又はその活性変異体を含む有効量の細胞集団を、疾患を有する対象に投与することができる。特定の実施形態では、疾患はがん、例えばB細胞起源のがんであり得る。従って、本開示はまた、哺乳動物にCAR-T細胞を投与する工程を含む、哺乳動物中の標的細胞集団又は組織に対するT細胞媒介性免疫応答を提供する方法を提供し、ここで、CARは、所定の標的と特異的に相互作用する細胞外リガンド結合ドメイン(例えば、腫瘍抗原)、並びに少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)と本明細書に記載の少なくとも1つの新規共刺激シグナル伝達ドメイン又はその活性変異体とを含む細胞内ドメインを含む。他の実施形態では、CARは本明細書に記載の新規共刺激ドメインを含まないが、細胞は、本明細書に記載の少なくとも1つの新規共刺激ドメインを含む誘導性調節構築物を更に含み、誘
導性調節構築物の二量体化が細胞への共刺激シグナルを開始する。そのような実施形態において、方法は、インビボでのCAR-T細胞集団の細胞増殖及び拡大を促進するために、CAR-T細胞において増殖性及び/又は生存シグナルを誘導するために、誘導性調節構築物の二量体化を誘導する小分子、抗体、又は他の分子の投与を更に含む。投与されたCAR-T細胞は、レシピエントにおいて増殖を減少させるか、数を減少させるか、又は標的細胞を殺すことができる。抗体療法とは異なり、本開示の遺伝子改変細胞は、インビボで複製及び増殖することができ、その結果、疾患の持続的な制御につながり得る長期の持続性をもたらす。
【0200】
可能な投与経路の例には、非経口(例えば、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮内、皮下(SC)、又は注入)投与が含まれる。更に、投与は、連続注入又は単回若しくは複数回のボーラス投与によるものであり得る。特定の実施形態では、一方又は両方の薬剤が約12時間、6時間、4時間、3時間、2時間、又は1時間未満の期間にわたって注入される。更に他の実施形態では、注入は最初はゆっくり起こり、その後経時的に増加する。
【0201】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子改変細胞は、がんを治療する目的で腫瘍抗原を標的とする。このようながんには、限定ではないが、癌腫、腺癌、リンパ腫、肉腫、黒色腫、芽細胞腫、白血病、及び胚細胞腫瘍を含むことができ、限定されるものではないが、B細胞起源のがん、神経芽細胞腫、骨肉腫、前立腺癌、腎細胞癌、横紋筋肉腫、肝臓癌、胃癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、皮膚、又は眼内悪性黒色腫、腎臓癌、子宮癌、卵巣癌、結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形腫瘍、リンパ性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、アスベストによって誘発されるものを含む環境誘発性癌、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、菌状息肉症、未分化大細胞型リンパ腫、及びT細胞リンパ腫、並びにこれらのがんの任意の組み合わせを含む。特定の実施形態では、B細胞起源のがんは、非限定的に、B系統急性リンパ芽球性白血病、B細胞慢性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、プレB ALL(小児適応症)、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、及びB細胞非ホジキンリンパ腫を含む。
【0202】
ここで開示されている遺伝子改変細胞によってがんが治療されるこれらの実施形態のいくつかにおいては、遺伝子改変細胞を投与された対象に、放射線、外科手術、又は化学療法剤等の追加の治療薬が更に投与される。
【0203】
「有効量」又は「治療量」が示される場合、投与される本開示の組成物の正確な量は、年齢、体重、腫瘍サイズ(存在する場合)、感染又は転移の程度、及び患者(対象)の状態の個人差を考慮して医師によって決定され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変細胞を含む医薬組成物は、104~109細胞/kg体重の投与量で投与され、この範囲内の全ての整数値を含む。さらなる実施形態では、投与量は105~106細胞/kg体重であり、この範囲内の全ての整数値を含む。いくつかの実施形態では、細胞組成物はこれらの投与量で複数回投与される。細胞は、免疫療法において一般に知られている注入技術を用いて投与することができる(例えば、Rosenbergら、New Eng.J.of Med319:1676、1988を参照)。特定の患者に対する最適な投与量及び治療計画は、疾患の徴候について患者を監視し、それに応じて治療を調整することにより、医学の当業者が容易に決定することができる。
【0204】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子改変細胞の投与は、標的の疾患又は状態の少なくとも1つの症状を軽減する。例えば、本開示の遺伝子改変細胞の投与は、B細胞起源のがん等のがんの少なくとも1つの症状を軽減することができる。B細胞起源のがん等のがんの症状は当技術分野で周知であり、既知の技術によって決定することができる。
【実施例0205】
実験
本開示を以下の実施例によってさらに説明するが、実施例は限定として解釈されるべきではない。当業者は、日常的な程度の簡単な実験を用いて、本明細書に記載された特定の物質及び手順の多数の等価物を認識するか、又は確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の実施例に続く特許請求の範囲に包含されることを意図している。
【0206】
実施例1
新規共刺激ドメインを有するCARの発現のためのレンチウイルスベクターの作製
本研究の目的は、抗原刺激後のCAR-T細胞拡大及びサイトカイン分泌を促進するために開発された新規共刺激ドメインを評価し特性化することであった。
【0207】
