(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059724
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】抗IL22抗体、抗体断片およびそれらの免疫コンジュゲートならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240423BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240423BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240423BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240423BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240423BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240423BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20240423BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20240423BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P37/02
A61K39/395 D
A61P1/04
A61P17/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61K47/68
A61K47/61
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024021786
(22)【出願日】2024-02-16
(62)【分割の表示】P 2021518032の分割
【原出願日】2019-06-04
(31)【優先権主張番号】62/680,698
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/752,567
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520478172
【氏名又は名称】バイオアトラ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ショート ジェイ エム
(72)【発明者】
【氏名】フレイ ガーハード
(72)【発明者】
【氏名】チャング フウェイ ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ボイル ウィリアム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自己免疫疾患を治療するための医薬組成物および方法を提供する。
【解決手段】ヒトIL-22および哺乳動物IL-22の両方に結合する抗IL-22抗体または抗体断片および、改変された抗IL-22抗体および抗体断片である。抗体または抗体断片を含む医薬組成物およびキットも提供される。また、種々のIL-22媒介症状および疾患の治療のための方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SASSSVSX1MH(配列番号1)から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、X2TX3KLX4S(配列番号2)から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、およびQQWSSNPYIT(配列番号3)のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、ならびに
GYIFX5SYWIH(配列番号4)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、RIYPGTGX6TYYNX7KFKG(配列番号5)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、およびSYX8X9SVX10Y(配列番号6)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む重鎖可変領域を含み、
X1はYまたはKであり、X2はEまたはKであり、X3はSまたはRであり、X4はAまたはLであり、X5はTまたはRであり、X6はNまたはRであり、X7はEまたはRであり、X8はDまたはMであり、X9はSまたはYであり、X10はAまたはGである、
抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項2】
軽鎖可変領域が配列番号7~12から選択されるアミノ酸配列を有し、重鎖可変領域が配列番号13~18から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項3】
抗体または抗体断片が以下から選択される、請求項2に記載の抗IL-22抗体または抗体断片:
配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号11のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;ならびに
配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片。
【請求項4】
抗体または抗体断片がヒトIL-22および哺乳動物非ヒトIL-22に結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項5】
哺乳動物IL-22がマウスIL-22である、請求項4に記載の抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項6】
抗体または抗体断片が、互いの±20%、±15%、±10%または±5%以内の親和性でヒトIL-22および哺乳動物IL-22に結合する、請求項4~5のいずれか一項に記載の抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項7】
抗体または抗体断片がStat3のリン酸化を阻害することができる、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項8】
抗体または抗体断片がIL-22誘導性サイトカイン産生を阻害することができる、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項9】
抗体または抗体断片が、少なくとも1つの動物またはヒトにおける免疫応答を阻害することが可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項10】
少なくとも1つの動物が哺乳動物を含む、請求項9に記載の抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項11】
哺乳動物がマウスである、請求項9~10のいずれか一項に記載の抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項12】
抗IL-22抗体または抗体断片がヒト化される、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項13】
抗IL-22抗体または抗体断片が改変されたFc領域を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1つの抗IL-22抗体または抗体断片、およびオリゴ糖、非タンパク質性部分、治療薬、予防薬および診断薬から選択される少なくとも1つの部分を含む改変された抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項15】
少なくとも1つの部分がオリゴ糖である、請求項14に記載の改変された抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項16】
少なくとも1つの部分が少なくとも1つの非タンパク質性部分である、請求項14に記載の改変された抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項17】
少なくとも1つの非タンパク質性部分が、水溶性ポリマーから選択される、請求項15に記載の改変された抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項18】
少なくとも1つの部分が治療薬、予防薬および診断薬から選択される、請求項14に記載の改変された抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項19】
治療薬、予防薬または診断薬が抗IL-22抗体または抗体断片に結合され、化学療法薬、放射性原子、検出可能な標識、プロドラッグ活性化酵素、細胞増殖抑制薬および細胞毒性剤から選択される、請求項18に記載の改変された抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項20】
治療薬、予防薬および診断薬から選択される2つの薬剤を含む、請求項18~19のいずれか一項に記載の改変された抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項21】
抗体または抗体断片および治療薬、予防薬または診断薬がリンカー分子に共有結合されている、請求項18~20のいずれか一項に記載の改変された抗IL-22抗体または抗体断片。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片、または請求項14~21のいずれか一項に記載の改変された抗IL-22抗体または抗体断片;および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項23】
さらに少なくとも1つの追加の賦形剤を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
少なくとも1つの追加治療薬をさらに含む、請求項22~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
免疫関連疾患または癌を治療する方法であって、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片、請求項14~21のいずれか一項に記載の改変された抗IL-22抗体または抗体断片、または請求項22~24のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法。
【請求項26】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗体断片、請求項14~21のいずれか一項に記載の改変された抗IL-22抗体もしくは抗体断片、または請求項22~24のいずれか一項に記載の医薬組成物;および抗体もしくは抗体断片、改変された抗体もしくは抗体断片、または医薬組成物を診断もしくは治療のために使用するための使用説明書を含む診断または治療のためのキット。
【請求項27】
配列番号7~12のアミノ酸配列の1つと90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号13~18のアミノ酸配列のうちの1つと90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
を含む抗体または抗体断片。
【請求項28】
前記軽鎖可変領域が、配列番号7-12から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域の相補性決定領域と同一の3つの相補性決定領域を有する、請求項27に記載の抗体または抗体断片。
【請求項29】
前記重鎖可変領域が、配列番号13~18から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域の相補性決定領域と同一である3つの相補性決定領域を有する、請求項27~28のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片。
【請求項30】
軽鎖および重鎖が、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項27~29のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片。
【請求項31】
薬学的に許容可能な防腐剤をさらに含む、請求項22~24に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗IL22抗体、抗体断片、バリアントならびにそのような抗体および抗体断片の免疫コンジュゲートならびに診断および治療方法における抗体、抗体断片、バリアントおよび免疫コンジュゲートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-10関連T細胞由来誘導因子(IL-TIF)としても知られるインターロイキン-22(IL-22)は糖タンパク質である。IL-22は主に胸腺、脳、活性化T細胞と肥満細胞、レクチン刺激脾臓細胞、インターロイキン-2/インターロイキン-12刺激NK細胞、及び腸、肝臓、胃、腎臓、肺、心臓、胸腺、及び脾臓を含むリポ多糖類(LPS)刺激時の多くの臓器と組織に発現する。ヒトIL-22のmRNAは末梢T細胞と抗CD3抗体またはConAによって活性化されたT細胞に高発現しているため、T細胞はヒトIL-22の主な供給源である。活性化T細胞はほとんどがCD4+細胞である。
【0003】
IL-22前駆体は179アミノ酸残基を有し、成熟IL-22タンパク質は146アミノ酸残基を有する。Dumoutierらは、マウスおよびヒトのIL-22遺伝子をクローニングし(Dumoutier, et al., J Immunol., vol. 164, pp. 1814-1819, 2000)、IL-22に関連する2つの特許、米国特許第6,359,117 および6,274,710号を取得した。IL-22は、IL-22R1受容体およびIL-10R2受容体に結合することにより、その生物学的機能を達成する。IL-22R1はIL-22に特異的な受容体であり、皮膚、腎臓、消化器系(膵臓、小腸、肝臓、大腸及び結腸)、呼吸器系(肺及び気管支)に発現している。
【0004】
IL-22は粘膜免疫において重要な役割を果たし、細菌性病原体の攻撃や退縮に対する初期宿主防御を媒介する。Zheng et al., Nat. Med., vol.14, pp. 282-289, 2008を参照。IL-22は、上皮細胞からの抗菌ペプチドおよび炎症誘発性サイトカインの産生を促進する。また、腸管内の結腸上皮細胞の増殖と遊走を刺激する。Kumar et al., J. Cancer, vol.4, pp.57-65, 2013を参照のこと。細菌感染時に、IL-22ノックアウトマウスは消化管上皮再生障害、高い細菌量、および死亡率の増加を示した(Kumarら、上掲)。同様に、IL-22ノックアウトマウスにインフルエンザウイルスを感染させると、重度の体重減少と気管および気管支上皮細胞の再生障害が生じた。このように、IL-22は、炎症反応における上皮再生における抗炎症保護的役割と同様に、微生物感染の抑制において炎症誘発的役割を果たす。
【0005】
IL-22は炎症反応における役割に加えて、癌とも関連づけられている(Harrison, 「IL-22: linking inflammation and cancer」, Nature Reviews Drug Discovery, vol. 12, pp. 504-505, 2013)。具体的には、LimおよびSavan(「The role of the IL-22/IL-22R1 axis in cancer」 Cytokine Growth Factor Rev., vol. 25, pp. 257-271, 2014)は、IL-22シグナル伝達経路が生存促進シグナル伝達、細胞遊走、異形成および血管新生を含む多面的作用を介して粘膜免疫防御および組織再生を調整することを開示している。これらの機能は、侵攻性の癌によってハイジャックされて腫瘍増殖および転移を増強することができる。このように、IL-22の癌における役割は複雑で状況特異的であり、腸、皮膚、肺臓、肝臓などの多くの一般的な癌を有する患者において、IL-22の発現およびシグナル伝達の調節不全によって証明されている。
【0006】
Lanfranca et al. (「IL-22 promotes pancreatic cancer tumorigenesis through induction of stemness and epithelial to mesenchymal transition」 J Immunol., vol. 198, 1 Supplement, 66.22, 2017)は、IL-22が膵臓癌の開始、進行および確立に不可欠であることを開示している。Fukui et al. (British Journal of Cancer, vol. 111, pp. 763-771, 2014) は、癌関連線維芽細胞が産生するIL-22がSTAT3およびERKシグナル伝達を介して胃癌細胞の浸潤を促進することを見出している。Kobold et al. (J Thoracic Oncology, vol. 8, pp. 1032-1042, 2013)は、IL-22が小細胞および大細胞肺癌において優先的に発現されることを発見した。化学療法難治性肺癌細胞株におけるIL-22-R1発現およびシグナル伝達の増強は、IL-22の腫瘍形成促進機能を示しており、より侵攻性の癌表現型に寄与している可能性がある。
【0007】
IL-22はヒト膵疾患の治療に報告されている。(例えば、米国特許第6,551,799号参照)。血清中の中性脂肪を減少させ、肥満を治療する際のIL-22の使用も報告されている。例えば、WO2006/073508およびCN1679918を参照のこと。抗IL-22抗体は、炎症関連疾患の治療のために開発されている。米国特許第7,901,684号は、ヒトIL-22に特異的に結合するヒト抗体およびその抗原結合断片を開示している。抗体は、それらのVHおよびVLドメインの特異的アミノ酸配列によって定義される。抗体は、IL-22活性のアンタゴニストとして作用し、それにより、炎症性障害、自己免疫疾患、アレルギー、敗血症性ショック、感染性障害、移植拒絶、癌、および他の免疫系障害を治療するための免疫反応を調節すると言われている。
【0008】
