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特開2024-5966蒸解促進剤、及びそれを使用したパルプの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005966
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】蒸解促進剤、及びそれを使用したパルプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 3/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
D21C3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106468
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100197701
【弁理士】
【氏名又は名称】長野 正
(72)【発明者】
【氏名】田中 多加志
(72)【発明者】
【氏名】播本 豊敬
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA03
4L055AB02
4L055AB04
4L055AB14
4L055EA32
4L055FA02
4L055FA03
(57)【要約】
【課題】蒸解の効率をさらに高めた蒸解促進剤、及びこの蒸解促進剤を使用したパルプの製造方法を提供する。
【解決手段】蒸解促進剤は、特定の第4級アンモニウム化合物と、特定の第1級モノアミン、特定の第2級モノアミン、及び特定の第3級モノアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物と、を含む。第4級アンモニウム化合物とアミン化合物との質量比率は5:1~10000:1である。パルプの製造方法は、アルカリ系主剤及び亜硫酸塩系主剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の主剤、及び蒸解促進剤を加えて、リグノセルロースを含む材料を蒸解する蒸解工程を含み、蒸解促進剤が上記の蒸解促進剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される第4級アンモニウム化合物と、
式(2)で表される第1級モノアミン、式(3)で表される第2級モノアミン、及び式(4)で表される第3級モノアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物と、を含む蒸解促進剤。
【化1】
式(1)中、Rは、炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のヒドロキシアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基、又は炭素数8~22のヒドロキシアルケニル基であり、
は、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基であり、
、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、アリール基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基であり、
Nは、窒素原子を示し、
p-は、対イオンを示し、無機アニオン、又は有機アニオンであり、pは、イオンの価数を示し、
Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは、水素原子又はアシル基であり、
nは、1~15の整数であり、mは、1~15の整数である。
【化2】
式(2)中、Rは、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、kは、1~6の整数である。
【化3】
式(3)中、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、rは、1~12の整数である。
【化4】
式(4)中、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、tは、1~12の整数であり、
10は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、uは、1~12の整数である。
【請求項2】
前記第4級アンモニウム化合物と前記アミン化合物との質量比率が5:1~10000:1である、請求項1に記載の蒸解促進剤。
【請求項3】
式(1)で表される第4級アンモニウム化合物と、
前記第4級アンモニウム化合物の存在下において、硫化物イオン、多硫化物イオン、又は硫化水素イオンを発生する硫黄含有化合物と、を含む蒸解促進剤。
【化5】
式(1)中、Rは、炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のヒドロキシアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基、又は炭素数8~22のヒドロキシアルケニル基であり、
は、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基であり、
、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、アリール基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基であり、
Nは、窒素原子を示し、
p-は、対イオンを示し、無機アニオン、又は有機アニオンであり、pは、イオンの価数を示し、
Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは、水素原子又はアシル基であり、
nは、1~15の整数であり、mは、1~15の整数である。
【請求項4】
前記硫黄含有化合物は、チオ硫酸塩、チオ硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、ジチオン酸塩、二硫酸塩、ペルオキソ硫酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、及びポリチオン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から構成される、請求項3に記載の蒸解促進剤。
【請求項5】
前記第4級アンモニウム化合物と前記硫黄含有化合物との質量比率が1:2~100:1である、請求項3又は4に記載の蒸解促進剤。
【請求項6】
アルカリ系主剤及び亜硫酸塩系主剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の主剤、及び蒸解促進剤を加えて、リグノセルロースを含む材料を蒸解する蒸解工程を含む、パルプの製造方法であって、
前記蒸解促進剤が、請求項1又は3に記載の蒸解促進剤である、パルプの製造方法。
【請求項7】
前記蒸解促進剤の含有量は、前記リグノセルロースを含む前記材料に対して0.001質量%~1.0質量%である、請求項6に記載のパルプの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸解促進剤、及びそれを使用したパルプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプの製造方法の蒸解工程において、リグノセルロースを含む材料をパルプにするためにアルカリ系主剤が使用される。また、蒸解を効率的に行うために蒸解促進剤が使用される。この蒸解促進剤として、例えば、特許文献1には、第4級アンモニウム化合物を含有する蒸解促進剤が開示されている。特許文献2には、グルコース及びフルクトースの少なくとも一方を含有する蒸解促進剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-65434号公報
【特許文献2】特開2020-2481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示されている蒸解促進剤を使用した場合は、アルカリ系主剤を単独で使用した蒸解に比べて、効率的に蒸解することができる。しかし、近年の木材需要の拡大に伴う木材の価格高騰や地球温暖化に伴う森林伐採の抑制等の観点から、パルプを効率的に生産すべく更なる蒸解の効率化が求められている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、リグノセルロースを含む材料をパルプにする蒸解工程において、効率的にリグノセルロースを含む材料を蒸解させることができる蒸解促進剤、及びそれを使用したパルプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の第4級アンモニウム化合物と、特定の第1級モノアミン、特定の第2級モノアミン、及び特定の第3級モノアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物とを含む蒸解促進剤、並びに、特定の第4級アンモニウム化合物と、この第4級アンモニウム化合物の存在下において、硫化物イオン、多硫化物イオン、又は硫化水素イオンを発生する硫黄含有化合物とを含む蒸解促進剤が、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
上記目的を達成するために、[1]本発明に係る蒸解促進剤は、式(1)で表される第4級アンモニウム化合物と、式(2)で表される第1級モノアミン、式(3)で表される第2級モノアミン、及び式(4)で表される第3級モノアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物と、を含む。
【0008】
【化1】
【0009】
式(1)中、Rは、炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のヒドロキシアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基、又は炭素数8~22のヒドロキシアルケニル基であり、
は、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基であり、
、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、アリール基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基であり、
Nは、窒素原子を示し、
p-は、対イオンを示し、無機アニオン、又は有機アニオンであり、pは、イオンの価数を示し、
Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは、水素原子又はアシル基であり、
nは、1~15の整数であり、mは、1~15の整数である。
【0010】
【化2】
【0011】
