(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059719
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ロボット用充電ステーション
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240423BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20240423BHJP
A63H 11/00 20060101ALI20240423BHJP
A63H 17/44 20060101ALI20240423BHJP
A63H 29/22 20060101ALI20240423BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240423BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20240423BHJP
B60L 53/36 20190101ALI20240423BHJP
【FI】
H02J7/00 301A
B25J19/00 F
A63H11/00 Z
A63H17/44
A63H29/22 L
H02J7/00 P
B60L53/14
B60L53/30
B60L53/36
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021558
(22)【出願日】2024-02-15
(62)【分割の表示】P 2020559200の分割
【原出願日】2019-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2018226517
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515337268
【氏名又は名称】GROOVE X株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 要
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大二朗
(72)【発明者】
【氏名】横山 智彰
(72)【発明者】
【氏名】恩田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 直志
(57)【要約】
【課題】
充電ステーションにおいてロボットとの接続容易性を高める。
【解決手段】
充電ステーション500は、車輪が乗り上げる上面を有するベース504と、ロボット100の充電端子に接続する給電端子と、を備える。ベース504の上面は、奥側領域に目標位置が設定される一方、入口側の特定位置と目標位置とをつなぐ基準進入ラインが設定され、進入してくる車輪に対して基準進入ライン側への重力成分をもたせる三次元曲面形状の傾斜面を含む。給電端子は、車輪が目標位置に到達した状態で充電端子に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪で走行するロボットの充電を行うための充電ステーションであって、
前記車輪が乗り上げる上面を有するベースと、
ロボットの充電端子に接続する給電端子と、
を備え、
前記ベースの上面は、
奥側領域に目標位置が設定される一方、入口側の特定位置と前記目標位置とをつなぐ基準進入ラインが設定され、
進入してくる車輪に対して前記基準進入ライン側への重力成分をもたせる三次元曲面形状の傾斜面を含み、
前記給電端子は、前記車輪が前記目標位置に到達した状態で前記充電端子に接続されることを特徴とする充電ステーション。
【請求項2】
前記ベースの上面は、前記基準進入ラインの両サイドに前記基準進入ラインに向けて低位となるよう傾斜する三次元曲面形状を含むことを特徴とする請求項1に記載の充電ステーション。
【請求項3】
前記基準進入ラインは、前記特定位置から前記目標位置に向けて上り傾斜と下り傾斜とを連続的に有し、
前記上り傾斜のほうが前記下り傾斜よりも勾配が緩やかであることを特徴とする請求項2に記載の充電ステーション。
【請求項4】
前記ベースの上面は、前記上り傾斜の奥行範囲において、前記両サイドの左右の勾配が奥行方向に向けて大きくなる形状を含むことを特徴とする請求項3に記載の充電ステーション。
【請求項5】
前記ベースの奥側領域に、前記目標位置を含む車輪受が設けられ、
前記車輪受は、前記車輪を受け入れた状態で前記充電端子と前記給電端子との間に接触圧が作用するよう位置決めされていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の充電ステーション。
【請求項6】
前記給電端子は、前記充電端子に合わせて変位可能となるよう前記ベースに支持されていることを特徴とする請求項5に記載の充電ステーション。
【請求項7】
前記給電端子と前記充電端子とが、マグネットにより着脱可能に接続されることを特徴とする請求項6に記載の充電ステーション。
【請求項8】
前記給電端子を相対変位可能に支持する端子ユニットを備え、
前記端子ユニットは、前記充電端子が前記給電端子に接続するときに受ける付勢力により、前記給電端子が前記充電端子に対して摺動することを許容することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の充電ステーション。
【請求項9】
前記端子ユニットは、
前記ベースにおける入口側へ向けて延びる本体と、
前記本体の軸線周りに回転可能に支持される一方、その軸線の周囲に前記給電端子を支持する端子支持部と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の充電ステーション。
【請求項10】
前記給電端子が複数の端子を含み、
各端子が前記軸線の周囲に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の充電ステーション。
【請求項11】
前記ベースの上面は、入口側に向けて下り勾配となり、かつ扇状に広がる領域を有することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の充電ステーション。
【請求項12】
車輪で走行するロボットの充電を行うための充電ステーションであって、
前記車輪が乗り上げる上面を有するベースと、
ロボットの充電端子に接続する給電端子と、
前記給電端子を支持する支持機構と、
を備え、
前記ベースの上面の奥側領域に、前記車輪を目標位置に向けて直線的に誘導するよう幅が規制された誘導路が設けられ、
前記支持機構は、
前記ベースに設けられた回転軸と、
前記誘導路の下方に配置され、前記回転軸を中心に回動可能に支持された支持部材と、
前記支持部材の左右に支持され、前記給電端子をそれぞれ含む一対の端子ユニットと、
を含むことを特徴とする充電ステーション。
【請求項13】
前記端子ユニットは、
前記給電端子として複数の端子を含み、
前記複数の端子を端子接続方向に摺動可能に支持することを特徴とする請求項12に記載の充電ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの充電を行うための充電ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒューマノイドロボットやペットロボット等、人間との対話や癒しを提供する自律行動型ロボットの開発が進められている(特許文献1参照)。このようなロボットとして、周囲の状況に基づいて自律的に学習することで行動を進化させ、生命を感じさせるものも出現しつつある(特許文献2参照)。
【0003】
このようなロボットも電気エネルギーで動作する以上、充電が必要となる。このため、ロボットを充電ステーションと通信可能とし、充電残量が基準値以下となったときにそのステーションへ誘導し、自律的に充電させる技術も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-323219号公報
【特許文献2】国際公開第2017/169826号
【特許文献3】特開2001-125641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロボットをステーションの設定位置に正確な角度で進入させなければ、互いの端子を接続できない。特にロボットが車輪駆動のものである場合、ステーションに近づいたときに何度も切り替えしが必要になるなど、ロボットの精密な移動制御が必要となる。このため、処理負荷が大きくなるうえ時間もかかるといった問題があった。
【0006】
本発明は上記課題認識に基づいてなされた発明であり、その主たる目的は、充電ステーションにおいてロボットとの接続容易性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、車輪で走行するロボットの充電を行うための充電ステーションである。この充電ステーションは、車輪が乗り上げる上面を有するベースと、ロボットの充電端子に接続する給電端子と、を備える。ベースの上面は、奥側領域に目標位置が設定される一方、入口側の特定位置と目標位置とをつなぐ基準進入ラインが設定され、進入してくる車輪に対して基準進入ライン側への重力成分をもたせる三次元曲面形状の傾斜面を含む。給電端子は、車輪が目標位置に到達した状態で充電端子に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の充電ステーションによれば、ロボットの接続容易性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0010】
