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特開2024-59658安定性及び生産力価を向上させるためのモノクローナル抗体操作
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059658
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】安定性及び生産力価を向上させるためのモノクローナル抗体操作
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240423BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240423BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C12N15/09 Z
C07K16/00
C07K16/46
A61K39/395 M
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024015463
(22)【出願日】2024-02-05
(62)【分割の表示】P 2021538467の分割
【原出願日】2020-01-02
(31)【優先権主張番号】62/787,867
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス,ジェニット・リアン
(72)【発明者】
【氏名】テメル,デニス
(72)【発明者】
【氏名】エスティス,ブラム
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル,ニーラジ・ジャグディッシュ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】第1抗体又は抗体変異体の安定性を増加させる方法、前記方法によって作成された、抗体又は抗体変異体、並びに前記抗体又は抗体変異体を含む、医薬組成物を提供する。
【解決手段】第1抗体又は抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、疎水性アミノ酸残基を前記第1抗体又は抗体変異体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、前記第2抗体又は抗体変異体は前記非置換第1抗体又は抗体変異体より安定であり、前記疎水性アミノ酸残基は、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン、及びバリンからなる群から選択される、方法とする。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1抗体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、グリシン、アラニン又はセリンを重鎖56位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、前記第2抗体は前記非置換第1抗体より安定である、方法。
【請求項2】
前記グリシンは、重鎖56位で置換される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2抗体は、重鎖80位(AHo番号付け)で疎水性アミノ酸残基と更に置換される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記疎水性アミノ酸残基は:アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン及びバリンから成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第2抗体は、80位(AHo番号付け)でメチオニンと更に置換される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記第2抗体は、80位(AHo番号付け)でイソロイシンと更に置換される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
第1抗体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、疎水性アミノ酸残基を前記第1抗体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、前記第2抗体は前記非置換第1抗体より安定である、方法。
【請求項9】
前記疎水性アミノ酸残基は:アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン及びバリンから成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第1抗体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン又はバリンを前記第1抗体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、前記第2抗体は前記非置換第1抗体より安定である、方法。
【請求項12】
前記メチオニンは、前記第1抗体の重鎖80位で置換される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イソロイシンは、前記第1抗体の重鎖80位で置換される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2抗体は、重鎖56位(AHo番号付け)でアラニン、グリシン又はセリンと更に置換される、請求項8~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2抗体は、重鎖56位(AHo番号付け)でアラニン又はグリシンと更に置換される、請求項8~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2抗体は、重鎖56位(AHo番号付け)でグリシンと更に置換される、請求項8~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2抗体の安定性の増加は、細胞培養中の力価の増加、細胞培養からの収率の増加、精製後の純度の増加、高分子量種の減少、融点温度の上昇、凝集温度の上昇及び融解開始温度の上昇から成る群から選択される少なくとも1つによって証明される、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
力価の前記増加は、Octet Forte Bio機器を用いてプロテインA被覆プローブチップへの結合速度によって測定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
収率の前記増加は、プロテインA又はプロテインG捕捉によって測定される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
純度の前記増加は、前記精製抗体のサイズ排除カラムクロマトグラフィー(SEC)によって測定される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
高分子量種の前記減少は、サイズ排除カラムクロマトグラフィー(SEC)及び各分子量での各ピークについての曲線下面積によって測定される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
融点温度の前記上昇は、示差走査蛍光分析法(DSF)又は示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
凝集温度の前記上昇は、DSFによって測定される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
融解開始温度の前記上昇は、DSFによって測定される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記第1抗体は、モノクローナル抗体である、請求項1~24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1抗体は、ヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体である、請求項1~25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1抗体は、IgG抗体である、請求項1~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体から成る群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記IgG抗体は、IgG1抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記IgG抗体は、IgG2抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記IgG抗体は、IgG3抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記IgG抗体は、IgG4抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体変異体を作り出すために、グリシン、アラニン又はセリンを重鎖56位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、前記第2抗体変異体は前記非置換第1抗体変異体より安定である、方法。
【請求項34】
前記グリシンは、重鎖56位で置換される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第2抗体変異体は、重鎖80位(AHo番号付け)で疎水性アミノ酸残基と更に置換される、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記疎水性アミノ酸残基は:アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン及びバリンから成る群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、疎水性アミノ酸残基を第1抗体変異体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、前記第2抗体変異体は前記非置換第1抗体変異体より安定である、方法。
【請求項39】
前記疎水性アミノ酸残基は:アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン及びバリンから成る群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体変異体を作り出すために、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン又はバリンを前記第1抗体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、前記第2抗体変異体は前記非置換第1抗体変異体より安定である、方法。
【請求項42】
前記メチオニンは、前記第1抗体変異体の重鎖80位で置換される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記イソロイシンは、前記第1抗体変異体の重鎖80位で置換される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記第2抗体変異体は、重鎖56位(AHo番号付け)でアラニン、グリシン又はセリンと更に置換される、請求項38~43の何れか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記第2抗体変異体は、重鎖56位(AHo番号付け)でアラニン又はグリシンと更に置換される、請求項38~43の何れか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記第2抗体変異体は、重鎖56位(AHo番号付け)でグリシンと更に置換される、請求項38~43の何れか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第2抗体変異体の安定性の増加は、細胞培養中の力価の増加、細胞培養からの収率の増加、精製後の純度の増加、高分子量種の減少、融点温度の上昇、凝集温度の上昇及び融解開始温度の上昇から成る群から選択される少なくとも1つによって証明される、請求項33~46の何れか一項に記載の方法。
【請求項48】
力価の前記増加は、Octet Forte Bio機器を用いてプロテインA被覆プローブチップへの結合速度によって測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
収率の前記増加は、プロテインA又はプロテインG捕捉によって測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
純度の前記増加は、前記精製抗体のSECによって測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
高分子量種の前記減少は、SEC及び各分子量での各ピークについての曲線下面積によって測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
融点温度の前記上昇は、DSF又はDSCによって測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
凝集温度の前記上昇は、DSFによって測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
融解開始温度の前記上昇は、DSFによって測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項55】