式(2)中、Rは、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、kは、1~6の整数である。
【0012】
【化3】
【0013】
式(3)中、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、rは、1~12の整数である。
【0014】
【化4】
【0015】
式(4)中、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、tは、1~12の整数であり、
10は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、uは、1~12の整数である。
【0016】
また、[2]前記第4級アンモニウム化合物と前記アミン化合物との質量比率が5:1~10000:1である、ようにしてもよい。
【0017】
また、[3]本発明に係る蒸解促進剤は、式(1)で表される第4級アンモニウム化合物と、前記第4級アンモニウム化合物の存在下において、硫化物イオン、多硫化物イオン、又は硫化水素イオンを発生する硫黄含有化合物と、を含む。
【0018】
【化5】
【0019】
式(1)中、Rは、炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のヒドロキシアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基、又は炭素数8~22のヒドロキシアルケニル基であり、
は、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基であり、
、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、アリール基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基であり、
Nは、窒素原子を示し、
p-は、対イオンを示し、無機アニオン、又は有機アニオンであり、pは、イオンの価数を示し、
Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは、水素原子又はアシル基であり、
nは、1~15の整数であり、mは、1~15の整数である。
【0020】
また、[4]前記硫黄含有化合物は、チオ硫酸塩、チオ硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、ジチオン酸塩、二硫酸塩、ペルオキソ硫酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、及びポリチオン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から構成される、ようにしてもよい。
【0021】
また、[5]前記第4級アンモニウム化合物と前記硫黄含有化合物との質量比率が1:2~100:1である、ようにしてもよい。
【0022】
また、上記目的を達成するために、[6]本発明に係るパルプの製造方法は、アルカリ系主剤及び亜硫酸塩系主剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の主剤、及び蒸解促進剤を加えて、リグノセルロースを含む材料を蒸解する蒸解工程を含み、前記蒸解促進剤が[1]又は[3]に記載の蒸解促進剤である。
【0023】
また、[7]前記蒸解促進剤の含有量は、前記リグノセルロースを含む前記材料に対して0.001質量%~1.0質量%である、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の蒸解促進剤、及びそれを使用したパルプの製造方法によれば、リグノセルロースを含む材料を効率的に蒸解させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という。)について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0026】
[実施の形態1]
実施の形態1の蒸解促進剤は、第4級アンモニウム化合物と、第1級モノアミン、第2級モノアミン、及び第3級モノアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物と、を含む。まず、第4級アンモニウム化合物、アミン化合物について説明する。次に、これらを含む蒸解促進剤について説明する。
【0027】
(第4級アンモニウム化合物)
実施の形態1の蒸解促進剤に含まれる第4級アンモニウム化合物は、以下の式(1)で表される化合物である。
【0028】
【化6】
【0029】
式(1)中のNは、窒素原子を示す。
【0030】
式(1)中のRは、炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のヒドロキシアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基、又は炭素数8~22のヒドロキシアルケニル基である。
【0031】
式(1)中のRは、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。nは、アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~15の数である。Yは水素原子又はアシル基である。また、「アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数」は、「アルキレンオキシ基の平均付加モル数」を意味する。以下、すべての実施の形態において同じである。
【0032】
式(1)中のR、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、アリール基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。mは、アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~15の数である。Yは水素原子又はアシル基である。
【0033】
式(1)のR、R、及びRは、蒸解を促進する観点から、以下の構造を有することが好ましい。
は、好ましくは、炭素数10~18のアルキル基、炭素数10~18のヒドロキシアルキル基、炭素数10~18のアルケニル基、又は炭素数10~18のヒドロキシアルケニル基である。Rは、より好ましくは、炭素数10~16の直鎖状のアルキル基、炭素数10~16の直鎖状のヒドロキシアルキル基、炭素数10~16の直鎖状のアルケニル基、又は炭素数10~16の直鎖状のヒドロキシアルケニル基である。
【0034】
は、好ましくは、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。nは、アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~6の数である。Yは水素原子又はアシル基である。Rは、より好ましくは、炭素数1~22の直鎖状のアルキル基、炭素数1~22の直鎖状のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22の直鎖状のアルケニル基、炭素数2~22の直鎖状のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。nは、アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~4の数である。Yは水素原子又はアシル基である。
【0035】
、及びRは、それぞれ独立に、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、アリール基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。mは、アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~6の数である。Yは水素原子又はアシル基である。R、及びRは、それぞれ独立に、より好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、アリール基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。mは、アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~4の数である。Yは水素原子又はアシル基である。
【0036】
更に式(1)のR、R、及びRが、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、又はアルキレンオキシ基である場合、蒸解を促進する観点から、以下の構造を有することが好ましい。
が、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、nとの総和は、好ましくは1~15の整数である。その総和は、より好ましくは1~9であり、更により好ましくは1~6である。
【0037】
、又はRが、それぞれ独立に、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、mとの総和は、好ましくは1~15の整数である。その総和は、より好ましくは1~9であり、更により好ましくは1~6である。
【0038】
と、R又はRにおいて、Rが、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基であり、R又はRが、それぞれ独立に、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、nと、mとの総和は、好ましくは、2~15の整数である。その総和は、より好ましくは2~9であり、更により好ましくは2~6である。
【0039】
、及びRにおいて、R、及びRが、それぞれ独立に、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、mとの総和は、好ましくは2~15の整数である。その総和は、より好ましくは2~9であり、更により好ましくは2~6である。
【0040】
、R、及びRにおいて、Rが、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基であり、R、及びRが、それぞれ独立に、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、nと、mとの総和は、好ましくは、3~15の整数である。その総和は、より好ましくは、3~9であり、更により好ましくは、3~6である。
【0041】
式(1)中のXp-は、対イオンを示す。pは、イオンの価数を示す。pは、1~40であり、製品化、工業化、及びコストの観点から、好ましくは1~20、より好ましくは1~3である。対イオンは、第4級アンモニウム化合物と塩を形成することができるアニオンであれば限定されない。対イオンは、例えば、(i)無機アニオン、(ii)有機アニオンが挙げられる。
【0042】