【
図1】ロボット用充電システムの概要を説明するための図である。
【
図3】ロボットの構造を概略的に表す断面図である。
【
図4A】車輪収納機構の構造および動作を模式的に示す側面図である。
【
図4B】車輪収納機構の構造および動作を模式的に示す正面図である。
【
図8A】ロボットが外皮を装着した状態を表す右側面図である。
【
図8B】ロボットが外皮を装着した状態を表す正面図である。
【
図8C】ロボットが外皮を装着した状態を表す背面図である。
【
図10A】充電ユニットの外観を表す斜視図である。
【
図10B】充電ユニットの外観を表す正面図である。
【
図11A】ベースの上面の形状を表す説明図(斜視図)である。
【
図11B】ベースの上面の形状を表す説明図(正面図)である。
【
図12A】ベースの上面の形状を表す説明図(平面図)である。
【
図12B】ベースの上面の形状を表す説明図(
図11BのX-X矢視断面図)である。
【
図14A】給電端子を含む端子ユニットおよびその周辺構造を表す図である。
【
図14B】給電端子を含む端子ユニットの先端部を示す正面図である。
【
図14C】給電端子を含む端子ユニットの先端部を示す側面図である。
【
図15A】ベースにおける端子ユニットの支持構造を表す模式図のうち、端子ユニットの待機状態(無負荷状態)を示す図である。
【
図15B】ベースにおける端子ユニットの支持構造を表す模式図のうち、ロボットが端子ユニットに接続されるときに生じ得る状態(負荷状態)を示す図である。
【
図15C】ベースにおける端子ユニットの支持構造を表す模式図のうち、ロボットが端子ユニットに接続されるときに生じ得る状態(負荷状態)を示す図である。
【
図16A】充電端子と給電端子との接続構造を表す模式図のうち、部分断面図である。
【
図16B】充電端子と給電端子との接続構造を表す模式図のうち、接続過程における端子ユニットの動きを示す図である。
【
図16C】充電端子と給電端子との接続構造を表す模式図のうち、接続過程における端子ユニットの動きを示す図である。
【
図17A】ロボットの進入動作を表す図で、その動作過程を示す図である。
【
図17B】ロボットの進入動作を表す図で、その動作過程を示す図である。
【
図17C】ロボットの進入動作を表す図で、その動作過程を示す図である。
【
図18A】車輪誘導メカニズムを例示する模式図で、車輪誘導過程を平面視する図である。
【
図18B】車輪誘導メカニズムを例示する模式図で、車輪誘導過程を平面視する図である。
【
図18C】車輪誘導メカニズムを例示する模式図で、車輪誘導過程を平面視する図である。
【
図19A】車輪誘導メカニズムを例示する模式図で、車輪誘導過程において後輪が位置する箇所の鉛直断面を示し、
図18Aに対応する図である。
【
図19B】車輪誘導メカニズムを例示する模式図で、車輪誘導過程において後輪が位置する箇所の鉛直断面を示し、
図18Bに対応する図である。
【
図19C】車輪誘導メカニズムを例示する模式図で、車輪誘導過程において後輪が位置する箇所の鉛直断面を示し、
図18Cに対応する図である。
【
図20A】ステーションからロボットが退出するときの動作を表す図で、充電完了時の状態を示す図である。
【
図20B】ステーションからロボットが退出するときの動作を表す図で、端子解除動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、ロボット用充電システム10の概要を説明するための図である。
充電システム10は、2台のロボット100を同時に充電可能な充電ステーション(以下、単に「ステーション」とよぶ)500を備える。ロボット100は車輪走行型の自律行動型ロボットである。ロボット100は、2つの前輪と1つの後輪を備える。左右の前輪が駆動輪、後輪がキャスターからなる従動輪である(詳細については後述する)。
【0013】
ステーション500は、複数のロボット100の巣(寝床)を演出する。2台のロボット100が隣り合わせで仲良く充電できるよう、2つの充電スペース502が横並びに近接配置されている。ロボット100は、充電のために巣に戻り、充電中は正面を向くことで周囲に愛らしさをアピールする。このため、ロボット100は、充電スペース502に対して後ろ向きに進入する。すなわち、その進入の際にはキャスターが先頭となる。
【0014】
充電スペース502には、キャスターが乗り上げるベース504が設けられる。キャスターがベース504上の目標位置に到達することで、ステーション500の給電端子とロ
ボット100の充電端子とが安定に接続し、充電が可能となる。本実施形態では、キャスターを目標位置に簡易にかつ効率良く到達させるために、ロボット100の移動に伴う慣性とキャスターの重力を利用する。すなわち、ベース504の上面が、進入してくるキャスターに対し目標位置へ向かう重力成分をもたせるための三次元曲面形状の傾斜面を含む。キャスターは360度の旋回自由度を有するが、自ら旋回することはできない。そこで、キャスターが三次元曲面形状の傾斜面を転動する過程で重力成分の方向に旋回し、目標位置に自然に誘導できるようにする。以下、このような誘導を実現するロボット100およびステーション500の具体的構成について説明する。
【0015】
[基本構成]
図2は、ロボット100の外観を表す図である。
図2Aは正面図であり、
図2Bは側面図である。
ロボット100は、外部環境および内部状態に基づいて行動を決定する自律行動型のロボットである。外部環境は、カメラやサーモセンサなど各種のセンサにより認識される。内部状態はロボット100の感情を表現する様々なパラメータとして定量化される。ロボット100は、オーナー家庭の家屋内を行動範囲とする。以下、ロボット100に関わる人間を「ユーザ」とよぶ。
【0016】
ロボット100のボディ104は、全体的に丸みを帯びた形状を有し、ウレタンやゴム、樹脂、繊維などやわらかく弾力性のある素材により形成された外皮314を含む。ロボット100に服を着せてもよい。ロボット100の総重量は5~15キログラム程度、身長は0.5~1.2メートル程度である。適度な重さと丸み、柔らかさ、手触りのよさ、といった諸属性により、ユーザがロボット100を抱きかかえやすく、かつ、抱きかかえたくなるという効果が実現される。
【0017】
ロボット100は、一対の前輪102(左輪102a,右輪102b)と、一つの後輪103を含む。前輪102が駆動輪であり、後輪103が従動輪である。前輪102は、操舵機構を有しないが、左右輪の回転速度や回転方向を個別に制御可能とされている。後輪103は、キャスターであり、ロボット100を前後左右へ移動させるために回転自在となっている。後輪103はオムニホイールであってもよい。左輪102aよりも右輪102bの回転数を大きくすることで、ロボット100が左折したり、左回りに回転できる。右輪102bよりも左輪102aの回転数を大きくすることで、ロボット100が右折したり、右回りに回転できる。
【0018】
前輪102および後輪103は、駆動機構(回動機構、リンク機構)によりボディ104に完全収納できる。ボディ104の下半部には左右一対のカバー312が設けられている。カバー312は、可撓性および弾性を有する樹脂材(ラバー、シリコーンゴム等)からなり、柔らかい胴体を構成するとともに前輪102を収納できる。カバー312には側面から前面にかけて開口するスリット313(開口部)が形成され、そのスリット313を介して前輪102を進出させ、外部に露出させることができる。
【0019】
走行時においても各車輪の大半はボディ104に隠れているが、各車輪がボディ104に完全収納されるとロボット100は移動不可能な状態となる。すなわち、車輪の収納動作にともなってボディ104が降下し、床面Fに着座する。この着座状態においては、ボディ104の底部に形成された平坦状の着座面108(接地底面)が床面Fに当接する。
【0020】
ロボット100は、2つの腕106を有する。腕106の先端に手があるが、モノを把持する機能はない。腕106は、後述するアクチュエータの駆動により、上げる、曲げる、手を振る、振動するなど簡単な動作が可能である。2つの腕106は、それぞれ個別に制御可能である。
【0021】
ロボット100の頭部正面には顔領域116が露出している。顔領域116には、2つの目110が設けられている。目110は、液晶素子または有機EL素子による画像表示が可能である。顔領域116の中央には、鼻109が設けられている。鼻109には、アナログスティックが設けられており、上下左右の全方向に加えて、押し込み方向も検出できる。また、ロボット100には複数のタッチセンサが設けられており、頭部、胴部、臀部、腕など、ロボット100のほぼ全域についてユーザのタッチを検出できる。ロボット100は、音源方向を特定可能なマイクロフォンアレイや超音波センサなど様々なセンサを搭載する。また、スピーカーを内蔵し、簡単な音声を発することもできる。
【0022】
ロボット100の頭部にはツノ112が取り付けられる。ツノ112には全天周カメラ113が取り付けられ、ロボット100の上部全域を一度に撮像可能である。ツノ112にはまた、サーモセンサ115(サーモカメラ)が内蔵されている。ツノ112には、緊急停止用のスイッチが設けられており、ユーザはツノ112を引き抜くことでロボット100を緊急停止できる。
【0023】
図3は、ロボット100の構造を概略的に表す断面図である。
