(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059707
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】腫瘍微小環境の特性を使用するキメラ受容体T細胞治療
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240423BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240423BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240423BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240423BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240423BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240423BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K35/17 ZNA
A61P35/00
A61P37/04
A61K39/395 N
C12Q1/6851 Z
C12Q1/04
C12N5/10
G01N33/50 P
G01N33/48 M
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024020272
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2020555213の分割
【原出願日】2019-04-12
(31)【優先権主張番号】62/656,825
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/831,946
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/827,770
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514266932
【氏名又は名称】カイト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kite Pharma, Inc
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ ジョン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ボット エイドリアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有効用量のキメラ受容体(例えば、CAR又はTCR)で遺伝子改変されたT細胞免疫療法薬を投与することを含む、悪性腫瘍を治療する方法を提供する。
【解決手段】患者における悪性腫瘍を治療する方法は、(a)患者からの腫瘍生検を分析して、腫瘍微小環境を特性評価することと、(b)1つ以上のキメラ受容体を含むT細胞を有効用量、前記患者に投与すること、を含み、前記有効用量は前記腫瘍微小環境の特性を使用して決定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における悪性腫瘍を治療する方法であって、
(a)前記患者からの腫瘍生検を分析して、腫瘍微小環境を特性評価することと、
(b)1つ以上のキメラ受容体を含むT細胞を有効用量、前記患者に投与することと、
を含み、前記有効用量は前記腫瘍微小環境の特性を使用して決定される、方法。
【請求項2】
前記腫瘍微小環境は、遺伝子発現プロファイリング、腫瘍内T細胞密度測定又はそれらの組み合わせを使用して特性評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子発現プロファイリングは、特定の遺伝子パネルの発現レベルを測定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
CD3G、STAT4、CD3E、CD3D、GZMK、GZMM、PRF1、CD8A、ICOS、CXCL10、STAT1、IL15、CCR2、CCL2、IRF1、TBX21、GZMA、CXCR3、GZMB、CD69、CXCL11及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
CTLA4、GZMH、CD8A、PDCD1、CD3G、IRF1、CX3CL1、TNFRSF9、CD3E、GZMA、CXCL10、TSLP、REN、GZMB、TNFRSF18、CCL2、GZMK、CXCL11、CD69、CD247、CCL5、STAT4、CD274、GNLY、ITGAE、LAG3、IL15、LTK、PRF1、CD3D、PF4、TBX21、ICOS、CXCL9、IFNG、VEGFA、STAT1、GZMM、CXCL13、CXCR3、CCR2、IL17A、PROM1及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
PanCancer Immune Profiling Panelから選択される遺伝子の発現レベルを測定することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
B細胞マーカーの発現レベルを測定することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
T細胞マーカーの発現レベルを測定することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
自然免疫応答と関連性を有する遺伝子を含む特定の遺伝子パネルの発現レベルを測定することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記特定の遺伝子パネルは、細胞傷害性細胞、樹状細胞、マクロファージ又は顆粒球のマーカーを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子発現プロファイル及び/又は前記腫瘍内T細胞密度に基づいて免疫スコアを決定することを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫スコアを使用して総用量を調整することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有効用量は、体重1kg当たり少なくとも1×106個のCAR陽性生存T細胞を
含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記キメラ受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記キメラ受容体は、T細胞受容体(TCR)である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記悪性腫瘍は、固形腫瘍、肉腫、癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、慢性若しくは急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、T細胞リンパ腫、1つ以上のB細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、毛様細胞白血病、小細胞型若しくは大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞増殖性障害、例えば、無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫)、意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(例えば、形質細胞異常増殖症、孤在性骨髄腫、孤在性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、及び多発性形質細胞腫)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病、及びPEP症候群としても知られる)、又はそれらの組み合わせである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記有効用量は、前記患者がキメラ受容体治療に応答する可能性を高めるように最適化される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを判定する方法であって、
(a)前記患者からの腫瘍生検を分析して、遺伝子発現プロファイルを使用して腫瘍微小環境を特性評価することと、
(b)前記遺伝子発現プロファイルに基づいて免疫スコアを決定することと、
(c)前記患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを前記免疫スコアに基づいて判定することと、
を含む、方法。
【請求項19】
患者がキメラ受容体治療に応答するかどうか判定する方法であって、
(a)治療前に患者から腫瘍生検を取得することと、
(b)前記腫瘍生検を分析して、腫瘍微小環境を特性評価することと、
(c)前記患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを前記腫瘍微小環境の特性に基づいて判定することと、
を含む、方法。
【請求項20】
患者における悪性腫瘍を治療する方法であって、
(a)キメラ受容体治療前に前記患者からの腫瘍生検を分析して、腫瘍微小環境を特性評価することと、
(b)前記患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを前記腫瘍微小環境の特性に基づいて判定することと、
(c)1つ以上のキメラ受容体を含むT細胞を有効用量、前記患者に投与することと、
を含み、前記有効用量は前記腫瘍微小環境の特性を使用して決定される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月12日付で出願された米国仮特許出願第62/656,825号、2019年4月1日付で出願された米国仮特許出願第62/827,770号及び2019年4月10日付で出願された米国仮特許出願第62/831,946号に対する優先権を主張し、これら各々の全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。2019年4月11日付けで作製された上記ASCIIコピーの名前はK-1065_01_SL.txtであり、8キロバイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
ヒト癌は、元は正常細胞で構成され、この正常細胞が遺伝的又はエピジェネティックな変換を受けて異常な癌細胞となる。そうすることで、癌細胞は、正常細胞によって発現されるものとは明確に異なるタンパク質及び他の抗原を発現し始める。これらの異常な腫瘍抗原は、身体の自然免疫系によって、癌細胞を特異的に標的とし死滅させるのに使用され得る。しかしながら、癌細胞は、Tリンパ球及びBリンパ球等の免疫細胞が癌細胞を標的とすることに成功しないように様々な機構を利用する。
【0004】
ヒトT細胞療法は、患者において癌細胞を標的とし、死滅させるために富化又は改変されたヒトT細胞に頼っている。T細胞が特定の癌細胞を標的とし死滅させる能力を増加するため、特定の標的癌細胞へとT細胞を方向づけるコンストラクトを発現するようT細胞を操作する方法が開発された。特定の腫瘍抗原と相互作用することができる結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)及び操作されたT細胞受容体(TCR)は、T細胞が特定の腫瘍抗原を発現する癌細胞を標的とし、死滅させることを可能とする。
【発明の概要】
【0005】
CAR T細胞注入前の腫瘍微小環境(TME)特性は臨床転帰に影響を及ぼし得る。本開示は、TMEの免疫関連遺伝子発現シグネチャ及び/又は腫瘍内T細胞密度を使用してTMEを評価して転帰と関連付ける方法を提供する。
【0006】
以下に記載される態様及び実施の形態のそれぞれは、文脈より別段の明確な指示がない限り、組み合わせることができる。
【0007】
一態様では、本開示は、患者における悪性腫瘍を治療する方法であって、(a)前記患者からの腫瘍生検を分析して、腫瘍微小環境を特性評価することと、(b)1つ以上のキメラ受容体を含むT細胞を有効用量、前記患者に投与することとを含み、前記有効用量は前記腫瘍微小環境の特性を使用して決定される、方法を提供する。
【0008】
幾つかの実施の形態においては、腫瘍微小環境は、遺伝子発現プロファイリングを使用して特性評価される。幾つかの実施の形態においては、腫瘍微小環境は、腫瘍内T細胞密度に基づいて特性評価される。幾つかの実施の形態においては、腫瘍微小環境は、遺伝子発現プロファイリング及び腫瘍内T細胞密度を使用して特性評価される。
【0009】
幾つかの実施の形態においては、遺伝子発現プロファイリングは、特定の遺伝子パネル
の発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記パネルは、CD3G、STAT4、CD3E、CD3D、GZMK、GZMM、PRF1、CD8A、ICOS、CXCL10、STAT1、IL15、CCR2、CCL2、IRF1、TBX21、GZMA、CXCR3、GZMB、CD69、CXCL11及びそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施の形態においては、上記パネルは、CTLA4、GZMH、CD8A、PDCD1、CD3G、IRF1、CX3CL1、TNFRSF9、CD3E、GZMA、CXCL10、TSLP、REN、GZMB、TNFRSF18、CCL2、GZMK、CXCL11、CD69、CD247、CCL5、STAT4、CD274、GNLY、ITGAE、LAG3、IL15、LTK、PRF1、CD3D、PF4、TBX21、ICOS、CXCL9、IFNG、VEGFA、STAT1、GZMM、CXCL13、CXCR3、CCR2、IL17A、PROM1及びそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施の形態においては、上記パネルは、PanCancer Immune
Profiling Panelを含む。
【0010】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、CD3G、STAT4、CD3E、CD3D、GZMK、GZMM、PRF1、CD8A、ICOS、CXCL10、STAT1、IL15、CCR2、CCL2、IRF1、TBX21、GZMA、CXCR3、GZMB、CD69、CXCL11及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む。
【0011】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、CTLA4、GZMH、CD8A、PDCD1、CD3G、IRF1、CX3CL1、TNFRSF9、CD3E、GZMA、CXCL10、TSLP、REN、GZMB、TNFRSF18、CCL2、GZMK、CXCL11、CD69、CD247、CCL5、STAT4、CD274、GNLY、ITGAE、LAG3、IL15、LTK、PRF1、CD3D、PF4、TBX21、ICOS、CXCL9、IFNG、VEGFA、STAT1、GZMM、CXCL13、CXCR3、CCR2、IL17A、PROM1及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む。
【0012】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、PanCancer Immune Profiling Panelから選択される遺伝子の発現レベルを測定することを含む。
【0013】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、B細胞マーカーの発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、B細胞マーカーは、BLK、CD19、CR2、MS4A1、TNFRSF17及びそれらの組み合わせから選択される。
【0014】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、T細胞マーカーの発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、T細胞マーカーは、CD2、CD2E、CD3G、CD6及びそれらの組み合わせから選択される。
【0015】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、自然免疫応答と関連性を有する遺伝子を含む特定の遺伝子パネルの発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、特定の遺伝子パネルは、細胞傷害性細胞、樹状細胞、マクロファージ、顆粒球及びそれらの組み合わせのマーカーを含む。
【0016】
幾つかの実施の形態においては、特定の遺伝子パネルは、CD8、BLC2及びそれらの組み合わせから選択される遺伝子を含む。
【0017】
幾つかの実施の形態においては、特定の遺伝子パネルは、CCL12、CCL17及び
それらの組み合わせから選択される遺伝子を含む。
【0018】
幾つかの実施の形態においては、特定の遺伝子パネルは、APOE、CCL7及びそれらの組み合わせから選択される遺伝子を含む。
【0019】
幾つかの実施の形態においては、特定の遺伝子パネルは、CMA1、CSF3R及びそれらの組み合わせから選択される遺伝子を含む。
【0020】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、CTLA4、CD3g、CD3e、CD27、SH2B2、ICOSL及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む。
【0021】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、CD27、SH2B2、ICOSLG、HLA-DQA1、HLA-DQB1、MAGEB2、PRAME、MAGEA1、IL22RA1、SSX1、CCL20、NEFL、C9、GZMM、KIR Actサブグループ2、HLA-DOB及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む。
【0022】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、CD27、SH2B2、ICOSLG及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む。
【0023】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、HLA-DQA1、HLA-DQB1、MAGEB2、PRAME、MAGEA1、IL22RA1、SSX1、CCL20、NEFL、C9、GZMM、KIR Actサブグループ2、HLA-DOB及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む。
【0024】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、例えば腫瘍生検の免疫組織化学的染色によって、組織微小環境におけるT細胞の密度(すなわち、腫瘍内T細胞密度)を測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、組織微小環境におけるCD3+T細胞及び/又はCD8+T細胞の密度を測定することを含む。
【0025】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、遺伝子発現プロファイルに基づいて免疫スコアを決定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、腫瘍内T細胞密度に基づいて免疫スコアを決定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、免疫スコアを使用してCAR-T細胞の総用量を調整することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、免疫調節化合物又は免疫調節介入を提供して免疫スコアを増加させた後に、CAR-T細胞を投与することを含む。