(i)無機アニオンとしては、塩化物イオン及び臭化物イオン等のハロゲンイオン、水酸基イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ホウ酸イオン、スルホン酸イオン、次亜塩素酸イオン、亜硝酸イオン、亜リン酸イオン、二亜リン酸イオン、亜硫酸イオン、亜硫酸水素イオン、硫化物イオン、硫化水素イオン、多硫化物イオン、チオールイオン、チオ硫酸イオン、チオグリコール酸塩等が挙げられる。
【0043】
(ii)有機アニオンとしては、i)有機カルボン酸イオン、ii)リン酸エステルイオン、iii)スルホン酸イオン、iv)アルキルカーボネートイオン、v)硫酸エステルイオン、vi)アニオン性ポリマー等が挙げられる。i)有機カルボン酸イオンとしては、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、グルコン酸イオン、乳酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、アジピン酸イオン等が挙げられる。ii)リン酸エステルイオンとしては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルイオン、アルキルリン酸モノエステルイオン、アルキルリン酸ジエステルイオン、アルケニルリン酸エステルイオン、アリールリン酸エステルイオン等が挙げられる。iii)スルホン酸イオンとしては、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等が挙げられる。iv)アルキルカーボネートイオンとしては、メチルカーボネートイオン、エチルカーボネートイオン等が挙げられる。v)硫酸エステルイオンとしては、アルキル硫酸エステルイオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルイオン等が挙げられる。vi)アニオン性ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリリン酸、ポリ硫酸化合物等が挙げられる。
【0044】
対イオンの中でも、蒸解を促進する観点から、(i)無機アニオンは、塩化物イオン及び臭化物イオン等のハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ホウ酸イオン、リン酸イオンが好ましい。(ii)有機アニオンは、ブチルリン酸エステルイオン等のアルキル基の炭素数が1~4のアルキルリン酸モノエステルイオン;ジブチルリン酸エステルイオン等のアルキル基の炭素数が1~4のアルキルリン酸ジエステルイオン;p-トルエンスルホン酸等の炭素数が1~4のアルキルベンゼンスルホン酸イオン;メチル硫酸イオン(CHSO )、エチル硫酸イオン(CSO )等のアルキル基の炭素数が1~4のアルキル硫酸エステルイオンが、好ましい。
【0045】
(アミン化合物)
実施の形態1の蒸解促進剤に含まれるアミン化合物は、第1級モノアミン、第2級モノアミン、及び第3級モノアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物から構成される。
【0046】
(第1級モノアミン)
第1級モノアミンは、以下の式(2)で表される化合物である。
【0047】
【化7】
【0048】
式(2)中、Rは、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。kは、1~6の整数である。
【0049】
蒸解を促進する観点から、Rは、好ましくは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のヒドロキシアルキル基、炭素数2~18のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。kは、1~2の整数である。Rは、より好ましくは、炭素数10~14のアルキル基、炭素数10~14のアルケニル基、炭素数10~14のヒドロキシアルキル基、炭素数10~14のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。kは、1である。
【0050】
(第2級モノアミン)
第2級モノアミンは、以下の式(3)で表される化合物である。
【0051】
【化8】
【0052】
式(3)中、Rは、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)r1Z基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。r1は、1~12の整数である。
式(3)中、Rは、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)r2Z基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。r2は、1~12の整数である。また、R、及びRは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
ここで、R、及びRがそれぞれ(AO)Z基であった場合、それらを区別するために、Rの(AO)Z基を(AO)r1Z基と表し、Rの(AO)Z基を(AO)r2Z基と表す。
【0053】
式(3)のR、及びRは、蒸解を促進する観点から、以下の構造を有することが好ましい。
は、好ましくは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のヒドロキシアルキル基、炭素数2~18のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)r1Z基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。r1は、1~6の整数である。Rは、より好ましくは、炭素数10~14のアルキル基、炭素数10~14のアルケニル基、炭素数10~14のヒドロキシアルキル基、炭素数10~14のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)r1Z基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。r1は、2~4の整数である。
【0054】
は、好ましくは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のヒドロキシアルキル基、炭素数2~18のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)r2Z基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。r2は、1~6の整数である。Rは、より好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)r2Z基である。ここで、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。r2は、2~4の整数である。
【0055】
更に式(3)のR、及びRが、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、又はアルキレンオキシ基である場合、蒸解を促進する観点から、以下の構造を有することが好ましい。
が、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)r1Y基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、r1との総和は1~12の整数である。その総和は、好ましくは、1~6であり、より好ましくは、1~4である。
【0056】
が、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)r2Y基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、r2との総和は1~12の整数である。その総和は、好ましくは、1~6であり、より好ましくは、1~4である。
【0057】
、及びRにおいて、Rが、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)r1Y基であり、Rが、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)r2Y基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、r1と、r2との総和が2~12の整数である。その総和は、好ましくは、2~6であり、より好ましくは、2~4である。また、R、及びRは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
(第3級モノアミン)
第3級モノアミンは、以下の式(4)で表される化合物である。
【0059】
【化9】
【0060】
式(4)中、Rは、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t1Z基である。AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。t1は、1~12の整数である。
式(4)中、Rは、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t2Z基である。AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。t2は、1~12の整数である。また、R、及びRは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
ここで、R、及びRがそれぞれ(AO)Z基であった場合、それらを区別するために、Rの(AO)Z基を(AO)t1Z基と表し、Rの(AO)Z基を(AO)t2Z基と表す。
式(4)中、R10は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基である。AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。uは、1~12の整数である。
【0061】
式(4)のR、R及びR10は、蒸解を促進する観点から、以下の構造を有することが好ましい。
は、好ましくは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のヒドロキシアルキル基、炭素数2~18のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t1Z基である。AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。t1は、1~6の整数である。Rは、より好ましくは、炭素数10~14のアルキル基、炭素数10~14のアルケニル基、炭素数10~14のヒドロキシアルキル基、炭素数10~14のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t1Z基である。AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。t1は、1~4の整数である。