前記第1抗体変異体は、多重特異性抗体である、請求項33~54の何れか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記多重特異性抗体は、二重特異性抗体又は三重特異性抗体である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記第1抗体変異体は、抗原に結合できる抗体断片である、請求項33~56の何れか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F’(ab)2断片、Fv断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、バイパラトピックペプチド、ドメイン抗体(dAb)、CDRグラフト化抗体、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、リニア抗体;キレート化組み換え抗体、トリボディ、バイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、単一ドメイン抗体及びVHH含有抗体から成る群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第1抗体変異体は、ヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体変異体である、請求項33~58の何れか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記第1抗体変異体は、IgG抗体変異体である、請求項33~59の何れか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記IgG抗体変異体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体変異体から成る群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記IgG抗体変異体は、IgG1抗体変異体である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記IgG抗体変異体は、IgG2抗体変異体である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記IgG抗体変異体は、IgG3抗体変異体である、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記IgG抗体変異体は、IgG4抗体変異体である、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
第1抗体又は第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、
a.前記第1抗体又は前記抗体変異体の抗体部分の前記重鎖についての前記生殖系列原アミノ酸配列を同定する工程;
b.前記第1抗体又は前記抗体変異体の前記抗体部分の重鎖56位(AHo番号付け)及び重鎖80位(AHo番号付け)で前記アミノ酸残基を同定する工程;及び
c.前記第1抗体又は前記抗体変異体の前記抗体部分の前記生殖系列原アミノ酸配列から前記同定された残基を重鎖56位及び80位で置換し、それにより第2抗体又は第2抗体変異体を作り出す工程を含み、
前記第2抗体は前記非置換第1抗体より安定であるか;又は前記第2抗体変異体は前記非置換第1抗体変異体より安定である、方法。
【請求項67】
前記第2抗体又は第2抗体変異体の前記安定性の増加は、細胞培養中の力価の増加、細胞培養からの収率の増加、精製後の純度の増加、高分子量種の減少、融点温度の上昇、凝集温度の上昇及び融解開始温度の上昇から成る群から選択される少なくとも1つによって証明される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
力価の前記増加は、Octet Forte Bio機器を用いてプロテインA被覆プローブチップへの結合速度によって測定される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
収率の前記増加は、プロテインA又はプロテインG捕捉によって測定される、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
純度の前記増加は、精製タンパク質のSECによって測定される、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
高分子量種の前記減少は、SEC及び各分子量での各ピークについての曲線下面積によって測定される、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
融点温度の前記上昇は、DSF又はDSCによって測定される、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
凝集温度の前記上昇は、DSFによって測定される、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
融解開始温度の前記上昇は、DSFによって測定される、請求項67に記載の方法。
【請求項75】
前記第1抗体は、モノクローナル抗体である、請求項66~74の何れか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記第1抗体は、ヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記第1抗体は、IgG抗体である、請求項66~76の何れか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体から成る群から選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記IgG抗体は、IgG1抗体である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記IgG抗体は、IgG2抗体である、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記IgG抗体は、IgG3抗体である、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記IgG抗体は、IgG4抗体である、請求項78に記載の方法。
【請求項83】
前記第1抗体変異体は、多重特異性抗体である、請求項66~82の何れか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記多重特異性抗体は、二重特異性抗体又は三重特異性抗体である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記第1抗体変異体は、抗原に結合できる抗体断片である、請求項66~84の何れか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F’(ab)2断片、Fv断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、バイパラトピックペプチド、ドメイン抗体(dAb)、CDRグラフト化抗体、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、リニア抗体;キレート化組み換え抗体、トリボディ、バイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、単一ドメイン抗体及びVHH含有抗体から成る群から選択される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記第1抗体変異体は、ヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体変異体である、請求項66~86の何れか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記第1抗体変異体は、IgG抗体変異体である、請求項66~87の何れか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記IgG抗体変異体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体変異体から成る群から選択される、請求項66~88の何れか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記IgG抗体変異体は、IgG1抗体変異体である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記IgG抗体変異体は、IGg2抗体変異体である、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記IgG抗体変異体は、IgG3抗体変異体である、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
前記IgG抗体変異体は、IgG4抗体変異体である、請求項89に記載の方法。
【請求項94】
前記第2抗体又は第2抗体変異体は、前記重鎖の56位及び80位(AHo番号付け)の下記の残基対:GF、GI、GL、GT、GV、AF、AI、AL、AV、AA、AM、SA、SI又はSTそれぞれの何れか1つと置換される、請求項1~93の何れか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記第2抗体又は第2抗体変異体を医薬組成物に処方する工程を更に含む、請求項1~94の何れか一項に記載の方法。
【請求項96】
請求項1~95の何れか一項に記載の方法によって作成された、抗体又は抗体変異体。
【請求項97】
請求項96の前記抗体又は抗体変異体を含む、医薬組成物。
【請求項98】
前記第2抗体又は第2抗体変異体を医薬組成物に処方する工程を更に含む、請求項1~93の何れか一項に記載の方法。
【請求項99】
請求項1~93の何れか一項に記載の方法によって作成された、抗体又は抗体変異体。
【請求項100】
請求項99の抗体又は抗体変異体を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、本明細書に全体として参照により組み込まれる、2019年1月3日に出願された米国仮特許出願第62/787,867号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
本明細書に提示した主題は、タンパク質工学の分野に関する。特には、本明細書に提示した主題は、それらの安定性及び生産を向上させるための、抗体操作、特にモノクローナル抗体及びそれらの変異体操作に関する。
【背景技術】
【0003】
組み換え技術によって製造されるモノクローナル抗体(mAb)(及びそれらの活性断片)は、重要な治療ツールである。しかしながら、これらの分子は複雑であるので、これらの分子の製造、貯蔵及び治療のための投与を促進するために満たされる必要がある多数の課題が存在する。
【0004】
製造及び安定性には2つの課題が関わる。mAbは、バイオリアクター内で、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の操作細胞から製造される。しかしながら、製造レベルは低く、mAb間で変動し得る。低い製造レベルは、製造時間、労働力及びバイオリアクターを作動させるための必要な成分等の必要資源を含む製造コストを増加させる。その上、安定性の欠如は、mAbの「保管寿命」に大きな影響を及ぼす。劣化したmAbは効力が低くなる可能性があり、断片化したmAbは免疫学的リスクを表す可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、mAbの安定性及び生産力価を向上させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様では、本明細書では、第1抗体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、グリシン、アラニン又はセリンを重鎖56位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、第2抗体は非置換第1抗体より安定である、方法が提供される。例えば、グリシン又はセリンは、重鎖56位で置換されてよい。例えば、グリシン又はアラニンは、重鎖56位で置換されてよい。例えば、グリシンは、重鎖56位で置換されてよい。
【0007】
第2態様では、本明細書では、第1抗体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、疎水性アミノ酸を第1抗体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、第2抗体は非置換第1抗体より安定である、方法が提供される。疎水性アミノ酸残基の例としては、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン及びバリンが挙げられる。例えば、疎水性アミノ酸残基は、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン若しくはバリンを含み得るか、又はそれらから成る可能性がある。例えば、疎水性アミノ酸残基は、フェニルアラニン、ロイシン若しくはバリンを含み得るか、又はそれらから成る可能性がある。
【0008】
第3態様では、本明細書では、第1抗体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン又はバリンを第1抗体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、第2抗体は非置換第1抗体より安定である、方法が提供される。例えば、フェニルアラニン、ロイシン又はバリンは、重鎖80位で置換されてよい。例えば、イソロイシン又はメチオニンは、重鎖80位で置換されてよい。例えば、イソロイシンは、重鎖80位で置換されてよい。例えば、メチオニンは、重鎖80位で置換されてよい。
【0009】
