(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059672
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20240423BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240423BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240423BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240423BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240423BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240423BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/62 Z
H01M4/505
H01M4/525
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024017001
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2022516723の分割
【原出願日】2020-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】王 可飛
(72)【発明者】
【氏名】師 亮
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改良された特性を有する電気化学装置及び電子装置を提供する。
【解決手段】本発明は、正極と、負極と、電解液とを含む電気化学装置であって、前記正極は、正極集電体と前記正極集電体上に形成された正極合剤層とを含み、前記電解液は、一定量のジフルオロリン酸リチウムを含み、且つ前記正極合剤層は、厚さ変化率が比較的小さい電気化学装置を提供する。本発明の電気化学装置は、改良された断続的なサイクル特性及びフロート充電特性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、電解液とを含む電気化学装置であって、
前記正極は、正極集電体と前記正極集電体上に形成された正極合剤層とを含み、
前記電解液は、ジフルオロリン酸リチウムを含み、前記電解液の全重量に対して、前記ジ
フルオロリン酸リチウムの含有量は、0.001wt%~2wt%であり、
前記正極合剤層を85℃のジエチルカーボネートに120時間浸漬させた後、前記正極合
剤層の厚さ変化率が10%未満である、電気化学装置。
【請求項2】
前記電解液は、カーボネートを含み、前記カーボネートは、環状カーボネートと鎖状カー
ボネートとを含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記電解液は、カーボネートとカルボン酸エステルとを含む、請求項1に記載の電気化学
装置。
【請求項4】
前記正極合剤層は、親水基及び親油基を有する助剤を含む、請求項1に記載の電気化学装
置。
【請求項5】
前記助剤が、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有し、
(a)酸化電位が4.5V以上であり、且つ還元電位が0.5V以下であり、
(b)表面張力が40mN/m以下であり、
(c)不飽和カルボン酸基を含み、
(d)前記正極合剤層の全重量に対して、前記助剤の含有量が3000ppm以下である
、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記助剤は、2-アクリル酸ドデシル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアク
リレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、(2-エチルヘキシル)アクリ
レート、アクリレート非イオン性フルオロカーボン界面活性剤、メタクリル酸ドデシル、
アクリル酸エステル共重合体、マレイン酸-アクリル酸共重合体またはエチレン-アクリ
ル酸共重合体のうちの少なくとも一種を含む、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記電解液における前記ジフルオロリン酸リチウムの含有量X mg及び前記正極合剤層
の反応面積Y m2は、10≦X/Y≦100を満たす、請求項1に記載の電気化学装置
。
【請求項8】
前記電解液は、ジニトリル化合物、トリニトリル化合物、スルトン、フルオロカーボネー
トまたは不飽和エチレンカーボネートのうちの少なくとも一種をさらに含む、請求項1に
記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記正極合剤層は、正極活物質を含み、前記正極活物質は、メジアン径が異なるリチウム
含有遷移金属酸化物を含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、一般式(1)で表される化合物を含み、
LiaM1bM2cM3dO2 (1)
M1は、Co、NiまたはMnから選択される少なくとも一種であり、
M2は、Mg、Ti、Zr、Ge、Nb、AlまたはSnから選択される少なくとも一種
であり、
M3は、Li、M1及びM2以外の元素であり、
a、b、c及びdが、
0.5≦a<1.1、
0.8≦b<1.2、
0.002≦c≦0.05、及び
0≦d≦0.05を満たす、請求項9に記載の電気化学装置。
【請求項11】
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、Mgと、Ti、Zr、Ge、Nb、Al及びSnか
ら選択される少なくとも一種の金属元素とを含む、請求項9に記載の電気化学装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的に、電気化学装置及び電子装置、特にリチ
ウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の発展及びモバイル装置に対する需要の増加に伴い、電気化学装置(例えば、リチウ
ムイオン電池)に対する需要が著しい増加するため、リチウムイオン電池の特性、特にリ
チウムイオン電池の断続的なサイクル特性及びフロート充電特性に対して、より高い要求
を提出する。
【0003】
リチウムイオン電池の特性は、主に電極、電解質、及びセパレータの特性に依存する。ま
た、リチウムイオン電池はサイクル中に充電/放電容量の低下が生じることがある。その
原因の一つは、界面安定性が悪くなることである。界面安定性を改善させるために、開発
者は、新しい電池の化学的システムを開発したり、既存の電池技術に他の物質を導入した
りする傾向がある。しかし、リチウムイオン電池の製造において、一般的に、原料のマッ
チングが悪いことによる配合が困難であるなどの問題があるため、リチウムイオン電池の
特性に悪影響を与える。
【0004】
この実情に鑑みて、改良された特性を有する電気化学装置及び電子装置を提供する必要が
ある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施例は、少なくともある程度で、関連技術に存在する少なくとも一つの問題を
解決するように、電気化学装置及び電子装置を提供する。
【0006】
本発明の一態様において、本発明は、正極と、負極と、電解液とを含む電気化学装置を提
供し、前記正極は、正極集電体と前記正極集電体上に形成された正極合剤層とを含み、前
記電解液は、ジフルオロリン酸リチウムを含み、前記電解液の全重量に対して、前記ジフ
ルオロリン酸リチウムの含有量は、0.001wt%~2wt%であり、前記正極合剤層
は、85℃のジエチルカーボネートに120時間浸漬した後、厚さ変化率が10%未満で
ある。
【0007】
本発明の実施例によれば、前記電解液は、カーボネートを含み、前記カーボネートは、環
状カーボネートと鎖状カーボネートとを含む。
【0008】
本発明の実施例によれば、前記電解液は、カーボネートとカルボン酸エステルとを含み、
前記カーボネートは、環状カーボネートまたは鎖状カーボネートのうちの少なくとも一種
を含む。
【0009】
本発明の実施例によれば、前記正極合剤層は、親水基及び親油基を有する助剤を含む。
【0010】
本発明の実施例によれば、前記助剤は、以下の特徴のうちの少なくとも一方を有する。
(a)酸化電位が4.5V以上であり、且つ還元電位が0.5V以下であり、
(b)表面張力が40mN/m以下であり、
(c)不飽和カルボン酸基を含み、
(d)前記正極合剤層の全重量に対して、前記助剤の含有量が3000ppm以下である
。
【0011】
本発明の実施例によれば、前記助剤は、2-アクリル酸ドデシル、ポリエチレングリコー
ルモノメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、(2
-エチルヘキシル)アクリレート、アクリレート非イオン性フルオロカーボン界面活性剤
、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸エステル共重合体、マレイン酸-アクリル酸共重合
体またはエチレン-アクリル酸共重合体のうちの少なくとも一種を含む。
【0012】
本発明の実施例によれば、前記電解液における前記ジフルオロリン酸リチウムの含有量X
mg及び前記正極合剤層の反応面積Y m2は、10≦X/Y≦100を満たす。
【0013】
本発明の実施例によれば、前記電解液は、ジニトリル化合物、トリニトリル化合物、スル
トン、フルオロカーボネートまたは不飽和エチレンカーボネートのうちの少なくとも一種
をさらに含む。
【0014】
本発明の実施例によれば、前記正極合剤層は、正極活物質を含み、前記正極活物質は、メ
ジアン径が異なるリチウム含有遷移金属酸化物を含む。
【0015】
本発明の実施例によれば、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、一般式(1)で表される化
合物を含み、
LiaM1bM2cM3dO2 (1)
ここで、
M1は、Co、NiまたはMnから選択される少なくとも一種であり、
M2は、Mg、Ti、Zr、Ge、Nb、AlまたはSnから選択される少なくとも一種
であり、
M3は、Li、M1及びM2以外の元素であり、
a、b、c及びdが、
0.5≦a<1.1、
0.8≦b<1.2、
0.002≦c≦0.05、及び
0≦d≦0.05を満たす。
【0016】
本発明の実施例によれば、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、Mgと、Ti、Zr、G
e、Nb、Al及びSnから選択される少なくとも一種の金属元素とを含む。
【0017】
本発明の更なる一態様によれば、本発明は、本発明による電気化学装置を含む電子装置を
提供する。
【0018】
本発明の実施例の他の態様及び利点について、一部的に以下で説明され、示され、または
本発明の実施例の実施を通じて説明される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の実施例は、本発明を限定するものとし
て解釈されるべきではない。
【0020】
本明細書で使用されている下記した用語は、別に断らない限り、以下に示される意味を有
する。
【0021】
発明を実施するための形態及び請求の範囲において、「うちの少なくとも一方」という用
語によって接続された項のリストは、リストされた項の任意の組み合わせを意味すること
ができる。例えば、項A及びBがリストされている場合、「A及びBのうちの少なくとも
