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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059641
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】糖タンパク質の製造
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/16 20060101AFI20240423BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C12N9/16 B ZNA
C12N15/55
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024013870
(22)【出願日】2024-02-01
(62)【分割の表示】P 2020552865の分割
【原出願日】2019-03-13
(31)【優先権主張番号】62/650,583
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴダワト,ラフル
(72)【発明者】
【氏名】デウィット,メーガン
(72)【発明者】
【氏名】スイ,シーグアン
(72)【発明者】
【氏名】ラジェンドラン,サラヴァナムールシー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】最終タンパク質生成物特性の制御が改善されたアルカリホスファターゼを製造する方法を提供する。
【解決手段】a.組換えアルカリホスファターゼ発現チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地に接種し;b.CHO細胞を培地中で培養し;c.約2.1~4.3モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する収集清澄化培養液(HCCF)を形成するために、組換えアルカリホスファターゼを(c)の細胞培養物から精製ステップによって単離し;d.濾過プール(UFDF)を形成するために追加的なタンパク質精製ステップを実施し、UFDFは、約13~27℃で約1~60時間にわたって且つ約1.7~5.3g/Lのタンパク質濃度で保持し;e.UFDFにクロマトグラフィーステップを施し、組換えアルカリホスファターゼは、約0.7~3.5モル/モルのTSACを有する、を含む、組換えアルカリホスファターゼを作製する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアルカリホスファターゼを作製する方法であって、
a.組換えアルカリホスファターゼを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地に接種することと;
b.前記CHO細胞を培地中で培養することと;
c.約2.1モル/モル~約4.3モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する収集清澄化培養液(HCCF)を形成するために、前記組換えアルカリホスファターゼを(c)の細胞培養物から少なくとも1つの精製ステップによって単離することと;
d.濾過プール(UFDF)を形成するために少なくとも1つの追加的なタンパク質精製ステップを実施することであって、前記UFDFは、約13℃~約27℃の温度で約1時間~約60時間にわたって且つ約1.7g/L~約5.3g/Lのタンパク質濃度で保持される、実施することと;
e.部分精製組換えアルカリホスファターゼを得るために前記UFDFに少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを施すことであって、前記組換えアルカリホスファターゼは、約0.7モル/モル~約3.5モル/モルのTSACを有する、施すことと
を含む方法。
【請求項2】
組換えアルカリホスファターゼを作製する方法であって、
a.組換えアルカリホスファターゼを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地に接種することと;
b.前記CHO細胞を培地中で培養することと;
c.栄養補充剤を(b)の細胞培養物に添加することと;
d.濾過プール(UFDF)を形成するために、前記組換えアルカリホスファターゼを(c)の前記細胞培養物から少なくとも1つの精製ステップによって単離することと;
e.前記組換えアルカリホスファターゼを前記UFDFから回収することであって、前記UFDF中の前記組換えアルカリホスファターゼは、前記回収を施されるとき、約2.1モル/モル~約4.3モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する、回収することと
を含む方法。
【請求項3】
シアリダーゼは、前記細胞培養物、前記HCCF及び/又は前記UFDFから選択的に除去される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
外因性シアリルトランスフェラーゼは、前記細胞培養物、前記HCCF及び/又は前記UFDFに添加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記培地中での前記CHO細胞の前記培養は、約36℃~約38℃の温度におけるものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記培地中での前記CHO細胞の前記培養は、約37℃の温度におけるものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記栄養補充剤は、CHO細胞の前記培地への接種の少なくとも1日後に前記細胞培養物に添加される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記栄養補充剤は、3つ以上の異なる時点で添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記培地は、EX-CELL(登録商標)302無血清培地;CD DG44培地;BD Select(商標)培地;SFM4CHO培地;及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記CHO細胞の前記培養は、0.25L~25,000Lのバイオリアクター内におけるものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記CHO細胞の前記培養は、100L~25,000Lのバイオリアクター内におけるものである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記CHO細胞の前記培養は、2000L~20,000Lのバイオリアクター内におけるものである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞培養物の温度は、前記接種の約80時間~約120時間後に減少される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(d)は、接種の約10~約14日後に行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記HCCFの前記TSACは、約2.2モル/モル~約3.6モル/モルである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記HCCFの前記TSACは、約2.2モル/モル~約3.4モル/モルである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの追加的な精製ステップは、収集清澄化、濾過、限外濾過、ダイアフィルトレーション、ウイルス不活性化、親和性捕捉及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの追加的な精製ステップは、限外濾過及び/又はダイアフィルトレーションを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記UFDFは、約14℃~約26℃の温度で保持される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記UFDFは、約15℃~約26℃の温度で保持される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記UFDFは、約15℃~約25℃の温度で保持される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記UFDFは、約19℃~約25℃の温度で保持される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記UFDFは、約10時間~約50時間にわたって保持される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記UFDFは、約12時間~約48時間にわたって保持される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記UFDFは、約14時間~約42時間にわたって保持される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記UFDFは、約17時間~約34時間にわたって保持される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記UFDFは、約19時間~約33時間にわたって保持される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記UFDFは、約25時間~約38時間にわたって保持される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記UFDFは、約29時間~約35時間にわたって保持される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記UFDFは、約2.0g/L~約4.3g/Lのタンパク質濃度を有する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記UFDFは、約2.4g/L~約3.7g/Lのタンパク質濃度を有する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記UFDFは、約3.1g/Lのタンパク質濃度を有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記UFDFは、約3.0g/L~約4.5g/Lのアルカリホスファターゼ濃度を有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記UFDFは、約3.3g/L~約4.1g/Lのアルカリホスファターゼ濃度を有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つのクロマトグラフィーステップは、タンパク質アフィニティークロマトグラフィーである、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つのクロマトグラフィーステップは、プロテインAクロマトグラフィーである、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(d)は、ウイルス不活性化ステップをさらに含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(e)は、少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップをさらに含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィーステップは、カラムクロマトグラフィーを含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記カラムクロマトグラフィーは、疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの追加的な精製ステップは、追加的なダイアフィルトレーションを含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、疎水性相互作用クロマトグラフィー及び/又は少なくとも1つの追加的なダイアフィルトレーションステップを含む、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、約0.9モル/モル~約3.9モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、約1.1モル/モル~約3.2モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、約1.4モル/モル~約2.6モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、約1.2モル/モル~約3.0モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記組換えアルカリホスファターゼは、W-sALP-X-Fc-Y-D-Z(式中、
Wは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;
Xは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;
Yは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;
Zは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;
Fcは、結晶化可能領域断片であり;
は、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸塩又はそれらの組み合わせであり、ここで、n=10又は16であり;及び
sALPは、可溶性アルカリホスファターゼである)
の構造を含む、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記組換えアルカリホスファターゼは、アスホターゼアルファ(配列番号1)を含む、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記タンパク質アフィニティークロマトグラフィーから得られる前記組換えアルカリホスファターゼは、約2℃~約8℃で貯蔵される、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
接種後、栄養補充剤を(b)の前記細胞培養物に添加することをさらに含む、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
UFDF中の前記組換えアルカリホスファターゼは、前記回収を施されるとき、約2.2モル/モル~約3.6モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記UFDF中の前記組換えアルカリホスファターゼは、前記回収を施されるとき、約2.2モル/モル~約3.4モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
組換えアルカリホスファターゼ活性を測定することをさらに含む、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
哺乳動物細胞培養物中に生成される組換えアルカリホスファターゼであって、前記細胞培養物から生成された収集清澄化培養液(HCCF)中の前記組換えアルカリホスファターゼは、常に約1.2モル/モル以上の総シアル酸含量(TSAC)を有し、前記哺乳動物細胞培養物は、約100L~約25,000Lである、組換えアルカリホスファターゼ。
【請求項55】
組換えアルカリホスファターゼを含む濾過プール(UFDF)であって、約100L~約25,000Lの細胞培養物から生成され、約2.0~約4.3g/Lのタンパク質濃度において約19℃~約25℃で約14~約42時間にわたって保持される、濾過プール(UFDF)。
【請求項56】
請求項1~53のいずれか一項に記載の方法によって生成される組換えアルカリホスファターゼ。
【請求項57】
請求項56に記載の組換えアルカリホスファターゼ及び少なくとも1つの薬学的に許容できる担体、希釈剤、賦形剤又はそれらの組み合わせを含む医薬製剤。
【請求項58】
対象における無機ピロリン酸塩(PPi)の切断を増強するために、請求項56に記載の組換えアルカリホスファターゼを使用する方法。
【請求項59】
アルカリホスファターゼ欠損に関連する病態を患っている対象を治療する方法であって、治療有効量の、請求項56に記載の組換えアルカリホスファターゼを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項60】
総シアル酸含量(TSAC)を、TSACを含有する組換えタンパク質において制御する方法であって、前記組換えタンパク質を哺乳動物細胞培養物中で培養することと、UFDFを提供するために少なくとも1つの精製ステップを実施することとを含み、温度、タンパク質濃度及び/又は保持時間は、前記UFDF中で制御される、方法。
【請求項61】
前記組換えタンパク質は、組換え糖タンパク質である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記組換えタンパク質は、アルカリホスファターゼタンパク質である、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記組換えタンパク質は、アスホターゼアルファである、請求項60~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記少なくとも1つの精製ステップは、限外濾過及び/又はダイアフィルトレーションを含む、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記少なくとも1つの精製ステップは、プロテインAクロマトグラフィーを含む、請求項60~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
哺乳動物細胞培養物中のグリコシダーゼ活性を制御する方法であって、組換えタンパク質を哺乳動物細胞培養物中で培養することと、UFDFを提供するために少なくとも1つの精製ステップを実施することとを含み、温度、タンパク質濃度及び/又は保持時間は、前記グリコシダーゼ活性を制御するために前記UFDF中で制御される、方法。
【請求項67】
前記組換えタンパク質は、組換え糖タンパク質である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記組換えタンパク質は、アルカリホスファターゼタンパク質である、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
前記組換えタンパク質は、アスホターゼアルファである、請求項66~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記少なくとも1つの精製ステップは、限外濾過及び/又はダイアフィルトレーションを含む、請求項66~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記少なくとも1つの精製ステップは、プロテインAクロマトグラフィーを含む、請求項66~70のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して、本開示は、組換えポリペプチド及び組換え糖タンパク質、即ちアルカリホスファターゼを製造する方法、特に限定されないが、アスホターゼアルファを含む組換え融合タンパク質を製造する方法に関する。
【0002】
疾患、特に骨格徴候を有する疾患、例えば低ホスファターゼ症を治療するための有効な治療用分子及び方法を開発することが当技術分野で求められている。組換えポリペプチド及び組換え糖タンパク質、例えばアスホターゼアルファでは、生成物の物理パラメータの制御が特に重要である。
【0003】
組換えアルカリホスファターゼを作製する方法であって、(a)組換えアルカリホスファターゼを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地に接種することと、(b)CHO細胞を培地中で培養することと、(c)接種の少なくとも1日後に(b)の細胞培養物に栄養補充剤を添加することと、(d)約1.5モル/モル~約4.0モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する収集清澄化培養液(HCCF)を形成するために、少なくとも1つの精製ステップによって(c)の細胞培養物から組換えアルカリホスファターゼを単離することと、(e)濾過プール(UFDF)を形成するために少なくとも1つの追加的なタンパク質精製ステップを実施することであって、UFDFは、約13℃~約27℃の温度で約1時間~約60時間にわたって且つ約1.7g/L~約5.3g/Lのタンパク質濃度で保持される、実施することと;(f)部分精製組換えアルカリホスファターゼを得るためにUFDFに少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを施すことであって、組換えアルカリホスファターゼは、約0.9モル/モル~約3.0モル/モルのTSACを有する、施すこととを含む方法。
【背景技術】
【0004】
低ホスファターゼ症(HPP)は、機能的な組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNSALP)の産生が不能になる重篤で極希少な遺伝性代謝障害である。それは、骨及び歯の低石灰化によって特徴付けられる非石灰化骨マトリックスの蓄積(例えば、くる病、骨軟化症)をもたらす。成長する骨が適切に石灰化しないとき、成長の障害により、関節及び骨の美観が損なわれる。この結果は、したがって、運動能力、呼吸機能に影響し、さらに死に至ることがある。HPPの様々な形態として、出生時、乳児性、若年性(又は小児性)及び成人HPPが挙げられる。近年、主として症状発現時の年齢に基づき、出生時、良性出生前、小児性、若年性、成人及び歯限局型HPPを含む6つの臨床形態が定義されている。アスホターゼアルファは、内因性TNSALPレベルの欠陥に対処するように設計されている、承認されたファーストインクラスの標的化酵素置換治療薬である。TNSALPを伴うHPPの治療の最初の報告については、Whyte et al.,2012 N Engl J Med.366:904-13を参照されたい。
【0005】
アスホターゼアルファ(STRENSIQ(登録商標),Alexion Pharmaceuticals,Inc.)は、ヒトTNSALPの触媒ドメイン、ヒト免疫グロブリンG1のFcドメイン及び骨標的化ドメインとして用いられるデカアスパラギン酸ペプチド(即ちD10)からなる可溶性の融合糖タンパク質である。インビトロで、アスホターゼアルファは、ハイドロキシアパタイトに対し、デカアスパラギン酸ペプチドを欠如する可溶性のTNSALPの場合よりも高い親和性で結合し、それにより、アスホターゼアルファのTNSALP部分は、余分な局所性の無機ピロリン酸(PPi)を効率的に分解し、正常な石灰化を骨に回復させることを可能にする。ピロリン酸加水分解は、骨石灰化を促進し、その効果は、非臨床試験において評価される種の中で類似していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
治療的に有効なアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)を商業規模量で作製するには、複雑で高感度な多段階プロセスが必要である。本開示は、最終タンパク質生成物特性の制御が改善された、アスホターゼアルファなどのアルカリホスファターゼを含む糖タンパク質を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示されるのは、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)の作製における効率を増加させるために用いることができる改善された製造プロセスである。本明細書に記載の方法は、組換えタンパク質、例えば培養された哺乳動物細胞、特に培養されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生されるアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)の酵素活性について維持、貯蔵、調節及び/又は改善するためにも用いられ得る。かかるアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、治療における使用、例えば対象、例えばヒト対象における低下したアルカリホスファターゼタンパク質レベル及び/又は機能(例えば、無機ピロリン酸(PPi)、HPP等の不十分な切断)に関連した状態の治療に適している。
【0008】
