(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059640
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】癌を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 51/04 20060101AFI20240423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K51/04 100
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024013859
(22)【出願日】2024-02-01
(62)【分割の表示】P 2020557339の分割
【原出願日】2019-04-16
(31)【優先権主張番号】62/659,016
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/670,442
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508347801
【氏名又は名称】エンドサイト・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ENDOCYTE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】アリソン・エイ・アーマー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】PSMAを発現する癌を治療する方法を提供する。
【解決手段】(3S,10S,14S)-3-[(ナフタレン-2-イル)メチル]-1,4,12-トリオキソ-1-[(1R,4S)-4-[[2-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]アセトアミド]メチル]シクロヘキシル]-2,5,11,13-テトラアザヘキサデカン-10,14,16-トリカルボン酸と放射性金属との錯体の治療有効量を投与する方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療を、このような治療を必要としている患者において行う方法であって、治療有効量の式1の化合物を前記患者に投与することを含み、
【化1】
前記化合物が、金属と錯体を形成している、方法。
【請求項2】
前記癌が、PSMA発現癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式1の化合物が、少なくとも約98パーセント純粋である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記癌が、前立腺癌、または転移性去勢抵抗性前立腺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(原文に記載なし)
【請求項6】
前記式1の化合物が、非経口剤形で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非経口剤形が、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、および髄腔内からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記治療有効量が、約2GBq~約13GBq、または約4GBq~約11GBq、または約5GBq~約10GBq、または約6GBq~約9GBq、約6.5GBq~約8.5GBq、または約7GBq~約8GBqである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記治療有効量が、約7.4GBqである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記癌によるPSMA発現を画像化することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記画像化することが、前記投与する工程の前に行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記画像化することが、撮影法によって実行され、前記撮影法が、SPECT撮影法、PET撮影法、IHC、およびFISHからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記画像化することが、SPECT撮影法によって実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
画像化することによって前記患者のPSMA状態を決定することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記撮影法が、SPECT撮影法である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記患者の前記PSMA状態が、前記患者への臨床的利益と相関する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記臨床的利益が、腫瘍増殖の阻害、疾患安定、部分奏功、および完全奏功からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記臨床的利益が、疾患安定である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのPSMA陽性病変が、機能的に活性なPSMAを示す、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、少なくとも1つの前治療で治療されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの前治療が、アンドロゲン経路(axis)全身治療、化学療法剤、外科手術、放射線療法、免疫療法、光線力学的療法、幹細胞療法、および温熱療法からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの前治療が、アンドロゲン経路薬物全身治療である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの前治療が、アビラテロン、オルテロネル、ガレテロン、セビテロネル、アパルタミド、エンザルタミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの前治療が、パリホスファミド、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ペメトレキセド、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ビノレルビン、エリブリン、ドセタキセル、シクロホスファミド、ドキソルビシン、レゴラフィニブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記式1の化合物が、第2の治療と組み合わせて投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の治療が、最良の支持療法である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の治療が、最良の標準療法である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の治療が、最良の支持療法/最良の標準療法である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の治療が、アンドロゲン経路全身治療である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記アンドロゲン経路全身治療が、アビラテロン、オルテロネル、ガレテロン、セビテロネル、アパルタミド、エンザルタミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の治療が、放射線療法である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記放射線療法が、体外照射療法(EBRT)である、請求項25に記載の方法。
(請求項32)
前記式1の化合物が、1週間に1回、または2週間に1回、または3週間に1回、または4週間に1回、または5週間に1回、または6週間に1回、または7週間に1回、または8週間に1回のスケジュールで投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記式1の化合物が、4~6週間に1回のスケジュールで投与される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記式1の化合物が、約2~8サイクルの前記スケジュール、または約3~7サイクルの前記スケジュール、または約4~6サイクルの前記スケジュールにわたって投与される、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記金属が、90Y、177Lu、64Cd、153Gd、155Gd、157Gd、213Bi、および225Acからなる群から選択される、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記金属が、177Luである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記金属が、225Acである、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月17日に提出された米国仮出願第62/659,016号および2018年5月11日に出願された米国仮出願第62/670,442号に対して、米国特許法第119条(e)の下で優先権を主張するものであり、これらの開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載の本発明は、標的療法のための薬物送達コンジュゲートに関する。本明細書に記載の本発明は、PSMAを発現する癌を式1の化合物で治療する方法に関する。本明細書に記載の本発明はまた、式1の化合物での治療後に疾患安定が生じる患者において、式1の化合物でPSMA発現癌を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、細胞内セグメント(アミノ酸1~18)、膜貫通ドメイン(アミノ酸19~43)、および広範な細胞外ドメイン(アミノ酸44~750)を含む、約110kDの分子量を有する、II型細胞表面膜結合糖タンパク質である。細胞内セグメントおよび膜貫通ドメインの機能は現在重要ではないと考えられているが、細胞外ドメインはいくつかの異なる活動に関与している。PSMAは、N-アセチル-アスパルチルグルタメート(NAAG)をグルタミン酸とN-アセチルアスパラギン酸とに代謝する、中枢神経系において役割を果たす。したがって、これはまた、N-アセチルアルファ結合酸性ジペプチダーゼ(NAALADアーゼ)と称されることもある。PSMAはまた、ペプチドおよび小分子からのポリ-γ-グルタメート化葉酸およびα-結合型グルタメートからγ-結合型グルタメートを除去する近位小腸での役割のために、葉酸ヒドロラーゼI(FOLH I)またはグルタメートカルボキシペプチダーゼ(GCP II)と称されることもある。
【0004】