一方」という短句は、Aのみ、Bのみ、またはA及びBを意味する。他の実例では、項A
、B、及びCがリストされている場合、「A、B、及びCのうちの少なくとも一方」とい
う短句は、Aのみ、又はBのみ、Cのみ、A及びB(Cを除く)、A及びC(Bを除く)
、B及びC(Aを除く)、またはA、B、及びCのすべてを意味する。項Aは、単一の要
素または複数の要素を含んでいてもよい。項Bは、単一の要素または複数の要素を含んで
いてもよい。項Cは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。「うちの少なく
とも一種」という用語は、「うちの少なくとも一方」という用語と同じ意味を有する。
【0022】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の電極(正極または負極)は、一般的に、
活物質、導電剤、増粘剤、粘着剤、及び溶媒を混合して、そして混合後のスラリーを集電
体上に塗布することにより調製される。しかし、溶媒と粘着剤との間又は溶媒と活物質と
の間のマッチング性は、一般に良くないですため、配合が困難になる。また、電気化学装
置の理論容量は、活物質の種類によって異なる。サイクルが進行するにつれて、電気化学
装置は、一般に、充電/放電容量の低下が生じる。これは、電気化学装置は、充電及び/
または放電中に電極界面が変化するからである。前記界面は、電極と電解液との間の界面
、集電体と電極との間の界面、及び電極活物質と添加剤との間の界面などを含む。界面安
定性が低下すると、電極活物質がその機能を発揮できなくなる。
【0023】
本発明は、特定の正極合剤層及び電解液を用いることにより、サイクルにおける電気化学
装置の界面安定性を確保するため、電気化学装置の断続的なサイクル特性及びフロート充
電特性を向上させる。
【0024】
本発明は、以下に記載された正極、負極及び電解液を含む電気化学装置を提供する。
【0025】
I、正極
正極は、正極集流体と前記正極集流体の一つまたは二つの表面に設けられた正極合剤層と
を備える。正極合剤層は、正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、正極活物質を含む
。正極合剤層は、単層であってもよく、複層であってもよい。複層の正極活物質層におけ
る各層は、同一又は異なる正極活物質を含んでもよい。
【0026】
正極合剤層の厚さ変化率
本発明の電気化学装置の主な特徴の一つは、前記正極合剤層を85℃のジエチルカーボネ
ートに120時間浸漬させた後、前記正極合剤層の厚さ変化率が10%未満であることで
ある。いくつかの実施例において、前記正極合剤層を85℃のジエチルカーボネートに1
20時間浸漬させた後、前記正極合剤層の厚さ変化率が8%未満である。いくつかの実施
例において、前記正極合剤層を85℃のジエチルカーボネートに120時間浸漬させた後
、前記正極合剤層の厚さ変化率が6%未満である。いくつかの実施例において、前記正極
合剤層を85℃のジエチルカーボネートに120時間浸漬させた後、前記正極合剤層の厚
さ変化率が5%未満である。いくつかの実施例において、前記正極合剤層を85℃のジエ
チルカーボネートに120時間浸漬させた後、前記正極合剤層の厚さ変化率が4%未満で
ある。
【0027】
正極合剤層の「厚さ変化率」とは、正極合剤層を85℃のジエチルカーボネートに120
時間浸漬させた後、正極合剤層の浸漬前に対する浸漬後の厚さ変化程度を指す。
【0028】
正極合剤層の厚さ変化率は、以下の方式により測定することができる。正極集電体の両側
に正極合剤層を備える正極を、直径が14±0.2mmである円盤状に打ち抜き、試験片
とする。試験片の中央部の厚さ(t0)を測定する。この試験片をジエチルカーボネートに
水平に浸漬させ、85±1℃の温度で120±0.3時間静置する。浸漬完了後、試験片
を取り出し、室温で水平に30分間静置した後、この試験片の中央部の厚さ(t1)を測定
する。以下の式により正極合剤層の厚さ変化率を算出する。
厚さ変化率=(t1-t0)/t0×100%。
【0029】
正極合剤層の厚さ変化率は、正極用スラリーに助剤を添加すること、又は正極活物質層の
表面に助剤コート層が設けられることにより制御することができる。正極活物質の種類及
び正極活物質粒子の大きさなどは、正極合剤層の厚さ変化率にほとんど影響を与えない。
正極合剤層の厚さ変化率が上記範囲内にあると、電気化学装置の断続的なサイクル特性及
びフロート充電特性を著しく改善させることができる。
【0030】
助剤
本発明のいくつかの実施例によれば、前記正極合剤層は、助剤を含む。
【0031】
いくつかの実施例において、前記助剤は、親水基及び親油基を有する。
【0032】
いくつかの実施例において、前記助剤の酸化電位は、4.5V以上であり、且つ還元電位
は、0.5V以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の酸化電位は、5V以上
であり、且つ還元電位は、0.3V以下である。上記した酸化/還元電位を備える助剤は
、電気化学的性能が安定しており、電気化学装置の断続的なサイクル特性及びフロート充
電特性の改善に寄与する。
【0033】
いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、40mN/m以下である。いくつか
の実施例において、前記助剤の表面張力は、30mN/m以下である。いくつかの実施例
において、前記助剤の表面張力は、25mN/m以下である。いくつかの実施例において
、前記助剤の表面張力は、20mN/m以下である。いくつかの実施例において、前記助
剤の表面張力は、15mN/m以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の表面
張力は、10mN/m以下である。助剤の表面張力は、固形分含有量が1%である助剤の
NMP溶液の条件で測定したものである。上記のような表面張力を備える助剤は、正極合
剤層の界面を良好にすることができ、電気化学装置の断続的なサイクル特性及びフロート
充電特性の改善に寄与する。
【0034】
助剤の表面張力は、以下の方法により測定することができる。JC2000D3E型接触
角計を用いて、固形分含有量が1%である助剤のNMP溶液を測定し各サンプルを少なく
とも3回測定し、少なくとも3つのデータを選択して、平均値を取り、助剤の表面張力が
得られる。
【0035】
いくつかの実施例において、前記助剤は、不飽和カルボン酸基を含む。いくつかの実施例
において、前記不飽和カルボン酸基は、アクリル酸エステル、ビニルエーテルアクリレー
ト、クロトン酸エステル、プロピオル酸エステル、ブチン酸エステル、又はアクリルアミ
ド、アクリロニトリル、ビニルエーテル基で修飾されたカルボン酸エステルのうちの少な
くとも一つを含む。
【0036】
いくつかの実施例において、前記助剤は、2-アクリル酸ドデシル、ポリエチレングリコ
ールモノメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、(
2-エチルヘキシル)アクリレート、アクリレート非イオン性フルオロカーボン界面活性
剤、メタクリル酸ドデシル、マレイン酸-アクリル酸共重合体またはエチレン-アクリル
酸共重合体のうちの少なくとも一種を含む。
【0037】
いくつかの実施例において、前記正極合剤層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、3
000ppm以下である。いくつかの実施例において、前記正極合剤層の全重量に対して
、前記助剤の含有量は、2500ppm以下である。いくつかの実施例において、前記正
極合剤層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、2000ppm以下である。いくつか
の実施例において、前記正極合剤層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、1500p
pm以下である。いくつかの実施例において、前記正極合剤層の全重量に対して、前記助
剤の含有量は、1000ppm以下である。いくつかの実施例において、前記正極合剤層
の全重量に対して、前記助剤の含有量は、500ppm以下である。いくつかの実施例に
おいて、前記正極合剤層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、200ppm以下であ
る。助剤の含有量が上記範囲内にあると、電気化学装置の断続的なサイクル特性及びフロ
ート充電特性の改善にに寄与する。
【0038】
正極活物質
正極活物質の種類は、特に限定されず、電気化学方式で金属イオン(例えば、リチウムイ
オン)を吸蔵及び放出可能なものであればよい。いくつかの実施例において、正極活物質
は、リチウムと少なくとも一種の遷移金属とを含有する物質である。正極活物質の実例は
、リチウム遷移金属複合酸化物及びリチウム含有遷移金属リン酸化合物を含むが、これら
に限定されない。
【0039】
いくつかの実施例において、前記正極活物質は、メジアン径が異なるリチウム含有遷移金
属酸化物を含む。いくつかの実施例において、メジアン径が異なるリチウム含有遷移金属
酸化物は、同一又は異なる化学組成を有する。
【0040】
いくつかの実施例において、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、一般式(1)で表される
化合物を含み、
LiaM1bM2cM3dO2 (1)
ここで、
M1は、Co、NiまたはMnから選択される少なくとも一種であり、
M2は、Mg、Ti、Zr、Ge、Nb、AlまたはSnから選択される少なくとも一種
であり、
M3は、Li、M1及びM2以外の元素であり、
a、b、c及びdが
0.5≦a<1.1、
0.8≦b<1.2、
0.002≦c≦0.05、及び
0≦d≦0.05を満たす。
【0041】
いくつかの実施例において、M1は、CoまたはNiのうちの少なくとも一種を含む。M
1がCoまたはNiのうちの少なくとも一種を含む場合、前記リチウム含有遷移金属酸化
物におけるCoまたはNiのうちの少なくとも一種の含有量は、50モル%以上であり、
いくつかの実施例において、60モル%上であり、いくつかの実施例において、70モル
%以上であり、いくつかの実施例において、80モル%以上であり、或いはいくつかの実
施例において、90モル%以上である。
【0042】
いくつかの実施例において、M1は、Coを含む。いくつかの実施例において、M1は、
Coである。M1がCoを含む場合、前記リチウム含有遷移金属酸化物におけるCoの含
有量は、30モル%以上であり、いくつかの実施例において、50モル%以上であり、い
くつかの実施例において、65モル%以上であり、いくつかの実施例において、80モル
%以上であり、いくつかの実施例において、90モル%以上であり、或いはいくつかの実
施例において、95モル%以上である。リチウム含有遷移金属酸化物がCoを含むと、正
極合剤層の密度の向上に寄与する。リチウム含有遷移金属酸化物におけるCoの含有量が
上記範囲内にあると、正極合剤層の密度をさらに改善させることができる。
【0043】
いくつかの実施例において、M2は、Mgを含む。いくつかの実施例において、M1の含
有量に対して、Mgの含有量は、0.01モル%以上である。いくつかの実施例において
、M1の含有量に対して、Mgの含有量は、0.05モル%以上である。いくつかの実施
例において、M1の含有量に対して、Mgの含有量は、0.07モル%以上である。いく
つかの実施例において、M1の含有量に対して、Mgの含有量は、0.5モル%以下であ
る。いくつかの実施例において、M1の含有量に対して、Mgの含有量は、0.2モル%
以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対して、Mgの含有量は、0.
1モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対して、Mgの含有量
は、上記した任意の二つの端点で構成される範囲内にある。リチウム含有遷移金属酸化物
におけるMgの含有量が上記範囲内にあると、Mg元素は、効率的に作用することができ
、電気化学装置の断続的なサイクル特性及びフロート充電特性を改善させる。
【0044】
いくつかの実施例において、M2は、Ti、Zr、Ge、Nb、Al及びSnのうちの少
なくとも一種をさらに含む。
【0045】
いくつかの実施例において、M2は、Ti、Zr、GeまたはNbのうちの少なくとも一
種をさらに含む。いくつかの実施例において、M1の含有量に対して、Ti、Zr、Ge
またはNbのうちの少なくとも一種の含有量は、0.005モル%以上である。いくつか
の実施例において、M1の含有量に対して、Ti、Zr、GeまたはNbのうちの少なく
とも一種の含有量は、0.008モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の
含有量に対して、Ti、Zr、GeまたはNbのうちの少なくとも一種の含有量は、0.
01モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対して、Ti、Zr
、GeまたはNbのうちの少なくとも一種の含有量は、0.3モル%以下である。いくつ
かの実施例において、M1の含有量に対して、Ti、Zr、GeまたはNbのうちの少な
くとも一種の含有量は、0.1モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含
有量に対して、Ti、Zr、GeまたはNbのうちの少なくとも一種の含有量は、0.0
5モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対して、Ti、Zr、
GeまたはNbのうちの少なくとも一種の含有量は、上記した任意の二つの端点で構成さ
れる範囲内にある。リチウム含有遷移金属酸化物におけるTi、Zr、GeまたはNbの
うちの少なくとも一種の含有量が上記範囲内にあると、電気化学装置の断続的なサイクル
特性及びフロート充電特性の更なる改善に寄与する。
【0046】
いくつかの実施例において、M2は、AlまたはSnのうちの少なくとも一種をさらに含
む。いくつかの実施例において、M1の含有量に対して、AlまたはSnのうちの少なく
とも一種の含有量は、0.01モル%以上である。いくつかの実施例において、M1の含
有量に対して、AlまたはSnのうちの少なくとも一種の含有量は、0.05モル%以上
である。いくつかの実施例において、M1の含有量に対して、AlまたはSnのうちの少
なくとも一種の含有量は、0.07モル%以上である。いくつかの実施例において、M1
の含有量に対して、Al或Snのうちの少なくとも一種の含有量は、0.5モル%以下で
ある。いくつかの実施例において、M1の含有量に対して、Al或Snのうちの少なくと
も一種の含有量は、0.2モル%以下である。いくつかの実施例において、M1の含有量
に対して、Al或Snのうちの少なくとも一種の含有量は、0.1モル%以下である。い
くつかの実施例において、M1の含有量に対して、Al或Snのうちの少なくとも一種の
含有量は、上記した任意の二つの端点で構成される範囲内にある。リチウム含有遷移金属
酸化物におけるAlまたはSnのうちの少なくとも一種の含有量が上記範囲内にあると、
電気化学装置の断続的なサイクル特性及びフロート充電特性の更なる改善に寄与する。
【0047】
いくつかの実施例において、cが0.004≦c≦0.02を満たす。いくつかの実施例
において、cが0.006≦c≦0.01を満たす。cが上記範囲内にあると、リチウム
イオン電池の断続的なサイクル特性及びフロート充電特性をさらに改善させることができ
る。
【0048】
リチウム含有遷移金属酸化物は、M2を様々な方式で含むことができ、特に制限されない
。いくつかの実施例において、M2は、リチウム含有遷移金属酸化物粒子上に存在する。
いくつかの実施例において、M2は、固体として、リチウム含有遷移金属酸化物内に均一
に分散する。いくつかの実施例において、M2は、リチウム含有遷移金属酸化物内に濃度
分布に基づく偏在する。いくつかの実施例において、M2は、リチウム含有遷移金属酸化
物の表面上に化合物層を形成する。
【0049】
いくつかの実施例において、M3は、Li以外のアルカリ金属元素、Mg以外のアルカリ
土類金属元素、IIIa族金属元素、Ti及びZr以外のIVb族金属元素、Nb以外の
Vb族金属元素、VIb族金属元素、Mn以外のVIIb族金属元素、Co及びNi以外
のVIII族金属元素、Ib族金属元素、Zn、Al以外のIIIa族金属元素、Sn及
びPb以外のIVa族金属元素、PまたはBiのうちの少なくとも一種を含む。
【0050】
いくつかの実施例において、M3は、Na、K、Rb、Be、Ca、Sr、Ba、Sc、
Y、La、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Tc、Re、Fe、Ru、Rh、Cu、A
g、Au、Zn、B、Ca、In、Si、PまたはBiのうちの少なくとも一種を含む。
【0051】
いくつかの実施例において、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、M3を含まない(即ち
、d=0)。
【0052】
いくつかの実施例において、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、
LiNi0.81Co0.16Al0.03O2、
LiNi0.81Co0.16Mg0.03O2、
LiNi0.81Co0.16Si0.03O2、
LiNi0.81Co0.16Ti0.03O2、
LiCo0.96Ti0.04O2、
LiCo0.998Mg0.0008Ti0.0004Al0.0008O2、
LiCo0.994Mg0.0024Ti0.0012Al0.0024O2、
LiCo0.9988Mg0.0008Ti0.0004O2、
LiCo0.9964Mg0.0024Ti0.0012O2、或
LiCo0.334Ni0.33Mn0.33Mg0.0024Ti0.0012Al0
.0024O2のうちの少なくとも一種を含む。
【0053】
リチウム含有遷移金属酸化物における各元素の含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)分
析により得ることができる。具体的に、リチウム含有遷移金属酸化物を約5g精秤し、2
00mlのビーカーに入れた後、王水100mlを加え、溶液の量が20~25mlにな
るまで加熱濃縮し、冷却し、Advantec社製の定量濾紙「No.5B」で固形物を
分離し、ろ液と洗浄液とを100mlのメスフラスコに入れて定容希釈した後、日本Ni
ppon Jarrell-Ash Ltd製のシーケンシャル型ICP分析装置「IP
IS1000」を用いて元素の含有量を測定した。
【0054】
いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記リチウム含有遷移金属酸
化物の含有量は、99wt%以下である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重
量に対して、前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、97.5wt%以下である。
いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記リチウム含有遷移金属酸
化物の含有量は、97wt%以下である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重
量に対して、前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、98wt%以下である。いく
つかの実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記リチウム含有遷移金属酸化物
の含有量は、95wt%以下である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に
対して、前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、85wt%以上である。いくつか
の実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記リチウム含有遷移金属酸化物の含
有量は、90wt%以下である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に対し
て、前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量は、92wt%以下である。いくつかの実
施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記リチウム含有遷移金属酸化物の含有量
は、上記した任意の二つの端点で構成される範囲内にある。正極合剤層におけるリチウム
含有遷移金属酸化物の含有量が上記範囲内にあると、正極合剤層は、高容量及び低抵抗を
備えて、正極の形成に寄与する。
【0055】
いくつかの実施例において、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、第一の粒子と第二の粒
子とを含み、前記第一の粒子は、第一のメジアン径を有し、前記第二の粒子は、第二のメ
ジアン径を有し、前記第一のメジアン径は、前記第二のメジアン径より小さい。メジアン
径D50は、公知のレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置により測定することができる
。
【0056】
いくつかの実施例において、前記第一のメジアン径は、0.5μm~10μmである。い
くつかの実施例において、前記第一のメジアン径は、1μm~8μmである。いくつかの
実施例において、前記第一のメジアン径は、2μm~6μmである。いくつかの実施例に
おいて、前記第二のメジアン径は、11μm~30μmである。いくつかの実施例におい
て、前記第二のメジアン径は、12μm~25μmである。いくつかの実施例において、
前記第二のメジアン径は、13μm~20μmである。
【0057】
リチウム含有遷移金属酸化物のメジアン径は、以下の方法により調整することができる。
遷移金属元素M1の酸性水溶液にNaOHを滴下し、沈殿させてM1の水酸化物を得、M
1の水酸化物を焼成してM1の酸化物を得る。リチウム含有遷移金属酸化物のメジアン径
は、沈殿時間、沈殿粒子径及び焼成したM1の酸化物の粒子径を制御することによりメジ
アン径制御されることができる。
【0058】
いくつかの実施例において、正極活物質の放電容量は、負極活物質の充電可能容量より小
さいことにより、リチウムイオン電池が充電中に負極へのリチウム金属の意図しない析出
を防止することができる。
【0059】
正極合剤層の密度
いくつかの実施例において、前記正極合剤層の密度は、3.5g/cm3以上である。い
くつかの実施例において、前記正極合剤層の密度は、3.6g/cm3以上である。いく
つかの実施例において、前記正極合剤層の密度は、3.8g/cm3以上である。いくつ
かの実施例において、前記正極合剤層の密度は、4.6g/cm3以下である。いくつか
の実施例において、前記正極合剤層の密度は、4.4g/cm3以下である。いくつかの
実施例において、前記正極合剤層の密度は、4.2g/cm3以下である。いくつかの実
施例において、前記正極合剤層の密度は、上記した任意の二つの端点で構成される範囲内
にある。正極合剤層の密度が上記範囲内にあると、正極合剤層は、良好な濡れ性を備え、
電気化学装置の性能の改善に寄与する。
【0060】
正極合剤層の密度は、以下の方法により測定することができる。正極を一定の面積で切り
出し、その重量W1を最小目盛1mgの電子天秤で測定し、正極の厚みT1を最小目盛1
μmのマイクロメーターで測定し、正極集電体を剥離し、その重量W2を電子天秤で測定
し、かつ正極集電体の厚みT2をマイクロメーターで測定して、W1-W2を正極合剤層
の重量、T1-T2を正極合剤層の厚さとし、正極合剤層の厚さ及び面積から正極合剤層
の体積を算出した後、正極合剤層の重量及び体積から正極合剤層の密度を算出した。
【0061】
正極合剤層の厚さ
いくつかの実施例において、前記正極合剤層の厚さは、30μm~300μmである。い
くつかの実施例において、前記正極合剤層の厚さは、50μm~280μmである。いく
つかの実施例において、前記正極合剤層の厚さは、80μm~250μmである。いくつ
かの実施例において、前記正極合剤層の厚さは、100μm~200μmである。いくつ
かの実施例において、前記正極合剤層の厚さは、30μm、50μm、80μm、100
μm、120μm、150μm、180μm、200μmであり、或いは上記した任意の
二つの値で構成される範囲内にある。
【0062】
正極合剤層の厚さは、以下の方法により測定することができる。正極を切り取り、正極の
厚さT1を最小目盛1μmのマイクロメーターで測定し、正極集電体を剥離して、正極集
電体の厚さT2をマイクロメーターで測定して、T1-T2を正極合剤層の厚さとする。
【0063】
導電層
いくつかの実施例において、正極合剤層は、導電剤を含む導電層をさらに含んでもよい。