図1に示すように、2つのTRAF結合モチーフを含む4つの新規共刺激ドメインを設計した。これらのドメインを、新規1(N1;配列番号5)、新規3(N3;配列番号6)、新規5(N5;配列番号7)、及び新規6(N6;配列番号8)と呼ぶ。各新規共刺激ドメインを評価するために、レンチウイルスベクターを用いて抗CD19 CAR-T細胞を調製した。各CARは、5’から3’に、シグナルペプチド(配列番号16)、(G4S)3ポリペプチドリンカーが連結したFMC63抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗CD19scFv(配列番号17)、CD8ヒンジ領域及び膜貫通ドメイン(配列番号18)、並びに2つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内領域を含んでいた。SV40ポリアデニル化(ポリA)配列(配列番号22)をCAR配列の3’下流に配置した。いくつかのレンチウイルスベクターは、その細胞内領域が(i)新規共刺激ドメイン、及び(ii)CD3-ζシグナル伝達ドメイン(配列番号19)を含む抗CD19 CARをコードした。共刺激ドメインを欠くCAR(ヌル)をコードする陰性対照ベクターを調製し、CD28(配列番号20)又は4-1BB(配列番号21)共刺激ドメイン及びCD3-ζシグナル伝達ドメインを有するCARをコードする更なるベクターを調製した。この研究のために調製されたレンチウイルスベクターを表1に要約する。各CARは
図2に示されており、そのそれぞれの配列は配列番号22~28に記載されている。
【0208】
【0209】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)からクローニングされたgag、pol、tat、及
びrevをコードするプラスミドを用いて、第2世代のアプローチでレンチウイルスベクターを調製した。水疱性口内炎ウイルス由来のエンベロープタンパク質(VSV-G)をコードする第2のプラスミドを用いて、ウイルス粒子を偽型化した。トランスファーベクターpCDH-EF1-MCS(SystemBiosciencesから購入)を、EF1プロモータではなくJeTプロモータ(配列番号32)を含むように改変し、CARシグナル伝達変異体をプロモータの下流にクローニングし、続いてIRES及びGFPをクローニングした。3つ全てのプラスミドをLenti-X-293T細胞(ClonTech/Takaraから購入)にトランスフェクトし、3日後に上清からレンチウイルスを回収した。ウイルス粒子をLenti-X濃縮装置(ClonTech/Takara)を用いて濃縮し、Lenti-XqRT-PCR滴定キット(ClonTech/Takeda)を用いて定量してウイルスゲノム数/mlを決定し、また293T細胞(ATCC)での滴定を行って形質導入単位/mlを決定した。
【0210】
実施例2
ヒトT細胞における新規共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体の発現及び抗原誘発ストレス試験における特性化
【0211】
1.CAR-T細胞の調製と抗原誘発ストレス試験
本研究の目的は、抗原誘発ストレスにおける新規共刺激ドメインを評価することであった。手短に言えば、レンチウイルスベクターを実施例1に記載したように調製した。レンチウイルス形質導入用のドナーヒトT細胞を調製するために、T細胞をImmunoCult抗CD2/CD3/CD28多量体(StemCellTechnologies)及び20ng/mlのIL-2中で4日間刺激した。次いで細胞を収集し、個々のレンチウイルスベクターによる形質導入のために別々のウェルに入れた。T細胞あたり5個の形質導入可能単位を培養物に添加した。形質導入は、IL-2(20ng/ml)及び8μg/mlのポリブレン(Sigma)のみを添加したX-VIVO15培地(Lonza)中で実施した。培地を交換する前に、ベクターとT細胞の同時インキュベーションを一晩行った(X-Vivo15+20ng/mlIL-2+5%正常ヒト血清)。
【0212】
CAR発現は、レンチウイルス形質導入の4日後に始まり、GFP分析によって確認された(
図3)。各レンチウイルス形質導入T細胞培養物の試料を得て、GFPシグナルをBecton-DickinsonLSR:Fortessaフローサイトメータで測定した。各培養物中のGFP
+T細胞集団は、
図3においてCAR-GFP+と題された領域によって同定され、GFP+事象の頻度は各ドットプロット上に列挙されている。
【0213】
続いて、5×10
4個のCAR-T細胞を同数のRaji細胞と共に培養した。
図4に示す時点(d3、6、10、14、17、及び20)で、細胞数及び生存率を自動細胞計数及びトリパンブルー排除によって測定した。CAR-T細胞は、ヒトCD4及びCD8に対する抗体を用いてCD4
+又はCD8
+として同定し、フローサイトメトリを用いてGFPシグナルを同定した。CAR-T数を計算し、1×10
5個のCAR-T細胞を5×10
4個の追加のRaji細胞(2:1エフェクター:標的比)と共に再培養した。CD4
+、CD8
+、及びCAR-T細胞の総数を追跡し、経時的にプロットした。各時点で、50μlの培養上清を回収し、3重サイトカイン分泌アッセイのために-20℃で保存した。上清中のサイトカインレベルは、UltrasensitiveヒトIL-2、TNFα、及びIFNγ磁気ビーズキット(LifeTechnologies)を製造元の推奨に従って使用して測定した。データはLuminexMagPix装置を用いて取得した。
【0214】
第2の研究では、本発明者らの新規共刺激ドメインを含むCAR-T細胞を上記のように構築し、1×10
5個のCAR-T細胞を1×10
5個のRaji腫瘍細胞と共に培養
した。
図6のX軸上に示した時点で、細胞数及び生存率を自動細胞計数及びトリパンブルー排除によって測定した。ヒトCD4及びCD8に対する抗体を用いてCAR-T細胞を同定し、フローサイトメトリを用いてGFPシグナルを同定した。CAR-T数を計算し、1×10
5個のCAR-T細胞を1×10
5個の追加のRaji細胞と共に再培養した。尚、
図6では、標的:エフェクター比を1:1に調整し、Raji細胞をより頻繁にd3、5、7、10、12、14、17、19、21、24、26、28、及び31で培養物に添加した。CD4
+、CD8
+、及びCAR-T細胞の総数を追跡し、経時的にプロットした。
【0215】
形質導入の4日後、但しRaji細胞との共培養の前に、T細胞培養物を前述のようにフローサイトメトリによりCAR-GFP発現について評価した。T細胞を細胞あたり5個の形質導入可能単位のMOIで形質導入し、全てのレンチウイルス試料についてほぼ同様の効率が観察された。
【0216】
2.実験結果その1