PSMAは、主に前立腺癌細胞での発現レベルが高いことから名付けられているが、前立腺癌細胞に対するその特定の機能は解決されないままである。PSMAは、腎臓、近位小腸、唾液腺などの人体の他の臓器と比較した場合、悪性前立腺組織で過剰発現される。他の多くの膜結合タンパク質とは異なり、PSMAは、ビタミン受容体などの細胞表面結合受容体と同様の方法で、細胞内に急速に内在化する。PSMAは、クラスリン被覆小孔を介して内在化し、その後、細胞表面にリサイクルするか、またはリソソームに移動することのいずれかが可能である。相互変換の直接的な証拠が議論されているが、PSMAの二量体および単量体の形態は相互変換可能であることが示唆されている。それでも、PSMAの二量体だけが酵素活性を保有しており、単量体は保有していない。
【0005】
前立腺細胞の細胞表面でのPSMAの活性は調査中であるが、本発明者らによって、PSMAが、薬物化合物を含む生物学的に活性な薬剤のこのような前立腺細胞への選択的および/または特異的送達のための実行可能な標的を表すことが認識されている。このような薬物化合物の1つは化合物1である。
【化1】
(別名(3S,10S,14S)-3-[(ナフタレン-2-イル)メチル]-1,4,12-トリオキソ-1-[(1R,4S)-4-[[2-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]アセトアミド]メチル]シクロヘキシル]-2,5,11,13-テトラアザヘキサデカン-10,14,16-トリカルボン酸)ここで、
177Luは、この化合物と錯体を形成しており、WO2015/055318に記載されているように癌の治療に有用である。化合物1は、WO2015/055318に記載されている方法に従って調製することができ、WO2015/055318は、実施例3および実施例5に記載されているように、化合物1の調製のために参照により組み込まれる。
【0006】
理論に束縛されるものではないが、PSMA-617はファーマコフォアリガンドであるグルタメート-尿素-リジン、キレート剤DOTA(177Luと錯体形成することができる)、および、これら2つの実体を接続するリンカーからなると考えられている。さらに、尿素ベースの結合モチーフは、薬剤が疾患部位に結合し、PSMAによって内在化されることを可能にすると考えられている。さらに、177Lu-PSMA-617の結合は、エンドサイトーシスによる内在化と、癌細胞内でのリガンドおよびその結合した放射性カーゴの持続的な保持につながると考えられている。
【0007】
別のこのような化合物は、PSMA画像化コンジュゲート4である。
【化2】
(別名4,6,12,19-テトラアザドコサン-1,3,7-トリカルボン酸、22-[3-[[[2-[[[5-(2-カルボキシエチル)-2-ヒドロキシフェニル]メチル](カルボキシメチル)アミノ]エチル](カルボキシメチル)アミノ]メチル]-4-ヒドロキシ-フェニル]-5,13,20-トリオキソ-、(3S,7S))、ここで、
68Ga(または同様の放射性金属同位体)がコンジュゲートに錯体を形成し、Eder M,Schafer M,Bauder-Wust U,Hull WE,Wangler C,Mier W,et al.68Ga-complex lipophilicity and the targeting property of a urea-based PSMA inhibitor for PET imaging.Bioconjug Chem.2012;23:688-97に記載されているように、癌の画像化に有用である。PSMA画像化コンジュゲート4は、(Eder、2012)に記載されている方法に従って調製することができ、(Eder、2012)は、実施例に記載されているように、PSMA画像化コンジュゲート4の調製のために参照により組み込まれる。
【発明の概要】
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療有効量の化合物1を患者に投与することを含む、このような治療を必要とする患者の癌を治療するための方法を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、患者の癌を治療するための化合物1の使用を提供する。いくつかの態様では、使用は、治療有効量の化合物1を患者に投与することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、患者の癌の治療に有用な薬剤の調製における化合物1の使用を提供する。いくつかの態様では、薬剤は、治療有効量の化合物1を含む。
【0011】
これらの実施形態のいくつかの態様では、癌は、PSMAを発現する癌である。これらの実施形態のいくつかの態様では、化合物は、少なくとも約98パーセント純粋である。いくつかの実施形態では、癌は、神経膠腫、癌腫、肉腫、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、鼻咽頭癌腫、白血病、腺癌、および骨髄腫からなる群から選択される。
【0012】
これらの実施形態のいくつかの態様では、癌は、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭の癌、首の癌、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、子宮内膜癌、直腸癌、胃癌、結腸癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、転移性乳癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰の癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、非小細胞肺癌、副腎癌、軟組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性白血病、急性白血病、リンパ球性リンパ腫、胸膜中皮腫、膀胱癌、バーキットリンパ腫、尿管癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、および胃食道接合部の腺癌からなる群から選択される。これらの実施形態のいくつかの態様では、癌は、原発性または続発性脳癌である。これらの実施形態のいくつかの態様では、癌は、前立腺癌である。これらの実施形態のいくつかの態様では、癌は、転移性前立腺癌である。
【0013】
これらの実施形態のいくつかの態様では、化合物1は、非経口剤形で投与される。これらの実施形態のいくつかの態様では、非経口剤形は、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、および髄腔内からなる群から選択される。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約2GBq~約13GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約4GBq~約11GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約5GBq~約10GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約6GBq~約9GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約6.5GBq~約8.5GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約7GBq~約8GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約7.4GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、総投与量は、約15GBq~約200GBqの範囲である。これらの実施形態のいくつかの態様では、総投与量は、約25GBq~約185GBqの範囲である。これらの実施形態のいくつかの態様では、総投与量は、約35GBq~約150GBqの範囲である。これらの実施形態のいくつかの態様では、総投与量は、約40GBq~約100GBqの範囲である。これらの実施形態のいくつかの態様では、総投与量は、約44GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、対象の治療の最長持続期間は、約19~23ヶ月である。
【0014】
これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、2GBq~13GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、4GBq~11GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、5GBq~10GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、6GBq~9GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、6.5GBq~8.5GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、7GBq~8GBqである。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、7.4GBqである。
【0015】
これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約0.1mg/m2~約6.0mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約0.1mg/m2~約5.0mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約0.1mg/m2~約4.0mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約0.1mg/m2~約3.5mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約0.1mg/m2~約3.0mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約0.1mg/m2~約2.5mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、約0.1mg/m2~約2.0mg/m2である。
【0016】
これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、0.1mg/m2~6.0mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、0.1mg/m2~5.0mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、0.1mg/m2~4.0mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、0.1mg/m2~3.5mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、0.1mg/m2~3.0mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、0.1mg/m2~2.5mg/m2である。これらの実施形態のいくつかの態様では、治療有効量は、0.1mg/m2~2.0mg/m2である。