ボディ104は、本体フレーム310、一対の腕106、一対のカバー312および外皮314を含む。本体フレーム310は、頭部フレーム316および胴部フレーム318を含む。頭部フレーム316は、中空半球状をなし、ロボット100の頭部骨格を形成する。胴部フレーム318は、角筒形状をなし、ロボット100の胴部骨格を形成する。胴部フレーム318の下端部が、ロアプレート334に固定されている。頭部フレーム316は、接続機構330を介して胴部フレーム318に接続されている。
【0024】
胴部フレーム318は、ボディ104の軸芯を構成する。胴部フレーム318は、ロアプレート334に左右一対のサイドプレート336を固定して構成され、一対の腕106および内部機構を支持する。胴部フレーム318の内方には、バッテリー118、制御回路342および各種アクチュエータ等が収容されている。ロアプレート334の底面が着座面108を形成する。
【0025】
胴部フレーム318は、その上部にアッパープレート332を有する。アッパープレート332には、有底円筒状の支持部319が固定されている。アッパープレート332、ロアプレート334、一対のサイドプレート336および支持部319が、胴部フレーム318を構成している。支持部319の外径は、左右のサイドプレート336の間隔よりも小さい。一対の腕106は、環状部材340と一体に組み付けられることでアームユニット350を構成している。環状部材340は円環状をなし、その中心線上を径方向に離隔するように一対の腕106が取り付けられている。環状部材340は、支持部319に同軸状に挿通され、一対のサイドプレート336の上端面に載置されている。アームユニット350は、胴部フレーム318により下方から支持されている。
【0026】
頭部フレーム316は、ヨー軸321、ピッチ軸322およびロール軸323を有する。頭部フレーム316のヨー軸321周りの回動(ヨーイング)により首振り動作が実現され、ピッチ軸322周りの回動(ピッチング)により頷き動作,見上げ動作および見下ろし動作が実現され、ロール軸323周りの回動(ローリング)により首を左右に傾げる動作が実現される。各軸は、接続機構330の駆動態様に応じて三次元空間における位置や角度が変化し得る。接続機構330は、リンク機構からなり、胴部フレーム318に設置された複数のモータにより駆動される。
【0027】
胴部フレーム318は、車輪駆動機構370を収容している。車輪駆動機構370は、前輪102および後輪103をそれぞれボディ104から出し入れする前輪駆動機構およ
び後輪駆動機構を含む。前輪102および後輪103は、ロボット100を移動させる「移動機構」として機能する。前輪102は、その中心部にダイレクトドライブモータを有する。このため、左輪102aと右輪102bを個別に駆動できる。前輪102はホイールカバー105に回転可能に支持され、そのホイールカバー105が胴部フレーム318に回動可能に支持されている。
【0028】
一対のカバー312は、胴部フレーム318を左右から覆うように設けられ、ボディ104のアウトラインに丸みをもたせるよう、滑らかな曲面形状とされている。胴部フレーム318とカバー312との間に閉空間が形成され、その閉空間が前輪102の収容空間Sとなっている。後輪103は、胴部フレーム318の下部後方に設けられた収容空間に収容される。
【0029】
外皮314は、本体フレーム310および一対の腕106を外側から覆う。外皮314は、人が弾力を感じる程度の厚みを有し、ウレタンスポンジなどの伸縮性を有する素材で形成される。これにより、ユーザがロボット100を抱きしめると、適度な柔らかさを感じ、人がペットにするように自然なスキンシップをとることができる。外皮314は、カバー312を露出させる態様で本体フレーム310に装着されている。外皮314の上端部には、開口部390が設けられる。この開口部390がツノ112を挿通する。
【0030】
本体フレーム310と外皮314との間にはタッチセンサが配設される。カバー312にはタッチセンサが埋設されている。これらのタッチセンサは、いずれも静電容量センサであり、ロボット100のほぼ全域におけるタッチを検出する。なお、タッチセンサを外皮314に埋設してもよいし、本体フレーム310の内側に配設してもよい。
【0031】
腕106は、第1関節352および第2関節354を有し、両関節の間に腕356、第2関節354の先に手358を有する。第1関節352は肩関節に対応し、第2関節354は手首関節に対応する。各関節にはモータが設けられ、腕356および手358をそれぞれ駆動する。腕106を駆動するための駆動機構は、これらのモータおよびその駆動回路344を含む。
【0032】
図4は、車輪収納機構の構造および動作を模式的に示す図である。
図4Aは側面図であり、
図4Bは正面図である。図中点線は車輪が収容空間Sから進出して走行可能な状態を示し、図中実線は車輪が収容空間Sに収納された状態を示す。
【0033】
車輪駆動機構370は、前輪駆動機構374および後輪駆動機構376を含む。前輪駆動機構374は、回動軸378およびアクチュエータ379を含む。回動軸378がホイールカバー105に連結されている。本実施形態では、アクチュエータ379としてモータが採用される。アクチュエータ379の駆動によりホイールカバー105を回動させることで、前輪102を収容空間Sから外部へ進退駆動できる。
【0034】
本実施形態では、左輪102aと右輪102bの進退駆動を個別に制御できる。すなわち、左輪102a用のアクチュエータ379aと、右輪102b用のアクチュエータ379bが設けられ、それぞれ独立に駆動できる。左輪102aのホイールカバー105が回動軸378aを介してアクチュエータ379aに接続され、右輪102bのホイールカバー105が回動軸378bを介してアクチュエータ379aに接続されている。なお、以下の説明において、回動軸378a,378bを特に区別しないときには「回動軸378」と称し、アクチュエータ379a,379bを特に区別しないときには「アクチュエータ379」と称す。
【0035】
後輪駆動機構376は、回動軸404およびアクチュエータ406を含む。回動軸40
4は、前輪駆動機構374の回動軸378と平行に設けられ、その軸線周りに後輪103を回動可能に支持する。後輪103はキャスターであり、主軸407(旋回軸)と車軸408を有する。主軸407から二股のアーム410が延び、それらのアーム410の先端に車軸408が設けられている。車軸408に車輪が回転自在に支持されている。主軸407の上端が回動軸404の中央に接続され、自軸周りに回動自在に支持されている。車軸408は主軸407の軸線上にはなく、オフセットされている。主軸407は、後輪103の向き(進行方向)を任意に変化させる。アクチュエータ406の駆動により回動軸404が回動し、後部収容空間から外部へ後輪103を進退駆動できる。
【0036】
車輪収納時には、アクチュエータ379,406が一方向に駆動される。このとき、ホイールカバー105が回動軸378を中心に回動し、前輪102が床面Fから上昇する。また、アーム410が回動軸404を中心に回動し、後輪103が床面Fから上昇する(一点鎖線矢印参照)。それにより、ボディ104が降下して着座面108が床面Fに接地し(実線矢印参照)、ロボット100がお座りした状態が実現される。アクチュエータ379,406を反対方向に駆動することにより、各車輪を進出させ、ロボット100を立ち上がらせることができる。
【0037】
なお、後輪103の外側には尻尾を模した後部カバー107が設けられており、後輪103の進退と連動してボディ104の後部下開口部を開閉する。すなわち、後輪103を進出させるときには後部カバー107が開動作し、後輪103を収納するときには後部カバー107が閉動作する。
【0038】
図5は、ロボット100のハードウェア構成図である。
ロボット100は、内部センサ128、通信機126、記憶装置124、プロセッサ122、駆動機構120およびバッテリー118を含む。駆動機構120は、上述した接続機構330および車輪駆動機構370を含む。プロセッサ122と記憶装置124は、制御回路342に含まれる。各ユニットは電源線130および信号線132により互いに接続される。バッテリー118は、電源線130を介して各ユニットに電力を供給する。各ユニットは信号線132により制御信号を送受する。バッテリー118は、リチウムイオン二次電池であり、ロボット100の動力源である。
【0039】
内部センサ128は、ロボット100が内蔵する各種センサの集合体である。具体的には、カメラ、マイクロフォンアレイ、測距センサ(赤外線センサ)、サーモセンサ、タッチセンサ、加速度センサ、気圧センサ、ニオイセンサなどである。タッチセンサは、ボディ104の大部分の領域に対応し、静電容量の変化に基づいてユーザのタッチを検出する。ニオイセンサは、匂いの元となる分子の吸着によって電気抵抗が変化する原理を応用した既知のセンサである。
【0040】
通信機126は、各種の外部機器を対象として無線通信を行う通信モジュールである。記憶装置124は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリにより構成され、コンピュータプログラムや各種設定情報を記憶する。プロセッサ122は、コンピュータプログラムの実行手段である。駆動機構120は、複数のアクチュエータを含む。このほか、表示器やスピーカーなども搭載される。
【0041】
駆動機構120は、主として、車輪と頭部を制御する。駆動機構120は、ロボット100の移動方向や移動速度を変化させるほか、車輪を昇降させることもできる。車輪が上昇すると、車輪はボディ104に完全に収納され、ロボット100は着座面108にて床面Fに当接し、着座状態となる。また、駆動機構120は、腕106を制御する。
【0042】