これら最初の3つの態様の下位態様では、第2抗体の安定性の増加は、細胞培養中の力価の増加、細胞培養からの収率の増加、精製後の純度の増加、高分子量種の減少、融点温度の上昇、凝集温度の上昇及び融解開始温度の上昇から成る群から選択される少なくとも1つによって証明される。幾つかの下位態様では、力価の増加は、Octet Forte Bio機器を使用してプロテインA被覆プローブチップへの結合速度が測定される;及び/又は収率の増加は、プロテインA若しくはプロテインG捕捉によって測定される;及び/又は純度の増加は、精製タンパク質のSECによって測定される;及び/又は高分子量種の減少は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び各分子量についての各ピークの曲線下面積によって測定される;及び/又は融点温度の上昇は、示差走査蛍光測定法(DSF)又は示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される;及び/又は凝集温度の上昇は、DSFによって測定される;及び/又は融解開始温度の上昇はDSFによって測定される。
【0010】
第1態様の幾つかの下位態様では、第2抗体は、重鎖80位(AHo番号付け)で疎水性アミノ酸残基と更に置換される。例えば、疎水性アミノ酸残基は:アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン若しくはバリンを含み得るか、又はそれらから成る可能性がある。例えば、疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択され得る。第1態様の幾つかの下位態様では、第2抗体は、80位(AHo番号付け)でメチオニンと更に置換されるか、又は、代わりに、第2抗体は、80位(AHo番号付け)でイソロイシンと更に置換される。第1態様の幾つかの下位態様では、第2抗体は、80位(AHo番号付け)でアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン又はバリンと更に置換される。第1態様の幾つかの下位態様では、第2抗体は、80位(AHo番号付け)でフェニルアラニン、ロイシン又はバリンと更に置換される。
【0011】
第2態様及び第3態様の幾つかの下位態様では、第2抗体は、56位(AHo番号付け)でグリシン、アラニン又はセリンと更に置換される。第2態様及び第3態様の幾つかの下位態様では、第2抗体は、56位(AHo番号付け)でグリシン又はアラニンと更に置換される。第2態様及び第3態様の幾つかの下位態様では、第2抗体は、56位(AHo番号付け)でグリシン又はセリンと更に置換される。第2態様及び第3態様の幾つかの下位態様では、第2抗体は、56位(AHo番号付け)でグリシンと更に置換される。
【0012】
これらの最初の3つの態様では、第1抗体は、例えば、ヒト抗体又はヒト化抗体等のモノクローナル抗体である。更にその上、第1抗体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体から成る群から選択されるIgG抗体等のIgG抗体である。つまり、IgG抗体はIgG1抗体であり得、IgG抗体はIgG2抗体であり得、IgG抗体はIgG3抗体であり得、及びIgG抗体はIgG4抗体であり得る。
【0013】
第4態様では、本明細書では、第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体変異体を作り出すために、グリシン、アラニン又はセリンを重鎖56位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、第2抗体変異体は非置換第1抗体変異体より安定である、方法が提供される。例えば、グリシン又はセリンは、重鎖56位で置換され得る。例えば、グリシン又はアラニンは、重鎖56位で置換され得る。例えば、グリシンは、重鎖56位で置換され得る。
【0014】
第5態様では、本明細書では、第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体変異体を作り出すために、疎水性アミノ酸残基(アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン又はバリン等)を第1抗体変異体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、第2抗体変異体は非置換第1抗体変異体より安定である、方法が提供される。例えば、疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン若しくはバリンを含み得るか、又はそれらから成り得る。例えば、疎水性アミノ酸残基は、メチオニン若しくはイソロイシンを含み得るか、又はそれらから成り得る。
【0015】
第6態様では、本明細書では、第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体変異体を作り出すために、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン又はバリンを第1抗体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、第2抗体変異体は非置換第1抗体変異体より安定である、方法が提供される。例えば、フェニルアラニン、ロイシン又はバリンは、重鎖80位で置換され得る。例えば、メチオニン又はイソロイシンは、重鎖80位で置換され得る。例えば、メチオニンは、重鎖80位で置換され得る。例えば、イソロイシンは、重鎖80位で置換され得る。
【0016】
これら第4、第5及び第6態様の下位態様では、第2抗体変異体の安定性の増加は、細胞培養中の力価の増加、細胞培養からの収率の増加、精製後の純度の増加、高分子量種の減少、融点温度の上昇、凝集温度の上昇及び融解開始温度の上昇から成る群から選択される少なくとも1つによって証明される。幾つかの下位態様では、力価の増加は、Octet Forte Bio機器を使用してプロテインA被覆プローブチップへの結合速度が測定される;及び/又は収率の増加は、プロテインA若しくはプロテインG捕捉によって測定される;及び/又は純度の増加は、精製タンパク質のSECによって測定される;及び/又は高分子量種の減少は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び各分子量についての各ピークの曲線下面積によって測定される;及び/又は融点温度の上昇は、示差走査蛍光測定法(DSF)又は示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される;及び/又は凝集温度の上昇は、DSFによって測定される;及び/又は融解開始温度の上昇はDSFによって測定される。
【0017】
第4態様の幾つかの下位態様では、第2抗体変異体は、重鎖80位(AHo番号付け)で疎水性アミノ酸残基と更に置換される。例えば、疎水性アミノ酸残基は:アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン及びバリンから成る群から選択され得る。例えば、疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択され得る。第4態様の幾つかの下位態様では、第2抗体変異体は、80位(AHo番号付け)でメチオニンと更に置換されるか、又は代わりに第2抗体は、80位(AHo番号付け)でイソロイシンと更に置換される。第4態様の幾つかの下位態様では、第2抗体変異体は、80位(AHo番号付け)でアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン又はバリンと更に置換される。第4態様の幾つかの下位態様では、第2抗体変異体は、80位(AHo番号付け)でフェニルアラニン、ロイシン又はバリンと更に置換される。
【0018】
第5態様及び第6態様の幾つかの下位態様では、第2抗体変異体は、56位(AHo番号付け)でグリシン、アラニン又はセリンと更に置換される。例えば、第2抗体変異体は、56位でグリシン又はアラニンと置換され得る。例えば、第2抗体変異体は、56位でグリシン又はセリンと置換され得る。例えば、第2抗体変異体は、56位でグリシンと置換され得る。
【0019】
これらの第4、第5及び第6態様の幾つかの下位態様では、第1抗体変異体は、二重特異性又は三重特異性抗体等の多重特異性抗体である。これらの第4、第5及び第6態様の幾つかの下位態様では、第1抗体変異体は、抗原に結合し得る抗体断片であり;抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F’(ab)2断片、Fv断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、バイパラトピックペプチド、ドメイン抗体(dAb)、CDRグラフト化抗体、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、リニア抗体;キレート化組み換え抗体、トリボディ、バイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、単一ドメイン抗体及びVHH含有抗体から成る群から選択され得る。
【0020】
更にその上、これらの第4、第5及び第6態様では、第1抗体変異体は、例えば、ヒト抗体変異体又はヒト化抗体変異体等のモノクローナル抗体変異体である。更にその上、第1抗体変異体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体変異体から成る群から選択されるIgG抗体変異体等のIgG抗体変異体である。つまり、IgG抗体変異体はIgG1抗体変異体であり得、IgG抗体変異体はIgG2抗体変異体であり得、IgG抗体変異体はIgG3抗体変異体であり得、及びIgG抗体変異体はIgG4抗体変異体であり得る。
【0021】
第7態様では、本明細書では、第1抗体又は第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、
a.第1抗体又は抗体変異体の抗体部分の重鎖についての生殖系列原アミノ酸配列を同定する工程;
b.第1抗体又は抗体変異体の抗体部分の重鎖56位(AHo番号付け)及び重鎖80位(AHo番号付け)でアミノ酸残基を同定する工程;及び
c.第1抗体又は抗体変異体の抗体部分の生殖系列原アミノ酸配列から同定された残基を重鎖56位及び80位で置換し、それにより第2抗体又は第2抗体変異体を作り出す工程を含む方法であり、
第2抗体は、非置換第1抗体より安定であるか;又は第2抗体変異体は、非置換第1抗体変異体より安定である、方法が提供される。
【0022】
この第7態様の下位態様では、第2抗体又は第2抗体変異体の安定性の増加は、細胞培養中の力価の増加、細胞培養からの収率の増加、精製後の純度の増加、高分子量種の減少、融点温度の上昇、凝集温度の上昇及び融解開始温度の上昇から成る群から選択される少なくとも1つによって証明される。この第7態様の下位態様では、第2抗体又は第2抗体変異体の安定性の増加は、細胞培養中の力価の増加、細胞培養からの収率の増加、精製後の純度の増加、高分子量種の減少、融点温度の上昇、凝集温度の上昇及び融解開始温度の上昇から成る群から選択される少なくとも1つによって証明される。幾つかの下位態様では、力価の増加は、Octet Forte Bio機器を使用してプロテインA被覆プローブチップへの結合速度が測定される;及び/又は収率の増加は、プロテインA若しくはプロテインG捕捉によって測定される;及び/又は純度の増加は、精製タンパク質のSECによって測定される;及び/又は高分子量種の減少は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び各分子量についての各ピークの曲線下面積によって測定される;及び/又は融点温度の上昇は、示差走査蛍光測定法(DSF)又は示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される;及び/又は凝集温度の上昇は、DSFによって測定される;及び/又は融解開始温度の上昇はDSFによって測定される。
【0023】
この第7態様では、第1抗体変異体は、二重特異性又は三重特異性抗体等の多重特異性抗体である。これらの第4、第5及び第6態様の幾つかの下位態様では、第1抗体変異体は、抗原に結合し得る抗体断片であり;抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F’(ab)2断片、Fv断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、バイパラトピックペプチド、ドメイン抗体(dAb)、CDRグラフト化抗体、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、リニア抗体;キレート化組み換え抗体、トリボディ、バイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、単一ドメイン抗体及びVHH含有抗体から成る群から選択され得る。
【0024】
更にその上、この第7態様では、第1抗体変異体は、例えば、ヒト抗体変異体又はヒト化抗体変異体等のモノクローナル抗体変異体である。更にその上、第1抗体変異体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体変異体から成る群から選択されるIgG抗体変異体等のIgG抗体変異体である。つまり、IgG抗体変異体はIgG1抗体変異体であり得、IgG抗体変異体はIgG2抗体変異体であり得、IgG抗体変異体はIgG3抗体変異体であり得、及びIgG抗体変異体はIgG4抗体変異体であり得る。
【0025】
更に、この第7態様では、第1抗体は、例えば、ヒト抗体又はヒト化抗体等のモノクローナル抗体である。更にその上、第1抗体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体から成る群から選択されるIgG抗体等のIgG抗体である。つまり、IgG抗体はIgG1抗体であり得、IgG抗体はIgG2抗体であり得、IgG抗体はIgG3抗体であり得、及びIgG抗体はIgG4抗体であり得る。
【0026】