【0026】
幾つかの実施の形態においては、前記有効用量は、体重1kg当たり少なくとも1×106個のCAR陽性生存T細胞を含む。
【0027】
幾つかの実施の形態においては、キメラ受容体は、腫瘍抗原を標的とする。幾つかの実施の形態においては、キメラ受容体は、腫瘍関連表面抗原、例えば5T4、アルファフェトプロテイン(AFP)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、BCMA、B-ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン、CA-125、癌胚抗原(CEA)、癌胚抗原(CEA)、CD123、CD133、CD138、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD34、CD4、CD40、CD44、CD56、CD8、CLL-1、c-Met、CMV特異抗原、CS-1、CSPG4、CTLA-4、DLL3、ジシアロガングリオシドGD2、膵管上皮ムチン、EBV特
異抗原、EGFR変異体III(EGFRvIII)、ELF2M、エンドグリン、エフリンB2、上皮増殖因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮性腫瘍抗原、ErbB2(HER2/neu)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、FLT3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、細胞膠腫関連抗原、スフィンゴ糖脂質、gp36、HBV特異抗原、HCV特異抗原、HER1-HER2、HER2-HER3の組み合わせ、HERV-K、高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、HIV-1型エンベロープ糖タンパク質gp41、HPV特異抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、IGFI受容体、IGF-II、IL-11Rアルファ、IL-13R-a2、インフルエンザウイルス特異抗原、CD38、インスリン増殖因子(IGFI)-1、腸カルボキシルエステラーゼ、カッパー鎖、LAGA-1a、ラムダ鎖、ラッサ熱ウイルス特異抗原、レクチン反応性AFP、系譜特異又は組織特異抗原、例えばCD3、MAGE、MAGE-A1、主要組織適合性複合体(MHC)分子、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合性複合体(MHC)分子、M-CSF、黒色腫関連抗原、メソテリン、メソテリン、MN-CA IX、MUC-1、mut hsp70-2、変異p53、変異p53、変異ras、好中球エラスターゼ、NKG2D、Nkp30、NY-ESO-1、p53、PAP、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、前立腺特異抗原タンパク質、STEAP1、STEAP2、PSMA、RAGE-1、ROR1、RU1、RU2(AS)、表面接着分子、サバイビング(surviving)及びテロメラーゼ、TAG-72、フィブロネクチンのエクストラドメインA
(EDA)及びエクストラドメインB(EDB)、並びにテネイシンCのA1ドメイン(TnC A1)、サイログロブリン、腫瘍間質抗原、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGFR2)、ウイルス特異表面抗原、例えばHIV特異抗原(例えば、HIV gp120)、並びにこれらの表面マーカーの任意の誘導体又は変異体から選択される腫瘍抗原を標的とする。
【0028】
幾つかの実施の形態においては、キメラ受容体は、特異的にCD19を標的とする。
【0029】
幾つかの実施の形態においては、前記キメラ受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。幾つかの実施の形態においては、前記キメラ受容体は、T細胞受容体(TCR)である。
【0030】
幾つかの実施の形態においては、前記悪性腫瘍は、固形腫瘍、肉腫、癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC:primary mediastinal large B cell lymphoma)、びまん性大細胞
型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B cell lymphoma)、濾胞性リンパ腫(
FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫(transformed follicular lymphoma)、脾辺縁帯リ
ンパ腫(SMZL:splenic marginal zone lymphoma)、慢性若しくは急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病(chronic myeloid leukemia)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、T細胞リンパ腫、1つ以上のB細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、毛様細胞白血病、小細胞型若しくは大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞増殖性障害、例えば、無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫)、意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(例えば、形質細胞異常増殖症、孤在性骨髄腫、孤在性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、及び多発性形質細胞腫)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病、及びP
EP症候群としても知られる)、又はそれらの組み合わせである。
【0031】
幾つかの実施の形態においては、悪性腫瘍は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、転移性黒色腫、形質転換後濾胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、及び多発性骨髄腫である。
【0032】
幾つかの実施の形態においては、有効用量は、患者が治療に応答する可能性を高めるように最適化される。
【0033】
幾つかの実施の形態においては、腫瘍生検は、キメラ受容体療法による治療の前に患者から取得される。
【0034】
一態様では、本開示は、患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを決定する方法であって、(a)前記患者からの腫瘍生検を分析して、遺伝子発現プロファイルを使用して腫瘍微小環境を特性評価することと、(b)前記遺伝子発現プロファイルに基づいて免疫スコアを決定することと、(c)前記患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを前記免疫スコアに基づいて決定することとを含む、方法を含む。
【0035】
一態様では、本開示は、患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを決定する方法であって、(a)患者からの腫瘍生検を分析して、T細胞(例えば、CD3+T細胞及び/又はCD8+T細胞)の腫瘍内密度を定量することによって腫瘍微小環境を特性評価することと、(b)腫瘍内T細胞密度に基づいて免疫スコアを決定することと、(c)免疫スコアに基づいて患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを決定することとを含む、方法を含む。
【0036】
一態様では、本開示は、患者における悪性腫瘍を治療する方法であって、(a)キメラ受容体治療前に前記患者からの腫瘍生検を分析して、腫瘍微小環境を特性評価することと、(b)前記患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを前記腫瘍微小環境の特性に基づいて決定することと、(c)1つ以上のキメラ受容体を含むT細胞を有効用量、前記患者に投与することとを含み、前記有効用量は前記腫瘍微小環境の特性を使用して決定される、方法を提供する。
【0037】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、腫瘍微小環境の特性を使用して、追加の療法薬が臨床有効性を改善するかどうかを決定することを更に含む。幾つかの実施の形態においては、キメラ受容体療法薬は追加の療法薬と共に投与される。幾つかの実施の形態においては、追加の療法薬はキメラ受容体療法薬との併用で投与される。幾つかの実施の形態においては、追加の療法薬はキメラ受容体療法薬の前又は後に投与される。
【0038】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、サイトカイン療法薬を投与することを更に含む。幾つかの実施の形態においては、サイトカイン療法薬はIL-2又はIL-15である。
【0039】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、刺激抗体を投与することを更に含む。幾つかの実施の形態においては、刺激抗体は抗41BB又は抗OX-40である。
【0040】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、チェックポイント遮断療法薬を投与することを更に含む。幾つかの実施の形態においては、チェックポイント遮断療法薬はCTLA4又はPD-1を含む。
【0041】
幾つかの実施の形態においては、上記方法は、自然免疫刺激剤を投与することを更に含む。幾つかの実施の形態においては、自然免疫刺激剤はTLRアゴニスト又はSTINGアゴニストを含む。
【0042】
幾つかの実施の形態においては、遺伝子発現プロファイリングは、増殖マーカー、炎症マーカー、免疫調節マーカー、エフェクター及び/又はケモカインの発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、IL-6、CRP、SAA、IL-5、フェリチン、IL-1Ra、IL-2Rα及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、GM-CSF、IFN-γ、IL-10及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、IL-8、IP-10、MCP-1及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、グランザイムBの発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、CD3ε、CD28及びCTLA4の発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、MX1、ISG15及びMYD88の発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、CD19、CD79B及びPAX5の発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、PD-L1及び/又はCD19の発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施の形態においては、腫瘍生検は、CAR T細胞療法による治療の前に取得される。幾つかの実施の形態においては、腫瘍生検は、CAR T細胞療法による治療の後に取得される。幾つかの実施の形態においては、上記方法は、CAR T細胞療法による治療の前に腫瘍生検を取得することと、CAR T細胞療法による治療の後に腫瘍生検を取得することとを含む。幾つかの実施の形態においては、腫瘍生検は、CAR T細胞療法による治療の7日後、14日後、21日後、又は28日後に取得される。
【0043】
図面は、説明を目的とするものにすぎず、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】キメラ抗原受容体(CAR)の構成配置の概略図を示す図である。
【
図2】アキシカブタゲン・シロロイセルを投与する患者のZUMA-1臨床試験の概略図を示す図である。AEは有害事象であり、axi-celはアキシカブタゲン・シロロイセルであり、CARはキメラ抗原受容体であり、CRは完全奏効であり、CRSはサイトカイン放出症候群であり、DLBCLはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫であり、NEは神経学的事象であり、ORRは客観的奏効率であり、PMBCLは原発性縦隔B細胞リンパ腫であり、TFLは形質転換後濾胞性リンパ腫である。
【
図3】ZUMA-1臨床試験プロトコル及びペア生検のタイミングの概略図を示す図である。
【
図4】腫瘍微小環境内の主要な免疫経路を評価するために使用されるImmunosign(商標)臨床研究アッセイパネルを示す図である。
【
図5】
図5Aは、9ヶ月の最小追跡期間でアキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)で治療された25人の患者からの試料に対して実施されたImmunosign(商標)21スコアと臨床転帰との間の関連性を示す図である。その後、1人の患者が12ヶ月の追跡期間で「ノンレスポンダー」から「レスポンダー」に変わった。
図5Bは、高いベースラインImmunosign(商標)21スコア及び低いベースラインImmunosign(商標)21スコアを有するaxi-cel治療に応答した患者の割合を示す図である。
図5Cは、高いベースラインImmunosign(商標)21スコア及び低いベースラインImmunosign(商標)21スコアを有するaxi-cel治療に応答しなかった患者の割合を示す図である。高い/低いImmunosign(商標)21スコアのカットオフは、試料間で観察されるスコアの25パーセンタイルとして定義した。
図5B及び
図5Cの点描は、低いImmunosign(商標)21スコアを示している。
【
図6】9ヶ月の最小追跡期間でアキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)で治療された25人の患者からの試料に対して実施されたノンレスポンダーと比較したレスポンダーにおけるImmunosign(商標)21遺伝子の発現における差異を示す図である。
【
図7】
図7A~
図7Cは、9ヶ月の最小追跡期間でアキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)で治療された25人の患者からの試料に対して実施された、事前に決められた43個の免疫遺伝子パネルからのレスポンダー由来の腫瘍において上昇した上位3個の免疫環境遺伝子CTLA4(
図7A)、CD3γ(
図7B)及びCD3ε(
図7C)の関連性を示す図である。
【
図8】
図8Aは、治療された患者からの試料に対して実施された平均パーセンタイルのImmunoscore(商標)と臨床転帰との間の関連性を示す図である。
図8Bは、高いベースラインImmunoscore(商標)を有した患者の間で観察された臨床転帰の割合を示す図である。
図8Cは、低いベースラインImmunoscore(商標)を有した患者の間で観察された臨床転帰の割合を示す図である。高い/低いImmunosign(商標)21スコアのカットオフは、試料間で観察されるスコアの中央値として定義した。CRは完全奏効であり、PRは部分奏効であり、SDは病勢安定であり、PDは病勢進行である。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、治療された患者由来のベースライン生検切片で完全奏効者及び完全奏効以外を示した患者の間での、CD3
+細胞及びCD8
+細胞それぞれの密度を示す図である。
【
図10】治療された患者由来のベースライン生検から評価されたImmunosign(商標)21スコアとImmunoscore(商標)との間の相関関係のプロットを示す図である。
【
図11】axi-cel治療の1年間の追跡期間での、T細胞関連遺伝子(CD3ε、CD28及びCTLA4)、自然免疫関連遺伝子(MX1、ISG15及びMYD88)及びB細胞関連遺伝子(CD19、CD79B及びPAX5)のTMEにおける治療前遺伝子発現分析並びに臨床転帰を示す図である。CRは完全奏効であり、PRは部分奏効であり、SDは病勢安定であり、PDは病勢進行である。
【
図12】免疫阻害チェックポイント(PD-L1、CTLA4、LAG3、TNFRSF18、ICOS)、IFN関連遺伝子(IRF1、STAT1、STAT4、IFNγ)及びケモカイン(CXCL9、CCL2、CCL5)、エフェクター(CD8A、GNLY、GZMA、GZMM、GZMB、GZMH)並びに増殖マーカーIL-15におけるベースラインと比較した相対変化を示す、CAR-T治療の7日後~21日後のTME遺伝子発現における倍率変化を示す図である。
【
図13】
図13A及び
図13Bは、IL-15(
図13A)及びPD-L1(
図13B)における差次的変化のnanostring分析を示す図である。Pre-Txは治療前であり、W1-2は1週目~2週目であり、W4は4週目である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本開示は、患者の生検の腫瘍微小環境の特性を使用して患者における悪性腫瘍を治療する方法に関する。本開示は、キメラ受容体治療の前に取得された患者生検の腫瘍微小環境の特性を使用して臨床転帰を予測することができるという驚くべき発見に部分的に基づいている。本明細書に記載されるように、キメラ受容体治療の前の腫瘍微小環境プロファイルを使用して、キメラ受容体(例えば、CAR又はTCR)T細胞療法の臨床転帰に影響を与える有効用量が決定される。
【0046】
定義
本発明がより容易に理解されるように、まず或る特定の用語を以下に定義する。以下の用語及び他の用語に対する更なる定義は、本明細書を通して記載される。
【0047】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、数量を特定していないもの(the singular forms "a," "an" and "the")は、文脈より別段の明確な指示がない限り複数の指示対象を含む。
【0048】
具体的に述べられない又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「又は」の用語は「又は」と「及び」の両方を含み、それらを包含すると理解される。
【0049】
本明細書において使用される場合、「及び/又は」の用語は、2つの指定される特徴又は成分の各々ともう一方とを含む、又はもう一方を含まない具体的な開示として理解される。したがって、本明細書において「A及び/又はB」等の句で使用される「及び/又は」の用語は、A及びB;A又はB;A(単独);並びにB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」等の句において使用される「及び/又は」の用語は、A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)の態様の各々を包含することが意図される。
【0050】
本明細書で使用される「例えば」及び「すなわち」の用語は、限定を意図せずに例として使用されるにすぎず、本明細書において明らかに列挙されるそれらの項目のみを指すものと解釈されるべきではない。
【0051】
「以上」、「少なくとも」、「それよりも多く」等の用語、例えば「少なくとも1つ」は、限定されないが、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149又は150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、又は示される値よりも多い値を含むと理解される。また、任意のより大きな数、又はその間の分数も含まれる。
