(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005970
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/24 20060101AFI20240110BHJP
H01Q 13/16 20060101ALI20240110BHJP
H01Q 19/02 20060101ALI20240110BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01Q1/24 Z
H01Q13/16
H01Q19/02
H05K9/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106479
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓弥
【テーマコード(参考)】
5E321
5J020
5J045
5J047
【Fターム(参考)】
5E321AA01
5E321AA05
5E321GG05
5J020AA00
5J020BC02
5J020DA02
5J020DA04
5J045AA05
5J045DA03
5J045NA03
5J047AA03
5J047AB08
5J047FD01
(57)【要約】
【課題】シールド部材に設ける開口の形状を工夫することによりアンテナ特性を改善することができる無線通信装置を提供すること。
【解決手段】無線通信装置100は、所定周波数の電波を放射するアンテナ110の周囲を覆い、アンテナ110に対向する面にスリット132を有するシールド部材としての金属シャーシ130と、金属シャーシ130に隣接してスリット132を覆う位置に設けられ、導電性部材からなる矩形形状の外周部を有するディスプレイ装置140とを備える。スリット132をL字形状とするとともに、このL字形状の縦横比を、ディスプレイ装置140の縦横比と一致させている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の電波を放射するアンテナの周囲を覆い、前記アンテナに対向する面にスリットを有するシールド部材と、
前記シールド部材に隣接して前記スリットを覆う位置に設けられ、導電性部材からなる矩形形状の外周部を有する矩形形状部材と、
を備え、前記スリットをL字形状とするとともに、このL字形状の縦横比を、前記矩形形状部材の縦横比と一致させることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記アンテナから放射する電波の波長をλとしたときに、前記スリットの全長をλ/2とすることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記L字形状を形成する前記スリットの短辺側を矩形形状の前記外周部の短辺と平行に、前記スリットの長辺側を前記外周部の長辺と平行に配置することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記シールド部材の前記アンテナに対向する面に、前記スリットを複数設けることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記シールド部材の前記アンテナに対向する面に、前記スリットとL字形状以外の別のスリットを設けることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記矩形形状部材は、ディスプレイ装置であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記シールド部材は、金属シャーシであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを用いて所定周波数の電波を送受信する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アンテナから送受信される無線信号を、シールドに設けられた開口を通して送受信することにより、外部機器との間で無線通信を行うようにした通信端末が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この通信端末では、シールドに設けられた開口の周囲にコイルパターンを形成し、シールドを挟んで配置されたディスプレイ側にコイルパターンによって生成される磁束を通過させることにより、ディスプレイ側の外部機器との間で無線通信を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、Bluetooth(登録商標)や無線LANなどを用いた無線通信装置では、例えば2.4GHz帯の無線電波を用いた無線通信を行っており、半波長ダイポールアンテナやチップアンテナ、パターンアンテナなどの各種のアンテナを用いて無線電波の送受信が行われる。このような無線通信装置では、アンテナから送信される無線電波に対するノイズ対策として、アンテナを含む基板全体をシールド部材としての金属シャーシで覆っている。
【0005】