一態様では、本開示は、アルカリホスファターゼ機能を有する組換えポリペプチドを作製する方法を提供する。様々な実施形態では、アルカリホスファターゼ機能は、当技術分野で公知のアルカリホスファターゼの任意の機能、例えばホスホエタノールアミン(PEA)、無機ピロリン酸(PPi)及びピリドキサール5’-リン酸(PLP)を含む天然基質に対する酵素活性を含み得る。かかる組換えポリペプチドは、アスホターゼアルファ(配列番号1)を含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、組換えアルカリホスファターゼを作製する方法であって、(a)組換えアルカリホスファターゼを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地に接種することと;(b)CHO細胞を培地中で培養することと;(c)約2.1モル/モル~約4.3モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する収集清澄化培養液(HCCF)を形成するために、組換えアルカリホスファターゼを(c)の細胞培養物から少なくとも1つの精製ステップによって単離することと;(d)濾過プール(UFDF)を形成するために少なくとも1つの追加的なタンパク質精製ステップを実施することであって、UFDFは、約13℃~約27℃の温度で約1時間~約60時間にわたって且つ約1.7g/L~約5.3g/Lのタンパク質濃度で保持される、実施することと;(e)部分精製組換えアルカリホスファターゼを得るためにUFDFに少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを施すことであって、組換えアルカリホスファターゼは、約0.7モル/モル~約3.5モル/モルのTSACを有する、施すこととを含む方法を対象とする。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、接種後に(b)の細胞培養物に栄養補充剤を添加することをさらに含む方法を対象とする。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、組換えアルカリホスファターゼを作製する方法であって、(a)組換えアルカリホスファターゼを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地に接種することと;(b)CHO細胞を培地中で培養することと;(c)接種の少なくとも1日後に(b)の細胞培養物に栄養補充剤を添加することと;(d)濾過プールを形成するために、組換えアルカリホスファターゼを(c)の細胞培養物から少なくとも1つの精製ステップによって単離することと;(e)濾過プールから組換えアルカリホスファターゼを回収することであって、濾過プール中の組換えアルカリホスファターゼは、回収を施されるとき、約2.1~約4.3モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する、回収することとを含む方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、濾過プール中の組換えアルカリホスファターゼは、回収を施されるとき、約2.2モル/モル~約3.6モル/モルのTSACを有する。いくつかの実施形態では、濾過プール中の組換えアルカリホスファターゼは、回収を施されるとき、約2.2モル/モル~約3.4モル/モルのTSACを有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、シアリダーゼは、細胞培養物、HCCF及び/又はUFDFから選択的に除去される。いくつかの実施形態では、外因性シアリルトランスフェラーゼは、細胞培養物、HCCF及び/又はUFDFに添加される。
【0014】
いくつかの実施形態では、培地中のCHO細胞の培養は、約36℃~約38℃の温度におけるものである。いくつかの実施形態では、培地中のCHO細胞の培養は、約37℃の温度におけるものである。いくつかの実施形態では、栄養補充剤は、CHO細胞の培地への接種の少なくとも1日後に細胞培養物に添加される。いくつかの実施形態では、栄養補充剤は、3つ以上の異なる時点で添加される。いくつかの実施形態では、培地は、EX-CELL(登録商標)302無血清培地;CD DG44培地;BD Select(商標)培地;SFM4CHO培地;及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、CHO細胞の培養は、0.25L~25,000Lのバイオリアクター内におけるものである。いくつかの実施形態では、CHO細胞の培養は、100L~25,000Lのバイオリアクター内におけるものである。いくつかの実施形態では、CHO細胞の培養は、2000L~20,000Lのバイオリアクター内におけるものである。いくつかの実施形態では、細胞培養物の温度は、接種の約80時間~約120時間後に減少される。いくつかの実施形態では、ステップ(d)は、接種の約10~約14日後に行われる。
【0016】
いくつかの実施形態では、HCCFのTSACは、約2.2モル/モル~約3.6モル/モルである。いくつかの実施形態では、HCCFのTSACは、約2.2モル/モル~約3.4モル/モルである。いくつかの実施形態では、1つの追加的な精製ステップは、収集清澄化、濾過、限外濾過、ダイアフィルトレーション、ウイルス不活性化、親和性捕捉及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、1つの追加的な精製ステップは、限外濾過及び/又はダイアフィルトレーションを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、UFDFは、約14℃~約26℃の温度で保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約15℃~約26℃の温度で保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約15℃~約25℃の温度で保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約19℃~約25℃の温度で保持される。
【0018】
いくつかの実施形態では、UFDFは、約10時間~約50時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約12時間~約48時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約14時間~約42時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約17時間~約34時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約19時間~約33時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約25時間~約38時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約29時間~約35時間にわたって保持される。
【0019】
いくつかの実施形態では、UFDFは、約2.0g/L~約4.3g/Lのタンパク質濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約2.4g/L~約3.7g/Lのタンパク質濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約3.1g/Lのタンパク質濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約3.0g/L~約4.5g/Lのアルカリホスファターゼ濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約3.3g/L~約4.1g/Lのアルカリホスファターゼ濃度を有する。いくつかの実施形態では、アルカリホスファターゼは、アスホターゼアルファである。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップは、タンパク質アフィニティークロマトグラフィーである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップは、プロテインAクロマトグラフィーである。いくつかの実施形態では、ステップ(d)は、ウイルス不活性化ステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、ステップ(e)は、少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィーステップ及び/又は精製ステップをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィーステップは、カラムクロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態では、カラムクロマトグラフィーは、疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的な精製ステップは、追加的なダイアフィルトレーションを含む。いくつかの実施形態では、1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、疎水性相互作用クロマトグラフィー及び/又は少なくとも1つの追加的なダイアフィルトレーションステップを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィーステップは、約0.9モル/モル~約3.9モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィーステップは、約1.1モル/モル~約3.2モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィーステップは、約1.4モル/モル~約3.0モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィーステップは、約1.2モル/モル~約3.0モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される。
【0022】
いくつかの実施形態では、組換えアルカリホスファターゼは、W-sALP-X-Fc-Y-D-Z(式中、(i)Wは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;(ii)Xは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;(iii)Yは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;(iv)Zは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;(v)Fcは、結晶化可能領域断片であり;(vi)Dは、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸塩又はそれらの組み合わせであり、ここで、n=10又は16であり;及び(vii)sALPは、可溶性アルカリホスファターゼである)の構造を含む。いくつかの実施形態では、組換えアルカリホスファターゼは、アスホターゼアルファ(配列番号1)を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、タンパク質アフィニティークロマトグラフィーから得られる組換えアルカリホスファターゼは、約2℃~約8℃で貯蔵される。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示は、組換えアルカリホスファターゼ活性を測定することをさらに含む方法を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示は、哺乳動物細胞培養物中に生成される組換えアルカリホスファターゼであって、細胞培養物から生成される濾過プール中の組換えアルカリホスファターゼは、約1.2モル/モル以上の総シアル酸含量(TSAC)を有し、哺乳動物細胞培養物は、約100L~約25,000Lである、組換えアルカリホスファターゼを提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示は、組換えアルカリホスファターゼを含む濾過プール(UFDF)であって、約100L~約25,000Lの細胞培養物から生成され、約2.0~約4.3g/Lのタンパク質濃度において約19℃~約25℃で約14~約42時間にわたって保持される、濾過プール(UFDF)を提供する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載のような方法によって生成される組換えアルカリホスファターゼを提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載のような方法によって生成される組換えアルカリホスファターゼ及び少なくとも1つの薬学的に許容できる担体、希釈剤、賦形剤又はそれらの組み合わせを含む医薬製剤を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における無機ピロリン酸塩(PPi)の切断を増強するために、本明細書に記載の方法によって作製された組換えアルカリホスファターゼを使用する方法を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、本開示は、アルカリホスファターゼ欠損に関連する病態を患っている対象を治療する方法であって、治療有効量の、本明細書に記載の方法によって生成される組換えアルカリホスファターゼを対象に投与することを含む方法を対象とする。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示は、総シアル酸含量(TSAC)を、TSACを含有する組換えタンパク質において哺乳動物細胞培養物を通して制御する方法であって、少なくとも1つの精製ステップ及び少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを含む方法を対象とする。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示は、組換えタンパク質を産生する哺乳動物細胞培養物におけるグリコシダーゼ活性を制御する方法であって、少なくとも1つの精製ステップ及び少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを含む方法を対象とする。
【0033】
いくつかの実施形態では、組換えタンパク質は、組換え酵素である。いくつかの実施形態では、組換えタンパク質は、アルカリホスファターゼタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えタンパク質は、アスホターゼアルファである。いくつかの実施形態では、グリコシダーゼは、シアリダーゼである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの精製ステップは、限外濾過及び/又はダイアフィルトレーションを含み、また少なくとも1つのクロマトグラフィーステップは、プロテインAクロマトグラフィーを含む。
【0034】
貼付の図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】アスホターゼアルファの作製のための本明細書に記載の方法の実施形態を図示する。
図2】温度変化の存在下及び不在下で様々な栄養補助剤の添加とともに増殖される細胞でのタンパク質シアリル化を表す。Brx-1=温度変化を伴うコントロールプロセス;Brx-2=温度変化を伴うコントロールプロセス;Brx-3=温度変化を伴うCell Boost 2+5;Brx-4=温度変化を伴うCell Boost 2+5;Brx5=温度変化を伴うCell Boost 6;Brx-6=温度変化を伴わないCell Boost 6;Brx-7=温度変化を伴うCell Boost 7a+7b;Brx-8=温度変化を伴わないCell Boost 7a+7b。14日目の値が示される。
図3A-3B】HCCF収集後の濃縮/ダイアフィルトレーション(UF/DF)の保持中のTSACの減少とタンパク質濃度(図3A)及び温度(図3B)との間の相関を表す。図3Aは、TSACの減少速度における増加が、UF1濃度における1g/Lの増加(位置1(LNH):平均:2.1g/L及び位置2(LBH):平均:3.3g/L)について0.11モル/モル/10時間であることを示唆する。図3Bは、TSACの減少速度における増加が、UF1保持温度における1℃の増加について0.11モル/モル/10時間であることを示唆する。
図4】実施例2に記載の通り、3つの10Lの清澄化収集ロットの各々において実施された小規模UF/DF1操作及び保持時間の概要である。
図5】収集バッチ#AにおけるプロテインAクロマトグラフィープールステップでのTSAC対保持時間、温度及びタンパク質濃度を表す。3つのタンパク質濃度(1.88g/L、3.09g/L及び4.44g/L);3つの保持温度(15℃、19℃及び25℃);及び5つの保持時間(12、24、36、48及び60時間)が試験された。
図6】収集バッチ#BにおけるプロテインAクロマトグラフィープールステップでのTSAC対保持時間、温度及びタンパク質濃度を表す。3つのタンパク質濃度(2.25g/L、3.69g/L及び5.25g/L);3つの保持温度(15℃、19℃及び25℃);及び5つの保持時間(12、24、36、48及び60時間)が試験された。
図7】収集バッチ#CにおけるプロテインAクロマトグラフィープールステップでのTSAC対保持時間、温度及びタンパク質濃度を表す。3つのタンパク質濃度(1.77g/L、2.87g/L及び4.05g/L);3つの保持温度(15℃、19℃及び25℃);及び5つの保持時間(12、24、36、48及び60時間)が試験された。
図8】51の製造バッチにおけるプロテインAクロマトグラフィーステップ(ProA)後及びバルク原薬充填ステップ(BDS)時のTSAC測定を示す。
図9】39の製造バッチにおける細胞培養液(CCF)及び収集清澄化培養液(HCCF)でのTSAC測定を示す。
図10】39の製造バッチにおける収集清澄化培養液(HCCF)、プロテインAクロマトグラフィーステップ(ProA)及びバルク原薬充填ステップ(BDS)でのTSAC測定を示す。
図11】HCCFからフィットモデル分析を実施することによって作出されたJMPモデルの使用にかけてのTSACの減少を示す。実際の実験結果も含まれる。
図12】HCCFからのTSACの減少の関数としての保持時間、タンパク質濃度及び保持温度についてのJMPモデルの予測プロファイラー出力を含む。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
「約」、「およそ」:本明細書で用いられるとき、用語「約」及び「およそ」は、1つ以上の特定の細胞培養条件又は数値に適用されると、その培養条件、条件又は数値について述べられた参照値に類似する種々の値を指す。特定の実施形態では、用語「約」は、その培養条件、条件又は数値について述べられた参照値の25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1パーセント又はそれ未満の種々の値を指す。
【0037】
「アミノ酸」:用語「アミノ酸」は、本明細書で用いられるとき、通常、ポリペプチド又はそれらのアミノ酸の類似体若しくは誘導体の形態で用いられる20の天然に存在するアミノ酸のいずれかを指す。本開示のアミノ酸は、細胞培養物に対する培地中に提供され得る。培地中に提供されるアミノ酸は、塩として又は水和物形態で提供され得る。
【0038】
「バッチ培養」:用語「バッチ培養」は、本明細書で用いられるとき、培地(下記「培地」の定義を参照されたい)を含む、最終的に細胞を培養するのに用いられる成分のすべて及び細胞自体が培養プロセスの開始時に提供される、細胞を培養する方法を指す。バッチ培養は、典型的には、ある時点で停止され、培地中の細胞及び/又は成分は、収集され、任意選択的に精製される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、バッチ培養において用いられる。
【0039】
「バイオリアクター」:用語「バイオリアクター」は、本明細書で用いられるとき、細胞培養物(例えば、哺乳動物細胞培養物)の増殖のために用いられる任意の容器を指す。バイオリアクターは、細胞の培養にとって有用である限り、任意のサイズであり得る。典型的には、バイオリアクターは、少なくとも1リットル、10、100、250、500、1000、2500、5000、8000、10,000、12,0000、20,000リットル若しくはそれを超えるか又はそれらの間の任意の容積となる。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、100リットル~25,000リットル、500リットル~20,000リットル、1,000リットル~20,000リットル、2,000リットル~20,000リットル、5,000リットル~20,000リットル又は10,000リットル~20,000リットルである。限定されないが、pH及び温度を含むバイオリアクターの内部条件は、典型的には、培養期間中に調節される。バイオリアクターは、ガラス、プラスチック又は金属を含む、本開示の培養条件下の培地に懸濁される哺乳類又は他の細胞培養物を保持することに適した任意の材料から構成され得る。用語「産生バイオリアクター」は、本明細書で用いられるとき、目的のポリペプチド又はタンパク質の作製に用いられる最終バイオリアクターを指す。大規模細胞培養産生バイオリアクターの容積は、典型的には、少なくとも500リットルであり、1000、2500、5000、8000、10,000、12,0000、20,000リットル若しくはそれを超えるか又はそれらの間の任意の容積であり得る。当業者は、本開示の実行における使用に適したバイオリアクターについて理解し、選択できるであろう。
【0040】
「細胞密度」:用語「細胞密度」は、本明細書で用いられるとき、所与の培地の体積中に存在する細胞の数を指す。
【0041】
「細胞生存度」:用語「細胞生存度」は、本明細書で用いられるとき、培養下の細胞が所与の培養条件又は実験バリエーションのセット下で生存する能力を指す。この用語は、本明細書で用いられるとき、特定の時点で生存している細胞の、その時点の培養下での細胞の総数(生存及び死滅)に対する割合も指す。
【0042】
「培養物」及び「細胞培養物」:これらの用語は、本明細書で用いられるとき、細胞集団の生存及び/又は増殖に適した条件下で培地(下記「培地」の定義を参照されたい)に懸濁される細胞集団を指す。当業者に明白であるように、これらの用語は、本明細書で用いられるとき、細胞集団及び集団が懸濁される培地を含む組み合わせを指し得る。
【0043】
「流加培養」:用語「流加培養」は、本明細書で用いられるとき、培養プロセスの開始後のいずれかの時点で追加的成分が培養物に提供される、細胞を培養する方法を指す。提供される成分は、典型的には、培養プロセス中に枯渇している、細胞のための栄養補助剤を含む。流加培養は、典型的には、ある時点で停止され、培地中の細胞及び/又は成分は、収集され、任意選択的に精製される。流加培養は、対応する流加バイオリアクター内で実施され得る。いくつかの実施形態では、本方法は、流加培養を含む。
【0044】
「断片」:用語「断片」は、本明細書で用いられるとき、ポリペプチドを指し、所与のポリペプチドの、そのポリペプチドに固有の又は特徴的な任意の分離部分として定義される。この用語は、本明細書で用いられるとき、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも一部を保持する、所与のポリペプチドの任意の分離部分も指す。いくつかの実施形態では、保持される活性の割合は、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも10%である。様々な実施形態では、保持される活性の割合は、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%である。他の実施形態では、保持される活性の割合は、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%である。一実施形態では、保持される活性の割合は、完全長ポリペプチドの活性の100%である。この用語は、本明細書で用いられるとき、完全長ポリペプチド中に見出される少なくとも確立された配列要素を含む、所与のポリペプチドの任意の部分も指す。いくつかの実施形態では、配列要素は、完全長ポリペプチドの少なくとも4~5アミノ酸に及ぶ。いくつかの実施形態では、配列要素は、完全長ポリペプチドの少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50又はそれを超えるアミノ酸に及ぶ。
【0045】
「糖タンパク質(Glycoprotein)」又は「糖タンパク質(glycoproteins)」:これらの用語は、本明細書で用いられるとき、炭水化物基(シアル酸など)がポリペプチド鎖に結合したタンパク質又はポリペプチドを指す。
【0046】