いくつかの実施例において、前記導電層は、正極活物質を含まない。導電剤の実例は、黒
鉛、カーボンブラックまたはアセチレンブラックを含むが、これらに限定されない。
【0064】
いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記導電剤の含有量は、1w
t%以上である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記導電剤
の含有量は、1.1wt%以上である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量
に対して、前記導電剤の含有量は、1.2wt%以上である。いくつかの実施例において
、正極合剤層の全重量に対して、前記導電剤の含有量は、3wt%以下である。いくつか
の実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記導電剤の含有量は、2wt%以下
である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記導電剤の含有量
は、1.5wt%以下である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に対して
、前記導電剤の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。正極合剤
層における導電剤の含有量が上記範囲内にあると、正極合剤層の密度及び容量の改善に寄
与して、電気化学装置のサイクル特性を向上させてその負荷特性を低下させる。
【0065】
粘着剤
いくつかの実施例において、前記正極合剤層は、粘着剤を含む。粘着剤の実例は、ポリフ
ッ化ビニリデンまたはポリテトラフルオロエチレンを含むが、これらに限定されない。
【0066】
いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記粘着剤の含有量は、1w
t%以上である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記粘着剤
の含有量は、1.3wt%以上である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量
に対して、前記粘着剤の含有量は、1.5wt%以上である。いくつかの実施例において
、正極合剤層の全重量に対して、前記粘着剤の含有量は、4wt%以下である。いくつか
の実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記粘着剤の含有量は、3wt%以下
である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前記粘着剤の含有量
は、2wt%以下である。いくつかの実施例において、正極合剤層の全重量に対して、前
記粘着剤の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。正極合剤層に
おける粘着剤の含有量が上記範囲内にあると、正極活物質層と正極集電体との密着性が良
好となり、正極が粉砕されて脱落する可能性を避けることで、正極の安定性の改善に寄与
する。
【0067】
正極集電体
正極集電体の種類は、特に限定されず、任意の既知の正極集電体に適用する材料であって
もよい。正極集電体的の実例は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケルメッキアル
ミニウム、ステンレス鋼、チタンまたはタンタルのうちの少なくとも一種、カーボンクロ
ス、カーボンペーパーなどの炭素材料を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施
例において、正極集電体は、金属材料である。いくつかの実施例において、正極集電体は
、アルミニウムである。
【0068】
正極集電体の形態は、特に制限されない。正極集電体が金属材料である場合、正極集電体
の形態は、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パ
ンチングメタル、発泡メタルなどを含むが、これらに限定されない。正極集電体が炭素材
料である場合、正極集電体の形態は、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱などを含むが、これら
に限定されない。いくつかの実施例において、正極集電体は、金属薄膜である。いくつか
の実施例において、前記金属薄膜は、メッシュ状である
【0069】
いくつかの実施例において、前記正極集電体の厚さは、8μm~20μmである。いくつ
かの実施例において、前記正極集電体の厚さは、10μm~18μmである。いくつかの
実施例において、前記正極集電体の厚さは、12μm~15μmである。いくつかの実施
例において、前記正極集電体の厚さは上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある
。
【0070】
正極集電体及び正極活物質層の電子の接触抵抗を低減するために、正極集電体の表面に導
電剤を含んでもよい。導電剤の実例は、炭素、及び金、プラチナ、銀などの貴金属類を含
むが、これらに限定されない。
【0071】
本発明の正極の調製方法は、限制されない。例えば、正極は、以下の方法により製造する
ことができる。二種以上のメジアン径が異なるリチウム含有遷移金属酸化物を一定の重量
比で混合し、必要に応じて、導電剤及び粘着剤を添加し、溶媒を加え、正極合剤用スラリ
ーを得る。得られた正極合剤用スラリーを正極集電体(例えば、アルミ箔)上に塗布し、
乾燥して、正極合剤層を形成する。正極合剤層を正極集電体の一つまたは二つの表面に適
用して、必要に応じて、圧延ステップを行い、正極を得る。
【0072】
II、電解液
本発明の電気化学装置の主な特徴の他の一つは、前記電解液がジフルオロリン酸リチウム
を含み、前記電解液の全重量に対して、前記ジフルオロリン酸リチウムの含有量が0.0
01wt%~2wt%であることである。いくつかの実施例において、前記電解液の全重
量に対して、前記ジフルオロリン酸リチウムの含有量は、0.01wt%~1wt%であ
る。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記ジフルオロリン酸リ
チウムの含有量は、0.05wt%~0.5wt%である。いくつかの実施例において、
前記電解液の全重量に対して、前記ジフルオロリン酸リチウムの含有量は、0.1wt%
~0.3wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記
ジフルオロリン酸リチウムの含有量は、0.001wt%、0.005wt%、0.01
wt%、0.05wt%、0.1wt%、0.3wt%、0.5wt%、0.8wt%、
1wt%、1.2wt%、1.5wt%、1.8wt%、2wt%であり、或いは上記し
た任意の二つの値で構成される範囲内にある。電解液におけるジフルオロリン酸リチウム
の含有量が上記範囲内にあると、リチウムイオン電池の断続的なサイクル特性及びフロー
ト充電特性の更なる改善に寄与する。
【0073】
いくつかの実施例において、前記電解液における前記ジフルオロリン酸リチウムの含有量
X mg及び前記正極合剤層の反応面積Y m2は、10≦X/Y≦100を満たす。い
くつかの実施例において、X及びYは、20≦X/Y≦70を満たす。いくつかの実施例
において、X及びYは、30≦X/Y≦50を満たす。X及びYが上記した関係を満たす
と、リチウムイオン電池の断続的なサイクル特性及びフロート充電特性の更なる改善に寄
与する。
【0074】
正極合剤層の反応面積は、以下の方法により測定することができる。表面積計(大倉理研
製全自動表面積測定装置)を用い、窒素流通下で、350℃で試料を15分間予備乾燥し
た後、大気圧に対する窒素ガスの相対圧の値が0.3に正確に調整した窒素ヘリウム混合
ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定して、この方法に従い
、正極合剤層の比表面積(m2/g)(即ち正極活物質及び添加剤(粘着剤、導電剤、増
粘剤及びフィラーなど)を含む正極合剤層全体の比表面積)、及び正極合剤層の重量(即
ち、正極活物質及び添加剤(粘着剤、導電剤、増粘剤及びフィラーなど)を含む正極合剤
層全体の全重量)を測定して、そして、正極合剤層の反応面積は、下記式により算出する
。
反応面積=正極合剤層の比表面積×正極合剤層の重量。
【0075】
いくつかの実施例において、前記電解液は、カーボネートを含む。いくつかの実施例にお
いて、前記電解液は、カーボネート及びカルボン酸エステルを含む。いくつかの実施例に
おいて、前記カーボネートは、環状カーボネートまたは鎖状カーボネートのうちの少なく
とも一種を含む。カーボネートまたはそれとカルボン酸エステルとの組み合わせは、電極
の表面にパッシベーション膜を形成することに寄与するため、電気化学装置の断続的なサ
イクル特性及びフロート充電特性を向上させることができる。
【0076】
いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記カーボネートの含有量は
、10wt%~90wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対
して、前記カーボネートの含有量は、15wt%~85wt%である。いくつかの実施例
において、前記電解液の全重量に対して、前記カーボネートの含有量は、20wt%~7
5wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記カーボ
ネートの含有量は、25wt%~65wt%である。いくつかの実施例において、前記電
解液の全重量に対して、前記カーボネートの含有量は、10wt%、15wt%、20w
t%、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%、50wt%、6
0wt%、70wt%、80wt%、90wt%であり、或いは上記した任意の二つの値
で構成される範囲内にある。電解液におけるカーボネートの含有量が上記範囲内にあると
、電気化学装置の断続的なサイクル特性及びフロート充電特性の更なる改善に寄与する。
【0077】
いくつかの実施例において、前記環状カーボネートの実例は、エチレンカーボネート(E
C)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネートのうちの一種または多
種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、前記環状カーボネート
は、3~6個の炭素原子を有する。
【0078】
いくつかの実施例において、前記鎖状カーボネートの実例は、ジメチルカーボネート、エ
チルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチル-n-プロピルカーボ
ネート、エチル-n-プロピルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネートなどの鎖状カー
ボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。フッ素によって
置換された鎖状カーボネートの実例は、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジ
フルオロメチル)カーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、ビス(2-
フルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス
(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2-フルオロエチルメチルカーボネ
ート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート及び2,2,2-トリフルオロエチ
ルメチルカーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0079】
いくつかの実施例において、前記カルボン酸エステルは、鎖状カルボン酸エステルまたは
環状カルボン酸エステルのうちの少なくとも一種を含む。
【0080】
いくつかの実施例において、前記環状カルボン酸エステルの実例は、γ-ブチロラクトン
及びγ-バレロラクトンなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施例において、環状カルボン酸エステルの水素原子の一部は、フッ素によっ
て置換されてもよい。
【0081】
いくつかの実施例において、前記鎖状カルボン酸エステルの実例は、酢酸メチル、酢酸エ
チル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸イソブ
チル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピ
ル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチ
ル、イソ酪酸エチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、ピバリン酸メチル及びピバリン酸エ
チルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例に