【0052】
逆に、「以下」の用語は示される値よりも小さい各値を含む。例えば、「100ヌクレオチド以下」は、100個、99個、98個、97個、96個、95個、94個、93個、92個、91個、90個、89個、88個、87個、86個、85個、84個、83個、82個、81個、80個、79個、78個、77個、76個、75個、74個、73個、72個、71個、70個、69個、68個、67個、66個、65個、64個、63個、62個、61個、60個、59個、58個、57個、56個、55個、54個、53個、52個、51個、50個、49個、48個、47個、46個、45個、44個、43個、42個、41個、40個、39個、38個、37個、36個、35個、34個、33個、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個
、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、1個及び0個のヌクレオチドを含む。また、任意のより小さな数、又はその間の分数も含まれる。
【0053】
「複数」、「少なくとも2つ」、「2以上」、「少なくとも第2の」等の用語は、限定されないが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149又は150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000以上を含むと理解される。また、任意のより大きな数、又はその間の分数も含まれる。
【0054】
本明細書を通して、「含んでいる、含む(comprising)」の文言、又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」等の変化形は、示される要素、整数若し
くは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を含むことを含意するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を排除しないと理解される。本明細書において「含んでいる、含む」の言葉と共に態様が記載される場合はいつでも、「からなる」及び/又は「から本質的になる」の用語で記載される他の類似の態様も提供されると理解される。
【0055】
具体的に述べられておらず又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「約」の用語は、当業者によって決定される特定の値又は組成に対する許容可能な誤差範囲に含まれる値又は組成を指し、その値又は組成がどのように測定され又は決定されるのか、すなわち測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」又は「およそ」は、当該技術分野における1回の実施当たりの1以上の標準偏差の範囲内を意味し得る。「約」又は「およそ」は、最大10%(すなわち±10%)の範囲を意味し得る。したがって、「約」は、示される値よりも10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、又は0.001%大きい又は小さい範囲に含まれると理解され得る。例えば、約5mgは、4.5mg~5.5mgの間の任意の量を含み得る。さらに、特に生物学的なシステム又はプロセスに関して、上記用語は、或る値の最大10倍(up to an order of magnitude)又は最大5倍を意味する場
合がある。特定の値又は組成が本開示で提供される場合、別段の指示がない限り、「約」又は「およそ」の意味は、その特定の値又は組成に対する許容可能な誤差の範囲に含まれるとされる。
【0056】
本明細書に記載されるように、任意の濃度範囲、パーセンテージの範囲、比率範囲、又は整数の範囲は、別段の指示がない限り、述べられる範囲に含まれる任意の整数、また適切な場合には、その分数(或る整数の10分の1、及び100分の1等)の値を含むものと理解される。
【0057】
本明細書で使用される単位、接頭辞及び記号は、それらの国際単位系(SI:Systeme International de Unites)の容認される形態で提示される。数値範囲は、その範囲を規
定する数字を含む。
【0058】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、この開示が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Juo, "The Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology", 2nd ed., (2001), CRC Press、"The Dictionary of Cell & Molecular Biology", 5th ed., (2013),
Academic Press、及び"The Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology", Cammack et al. eds., 2nd ed, (2006), Oxford University Pressは、この開示で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供する。
【0059】
「投与すること、投与する(Administering)」は、当業者に知られている様々な方法
及び送達システムのいずれかを使用する、被験体に対する薬剤の物理的な導入を指す。本明細書に開示される製剤に対する例示的な投与経路として、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄又は他の非経口的な(parenteral:腸管外)投与経路、例えば注射又は点滴による投与経路が挙げられる。本明細書で使用される「非経口投与」の句は、経腸及び局所の投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、関節腔内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、関節腔下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び点滴、また同様にin vivo電気穿孔を含む。幾つかの実施形態では、上記製剤は、非経口的ではない経路、例えば経口で投与される。他の非経口的ではない経路として、局所、表皮、又は粘膜の投与経路、例えば、鼻腔内、経膣的、直腸、舌下又は局所的なものが挙げられる。また、投与は、例えば1回、複数回、及び/又は1以上の延長された期間に亘って行われ得る。
【0060】
「抗体」(Ab)の用語は、限定されず、抗原に特異的に結合する糖タンパク質免疫グロブリンを含む。一般に、抗体は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖、又はそれらの抗原結合分子を含み得る。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、すなわちCH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメイン、すなわちCLを含む。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存される領域が介在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細分され得る。VH及びVLはそれぞれ、アミノ末端からカルボキシ末端にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4の順で並ぶ、3つのCDR及び4つのFRを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。Abの定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主の組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0061】
抗体として、例えば、モノクローナル抗体、組み換えにより生成された抗体、単一特異的抗体、多重特異的抗体(二重特異的抗体を含む)、ヒト抗体、操作された抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、免疫グロブリン、合成抗体、2本の重鎖分子及び2本の軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-抗体重鎖対、イントラボディ(intrabodies)、抗体融合体(本明細書では「抗
体コンジュゲート」と称されることがある)、ヘテロコンジュゲート抗体、単一ドメイン抗体、一価抗体、単鎖抗体又は単鎖Fv(scFv)、ラクダ化抗体、アフィボディ(affybodies)、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば抗-抗-Id抗体を含む)、ミ
ニボディ(minibodies)、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体模倣物」と称されることがある)、及び上記のいずれかの抗原結合フラグメントが挙げられ得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ポリクローナル抗体集団を指す。
【0062】
「抗原結合分子」、「抗原結合部分」又は「抗体フラグメント」は、抗体の抗原結合部(例えばCDR)を含む任意の分子を指し、この分子は該抗体に由来する。抗原結合分子は、抗原相補性決定領域(CDR)を含み得る。抗体フラグメントの例として、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント、dAb、直鎖抗体、scFv抗体、並びに抗原結合分子から形成される多重特異性抗体が挙げられる。ペプチボディ(Peptibodies)(すなわち、ペプチド結合ドメインを含むFc融合分子)は、
好適な抗原結合分子の別の例である。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は腫瘍細胞上の抗原に結合する。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は、過剰増殖性疾患(hyperproliferative disease)に関与する細胞上の抗原、又はウイルス若しくは細菌の抗原に結合する。幾つかの実施形態では、抗原結合分子はCD19に結合する。更なる実施形態では、抗原結合分子は、その1以上の相補性決定領域(CDR)を含む、抗原に特異的に結合する抗体フラグメントである。更なる実施形態では、抗原結合分子は単鎖可変フラグメント(scFv)である。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は、アビマー(avimers)
を含む、又はそれからなる。
【0063】
「抗原」は、免疫応答を誘発する、又は抗体若しくは抗原結合分子によって結合されることが可能な任意の分子を指す。免疫応答は、抗体産生若しくは特定の免疫適格細胞(immunologically-competent cells)の活性化のいずれか、又はそれらの両方を含み得る。
当業者は、実質的に全てのタンパク質又はペプチドを含む任意の高分子が抗原としての役割を果たし得ることを容易に理解する。抗原は内因性に発現され得て、すなわちゲノムDNAによって発現され得るか、又は組み換えによって発現され得る。抗原は、癌細胞等の或る特定の組織に特異的となり得るか、又は広く発現され得る。さらに、より大きな分子のフラグメントが抗原として作用し得る。幾つかの実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。
【0064】
「中和する、中和すること」の用語は、リガンドに結合し、そのリガンドの生物学的効果を妨げる又は減少させる抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントを指す。幾つかの実施形態では、抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントは、リガンド上の結合部位を直接遮断する、或いは間接的な手段(リガンドの構造の又はエネルギーの変更等)によってリガンドの結合能を変更する。幾つかの実施形態では、抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントは、結合されるタンパク質が生体機能を実施するのを妨げる。
【0065】
「自己」の用語は、後に再導入されることになっているのと同じ個体に由来する任意の材料を指す。例えば、本明細書に記載される操作された自己細胞療法(eACT(商標))は、患者からのリンパ球の収集を含み、該リンパ球は、その後、例えばCARコンストラクトを発現するように操作した後、同じ患者に戻される(administered back)。
【0066】
「同種異系」の用語は、一個体に由来する任意の材料を指し、該材料はその後、同種の別の個体に導入される(例えば同種異系T細胞移植)。
【0067】
「形質導入」及び「形質導入された」の用語は、外来DNAがウイルスベクターによって細胞へと導入されるプロセスを指す(Jones et al., "Genetics: principles and analysis," Boston: Jones & Bartlett Publ. (1998)を参照されたい)。幾つかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、DNAベクター、RNAベクター、アデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタイン-バールウイルスベクター、
パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルス随伴ベクター、レンチウイルスベクター、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0068】
「癌」は、身体における異常な細胞の制御されていない成長を特徴とする、幅広い各種疾患のグループを指す。制御されていない細胞の分裂及び成長は、隣接する組織に侵入して、またリンパ系又は血流によって身体の離れた部分へと転移し得る、悪性腫瘍の形成をもたらす。「癌」又は「癌組織」は、腫瘍を含む場合がある。本明細書に開示される方法によって治療され得る癌の例として、限定されないが、リンパ腫、白血病、骨髄腫、及び他の白血球の悪性腫瘍(leukocyte malignancies)を含む免疫系の癌が挙げられる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、例えば、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性又は急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、幼少期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カ
ポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、石綿によって誘導されるものを含む、環境によって誘導される癌、他のB細胞悪性腫瘍、及び上記癌の組み合わせに由来する腫瘍の腫瘍サイズを減少するため使用され得る。幾つかの実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。特定の癌は、化学療法又は放射線療法に反応性となり得るが、そうでなければその癌は難治性となり得る。難治性癌は、外科的処置に適用できない癌を指し、その癌は最初に化学療法若しくは放射線療法に無反応であるか、又はその癌は経時的に無反応となるいずれかである。
【0069】
本明細書に使用される「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移の数の減少、全体生存期間若しくは無増悪生存期間の増加、平均余命の増加、又は腫瘍と関係する様々な生理学的症状の改善として提示され得る、生物学的効果を指す。また、抗腫瘍効果は、腫瘍の発生の予防、例えばワクチンを指す場合がある。
【0070】
本明細書で使用される「サイトカイン」は、特異抗原との接触に反応して1つの細胞によって放出される非抗体タンパク質を指し、ここで、サイトカインは第2の細胞と相互作用して、第2の細胞における反応を媒介する。本明細書で使用される「サイトカイン」は、細胞間メディエーターとして別の細胞に対して作用する、1つの細胞集団によって放出されるタンパク質を指すことを意味する。サイトカインは、細胞によって内因性に発現され得るか、又は被験体に投与され得る。サイトカインは、マクロファージ、B細胞、T細胞、及び肥満細胞を含む免疫細胞によって放出されて、免疫応答を伝播し得る。サイトカインは、レシピエント細胞において様々な反応を誘導し得る。サイトカインは、ホメオスタシスサイトカイン(homeostatic cytokines)、ケモカイン、炎症誘発性サイトカイン
、エフェクター及び急性期タンパク質を含み得る。例えば、インターロイキン(IL)7及びIL-15を含むホメオスタシスサイトカインは、免疫細胞の生存及び増殖を促進し、炎症誘発性サイトカインは炎症反応を促進し得る。ホメオスタシスサイトカインの例として、限定されないが、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-12p70、IL-15及びインターフェロン(IFN)ガンマが挙げられる。炎症誘発性サイトカインの例として、限定されないが、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-13、IL-17a、腫瘍壊死因子(TNF)-アルファ、TNF
-ベータ、線維芽細胞成長因子(FGF)2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、可溶性細胞間接着分子1(sICAM-1)、可溶性血管接着分子1(sVCAM-1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF-C、VEGF-D及び胎盤増殖因子(PLGF)が挙げられる。エフェクターの例として、限定されないが、グランザイムA、グランザイムB、可溶性Fasリガンド(sFasL)及びパーフォリンが挙げられる。急性期タンパク質の例として、限定されないが、C反応性タンパク質(CRP)及び血清アミロイドA(SAA)が挙げられる。
【0071】
「ケモカイン」は細胞走化性又は指向性運動を媒介するサイトカインの一種である。ケモカインの例として、限定されないが、IL-8、IL-16、エオタキシン、エオタキシン-3、マクロファージ由来ケモカイン(MDC又はCCL22)、単球走化性タンパク質1(MCP-1又はCCL2)、MCP-4、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、MIP-1a)、MIP-1β(MIP-1b)、ガンマ誘導性タンパク質10(IP-10)、並びに胸腺及び活性化制御ケモカイン(TARC又はCCL17)が挙げられる。
【0072】
本明細書で使用される場合に、「キメラ受容体」は、特定の分子を認識することが可能な操作された表面発現される分子を指す。特定の腫瘍抗原と相互作用することができる結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)及び操作されたT細胞受容体(TCR)は、T細胞が特定の腫瘍抗原を発現する癌細胞を標的とし、死滅させることを可能とする。
【0073】
「治療的有効量」、「有効用量」、「有効量」又は「治療的に有効な投薬量」の治療剤、例えば操作されたCAR T細胞は、単独で又は別の治療剤と組み合わせて使用された場合に、疾患の発症から被験体を保護する、又は疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度及び持続期間の増加、若しくは疾患の罹患に起因する機能障害若しくは身体障害の予防によって明示される疾患の退縮を促進する、任意の量である。治療剤の疾患の退縮を促進する能力は、熟練した医師に知られている様々な方法を使用して、例えば、臨床試験中のヒト被験体において、ヒトにおける効能を予測する動物モデル系において、又はin vitroアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることによって評価され得る。