「培地(medium)」、「培地(media)」「細胞培地」及び「培地(culture medium)」:これらの用語は、本明細書で用いられるとき、哺乳動物細胞の増殖に栄養を与える栄養分を含有する溶液を指す。典型的には、これらの溶液は、最低限の増殖及び/又は生存に対して細胞が必要とする必須及び非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質及び微量元素を提供する。溶液は、ホルモン及び増殖因子を含む、最小速度を超えて増殖及び/又は生存を増強する成分も含有し得る。溶液は、例えば、細胞生存及び増殖にとって最適なpH及び塩濃度に向けて配合される。いくつかの実施形態では、培地は、「限定培地」、即ちタンパク質、加水分解物又は未知組成物の成分を含有しない無血清培地であり得る。限定培地は、動物由来成分を含まず、すべての成分は、既知の化学構造を有する。いくつかの実施形態では、培地は、基礎培地、即ち炭素源、水、塩、アミノ酸及び窒素の供給源(例えば、動物、例えば牛肉又は酵素抽出物)を含有する非限定培地である。様々な培地は、市販されており、当業者に公知である。いくつかの実施形態では、培地は、EX-CELL(登録商標)302無血清培地(Signam Aldrich,St.Louis,MO)、CD DG44培地(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)、BD Select培地(BD Biosciences,San Jose,CA)又はそれらの混合物、BD Select培地とSFM4CHO培地(Hyclone,Logan UT)との混合物から選択される。いくつかの実施形態では、培地は、SFM4CHO培地とBD Select(商標)培地との組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、培地は、SFM4CHO培地とBD Select(商標)培地との組み合わせを、90/10、80/20、75/25、70/30、60/40又は50/50から選択される比で含む。いくつかの実施形態では、培地は、SFM4CHO培地とBD Select(商標)培地との組み合わせを70/30~90/10の比で含む。いくつかの実施形態では、培地は、SFM4CHO培地とBD Select(商標)培地との組み合わせを75/25の比で含む。
【0047】
「重量モル浸透圧濃度」及び「容積モル浸透圧濃度」:重量モル浸透圧濃度は、水溶液中に溶解した溶質粒子の浸透圧の尺度である。溶質粒子は、イオン及び非イオン化分子の両方を含む。重量モル浸透圧濃度は、1kgの溶液に溶解した浸透圧的に活性な粒子の濃度(即ちオスモル)として表される(38℃で1mOsm/kgのHOは、19mmHgの浸透圧に等しい)。それに対し、「容積モル浸透圧濃度」は、1リットルの溶液に溶解した溶質粒子の数を指す。本明細書で用いられるとき、略記「mOsm」は、「ミリオスモル/kg溶液」を意味する。
【0048】
「灌流培養」:用語「灌流培養」は、本明細書で用いられるとき、培養プロセスの開始後に追加的成分が培養物に連続的又は半連続的に提供される、細胞を培養する方法を指す。提供される成分は、典型的には、培養プロセス中に枯渇している、細胞のための栄養補助剤を含む。培地中の細胞及び/又は成分の一部は、典型的には、連続又は半連続ベースで収集され、任意選択的に精製される。いくつかの実施形態では、栄養補助剤は、本明細書に記載されるとき、灌流培養下で添加され、即ち、それらは、定められた期間にわたって連続的に提供される。
【0049】
「ポリペプチド」:用語「ポリペプチド」は、本明細書で用いられるとき、ペプチド結合を介して一緒に連結されるアミノ酸の連続鎖を指す。この用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を指すために用いられるが、当業者は、この用語が長い鎖に限定されず、ペプチド結合を介して一緒に連結される2つのアミノ酸を含む最小長さの鎖を指し得ることを理解するであろう。
【0050】
「タンパク質」:用語「タンパク質」は、本明細書で用いられるとき、分離単位として機能する1つ以上のポリペプチドを指す。単一のポリペプチドが分離機能単位であり、分離機能単位を形成するために他のポリペプチドとの永久的な物理的会合を必要としない場合、用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書で用いられるとき、交換可能に用いられる。
【0051】
「組換え発現されるポリペプチド」及び「組換えポリペプチド」:これらの用語は、本明細書で用いられるとき、ポリペプチドを発現するように遺伝子操作されている宿主細胞から発現されるポリペプチドを指す。組換え発現されるポリペプチドは、通常、哺乳類宿主細胞において発現されるポリペプチドに一致又は類似し得る。組換え発現されるポリペプチドは、宿主細胞に対して外来性でもあり得、即ち通常、宿主細胞において発現されるペプチドに対して異種性であり得る。代わりに、組換え発現されるポリペプチドは、ポリペプチドの一部が、通常、哺乳類宿主細胞において発現されるポリペプチドに一致又は類似するアミノ酸配列を有する一方、他の部分が宿主細胞に対して外来性である点でキメラであり得る。
【0052】
「播種」:用語「播種」は、本明細書で用いられるとき、細胞培養物をバイオリアクター又は別の容器に提供するプロセスを指す。細胞は、別のバイオリアクター又は容器内で予め増殖され得る。代わりに、細胞は、それらをバイオリアクター又は容器に提供する直前に凍結及び解凍され得る。この用語は、単細胞を含む任意の数の細胞を指す。様々な実施形態では、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、細胞が約1.0×10細胞/mL、1.5×10細胞/mL、2.0×10細胞/mL、2.5×10細胞/mL、3.0×10細胞/mL、3.5×10細胞/mL、4.0×10細胞/mL、4.5×10細胞/mL、5.0×10細胞/mL、5.5×10細胞/mL、6.0×10細胞/mL、6.5×10細胞/mL、7.0×10細胞/mL、7.5×10細胞/mL、8.0×10細胞/mL、8.5×10細胞/mL、9.0×10細胞/mL、9.5×10細胞/mL、1.0×10細胞/mL、1.5×10細胞/mL、2.0×10細胞/mLの密度又はより高い密度で播種されるプロセスによって作製される。特定の一実施形態では、かかるプロセスにおいて、細胞は、約4.0×10細胞/mL、5.5×10細胞/mL又は8.0×10細胞/mLの密度で播種される。
【0053】
「総シアル酸含量」又は「TSAC」:この用語は、本明細書で用いられるとき、特定のタンパク質分子上のシアル酸(炭水化物)の量を指す。それは、タンパク質の1モルあたりのモルでのTSAC又は「モル/モル」として表される。TSAC濃度は、精製プロセス中に測定される。例えば、TSAC定量化の一方法は、TSACが酸加水分解を用いてアスホターゼアルファから放出され、その後、放出されたTSACが、アンペロメトリック電気化学検出法を伴う高性能アニオン交換クロマトグラフィー(「HPAE-PAD」)を用いた電気化学的検出を介して検出される。
【0054】
「力価」:用語「力価」は、本明細書で用いられるとき、細胞培養物によって産生される組換え発現されたポリペプチド又はタンパク質の総量が所与量の培地容量で除されたものを指す。力価は、典型的には、1mLの培地あたりの数ミリグラム単位のポリペプチド又はタンパク質で表される。
【0055】
本明細書で用いられるアクロニムは、例えば、HCCF:収集清澄化培養液;UF:限外濾過、DF:ダイアフィルトレーション;VCD:生細胞密度;IVCC:積分生細胞濃度;TSAC:総シアル酸含量;HPAE-PAD:アンペロメトリック電気化学検出を伴う高性能アニオン交換クロマトグラフィー;SEC:サイズ排除クロマトグラフィー;AEX:アニオン交換クロマトグラフィー;LoC:ラボオンチップ;及びMALDI-TOF:マトリックス支援レーザー脱離/イオン化-飛行時間型を含む。
【0056】
本明細書で用いられるとき、用語「疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラム」は、固定相又は樹脂に対するタンパク質と疎水性基との間の疎水性相互作用により、目的タンパク質の断片及び凝集物、他のタンパク質若しくはタンパク質断片及び細胞片などの他の汚染物質を含む不純物又は他の精製ステップからの残留不純物からタンパク質が分離される、固定相又は樹脂及び移動相又は液相を含むカラムを指す。固定相又は樹脂は、疎水性リガンドが結合される基材マトリックス又は支持体、例えば架橋アガロース、シリカ又は合成共重合体材料を含む。かかる固定相又は樹脂の例として、フェニル、ブチル、オクチル、ヘキシル及び他のアルキルで置換されたアガロース、シリカ又は他の合成高分子が挙げられる。カラムは、固定相を含む任意のサイズであり得るか、又はオープン及びバッチプロセスで処理され得る。いくつかの実施形態では、組換えアルカリホスファターゼは、HICを用いて細胞培養物から単離される。
【0057】
本明細書で用いられるとき、用語「調製物」は、目的のタンパク質を産生する細胞培養物からの目的のタンパク質(例えば、本明細書に記載の組換えアルカリホスファターゼ)及び少なくとも1つの不純物を含む溶液並びに/又は細胞培養物からかかる目的のタンパク質を抽出、濃縮及び/若しくは精製するために用いられる溶液を指す。例えば、目的のタンパク質(例えば、本明細書に記載の組換えアルカリホスファターゼ)の調製物は、細胞培養物中で増殖し、かかる目的のタンパク質を産生する細胞をホモジナイズ溶液中でホモジナイズすることによって調製され得る。いくつかの実施形態では、次に、調製物に1つ以上の精製/単離プロセス、例えばクロマトグラフィーステップが施される。
【0058】
本明細書で用いられるとき、用語「溶液」は、液体形態での2つ以上の物質の均一の分子混合物を指す。詳細には、いくつかの実施形態では、精製されるタンパク質、例えば本開示における組換えアルカリホスファターゼ又はその融合タンパク質(例えば、アスホターゼアルファ)は、溶液中の1つの物質を表す。用語「緩衝液」又は「緩衝溶液」は、その共役酸-塩基の範囲の作用により、pHの変化に抗する溶液を指す。pHを約pH5~約pH7の範囲で制御する緩衝液の例として、ヘペス、クエン酸塩、リン酸塩及び酢酸塩並びに他のミネラル酸又は有機酸緩衝液並びにこれらの組み合わせが挙げられる。塩のカチオンは、ナトリウム、アンモニウム及びカリウムを含む。本明細書で用いられるとき、用語「負荷緩衝液/溶液」又は「平衡緩衝液/溶液」は、塩又はタンパク質調製物をクロマトグラフィーカラム、例えばHICカラムに負荷するためにタンパク質調製物と混合される塩を含有する緩衝液/溶液を指す。この緩衝液/溶液は、タンパク質を負荷する前にカラムを平衡化し、且つ負荷後にカラムを洗浄するためにも用いられる。「溶出緩衝液/溶液」は、タンパク質をカラムから溶出するために用いられる緩衝液/溶液を指す。本明細書で用いられるとき、用語「溶液」は、水を含む緩衝液又は非緩衝液のいずれかを指す。
【0059】
用語「シアル酸」は、一般に、9炭素骨格を有する単糖の、ノイラミン酸のN-又はO-置換誘導体を指す。シアル酸は、具体的にはN-アセチルノイラミン酸化合物も指し得、ときにNeu5Ac又はNANAと略記される。シアル酸の存在は、吸収、血清半減期及び血清からの糖タンパク質の排除並びに糖タンパク質の物理、化学及び免疫原性特性に影響を与えることがある。本開示のいくつかの実施形態では、アルカリホスファターゼ、例えばアスホターゼアルファに会合されるシアル酸は、生理的状態下での分子の半減期に影響する。いくつかの実施形態では、アスホターゼアルファの総シアル酸含量(TSAC)の正確且つ予測可能な制御は、組換えアスホターゼアルファにとっての決定的な品質特性として役立つ。いくつかの実施形態では、TSACは、1.2~3.0モル/モルのアスホターゼアルファ単量体である。いくつかの実施形態では、TSACは、バイオリアクター内での組換えタンパク質作製プロセスにおいて生成される。いくつかの実施形態では、本開示は、哺乳動物細胞培養物を通して、TSACを含有する組換えタンパク質中の総シアル酸含量(TSAC)を制御する方法であって、少なくとも1つの精製ステップ及び少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、精製及びクロマトグラフィーステップは、グリコシダーゼ活性の低下、したがって組換えタンパク質の総シアル酸含量の増加をもたらす。
【0060】
用語「シアリル化」は、グリコシル化の特定のタイプ、即ち1つ以上のシアル酸分子の生体分子への付加、特に1つ以上のシアル酸分子のタンパク質への付加を指す。本開示のいくつかの実施形態では、シアリル化は、シアリルトランスフェラーゼ酵素により実施される。いくつかの実施形態では、シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸を新生オリゴ糖及び/又は糖タンパク質のN又はO結合型糖鎖に付加する。いくつかの実施形態では、シアリルトランスフェラーゼは、組換えアルカリホスファターゼを産生する細胞内に天然に存在する。いくつかの実施形態では、シアリルトランスフェラーゼは、組換えアルカリホスファターゼを産生する細胞を培養するのに用いられる細胞培地及び/又は栄養補充剤中に存在する。いくつかの実施形態では、シアリルトランスフェラーゼは、当技術分野で公知の組換えタンパク質発現方法を用いて組換え的に作製される。いくつかの実施形態では、組換えアルカリホスファターゼとは別々に作製される組換えシアリルトランスフェラーゼは、細胞培養物、収集清澄化培養液(HCCF)及び/又は濾過プールに外因性に添加される。
【0061】
本開示のいくつかの実施形態では、シアル酸基は、加水分解により糖タンパク質から除去される(即ち「脱シアリル化」)。いくつかの実施形態では、脱シアリル化は、グリコシダーゼ酵素により実施される。本明細書で用いられるとき、「配糖体ヒドロラーゼ」とも称される「グリコシダーゼ」は、配糖体の糖をアルコール又は別の糖単位に連結する結合の加水分解を触媒する酵素である。グリコシダーゼの例として、アミラーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ及びシアリダーゼが挙げられる。いくつかの実施形態では、脱シアリル化は、シアリダーゼ酵素により実施される。いくつかの実施形態では、シアリダーゼは、糖タンパク質、糖脂質、オリゴ糖、コロミン酸及び/又は合成基質における末端シアル酸残基のグリコシド結合を加水分解する。いくつかの実施形態では、シアリダーゼは、組換えアルカリホスファターゼを産生する細胞培地中に存在する。いくつかの実施形態では、シアリダーゼ活性は、総タンパク質濃度に依存し、且つ/又はそれと相関する。いくつかの実施形態では、シアリダーゼは、シアリダーゼが活性化される、決定的に高いタンパク質濃度になる時点まで本質的に不活性である。いくつかの実施形態では、シアリダーゼは、組換えアルカリホスファターゼを産生する細胞培養物のHCCF又は濾過プール中に存在する。いくつかの実施形態では、シアリダーゼは、組換えアルカリホスファターゼ、例えばアスホターゼアルファにおけるグリコシル化部位からシアル酸部分を除去し、組換えアルカリホスファターゼのTSACを有効に減少させる。いくつかの実施形態では、シアリダーゼは、細胞培養物、HCCF及び/又は濾過プールから選択的に除去される。シアリダーゼは、例えば、シアリダーゼに特異的な阻害剤、抗体、イオン交換及び/又はアフィニティークロマトグラフィー、免疫沈降などの1つ又は組み合わせにより選択的に除去され得る。バイオプロセス条件がタンパク質のシアル酸含量にどのように影響するかの概要については、Gramer et al.,Biotechnol.Prog.9(4):366-373(1993)(その開示は、その全体がここで参照により援用される)を参照されたい。いくつかの実施形態では、本開示は、組換えタンパク質を産生する哺乳動物細胞培養物中のグリコシダーゼ活性を制御する方法であって、少なくとも1つの精製及び少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、精製及びクロマトグラフィーステップは、グリコシダーゼ活性の低下、したがって組換えタンパク質の総シアル酸含量の増加をもたらす。
【0062】
HCCFとして略記される用語「収集清澄化培養液」は、細胞培養物、例えばバイオリアクター内の細胞培養物から収集された清澄化濾液を指す。HCCFは、典型的には、細胞培養物中に存在することがある細胞及び細胞片(例えば、不溶性生体分子など)を含まない。本開示のいくつかの実施形態では、HCCFは、遠心分離、深濾過、滅菌濾過及び/又はクロマトグラフィーを通して生成される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターからの細胞培養物は、HCCFを生成するため、まず遠心分離及び/又は濾過され、次に少なくとも1つのクロマトグラフィーステップが施される。いくつかの実施形態では、HCCFは、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップ前及び/又は後に濃縮される。いくつかの実施形態では、HCCFは、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップ後に希釈される。いくつかの実施形態では、組換えアルカリホスファターゼを産生する細胞培養物からのHCCFは、組換えアルカリホスファターゼ及び汚染物質タンパク質を含有する。いくつかの実施形態では、HCCF中の汚染物質タンパク質は、シアリダーゼ酵素を含む。
【0063】
用語「濾過」及び「フロー濾過」は、溶液又は懸濁液中の成分をそれらのサイズ及び電荷差に基づいて分離するために膜を用いる圧力駆動プロセスを指す。フロー濾過は、通常のフロー濾過又は「タンジェンシャルフローフィルトレーション」であり得、TFF又はクロスフロー濾過としても知られる。TFFは、典型的にはタンパク質を清澄化、濃縮及び精製するために用いられる。TFFプロセス中、流体は、少なくとも1つの膜の表面に沿う接線方向にポンピングされる。適用圧力は、流体の一部を、その膜を通して下流側に「濾液」として押すように機能する。膜孔を貫通するには大き過ぎる微粒子及び高分子は、上流側に「残余分」として保持される。TFFは、例えば、精密濾過、限外濾過(ウイルス濾過及び高性能TFFを含む)、逆浸透、ナノ濾過及びダイアフィルトレーションを含む様々な形態で用いられ得る。本開示のいくつかの実施形態では、TFF形態の1つ以上は、タンパク質の処理及び/又は精製を意図して併用される。いくつかの実施形態では、限外濾過及びダイアフィルトレーションは、組換えアルカリホスファターゼを精製することを意図して併用される。限外濾過及びダイアフィルトレーションは、本明細書で説明される。
【0064】
「限外濾過」又は「UF」は、緩衝液交換、脱塩又は濃縮において緩衝液成分からタンパク質を分離するために用いられる精製プロセスである。保持されるタンパク質に応じて、約1kD~約1000kDの範囲内の膜分子量限界が用いられる。いくつかの実施形態では、UFは、TFFプロセスである。
【0065】
「ダイアフィルトレーション」又は「DF」は、膜を通してより小さい分子を洗浄し、より大きい分子を保持液中に残し、最終的に濃度を変更しないような精製プロセスである。典型的には、生成物収量及び/又は純度を増加させるため、DFは、別の精製プロセスと併用される。DF中、溶液(例えば、水又は緩衝液)は、サンプルリザーバー内に導入される一方、濾液は、単位操作から除去される。所望される生成物が保持液中に存在する場合のプロセスでは、ダイアフィルトレーションにより、成分が生成物プールから濾液中に洗浄され、それにより緩衝液が交換され、望ましくない種の濃度が減少する。生成物が濾液中に存在するとき、ダイアフィルトレーションにより、それが膜を通して収集容器内に洗浄される。いくつかの実施形態では、DFは、TFFプロセスである。
【0066】
ときに「UFDFプール」又は「UFDF」とも称される用語「濾過プール」は、濾過プロセスから、典型的には限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)組み合わせプロセスからの流体の総体積を指す。タンパク質精製との関連において、UFDFは、限外濾過/ダイアフィルトレーションプロセスからの保持液を指す。
【0067】
本開示は、細胞培養物(例えば、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含む哺乳動物細胞)によって発現される組換えタンパク質の収率、酵素機能及び一貫性を改善する方法を提供する。具体的には、組換えタンパク質は、例えば、発酵プロセスを通して特定の細胞型(例えば、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含む哺乳動物細胞)によって産生され得る。細胞の接種及び増殖、タンパク質発現の誘導及びタンパク質発現のための様々なパラメータの最適化の全プロセスは、上流処理ステップと称される。それに対し、下流処理ステップは、例えば、産生タンパク質の回収及び精製(即ち細胞及び培地に由来する他の不純物並びに/又は汚染物質からの産生タンパク質の分離)を含み得る。例示的な下流プロセスステップは、例えば、収集物からのタンパク質の捕捉、宿主細胞片、宿主細胞タンパク質(HCP)及び宿主細胞DNAの除去、内毒素、ウイルス及びその他の封じ込め、緩衝液交換並びに配合調節などを含む。
【0068】
本開示は、細胞培養によって産生されるアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)の収率、酵素機能及び一貫性を改善する方法を提供する。
【0069】
本開示は、組換えタンパク質を発現する細胞(例えば、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含む哺乳動物細胞)を培養する方法を提供する。本開示は、細胞培養によるアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)の作製を意図した製造システムを提供する。特定の実施形態では、細胞増殖、生存度及び/又はタンパク質産生若しくは品質に対して有害である1つ以上の代謝生成物の産生を最小化するシステムが提供される。特定の実施形態では、細胞培養は、バッチ培養、流加培養、培養又は連続培養である。
【0070】
アルカリホスファターゼ(ALP)
本開示は、組換え細胞培養におけるアルカリホスファターゼタンパク質(例えば、アスホターゼアルファ)の製造に関する。アルカリホスファターゼタンパク質は、少なくともいくらかのアルカリホスファターゼ活性を含む任意のポリペプチド又はポリペプチドを含む分子を含む。様々な実施形態では、本明細書で開示されるアルカリホスファターゼは、当技術分野で公知のアルカリホスファターゼの任意の機能、例えばホスホエタノールアミン(PEA)、無機ピロリン酸(PPi)及びピリドキサール5’-リン酸(PLP)を含む天然基質に対する酵素活性を含み得る、アルカリホスファターゼ機能を有する任意のポリペプチドを含む。
【0071】
特定の実施形態では、かかるアルカリホスファターゼタンパク質は、本明細書で開示される方法によって作製され、次いで精製された後、アルカリホスファターゼ関連疾患又は障害を治療又は予防するために用いられ得る。例えば、かかるアルカリホスファターゼタンパク質は、内因性アルカリホスファターゼの減少及び/又は機能不全を有するか、又は過剰発現された(例えば、正常レベルを超える)アルカリホスファターゼ基質を有する対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、本開示におけるアルカリホスファターゼタンパク質は、組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、アルカリホスファターゼタンパク質は、融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、本開示におけるアルカリホスファターゼタンパク質は、細胞型、組織(例えば、結合、筋肉、神経又は上皮組織)又は臓器(例えば、肝臓、心臓、腎臓、筋肉、骨、軟骨、靱帯、腱など)を特異的に標的にする。例えば、かかるアルカリホスファターゼタンパク質は、完全長アルカリホスファターゼ(ALP)又は少なくとも1つのアルカリホスファターゼ(ALP)の断片を含み得る。いくつかの実施形態では、アルカリホスファターゼタンパク質は、骨標的部分(例えば、下記のような負に荷電したペプチド)に連結される可溶性ALP(sALP)を含む。いくつかの実施形態では、アルカリホスファターゼタンパク質は、免疫グロブリン部分(完全長又は断片)に連結される可溶性ALP(sALP)を含む。例えば、かかる免疫グロブリン部分は、結晶化可能領域断片(Fc)を含み得る。いくつかの実施形態では、アルカリホスファターゼタンパク質は、骨標的部分と免疫グロブリン部分(完全長又は断片)との両方に連結される可溶性ALP(sALP)を含む。本明細書で開示されるアルカリホスファターゼタンパク質のより詳細な説明については、PCT公開の国際公開第2005/103263号パンフレット及び国際公開第2008/138131号パンフレット(それらの両方の教示は、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照されたい。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルカリホスファターゼタンパク質は、sALP-X、X-sALP、sALP-Y、Y-sALP、sALP-X-Y、sALP-Y-X、X-sALP-Y、X-Y-sALP、Y-sALP-X及びY-X-sALP(式中、Xは、本明細書に記載のように骨標的部分を含み、且つYは、本明細書に記載のように免疫グロブリン部分を含む)からなる群から選択される構造のいずれか1つを含む。一実施形態では、アルカリホスファターゼタンパク質は、W-sALP-X-Fc-Y-D/E-Z(式中、Wは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Xは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Yは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Zは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Fcは、結晶化可能領域断片であり、D/Eは、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸又はそれらの組み合わせであり、ここで、n=8~20であり、及びsALPは、可溶性アルカリホスファターゼ(ALP)である)の構造を含む。いくつかの実施形態では、D/Eは、ポリアスパラギン酸配列である。例えば、Dは、ポリアスパラギン酸配列であり得、ここで、nは、8~20の任意の数(両方が含まれる)である(例えば、nは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20であり得る)。一実施形態では、Dは、D10又はD16である。いくつかの実施形態では、D/Eは、ポリグルタミン酸配列である。例えば、Eは、ポリグルタミン酸配列であり得、ここで、nは、8~20の任意の数(両方が含まれる)である(例えば、nは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20であり得る)。一実施形態では、Eは、E10又はE16である。