米国特許第7,811,567号は、ヒトIL-22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を投与することによってIL-22関連障害を治療する手法を開示している。この抗体は、配列番号602、603、および604の特異的アミノ酸配列を有する3つの相補性決定領域(CDR)を含むVHドメイン、ならびに配列番号605、606、および607の特異的アミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVLドメインを有する。
【0009】
米国特許第7,737,259号は、炎症性障害および自己免疫障害の診断および治療のための組成物を開示している。組成物は、ヒトIL-22に特異的に結合する抗体を含む。抗体は、(a) 3F11.3(ATCC Accession No. PTA-7312)、ハイブリドーマ11H4.4(ATCC Accession No. PTA-7315)、およびハイブリドーマ8E11.9(ATCC Accession No. PTA-7319)から選択されたハイブリドーマによって生成された抗体、(b) (a)の抗体の親和性成熟形態、(c) (a)または(b)の抗体の抗原結合断片、または(d) (a)、(b)または(c)の抗体のヒト化形態である。
【0010】
WO 2005/000897は、IL-22に特異的に結合する単離された抗体およびその抗原結合断片を開示している。抗体または断片は、IL-22レセプター(IL-22R)およびインターロイキン-10レセプター2(IL-10R2)を含む複合体へのIL-22の結合を減少させることができる。抗体またはその抗原結合断片はまた、IL-22とIL-22受容体との間の直接的な相互作用を減少させ得る。
【0011】
これらの抗体は、ヒトにおける疾患または障害の治療のためのヒトIL-22への結合のために開発された。しかし、マウスIL-22のような非ヒト哺乳類IL-22へのそれらの結合は、測定または研究されなかった。ヒトIL-22に結合するためにヒトで使用されることを意図した抗体は、その安全性と有効性を評価するために、まず動物で試験されなければならない。動物試験がヒトにおける安全性と有効性を予測できることを保証するために、抗体は理想的には、ヒトIL-22と少なくとも被験動物のIL-22の両方に対して同様の高い結合親和性を有するべきである。
【0012】
本発明は、高結合親和性でヒトおよびマウスIL-22の両方に結合することができ、かつヒトおよびマウスの両方の生物学的系において同じ下流の生物学的効果を引き起こすために使用され得る抗IL-22抗体およびそれらの断片を提供する。
【0013】
(開示の概要)
一態様において、本発明は、
SASSSVSX1MH(配列番号1)から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、X2TX3KLX4S(配列番号2)から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、およびQQWSSNPYIT(配列番号3)のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、ならびに
GYIFX5SYWIH(配列番号4)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、RIYPGTGX6TYYNX7KFKG(配列番号5)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、およびSYX8X9SVX10Y(配列番号6)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む重鎖可変領域を含み、
X1はYまたはKであり、X2はEまたはKであり、X3はSまたはRであり、X4はAまたはLであり、X5はTまたはRであり、X6はNまたはRであり、X7はEまたはRであり、X8はDまたはMであり、X9はSまたはYであり、X10はAまたはGである、
抗IL-22抗体又は抗体断片を提供する。
【0014】
前記の実施態様において、軽鎖可変領域が配列番号7~12から選択されるアミノ酸配列を有してもよく、重鎖可変領域が配列番号13~18から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0015】
前記の実施態様のいずれか1つにおいて、抗体または抗体断片が以下から選択され得る:
配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号11のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;ならびに
配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片。
【0016】
前記の実施態様のいずれか1つにおいて、抗体または抗体断片がヒトIL-22および哺乳動物非ヒトIL-22に結合することができる。
【0017】
前記の実施態様において、哺乳動物IL-22がマウスIL-22であってもよい。
【0018】
前2つの実施態様のいずれか1つにおいて、抗体または抗体断片が、互いの±20%、±15%、±10%または±5%以内の親和性でヒトIL-22および哺乳動物IL-22に結合してもよい。
【0019】
前記の実施態様のいずれか1つにおいて、抗体または抗体断片がStat3のリン酸化を阻害することができる。
【0020】
前記の実施態様のいずれか1つにおいて、抗体または抗体断片がIL-22誘導性サイトカイン産生を阻害することができる。
【0021】
前記の実施態様のいずれか1つにおいて、抗体または抗体断片が、少なくとも1つの動物またはヒトにおける免疫応答を阻害することが可能である。
【0022】
ひとつの前の実施態様において、少なくとも1つの動物が哺乳動物を含む。
【0023】
前の2つの実施態様のいずれか1つにおいて、哺乳動物がマウスであり得る。
【0024】
前記の実施態様のいずれか1つにおいて、抗IL-22抗体または抗体断片がヒト化され得る。
【0025】
前記の実施態様のいずれか1つにおいて、抗IL-22抗体または抗体断片が改変されたFc領域を含み得る。
【0026】
別の態様において、本発明は、前記実施態様のいずれか1つの抗IL-22抗体または抗体断片、およびオリゴ糖、非タンパク質性部分、治療薬、予防薬および診断薬から選択される少なくとも1つの部分を含む改変された抗IL-22抗体または抗体断片を提供する。
【0027】
ひとつの前の実施態様において、少なくとも1つの部分がオリゴ糖、少なくとも1つの非タンパク質性部分、治療薬、予防薬および診断薬から選択され得る。
【0028】
ひとつの前の実施態様において、少なくとも1つの非タンパク質性部分が、水溶性ポリマーから選択され得る。
【0029】
前の2つの実施態様のいずれか1つにおいて、改変された抗IL-22抗体または抗体断片が、治療薬、予防薬および診断薬から選択される2つの薬剤を含み得る。
【0030】
前の3つの実施態様のいずれか1つにおいて、抗体または抗体断片および治療薬、予防薬または診断薬がリンカー分子に共有結合され得る。
【0031】
別の態様において、本発明は、前記の実施態様のいずれか1つの抗体または抗体断片、または改変された抗IL-22抗体または抗体断片および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。
【0032】
前の実施態様において、医薬組成物が、さらに少なくとも1つの追加の賦形剤を含み得る。
【0033】
前の2つの実施態様のいずれか1つにおいて、医薬組成物が、少なくとも1つの追加治療薬、および/または薬学的に許容可能な防腐剤をさらに含み得る。
【0034】
別の態様において、本発明は、免疫関連疾患または癌を治療する方法であって、前記の実施態様のいずれか1つの抗体または抗体断片、改変された抗IL-22抗体または抗体断片、または医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0035】
別の態様において、本発明は、前記の実施態様のいずれか1つの抗体もしくは抗体断片、改変された抗IL-22抗体もしくは抗体断片、または医薬組成物;および抗体もしくは抗体断片、改変された抗体もしくは抗体断片、または医薬組成物を診断もしくは治療のために使用するための使用説明書を含む診断または治療のためのキットを提供する。
【0036】
別の態様において、本発明は、配列番号7~12のアミノ酸配列の1つと90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域;および 配列番号13~18のアミノ酸配列のうちの1つと90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片を提供する。
【0037】
前の実施態様において、前記軽鎖可変領域は、配列番号7-12から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域の相補性決定領域と同一の3つの相補性決定領域を有することができる。
【0038】
前の2つの実施態様のいずれか1つにおいて、重鎖可変領域が、配列番号13~18から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域の相補性決定領域と同一である3つの相補性決定領域を有することができる。
【0039】
前の3つの実施態様のいずれか1つにおいて、軽鎖および重鎖が、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本発明の抗体を進化させるための親抗体として使用されたヒトIL-22(hum10)に対するヒト化モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の構造を示す。CDRは、軽鎖及び重鎖の開始位置および終了位置を標識した図において、より厚い部分として示されている。本発明の抗体を提供するために親抗体になされたCDR中の変異およびそれらの位置のいくつかは、CDR内で表示される。
【
図2】
図2A~2Bは、本発明のhum10および抗体の軽鎖の配列アラインメントを示す。
【
図3】
図3A~3Bは、本発明のhum10および抗体の重鎖の配列アラインメントを示す。
【
図4】
図4は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)ゲル上のある種の精製抗体を、非還元条件下(左側)では単一バンドとして、還元条件下(右側)では重バンドと軽鎖バンドの2本をそれぞれ示しており、抗体の純度が実証されている。
【
図5】
図5A~5Cは、精製された抗体(CPS02およびCPS09)のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析によって得られた単一ピークを、対照標準ヒトIgG抗体のSEC分析と比較して示す。
【
図6】
図6は、ヒトおよびマウスIL-22、ならびにその他関連抗原に対する、本発明の抗体の特異性を示す。
【
図7A】
図7Aは、本発明の抗体を用いて、HepG2細胞におけるヒトIL-22の抑制によって引き起こされるStat3タンパク質の低下したレベルリン酸化を示す。
【
図7B】
図7Bは、本発明の抗体を用いて、HepG2細胞におけるマウスIL-22の抑制によって引き起こされるStat3タンパク質の低下したレベルリン酸化を示す。
【
図8】
図8は、本発明の抗体によるHT29細胞中のCXCL1タンパク質発現の抑制を示す。
【
図9】
図9A~9Bは、様々な注射用量後の経時的なマウスにおける抗体CPS02の血漿中濃度を示す。
【
図10】
図10A~10Bは、様々な注射用量後の経時的なマウスにおける抗体CPS09の血漿中濃度を示す。
【
図11】
図11は、本発明の抗体によるマウスにおけるIL-22誘導急性期反応の阻害を示す。
【
図12】
図12は、イミキモドによって誘導されたマウス乾癬モデルを治療するための研究デザインを示す。
【
図13】
図13は、
図12に示される研究デザインに従う投与期間中の投与マウスの体重の変化を示す。
【
図14】
図14は、
図12に示される研究デザインに従う投与期間中の投与マウスの耳の厚さの変化を示す。
【
図15】
図15は、
図12に示される研究デザインに従う投与期間中の投与マウスの皮膚紅斑スコアの変化を示す。
【
図16】
図16は、
図12に示される研究デザインに従う投与期間中の投与マウスの皮膚鱗屑スコアの変化を示す。
【
図17】
図17は、
図12に示される研究デザインに従う投与期間中の投与マウスの皮膚厚スコアの変化を示す。
【
図18】
図18は、
図12に示される研究デザインに従う投与期間中の投与マウスの総皮膚スコア(全体的な皮膚状態)の変化を示す。
【0041】
定義
本明細書において提供される実施例の理解を容易にするため、いくつかの高頻度に使用される用語を本明細書において定義する。
【0042】
計測される量との関連で、本明細書において使用される用語「約」は、計測を行い、計測の目的および使用される計測装置の精度に見合うあるレベルのケアを実行する当業者により予測されるその計測される量の通常の変動を指す。特に示されない限り、「約」は、提供される値の+/-10%の変動を指す。
【0043】
本明細書において使用される用語「親和性」または「結合親和性」は、分子(例えば、抗体)と、その結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総計の強度を指す。特に示されない限り、本明細書において使用される「結合親和性」は、結合ペア(例えば、抗体および抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYについての親和性は、一般に、解離定数(Kd)により表すことができる。親和性は、当分野において公知の一般的方法、例として、本明細書に記載のものにより計測することができる。
【0044】
本明細書において使用される用語「アミノ酸」は、アミノ基(-NH2)およびカルボキシル基(-COOH)を遊離基として、あるいは縮合後にペプチド結合の一部として含有する任意の有機化合物を指す。「20個の天然に存在するアミノ酸」は当分野において理解され、天然タンパク質のブロックを構成する、アラニン(alaまたはA)、アルギニン(argまたはR)、アスパラギン(asnまたはN)、アスパラギン酸(aspまたはD)、システイン(cysまたはC)、グルタミン酸(gluまたはE)、グルタミン(ginまたはQ)、グリシン(glyまたはG)、ヒスチジン(hisまたはH)、イソロイシン(ileまたはI)、ロイシン(leuまたはL)、リジン(lysまたはK)、メチオニン(metまたはM)、フェニルアラニン(pheまたはF)、プロリン(proまたはP)、セリン(serまたはS)、スレオニン(thrまたはT)、トリプトファン(tipまたはW)、チロシン(tyrまたはY)、およびバリン(valまたはV)を指す。
【0045】
本明細書において使用される用語「抗体」は、インタクト免疫グロブリン分子、およびFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、および一本鎖抗体(SCAまたはscFv)断片のような免疫グロブリン分子の断片であって、抗原のエピトープに結合可能なものを指す。由来する抗体の抗原(例えば、ポリペプチド抗原)に選択的に結合するいくらかの能力を保持するこれらの抗体断片は、当分野において周知の方法を使用して、更に下記するように作製することができる。本発明の実施に有用な抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、sIgA、IgDまたはIgEであってもよい。抗体は、分取量の抗原を免疫親和性クロマトグラフィーにより単離するために使用することができる。このような抗体の種々の他の使用は、疾患(例えば、新生物形成)を診断および/または病期分類するため、ならびに疾患、例えば、新生物形成、自己免疫疾患、AIDS、心血管疾患、感染症などを治療するための治療用途のためのものである。キメラヒト様ヒト化または完全ヒト抗体は、ヒト患者への投与に特に有用である。
【0046】
Fab断片は、抗体分子の一価抗原結合断片からなり、酵素パパインによる完全抗体分子の消化により、インタクト軽鎖および重鎖の一部からなる断片を生じさせて産生することができる。
【0047】
抗体分子のFab’断片は、完全抗体分子をペプシンにより処理し、次いで還元してインタクト軽鎖および重鎖の一部からなる分子を生じさせることにより得ることができる。2つのFab’断片は、この様式で処理される抗体分子ごとに得られる。
【0048】
抗体の(Fab’)2断片は、完全抗体分子を酵素ペプシンにより後続の還元なしで処理することにより得ることができる。(Fab’)2断片は、2つのジスルフィド結合により一緒に保持される2つのFab’断片の二量体である。
【0049】
Fv断片は、2つの鎖として発現される軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された断片として定義される。
【0050】
一本鎖抗体(「SCA」またはscFv)は、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含み、適切な可撓性のあるポリペプチドライナーによって連結され、アミノ酸および/またはカルボキシル末端にさらなるアミノ酸配列を含み得る遺伝子操作された一本鎖分子である。例えば、単一鎖抗体は、コードするポリヌクレオチドに連結するためのテザーセグメントを含み得る。機能的な一本鎖抗体は、一般に、特異的標的分子またはエピトープへの結合のために全長抗体の特性を保持するように、軽鎖の可変領域の充分な部分と、重鎖の可変領域の充分な領域と、を含む。
【0051】
本明細書において使用される用語「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖抗体;一価抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv)が挙げられる。由来する抗体の抗原(例えば、ポリペプチド抗原)に選択的に結合するいくらかの能力を保持するこれらの抗体断片は、当分野において周知の方法を使用して作製することができる。
【0052】
本明細書において用語「抗IL-22抗体」、抗IL-22抗体断片および「IL-22に結合する抗体または抗体断片」は交換可能に使用され、抗体または抗体断片がIL-22の標的化における診断、予防および/または治療薬として有用であるように十分な親和性でIL-22タンパク質の少なくとも1つのエピトープに結合し得る抗体または抗体断片を指す。一実施形態において、非関連非IL-22タンパク質への抗IL-22抗体または抗体断片の結合の程度は、ELISAにより計測してIL-22への抗体または抗体断片の結合の約5%未満、または約10%未満、または約20%未満、または約50%未満である。ある実施形態において、IL-22に結合する抗体または抗体断片は、≦1μM、または≦100nM、または≦10nM、または≦1nM、または≦0.1nM、または≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、または10-8M~10-13M、または10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある実施形態において、抗IL-22抗体または抗体断片は、様々な種に由来するIL-22間で保存されるIL-22のエピトープに結合する。