【0062】
は、好ましくは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のヒドロキシアルキル基、炭素数2~18のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t2Z基である。AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。t2は、1~6の整数である。Rは、より好ましくは、炭素数10~14のアルキル基、炭素数10~14のアルケニル基、炭素数10~14のヒドロキシアルキル基、炭素数10~14のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t2Z基である。AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。t2は、1~4の整数である。
【0063】
10は、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基である。AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。uは、1~6の整数である。R10は、より好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基である。AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基である。uは、1~4の整数である。
【0064】
更に式(4)のR、R、及びR10が、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、又はアルキレンオキシ基である場合、蒸解を促進する観点から、以下の構造を有することが好ましい。
が、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t1Z基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、t1との総和が1~12の整数である。その総和は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4である。
【0065】
が、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t2Z基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、t2との総和が1~12の整数である。その総和は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4である。
【0066】
10が、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、uとの総和が1~12の整数である。その総和は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4である。
【0067】
、及びRにおいて、Rが、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t1Z基であり、Rが、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t2Z基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、t1と、t2との総和が2~12の整数である。その総和は、好ましくは2~6であり、より好ましくは2~4である。また、R、及びRは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0068】
、及びR10において、Rが、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t1Z基であり、R10が、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、t1と、uとの総和が2~12の整数である。その総和は、好ましくは2~6であり、より好ましくは2~4である。また、R、及びR10は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0069】
、及びR10において、Rが、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t2Z基であり、R10が、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、t2と、uとの総和が2~12の整数である。その総和は、好ましくは2~6であり、より好ましくは2~4である。また、R、及びR10は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0070】
、R、及びR10において、Rが、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t1Z基であり、Rが、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)t2Z基であり、R10が、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基である場合、ヒドロキシアルキル基の数と、ヒドロキシアルケニル基の数と、t1と、t2と、uとの総和が3~12の整数である。その総和は、好ましくは3~6であり、より好ましくは3~4である。また、R、R、及びR10は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0071】
上述のアミン化合物は、蒸解を促進する観点から2級モノアミンであることが好ましく、1級モノアミンがより好ましく、3級モノアミンがさらに好ましい。
【0072】
(蒸解促進剤)
実施の形態1の蒸解促進剤は、上述した第4級アンモニウム化合物とアミン化合物を含む。第4級アンモニウム化合物とアミン化合物との質量比率は、5:1~10000:1である。この質量比率は、蒸解を促進する観点から、好ましくは10:1~10000:1であり、より好ましくは10:1~1000:1である。
【0073】
実施の形態1の蒸解促進剤の含有量は、リグノセルロースを含む材料に対して、0.001質量%~1.0質量%である。例えば、実施の形態1の蒸解促進剤の含有量は、リグノセルロースを含む材料100gに対して、1.0~1000mgであり、蒸解を促進する観点から、好ましくは2~500mgであり、より好ましくは5~200mgである。
【0074】
実施の形態1の蒸解促進剤は、構造が異なる2種以上の第4級アンモニウム化合物を含んでもよい。また、2種以上のアミン化合物を含んでもよい。
【0075】
以上説明した特定の第4級アンモニウム化合物と、特定のアミン化合物とが含まれる実施の形態1の蒸解促進剤を、蒸解工程で使用することで、第4級アンモニウム化合物の活性が失われず、リグノセルロースを含む材料を効率的に蒸解できる。
【0076】
次に、実施の形態2の蒸解促進剤について説明する。
[実施の形態2]
実施の形態2の蒸解促進剤は、第4級アンモニウム化合物と、この第4級アンモニウム化合物の存在下において、硫化物イオン、多硫化物イオン、又は硫化水素イオンを発生する硫黄含有化合物と、を含む。まず、第4級アンモニウム化合物、硫黄含有化合物について説明する。次に、これらを含む蒸解促進剤について説明する。
【0077】
(第4級アンモニウム化合物)
実施の形態2の蒸解促進剤に含まれる第4級アンモニウム化合物は、実施の形態1において説明した第4級アンモニウム化合物と実質的に同じである。
【0078】
(硫黄含有化合物)
硫黄含有化合物は、第4級アンモニウム化合物の存在下において、硫化物イオン、多硫化物イオン、又は硫化水素イオンを発生する化合物である。この硫黄含有化合物は、例えば、チオ硫酸塩、チオ硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、ジチオン酸塩、二硫酸塩、ペルオキソ硫酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、及びポリチオン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から構成される。この硫黄含有化合物は、蒸解を促進する観点から、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、硫化水素ナトリウム、及び、硫化ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から構成されることが好ましい。
【0079】
(蒸解促進剤)
実施の形態2の蒸解促進剤は、上述した第4級アンモニウム化合物と硫黄含有化合物を含む。第4級アンモニウム化合物と硫黄含有化合物との質量比率は、1:1~100:1である。この質量比率は、蒸解を促進する観点から、好ましくは1:1~50:1であり、より好ましくは1:1~20:1である。
【0080】
実施の形態2の蒸解促進剤の含有量は、リグノセルロースを含む材料に対して、0.001質量%~1.0質量%である。例えば、実施の形態2の蒸解促進剤の含有量は、リグノセルロースを含む材料100gに対して、1.0~1000mgであり、蒸解を促進する観点から、好ましくは2~500mgであり、より好ましくは5~200mgである。
【0081】
実施の形態2の蒸解促進剤は、構造が異なる2種以上の第4級アンモニウム化合物を含んでもよい。また、2種以上の硫黄含有化合物を含んでもよい。
【0082】
以上説明した特定の第4級アンモニウム化合物と、特定の硫黄含有化合物とを含む実施の形態2の蒸解促進剤を、蒸解工程で使用することで、リグノセルロースを含む材料を効率的に蒸解できる。すなわち、蒸解促進剤が硫黄含有化合物を含むことにより、第4級アンモニウム化合物の周辺で、硫化物イオン、多硫化物イオン、硫化水素イオン等が多く存在する状態が構成される。蒸解工程において、この蒸解促進剤を添加すると、不可逆的な反応でリグノセルロースを蒸解することができる。なお、例えば、アルカリ蒸解法による蒸解工程において、蒸解促進剤とは別に硫化ナトリウム等を添加するが、この添加で発生する硫化物イオン、多硫化物イオン、硫化水素イオン等は第4級アンモニウム化合物の周辺に多く存在しないため、不可逆的な反応は発生し難い。このため、効率的にリグノセルロースを蒸解させることが難しい。
【0083】
[実施の形態1、及び実施の形態2に添加可能な溶剤及び添加剤]
上述した実施の形態1及び実施の形態2の蒸解促進剤は、水や有機溶剤を含んでもよい。蒸解促進剤は、例えば、水や有機溶剤に溶解、又は乳化させて使用することができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素鎖の数が1~6の低級アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素鎖の数が1~6のアルキレングリコール;3-メチル-3-メトキシブタノール等が挙げられる。