【0073】
例えば、かかるsALPは、免疫グロブリン分子の完全長又は断片(例えば、結晶化可能領域断片(Fc))に融合され得る。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、W-sALP-X-Fc-Y-D-Z(式中、Wは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Xは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Yは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Zは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Fcは、結晶化可能領域断片であり、Dは、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸又はそれらの組み合わせであり、ここで、n=10又は16であり、及び前記sALPは、可溶性アルカリホスファターゼである)の構造を含む。一実施形態では、n=10である。別の実施形態では、W及びZは、前記ポリペプチドに不在である。いくつかの実施形態では、前記Fcは、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態では、前記Fcは、IgG-1、IgG-2、IgG-3、IgG-3及びIgG-4からなる群から選択される免疫グロブリンの定常ドメインである。一実施形態では、前記Fcは、免疫グロブリンIgG-1の定常ドメインである。特定の一実施形態では、前記Fcは、配列番号1のD488-K714に示される配列を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるアルカリホスファターゼは、W-sALP-X-Fc-Y-D-Z(式中、Wは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Xは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Yは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Zは、不在又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり、Fcは、結晶化可能領域断片であり、Dは、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸又はそれらの組み合わせであり、ここで、n=10又は16であり、及び前記sALPは、可溶性アルカリホスファターゼである)の構造を含む。かかるsALPは、ホスホエタノールアミン(PEA)、無機ピロリン酸(PPi)及びピリドキサール5’-リン酸(PLP)の少なくとも1つの切断を触媒する能力がある。様々な実施形態では、本明細書で開示されるsALPは、無機ピロリン酸(PPi)の切断を触媒する能力がある。かかるsALPは、C末端の糖脂質アンカー(GPI)を有しないアルカリホスファターゼ(ALP)の活性のあるアンカー型のすべてのアミノ酸を含み得る。かかるALPは、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNALP)、胎盤アルカリホスファターゼ(PALP)、胚細胞アルカリホスファターゼ(GCALP)及び腸アルカリホスファターゼ(IAP)又は本明細書で開示されるそれらのキメラ若しくは融合型又は変異体の少なくとも1つであり得る。特定の一実施形態では、ALPは、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNALP)を含む。別の実施形態では、本明細書で開示されるsALPは、配列番号1のL1-S485に示される配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる。さらに別の実施形態では、本明細書で開示されるsALPは、配列番号1のL1-S485に示される配列を含む。
【0075】
一実施形態では、アルカリホスファターゼタンパク質は、TNALP-Fc-D10(配列番号1、下に列挙の通り)の構造を含む。下線部のアスパラギン(N)残基は、予想されるグリコシル化部位(即ちN123、213、254、286、413及び564)に対応する。太字下線部のアミノ酸残基(L486-K487及びD715-I716)は、それぞれsALPとFcとの間及びFcとD10ドメインとの間のリンカーに対応する。
【化1】
【0076】
この実施形態では、ポリペプチドは、5つの部分から構成される。アミノ酸L1-S485を有する第1の部分(sALP)は、触媒機能を有する、ヒト組織非特異的アルカリホスファターゼ酵素の可溶性部分である。第2の部分は、リンカーとしてアミノ酸L486-K487を有する。アミノ酸D488-K714を有する第3の部分(Fc)は、ヒンジ、CH及びCHドメインを有するヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)のFc部分である。第4の部分は、リンカーとしてアミノ酸D715-I716を有する。第5の部分は、アスホターゼアルファが骨の鉱物相に結合することを可能にする骨標的部分であるアミノ酸D717-D726(D10)を有する。さらに、各ポリペプチド鎖は、6つの予想されるグリコシル化部位及び11のシステイン(Cys)残基を有する。Cys102は、遊離システインとして存在する。各ポリペプチド鎖は、Cys122とCys184、Cys472とCys480、Cys528とCys588及びCys634とCys692との間に4つの鎖内ジスルフィド結合を有する。2つのポリペプチド鎖は、両方の鎖上のCys493間及び両方の鎖上のCys496間の2つの鎖間ジスルフィド結合によって連結される。これらの共有結合構造的特徴に加えて、哺乳類アルカリホスファターゼは、各ポリペプチド鎖上において、亜鉛に対する2つの部位、マグネシウムに対する1つの部位及びカルシウムに対する1つの部位を含む4つの金属結合部位を有すると考えられる。
【0077】
ALPには、4つの既知のアイソザイム、即ちさらに下に記される組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNALP)、胎盤アルカリホスファターゼ(PALP)(例えば、ジェンバンク受入番号NP_112603及びNP_001623に記述される通り)、胚細胞アルカリホスファターゼ(GCALP)(例えば、ジェンバンク受入番号P10696に記述される通り)及び腸アルカリホスファターゼ(IAP)(例えば、ジェンバンク受入番号NP_001622に記述される通り)が存在する。これらの酵素は、酷似する三次元構造を有する。それら触媒部位の各々は、2個のZn及び1個のMgを含む、酵素活性にとって必要な金属イオンに対する4つの金属結合ドメインを有する。これらの酵素は、リン酸のモノエステルの加水分解を触媒し、高濃度のリン酸受容体の存在下でトランスリン酸化反応も触媒する。ALP(例えば、TNALP)に対する3つの既知の天然基質は、ホスホエタノールアミン(PEA)、無機ピロリン酸(PPi)及びピリドキサール5’-リン酸(PLP)を含む(Whyte et al.,1995 J Clin Invest 95:1440-1445)。これらのアイソザイム間の整列化は、国際公開第2008/138131号パンフレット(その教示は、その全体が参照により本明細書に援用される)の図30に示される。
【0078】
本開示におけるアルカリホスファターゼタンパク質は、任意のALPタンパク質の二量体又は多量体を単独で又は組み合わせて含み得る。キメラALPタンパク質又は融合タンパク質、例えばKiffer-Moreira et al.2014 PLoS One 9:e89374(その全教示は、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載のキメラALPタンパク質も作製され得る。
【0079】
特定の一実施形態では、本明細書で開示されるアルカリホスファターゼは、配列番号1に示される配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるアルカリホスファターゼは、配列番号1に対して80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるアルカリホスファターゼは、配列番号1に対して95%又は99%の同一性を有する配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる。別の実施形態では、本明細書で開示されるアルカリホスファターゼは、配列番号1に示される配列を含む。
【0080】
TNALP
上に示される通り、TNALPは、糖脂質を通してそのC末端に固定される膜結合タンパク質である(ヒトTNALPについては、UniProtKB/Swiss-Prot受入番号P05186を参照されたい)。この糖脂質アンカー(GPI)は、翻訳後、一時的な膜アンカーとGPIの付加に対するシグナルとの両方として役立つ疎水性C末端の除去後に付加される。したがって、一実施形態では、可溶性ヒトTNALPは、疎水性C末端配列の1番目のアミノ酸、即ちアラニンが停止コドンで置換されるTNALPを含む。そのように形成された可溶性TNALP(本明細書中でsTNALPと称される)は、GPI膜アンカーを欠如する触媒部位の形成に必要である、TNALPの天然アンカー型のすべてのアミノ酸を含有する。公知のTNALPとして、例えばヒトTNALP[ジェンバンク受入番号NP-000469、AAI10910、AAH90861、AAH66116、AAH21289及びAAI26166];アカゲザルTNALP[ジェンバンク受入番号XP-001109717];ラットTNALP[ジェンバンク受入番号NP_037191];イヌTNALP[ジェンバンク受入番号AAF64516];ブタTNALP[ジェンバンク受入番号AAN64273]、マウスTNALP[ジェンバンク受入番号NP_031457]、ウシTNALP[ジェンバンク受入番号NP_789828、NP_776412、AAM8209及びAAC33858]並びにネコTNALP[ジェンバンク受入番号NP_001036028]が挙げられる。
【0081】
本明細書で用いられるとき、用語「細胞外ドメイン」は、(例えば、ペプチドシグナルを伴わない)天然タンパク質の任意の機能的細胞外部分を指すことを意味する。元のアミノ酸1~501(分泌時、18~501)、アミノ酸1~502(分泌時、18~502)、アミノ酸1~504(分泌時、18~504)又はアミノ酸1~505(分泌時、18~505)を保持する組換えsTNALPポリペプチドは、酵素活性がある(Oda et al.,1999 J.Biochem 126:694-699を参照されたい)。これは、アミノ酸残基が天然タンパク質のC末端からその酵素活性に影響することなく除去され得ることを示す。さらに、可溶性ヒトTNALPは、1つ以上のアミノ酸置換を含み得、かかる置換は、sTNALPの酵素活性を低下させないか又は少なくとも完全に阻害することはない。例えば、低ホスファターゼ症(HPP)の原因となることが知られる特定の突然変異は、PCT公開の国際公開第2008/138131号パンフレットに列挙されており、機能的sTNALPを維持するために回避される必要がある。
【0082】
負に荷電したペプチド
本開示のアルカリホスファターゼタンパク質は、所定の細胞型、組織又は臓器に対してアルカリホスファターゼタンパク質を特異的に標的にすることがある標的部分を含み得る。いくつかの実施形態では、かかる所定の細胞型、組織又は臓器は、骨組織である。かかる骨標的部分は、任意の公知のポリペプチド、ポリヌクレオチド又は当技術分野で公知の小分子化合物を含み得る。例えば、負に荷電したペプチドは、骨標的部分として用いられ得る。いくつかの実施形態では、かかる負に荷電したペプチドは、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸又はそれらの組み合わせ(例えば、少なくとも1つのアスパラギン酸と少なくとも1つのグルタミン酸とを含むポリペプチド、例えばアスパラギン酸及びグルタミン酸残基の組み合わせを含む負に荷電したペプチド)であり得る。いくつかの実施形態では、かかる負に荷電したペプチドは、D、D、D、D、D10、D11、D12、D13、D14、D15、D16、D17、D18、D19、D20又は20を超えるアスパラギン酸を有するポリアスパラギン酸であり得る。いくつかの実施形態では、かかる負に荷電したペプチドは、E、E、E、E、E10、E11、E12、E13、E14、E15、E16、E17、E18、E19、E20又は20を超えるグルタミン酸を有するポリグルタミン酸であり得る。一実施形態では、かかる負に荷電したペプチドは、D10~D16又はE10~E16からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0083】
スペーサー
いくつかの実施形態では、本開示のアルカリホスファターゼタンパク質は、ALP部分と標的部分との間にスペーサー配列を含む。一実施形態では、かかるアルカリホスファターゼタンパク質は、ALP(例えば、TNALP)部分と負に荷電したペプチド標的部分との間にスペーサー配列を含む。かかるスペーサーは、任意のポリペプチド、ポリヌクレオチド又は小分子化合物であり得る。いくつかの実施形態では、かかるスペーサーは、結晶化可能領域断片(Fc)の断片を含み得る。有用なFc断片は、ヒンジ並びにCH及びCHドメインを含むIgGのFc断片を含む。かかるIgGは、IgG-1、IgG-2、IgG-3、IgG-3及びIgG-4又はそれらの任煮の組み合わせのいずれかであり得る。
【0084】
この理論に制限されることなく、骨標的化sALP融合タンパク質(例えば、アスホターゼアルファ)で用いられるFc断片がスペーサーとして作用し、sTNALP-Fc-D10の発現がsTNALP-D10の発現よりも高いと仮定すると、タンパク質がより効率的に折り畳まれることを可能にすると考えられる。1つの考えられる説明は、Fc断片の導入が、本明細書に例示されるsALP配列のC末端に付加される高度に負に荷電したD10配列の存在によって引き起こされる斥力を軽減することである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルカリホスファターゼタンパク質は、sALP-Fc-D10、sALP-D10-Fc、D10-sALP-Fc、D10-Fc-sALP、Fc-sALP-D10及びFc-D10-sALPからなる群から選択される構造を含む。他の実施形態では、上記の構造中のD10は、他の負に荷電したポリペプチド(例えば、D、D16、E10、E、E16など)で置換される。
【0085】
本開示にとって有用なスペーサーは、例えば、Fcを含むポリペプチド並びにsALP配列のC末端に付加される高度に負に荷電した骨標的配列(例えば、D10)の存在によって引き起こされる斥力を軽減することができる親水性及び柔軟性ポリペプチドを含む。
【0086】
二量体/四量体
具体的な実施形態では、本開示の骨標的化sALP融合タンパク質は、二量体又は四量体を形成するように会合される。
【0087】
二量体立体配置では、鎖間ジスルフィド結合の形成によって課せられる立体障害は、おそらく、正常細胞内に存在する最小の触媒活性タンパク質二量体に会合するためのsALPドメインの会合性を阻止する。
【0088】
骨標的化sALPは、任意選択的に、1)負に荷電したペプチド(例えば、骨標識剤)から下流、及び/又は2)負に荷電したペプチド(例えば、骨標識剤)とFc断片との間、及び/又は3)スペーサー(例えば、Fc断片)とsALP断片との間に1つ以上の追加的なアミノ酸をさらに含み得る。例えば、骨標的コンジュゲートを作製するために用いられるクローニング方法により、これらの位置に外因性アミノ酸が導入される場合にこれが生じ得る。しかし、外因性アミノ酸は、さらなるGPIアンカーシグナルをもたらさないように選択される必要がある。設計された配列が宿主細胞のトランスアミダーゼによって切断される可能性は、Ikezawa,2002 Glycosylphosphatidylinositol(GPI)-anchored proteins.Biol Pharm Bull.25:409-17に記載のように予測可能である。
【0089】
本開示は、例えば、本明細書中で明記されるものを含むグリコシル化、アセチル化、アミド化、封鎖、ホルミル化、γ-カルボキシグルタミン酸水酸化、メチル化、リン酸化、ピロリドンカルボン酸及び硫酸化によって翻訳後修飾される融合タンパク質も包含する。
【0090】
アスホターゼアルファ
アスホターゼアルファは、2つのTNALP-Fc-D10ポリペプチド(それぞれ配列番号1に示されるような726アミノ酸を有する)からなる可溶性Fc融合タンパク質である。各々のポリペプチド又は単量体は、5つの部分から構成される。アミノ酸L1-S485を有する第1の部分(sALP)は、触媒機能を有する、ヒト組織非特異的アルカリホスファターゼ酵素の可溶性部分である。第2の部分は、リンカーとしてアミノ酸L486-K487を有する。アミノ酸D488-K714を有する第3の部分(Fc)は、ヒンジ、CH及びCHドメインを有するヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)のFc部分である。第4の部分は、リンカーとしてD715-I716を有する。第5の部分は、アスホターゼアルファが骨の鉱物相に結合することを可能にする骨標的部分であるアミノ酸D717-D726(D10)を有する。さらに、各ポリペプチド鎖は、6つの予想されるグリコシル化部位及び11のシステイン(Cys)残基を有する。Cys102は、遊離システインとして存在する。各ポリペプチド鎖は、4つの鎖内ジスルフィド結合をCys122とCys184、Cys472とCys480、Cys528とCys588及びCys634とCys692との間に有する。2つのポリペプチド鎖は、両方の鎖上のCys493間及び両方の鎖上のCys496間での2つの鎖間ジスルフィド結合によって連結される。これらの共有結合構造的特徴に加えて、哺乳類アルカリホスファターゼは、各ポリペプチド鎖上において、亜鉛に対する2つの部位、マグネシウムに対する1つの部位及びカルシウムに対する1つの部位を含む4つの金属結合部位を有すると考えられる。
【0091】
アスホターゼアルファは、次のようにも特徴付けることができる。N末端からC末端へ、アスホターゼアルファは、(1)ヒト組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNSALP)の可溶性触媒ドメイン(UniProtKB/Swiss-Prot受入番号P05186)、(2)ヒト免疫グロブリンG1 Fcドメイン(UniProtKB/Swiss-Prot受入番号P01857)、及び(3)骨標的化ドメインとして用いられるデカアスパラギン酸ペプチド(D10)を含む(Nishioka et al.2006 Mol Genet Metab 88:244-255)。タンパク質は、2つの一次タンパク質配列からホモ二量体に会合する。この融合タンパク質は、6つの確認された複雑なN-グリコシル化部位を有する。これらのN-グリコシル化部位の5つは、sALPドメイン上に位置し、1つは、Fcドメイン上に位置する。アスホターゼアルファ上に存在する別の重要な翻訳後修飾は、酵素とFc-ドメイン構造とを安定化するジスルフィド架橋の存在である。全部で4つの分子内ジスルフィド架橋が1単量体あたりに存在し、2つの分子内ジスルフィド架橋が二量体中に存在する。アルカリホスファターゼドメインの1つのシステインが遊離している。
【0092】
アスホターゼアルファは、低ホスファターゼ症(HPP)の治療のための酵素置換治療薬として用いられている。HPPを有する患者では、TNSALPをコードする遺伝子における機能欠失変異は、TNSALP酵素活性の欠損を引き起こし、基質、例えば無機ピロリン酸(PPi)及びピリドキサール-5’-リン酸(PLP)の循環レベルの上昇をもたらす。アスホターゼアルファのHPPを有する患者への投与により、PPiが切断され、カルシウムとの組み合わせのために無機リン酸塩が放出され、それによりハイドロキシアパタイト結晶形成及び骨石灰化が促進され、正常な骨格表現型が回復される。アスホターゼアルファ及び治療におけるその使用に関するさらなる詳細については、PCT公開の国際公開第2005/103263号パンフレット及び国際公開第2008/138131号パンフレットを参照されたい。
【0093】
いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の通り、通常の手段により、活性に対して潜在的な負の影響を有する金属イオンの濃度を最小化するか、又は活性に対して潜在的な正の影響を有する金属イオンの濃度を増加させるか、又はその両方によって作製されるアルカリホスファターゼと比べて、作製されるアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)の改善された酵素活性を有するアルカリホスファターゼ(アスホターゼアルファ)を提供する。活性は、任意の公知の方法によって測定され得る。かかる方法は、例えば、作製されるアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)の、アルカリホスファターゼの基質、例えばホスホエタノールアミン(PEA)、無機ピロリン酸(PPi)及びピリドキサール5’-リン酸(PLP)に対する酵素活性を測定するインビトロ及びインビボアッセイを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるアルカリホスファターゼは、配列番号1に示される配列を含むポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチドに対して完全に相補的な配列と比べて、高ストリンジェンシー条件下で第2のポリヌクレオチドにハイブリダイズする第1のポリヌクレオチドによってコードされる。かかる高ストリンジェンシー条件は、6×SSC、5×デンハート試薬、0.5%SDS及び100mg/mlの変性断片化されたサケ精子DNAにおける68℃でのプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション並びに室温で10分間の2×SSC及び0.5%SDSでの洗浄、室温で10分間の2×SSC及び0.1%SDSでの洗浄、及び65℃で5分間、3回の0.1×SSC及び0.5%SDSでの洗浄を含み得る。
【0095】
作製プロセス
本明細書に記載のアルカリホスファターゼタンパク質(例えば、アスホターゼアルファ)は、当技術分野で公知の方法を用いて、哺乳類又は他の細胞、特にCHO細胞によって産生され得る。かかる細胞は、培養ディッシュ、フラスコガラス又はバイオリアクター内で増殖され得る。細胞培養及び組換えタンパク質作製のための特定のプロセスは、当技術分野で公知であり、例えばNelson and Geyer,1991 Bioprocess Technol.13:112-143及びRea et al.,Supplement to BioPharm International March 2008,20-25に記載されている。例示的なバイオリアクターは、バッチ、流加及び連続反応器を含む。いくつかの実施形態では、アルカリホスファターゼタンパク質は、流加バイオリアクター内で作製される。
【0096】