CAR-T細胞数を経時的に測定し、
図4にプロットした。CAR-T数の違いは、10日目以降に明らかになった。41BBzシグナル伝達ドメインを有するCAR-T細胞は、CD28zドメインを有するものよりも持続的な増殖を示した。この実験において、BBヌル対照は最低レベルのCAR-T拡大を示した。新規ドメインN5及びN6は高レベルの持続的増殖を示した。各サブセットは同様の速度で増殖したため、CD4(
図4B)又はCD8(
図4C)T細胞拡大に対する選好は観察されなかった。この増殖アッセイにおける性能の降順では、結果は、N6>N5>41BBz>N1>>BBヌル=CD28z>N3である。
【0217】
IFNγ、TNFα、及びIL-2の分泌をLuminexマルチプレックスアッセイによって測定し、それぞれ
図5A、
図5B、及び
図5Cに示す。一般に、全てのサイトカインの分泌レベルは経時的に減少した。d3でのIFNγ分泌に関するドメインのランキングは、41BBz=CD28z>N1>N5>BBヌル=N3>N6である。IFNγのレベルは、d7時点で全ての実験群において50%以上減少し、実験の残りの部分で減少し続けた。TNFα分泌に関するドメインのランキングは、CD28z>N5=41BBz.BBヌル>N1=N6>N3となる。培養3日目と7日目の間に、TNFα産生レベルはCD28z、BBヌル、N3、及びN5培養物では約50%減少するが、41BBz、N1、及びN6培養物は7日目までTNFα産生レベルを維持する。一方、IL-2の産生は、41BBz及びCD28zと比較した場合、全ての新規ドメイン共培養物において低かった。IL-2測定値は、一部の培養物中に存在する急速に増殖するT細胞による高率のIL-2消費によって混乱する可能性がある(
図4参照)。
【0218】
3.実験結果その2
第2の実験(
図6)では、より頻繁な抗原遭遇及びより高い標的:エフェクター比を使用し、結果の降順に、N3>N5>CD28z>N1>N6>41BBz>BBヌルであった。この実験では、CAR-T細胞は培養期間を通して連続的に拡大した。CD4CAR-T細胞はRaji共培養中で約12日後に拡大を停止したが(
図6B)、CD8CAR-T細胞は拡大を続けた(
図6C)。
【0219】
4.結論
いくつかの新規シグナル伝達ドメインは、比較的低い(
図4)又は高い(
図6)抗原負荷下で41BBz及び/又はCD28zと同等又はそれ以上の性能を発揮する。N5シグナル伝達ドメインを保有するCARは、両方の条件下で41BBz及びCD28zよりも優れていた。N5は、両方の実験においてCD4コンパートメント中の41BBzと同様の性能を発揮するように見えるが、N5は、両方の実験においてCD8コンパートメント
中の41BBzよりも優れている。
【0220】
実施例3
41BB、N1、又はN6共刺激ドメインのCARの標的挿入にAAVを使用したストレス試験
【0221】
1.CAR-T細胞の調製と抗原誘発ストレス試験
新規細胞内シグナル伝達ドメインを評価するために、CAR-T細胞を作製し、抗原遭遇に対するそれらの応答を測定した。CAR-T細胞を作製するために、StemCellTechnologiesCD3陽性選択キットを使用して、健康なヒトドナーから収集したアフェレーシス試料からT細胞を単離した。このアッセイでは、K799及びz4100と称される2つの異なるドナーを使用した。T細胞を、Immunocultanti-CD2/3/28(StemCellTech)を用いて3日間活性化及び拡大させた後、TRC1-2x87EEを用いたヌクレオフェクション(Lonza4Dnucleofector)を行った。ヌクレオフェクション直後に、異なる細胞内シグナル伝達ドメインを特徴とする抗CD19 CARをコードするAAV6ベクターを細胞に形質導入した。この実験に含まれるCAR変異体は、4-1BB、N1、又はN6共刺激ドメインを含んでいた。全てのベクターにおいて、JeTプロモータでCAR発現を促進した。各CARドナー鋳型は、TRC1-2x.87EE認識配列の上流及び下流の領域に対して相同性を有する5’及び3’相同性アームに隣接させた。CARドナー鋳型を更に5’及び3’逆方向末端反復配列に隣接させた。各CARのドナー鋳型を
図7に示し、CD19-4-1BBCAR、CD19-N1 CAR、及びCD19-N6 CARをコードするAAVを生成するために使用したベクターの配列を配列番号29~31にそれぞれ示す。
【0222】
感染多重度は50,000であった。ヌクレオフェクション/形質導入の5日後、非編集型CD3+細胞を磁気的除去によって取り除いた(StemCellTechCD3陽性選択キット)。次いで、細胞をCD3-画分の純度について評価し、抗CD3-BrillianViolet-711(Biolegend)、及びCD19-Fc-ビオチン(Acro)、続いてストレプトアビジン-PE(BioLegend)を用いてフローサイトメトリによってCAR発現について評価した。翌日、T細胞とCD19を発現するように操作されたK562(「K19」細胞)とを含有する共培養物を組み立てた。上記のフローサイトメトリアッセイで決定されたCD19-Fc+頻度を用いて、CAR-T細胞の入力数を計算し、エフェクター:標的(E:T)比2:1を確立した。共培養の3、6、8、及び10日目に、共培養物中の腫瘍細胞数及びCAR-T細胞数のフローサイトメトリ評価のために試料を取得した。各時点でのCAR-T細胞の数は、抗原遭遇後のCAR-Tの拡大の証明として
図8にプロットされている。計算したCAR-T細胞の数及び各時点で検出された残りの腫瘍細胞を使用して、2:1のE:Tを再確立するために必要数の新鮮なK19細胞を共培養に戻した。更に、平行共培養プレートを可変のE:T比(2:1、1:1、及び1:2)で設定した。これらの共培養物の試料を24時間及び72時間で採取し、CD19+細胞の数をフローサイトメトリによって決定した。結果を
図9に示す。CAR-T細胞との共培養を生き残ったCD19+細胞の数は、標的細胞殺傷の指標として役立つ。
【0223】
2.抗原誘導性ストレス試験の結果
入力T細胞集団をCAR+細胞の頻度に対して正規化し、同数のCAR-T細胞をE:T、2でK19標的で攻撃した。CAR-T細胞の増殖を、ドナーK799(
図8A)及びドナーz4100(
図8B)から作製したT細胞について評価した。TRACを含む細胞は編集するが、CAR挿入を含まない(TRCKO)細胞は抗原遭遇に応答して増殖しなかった。対照的に、4-1BBシグナル伝達ドメインを使用して作製したCAR-T細