【0084】
上述した実施の形態1及び実施の形態2の蒸解促進剤は、添加剤を更に含んでもよい。
(添加剤)
リグノセルロースを含む材料に蒸解促進剤を効率よく浸透させる観点から、添加剤としては、例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、鉱物油、オレンジオイル等の天然油、アルカリ剤、酸等を加えてもよい。また、パルプの洗浄性を高める観点から、添加剤としては、例えば、消泡剤、洗浄剤等を加えてもよい。これら添加剤は、蒸解促進剤の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0085】
上述したアルカリ剤としては、無機アルカリが挙げられる。無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0086】
上述した酸としては、例えば、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸、及び、酢酸、蟻酸、乳酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。
【0087】
以上、実施の形態1、及び実施の形態2の蒸解促進剤に含まれる化合物等に関する説明である。次に、実施の形態1、及び実施の形態2の蒸解促進剤に含まれる第4級アンモニウム化合物の製法、実施の形態1のアミン化合物の製法について説明する。
(第4級アンモニウム化合物の製造方法)
実施の形態1、及び実施の形態2の第4級アンモニウム化合物は、種々の方法で合成することができる。合成例の例として、例えば、R、R、及びRを有する第三級アミンに、Rを有する第4級化剤を加えて、70~150℃の温度で反応させることで得られる。
【0088】
また、別の合成例として、Rが(AO)H基である第4級アンモニウム化合物の場合、R、R、及びRを有する第三級アミンを任意の酸で中和した後、当量のアルキレンオキシドをその中和後の混合物に加えて、70~120℃の温度で4級化反応させることで第4級アンモニウム化合物が得られる。ここで、AOはアルキレンオキシ基である。
【0089】
また、別の合成例として、R、R、及びRが(AO)H基、(AO)m1H基、及び(AO)m2H基で示される置換基である第4級アンモニウム化合物の場合、トリアルカノールアミンに所定量のアルキレンオキシドを加えて、100~150℃の温度で付加させる。次に、Rを有する第4級化剤をその混合物に加えて、60~130℃の温度で反応させることで第4級アンモニウム化合物が得られる。n、m1及びm2は、例えば1~9の整数である。
【0090】
実施の形態1の蒸解促進剤に含まれるアミン化合物、実施の形態2の蒸解促進剤に含まれる硫黄含有化合物は、公知の方法で合成することができる。例えば、第3級モノアミンは、炭素数1~22のアルキルアミンに、70~150℃の温度でアルキレンオキシドを重合反応させることで得ることができる。
【0091】
(パルプの製造方法)
以上説明した実施の形態1及び2の蒸解促進剤はパルプの製造方法の蒸解工程において使用される。次に、これら蒸解促進剤を使用するパルプの製造方法について説明する。
パルプは、アルカリ系主剤及び亜硫酸塩系主剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の主剤、及び蒸解促進剤を加えて、リグノセルロースを含む材料を蒸解する蒸解工程、蒸解により得られたパルプを洗浄する洗浄工程、パルプから除塵するスクリーン工程、パルプを漂白する漂白工程、を含む方法により製造される。
【0092】
蒸解工程において、例えば、蒸解釜に、実施の形態の蒸解促進剤とリグノセルロースを含む材料とアルカリ系主剤とを加え、高温高圧の条件下で蒸解する。この蒸解により、リグノセルロースから繊維分(パルプ)を取り出す。
【0093】
蒸解工程における温度、圧力及び時間は、リグノセルロースを含む材料の種類、形状、及び大きさにより、適宜設定される。例えば、リグノセルロースを含む材料が木材チップの場合、温度は例えば50~300℃であり、蒸解釜等の設備の負荷低減の観点から、好ましくは80~250℃である。圧力は、例えば常圧~10MPaであり、蒸解釜等の設備の負荷低減の観点から、好ましくは常圧~5MPaである。時間は、蒸解釜等の設備の負荷低減の観点から、例えば1~5時間である。
【0094】
この蒸解工程で採用される蒸解法としては、例えば、アルカリ蒸解法、亜硫酸塩蒸解法等が挙げられる。アルカリ蒸解法は、更にクラフト法、ソーダ法、炭酸ソーダ法、ポリサルファイド法等に分けることができる。亜硫酸蒸解法は、更にアルカリ性亜硫酸塩法、中性亜硫酸塩法、重亜硫酸塩法等に分けることができる。蒸解法は、蒸解を促進する観点から、アルカリ蒸解法が好ましい。アルカリ蒸解法の中でも、クラフト法及びポリサルファイド法が好ましい。
【0095】
アルカリ蒸解法で使用するアルカリ系主剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。蒸解工程において添加するアルカリ系主剤の量は、リグノセルロースを含む材料の種類により異なるが、リグノセルロースを含む材料100質量部に対して、1~120質量部である。蒸解を効率的に行い、蒸解促進剤の効果を発揮させる観点から、好ましくは3~60質量部であり、より好ましくは5~60質量部である。
【0096】
アルカリ蒸解法の1つであるクラフト法は、アルカリ系主剤と、硫化ナトリウムとを加えて蒸解する方法である。例えば、アルカリ系主剤が水酸化ナトリウムである場合、加える硫化ナトリウムの量は、水酸化ナトリウム100質量部に対して、1~200質量部であり、蒸解を効率的に行う観点から、好ましくは10~100質量部である。
【0097】
アルカリ蒸解法の1つであるポリサルファイド法は、アルカリ系主剤と、硫化ナトリウムと、多硫化ナトリウム(NaSx、x=2~5)とを加えて蒸解する方法である。例えば、アルカリ系主剤が水酸化ナトリウムである場合、加える硫化ナトリウムの量は、水酸化ナトリウム100質量部に対して、1~200質量部であり、蒸解を効率的に行う観点から、好ましくは10~100質量部である。加える多硫化ナトリウムの量は、水酸化ナトリウム100質量部に対して、1~200質量部、蒸解を効率的に行う観点から、好ましくは10~100質量部である。
【0098】
アルカリ蒸解法の1つであるソーダ法は、アルカリ系主剤を加えて蒸解する方法である。例えば、アルカリ系主剤として水酸化ナトリウムが使用される。
【0099】
リグノセルロースを含む材料としては、例えば、木材、草木等が挙げられる。木材としては、広葉樹を原料とするL材の木材、針葉樹を原料とするN材の木材等が挙げられる。また、草木としては、バカス、ヨシ、ケナフ、クワ、竹等が挙げられる。木材及び草木は、例えばチップ状にして使用される。
【実施例0100】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。実施例及び比較例において、第4級アンモニウム化合物、アミン化合物、硫黄含有化合物、及びリグノセルロースを含む材料は、以下のものを使用した。
【0101】
(第4級アンモニウム化合物)
実施例及び比較例で使用した第4級アンモニウム化合物(E1~E8、e9~e10)のR、R、R、R 及び対イオンは、表1に示した構造である。第4級アンモニウム化合物(E1~E8、e9~e10)をそれぞれ合成した。
【0102】
【表1】
【0103】
(第4級アンモニウム化合物E1の合成)
還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、1モル当量のラウリルジメチルアミンを加えて、85~95℃に加熱した。ここに、1.1モル当量のジエチル硫酸を滴下しながら撹拌し、4級化反応をさせ、第4級アンモニウム化合物E1を得た。
【0104】
(第4級アンモニウム化合物E2の合成)
還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、1モル当量のラウリルジメチルアミンと、ラウリルジメチルアミンの質量に対して2倍量の蒸留水とを加えて、85~95℃に加熱した。ここに、1.1モル当量の塩化ベンジルを滴下しながら撹拌し、4級化反応をさせ、E2を得た。
【0105】
(第4級アンモニウム化合物E3の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のラウリルアミンを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに、2モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、ラウリルアミンに2モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物を得た。次に、還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、得られた付加物を1モル当量加えて85~95℃に加熱した。ここに1.1モル当量のジエチル硫酸を滴下しながら撹拌し、4級化反応をさせ、第4級アンモニウム化合物E3を得た。
【0106】
(第4級アンモニウム化合物E4の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のラウリルアミンを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに、2モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、ラウリルアミンに2モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物を得た。次に、得られた付加物の質量に対して2倍量の蒸留水を加えて、1モル当量の硝酸を加えて中和させた。その後、85~95℃に加熱し、1.1モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、4級化反応をさせた。最後に、エバポレータで70℃の条件下で、減圧脱水して、第4級アンモニウム化合物E4を得た。
【0107】
(第4級アンモニウム化合物E5の合成)
還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、1モル当量のステアリルジメチルアミンを加えて、85~95℃に加熱した。ここに、1.1モル当量のジメチル硫酸を滴下しながら撹拌し、4級化反応をさせ、第4級アンモニウム化合物E5を得た。
【0108】
(第4級アンモニウム化合物E6の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のオクチルジメチルアミンを加えて、オクチルアミンの質量に対して2倍量の蒸留水を加えて、0.7モル当量のリン酸を加えた。その後、85~95℃に加熱し、1.1モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、4級化反応をさせ、第4級アンモニウム化合物E6を得た。