細胞培養プロセスは、例えば、限定されないが、pHの変化、温度、温度変化、温度変化のタイミング、細胞培地組成、細胞培養栄養補助剤、原料のロット間変動、培地濾過用材料、バイオリアクター規模の差異、ガス処理方法(空気、酸素及び二酸化炭素)などを含む変動する物理化学的環境によって引き起こされる変動性を有する。本明細書で開示される通り、製造されたアルカリホスファターゼタンパク質の収量、相対活性特性及びグリコシル化特性は、損なわれ得、これらのパラメータの1つ以上における変更により特定値の範囲内で制御され得る。
【0097】
細胞培養物中での組換えタンパク質作製では、必要な転写制御因子を伴う組換え遺伝子は、バイオテクノロジー技術における公知の方法により、まず宿主細胞に移される。任意選択的に、レシピエント細胞に選択的利点を与える第2の遺伝子が導入される。遺伝子導入から数日後、適用され得る選択薬剤の存在下において、選択遺伝子を発現する細胞のみが生存する。そのような選択のための2つの例示的遺伝子は、ヌクレオチド代謝に関与する酵素のジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)及びグルタミンシンテターゼ(GS)である。両方の場合において、適切な代謝産物(DHFRの場合にはヒポキサンチン及びチミジン並びにGSの場合にはグルタミン)の不在下で選択が生じ、いかなる非形質転換細胞の増殖も阻止される。一般に、組換えタンパク質の効率的発現において、生物製剤をコードする遺伝子及び選択遺伝子が同じプラスミド上に存在するか否かは重要でない。
【0098】
選択後、生存細胞は、単細胞として第2の培養容器に導入され得、培養物は、クローン集団を生成するために拡大される。最終的に、個別クローンは、組換えタンパク質の発現について評価され、最高の生産者は、さらなる培養及び分析のために保持される。これらの候補から、組換えタンパク質の作製のため、適切な増殖及び生産性特性を有する1つの細胞株が選択される。次に、作製需要及び最終生成物の要件によって決定される培養プロセスが開発される。
【0099】
細胞
任意の哺乳動物細胞型又は非哺乳動物細胞型がポリペプチドを作製するために培養され得るが、本開示に従って利用され得る。用いられ得る哺乳動物細胞の非限定例として、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞+/-DHFR(CHO,Urlaub and Chasin,1980 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216);BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/1、ECACC受入番号:85110503);ヒト網膜芽細胞腫(PER.C6(CruCell,Leiden,The Netherlands));SV40(COS-7,ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚性腎臓株(懸濁培養下での増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞、Graham et al.,1977 J.Gen Virol.,36:59);ベビーハムスター腎細胞(BHK,ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243-251(1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76,ATCC CRL-I 587);ヒト頸部がん細胞(HeLa,ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,1982,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68);MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝腫瘍株(Hep G2)が挙げられる。特定の実施形態では、ポリペプチド及びタンパク質の培養及び発現は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株から行われる。
【0100】
加えて、ポリペプチド又はタンパク質を発現する任意の数の市販及び非市販のハイブリドーマ細胞株が本開示に従って利用され得る。当業者は、ハイブリドーマ細胞株が異なる栄養の需要を有し得、且つ/又は最適な増殖及びポリペプチド若しくはタンパク質発現に対して異なる培養条件を必要とし得ることを理解し、且つ必要に応じて条件を変更することができるであろう。
【0101】
上記の通り、多くの場合、細胞は、タンパク質又はポリペプチドを高レベルで産生するように選択又は改変されることになる。多くの場合、細胞は、タンパク質を高レベルで産生するため、例えば目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の導入により、且つ/又は目的のポリペプチドをコードする遺伝子(内因性であるか又は導入される)の発現を調節する調節エレメントの導入により遺伝子操作される。
【0102】
播種密度
本開示では、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が培地に接種、即ち播種される。様々な播種密度を用いることができる。いくつかの実施形態では、1.0×10細胞/mL~1.0×10細胞/mLの播種密度を用いることができる。いくつかの実施形態では、1.0×10細胞/mL~1.0×10細胞/mLの播種密度を用いることができる。いくつかの実施形態では、4.0×10細胞/mL~8.0×10細胞/mLの播種密度を用いることができる。いくつかの実施形態では、播種密度の増加は、SECによって測定されるとき、アスホターゼアルファ品質の断片化に影響し得る。いくつかの実施形態では、播種密度は、断片生成のリスクを低減するために接種時に制御される。
【0103】
温度
以前の結果によると、温度は、増殖速度、凝集、断片化及びTSACを含むいくつかのパラメータに対する影響を有する可能性があることが示された。いくつかの実施形態では、温度は、CHO細胞を培地で培養するとき、一定のままである。いくつかの実施形態では、温度は、CHO細胞を培地で培養するとき、約30℃~約40℃、又は約35℃~約40℃、又は約37℃~約39℃である。いくつかの実施形態では、培地中でCHO細胞を培養するとき、温度は、約30℃、約30.5℃、約31℃、約31.5℃、約32℃、約32.5℃、約33℃、約33.5℃、約34℃、約34.5℃、約35℃、約35.5℃、約36℃、約36.5℃、約37℃、約37.5℃、約38℃、約38.5℃、約39℃、約39.5℃又は約40℃である。いくつかの実施形態では、温度は、接種後の40~200時間にわたって一定である。いくつかの実施形態では、温度は、接種後の50~150時間、又は60~140時間、又は70~130時間、又は80~120時間、又は90~110時間にわたって一定である。いくつかの実施形態では、温度は、接種後の80~120時間にわたって一定である。いくつかの実施形態では、温度は、接種後の90時間、92時間、94時間、96時間、98時間、100時間、102時間、104時間、106時間、108時間又は110時間にわたって一定である。
【0104】
温度変化
細胞培養プロセス、特に非連続プロセス(例えば、バイオリアクターにおける流加プロセス)の実行時間は、通常、典型的には実行期間にわたって減少する細胞の残存生存度によって制限される。したがって、細胞生存度における時間を延長することは、組換えタンパク質の産生を改善するために所望される。生成物品質への関心はまた、細胞死が培養上清にシアリダーゼを放出し得、発現されるタンパク質のシアル酸含量を減少させる可能性があることから、生細胞密度における減少を最小化し、高い細胞生存度を維持するという動機付けをもたらす。タンパク質精製への関心は、生細胞密度における減少を最小化し、高い細胞生存度を維持するというさらに別の動機付けをもたらす。培養物中の細胞片及び死細胞の内容物は、培養実行の終了時にタンパク質生成物を単離及び/又は精製する能力に対して負の影響を与え得る。したがって、細胞を培養下でより長期間にわたり生存可能に維持することにより、細胞によって産生される所望の糖タンパク質の品質における劣化及び究極的低下を引き起こすことがある、細胞性タンパク質及び酵素(例えば、細胞性プロテアーゼ及びシアリダーゼ)による培地の汚染において低下が認められる。
【0105】
細胞培養物における高い細胞生存度を達成するため、多くの方法が適用され得る。1つは、正常温度での初期培養後に培養温度を低下させることを含む。例えば、Ressler et al.,1996,Enzyme and Microbial Technology 18:423-427)を参照されたい。一般に、目的のタンパク質を発現する能力がある哺乳類又は他の細胞型は、細胞数を増加させるため、最初に正常温度下で増殖される。各細胞型におけるかかる「正常」温度は、一般に約37℃(例えば、約35℃~約39℃、例えば35.0℃、35.5℃、36.0℃、36.5℃、37.0℃、37.5℃、38.0℃、38.5℃及び/又は39.0℃など)である。特定の一実施形態では、アスホターゼアルファを作製するための温度は、最初に約37℃に設定される。適度に高い細胞密度が達成されるとき、そこでタンパク質産生を促進するため、全細胞培養物における培養温度が変更され得る(例えば、低減される)。ほとんどの場合、温度の低下により、細胞が細胞周期の非増殖G1部分の方に変化し、以前のより高い温度環境と比べて細胞密度及び生存度が増加することがある。さらに、より低い温度は、細胞性タンパク質の産生速度を増加させ、タンパク質の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)を促進し、新規に産生されるタンパク質の断片化又は凝集を低減し、タンパク質のフォールディング及び三次元構造の形成を促進し(したがって活性を維持する)、且つ/又は新規に産生されるタンパク質の分解を低減することにより、組換えタンパク質の産生を促進する可能性もある。いくつかの実施形態では、温度は、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃又は10℃低下する。いくつかの実施形態では、温度は、約27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃又は35℃まで低下する。いくつかの実施形態では、より低い温度は、約30℃~約35℃(例えば、30.0℃、30.5℃、31.0℃、31.5℃、32.0℃、32.5℃、33.0℃、33.5℃、34.0℃、34.5℃及び/又は35.0℃)である。他の実施形態では、アスホターゼアルファを作製するための温度は、最初に約35.0℃~約39.0℃に設定され、次に約30.0℃~約35.0℃に変更される。一実施形態では、アスホターゼアルファを作製するための温度は、最初に約37.0℃に設定され、次に約30℃に変更される。別の実施形態では、アスホターゼアルファを作製するための温度は、最初に約36.5℃に設定され、次に約33℃に変更される。さらに別の実施形態では、アスホターゼアルファを作製するための温度は、最初に約37.0℃に設定され、次に約33℃に変更される。さらなる実施形態では、アスホターゼアルファを作製するための温度は、最初に約36.5℃に設定され、次に約30℃に変更される。他の実施形態では、温度変更の複数(例えば、2つ以上)のステップが適用され得る。
【0106】
異なる温度に変更する前、特定の温度で培養物を維持するための時間は、細胞生存度及び目的のタンパク質を産生する能力を維持しながら、十分な(又は所望の)細胞密度を達成するように決定され得る。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、異なる温度に変更する前、初期温度下で生細胞密度が約105細胞/mL~約107細胞/mL(例えば、1×10、1.5×10、2.0×10、2.5×10、3.0×10、3.5×10、4.0×10、4.5×10、5.0×10、5.5×10、6.0×10、6.5×10、7.0×10、7.5×10、8.0×10、8.5×10、9.0×10、9.5×10、1.0×10、1.5×10、2.0×10、2.5×10、3.0×10、3.5×10、4.0×10、4.5×10、5.0×10、5.5×10、6.0×10、6.5×10、7.0×10、7.5×10、8.0×10、8.5×10、9.0×10、9.5×10、1×10細胞/mL又はそれを超える)に達するまで増殖される。一実施形態では、細胞培養物は、異なる温度に変更する前、初期温度下で生細胞密度が約2.5~約3.4×10細胞/mLに達するまで増殖される。別の実施形態では、細胞培養物は、異なる温度に変更する前、初期温度下で生細胞密度が約2.5~約3.2×10細胞/mLに達するまで増殖される。さらに別の実施形態では、細胞培養物は、異なる温度に変更する前、初期温度下で生細胞密度が約2.5~約2.8×10細胞/mLに達するまで増殖される。
【0107】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、温度変化が接種から50~150時間後、又は60~140時間後、又は70~130時間後、又は80~120時間後、又は90~110時間後に生じることを提供する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、温度が接種から約80時間~150時間後、接種から約90時間~100時間後又は接種から約96時間後に低下することを提供する。いくつかの実施形態では、温度変化は、接種から80~120時間後に生じる。いくつかの実施形態では、温度変化は、接種から90時間後、92時間後、94時間後、96時間後、98時間後、100時間後、102時間後、104時間後、106時間後、108時間後又は110時間後に生じる。いくつかの実施形態では、温度変化後の温度は、CHO細胞が収集されるまで維持される。
【0108】
pH
細胞培養下の増殖培地のpHの変更は、細胞タンパク質の分解活性、分泌及びタンパク質産生レベルに影響する可能性がある。細胞株の大部分は、約pH7~8で十分に増殖する。細胞増殖における最適pHの変動は、様々な細胞株中で比較的小さいが、いくつかの正常な線維芽細胞株の挙動は、pH7.0~7.7で最高であり、形質転換細胞の挙動は、典型的には7.0~7.4のpHで最高である(Eagle,1973 The effect of environmental pH on the growth of normal and malignant cells.J Cell Physiol 82:1-8)。いくつかの実施形態では、アスホターゼアルファを作製するための培地のpHは、約6.5~7.7のpH(例えば、6.50、6.55、6.60、6.65、6.70、6.75、6.80、6.85、6.90、6.95、7.00、7.05、7.10、7.15、7.20、7.25、7.30、7.35、7.39、7.40、7.45、7.50、7.55、7.60、7.65又は7.70)である。
【0109】
培地
いくつかの実施形態では、バッチ培養が用いられ、ここでは追加的な培地が接種後に添加されない。いくつかの実施形態では、流加培養が用いられ、ここでは1回以上のボーラス投与で培地が接種後に添加される。いくつかの実施形態では、2、3、4、5又は6回のボーラス投与で培地が接種後に添加される。
【0110】
様々な実施形態では、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、培地が余分なボーラス投与で産生バイオリアクターに添加されるプロセスによって作製される。例えば、培地が1、2、3、4、5、6回又はそれを超えるボーラス投与で添加され得る。特定の一実施形態では、培地が3回のボーラス投与で添加される。様々な実施形態では、培地のかかる余分なボーラス投与は、様々な量で添加され得る。例えば、培地のかかるボーラス投与は、産生バイオリアクターにおける培地の元の容量の約20%、25%、30%、33%、40%、45%、50%、60%、67%、70%、75%、80%、90%、100%、110%、120%、125%、130%、133%、140%、150%、160%、167%、170%、175%、180%、190%、200%又はそれを超える量で添加され得る。特定の一実施形態では、培地のかかるボーラス投与は、元の容量の約33%、67%、100%又は133%の量で添加され得る。様々な実施形態では、余分なボーラス投与のかかる添加は、細胞増殖又はタンパク質産生の期間中の様々な時点で行われ得る。例えば、ボーラス投与は、プロセスにおける1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目又はそれよりも後に添加され得る。特定の一実施形態では、培地のかかるボーラス投与は、一日おきに(例えば、(1)3日目、5日目及び7日目、(2)4日目、6日目及び8日目、又は(3)5日目、7日目及び9日目に添加され得る。実際、培地のボーラス投与での補助剤の頻度、量、時点及び他のパラメータは、上記の制限に従って自由に組み合わされ、実験練習によって決定され得る。
【0111】
様々な培地が市販されている。いくつかの実施形態では、培地は、EX-CELL(登録商標)302無血清培地、CD DG44培地、BD Select(商標)培地、SFM4CHO培地又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、培地は、市販の培地、例えばSFM4CHO培地及びBD Select(商標)培地の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、培地は、市販の培地、例えばSFM4CHO培地及びBD Select(商標)培地の組み合わせを、90/10、80/20、75/25、70/30、60/40又は50/50から選択される比で含む。
【0112】
栄養補助剤
様々な栄養補助剤は、「フィード培地」とも称され、市販され、当業者に公知である。栄養補助剤は、接種が行われてから細胞培養物に添加される(培養培地と異なる)培地を含む。場合により、栄養補助剤は、培養下で増殖する細胞によって消費される栄養分を代替するために用いることができる。いくつかの実施形態では、栄養補助剤は、所望のタンパク質の産生を最適化するか又は所望のタンパク質の活性を最適化するために添加される。極めて多数の栄養補助剤が開発されており、市販されている。栄養補助剤の明示的な目的がプロセス開発の局面を高めることである一方、すべての細胞及び/又は産生されるすべてのタンパク質のために機能する普遍的な栄養補助剤は存在しない。所望の力価及び増殖特性を達成するため、所望の細胞株、産生タンパク質及び所与の基本培地と組み合わせて機能し得る、スケーラブルであり且つ適切な細胞培養栄養補助剤の選択は、ルーチン的でない。特定の細胞株、特定の産生タンパク質及び基本培地の組み合わせを用いて複数の市販の栄養補助剤をスクリーニングし、最適な補助剤を同定する典型的手法は、細胞培養プロセス中に存在する無数の変数に起因し、成功しない可能性がある。いくつかの実施形態では、栄養補助剤は、Efficient Feed C+AGT(商標)Supplement(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)、Cell Boost(商標)2+Cell Boost(商標)4の組み合わせ(GE Healthcare,Sweden)、Cell Boost(商標)2+Cell Boost(商標)5の組み合わせ(GE Healthcare,Sweden)、Cell Boost(商標)6(GE Healthcare,Sweden)及びCell Boost(商標)7a+Cell Boost(商標)7b(GE Healthcare,Sweden)又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0113】
Cell Boost(商標)7aは、1つ以上のアミノ酸、ビタミン、塩、微量元素、ポロクサマー及びグルコースを含む第1の動物由来成分を含まない(ADCF)栄養補助剤として説明することができ、第1のADCF栄養補助剤は、ヒポキサンチン、チミジン、インスリン、L-グルタミン、増殖因子、ペプチド、タンパク質、加水分解物、フェノールレッド及び2-メルカプトエタノールを含まない。Cell Boost(商標)7aは、化学的に規定された補助剤である。語句「動物由来成分を含まない」又は「ADCF」は、成分が直接的に動物供給源に由来しない、例えばウシ供給源に由来しない補助剤を指す。いくつかの実施形態では、栄養補助剤は、Cell Boost(商標)7aである。
【0114】
Cell Boost(商標)7bは、1つ以上のアミノ酸を含む第2のADCF栄養補助剤として説明することができ、第2のADCF栄養補助剤には、ヒポキサンチン、チミジン、インスリン、L-グルタミン、増殖因子、ペプチド、タンパク質、加水分解物、フェノールレッド、2-メルカプトエタノール及びポロクサマーを欠如する。Cell Boost(商標)7bは、化学的に規定された補助剤である。いくつかの実施形態では、栄養補助剤は、Cell Boost(商標)7bである。
【0115】
いくつかの実施形態では、市販の栄養補助剤の組み合わせが用いられる。用語「栄養補助剤」は、単一の栄養補助剤とともに栄養補助剤の組み合わせの両方を指す。例えば、いくつかの実施形態では、栄養補助剤の組み合わせは、Cell Boost(商標)7a及びCell Boost(商標)7bの組み合わせを含む
【0116】
様々な実施形態では、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、栄養補助剤の余分な添加物が産生バイオリアクターに添加されるプロセスによって作製される。いくつかの実施形態では、栄養補助剤は、ある期間、例えば1分~2時間の範囲の期間にわたって添加される。いくつかの実施形態では、栄養補助剤は、ボーラス投与で添加される。例えば、栄養補助剤は、1、2、3、4、5、6回又はそれを超えるボーラス投与で添加され得る。いくつかの実施形態では、栄養補助剤は、3つ以上の異なる時点、例えば2~6つの異なる時点で添加される。様々な実施形態では、栄養補助剤のかかる余分なボーラス投与は、様々な量で添加され得る。例えば、栄養補助剤のかかるボーラス投与は、産生バイオリアクター内の培地の元の容量の約1%~20%、1%~10%又は1%~5%(w/v)の量で添加され得る。特定の一実施形態では、栄養補助剤のかかるボーラス投与は、元の容量の1%~20%、1%~10%又は1%~5%(w/v)の量で添加され得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、栄養補充剤の組み合わせが用いられ、第1の栄養補充剤、例えばCell Boost(商標)7aが培地の0.5%~4%(w/v)の濃度で添加される。いくつかの実施形態では、栄養補充剤の組み合わせが用いられ、第2の栄養補充剤、例えばCell Boost(商標)7bが培地の0.05%~0.8%(w/v)の濃度で添加される。栄養補充剤の組み合わせがCell Boost(商標)7a及びCell Boost(商標)7bを含むような特定の実施形態では、栄養補充剤のボーラスが元の体積の1%~20%、1%~10%又は1%~5%(w/v)の量で添加され得る。
【0118】
様々な実施形態では、追加的ボーラスのかかる添加は、接種後の様々な時点で行われ得る。例えば、ボーラスは、接種の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日後又はそれ以降に添加され得る。実際、栄養補充剤のボーラス添加の頻度、量、時点及び他のパラメータは、上記の制限に応じて自由に組み合わされ、実験実施により決定され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、組換えポリペプチドの作製中に亜鉛を前記培地に添加することをさらに含む。いくつかの実施形態では、亜鉛は、前記培地中で約1~約300μMの亜鉛濃度をもたらすように添加され得る。一実施形態では、亜鉛は、培地中で約10~約200μM(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140又は150μM)の亜鉛濃度をもたらすように添加され得る。いくつかの実施形態では、亜鉛は、約25μM~約150μM又は約60μM~約150μMの培地中の亜鉛濃度をもたらすように添加される。一実施形態では、亜鉛は、約30、60又は90μMの亜鉛の培地中の亜鉛濃度をもたらすように添加される。いくつかの実施形態では、亜鉛は、前記培地にボーラス投与で連続的に、半連続的に又はそれらを組み合わせで添加される。いくつかの実施形態では、亜鉛は、接種から1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後及び/又は13日後に添加される。
【0120】
収集
先行試験により、収集タイミングの遅延が生存度及びTSAC低下に関連したため、収集タイミングが他のCQAに対する潜在的影響を有し得ることが示唆された。様々な実施形態では、アルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)は、約200時間、210時間、220時間、230時間、240時間、250時間、260時間、264時間、270時間、280時間、288時間(即ち12日)又は12日以降の時点で収集される。
【0121】
下流プロセス