第1~第8態様の何れかの幾つかの下位態様では、第2抗体又は第2抗体変異体は、重鎖の56位及び80位(AHo番号付け)の下記の残基対:GF、GI、GL、GT、GV、AF、AI、AL、AV、AA、AM、SA、SI又はSTそれぞれの何れか1つと置換されている。一例として、この命名法については、「GF」は重鎖56位での「G」及び重鎖80位(AHo番号付け)での「F」を表すことに留意されたい。第1~第8態様の何れかの幾つかの下位態様では、第2抗体又は第2抗体変異体は、重鎖の56位及び80位(AHo番号付け)の下記の残基対:GF、GL、GV、AF、AL又はAVそれぞれの何れか1つと置換されている。そのような置換は、第1抗体(又は第1抗体変異体)と比較して高い力価及び/又は高いTmを有し得る。第1~第8態様の何れかの幾つかの下位態様では、第2抗体又は第2抗体変異体は、重鎖の56位及び80位(AHo番号付け)の下記の残基対:AA、AL、AM、AV、GF、GL、GT、SA又はSTそれぞれの何れか1つと置換されている。そのような置換は、第1抗体(又は第1抗体変異体)と比較して高い力価を有し得る。第1~第8態様の何れかの幾つかの下位態様では、第2抗体又は第2抗体変異体は、重鎖の56位及び80位(AHo番号付け)の下記の残基対:AI、AV、GI、SI又はGVそれぞれの何れか1つと置換されている。そのような置換は、第1抗体(又は第1抗体変異体)と比較して高いTmを有し得る。第1~第8態様の何れかの幾つかの下位態様では、第2抗体又は第2抗体変異体は、重鎖の56位及び80位(AHo番号付け)の下記の残基対:GF、GL、GT、GV、AF、AL、AV、AA、AM、AV、SA及びSTそれぞれの何れか1つと置換されている。そのような置換は、第1抗体(又は第1抗体変異体)と比較して高い力価を有し得る。第1~第8態様の何れかの幾つかの下位態様では、第2抗体又は第2抗体変異体は、重鎖の56位及び80位(AHo番号付け)の下記の残基対:GF、GI、GL、GV、AF、AL、AV、AI又はSIそれぞれの何れか1つと置換されている。そのような置換は、第1抗体(又は第1抗体変異体)と比較して高いTmを有し得る。
【0027】
第8態様では、本明細書では、任意の先行態様によって生成された第2抗体又は第2抗体変異体を用いて処方された医薬組成物を製造する方法が提供される。
【0028】
第9態様では、本明細書では、最初の7つの態様の何れかによって製造された抗体又は抗体変異体が提供される。
【0029】
第10態様では、本明細書では、最初の7つの態様の何れかによって製造された抗体又は抗体変異体を含む医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A-1D】2つのモノクローナル抗体:操作モノクローナル抗体及びその親モノクローナル抗体の様々な特徴を示している一連のグラフである。
図2A】mAb1について、HC:56でのアラニン及びグリシンが最高力価を有したことを示すグラフである。HC80残基は、X軸ラベルの上の列に示されている。HC56残基は、X軸ラベルの下の列に示されている。
図2B】mAb1について、HC:80でのフェニルアラニン、ロイシン及びバリンが最高力価を有したことを示すグラフである。HC56残基は、X軸ラベルの上の列に示されている。HC80残基は、X軸ラベルの下の列に示されている。
図3A】mAb1について、高力価を備えるHC56及びHC80変異体が高いTmを有したことを示しているグラフである。HC80残基は、X軸ラベルの上の列に示されている。HC56残基は、X軸ラベルの下の列に示されている。
図3B】mAb1について、HC80でフェニルアラニン、ロイシン又はバリンを備える分子が65℃より高いTmを有したことを示しているグラフである。HC56残基は、X軸ラベルの上の列に示されている。HC80残基は、X軸ラベルの下の列に示されている。
図4】mAb1について、最高分子量(HMW)レベルは、SECによって決定されるように、5%未満であったことを示しているグラフである。HC80残基は、X軸ラベルの上の列に示されている。HC56残基は、X軸ラベルの下の列に示されている。
図5】mAb2がHC56及びHC80で疎水性残基等の残基を備えて明確に発現することを示しているグラフである。HC80残基は、X軸ラベルの上の列に示されている。HC56残基は、X軸ラベルの下の列に示されている。
図6】mAb2のHC56及びHC80での置換について、Tmが力価と相関することを示しているグラフである。HC80残基は、X軸ラベルの上の列に示されている。HC56残基は、X軸ラベルの下の列に示されている。
図7】mAb2のHC56及びHC80での置換についての高分子量種を示しているグラフである。HC80残基は、X軸ラベルの上の列に示されている。HC56残基は、X軸ラベルの下の列に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
驚くべきことに、mAbの抗体重鎖残基56(AHo番号付け;Kabat番号付けでは残基49)がグリシンに改変される場合、抗体は、その位置で頻回に観察されるアラニン残基を備える分子に比して培養中/製造中のより高い力価及びより高いTmを有する。この作用は、多数のmAb及び生殖系列に渡る比較において観察されており、その残基が生殖系列であることとは関係がない。この観察は、残基56(AHo番号付け)でのアラニンがIgG4 mAbの発現力価を改善することを報告しているMason et al.(Mason et al 2012)によって公開された研究とは対照的である。更に、力価は、分子依存方法で重鎖80位(AHo番号付け)でのイソロイシン残基に対してメチオニン残基を用いると重度に影響を受ける。
【0032】
定義
AHo番号付けスキームは、構造ベースの番号付けスキームであり、このスキームは、整列したドメインの平均的構造からの偏差を最小限に抑えるためにCDR領域にギャップを導入する(Honegger&Pluckthun 2001)。AHo番号付けスキームでは、異なる抗体における構造的に同等の位置は、同じ残基番号を有するであろう。
【0033】
「抗体」又は「免疫グロブリン」は、それぞれが可変ドメイン(V)及び定常ドメイン(C)を含む、2本の重鎖及び2本の軽鎖から成る四量体糖タンパク質を指す。「重鎖」及び「軽鎖」は、実質的に完全長のカノニカル免疫グロブリン軽鎖及び重鎖を指す;重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(VL及びVC)は、抗体のV領域を構成し、抗原結合及び特異性に寄与する。「抗体」には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体及びヒト化抗体が含まれる。軽鎖は、κ(カッパ)及びλ(ラムダ)軽鎖として分類され得る。重鎖は、典型的には、μ(ミュー)、δ(デルタ)、γ(ガンマ)、α(アルファ)又はε(イプシロン)として分類され、抗体のアイソタイプは、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとして定義される。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む幾つかのサブクラスを有する。IgMは、IgM1及びIgM2を含むサブクラスを有する。IgAは、同様にIgA1及びIgA2を含むサブクラスに更に分けられる。完全長の軽鎖及び重鎖内では、典型的には、可変領域及び定常領域は約12個以上のアミノ酸から成る「J」領域によって結合されており、重鎖は、約10個の更なるアミノ酸から成る「D」領域も更に含む。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、典型的には、抗原結合部位を形成する。「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指すが、即ち、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る自然に生じる可能性がある突然変異を除けば同一である。
【0034】
抗体変異体には、カノニカル四量体抗体の構造に変化を有する抗体断片及び抗体様タンパク質が含まれる。典型的な抗体変異体としては、定常領域に変化を有するV領域を含むか、又は代わりに、任意選択的に非カノニカル法でV領域を定常領域に付加することが挙げられる。例としては、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体)、抗原に結合することができる抗体断片(例えば、Fab’、F’(ab)2、Fv、一本鎖抗体、二重特異性抗体、ダイアボディ)、それらが所望の生物学的活性を示す限り、上記を含むバイパラトピックペプチド及び組み換えペプチドが挙げられる。
【0035】
多重特異性抗体は、2つ以上の抗原又はエピトープを標的とする。例えば、「二重特異性(bispecific)」、「二重特異性(dual-specific)」又は「二官能性」抗体は、2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合又はFab’断片の連結を含む様々な方法によって生成することができる(Kostelny et al 1992,Songsivilai&Lachmann 1990)(Kostelny et al 1992,Songsivilai&Lachmann 1990,Wu&Demarest 2018)。二重特異性抗体の2つの結合部位は、それぞれ異なるエピトープに結合する。同様に、三重特異性抗体は、3つの結合部位を有し、3つのエピトープに結合する。三重特異性抗体を作成する数種の方法は、公知であり、更に開発中である(Wu&Demarest 2018,Wu et al 2018)。
【0036】
抗体断片には、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)断片、CDRグラフト化抗体、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体の断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、リニア抗体;キレート化組み換え抗体、トリボディ若しくはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、単一ドメイン抗体(ラクダ化抗体を含む)、VHH含有抗体、又はこれらの変異体若しくは誘導体、並びに抗体が所望の結合活性を保持する限り、ポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチド、例えば1、2、3、4、5又は6個のCDR配列を含む抗体の抗原結合部分が含まれる。
【0037】
方法の概観
本明細書に開示した方法は、抗体(又は改変抗体)中の重鎖の56位及び80位(AHo番号付け)での残基又はこれらの位置での生殖系列原始アミノ酸残基を同定する工程、56位の残基をグリシン、アラニン若しくはセリンに、及び/又は残基80を疎水性残基(メチオニン若しくはイソロイシン等)又はアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン若しくはバリンの何れかに変化(突然変異)させる工程、及び抗体の様々な特性を測定する様々な技術の何れかを用いて、改変抗体の安定性を評価する工程を含む。幾つかの態様では、重鎖56位の残基は、グリシンに変化させられる。
【0038】
下記の考察は、IgG’(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)を含む抗体だけではなく、更に上記の「定義」のセクションに記載した抗体変異体にも適用可能である。
【0039】
56位及び/又は80位(AHo番号付け)の残基を同定する工程
第1工程では、Abの重鎖における56位及び/又は80位(AHo番号付け)のアミノ酸残基が同定される。56位が既にグリシンである場合は、Abがこの位置でのそれ以上の操作を必要としないので、それ以上の同定は必要とされない。殆どの場合、抗体ポリヌクレオチド配列はクローニング及び配列決定され、配列はその後アミノ酸配列に翻訳される。代わりに、抗体若しくはその領域(例えば、可変領域)からの関連アミノ酸配列は、直接タンパク質配列決定によって決定され得る。幾つかの実施形態では、56位が既にグリシン、アラニン又はセリンである場合は、Abがこの位置でのそれ以上の操作を必要としないので、それ以上の同定は必要とされない。幾つかの実施形態では、56位が既にグリシン又はセリンである場合は、Abがこの位置でのそれ以上の操作を必要としないので、それ以上の同定は必要とされない。幾つかの実施形態では、56位が既にグリシン又はアラニンである場合は、Abがこの位置でのそれ以上の操作を必要としないので、それ以上の同定は必要とされない。幾つかの実施形態では、56位が既にグリシンである場合は、Abがこの位置でのそれ以上の操作を必要としないので、それ以上の同定は必要とされない。
【0040】
代わりに、関心対象のモノクローナル抗体又はその結合断片をコードするゲノム若しくはcDNAは、従来の手順を使用して、(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)このような抗体を産生する細胞から単離して、配列決定することができる。
【0041】
DNAシーケンシング法はSanger et al(Sanger et al 1977)によって記載された方法又は高スループットシーケンシング法、例えばパイロシーケンシング法(Margulies et al 2005,Nyren&Lundin 1985,Ronaghi et al 1998)、合成によるシーケンシング法(Bentley et al 2008)、イオン半導体法(Rothberg et al 2011)、単一分子リアルタイムシーケンシング法(Eid et al 2009)、オリゴライゲーション検出によるシーケンシング法(SOLiD)(Valouev et al 2008)及びナノポアシーケンシング法(Branton et al.(Branton et al 2008))等の当分野において公知の任意の技術によって実施され得る。
【0042】
ポリヌクレオチド配列が得られると、オープンリーディングフレームが決定され、遺伝コードに従ってアミノ酸配列が推定される。AHo番号付けは、56位及び/又は80位を決定するために適用され、アミノ酸残基が決定される。