胞は、共培養の最初の1週間は強く増殖し、12日目で収縮した。N1又はN6変異体を用いて作製したCAR-T細胞が示した増殖速度は、4-1BBによって支持される速度と実質的に異なることが見出されなかった。CD19+標的細胞の殺傷も共培養の24時間後及び72時間後に様々なE:T比で評価し、その時点で培養試料を残りのCD19+細胞の数について分析し、同数のK19細胞を含有するがCAR-T細胞を含まない対照ウェルに対して結果をプロットした。無T細胞対照よりも少ないK19の数は細胞殺傷と解釈する。ドナーK799由来の材料を使用して作製したCAR-T細胞は、24時間の時点でほとんど細胞溶解性を示さず、最少の厳しさのE:T比2:1でのみ顕著な殺傷を示した(
図9、パネルA)。しかしながら、72時間までに、全てのE:T比で広範囲の殺傷が観察された。N1及びN6は4-1BBと同程度かそれ以上であった。N1は4-1BBと比較して細胞溶解活性が優れているように見えた。ドナーz4100から作製したCAR-T細胞を含有する共培養物では、24時間及び72時間の両方の時点で広範囲の殺傷が観察された(
図9B)。上記のように、N1及びN6は、4-1BBと比較した場合、細胞溶解活性に関して同等又は優れていた。一般に、ドナーz4100から作製したCAR-T細胞ではより広範囲の殺傷が観察された。ドナーK799におけるCD4:CD8比はほぼ3:1であり、一方z4100における比は1:1であることに留意することが重要である。従って、(これらの実験の場合のように)固定数の全CAR-T細胞を含有する試料は、細胞傷害性CD8+T細胞のそれぞれの数が異なり、z4100はほぼ2倍の数のCD8+T細胞を含有し、このドナー由来の細胞で観察された致死活性増強を説明する。
【0224】
3.結論
新規共刺激シグナル伝達ドメインは、4-1BBシグナル伝達によって支持されるレベルと同等又はそれ以上の増殖及び標的細胞殺傷レベルを支持することが見出された。重要なことに、本発明者らは、ランダムに挿入されたレンチウイルスベクターによってCARが送達された他のデータに加えて、本発明者らの標的挿入戦略によって作製されたCAR-T細胞におけるN1及びN6のこの特徴をここに示す。この方法は、抗原に対するCAR-T応答の差が、異なるCAR-T調製物間の積算コピー数の差に起因し得る可能性を減らす。重要なことに、無作為挿入法及び標的挿入法の両方が、特にN6が天然の4-1BBによって提供される共刺激的支持に対する実行可能な代替法であることを示した。
【0225】
実施例4
共刺激ドメインとして41BB、N1、又はN6を有するCAR-T細胞における増殖アッセイ
【0226】
1.共刺激ドメインを含むCAR-T細胞の調製と増殖アッセイ
新規共刺激ドメインを特徴とするCAR要素をレンチウイルス移入ベクターからクローニングし、pDIベクターに結合させた。CAR要素の発現はJeTプロモータによって制御し、標的遺伝子挿入を可能にするためにこの要素をTRAC相同性アームに隣接させる。AAV6粒子へのパッケージングを可能にするために、このドナー鋳型を逆方向末端反復配列に隣接させる。これらのプラスミドを最初に制限エンドヌクレアーゼ消化及びエタノール沈殿により線状化した。次いで、初回抗原刺激を受けたT細胞をTRC1-2×87EE、線状化CARプラスミド、及びSTINGsiRNAでヌクレオフェクトして、細胞内核酸センサーによって媒介される毒性を低減した。Lonza4Dヌクレオフェクターを用いて核酸送達を行った。編集したT細胞を、プールした5%ヒト血清及び30ng/mlのIL-2(Gibco)を添加したXVIVO-15培地(Lonza)中で成長させた。7日間培養を行った後、ヒトCD3陽性選択キット(StemCellTechnologies)を使用して、編集されていないCD3+細胞を磁気的に除去した。細胞を2ng/mlのIL-2中に一晩静置した後、製造元の推奨に従って2μMのセルトレースバイオレット(LifeTechnologies)で標識した。セルトレ
ースバイオレット(CTV)は細胞内エステラーゼの基質であり、カルボキシフルオロセイン-スクシンイミジルエステル(CFSE)とよく似た働きをする。CTVは膜を越えて細胞質に拡散し、そこで生細胞の細胞質に豊富に存在するエステラーゼ酵素によって切断される。切断された生成物は細胞膜を越えて拡散せず、細胞質タンパク質に見られる遊離アミノ基と非常に強く反応し、蛍光性である。標識された細胞が分裂すると、蛍光細胞質タンパク質は娘細胞の間で均等に分裂し、各々が親世代の半分の明るさを有する2つの細胞になる。CTVの蛍光を時間的(0日目の対照等)又は生物学的対照(例えば非刺激細胞)と比較することによって、フローサイトメトリを使用してCTVの薄暗い事象の頻度を比較することによって様々な細胞集団の増殖速度を測定できる。次いで、CAR、CAR-4-1BB、CAR-N1、又はCAR-N6のいずれも発現していないT細胞のCTV標識CD3画分を、抗原を担持する腫瘍細胞で攻撃した。このアッセイのために、CD19を安定に発現するK562細胞を2つの異なるエフェクター対標的(E:T)比、2:1及び1:1で使用した。重要なことに、CAR+頻度は、ビオチン化CD19-Fc及びストレプトアビジン-PEを用いて各共培養物について決定した。T細胞の入力数をそれらのCAR+頻度に基づいて正規化した。T細胞とCD19+K562の共培養を5日間行った後、フローサイトメトリ分析を行った。CD4-PE及びCD8-APC抗体(BioLegend)を用いてT細胞を明確に同定した。FlowJoソフトウェア(TreeStar)を用いてデータを取得及び分析し、色素希釈によって増殖を評価した。
【0227】
2.増殖アッセイの結果
増殖アッセイからの結果を
図10に示す。
図10Aの重ね合わせたヒストグラムは、2つの異なるE:T比でのCAR-4-1BBCAR-T細胞の増殖及び陰性対照TRCKOT細胞の増殖の欠如を示す。わずかに半分を超えるCAR-4-1BBT細胞がCD19+標的細胞に応答して増殖したが、対照試料では13%が分裂した。
図10Bの重ね合わせたヒストグラムは、CAR-N1細胞に対するCAR-4-1BB細胞の増殖速度を示す。ほぼ等しい頻度の分裂細胞が各培養物中に見られる。
図10Cの重ね合わせたヒストグラムは、CAR-N6T細胞と比較したCAR-4-1BBT細胞の増殖速度を示す。N6は77%の細胞において増殖を支持し、一方4-1BBは56%の細胞において増殖を支持する。各培養物中の分裂細胞の頻度の表を以下に示す。
【0228】
表2.抗原を担持する腫瘍細胞と共培養したCAR-T細胞の分裂頻度
