(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005964
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】グラビア印刷用のシリンダーの版照合方法
(51)【国際特許分類】
B41F 9/18 20060101AFI20240110BHJP
B41F 13/24 20060101ALI20240110BHJP
B41F 13/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B41F9/18
B41F13/24
B41F13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106465
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】520495906
【氏名又は名称】株式会社カナオカホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100081949
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 欣正
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 孝行
【テーマコード(参考)】
2C034
【Fターム(参考)】
2C034AA22
(57)【要約】
【課題】 グラビア印刷に使用するシリンダーにおいて、版面を製版したシリンダーを印刷製品の製造仕様のものと合致するかを照合する。
【解決手段】 圧胴7の端部側方にインキはね防止用のカバー4を設けたグラビア印刷機において、グラビア印刷用のシリンダー1の端部寄りにして圧胴の圧接個所より外れ、さらにインキはね防止用のカバーにより覆われる領域に、ユニークなコード6を刻印によりダイレクトマーキングし、上記コードを識別情報として、ダイレクトマーキングスキャン性能を有するハンディスキャナー、ハンディターミナルで読み取ることにより、読み取った識別情報を印刷製品の製造仕様中に登録された識別情報と照合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧胴の端部側方にインキはね防止用のカバーを設けたグラビア印刷機において、グラビア印刷用のシリンダーの端部寄りにして圧胴の圧接個所より外れ、さらにインキはね防止用のカバーにより覆われる領域に、ユニークなコードを刻印によりダイレクトマーキングし、上記コードを識別情報として、ダイレクトマーキングスキャン性能を有するハンディスキャナー、ハンディターミナルで読み取ることにより、読み取った識別情報を印刷製品の製造仕様中に登録された識別情報と照合することを特徴とするグラビア印刷用のシリンダーの版照合方法。
【請求項2】
ユニークなコードはQRコード(登録商標)、データマトリクス、POS、文字列などである請求項1記載のグラビア印刷用のシリンダーの版照合方法。
【請求項3】
刻印するコードを印刷用のシリンダーの端部から30mm以下の領域に設ける請求項1または2記載のグラビア印刷用のシリンダーの版照合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、グラビア印刷に使用するシリンダーにおいて、版面を製版したシリンダーを印刷製品の製造仕様のものと合致するかを照合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷においては、外周面に凹版面(セル)を製版したシリンダーを回転させ、このシリンダーへ印刷製品となるフィルムなどの原紙を圧接走行させて凹版面に保持したインキをフィルムなどの紙面へ吸着移行させる。
【0003】
一つのグラビア印刷機には多数のシリンダーが使用され、また、印刷工場においては多数のグラビア印刷機が稼働している。そこで、製版されたシリンダーの選択間違いがないか、印刷対象となる印刷製品の製造仕様と照合する作業が不可欠となる。
【0004】
前記の照合作業のために、従来はユニークなコードをQRコード(登録商標)、データマトリクス、POSなどで表示した識別ラベルをシリンダーの版カバーに添付し、版カバーに貼付した識別ラベルのコードをハンディスキャナーで読み取ることにより印刷製品の製造仕様中に登録された識別情報と照合していた。
【0005】
また、識別ラベルに代えRFタグを用いる方法もとられていた。
【0006】
一方、グラビア印刷用のシリンダーの管理方法としてシリンダーの端部やシャフトの外周面に識別表示を付することも提案されていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記の、識別ラベルをグラビア印刷用のシリンダーの版カバーに貼付する方法は識別ラベルの貼り間違え、カバーの掛け間違えなどにより、照合作業を行っていたにも関わらず誤ったシリンダーで印刷される事故が稀に発生していた。
【0009】
また、RFIDを用いた照合方法においては、シリンダーが増えるにつれ新たにRFタグを購入する費用が発生する問題があった。
【0010】
さらに、金属でできたグラビア印刷用のシリンダーへのRFタグを直接添付すると読み込みができない、シリンダー表面への添付では印刷時に邪魔になる、シリンダー端部ではインキに埋もれてしまうため剥がれるなどの問題を生じた。