【0017】
他の態様では、本明細書に記載の方法および使用は、癌によるPSMA発現を画像化することをさらに含む。これらの実施形態のいくつかの態様では、画像化する工程は、投与する工程の前に行われる。これらの実施形態のいくつかの態様では、画像化は、撮影法によって実行され、撮影法が、SPECT撮影法、PET撮影法、IHC、およびFISHからなる群から選択される。これらの実施形態のいくつかの態様では、画像化は、SPECT撮影法によって実行される。
【0018】
これらの実施形態のいくつかの態様では、画像化の工程は、式2のPSMAリガンド画像化コンジュゲート、
【化3】
またはその医薬的に許容される塩を患者に投与することを含み、式中、R’は水素であるか、またはR’は、アルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、これらのそれぞれが任意に置換されており、放射性核種は、コンジュゲートに結合されている。
【0019】
これらの実施形態のいくつかの態様では、画像化の工程は、式3のPSMAリガンド画像化コンジュゲート、
【化4】
またはその医薬的に許容される塩を患者に投与することを含み、式中、R’は水素であるか、またはR’は、アルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、これらのそれぞれが任意に置換されており、Mは、放射性核種のカチオンである。これらの実施形態のいくつかの態様では、コンジュゲート、またはその医薬的に許容される塩のMは、ガリウムの同位体、インジウムの同位体、銅の同位体、テクネチウムの同位体、およびのレニウム同位体からなる群から選択される。これらの実施形態のいくつかの態様では、コンジュゲート、またはその医薬的に許容される塩のMは、テクネチウムの同位体である。
【0020】
これらの実施形態のいくつかの態様では、PSMAリガンド画像化コンジュゲートは、式2aのもの、
【化5】
またはその医薬的に許容される塩であり、放射性核種がコンジュゲートに結合している。これらの実施形態のいくつかの態様では、PSMAリガンド画像化コンジュゲートは、式3aのもの、
【化6】
またはその医薬的に許容される塩である。
【0021】
これらの実施形態のいくつかの態様では、画像化の工程は、式4のPSMAリガンド画像化コンジュゲート、
【化7】
またはその医薬的に許容される塩を患者に投与することを含み、放射性核種がコンジュゲートに結合している。これらの実施形態のいくつかの態様では、放射性核種は、
68Gaである。
【0022】
他の態様では、本明細書に記載の方法および使用は、画像化によって患者のPSMA状態を決定することをさらに含む。これらの実施形態のいくつかの態様では、撮影法は、SPECT撮影法である。これらの実施形態のいくつかの態様では、患者のPSMA状態は、患者への臨床的利益と相関している。これらの実施形態のいくつかの態様では、臨床的利益は、腫瘍増殖の阻害、疾患安定、部分奏功、および完全奏功からなる群から選択される。これらの実施形態のいくつかの態様では、臨床的利益は、疾患安定である。これらの実施形態のいくつかの態様では、PSMA陽性病変は、機能的に活性なPSMAを示す。
【0023】
これらの実施形態のいくつかの態様では、決定する工程は、式2のPSMAリガンド画像化コンジュゲート、
【化8】
またはその医薬的に許容される塩を患者に投与することを含み、式中、R’は水素であるか、またはR’は、アルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、これらのそれぞれが任意に置換されており、コンジュゲートは放射性核種に結合されている。
【0024】
これらの実施形態のいくつかの態様では、決定する工程は、式3のPSMAリガンド画像化コンジュゲート、
【化9】
またはその医薬的に許容される塩を患者に投与することを含み、式中、R’は水素であるか、またはR’は、アルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、これらのそれぞれが任意に置換されており、Mは、放射性核種のカチオンである。
【0025】
これらの実施形態のいくつかの態様では、コンジュゲート、またはその医薬的に許容される塩のMは、ガリウムの同位体、インジウムの同位体、銅の同位体、テクネチウムの同位体、およびのレニウム同位体からなる群から選択される。これらの実施形態のいくつかの態様では、コンジュゲート、またはその医薬的に許容される塩のMは、テクネチウムの同位体である。これらの実施形態のいくつかの態様では、PSMAリガンド画像化コンジュゲートは、式2aのもの、
【化10】
またはその医薬的に許容される塩であり、放射性核種がコンジュゲートに結合している。
【0026】
これらの実施形態のいくつかの態様では、PSMAリガンド画像化コンジュゲートは、式3aのもの、
【化11】
またはその医薬的に許容される塩である。
【0027】
これらの実施形態のいくつかの態様では、決定する工程は、式4のPSMAリガンド画像化コンジュゲート、
【化12】
またはその医薬的に許容される塩を患者に投与することを含み、放射性核種がコンジュゲートに結合している。これらの実施形態のいくつかの態様では、放射性核種は、
68Gaである。
【0028】
他の実施形態では、本開示は、治療有効量の化合物1を患者に投与することを含む、このような治療を必要とする患者の癌を治療する方法を提供し、
【化13】
ここでは、
177Luは化合物1と錯体を形成し、化合物1またはその医薬的に許容される塩が投与された後に疾患安定が生じる。
【0029】
他の実施形態では、本開示は、化合物1の使用を提供し、
【化14】
ここでは、
177Luは化合物1と錯体を形成し、化合物1またはその医薬的に許容される塩が投与された後に疾患安定が生じる。これらの実施形態のいくつかの態様では、使用は、治療有効量の化合物1を患者に投与することを含む。
【0030】
他の実施形態では、本開示は、化合物1であって、
【化15】
177Luが化合物1と錯体を形成する、化合物1の、患者の癌の治療に有用な薬剤の調製における使用を提供し、化合物1またはその医薬的に許容される塩が投与された後に疾患安定が生じる。いくつかの態様では、薬剤は、治療有効量の化合物1またはその医薬的に許容される塩を含む。
【0031】
これらの実施形態のいくつかの態様では、患者は、少なくとも1つの前治療で治療されている。これらの実施形態のいくつかの態様では、少なくとも1つの前治療は、アンドロゲン経路(axis)全身治療、化学療法剤、外科手術、放射線療法、免疫療法、光線力学的療法、幹細胞療法、および温熱療法からなる群から選択される。これらの実施形態のいくつかの態様では、少なくとも1つの前治療は、全身治療である。これらの実施形態のいくつかの態様では、全身治療は、パリホスファミド、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ペメトレキセド、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ビノレルビン、エリブリン、ドセタキセル、シクロホスファミド、ドキソルビシン、レゴラフィニブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。これらの実施形態のいくつかの態様では、癌は、PSMAを発現する癌である。これらの実施形態のいくつかの態様では、化合物は、少なくとも約98パーセント純粋である。
【0032】
本発明の実施形態は、以下の列挙された条項によってさらに説明される:
1.癌の治療を、このような治療を必要としている患者において行う方法であって、治療有効量の式1または2の化合物を患者に投与することを含み、
【化16】
化合物は金属と錯体を形成している、方法。
【0033】
2.癌が、PSMA発現癌である、条項1に記載の方法。
【0034】
3.式1の化合物が、少なくとも約98パーセント純粋である、条項1または2に記載の方法。
【0035】
4.癌が、前立腺癌である、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0036】
5.癌が、転移性去勢抵抗性前立腺癌である、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0037】
6.式1の化合物が、非経口剤形で投与される、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0038】
7.非経口剤形が、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、および髄腔内からなる群から選択される、条項6に記載の方法。
【0039】
8.治療有効量が、約2GBq~約13GBqである、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0040】
9.治療有効量が、約4GBq~約11GBqである、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0041】
10.治療有効量が、約5GBq~約10GBqである、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0042】
11.治療有効量が、約6GBq~約9GBqである、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0043】
12.治療有効量が、約6.5GBq~約8.5GBqである、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0044】
13.治療有効量が、約7GBq~約8GBqである、前述の条項のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
14.治療有効量が、約7.4GBqである、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0046】
15.癌によるPSMA発現を画像化することをさらに含む、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0047】
16.画像化することが、投与する工程の前に行われる、条項15に記載の方法。
【0048】
17.画像化することが、撮影法によって実行され、撮影法が、SPECT撮影法、PET撮影法、IHC、およびFISHからなる群から選択される、条項16に記載の方法。
【0049】
18.画像化することが、SPECT撮影法によって実行される、条項17に記載の方法。
【0050】
19.画像化することによって患者のPSMA状態を決定することをさらに含む、条項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0051】
20.撮影法が、SPECT撮影法である、条項19に記載の方法。
【0052】
21.患者のPSMA状態が、患者への臨床的利益と相関する、条項20に記載の方法。
【0053】
22.臨床的利益が、腫瘍増殖の阻害、疾患安定、部分奏効、および完全奏功からなる群から選択される、条項21に記載の方法。
【0054】
23.臨床的利益が、疾患安定である、条項22に記載の方法。
【0055】
24.少なくとも1つのPSMA陽性病変が、機能的に活性なPSMAを示す、条項21に記載の方法。
【0056】