【0053】
本明細書中で使用される「関節炎」という用語は、関節の炎症を意味し、限定されるわけではないが、変形性関節症、痛風、感染関連関節炎、ライター症候群関節炎、およびリウマチ関節炎、乾癬関節炎、エリテマトーデス関連関節炎、脊椎関節炎、および強皮症関連関節炎などの自己免疫疾患に関連する関節炎を含む。「関節炎性炎症」という言葉は、関節炎に関連する炎症を意味する。
【0054】
本明細書中で使用される用語「自己免疫障害」または「自己免疫」は、体自身の組織に対して体液性または細胞媒介性免疫応答が高まる任意の状態を意味する。「IL-22媒介自己免疫障害」は、IL-22活性によって引き起こされる、維持される、または増悪するあらゆる自己免疫障害である。用語「自己免疫性炎症」とは、自己免疫疾患に関連する炎症を意味する。
【0055】
本明細書において使用される用語「結合」は、抗体の可変領域またはFvと、抗原との相互作用を指し、その相互作用は抗原上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存する。例えば、抗体可変領域またはFvは、タンパク質全般ではなく特異的タンパク質構造を認識し、それに結合する。本明細書において使用される「特異的に結合すること(specifically binding)」または「特異的に結合すること(binding specifically)」は、抗体可変領域またはFvが、特定の抗原に、他のタンパク質よりも高頻度で急速に長い持続時間および/または大きな親和性で結合し、または会合することを意味する。例えば、抗体可変領域またはFvは、その抗原に、他の抗原に結合するよりも大きな親和性で、急速に、および/または長い持続時間、特異的に結合する。別の例では、抗体可変領域またはFvは、細胞表面タンパク質(抗原)に、それが関連タンパク質もしくは他の細胞表面タンパク質に、または多反応性天然抗体により(すなわち、ヒトにおいて天然に見出される種々の抗原に結合することが公知の天然存在抗体により)一般に認識される抗原に結合するよりもかなり大きな親和性で結合する。しかしながら、「特異的に結合する」は、必ずしも排他的結合または別の抗原の非検出結合を要求せず、これは、用語「選択的結合」を意味する。一例において、抗原への抗体可変領域またはFv(または他の結合領域)の「特異的結合」は、抗体可変領域またはFvが、100nM以下、例えば、50nM以下、例えば、20nM以下、15nM以下、または10nM以下、または5nM以下、2nM以下、または1nM以下の平衡定数(KD)で抗原に結合することを意味する。
【0056】
本明細書において使用される用語「癌」および「癌性」は、典型的には、無秩序な細胞成長/増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的病態を指し、または説明する。癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられる。このような癌のより特定の例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞腫、白血病および他のリンパ球増殖性疾患、ならびに種々のタイプの頭頸部癌が挙げられる。
【0057】
本明細書において使用される用語「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」は、ある程度の異常細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態において、細胞増殖性障害は、癌である。
【0058】
本明細書において使用される用語「化学療法剤」は、癌の治療において有用な化合物を指す。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、イムプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボクオン、メツレドパ(meturedopa)、およびウレドパ(uredopa);エチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamine)、例として、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロメラミン(trimethylomelamine);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(例として、合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、および9-アミノカンプトテシン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体のKW-2189およびCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムヌスチン(ranimnustine);抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマIIおよびカリケアマイシンオメガII(例えば、Nicolaou et al.,Angew.Chem.Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)参照);CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤;ジネマイシン、例として、ジネマイシンA;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(例として、ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHC1リポソーム注射剤(DOXIL(登録商標)、リポソームドキソルビシンTLC D-99(MYOCET(登録商標))、peg化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、およびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフル(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、および5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えば、メイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミンエンジニアリングナノ粒子配合物(ABRAXANE(商標))、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル(chloranbucil);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、およびカルボプラチン;チューブリン重合の微小管形成を妨害するビンカ、例として、ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))、およびビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMF(登録商標));レチノイド、例えば、レチノイン酸、例として、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナリング経路における遺伝子、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、および上皮成長因子受容体(EGF-R)などの発現を阻害するもの;ワクチン、例えば、THERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU-11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;チピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えば、オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピキサントロン;EGFR阻害剤(以下の定義参照);チロシンキナーゼ阻害剤(以下の定義参照);セリン-トレオニンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ロナファルニブ(SCH6636、SARASAR(商標));ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体;ならびに上記の2つ以上の組合せ、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法の省略形であるCHOP;および5-FUおよびロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を用いる治療レジメンの省略形であるFOLFOXなどが挙げられる。
【0059】
本明細書において使用される用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の資源または種に由来する一方、重鎖および/または軽鎖の残部が異なる資源または種に由来する抗体を指す。
【0060】
本明細書中で使用される用語「長期(chronic)」投与とは、初期治療効果を長期間維持するように、急性モードとは対照的に、連続モードでの薬剤の投与を意味する。「間欠」投与は、中断なしで連続的に行われるのではなく、むしろ本来は周期的である治療である。
【0061】
本明細書中で使用される用語「慢性炎症」とは、炎症の原因が持続し、除去することが困難または不可能である炎症をいう。
【0062】
本明細書において使用される用語「構成的」は、例えば、IL-22活性に適用される場合、リガンドの存在にも他の活性化分子の存在にも依存的でない連続的なシグナリング活性を指す。IL-22活性のいくつかは構成的であり得、または活性は、他の分子(例えば、リガンド)の結合によりさらに活性化され得る。IL-22活性の活性化をもたらす細胞イベントは、当業者の間で周知である。例えば、活性化としては、より高次の受容体複合体へのオリゴマー化、例えば、二量体化、三量体化などを挙げることができる。複合体は、単一種のタンパク質、すなわち、ホモ複合体を含み得る。あるいは、複合体は、少なくとも2つの異なるタンパク質種、すなわち、ヘテロ複合体を含み得る。複合体形成は、例えば、細胞の表面上の受容体の正常または突然変異形態の過剰発現により引き起こされ得る。複合体形成は、受容体中の1つ以上の特異的突然変異によっても引き起こされ得る。
【0063】
本明細書において使用される用語「検出可能に標識する」は、物理的または化学的手段による直接または間接的のいずれかの検出または計測が試料中のIL-22の存在を示す任意の物質を指す。検出可能な標識は、それ自体で検出可能であり得(例えば、放射性同位元素標識または蛍光標識)、または酵素標識の場合、基質化合物または組成物の化学的変化を触媒し、検出可能な生成物をもたらし得る。有用な検出可能標識の代表的な例としては、限定されるものではないが、以下のもの:光吸収、蛍光、反射、光散乱、燐光、または発光特性に基づき直接または間接的に検出可能な分子またはイオン;放射性により検出可能な分子またはイオン;核磁気共鳴または常磁性により検出可能な分子またはイオンが挙げられる。光吸収または蛍光に基づき間接的に検出可能な分子の群には、例えば、非光吸収から光吸収分子への、または非蛍光から蛍光分子への適切な基質の変換を引き起こす種々の酵素が含まれる。
【0064】
本明細書中で使用される用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小抗体断片を指し、それら断片は同じポリペプチド鎖(VH-VL)中の軽鎖可変領域(VL)に連結された重鎖可変領域(VH)を含む。同一鎖上の2つのドメイン間の対合を許容し得ないほど短鎖のリンカーを使用することにより、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと強制的に対合させ、それが2つの抗原結合部位を作出する。ダイアボディは二価または二重特異的であり得る。ダイアボディは、例えば、EP 404,097; WO 1993/001161; Hudson et al. Nat. Med., vol.9, pp.129-134, 2003; およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA vol. 90, pp. 6444-6448 1993においてより完全に記載されている。トリアボディとテトラボディもHudson et al. Nat. Med., vol.9, pp. 129-134, 2003に記載されている。
【0065】
本明細書において使用される用語「診断」は、疾患または障害に対する対象の感受性の測定、対象が疾患または障害を現在罹患しているか否かに関する決定、疾患または障害を罹患している対象の予後診断(例えば、前転移または転移癌性状態、癌の病期、または治療法に対する癌の応答性の同定)、および治療方針(例えば、治療法の効果または効力に関する情報を提供するための対象病態のモニタリング)を指す。一部の実施形態において、本発明の診断方法は、早期癌の検出において特に有用である。
【0066】
本明細書において使用される用語「診断剤」は、直接または間接的に検出することができ、診断目的のために使用される分子を指す。診断剤は、対象または試料に投与することができる。診断剤は、それ自体で提供することができ、またはビヒクル、例えば、条件的に活性な抗体にコンジュゲートさせることができる。
【0067】
本明細書中で使用される抗IL-22抗体または抗体断片の用語「有効量」とは、任意の医学的処置に適用可能な妥当な利益/リスク比率で、疾患または病気を治療するための抗体または抗体断片の充分な量を意味する。しかしながら、本発明の抗体または抗体断片および組成物の総1日使用量は、正当な医学的判断の範囲内で担当医により決定されることが理解される。任意の特定の患者に対する特異的な治療的有効量投与レベルは、治療される障害および障害の重症度;使用される特異的抗体または抗体断片の活性;使用される特異的組成、患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食事;投与時刻、投与経路、および使用される特異的抗体または抗体断片の排出速度;治療期間;使用される特異的抗体に使用される薬物、または使用される特異的抗体と併用してまたは付随して使用される薬物;医学分野において周知の因子などを含む様々な因子に依存するであろう。例えば、所望の治療効果を達成するために要求されるよりも低いレベルにおいて化合物の用量を開始すること、および所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは当分野の技能の範囲内で周知である。
【0068】
本明細書において使用される用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因し、抗体アイソタイプにより変動する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞毒性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化が挙げられる。
【0069】
本明細書において使用される用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から重鎖のカルボキシル末端へと伸長する。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書において特に規定されない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991に記載のとおりEUインデックスとも呼ばれるEU番号付け系に従う。
【0070】
本明細書において使用される用語「フレームワーク領域」または「FR」は、CDR中の残基以外の可変領域残基を指す。可変領域のFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。したがって、CDRおよびFR配列は、一般に、可変領域中の以下の配列:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4に出現する。
【0071】
用語「全長抗体」、「インタクト抗体」、または「完全抗体」は、抗原結合可変領域(VHまたはVL)ならびに軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメインCH1、CH2およびCH3を含む抗体を指す。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、全長抗体は、異なる「クラス」に割り当てることができる。全長抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、それらのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分類することができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニットおよび三次元立体配置は周知である。
【0072】
本明細書において使用される用語「宿主細胞」、「宿主細胞系」、および「宿主細胞培養物」は互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞としては、「形質転換体」および「形質転換細胞」が挙げられ、それらとしては一次形質転換細胞および継代数に関係なくそれに由来する子孫が挙げられる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一でなくてよく、突然変異を含有し得る。元の形質転換細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同一の機能または生物学的活性を有する突然変異体子孫が、本明細書に含まれる。
【0073】