用語「下流プロセス」は、本明細書で用いられるとき、一般に、培養細胞又は発酵培養液などの供給源から産生されるアルカリホスファターゼ(例えば、アスホターゼアルファ)の回収及び精製のためのプロセスの全部又は一部を指す。
【0122】
一般に、下流処理は、純度及び濃度における前進的な改善を通して、生成物をその天然状態から組織、細胞又は発酵培養液の成分としてもたらす。例えば、不溶物の除去は、微粒子を含まない液体中の溶質としての生成物の捕捉(例えば、細胞、細胞片又は他の微粒子状物質を発酵培養液から分離すること)を含む第1のステップであり得る。これを達成するための例示的操作は、例えば、濾過、遠心分離、沈降、沈殿、綿状沈殿、電気集塵、重力沈降などを含む。追加的操作は、固体供給源、例えば植物及び動物組織から生成物を回収するために例えば粉砕、均質化又は浸出を含み得る。第2のステップは、その特性が所望の生成物の場合と著しく異なる成分を除去する「生成物単離」ステップであり得る。大部分の生成物において、水が主要な不純物であり、単離ステップは、その大部分を除去し、処理対象の材料の体積を低減し、生成物を濃縮するように設計される。溶媒抽出、吸着、限外濾過及び沈降は、このステップにおいて単独で又は組み合わせて用いられ得る。次のステップは、物理及び化学特性において生成物と酷似する汚染物質を分離する生成物精製に関する。考えられる精製方法は、例えば、親和性、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、サイズ排除、逆相クロマトグラフィー、限外濾過-ダイアフィルトレーション、結晶化及び分別沈殿を含む。いくつかの実施形態では、下流プロセスは、収集清澄化、限外濾過、ダイアフィルトレーション、ウイルス不活性化、親和性捕捉及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。下流プロセスは、本明細書で説明される。
【0123】
総シアル酸含量の測定
例えば、ThermoFisherからの炭水化物定量の商業的方法が利用可能である。一般に、TSACが酸加水分解を用いて糖タンパク質、例えばアスホターゼアルファから放出され、放出された糖/TSACは、アンペロメトリック電気化学検出法を伴う高性能アニオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)などのカラムクロマトグラフィーを用いた電気化学的検出を介して検出される。得られるレベルは、内部標準に対して1モルあたりで定量化され、総モルのタンパク質の関数として表される。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、組換えアルカリホスファターゼの総シアル酸含量(TSAC)を測定することをさらに含む。本明細書に記載の通り、TSACは、生理的状態における組換えアルカリホスファターゼの半減期に影響し、したがって例えばアスホターゼアルファなどの組換え生成されたアルカリホスファターゼにとって決定的な品質特性として機能する。再現性及びcGMPに対して、TSAC範囲の厳格な管理が重要である。いくつかの実施形態では、TSACは、約0.8モル/モル~約4.0モル/モルの組換えアルカリホスファターゼである。いくつかの実施形態では、TSACは、約0.9モル/モル~約3.0モル/モルの組換えアルカリホスファターゼである。いくつかの実施形態では、TSACは、約1.0モル/モル~約2.8モル/モルの組換えアルカリホスファターゼである。いくつかの実施形態では、TSACは、約1.2モル/モル~約3.0モル/モルの組換えアルカリホスファターゼである。いくつかの実施形態では、TSACは、約1.2モル/モル~約2.4モル/モルの組換えアルカリホスファターゼである。いくつかの実施形態では、TSACは、約0.9モル/モル、約1.0モル/モル、約1.1モル/モル、約1.2モル/モル、約1.3モル/モル、約1.4モル/モル、約1.5モル/モル、約1.6モル/モル、約1.7モル/モル、約1.8モル/モル、約1.9モル/モル、約2.0モル/モル、約2.1モル/モル、約2.2モル/モル、約2.3モル/モル、約2.4モル/モル、約2.5モル/モル、約2.6モル/モル、約2.7モル/モル、約2.8モル/モル、約2.9モル/モル又は約3.0モル/モルの組換えアルカリホスファターゼである。
【0125】
いくつかの実施形態では、組換えアルカリホスファターゼのTSACは、下流処理中に減少する。いくつかの実施形態では、組換えアルカリホスファターゼのTSACは、組換えアルカリホスファターゼを含有する溶液、例えば細胞培養物、HCCF及び/又はUFDF濾過プール中に存在するシアリダーゼ酵素の結果として減少する。いくつかの実施形態では、約0.9モル/モル~約3.0モル/モルの組換えアルカリホスファターゼのTSACを得るため、シアリダーゼは、細胞培養物、HCCF及び/又はUFDF濾過プールから選択的に除去される。シアリダーゼは、例えば、シアリダーゼに特異的な阻害剤、抗体、イオン交換及び/又はアフィニティークロマトグラフィー、免疫沈降などの1つ又は組み合わせにより選択的に除去され得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、シアル酸部分は、組換えアルカリホスファターゼを含有する溶液、例えば細胞培養物、HCCF及び/又はUFDF濾過プール中に存在するシアリルトランスフェラーゼ酵素により、組換えアルカリホスファターゼに添加される。いくつかの実施形態では、約0.9~約3.0モル/モルの組換えアルカリホスファターゼのTSACを得るため、組換えシアリルトランスフェラーゼは、細胞培養物、HCCF及び/又はUFDF濾過プールに外因性に添加される。
【0127】
組換えアルカリホスファターゼ活性の測定
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、組換えアルカリホスファターゼ活性を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、活性は、pNPPに基づくアルカリホスファターゼ酵素アッセイ及び無機ピロリン酸(PPi)加水分解アッセイの少なくとも1つから選択される方法から選択される。いくつかの実施形態では、組換えアルカリホスファターゼKcat及びK値の少なくとも1つは、無機ピロリン酸(PPi)加水分解アッセイにおいて増加する。いくつかの実施形態では、本方法は、積分生細胞濃度(IVCC)を決定することを含む。
【0128】
最終ステップは、生成物の研磨、即ち安定であり、容易に輸送可能であり、且つ便宜的な形態での生成物のパッケージングで完了するプロセスとして用いられ得る。2~8℃での貯蔵、-20℃~-80℃での凍結、結晶化、乾燥、凍結乾燥、フリーズドライ及び噴霧乾燥は、この最終ステップにおける例示的方法である。生成物の研磨では、生成物及びその使用意図に応じて、さらに生成物を滅菌し、生成物の安全性を損なう可能性がある微量汚染物質(例えば、ウイルス、内毒素、代謝廃棄生成物及び発熱物質)を除去又は非活性化し得る。
【0129】
生成物回収方法は、本明細書で考察される2つ以上のステップを組み合わせ得る。例えば、吸着流動床(EBA)では、不溶物の除去及び生成物単離が単一ステップで実施される。EBAのレビューとしては、Kennedy,Curr Protoc Protein Sci.2005 Jun;Chapter 8:Unit 8.8を参照されたい。さらに、親和性クロマトグラフィーでは、単離及び精製が単一ステップでなされることが多い。
【0130】
培養細胞において産生される組換えタンパク質を精製するための下流プロセスのレビューとしては、Rea,2008 Solutions for Purification of Fc-fusion Proteins.BioPharm Int.Supplements March 2:20-25を参照されたい。本明細書で開示されるアルカリホスファターゼのための下流プロセスは、下記の例示的ステップの少なくとも1つ又は任意の組み合わせを含み得る。
【0131】
収集清澄化プロセス
本方法のいくつかの実施形態では、組換えアルカリホスファターゼは、収集清澄化培養液(HCCF)を形成するための少なくとも1つの精製ステップ、即ち「収集する」ステップ又は収集清澄化ステップにより、細胞培養物から単離される。細胞培養物を「収集すること」は、典型的には細胞培養物を培養容器、例えばバイオリアクターから収集するプロセスを指す。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの精製ステップは、濾過、遠心分離及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、収集清澄化ステップは、細胞及び細胞片(例えば、不溶性生体材料)を除去するため、収集された細胞培養物を遠心分離及び/又は濾過し、生成物、即ち組換えアルカリホスファターゼを回収することを含む。いくつかの実施形態では、細胞及び細胞片は、クロマトグラフィーに適した清澄化濾液を得るために除去される。いくつかの実施形態では、清澄化濾液は、収集清澄化培養液又はHCCFとして知られる。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、HCCFを生成するため、遠心分離と深濾過との組み合わせが施される。このステップにおいて使用可能な溶液は、回収用緩衝液(例えば、50mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH7.50)を含み得る。好適な回収用緩衝液の組成物は、当業者によって選択され得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、HCCFは、約2.1モル/モル~約4.3モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する。いくつかの実施形態では、HCCFは、約2.2モル/モル~約3.6モル/モルのTSACを有する。いくつかの実施形態では、HCCFは、約2.2モル/モル~約3.4モル/モルのTSACを有する。いくつかの実施形態では、HCCFは、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4又は約4.5モル/モルのTSACを有する。
【0133】
収集後の限外濾過及び/又はダイアフィルトレーション
本方法のいくつかの実施形態では、「UFDFプール」又は「UFDF」としても知られる濾過プールを形成するため、少なくとも1つの精製ステップ後、追加的な精製ステップが実施される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの精製ステップは、濃縮及び緩衝液希釈が意図される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの精製ステップは、収集清澄化、濾過、限外濾過、ダイアフィルトレーション、ウイルス不活性化、親和性捕捉及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの精製ステップは、限外濾過(UF)及び/又はダイアフィルトレーション(DF)を含む。UFプロセスにおける例示的ステップとして、例えばフィルター膜の使用前の洗浄/貯蔵、洗浄後/貯蔵後のフラッシュ、平衡化(例えば、50mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH7.50を含有する緩衝液を用いる)、負荷、濃縮、希釈/フラッシュ/回収(例えば、50mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH7.50を含有する緩衝液を用いる)及びフィルター膜の使用前のフラッシュ/洗浄/貯蔵が挙げられる。
【0134】
いくつかの実施形態では、UF/DF後、UFDFは、約1.7g/L~約5.3g/Lのタンパク質濃度まで希釈され、次に貯蔵及び/又はさらなる精製前に約13℃~約27℃で約1~約60時間にわたって維持される。UFDFを「保持する」又は「維持する」は、本明細書で用いられるとき、同じ温度(±約1℃以内)で目標時間、即ち「保持時間」(±約2時間以内)、維持されているUFDFを指す。いくつかの実施形態では、UFDFは、組換えアルカリホスファターゼ作製プロセスにおける制御ポイントとして役立つように保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、均一な生成物品質を保証するために保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、下流処理を容易にするために保持される。
【0135】
いくつかの実施形態では、組換えアルカリホスファターゼのTSACは、UFDFの保持時間中に減少する。いくつかの実施形態では、TSACの減少は、UFDFの保持時間中にタンパク質濃度、時間の長さ及び/又は温度と相関する。
【0136】
いくつかの実施形態では、UFDFの保持時間の開始は、クロマトグラフィーステップの終了直後である。いくつかの実施形態では、UFDFの保持時間の開始は、UF/DFの終了直後である。いくつかの実施形態では、UFDFの保持時間の開始は、UF/DFステップ終了時の再循環の完了直後である。いくつかの実施形態では、UFDFの保持時間の開始は、UF/DFの生成物の濾過及び移動の完了直後である。
【0137】
いくつかの実施形態では、所望されるタンパク質濃度を得るため、UFDFは、希釈される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約1.0g/L~約6.0g/Lのタンパク質濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約1.7g/L~約5.3g/Lのタンパク質濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約2.0g/L~約5.0g/Lのタンパク質濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約2.3g/L~約4.3g/Lのタンパク質濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約3.0g/L~約4.5g/Lのタンパク質濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約3.3g/L~約4.1g/Lのタンパク質濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約2.0g/L、約2.1g/L、約2.2g/L、約2.3g/L、約2.4g/L、約2.5g/L、約2.6g/l、約2.7g/L、約2.8g/L、約2.9g/L、約3.0g/L、約3.1g/L、約3.2g/L、約3.3g/L、約3.4g/L、約3.5g/L、約3.6g/L、約3.7g/L、約3.8g/L、約3.9g/L、約4.0g/L、約4.1g/L、約4.2g/L、約4.3g/L、約4.4g/L又は約4.5g/Lのタンパク質濃度を有する。
【0138】
いくつかの実施形態では、UFDFは、組換えアルカリホスファターゼと他のタンパク質との組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、UFDFは、約2.0g/L~約6.0g/Lのアルカリホスファターゼ濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約2.5g/L~約5.0g/Lのアルカリホスファターゼ濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約3.0g/L~約4.5g/Lのアルカリホスファターゼ濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約3.3g/L~約4.1g/Lのアルカリホスファターゼ濃度を有する。いくつかの実施形態では、UFDFは、約3.0g/L、約3.1g/L、約3.2g/L、約3.3g/L、約3.4g/L、約3.5g/L、約3.6g/L、約3.7g/L、約3.8g/L、約3.9g/L、約4.0g/L、約4.1g/L、約4.2g/L、約4.3g/L、約4.4g/L又は約4.5g/Lのアルカリホスファターゼ濃度を有する。
【0139】
いくつかの実施形態では、UFDFは、約1時間~約60時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約10時間~約50時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約12時間~約48時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約14時間~約42時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約17時間~約34時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約19時間~約33時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約25~約38時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約29~約35時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間又は約20時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間又は約35時間にわたって保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約42時間、約43時間、約44時間、約45時間、約46時間、約47時間又は約48時間にわたって保持される。
【0140】
いくつかの実施形態では、UFDFは、約10℃~約30℃の温度で保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約13℃~約27℃の温度で保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約14℃~約26℃の温度で保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約15℃~約26℃の温度で保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約15℃~約25℃の温度で保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、約19℃~約25℃の温度で保持される。いくつかの実施形態では、UFDFは、保持時間の終了時、さらなる下流処理ステップが実施されるまで貯蔵される。いくつかの実施形態では、UFDFは、瞬間冷凍後、-80℃で貯蔵される。
【0141】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的な精製ステップは、ウイルス不活性化ステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、ウイルス不活性化ステップは、ウイルス粒子を化学的に不活性化するための溶剤/洗剤ウイルス不活性化プロセスを含む。例示的な溶剤/洗剤は、10%ポリソルベート80、3%TNBP、50mMリン酸ナトリウム及び100mM NaClを含み得る。
【0142】
クロマトグラフィー
本方法のいくつかの実施形態では、部分精製組換えアルカリホスファターゼを得るため、UFDFは、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを施される。いくつかの実施形態では、UFDFは、部分精製組換えアルカリホスファターゼを得るために少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを施され、ここで、組換えアルカリホスファターゼは、約0.9モル/モル~約3.0モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する。いくつかの実施形態では、生成物をさらに精製し、且つ/又は不純物/汚染物質を分離するために少なくとも1つのクロマトグラフィーステップが実施される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップは、タンパク質クロマトグラフィーである。いくつかの実施形態では、タンパク質クロマトグラフィーは、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー(RP)、アフィニティークロマトグラフィー、吸着流動床(EBA)、混合モードクロマトグラフィー及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である。いくつかの実施形態では、タンパク質クロマトグラフィーは、アフィニティークロマトグラフィーである。いくつかの実施形態では、タンパク質クロマトグラフィーは、プロテインAクロマトグラフィーである。いくつかの実施形態では、プロテインAクロマトグラフィーは、生成物(即ちアルカリホスファターゼ、例えばアスホターゼアルファ)を捕捉する。例えば、GE Healthcare Mab Select SuReプロテインAクロマトグラフィーのプロセスが用いられ得る。プロテインAクロマトグラフィーで用いられる例示的な緩衝液及び溶液は、例えば、平衡化/洗浄緩衝液(例えば、50mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH7.50)、溶出緩衝液(例えば、50mMトリス、pH11.0)、剥離緩衝液(例えば、100mMクエン酸ナトリウム、300mM NaCl、pH3.2)、フラッシング緩衝液、清浄液(例えば、0.1M NaOH)などを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップは、追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィーステップは、カラムクロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態では、カラムクロマトグラフィーは、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー(RP)、アフィニティークロマトグラフィー、吸着流動床(EBA)、混合モードクロマトグラフィー及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である。いくつかの実施形態では、カラムクロマトグラフィーは、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を含む。いくつかの実施形態では、HICでは、ブチルセファロース又はCAPTO(登録商標)ブチルアガロースカラムが用いられる。CAPTO(登録商標)ブチルアガロースHICプロセスにおいて用いられる例示的な緩衝液及び溶液として、例えば添加希釈液/平衡化前緩衝液(例えば、50mMリン酸ナトリウム、1.4M硫酸ナトリウム、pH7.50)、平衡化緩衝液/洗浄緩衝液/溶出緩衝液(例えば、すべてがリン酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムを含有する)、ストリップ緩衝液(例えば、リン酸ナトリウムを含有する)などが挙げられる。ブチルHICプロセスにおいて用いられる例示的な緩衝液及び溶液として、例えば添加希釈液/平衡化前緩衝液(例えば、10mMヘペス、2.0M硫酸アンモニウム、pH7.50)、平衡化緩衝液/洗浄緩衝液/溶出緩衝液(例えば、すべてがリン酸ナトリウム又はヘペス及び硫酸アンモニウムを含有する)及びストリップ緩衝液(例えば、リン酸ナトリウムを含有する)が挙げられる。
【0144】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的な精製ステップは、追加的なダイアフィルトレーションを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、疎水性相互作用クロマトグラフィー及び/又は少なくとも1つの追加的なダイアフィルトレーションステップを含む。いくつかの実施形態では、追加的なダイアフィルトレーションステップは、疎水性相互作用クロマトグラフィーステップ後に実施される。いくつかの実施形態では、追加的なダイアフィルトレーションステップは、生成物濃縮及び/又は緩衝液交換を意図して実施される。このプロセスにおいて用いられる例示的な緩衝液及び溶液は、例えば、平衡化緩衝液(例えば、20mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH6.75)、ダイアフィルトレーション緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH6.75)などを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、約0.5モル/モル~約4.0モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップが実施される。いくつかの実施形態では、約0.9モル/モル~約3.9モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップが実施される。いくつかの実施形態では、約1.1モル/モル~約3.2モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップが実施される。いくつかの実施形態では、約1.4モル/モル~約2.6モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップが実施される。いくつかの実施形態では、約1.2モル/モル~約3.0モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップが実施される。いくつかの実施形態では、約0.8モル/モル、約0.9モル/モル、1.0モル/モル、約1.1モル/モル、約1.2モル/モル、約1.3モル/モル、約1.4モル/モル、約1.5モル/モル、約1.6モル/モル、約1.7モル/モル、約1.8モル/モル、約1.9モル/モル、約2.0モル/モル、約2.1モル/モル、約2.2モル/モル、約2.3モル/モル、約2.4モル/モル、約2.5モル/モル、約2.6モル/モル、約2.7モル/モル、約2.8モル/モル、約2.9モル/モル、約3.0モル/モル、約3.1モル/モル、約3.2モル/モル、約3.3モル/モル、約3.4モル/モル、約3.5モル/モル、約3.6モル/モル、約3.7モル/モル、約3.8モル/モル、約3.9モル/モル又は約4.0モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィーステップが実施される。