25.患者が少なくとも1つの前治療で治療されている、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
26.少なくとも1つの前治療が、アンドロゲン経路(axis)全身治療、化学療法剤、外科手術、放射線療法、免疫療法、光線力学的療法、幹細胞療法、および温熱療法からなる群から選択される、条項25に記載の方法。
【0058】
27.少なくとも1つの前治療が、アンドロゲン経路薬物全身治療である、条項26に記載の方法。
【0059】
28.少なくとも1つの前治療が、アビラテロン、オルテロネル、ガレテロン、セビテロネル、アパルタミド、エンザルタミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、条項26に記載の方法。
【0060】
29.少なくとも1つの前治療が、パリホスファミド、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ペメトレキセド、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ビノレルビン、エリブリン、ドセタキセル、シクロホスファミド、ドキソルビシン、レゴラフィニブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、条項25に記載の方法。
【0061】
30.式1の化合物が、第2の治療と組み合わせて投与される、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
31.第2の治療が、最良の支持療法である、条項30に記載の方法。
【0063】
32.第2の治療が、最良の標準療法(standard of care)である、条項30に記載の方法。
【0064】
33.第2の治療が、最良の支持療法/最良の標準療法である、条項30に記載の方法。
【0065】
34.第2の治療が、アンドロゲン経路全身治療である、条項30に記載の方法。
【0066】
35.アンドロゲン経路全身治療が、アビラテロン、オルテロネル、ガレテロン、セビテロネル、アパルタミド、エンザルタミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、条項34に記載の方法。
【0067】
36.第2の治療が、放射線療法である、条項30に記載の方法。
【0068】
37.放射線療法が、体外照射療法(EBRT)である、条項30に記載の方法。
【0069】
38.式1の化合物が、1週間に1回のスケジュールで投与される、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0070】
39.式1の化合物が、2週間に1回のスケジュールで投与される、条項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
40.式1の化合物が、3週間に1回のスケジュールで投与される、条項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0072】
41.式1の化合物が、4週間に1回のスケジュールで投与される、条項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0073】
42.式1の化合物が、5週間に1回のスケジュールで投与される、条項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0074】
43.式1の化合物が、6週間に1回のスケジュールで投与される、条項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0075】
44.式1の化合物が、7週間に1回のスケジュールで投与される、条項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0076】
45.式1の化合物が、8週間に1回のスケジュールで投与される、条項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
46.式1の化合物が4~6週間に1回のスケジュールで投与される、条項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【0078】
47.式1の化合物が、約2~8サイクルのスケジュールの間投与される、条項38~46のいずれか一項に記載の方法。
【0079】
48.式1の化合物が、約3~7サイクルのスケジュールの間投与される、条項38~46のいずれか一項に記載の方法。
【0080】
49.式1の化合物が、約4~6サイクルのスケジュールの間投与される、条項38~46のいずれか一項に記載の方法。
【0081】
50.化合物1または化合物2と錯体を形成する金属が、90Y、177Lu、64Cd、153Gd、155Gd、157Gd、213Bi、および225Acからなる群から選択される、前述の条項のいずれか一項に記載の方法。
【0082】
51.化合物1と錯体を形成する金属が、177Luである、条項50に記載の方法。
【0083】
52.化合物1と錯体を形成する金属が、225Acである、条項50に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【0085】
定義
本発明によれば、「機能的に活性なPSMA」とは、PSMAリガンドに結合する細胞表面膜結合糖タンパク質を意味する。PSMAリガンドは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第US2010/0324008A1号に記載されているものなどの当業者に周知であることが理解されよう。
【0086】
本発明によれば、「臨床的利益」は、化合物1による治療に対する患者の奏功を意味し、奏功には、米国食品医薬品局によって定義された他の臨床的利益の中でも、患者の全生存期間、化合物1による4サイクル以上の治療(例えば、4週間の治療)を受ける能力、腫瘍増殖の阻害、疾患安定、部分奏功、および/または完全奏功が挙げられる。
【0087】
本発明によれば、「腫瘍増殖の阻害」は、腫瘍サイズの縮小、腫瘍の完全な消失、または化合物1による治療の過程にわたって30%未満の患者の腫瘍の増殖を意味する。
【0088】
本発明によれば、「疾患安定」は、化合物1による治療の過程にわたって患者に疾患の物質的な進行がないことを意味する。
【0089】
本発明によれば、「部分奏功」は、化合物1で治療された患者における30%以上の腫瘍サイズの減少を意味する。
【0090】
本発明によれば、「完全奏功」は、化合物1で治療された患者における検出可能な疾患の消失を意味する。
【0091】
本発明によれば、「前治療」は、患者が当技術分野において既知の少なくとも1つの前治療で治療されていることを意味する。前治療は、化学療法剤、外科手術、放射線療法、免疫療法、光力学的療法、幹細胞療法、温熱療法などが挙げられるが、これらに限定されない、当業者に既知の任意の治療であり得ることが理解されよう。前治療には、アビラテロン、オルテロネル、ガレテロン、セビテロネル、アパルタミド、エンザルタミド、パリホスファミド、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ペメトレキセド、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ビノレルビン、エリブリン、ドセタキセル、シクロホスファミド、ドキソルビシン、レゴラフィニブ、およびこれらの組み合わせによる治療が挙げられるが、これらに限定されない全身治療が含まれ得る。
【0092】
本発明によれば、「アルキル」という用語は、任意に、分岐している炭素原子の鎖を含む。ある特定の実施形態では、アルキルは、有利には、C1~C24、C1~C12、C1~C8、C1~C6、およびC1~C4を含む、限定された長さのものであることがさらに理解されよう。実例として、C1~C8、C1~C6、およびC1~C4を含む、このような特に限定された長さのアルキル基は、低級アルキルと呼ばれる場合がある。本明細書において、より短いアルキル、アルケニル、および/またはアルキニル基は、化合物により低い親油性を付加する可能性があり、したがって、異なる薬物動態学的挙動を有することが理解される。本明細書に記載の本発明の実施形態では、それぞれの場合において、アルキルの列挙は、本明細書で定義されるアルキル、および任意に低級アルキルを指すことが理解されるべきである。例示的なアルキル基には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「カルボキシアルキル」基は、本明細書に記載の「アルキル」基と「カルボキシ」基との組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、「ヒドロキシアルキル」基は、本明細書に記載の「アルキル」基と「ヒドロキシ」基との組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、「アミノアルキル」基は、本明細書に記載の「アルキル」基と「アミノ」基との組み合わせを含む。
【0093】
本発明によれば、「ヘテロアルキル」という用語は、炭素および少なくとも1個のヘテロ原子の両方を含む原子の鎖を含み、任意に分岐している。例示的なヘテロ原子には、窒素、酸素、および硫黄が挙げられる。ある特定の変形例では、例示的なヘテロ原子には、リン、およびセレンも含まれる。
【0094】
本発明によれば、「アリール」という用語は、6~14個の環炭素原子を有する単環式および多環式芳香族炭素環式基を含み、これらのそれぞれは、任意に置換されてもよい。本明細書に記載の例示的な芳香族炭素環式基には、フェニル、ナフチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明によれば、「ヘテロアリール」という用語は、5~10個の環原子を有する芳香族複素環基を含み、これらのそれぞれは、任意に置換されてもよい。例示的な芳香族複素環基には、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、テトラジニル、キノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明によれば、「ヘテロアリールアルキル」という用語は、本明細書に記載の「アルキル」基と本明細書に記載の「ヘテロアリール」基との組み合わせを含む。本発明によれば、「アリールアルキル」という用語は、本明細書に記載の「アルキル」基と本明細書に記載の「アリール」基、例えばベンジル基との組み合わせを含む。
【0095】
本明細書で使用される「任意に置換された」という用語は、任意に置換されたラジカル上の他の官能基による水素原子の置き換えを含む。このような他の官能基には、実例として、アミノ、ヒドロキシル、ハロ、チオール、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールヘテロアルキル、ニトロ、スルホン酸およびその誘導体、カルボン酸およびその誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。実例として、アミノ、ヒドロキシル、チオール、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールヘテロアルキル、および/またはスルホン酸のいずれかが任意に置換される。
【0096】