本明細書において使用される用語「ヒト化」抗体は、非ヒトCDRからのアミノ酸残基およびヒトフレームワーク領域からのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変領域の実質的に全てを含み、その領域中ではCDRの全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。本明細書において使用される用語「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において、最も一般に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからのものである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda Md.(1991),vols.1-3におけるようなサブグループである。一実施形態において、VLについてのサブグループは、Kabat et al.、前掲におけるようなサブグループカッパIである。一実施形態において、VHについてのサブグループは、Kabat et al.、前掲におけるようなサブグループIIIである。さらなる詳細に関しては、Jones et al.,Nature321:522-525 (1986); Riechmann et al.,Nature332:323-329 (1988); and Presta,Curr. Op. Struct. Biol.2:593-596 (1992)を参照されたい。さらに下記のレビュー論文およびそれらの参考文献を参照されたい: Vaswani and Hamilton,Ann. Allergy, Asthma&Immunol.1:105-115 (1998); Harris,Biochem. Soc. Transactions23:1035-1038 (1995); Hurle and Gross,Curr. Op. Biotech.5:428-433 (1994)。
【0074】
本明細書中で使用される用語「IL-22」は、特に明記しない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然IL-22を指す。この用語は、「完全長」、プロセシングされていない前駆体IL-22、ならびにヒトまたは動物体におけるプロセシングから生じる任意の形態のIL-22を包含する。この用語はまた、IL-22の天然に存在するバリアント、例えばスプライスバリアントまたはアレリックバリアントを包含する。ヒトIL-22のアミノ酸配列は、当該技術分野において周知であり、GenBankなどの公開データベースから入手可能である。
【0075】
本明細書中で使用される「IL-22関連活性」という用語は、IL-22の生物学的活性の1つ以上を意味し、以下を含むが、これらに限定されない。(1)例えば、IL-22レセプター(例えば、IL-22RまたはIL-10R2またはその複合体、例えば、哺乳動物、例えば、マウスまたはヒト由来)との結合などの相互作用;(2)一つまたは複数のシグナル伝達分子と結合すること;(3)タンパク質キナーゼ、例えばJAK/STAT3、ERK、およびMAPKのリン酸化および/または活性化を刺激すること;(4)例えば、IL-22応答性細胞(例えば、腎臓、肝臓、結腸、小腸、甲状腺、膵臓、皮膚由来の上皮細胞)の刺激、減少、増殖、分化、エフェクター細胞機能、細胞溶解活性、サイトカインまたはケモカイン分泌、および/または生存を調節すること;(5)急性期反応の少なくとも1つのパラメータ、例えば、代謝性、肝性、造血性(例えば、貧血、血小板増加)または神経内分泌性変化、または変化(例えば、急性期タンパク質の増加または減少、例えば、フィブリノゲンおよび/または血清アミロイドAの増加、またはアルブミンの減少)を調節すること;および/または(6)炎症状態の少なくとも1つのパラメータを調節すること、例えば、サイトカイン媒介炎症誘発作用を調節すること(例えば、発熱、および/またはプロスタグランジン合成、例えば、PGE2合成)、細胞性免疫応答を調節すること、サイトカイン、ケモカイン(例えば、GRO1)、またはリンホカイン産生および/または分泌を調節すること(例えば、炎症誘発性サイトカインの産生および/または分泌)。
【0076】
本明細書中で使用される用語「免疫関連疾患」とは、哺乳動物の免疫系の成分が哺乳動物の病的状態を引き起こす、媒介する、またはそうでなければ寄与する疾患を意味する。また、免疫応答の刺激または治療が疾患の進行に対して改善効果を有する疾患も含まれる。この用語の中に含まれるのは、免疫介在性炎症性疾患、非免疫介在性炎症性疾患、感染性疾患、免疫不全疾患、および新生物である。
【0077】
本明細書において使用される用語「免疫コンジュゲート」は、(1つ以上の)異種分子、例として、限定されるものではないが、細胞毒性剤にコンジュゲートしている抗体である。
【0078】
本明細書において使用される用語「個体」または「対象」は、哺乳動物を指す。哺乳動物としては、限定されるものではないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられる。ある実施形態において、個体または対象は、ヒトである。
【0079】
本明細書中で使用される用語「炎症」とは、損傷または感染部位における白血球の蓄積および血管の拡張を意味し、典型的には、疼痛、腫脹、および発赤を引き起こす。
【0080】
本明細書中で使用される用語「炎症性腸疾患」または「IBD」は、消化管の炎症を特徴とする慢性疾患を意味する。IBDは、大腸および/または直腸を冒す潰瘍性大腸炎、およびクローン病を包含し、これらは、胃腸系全体を冒し得るが、より一般的には小腸(回腸)およびことによると大腸を冒す。
【0081】
本明細書中で使用される用語「細胞の成長または増殖を阻害する」とは、細胞の成長または増殖を少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも98%、または少なくとも99%または100%減少させることを意味し、細胞死を誘導することを含む。
【0082】
本明細書で使用される「単離された」または「精製された」抗体という用語は、同定され、その天然環境の成分から分離および/または回収された抗体を指す。その天然環境の混入成分は、抗体の診断的、予防的または治療的使用を妨げる材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。いくつかの実施形態において、抗体は(1) Lowry法で測定したとき抗体の95重量%超、または99重量%超まで、(2)スピニングカップシーケネーターの使用によってN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3) Coomassie blueまたは銀染色を用いた還元条件下または非還元条件下でSDS-PAGEゲルにより均質となるまで精製されるだろう。単離された抗体とは、その抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので組換え細胞中でin situで存在する抗体を包含する。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製されるであろう。
【0083】
本明細書中で使用される用語「リポソーム」は、ヒト、霊長類またはマウスのような哺乳動物への薬物(核酸、ポリペプチド、抗体、アゴニストまたはアンタゴニストのようである)の送達に有用な、様々な種類の脂質、リン脂質および/または界面活性剤からなる小胞である。リポソームの成分は生体膜の脂質配置に似た、二相形成にて通常は配置される。
【0084】
本明細書において使用される用語「添付文書」は、治療用製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すために使用され、適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌および/またはそのような治療用製品の使用に関する注意事項についての情報を含有する。
【0085】
本明細書において使用される用語、参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列をアラインし、最大のパーセント配列同一性を達成するために必要であればギャップを導入した後の、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性決定の目的のためのアラインメントは、当分野の技能の範囲内である種々の手法で、例えば、公的に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、配列をアラインするための適切なパラメータ、例として、比較される配列の全長にわたり最大のアラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のため、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.により著作され、ソースコードは、U.S.Copyright Office,Washington D.C.,20559に利用者向け文書とともに申請されており、米国著作権登録番号TXU510087のもと登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Calif.から公的に利用可能であり、またはソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、例として、デジタルUNIX(登録商標)V4.0D上での使用のためにコンパイルすべきである。全ての配列比較パラメータはALIGN-2プログラムにより設定され、変動しない。
【0086】
アミノ酸配列比較にALIGN-2を用いる状況において、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bに対する%アミノ酸配列同一性(これは、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有し、または含む所与のアミノ酸配列Aと代替表現することもできる)は、以下のとおり算出される:
100*(X/Y)
(式中、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によりAおよびBのそのプログラムのアラインメントにおいて同一マッチとしてスコアリングされたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性と等しくないことが認識される。特に具体的に記述されない限り、本明細書において使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して直前の段落に記載のとおりに得られる。
【0087】
本明細書において使用される用語「医薬組成物」は、その中に含有される抗IL-22抗体の生物学的活性の有効性を許容するような形態であり、組成物が投与される対象に許容不可能な毒性を示す追加の構成成分を含有しない製剤を指す。
【0088】
本明細書において使用される用語「薬学的に許容可能な担体」は、使用される用量および濃度にさらされる対象に対して非毒性である、活性成分以外の医薬組成物中の成分を指す。薬学的に許容可能な担体としては、限定されるものではないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が挙げられる。
【0089】
薬学的に許容可能な担体の例としては、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリジン、グルタミン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンなどの単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/またはTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(登録商標)などのノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0090】
本明細書中で使用される「乾癬」という言葉は、肘、ひざ、頭皮または体幹に顕著に現れる限局性、離散性および融合性、赤みを帯びた、銀色の鱗屑を伴う大丘疹の発疹を特徴とする条件を指す。
【0091】
本明細書において使用される用語「組換え抗体」は、抗体をコードする核酸を含む組換え宿主細胞により発現される抗体(例えば、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体またはそれらの抗原結合性断片)を指す。組換え抗体を産生するための「宿主細胞」の例としては:(1)哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS、骨髄腫細胞(例として、Y0およびNS0細胞)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、HelaおよびVero細胞;(2)昆虫細胞、例えばsf9、sf21およびTn5;(3)植物細胞、例えば、タバコ属(Nicotiana)に属する植物(例えば、タバコ(Nicotiana tabacum));(4)酵母細胞、例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces)(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae))またはアスペルギルス属(Aspergillus)(例えば、クロコウジカビ(Aspergillus niger))に属するもの;(5)細菌細胞、例えば、大腸菌(Escherichia.coli)細胞または枯草菌(Bacillus subtilis)細胞などが挙げられる。
【0092】
本明細書において使用される用語「一本鎖Fv」(「scFv」)は、通常、ペプチドコードリンカーにより結合しているVHおよびVLコード遺伝子を含む遺伝子融合物から発現される共有結合しているVH::VLヘテロ二量体である。「dsFv」は、ジスルフィド結合により安定化されるVH::VLヘテロ二量体である。二価および多価抗体断片は、一価scFvの会合により自然に形成し得、またはペプチドリンカーにより一価scFvをカップリングさせることにより生成することができる(例えば、二価sc(Fv)2)。
【0093】
本明細書において使用される用語「治療」、「治療する」または「治療すること」などは、治療される個体の自然経過を変更する試行の臨床的介入を指し、予防のため、または臨床的病変の経過において実施することができる。治療の望ましい効果としては、限定されるものではないが、疾患の発症または再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な任意の病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、疾患状態の改善または軽減、および寛解または予後の改善が挙げられる。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗体断片は、疾患の発生を遅延させ、または疾患の進行を減速させるために使用される。
【0094】
本明細書において使用される用語「腫瘍」は、悪性であるか良性であるかに関わらない、全ての新生物性の細胞成長および増殖、ならびに全ての前癌性および癌性の細胞および組織を指す。用語「癌」、「癌性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」および「腫瘍」は、本明細書において相互に排他的に言及されるわけではない。
【0095】
本明細書において使用される用語抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、交換可能に、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変領域は「VH」として記載され得る。軽鎖の可変領域は「VL」として記載され得る。これらの可変領域は一般に抗体の最も可変的部分であり、抗原結合部位を含む。重鎖および軽鎖の可変領域(それぞれ、VHおよびVL)は一般に、それぞれのドメインが4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む類似の構造を有する(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)参照)。単一のVHまたはVL領域は、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体または抗体断片は、その抗原に結合する抗体からのVHまたはVL領域を使用して単離してそれぞれ相補的なVLまたはVH領域のライブラリーをスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.,vol.150,pp.880-887,1993;Clarkson et al.,Nature,vol.352,pp.624-628,1991参照。
【0096】
本明細書において使用される用語「ベクター」は、結合している別の核酸を伝播し得る核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および導入された宿主細胞のゲノム中に取り込まれるベクターを含む。あるベクターは、それらが作動可能に結合している核酸の発現を指向し得る。このようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。
【0097】
(詳細な記載)
例示を目的として、種々の例示的実施形態を参照して本発明の原理を説明する。本発明のある実施形態が本明細書において具体的に説明されるが、当業者は、同一原理が他の系および方法において同様に適用可能であり、用いることができることを容易に認識する。本発明の開示される実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、示される任意の特定の実施形態の詳細にその適用が限定されないことを理解すべきである。さらに、本明細書において使用される用語は説明を目的とするものであり、限定を目的とするものではない。さらに、ある方法は本明細書においてある順序で提示されるステップを参照して記載されるが、多くの場合、当業者が理解し得るとおり、これらのステップは任意の順序で実施することができ;したがって、新規方法は、本明細書に開示の特定のステップの順に限定されるものではない。
【0098】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明示しない限り、複数形の参照物を含むことに留意しなければならない。さらに、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。用語「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を有する」および「~から構築される」も、互換的に使用することができる。
【0099】