【表2】
【0229】
3.結論
レンチウイルスのスクリーニングは、CAR構築物に組み入れるための代替的及び/又は優れたシグナル伝達ドメインを同定する試みにおいて、N6を主要候補として同定した。この実験は、レンチウイルス送達に典型的なランダム挿入/可変コピー数シナリオではなく、単一コピー標的挿入シナリオで機能する新規シグナル伝達ドメインの能力を実証した。これらのデータサポートは、機能的シグナル伝達変異体が設計及び送達され得ること
を実証する。重要なことに、N6は、抗原との遭遇後のCD3zに関連する共刺激シグナルトランスデューサーとして4-1BBよりも優れていることが特に見出された。
【0230】
実施例5
播種性B細胞リンパ腫のマウス異種移植モデルにおける4-1BBとN6の共刺激ドメインを持つCART細胞の有効性
【0231】
1.CAR-T細胞の調製と担癌マウスへの注射
本研究の目的は、N6共刺激ドメインを含む抗CD19 CAR構築物を発現するように操作されたCART細胞の有効性を評価し、これらの細胞とCARに組み込まれた4-1BB共刺激ドメインを有するCART細胞とを比較することであった。
【0232】
4-1BB又はN6共刺激ドメインを特徴とする抗CD19 CAR配列をpDIプラスミドにクローニングし、AAV6ウイルスベクターを作製するために使用した。CAR要素の発現はJeTプロモータによって制御し、このドナー鋳型がTRC1-2x.87EE部位特異的エンドヌクレアーゼと共に送達されたときに、標的遺伝子のTRAC遺伝子座への挿入を可能にするために、導入遺伝子はTRAC相同性アームに隣接させた。このCAR導入遺伝子ドナー鋳型は、AAV6粒子へのパッケージングを可能にするために逆方向末端反復配列に隣接させた。
【0233】
N6共刺激ドメインについては、試験のために2つの異なるCAR導入遺伝子を作製し、異なるAAVベクターにパッケージングした。これらの2つのN6含有CAR要素は、これらのポリA配列がCAR T細胞の機能に影響を与えるかどうかを評価するために、CAR導入遺伝子の3’末端で利用される異なるポリアデニル化(ポリA)配列を含んでいた。7241(4-1BB)及び7205(N6)構築物において利用したポリA配列は、配列番号33を含むSV40ポリA配列であった。7206(N6)構築物において利用したポリA配列は、配列番号34を含む第1の配列と配列番号35を含む第2の配列とを有するSV40ビポリA配列である。表3は、本研究で使用したCAR構築物の特徴を概説しており、それらは
図11に示されている。7241(4-1BB)構築物、7205(N6)構築物、及び7206(N6)構築物をコードするAAVを生成するために使用したベクターの配列は、それぞれ配列番号36~38に提供されている。
【0234】
【0235】
初回抗原刺激を受けたT細胞をTRC1-2×87EEmRNAでエレクトロポレーションした。Lonza4DNucleofectorを用いて核酸送達を行った。エレクトロポレーションの後、細胞を偽形質導入するか、又は4-1BB若しくはN6共刺激ドメインのいずれかを含む抗CD19 CAR導入遺伝子を備えたドナー鋳型を有するAAV6ベクターで形質導入した。
【0236】
編集したT細胞を、プールした5%ヒト血清及び30ng/mlのIL-2(Gibco)を添加したXVIVO-15培地(Lonza)中で成長させた。細胞を5日間培養した後、ヒトCD3陽性選択キット(StemCellTechnologies)を用いて、編集されていないCD3+細胞を磁気的に除去した。細胞を更に3日間培養した。
【0237】
NSGマウス(1群あたりn=5)に、ホタルルシフェラーゼを発現する2e5のRaji細胞(Raji-ffluc)を注射した。3日後、マウスに各々1e6対照TCRKO細胞、又は7205(N6)、7206(N6)、又は7241(4-1BB)ベクターを用いて作製した1e6CAR T細胞を注射した。示された日に、生きているマウスにルシフェリン基質(食塩水中150mg/kg)を腹腔内注射し、麻酔し、7分後にIVISスペクトル(PerkinElmer、Waltham、MA)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。LivingImagesoftware4.5.2(PerkinElmer、Waltham、MA)を用いてデータを分析しエクスポートした。画像中のルミネセンスシグナル強度は、p/秒/cm2/srの放射輝度で表される。動物全体を対象領域として用いて、LivingImagesoftware4.5.2(PerkinElmer、Waltham、MA)を使用して総フラックスも計算した。マウスを疾患進行の徴候についてモニターし、必要に応じて所定の基準に従って安楽死させた。
【0238】
2.マウス異種移植モデルの結果
表3に記載のCAR構築物の有効性を評価する播種性B細胞リンパ腫のマウス異種移植モデルの結果を
図12~
図14に示す。
【0239】
Raji-fflucの注射後7日目のマウスの腹側及び背側の画像化によって、TCRKO細胞を投与した対照マウスにおけるRaji-ffluc細胞の生着及び成長が可視化され、10日目及び16日目の発光シグナルの増加によって示されるように、これらのマウスでRaji細胞の急速な成長が観察された(
図12、
図13A、及び
図13C)。対照的に、7205(N6)、7206(N6)、及び7241(4-1BB)構築物を有するCAR T細胞によるマウスの処置は、腫瘍成長の遅延をもたらした(
図12及び
図13)。動物の背側及び腹側の画像化によって証明されるように、Raji成長は、7205(N6)及び7241(4-1BB)CAR T群のマウスのサブセットにおいておよそ20日目から開始されることが検出された。しかしながら、7206(N6)CAR T治療群では、40日間の研究中に明らかな腫瘍成長は観察されなかった。
【0240】
図14に示すように、TRCKO対照群の5匹のマウス全ては、完全後肢麻痺を含む疾患関連症状の急速な発症により19日目に安楽死させた。しかしながら、7205(N6)及び7206(N6)ベクターを用いて作製したCAR T細胞による処置は、マウスの生存を増強し、これらの群の全てのマウスは40日目に生存したままであった(7206群の1匹のマウスは、腫瘍の増殖やCAR Tの注入とは無関係の死亡により研究から除外した)。7241の4-1BB含有CAR構築物で処置したマウスも、この処置群におけるマウスの生存期間を延長し、1匹のマウスは38日目に安楽死を必要とし、他の4匹のマウスは研究の40日間を通して生き続けた。