本発明によれば、本明細書で使用される「投与」という用語は、経口(po)、静脈内(iv)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、吸入、頬側、眼球、舌下、膣、直腸などが挙げられるが、これらに限定されない、本明細書に記載の化合物1およびPSMAリガンド画像化コンジュゲートを患者に導入するすべての手段を含む。本明細書に記載の化合物1およびPSMAリガンド画像化コンジュゲートは、従来の非毒性の医薬的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルを含有する単位剤形および/または製剤で投与することができる。
【0097】
本発明によれば、「ベクレル」は、当業者によって一般的に理解されているように、放射能のSI組立単位を意味する。1ベクレルは、1秒間に1つの核が崩壊するある量の放射性物質の放射能(activity)として定義される。したがって、ベクレルは逆秒、s-1に相当する。ベクレルは、1グラムのラジウム-226の放射能(activity)に基づく放射能(radioactivity)の古い非SI単位であるキュリー(Ci)の後継として当業者に知られている。キュリーは3.7.1010s-1、または37GBqと定義されている。
【0098】
本発明によれば、「キュリー」または「Ci」は、当業者によって一般に理解されるように、フランスの物理学者および化学者マリー・キュリーにちなんで名付けられた放射能の単位を意味する。接頭辞ミリ(milli)およびマイクロ(micro)はメートル法からのもので、それぞれ0.001および0.000001を表す。したがって、ミリキュリー(mCi)は、0.001キュリーである。マイクロキュリー(μCi)は、0.000001キュリーである。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本明細書に記載の出願人の発明によれば、上記の要約に提供される番号付き条項の実施形態、またはそれらの任意の組み合わせは、本特許出願の発明を実施するための形態のセクションに記載される実施形態のいずれかとの組み合わせが企図される。
【0100】
図1を参照すると、方法設計は、示された概略図に従って説明することができる。いくつかの実施形態では、設計の層別因子には、血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(</=260IU/Lv.>260IU/L)、肝転移の存在、ECOGスコア(0-1 v.2)、最良の支持療法/最良の標準療法にNAADを含めることが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、主要評価項目は全生存期間であり得る。いくつかの実施形態では、副次的評価項目には、画像診断による無増悪生存期間(rPFS)、RECIST応答、初回症候性骨関連事象(SSE)までの時間などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、追加の副次的評価項目には、安全性および忍容性、健康関連の生活の質(HRQoL;EQ-5D-5L、FACT-Pおよび疼痛増悪(Brief Pain Inventory-Short FORM)[BPI-SF])、医療経済学、無増悪生存期間(PFS)(放射線学的、臨床的、またはPSA進行)、PSAレベル、アルカリホスファターゼレベル、および/または乳酸デヒドロゲナーゼレベルなどの生化学的反応が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療方法の評価項目は、ベースラインから>/=50%の減少を達成した患者であり得、これは、2回目のPSA測定>/=4週間によって確認される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療方法の評価項目は、ベースラインから>/=40%の減少を達成した患者であり得、これは、2回目のPSA測定>/=4週間によって確認される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療方法の評価項目は、ベースラインから>/=30%の減少を達成した患者であり得、これは、2回目のPSA測定>/=4週間によって確認される。
【0101】
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヒトの臨床医学および獣医の用途の両方に使用することができる。したがって、「患者」は、本明細書に記載の化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートを投与することができ、ヒトであり得るか、または獣医用途の場合、実験室、農業、家畜、または野生動物であり得る。一態様では、患者は、ヒト、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスターなど)、ウサギ、サル、チンパンジーなどの実験動物、イヌ、ネコ、およびウサギなどの家畜、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの農業動物、ならびにクマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカ、およびクジラなどの動物園に捕らわれている野生動物であり得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、PSMA陽性スキャンを有する患者は、2:1の比率で無作為化されて、化合物1に加えて最良の支持療法/最良の標準療法を受けるか、または最良の支持療法/最良の標準療法のみを受けることができる。いくつかの実施形態では、最良の支持療法/最良の標準療法は、治療する医師/治験責任医師によって決定され得る。いくつかの実施形態では、最良の支持療法/最良の標準療法は、治療する医師/治験責任医師によって決定され得るが、治験薬、細胞傷害性化学療法、他の全身性放射性同位元素、および半身放射線療法を除外する。いくつかの実施形態では、アビラテロンまたはエンザルタミドなどの新規のアンドロゲン経路薬[NAAD]は許可される。
【0103】
いくつかの実施形態では、患者は、生存、疾患の進行、および有害事象について、6~10ヶ月の治療期間を通して監視される。いくつかの実施形態では、長期の追跡期間は、生存および治療の更新情報の収集、有害事象の評価、ならびに血液学および化学検査のための血液を含み得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、患者は18歳以上である。いくつかの実施形態では、患者は男性である。いくつかの実施形態では、患者は以前に前立腺癌と診断されている。いくつかの実施形態では、患者は、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)と以前に診断されている。いくつかの実施形態では、患者は、米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)パフォーマンスステータスが0~2であること:少なくとも6ヶ月の平均余命であること;前立腺癌の組織学的、病理学的、および/または細胞学的確認がされていること;68Ga-PSMA-11 PET/CTスキャンが陽性であること;以前の精巣摘除術および/または進行中のアンドロゲン除去療法があり、かつ去勢レベルの血清テストステロン(<50ng/dLまたは<1.7nmol/L)であること;エンザルタミドおよび/またはアビラテロンなどの少なくとも1つのNAADを以前に受けていること;少なくとも1回または2回の以前のタキサンレジメンで以前に治療されていることであり、タキサンレジメンが2サイクルのタキサンの最小曝露を含むこと、または以前に1回のタキサンレジメンのみを受けたこと、およびa.患者が2回目のタキサン療法を受ける意思がないか、またはb.患者の医師が、加齢または健康状態の評価または不耐性によって評価された虚弱性のためなど、2回目のタキサンレジメンを受けるのに患者が不適切であると見なしていること;少なくとも1つの基準、例えば、a.最小開始値が2.0ng/mLである、少なくとも1週間前に測定された以前の参照値を超えるPSAの2回の連続した増加として定義された血清PSAの進行、b.治療開始後の最小SODまたは1つ以上の新しい病変の外観に基づいて、すべての標的病変の直径の合計(SOD)(結節性病変についての短軸および非結節性病変についての長軸の合計)が≧20%に増加することとして定義される軟組織の進行、およびc.骨スキャンによる評価可能な疾患または新しい骨病変(複数可)などの骨疾患の進行(2+2 PCWG3基準)に基づく文書化された進行性mCRPCなどの進行性mCRPCであること;化合物1による療法の開始前28日以内に取得されたベースラインCT、MRI、または骨スキャン撮影法に存在する少なくとも1つの転移性病変があること;以前の化学療法、放射線療法、免疫療法などの以前の療法に関連するすべての臨床的に有意な毒性から≦グレード2に回復したこと;適切な臓器機能、例えば、a.白血球(WBC)数≧2.5×10^9/L(2.5×10^9/Lは、2.5×103/μLおよび2.5×K/μL、および2.5×103/cummおよび2500/μLに相当する)または絶対好中球数(ANC)≧1.5×109/L(1.5×109/Lは、1.5×103/μLおよび1.5×K/μL、および1.5×103/cummおよび1500/μLに相当する)、血小板≧100×10^9/L(100×10^9/Lは、100×10^3/μLおよび100×K/μLおよび100×10^3/cummおよび100,000/μLに相当する)、および/またはヘモグロビン≧9g/dL(9g/dLは、90g/Lおよび5.59mmol/Lに相当する)を含む骨髄予備能、b.肝臓、例えば、総ビリルビン≦1.5×施設基準値上限(ULN)(ジルベール症候群を有することが既知の患者は、≦3×ULNが許可される)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦3.0×ULN、または肝転移のある患者には5.0×ULN、およびc.腎臓、例えば血清クレアチニン≦1.5×ULNまたはクレアチニンクリアランス≧50mL/分であること;アルブミン>3.0g/dL(3.0g/dLは、30g/Lに相当する)であること;ならびに治療前の≧30日の安定したビスホスフォネートまたはデノスマブのレジメンを受けていること、からなる群から選択される1つ以上の基準を満たす。
【0105】
いくつかの実施形態では、患者が、治療前の約6ヶ月以内にストロンチウム-89、サマリウム-153、レニウム-186、レニウム-188、ラジウム-223または半体照射による以前の治療;以前のPSMAを標的とした放射性リガンド療法;治療前約28日以内の以前の全身性抗癌療法(例えば、化学療法、免疫療法または生物学的療法[モノクローナル抗体を含む]);治療前約28日以内の治験薬の以前の投与;療法の成分またはその類似体に対する既知の過敏症;その他の同時細胞傷害性化学療法、免疫療法、放射性リガンド療法、または治験的療法;治療から約30日以内の輸血;療法(手術、放射線療法、ガンマナイフ)を受け、神経学的に安定しており、無症候性であり、神経学的完全性を維持する目的でコルチコステロイドを投与されていないCNS転移の病歴;ベースラインの骨スキャンに見られる進行したびまん性骨転位(super scan);症候性の脊髄圧迫、または切迫した脊髄圧迫を示す臨床的もしくは放射線学的所見;ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)クラスIIIまたはIVのうっ血性心不全、先天性QT延長症候群の病歴、制御不能な感染症、活動性B型もしくはC型肝炎、または治験責任医師の意見では治療または協力を損なうその他の重大な併存病状が挙げられるが、これらに限定されない同時の重篤な(医師の判断による)病状のうちの1つ以上を有している場合、または平均余命を変えると予想されるか、もしくは病気の評価を妨げる可能性のある他の悪性腫瘍と診断されている場合、患者は治療を受けることができない。