特に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量、特性、例えば分子量、パーセント、比、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合において、用語「約」により、その用語「約」の有無にかかわらず修飾されるものとして理解すべきである。したがって、逆の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載の数値パラメータは近似値であり、その近似値は、本開示により得ることができる求められる所望の特性に応じて変動し得る。少なくとも、および特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する企図としてではなく、それぞれの数値パラメータは、報告された有効数字に照らし、通常の四捨五入法を適用することにより少なくとも解釈すべきである。本開示の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、具体例において記載されている数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、それぞれの試験測定値において見出される標準偏差から必然的に生じる、ある誤差を本質的に含有する。
【0100】
本明細書に開示のそれぞれの構成成分、化合物、置換基、またはパラメータは、単独で、または本明細書に開示のそれぞれのおよび他のあらゆる構成成分、化合物、置換基、もしくはパラメータの1つ以上との組合せでの使用について開示されているとして解釈すべきであることを理解すべきである。
【0101】
本明細書に開示のそれぞれの構成成分、化合物、置換基、またはパラメータについてのそれぞれの量/値または量/値の範囲は、本明細書に開示の他のあらゆる構成成分、化合物、置換基、またはパラメータについて開示されているそれぞれの量/値、または量/値の範囲との組合せでも開示されているとして解釈すべきであること、および、したがって本明細書に開示の2つ以上の構成成分、化合物、置換基、またはパラメータの量/値、または量/値の範囲の任意の組合せも、本詳細な説明の目的のために互いとの組合せでも開示されていることも理解すべきである。
【0102】
本明細書に開示のそれぞれの範囲のそれぞれの下限値は、同一の構成成分、化合物、置換基、またはパラメータについて本明細書に開示のそれぞれの範囲のそれぞれの上限値との組合せで開示されているものとして解釈すべきであることがさらに理解される。したがって、2つの範囲の開示は、それぞれの範囲のそれぞれの下限値を、それぞれの範囲のそれぞれの上限値と組み合わせることにより導かれる4つの範囲の開示として解釈すべきである。3つの範囲の開示は、それぞれの範囲のそれぞれの下限値を、それぞれの範囲のそれぞれの上限値と組み合わせることにより導かれる9つの範囲の開示などとして解釈すべきである。さらに、本明細書または実施例に開示の構成成分、化合物、置換基、またはパラメータの具体的な量/値は、範囲の下限値または上限値のいずれかの開示として解釈するべきであり、したがって、本出願の他箇所に開示の同一の構成成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲の他の任意の下限値もしくは上限値または具体的な量/値と組み合わせてその構成成分、化合物、置換基、またはパラメータの範囲を形成し得る。
【0103】
A.抗IL-22抗体または抗体断片
1つの態様において、本発明は、
SASSSVSX1MH(配列番号1)から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、X2TX3KLX4S(配列番号2)から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、およびQQWSSNPYIT(配列番号3)のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、ならびに
GYIFX5SYWIH(配列番号4)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、RIYPGTGX6TYYNX7KFKG(配列番号5)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、およびSYX8X9SVX10Y(配列番号6)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む重鎖可変領域を含み、
X1はYまたはKであり、X2はEまたはKであり、X3はSまたはRであり、X4はAまたはLであり、X5はTまたはRであり、X6はNまたはRであり、X7はEまたはRであり、X8はDまたはMであり、X9はSまたはYであり、X10はAまたはGである、
抗IL-22抗体または抗体断片を提供する。
【0104】
別の態様において、本発明の抗IL-22抗体または抗体断片は、配列番号7-12から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、および配列番号13-18から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0105】
さらに別の態様において、本発明の抗IL-22抗体または抗体断片は、以下から選択される:
(1) 配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
(2) 配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
(3) 配列番号11のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
(4) 配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
(5) 配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
(6) 配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
(7) 配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
(8) 配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
(9) 配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片;
(10) 配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体または抗体断片。
【0106】
本発明の抗IL-22抗体または抗体断片は、本明細書ではhum10と称するヒトIL-22に結合する親抗体に由来し、親抗体は配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有する。親抗体hum10は、ヒトIL-22(hIL-22)でマウスを免疫することにより機能性ハイブリドーマクローン3C3から作製したヒト化モノクローナル抗体(mAb)である。マウスモノクローナル抗体3C3のhIL-22に対する結合親和性は約100pMである(SPR分析による測定)。しかし、3C3mAbはマウスIL-22(mIL-22)に結合できない。3C3mAbは、HepG2細胞においてhIL2によるStat3リン酸化の誘導を阻止することができる。3C3mAbをヒト化し、ヒト化抗体hum10とした。
【0107】
親抗体hum10は、ヒトIL-22およびマウスIL-22の両方に高い親和性で結合することができる抗IL-22抗体を含む変異体抗体を生成するために改変されている。ヒトとマウスのIL-22は完全に保存されている領域をいくつかもっている。CPE(商標登録)ライブラリーは、hum10の6つのCDR全ての各位置のアミノ酸残基を少なくとも15の他のアミノ酸で置換することによって、親抗体hum10から構築された。置換のいくつかの例を
図1に示し、ここでCDRは概略図のより太い部分によって表される。CPE(商標登録)ライブラリーには、軽鎖CDRに変異を有する変異体472個と、重鎖CDRに変異を有する変異体596個の合計1068個のCPE抗体変異体が含まれている。
【0108】
変異体抗体はCHO細胞のような真核細胞宿主で発現した。各々の変異体抗体の配列を検証し、変異体抗体を96ウェルフォーマットにアレイ化した。
【0109】
マウスIL-22とヒトIL-22の両方に高い親和性で結合する変異体抗体について、CPE(商標登録)ライブラリーをスクリーニングした。選択基準を満たす10種類の抗体が同定され、以下の表1に示す。
【表1】
【0110】
表1に挙げた10種類の変異体抗体の中には、6種類の異なる軽鎖がある。これら6つの異なる軽鎖とhum10の軽鎖とのアラインメントを
図2A~2Bに示す。表1に挙げた10種類の変異体抗体のなかには、6つの異なる重鎖がある。これら6つの異なる重鎖とhum10の重鎖とのアラインメントを
図3A~3Bに示す。10種類の変異体抗体のアミノ酸置換はCDRのいくつかの特定の位置に起こることが観察される。
【0111】
表1の10種類の抗体を同じ真核細胞宿主中で発現させて、さらなる試験、臨床試験、および/または治療的、予防的または診断的使用のための抗体を産生させた。真核細胞宿主は、3T3マウス線維芽細胞;BHK21シリアンハムスター線維芽細胞;MDCK、イヌ上皮細胞;HeIaヒト上皮細胞;PtKlラットカンガルー上皮細胞;SP2/0マウス形質細胞;およびNSOマウス形質細胞;HEK293ヒト胚腎細胞;COSサル腎臓細胞;CHO、チャイニーズハムスター卵巣細胞;Rlマウス胚細胞;E14.1マウス胚細胞;Hlヒト胚細胞;H9ヒト胚細胞;PER.6、ヒト胚細胞;S.cerevisiae酵母細胞;またはピキア酵母細胞から選択され得る。特定の実施形態では、哺乳動物系はCHOまたはHEK293である。
【0112】
発現した抗体を真核宿主細胞培養の上清から精製した。抗体の純度を検証するために、精製変異体抗体を10% SDS PAGEゲルを用いて分析した。抗体は非還元条件下で単一バンドを示した(
図4、左半分)。還元条件下では、抗体は軽鎖と重鎖に分離され、それぞれのレーンに2本のバンドとして示される(
図4、右半分)。精製された抗体はSEC分析によっても分析され、
図5A~5Cに示すように単一のピークを生じ、このことは、抗体が高純度で得られることを示している。
【0113】
表1の10種類の抗体の特異性を、ヒトおよびマウスIL-22の両方、ならびに関連抗原(ヒトIL19、ヒトIL20、ヒトIL24、ヒトIL26、INFアルファA、INF-γ、INF-λ1、INF-2および非特異的抗原)を用いてアッセイした。表1の10種類の変異体抗体は、同等の親和性でヒトおよびマウスIL-22の両方に結合することが見出されたが、これらの変異体抗体は、
図6から分かるように関連抗原に対して非常に低い親和性を示した。これにより、表1の10種類の変異体抗体は、他の関連抗原との親和性が低いため、ヒトとマウスのIL-22に特異的であることが確認される。
【0114】
1つの実施形態において、本発明の抗体は、ヒトおよび哺乳動物のIL-22(例えば、マウスIL-22)と同等の親和性を有し、例えば、互いの±20%、±15%、±10%または±5%以内である。すなわち、両親和性の差がいずれか一方の親和性の20%未満、又は15%未満、又は10%未満、又は5%未満である。
【0115】
表1の10種類の抗体の親和性を、PBS緩衝液中での捕捉アッセイを用いてSurface Plasma Resonance(SPR)により測定し、4種類の種々の濃度の各抗体(0.05、0.1、0.5、1.0μg/ml)で結合曲線を作成した。変異体抗体のKa、KdおよびKDを各抗体の曲線から計算した。
【0116】
1つの実施形態において、Kdは、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIACORE、Inc.)に固定化された抗原を用いて、25°CでBIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000装置(BIAcore、Inc.、Piscataway、N.J.)を用いて測定される。CM5チップは、供給者の指示に従って、N-エチル-N′-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)で活性化される。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)により5μg/ml(~0.2μM)まで希釈してから、約10の応答単位(RU)の結合タンパク質を達成するように5μl/分の流速において注入する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して未反応基をブロッキングする。動態測定のために、抗体(0.78nM~500nM)の2倍連続希釈液を、約25μl/分の流速で25℃で0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))界面活性剤(PBST)と共にPBS中に注射する。
【0117】
会合速度(kon)および解離速度(koff)を、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して、会合および解離センサーグラムを同時にフィッティングすることにより算出した。平衡解離定数(Kd)を、koff/kon比として算出する。例えば、Chen et al., J. Mol.Biol., vol.293, pp. 865-881, 1999.上記の表面プラズモン共鳴アッセイによりオン速度が106 M-1 s-1 を超える場合、pH7.2のPBS中の抗抗体20 nM溶液の25℃での蛍光発光強度の増減(励起=295nm;発光=340nm、16nmバンドパス)を測定する蛍光消光技術を用いて、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)または攪拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(登録商標)分光光度計(ThermoSpectronic)のようなペクトロメーター中で抗原濃度の上昇の存在を測定することにより、オン速度を決定することができる。
【0118】
いくつかの代表的な抗体を表2に示す。2つの抗体CPS02とCPS09は、ヒトとマウスのIL-22の両方に最も高い親和性を示す。LC-E049K(CPE(登録商標)ライブラリーの変異体抗体の1つ)を対照として用いる。
【表2】
【0119】
IL-22の直接的な機能の1つは、IL-22のシグナル伝達経路のタンパク質であるStat3のリン酸化を誘導することである。表1の10種類の抗体を、HepG2細胞におけるヒトまたはマウスIL-22を介するStat3のIL-22依存性リン酸化を遮断するための細胞ベースのアッセイにおいて試験した。対照として抗体hum10と変異体CPE-LC-E049Kを用いた。各抗体は0.11μg/mL、0.33μg/mL、1μg/mL、3μg/mLの4濃度を用いた。
【0120】
ヒトIL-22(hIL-22)への結合を介するStat3リン酸化の阻害を
図7Aに示し、マウスIL-22(mIL-22)への結合を介するStat3リン酸化の阻害を
図7Bに示す。Stat3リン酸化の阻害は、変異体抗体の濃度が高くなると用量依存的であり、Stat3リン酸化の阻害レベルが高くなることがわかった。このことは、本発明の変異体抗体が、ヒト及びマウスIL-22への結合を介して、ヒト及びマウスの両方の生物学的系においてIL-22誘導Stat3リン酸化を阻害する原因的役割を有することを示す。
【0121】
HT29細胞は上皮形態を有するヒト結腸直腸腺癌細胞株である。この細胞は、広範囲のサイトカインを発現することができ、これには、CXCL10、CXCL11、CCL5、CXCL8、CXCL1、CCL20、およびIκBが含まれる。サイトカイン分泌は免疫応答の徴候であり、典型的には動物体に炎症を引き起こす。HT29細胞におけるIL-22誘導CXCL1産生の阻害における抗IL-22抗体の機能は、免疫応答および炎症を抑制する抗体の能力の指標である。HT29細胞を種々の濃度の抗IL-22変異体抗体で処理し、CXCL1の産生を測定する(
図8)。変異体抗体によるCXCL1産生の抑制は用量依存性であり、IL-22活性と免疫応答/炎症の抑制における変異体抗体の因果的な役割を示した。
【0122】
表1の変異体抗体の薬物動態をマウスで解析した。抗体は0.3mg/kgと10mg/kgの2用量で静脈内注射によりマウスに注射された。血漿中の注射抗体の濃度を固相ELISAで測定した。抗体は、
図9A~9Bおよび
図10A~10Bに示すように、マウスにおいて長い半減期を有することがわかった。マウスにおけるCPS02の半減期は10mg/kg注射後約18時間であることがわかった。CPS09の半減期は10mg/kg注射後約16時間であることが分かった。
【0123】
IL-22はマウスやヒトなどの動物に急性期反応を誘発する。本発明の変異体抗体は、IL-22によって誘導される急性期反応を阻害することができる。この急性期反応は、
図11に示すように、動物の血液中の血清アミロイド(SAA)の濃度によって示される。マウスの血液中のSAA濃度をIL-22および/または変異体抗体によりマウスの処置の24時間後に測定した。IL-22のみを用いた場合、SAA濃度は高かった。抗IL-22抗体を加えると、マウスの血液中のSAA濃度は有意に低く、本発明の抗体がマウスの急性期反応を効果的に阻害できることを示した。
【0124】
抗IL-22抗体の特性は、CPS02およびCPS09によって例示され、表3に要約される。
【表3】
【0125】
本発明の抗IL-22抗体または抗体断片は、ヒトおよびマウスIL-22の両方に対して高結合親和性を有する。さらに、抗IL-22抗体または抗体断片は、Stat3リン酸化およびサイトカイン産生(例えば、CXCL1産生)の阻害、急性免疫応答の阻害を含む、ヒトおよびマウスにおいて同様の生物作用を引き起こすことができ、変異体抗体はマウスにおいても同様に、かなり長い半減期を有することが示された。
【0126】
本発明はまた、抗IL-22抗体または表1の10種類の選択された抗体からの軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む抗体断片にも及ぶ。特に、本発明の抗IL-22抗体または抗体断片は、配列番号7-12のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域から選択される軽鎖可変領域、および配列番号13-18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域から選択される重鎖可変領域を含む。
【0127】