図6は、ロボットシステム300の機能ブロック図である。
ロボットシステム300は、ロボット100、サーバ200および複数の外部センサ114を含む。ロボット100およびサーバ200の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。ロボット100の機能の一部はサーバ200により実現されてもよいし、サーバ200の機能の一部または全部はロボット100により実現されてもよい。
【0043】
家屋内にはあらかじめ複数の外部センサ114が設置される。サーバ200は、外部センサ114を管理し、必要に応じてロボット100に外部センサ114により取得された検出値を提供する。ロボット100は、内部センサ128および複数の外部センサ114から得られる情報に基づいて、基本行動を決定する。外部センサ114はロボット100の感覚器を補強するためのものであり、サーバ200はロボット100の処理能力を補強するためのものである。ロボット100の通信機126がサーバ200と定期的に通信し、サーバ200が外部センサ114によりロボット100の位置を特定する処理を担ってもよい(特許文献2も参照)。
【0044】
(サーバ200)
サーバ200は、通信部204、データ処理部202およびデータ格納部206を含む。通信部204は、外部センサ114およびロボット100との通信処理を担当する。データ格納部206は各種データを格納する。データ処理部202は、通信部204により取得されたデータおよびデータ格納部206に格納されるデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部202は、通信部204およびデータ格納部206のインタフェースとしても機能する。
【0045】
データ格納部206は、モーション格納部232と個人データ格納部218を含む。ロボット100は、複数の動作パターン(モーション)を有する。腕106を震わせる、蛇行しながらオーナーに近づく、首をかしげたままオーナーを見つめる、など様々なモーションが定義される。
【0046】
モーション格納部232は、モーションの制御内容を定義する「モーションファイル」を格納する。各モーションは、モーションIDにより識別される。モーションファイルは、ロボット100のモーション格納部160にもダウンロードされる。どのモーションを実行するかは、サーバ200で決定されることもあるし、ロボット100で決定されることもある。ロボット100のモーションの多くは、複数の単位モーションを含む複合モーションとして構成される。
【0047】
個人データ格納部218は、ユーザの情報を格納する。具体的には、ユーザに対する親密度とユーザの身体的特徴・行動的特徴を示すマスタ情報を格納する。年齢や性別などの他の属性情報を格納してもよい。
【0048】
ロボット100は、ユーザごとに親密度という内部パラメータを有する。ロボット100が、自分を抱き上げる、声をかけてくれるなど、自分に対して好意を示す行動を認識したとき、そのユーザに対する親密度が高くなる。ロボット100に関わらないユーザや、乱暴を働くユーザ、出会う頻度が低いユーザに対する親密度は低くなる。
【0049】
データ処理部202は、位置管理部208、認識部212、動作制御部222、親密度管理部220および状態管理部244を含む。位置管理部208は、ロボット100の位置座標を特定する。状態管理部244は、充電率や内部温度、プロセッサ122の処理負荷などの各種物理状態など各種内部パラメータを管理する。また、状態管理部244は、ロボット100の感情(寂しさ、好奇心、承認欲求など)を示す様々な感情パラメータを管理する。
【0050】
認識部212は、外部環境を認識する。外部環境の認識には、温度や湿度に基づく天候や季節の認識、光量や温度に基づく物陰(安全地帯)の認識など多様な認識が含まれる。ロボット100の認識部156は、内部センサ128により各種の環境情報を取得し、これを一次処理した上でサーバ200の認識部212に転送する。
【0051】
認識部212は、ロボット100の内蔵カメラによる撮像画像から抽出された特徴ベクトルと、個人データ格納部218にあらかじめ登録されているユーザ(クラスタ)の特徴ベクトルと比較することにより、撮像されたユーザがどの人物に該当するかを判定する(ユーザ識別処理)。また、認識部212は、ユーザの表情を画像認識することにより、ユーザの感情を推定する。認識部212は、人物以外の移動物体、例えばペットである猫や犬についてもユーザ識別処理を行う。
【0052】
認識部212は、ロボット100になされた様々な応対行為を認識し、快・不快行為に分類する。認識部212は、また、ロボット100の行動に対するオーナーの応対行為を認識することにより、肯定・否定反応に分類する。快・不快行為は、ユーザの応対行為が、生物として心地よいものであるか不快なものであるかにより判別される。
【0053】
動作制御部222は、ロボット100の動作制御部150と協働して、ロボット100のモーションを決定する。動作制御部222は、ロボット100の移動目標地点とそのための移動ルートを作成する。動作制御部222は、複数の移動ルートを作成し、その上で、いずれかの移動ルートを選択してもよい。動作制御部222は、モーション格納部232の複数のモーションからロボット100のモーションを選択する。
【0054】
親密度管理部220は、ユーザごとの親密度を管理する。親密度は個人データ格納部218において個人データの一部として登録される。快行為を検出したとき、親密度管理部220はそのオーナーに対する親密度をアップさせる。不快行為を検出したときには親密度はダウンする。また、長期間視認していないオーナーの親密度は徐々に低下する。
【0055】
(ロボット100)
ロボット100は、通信部142、データ処理部136、データ格納部148、内部センサ128および駆動機構120を含む。通信部142は、通信機126(
図5参照)に該当し、外部センサ114、サーバ200および他のロボット100との通信処理を担当する。データ格納部148は各種データを格納する。データ格納部148は、記憶装置124(
図5参照)に該当する。データ処理部136は、通信部142により取得されたデータおよびデータ格納部148に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部136は、プロセッサ122およびプロセッサ122により実行されるコンピュータプログラムに該当する。データ処理部136は、通信部142、内部センサ128、駆動機構120およびデータ格納部148のインタフェースとしても機能する。
【0056】
データ格納部148は、ロボット100の各種モーションを定義するモーション格納部160を含む。モーション格納部160には、サーバ200のモーション格納部232から各種モーションファイルがダウンロードされる。モーションは、モーションIDによって識別される。車輪を収容して着座する、腕106を持ち上げる、2つの前輪102を逆
回転させることで、あるいは、片方の前輪102だけを回転させることでロボット100を回転行動させる、車輪を収納した状態で前輪102を回転させることで震える、ユーザから離れるときにいったん停止して振り返る、などの様々なモーションを表現するために、各種アクチュエータ(駆動機構120)の動作タイミング、動作時間、動作方向などがモーションファイルにおいて時系列定義される。データ格納部148には、個人データ格納部218からも各種データがダウンロードされてもよい。
【0057】
データ処理部136は、認識部156および動作制御部150を含む。認識部156は、内部センサ128から得られた外部情報を解釈する。認識部156は、視覚的な認識(視覚部)、匂いの認識(嗅覚部)、音の認識(聴覚部)、触覚的な認識(触覚部)が可能である。
【0058】
認識部156は、画像から移動物体、特に、人物や動物に対応する画像領域を抽出し、抽出した画像領域から移動物体の身体的特徴や行動的特徴を示す特徴量の集合として「特徴ベクトル」を抽出する。特徴ベクトル成分(特徴量)は、各種身体的・行動的特徴を定量化した数値である。例えば、人間の目の横幅は0~1の範囲で数値化され、1つの特徴ベクトル成分を形成する。人物の撮像画像から特徴ベクトルを抽出する手法については、既知の顔認識技術の応用である。移動物体を検出したときには、ニオイセンサや内蔵の集音マイク、サーモセンサ等からも身体的特徴や行動的特徴が抽出される。これらの特徴も定量化され、特徴ベクトル成分となる。認識部156は、特許文献2等に記載の既知の技術に基づいて、特徴ベクトルからユーザを特定する。ロボット100は、特徴ベクトルをサーバ200に送信する。
【0059】
検出・分析・判定を含む一連の認識処理のうち、認識部156は認識に必要な情報の取捨選択や抽出を行い、判定等の解釈処理はサーバ200の認識部212により実行される。認識処理は、サーバ200の認識部212だけで行ってもよいし、ロボット100の認識部156だけで行ってもよいし、上述のように双方が役割分担をしながら上記認識処理を実行してもよい。ロボット100は内部センサ128によりユーザの行為を物理的情報として取得し、サーバ200の認識部212は快・不快を判定する。また、サーバ200の認識部212は特徴ベクトルに基づくユーザ識別処理を実行する。
【0060】
サーバ200の認識部212は、ロボット100に対するユーザの各種応対を認識する。各種応対行為のうち一部の典型的な応対行為には、快または不快、肯定または否定が対応づけられる。一般的には快行為となる応対行為のほとんどは肯定反応であり、不快行為となる応対行為のほとんどは否定反応となる。快・不快行為は親密度に関連し、肯定・否定反応はロボット100の行動選択に影響する。