しかし、アンテナを完全に覆ってしまうと、外部機器との間で無線電波の送受信ができなくなってしまうため、金属シャーシの一部に開口を設ける必要がある。しかし、例えば、特許文献1の通信端末のように、単純な矩形の開口を設けてその面積を大きくすると、シールド部材としての機能を低下させることになるため、形状を工夫する必要がある。さらに、この開口の外側にディスプレイ等が配置される場合には、アンテナから出力され開口を通して放射された電波が減衰する場合があるため、良好なアンテナ特性を確保するためにはさらなる工夫が必要となる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、シールド部材に設ける開口の形状を工夫することによりアンテナ特性を改善することができる無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の無線通信装置は、所定周波数の電波を放射するアンテナの周囲を覆い、アンテナに対向する面にスリットを有するシールド部材と、シールド部材に隣接してスリットを覆う位置に設けられ、導電性部材からなる矩形形状の外周部を有する矩形形状部材とを備え、スリットをL字形状とするとともに、このL字形状の縦横比を、矩形形状部材の縦横比と一致させている。
【0008】
シールド部材に設ける開口をスリット形状とすることにより、開口を小さくして電波の漏れを最小とすることができる。また、スリットをL字形状とし、L字を構成する2辺の比を矩形形状部材の外周部の縦横比と合わせることにより、アンテナからスリットを通して放射された電波が矩形形状部材に伝わってその外周部から水平偏波と垂直偏波となって効率よく放射することができ、アンテナ特性を改善することが可能となる。
【0009】
また、上述したアンテナから放射する電波の波長をλとしたときに、スリットの全長をλ/2とすることが望ましい。これにより、アンテナから出力される電波をスリットを通して効率よくシールド部材の外側に放射することが可能となる。
【0010】
また、上述したL字形状を形成するスリットの短辺側を矩形形状の外周部の短辺と平行に、スリットの長辺側を外周部の長辺と平行に配置することが望ましい。スリットの向きと矩形形状部材の向きとが平行となるように配置することにより、スリットを通して出力される電波を矩形形状部材の外周部から効率よく放射することが可能となる。
【0011】
また、上述したシールド部材のアンテナに対向する面に、スリットを複数設けることが望ましい。あるいは、上述したシールド部材のアンテナに対向する面に、スリットとL字形状以外の別のスリットを設けることが望ましい。これにより、1本のスリットを用いる場合に比べて、スリットを通して放射される電波強度を上げることが可能となる。
【0012】
また、上述した矩形形状部材は、ディスプレイ装置であることが望ましい。これにより、車両に搭載されるヘッドユニットのように、筐体の前面に液晶表示装置等のディスプレイ装置が配置される場合に、ディスプレイ装置の裏側から効率よく電波を放射することが可能となる。
【0013】
また、上述したシールド部材は、金属シャーシであることが望ましい。これにより、アンテナを含む基板等の全体を確実にシールドすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態の無線通信装置の要部の構成を示す図である。
【
図2】本実施形態の無線通信装置が組み込まれる製品の一例を示す図である。
【
図5】L字形状のスリットを用いた場合の放射特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態の無線通信装置について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、一実施形態の無線通信装置の要部の構成を示す図である。この
図1に示された要部の構成は、所定周波数の電波を放射するアンテナ回りの構成を示している。
図1(A)には無線通信装置の要部の断面が、
図1(B)には正面から見た構成がそれぞれ示されている。この無線通信装置は、例えば
図2に示すように、車両に搭載されるヘッドユニットの一部を構成している。
【0017】
図1(A)に示すように、本実施形態の無線通信装置100は、アンテナ110が搭載されたアンテナ基板120と金属シャーシ130とディスプレイ装置140と含んで構成されている。
【0018】
アンテナ110は、所定周波数の電波を放射するためのものである。例えば、Bluetoothや無線LANなどの用途に用いる場合には、アンテナ110は、2.4Ghz帯の電波を放射する。本実施形態では、電波の周波数に着目しており、電波を放射するアンテナ形状等(チップアンテナやパターンアンテナなど)は特に限定されない。
【0019】
アンテナ基板120は、アンテナ110や電波の送受信回路などのその他の周辺回路が実装されている。なお、アンテナ基板120に無線通信装置100の動作に必要な回路をすべて実装してもよいが、アンテナ基板120とその他の回路基板(図示せず)を備えるようにしてもよい。
【0020】
金属シャーシ130は、アンテナ基板120の全体を包囲するシールド部材である。また、ディスプレイ装置140は、金属シャーシ130と対向する位置に配置されている。このディスプレイ装置140は、例えばLCD(液晶表示装置)が用いられ、液晶パネルの周囲を囲む矩形形状の外周部(ベゼル)が導電性部材によって構成されている。
【0021】
図1(B)に示すように、上述した金属シャーシ130には、ディスプレイ装置140に対向する面にスリット132が形成されている。このスリット132は、アンテナ110から放射された電波を金属シャーシ130の外部に放出するためのものであり、アンテナ110に対向する金属シャーシ130の面であってアンテナ110に対応する位置(アンテナ110の近傍)に設けられている。スリット132はL字形状を有し、その長さや縦横比が、放射する電波の波長やディスプレイ装置140の形状を考慮して設定されている。
【0022】
図3は、スリット132の具体例を示す図である。
図3(A)にはディスプレイ装置140の形状が、
図3(B)にはスリット132をディスプレイ装置140側から見た形状と寸法がそれぞれ示されている。
【0023】
本実施形態では、