おいて、鎖状カルボン酸エステルの水素原子の一部は、フッ素によって置換されてもよい
。いくつかの実施例において、フッ素によって置換された鎖状カルボン酸エステルの実例
は、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸プロピル、ト
リフルオロ酢酸ブチル及びトリフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチルなどを含む
が、これらに限定されない。
【0082】
いくつかの実施例において、前記電解液は、ジニトリル化合物、トリニトリル化合物、ス
ルトン、フルオロカーボネートまたは不飽和エチレンカーボネートのうちの少なくとも一
種をさらに含む。
【0083】
いくつかの実施例において、前記ジニトリル化合物の実例は、スクシノニトリル、グルタ
ロニトリル、アジポニトリル、1,5-ジシアノペンタン、1,6-ジシアノヘキサン、
テトラメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタ
ロニトリル、2,2,4,4-テトラメチルグルタロニトリル、1,4-ジシアノペンタ
ン、1,4-ジシアノペンタン、1,2-ジシアノベンゼン、1,3-ジシアノベンゼン
、1,4-ジシアノベンゼン、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル、
3,5-ジオキサ-ピメロニトリル、1,4-ビス(シアノエトキシ)ブタン、ジエチレ
ングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(2-シ
アノエチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(2-シアノエチル)エーテル、
1,3-ビス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,4-ビス(2-シアノエトキシ)ブ
タン、1,5-ビス(2-シアノエトキシ)ペンタン、エチレングリコールビス(4-シ
アノブチル)エーテル、1,4-ジシアノ-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2-メチル
-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2-エチル-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2,3
-ジメチル-2-ブテン、1,4-ジシアノ-2,3-ジエチル-2-ブテン、1,6-
ジシアノ-3-ヘキセンまたは1,6-ジシアノ-2-メチル-3-ヘキセンのうちの一
種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0084】
いくつかの実施例において、前記トリニトリル化合物の実例は、1,3,5-ペンタント
リカルボニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,6-ヘキサント
リカルボニトリル、1,2,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,3-トリス(2
-シアノエトキシ)プロパン、1,2,4-トリス(2-シアノエトキシ)ブタン、1,
1,1-トリス(シアノエトキシメチレン)エタン、1,1,1-トリス(シアノエトキ
シメチレン)プロパン、3-メチル-1,3,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタン、
1,2,7-トリス(シアノエトキシ)ヘプタン、1,2,6-トリス(シアノエトキシ
)ヘキサン及び1,2,5-トリス(シアノエトキシ)ペンタンのうちの一種または多種
を含むが、これらに限定されない。
【0085】
いくつかの実施例において、前記スルトンの実例は、1,3-プロパンスルトン、1-フ
ルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フ
ルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、2-メチ
ル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン
-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-
1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1
-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、2-
フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-2-プロペン-1,3-ス
ルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-1-プロペン-1
,3-スルトン、3-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-2-プロ
ペン-1,3-スルトン、2-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-
2-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、1,5-ペンタンスルトン
、メチレンメタンジスルホネート及びエチレンメタンジスルホネートなどのうちの一種ま
たは多種を含むが、これらに限定されない。
【0086】
いくつかの実施例において、前記フルオロカーボネートは、式C=O(OR1)(OR2)を
有し、ここで、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキ
ル基またはハロゲン化アルキル基から選択され、ここで、R1及びR2のうちの少なくと
も一つは、1~6個の炭素原子を有するフルオロアルキル基から選択され、且つR1及び
R2は、任意に、それらが連結する原子とともに5~7員環を形成する。
【0087】
いくつかの実施例において、前記フルオロカーボネートの実例は、フルオロエチレンカー
ボネート、シス-4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、トランス-4,4-ジフル
オロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-
4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、炭
酸トリフルオロメチルメチル、炭酸トリフルオロエチルメチル及び炭酸エチルトリフルオ
ロエチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0088】
いくつかの実施例において、前記不飽和エチレンカーボネートの実例は、ビニレンカーボ
ネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、1,2-ジメチル
ビニレンカーボネート、1,2-ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカー
ボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1
-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネ
ート、1-n-プロピル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエ
チレンカーボネート、1,1-ジビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレ
ンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネート及び1,1-ジ
エチル-2-メチレンエチレンカーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これ
らに限定されない。いくつかの実施例において、前記不飽和エチレンカーボネートは、入
手しやすく、かつ更なる優れた効果を達成できるから、ビニレンカーボネートを含む。
【0089】
いくつかの実施例において、前記電解液は、環状エーテルをさらに含む。いくつかの実施
例において、前記環状エーテルの実例は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロ
フラン、1,3-ジオキソラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,
3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン及びジメトキシプロパンの
うちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施例において、前記電解液は、鎖状エーテルをさらに含む。いくつかの実施
例において、前記鎖状エーテルの実例は、ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン
、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、1,2-
ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、1,1-エトキシメトキシエタン及び1,
2-エトキシメトキシエタンなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されな
い。
【0091】
いくつかの実施例において、前記電解液は、リン含有有機溶媒をさらに含む。いくつかの
実施例において、前記リン含有有機溶媒の実例は、りん酸トリメチル、りん酸トリエチル
、りん酸ジメチルエチル、りん酸メチルジエチル、りん酸エチレンメチル、りん酸エチレ
ンエチル、りん酸トリフェニル、亜りん酸トリメチル、亜りん酸トリエチル、亜りん酸ト
リフェニル、りん酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)及びりん酸トリス(2,
2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)などのうちの一種または多種を含むが、これ
らに限定されない。
【0092】
いくつかの実施例において、前記電解液は、硫黄含有有機溶媒をさらに含む。いくつかの
実施例において、前記硫黄含有有機溶媒の実例は、スルホラン、2-メチルスルホラン、
3-メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルメチルスルホン、
メチルプロピルスルホン、ジメチルスルホキシド、メタンスルホン酸メチル、メタンスル
ホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、硫酸ジメチル、硫酸
ジエチル及び硫酸ジブチルのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。い
くつかの実施例において、硫黄含有有機溶媒の水素原子の一部は、フッ素によって置換さ
れてもよい。
【0093】
いくつかの実施例において、前記電解液は、フッ素含有溶媒をさらに含む。いくつかの実
施例において、前記芳香族フッ素含有溶媒は、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、
トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフル
オロベンゼン及びトリフルオロメチルベンゼンのうちの一種または多種を含むが、これら
に限定されない。
【0094】
いくつかの実施例において、前記電解液は、硫黄-酸素二重結合を含有する化合物の一種
または多種を含む。いくつかの実施例において、前記硫黄-酸素二重結合を含有する化合
物の実例は、環状硫酸エステル、鎖状硫酸エステル、鎖状スルホン酸エステル、環状スル
ホン酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステルなどのうちの一種または多
種を含むが、これらに限定されない。
【0095】
いくつかの実施例において、前記環状硫酸エステルの実例は、1,2-エチレングリコー
ル硫酸エステル、1,2-プロピレングリコール硫酸エステル、1,3-プロピレングリ
コール硫酸エステル、1,2-ブチレングリコール硫酸エステル、1,3-ブチレングリ
コール硫酸エステル、1,4-ブチレングリコール硫酸エステル、1,2-ペンチレング
リコール硫酸エステル、1,3-ペンチレングリコール硫酸エステル、1,4-ペンチレ
ングリコール硫酸エステル及び1,5-ペンチレングリコール硫酸エステルなどのうちの
一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0096】
いくつかの実施例において、前記鎖状硫酸エステルの実例は、硫酸ジメチル、硫酸エチル
メチル及び硫酸ジエチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0097】
いくつかの実施例において、前記鎖状スルホン酸エステルの実例は、フルオロスルホン酸
メチル及びフルオロスルホン酸エチルなどのフルオロスルホン酸エステル、メタンスルホ