【0061】
認識部156により認識された応対行為に応じて、サーバ200の親密度管理部220はユーザに対する親密度を変化させる。原則的には、快行為を行ったユーザに対する親密度は高まり、不快行為を行ったユーザに対する親密度は低下する。
【0062】
動作制御部150は、サーバ200の動作制御部222と協働してロボット100のモーションを決める。一部のモーションについてはサーバ200で決定し、他のモーションについてはロボット100で決定してもよい。また、ロボット100がモーションを決定するが、ロボット100の処理負荷が高いときにはサーバ200がモーションを決定するとしてもよい。サーバ200においてベースとなるモーションを決定し、ロボット100において追加のモーションを決定してもよい。モーションの決定処理をサーバ200およびロボット100においてどのように分担するかはロボットシステム300の仕様に応じて設計すればよい。
【0063】
動作制御部150は、選択したモーションを駆動機構120に実行指示する。駆動機構120は、モーションファイルにしたがって、各アクチュエータを制御する。
【0064】
動作制御部150は、親密度の高いユーザが近くにいるときには「抱っこ」をせがむ仕草として両方の腕106をもちあげるモーションを実行することもできるし、「抱っこ」に飽きたときには左右の前輪102を収容したまま逆回転と停止を交互に繰り返すことで抱っこをいやがるモーションを表現することもできる。駆動機構120は、動作制御部150の指示にしたがって前輪102や腕106、頭部(頭部フレーム316)を駆動することで、ロボット100に様々なモーションを表現させる。
【0065】
次に、以上の基本構成を前提として、本実施形態におけるロボットシステム300の実装について説明する。以下では特に、本実装の特徴と目的および基本構成との相違点を中心として説明する。
【0066】
図7は、ロボットシステム300の機能ブロック図である。
ロボットシステム300は、ロボット100、ステーション500および複数の外部センサ114を含む。サーバ200は、ステーション500に設けられている。ロボット100は、
図6に示した構成に加え、バッテリー118および充電回路170を含む。内部センサ128は、さらに電池残量センサを含む。
【0067】
一方、ステーション500は、充電回路250および誘導部252をさらに含む。ロボット100の充電回路170がステーション500の充電回路170に接続されることにより、バッテリー118への充電が可能となる。誘導部252は、ロボット100をステーション500に誘導するための誘導信号を出力する発信回路を含む。サーバ200のデータ処理部202が、その発信回路を制御する。誘導方法等の詳細については後述する。
【0068】
図8A~
図8Cは、ロボット100が外皮314を装着した状態を表す図である。
図8Aは右側面図であり、
図8Bは正面図であり、
図8Cは背面図である。なお、ロボット100の外観は、ほぼ左右対称となっている。
【0069】
ロボット100における胴部フレーム318の後部下方には、後輪103を収容するための収容口377が設けられている。そして、収容口377の左右に一対の充電端子510が突設されている。充電端子510の基端は、胴部フレーム318の内部に位置し、図示しない配線を介して充電回路170(
図7参照)に接続されている。充電端子510の先端は、やや大径の円板状とされ、ボタン態様をなしている。
【0070】
外皮314は、外皮本体420と弾性装着部422とを縫い合わせて構成される。外皮本体420および弾性装着部422は、いずれも柔軟素材からなる。外皮本体420は、頭部フレーム316に被せられる袋状部424と、袋状部424の左右側面から下方に延びる一対の手部426と、袋状部424の正面から下方に延びる延在部428と、袋状部424の背面から下方に延びる延在部430とを含む。袋状部424の前面側に、顔領域116を露出させるための開口部432が設けられている。
【0071】
弾性装着部422は、外皮314の底部を構成し、外皮本体420の前後の延在部428,430を下方で連結している。弾性装着部422には、収容口377と対応する位置に開口部434が設けられている。弾性装着部422の後部下方には一対の孔436が形成されている。孔436は、ボタン穴のような小幅形状を有するが、弾性装着部422が柔軟であるため、幅方向に押し広げることができる。これらの孔436に、一対の充電端子510が挿通される。充電端子510の孔436への挿通後、孔436は弾性力により元の小幅形状に戻る。それにより、充電端子510の頭部が孔436の周辺に引っ掛かり
、外皮314が脱げることを防止できる。すなわち、充電端子510は、充電のための端子であるとともに、外皮314を固定するための部材でもある。
【0072】
また、ロボット100の後部カバー107(尻尾)には、内部センサ128として赤外線センサ172および一対のマイク174が設けられている。すなわち、後部カバー107の中央部に赤外線センサ172が設けられ、その左側に左マイク174L、右側に右マイク174Rが設けられている。後部カバー107が開き、後輪103が出された状態で、これらはロボット100の後方を向く。赤外線センサ172および一対のマイク174は、ロボット100がステーション500へ進入する際の誘導制御に用いられる。
【0073】
図9は、ステーション500の外観を表す斜視図である。なお、以下では説明の便宜上、ステーション500においてロボット100の進入方向奥側(進入方向先側)を「奥側」、進入方向手前側(進入方向後側)を「手前側」,「正面側」と表現することがある。
ステーション500は、充電のための主要部分である充電ユニット506と、一対の背面パネル508などの装飾のための部材を含む。充電ユニット506は、ベース504およびユニット本体512を含む。ベース504は、平面視長方形状をなし、左右に充電スペース502が設けられている。ベース504の上面中央にユニット本体512が立設されている。ユニット本体512は、上半部が拡大された筐体514を有する。一対の背面パネル508は、筐体514の正面左右にそれぞれ配置されている。背面パネル508は、固定部材509を介してユニット本体512に着脱可能に取り付けられる。固定部材509はアーム状の部材であり、その一端が背面パネル508の裏面に、他端が筐体514の裏面にそれぞれ着脱可能に固定される。筐体514の左右には、各背面パネル508の下方位置に誘導部252がそれぞれ設けられている。
【0074】
図10は、充電ユニット506の外観を表す図である。
図10Aは斜視図であり、
図10Bは正面図である。
充電ユニット506は、左右対称構造を有し、向かって左側の充電スペース502(「左スペース502L」ともいう)と、右側の充電スペース502(「右スペース502R」ともいう)のそれぞれにおいてロボット100の充電が可能である。筐体514は、サーバ200および充電回路250を収容している。各充電スペース502にそれぞれ一対の給電端子520が配設されている。一対の給電端子520の一方が充電回路250の電源ラインに接続され、他方がグランドラインに接続される。
【0075】
ベース504の左右上面は、各充電スペース502にロボット100を円滑に誘導するための傾斜面を有する。ベース504の左右上面には、充電スペース502ごとに目標位置P1が設定されている。目標位置P1には、ロボット100の後輪103を落とし込むための車輪受522が設けられている。ベース504における入口側は広く開放されており、目標位置P1とその入口正面位置P2(「特定位置」に対応する)とをつなぐように仮想的に基準進入ラインLが設定されている。基準進入ラインLは、ロボット100が充電ユニット506に対して最も効率良く進入できる経路、言い換えれば、後輪103が目標位置P1に最も効率良く到達できる経路を示し、本実施形態では直線的に設定される。
【0076】
ベース504は、各充電スペース502において基準進入ラインLを奥方に向かうにしたがってその左側および右側が隆起する形状を有する。左右の隆起部の奥方の間隔が小さくされ、後輪103を目標位置P1へ直線的に誘導するための誘導路523が形成されている。誘導路523の幅は、後輪103の幅よりもやや大きい。誘導路523の中央に車輪受522が設けられている。左右の隆起部の手前側には、一対の開口部505が設けられ、一対の給電端子520をそれぞれ突出させている。一対の開口部505は、誘導路523の左側と右側にそれぞれ位置する。給電端子520は、正面やや上方かつ基準進入ラインL寄りに向けて延出している。すなわち、一対の給電端子520が、充電スペース5
02に対してやや内向きとなるように支持されている。一対の給電端子520は、後輪103が車輪受522に到達した状態で一対の充電端子510にそれぞれ接続可能である。
【0077】
一対の誘導部252は、筐体514の左右側面からそれぞれ突出するように設けられている。左側の誘導部252は左スペース502Lの基準進入ラインLの上方に位置する。右側の誘導部252は右スペース502Rの基準進入ラインLの上方に位置する。各誘導部252は、対応する充電スペース502にロボット100を誘導するための誘導信号を発信する。誘導部252は、誘導信号として超音波信号を送信する超音波送信機と、赤外線信号を送信する赤外線送信機を有する。これらの送信機は、サーバ200に接続され、データ処理部202により制御される。
【0078】
ロボット100がステーション500に近づくと、誘導部252から超音波信号と赤外線信号が送信される。ロボット100は、赤外線センサ172により赤外線信号を受信し、一対のマイク174(左マイク174L、右マイク174R)により超音波信号を受信する(