【0074】
本明細書で使用される「リンパ球」の用語は、ナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞、T細胞、又はB細胞を含む。NK細胞は、生得免疫系の主な成分を占める細胞傷害性(細胞毒性)リンパ球の一種である。NK細胞は腫瘍及びウイルスによって感染された細胞を拒絶する。NK細胞は、アポトーシス又はプログラム細胞死のプロセスによって作用する。NK細胞は、細胞を死滅させるために活性化を必要としないことから、「ナチュラルキラー」と名付けられた。T細胞は、細胞媒介免疫(抗体が関与しない)において主な役割を果たす。そのT細胞受容体(TCR)は、他の種類のリンパ球からそれら自体を分化させる。免疫系の特殊化された器官である胸腺は、主としてT細胞の成熟を担う。6種類のT細胞、すなわち、ヘルパーT細胞(例えばCD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞又はキラーT細胞としても知られる)、メモリーT細胞((i)ナイーブ細胞のようなステムメモリーTSCM細胞は、CD45RO-、CCR7+、CD45RA+、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+及びIL-7Rα+であるが、それらは、大量のCD95、IL-2Rβ、CXCR3及びLFA-1も発現し、メモリー細胞に特有の多数の機能的な属性を示す;(ii)セントラルメモリーTCM細胞は、L-セレクチン及びCCR7を発現し、IFNγ又はIL-4ではなくIL-2を分泌する;並びに(iii)エフェクターメモリーTEM細胞はL-セレクチンもCCR7も発現しないものの、IFNγ及びIL-4のようなエフェクターサイトカインを産生する)
、制御性T細胞(Treg、サプレッサーT細胞又はCD4+CD25+制御性T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)及びガンマデルタT細胞が存在する。一方、B細胞は、液性免疫(抗体が関与する)で最も重要な役割を果たす。B細胞は抗体及び抗原を作製し、抗原提示細胞(APC)の役割を行い、抗原の相互作用による活性化の後、メモリーB細胞となる。哺乳動物では、未成熟B細胞は、その名前が由来する骨髄で形成される。
【0075】
「遺伝子操作された」又は「操作された」の用語は、限定されないが、コーディング領域若しくは非コーディング領域、若しくはそれらの一部分の欠失、又はコーディング領域若しくはその一部分の挿入を含む、細胞のゲノムを修飾する方法を指す。幾つかの実施形態では、修飾される細胞はリンパ球、例えば、患者又はドナーのいずれかから得ることができるT細胞である。T細胞は、例えば、細胞のゲノムに組み込まれる、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)等の外来コンストラクトを発現するように修飾され得る。
【0076】
「免疫応答」は、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌性若しくは他の異常な細胞、又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合、正常なヒトの細胞若しくは組織の選択的な標的化、それらへの結合、それらに対する損傷、それらの破壊、及び/又は脊椎動物の身体からのそれらの排除をもたらす、免疫系の細胞(例えばTリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞、及び好中球)及びこれらの細胞のいずれか又は肝臓によって産生される可溶性高分子(Ab、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指す。
【0077】
「免疫療法」の用語は、免疫応答を誘導する、増強する、抑制する、或いは緩和することを含む方法による、疾患に冒された、又は疾患にかかる若しくは疾患の再発を患うリスクがある被験体の治療を指す。免疫療法の例として、限定されないが、T細胞療法が挙げられる。T細胞療法は、養子T細胞療法(adoptive T cell therapy)、腫瘍浸潤リンパ
球(TIL)免疫療法、自己細胞治療、操作された自己細胞療法(eACT(商標))、及び同種異系T細胞移植を含み得る。しかしながら、当業者は、本明細書に開示されるコンディショニング法(conditioning methods)が任意の移植T細胞療法の有効性を増強し得ることを認識するであろう。T細胞療法の例は、米国特許出願公開第2014/0154228号及び同第2002/0006409号、米国特許第7,741,465号、米国特許第6,319,494号、米国特許第5,728,388号及び国際公開第2008/081035号に記載される。
【0078】
免疫療法のT細胞は、当該技術分野において知られている任意の供給源に由来し得る。例えば、T細胞は、造血幹細胞集団からin vitroで分化されてもよく、又はT細胞は被験体から得られてもよい。T細胞を、例えば末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織及び腫瘍から得ることができる。さらに、T細胞は、当該技術分野において利用可能な1以上のT細胞株に由来してもよい。また、T細胞は、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシス(apheresis)等の当業者に知られている任意の多くの技術を使用して被験
体から収集された血液単位から得ることもできる。T細胞療法用のT細胞を単離する更なる方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示され、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0079】
「eACT(商標)」と略記することができ、養子細胞移植としても知られる「操作された自己細胞療法」の用語は、患者自身のT細胞を収集し、その後、1以上の特定の腫瘍細胞又は悪性腫瘍の細胞表面上に発現される1以上の抗原を認識し、標的とするように遺伝的に変更するプロセスである。T細胞は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)を発現
するように操作され得る。CAR陽性(+)T細胞は、少なくとも1つの共刺激ドメイン及び少なくとも1つの活性化ドメインを含む細胞内シグナル伝達部に連結された特定の腫瘍抗原に対する特異性を有する細胞外単鎖可変フラグメント(scFv)を発現するように操作される。CAR scFvは、例えば、全ての正常なB細胞と、限定されるものではないが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、特段の記載がない限り、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、及び濾胞性リンパ腫から生ずるDLBCL、NHL、CLL、及び非T細胞ALLを含むB細胞悪性腫瘍とを含むB細胞系譜における細胞により発現される膜貫通タンパク質であるCD19を標的とするように設計することができる。CAR T細胞療法及びコンストラクトの例は、米国特許出願公開第2013/0287748号、同第2014/0227237号、同第2014/0099309号、及び同第2014/0050708号に記載され、これらの引用文献はそれらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0080】
本明細書で使用される「患者」は、癌(例えばリンパ腫又は白血病)に冒された任意のヒトを含む。「被験体」及び「患者」の用語は、本明細書では区別なく使用される。
【0081】
本明細書で使用される「in vitro細胞」の用語は、ex vivoで培養される任意の細胞を指す。特に、in vitro細胞はT細胞を含み得る。
【0082】
「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」の用語は区別なく使用され、ペプチド結合によって共有結合的に連結されたアミノ酸残基で構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含み、タンパク質又はペプチドの配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いにつながれた2個以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用されるように、上記用語はまた、当該技術分野において、例えばペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーと一般的に称される短い鎖と、当該技術分野において一般的にはタンパク質と称され、多くの種類が存在する、より長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」として、例えば、特に、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同性のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、類縁体、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0083】
本明細書で使用される「刺激」は、その同族のリガンドと刺激分子を結合することによって誘導される一次応答を指し、ここで、その結合はシグナル伝達事象を媒介する。「刺激分子」は、T細胞上の分子、例えば、抗原提示細胞上に存在する同族の刺激リガンドと特異的に結合するT細胞受容体(TCR)/CD3複合体を指す。「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞等)上に存在する場合、T細胞上の刺激分子と特異的に結合することができ、それによって、限定されないがT細胞の活性化、免疫応答の開始、増殖等を含むT細胞による一次応答を媒介するリガンドである。刺激リガンドとして、限定されないが、抗CD3抗体、ペプチドで充填されたMHCクラスI分子、スーパーアゴニスト抗CD2抗体、及びスーパーアゴニスト抗CD28抗体が挙げられる。
【0084】
本明細書で使用される「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーション等の一次シグナルと組み合わせて、限定されないがT細胞の増殖及び/又は主要な分子の上方制御若しくは下方制御等のT細胞の応答をもたらすシグナルを指す。
【0085】
本明細書で使用される「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族の共刺激分子を特異的に結合する抗原提示細胞上の分子を含む。共刺激リガンドの結合は、限定されないが、T細胞の増殖、活性化、分化等を含むT細胞応答を媒介するシグナルを提供する。共刺激リガ
ンドは、一次シグナルに加えて、刺激分子によって、例えば、ペプチドがロードされた主要組織適合複合体(MHC)分子とのT細胞受容体(TCR)/CD3複合体の結合によって提供されるシグナルを誘導する。共刺激リガンドとして、限定されないが、3/TR6、4-1BBリガンド、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD30リガンド、CD40、CD7、CD70、CD83、ヘルペスウイルスエントリーメディエーター(HVEM:herpes virus
entry mediator)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、ILT4、免疫グロブリン様転
写物(ILT:immunoglobulin-like transcript)3、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、B7-H3と特異的に結合するリガンド、リンフォトキシンベータ受容体、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)、MHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)、OX40リガンド、PD-L2、又はプログラム細胞死(PD)L1が挙げられ得る。共刺激リガンドとして、限定されず、4-1BB、B7-H3、CD2、CD27、CD28、CD30、CD40、CD7、ICOS、CD83と特異的に結合するリガンド、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、ナチュラルキラー細胞受容体C(NKG2C)、OX40、PD-1、又は腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14又はLIGHT)等のT細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合することにより、限定されないが増殖等のT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族の結合パートナーである。共刺激分子として、限定されないが、が挙げられ、「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合することにより、限定されないが増殖等のT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族の結合パートナーである。共刺激分子として、限定されないが、4-1BB/CD137、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD33、CD45、CD100(SEMA4D)、CD103、CD134、CD137、CD154、CD16、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD22、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3(アルファ;ベータ;デルタ;イプシロン;ガンマ;ゼータ)、CD30、CD37、CD4、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD5、CD64、CD69、CD7、CD80、CD83リガンド、CD84、CD86、CD8アルファ、CD8ベータ、CD9、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、ICOS、Igアルファ(CD79a)、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、LIGHT、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14;TNFSF14)、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1(CD11a/CD18))、MHCクラスI分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX40、PAG/Cbp、PD-1、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A;Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF、TNFr、TNFR2、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1若しくはVLA-6、又はそれらのフラグメント、短縮形(truncations)、若
しくは組み合わせが挙げられる。
【0087】
「減少する、減少させる(reducing)」及び「減じる(decreasing)」の用語は、本明細書において区別なく使用され、本来よりも少ない、あらゆる変化を示す。「減少する、
減少させる」及び「減じる」は測定前と測定後の比較を必要とする、相対的な用語である。「減少する、減少させる」及び「減じる」は完全な枯渇を含む。
【0088】
被験体の「治療(Treatment)」又は被験体を「治療する、治療すること(treating)
」は、症状、合併症若しくは病状の発症、進行、発現、重症度若しくは再発、又は疾患と関連する生化学的指標の転換、緩和、改善、阻害、遅延又は予防の目的で、被験体に対して行われる任意の種類の処置若しくはプロセス、又は被験体に対する有効成分の投与を指す。幾つかの実施形態では、「治療」又は「治療する、治療すること」は部分寛解を含む。別の実施形態では、「治療」又は「治療する、治療すること」は完全寛解を含む。
【0089】
本開示の様々な態様は、以下のサブセクションに更に詳細に記載される。
【0090】
腫瘍微小環境(TME)の特性評価
本開示は、キメラ受容体療法薬(例えば、アキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel))での治療の前に、遺伝子発現プロファイリング及び/又は腫瘍内T細胞密度測定を使用してTMEを特性評価する方法を提供する。本明細書に記載されるように、予め決められた遺伝子セット(例えば、Immunosign(商標)21、Pan Cancer)及び免疫スコア(例えば、Immunosign(商標)21)及び/又は腫瘍内T細胞密度測定又は指標(例えば、Immunoscore(商標))を利用するTME特性は、キメラ受容体療法(例えば、アキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel))の臨床転帰と関連性を有する。
【0091】
患者の生検は、遺伝子発現プロファイリング(例えば、NanoString(商標)を使用するデジタル遺伝子発現)を使用して腫瘍微小環境を分析するための出発材料として使用することができる。幾つかの実施形態においては、患者の生検は、キメラ受容体療法薬(例えば、アキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel))による治療の前に取得される。
【0092】
バイオインフォマティクス法を使用して、免疫スコア(単数又は複数)を生成して、TMEを特性評価することができる。幾つかの実施形態においては、免疫スコアは、T細胞傷害性(T cell cytotoxicity)、T細胞分化、T細胞誘引、T細胞接着を含む適応免疫と、免疫指向、血管新生抑制、免疫共阻害及び癌幹細胞を含む免疫抑制とに関する情報を提供する免疫関連遺伝子の尺度である。バイオインフォマティクス法には、T細胞特異的(エフェクターT細胞、Th1)遺伝子、インターフェロン経路関連遺伝子、ケモカイン及び免疫チェックポイントも含まれ得る。
【0093】
発現プロファイリングアッセイ(例えば、Immunosign(商標)臨床研究アッセイは、nCounter(商標)技術(NanoString)を利用する)を使用して、マルチプレックス形式で複数の免疫遺伝子の遺伝子発現レベルを測定することができる。幾つかの実施形態においては、高い/低い免疫スコア(例えば、Immunosign(商標)21スコア)のカットオフは、試料間で観察されるスコアの25パーセンタイルとして定義され得る。幾つかの実施形態においては、高いスコアは、腫瘍応答に潜在的に関連性を有する免疫関連遺伝子の発現を示す。
【0094】
幾つかの実施形態においては、免疫スコアは腫瘍内T細胞密度の尺度である。腫瘍内T細胞密度は、例えば、腫瘍微小環境におけるCD3+T細胞及び/又はCD8+T細胞等のT細胞を検出及び定量することによって測定することができる。例えば、腫瘍生検を切片化して、CD3及び/又はCD8等のT細胞マーカーについて染色又は標識することができ、T細胞の相対的又は絶対的な存在量は、病理医によって定量され得る又は専用のデジタル病理学ソフトウェアを使用して測定され得る。幾つかの実施形態においては、高い
/低い免疫スコア(例えば、Immunoscore(商標))は、腫瘍内T細胞密度に基づいて割り当てられる。高い/低い免疫スコアの閾値は、例えば、試料間で観察される中央値スコアとして定義され得る。幾つかの実施形態においては、腫瘍内T細胞密度は、フローサイトメトリー及び/又はタンパク質ベースのアッセイ、例えばウエスタンブロッティング及びELISAを使用して測定される。
【0095】