ン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ジメタンスルホン酸ブチル、2-(メタンスルホ
ニルオキシ)プロピオン酸メチル及び2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸エチ
ルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0098】
いくつかの実施例において、前記鎖状亜硫酸エステルの実例は、亜硫酸ジメチル、亜硫酸
エチルメチル及び亜硫酸ジエチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定さ
れない。
【0099】
いくつかの実施例において、前記環状亜硫酸エステルの実例は、1,2-エチレングリコ
ール亜硫酸エステル、1,2-プロピレングリコール亜硫酸エステル、1,3-プロピレ
ングリコール亜硫酸エステル、1,2-ブチレングリコール亜硫酸エステル、1,3-ブ
チレングリコール亜硫酸エステル、1,4-ブチレングリコール亜硫酸エステル、1,2
-ペンチレングリコール亜硫酸エステル、1,3-ペンチレングリコール亜硫酸エステル
、1,4-ペンチレングリコール亜硫酸エステル及び1,5-ペンチレングリコール亜硫
酸エステルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施例において、前記電解液は、酸無水物の一種または多種をさらに含む。い
くつかの実施例において、前記酸無水物の実例は、環状リン酸無水物、カルボン酸無水物
、ジスルホン酸無水物及びカルボン酸スルホン酸無水物のうちの一種または多種を含むが
、これらに限定されない。
【0101】
いくつかの実施例において、前記環状リン酸無水物の実例は、トリメチルホスホン酸無水
物、トリエチルホスホン酸無水物及びトリプロピルホスホン酸無水物のうちの一種または
多種を含むが、これらに限定されない。
【0102】
いくつかの実施例において、前記カルボン酸無水物の実例は、無水コハク酸、無水グルタ
ル酸及び無水マレイン酸のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0103】
いくつかの実施例において、前記ジスルホン酸無水物の実例は、エタンジスルホン酸無水
物及びプロパンジスルホン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定され
ない。
【0104】
いくつかの実施例において、前記カルボン酸スルホン酸無水物の実例は、スルホ安息香酸
無水物、スルホプロピオン酸無水物及びスルホブタン酸無水物のうちの一種または多種を
含むが、これらに限定されない。
【0105】
電解質は、特に限定されず、電解質としての公知の物質を任意に使用してもよい。リチウ
ム二次電池の場合、通常、リチウム塩が用いられる。電解質の実例は、LiPF6、Li
BF4、LiClO4、LiAlF4、LiSbF6、LiTaF6、LiWF7などの
無機リチウム塩、LiWOF5などのタングステン酸リチウム類、HCO2Li、CH3
CO2Li、CH2FCO2Li、CHF2CO2Li、CF3CO2Li、CF3CH
2CO2Li、CF3CF2CO2Li、CF3CF2CF2CO2Li、CF3CF2
CF2CF2CO2Liなどのカルボン酸リチウム塩類、FSO3Li、CH3SO3L
i、CH2FSO3Li、CHF2SO3Li、CF3SO3Li、CF3CF2SO3
Li、CF3CF2CF2SO3Li、CF3CF2CF2CF2SO3Liなどのスル
ホン酸リチウム塩類、LiN(FCO)2、LiN(FCO)(FSO2)、LiN(FSO2)
2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO
2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1
,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C4F9SO
2)などのリチウムイミド塩類、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(
C2F5SO2)3などのリチウムメチラート塩類、リチウムビス(マロナト)ボレート
、リチウムジフルオロ(マロナト)ボレートなどのリチウム(マロナト)ボレート塩類、
リチウムトリス(マロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(マロナト)ホスフ
ェート、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェートなどのリチウム(マロナト)
ホスフェート塩類、及びLiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(
CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF3CF3、LiBF3C2
F5、LiBF3C3F7、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF
2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2などのフッ素含有有機リチウム塩類
、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレートな
どのリチウムオキサラトホウ酸塩類、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェー
ト、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト
)ホスフェートなどのリチウム(オキサラト)ホスフェート塩類などを含むが、これらに
限定されない。
【0106】
いくつかの実施例において、電解質は、LiPF6、LiSbF6、LiTaF6、FS
O3Li、CF3SO3Li、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、
LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオ
ロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニル
イミド、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、L
iBF3CF3、LiBF3C2F5、LiPF3(CF3)3、LiPF3(C2F5)3
、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレートま
たはリチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェートから選択される。それらは、電
気化学装置の出力特性、高倍率充放電特性、高温保存特性及びサイクル特性などを改善さ
せることに寄与する。
【0107】
電解質の含有量は、本発明の効果が損なわれない限り、特に制限されない。いくつかの実
施例において、電解液におけるリチウムの総モル濃度は、0.3mol/L以上であり、
0.4mol/Lを超え、或いは0.5mol/Lを超える。いくつかの実施例において
、電解液におけるリチウムの総モル濃度は、3mol/L未満、2.5mol/L未満、
または2.0mol/L未満である。いくつかの実施例において、電解液におけるリチウ
ムの総モル濃度は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。電解質の濃度が
上記範囲内にあると、荷電粒子としてのリチウムが少なすぎることはなく、そして、粘度
を適切の範囲内にすることができるため、良好な電気伝導率を確保しやすい。
【0108】
二種以上の電解質を併用する場合、電解質は、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ
酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の塩を含む。いく
つかの実施例において、電解質は、モノフルオロリン酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスル
ホン酸塩からなる群より選ばれる塩を含む。いくつかの実施例において、電解質は、リチ
ウム塩を含む。いくつかの実施例において、電解質の全重量に対して、モノフルオロリン
酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有
量は、0.01wt%を超え、或いは0.1wt%を超える。いくつかの実施例において
、電解質の全重量に対して、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロ
スルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有量は、20wt%未満または10wt%未
満である。いくつかの実施例において、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及
びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有量は、上記した任意の二つの値
で構成される範囲内にある。
【0109】
いくつかの実施例において、電解質は、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及
びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる一種以上の物質と、それ以外の一種以上
の塩とを含む。それ以外の塩として、以上に例示されたリチウム塩が挙げられ、いくつか
の実施例において、LiPF6、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO
2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホ
ニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(
FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiBF3CF3
、LiBF3C2F5、LiPF3(CF3)3、LiPF3(C2F5)3である。いくつ
かの実施例において、それ以外の塩は、LiPF6である。
【0110】
いくつかの実施例において、電解質の全重量に対して、それ以外の塩の含有量は、0.0
1wt%を超え、或いは0.1wt%を超える。いくつかの実施例において、電解質の全
重量に対して、それ以外の塩の含有量は、20wt%未満、15wt%未満または10w
t%未満である。いくつかの実施例において、それ以外の塩の含有量は、上記した任意の
二つの値で構成される範囲内にある。上記した含有量を有するそれ以外の塩は、電解液の
電気伝導率と粘度とをバランスさせることに寄与する。
【0111】
電解液には、上記した溶媒、添加剤及び電解質塩に加えて、必要に応じて負極被膜形成剤
、正極保護剤、過充電防止剤などの別の添加剤を含んでもよい。添加剤として、非水電解
質二次電池に使用される一般的な添加剤を用いることができ、その実例は、ビニレンカー
ボネート、無水コハク酸、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、2,4-ジフルオロア
ニソール、プロパンスルトン、プロペンスルトンなどを含むが、これらに限定されない。
これらの添加剤は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。なお、電解
液におけるこれらの添加剤の含有量は、特に限定されず、この添加剤の種類によって適宜
設定すればよい。いくつかの実施例において、電解液の全重量に対して、添加剤の含有量
は、5wt%未満であり、0.01wt%~5wt%の範囲内にあり、または0.2wt
%~5wt%の範囲内にある。
【0112】
III、負極
負極は、負極集電体と前記負極集電体の一つまたは二つの表面に設けられる負極合剤層と
を備える。負極合剤層は、負極活物質層を含み、負極活物質層は負極活物質を含む。負極
活物質層は、単層であってもよく、複層であってもよい。複層の負極活物質層における各
層は、同一又は異なる負極活物質を含んでもよい。負極活物質は、リチウムイオンなどの
金属イオンを可逆的に挿入及び脱離可能な任意のものである。いくつかの実施例において
、充電中に負極へのリチウム金属の意図しない析出を防止するために、負極活物質の充電
可能容量は、正極活物質の放電容量より大きい。
【0113】
負極活物質を保持する集電体として、既知の集電体を任意に使用してもよい。負極集電体
の実例は、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼などの金属材
料を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、負極集電体は、銅であ
る。
【0114】
負極集電体が金属材料である場合、負極集電体の形態は、金属箔、金属円柱、金属コイル
、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチングメタル、発泡メタルなどを含むが
、これらに限定されない。いくつかの実施例において、負極集電体は、金属薄膜である。