【0043】
抗体の直接タンパク質配列決定も又可能である。タンパク質配列決定法としては、例えば、質量分析法を使用することによって、並びにタンパク質シーケンサーを用いるEdman分解アプローチが含まれる。Edman分解法の場合には、標的抗体は50~70アミノ酸より長い可能性が高いので、抗体は、エンドペプチダーゼ(トリプシン若しくはペプシン等)を用いて、又は臭化シアン、BNPS-skatolet、ギ酸若しくはクロラミンTを用いて化学的に消化することができる。Edman分解法についての断片の標的サイズは、50~70アミノ酸である。抗体がいったん断片化されていると、ペプチドは、Edman分解反応を実施し、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)等の検出法によって各遊離アミノ酸を読み取るタンパク質シークエネーターを用いる自動化法で分析され得る。質量分析法については、抗体は、プロテアーゼ(一般的にはトリプシン)を用いて断片化され、断片は液体クロマトグラフィー(LC)によって分離され、断片はde novoペプチドシーケンシングアルゴリズムを用いる質量分析法を用いて分析される;このアプローチは、Medzihradszky and Chalkley(Medzihradszky&Chalkley 2015)によって考察されている。
【0044】
上述したように、配列がいったん決定され、AHo番号付けが適用されると、56位及び/又は80位のアミノ酸が決定され得る。
【0045】
残基の標的残基への操作
抗体重鎖のAHo56位及び/又は80位の残基を同定するために選択された方法とは無関係に、ポリヌクレオチドレベルの残基を突然変異させるべきかどうかが決定される。幾つかの実施形態では、56位の残基がグリシンではない場合は、残基は、変化させるための候補である。一例として、最も一般的なシナリオでは、56位の残基は、グリシンではない場合はアラニンである。従って、A56G突然変異を起こすことができる。同様に、80位については、残基が疎水性残基ではない(又はアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン若しくはバリンの何れかではない)場合は、残基は疎水性残基(又は、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン若しくはバリン、例えば、メチオニンの何れか)に変化させられる候補である。一例として、幾つかの下位態様では、この位置(80)の場合は、残基がメチオニンではない場合は、残基は、メチオニンに変化させられる候補である。一例として、幾つかの実施形態では、この位置(80)の場合は、残基がイソロイシンではない場合は、残基は、イソロイシンに変化させられる候補である。この位置(80)の場合は、残基が例えばメチオニン若しくはイソロイシン等の疎水性残基である場合でさえ、この位置は依然として様々な疎水性残基(これらのアミノ酸(Met、Ile)の何れかは培養中の発現及び安定性を増加させることができるので、それぞれイソロイシン若しくはメチオニン等)へ変化させるための候補である。幾つかの態様では、この位置(80)の場合には、残基は、その残基が既に、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン若しくはバリン又は様々な疎水性残基である場合でさえ、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン若しくはバリン、又は疎水性残基(アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン若しくはメチオニン等)へ変化させることができる。56位の残基がグリシンではない場合は、その残基は、更に又例えばグリシンに変化させられる候補であり得る。疎水性アミノ酸残基の例としては、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン及びバリンが挙げられる。幾つかの実施形態では、本明細書で記載する任意の方法については、重鎖80位の場合には、疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択される。
【0046】
任意の公知の方法を使用すると、関心対象の抗体をコードするポリヌクレオチドを修飾することができる。56位及び/又は80位のアミノ酸残基を決定した後に、核酸配列は、グリシン(又はアラニン若しくはセリン)が56位でコードされるように修飾される、及び/又はアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン若しくはバリン(又は疎水性アミノ酸残基、又はメチオニン若しくはイソロイシン)は、80位でコードされる。この変化を作製するために、56位及び/又は80位のアミノ酸をコードするコドンが同定され、及び遺伝コードを示す表1に従って、1つ又は複数の突然変異が選択される。
【0047】
【表1】
【0048】
殆どのアミノ酸は、表1に示したように2個以上のコドンによってコードされる。例えば、アラニンは、4個のコドン:GCU、GCC、GCA及びGCGによってコードされる;しかしながら、Trp及びMetだけは単一コドン(それぞれ、TGG及びATG)によってコードされる。1つの突然変異又は2つ以上の突然変異を選択する場合、例えば、コドンバイアスに関する考察は、(Quax et al 2015)によって説明され得る。
【0049】
標的化アミノ酸置換を生じさせる部位特異的突然変異誘発及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)媒介性突然変異誘発を含む標準技術を使用すると、本開示の抗体をコードするヌクレオチド配列において突然変異を導入することができる。例えばGeneArt(商標)システム及びPhusionキット(ThermoFisher Scientific;Waltham,MA);Q5(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(New England BioLabs;Ipswich,MA);及びCivic Bioscience(Montreal,Canada)からのカスタマイズ型キット等の核酸内への突然変異の導入を実施できる市販のキットも又利用可能である。
【0050】
代わりに、ポリヌクレオチド断片は、当分野において公知の技術を用いて合成することができ、完全長コーディング配列を含むポリヌクレオチド内で置換され得る。幾つかの場合には、標的化突然変異を備える全コーディング配列が合成される。
【0051】
任意の場合には、アミノ酸突然変異法は、それが部位突然変異を効果的に実現し得れば、特別には限定されない。
【0052】
操作ポリヌクレオチドを用いた細胞選択及びトランスフェクション
抗体を生成するための組み換えDNA法は、周知である。抗体をコードするDNA、例えば、VHドメイン、VLドメイン、一本鎖可変断片(scFv)又はそれらの断片及びそれらの組み合わせをコードするDNA(標的ポリヌクレオチド)は、好適な発現ベクター内に挿入することができ、これらは次に、所望の抗体を得るために、さもなければ抗体を生成しない好適な宿主細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)細胞、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞内にトランスフェクトすることができる。
【0053】
例えば、プロモーターに連結した標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する、好適な発現ベクターは当技術分野において公知である。そのようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含み得、抗体の可変ドメインは、重鎖、全軽鎖又は全重鎖及び軽鎖(又はそれらの断片)の両方を発現させるためにそのようなベクター内にクローン化され得る。発現ベクターは、従来型技術によって宿主細胞に転移させることができ、トランスフェクト細胞は、抗体を生成するために培養され得る。
【0054】
機能的抗体又は抗体断片を発現できるか、又は発現するように操作されている任意の細胞株を使用することができる。例えば、好適な哺乳動物細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣(CH)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト幹細胞癌細胞(例えば、Hep G2)及びヒト上皮腎293細胞を含むアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Manassas,VA)から入手できる不死化細胞株が挙げられる。更にその上、細胞株又は宿主系は、抗体の正確な修飾及びプロセッシングを保証するために選択することができる。遺伝子産物の一次産物、グリコシル化及びリン酸化の適正なプロセッシングのための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用することができる。これらには、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT20及びT47D、NS0(任意の機能的免疫グロブリン鎖を内生的には産生しないマウス骨髄腫細胞株)、SP20、CRL7030及びHsS78Bst細胞が挙げられる。ヒトリンパ球を不死化することによって開発されたヒト細胞株も又使用され得る。モノクローナル抗体を組み換え的に生成するために、ヒト細胞株PER.C6(登録商標)(Janssen;Titusville,NJ)が使用され得る。同様に使用され得る非哺乳動物細胞の例としては、昆虫細胞(例えば、Sf21/Sf9、イラクサキンウワバ(Trichoplusia ni)Bti-Tn5bl-4)、又は酵母細胞(例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)(例えばS.セレビジアエ(S.cerevisiae)、ピチア(Pichia)属等)、植物細胞又はニワトリ細胞が挙げられる。
【0055】
抗体は、従来型方法を用いて細胞株内で安定に発現させられ得る。安定性発現は、組み換えタンパク質の長期の高収率産生のために使用することができる。安定性発現のために、宿主細胞は、発現制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)を含む適切な操作ベクター及び選択性マーカー遺伝子を用いて形質転換され得る。高収率で安定性細胞株を生成する方法は、当技術分野において公知であり、試薬は市販で入手できる。一過性発現も又従来型方法を用いて実施することができる。
【0056】
抗体を発現する細胞株は、細胞培養培地中において、及び抗体の発現及び生成を生じさせる培養条件下で維持することができる。細胞培養培地は、例えば、DMEM又はHamのF12を含む、市販で入手できる培地調製物に基づくことができる。更に、細胞培養培地は、細胞増殖及び生物学的タンパク質発現の両方における増加を指示するために修飾することができる。当然ながら、細胞培養培地は、細胞増殖を促進するために処方される細胞培養増殖培地又は組み換えタンパク質産生を促進するために処方される細胞産生培地を含む特定細胞培養のために最適化することができる。
【0057】
多数の細胞培養培地及び細胞培養栄養素及びサプリメントは公知である。例えば、好適な規定培地としては、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DME/F12、最小必須培地(MEM)、イーグル基礎培地(BME)、RPMI 1640、F-10、F-12、α-最小必須培地(α-MEM)、グラスゴーの最小必須培地(G-MEM)、PF CHO及びイスコフ改変ダルベッコ培地が挙げられる。使用できる基礎培地の他の例としては、BME基礎培地、ダルベッコ改変イーグル培地が挙げられる。
【0058】
基礎培地は、培地が血清を含有しない(例えば、胎仔ウシ血清(FBS))又は動物性タンパク質非含有培地又は化学的に定義された培地であることを意味する、血清非含有であり得る。基礎培地は、例えば様々な無機及び有機バッファー、界面活性剤及び塩化ナトリウム等の基礎培地中で見出される所定の非栄養成分を除去するために、改変することができる。細胞培養培地は、(改変又は非改変)基礎細胞培地及び下記の:鉄源、組み換え成長因子、バッファー、界面活性剤;オスモル濃度調整剤;エネルギー源;及び非動物性加水分解産物の内の少なくとも1種を含有し得る。更に、改変基礎細胞培地は、任意選択的に、所定のアミノ酸、ビタミン類又はアミノ酸及びビタミン類の両方の組み合わせを含有し得る。改変基礎培地は、グルタミン、例えばL-グルタミン及び/又はメトトレキセートを更に含有し得る。
【0059】
精製
抗体が生成されると、抗体は、従来型方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特に特異的抗原、プロテインA、プロテインGに対する親和性又はサイズ排除カラムクロマトグラフィーによって)、遠心分離、吸収率較差溶解度法によって、又はタンパク質精製のための任意の他の標準技術によって精製され得る。更に、抗体は、精製を促進するために異種ポリペプチド配列(「タグ」)に融合させることができる。
【0060】
安定性を評価する
培養中の力価
操作ポリヌクレオチドを発現する細胞培養からの上清は、例えば、Octet(登録商標)プラットフォーム機器(Pall ForteBio;Fremont,CA)を用いて分析することができる。Octet(登録商標)プラットフォームは、抗ヒトIgG定量(AHQ)、抗マウスIgG定量(AMQ)、抗FLAG(FLG)、プロテインA(ProA)、プロテインG(ProG)、プロテインL(ProL)、抗Penta-His(HIS)、ストレプトアビジン(SA)、抗ヒトFab-cH1(FAb)、抗GST(GST)及びNi-NTA(NTA)のためのバイオセンサーを含む多数の様々な分析物のためのバイオセンサーを提供する。他の選択肢としては、伝統的なELISAフォーマット並びにHPLC及びラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。