発現分析及び腫瘍浸潤Tリンパ球分析及びスコアリングを使用して、TME特徴と応答との間の関連性を調べることができる。幾つかの実施形態においては、客観的応答(OR)は、改定された悪性リンパ腫のためのIWG応答基準(Cheson, 2007)に従って決定されると共に、悪性リンパ腫のためのIWG応答基準(Cheson et al. Journal of Clinical Oncology 32, no. 27 (September 2014) 3059-3067)によって決定される。幾つかの実施形態においては、応答の期間が評価される。幾つかの実施形態においては、Luganoの応答分類基準に従う研究者評価による無憎悪生存率(PFS)が評価される。
【0096】
キメラ抗原受容体及びT細胞受容体
キメラ抗原受容体(CAR又はCAR-T)は、遺伝子操作された受容体である。これらの操作された受容体は、当該技術分野で知られている技術によりT細胞を含む免疫細胞に容易に挿入され得て、その細胞によって発現され得る。CARにより、単一の受容体は、特異抗原を認識するとともに、その抗原に結合した場合に免疫細胞を活性化させてその抗原を持っている細胞を攻撃して破壊するよう、プログラム化され得る。これらの抗原が腫瘍細胞上に存在する場合、CARを発現する免疫細胞は、腫瘍細胞を標的とし、死滅させることができる。キメラ抗原受容体は、共刺激(シグナル伝達)ドメインを含むことで、それらの効力が高められる。米国特許第7,741,465号及び同第6,319,494号、並びにKrause et al.及びFinney et al.(上記参照)、Song et al., Blood 119:696-706 (2012)、Kalos et al., Sci. Transl. Med. 3:95 (2011)、Porter et al., N. Engl. J. Med. 365:725-33 (2011)、及びGross et al., Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 56:59-83 (2016)を参照のこと。
【0097】
幾つかの実施形態においては、短縮ヒンジドメイン(「THD」)を含む共刺激ドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE、IgM、又はそれらのフラグメント等の免疫グロブリンファミリーのメンバーの幾つか又は全てを更に含む。
【0098】
幾つかの実施形態においては、THDは、ヒト完全ヒンジドメイン(「CHD」)に由来する。その他の実施形態においては、THDは、共刺激タンパク質の齧歯類、マウス、又は霊長類(例えば、非ヒト霊長類)CHDに由来する。幾つかの実施形態においては、THDは、共刺激タンパク質のキメラCHDに由来する。
【0099】
本発明のCAR又はTCRのための共刺激ドメインは、膜貫通ドメイン及び/又は細胞内シグナル伝達ドメインを更に含み得る。膜貫通ドメインは、CARの細胞外ドメインに融合されるように設計され得る。膜貫通ドメインは、同様にCARの細胞内ドメインに融合され得る。幾つかの実施形態においては、CAR中のドメインの1つと本来関連性がある膜貫通ドメインが使用される。幾つかの場合においては、膜貫通ドメインは、そのようなドメインが同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合することを避けることで、受容体複合体のその他のメンバーとの相互作用を最小限にするように、選択され得るか、又はアミノ酸置換により修飾され得る。膜貫通ドメインは、天然源又は合成源のいずれかに由来し得る。その起源が天然である場合に、上記ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来し得る。本発明の特定の使用の膜貫通領域は、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、C
D103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGBl、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1;CD11a/CD18)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム細胞死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A;Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、若しくはVLA-6、又はそれらのフラグメント、短縮形、若しくはそれらの組み合わせに由来し(すなわち含み)得る。
【0100】
任意に、短いリンカーは、CARの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインのいずれか又は幾つかの間で結合を形成し得る。幾つかの実施形態においては、リンカーは、グリシン-グリシン-グリシン-グリシン-セリンの繰り返し(G4S)n(配列番号2)又はGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)に由来し得る。幾つかの実施形態においては、リンカーは、3個~20個のアミノ酸、及びGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を有する。
【0101】
本明細書に記載されるリンカーは、ペプチドタグとしても使用され得る。リンカーペプチド配列は、対象となる1つ以上のタンパク質を結合するための任意の適切な長さの配列であり得て、好ましくは、連結するペプチドの一方又は両方の適切な折り畳み及び/又は機能及び/又は活性を可能にするように十分に柔軟となるように設計される。したがって、リンカーペプチドは、10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、又は20個以下のアミノ酸の長さを有し得る。幾つかの実施形態においては、リンカーペプチドは、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、又は少なくとも20個のアミノ酸の長さを有し得る。幾つかの実施形態においては、リンカーは、少なくとも7個かつ20個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ19個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ18個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ17個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ16個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ15個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ14個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ13個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ12個以下のアミノ酸、又は少なくとも7個かつ11個以下のアミノ酸を有する。或る特定の実施形
態においては、リンカーは、15個~17個のアミノ酸を有し、特定の実施形態においては、16個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態においては、リンカーは、10個~20個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態においては、リンカーは、14個~19個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態においては、リンカーは、15個~17個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態においては、リンカーは、15個又は16個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態においては、リンカーは、16個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態においては、リンカーは、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個のアミノ酸を有する。
【0102】
幾つかの実施形態においては、スペーサードメインが使用される。幾つかの実施形態においては、スペーサードメインは、CD4、CD8a、CD8b、CD28、CD28T、4-1BB、又は本明細書に記載されるその他の分子に由来する。幾つかの実施形態においては、スペーサードメインは、小分子の添加に際して発現を制御するために、化学的に誘導されたダイマライザーを含み得る。幾つかの実施形態においては、スペーサーは使用されない。
【0103】
本発明の操作されたT細胞の細胞内(シグナル伝達)ドメインは、活性化ドメインへのシグナル伝達をもたらし得て、次いでそれは免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つを活性化する。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性又はヘルパー活性であり得る。
【0104】
或る特定の実施形態においては、好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGBl、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、Ly108)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1;CD11a/CD18)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム細胞死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、若しくはVLA-6、又はそれらのフラグメント、短縮形、若しくはそれらの組み合わせを包含する(すなわち含む)が、それらに限定されない。
【0105】
幾つかの実施形態においては、キメラ抗原受容体(CAR)は、アキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)である。アキシカブタゲン・シロロイセル(axi-ce
l)は、自家抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬である(
図1)。アキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)(YESCARTA(商標))は、2回以上の事前の全身療法を受けた再発性又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫の患者の治療のために米国食品医薬品局によって承認されている(Yescarta(アキシカブタゲン・シロロイセル)(添付文書).カリフォルニア州サンタモニカ:Kite Pharma社;2
017年)。
【0106】
TCRは、抗原反応性を伝えるために導入され得る。幾つかの実施形態においては、抗原反応性は、ペプチドのMHC提示により限定される。TCRは、α/βTCR、γ/δTCR等であり得る。幾つかの実施形態においては、TCRは、マウス定常鎖(2A結合)を有するHPV-16 E7 TCRである。幾つかの実施形態においては、それらの鎖は、IRES又は任意の2Aファミリーのメンバーの配列(例えば、P2A、T2A、E2A、F2A等)によって連結され得る。幾つかの実施形態においては、TCRは、HPV認識TCR、又はその他のウイルス性反応性TCR(例えば、EBV、インフルエンザ等)である。幾つかの実施形態においては、癌反応性TCR又は癌関連抗原反応性TCRが使用され得る(例えば、NYESO、MART1、gp100等)。
【0107】
幾つかの実施形態においては、TCRは、正常/健康なペプチド反応性又はその他の抗原反応性/拘束性のTCRである。幾つかの実施形態においては、TCRは、マウスMHC又はその他の非ヒトMHCに対して反応性である。幾つかの実施形態においては、TCRは、クラスI拘束性TCR又はクラスII拘束性TCRである。
【0108】
抗原結合分子
適切なCARは、抗原(例えば、細胞表面抗原)に結合するように、その標的となる抗原と相互作用する抗原結合分子を導入することによって操作され得る。幾つかの実施形態においては、抗原結合分子は、その抗体フラグメント、例えば1種以上の単鎖抗体フラグメント(「scFv」)である。scFvは、互いに連結された抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域を有する単鎖抗体フラグメントである。米国特許第7,741,465号及び同第6,319,494号、並びにEshhar et al., Cancer Immunol Immunotherapy (1997) 45: 131-136を参照のこと。scFvは、親抗体の標的抗原と特異的に相互作用する能力を維持している。scFvは、キメラ抗原受容体において有用である。それというのも、scFvは、その他のCAR成分と一緒に単鎖の一部として発現されるように操作され得るからである。同上。Krause et al., J. Exp. Med., Volume 188, No. 4, 1998 (619-626)、Finney et al., Journal of Immunology, 1998, 161: 2791-2797も参照のこと。抗原結合分子は、典型的には、対象となる抗原を認識して結合することができるようにCARの細胞外部分の範囲内に含まれることを理解されたい。対象となる2つ以上の標的に特異性を有する二重特異性及び多重特異性のCARが、本発明の範囲内で考慮される。
【0109】
幾つかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、本発明のTHDと、標的抗原に特異的に結合する抗原結合分子とを含むCAR又はTCRをコードする。幾つかの実施形態においては、標的抗原は、腫瘍抗原である。幾つかの実施形態においては、抗原は、腫瘍関連表面抗原、例えば5T4、アルファフェトプロテイン(AFP)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、BCMA、B-ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン、CA-125、癌胚抗原(CEA)、癌胚抗原(CEA)、CD123、CD133、CD138、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD34、CD4、CD40、CD44、CD56、CD8、CLL-1、c-Met、CMV特異抗原、CS-1、CSPG4、CTLA-4、DLL3、ジシアロガングリオシドGD2、膵管上皮ムチン、EBV特異抗原、EGFR変異体III(EGFRvIII)、ELF2M、エンドグリン、エフリンB2、上皮増殖因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮性腫瘍抗原、ErbB2(HER2/neu)
、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、FLT3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、細胞膠腫関連抗原、スフィンゴ糖脂質、gp36、HBV特異抗原、HCV特異抗原、HER1-HER2、HER2-HER3の組み合わせ、HERV-K、高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、HIV-1型エンベロープ糖タンパク質gp41、HPV特異抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、IGFI受容体、IGF-II、IL-11Rアルファ、IL-13R-a2、インフルエンザウイルス特異抗原、CD38、インスリン増殖因子(IGFI)-1、腸カルボキシルエステラーゼ、カッパー鎖、LAGA-1a、ラムダ鎖、ラッサ熱ウイルス特異抗原、レクチン反応性AFP、系譜特異又は組織特異抗原、例えばCD3、MAGE、MAGE-A1、主要組織適合性複合体(MHC)分子、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合性複合体(MHC)分子、M-CSF、黒色腫関連抗原、メソテリン、MN-CA IX、MUC-1、mut hsp70-2、変異p53、変異p53、変異ras、好中球エラスターゼ、NKG2D、Nkp30、NY-ESO-1、p53、PAP、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、前立腺特異抗原タンパク質、STEAP1、STEAP2、PSMA、RAGE-1、ROR1、RU1、RU2(AS)、表面接着分子、サバイビング及びテロメラーゼ、TAG-72、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)及びエクストラドメインB(EDB)、並びにテネイシンCのA1ドメイン(TnC A1)、サイログロブリン、腫瘍間質抗原、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGFR2)、ウイルス特異表面抗原、例えばHIV特異抗原(例えば、HIV gp120)、並びにこれらの表面マーカーの任意の誘導体又は変異体から選択される。
【0110】
操作されたT細胞及び使用
本開示の細胞は、被験体から得られるT細胞を通じて得ることができる。T細胞は、例えば末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍から得られてもよい。さらに、T細胞は、当該技術分野において利用可能な1以上のT細胞株に由来し得る。また、T細胞は、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシス等の当業者に知られている数多くの技術を使用して被験体から収集された血液単位から得られてもよい。幾つかの実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して血漿画分を除去し、後の処理に適切なバッファー又は培地に入れる。幾つかの実施形態では、細胞をPBSで洗浄する。理解されるように、洗浄工程は、例えばCobe(商標)2991細胞処理装置、Baxter CytoMate(商標)等の半自動フロースルー遠心分離機等を使用することによって使用され得る。幾つかの実施形態では、洗浄された細胞を1以上の生体適合性のバッファー、又はバッファーを含む若しくは含まない他の生理食塩水溶液に再懸濁する。幾つかの実施形態では、アフェレーシス試料の望ましくない成分が除去される。T細胞療法用にT細胞を単離する追加の方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示され、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0111】
幾つかの実施形態では、T細胞は、例えば赤血球の溶解及びPERCOLL(商標)勾配による遠心分離を使用することによる単球の枯渇によってPBMCから単離される。幾つかの実施形態では、CD4+、CD8+、CD28+、CD45RA+及びCD45RO+のT細胞等のT細胞の特定の亜集団は、当該技術分野において知られている正又は負の選択技術によって更に単離される。例えば、負の選択によるT細胞集団の富化は、負に選択される細胞に特有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせによって遂行され得る。幾つかの実施形態では、負に選択される細胞に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する負の磁気免疫付着(negative magnetic immunoadherence)又はフローサイトメトリーによる細胞の選別及び/又は選択を使用することができ
る。例えば、負の選択によってCD4+細胞を富化するため、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD8、CD11b、CD14、CD16、CD20及びHLA-D