【0106】
様々な実施形態では、本明細書に記載の癌は、良性腫瘍および悪性腫瘍を含む腫瘍形成性である癌細胞集団であり得るか、または癌は非腫瘍形成性であり得る。癌は、自然発生的に、または患者の生殖細胞系に存在する突然変異または体細胞突然変異などのプロセスによって発生する可能性があり、あるいは、癌は化学的、ウイルス的、または放射線によって誘発される可能性がある。本明細書に記載の本発明に適用可能な癌としては、神経膠腫、癌腫、肉腫、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、鼻咽頭癌腫、白血病、腺癌、および骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
いくつかの態様では、癌は、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭の癌、首の癌、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、子宮内膜癌、直腸癌、胃癌、結腸癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、転移性乳癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰の癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、非小細胞肺癌、副腎癌、軟組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性白血病、急性白血病、リンパ球性リンパ腫、胸膜中皮腫、膀胱癌、バーキットリンパ腫、尿管癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、および胃食道接合部の腺癌であり得る。
【0108】
化合物1は、下記の式を有し、
【化17】
ここでは、
177Luは、化合物と錯体を形成する。
【0109】
他の実施形態では、PET撮影法、SPECT撮影法などによって検出可能な様々なPSMAリガンド画像化コンジュゲートのいずれかを使用することができる。画像化の正確な方式は、本明細書に記載の造影剤に限定されない。まとめて、式によって記載されたもの、およびPET撮影法、SPECT撮影法などに有用な薬剤を含む、本明細書に記載の画像化に有用なPSMAリガンド画像化コンジュゲートは、「PSMAリガンド画像化コンジュゲート」と称される。
【0110】
一実施形態では、本明細書に記載の化合物1およびPSMAリガンド画像化コンジュゲートは、癌細胞上で発現されたPSMAに結合する。1つの例示的な態様では、化合物1およびPSMAリガンド画像化コンジュゲートは、癌細胞上のPSMAの優先的発現(または過剰発現)のために、正常細胞と比較して癌細胞上のPSMAに差次的に結合することができる。
【0111】
本明細書に記載の方法の他の実施形態では、本明細書に記載の化合物1およびPSMAリガンド画像化コンジュゲートの医薬的に許容される塩が提供される。本明細書に記載の化合物1およびPSMAリガンド画像化コンジュゲートの医薬的に許容される塩には、その酸付加塩および塩基塩が含まれる。
【0112】
適切な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。例示的な例には、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸、フマル酸塩、グルセププチン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、硫酸メチル、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/二水素リン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびトリフルオロ酢酸塩が挙げられる。
【0113】
本明細書に記載の化合物1およびPSMAリガンド画像化コンジュゲートの適切な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例示的な例には、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミンおよび亜鉛塩が挙げられる。酸および塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩も形成され得る。
【0114】
一実施形態では、本明細書に記載の化合物1およびPSMAリガンド画像化コンジュゲートは、1つ以上の医薬的に許容される担体を伴う製剤として投与することができる。担体は、賦形剤であり得る。担体の選択は、特定の投与様式、溶解性および安定性に対する担体の効果、および剤形の性質などの要因に大きく依存するであろう。本明細書に記載の化合物1およびPSMAリガンド画像化コンジュゲートの送達に適した医薬組成物およびそれらの調製方法は、当業者には容易に明らかになるであろう。それらの調製のためのこのような組成物および方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington:The Science & Practice of Pharmacy,21th Edition(Lippincott Williams & Wilkins,2005)に見出すことができる。
【0115】
1つの例示的な態様では、医薬的に許容される担体には、生理学的に適合性のある、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤など、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、担体は、非経口投与に適している。医薬的に許容される担体には、無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための無菌の水溶液または分散液および無菌の粉末が挙げられる。補足的な活性化合物もまた、本発明の組成物に組み込むことができる。
【0116】
様々な実施形態では、液体製剤は、懸濁液および溶液を含み得る。このような製剤は、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロースまたは適切な油、ならびに1つ以上の乳化剤および/または懸濁剤を含み得る。液体製剤はまた、固形物の再構成によって調製され得る。
【0117】
一実施形態では、水性懸濁液は、適切な賦形剤と混合された活性物質を含み得る。このような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアガム;天然に存在するホスファチド、例えばレシチンであり得る分散剤または湿潤剤;アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合成生物、例えば、ポリオキシエチレンステアレート;エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール;エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールとから誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート;または、エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトール無水物とから誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである。水性懸濁液はまた、1つ以上の防腐剤、例えば、アスコルビン酸、エチル、n-プロピル、またはp-ヒドロキシベンゾエート、もしくは1つ以上の着色剤を含有してもよい。
【0118】
1つの例示的な実施形態では、水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および1つ以上の防腐剤と混合された活性成分を提供する。追加の賦形剤、例えば、着色剤もまた存在してもよい。
【0119】
適切な乳化剤は、天然に存在するガム、例えば、アカシアガムまたはトラガカントガム;天然に存在するホスファチド、例えば、大豆レシチン;および脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導された部分エステルを含むエステル、例えば、ソルビタンモノオレエート、ならびに該部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであってもよい。
【0120】
他の実施形態では、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムを組成物に含めることができる。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0121】
経口投与のための例示的な形式には、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤などが挙げられる。
【0122】
本明細書に記載の癌の種類、投与経路、および/または化合物1および/もしくはPSMAリガンド画像化コンジュゲートを局所的もしくは全身的に投与するかどうかに応じて、約1μg/kg~約1g/kgの範囲内に入る用量を含む、広範囲の許容投与量が本明細書で企図される。いくつかの実施形態では、許容される投与量は、約2GBq~約13GBqの範囲内に入る用量を含む、単位GBqで本明細書で企図される。投与量は、単一または分割することができ、q.d.、b.i.d.、t.i.d.、またはさらには隔日、隔週(b.i.w.)、週に1回、月に1回、四半期に1回などを含む、多種多様なプロトコルに従って投与することができる。これらの場合のそれぞれにおいて、本明細書に記載の治療有効量は、投与の例に対応するか、あるいは、投与プロトコルによって決定されるように、毎日、毎週、毎月、または四半期ごとの総用量に対応することが理解される。いくつかの実施形態では、式1の化合物は、週に1回、または2週間に1回、または3週間に1回、または4週間に1回、または5週間に1回、または6週間に1回、または7週間に1回、または8週間に1回などで投与することができる。
【0123】
一態様では、本明細書に記載の化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートは、血流中に、筋肉中に、または内臓中に直接投与してもよい。このような非経口投与に適した経路には、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、硬膜外、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、腫瘍内、筋肉内および皮下送達が挙げられる。非経口投与に適した手段には、針(マイクロニードルを含む)注射器、無針注射器、および注入技術が挙げられる。
【0124】