【0109】
(第4級アンモニウム化合物E7の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のラウリルアミンを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに、8モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、ラウリルアミンに8モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物を得た。次に、得られた付加物の質量に対して2倍量の蒸留水を加えて、1.0モル当量のパラトルエンスルホン酸を加えて中和させた。その後、85~95℃に加熱し、1.1モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、4級化反応をさせ、第4級アンモニウム化合物E7を得た。
【0110】
(第4級アンモニウム化合物E8)
ジデシルジメチルアンモニウムクロリド(東京化成工業社製)を使用した。
【0111】
(第4級アンモニウム化合物e9の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のラウリルアミンを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに、32モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、ラウリルアミンに32モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物を得た。還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、得られた付加物を1モル当量を加えて、85~95℃に加熱した。ここに、1.1モル当量のジメチル硫酸を滴下しながら撹拌し、4級化反応をさせ、第4級アンモニウム化合物e9を得た。
【0112】
(第4級アンモニウム化合物e10の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のヘキシルアミンを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに、2モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、ラウリルアミンに2モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物を得た。次に、還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、得られた付加物を1モル当量加えて85~95℃に加熱した。ここに1.1モル当量のジエチル硫酸を滴下しながら撹拌し、4級化反応をさせ、第4級アンモニウム化合物e10を得た。
【0113】
(アミン化合物)
アミン化合物は、以下のアミン化合物を使用した。
第1級モノアミンとして、A1 テトラデシルアミンを使用した。
第2級モノアミンとして、A2 ジエタノールアミンを使用した。
第3級モノアミンとして、A3 N,N-ジメチルデシルアミン、A4 N-ラウリルジエタノールアミン、A5 トリエタノールアミンを使用した。
これらアミン化合物は、東京化成工業社製のものを使用した。
【0114】
第3級モノアミンa6、a7は、以下のように合成した。
(第3級モノアミンa6の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のラウリルアミンを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに30モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、ラウリルアミンに30モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物a6を得た。
【0115】
(第3級モノアミンa7の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のラウリルアミンを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに50モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、ラウリルアミンに50モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物a7を得た。
【0116】
(硫黄含有化合物)
硫黄含有化合物は、B1 チオ硫酸ナトリウム、B2 チオ硫酸アンモニウム、B3 硫化水素ナトリウム、B4 硫化ナトリウム、B5 4硫化ナトリウム、B6 亜硫酸カリウム、B7 亜硫酸水素ナトリウム、b8 硫酸ナトリウムを使用した。
B1~B4、B6~B7、b8の硫黄含有化合物は、富士フイルム和光純薬社製のものを使用した。B5の硫黄含有化合物は、ナガオ社製のものを使用した。
【0117】
(リグノセルロースを含む材料)
リグノセルロースを含む材料として、木材チップを使用した。
L材 広葉樹(アカシア:ユーカリ=7:3)を原料とする木材チップ、
N材 針葉樹(アカマツ)を原料とする木材チップ。
【0118】
上述した第4級アンモニウム化合物、アミン化合物、硫黄含有化合物、及びリグノセルロースを含む材料をそれぞれ使用して、各種評価を行った。
【0119】
(実施例1、L材、クラフト法、アミン化合物を含む蒸解促進剤)
木材チップとしてL材、第4級アンモニウム化合物とアミン化合物を含む蒸解促進剤を使用してクラフト法による蒸解を行った。まず、L材を目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残ったL材を60℃で24時間乾燥させた。蒸解促進剤は、L材(木材チップ)に対して第4級アンモニウム化合物E4(純分)とアミン化合物A1(純分)の含有量が0.03質量%、第4級アンモニウム化合物E4(純分)とアミン化合物A1(純分)との質量比率が100:1となるように調製した。具体的には、50.0gのL材(木材チップ)に対して、第4級アンモニウム化合物E4(純分)14.85mg、アミン化合物A1(純分)0.15mgを容器に入れ、蒸留水で溶解させ、実施例1で使用する蒸解促進剤を得た。
次に、ビーカーに、硫化ナトリウム5水和塩6.9g(硫化ナトリウム単体の純分として3.2g)、水酸化ナトリウム11.2gを加え、合計質量が145gとなるように蒸留水を加え、アルカリ性の水溶液を得た。この水溶液に、先ほど調製した蒸解促進剤を加え、合計質量が150gとなるように蒸留水を加え、撹拌して、蒸解液を得た。
準備したL材50.0g、蒸解液150gをポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に入れ、150℃、50分で蒸解を行った。
【0120】
蒸解の後、実施例1について木材片残留率、歩留率、カッパー価の評価を行い、その結果を表2に示した。また、木材片残留率、歩留率、カッパー価は、それぞれ以下の手順で評価した。
<木材片残留率(木材チップ残留率)>
木材片残留率(木材チップ残留率)を調べることで、木材片(木材チップ)の蒸解がどの程度進んでいるかを判断することができる。木材片残留率は、木材チップ残留率とも呼ばれる。
【0121】
木材片残留率は、下記の式から求めた。
木材片残留率(%)=(蒸解後の残渣物の質量(g)/蒸解前のサンプルの質量(g))×100
ここで、以下の処理を行ったものを蒸解後の残渣物とした。まず、蒸解により得られた混合物をふるいにかけた。次に目開き710μmのステンレス製のふるいに残った残渣を水で洗浄し、洗浄した水が無色になるまで洗浄を繰り返した。その後、105℃で10時間乾燥させた。これを残渣物とした。蒸解前のサンプルとは、蒸解する前にふるいにかけ乾燥させた木材チップである。例えば、実施例1の場合、蒸解する前にふるいにかけ乾燥させたL材である。
【0122】
クラフト法、L材を使用した場合の木材片残留率の評価基準は、以下の通りとした。
Excellent:木材片残留率が0.5%未満、
Good:木材片残留率が0.5%以上、1.5%未満、
Poor:木材片残留率が1.5%以上、2.5%未満、
Bad:木材片残留率が2.5%以上。
【0123】
<歩留率>
歩留率は、蒸解後に得られるパルプの歩留率であり、下記式から求めた。
歩留率(%)=(((i)回収したパルプ質量(g)+(ii)木材片残留の質量(g)×1/2)/(iii)蒸解前のサンプルの質量(g))×100
(i)回収したパルプ質量は、以下の処理後に得られたパルプの質量とした。まず、蒸解により得られた混合物を目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、そのふるいを通過した混合物をさらに目の細かい目開き75μmのステンレス製のふるいにかけた。このふるいで残った残渣を水で洗浄し、洗浄した水が無色になるまで洗浄を繰り返した。その後、この残渣を105℃で10時間乾燥させた。その後、質量を測定し、これを回収したパルプ質量とした。
(ii)木材片残留の質量は、以下の処理後に得られた残渣の質量とした。まず、蒸解により得られた混合物を目開き710μmのステンレス製のふるいに残った残渣を水で洗浄し、洗浄した水が無色になるまで洗浄を繰り返した。その後、105℃で10時間乾燥させた。その後、質量を測定し、これを木材片残留の質量とした。ここで、蒸解後の残渣を再度蒸解処理するとの想定で、処理後に得られた残渣の質量(木材片残留の質量)に1/2を乗じた質量が更に回収できる予定のパルプ質量であるとみなして、これを式中の分子に加えている。
(iii)蒸解前のサンプルとは、蒸解する前にふるいにかけ乾燥させた木材チップである。例えば、実施例1の場合、蒸解する前にふるいにかけ乾燥させたL材である。
【0124】
クラフト法、L材を使用した場合の歩留率の評価基準は、以下の通りとした。
Excellent:歩留率が52.5%以上、
Good:歩留率が52.5%未満、52.0%以上、
Poor:歩留率が52.0%未満、51.5%以上、
Bad:歩留率が51.5%未満。
【0125】
<カッパー価>
カッパー価は、残留リグニンの含有量を示す。蒸解後に得られるパルプのカッパー価は、残留リグニンの含有量が少ないため、低い。また、蒸解後に得られるパルプのカッパー価を調べることで、木材片(木材チップ)の蒸解がどの程度進んでいるかを判断することができる。以下の処理を行ったものを蒸解後のパルプとした。まず、蒸解により得られた混合物を目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、そのふるいを通過した混合物をさらに目の細かい目開き75μmのステンレス製のふるいにかけた。このふるいで残った残渣を水で洗浄し、洗浄した水が無色になるまで洗浄を繰り返した。その後、この残渣を105℃で10時間乾燥させた。これをパルプとした。カッパー価は、JIS P 8211(2011)に記載の方法により求めた。