本発明はまた、配列番号7-12のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域のCDRを有する軽鎖可変領域、および配列番号13-18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域のCDRを有する重鎖可変領域を含む抗IL-22抗体または抗体断片を含む。
【0128】
表1の抗体、とりわけヒトおよびマウスIL-22の両方に結合することができるこれらの抗体の断片も、本発明の範囲内である。これらの抗体断片は、タンパク質分解消化を介して全長抗体から産生され得る (参照、例えば, Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods, vol. 24, pp. 107-117, 1992; and Brennan et al., Science, vol. 229, pp. 81, 1985).これらの抗体断片は、組換え宿主細胞によって直接的に産生され得る。Fab、Fv、scFv抗体断片は大腸菌で発現させ、分泌させることができるので、これらの断片の大量を容易につくることができる。抗体断片は上記のファージライブラリーから単離することができる。代わりに、Fab′-SH断片を大腸菌から直接的に回収し、化学的に結合してF(ab’)2 断片を形成することができる(Carterら、Bio/Technology, vol.10, pp.163-167,1992)。別のアプローチによれば、F(ab’)2 断片は、組換え宿主細胞培養から直接的に隔離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含むin vivo半減期が増加したFabおよびF(ab’′)2 断片は、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の製造のための他の技術は、熟練した実務者に明らかであろう。
【0129】
特定の実施形態では、抗体は一本鎖のFv断片(scFv)である。WO 93/16185および米国特許第5,571,894;および5,587,458を参照のこと。FvとscFvは、インタクト結合部位をもつ唯一の種であり、定常領域をもたない。したがって、in vivo使用時の非特異的結合の減少に適しているかもしれない。scFv融合タンパク質を構築して、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにおけるエフェクタータンパク質の融合を得ることができる。参照、Antibody Engineering, ed. Borrebaeck, Oxford University Press, 1995。抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているように、「線状抗体」であってもよい。このような線状抗体は単一特異性または二重特異的であり得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体はダイアボディである。ダイアボディは、二価のものもあれば、二重特異的のものもある。例えば、ダイアボディの例については、EP 404,097; WO 1993/01161; Hudson et al., Nat.vol. 9, pp. 129-134, 2003; およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 90, pp. 6444-6448, 1993参照。トリアボディおよびテトラボディの例も、Hudson et al., Nat. Med., vol. 9, pp. 129-134, 2003に記載されている。
【0131】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、抗体の重鎖可変領域の全てもしくは一部、または軽鎖可変領域の全てもしくは一部を含む単一ドメイン抗体断片である。特定の実施形態に、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(例えば、米国特許第6,248,516号参照)。
【0132】
B.抗体バリアント
いくつかの実施形態において、本発明は、上記のような抗体または抗体断片のバリアントを提供する。これらのバリアントを導くにあたり、当業者は本明細書に記載されているようなプロセスによって導かれる。これらの抗体または抗体断片をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって、またはペプチドを合成することによって、これらの抗体または抗体断片のバリアントを作成することができる。このような改変としては、例えば、抗体または抗体断片のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/またはそれらの残基への挿入、および/またはそれらの残基の置換が挙げられる。欠失、挿入、および置換の任意の組合せをバリアントに到達させることができるが、これは、バリアントが、所望特性(例えばヒトおよびマウスIL-22の両方への結合)の少なくとも1つを有することを条件とする。
【0133】
1.配列バリアント
特定の実施形態すれば、本発明は、上述の変異体抗体または抗体断片と比べて、1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を有する抗体または抗体断片バリアントを提供する。置換変異誘発のための目的部位としては、CDRおよびフレームワーク領域(FR)が挙げられる。保存的置換を表4の「好ましい置換」の項目に示し、より実質的な変化を表4の「例示的置換」の項目に示し、さらに、共通の側鎖特性によって決定されるアミノ酸側鎖基を参照して以下に記載する。アミノ酸置換は、目的の抗体または抗体断片、および所望の活性、例えばヒトおよびマウスIL-22の両方への結合、および/または免疫原性の減少についてスクリーニングされた生成物に導入され得る。
【表4】
【0134】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従ってグループ分けすることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0135】
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを別のクラスのものに交換することを伴う。
【0136】
アミノ酸配列中の変化の作製において、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することができる。タンパク質に対する相互作用的な生物学的機能の付与におけるハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、一般に当分野において理解されている。アミノ酸の相対的ハイドロパシー特徴が得られるタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそれがタンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を定めることが受け入れられる。それぞれのアミノ酸には、それらの疎水性および電荷の特徴に基づきハイドロパシー指数が割り当てられており、それらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)である。
【0137】
1つのタイプの置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上のCDRの置換を含む。一般に、さらなる試験のために選択されて得られるバリアントは、親抗体に対してある生物学的特性の改変(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の減少)を有し、および/または親抗体のある生物学的特性を実質的に保持する。例示的な置換バリアントは親和性成熟抗体であり、例えば、ファージディスプレイベースの親和性成熟技術、例えば、本明細書に記載のものを使用して簡便に生成することができる。例えば、1つ以上のCDR残基を突然変異させ、バリアント抗体をファージ上でディスプレイさせ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングすることができる。
【0138】
配列改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するためにCDR中で作製することができる。このような変更は、CDRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で突然変異を受けるコドンによりコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.,vol.207,pp.179-196,2008参照)中で作製することができ、得られるバリアントVHまたはVLを結合親和性について試験する。ライブラリーの構築および二次ライブラリーからの選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology,vol.178,pp.1-37,2001)に記載されている。親和性成熟の一部の実施形態において、種々の方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向変異誘発)のいずれかにより、成熟について選択された可変遺伝子中に多様性を導入する。次いで、バリアントを有するライブラリーを作出する。次いで、ライブラリーをスクリーニングして所望の親和性を有する抗体バリアントを同定する。多様性を導入する別の方法はCDR指向アプローチを含み、そのアプローチでは、いくつかのCDR残基(例えば、1回に4~6残基)をランダム化する。例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを使用して抗原結合に関与するCDR残基を具体的に同定することができる。特にLC-CDR3およびHC-CDR3を標的化することが多い。
【0139】
ある実施形態において、置換、挿入、または欠失は、このような変更がIL-22に結合する抗体または抗体断片の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のCDR内に生じてよい。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的変更(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)をCDR中で作製することができる。このような変更は、CDRの「ホットスポット」の外側であってよい。バリアントVHおよびVL領域のある実施形態において、それぞれのCDRは不変であり、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
【0140】
いくつかの実施形態では、改変は、抗体の非CDR領域に導入される。言い換えれば、配列番号7~12のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号13~18のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)は無傷のそのままである。この改変は、代わりに、FRまたは定数領域に導入されてもよい。
【0141】
突然変異誘発のために標的化することができる抗体のアミノ酸残基または領域を同定する有用な方法は、Cunningham and Wells,Science,vol.244,pp.1081-1085,1989により記載されるとおり「アラニンスキャニング変異誘発」である。この方法において、標的残基の残基または群(例えば、荷電残基、例えば、arg、asp、his、lys、およびglu)を同定し、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により置き換えて抗体または抗体断片と抗原との相互作用が影響されるか否かを決定する。さらなる置換を、最初の置換に対して機能的感受性を実証するアミノ酸位置において導入することができる。あるいは、またはさらに、抗体または抗体断片と抗原との間の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造を使用することができる。このような接触残基および隣接残基を置換の候補として標的化し、または排除することができる。バリアントをスクリーニングしてそれらが所望の特性を含有するか否かを決定することができる。
【0142】
アミノ酸配列挿入としては、1残基から多数の残基を含有する領域の長さの範囲であるアミノおよび/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、抗体のNまたはC末端と酵素との融合(例えば、ADEPTのための)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドとの融合が挙げられる。
【0143】
本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列改変は、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善し得る。
【0144】
本発明のさらなる態様は、抗体または抗体断片の機能保存的バリアントを包含する。機能保存バリアントとは、抗体の全体的なコンホメーションおよび機能を変化させることなく抗体中の所与のアミノ酸残基が変化したものであり、例えば極性、水素結合電位、酸性、塩基性、疎水性、芳香族などのような類似の特性を有するアミノ酸との置換を含むが、これらに限定されるものではない。保存されていると示されているもの以外のアミノ酸は、類似の機能を有する任意の2つのタンパク質間の%タンパク質またはアミノ酸配列の類似性が変化し得るようにタンパク質が異なる可能性があり、例えば、クラスター法のようなアラインメントスキームに従って決定される70%~99%であってよく、ここで類似性はMEGALIGNアルゴリズムに基づく。「機能保存的バリアント」はまた、BLASTもしくはFASTAアルゴリズムによって決定される少なくとも60%のアミノ酸同一性、または親抗体もしくは抗体断片と少なくとも75%、もしくは少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも91%、もしくは少なくとも92%、もしくは少なくとも93%、もしくは少なくとも94%、もしくは少なくとも95%、もしくは少なくとも96%、もしくは少なくとも97%、もしくは少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有し、本発明によって同定される抗体もしくは抗体断片と同一もしくは実質的に類似の特性もしくは機能、特にヒトおよびマウスIL-22の両方に対する良好な結合親和性を有する抗体を含む。
【0145】
2.ヒト化抗体または抗体断片
いくつかの実施形態において、本発明はヒト化抗体を提供する。典型的には、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低下させるためにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、CDR(またはその部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはその部分)がヒト抗体に由来する1つ以上の可変領域を含む。ヒト化抗体は、場合によりヒト定常領域の少なくとも一部も含み得る。一部の実施形態において、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復させ、または改善するために非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基により置換される。
【0146】
非ヒト抗体をヒト化するための種々の方法が当技術分野で知られている。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1以上のアミノ酸残基を有することができる。これらの非ヒトアミノ酸残基は「インポート」残基と呼ばれることが多く、典型的には「インポート」可変ドメインから取られたものである。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列のために超可変領域配列を置換することにより、Winterらの方法(Jones et al. (1986) Nature, vol. 321, pp. 522-525; Riechmann et al. (1988) Nature, vol. 332, pp. 323-327; Verhoeyen et al. (1988) Science, vol. 239, pp. 1534-1536)に従い、基本的に行うことができる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、無傷のヒト可変領域よりも実質的に少ない領域が、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている。実際、ヒト化抗体は通常は、いくつかのCDR残基と可能性のあるいくつかのFR残基とが齧歯類抗体の中の同様の部位に由来する残基で置換されているヒト抗体である。
【0147】
ヒト化抗体を作製する際に使用するヒト可変領域の選択は、重鎖軽鎖ともに、抗原性を低下させるために重要であり得る。いわゆる「最良適合」方法によれば、げっ歯類抗体の可変領域の配列を、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングする。次いで、齧歯類のものに最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワークとして認められる (Sims et al. (1993) J. Immunol., vol.151, pp. 2296; Chothia et al. (1987) J. Mol.Biol., vol.196, p. 901。もう一つの方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワークを使用するものである。同じフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体に使用することができる(Carter et al. (1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA, vol.89, p. 4285; Presta et al. (1993) J. Immunol., vol.151, p. 2623。
【0148】