【0241】
3.結論
Raji-fflucCD19+細胞を移植したマウスを、N6共刺激ドメインを有する第2世代CARを発現する抗CD19 CAR T細胞で処置すると(7205及び7206構成の両方で)、TCRKO細胞を投与したマウスと比較して、マウスの生存期間延長及び腫瘍負荷の劇的な減少がもたらされた。重要なことに、研究の40日間を通して、7205(N6)構築物は、72414-1BB含有-CARと同等の性能を発揮するように見え、7206(N6)構築物は、Raji細胞成長の持続的抑制の観点から72
05(N6)構成及び7241(4-1BB)構成の両方よりも優れているように見えた。全体として、これらのデータは、N6共刺激ドメインが共刺激ドメインとして機能し、構築物のインビトロ活性を評価する実験と一致してインビボでCD19+標的を殺傷するCAR T細胞の能力を支持するというインビトロでの発見を裏付ける。更に、N6共刺激ドメインを有する構築物は、4-1BB共刺激ドメインを有するCAR T構築物の活性と一致するか又はそれを超えた。
【0242】
実施例6
複数の共刺激ドメインを含む第3世代CARの特性化
【0243】
1.第3世代CARを発現するCAR T細胞の作製
第3世代CARの一部として本発明に包含される新規共刺激ドメインを評価するために更なる構築物を調製し、ここで、細胞内シグナル伝達ドメインは2つの共刺激ドメインと1つのCD3-ζシグナル伝達ドメインとを含む。
【0244】
特定の実施例において、5’から3’に、シグナル配列(配列番号16)、FMC63ベースのCD19特異的scFv(配列番号17)、上記のCD8ヒンジ及び膜貫通ドメイン(配列番号18)、それに続くMyD88共刺激ドメイン(配列番号39;国際公開第2016/036746号から得られた配列)、N6共刺激ドメイン(配列番号8)、及びCD3-ζシグナル伝達ドメイン(配列番号19)を含む、第3世代抗CD19 CARを調製した。配列番号34及び配列番号35を含むSV40ビポリAシグナル配列は、CAR配列の3’下流に位置していた。先の実施例に記載したように、この構築物をコードする配列をpDIプラスミドにクローニングし、CARの発現をJeTプロモータによって制御した。更に、このドナー鋳型がTRC1-2x.87EE部位特異的エンドヌクレアーゼと共に送達されたときに、標的遺伝子のTRAC遺伝子座への挿入を可能にするために、導入遺伝子はTRAC相同性アームに隣接させた。このCAR導入遺伝子ドナー鋳型を更に逆方向末端反復配列に隣接させた。MyD88/N6 CARドナー鋳型を
図15に示し、ドナー鋳型を含むベクターの配列を配列番号40として提供する。
【0245】
いくつかの実験では、CARドナー鋳型は、pDIプラスミドの線状化後に線状化DNAとして送達されるであろう。他の場合には、ドナー鋳型はウイルス送達のためにAAV6粒子にパッケージングされるであろう。
【0246】
2.殺細胞、増殖、及びサイトカイン分泌に関するMyD88/N6CAR T細胞の評価
いくつかの実験において、MyD88/N6CAR T細胞は、初回抗原刺激を受けたT細胞を線状化CAR鋳型プラスミド、TRC1-2x.87EEメガヌクレアーゼ、及びSTINGsiRNAでヌクレオフェクションして、細胞内核酸センサーにより媒介される毒性を低減することによって、実施例4で上述したように作製する。MyD88/N6CAR T細胞を記載のように更に成長及び拡大させる。
【0247】
MyD88/N6CAR T細胞を殺細胞能力、増殖、及びサイトカイン分泌に関して特性化する。殺細胞能力及び増殖を評価するために、MyD88/N6CAR T細胞を実施例3で上述したように抗原誘発ストレス試験にかけ、ここでMyD88/N6CAR
T細胞を、様々なエフェクター:標的比でCD19(「K19」細胞)を発現するように操作されたK562細胞と共培養する。増殖についても、セルトレースバイオレットで細胞を標識し、抗原を担持するK19細胞と様々なエフェクター:標的比で共培養することによって、実施例4で記載したように評価する。サイトカイン分泌(例えば、ヒトIL-2、TNFα、及びIFNγ)は、様々なエフェクター:標的比でK19細胞と共培養した後、上記の実施例2で記載したように決定する。
【0248】
殺細胞、増殖、及びサイトカイン分泌を調べる同様の実験は、組換えAAV粒子の形質導入を用いて、初回抗原刺激を受けたT細胞にCARドナー鋳型を送達し、TRC1-2×.87EEメガヌクレアーゼをコードするmRNAでこれを更にヌクレオフェクトして行う。
【0249】
3.MyD88/N6 CAR T細胞の増殖
CAR T細胞におけるN6及びMyD88/N6共刺激ドメインの機能を比較するために、N6共刺激ドメイン又はMyD88/N6共刺激ドメインを含む新規第3世代CARを発現する線状化プラスミドDNAを、TRC1-2x.87EE部位特異的エンドヌクレアーゼ及びSTINGsiRNAと共にヒトT細胞にヌクレオフェクトした。MyD88/N6CARコード構築物を
図15に示す。N6CARをコードする構築物を7206と呼び、配列番号38として提供する。MyD88/N6CARをコードする構築物を7240と呼び、配列番号40として提供する。
【0250】
ヌクレオフェクション後、細胞を5%FBS及び30ng/mlのIL-2(Gibco)を添加したX-Vivo培地(Lonza)中で5日間成長させた。5日目に、残りのCD3+T細胞をヒトCD3陽性選択キットII(StemCellTechnologies)を用いて標識し、製造元の推奨に従って磁気的に除去した。残りのCD3枯渇画分を、10ng/mlのIL-15及び3ng/mlのIL-21(Gibco)を添加したX-Vivo培地に再懸濁し、更に2日間成長させた。アッセイ用の試料を調製するために、N6及びMyD88/N6条件からの2e6T細胞、並びにTRC1-2x.87EEのみ処理した対照T細胞をインビトロでセルトレースバイオレット(CTV)溶液の2μM溶液で標識した。インキュベーション後、CD19-ビオチンFc(AcroBiosystems)及びストレプトアビジンPE(BD)で染色した後、CTV標識の一貫性及びCAR T細胞頻度をBecton-DickinsonLSR:Fortessaフローサイトメータで評価した。増殖アッセイのために、サイトカインの添加なしのX-Vivo培地中で、96ウェル丸底プレート上の2つのウェルに2e5の全T細胞(2e3のCAR T細胞)を加えて、CAR T細胞頻度を加えた全T細胞集団の1%に正規化した。抗原特異的CAR T細胞増殖を評価するため、非特異的バックグラウンド増殖を計算するために4e3K19細胞を1つのウェルに添加し、4e3K562細胞を第2のウェルに添加した。細胞を混合し、合計6日間インキュベートした。