【0061】
融解温度(示差走査蛍光分析法(DSF)及び示差走査熱量測定法(DSC))
示差走査蛍光分析法(DSF)(タンパク質サーマルシフトアッセイ;(Lo et al 2004,Pantoliano et al 2001,Semisotnov et al 1991))としても公知である)による熱安定性は、従来法により使用してタンパク質の融解温度Tmを使用して決定することができる。DSFは、折り畳まれていない(変性)タンパク質に優先的に結合する蛍光色素を利用する。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)機器は、色素の蛍光における変化を測定することによって熱誘導性タンパク質変性を監視するために使用されることが多い。有用な色素の例としては、SYPRO(登録商標)Orange(Thermo Fisher Scientific;Waltham,MA)、8-アニリノナフタレン-1-スルホン酸(ANS)、N-[4-(7-ジエチルアミノ-4-メチル-3-クマリニル)フェニル]マレイミド(CPM)及び4-(ジシアノビニル)ジュロリジン(DCVJ)が挙げられる。Lo et al.の方法は、一般に使用されるRE-PCR機器及びSYPRO(登録商標)Orange(Lo et al 2004)を利用して使用されることが多い。
【0062】
一般に、分析される色素及びタンパク質は混合され、融解曲線が決定され、融解曲線からTmが計算される。
【0063】
DSFに加えて、タンパク質のTmを決定するための任意の公知の技術を使用することができる。例えば、内因性蛍光シグナル(トリプトファンから等)を利用する技術並びに光散乱法等のタンパク質フォールディング/アンフォールディングを監視する様々なモードを使用することができる。他の技術としては、高速パラレルタンパク質分解(Minde et al 2012)及び細胞サーマルシフトアッセイ(Jafari et al 2014)が挙げられる。
【0064】
タンパク質のTmを決定するためには、示差走査熱量測定法(DSC)も又使用できる(Makhatadze 1998)が、DSCは更にアンフォールディングのモードに関する情報も提供できるので、複数のTm値を得ることができる。
【0065】
一般に、主題タンパク質のスペクトルは、タンパク質を定量するための分光光度計を用いて決定される(又は代わりに、タンパク質は、異なる方法を用いて定量される)。次に、タンパク質は、分光光度計のDSCプログラムにかけられる。
【0066】
収率(プロテインAによって捕捉された抗体によって測定される)
浄化細胞培養上清から抗体を精製するための一般的プロセスは、プロテインA親和性クロマトグラフィー、その後に、アニオン及びカチオン交換クロマトグラフィーの組み合わせを用いる捕捉工程を含有する(Fahrner et al 2001,Kelley 2009)。
【0067】
タンパク質の定量は、当技術分野で知られた任意の方法を使用して実施することができる。これらには、トリプトファン及びチロシン残基の吸光度280nm(A280)(又は代わりに、205nmでの吸光度(A205)に基づいて、タンパク質主鎖を検出するUV-Vis分光法;Bradfordアッセイ(通常はクーマシーブリリアントブルーG-250色素の使用及び吸光度に基づいて);ビウレット試験由来アッセイ、例えばローリー及びビシンコニン酸(BCA)アッセイ;アミノ酸解析(改変アミノ酸の直接検出に依存する);ゲル電気泳動法(ゲルバンド強度によって観察される)又はタンパク質の色素標識化(従って色素シグナルの検出をタンパク質量に相関させる)が含まれ、色素の例としては、フルオレスカミン及びアミドブラック10Bが挙げられる。更に、HPLC法及びLC/MS法も又使用することができる。
【0068】
サンプルを保存して計測を促進するためには、例えばThermo Fisher Scientific(Wilmington,DE)から入手できるNanoDrop分光光度計を使用することができる。この装置は、タンパク質を定量するための数種のアプローチを促進する。
【0069】
サイズ排除カラムクロマトグラフィー(SEC)によって決定される高分子量(HMW)種及び主ピーク(MP)種
SECについてのプロテインA溶出物質の種を比較するための一般的プロセスが使用されるが、このプロセスでは、サイズに基づいて種を分離するためにデキストランポリマーの多孔性ビーズのカラムをタンパク質が通過させられる。HMW対MPのパーセント値は、SECピークの曲線下面積を測定することによって決定される。
【0070】
凝集(凝集T)及び融解の開始(融解の開始T又は融解開始T)
凝集Tは、示差走査蛍光分析法(DSF)によって測定され、300nmの励起波長及び350/330nmの発光を用いて30nmの凝集粒子が形成される温度が測定される。
【0071】
融解開始Tは、DSFによって測定され、350/330nmでの蛍光が測定される。開始Tは、350/330nm発光の第1誘導体が、折り畳まれたタンパク質が解かれ始まるレベルを表す基礎レベルを超えて上昇する温度である。
【0072】
医薬組成物製剤及び成分
本明細書に開示した方法によって生成した抗体及び抗体変異体は、患者に投与するために好適である医薬組成物に処方することができる。
【0073】
許容可能な医薬成分は、好ましくは、用いられる投与量及び濃度で患者にとって無毒である。医薬組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘度、清澄度、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解若しくは放出速度、吸着又は浸透性を変更、維持又は保護するための作用物質を含み得る。
【0074】
一般に、賦形剤は、それにより様々な化学的及び物理的ストレスに対してタンパク質を安定化させる機序に基づいて分類することができる。幾つかの賦形剤は、特定のストレスの効果を緩和するか、或いは特異的ポリペプチドの特定の感受性を調節する。その他の賦形剤は、タンパク質の物理的安定性及び共有結合安定性に対してより一般的な効果を有する。
【0075】
液体及び凍結乾燥タンパク質製剤の一般的賦形剤は、表2に示す(更に(Kamerzell et al 2011)を参照されたい)。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
他の賦形剤は、当技術分野において公知である(例えば、(Powell et al 1998)を参照されたい)。当業者は、生物薬剤の安定性の保持を促進する本発明の生物薬剤学的組成物を得るために、どの量又は範囲の賦形剤を任意の特定の調製物に含めてよいかを決定することができる。例えば、本発明の生物薬剤学的組成物に含めるべき塩の量及び種類は、最終溶液の所望のオスモル濃度(即ち、等張性、低張性又は高張性)並びに調製物に含められるべきその他の成分の量及びオスモル濃度に基づいて選択され得る。
【0079】
実施形態
以下の実施形態は、本明細書に開示した方法の例は非限定的であるとして提示する。実施例のセクションは、この実施形態のセクションに続く。
【0080】
実施形態1.第1抗体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、グリシン、アラニン又はセリンを重鎖56位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、第2抗体は非置換第1抗体より安定である方法。例えば、グリシンは、重鎖56位で置換されてよい。例えば、グリシン又はアラニンは、重鎖56位で置換されてよい。例えば、グリシン又はセリンは、重鎖56位で置換されてよい。
【0081】
実施形態2.グリシンが重鎖56位で置換される、実施形態1の方法。
【0082】
実施形態3.第2抗体は、重鎖80位(AHo番号付け)で疎水性アミノ酸残基と更に置換される、実施形態1又は2の何れか1つの方法。
【0083】
実施形態4.疎水性アミノ酸残基は:アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン及びバリンから成る群から選択される、実施形態3の方法。
【0084】
実施形態5.疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択される、実施形態3の方法。
【0085】
実施形態6.第2抗体は、80位(AHo番号付け)でメチオニンと更に置換される、実施形態1又は2の何れか1つの方法。
【0086】
実施形態7.第2抗体は、80位(AHo番号付け)でイソロイシンと更に置換される、実施形態1又は2の何れか1つの方法。
【0087】
実施形態8.第1抗体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、疎水性アミノ酸残基を第1抗体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、第2抗体は非置換第1抗体より安定である、方法。
【0088】
実施形態9.疎水性アミノ酸残基は:アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン及びバリンから成る群から選択される、実施形態8の方法。
【0089】
実施形態10.疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択される、実施形態8の方法。
【0090】
実施形態11.第1抗体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン又はバリンを第1抗体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、第2抗体は非置換第1抗体より安定である、方法。
【0091】
実施形態12.メチオニンは、第1抗体の重鎖80位で置換される、実施形態11の方法。
【0092】
実施形態13.イソロイシンは、第1抗体の重鎖80位で置換される、実施形態11の方法。
【0093】
実施形態14.第2抗体は、重鎖56位(AHo番号付け)でアラニン、グリシン又はセリンと更に置換される、実施形態8~13の何れか1つの方法。
【0094】
実施形態15.第2抗体は、重鎖56位(AHo番号付け)でアラニン又はグリシンと更に置換される、実施形態8~13の何れか1つの方法。
【0095】
実施形態16.第2抗体は、重鎖56位(AHo番号付け)でグリシンと更に置換される、実施形態8~13の何れか1つの方法。
【0096】
実施形態17.第2抗体の安定性の増加は、細胞培養中の力価の増加、細胞培養からの収率の増加、精製後の純度の増加、高分子量種の減少、融点温度の上昇、凝集温度の上昇及び融解開始温度の上昇から成る群から選択される少なくとも1つによって証明される、実施形態1~16の何れか1つの方法。
【0097】
実施形態18.力価の増加は、Octet Forte Bio機器を用いてプロテインA被覆プローブチップへの結合速度によって測定される、実施形態17の方法。
【0098】
実施形態19.収率の増加は、プロテインA又はプロテインG捕捉によって測定される、実施形態17の方法。
【0099】
実施形態20.純度の増加は、精製抗体のサイズ排除カラムクロマトグラフィー(SEC)によって測定される、実施形態17の方法。
【0100】
実施形態21.高分子量種の減少は、サイズ排除カラムクロマトグラフィー(SEC)及び各分子量での各ピークについての曲線下面積によって測定される、実施形態17の方法。
【0101】
実施形態22.融点温度の上昇は、示差走査蛍光分析法(DSF)又は示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される、実施形態17の方法。
【0102】
実施形態23.凝集温度の上昇は、DSFによって測定される、実施形態17の方法。
【0103】
実施形態24.融解開始温度の上昇は、DSFによって測定される、実施形態17の方法。
【0104】
実施形態25.第1抗体は、モノクローナル抗体である、実施形態1~24の何れか1つの方法。
【0105】
実施形態26.第1抗体は、ヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体である、実施形態1~25の何れか1つの方法。
【0106】
実施形態27.第1抗体は、IgG抗体である、実施形態1~26の何れか1つの方法。
【0107】
実施形態28.IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体から成る群から選択される、実施形態27の方法。
【0108】
実施形態29.IgG抗体は、IgG1抗体である、実施形態27の方法。
【0109】
実施形態30.IgG抗体は、IgG2抗体である、実施形態27の方法。
【0110】
実施形態31.IgG抗体は、IgG3抗体である、実施形態27の方法。
【0111】
実施形態32.IgG抗体は、IgG4抗体である、実施形態27の方法。
【0112】
実施形態33.第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体変異体を作り出すために、グリシン、アラニン又はセリンを重鎖56位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、第2抗体変異体は非置換第1抗体変異体より安定である、方法。
【0113】
実施形態34.グリシンは、重鎖56位で置換される、実施形態33の方法。
【0114】
実施形態35.第2抗体は、重鎖80位(AHo番号付け)で疎水性アミノ酸残基と更に置換される、実施形態33又は34の何れか1つの方法。
【0115】
実施形態36.疎水性アミノ酸残基は:アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン及びバリンから成る群から選択される、実施形態35の方法。
【0116】
実施形態37.疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択される、実施形態35の方法。
【0117】