さらに一般的には、抗体は、抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性の保持を伴ってヒト化されることが望ましい。この目的を達成するために、1つの方法によれば、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列および種々の概念的ヒト化産物の分析のプロセスによって、ヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは通常入手でき、当業者が精通している。選択された候補免疫グロブリン配列の三次元立体配座構造の蓋然性を例示し表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示の精査は、候補免疫グロブリン配列の機能化における残基のありそうな役割の分析、すなわち、その抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響する残基の分析を可能とする。このようにして、FR残基をレシピエントから選択し組み合わせて、配列をインポートし、標的抗原に対する増加した親和性のような所望の抗体特性が達成されるようにすることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすのに直接的かつ最も実質的に関与する。
【0149】
ヒト化抗体およびその作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.,vol.13,pp.1619-1633,2008に概説されており、さらに例えば、Riechmann et al.,Nature,vol.332,pp.323-329,1988;Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.86,pp.10029-10033,1989;米国特許第5,821,337号明細書、同第7,527,791号明細書、同第6,982,321号明細書、および同第7,087,409号明細書、Kashmiri et al.,Methods,vol.36,pp.25-34,2005(SDR(a-CDR)グラフト化について記載);Padlan,Mol.Immunol.,vol.28,pp.489-498,1991(「リサーフェイシング」について記載);Dall’Acqua et al.,Methods,vol.36,pp.43-60,2005(「FRシャフリング」について記載);ならびにOsbourn et al.,Methods,vol.36,pp.61-68,2005およびKlimka et al.,Br.J.Cancer,vol.83,pp.252-260,2000(FRシャフリングに対する「誘導選択」アプローチについて記載)に記載されている。
【0150】
ヒト化に使用することができるヒトフレームワーク領域としては、限定されるものではないが、「ベストフィット」法(例えば、Sims et al.J.Immunol.,vol.151,p.2296,1993参照)を使用して選択されるフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループにおけるヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.89,p.4285,1992;およびPresta et al.J.Immunol.,vol.151,p.2623,1993参照)、ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.,vol.13,pp.1619-1633,2008参照);ならびにFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.,vol.272,pp.10678-10684,1997およびRosok et al.,J.Biol.Chem.,vol.271,pp.22611-22618,1996参照)が挙げられる。
【0151】
非ヒト動物に由来する抗体のVHおよびVL中のCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFR中に簡易にグラフト化することによりヒト化抗体を産生する場合、抗体結合親和性は、非ヒト動物に由来する元の抗体のものと比較して低減することが公知である。非ヒト抗体のVHおよびVLのいくつかのアミノ酸残基は、CDR中だけでなく、FR中のものも抗体結合親和性に直接または間接的に関連することが考慮される。したがって、ヒト抗体のVHおよびVLのFRに由来する異なるアミノ酸残基によるこれらのアミノ酸残基の置換は、結合親和性を低減させ得る。この問題を解消するため、ヒトFRがグラフト化される抗体において、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列のうち、抗体への結合に直接関連し、またはCDRのアミノ酸残基と相互作用し、または抗体の三次元構造を維持し、抗原への結合に直接関連するアミノ酸残基を同定することを試行しなければならない。低減した抗原結合親和性は、同定されたアミノ酸を非ヒト動物に由来する元の抗体のアミノ酸残基により置き換えることにより改良させることができる。
【0152】
3.グリコシル化バリアント
特定の実施形態に、本明細書に提供される抗体またはその断片は、抗体が1つ以上のオリゴ糖を付加することによって修飾され、したがってグリコシル化抗体になる程度を増加または減少するように改変される。改変は、1つ以上のグリコシル化部位にオリゴ糖を付加することによって行われる。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作出または除去されるようにアミノ酸配列を変更することにより便宜的に達成することができる。
【0153】
抗体がFc領域を含む場合、それに付着している炭水化物を変更することができる。哺乳動物細胞により産生される天然抗体は、典型的には、一般にFc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合により付着している分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH,vol.15,pp.26-32,1997参照。オリゴ糖としては、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」におけるGlcNAcに付着しているフコースを挙げることができる。一部の実施形態において、本発明の抗体中のオリゴ糖の改変は、ある改善された特性を有する抗体バリアントを作出するために作製することができる。
【0154】
一実施形態において、Fc領域に(直接的または間接的に)付着しているフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、このような抗体中のフコース量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。フコース量は、例えば、国際公開第2008/077546号パンフレットに記載のとおりMALDI-TOF質量分析法により計測してAsn297に付着している全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造)の合計と比較してAsn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することにより決定される。Asn297は、Fc領域中の297位あたり(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指し;しかしながら、Asn297は、抗体中の軽微な配列変動に起因して297位の約±3アミノ酸上流または下流、すなわち、294位~300位の間にも位置し得る。このようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号明細書(Presta,L.);米国特許出願公開第2004/0093621号明細書(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)参照。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関連する刊行物の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号明細書;国際公開第2000/61739号パンフレット;国際公開第2001/29246号パンフレット;米国特許出願公開第2003/0115614号明細書;米国特許出願公開第2002/0164328号明細書;米国特許出願公開第2004/0093621号明細書;米国特許出願公開第2004/0132140号明細書;米国特許出願公開第2004/0110704号明細書;米国特許出願公開第2004/0110282号明細書;米国特許出願公開第2004/0109865号明細書;国際公開第2003/085119号パンフレット;国際公開第2003/084570号パンフレット;国際公開第2005/035586号パンフレット;国際公開第2005/035778号パンフレット;国際公開第2005/053742号パンフレット;国際公開第2002/031140号パンフレット;Okazaki et al.J.Mol.Biol.,vol.336,pp.1239-1249,2004;Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.,vol.87,pp.614-622,2004が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生し得る細胞系の例としては、タンパク質フコシル化を欠損するLec13CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.,vol.249,pp.533-545,1986;米国特許出願第2003/0157108A号明細書;および国際公開第2004/056312A1号パンフレット、特に実施例11)、ならびにノックアウト細胞系、例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.,vol.87,pp.614-622,2004;Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,vol.94,pp.680-688,2006;および国際公開第2003/085107号パンフレット参照)が挙げられる。
【0155】
例えば、抗体のFc領域に付着している二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されている二分オリゴ糖を有する抗体バリアントがさらに提供される。このような抗体バリアントは、低減したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。このような抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第2003/011878号パンフレット;米国特許第6,602,684号明細書;および米国特許出願公開第2005/0123546号明細書に記載されている。Fc領域に付着しているオリゴ糖中の少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。このような抗体バリアントは、改善したCDC機能を有し得る。このような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号パンフレット;国際公開第1998/58964号パンフレット;および国際公開第1999/22764号パンフレットに記載されている。
【0156】
4.Fc領域バリアント
ある実施形態において、1つ以上のアミノ酸改変を本明細書において提供される抗体のFc領域中に導入し、それによりFc領域バリアントを生成することができる。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置におけるアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4Fc領域)を含み得る。
【0157】
ある実施形態において、本発明は、全てではないが一部のエフェクター機能を保有するFc領域バリアントを抗体バリアントに提供し、これらは、in vivoにおける抗体の半減期が重要であり、あるエフェクター機能(例えば、ADCC)が不要または有害である用途に関して望ましい候補となる。インビトロおよび/またはin vivoの細胞毒性アッセイを実施してCDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能を保持することを確保することができる。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.,vol.9,pp.457-492,1991の464頁の表5にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号明細書(例えば、Hellstrom et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.83,pp.7059-7063,1986も参照)およびHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.82,pp.1499-1502,1985;米国特許第5,821,337号明細書(Bruggemann et al.,J.Exp.Med.,vol.166,pp.1351-1361,1987も参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いることができる(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,Calif.;およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,Wis.)参照。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性を、例えば、動物モデル、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.95,pp.652-656,1998に開示のものにおいてin vivoで評価することができる。C1q結合アッセイを実施して、抗体がC1qに結合し得ず、したがってCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、国際公開第2006/029879号パンフレットおよび国際公開第2005/100402号パンフレットにおけるC1qおよびC3c結合ELISA参照。補体活性化を評価するため、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods,vol.202,pp.163-171,1996;Cragg,M.S.et al.,Blood,vol.101,pp.1045-1052,2003;およびCragg,M.S,and M.J.Glennie,Blood,vol.103,pp.2738-2743,2004参照)。FcRn結合およびin vivoクリアランス/半減期の決定も、当分野において公知の方法を使用して実施することができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.,vol.18,pp.1759-1769,2006参照)。
【0158】
減少したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327および329の1つ以上の置換を有するもの(米国特許第6,737,056号明細書)が挙げられる。このようなFc突然変異体は、アミノ酸265、269、270、297および327位の2つ以上における置換を含み、残基265および297のアラニン置換を有する、いわゆる「DANA」Fc突然変異体(米国特許第7,332,581号明細書)が挙げられる。
【0159】
FcRに対する改善または縮小した結合を有するある抗体バリアントが記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号明細書、国際公開第2004/056312号パンフレット、およびShields et al.,J.Biol.Chem.,vol.9,pp.6591-6604,2001参照)。
【0160】
ある実施形態において、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、および/または334位(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。
【0161】
一部の実施形態において、変更された(すなわち、改善され、または縮小した)C1q結合および/または補体依存性細胞毒性(CDC)をもたらす変更、例えば、米国特許第6,194,551号明細書、国際公開第99/51642号パンフレット、およびIdusogie et al.J.Immunol.,vol.164,pp.4178-4184,2000に記載のものが、Fc領域中で作製される。
【0162】
増加した半減期を有し、胎児への母体IgGの移動を担う(Guyer et al.,J.Immunol.,vol.117,pp.587-593,1976およびKim et al.,J.Immunol.,vol.24,p.249,1994)新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号明細書に記載されている。それらの抗体は、その中にFc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。このようなFcバリアントとしては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434の1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号明細書)を有するものが挙げられる。Fc領域バリアントの他の例としては、Duncan & Winter,Nature,vol.322,pp.738-740,1988;米国特許第5,648,260号明細書;米国特許第5,624,821号明細書;および国際公開第94/29351号パンフレットも参照。
【0163】
5.システインエンジニアリング抗体バリアント