Rに対する抗体を含む。幾つかの実施形態では、フローサイトメトリー及び細胞選別は、本開示における使用に対する目的の細胞集団を単離するために使用される。
【0112】
幾つかの実施形態では、PBMCは、本明細書に記載される方法を使用して、免疫細胞(CAR等)により遺伝子修飾に直接使用される。幾つかの実施形態では、PBMCを単離した後、Tリンパ球を更に単離し、遺伝子修飾及び/又は拡大の前又は後のいずれかに、細胞傷害性Tリンパ球とヘルパーTリンパ球の両方を、ナイーブ、メモリー、及びエフェクターのT細胞亜集団へと選別する。
【0113】
幾つかの実施形態では、CD8+細胞は、これら各種のCD8+細胞と関連する細胞表面抗原を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、及びエフェクター細胞へと更に選別される。幾つかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞の表現型マーカーの発現は、CCR7、CD3、CD28、CD45RO、CD62L、及びCD127の発現を含み、グランザイムBに対して陰性である。幾つかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD8+、CD45RO+及びCD62L+のT細胞である。幾つかの実施形態では、エフェクターT細胞は、CCR7、CD28、CD62L及びCD127に対して陰性であり、グランザイムB及びパーフォリンに対して陽性である。幾つかの実施形態では、CD4+T細胞は亜集団へと更に選別される。例えば、CD4+ヘルパーT細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞及びエフェクター細胞へと選別され得る。
【0114】
幾つかの実施形態では、免疫細胞、例えばT細胞は、単離に続いて、既知の方法を使用して遺伝子修飾されるか、又は遺伝子修飾に先だってin vitroで免疫細胞が活性化され、拡大される(又は、前駆細胞の場合、分化される)。別の実施形態では、免疫細胞、例えばT細胞は、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体によって遺伝子修飾され(例えば、CAR又はTCRをコードする1以上のヌクレオチド配列を含むウイルスベクターによって形質導入される)、次いでin vitroで活性化及び/又は拡大される。T細胞を活性化及び拡大する方法は当該技術分野において知られており、例えば米国特許第6,905,874号、同第6,867,041号、及び同第6,797,514号、並びに国際公開第2012/079000号に記載され、それらの内容は、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。一般的には、かかる方法は、PBMC又は単離されたT細胞と、一般的にはビーズ又は他の表面に付着された抗CD3抗体及び抗CD28抗体等の刺激物質及び共刺激物質とを、IL-2等の適切なサイトカインを含む培養培地中で接触させることを含む。同じビーズに付着された抗CD3抗体及び抗CD28抗体は、「代理」抗原提示細胞(APC)としての役割を果たす。一例は、ヒトT細胞の生理学的な活性化に対するCD3/CD28活性化因子/刺激因子システムである、Dynabeads(商標)システムである。他の実施形態では、米国特許第6,040,177号及び同第5,827,642号、並びに国際公開第2012/129514号(それらの内容は、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されるような方法を使用して、フィーダー細胞、並びに適切な抗体及びサイトカインによって、T細胞は活性化され、刺激されて増殖する。
【0115】
幾つかの実施形態では、T細胞はドナー被験体から得られる。幾つかの実施形態では、ドナー被験体は、癌又は腫瘍に冒されたヒト患者である。幾つかの実施形態では、ドナー被験体は癌又は腫瘍に冒されていないヒト患者である。
【0116】
幾つかの実施形態では、上記組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及び/又はアジュバントを含む。幾つかの実施形態では、上記組成物は賦形剤を含む。
【0117】
幾つかの実施形態では、上記組成物は、非経口的な送達に対し、吸入に対し、又は経口等の消化管による送達に対して選択される。かかる薬学的に許容可能な組成物の作製は、当業者の能力の範囲に含まれる。幾つかの実施形態では、バッファーを使用して上記組成物を生理学的pH又はわずかに低いpH、典型的には約5~約8の範囲のpHに維持する。幾つかの実施形態では、非経口投与が検討される場合、上記組成物は、薬学的に許容可能なビヒクル中、追加の治療剤と共に又はそれを伴わずに、本明細書に記載される組成物を含む、パイロジェンフリー(pyrogen-free)の非経口的に許容可能な水溶液の形態である。幾つかの実施形態では、非経口注射用のビヒクルは滅菌蒸留水であり、該蒸留水中において、少なくとも1つの追加の治療剤と共に又はそれを伴わずに、本明細書に記載される組成物が適切に保存される無菌の等張液として製剤化される。幾つかの実施形態では、上記作製は、所望の分子と、製品の制御放出又は持続放出を提供する、高分子化合物(ポリ乳酸又はポリグリコール酸等)、ビーズ、又はリポソームとの製剤化を含み、その後、デポー注射によって送達される。幾つかの実施形態では、所望の分子を導入するために、埋め込み可能な薬物送達デバイスが使用される。
【0118】
幾つかの実施形態では、癌の治療を、それを必要とする被験体において行う方法は、T細胞療法を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるT細胞療法は操作された自己細胞療法(eACT(商標))である。この実施形態によれば、上記方法は、患者から血液細胞を収集することを含み得る。単離された血液細胞(例えばT細胞)は、その後、本明細書に開示されるCAR又はTCRを発現するように操作され得る。特定の実施形態では、CAR T細胞又はTCR T細胞は患者に投与される。幾つかの実施形態では、CAR T細胞又はTCR T細胞は、患者において腫瘍又は癌を治療する。幾つかの実施形態では、CAR T細胞又はTCR T細胞は、腫瘍又は癌のサイズを減少する。
【0119】
幾つかの実施形態では、T細胞療法における使用に対するドナーT細胞は、(例えば自己T細胞療法に対しては)患者から得られる。他の実施形態では、T細胞療法における使用に対するドナーT細胞は、患者でない被験体から得られる。
【0120】
幾つかの実施形態では、T細胞は治療的有効量で投与され得る。例えば、T細胞の治療的有効量は、少なくとも約104個の細胞、少なくとも約105個の細胞、少なくとも約106個の細胞、少なくとも約107個の細胞、少なくとも約108個の細胞、少なくとも約109個の細胞、又は少なくとも約1010個の細胞となり得る。別の実施形態では、T細胞の治療的有効量は、約104個の細胞、約105個の細胞、約106個の細胞、約107個の細胞、又は約108個の細胞である。幾つかの実施形態では、CAR T細胞の治療的有効量は、約2×106細胞/kg、約3×106細胞/kg、約4×106細胞/kg、約5×106細胞/kg、約6×106細胞/kg、約7×106細胞/kg、約8×106細胞/kg、約9×106細胞/kg、約1×107細胞/kg、約2×107細胞/kg、約3×107細胞/kg、約4×107細胞/kg、約5×107細胞/kg、約6×107細胞/kg、約7×107細胞/kg、約8×107細胞/kg、又は約9×107細胞/kgである。
【0121】
幾つかの実施形態においては、治療的有効量のCAR陽性生存T細胞は、最大用量約1×108個のCAR陽性生存T細胞までの、体重1kg当たり約1×106個から約2×106個の間のCAR陽性生存T細胞である。
【0122】
治療方法
本明細書に開示される方法は、被験体において癌を治療するため、腫瘍のサイズを減少させるため、腫瘍細胞を死滅させるため、腫瘍細胞増殖を予防するため、腫瘍の成長を予防するため、患者から腫瘍を排除するため、腫瘍の再燃を予防するため、腫瘍転移を予防するため、患者において寛解を誘導するため、又はそれらの任意の組み合わせに使用され
得る。幾つかの実施形態では、上記方法は完全奏効を誘導する。他の実施形態では、上記方法は部分奏効を誘導する。
【0123】
幾つかの実施形態においては、本開示は、治療前の腫瘍微小環境を分析することによって、T細胞療法の臨床有効性についての予測ツールを提供する。
【0124】
本発明の方法はまた、併用される又は逐次使用される追加の療法薬が、或る特定の腫瘍微小環境特性を有する被験体においてより有効であるかどうかの情報を与えるコンパニオン検査において使用され得る。幾つかの実施形態においては、追加の治療薬は、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-15)、刺激抗体(例えば、抗41BB、抗OX-40)、チェックポイント遮断療法薬(例えば、CTLA4、PD-1)又は自然免疫刺激剤(例えば、TLRアゴニスト、STINGアゴニスト)であり得る。幾つかの実施形態においては、追加の治療薬は、T細胞動員ケモカイン(例えば、CCL2、CCL1、CCL22、CCL17及びそれらの組み合わせ)及び/又はT細胞であり得る。幾つかの実施形態においては、追加の療法薬(単数又は複数)は、全身投与又は腫瘍内投与される。
【0125】
治療され得る癌は、血管新生化されていない、まだ実質的に血管新生化されていない、又は血管新生化された腫瘍を含む。また、癌は固形腫瘍又は非固形腫瘍を含み得る。幾つかの実施形態では、癌は血液の癌である。幾つかの実施形態では、癌は白血球の癌である。他の実施形態では、癌は形質細胞の癌である。幾つかの実施形態では、癌は白血病、リンパ腫又は骨髄腫である。幾つかの実施形態では、上記癌は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、急性リンパ性白血病(ALL)、及び血球貪食リンパ組織球増多症(HLH))、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物、バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄白血病(CML)、慢性若しくは急性の肉芽腫性疾患、慢性若しくは急性の白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、毛様細胞性白血病、血球貪食症候群(マクロファージ活性化症候群(MAS))、ホジキン病、大細胞肉芽腫(large cell granuloma)、白血球接着不全症、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、多発性骨髄腫、脊髄形成異常及び骨髄異形成症候群(MDS)、限定されないが急性骨髄白血病(AML)を含む骨髄疾患、非ホジキンリンパ腫(NHL)、形質細胞増殖性障害(例えば、無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫))、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞新生物、形質細胞腫(例えば、形質細胞異常増殖症;孤立性骨髄腫;孤立性形質細胞腫;髄外性形質細胞腫;及び多発性形質細胞腫)、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病、及びPEP症候群)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、小細胞若しくは大細胞濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、T細胞リンパ腫、形質転換後濾胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、又はそれらの組み合わせである。
【0126】
幾つかの実施形態では、癌は骨髄腫である。幾つかの実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。幾つかの実施形態では、癌は白血病である。幾つかの実施形態では、癌は急性骨髄白血病である。
【0127】
幾つかの実施形態では、上記方法は化学療法剤を投与することを更に含む。幾つかの実施形態では、選択される化学療法剤は、リンパ枯渇(lymphodepleting)(プレコンディ
ショニング)化学療法剤である。有益なプレコンディショニング治療のレジメンは、相関的な有益なバイオマーカーと共に、米国仮特許出願第62/262,143号及び同第6
2/167,750号に記載され、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。これらは、例えば、指定される有益な用量のシクロホスファミド(200mg/m2/日~2000mg/m2/日)及び指定される用量のフルダラビン(20mg/m2/日~900mg/m2/日)を患者に投与することを含むT細胞療法を必要とする患者をコンディショニングする方法を記載する。或る一つのかかる投薬レジメンは、治療的有効量の操作されたT細胞の患者への投与の前に、約500mg/m2/日のシクロホスファミド及び約60mg/m2/日のフルダラビンを3日間毎日患者に投与することを含む、患者を治療することを含む。
【0128】
幾つかの実施形態では、抗原結合分子、形質導入された(或いは操作された)細胞(CAR又はTCR等)、及び化学療法剤は、各々、被験体における疾患又は状態を治療するのに有効な量で投与される。
【0129】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるCARを発現する免疫エフェクター細胞を含む組成物は、任意の数の化学療法剤と併せて投与され得る。化学療法剤の例として、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のアルキルスルホン酸塩;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)、及びトリメチロ
ロメラミン(trimethylolomelamine)のレジメ(resume)を含む、エチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamines);クロラムブチル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリ
ン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾ
トシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン(ranimustine)等のニ
トロソウレア;アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマ
イシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイ
シン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ
-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコ
フェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、
ジノスタチン、ゾルビシン(zorubicin)等の抗生物質;メトトレキセート及び5-フル
オロウラシル(5-FU)等の代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート等の葉酸類縁体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン等のプリン類縁体;アンシタビン、アザシチ
ジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU等のピリミジン類縁体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、マイトテイン、トリロスタン等の抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)等の葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリ
コシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアン
トレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキウレア;レンティナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメッ
ト(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシッド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol-Myers Squibb)及びドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone-Poulenc Rorer);クロラムブチル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチン等の白金類縁体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオミチン(DMFO);Targretin(商標)(ベキサロテン)、Panretin(商標)(アリトレチノイン)等のレチノイン酸誘導体;ONTAK(商標)(デニロイキンジフチトクス);エスペラミシン;カペシタビン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体が挙げられる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるCAR及び/又はTCRを発現する免疫エフェクター細胞を含む組成物は、腫瘍に対するホルモンの作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン、及びト
レミフェン(フェアストン)を含む抗エストロゲン薬;並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド及びゴセレリン等の抗アンドロゲン薬;並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体と併せて投与され得る。また適切な場合には、限定されないが、CHOP、すなわち、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、ドキソルビシン(ヒドロキシドキソルビシン)、ビンクリスチン(Oncovin(商標))及びプレドニゾンを含む化学療法剤の組み合わせが投与される。
【0130】
幾つかの実施形態では、化学療法剤は、操作された細胞又は核酸の投与と同時に又は投与の1週以内に投与される。他の実施形態では、化学療法剤は、操作された細胞又は核酸の投与の後、1週間~4週間、すなわち1週間~1ヶ月、1週間~2ヶ月、1週間~3ヶ月、1週間~6ヶ月、1週間~9ヶ月、又は1週間~12ヶ月投与される。幾つかの実施形態では、化学療法剤は、細胞又は核酸を投与する少なくとも1ヶ月前に投与される。幾つかの実施形態では、上記方法は、2以上の化学療法剤を投与することを更に含む。
【0131】
様々な追加の治療剤が、本明細書に記載される組成物と併せて使用され得る。例えば、有用な可能性がある追加の治療剤として、ニボルマブ(OPDIVO(商標))、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(商標))、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ(CureTech)、及びアテゾリズマブ(Roche)等のPD-1阻害剤が挙げられる。
【0132】