いくつかの実施例において、負極集電体は、銅箔である。いくつかの実施例において、負
極集電体は、圧延法による圧延銅箔または電解法による電解銅箔である。
【0115】
いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、1μmを超え、或いは5μmを超える
。いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、100μm未満または50μm未満
である。いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、上記した任意の二つの値で構
成される範囲内にある。
【0116】
負極活物質は、特に限定されず、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出可能なものであれ
ばよい。負極活物質の実例は、天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素材料、シリコン(Si)、ス
ズ(Sn)などの金属、またはSi、Snなどの金属元素の酸化物などを含むが、これらに
限定されない。負極活物質は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0117】
負極合剤層は、負極粘着剤をさらに含む。負極粘着剤は、負極活物質の粒子同士の粘着及
び負極活物質と集電体との粘着を向上させることができる。負極粘着剤の種類は、特に限
定されず、電解液または電極の製造中に用いる溶媒に対して安定な材料であればよい。い
くつかの実施例において、負極粘着剤は、樹脂粘着剤を含む。樹脂粘着剤の実例は、フッ
素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレ
フィン樹脂などを含むが、これらに限定されない。水系溶媒を用いて負極合剤用スラリー
を調製する時、負極粘着剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩、ス
チレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)またはその塩、ポリビニ
ルアルコールなどを含むが、これらに限定されない。
【0118】
負極は、以下の方法により調製することができる。負極集電体上に負極活物質、樹脂粘着
剤などを含む負極合剤用スラリーを塗布し、乾燥した後、圧延して負極集電体の両面に負
極合剤層を形成することにより、負極を得る。
【0119】
IV、セパレータ
正極と負極との間に、短絡を防止するために、通常、セパレータが設けられている。この
場合、本発明の電解液は、通常、このセパレータに含浸させて用いる。
【0120】
セパレータの材料及び形状は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定ない。前
記セパレータは、本発明の電解液に対して安定な材料からなる樹脂、ガラス繊維、無機物
などであってもよい。いくつかの実施例において、前記セパレータは、保液性が優れた多
孔性シートまたは不織布状のものなどを含む。樹脂またはガラス繊維セパレータの材料の
実例は、ポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテ
ルスルホン、ガラスフィルターなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例
において、前記セパレータの材料はガラスフィルターである。いくつかの実施例において
、前記ポリオレフィンは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである。いくつかの実施例
において、前記ポリオレフィンは、ポリプロピレンである。上記したセパレータの材料は
、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0121】
前記セパレータは、上記した材料を積層してなる材料であってもよく、その実例は、ポリ
プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンをこの順に積層してなる三層セパレータなど
を含むが、これらに限定されない。
【0122】
無機物の材料の実例は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などの酸化物、窒化アルミニウ
ム、窒化ケイ素などの窒化物、硫酸塩(例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなど)を
含むが、これらに限定されない。無機物の形態は、粒子状または繊維状を含むが、これら
に限定されない。
【0123】
前記セパレータの形態は、フィルムの形態であり、その実例は、不織布、織布、微多孔性
フィルムなどを含むが、これらに限定されない。フィルムの形態では、前記セパレータの
孔径は、0.01μm~1μmであり、厚さは、5μm~50μmである。上記した独立
のフィルム状のセパレータ以外に、以下のようなセパレータを用いることもできる。即ち
、樹脂類の粘着剤を用いて上記した無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/また
は負極の表面上に形成してなるセパレータを用いることができ、例えば、粘着剤としてフ
ッ素樹脂を使用して、90%粒子径が1μm未満である酸化アルミニウムを、正極の両面
に多孔層を形成させることにより形成されたセパレータを用いることもできる。
【0124】
前記セパレータの厚さは、任意である。いくつかの実施例において、前記セパレータの厚
さは、1μmを超え、5μmを超え、或いは8μmを超える。いくつかの実施例において
、前記セパレータの厚さは、50μm未満、40μm未満または30μm未満である。い
くつかの実施例において、前記セパレータの厚さは、上記した任意の二つの値で構成され
る範囲内にある。前記セパレータの厚さが上記範囲内にあると、絶縁性及び機械的強度を
確保しつつ電気化学装置のレート特性及びエネルギー密度を確保することができる。
【0125】
セパレータとして多孔性シートまたは不織布などの多孔質材料を用いる場合、セパレータ
の孔隙率は、任意である。いくつかの実施例において、前記セパレータの孔隙率は、20
%を超え、35%を超え、或いは45%を超える。いくつかの実施例において、前記セパ
レータの孔隙率は、90%未満、85%未満または75%未満である。いくつかの実施例
において、前記セパレータの孔隙率は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にあ
る。前記セパレータの孔隙率が上記範囲内にあると、絶縁性及び機械的強度を確保しつつ
膜の抵抗を抑制することができ、電気化学装置は良好なレート特性を有するものとするこ
とができる。
【0126】
前記セパレータの平均孔径も、任意である。いくつかの実施例において、前記セパレータ
の平均孔径は、0.5μm未満または0.2μm未満である。いくつかの実施例において
、前記セパレータの平均孔径は、0.05μmを超える。いくつかの実施例において、前
記セパレータの平均孔径は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。前記セ
パレータの平均孔径が上記範囲を超えると、短絡が発生しやすい。セパレータの平均孔径
が上記範囲内にあると、短絡を防止しつつ膜の抵抗を抑制することができ、電気化学装置
は良好なレート特性を有するものとすることができる。
【0127】
V、電気化学装置の組立体
電気化学装置の組立体は、電極アセンブリー、集電構造、外装ケース、及び保護素子を含
む。
【0128】
電極アセンブリー
電極アセンブリーは、上記正極と負極とを、上記セパレータを介して積層してなる積層構
造、及び、上記正極と負極とを、上記セパレータを介して渦巻き状で巻回してなる構造の
うちの何れか一種を備えても良い。いくつかの実施例において、電池内容積に電極アセン
ブリーの質量が占める割合(電極アセンブリー占有率)は、40%を超え、または50%
を超える。いくつかの実施例において、電極アセンブリー占有率は、90%未満または8
0%未満である。いくつかの実施例において、電極アセンブリー占有率は、上記した任意
の二つの値で構成される範囲内にある。電極アセンブリー占有率が上記範囲内にあると、
電気化学装置の容量を確保しつつ内部圧力の上昇に伴う繰り返しの充放電特性及び高温保
存などの特性の低下を抑制することができる、さらにガス放出弁の作動を防止することが
できる。
【0129】
集電構造
集電構造は、特に制限されない。いくつかの実施例において、集電構造は、配線部分及び
接合部分の抵抗を低減させる構造である。電極アセンブリーが上記した積層構造である場
合、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。
電極面積が大きくなると、内部抵抗が大きくなるので、電極内に2つ以上の端子を設けて
抵抗を低減させることも好適に用いられる。電極アセンブリーが上記した巻回構造である
場合、正極及び負極にそれぞれ2つ以上のリード構造を設け、端子に束ねることにより、
内部抵抗を低くすることができる。
【0130】
外装ケース
外装ケースの材質は、用いられる電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。
外装ケースは、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金
、マグネシウム合金などの金属類、または樹脂とアルミ箔との積層フィルムを用いるが、
これらに限定されない。いくつかの実施例において、外装ケースは、アルミニウムまたは
アルミニウム合金の金属、または積層フィルムである。
【0131】
金属類の外装ケースは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して
なる封止密閉構造、或いは樹脂製ガスケットを介して上記した金属類を用いてなるリベッ
ト構造を含むが、これらに限定されない。上記した積層フィルムを用いた外装ケースは、
樹脂層同士を熱融着してなる封止密閉構造などを含むが、これらに限定されない。シール
性を上げるために、上記した樹脂層の間に積層フィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を
介在させてもよい。集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属
は樹脂と接合するので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂または極性基を導入した
変性樹脂が用いられる。また、外装ケースの形状も、任意であり、例えば、円筒形、角形
、ラミネート型、ボタン型、大型などのうちの何れか一種であってもよい。
【0132】
保護素子
保護素子として、異常発熱または非常に大きな電流が流れた時に抵抗が増大する正温度係
数(PTC)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池の内部圧力または内部温
度を急激に上昇させることにより電気回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)など
が用いられる。上記した保護素子は、高電流の通常の使用に作動しない素子を選択しても
よく、保護素子がなくても異常発熱または熱暴走を発生することがないように設計しても
よい。
【0133】
VI、応用
本発明の電気化学装置は、電気化学反応が生じる任意の装置を含み、その具体的な実例は
、すべての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはキャパシタを含む。特
に、この電気化学装置は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム重
合体二次電池又はリチウムイオン重合体二次電池を含むリチウム二次電池である。
【0134】
本発明は、本発明による電気化学装置を含む電子装置をさらに提供する。
【0135】
本発明の電気化学装置の用途は、特に限定されず、既存技術で既知の任意の電子装置に用
いることが可能である。いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置は、ノートパ
ソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯
ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液
晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電
子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モ
ーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計
、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用大型蓄電池及びリチウムイオンキャパシタなどに
利用されるが、これらに限定されない。
【0136】
以下では、例としてリチウムイオン電池を挙げ、そして具体的な実施例を参照しながらリ
チウムイオン電池の調製を説明し、当業者は、本発明に記載されている調製方法は例示で
あるに過ぎず、他の任意の適切な調製方法はいずれも本発明の範囲内にあることを理解す