【0146】
追加的な下流プロセス
いくつかの実施形態では、追加的な下流プロセスは、少なくとも1つの精製ステップ、追加的な精製ステップ、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップ及び/又は追加的なクロマトグラフィーステップに加えて実施される。いくつかの実施形態では、追加的な下流プロセスは、生成物、即ち組換えアルカリホスファターゼをさらに精製する。
【0147】
いくつかの実施形態では、追加的な下流プロセスは、任意のウイルス粒子をさらに除去するためのウイルス減少濾過プロセスを含む。いくつかの実施形態では、ウイルス減少濾過プロセスは、ナノ濾過である。
【0148】
いくつかの実施形態では、追加的な下流プロセスは、少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィーステップを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィーステップは、タンパク質クロマトグラフィーである。いくつかの実施形態では、タンパク質クロマトグラフィーは、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー(RP)、アフィニティークロマトグラフィー、吸着流動床(EBA)、混合モードクロマトグラフィー及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である。いくつかの実施形態では、第3のクロマトグラフィーステップは、混合モードクロマトグラフィー、例えばCAPTO(登録商標)Adhereアガロースクロマトグラフィーである。市販の混合モード材料として、例えば疎水力及び静電力の組み合わせによる中性又は弱塩基性pHでの結合及び低pHでの静電荷反発による溶出を可能にする、ヒドロカルビルアミンリガンドを含有する樹脂(例えば、Pall Corporation,Port Washington,NYからのPPA Hypercel及びHEA Hypercel)(Brenac et al.,2008 J Chromatogr A.1177:226-233を参照されたい);芳香族残基による疎水性相互作用を得て、硫黄原子がチオフィリック相互作用により標的タンパク質の結合を促進する、4-メルカプト-エチル-ピリジンリガンドを含有する樹脂(MEP Hypercel,Pall Corporation)(Lees et al.,2009 Bioprocess Int.7:42-48);異なる伝導率でタンパク質の塩耐性吸着をもたらす、イオン基の近傍に水素結合基及び芳香族残基を有するリガンドを含有する、CAPTO(登録商標)MMC混合モードクロマトグラフィー及びCAPTO(登録商標)adhereアガロースクロマトグラフィー(GE Healthcare,Amersham,UK)などの樹脂(Chen et al.,2010 J Chromatogr A.1217:216-224);及び他の公知のクロマトグラフィー材料、例えば色素リガンドとの親和性樹脂、ハイドロキシアパタイト及びいくつかのイオン交換樹脂(限定されないが、Amberlite CG50(Rohm&Haas,Philadelphia,PA)又はLewatit CNP105(Lanxess,Cologne、DE)を含む)が挙げられる。例示的なアガロースHICクロマトグラフィーステップでは、このプロセスで用いられる例示的な緩衝液及び溶液として、例えば平衡化前緩衝液(例えば、0.5Mリン酸ナトリウム、pH6.00)、平衡化/洗浄緩衝液(例えば、20mMリン酸ナトリウム、440mM NaCl、pH6.50)、添加滴定緩衝液(例えば、20mMリン酸ナトリウム、3.2M NaCl、pH5.75)、プール希釈緩衝液(例えば、25mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.40)及びストリップ緩衝液(0.1Mクエン酸ナトリウム、pH3.20が挙げられる。
【0149】
いくつかの実施形態では、追加的な下流プロセスは、ウイルスクリアランスのためのウイルス濾過ステップを含む。いくつかの実施形態では、ウイルス濾過ステップは、サイズ排除クロマトグラフィーにより実施される。このプロセスにおいて用いられる例示的な緩衝液及び溶液は、例えば、使用前及び生成後のフラッシュ緩衝液(例えば、20mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH6.75)を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、追加的な下流プロセスは、製剤化プロセスを含む。いくつかの実施形態では、製剤化プロセスは、さらなる濃縮及び/又は緩衝液交換を意図した少なくとも1つのさらなる限外濾過及び/又はダイアフィルトレーションを含む。このプロセスにおいて用いられる例示的な緩衝液及び溶液は、例えば、フィルターフラッシュ/平衡化/ダイアフィルトレーション/回収用緩衝液(例えば、25mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.40)を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、追加的な下流プロセスは、バルク充填プロセスを含む。いくつかの実施形態では、バルク充填プロセスは、滅菌濾過を含む。滅菌濾過のための例示的なフィルターは、Millipak60又は同等サイズのPVDFフィルターである(EMD Millipore,Billerica,MA。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される通り、培養細胞からアルカリホスファターゼを作製、精製及び/又は分離するために用いられるステップは、収集清澄化プロセス(又は無傷細胞及び細胞片を細胞培養物から除去するための類似プロセス)、限外濾過(UF)プロセス(又は作製されたアルカリホスファターゼを濃縮するための類似プロセス)、ダイアフィルトレーション(DF)プロセス(又は先行プロセスから作製されたアルカリホスファターゼを含む緩衝液を変更又は希釈するための類似プロセス)、ウイルス不活性化プロセス(又はウイルス粒子を不活性化又は除去するための類似プロセス)、親和性捕捉プロセス(又は作製されたアルカリホスファターゼを捕獲し、それを緩衝液/溶液成分の残りから分離するためのクロマトグラフィー方法のいずれか1つ)、配合プロセス及びバルク充填プロセスからなる群から選択されるステップの少なくとも1つをさらに含む。一実施形態では、培養細胞からアルカリホスファターゼを作製、精製及び/又は分離するためのステップは、本明細書で開示される通り、少なくとも、収集清澄化プロセス(又は無傷細胞及び細胞片を細胞培養物から除去するための類似プロセス)、収集後限外濾過(UF)プロセス(又は作製されたアルカリホスファターゼを濃縮するための類似プロセス)、収集後ダイアフィルトレーション(DF)プロセス(又は先行プロセスから作製されたアルカリホスファターゼを含む緩衝液を変更又は希釈するための類似プロセス)、溶媒/洗剤ウイルス不活性化プロセス(又はウイルス粒子を化学的に不活性化するための類似プロセス)、中間体精製プロセス(例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)又は作製されたアルカリホスファターゼを捕獲し、それを緩衝液/溶液成分の残りから分離するためのクロマトグラフィー方法のいずれか1つ)、HIC後UF/DFプロセス(又は作製されたアルカリホスファターゼに対して濃縮及び/又は緩衝液交換するための類似プロセス)、ウイルス減少濾過プロセス(又は任意のウイルス粒子又は他の不純物若しくは汚染物質をさらに除去するための類似プロセス);混合モードクロマトグラフィー(例えば、CAPTO(登録商標)Adhereアガロースクロマトグラフィー又は作製されたアルカリホスファターゼをさらに精製及び/若しくは濃縮するための類似プロセス)、配合プロセス及びバルク充填プロセスを含む。一実施形態では、本明細書に提供される方法の分離ステップは、収集清澄化、限外濾過、ダイアフィルトレーション、ウイルス不活性化、親和性捕捉、HICクロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー及びそれらの組み合わせの少なくとも1つをさらに含む。図1は、組換えアルカリホスファターゼ、アスホターゼアルファの作製プロセスの実施形態の代表的図面である。
【0153】
いくつかの実施形態では、本開示は、総シアル酸含量(TSAC)を含有する組換えタンパク質中のTSACを、哺動物細胞培養物を通して制御する方法であって、少なくとも1つの精製ステップ及び少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、組換えタンパク質を産生する哺乳動物細胞培養物中でグリコシダーゼ活性を制御する方法であって、少なくとも1つの精製ステップ及び少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの精製ステップは、濾過、遠心分離、収集清澄化、濾過、限外濾過、ダイアフィルトレーション、ウイルス不活性化、親和性捕捉及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップは、タンパク質クロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質クロマトグラフィーは、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー(RP)、アフィニティークロマトグラフィー、吸着流動床(EBA)、混合モードクロマトグラフィー及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である。いくつかの実施形態では、精製ステップ及びクロマトグラフィーステップは、限外濾過/ダイアフィルトレーション及びプロテインAクロマトグラフィーである。
【0154】
本明細書中に引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により援用される。前述の本開示は、理解を明確にすることを意図して図面及び実施例を通してある程度詳細に記載されているが、特定の小さい変更及び修正が実施されることは、当業者に自明である。したがって、説明及び実施例は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例0155】
実施例1:アスホターゼアルファの作製及びTSACの測定
アスホターゼアルファ(又は他の目的の糖タンパク質)を公知の方法により製造する。特に、適切な増殖培地中に一定分量に分け、次いで制御された温度、pH、DO及び撹拌でのバイオリアクター内でさらに増殖させるサンプルである適切な組換え細胞株(即ちMSXの存在下で選択される、GS抵抗性マーカーを保有するトランスフェクトCHO細胞)から接種物増殖を実施する。アスホターゼアルファにおける典型的な生成方法は、CHO細胞を用いたフェドバッチバイオリアクターの方法であるが、他の方法も許容できる。所望される細胞密度及び/又は細胞生存度に至っているとき、生の細胞培養液(CCF)からの一次回収を遠心分離及び深濾過により実施し、結果として収集細胞培養液(HCCF)を得る。
【0156】
HCCFを限外濾過及びダイアフィルトレーションによりさらに精製し、UFDFを形成させる。さらなるクロマトグラフ精製ステップ、例えばウイルス不活性化、プロテインAクロマトグラフィー(プロテインAプールをもたらす)、マルチモーダルクロマトグラフィー精製並びに追加的な限外濾過及びダイアフィルトレーションステップを実施する。最終のバルク原薬又は精製した組換えアスホターゼアルファを放出仕様について試験する。バルク原薬は、投与に適した最終パッケージングをもたらす最終のフィルフィニッシュステップに進む。
【0157】
製造中、TSAC含量は、重要な値であり、密に監視される。しかし、TSACに対する保持時間及び温度の具体的影響は、完全には理解されなかった。したがって、製造の様々な段階でのアスホターゼアルファサンプル中のシアル酸の同定及び定量は、アンペロメトリック電気化学検出法を伴う高性能アニオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)(炭水化物の検出及び定量のための商用システム、即ちThermoScientificなどが利用可能である)により実施した。まず、サンプルに内部標準を添加し、サンプルをロータリー蒸発装置内で乾燥させ、シアル酸が酸加水分解(0.1M HCl)を介して放出された。サンプルを再び乾燥させ、残留酸を除去し、次にキャピラリーイオンクロマトグラフィーシステム(Dionex IC-5000)に注入される水で再構成した。注入後、サンプルに、5%酢酸塩緩衝液~30%酢酸塩緩衝液の、シアル酸種の分離のための酢酸塩勾配を用いて、アルカリ環境下において、アニオン交換クロマトグラフィーを各注入の終了時の5%酢酸塩緩衝液で5分の平衡化とともに30分かけて施す。炭水化物分離のために設計されたHPLCカラム(即ちCarboPac PA100カラム、ラテックスでコーティングされた非多孔性ビーズの固定相がアルカリ性移動相と同時に電荷に基づいて分離する場合)内で分離が生じる。分離後、サンプルは、アンペロメトリック電気化学検出法を介して検出された。反復する波形により、サンプルが金電極の表面で酸化され、ここで、酸化されたサンプルと金電極との間の電気的能力の差が測定される。結果を電気的能力(nC)対時間としてプロットし、ピークをインテグレートする。内部標準のパーセント(%ISTD)を、Neu5Ac又はNeu5Gcピーク面積を内部標準3-デオキシ-D-グリセロ-D-ガラクト-2-ノヌロソン酸(KDN,Sigma-Aldrich)の面積で除して100を掛けることにより計算し、標準%ISTD対標準濃度の検量線と比較することにより定量化する。サンプル濃度は、サンプル%ISTDを検量線から内挿することにより判定する。Neu5Ac及びNeu5Gcシアル酸の混合物をアッセイ標準として用い、この方法で両種を定量化することができた。ナノモルの1単量体あたりのナノモルのNeu5Acにおいて結果を報告する。Neu5Gcは、アッセイのLOQを超える量で存在することが予想されないが、数量化できるNeu5Gcを示すサンプルは、通常の実験で記録される。
【0158】
各サンプルにおけるタンパク質に対するシアル酸のモル比は、回収されたシアル酸のナノモル量を、濃縮を用いることにより加水分解されたタンパク質(即ちアスホターゼアルファ)のナノモル量で除することにより計算する(280nmでのサンプルの吸光度により測定し、モル吸光係数及び分子量によって調節した)。
【0159】
アスホターゼアルファの作製方法のいくつかの実施形態についてのさらなる詳細は、国際公開第2017/031114号パンフレット及び国際公開第2017/214130号パンフレットに見出すことができ、それらの開示は、それらの全体が参照により援用される。
【0160】
実施例2:TSACに対するUFDF保持時間、温度及びタンパク質濃度の評価
(一般に実施例1に記載のような)アスホターゼアルファの大規模作製中、プロテインAプールに対する収集細胞培養液(HCCF)からのTSACにおける減少が認められた。この差は、主に収集後の濃縮/ダイアフィルトレーション(UF/DF1)保持ステップに起因することが予想された。プロテインAプールに対するHCCFから認められたTSACにおける平均減少が約1.1モル/モルであり、標準偏差が0.2モル/モルであり、範囲が0.9モル/モル~1.3モル/モルであった。
【0161】
図2は、培養物が少なくとも約2.5×10個の生細胞の細胞密度に達するとき、様々な栄養補充剤の添加により増殖した細胞の相対的なタンパク質のシアリル化を、約37℃~約30℃の温度変化の存在下及び不在下で14日にわたり図示する。Brx-1=温度変化を伴う制御プロセス;Brx-2=温度変化を伴う制御プロセス;Brx-3=温度変化を伴うCell Boost 2+5;Brx-4=温度変化を伴うCell Boost 2+5;Brx5=温度変化を伴うCell Boost 6;Brx-6=温度変化を伴わないCell Boost 6;Brx-7=温度変化を伴うCell Boost 7a+7b;Brx-8=温度変化を伴わないCell Boost 7a+7b。
【0162】
図3は、TSACの減少と、タンパク質濃度(パネルA)と、保持温度(パネルB)との間の相関を図示する。
【0163】
UF/DF1保持中のTSACに対するUF/DF1保持時間、温度及びタンパク質濃度の影響を評価し、特徴づけるため、小規模特徴づけ試験を実施した。
【0164】
実施例2.1:UF/DF1の操作及び保持
図4は、3つの10Lの清澄化収集ロットの各々について実施された小規模なUF/DF1の操作及び保持時間の概略を示す。表1及び表2は、収集後のUF/DF1ステップについての目標のプロセス条件及びプロセスパラメータを列挙する。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
UF1の終了時及びDFの終了時のインプロセスサンプルを精製及びTSAC分析のために採取した。高濃度でのサンプル生成は、移動範囲を超える濃縮因子(≦25倍)をもたらす最終濃縮ステップ(UF1’)が要求され、各個別ロットの推定上の回収タイターに支配された。最低濃度は、DF緩衝液での希釈により達成された。UF/DF1の完了直後、プールを試験設計に応じて希釈し(図4)、一定分量に分割し、保持試験のために用いた。次に、UF/DF1プールを15mLのコニカルチューブに分割し、制御された水槽内、特定の目標温度±1℃(15、19又は25℃)でさらなる処理前の0、12、24、36、48及び60時間にわたって保持した。すべての保持は、保持目標の±2時間実施し、その時点に達すると、一定分量をプロテインA精製まで冷凍した(-80℃)。
【0168】
この試験におけるT=0を、ダイアフィルトレーション(DF)ステップの終了時、10分の再循環が完了する時点と定義した。製造操作中、保持時間の開始は、ここで、UF/DF1生成物の濾過及び移動後のバッグ充填の終了と定義する。移動は、UF/DF1プールにおける保持時間以外にダイアフィルトレーションの終了から平均で約5時間かかる。
【0169】
実施例2.2:ハイスループットMabSelect SuReプロテインAクロマトグラフィー
溶剤/洗剤ウイルス不活性化(S/D VI)ステップを伴わないMabSelect SuReプレパックRoboColumnを通してUF/DF1保持サンプルを処理した。S/D VIステップの除去は、TSACの結果に影響せず、ハイスループットRoboColumnの方法(DVL 16 0128)における処理時間を改善する。表3は、MabSelect SuRe RoboColumnアフィニティークロマトグラフィーステップを提示する。操作は、プレパックMabSelect SuRe RoboColumn及びTecan Freedom Evo液体処理システムを用いて実施した。サンプルは、最大8サンプル/バッチでのバッチ内で精製した。各サンプルバッチの精製前にサンプルを水槽(18~25℃)で1時間以内に解凍した。
【0170】
各RoboColumn精製からの溶出物を4つの96ウェルプレートに収集し(約200μl/ウェル)、各ウェルについて吸光度(A280)を測定した。各カラムにおいて、生成物を含有する溶出ウェルを、表3に定義した収集基準に基づき、マイクロピペッティングによりプールし、プールを滅菌濾過した(0.22μm)。ProAプールは、pH調節又は希釈しなかった。
【0171】
【表3】
【0172】
実施例2.3:結果-HCCF/インプロセスサンプルでのTSAC
表4は、3つすべての収集ロットを通して作成したUF/DF1インプロセスのTSACデータを列挙する。UF1ステップで得られ、次にUF/DF1操作の残り全体を通して維持される、生成物とシアリダーゼとの両方のより高度な濃縮に起因し、HCCFからUF/DF1保持の開始(T=0)までのTSACにおける減少が予想される。しかし、このTSACの減少は、処理時間が全UF/DF1プールの保持時間に対して極めて少ないと仮定すると、HCCFからプロテインAにかけてのTSACの総減少のわずかな割合に過ぎないと予想される。この減少を評価するため、各収集UF/DF1バッチにおけるすべてのT=0サンプルからのTSACの結果を平均化し、次にバッチのHCCFでの最初のTSACから差し引いた。UF/DF1操作の終了からの持続時間及びT=0でのサンプリング(保持開始時間の2時間以内に希釈及び冷凍した)を仮定すると、タンパク質濃度の変動にもかかわらず、T=0サンプルを通して、最小の変動性(±10%以内のアッセイ変動性)が予想される。したがって、T=0サンプルからの結果を平均化することにより、T=0の結果における一層の信頼性が得られ、アッセイ変動性の影響が最小化される。
【0173】
表4に示す通り、収集バッチ#BにおけるHCCFで報告されたTSACは、3.6モル/モルであり、T=0サンプルにおける平均TSACの結果は、2.5モル/モルである。したがって、このロットにおけるUF/DF1操作中、TSACにおける0.9モル/モルの減少が算出される。TSACのこの減少範囲は、より典型的にはUF/DF1保持(14~48時間)が完了してから認められ、このロットにおけるTSACの結果の1つが異常値であった可能性が示唆される。バッチ#Bにおけるプロセス結果がさらに小規模であったことは、T=0での平均TSACが以下に示すプロセス結果におけるUF/DF1(最終UF1、最終DF)と十分に整合することから、HCCFにおけるTSAC値が異常値のアッセイ結果であることの証拠をもたらした。加えて、この製造バッチのCCFにおいて測定したTSAC値は、2.7モル/モルであり、このバッチにおけるCCF及びHCCFでのTSACの結果間の差は、プロセスの期待値に不一致であった。
【0174】
【表4】
【0175】
HCCFの結果での正確なTSACは、HCCFからプロテインAプールにかけてのTSACの減少(TSACの減少=HCCFでのTSAC-ProAプールでのTSAC)を分析するために必要である。収集バッチ#BにおけるHCCFでのTSACについての潜在的に異常な結果のその後の分析に対する影響を最小限にするため、HCCFからT=0にかけてのインプロセスの結果を用いて、平均TSAC値を算出した。平均には、3.6モル/モルのHCCF結果での初期TSAC、UF1の終了時のTSAC(2.4モル/モル)、DFの終了時のTSAC(2.2モル/モル)及びT=0でのTSAC値を含める。この場合、最低の保持温度及び最低のUF/DF1タンパク質濃度からの結果を最終的にデータセットから除外したことから、この計算では3つのT=0値の中の2つのみを用いた(図5を参照されたい)。表5に示す通り、2.7モル/モルのHCCF値での平均TSACを収集バッチ#Bにおける小規模特徴づけデータ分析において用いることになる。2.7モル/モルがこのロットにおけるHCCFでのTSACの適切な推定値であるという仮定は、予測モデルの統計分析及び検証の一部として評価することになる。
【0176】
【表5】
【0177】
実施例2.4:プロテインAでのTSAC
図5図7は、T=12時点のサンプルからの、様々なタンパク質濃度及び保持温度でのUF/DF1保持中のTSACの減少を示すためのデータをプロットする。全体として、組み合わせデータセットから、UF/DF1保持時間中の予想された線形的減少が確認される。さらに、UF/DF1プールのタンパク質濃度増加とともに、TSAC減少の勾配における一貫した増加が認められる。しかし、TSACの減少とUF/DF1保持温度との間に明確な傾向が認められない。3つすべてのデータセットを通して、TSACの減少における同様の傾向が認められ、この試験で用いられる3つの収集ロットにおける一貫したTSACの振る舞いが示される。
【0178】
実施例3:プロテインAクロマトグラフィー及びバルク充填後のTSACの測定