本明細書に開示される組成物及び方法との併用に適している追加の治療剤として、限定されないが、イブルチニブ(IMBRUVICA(商標))、オファツムマブ(ARZERRA(商標))、リツキシマブ(RITUXAN(商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標))、トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(商標))、イマチニブ(GLEEVEC(商標))、セツキシマブ(ERBITUX(商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(商標))、カツマキソマブ、イブリツモマブ、オファツムマブ、トシツモマブ、ブレンツキシマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、アキシチニブ、マシチニブ、パゾパニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、トセラニブ、レスタウルチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、レンバチニブ
、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、バンデタニブ、エントレクチニブ、カボザンチニブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ポナチニブ、ラドチニブ(radotinib)、ボスチニブ
、レスタウルチニブ、ルキソリチニブ、パクリチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、アフリベルセプト、アジポチド、デニロイキンジフチトクス、エベロリムス及びテムシロリムス等のmTOR阻害剤、ソニデギブ及びビスモデギブ等のヘッジホッグ阻害剤、CDK阻害剤(パルボシクリブ)等のCDK阻害剤が挙げられる。
【0133】
幾つかの実施形態では、CAR免疫細胞を有する組成物は、抗炎症剤と共に投与される。抗炎症剤又は抗炎症薬として、限定されないが、ステロイド及びグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンを含む)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキセート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬、シクロホスファミド、及びミコフェノール酸(mycophenolate)を含む非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が挙げられ得る。例
示的なNSAIDとして、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、Cox-2阻害剤、及びシアリレート(sialylates)が挙げられる。例示的な鎮痛剤として、アセトアミノフェン、オキシコドン、塩酸プロポキシフェンのトラマドールが挙げられる。例示的なグルココルチコイドとして、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、又はプレドニゾンが挙げられる。例示的な生物学的応答修飾物質として、細胞表面マーカー(例えばCD4、CD5等)に対する分子、サイトカイン阻害剤(例えば、TNFアンタゴニスト(例えば、エタネルセプト(ENBREL(商標))、アダリムマブ(HUMIRA(商標))及びインフリキシマブ(REMICADE(商標)))、ケモカイン阻害剤、及び接着分子阻害剤が挙げられる。生物学的応答修飾物質は、分子の組み換え形態と並んで、モノクローナル抗体も含む。例示的なDMARDとして、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキセート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、金(経口(オーラノフィン)及び筋肉内)、及びミノサイクリンが挙げられる。
【0134】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、サイトカインと併せて投与される。サイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン及び従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインの中でも、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン等の成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び黄体形成ホルモン(LH)等の糖タンパク質ホルモン;肝臓増殖因子(HGF);線維芽細胞成長因子(FGF);プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;ミューラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞増殖因子;インテグリン;トロンボポイエチン(TPO);NGF-ベータ等の神経成長因子(NGF);血小板増殖因子;TGF-アルファ及びTGF-ベータ等のトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子I及びII;エリスロポエチン(EPO、Epogen(商標)、Procrit(商標));骨誘導因子;インターフェロン-アルファ、ベータ及びガンマ等のインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF)等のコロニー刺激因子(CSF);IL-1、IL-1アルファ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12;IL-15等のインターロイキン(IL)、TNF-アルファ又はTNF-ベータ等の腫瘍壊死因子;並びにLIF及びkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が挙げられる。本明細書で使用されるサイトカインの用語は、天然起源の又は組み換え細胞培養物由来のタンパク質、及び本来の配列のサイト
カインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0135】
投与
幾つかの実施形態においては、(a)1つ以上のキメラ受容体を有する複数のT細胞を得ることと、(b)有効用量の上記T細胞を患者に投与することとを含む方法において本明細書に記載される操作されたT細胞を使用することで、患者における悪性腫瘍が治療される。
【0136】
幾つかの実施形態においては、T細胞は治療的有効量で投与され得る。例えば、治療的有効量のT細胞は、少なくとも約104個の細胞、少なくとも約105個の細胞、少なくとも約106個の細胞、少なくとも約107個の細胞、少なくとも約108個の細胞、少なくとも約109個の細胞、又は少なくとも約1010個の細胞であり得る。別の実施形態では、治療的有効量のT細胞は、約104個の細胞、約105個の細胞、約106個の細胞、約107個の細胞、又は約108個の細胞である。幾つかの実施形態では、CAR
T細胞の治療的有効量は、約2×106細胞/kg、約3×106細胞/kg、約4×106細胞/kg、約5×106細胞/kg、約6×106細胞/kg、約7×106細胞/kg、約8×106細胞/kg、約9×106細胞/kg、約1×107細胞/kg、約2×107細胞/kg、約3×107細胞/kg、約4×107細胞/kg、約5×107細胞/kg、約6×107細胞/kg、約7×107細胞/kg、約8×107細胞/kg、又は約9×107細胞/kgである。
【0137】
幾つかの実施形態においては、治療的有効量のCAR陽性生存T細胞は、最大用量約1×108個のCAR陽性生存T細胞までの、体重1kg当たり約1×106個から約2×106個の間のCAR陽性生存T細胞である。
【0138】
モニタリング
幾つかの実施形態においては、キメラ受容体T細胞免疫療法薬の投与は、認可された医療機関で行われる。
【0139】
幾つかの実施形態においては、本明細書に開示される方法は、キメラ受容体T細胞免疫療法薬(例えば、アキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel))の投与後に患者を、注入後に少なくとも毎日7日間にわたり認可された医療機関で、CRS及び神経毒性の徴候及び症候についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態においては、患者は、少なくとも3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間又は14日間にわたり毎日モニタリングされる。
【0140】
幾つかの実施形態においては、患者は、認可された医療機関の近接範囲内で注入後に少なくとも4週間にわたって留まるよう指示される。幾つかの実施形態においては、患者は、認可された医療機関の近接範囲内で注入後に少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間又は10週間にわたって留まるよう指示される。
【0141】
臨床試験
ZUMA-1(NCT02348216)は、難治性の侵攻性大細胞型B細胞リンパ腫の患者におけるアキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)の第1/2相多施設共同比較試験である(
図2)(Neelapu SN, Locke LF, et al. N Engl J Med. 2017;377:2531-2544)。アキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)は、15.4ヶ月の
中央値追跡期間で奏効持続を維持した。15.4ヶ月の中央値追跡期間でZUMA-1においてアキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)で治療された難治性の大細胞型B細胞リンパ腫の患者108人のうち、82%が客観的奏効率(ORR)を示し、58
%が完全奏効(CR)率を示し、奏効持続は40%のCRを含めて42%であった。サイトカイン放出症候群(CRS)及び神経学的事象(NE)は可逆的であった(13%がグレード3以上のCRS、28%がグレード3以上のNE、3例のグレード5の有害事象)。
【0142】
重度の有害反応の管理
幾つかの実施形態においては、上記方法は、有害反応の管理を含む。幾つかの実施形態においては、有害反応は、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、過敏反応、重症感染、血球減少症、及び低ガンマグロブリン血症からなる群から選択される。
【0143】
幾つかの実施形態では、有害反応の徴候及び症候は、発熱、低血圧症、頻脈、低酸素症、及び悪寒からなる群から選択され、心不整脈(心房性細動及び心室頻拍を含む)、心停止、心不全、腎不全、毛細血管漏出症候群、低血圧症、低酸素症、臓器毒性、血球貪食性リンパ組織球症/マクロファージ活性化症候群(HLH/MAS)、発作、脳症、頭痛、振戦、眩暈、失語症、せん妄、不眠症、不安症、アナフィラキシー、発熱性好中球減少症、血小板減少症、好中球減少症、及び貧血症を含む。
【0144】
サイトカイン放出症候群
幾つかの実施形態においては、上記方法は、CRSを臨床症状に基づき特定することを含む。幾つかの実施形態においては、上記方法は、発熱、低酸素症、及び低血圧症のその他の原因を評価し、治療することを含む。グレード2以上のCRS(例えば、輸液反応性でない低血圧症又は酸素補給を必要とする低酸素症)を経験している患者は、連続的な心電図遠隔測定法及びパルスオキシメトリーを用いてモニタリングされるべきである。幾つかの実施形態においては、重度のCRSを経験している患者については、心機能の評価のために心エコー図を実施することが検討される。重度又は生命を脅かすCRSについては、集中治療の支持療法が検討される場合がある。
【0145】
幾つかの実施形態においては、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日7日間にわたり認可された医療機関で、CRSの徴候及び症候についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態においては、上記方法は、患者を注入後4週間にわたりCRSの徴候又は症候についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態においては、上記方法は、CRSの徴候又は症候が万一起こったらいつでも、直ちに医師の診察を受けるように患者に助言することを含む。幾つかの実施形態においては、上記方法は、CRSの最初の徴候が見られた時点で、示されたように支持療法、トシリズマブ又はトシリズマブ及びコルチコステロイドによる治療を開始することを含む。
【0146】
神経毒性
幾つかの実施形態においては、上記方法は、患者を神経毒性の徴候及び症候についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態においては、上記方法は、神経症状のその他の原因を除外することを含む。グレード2以上の神経毒性を経験している患者は、連続的な心電図遠隔測定法及びパルスオキシメトリーを用いてモニタリングされるべきである。重度又は生命を脅かす神経毒性の場合には集中治療の支援療法が提供される。
【0147】
幾つかの実施形態においては、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日7日間にわたり認可された医療機関で、神経毒性の徴候及び症候についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態においては、上記方法は、患者を注入後4週間にわたり神経毒性の徴候又は症候についてモニタリングすることを含む。
【0148】
二次性悪性腫瘍
幾つかの実施形態においては、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法で治療さ
れた患者は、二次性悪性腫瘍を発症する場合がある。幾つかの実施形態においては、上記方法は、二次性悪性腫瘍について生涯にわたりモニタリングすることを含む。
【0149】
本明細書で挙げられる全ての出版物、特許、及び特許出願は、それぞれの個々の出版物、特許、又は特許出願が、引用することにより本明細書の一部をなすと具体的に個別に示されるのと同じ程度で、引用することにより本明細書の一部をなす。しかしながら、本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることの承認として解釈されるべきではない。引用することにより本明細書の一部をなす参考文献に示される定義又は用語のいずれかが、本明細書に示される用語及び考察と異なる限りにおいては、本明細書の用語及び定義が優先される。
【0150】
追加の実施形態
本開示の一態様は、CAR-T細胞又は外因性TCRを発現するT細胞の投与(例えば、少なくとも1回の注入)の前に悪性腫瘍の1つ以上の部位での免疫関連遺伝子発現及び/又はT細胞密度(すなわち、腫瘍微小環境)を測定することを含む、悪性腫瘍を治療する方法に関する。幾つかの実施形態においては、上記測定は、化学療法的コンディショニング及び操作されたT細胞(例えば、CAR-T細胞)の投与の前に実施される。
【0151】
幾つかの実施形態においては、上記測定は、ImmunoSign(商標)21又はImmunosign(商標)15スコア等の免疫関連遺伝子発現に基づいて複合免疫スコアを決定することを含む。幾つかの実施形態においては、上記測定は、Immunoscore(商標)等のCD3+T細胞及び/又はCD8+T細胞を含むT細胞の腫瘍内密度に基づいて免疫スコアを決定することを含む。幾つかの実施形態においては、上記測定は、被験体の免疫スコア(複数の場合もある)と予め決定された閾値との比較に基づいて、高い又は低い等の相対スコア(複数の場合もある)を決定すること及び割り当てることを更に含む。幾つかの実施形態においては、そのような予め決定された閾値は、操作されたT細胞による悪性腫瘍の治療に関して予後値を有するように決定される又は決定されている。
【0152】
幾つかの実施形態においては、開示された方法は、上記測定(複数の場合もある)に基づく治療最適化の工程を更に含む。例えば、幾つかの実施形態においては、操作されたT細胞(例えば、CAR-T細胞)の投与の用量及び/又はスケジュールは、腫瘍微小環境の免疫スコア(複数の場合もある)に基づいて最適化される。例示的な実施形態においては、低いImmunoSign(商標)21スコア等の低い免疫スコアを有する被験体には、高い免疫スコアを有する被験体より高い用量のCAR-T細胞が投与される。幾つかの実施形態においては、低い免疫スコアを有する被験体には、高い免疫スコアを有する被験体よりも約25%高い又は約50%高い又は約100%高い用量が投与される。
【0153】
付加的な例示的実施形態及び代替的な例示的実施形態においては、低い免疫スコアを有する被験体は、1回以上の追加のCAR-T細胞注入を受ける。幾つかの実施形態においては、低い治療前免疫スコアを有する被験体にCAR-T細胞の初回用量を投与し、治療応答を評価し、不完全奏効が観察されたら、追加のTME免疫スコアの測定工程を実施する。幾つかの実施形態においては、初回投与後に被験体の免疫スコアが高ければ、CAR-T細胞の追加の投与が行われる。
【0154】
幾つかの実施形態においては、開示された方法は、付加的に又は代替的に、低い免疫スコアを有する被験体をCAR-T投与前にそれらの免疫スコアを改善する目的で治療する「治療前」工程を含む。例えば、幾つかの実施形態においては、低い免疫スコアを有する被験体に、サイトカイン、ケモカイン又は免疫チェックポイント阻害剤等の1つ以上の免疫刺激剤が投与される。幾つかの実施形態においては、免疫スコアの追加の測定は治療前
に実施される。
【0155】
幾つかの実施形態においては、治療オプションを評価するときに、CAR-T療法に基づく完全奏効に関する高い免疫スコアの予後値が考慮される。例えば、幾つかの実施形態においては、高い免疫スコアを有する被験体は、低い免疫スコアを有する被験体よりも早期の治療ラインとしてCAR-Tの投与を受ける。
【0156】
本発明を、以下の実施例によって更に説明するが、実施例は、更なる限定として解釈されるべきではない。本出願全体を通して引用される全ての参考文献の内容は、引用することにより明確に本明細書の一部をなす。
【実施例0157】
実施例1:axi-cel応答の予後としてのベースラインTME免疫遺伝子発現
アキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel;YESCARTA(商標))は、2回以上の事前の全身療法を受けた再発性又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫の患者の治療のために米国食品医薬品局及び欧州医薬品庁によって最近承認された自家抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬である。axi-cel CARの構造は、
図1に図示されている。
【0158】
ZUMA-1(NCT02348216)は、難治性の侵攻性大細胞型B細胞リンパ腫の患者におけるアキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)の第1/2相多施設共同比較試験である(Neelapu SN, Locke LF, et al. N Engl J Med. 2017;377:2531-2544)。ZUMA-1相及びコホートサイズは、
図2に図示されている。患者には、両方の
相で2.0×10
6個のCAR T細胞/kgを投与した。
【0159】
ZUMA-1においてアキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)で治療された難治性の大細胞型B細胞リンパ腫の患者108人のうち、全奏効率は82%であり、完全奏効(CR)率は58%であった。サイトカイン放出症候群(CRS)及び神経学的事象(NE)は、ほとんど可逆的であった(11%がグレード3以上のCRS、32%がグレード3以上のNE、4例のグレード5の有害事象(2例の非axi-cel関連事象を含む))。15.4ヶ月の中央値追跡期間で、奏効持続率は40%のCRを含めて42%であった。27.1ヶ月の中央値追跡期間で、奏効持続率は37%のCRを含めて39%であった。
【0160】