【0251】
共培養後6日目に、細胞を遠心してPBSで2回洗浄した。個々のT細胞サブセットの増殖を分析するため、死細胞を排除するために試料をCD4BV711及びCD8BV785抗体(Biolegend)、並びにゴースト染料BV510(TONBObiosciences)で染色した。染色後、試料を流し、データをBecton-DickinsonLSR:Fortessaフローサイトメータで収集した。
【0252】
4.増殖研究の結果
N6及びMyD88/N6共刺激ドメインを比較した増殖アッセイの結果を
図16に示す。CAR陰性集団のバックグラウンド増殖を測定するために、TRCのみのヌクレオフェクト対照試料に由来するT細胞におけるCTV希釈物を、K19細胞又はK562細胞と共培養したウェルにおいて比較した。重要なことに、両方のT細胞サブセットは、K19(淡い陰影)及びK562細胞(濃い陰影)の存在下で同様のレベルの非特異的増殖を示し、いずれの増殖もCD19非依存性であることを示唆した(
図16A及び
図16B)。比較すると、N6共刺激ドメインを発現する線状化プラスミドDNAでヌクレオフェクトしたCD4
+及びCD8
+T細胞はどちらもK562対照と比較してK19細胞の存在下でより大きいCTV希釈を示し、実質的な抗原特異的増殖を示した(
図16C及び
図16D)。特に、MyD88/N6共刺激ドメインを発現するT細胞で行った同じ評価にお
いても、K19細胞に応答してCAR T細胞のより大きい増殖を示した(
図16E及び
図16F)。CTVの全体的な希釈は、N6共刺激ドメイン単独を発現するCAR T細胞と比較してMyD88/N6発現T細胞では少なかったが、いずれかの共刺激ドメインの発現は、TRCのみの対照T細胞と比較してCTVのより大きな希釈をもたらした。
【0253】
5.結論
初回抗原刺激を受けたT細胞を、N6又は第3世代MyD88/N6共刺激ドメインのいずれかを発現する線状化プラスミドDNAでヌクレオフェクションすると、CTVの希釈によって示されるように抗原特異的に増殖できるCART細胞が得られた。更に、増殖は、CD4+及びCD8+T細胞サブセットの両方で起こり、非CAR発現対照細胞において見られるバックグラウンドよりも上で起こった。まとめると、この研究は、N6及びMyD88/N6の両方がCAR T細胞において共刺激ドメインとして機能し得ることを実証した。
【0254】
実施例7
誘導性構築物における新規共刺激ドメインの特性化
【0255】
1.第1世代CARを発現するCAR T細胞及び新規共刺激ドメインを含む誘導性構築物の作製
CD3-ζシグナル伝達ドメインを含む第1世代抗CD19 CARと同時発現される誘導性共刺激構築物の一部として本発明に包含される新規共刺激ドメインを評価するために、更なる構築物を調製した。
【0256】
特定の実施例において、5’から3’に、誘導性共刺激構築物のための発現カセット、T2A要素、及び第1世代抗CD19 CARをコードするCAR発現カセットを含む構築物を調製した。
【0257】
CAR発現カセットによってコードされる第1世代抗CD19 CARは、5’から3’に、シグナル配列(配列番号16)、FMC63ベースのCD19特異的scFv(配列番号17)、及び細胞内領域がCD3-ζシグナル伝達ドメイン(配列番号19)を含む上記のCD8ヒンジ及び膜貫通ドメイン(配列番号18)を含んでいた。配列番号34及び配列番号34を含むSV40ビポリAシグナル配列は、CAR配列の3’下流に位置していた。
【0258】
誘導性共刺激構築物は、5’から3’に、N6共刺激ドメイン単独(配列番号8)、又はMyD88ドメイン(配列番号39)及びN6ドメイン(配列番号8)のタンデムを含み、2つのタンデムリガンド結合FKBP12v36ドメイン(配列番号41;国際公開第2015/123527号から得られる配列)を含むFvドメインが続き、それが小分子rimiducidに結合して構築物の二量体化及び共刺激シグナル伝達の活性化を誘導する。
【0259】
先の実施例に記載したように、これらの構築物をpDIプラスミドにクローニングし、誘導性共刺激構築物及び抗CD19 CARの両方の発現をJeTプロモータによって制御した。更に、これらの構築物は、TRC1-2x.87EE部位特異的エンドヌクレアーゼと共に送達されたときにTRAC遺伝子座への標的遺伝子の挿入を可能にするために、TRAC相同性アームに隣接させた。これらの構築物を逆方向末端反復配列に更に隣接させた。
【0260】
いくつかの実験において、ドナー鋳型は、pDIプラスミドの線状化後に線状化DNAとして送達されるであろう。他の場合には、ドナー鋳型はウイルス送達のためにAAV6
粒子にパッケージングされるであろう。
【0261】
N6共刺激ドメインのみを有する誘導性共刺激構築物と共に抗CD19 CARを発現する細胞を、iN6 CAR T細胞と呼ぶ。MyD88及びN6共刺激ドメインの両方を有する誘導性共刺激構築物と共に抗CD19 CARを発現する細胞を、iMyD88/N6CAR T細胞と呼ぶ。
【0262】
2.殺細胞、増殖、及びサイトカイン分泌に関する誘導性構築物を用いたCART細胞の評価
いくつかの実験において、iN6CAR T細胞又はiMyD88/N6CAR T細胞は、初回抗原刺激を受けたT細胞を線形化鋳型プラスミド、TRC1-2x.87EEメガヌクレアーゼ、及びSTINGsiRNAでヌクレオフェクションして、細胞内核酸センサーにより媒介される毒性を低減することによって、実施例4で上述したように作製する。iN6CAR T細胞又はiMyD88/N6CAR T細胞を記載のように更に成長及び拡大させる。
【0263】
誘導性構築物の二量体化を誘導し、細胞内で共刺激シグナル伝達を開始する小分子rimiducidの存在下及び非存在下における殺細胞能力、増殖、及びサイトカイン分泌について、iN6CAR T細胞及びiMyD88/N6 CAR T細胞を特性化する。殺細胞能力及び増殖を評価するために、CAR T細胞を実施例3で上述した抗原誘発ストレス試験にかけ、CAR T細胞を、様々なエフェクター:標的比でCD19(「K19」細胞)を発現するように操作されたK562細胞と共培養する。増殖についても、セルトレースバイオレットで細胞を標識し、抗原を担持するK19細胞と様々なエフェクター:標的比で共培養することによって、実施例4で記載したように評価する。サイトカイン分泌(例えば、ヒトIL-2、TNFα、及びIFNγ)は、様々なエフェクター:標的比でK19細胞と共培養した後、上記の実施例2で記載したように決定する。