図3(A)に示すように、ディスプレイ装置140は9:16の縦横比を有するものとする。このような形状のディスプレイ装置140に対応して、スリット132も同じ縦横比9:16となるように短辺132Aと長辺132Bの長さが設定されている。
【0024】
また、アンテナ110から放射される電波の周波数が2.4GHzとすると、波長λが125mmとなるが、スリット132の全体の長さ(短辺132Aと長辺132Bを合わせた長さ)がλ/2(=62.5mm)となるように設定されている。この場合の短辺132Aの長さが22.5mm、長辺132Bの長さが40mmとなる。また、このスリット132の短辺132Aがディスプレイ装置140の短辺140Aと平行に、スリット132の長辺132Bがディスプレイ装置140の長辺140Bと平行になるようにスリット132の向きが設定されている。
【0025】
図4は、スリット132の変形例を示す図である。
図3(B)では長辺132Bの左端から短辺132Aが下側に延びるようにしたが、
図4に示すようにスリット132の長辺132Bと短辺132Aの組み合わせは任意であり、どの組み合わせを用いてもよい。
図4(A)に示す例では、長辺132Bの右端から短辺132Aが下側に伸びている。
図4(B)に示す例では、長辺132Bの左端から短辺132Aが上側に伸びている。
図4(C)に示す例では、長辺132Bの右端から短辺132Aが上側に伸びている。
【0026】
図5は、L字形状のスリット132を用いた場合の放射特性を示す図である。
図5において、実線AはL字形状のスリット132を用いた場合の放射特性を、一点鎖線BはU字形状のスリットを用いた場合の放射特性を、点線Cは直線形状のスリットを用いた場合の放射特性を、細線DはT字形状のスリットを用いた場合の放射特性をそれぞれ示している。これらの各スリットは、長辺と短辺を合わせた全長がλ/2(=62.5mm)であり、T字形状のスリットについては短辺と長辺の比が9:16に設定され、U字形状のスリットについては2本の短辺の合計と長辺の比が9:16に設定されている。
図5に示すように、直線形状、T字形状、U字形状のスリットに比べて、スリットをL字形状とした場合に、最も電波の放射効率が高くなることが確認された。
【0027】
このように、本実施形態の無線通信装置100では、シールド部材としての金属シャーシ130にスリット132とすることにより、開口を小さくして電波の漏れを最小とすることができる。特に、スリット132をL字形状とし、L字を構成する2辺の比をディスプレイ装置140の外周部の縦横比と合わせることにより、アンテナ110からスリット132を通して放射された電波がディスプレイ装置140に伝わってその外周部から水平偏波と垂直偏波となって効率よく放射することができ、アンテナ特性を改善することが可能となる。
【0028】
また、スリット132の全長をλ/2とすることにより、アンテナ132から出力される電波をスリット132を通して効率よく金属シャーシ130の外側に放射することが可能となる。
【0029】
また、L字形状を形成するスリット132の短辺132A側をディスプレイ装置140の外周部の短辺と平行に、スリット132の長辺132B側をディスプレイ装置140の長辺と平行に配置することにより、スリット132を通して出力される電波を矩形形状のディスプレイ装置140の外周部から効率よく放射することが可能となる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、縦横比が9:16の矩形形状を有するディスプレイ装置140に合わせてスリット132のL字形状の縦横比も9:16に設定したが、ディスプレイ装置140の形状が変わればその縦横比に合わせてスリット132の形状も変更すればよい。例えば、縦横比が3:4のディスプレイ装置140を用いる場合には、スリット132のL字形状の縦横比も3:4にすればよい。但し、この場合でもスリット132の全長はλ/2を維持する必要がある。
【0031】
また、上述した実施形態では、1本のスリット132を用いたが、スリット132とは別に金属シャーシ130の同じ面内に2本目あるいはそれ以上の本数のL字形状のスリットを追加したり、L字形状以外の形状のスリットを追加するようにしてもよい。このように、L字形状のスリット132の他にスリットを追加することにより、1本のスリット132を用いる場合に比べて、これらのスリットを通して放射される電波強度を上げることが可能となる。
【0032】
また、金属シャーシ130に対向するように矩形形状部材としてのディスプレイ装置140を配置したが、ディスプレイ装置140以外の矩形形状部材を用いるようにしてもよい。但し、この矩形形状部材の外周部には導電性部材が用いられる必要がある。これにより、車両に搭載されるヘッドユニットのように、筐体の前面に液晶表示装置等のディスプレイ装置140が配置される場合に限定されず、その他の矩形形状部材の裏側から効率よく電波を放射することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
上述したように、本発明によれば、シールド部材に設ける開口をスリット形状とすることにより、開口を小さくして電波の漏れを最小とすることができる。また、スリットをL字形状とし、L字を構成する2辺の比を矩形形状部材の外周部の縦横比と合わせることにより、アンテナからスリットを通して放射された電波が矩形形状部材に伝わってその外周部から水平偏波と垂直偏波となって効率よく放射することができ、アンテナ特性を改善することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
100 無線通信装置
110 アンテナ
120 アンテナ基板
130 金属シャーシ
132 スリット
140 ディスプレイ装置