実施形態38.第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体変異体を作り出すために、第1抗体変異体の重鎖80位(AHo番号付け)で疎水性アミノ酸残基を置換する工程を含み、第2抗体変異体は非置換第1抗体より安定である、方法。
【0118】
実施形態39.疎水性アミノ酸残基は:アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン及びバリンから成る群から選択される、実施形態38の方法。
【0119】
実施形態40.疎水性アミノ酸残基は:フェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択される、実施形態38の方法。
【0120】
実施形態41.第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体変異体を作り出すために、第1抗体変異体の重鎖80位(AHo番号付け)でアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、トレオニン又はバリンを置換する工程を含み、第2抗体変異体は非置換第1抗体変異体より安定である、方法。
【0121】
実施形態42.メチオニンは、第1抗体変異体の重鎖80位で置換される、実施形態41の方法。
【0122】
実施形態43.イソロイシンは、第1抗体変異体の重鎖80位で置換される、実施形態41の方法。
【0123】
実施形態44.第2抗体変異体は、重鎖56位(AHo番号付け)でアラニン、グリシン又はセリンと更に置換される、実施形態38~43の何れか1つの方法。
【0124】
実施形態45.第2抗体変異体は、重鎖56位(AHo番号付け)でアラニン又はグリシンと更に置換される、実施形態38~43の何れか1つの方法。
【0125】
実施形態46.第2抗体変異体は、重鎖56位(AHo番号付け)でグリシンと更に置換される、実施形態38~43の何れか1つの方法。
【0126】
実施形態47.第2抗体変異体の安定性の増加は、細胞培養中の力価の増加、細胞培養からの収率の増加、精製後の純度の増加、高分子量種の減少、融点温度の上昇、凝集温度の上昇及び融解開始温度の上昇から成る群から選択される少なくとも1つによって証明される、実施形態33~46の何れか1つの方法。
【0127】
実施形態48.力価の増加は、Octet Forte Bio機器を用いてプロテインA被覆プローブチップへの結合速度によって測定される、実施形態47の方法。
【0128】
実施形態49.収率の増加は、プロテインA又はプロテインG捕捉によって測定される、実施形態47の方法。
【0129】
実施形態50.純度の増加は、精製抗体のSECによって測定される、実施形態47の方法。
【0130】
実施形態51.高分子量種の減少は、SEC及び各分子量での各ピークについての曲線下面積によって測定される、実施形態47の方法。
【0131】
実施形態52.融点温度の上昇は、DSF又はDSCによって測定される、実施形態47の方法。
【0132】
実施形態53.凝集温度の上昇は、DSFによって測定される、実施形態47の方法。
【0133】
実施形態54.融解開始温度の上昇は、DSFによって測定される、実施形態47の方法。
【0134】
実施形態55.第1抗体変異体は、多重特異性抗体である、実施形態33~54の何れか1つの方法。
【0135】
実施形態56.多重特異性抗体は、二重特異性抗体又は三重特異性抗体である、実施形態55の方法。
【0136】
実施形態57.第1抗体変異体は、抗原に結合できる抗体断片である、実施形態33~56の何れか1つの方法。
【0137】
実施形態58.抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F’(ab)2断片、Fv断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、バイパラトピックペプチド、ドメイン抗体(dAb)、CDRグラフト化抗体、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、リニア抗体;キレート化組み換え抗体、トリボディ、バイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、単一ドメイン抗体及びVHH含有抗体から成る群から選択される、実施形態57の方法。
【0138】
実施形態59.第1抗体変異体は、ヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体変異体である、実施形態33~58の何れか1つの方法。
【0139】
実施形態60.第1抗体変異体は、IgG抗体変異体である、実施形態33~59の何れか1つの方法。
【0140】
実施形態61.IgG抗体変異体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体変異体から成る群から選択される、実施形態60の方法。
【0141】
実施形態62.IgG抗体変異体は、IgG1抗体変異体である、実施形態61の方法。
【0142】
実施形態63.IgG抗体変異体は、IgG2抗体変異体である、実施形態61の方法。
【0143】
実施形態64.IgG抗体変異体は、IgG3抗体変異体である、実施形態61の方法。
【0144】
実施形態65.IgG抗体変異体は、IgG4抗体変異体である、実施形態61の方法。
【0145】
実施形態66.第1抗体又は第1抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、
a.第1抗体又は抗体変異体の抗体部分の重鎖についての生殖系列原アミノ酸配列を同定する工程;
b.第1抗体又は抗体変異体の抗体部分の重鎖56位(AHo番号付け)及び重鎖80位(AHo番号付け)でアミノ酸残基を同定する工程;及び
c.第1抗体又は抗体変異体の抗体部分の生殖系列原アミノ酸配列から同定された残基を重鎖56位及び80位で置換し、それにより第2抗体又は第2抗体変異体を作り出す工程を含む方法であり、
第2抗体は、非置換第1抗体より安定であるか;又は第2抗体変異体は、非置換第1抗体変異体より安定である、方法が提供される。
【0146】
実施形態67.第2抗体変異体又は第2抗体変異体の安定性の増加は、細胞培養中の力価の増加、細胞培養からの収率の増加、精製後の純度の増加、高分子量種の減少、融点温度の上昇、凝集温度の上昇及び融解開始温度の上昇から成る群から選択される少なくとも1つによって証明される、実施形態66の方法。
【0147】
実施形態68.力価の増加は、Octet Forte Bio機器を用いてプロテインA被覆プローブチップへの結合速度によって測定される、実施形態67の方法。
【0148】
実施形態69.収率の増加は、プロテインA又はプロテインG捕捉によって測定される、実施形態67の方法。
【0149】
実施形態70.純度の増加は、精製タンパク質のSECによって測定される、実施形態67の方法。
【0150】
実施形態71.高分子量種の減少は、SEC及び各分子量での各ピークについての曲線下面積によって測定される、実施形態67の方法。
【0151】
実施形態72.融点温度の上昇は、DSF又はDSCによって測定される、実施形態67の方法。
【0152】
実施形態73.凝集温度の上昇は、DSFによって測定される、実施形態67の方法。
【0153】
実施形態74.融解開始温度の上昇は、DSFによって測定される、実施形態67の方法。
【0154】
実施形態75.第1抗体は、モノクローナル抗体である、実施形態66~74の何れか1つの方法。
【0155】
実施形態76.第1抗体は、ヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体である、実施形態75の方法。
【0156】
実施形態77.第1抗体は、IgG抗体である、実施形態66~76の何れか1つの方法。
【0157】
実施形態78.IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体から成る群から選択される、実施形態77の方法。
【0158】
実施形態79.IgG抗体は、IgG1抗体である、実施形態78の方法。
【0159】
実施形態80.IgG抗体は、IgG2抗体である、実施形態78の方法。
【0160】
実施形態81.IgG抗体は、IgG3抗体である、実施形態78の方法。
【0161】
実施形態82.IgG抗体は、IgG4抗体である、実施形態78の方法。
【0162】
実施形態83.第1抗体変異体は、多重特異性抗体である、実施形態66~82の何れか1つの方法。
【0163】
実施形態84.多重特異性抗体は、二重特異性抗体又は三重特異性抗体である、実施形態83の方法。
【0164】
実施形態85.第1抗体変異体は、抗原に結合できる抗体断片である、実施形態66~84の何れか1つの方法。
【0165】
実施形態86.抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F’(ab)2断片、Fv断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、バイパラトピックペプチド、ドメイン抗体(dAb)、CDRグラフト化抗体、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、リニア抗体;キレート化組み換え抗体、トリボディ、バイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、単一ドメイン抗体及びVHH含有抗体から成る群から選択される、実施形態85の方法。
【0166】
実施形態87.第1抗体変異体は、ヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体変異体である、実施形態66~86の何れか1つの方法。
【0167】
実施形態88.第1抗体変異体は、IgG抗体変異体である、実施形態66~87の何れか1つの方法。
【0168】
実施形態89.IgG抗体変異体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体変異体から成る群から選択される、実施形態66~88の何れか1つの方法。
【0169】
実施形態90.IgG抗体変異体は、IgG1抗体変異体である、実施形態89の方法。
【0170】
実施形態91.IgG抗体変異体は、IgG2抗体変異体である、実施形態89の方法。
【0171】
実施形態92.IgG抗体変異体は、IgG3抗体変異体である、実施形態89の方法。
【0172】
実施形態93.IgG抗体変異体は、IgG4抗体変異体である、実施形態89の方法。
【0173】
実施形態94.第2抗体又は第2抗体変異体は、重鎖の56位及び80位(AHo番号付け)の下記の残基対:GF、GI、GL、GT、GV、AF、AI、AL、AV、AA、AM、SA、SI又はSTそれぞれの何れか1つと置換される、実施形態1~93の何れか1つの方法。一例として、この命名法の下では、「GF」は重鎖56位での「G」及び重鎖80位(AHo番号付け)での「F」を表すことに留意されたい。
【0174】
実施形態95.第2抗体又は第2抗体変異体を医薬組成物に処方する工程を更に含む、実施形態1~94の何れか1つの方法。
【0175】
実施形態96.実施形態1~95の何れか1つの方法によって作成された抗体又は抗体変異体。
【0176】
実施形態97.実施形態96の抗体又は抗体変異体を含む医薬組成物。
【0177】
下記の実施例のセクションは、単に例として提示されたものであり、決して本明細書の開示又は特許請求項を限定するために明記されたものではない。
【実施例0178】
実施例1 - 実験デザイン
抗体の突然変異は、コドン変化をデザインし、それに従って合成されたヌクレオチドを有することによって実行した。改変断片は、Golden Gateクローニング法(Engler et al 2009,Engler et al 2008)を用いてオープンリーディングフレーム内に統合した。抗体は、他に記載しない限り、HEK 293-6E細胞(エプスタインバー(Epstein Barr)ウイルス核抗原(EBNA)1の切断型変異体を発現する懸濁細胞株)内で発現させた(Durocher et al 2002)。生成された抗体は、固体支持体に付着させたプロテインAを使用して精製した。
【0179】
下記の生殖系列ファミリー:VH1/VK4、VH4/VL1、VH3/VK3、VH6/VK1及びVH2/VL2について試験した。重鎖内では、80I及び80Mと同様に、56A及び56Gについて試験した。
【0180】
測定したパラメーターは以下であった:
採取時の力価(mg/L)
融解温度(Tm;示差走査蛍光分析法(DSF)又は示差走査熱量測定法(DSC)によって測定され、後者は2つのアウトプット:Tm1及びTm2)をもたらす)
収率(プロテインAによって捕捉された抗体によって測定される)
サイズ排除カラムクロマトグラフィー(SEC)によって決定された高分子量(HMW)種及びピーク分子量(最高ピークの分子量として定義された、Mp)
【0181】
実施例2 - VH1生殖系列
本実施例では、抗体内の突然変異であるVH1生殖系列(VH1/VK4)を起源とするmAb1(IgG1)を試験し、実施例1に記載したように抗体をアッセイした。
【0182】
【表4】
【0183】
これらの実験から、mAb1が第56位でA及び第80位でMを有した場合、抗体(mAb1AM)は、試験した抗体で観察された最低力価を有していた。同様に、mAb1AIは更に低い力価も有していた。しかしながら、mAb1GMは、試験した抗体で観察された最高力価を有していた;mAb1GIは、2番目に高い力価を有していた。
【0184】
実施例3 - VH3生殖系列
本実施例では、抗体内の突然変異である、VH3生殖系列(VH3/VK3)を起源とするmAb2(IgG2 Ab)を試験し、実施例1に記載したように抗体をアッセイした。
【0185】
【表5】
【0186】
これらの実験から、mAb2が56位でAを及び80位でMを有した場合、抗体(mAb2AM)は試験した抗体から観察された最低力価を有し、並びに最低融点(Tm)を有していたが、これはこの抗体が低安定性であることを示唆した。しかしながら、mAb2AI及びmAb2GMは、試験した抗体のより高い力価及び融点を有していた。