べきである。
【0137】
実施例
以下では、本発明のリチウムイオン電池の実施例及び比較例により、本発明のリチウムイ
オン電池を説明して性能評価を行う。
【0138】
一、リチウムイオン電池の調製
1、負極の調製
人造黒鉛と、スチレン-ブタジェンゴムと、カルボキシメチルセルロースナトリウムとを
質量比96%:2%:2%で脱イオン水と混合し、均一に撹拌して、負極用スラリーを得
た。この負極用スラリーを12μmの銅箔に塗布した。乾燥し、冷間圧延して、打ち抜き
、タブを溶接して、負極を得た。
【0139】
2、正極の調製
正極活物質と、導電材(Super-P)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを質
量比95%:2%:3%でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、助剤をさらに加え
、均一に撹拌して、正極用スラリーを得た。この正極用スラリーを12μmのアルミニウ
ム箔に塗布し、乾燥し、冷間圧延して、打ち抜き、タブを溶接して、正極を得た。
【0140】
実施例または比較例に用いられた正極活物質は市販品であり、具体的に、以下の表に示す
とおりである。
【0141】
【0142】
実施例または比較例に用いられた助剤を以下の表に示す。
【0143】
【0144】
3、電解液の調製
乾燥アルゴンガス雰囲気で、ECと、PCと、PPと、DECと(重量比1:1:1:1
)を混合し、LiPF6及びジフルオロリン酸リチウムを入れ、均一に混合して、基礎電
解液を形成した。ここで、LiPF6の濃度が1.15mol/Lである。基礎電解液に
含有量が異なる添加剤を加えることにより、実施例及び比較例の異なる電解液を得た。
【0145】
実施例に用いられた電解液の成分を以下の表に示す。
【0146】
【0147】
4、セパレータの調製
ポリエチレン(PE)多孔重合体フィルムをセパレータとした。
【0148】
5、リチウムイオン電池の調製
得られた正極、セパレータ及び負極を順番に巻いて外装箔に入れ、注液口を残した。注液
口から電解液を注入し、封止して、フォーメーション、容量測定などのプロセスを経て、
リチウムイオン電池を得た。
【0149】
二、測定方法
1、正極合剤層の厚さ変化率の測定方法
正極を、直径が14±0.2mmである円盤状に打ち抜き、試験片とした。試験片の中央
部の厚さ(t0)を測定した。この試験片をジエチルカーボネートに水平に浸漬させ、85
±1℃の温度で120±0.3時間静置した。浸漬完了後、試験片を取り出し、室温で水
平に30分間静置した後、この試験片の中央部の厚さ(t1)を測定した。以下の式により
正極合剤層の厚さ変化率を算出した。
厚さ変化率=(t1-t0)/t0×100%。
【0150】
2、正極合剤層の反応面積(Y)の測定方法
表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、窒素流通下で、350℃でサン
プルを15分間予備乾燥した後、大気圧に対する窒素ガスの相対圧の値が0.3に正確に
調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって
正極合剤層の比表面積(m2/mg)を測定した。以下の式により正極合剤層の反応面積(
Y)を算出した。
Y=正極合剤層の比表面積×正極合剤層の重量。
【0151】
3、リチウムイオン電池の断続的なサイクル容量維持率の測定方法
50℃で、リチウムイオン電池を、0.5Cにて4.45Vまで定電流充電して、電流が
0.05Cとなるまで定電流充電して、20時間静置した後、0.5Cにて3.0Vまで
定電流放電し、上記操作を初回サイクルとした。上記した条件に従い、リチウムイオン電
池に対して200サイクルを行った。「1C」とは、リチウムイオン電池容量を1時間内
で完全放電させる電流の値である。以下の式により、リチウムイオン電池の断続的なサイ
クル容量維持率を算出した。
断続的なサイクル容量維持率=(200サイクル後の放電容量/初回サイクルの放電容量)
×100%。
【0152】
4、リチウムイオン電池のフロート充電特性の測定方法
25℃で、リチウムイオン電池を、0.5Cにて4.45Vまで定電流充電して、そして
、4.45Vで0.05Cまで定電圧充電した。その後、リチウムイオン電池を、50℃
のオーブンに置き、4.45Vで定電圧充電し続け(電流が20mAとなるまで)、リチ
ウムイオン電池の厚さの変化をモニタリングした。初期50%充電状態(SOC)時のリ
チウムイオン電池の厚さを基準として、リチウムイオン電池の厚さの増加が20%を超え
ることは、失効とした。リチウムイオン電池が50℃で、失効になるまでフロート充電す
る時間を記録した。
【0153】
三、測定結果
表1は、各実施例及び比較例において正極合剤層の厚さ変化率がリチウムイオン電池の特
性に与える影響を示す。表1に示す実施例及び比較例において正極活物質は、材料1であ
り、ジフルオロリン酸リチウムの含有量は、0.2wt%である。
【0154】
【0155】
結果から分かるように、助剤及びその含有量は、正極合剤層の厚さ変化率に影響を与える
ことができる。正極合剤層を85℃のジエチルカーボネートに120時間浸漬させた後、
正極合剤層の厚さ変化率が10%未満であると、リチウムイオン電池の断続的なサイクル
容量維持率(少なくとも20%)及び失効になるまでフロート充電する時間(5~10倍
延長)を著しく向上させることができ、即ち、リチウムイオン電池の断続的なサイクル特
性及びフロート充電特性を著しく向上させることができる。正極合剤層を85℃のジエチ
ルカーボネートに120時間浸漬させた後正極合剤層の厚さ変化率が10%未満であるこ
とに加えて、更に助剤の含有量を3000ppm以下に制御することにより、リチウムイ
オン電池の断続的なサイクル特性及びフロート充電特性をさらに向上させることができる
。
【0156】
表2は、電解液におけるジフルオロリン酸リチウムの含有量がリチウムイオン電池の特性
に与える影響を示す。比較例6~7及び実施例8~12は、表2にリストされている含有
量のみが実施例3と異なる。
【0157】
【0158】
結果から分かるように、電解液におけるジフルオロリン酸リチウムの含有量が0.001
wt%~2wt%の範囲内にあると、リチウムイオン電池は、著しく改善された断続的な
サイクル特性及びフロート充電特性を備える。
【0159】
表3は、正極活物質がリチウムイオン電池の特性に与える影響を示す。実施例13~17
は、表3にリストされている正極活物質のみが実施例3と異なる。
【0160】
【0161】
結果から分かるように、正極活物質はメジアン径が異なる二種のリチウム含有遷移金属酸
化物を含むと、リチウムイオン電池の断続的なサイクル特性及びフロート充電特性をさら
に向上させることができる。リチウム含有遷移金属酸化物は、Mgと、Ti、Zr、Ge
、Nb、Al及びSnから選択される少なくとも一種の金属元素とを含有すると、リチウ
ムイオン電池の断続的なサイクル特性及びフロート充電特性の改善は、特に顕著である。
【0162】
表4は、ジフルオロリン酸リチウムの重量と正極合剤層の反応面積との関係がリチウムイ
オン電池の特性に与える影響を示す。実施例18~21は、表4にリストされているパラ
メータのみが実施例3と異なる。
【0163】
【0164】
結果から分かるように、電解液におけるジフルオロリン酸リチウムの含有量X mg及び
正極合剤層の反応面積Y m2が10≦X/Y≦100を満たすと、リチウムイオン電池
の断続的なサイクル特性及びフロート充電特性の更なる向上に寄与する。
【0165】
表5は、電解液における添加剤がリチウムイオン電池の特性に与える影響を示す。実施例
22~29は、表5にリストされているパラメータのみが実施例3と異なる。
【0166】
【0167】
結果から分かるように、電解液がジニトリル化合物、トリニトリル化合物、スルトン及び
/またはフルオロカーボネートをさらに含むと、リチウムイオン電池の断続的なサイクル
特性及びフロート充電特性の更なる改善に寄与する。
【0168】
表6は、電解液における溶媒がリチウムイオン電池の特性に与える影響を示す。実施例3
0~32は、表6にリストされている電解液の溶媒のみが実施例3と異なる。比較例8~
10は、表6にリストされている電解液の溶媒のみが比較例1と異なる。
【0169】
【0170】
結果から分かるように、電解液の溶媒は、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み
合わせ、または、カーボネートとカルボン酸エステルとの組み合わせを含むと、リチウム
イオン電池の断続的なサイクル特性及びフロート充電特性を更に著しく改善させることが
できる。
【0171】
明細書全体において、「実施例」、「実施例の一部」、「一つの実施例」、「別の一例」
、「例」、「具体例」または「例の一部」による引用は、本発明の少なくとも一つの実施
例または例は、当該実施例または例に記載した特定の特徴、構造、材料または特性を含む
ことを意味する。したがって、明細書全体の各箇所に記載された、例えば「いくつかの実
施例において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「別の例において」
、「一つの例において」、「特定の例において」または「例」は、必ずしも本発明におけ
る同じ実施例または例を引用するわけではない。また、本明細書の特定の特徴、構造、材
料、または特性は、一つまたは複数の実施例または例において、いかなる好適な方法で組
み合わせることができる。
【0172】
例示的な実施例が記載及び説明されたが、当業者は、上記した実施例が本発明を限定する
ものとして解釈されないこと、かつ、本発明の技術思想、原理、及び範囲から逸脱しない
場合に実施例への改変、置換及び変更が可能であること、を理解すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、電解液とを含む電気化学装置であって、
前記正極は、正極集電体と前記正極集電体上に形成された正極合剤層とを含み、
前記電解液は、ジフルオロリン酸リチウムを含み、前記電解液の全重量に対して、前記ジフルオロリン酸リチウムの含有量は、0.001wt%~2wt%であり、
前記正極合剤層を85℃のジエチルカーボネートに120時間浸漬させた後、前記正極合剤層の厚さ変化率が10%未満であり、
前記電解液における前記ジフルオロリン酸リチウムの含有量X mg及び前記正極合剤層の反応面積Y m
2
は、10≦X/Y≦100を満たす、電気化学装置。
【請求項2】
前記電解液は、カーボネートを含み、前記カーボネートは、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記電解液は、カーボネートとカルボン酸エステルとを含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記正極合剤層は、親水基及び親油基を有する助剤を含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記助剤が、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有し、
(a)酸化電位が4.5V以上であり、且つ還元電位が0.5V以下であり、
(b)表面張力が40mN/m以下であり、
(c)不飽和カルボン酸基を含み、
(d)前記正極合剤層の全重量に対して、前記助剤の含有量が3000ppm以下である、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記助剤は、2-アクリル酸ドデシル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、(2-エチルヘキシル)アクリレート、アクリレート非イオン性フルオロカーボン界面活性剤、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸エステル共重合体、マレイン酸-アクリル酸共重合体またはエチレン-アクリル酸共重合体のうちの少なくとも一種を含む、請求項4に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記電解液は、ジニトリル化合物、トリニトリル化合物、スルトン、フルオロカーボネートまたは不飽和エチレンカーボネートのうちの少なくとも一種をさらに含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記正極合剤層は、正極活物質を含み、前記正極活物質は、メジアン径が異なるリチウム含有遷移金属酸化物を含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、一般式(1)で表される化合物を含み、
LiaM1bM2cM3dO2 (1)
M1は、Co、NiまたはMnから選択される少なくとも一種であり、
M2は、Mg、Ti、Zr、Ge、Nb、AlまたはSnから選択される少なくとも一種であり、
M3は、Li、M1及びM2以外の元素であり、
a、b、c及びdが、
0.5≦a<1.1、
0.8≦b<1.2、
0.002≦c≦0.05、及び
0≦d≦0.05を満たす、請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、Mgと、Ti、Zr、Ge、Nb、Al及びSnから選択される少なくとも一種の金属元素とを含む、請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【外国語明細書】