ZUMA-1の第2相の事後分析は、腫瘍免疫微小環境(TME)の主要な治療前特徴の関連性を調査するために設計された。9ヶ月の最小追跡期間でアキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)で治療された25人の患者からのベースライン生検を分析した。表1は、患者及び腫瘍のベースライン特性及び治療結果を示している。
【0161】
【0162】
これらの25人の患者の客観的奏効率は80%であり、20人がレスポンダーであり、5人がノンレスポンダーであった。その後のデータのカットオフ(最低12ヶ月の追跡期間)において、1人の患者は後に1ヶ月目に「ノンレスポンダー」から「レスポンダー」に変わった。
【0163】
図3に示されるように、腫瘍生検はベースライン時及びアキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)投与後3週間以内に採取された。ベースラインの新鮮な凍結されたコア生検を、nCounter(商標)技術(NanoString)を使用するImmunosign(商標)臨床研究アッセイで分析して、マルチプレックス形式で複数の免疫遺伝子の遺伝子発現レベルを測定した。このアッセイを、新鮮な凍結された腫瘍組織又はホルマリン固定された腫瘍組織からの最小量のRNAを利用するために更に発展させた。予め決められたバイオインフォマティクス法及びカットオフを免疫介在性腫瘍退縮遺伝子(immune-mediated tumor regression genes)に適用して、T細胞傷害性(T cell cytotoxicity)、T細胞分化、T細胞誘引、T細胞接着を含む適応免疫と、免疫指向、血管新
生抑制、免疫共阻害及び癌幹細胞を含む免疫抑制とを評価した(Immunosign(商標);
図4;Galon J, et al. Immunity. 2013;39:11-26;www.haliodx.com/clinical-research-services/immunosignr/)。バイオインフォマティクス法には、T細胞特異的(エフェクターT細胞、Th1)遺伝子、インターフェロン経路関連遺伝子、ケモカイン及び免疫チェックポイントが含まれていた。高い/低いImmunosign(商標)21スコアのカットオフは、試料間で観察されるスコアの25パーセンタイルとして定義した。高いスコアは、腫瘍応答に潜在的に関連性を有する免疫関連遺伝子の発現を示す。
【0164】
発現分析及びスコアリングを使用して、TME特徴と応答との間の関連性を調べた。表2に示されるように、予め決められた遺伝子セットを使用するより広範な分析も適用した。Immusign(商標)15、Immunosign(商標)21及びその他の遺伝子からなる予め決められた43個の遺伝子セットと、PanCancer Immune
Profiling Panelからの全ての763個の遺伝子が含まれていた(nCounter PanCancer Immune Profiling Panel.https://www.nanostring.com/products/gene-expression-panels/hallmarks-cancer-gene-expression-panel-collection/pancancer-immune-profiling-panel)。フィッシャーの
直接確率検定及びウィルコクソン符号順位検定と共に偽発見率による多重検定補正(Benjamini-Hochberg)を使用した。
【0165】
【0166】
腫瘍微小環境(TME)の既存の免疫特徴は、アキシカブタゲン・シロロイセル(axi-cel)への応答と関連性を有する。
図5Aに示されるように、ベースライン時のTMEのImmunosign(商標)21スコアは、レスポンダーにおいて9ヶ月以上の臨床追跡期間でノンレスポンダーと比較して上昇した(P=0.012)。レスポンダーの85%(17人/20人)は、高いImmunosign(商標)21スコアを有し、ノンレスポンダーの80%(4人/5人)は、低いImmunosign(商標)21スコアを有した(
図5B及び
図5C)。12ヶ月で遅延した応答が見られる患者を含む感度分析において、Immunosign(商標)21と応答との間の関連性はP=0.053を有した。
【0167】
レスポンダーにおいてベースライン時のTMEでノンレスポンダーに対して上方調節された上位の免疫関連遺伝子には、CTLA4、CD3g、CD3e、CD27、SH2B2及びICOSLが含まれていた。MHCクラスII遺伝子及び癌精巣抗原PRAME、MAGE、SSXを含む他の遺伝子の発現は、レスポンダーにおいてベースライン時のTMEでノンレスポンダーと比較して相対的に減少した。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫におけるMHCクラスII発現の正の予後値に鑑みて、MHCクラスII遺伝子との関連性は意想外である(Rimsza LM, et al. Blood.2004;103:4251-4258)。拡張された763個の遺伝子のPanCancer Immune Profiling PanelからのレスポンダーにおけるTMEでのノンレスポンダーと比較して発現の異なる追加の遺伝子を表3に示す。
【0168】
【0169】
実施例2:axi-cel応答の予後としてのベースライン腫瘍内T細胞密度
ZUMA-1の第2相の追加の事後分析は、腫瘍免疫微小環境(TME)の主要な治療前特徴、特にCD3+T細胞密度及びCD8+T細胞密度並びにImmunoscore(商標)とaxi-celへの応答及び免疫遺伝子発現(Immunosign(商標)21を含む)との関連性を調査するために設計された。
【0170】
CD3+T細胞及びCD8+T細胞の密度(細胞/mm2)の免疫組織化学による分析のために、プレコンディショニング組織生検をホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)した。CD3及びCD8染色を、Benchmark(商標)XTステーションを使用して2つの連続したFFPEスライス(4μm)で実施した。陽性細胞の染色密度は、専用のデジタル病理学ソフトウェアで測定した。
【0171】
Immunoscore(商標)アッセイは、切除又は生検された癌試料のCD8+細胞傷害性T細胞及びCD3+T細胞の密度を測定し、ホルマリン固定されパラフィン包埋された組織スライドに対して実施される。治療前(化学療法的コンディショニング前)の腫瘍組織生検を、免疫組織化学によってT細胞サブセット(CD3+、CD8+)の密度(細胞/mm2)について分析した。CD3及びCD8染色を、Benchmark(商標)XTステーションを使用して2つの連続したFFPEスライス(4μm)で実施した。陽性細胞の面積の測定は、専用のデジタル病理学ソフトウェアを使用して行った。各被験体について、25個のベースライン生検試料についてのCD3及びCD8免疫組織化学的染色をスコアリングし、Galon et al., J Pathol. 232:199-209 (2014)に記載されるHalioDxアルゴリズム及び分析カットオフを用いてImmunoScore(商標)(T細胞密度の数値指標)に変換した。観察されたスコアの中央値は、高いImmunoscore(商標)及び低いImmunoscore(商標)の閾値として定義され、ここで、高いImmunoscoreは、相対的に高められた腫瘍内T細胞浸潤を表している。ウェルチのt検定を使用して、CRを示す被験体の間でImmunoscore(商
標)、CD3レベル及びCD8レベルを、部分奏効、病勢安定及び病勢進行を示す被験体と比較した。
【0172】
結果:より高い腫瘍内CD3
+T細胞及びCD8
+T細胞の密度と高いImmunoscore(商標)(全て治療前に測定される)とを有する大部分の患者では、CRが達成された(
図8A~
図8C)。全体として、より高い治療前Immunoscore(商標)はCRの達成と関連性を有していた(P=0.048;
図8A及び
図8B)。CD3
+T細胞及びCD8
+T細胞の治療前の腫瘍内密度は、CRの達成と正の関連を示した(それぞれP=0.025及び0.049;
図9A及び
図9B)。CRが達成されなかった患者は、大部分が低い腫瘍内CD3
+T細胞及びCD8
+T細胞の密度と低いImmunoscore(商標)とを示した(
図8A及び
図8C)。
【0173】
同じ腫瘍生検において治療前に評価されたImmunoscore(商標)及びImmunosign(商標)21は82%の一致を示したことから(95%のCI、65~93;r
2=0.451;
図10)、より高密度のT細胞浸潤と許容性の遺伝子シグネチャとの間の潜在的な関係が示唆される。
【0174】
実施例1及び実施例2からの知見により、CAR T細胞療法への応答における治療前のTMEの重要な役割が示される。抗CD19 CAR T療法は、低いImmunosign(商標)21スコア又はImmunoscore(商標)に関連性を有する予後不良を克服することができる。
【0175】
実施例3:腫瘍免疫微小環境
患者試料の更なる分析により、CAR T細胞の増殖が治療の2週間以内に起こり、免疫プログラムにおいてサイトカインの上昇を伴うことが分かった。薬力学的プロファイリングにより、増殖マーカー(IL-15及びIL-2)、炎症マーカー(IL-6、CRP、SAA、IL-5、フェリチン、IL-1Ra、IL-2Rα)、免疫調節マーカー(GM-CSF、IFN-γ、IL-10)、ケモカイン(IL-8、IP-10、MCP-1)及びエフェクターマーカー(グランザイムB)においてベースラインを上回る急速な増加が示された。遺伝子発現分析は、治療前のT細胞関連遺伝子(CD3ε、CD28及びCTLA4)、自然免疫関連遺伝子(MX1、ISG15及びMYD88)及びB細胞関連遺伝子(CD19、CD79B及びPAX5)が臨床転帰と相関し得ることを示唆している(
図11)。
【0176】
Zuma-1患者(治療後7日~21日)のTMEにおいて、CAR T RNAについてのin-situハイブリダイゼーション(ISH)並びに国際公開第2018/013563号及び国際公開第2018/053790号に記載される別個のCARエピトープを認識する抗体を用いた免疫組織化学(IHC)を使用して、CAR T細胞が検出された。治療前の腫瘍負荷量が減少した患者において、1年後の奏効持続率の増加が観察された。これらのデータは、腫瘍負荷量に相応するCAR T細胞の生着が大きな腫瘍を克服し得ることを示唆している。CAR T細胞治療はTMEの変化と関連性を有した。予め決められた43個の免疫遺伝子パネルからの転写産物の分析により、治療の7日後~21日後に腫瘍において上方調節が示された。治療に応答して、免疫阻害チェックポイント(PD-L1、CTLA4、LAG3、TNFRSF18、ICOS)、IFN関連遺伝子(IRF1、STAT1、STAT4、IFNγ)及びケモカイン(CXCL9、CCL2、CCL5)、エフェクター(CD8A、GNLY、GZMA、GZMM、GZMB、GZMH)並びに増殖マーカーIL-15の増加が観察された(
図12)。nanostring分析により、完全奏効又は部分奏効を示す被験体においてIL-15遺伝子及びPD-L1遺伝子の発現の上昇が示された(
図13A及び
図13B)。
【0177】
大細胞型リンパ腫及びB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の患者からの生検を、CD19及びPD-L1の発現について評価した。Axi-cel後に再発した被験体の少なくとも1/3は、CD19発現に陰性の腫瘍を有した。進行時のB細胞及び免疫関連分子の分析により、CD19+腫瘍細胞又はCD19-腫瘍細胞による再発が確認された。ベースラインでは、評価可能な患者の94%(16人/17人)がCD19陽性であった。21人の評価可能な患者からの進行後の腫瘍生検は、33%がCD19陰性であり、62%がPD-L1陽性であることを示した。
前記一種以上の遺伝子が、CD3G、STAT4、CD3E、CD3D、GZMK、GZMM、PRF1、CD8A、ICOS、CXCL10、STAT1、IL15、CCR2、CCL2、IRF1、TBX21、GZMA、CXCR3、GZMB、CD69、CXCL11及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
前記一種以上の遺伝子が、CTLA4、GZMH、CD8A、PDCD1、CD3G、IRF1、CX3CL1、TNFRSF9、CD3E、GZMA、CXCL10、TSLP、REN、GZMB、TNFRSF18、CCL2、GZMK、CXCL11、CD69、CD247、CCL5、STAT4、CD274、GNLY、ITGAE、LAG3、IL15、LTK、PRF1、CD3D、PF4、TBX21、ICOS、CXCL9、IFNG、VEGFA、STAT1、GZMM、CXCL13、CXCR3、CCR2、IL17A、PROM1及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
前記悪性腫瘍は、固形腫瘍、肉腫、癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、慢性若しくは急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、T細胞リンパ腫、1つ以上のB細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、毛様細胞白血病、小細胞型若しくは大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞増殖性障害、例えば、無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫)、意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、POEMS症候群、又はそれらの組み合わせである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
幾つかの実施形態においては、治療オプションを評価するときに、CAR-T療法に基づく完全奏効に関する高い免疫スコアの予後値が考慮される。例えば、幾つかの実施形態においては、高い免疫スコアを有する被験体は、低い免疫スコアを有する被験体よりも早期の治療ラインとしてCAR-Tの投与を受ける。
項1
患者における悪性腫瘍を治療する方法であって、
(a)前記患者からの腫瘍生検を分析して、腫瘍微小環境を特性評価することと、
(b)1つ以上のキメラ受容体を含むT細胞を有効用量、前記患者に投与することと、
を含み、前記有効用量は前記腫瘍微小環境の特性を使用して決定される、方法。
項2
前記腫瘍微小環境は、遺伝子発現プロファイリング、腫瘍内T細胞密度測定又はそれらの組み合わせを使用して特性評価される、項1に記載の方法。
項3
前記遺伝子発現プロファイリングは、特定の遺伝子パネルの発現レベルを測定することを含む、項2に記載の方法。
項4
CD3G、STAT4、CD3E、CD3D、GZMK、GZMM、PRF1、CD8A、ICOS、CXCL10、STAT1、IL15、CCR2、CCL2、IRF1、TBX21、GZMA、CXCR3、GZMB、CD69、CXCL11及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
項5
CTLA4、GZMH、CD8A、PDCD1、CD3G、IRF1、CX3CL1、TNFRSF9、CD3E、GZMA、CXCL10、TSLP、REN、GZMB、TNFRSF18、CCL2、GZMK、CXCL11、CD69、CD247、CCL5、STAT4、CD274、GNLY、ITGAE、LAG3、IL15、LTK、PRF1、CD3D、PF4、TBX21、ICOS、CXCL9、IFNG、VEGFA、STAT1、GZMM、CXCL13、CXCR3、CCR2、IL17A、PROM1及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することを含む、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
項6
PanCancer Immune Profiling Panelから選択される遺伝子の発現レベルを測定することを含む、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
項7
B細胞マーカーの発現レベルを測定することを含む、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
項8
T細胞マーカーの発現レベルを測定することを含む、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
項9
自然免疫応答と関連性を有する遺伝子を含む特定の遺伝子パネルの発現レベルを測定することを含む、項1~8のいずれか一項に記載の方法。
項10
前記特定の遺伝子パネルは、細胞傷害性細胞、樹状細胞、マクロファージ又は顆粒球のマーカーを含む、項9に記載の方法。
項11
前記遺伝子発現プロファイル及び/又は前記腫瘍内T細胞密度に基づいて免疫スコアを決定することを更に含む、項1~10のいずれか一項に記載の方法。
項12
前記免疫スコアを使用して総用量を調整することを更に含む、項11に記載の方法。
項13
前記有効用量は、体重1kg当たり少なくとも1×106個のCAR陽性生存T細胞を含む、項1~12のいずれか一項に記載の方法。
項14
前記キメラ受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である、項1~13のいずれか一項に記載の方法。
項15
前記キメラ受容体は、T細胞受容体(TCR)である、項1~14のいずれか一項に記載の方法。
項16
前記悪性腫瘍は、固形腫瘍、肉腫、癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、慢性若しくは急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、T細胞リンパ腫、1つ以上のB細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、毛様細胞白血病、小細胞型若しくは大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞増殖性障害、例えば、無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫)、意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(例えば、形質細胞異常増殖症、孤在性骨髄腫、孤在性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、及び多発性形質細胞腫)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病、及びPEP症候群としても知られる)、又はそれらの組み合わせである、項1~15のいずれか一項に記載の方法。
項17
前記有効用量は、前記患者がキメラ受容体治療に応答する可能性を高めるように最適化される、項1~16のいずれか一項に記載の方法。
項18
患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを判定する方法であって、
(a)前記患者からの腫瘍生検を分析して、遺伝子発現プロファイルを使用して腫瘍微小環境を特性評価することと、
(b)前記遺伝子発現プロファイルに基づいて免疫スコアを決定することと、
(c)前記患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを前記免疫スコアに基づいて判定することと、
を含む、方法。
項19
患者がキメラ受容体治療に応答するかどうか判定する方法であって、
(a)治療前に患者から腫瘍生検を取得することと、
(b)前記腫瘍生検を分析して、腫瘍微小環境を特性評価することと、
(c)前記患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを前記腫瘍微小環境の特性に基づいて判定することと、
を含む、方法。
項20
患者における悪性腫瘍を治療する方法であって、
(a)キメラ受容体治療前に前記患者からの腫瘍生検を分析して、腫瘍微小環境を特性評価することと、
(b)前記患者がキメラ受容体治療に応答するかどうかを前記腫瘍微小環境の特性に基づいて判定することと、
(c)1つ以上のキメラ受容体を含むT細胞を有効用量、前記患者に投与することと、
を含み、前記有効用量は前記腫瘍微小環境の特性を使用して決定される、方法。