【0126】
クラフト法、L材を使用した場合のカッパー価の評価基準は、以下の通りとした。
Excellent:カッパー価が15.5未満、
Good:カッパー価が15.5以上、16.0未満、
Poor:カッパー価が16.0以上、16.5未満、
Bad:カッパー価が16.5以上。
【0127】
(実施例2~17、比較例1~17、L材、クラフト法、アミン化合物を含む蒸解促進剤)
実施例2~17、及び比較例1~17は、表2及び表3に示すように、第4級アンモニウム化合物及びアミン化合物の種類、使用量、質量比率を変えた以外は、実施例1と同じ方法により蒸解を行い、評価した。なお、比較例1は、蒸解促進剤を加えずに蒸解を行い、評価した。
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】
【0130】
(実施例18、N材、クラフト法、アミン化合物を含む蒸解促進剤)
木材チップとしてN材、第4級アンモニウム化合物とアミン化合物を含む蒸解促進剤を使用してクラフト法による蒸解を行った。
実施例18は、第4級アンモニウム化合物をE1、アミン化合物をA4、木材チップをN材とし、硫化ナトリウム5水和塩、水酸化ナトリウムの添加量を変えた以外は実施例1と実質的に同じ手順で蒸解を行い、評価した。実施例18では、硫化ナトリウム5水和塩7.75g(硫化ナトリウム単体の純分として3.6g)、水酸化ナトリウム12.6gを蒸解液に添加した。
クラフト法、N材を使用した場合の各評価基準は以下の通りとした。
(1)木材片残留率の評価基準
Excellent:木材片残留率が0.5%未満、
Good:木材片残留率が0.5%以上、1.5%未満、
Poor:木材片残留率が1.5%以上、2.5%未満、
Bad:木材片残留率が2.5%以上。
(2)歩留率の評価基準
Excellent:歩留率が52.5%以上、
Good:歩留率が52.5%未満、52.0%以上、
Poor:歩留率が52.0%未満、51.5%以上、
Bad:歩留率が51.5%未満。
(3)カッパー価の評価基準
Excellent:カッパー価が29.0未満、
Good:カッパー価が29.0以上、29.5未満、
Poor:カッパー価が29.5以上、30.0未満、
Bad:カッパー価が30.0以上。
【0131】
(実施例19~22、比較例18~26、N材、クラフト法、アミン化合物を含む蒸解促進剤)
実施例19~22、及び比較例18~26は、表4及び表5に示すように、第4級アンモニウム化合物及びアミン化合物の種類、使用量、質量比率を変えた以外は、実施例18と同じ方法により蒸解を行い、評価した。なお、比較例18は蒸解促進剤を加えずに蒸解し評価した。
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【0134】
(実施例23、N材、ポリサルファイド法、アミン化合物を含む蒸解促進剤)
木材チップとしてN材、第4級アンモニウム化合物とアミン化合物とを含む蒸解促進剤を使用してポリサルファイド法による蒸解を行った。
実施例23は、第4級アンモニウム化合物をE1、アミン化合物をA4、木材チップをN材とし、硫化ナトリウム5水和塩、水酸化ナトリウムの添加量を変え、新たに4硫化ナトリウム溶液(ナガオ社製)を加えた以外は実施例1と実質的に同じ手順で蒸解を行い、評価した。実施例23では、硫化ナトリウム5水和塩6.2g(硫化ナトリウム単体の純分として2.88g)、水酸化ナトリウム12.6g、4硫化ナトリウム溶液2.4g(4硫化ナトリウム単体の純分として0.72g)を蒸解液に添加した。
ポリサルファイド法、N材を使用した場合の各評価基準は以下の通りとした。
(1)木材片残留率の評価基準
Excellent:木材片残留率が0.5%未満、
Good:木材片残留率が0.5%以上、1.5%未満、
Poor:木材片残留率が1.5%以上、2.5%未満、
Bad:木材片残留率が2.5%以上。
(2)歩留率の評価基準
Excellent:歩留率が52.5%以上、
Good:歩留率が52.5%未満、52.0%以上、
Poor:歩留率が52.0%未満、51.5%以上、
Bad:歩留率が51.5%未満。
(3)カッパー価の評価基準
Excellent:カッパー価が29.0未満、
Good:カッパー価が29.0以上、29.5未満、
Poor:カッパー価が29.5以上、30.0未満、
Bad:カッパー価が30.0以上。
【0135】
(実施例24、25、比較例27~31、N材、ポリサルファイド法、アミン化合物を含む蒸解促進剤)
実施例24、25、及び比較例27~31は、表6及び表7に示すように、第4級アンモニウム化合物及びアミン化合物の種類、使用量、質量比率を変えた以外は、実施例23と同じ方法により蒸解を行い、評価した。なお、比較例27は蒸解促進剤を加えずに蒸解し評価した。各評価は、実施例23の評価基準と同じ評価基準で評価した。
【0136】
【表6】
【0137】
【表7】
【0138】
(実施例26、L材、ソーダ法、アミン化合物を含む蒸解促進剤)
木材チップとしてL材、第4級アンモニウム化合物とアミン化合物とを含む蒸解促進剤を使用してソーダ法による蒸解を行った。
実施例26は、第4級アンモニウム化合物をE1、アミン化合物をA4、木材チップをL材とし、アルカリ系主剤として水酸化ナトリウムのみを使用し、その添加量を変えた。また、L材(木材チップ)に対して第4級アンモニウム化合物E1(純分)とアミン化合物A4(純分)の含有量が0.06質量%、第4級アンモニウム化合物E1(純分)とアミン化合物A4(純分)との質量比率が100:1となるように調製した。具体的には、50.0gのL材(木材チップ)に対して、第4級アンモニウム化合物E1(純分)29.7mg、アミン化合物A4(純分)0.3mgを容器に入れ、水で溶解させ、実施例26で使用する蒸解促進剤を得た。それ以外は実施例1と実質的に同じ手順で蒸解を行い、評価した。実施例26では、水酸化ナトリウム16.2gを蒸解液に添加した。
ソーダ法、L材を使用した場合の各評価基準は以下の通りとした。
(1)木材片残留率の評価基準
Excellent:木材片残留率が1.0%未満、
Good:木材片残留率が1.0%以上、1.5%未満、
Poor:木材片残留率が1.5%以上、2.5%未満、
Bad:木材片残留率が2.5%以上。
(2)歩留率の評価基準
Excellent:歩留率が52.0%以上、
Good:歩留率が52.0%未満、51.5%以上、
Poor:歩留率が51.5%未満、51.0%以上、
Bad:歩留率が51.0%未満。
(3)カッパー価の評価基準
Excellent:カッパー価が18.5未満、
Good:カッパー価が18.5以上、19.0未満、
Poor:カッパー価が19.0以上、19.5未満、
Bad:カッパー価が19.5以上。
【0139】
(実施例27、28、比較例32~36、L材、ソーダ法、アミン化合物を含む蒸解促進剤)
実施例27、28、及び比較例32~36は、表8及び表9に示すように、第4級アンモニウム化合物及びアミン化合物の種類、使用量、質量比率を変えた以外は、実施例26と同じ方法により蒸解を行い、実施例26の評価基準と同じ評価基準で評価した。なお、比較例32は蒸解促進剤を加えずに蒸解し評価した。
【0140】
【表8】
【0141】
【表9】
【0142】
(実施例29、L材、クラフト法、硫黄含有化合物を含む蒸解促進剤)
木材チップとしてL材、第4級アンモニウム化合物と硫黄含有化合物とを含む蒸解促進剤を使用してクラフト法による蒸解を行った。L材を目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残ったL材を60℃で24時間乾燥させた。蒸解促進剤は、L材(木材チップ)に対して第4級アンモニウム化合物E3(純分)と硫黄含有化合物B1(純分)の含有量が0.03質量%、第4級アンモニウム化合物E3(純分)と硫黄含有化合物B1(純分)との質量比率が6:1となるように調製した。具体的には、50.0gのL材(木材チップ)に対して第4級アンモニウム化合物E3(純分)12.86mg、硫黄含有化合物B1(純分)2.14mgを容器に入れ、蒸留水で溶解させ、実施例29で使用する蒸解促進剤を得た。
次に、ビーカーに、硫化ナトリウム5水和塩6.9g(硫化ナトリウム単体の純分として3.2g)、水酸化ナトリウム11.2gを加え、合計質量が145gとなるように蒸留水を加え、アルカリ性の水溶液を得た。この水溶液に、先ほど調製した蒸解促進剤を加え、合計質量が150gとなるように蒸留水を加え、撹拌して、蒸解液を得た。
準備したL材50.0g、蒸解液150gをポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に入れ、150℃、50分で蒸解を行った。
【0143】
蒸解の後、実施例29について木材片残留率、歩留率、カッパー価の評価を行い、その結果を表10に示した。実施例29の木材片残留率、歩留率、カッパー価は、実施例1の評価基準と同じ評価基準で評価した。
【0144】
(実施例30~44、比較例37~44、L材、クラフト法、硫黄含有化合物を含む蒸解促進剤)
実施例30~44、及び比較例37~44は、表10及び表11に示すように、第4級アンモニウム化合物及び硫黄含有化合物の種類、使用量、質量比率を変えた以外は、実施例29と同じ方法により蒸解を行い、評価した。
比較例44は、第4級アンモニウム化合物と硫黄含有化合物を別々に添加した。第4級アンモニウム化合物E3(純分)12.86mgのみを容器に入れ、蒸留水で溶解させ、比較例44で使用する蒸解促進剤を得た。次に、蒸解促進剤の調製の際に加えなかった硫黄含有化合物B1(純分)2.14mg、硫化ナトリウム5水和塩6.9g(硫化ナトリウム単体の純分として3.2g)、水酸化ナトリウム11.2gをビーカーに加え、合計質量が145gとなるように蒸留水を加え、アルカリ性の水溶液を得た。さらに、この水溶液に、先ほど調製した蒸解促進剤を加え、合計質量が150gとなるように蒸留水を加え、撹拌して、蒸解液を得た。そして、L材50.0g、蒸解液150gをポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に入れ、150℃、50分で蒸解を行った。上記の通り比較例44は、蒸解促進剤の調製の際に硫黄含有化合物B1(純分)を加えずに、蒸解液を調製する際に加えた点が実施例29とは異なる。評価基準は実施例29と同じく、実施例1の評価基準で評価した。
【0145】
【表10】
【0146】
【表11】
【0147】
(実施例45、N材、クラフト法、硫黄含有化合物を含む蒸解促進剤)
木材チップとしてN材、第4級アンモニウム化合物と硫黄含有化合物とを含む蒸解促進剤を使用してクラフト法による蒸解を行った。
実施例45は、第4級アンモニウム化合物をE2、硫黄含有化合物をB1、木材チップをN材とし、硫化ナトリウム5水和塩、水酸化ナトリウムの添加量を変えた以外は実施例18と実質的に同じ手順で蒸解を行い、評価した。実施例45では、硫化ナトリウム5水和塩7.75g(硫化ナトリウム単体の純分として3.6g)、水酸化ナトリウム12.6gを蒸解液に添加した。実施例45の木材片残留率、歩留率、カッパー価は、実施例18の評価基準と同じ評価基準で評価した。