図8C参照)。ロボット100は、誘導部252から送信される超音波信号と赤外線信号の到達時間差に基づいて目標位置P1までの距離を演算し、その算出結果に基づいて走行速度(充電スペース502への進入速度)を調整する。ロボット100は、また、左マイク174Lと右マイク174Rのそれぞれが受信する超音波信号の到達時間差に基づいて充電スペース502への進入角度を演算し、その演算結果に基づいて走行方向(充電スペース502への進入角度)を調整する。
【0079】
ユニット本体512の上部前面には、キャリブレーションのための基準値提供部524が設けられている。ステーション充電ステーション500では、ロボット100のサーモセンサ115についてキャリブレーションを行うことができる。基準値提供部524は、サーバ200により制御される。基準値提供部524は、異なる温度に設定された2つの恒温源を有する。それらの温度差が予め設定されている(2つの恒温源の温度差を「設定温度差」ともいう)。ロボット100は、サーモセンサ115の出力値から2つの恒温源の温度差を計測する(このとき計測された温度差を「計測温度差」ともいう)。ロボット100は、設定温度差と計測温度差とを比較し、その差分を補正することでキャリブレーションを実行できる。
【0080】
次に、ステーション500における車輪誘導構造および充電端子接続構造について詳細に説明する。
図11~
図13は、ベース504の上面の形状を表す説明図である。説明の便宜上、
図10BのA部に対応する部分を抽出する形で示され、給電端子520は省略されている。
図11Aは斜視図であり、
図11Bは正面図である。
図12Aは平面図であり、
図12Bは
図11BのX-X矢視断面図である。
図13A~
図13Hは、それぞれ
図12AのA-A~H-H矢視断面を示す。
【0081】
図11に示すように、ベース504は、その奥側領域に車輪受522が凹設され、目標位置P1が設定されている。ベース504の正面入口には、床面Fとの段差がほとんどない平坦部530が設けられている。ベース504は、その平坦部530に滑らかにつながる傾斜面532を有する。
【0082】
図12にも示すように、入口正面位置P2から目標位置P1に向けて、基準進入ラインLに沿って上り傾斜534と下り傾斜536とを連続的に有する。そして、上り傾斜534のほうが下り傾斜536よりも勾配が緩やかとされている。下り傾斜536の先に車輪受522が設けられ、その中央に目標位置P1が設定されている。図示のように下り傾斜536の勾配を大きくしつつ、その幅を小さくすることで、目標位置P1に到達した後輪103が反動で手前側に戻らないようにしている。車輪受522は、充電端子510と給
電端子520との間に接触圧が作用するように位置決めされている。本実施形態では図示のように、基準進入ラインLの法線上に誘導部252が位置する。そして、誘導部252から送信される超音波および赤外線の指向性(指向角θ)がいずれも60度程度(基準進入ラインLを中心に左右それぞれ30度程度)となるように設定されているが、それ以外の値を設定してもよい。
【0083】
図13に示すように、ベース504の上面は、基準進入ラインLの両サイドにその基準進入ラインLに向けて低位となるよう傾斜する三次元曲面形状を有する。
図13B~(e)に示すように、ベース504の上面は、上り傾斜534の区間において、基準進入ラインLを境とする両サイドの勾配(左右方向の勾配)が奥側ほど大きくなる形状を有する。このため、ベース504の上面は、入口側に向けて下り勾配となり、かつ扇状に広がる形状を有する。
【0084】
図14は、給電端子520を含む端子ユニットの構造を表す図である。
図14Aは、端子ユニットおよびその周辺構造を示す。
図14Bは、端子ユニットの先端部を示す正面図である。
図14Cは端子ユニットの先端部を示す側面図である。
図14Aおよび
図14Bに示すように、端子ユニット550は、円柱状の本体552の先端部に端子支持部554を有し、その端子支持部554において給電端子520を相対変位可能に支持する。本体552は、その基端部がベース504に支持されている。
【0085】
給電端子520は、複数のピン端子521a~521fを含む(これらを特に区別しない場合には「ピン端子521」という)。すなわち、給電端子520が複数本のピン端子521で構成されており、これらのピン端子521が電気的に接続されている。各ピン端子521の先端は球面状とされている。
【0086】
図14Bおよび
図14Cに示すように、端子支持部554は、その先端部に先端に向けて小径となるテーパ面556を有し、先端面中央に円板状のマグネット558(永久磁石)が設けられている。端子支持部554におけるマグネット558の周囲には、複数の挿通孔560(本実施形態では6つ)が軸線方向に延びるように設けられている。これらの挿通孔560は、テーパ面556に開口している。ピン端子521a~521fが、6つの挿通孔560にそれぞれ摺動可能に支持されている。各挿通孔560の後部にスプリング562(「付勢部材」として機能する)が配設されており、ピン端子521を前方に付勢している。このため、ピン端子521は、充電端子510が給電端子520に接続されない状態においてテーパ面556の開口部から所定量突出する。
【0087】
急速充電のために給電端子520からの供給電流値が高くなるところ、上記構成により給電端子520と充電端子510との接触面積を広くして電流密度を下げることができ、発熱を抑制できる。すなわち、両端子間で広い接触面積を確保するためには、広い電極(端子)を用いればよい。しかし、その広い電極を単一の端子で構成すると、その全面で接触させるためにロボット100の進入角度を厳格に調整する必要がある。この点、本実施形態では、複数のピン状の端子を設けるとともに、それらが端子接続方向に個別に摺動する構造とされている。また、各ピン端子521がスプリング562により個別に付勢される。このため、給電端子520と充電端子510とが本来の接続角度に対して傾いているときであっても、各ピン端子521が充電端子510に向けて当接する方向へ付勢され、それぞれ充電端子510に接触する。これにより、ロボット100の進入角度が理想的な角度からずれていても、両端子の必要な接触面積を確保できる。言い換えれば、ロボット100の進入角度を寛容にできる。給電端子520の接続が完了する前に各ピン端子521が充電端子510をこすることで酸化被膜が除去される。このことも、接触面積の確保に寄与する。
【0088】
図15は、ベース504における端子ユニット550の支持構造(支持機構)を表す模式図である。
図15Aは、端子ユニット550の待機状態(無負荷状態)を示す。
図15Bおよび
図15Cは、ロボット100が端子ユニット550に接続されるときに生じ得る状態(負荷状態)を示す。
【0089】
図15Aに示すように、左右一対の端子ユニット550が板状の支持部材564に支持され、支持部材564がベース504に支持されている。支持部材564は、ベース504の内部空間に配置され、ベース504に立設された回動軸566を中心に回動可能に支持されている。回動軸566は、基準進入ラインLの法線上に設けられ、誘導路523の下方に位置する。支持部材564の左右には、円ボス状の支持部568が設けられている。各支持部568は、支持部材564の上面に対して傾斜する軸線を有する。各支持部568に端子ユニット550が取り付けられた際には、図示のように、両ユニットの先端が互いにやや内向きとなり、それぞれ斜め前方かつ上方に向く。
【0090】
ベース504には、外力が作用しない状態において支持部材564を回動方向の基準位置に保持するためのスプリング570(「付勢部材」として機能する)が配設されている。ここで、「基準位置」は支持部材564の前面が正面を向く位置、言い換えれば、一対の端子ユニット550が基準進入ラインLに対して等距離となる位置とされる。
【0091】
一対の端子ユニット550の相対位置は、ほぼ変化しない。しかし、ロボット100がステーション500に対して斜めに進入した場合、つまり後輪103の進入方向が基準進入ラインLから少しでもずれると、一対の充電端子510の一方が他方よりも先に給電端子520に到達する。支持部材564の回動構造は、このずれを吸収する。すなわち、先に到達した充電端子510による押圧力により支持部材564が図中時計回り又は反時計回りに回動する(
図15B,
図15C参照)。これにより、後に到達する側の充電端子510と給電端子520との接続も促される。すなわち、給電端子520は、充電端子510に合わせて変位可能となるようベース504に支持されている。
【0092】
なお、ベース504の開口部505は、この支持部材564の回動に伴う端子ユニット550の変位を許容するよう長孔形状(スリット状)をなしている。スプリング570は、両端子の接続に際してショックアブソーバとしても機能する。
【0093】
図16は、充電端子510と給電端子520との接続構造を表す模式図である。
図16Aは、接続構造を表す部分断面図である。
図16Bおよび
図16Cは、接続過程における端子ユニット550の動きを示す。
図16Aに示すように、ロボット100の充電端子510は斜めやや下方を向き、ステーション500の給電端子520は斜め上方を向く。そして上述のように車輪受522の手前側に勾配の大きい傾斜が設けられることで(
図12B参照)、後輪103が後方寄り、つまり充電端子510と給電端子520とを接続する方向へ付勢される。両者が接続する際、ロボット100の後方向きの慣性力が、充電端子510を介した押圧力として端子ユニット550の軸線方向に作用する(二点鎖線矢印参照)。