1つの例示的な態様では、非経口製剤は、典型的には、塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくは3~9のpHで)などの担体または賦形剤を含み得る水溶液であるが、いくつかの用途については、それらは、無菌の非水溶液として、または無菌の発熱性物質非含有水などの適切なビヒクルと組み合わせて使用する乾燥形態として、より適切に製剤化されてもよい。他の実施形態では、本明細書に記載の液体製剤のいずれかを、本明細書に記載の化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートの非経口投与に適合させることができる。例えば、無菌条件下での凍結乾燥による、無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な製薬技術を使用して容易に達成することができる。一実施形態では、非経口製剤の調製に使用される化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートの溶解度は、溶解度増強剤の組み込みなどの適切な製剤技術の使用によって増加させることができる。
【0125】
様々な実施形態では、非経口投与のための製剤は、即時放出および/または調節放出のために製剤化されてもよい。1つの例示的な態様では、本発明の活性剤(すなわち、化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲート)は、徐放性製剤、例えば、徐放性ポリマーを含む組成物で投与されてもよい。活性化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートは、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤などの急速放出から化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートを保護する担体を用いて調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、およびポリ乳酸、ポリグリコールコポリマー(PGLA)などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤を調製するための方法は、一般に当業者に既知である。別の実施形態では、本明細書に記載の化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲート、または化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートを含む組成物は、適切な場合には、連続的に投与され得る。
【0126】
一実施形態では、キットが提供される。活性化合物1とPSMAリガンド画像化コンジュゲートの組み合わせを投与する場合、2つ以上の医薬組成物を、組成物の連続投与または同時投与に適したキットの形態で組み合わせることができる。このようなキットは、2つ以上の別個の医薬組成物を含み、その少なくとも1つは、本明細書に記載の化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲート、および組成物を別個に保持するための手段、例えば、容器、分割ボトル、または分割フォイルパケットを含む。別の実施形態では、患者の選択および/または治療のための化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートの使用に関する指示を提供するラベルを有する容器内に、本明細書に記載の化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートのうちの1つ以上を含む組成物が提供される。
【0127】
一実施形態では、無菌の注射可能溶液は、必要に応じて、上記の成分の1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒に必要な量の活性剤を組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。典型的には、分散液は、活性化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートを、分散媒および上記のものの任意の追加の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、有効成分の粉末に加えて、以前に滅菌濾過された溶液から任意の追加の所望の成分が得られるか、または成分は一緒に滅菌濾過されてもよい。
【0128】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高薬物濃度に適した他の規則正しい構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。一実施形態では、適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0129】
化合物1を投与するための任意の効果的なレジメンを使用することができる。例えば、化合物1は、単回投与として投与することができ、または用量を分割して、複数回投与の毎日のレジメンとして投与することができる。さらに、例えば、週に1日から5日までの時差レジメンは、毎日の治療の代替として使用することができ、本明細書に記載の方法の目的のために、このような断続的または時差のある毎日のレジメンは、毎日の治療と同等であると見なされるので、企図されている。1つの例示的な実施形態では、患者は、癌を治療するために化合物1の複数回の注射で治療される。一実施形態では、患者は、例えば、12~72時間間隔または48~72時間間隔で、化合物1を複数回(好ましくは約2回から最大約50回)注射される。化合物1の追加の注射は、最初の注射(複数可)から数日または数ヶ月の間隔で患者に投与することができ、追加の注射は、癌の再発を防ぐことができる。
【0130】
化合物1による任意の適切な治療過程を使用することができる。一実施形態では、個々の用量および投与レジメンは、1ヶ月の間に約15mgが投与される総投与量を提供するように選択される。1つの例示的な例では、化合物1は、週5日、各4週間サイクルの1、2、および3週目に投与される1日1回投与で投与され、4週目には投与されない。別の例では、化合物1は、週に3日、各4週間サイクルの1週目および3週目に投与される1日1回の用量で投与され、2週目および4週目には用量は投与されない。別の例では、化合物1は、隔週で1週目および2週目に、すなわち3週間サイクルの1、4、8、11日目に投与される。別の例では、化合物1は、週に1回で、1週目および2週目、すなわち3週間サイクルの1日目および8日目に投与される。
【0131】
化合物1の1日の単位投与量は、患者の状態、治療中の癌、化合物1の投与経路ならびに組織分布、および放射線療法または療法と併用する追加の薬物などの他の治療法の併用の可能性によって大幅に異なる。患者に投与される有効量は、体表面積、質量、および患者の状態に関する医師の評価に基づいている。治療有効用量(本明細書では「治療有効量」とも称される)は、例えば、約0.5mg/m2~約10.0mg/m2の範囲であり得る。本明細書に記載の治療有効用量はまた、約0.5mg/m2~約9.5mg/m2、約0.5mg/m2~約9.0mg/m2、約0.5mg/m2~約8.5mg/m2、約0.5mg/m2~約8.0mg/m2、約0.5mg/m2~約7.5mg/m2、約0.5mg/m2~約7.0mg/m2、約0.5mg/m2~約6.5mg/m2、約0.5mg/m2~約6.0mg/m2、約0.5mg/m2~約5.5mg/m2、約0.5mg/m2~約5.0mg/m2、約0.5mg/m2~約4.5mg/m2、約0.5mg/m2~約4.0mg/m2、約0.5mg/m2~約3.5mg/m2、約0.5mg/m2~約3.0mg/m2、約0.5mg/m2~約2.5mg/m2、約0.5mg/m2~約2.0mg/m2、約0.5mg/m2~約1.5mg/m2、約1.0mg/m2~約9.5mg/m2、約1.0mg/m2~約9.0mg/m2、約1.0mg/m2~約8.5mg/m2、約1.0mg/m2~約8.0mg/m2、約1.0mg/m2~約7.5mg/m2、約1.0mg/m2~約7.0mg/m2、約1.0mg/m2~約6.5mg/m2、約1.0mg/m2~約6.0mg/m2、約1.0mg/m2~約5.5mg/m2、約1.0mg/m2~約5.0mg/m2、約1.0mg/m2~約4.5mg/m2、約1.0mg/m2~約4.0mg/m2、約1.0mg/m2~約3.5mg/m2、約1.0mg/m2~約3.0mg/m2、約1.0mg/m2~約2.5mg/m2、約1.0mg/m2~約2.0mg/m2、および約1.0mg/m2~約1.5mg/m2の範囲を含む。当業者は、治療有効用量が、上記の要因に基づいて、上記で提供される様々な範囲内で変動し得ることを容易に理解するであろう。患者の任意の特定の患者または群のための治療有効用量は、約0.5mg/m2~約10.0mg/m2の間の任意の数値であってもよく、これらの数値には、1.0mg/m2、1.5mg/m2、2.0mg/m2、2.5mg/m2、3.0mg/m2、3.5mg/m2、4.0mg/m2、4.5mg/m2、5.0mg/m2、5.5mg/m2、6.0mg/m2、6.5mg/m2、7.0mg/m2、7.5mg/m2、8.0mg/m2、8.5mg/m2、9.0mg/m2、9.5mg/m2および10.0mg/m2がふくまれるが、これらに限定されない。総投与量は、単回投与または分割投与で投与することができ、医師の裁量により、本明細書に記載の典型的な範囲から外れる場合がある。
【0132】
いくつかの実施形態では、式1の化合物は、第2の治療と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、第2の治療は、最良の支持療法である。いくつかの実施形態では、第2の治療は、最良の標準療法である。いくつかの実施形態では、第2の治療は、最良の支持療法/最良の標準療法である。いくつかの実施形態では、第2の治療は、アンドロゲン経路全身治療である。いくつかの実施形態では、アンドロゲン経路全身治療が、アビラテロン、オルテロネル、ガレテロン、セビテロネル、アパルタミド、エンザルタミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の治療は、放射線療法である。いくつかの実施形態では、放射線療法は、体外照射療法(EBRT)である。
【0133】
本明細書に記載のPSMAリガンド画像化コンジュゲートおよび化合物1は、1つ以上のキラル中心を含み得るか、そうでなければ、複数の立体異性体として存在することができる可能性がある。したがって、本発明は、純粋な立体異性体、ならびに鏡像異性体、ジアステレオマーなどの立体異性体の混合物、および鏡像異性体またはジアステレオマーに富む混合物を含むことが理解されるべきである。本明細書に記載のPSMAリガンド画像化コンジュゲートおよび化合物1は、幾何異性体として存在することができる可能性がある。したがって、本発明は、純粋な幾何異性体または幾何異性体の混合物を含むことが理解されるべきである。
【0134】
本明細書に記載のPSMAリガンド画像化コンジュゲートおよび化合物1は、非溶媒和形態、ならびに水和形態を含む溶媒和形態で存在し得ることが理解される。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲内に含まれる。本明細書に記載のPSMAリガンド画像化コンジュゲートおよび化合物1は、複数の結晶質形態または非晶質形態で存在し得る。一般に、すべての物理的形態は、本発明によって企図される使用と同等であり、本発明の範囲内にあることが意図されている。