【0187】
実施例4 - VH4生殖系列
本実施例では、抗体内の突然変異である、VH4生殖系列(VH4/VL1)を起源とするmAb3(IgG1 Ab)を試験し、実施例1に記載したように抗体をアッセイした。
【0188】
【表6】
【0189】
これらの実験から、mAb3が56位でA及び80位でMを有した場合、抗体(mAb3AMmAb3AI)は、試験した抗体から観察された最低力価を有し、並びに最低融点(Tm)を有していたが、これはこの抗体が低安定性であることを示唆した。しかしながら、mAb3及びmAb3GMは、試験した抗体のより高い力価及び融点を有していた。
【0190】
実施例5 - VH6生殖系列
本実施例では、抗体内の突然変異である、VH6生殖系列(VH6/VK1)を起源とするmAb4(IgG1 Ab)を試験し、実施例1に記載したように抗体をアッセイした。
【0191】
【表7】
【0192】
これらの実験から、mAb4が第56位でA及び第80位でMを有した場合、抗体(mAb4AM)は、試験した抗体で観察された最低力価を有していた;融点は決定されなかった。しかしながら、mAb4(GI)(生殖系列)及びmAb4GMは、試験した抗体のより高い力価及び融点を有しており、mAb4GIは、mAb4GMよりも優れていた。
【0193】
実施例6 - VH2生殖系列
本実施例では、抗体内の突然変異である、VH2生殖系列(VH2/VL2)を起源とするmAb5(IgG1 Ab)を試験し、実施例1に記載したように抗体をアッセイした。
【0194】
【表8】
【0195】
これらの実験から、試験した抗体は、高い力価及び好都合な融点の両方を有していた。
【0196】
これらの抗体がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって発現されると、mAb5GM(図1における「突然変異体」)は、mAb5(AI)(生殖系列;図1における「WT」)抗体と比較して、クローン及びMTXレベルに渡って、より高い力価(図1A)、少ないHMW種(図1B)並びにより高いMP純度(図1C)を有していた。
【0197】
実施例7 - IgGサブタイプ並びにHC56及びHC80突然変異による抗体力価の比較
mAb1及びmAb3(後者は異なるサブタイプ内)の採取時力価を決定した。表7.1は、結果を示している。この実験では、重鎖変異体HC:56G、HC:80Mが最も望ましい最終増殖特性を示した。HC:56G、HC:80M変異体は更に、mAb3(IgG4フォーマット)を除いて、IgG1、IgG2及びIgG4分子におけるより高い力価(第6日)を生成した;その代わりに、この分子は、置換のHC:56A、HV:80Mセットから最高力価を示した。
【0198】
【表9】
【0199】
実施例8 - IgG1 HC:56及びHC:80についてのアミノ酸の同定
本実施例では、IgG1 HC:56及びHC:80で使用できるアミノ酸についての追加の選択肢は、1つは精密系統発生分析及びスクリーニングであり、もう1つは全400のH:56 H:80の組み合わせのロゼッタモデリングに基づく2つの方法を用いて同定した。これらの実験は、HC:56及びHC:80での可能性のある選択肢の追加の試験及び分析を提供することに留意されたい。1回以上の計算機によるスクリーニングにおける中等度の結果を伴うアミノ酸の対合をモデル分子内に突然変異させ、その後にDSFによる293-6E細胞培養及びTmからの採取後の発現レベルを比較した。
【0200】
系統発生分析のために、mAb1及びmAb2のブラストサーチをProtein NRにおいて実施した(e=0.0001)。各分子について同定されたおよそ10,000配列は、CD-ヒットクラスター化しており、最も一般的な残基を同定し、頻度に従ってランク付けした。上位アミノ酸をmAb1及びmAb2内にクローン化した。
【0201】
mAb1の系統発生分析のために、最も一般的な残基対を下記の表8.1に示した(ボールド体の残基対を試験した;星印は、生殖系列残基を示す):
【0202】
【表10】
【0203】
mAb2の系統発生分析のために、最も一般的な残基対を下記の表8.2に示した(ボールド体の残基対を試験した);
【0204】
【表11】
【0205】
ロゼッタ分析のために、ロゼッタソフトウエアを使用してmAb1及びmAb2におけるHC:56及びHC:80の全アミノ酸組み合わせのエネルギースコアを測定した。理論によって限定されることなく、このアプローチ下で、ロゼッタは、標準の遺伝的にコードされたアミノ酸を用いて可能性のある400のH56:H80のアミノ酸の組み合わせ全部を試みた。ロゼッタ分析から、HC:56及びHC:80アミノ酸の組み合わせをロゼッタ「総スコア」及び「p_aa_pp」スコアに従って比較し、1:1の加重zスコアによってランク付けした。系統発生分析にそれまでに存在しなかった好都合なエネルギースコアを備える変異体を更なる試験のためにmAb1及びmAb2内にクローン化した。
【0206】
HC:56では、mAb1からの結果は、最高力価が、HC:56G又はHC:56Aを用いて、その後にHC:56Sを用いて達成できたことを示している(例えば、図2A~2Bを参照されたい)。mAb2のからの結果は、最高力価が、HC:56A、HC:56G、又はHC:56Sを用いて達成できたことを示している(例えば、図5を参照されたい)。理論によって限定されることなく、これらの残基は、あらゆる範囲のアミノ酸と比較した場合に、それらの相当に小さなサイズに関して最も似ていることを留意されたい。
【0207】
HC:80では、mAb1からの結果は、最高力価が、HC:80F、HC:80L、又はHC:80Vを用いて達成できたことを示している。mAb2のからの結果は、最高力価が、HC:80L、HC:80M、HC:80A、HC:80V、HC:80F、HC:80Iを用いて達成できたことを示している。更に、2つの場合には、HC:80Tは、相当に高い発現を生じさせた。理論によって限定されることなく、これらの結果の一般化は、HC:80での疎水性残基の使用がより高い力価を生じさせることである。
【0208】
mAb1の操作変異体間で、最高力価を備える6種の変異体は最高Tmを有する6種の変異体と相関していた(例えば、図2A~2B及び3A~3Bを参照されたい)。mAb2の変異体間では、Tmにおける差は余り顕著ではなかったが、低力価の変異体は低いTmを有し続けた(例えば、図6を参照されたい)。更に、HC:80での疎水性残基の使用は、より高いTmと相関していた。
【0209】
mAb1及びmAb2それぞれにおける重鎖56位及び重鎖80位(AHo番号付け)の残基の組み合わせの影響は、下記の表8.3に要約した。表8の用語では、第1残基は重鎖56位(AHo番号付け)を表し、第2残基は重鎖80位(AHo番号付け)を表す。従って、一例として、「GF」は重鎖56位(AHo番号付け)の「G」及び重鎖80位(AHo番号付け)の「F」を表すことに留意されたい:
【0210】
【表12】
【0211】
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【0212】
上述の一般的説明及び以下の詳細な説明はどちらも、例示的且つ説明的に過ぎず、限定するものではない。単数形の使用は、特に他に明記しない限り、複数形を含む。「又は」の使用は、他に明記しない限り「及び/又は」を意味する。用語「含んでいる」並びに「含む」及び「含まれる」等の他の形態の使用は、限定的ではない。「要素」又は「構成要素」等の用語は、特に他に明記しない限り、1つのユニットを含む要素及び構成要素並びに2つ以上のサブユニットを含む要素及び構成要素の両方を包含する。用語「部分」の使用は、部分の一部又は部分全体を含むことができる。例えば1~5等の数値範囲が言及される場合、1、2、3、4及び5並びに1.5、2.2、3.4及び4.1等のそれらの分数等の全ての介在値は明示的に含まれる。
【0213】
「約」又は「~」は、量を修飾する場合(例えば「約」3mM)、修飾された量の前後で変動が発生し得ることを意味する。これらの変動は、典型的な測定手順及び処理手順、不注意による誤り、成分の純度等の様々な手段によって発生し得る。
【0214】
「含んでいる」及び「含む」は、調製物及び方法が列挙された要素を含むが、その他の列挙されていない要素を除外しないことを意味することが意図されている。用語「~から本質的に成る(consisting essentially of)」及び「~から本質的に成る(consists essentially of)」は、列挙される要素を含む開示された方法において用いられる場合、調製物及び/又は方法の基本的性質を変更する列挙されていない要素は除外するが、その他の列挙されていない要素は除外しない。そのため、要素から本質的に成る調製物は、任意の分離及び精製方法からの混入物質、又は薬学的に許容される担体(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、防腐剤等といった微量のその他の要素を排除しないが、例えば、追加の不特定のアミノ酸等は除外する。用語「から成る(consisting of)」及び「から成る(consists of)」は、調製物及び方法を定義するために用いられる場合、微量を超えるその他の成分、及び本明細書に記載される組成物を投与するための実質的な方法工程を除外する。これらの変遷する用語の各々によって定義される実施形態は、本開示の範囲内に含まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1抗体又は抗体変異体の安定性を増加させる方法であって、第2抗体を作り出すために、疎水性アミノ酸残基を前記第1抗体又は抗体変異体の重鎖80位(AHo番号付け)で置換する工程を含み、前記第2抗体又は抗体変異体は前記非置換第1抗体又は抗体変異体より安定であり、前記疎水性アミノ酸残基は、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン、及びバリンからなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記疎水性アミノ酸残基はフェニルアラニン、ロイシン及びバリンから成る群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記メチオニン又はイソロイシンは、前記第1抗体又は抗体変異体の重鎖80位で置換される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第2抗体又は抗体変異体は、重鎖56位(AHo番号付け)でアラニン、グリシン又はセリンと更に置換される、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2抗体又は抗体変異体は、重鎖56位(AHo番号付け)でアラニン又はグリシンと更に置換される、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2抗体又は抗体変異体は、重鎖56位(AHo番号付け)でグリシンと更に置換される、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2抗体の安定性の増加は、細胞培養中の力価の増加、細胞培養からの収率の増加、精製後の純度の増加、高分子量種の減少、融点温度の上昇、凝集温度の上昇及び融解開始温度の上昇から成る群から選択される少なくとも1つによって証明される、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1抗体又は抗体変異体は、モノクローナル抗体である、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1抗体又は抗体変異体は、ヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体である、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1抗体又は抗体変異体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4抗体から成る群から選択されるIgG抗体である、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1抗体変異体又は抗体変異体は、多重特異性抗体である、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記多重特異性抗体は、二重特異性抗体又は三重特異性抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1抗体又は抗体変異体は、抗原に結合できる抗体断片であ前記抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F’(ab)2断片、Fv断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、バイパラトピックペプチド、ドメイン抗体(dAb)、CDRグラフト化抗体、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、リニア抗体;キレート化組み換え抗体、トリボディ、バイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、単一ドメイン抗体及びVHH含有抗体から成る群から選択される、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2抗体又は第2抗体変異体は、前記重鎖の56位及び80位(AHo番号付け)の下記の残基対:GF、GI、GL、GT、GV、AF、AI、AL、AV、AA、AM、SA、SI又はSTそれぞれの何れか1つと置換される、請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2抗体又は第2抗体変異体を医薬組成物に処方する工程を更に含む、請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15の何れか一項に記載の方法によって作成された、抗体又は抗体変異体。
【請求項17】
請求項16の前記抗体又は抗体変異体を含む、医薬組成物。
【外国語明細書】