【0148】
(実施例46~49、比較例45~50、N材、クラフト法、硫黄含有化合物を含む蒸解促進剤)
実施例46~49、及び比較例45~50は、表12及び表13に示すように、第4級アンモニウム化合物及び硫黄含有化合物の種類、使用量、質量比率を変えた以外は、実施例45と同じ方法により蒸解を行い、同じ評価基準で評価した。比較例50は、第4級アンモニウム化合物と硫黄含有化合物を別々に添加した。蒸解促進剤の調製の際に硫黄含有化合物B2(純分)を加えずに、蒸解液を調製する際に硫黄含有化合物B2(純分)を加えた点が実施例46と異なる。
【0149】
【表12】
【0150】
【表13】
【0151】
(実施例50、N材、ポリサルファイド法、硫黄含有化合物を含む蒸解促進剤)
木材チップとしてN材、第4級アンモニウム化合物と硫黄含有化合物とを含む蒸解促進剤を使用してポリサルファイド法による蒸解を行った。
実施例50は、第4級アンモニウム化合物をE2、硫黄含有化合物をB3、木材チップをN材とし、硫化ナトリウム5水和塩、水酸化ナトリウムの添加量を変え、新たに4硫化ナトリウム溶液(ナガオ社製)を加えた以外は実施例23と実質的に同じ手順で蒸解を行い、評価した。実施例50では、硫化ナトリウム5水和塩6.2g(硫化ナトリウム単体の純分として2.88g)、水酸化ナトリウム12.6g、4硫化ナトリウム溶液2.4g(4硫化ナトリウム単体の純分として0.72g)を蒸解液に添加した。実施例50の木材片残留率、歩留率、カッパー価は、実施例23の評価基準と同じ評価基準で評価した。
【0152】
(実施例51、52、比較例51~55、N材、ポリサルファイド法、硫黄含有化合物を含む蒸解促進剤)
実施例51、52、及び比較例51~55は、表14及び表15に示すように、第4級アンモニウム化合物及び硫黄含有化合物の種類、使用量、質量比率を変えた以外は、実施例50と同じ方法により蒸解を行い、評価した。木材片残留率、歩留率、カッパー価は、実施例23の評価基準と同じ評価基準で評価した。
比較例55は、第4級アンモニウム化合物と硫黄含有化合物を別々に添加した。第4級アンモニウム化合物E4(純分)12.86mgのみを容器に入れ、蒸留水で溶解させ、比較例55で使用する蒸解促進剤を得た。次に、蒸解促進剤の調製の際に加えなかった硫黄含有化合物B1(純分)2.14mg、硫化ナトリウム5水和塩6.2g(硫化ナトリウム単体の純分として2.88g)、水酸化ナトリウム12.6g、4硫化ナトリウム溶液2.4g(4硫化ナトリウム単体の純分として0.72g)をビーカーに加え、合計質量が145gとなるように蒸留水を加え、アルカリ性の水溶液を得た。さらに、この水溶液に、先ほど調製した蒸解促進剤を加え、合計質量が150gとなるように蒸留水を加え、撹拌して、蒸解液を得た。そして、N材50.0g、蒸解液150gをポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に入れ、150℃、50分で蒸解を行った。上記の通り、比較例55は、蒸解促進剤の調製の際に硫黄含有化合物B1(純分)を加えずに、蒸解液を調製する際に加えた点が実施例51とは異なる。
【0153】
【表14】
【0154】
【表15】
【0155】
(実施例53、L材、ソーダ法、硫黄含有化合物を含む蒸解促進剤)
木材チップとしてL材、第4級アンモニウム化合物と硫黄含有化合物とを含む蒸解促進剤を使用してソーダ法による蒸解を行った。
実施例53は、第4級アンモニウム化合物をE2、硫黄含有化合物をB4、木材チップをL材とし、アルカリ系主剤として水酸化ナトリウムのみを使用し、その添加量を変えた。また、L材(木材チップ)に対して第4級アンモニウム化合物E2(純分)と硫黄含有化合物B4(純分)の含有量が0.06質量%、第4級アンモニウム化合物E2(純分)と硫黄含有化合物B4(純分)との質量比率が6:1となるように調製した。具体的には、50.0gのL材(木材チップ)に対して、第4級アンモニウム化合物E2(純分)25.71mg、硫黄含有化合物B4(純分)4.29mgを容器に入れ、蒸留水で溶解させ、実施例53で使用する蒸解促進剤を得た。それ以外は実施例26と実質的に同じ手順で蒸解を行い、評価した。水酸化ナトリウム16.2gを蒸解液に添加した。木材片残留率、歩留率、カッパー価は、実施例26の評価基準と同じ評価基準で評価した。
【0156】
(実施例54、55、比較例56~61、L材、ソーダ法、硫黄含有化合物を含む蒸解促進剤)
実施例54、55、及び比較例56~61は、表16及び表17に示すように、第4級アンモニウム化合物及び硫黄含有化合物の種類、使用量、質量比率を変えた以外は、実施例53と同じ方法により蒸解を行い、評価した。比較例61は、第4級アンモニウム化合物と硫黄含有化合物を別々に添加した。蒸解促進剤の調製の際に硫黄含有化合物B2(純分)を加えずに、蒸解液を調製する際に硫黄含有化合物B2(純分)を加えた点が実施例54と異なる。木材片残留率、歩留率、カッパー価は、実施例26の評価基準と同じ評価基準で評価した。
【0157】
【表16】
【0158】
【表17】
【0159】
実施例1~55の蒸解促進剤は、クラフト法による蒸解、ポリサルファイド法による蒸解、及びソーダ法による蒸解において、良好な、木材片残留率、歩留率、及びカッパー価であることがわかった。
【0160】
以上、本発明の蒸解促進剤は、リグノセルロースを含む材料をより効率的に蒸解させることができる。
【0161】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0162】
(付記)
(付記1)
式(1)で表される第4級アンモニウム化合物と、
式(2)で表される第1級モノアミン、式(3)で表される第2級モノアミン、及び式(4)で表される第3級モノアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物と、を含む蒸解促進剤。
【化10】
式(1)中、Rは、炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のヒドロキシアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基、又は炭素数8~22のヒドロキシアルケニル基であり、
は、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基であり、
、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、アリール基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基であり、
Nは、窒素原子を示し、
p-は、対イオンを示し、無機アニオン、又は有機アニオンであり、pは、イオンの価数を示し、
Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは、水素原子又はアシル基であり、
nは、1~9の整数であり、mは、1~9の整数である。
【化11】
式(2)中、Rは、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、kは、1~6の整数である。
【化12】
式(3)中、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、rは、1~12の整数である。
【化13】
式(4)中、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~22のアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数8~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、tは、1~12の整数であり、R10は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Z基であり、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Zは、水素原子又はアシル基であり、uは、1~12の整数である。
【0163】
(付記2)
前記第4級アンモニウム化合物と前記アミン化合物との質量比率が5:1~10000:1である、付記1に記載の蒸解促進剤。
【0164】
(付記3)
式(1)で表される第4級アンモニウム化合物と、
前記第4級アンモニウム化合物の存在下において、硫化物イオン、多硫化物イオン、又は硫化水素イオンを発生する硫黄含有化合物と、を含む蒸解促進剤。
【化14】
式(1)中、Rは、炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のヒドロキシアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基、又は炭素数8~22のヒドロキシアルケニル基であり、
は、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基であり、
、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、アリール基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基であり、
Nは、窒素原子を示し、
p-は、対イオンを示し、無機アニオン、又は有機アニオンであり、pは、イオンの価数を示し、
Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは、水素原子又はアシル基であり、
nは、1~15の整数であり、mは、1~15の整数である。
【0165】
(付記4)
前記硫黄含有化合物は、チオ硫酸塩、チオ硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、ジチオン酸塩、二硫酸塩、ペルオキソ硫酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、及びポリチオン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から構成される、付記3に記載の蒸解促進剤。
【0166】
(付記5)
前記第4級アンモニウム化合物と前記硫黄含有化合物との質量比率が1:2~100:1である、付記3又は付記4に記載の蒸解促進剤。
【0167】
(付記6)
アルカリ系主剤及び亜硫酸塩系主剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の主剤、及び蒸解促進剤を加えて、リグノセルロースを含む材料を蒸解する蒸解工程を含む、パルプの製造方法であって、
前記蒸解促進剤が、付記1から付記5のいずれかに記載の蒸解促進剤である、パルプの製造方法。
【0168】
(付記7)
前記蒸解促進剤の含有量は、前記リグノセルロースを含む前記材料に対して0.001質量%~1.0質量%である、付記6に記載のパルプの製造方法。