【0135】
別の実施形態では、化合物1の投与のための組成物および/または剤形は、少なくとも約90%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%、または約99.5%の純度で化合物1から調製される。別の実施形態では、化合物1の投与のための組成物および/または剤形は、少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%の純度で化合物1から調製される。
【0136】
別の実施形態では、PSMAリガンド画像化コンジュゲートの投与のための組成物および/または剤形は、少なくとも約90%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%、または約99.5%の純度でPSMAリガンド画像化コンジュゲートから調製される。別の実施形態では、PSMAリガンド画像化コンジュゲートの投与のための組成物および/または剤形は、少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%の純度でPSMAリガンド画像化コンジュゲートから調製される。
【0137】
別の実施形態では、放射線標識されたPSMAリガンド画像化コンジュゲートを投与するための組成物および/または剤形は、少なくとも約90%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%、または約99.5%の放射化学的純度でPSMAリガンド画像化コンジュゲートから調製される。別の実施形態では、PSMAリガンド画像化コンジュゲートを投与するための組成物および/または剤形は、少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも約98%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%の純度でPSMAリガンド画像化コンジュゲートから調製される。
【0138】
本明細書に記載の化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートの純度は、高圧または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、核磁気共鳴分光法、TLC、UV吸光度分光法、蛍光分光法などの様々なクロマトグラフィーまたは分光技術を含む任意の従来の技術を使用して測定することができる。
【0139】
別の実施形態では、本明細書に記載の化合物1またはPSMAリガンド画像化コンジュゲートは、滅菌容器またはパッケージで提供される。
【0140】
一態様では、化合物1による治療に対する患者の臨床的利益は、全生存期間(OS)として特徴付けることができる。本明細書で使用される場合、「全生存期間(OS)」という用語は、無作為化の日から何らかの原因による死亡の日までの時間を意味する。
【0141】
一態様では、化合物1による治療に対する患者の臨床的利益は、固形腫瘍の治療効果判定(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)の基準を利用して特徴付けることができる。実例として、基準は、すべての標的病変の最長径の測定を考慮に入れて、オリジナルのWHOハンドブック(3)から適応されたものであり、完全奏功(CR)-すべての標的病変の消失;部分奏功(PR)-ベースラインの合計最長径を基準として、標的病変の最長径の合計が少なくとも30%縮小;疾患安定(stable disease)(SD)-治療開始以来の最小合計最長径を基準として、部分奏功の資格を得るのに十分な収縮も進行性疾患の資格を得るのに十分な増加もないこと;進行(progressive disease)(PD)-治療開始以降に記録された最長径の最小合計または1つ以上の新しい病変の出現を基準として、標的病変の最長径の合計が少なくとも20%増加していることが含まれる。別の態様では、全奏功率(ORR)は臨床的利益であり、CRまたはPRの最良の応答を達成する患者のパーセントとして計算される。全病勢コントロール率(DCR)は、別の臨床的利益とすることができ、CR、PR、またはSDの最良の応答を達成した患者のパーセントとして計算される。いくつかの実施形態では、応答は、RECISTv1.1基準によって測定されるような病勢コントロール率(DCR)であり得る。
【0142】
別の態様では、化合物1による治療に対する患者の臨床的利益は、画像診断による無増悪生存期間(rPFS)として特徴付けることができる。本明細書で使用される「画損診断による無増悪生存期間(rPFS)」とは、前立腺癌ワーキンググループ3(Prostate Cancer Working Group 3)(PCWG3)ガイドラインに概説されているように、無作為化の日から放射線診断による疾患の進行の日までの時間、または何らかの原因による死亡までの時間を意味する。例えば、Scher HI,Morris MJ,Stadler WM,Higano C,Basch E,Fizazi K,et al.Trial Design and Objectives for Castration-Resistant Prostate Cancer:Updated Recommendations from the Prostate Cancer Clinical Trials Work Group 3.J Clin Oncol 2016;34(12):1402-18を参照されたい。別の態様では、化合物1による治療に対する患者の臨床的利益は、初回症候性骨関連事象(SSE)として特徴付けることができる。症候性骨関連事象は、臨床的に重大な病的骨折、骨の手術もしくは骨への放射線、または脊髄圧迫を意味することが理解されよう。本明細書で使用される場合、「初回症候性骨格関連事象までの時間」は、初回の新しい症候性病理学的骨折、脊髄圧迫、腫瘍関連整形外科的介入、または骨痛を軽減するための放射線療法の必要性のいずれか早い方までの無作為化の日付を意味する。
【0143】
1つの例示的な例では、全生存期間は、患者がプロトコル治療(C1D1)を受けた最初の日から患者の死亡日までの日数として定義される所与の患者の死亡までの時間である。患者がまだ治験薬(study drug)を服用している間に、または患者が治験薬を中止した後に事象が発生したかどうかに関係なく、すべての死亡の事象を含めることができる。患者が死亡していない場合は、最後の通院日、最後の接触日、または患者が最後に生存していることがわかった日付のいずれか遅い方でデータを打ち切ることができる。
【0144】
あるいは、化合物1による治療の結果としての患者の臨床的利益は、例えば、化合物1による治療後の患者の癌の経過観察の画像診断を通じて、患者において特定され得る腫瘍増殖の阻害として特徴付けることができる。例えば、腫瘍増殖の阻害は、化合物1の投与後の患者の腫瘍のサイズを、本明細書に記載の画像化技術のいずれかに従って測定することによって特徴付けることができ、腫瘍増殖の阻害は、安定した腫瘍サイズによって、または腫瘍サイズの縮小によって示される。腫瘍増殖の阻害の識別は、様々な技術を使用して達成することができ、これらの技術は、限定されないが、本明細書に記載の画像化方法(例えば、CT、MRI、PET撮影法、SPECT撮影法または胸部X線)である。
【0145】
一実施形態では、化合物1が癌患者の治療に適応されるかどうかを決定する方法が提供され、この方法は、癌患者におけるPSMA状態を決定する工程を含み、患者のPSMA状態が陽性の場合、化合物1が患者の治療に適応される。
【0146】
一実施形態では、化合物1が、本明細書に記載の癌のうちの1つを有する患者の治療に適応されるかどうかを評価する方法が提供される。この方法は、患者におけるPSMA状態を視覚的に決定する工程を含み、PSMA状態が、患者においてPSMA陽性である画像化腫瘍に基づき、患者のPSMA状態が陽性である場合、化合物1が患者の治療に適応される。
【0147】
上記の実施形態では、患者が陽性のPSMA状態を有する群に属する場合、化合物1治療の臨床的利益が示される。一実施形態では、患者への臨床的利益は、患者の全生存期間、化合物1による治療の4サイクル以上を受ける能力、腫瘍増殖の阻害、疾患安定(stable disease)、治療に対する患者の部分奏功、治療に対する患者の完全奏功、病勢コントロール(すなわち、得られる最良の結果は、完全奏功、部分奏功、または疾患安定である)、および/または全奏功(すなわち、得られる最良の結果は、完全奏功または部分奏功である)であり得る。1つの例示的な例では、胸膜中皮腫または腺癌(例えば、胃食道接合部の腺癌)の治療を受けている患者の臨床的利益は、疾患安定である。
【0148】
別の実施形態では、本明細書に記載の方法には、以下の実施例を含む。実施例は、本明細書に記載の本発明の様々な実施形態の追加の特徴をさらに示す。しかしながら、実施例は例示的なものであり、本明細書に記載の本発明の他の実施形態を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。さらに、実施例の他の変形例が、本明細書に記載の本発明の様々な実施形態に含まれることが理解される。
【実施例0149】
実施例1:
A.設計:
PSMA陽性スキャンを有する患者は、2:1の比率で無作為化されて、化合物1に加えて最良の支持療法/最良の標準療法を受けるか、または最良の支持療法/最良の標準療法のみを受けることができる。最良の支持療法/最良の標準療法は、治療する医師/治験責任医師によって決定された。この試験は、非盲検であり、患者は、生存、疾患の進行、および有害事象について、6~10ヶ月の治療期間を通して監視される。長期の追跡期間は、生存および治療の更新情報の収集、有害事象の評価、ならびに血液学および化学検査のための血液を含む。追跡期間中、患者は3ヶ月ごと(±1ヶ月)に電話、電子メール、または手紙で24ヶ月間、または生存の全体的な途中打ち切り率がSAPで特定されたレベルに低下するまで連絡を受ける。
【0150】
B.アーム1:化合物1と最良の支持療法/最良の標準療法(BS/BSOC)
約160人の患者を無作為化し、7.4GBq(±10%)の用量の化合物1(用量は、200mCiに相当する)で治験生成物を、静脈内に6週間(±1週間)ごとに最大6サイクル、さらに最良の支持療法/最良の標準療法(BS/BSOC)を受けた。4サイクル後、患者を、(1)奏功の証拠、(2)残存疾患、および(3)化合物1に対する忍容性について評価する。177Lu-PSMA-617を投与する前に、静脈ラインの開通性を確実にするために、10mLの通常の生理食塩水を含む生理食塩水洗浄を施す。177Lu-PSMA-617は、留置カテーテルを介した静脈内経路でゆっくりと投与され、続いて生理食塩水洗浄が行われた。投与時間を記録する必要がある。投与された総放射能を測定する必要がある(GBq)。現在までに、患者は無作為化されたアームで1~6サイクルを受けている。現在までに、約320人の患者がGa-PSMA画像化コンジュゲート4でスキャンされている。
【0151】
C.アーム2:最良の支持療法/最良の標準療法(BS/BSOC)単独
これに無作為化された患者は、治験責任医師によって決定された最良の支持療法/最良の標準療法(BS/BSOC)を受ける。
【0152】
D.結果尺度:
最良の支持療法/標準療法に加えて、化合物1を投与された進行性PSMA陽性mCRPC患者の全生存期間(OS)。