【0094】
充電端子510の接続面511が凹球面状であるのに対し、端子ユニット550の先端が凸形状(テーパ形状)を有し、両者は概ね相補形状となっている。充電端子510と給電端子520とは、マグネット558により着脱可能に接続される。両端子が接続されるとき、給電端子520(6つのピン端子521)が、スプリング562の付勢力に抗して軸線方向に押し下げられる(一点鎖線矢印参照)。このとき生じるスプリング562の弾性反力により、両端子間に十分な接触圧が得られ、安定した接続状態が確保される。
【0095】
なお、充電時には前輪102の駆動力(推進力)がオフにされるため(脱力状態)、そ
のオフにした反動で両端子を離間させる方向の慣性力が作用する可能性がある。この点、本実施形態ではマグネット558による吸着力により両端子の接続状態が維持される。また、
図15Bおよび
図15Cに示したように、ロボット100の進入方向が基準進入ラインLから多少ずれたとしても、マグネット558の吸引力により両端子を接続できる。
【0096】
図16Bに示すように、支持部568は、斜め上方に向けて開口するガイド部572を有し、端子ユニット550の本体552を挿通する。ガイド部572は、その軸線L2に沿って本体552を摺動可能に支持する。ガイド部572は、軸線L2に対して直角な底面を有する。支持部568は、また、その側面に沿って斜め方向に延びるガイド孔574を有する。ガイド孔574は、支持部568の先端付近から後方に向けて軸線L2を中心とした所定角度範囲に延在している。
【0097】
一方、本体552の後端近傍に係合ピン576が突設されている。係合ピン576は、本体552の半径方向外向きに突出し、ガイド孔574と嵌合している。図示のように、係合ピン576の外径はガイド孔574の幅とほぼ等しい。ガイド部572の底面と本体552との間には、端子ユニット550を突出方向(軸線L2に沿って上方)に付勢するスプリング578(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0098】
このような構成により、端子ユニット550は、支持部568から突出する方向に弾性的に支持される。その突出量は、係合ピン576がガイド孔574の上端に係止されることで規制される。ロボット100の充電端子510が接続する際、端子ユニット550は、軸線L2に沿って斜め下方に押し下げられる。このとき、
図16Cに示すように、係合ピン576がガイド孔574に沿ってガイドされることで、本体552ひいては端子ユニット550が軸線L2の周りに回転する。このため、充電端子510が給電端子520に当接し始めてから、両者の接続が完了するまでに各ピン端子521が接続面511に対して摺動する。それにより、ピン端子521の先端面に付着した酸化被膜や汚れを削ぎ落とし、両端子の通電状態を良好に保つことができる。すなわち、この端子ユニット550の回動機構は、端子接触面を良好に保つセルフクリーニング機構として機能する。
【0099】
図17は、ロボット100の進入動作を表す図である。
図17A~
図17Cは、その動作過程を示す。
バッテリー118への充電を行うタイミングになると、ロボット100は、ステーション500へ向けて移動する。このとき、カメラや形状測定センサ等の情報に基づいて障害物を避けながらステーション500へ向かう。ロボット100は、ステーション500に接近すると(
図17A)、その向きを反転してバックし、充電スペース502に進入する(
図17B)。
【0100】
このとき、ロボット100の進行方向がステーション500に設定された基準進入ラインLに対して多少傾いていたとしても、給電端子520と充電端子510との接続が促される。既に説明したように、ベース504の上面が、進入してくる後輪103に対して基準進入ラインL側への重力成分をもたせる三次元曲面形状の傾斜面を含む(
図13参照)。このため、ロボット100が適度な速度で進入すれば、後輪103の転動を継続させつつ車輪受522(目標位置P1)へ自然に導くことができる。給電端子520は、後輪103が目標位置P1に到達した状態で充電端子510に接続される(
図17C)。
【0101】
図18および
図19は、車輪誘導メカニズムを例示する模式図である。
図18A~
図18Cは、車輪誘導過程を平面視にて示す。
図19A~
図19Cは、車輪誘導過程において後輪103が位置する箇所の鉛直断面を示し、それぞれ
図18A~
図18Cに対応する。同図においては説明の便宜上、ロボット100に関して前輪102と後輪103との位置関係のみを示し、ステーション500に関しては充電スペース502(ロボット100の
進入路)のみを示している。
【0102】
ここでは、ロボット100の進入方向と基準進入ラインLとがずれる状態、つまり後輪103が基準進入ラインLに対して傾いた角度で充電スペース502へ進入してきた場合を仮定する。この場合、後輪103は、ベース504の傾斜に起因する重力成分(高いところから低いところへ向かう力)と前輪102による推進力との合力を受けてキャスター特有の動きをし、その転動方向を滑らかに変化させる。
【0103】
具体的には、後輪103は、奥方へ進行しつつ低位側である基準進入ラインLへ向かうように自然に転動する(
図18A,
図19A)。ベース504の奥方に向かうほど基準進入ラインLの左右の勾配が大きくなるため、その転動は基準進入ラインLの近傍に収束する(
図18B,
図19B)。このようにして、後輪103は、最終的に基準進入ラインLの奥方に設けられた車輪受522(目標位置P1)に到達する(
図18C,
図19C)。
【0104】
図20は、ステーション500からロボット100が退出するときの動作を表す図である。
図20Aは充電完了時の状態を示し、
図20Bは端子解除動作を示す。
充電が完了してロボット100をステーション500から退出させる際、充電端子510と給電端子520との接続を解除する必要がある。しかし、両端子がマグネット558の吸引力により接続されているため(
図16A参照)、
図20Aに示す状態からロボット100をそのまま前進させてもその接続解除が容易でない場合が想定される。
【0105】
そこで、左右の前輪102が個別に進退駆動できることを利用して端子接合部を捻り、その接続を解除する。すなわち、
図20Aに示す状態から左輪102aおよび右輪102bの一方を退避側(車輪収容側)に駆動してボディ104の片側を落とすことで、充電端子510と給電端子520との接合面にせん断力を与え、両端子を引き離すことができる。両端子の接続が解除された後、前輪102を進出状態に戻して前進させることで、ロボット100をステーション500から退出させることができる。このような退避動作は、あたかもロボット100がお尻をふって巣から出てくる様子を演出し、生物的な挙動と愛らしさを同時に表現できる。
【0106】
以上、実施形態に基づいてロボット100、ステーション500およびこれらを含む充電システム10について説明した。ステーション500によれば、ロボット100の進入角度がずれていたとしても、後輪103の転動に伴う慣性と重力(自重)を利用することで、後輪103を目標位置P1に自然に誘導できる。すなわち、ベース504の上面が、進入してくる後輪103に対し目標位置P1へ向かう重力成分をもたせる傾斜面を含むため、後輪103の転動方向ひいてはロボット100の進行方向が自然に修正される。車輪の誘導をベース504そのものの形状に担わせるものであり、簡易に実現できる。
【0107】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0108】
上記実施形態では、
図16Aに示したように、充電端子510と給電端子520とをマグネット558(永久磁石)にて固定する構成を例示した。変形例においては、永久磁石に代えて電磁石を採用してもよい。充電中は電磁石の通電を維持し、ロボット100が充電ステーション500から退出する前に通電を停止することにより、両端子間の離脱を容易にできる。上記実施形態のように、ボディ104を捻る動作をしなくとも両端子の接続を解除できる。
【0109】
上記実施形態では、
図20に示したように、ロボット100を斜めに傾けることで充電端子510と給電端子520との接合面にせん断力を与えることで、両端子を引き離すことを例示した。変形例においては、端子ユニット550を充電端子510と給電端子520との接合面にせん断力を与えるように動かすことで、両端子を切り離してもよい。
図15の端子ユニット550は、支持部材564に取り付けられ、回動軸566の周りに回動可能に形成されている。変形例においては、回動軸566に直交する方向に延びる回動軸(例えば支持部材564の前後方向に延びる回動軸)を追加して、両端子を離脱させるときに、支持部材564をその回動軸周りに回動させる。これにより、ロボット100が斜めに姿勢を変化させなくても、充電端子510と給電端子520との接合面にせん断力を与えることができる。
【0110】
上記実施形態では、
図3に示したように、左輪102aと右輪102bのそれぞれに対して回動軸378およびアクチュエータ379を設け、各輪の進退駆動を個別に制御できるようにした。変形例においては、左右輪に共用の回動軸およびアクチュエータを設け、一体に進退駆動してもよい。この場合、ロボット100のボディ104を捻るのは困難となるが、ボディ104を上下に振ることはできるため、両端子間が永久磁石で固定されていても、それを解除することは可能である。ただし、上記実施形態のようにボディ104を捻る動作のほうが、両端子の接続面にせん断力を効果的に与えやすい点で好ましい。