総シアル酸含量(TSAC)は、アスホターゼアルファのための製造プロセスの2ステップ時、即ちプロテインAクロマトグラフィー(プロテインA又はProAプールとも称される)及びバルク充填(バルク原薬又はBDSの放出とも称される)後に測定した(図1を参照されたい)。図8に示す通り、ProAプール及びBDSの放出からのTSACデータを51の製造バッチに対してレビューした。BDS TSAC結果は、1.3~2.6モル/モルの範囲であるとともに、平均が1.9モル/モルであり、且つ標準偏差が0.3モル/モル(RSD=17.5%)である。図8に示す通り、BDS TSACデータ及びProA TSACデータは、バッチ#524759以外の各バッチにおいて傾向が類似する。本実施例からのデータは、プロテインAプールステップ下流の単位操作がTSAC変動性に有意に寄与することがないことを示す。
【0179】
実施例4:収集前及び収集後のTSACの測定
細胞培養液(CCF)及び収集清澄化培養液(HCCF)において、総シアル酸含量(TSAC)を測定した(図1を参照されたい)。図9に示す通り、CCFからのTSACデータを39の製造バッチについて測定した。CCFサンプルは、産生バイオリアクターの実行終了時に採取し、濾過し、細胞及び細胞片を除去し、次に小規模プロテインA精製及びTSAC分析に先立ち、適切な条件で貯蔵した。CCFでのTSACの測定結果は、1.9~2.9モル/モルの範囲であるとともに、平均が2.4モル/モルであり、且つ標準偏差が0.3モル/モル(RSD=10.4%)である。収集(HCCF)でのTSACデータは、39のうちの35のバッチにおいて測定した。HCCF TSACの結果は、2.2~3.4モル/モルの範囲であり、平均が2.7モル/モルであり、且つ標準偏差が0.3モル/モル(RSD=10.7%)であった。図9に示す通り、データがCCFとHCCFとの両方で利用可能である場合のバッチにおいて、HCCF TSACは、CCF TSACと傾向が類似し、(バッチ#Bを例外として)平均に対して約0.2モル/モル増加する。このバッチにおけるProA及びBDSのTSACの結果は、CCF TSACの結果と整合し、HCCFの結果は、異常値と考えられる。本実施例からのデータは、収集プロセスがTSACに変動性を加えないことを示す。
【0180】
細胞培養液に対して実施した追加的な多変量分析により、CCF TSACに対する産生バイオリアクターの接種時の細胞世代数(32~51世代)からの統計学的に有意な影響が同定されなかった(データは示さず)。その後の分析により、試験範囲での世代数とCCF又はHCCFでのTSACとの間に統計学的に有意な相関が全く確認されなかった。
【0181】
実施例5:収集前及び収集後のTSACの測定
製造プロセスにおける様々なポイントで収集したTSAC測定のレビューによると、HCCFとプロテインAプールとの間でのTSACにおける減少がUF/DF1後の保持(UF1保持としても知られる;図1を参照されたい)にわたって生じることが示される。図10に示す通り、TSACは、UF1保持中、特定のデータ点が異常値として除外されたバッチ#583389を除くすべてのバッチにおいて有意に減少する。このバッチに対応するBDSの結果によると、他のバッチに類似したTSACの結果における減少がこのバッチにおけるUF1保持中に認められたことが確認される。UF1保持の持続時間にわたるTSACの結果における平均減少が約1.0モル/モルであり、標準偏差が0.3モル/モル(RSD=26.3%)であり、範囲が0.5モル/モル~1.4モル/モルであった。
【0182】
以前の分析では、UFDF1の保持時間とBDSでのTSACの変動性との間の相関が同定された。TSACの減少に対するUFDF1保持時間、温度及びタンパク質濃度の影響への理解が十分でなかったことから、追加的な温度及びタンパク質濃度依存性データを小規模に収集し、UF1保持中のTSACの減少に対する影響を理解した。UFDF1保持中の3つの要素の多変量評価を、各要素における範囲を評価する、十分な要因実験研究の設計を用いて行った(表6)。この小規模特徴づけ試験の設計は、3つのバッチ(A、B及びC)からの収集物を用いて実施した。各収集物に対する小規模UFDF1の操作後、UFDF1プールを、様々な保持時間、温度及びタンパク質濃度で保持した(表6)。TSAC分析のため、小規模プロテインAカラムを用いてサンプルを精製した。プロテインAプールでのTSACを各収集物におけるHCCFでのTSAC値と比較し、HCCFからのTSACにおける全体減少(TSACの減少)を各UF1保持条件について計算した。
【0183】
【表6】
【0184】
実験結果に従い、UFDF1保持中、TSACの減少に対するフィットモデル分析を実施することにより、JMPモデルを作出した。各要素(保持時間、温度及びタンパク質濃度)を、段階的回帰を用いる要因分析に含めた。モデル出力は、予測プロット(図11)、選別パラメータ推定値、予測式及び予測プロファイラー(図12)による実出力を含んだ。予測式は、パラメータ推定値から誘導し、予測プロファイラーにおいてプロットした。
【0185】
小規模UFDF1モデル及びこれらのデータから作出したJMPモデルが大規模プロセスを代表することを確認するため、HCCF TSAC及びUFDF1保持データ(平均保持時間、タンパク質濃度及び平均保持温度)が両方とも利用可能である場合、予測モデルを、35の製造バッチにおけるBDS TSACを予測するその能力について検証した。各製造バッチにおいて、予測されたTSACの減少を測定したHCCF TSACから差し引き、予測されたProA TSACを得た。ProAからBDSへの平均で0.2モル/モルのTSACの増加に基づき、予測されたBDS TSACを算出した。BDS TSACは、バッチ#Bを例外とするすべての製造バッチにおいて、アッセイ変動性内(±20%)で予測可能であった。
【0186】
特徴づけ試験によると、UFDF1タンパク質濃度が、UFDF1保持中、TSACの減少に対して統計学的に有意な(P値<0.0001)影響を有することが示された。UF1保持中のTSACの減少は、哺乳動物細胞培養収集物中に存在することが知られるシアリダーゼ酵素の存在に起因して生じると考えられる(Gramer and Goochee,Biotechnol.Prog.9:366-373(1993)、参照により本明細書中に具体的に援用される)。アスホターゼアルファのタンパク質濃度は、UFDF1保持中のシアリダーゼ酵素の濃度に代わるものと考えられる。しかし、この特性は、原薬製造プロセスにおけるTSAC対照として定義しなかった。
【0187】
結論として、データは、UFDFの保持時間の範囲が14~48時間から14~42時間に減少することを示唆する。加えて、データは、2.0~4.3g/Lの範囲の、UFDF保持ステップでのタンパク質濃度に新しい性能特性が加わることを示唆した。
【0188】
上の本明細書に記述されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかもそれぞれの個別の刊行物、特許又は特許出願が、その全体が詳細且つ個別に参照により援用されるように示されるのと同程度に参照により本明細書に援用される。本開示の上記の方法の様々な修正形態及び変更形態、医薬組成物及びキットは、特許請求される本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明白になるであろう。本開示は、具体的な実施形態と関連して記載されているが、さらなる修正形態が可能であり、特許請求される本発明がかかる具体的な実施形態に不当に限定されるべきでないことが理解されるであろう。
【0189】
図1
図2
図3A-3B】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアルカリホスファターゼを作製する方法であって、
a.組換えアルカリホスファターゼを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地に接種することと;
b.前記CHO細胞を培地中で培養することと;
c.約2.1モル/モル~約4.3モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する収集清澄化培養液(HCCF)を形成するために、前記組換えアルカリホスファターゼを(c)の細胞培養物から少なくとも1つの精製ステップによって単離することと;
d.濾過プール(UFDF)を形成するために少なくとも1つの追加的なタンパク質精製ステップを実施することであって、前記UFDFは、約13℃~約27℃の温度で約1時間~約60時間にわたって且つ約1.7g/L~約5.3g/Lのタンパク質濃度で保持される、実施することと;
e.部分精製組換えアルカリホスファターゼを得るために前記UFDFに少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを施すことであって、前記組換えアルカリホスファターゼは、約0.7モル/モル~約3.5モル/モルのTSACを有する、施すことと
を含む方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0188
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0188】
以下、本発明の実施形態を示す。
[1]組換えアルカリホスファターゼを作製する方法であって、
a.組換えアルカリホスファターゼを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地に接種することと;
b.前記CHO細胞を培地中で培養することと;
c.約2.1モル/モル~約4.3モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する収集清澄化培養液(HCCF)を形成するために、前記組換えアルカリホスファターゼを(c)の細胞培養物から少なくとも1つの精製ステップによって単離することと;
d.濾過プール(UFDF)を形成するために少なくとも1つの追加的なタンパク質精製ステップを実施することであって、前記UFDFは、約13℃~約27℃の温度で約1時間~約60時間にわたって且つ約1.7g/L~約5.3g/Lのタンパク質濃度で保持される、実施することと;
e.部分精製組換えアルカリホスファターゼを得るために前記UFDFに少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを施すことであって、前記組換えアルカリホスファターゼは、約0.7モル/モル~約3.5モル/モルのTSACを有する、施すことと
を含む方法。
[2]組換えアルカリホスファターゼを作製する方法であって、
a.組換えアルカリホスファターゼを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地に接種することと;
b.前記CHO細胞を培地中で培養することと;
c.栄養補充剤を(b)の細胞培養物に添加することと;
d.濾過プール(UFDF)を形成するために、前記組換えアルカリホスファターゼを(c)の前記細胞培養物から少なくとも1つの精製ステップによって単離することと;
e.前記組換えアルカリホスファターゼを前記UFDFから回収することであって、前記UFDF中の前記組換えアルカリホスファターゼは、前記回収を施されるとき、約2.1モル/モル~約4.3モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する、回収することと
を含む方法。
[3]シアリダーゼは、前記細胞培養物、前記HCCF及び/又は前記UFDFから選択的に除去される、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]外因性シアリルトランスフェラーゼは、前記細胞培養物、前記HCCF及び/又は前記UFDFに添加される、[1]又は[2]に記載の方法。
[5]前記培地中での前記CHO細胞の前記培養は、約36℃~約38℃の温度におけるものである、[1]~[4]のいずれか一に記載の方法。
[6]前記培地中での前記CHO細胞の前記培養は、約37℃の温度におけるものである、[1]~[5]のいずれか一に記載の方法。
[7]前記栄養補充剤は、CHO細胞の前記培地への接種の少なくとも1日後に前記細胞培養物に添加される、[1]~[6]のいずれか一に記載の方法。
[8]前記栄養補充剤は、3つ以上の異なる時点で添加される、[1]~[7]のいずれか一に記載の方法。
[9]前記培地は、EX-CELL(登録商標)302無血清培地;CD DG44培地;BD Select(商標)培地;SFM4CHO培地;及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]~[8]のいずれか一に記載の方法。
[10]前記CHO細胞の前記培養は、0.25L~25,000Lのバイオリアクター内におけるものである、[1]~[9]のいずれか一に記載の方法。
[11]前記CHO細胞の前記培養は、100L~25,000Lのバイオリアクター内におけるものである、[1]~[10]のいずれか一に記載の方法。
[12]前記CHO細胞の前記培養は、2000L~20,000Lのバイオリアクター内におけるものである、[1]~[11]のいずれか一に記載の方法。
[13]前記細胞培養物の温度は、前記接種の約80時間~約120時間後に減少される、[1]~[12]のいずれか一に記載の方法。
[14](d)は、接種の約10~約14日後に行われる、[1]~[13]のいずれか一に記載の方法。
[15]前記HCCFの前記TSACは、約2.2モル/モル~約3.6モル/モルである、[1]~[14]のいずれか一に記載の方法。
[16]前記HCCFの前記TSACは、約2.2モル/モル~約3.4モル/モルである、[1]~[15]のいずれか一に記載の方法。
[17]前記少なくとも1つの追加的な精製ステップは、収集清澄化、濾過、限外濾過、ダイアフィルトレーション、ウイルス不活性化、親和性捕捉及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、[1]~[16]のいずれか一に記載の方法。
[18]前記少なくとも1つの追加的な精製ステップは、限外濾過及び/又はダイアフィルトレーションを含む、[1]~[17]のいずれか一に記載の方法。
[19]前記UFDFは、約14℃~約26℃の温度で保持される、[1]~[18]のいずれか一に記載の方法。
[20]前記UFDFは、約15℃~約26℃の温度で保持される、[1]~[19]のいずれか一に記載の方法。
[21]前記UFDFは、約15℃~約25℃の温度で保持される、[1]~[20]のいずれか一に記載の方法。
[22]前記UFDFは、約19℃~約25℃の温度で保持される、[1]~[21]のいずれか一に記載の方法。
[23]前記UFDFは、約10時間~約50時間にわたって保持される、[1]~[22]のいずれか一に記載の方法。
[24]前記UFDFは、約12時間~約48時間にわたって保持される、[1]~[23]のいずれか一に記載の方法。
[25]前記UFDFは、約14時間~約42時間にわたって保持される、[1]~[24]のいずれか一に記載の方法。
[26]前記UFDFは、約17時間~約34時間にわたって保持される、[1]~[25]のいずれか一に記載の方法。
[27]前記UFDFは、約19時間~約33時間にわたって保持される、[1]~[26]のいずれか一に記載の方法。
[28]前記UFDFは、約25時間~約38時間にわたって保持される、[1]~[27]のいずれか一に記載の方法。
[29]前記UFDFは、約29時間~約35時間にわたって保持される、[1]~[28]のいずれか一に記載の方法。
[30]前記UFDFは、約2.0g/L~約4.3g/Lのタンパク質濃度を有する、[1]~[29]のいずれか一に記載の方法。
[31]前記UFDFは、約2.4g/L~約3.7g/Lのタンパク質濃度を有する、[1]~[30]のいずれか一に記載の方法。
[32]前記UFDFは、約3.1g/Lのタンパク質濃度を有する、[1]~[31]のいずれか一に記載の方法。
[33]前記UFDFは、約3.0g/L~約4.5g/Lのアルカリホスファターゼ濃度を有する、[1]~[32]のいずれか一に記載の方法。
[34]前記UFDFは、約3.3g/L~約4.1g/Lのアルカリホスファターゼ濃度を有する、[1]~[33]のいずれか一に記載の方法。
[35]前記少なくとも1つのクロマトグラフィーステップは、タンパク質アフィニティークロマトグラフィーである、[1]~[34]のいずれか一に記載の方法。
[36]前記少なくとも1つのクロマトグラフィーステップは、プロテインAクロマトグラフィーである、[1]~[35]のいずれか一に記載の方法。
[37]ステップ(d)は、ウイルス不活性化ステップをさらに含む、[1]~[36]のいずれか一に記載の方法。
[38]ステップ(e)は、少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップをさらに含む、[1]~[37]のいずれか一に記載の方法。
[39]前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィーステップは、カラムクロマトグラフィーを含む、[1]~[38]のいずれか一に記載の方法。
[40]前記カラムクロマトグラフィーは、疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む、[1]~[39]のいずれか一に記載の方法。
[41]前記少なくとも1つの追加的な精製ステップは、追加的なダイアフィルトレーションを含む、[1]~[40]のいずれか一に記載の方法。
[42]前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、疎水性相互作用クロマトグラフィー及び/又は少なくとも1つの追加的なダイアフィルトレーションステップを含む、[1]~[41]のいずれか一に記載の方法。
[43]前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、約0.9モル/モル~約3.9モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される、[1]~[42]のいずれか一に記載の方法。
[44]前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、約1.1モル/モル~約3.2モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される、[1]~[43]のいずれか一に記載の方法。
[45]前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、約1.4モル/モル~約2.6モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される、[1]~[44]のいずれか一に記載の方法。
[46]前記少なくとも1つの追加的なクロマトグラフィー及び/又は精製ステップは、約1.2モル/モル~約3.0モル/モルのTSACを有する組換えアルカリホスファターゼを得るために実施される、[1]~[45]のいずれか一に記載の方法。
[47]前記組換えアルカリホスファターゼは、W-sALP-X-Fc-Y-D -Z(式中、
Wは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;
Xは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;
Yは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;
Zは、不在であるか、又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列であり;
Fcは、結晶化可能領域断片であり;
は、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸塩又はそれらの組み合わせであり、ここで、n=10又は16であり;及び
sALPは、可溶性アルカリホスファターゼである)
の構造を含む、[1]~[46]のいずれか一に記載の方法。
[48]前記組換えアルカリホスファターゼは、アスホターゼアルファ(配列番号1)を含む、[1]~[47]のいずれか一に記載の方法。
[49]前記タンパク質アフィニティークロマトグラフィーから得られる前記組換えアルカリホスファターゼは、約2℃~約8℃で貯蔵される、[1]~[48]のいずれか一に記載の方法。
[50]接種後、栄養補充剤を(b)の前記細胞培養物に添加することをさらに含む、[1]~[49]のいずれか一に記載の方法。
[51]UFDF中の前記組換えアルカリホスファターゼは、前記回収を施されるとき、約2.2モル/モル~約3.6モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する、[1]~[50]のいずれか一に記載の方法。
[52]前記UFDF中の前記組換えアルカリホスファターゼは、前記回収を施されるとき、約2.2モル/モル~約3.4モル/モルの総シアル酸含量(TSAC)を有する、[1]~[51]のいずれか一に記載の方法。
[53]組換えアルカリホスファターゼ活性を測定することをさらに含む、[1]~[52]のいずれか一に記載の方法。
[54]哺乳動物細胞培養物中に生成される組換えアルカリホスファターゼであって、前記細胞培養物から生成された収集清澄化培養液(HCCF)中の前記組換えアルカリホスファターゼは、常に約1.2モル/モル以上の総シアル酸含量(TSAC)を有し、前記哺乳動物細胞培養物は、約100L~約25,000Lである、組換えアルカリホスファターゼ。
[55]組換えアルカリホスファターゼを含む濾過プール(UFDF)であって、約100L~約25,000Lの細胞培養物から生成され、約2.0~約4.3g/Lのタンパク質濃度において約19℃~約25℃で約14~約42時間にわたって保持される、濾過プール(UFDF)。
[56][1]~[53]のいずれか一に記載の方法によって生成される組換えアルカリホスファターゼ。
[57][56]に記載の組換えアルカリホスファターゼ及び少なくとも1つの薬学的に許容できる担体、希釈剤、賦形剤又はそれらの組み合わせを含む医薬製剤。
[58]対象における無機ピロリン酸塩(PPi)の切断を増強するために、[56]に記載の組換えアルカリホスファターゼを使用する方法。
[59]アルカリホスファターゼ欠損に関連する病態を患っている対象を治療する方法であって、治療有効量の、[56]に記載の組換えアルカリホスファターゼを前記対象に投与することを含む方法。
[60]総シアル酸含量(TSAC)を、TSACを含有する組換えタンパク質において制御する方法であって、前記組換えタンパク質を哺乳動物細胞培養物中で培養することと、UFDFを提供するために少なくとも1つの精製ステップを実施することとを含み、温度、タンパク質濃度及び/又は保持時間は、前記UFDF中で制御される、方法。
[61]前記組換えタンパク質は、組換え糖タンパク質である、[60]に記載の方法。[62]前記組換えタンパク質は、アルカリホスファターゼタンパク質である、[60]又は[61]に記載の方法。
[63]前記組換えタンパク質は、アスホターゼアルファである、[60]~[62]のいずれか一に記載の方法。
[64]前記少なくとも1つの精製ステップは、限外濾過及び/又はダイアフィルトレーションを含む、[60]~[63]のいずれか一に記載の方法。
[65]前記少なくとも1つの精製ステップは、プロテインAクロマトグラフィーを含む、[60]~[64]のいずれか一に記載の方法。
[66]哺乳動物細胞培養物中のグリコシダーゼ活性を制御する方法であって、組換えタンパク質を哺乳動物細胞培養物中で培養することと、UFDFを提供するために少なくとも1つの精製ステップを実施することとを含み、温度、タンパク質濃度及び/又は保持時間は、前記グリコシダーゼ活性を制御するために前記UFDF中で制御される、方法。
[67]前記組換えタンパク質は、組換え糖タンパク質である、[66]に記載の方法。[68]前記組換えタンパク質は、アルカリホスファターゼタンパク質である、[66]又は[67]に記載の方法。
[69]前記組換えタンパク質は、アスホターゼアルファである、[66]~[68]のいずれか一に記載の方法。
[70]前記少なくとも1つの精製ステップは、限外濾過及び/又はダイアフィルトレーションを含む、[66]~[69]のいずれか一に記載の方法。
[71]前記少なくとも1つの精製ステップは、プロテインAクロマトグラフィーを含む、[66]~[70]のいずれか一に記載の方法。
上の本明細書に記述されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかもそれぞれの個別の刊行物、特許又は特許出願が、その全体が詳細且つ個別に参照により援用されるように示されるのと同程度に参照により本明細書に援用される。本開示の上記の方法の様々な修正形態及び変更形態、医薬組成物及びキットは、特許請求される本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明白になるであろう。本開示は、具体的な実施形態と関連して記載されているが、さらなる修正形態が可能であり、特許請求される本発明がかかる具体的な実施形態に不当に限定されるべきでないことが理解されるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
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【外国語明細書】