【0264】
殺細胞、増殖、及びサイトカイン分泌を調べる同様の実験は、組換えAAV粒子の形質導入を用いて、初回抗原刺激を受けたT細胞にドナー鋳型を送達し、TRC1-2×.87EEメガヌクレアーゼをコードするmRNAでこれを更にヌクレオフェクトして行う。
【0265】
3.iMyD88/N6CAR T細胞の増殖
誘導性構築物中の新規共刺激ドメインの機能性を特性化するために、初回抗原刺激を受けたT細胞を、iMyD88/N6誘導性共刺激構築物を発現する線状化プラスミドDNA、又は対照としてCARの一部として発現させたN6共刺激ドメインでヌクレオフェクトした。細胞を、上記のようにTRC1-2x.87EE部位特異的エンドヌクレアーゼ及びSTINGsiRNAで更にヌクレオフェクトした。陰性対照として、TRC1-2x.87EE部位特異的エンドヌクレアーゼ及びSTINGsiRNAのみを用いて別個の試料をヌクレオフェクトした。CARドナー鋳型構築物を
図17に示す。上記のように、N6 CARをコードする構築物を7206と呼び、配列番号38として提供する。iMyD88/N6共刺激ドメインをコードする構築物を7235と呼び、配列番号42として提供する。
【0266】
ヌクレオフェクション後、T細胞試料を、5%FBS及び30ng/mlのIL-2(Gibco)を添加したX-Vivo(Lonza)培地中に6時間静置した。次いで、試料を半分に別々のウェルに分け、一方のウェルには5ナノモルの最終濃度でrimiducidを入れ、他方のウェルは未処理のままにした。続いて細胞を5日間インキュベートした。5日目に、残りのCD3+T細胞をヒトCD3陽性選択キットII(StemCellTechnologies)を用いて標識し、製造元の推奨に従って磁気的に除去した。残りのCD3枯渇画分を、10ng/mlのIL-15及び3ng/mlのIL-
21(Gibco)を添加したX-Vivo培地に再懸濁した。ヌクレオフェクション後0日目にrimiducidを入れた試料には、5ナノモルの最終濃度で新鮮なrimiducidをスパイクしたが、未処理の試料はサイトカイン添加X-Vivoのみに再懸濁した。次に細胞を更に2日間インキュベートした。
【0267】
アッセイ用の試料を調製するために、rimiducidを入れた、又は入れなかったiMyD88/N6条件及びN6条件の2e6T細胞と、TRC1-2x.87EEのみの対照T細胞を、セルトレースバイオレット(CTV)溶液の2μM溶液で、インビトロで標識した。インキュベーション後、CD19-ビオチンFc(AcroBiosystems)及びストレプトアビジンPE(BD)で染色した後、CTV標識の一貫性及びCAR T細胞頻度をBecton-DickinsonLSR:Fortessaフローサイトメータで評価した。CAR T細胞頻度は、サイトカインを添加していないX-Vivo培地中の96ウェル丸底プレート上の2つの別々のウェルに2e5総T細胞(2e3 CAR T細胞)を加えて、加えた全T細胞集団の1%に対して正規化した。次いで、一方のウェルに4e3の標的K19細胞を入れ、他方のウェルには対照として4e3のK562細胞を入れた。次に、ヌクレオフェクション後0日目と5日目にそれぞれrimiducidを入れた試料に、rimiducidを加えた。細胞を混合し、合計6日間インキュベートした。
【0268】
共培養後6日目に、フローサイトメトリ分析のために試料を染色した。個々のT細胞サブセットの増殖を定量するために、試料をCD4BV711及びCD8BV785抗体(Biolegend)で染色し、ゴースト色素BV510(TONBObiosciences)を染色カクテルに添加することによって分析中に死細胞を排除した。染色後、試料を流し、データをBecton-DickinsonLSR:Fortessaフローサイトメータで収集した。
【0269】
4.増殖研究の結果
新規誘導性共刺激構築物iMyD88/N6をN6CARと比較した増殖アッセイの結果を
図18~
図20に示す。非CAR発現TRCのみのヌクレオフェクト細胞からのCD4
+及びCD8
+T細胞は、K19細胞(淡い陰影)又はK562細胞(濃い陰影)のいずれかと共培養した場合に、同様のレベルの非特異的増殖を示した(
図18A及び
図18B)。
【0270】
対照的に、N6CARを発現するCAR T細胞の増殖は、K562細胞(濃い陰影)とは反対にK19細胞(淡い陰影)と共培養したときにCTVの希釈が大きかったため、抗原依存的であった(
図19A及び
図19C)。更に、非誘導性N6CARを発現するCAR T細胞は、rimiducid及びK19細胞の存在下(濃い陰影)又は非存在下(淡い陰影)で両方のT細胞サブセットの実質的な増殖を示し(
図19B及び
図19D)、スイッチ依存性共刺激ドメインの非存在下ではrimiducidはいかなる機能も有さないことを示した。
【0271】
誘導性共刺激構築物について、iMyD88/N6を発現するCD4
+及びCD8
+T細胞の両方の増殖は、K562対照細胞(濃い陰影)と比較して、K19細胞(淡い陰影)と共培養した場合に多かった(
図20A及び
図20C)。重要なことに、CTV希釈の増加は、分析した両方のT細胞サブセットについてK19細胞と共に培養した場合、rimiducid処理していない試料(淡い陰影)と比較してrimiducid(濃い陰影)に依存し、iMyD88/N6スイッチの誘導機能を支持した(
図20B及び
図20D)。
【0272】
5.結論
CAR T細胞上の新規誘導性共刺激構築物iMyD88/N6の発現は、抗原依存性であるCD4+及びCD8+T細胞の両方の増殖をもたらした。驚くべきことに、培養T細胞上のCTVの希釈は、rimiducidの存在下で最大であり、CAR T細胞中で発現された場合の共刺激ドメイン構築物の誘導性の性質を示している。共刺激ドメインがCARの一部として発現される場合に、rimiducidはCAR T細胞増殖に影響を及ぼさなかったため、これらのデータは、CAR T細胞機能に対する新規スイッチ共刺激ドメインの機能性を支持する。
配列番号8、5、6、又は7のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する共刺激ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。