【0111】
上記実施形態では、給電端子のセルフクリーニング機構として、充電端子からの押圧力を利用して給電端子を軸線周りに回転させ、充電端子に対して回転摺動させる構成を例示した。変形例においては、充電端子の押圧力を利用して給電端子を直線的に摺動させる構成としてもよい。例えば、給電端子の先端をテーパ面とし、充電端子の軸線方向への変位に伴って給電端子がその軸線と直角方向の力を受けるように構成してもよい。
【0112】
上記実施形態では、
図9に示したように、充電ステーション500に背面パネル508として背もたれ態様の部材を設け、誘電中におけるロボット100の休息を演出した。変形例においては、背面パネルとして背景を演出する部材を配置してもよい。例えば、植物等を模擬することにより、巣をイメージさせてもよい。2体のロボット100が一つの巣に戻ってリラックスする様子を演出してもよい。それにより「ロボットの充電」というユーザの観念を薄め、ロボット100の生命感を高めることができる。また、季節等に応じて複数種のパネルを交換可能とし、適度にイメージを変化させてもよい。固定部材509を共用の部材として、様々な形態の背面パネルを取り付けることができる。
【0113】
上記実施形態では、基準値提供部524によるキャリブレーションの対象をサーモセンサとした。変形例においては、例えば測距センサ、形状測定センサ(深度センサ)など、内部センサ128に含まれるその他のセンサとしてもよい。基準値提供部524は、センサの測定対象の基準値を出力する。
【0114】
上記実施形態では、給電端子520を構成するピン端子521の先端を球面状(半球状)としたが、平坦状としてもよい。給電端子520の形状に合わせて充電端子510側の接続面(当接面)も平坦にするなど相補形状とするとよい。
【0115】
上記実施形態では、
図14に示したように、端子ユニット550の構成について、先端部中央にマグネット558を配置し、その周囲に複数のピン端子521を配置する態様を例示した。変形例においては逆に、先端部中央に給電端子(一つの給電端子又は複数に分割したピン端子)を配置し、その周囲又は両サイドにマグネットを配置してもよい。なお、上記実施形態の配置によれば、端子ユニットが正面視でボタン態様に見えるなど、デザイン的要素において演出に貢献できる可能性がある。
【0116】
上記実施形態では、ロボット100側の充電端子510の端面を凹形状とし、充電ステーション500側の給電端子520の端面を凸形状とする態様を例示した。変形例においては逆に、充電端子の端面を凸形状とする一方、給電端子の端面を凹形状とし、両者を概ね相補形状としてもよい。ただし、凸面よりも凹面のほうが、通常の使用態様において汚れや傷が付き難いため、環境変化が大きいロボット側の充電端子を凹面状(凹球面状を含む)とするのが好ましい。
【0117】
上記実施形態では、ロボット100が立ったまま(車輪を進出させたまま)充電をする例を示した。変形例においては、ロボットがしゃがんだ状態(車輪を収納した状態)で充電を行うようにしてもよい。それにより、ロボットが寝ている等の振る舞いを表現し易くなり、演出的効果が得られる。一方、急速充電によりロボットが発熱し易いことを考慮すると、車輪を出すことでボディ104との間に隙間を形成し、ボディ104の内外の通気を確保するのも好ましい。
【0118】
上記実施形態では、ベース504に乗り上げる車輪(後輪103)を一輪とする例を示した。変形例においては二輪としてもよい。具体的には、ロボットの車輪を四輪とし、その二輪をキャスターからなる従動輪としてもよい。また、上記実施形態では、ベース504に乗り上げる車輪をロボットの後輪としたが、前輪としてもよい。その場合、後輪を駆動輪、前輪を従動輪とする。
【0119】
上記実施形態では、ベース504に乗り上げる車輪(後輪103)をキャスターとする例を示した。キャスターは、車軸が主軸(旋回軸)の軸線上にはなく、オフセットされている(つまりトレールを有する)。このトレールにより、進行方向に車輪の転動を速やかに追従させ易い。このため、車輪をベース504の三次元曲面形状に沿って重力成分方向に誘導し易い。言い換えれば、その三次元曲面形状は、このようなキャスターの性質を効果的に利用したものと言える。変形例においては、キャスターでない車輪、つまり車軸が主軸(旋回軸)の軸線上に位置する車輪を採用してもよい。キャスターほどの効果が得られなくとも、重力成分を利用した誘導は可能である。
【0120】
上記実施形態では、基準進入ラインを目標位置とその入口側正面(真正面)の特定位置とを結ぶ直線状とした。変形例においては、目標位置からみて斜め前方の入口側特定位置と目標位置とを結ぶ直線状に設定してもよい。特に上記実施形態のように充電ステーションに対して複数のロボットを同時に進入可能とする場合、各充電スペースの入口側特定位置を離隔させることで、ロボット間の干渉を防止できる。また、ベースを比較的大きく構成できる場合、基準進入ラインに曲線部分を含めてもよい。すなわち、「基準進入ライン」は、必ずしも直線であることを要しない。なお、ベースにおける基準進入ラインの左右には、進入してくる車輪に対して基準進入ライン側への重力成分をもたせる三次元曲面形状の傾斜面を含めるものとする。
【0121】
上記実施形態では、充電ステーションのベースに対してロボットの後輪のみが乗り上げる構成を例示した。変形例においては、後輪のみならず前輪も乗り上げる構成としてもよい。ロボットが前輪からベースに乗り上げる場合も同様である。その場合、ベース入口側の平坦部を大きくする。特にベースそのものが軽量で不安定である場合、ロボットの全体重を乗せることにより安定化させることができる。なお、上記実施形態ではユニット本体512が十分な重量を有するため、特段その必要はない。
【0122】
上記実施形態では述べなかったが、充電ステーションにおいて、充電中に上昇する温度を計測(監視)してもよい。充電ステーションは、充電状態を管理する充電制御部を備える。充電制御部は、計測された温度が予め設定した上限温度を超えたときに給電を抑制するなどの充電制御を行ってもよい。
【0123】
上記実施形態では述べなかったが、バッテリー118への充電を行うタイミングは、電池残量が設定値以下となったタイミングとしてもよい。あるいは、例えば45分おきとするなど、電池残量にかかわらず時間(スケジュール)でタイミングを設定してもよい。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪で走行するロボットの充電を行うための充電ステーションであって、
前記車輪が乗り上げる上面を有するベースと、
ロボットの充電端子に接続する給電端子と、を備え、
前記ベースの上面は、
奥側領域に目標位置が設定される一方、入口側の特定位置と前記目標位置とをつなぐ基準進入ラインが設定され、
進入してくる車輪に対して前記基準進入ライン側への重力成分をもたせる三次元曲面形状の傾斜面を含み、
前記給電端子は、充電ステーションに対して内向きとなるように支持されるとともに、前記車輪が前記目標位置に到達した状態で前記充電端子に接続されることを特徴とする充電ステーション。
【請求項2】
前記ベースの上面は、前記基準進入ラインの両サイドに前記基準進入ラインに向けて低
位となるよう傾斜する三次元曲面形状を含むことを特徴とする請求項1に記載の充電ステ
ーション。
【請求項3】
前記基準進入ラインは、前記特定位置から前記目標位置に向けて上り傾斜と下り傾斜と
を連続的に有し、
前記上り傾斜のほうが前記下り傾斜よりも勾配が緩やかであることを特徴とする請求項
2に記載の充電ステーション。
【請求項4】
前記ベースの上面は、前記上り傾斜の奥行範囲において、前記両サイドの左右の勾配が
奥行方向に向けて大きくなる形状を含むことを特徴とする請求項3に記載の充電ステーシ
ョン。
【請求項5】
前記ベースの奥側領域に、前記目標位置を含む車輪受が設けられ、
前記車輪受は、前記車輪を受け入れた状態で前記充電端子と前記給電端子との間に接触
圧が作用するよう位置決めされていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の
充電ステーション。
【請求項6】
前記給電端子は、前記充電端子に合わせて変位可能となるよう前記ベースに支持されて
いることを特徴とする請求項5に記載の充電ステーション。
【請求項7】
前記給電端子と前記充電端子とが、マグネットにより着脱可能に接続されることを特徴
とする請求項6に記載の充電ステーション。
【請求項8】
前記給電端子を相対変位可能に支持する端子ユニットを備え、
前記端子ユニットは、前記充電端子が前記給電端子に接続するときに受ける付勢力によ
り、前記給電端子が前記充電端子に対して摺動することを許容することを特徴とする請求
項1~7のいずれかに記載の充電ステーション。
【請求項9】
前記端子ユニットは、
前記ベースにおける入口側へ向けて延びる本体と、
前記本体の軸線周りに回転可能に支持される一方、その軸線の周囲に前記給電端子を支
持する端子支持部と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の充電ステーション。
【請求項10】
前記給電端子が複数の端子を含み、
各端子が前記軸線の周囲に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の充電ステ
ーション。
【請求項11】
前記ベースの上面は、入口側に向けて下り勾配となり、かつ扇状に広がる領域を有する
ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の充電ステーション。