【0011】
そのためにシリンダー内部にプラスチック製の台座を設けて設置するなどの方法が取られたが、検出感度が悪く、印刷時にシリンダー内部に入る溶剤、インキにより剥がれてしまうなどの問題が生じた。
【0012】
また、落版してシリンダー母材を再利用する場合にRFIDのデータを書き換え再添付しなければならないという手間も生じた。
【0013】
また、RFIDの場合タグの付け間違え、脱落というリスクの発生も懸念される。
【0014】
一方、特許文献1に記載の発明はシリンダー母材自体、すなわち、落版して再利用するシリンダー母材の識別手段であり、一つのシリンダー母材が印刷の都度、版面を製版して別のシリンダーになる版面を製版したシリンダーの識別手段とはなり得ない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は前記の問題を解消したグラビア印刷用のシリンダーの版照合方法を提供することを目的として創作されたものである。
【0016】
すなわち、本願発明のグラビア印刷用のシリンダーの版照合方法は、圧胴の端部側方にインキはね防止用のカバーを設けたグラビア印刷機において、グラビア印刷用のシリンダーの端部寄りにして圧胴の圧接個所より外れ、さらにインキはね防止用のカバーにより覆われる領域に、ユニークなコードを刻印によりダイレクトマーキングし、上記コードを識別情報として、ダイレクトマーキングスキャン性能を有するハンディスキャナー、ハンディターミナルで読み取ることにより、読み取った識別情報を印刷製品の製造仕様中に登録された識別情報と照合することを特徴とする。
【0017】
また、請求項2記載の発明は前記のグラビア印刷用のシリンダーの版照合方法において、ユニークなコードはQRコード(登録商標)、データマトリクス、POS、文字列などであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項3記載の発明は前記のグラビア印刷用のシリンダーの版照合方法において、刻印するコードを印刷用のシリンダーの端部から30mm以下の領域に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本願発明のグラビア印刷用のシリンダーの版照合方法によれば、シリンダーにユニークなコードをQRコード(登録商標)、データマトリクス、POS、文字列などとして刻印によりダイレクトマーキングし、上記コードを識別情報として、ダイレクトマーキングスキャン性能を有するハンディスキャナー、ハンディターミナルで読み取るので、これまでの識別方法として実施されてきた版カバー、RFIDといった、シリンダーカバーやシリンダーに識別表示できるものを貼り付けるといった作業により発生する貼り間違えを防止することが可能になる。
【0020】
一方、コードが配置される位置は、グラビア印刷用のシリンダーの端部寄りにして圧胴の圧接個所より外れているので圧胴にニップされず版面からインキが転写されない。また、通常その付近にはインキが飛散することを防止するためにインキはね防止用のカバーが設置されるのでインキはねのリスクもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本願発明のグラビア印刷用のシリンダーの版照合方法に使用されるシリンダーの平面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本願発明のグラビア印刷用のシリンダーの版照合方法に使用されるシリンダーおよび圧胴を模式的に表した平面図である。図中符号1は公知のグラビア印刷用のシリンダーであり、表面にインキを保持するための凹版面2が製版される。また、図中符号7は圧胴である。
【0023】
前記のシリンダー1において、コード6はグラビア印刷用のシリンダーの端部寄りにして圧胴の圧接個所3より外れた領域5に刻印によりダイレクトマーキングされる。また、この個所はインキはね防止用のカバー4により覆われる領域でもある。
【0024】
なお、シリンダー、圧胴、被印刷物の関係において、1200mm幅のシリンダーに対して、圧胴はマイナス60mm幅、被印刷物幅はマイナス40mm幅が最大となる。この場合、圧胴はマイナス60mm幅は左右均等であり、片側30mmは圧胴にニップされず版面からインキが転写されない。
【0025】
圧胴の幅は被印刷物の幅に合わせて変えながら加工する場合があるが、シリンダー端部から30mm以内であればどの圧胴幅であってもニップされインキが転写されることがない。
【0026】
コード6はユニークなコードであり、QRコード(登録商標)、データマトリクス、POS、文字列などとして刻印によりダイレクトマーキングされる。
【0027】
グラビア印刷用のシリンダーは曲面、鏡面であり刻印されたコードをハンディスキャナーで読み込むことができなかったが、近年ダイレクトマーキング用のハンディスキャナー、ハンディターミナルが登場し、読み込み精度が向上したことで読み込みが可能となった。
【0028】
以上のグラビア印刷用のシリンダーはコード6からハンディスキャナー、ハンディターミナルで識別情報を読み取ることができるので、それを印刷製品の製造仕様中に登録された識別情報と照合することにより版照合が実施される。
【符号の説明】
【0029】
1 シリンダー
2 凹版面
3 圧接個所
4 インキはね防止用のカバー
5 コードが刻印される領域
6 コード
7 圧胴