ある実施形態において、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基により置換されているシステインエンジニアリング抗体、例えば、「thioMAb」を作出することが望ましい場合がある。特定の実施形態において、置換残基は抗体のアクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインにより置換することにより、反応性チオール基は、それにより抗体のアクセス可能な部位に位置され、それを使用して抗体を他の部分、例えば、薬物部分またはリンカー-薬物部分とコンジュゲートさせて本明細書においてさらに記載されるとおり免疫コンジュゲートを作出することができる。ある実施形態において、以下の残基のいずれか1つ以上をシステインにより置換することができる:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け);および重鎖Fc領域の5400(EU番号付け)。システインエンジニアリング抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号明細書に記載のとおり生成することができる。
【0164】
6.抗体誘導体
ある実施形態において、本明細書において提供される抗体または抗体断片は、当分野において公知の容易に利用可能な追加の非タンパク質部分を含有する改変された抗体または抗体断片であってもよい。抗体または抗体断片の誘導体化に好適な部分としては、限定されるものではないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して製造上の利点を有し得る。
【0165】
ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐でも非分岐でもよい。抗体または抗体断片に付着しているポリマーの数は変動し得、2つ以上のポリマーが付着している場合、それらは同一または異なる分子であり得る。一般に、抗体誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、検討事項、例として、限定されるものではないが、改善すべき抗体または抗体断片の特定の特性または機能、その誘導体が規定の条件下で治療法において使用されるか否かなどに基づき決定することができる。
【0166】
ある実施形態において、抗体または抗体断片と非タンパク質部分は、放射線への曝露により選択的に加熱を使用して結合され得る。一実施形態において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.102,pp.11600-11605,2005)。放射線は任意の波長のものであり得、それとしては、限定されるものではないが、通常の細胞を害することはないが、抗体-非タンパク質部分の近位の細胞が殺滅される温度まで非タンパク質部分を加熱する波長が挙げられる。
【0167】
本発明の抗IL-22抗体は、キメラ抗体であり得る。あるキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.81,pp.6851-6855,1984)に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えば、サルに由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、抗体のクラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスに対して変化している「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、それらの抗原結合断片を含む。
【0168】
一部の実施形態において、本発明の抗IL-22抗体は、多重特異的抗体、例えば、二重特異的抗体である。多重特異的抗体は、少なくとも2つの異なる部位についての結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある実施形態において、結合特異性のあるものはIL-22についてのものであり、他方は別の抗原についてのものである。ある実施形態において、二重特異的抗体は、IL-22の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異的抗体は、IL-22を発現する細胞に対して細胞毒性剤を局在化させるために使用することもできる。二重特異的抗体は、全長抗体または抗体断片として調製することができる。
【0169】
多重特異的抗体を作製する技術としては、限定されるものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature,vol.305,pp.537-540,1983)、国際公開第93/08829号パンフレット、およびTraunecker et al.,EMBO J.vol.10,pp.3655-3659,1991参照)、ならびに「ノブインホール(knob-in-hole)」エンジニアリング(例えば、米国特許第5,731,168号明細書参照)が挙げられる。多重特異的抗体は、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング(electrostatic steering)効果をエンジニアリングすること(国際公開第2009/089004A1号パンフレット);2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号明細書、およびBrennan et al.,Science,vol.229,pp.81-83,1985参照);二重特異的抗体を産生するためにロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,vol.148,pp.1547-1553,1992参照);二重特異的抗体断片を作製するために「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.90,pp.6444-6448,1993参照);ならびに一本鎖Fv(scFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,vol.152,pp.5368-5374,1994参照);ならびに例えば、Tutt et al.J.Immunol.,vol.147,pp.60-69,1991に記載のとおり三重特異的抗体を調製することにより作製することもできる。
【0170】
3つ以上の機能的抗原結合部位を有するエンジニアリング抗体、例として「オクトパス抗体」も本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576A1号明細書参照)。
【0171】
抗体または抗体断片としては、IL-22および別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用Fab」または「DAF」も挙げられる(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号明細書参照)。
【0172】
C.免疫コンジュゲート
別の態様では、本発明はまた、1つ以上の治療薬、予防薬、診断薬、検出可能な標識、キレート剤および造影剤への結合によって改変される本明細書に記載される抗IL-22抗体または抗体断片を含む免疫コンジュゲートを提供する。一実施形態において、免疫コンジュゲートは、抗体が1つ以上の薬物にコンジュゲートしている抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であり、その薬物としては、限定されるものではないが、メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号明細書、同第5,416,064号明細書および欧州特許第0425235B1号明細書参照);アウリスタチン、例えば、モノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5,635,483号明細書および同第5,780,588号明細書、および同第7,498,298号明細書参照);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号明細書、同第5,714,586号明細書、同第5,739,116号明細書、同第5,767,285号明細書、同第5,770,701号明細書、同第5,770,710号明細書、同第5,773,001号明細書、および同第5,877,296号明細書参照;Hinman et al.,Cancer Res.,vol.53,pp.3336-3342,1993;およびLode et al.,Cancer Res.,vol.58,pp.2925-2928,1998);アントラサイクリン、例えば、ダウノマイシンまたはドキソルビシン(Kratz et al.,Current Med.Chem.,vol.13,pp.477-523,2006;Jeffrey et al.,Bioorganic&Med.Chem.Letters,vol.16,pp.358-362,2006;Torgov et al.,Bioconj.Chem.,vol.16,pp.717-721,2005;Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.97,pp.829-834,2000;Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters,vol.12,vol.1529-1532,2002;King et al.,J.Med.Chem.,vol.45,pp.4336-4343,2002;ならびに米国特許第6,630,579号明細書参照);メトトレキサート;ビンデシン;タキサン、例えば、デセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセル;トリコテセン;およびCC1065が挙げられる。
【0173】
1つの実施形態において、結合剤は、化学療法剤または薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素活性毒素、またはその断片)、または放射性同位体などの細胞毒性剤から選択されるである。
【0174】
別の実施形態において、結合剤は、例として、限定されるものではないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からのもの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュアヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、またはクルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンを含む酵素活性毒素またはその断片である。
【0175】
別の実施形態において、コンジュゲートは、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体を含む放射性原子を含む。放射性コンジュゲートを検出に使用する場合、それは、シンチグラフィー試験のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、mriとしても公知)用のスピン標識、例えば、ヨウ素-123、さらにヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガンを含み得る。
【0176】
抗体および細胞毒性剤の免疫コンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジプイミデートHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science,vol.238,p.1098,1987に記載のとおり調製することができる。炭素-14により標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤またはキレーターである。国際公開第1994/11026号パンフレット参照。リンカーは、細胞中で細胞毒性薬の放出を容易にする「開裂可能リンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.,vol.52,pp.127-131,1992;米国特許第5,208,020号明細書)を使用することができる。
【0177】
免疫コンジュゲートは、限定されるものではないが、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびに(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,Ill.,U.S.Aから)市販されているSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含む架橋試薬を用いて調製され得る。
【0178】
ADCの例示的な実施形態は、腫瘍細胞を標的化する抗体(Ab)、薬物部分(D)、およびAbをDに付着させるリンカー部分(L)を含む。一部の実施形態において、抗体は、1つ以上のアミノ酸残基、例えば、リジンおよび/またはシステインを介してリンカー部分(L)に付着している。ADCは、式Ab-(L-D)p(式中pは1から約20である)を有し得る。
【0179】
一部の実施形態において、抗体にコンジュゲートされ得る薬物部分の数は、遊離システイン残基の数により限定される。一部の実施形態において、遊離システイン残基は、本明細書に記載の方法により抗体アミノ酸配列中に導入される。例示的なADCとしては、限定されるものではないが、1、2、3、または4つのエンジニアリングされたシステインアミノ酸を有する抗体が挙げられる(Lyon et al.,Methods in Enzym.,vol.502,pp.123-138,2012)。一部の実施形態において、1つ以上の遊離システイン残基が、エンジニアリングを使用することなく抗体中で既に存在し、その場合、既存の遊離システイン残基を使用して抗体を薬物にコンジュゲートさせることができる。一部の実施形態において、抗体は、1つ以上の遊離システイン残基を生成するために抗体のコンジュゲーション前に還元条件に曝露される。
【0180】
リンカーを用いて、部分を抗体に結合させて、ADCのような免疫コンジュゲートを形成する。適当なリンカーはWO2017/180842に記載されている。
【0181】
抗体に結合され得るいくつかの薬物部分は、WO2017/180842に記載されている。
【0182】
薬物部分としては、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ)も挙げられる。
【0183】
ある実施形態において、免疫コンジュゲートは、核磁気共鳴(NMR)イメージング用のスピン標識、例えば、ジルコニウム-89、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄を含み得る。例えば、PETイメージングのためにジルコニウム-89を種々の金属キレート剤に錯化させ、抗体にコンジュゲートさせることができる(国際公開第2011/056983号パンフレット)。
【0184】
放射標識または他の標識は、公知の手法で免疫コンジュゲートに取り込むことができる。例えば、抗体または断片は、例えば、1つ以上のフッ素-19原子を1つ以上の水素の代わりに含む好適なアミノ酸前駆体を使用して生合成または化学合成することができる。一部の実施形態において、標識、例えば、Tc99、I123、Re186、Re188、およびIn111を、抗体中のシステイン残基を介して付着させることができる。一部の実施形態において、イットリウム-90は、抗体のリジン残基を介して付着させることができる。一部の実施形態において、IODOGEN法(Fraker et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,vol.80,pp.49-57,1978)を使用してヨウ素-123を取り込むことができる。「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal,CRC Press 1989)は、ある他の方法を記載している。
【0185】
ある実施形態において、免疫コンジュゲートは、プロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートしている抗体を含み得る。プロドラッグ活性化酵素は、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号パンフレット参照)を活性薬物、例えば、抗癌薬に変換できる。このような免疫コンジュゲートは、抗体依存的酵素媒介性プロドラッグ療法(「ADEPT」)において有用である。抗体にコンジュゲートさせることができる酵素としては、限定されるものではないが、ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なアルカリホスファターゼ;スルフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌薬5-フルオロウラシルに変換するために有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なプロテアーゼ、例えば、セラチアプロテアーゼ、テルモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ、およびカテプシン(例えば、カテプシンBおよびL);D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを変換するために有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用な炭水化物開裂酵素、例えば、β-ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ;β-ラクタムにより誘導体化されている薬物を遊離薬物に変換するために有用なβ-ラクタマーゼ;ならびにアミン窒素においてフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基によりそれぞれ誘導体化されている薬物を遊離薬物に変換するために有用なペニシリンアミダーゼ、例えば、ペニシリンVアミダーゼおよびペニシリンGアミダーゼが挙げられる。一部の実施形態において、酵素は、当分野において周知の組換えDNA技術により抗体に共有結合させることができる。例えば、Neuberger et al.,Nature,vol.312,pp.604-608,1984参照。
【0186】
D.医薬組成物
いくつかの実施形態において、本発明は、抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体またはその免疫コンジュゲートを含む医薬組成物を提供する。抗IL-22抗体または抗体断片は抗炎症活性を有する。さらに、IL-22が癌の開始または進行に関与することが知られている。したがって、抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体またはそれらの免疫コンジュゲートは、IL-22発現に関連する免疫関連疾患または増殖性疾患を治療するための医薬組成物において使用され得る。抗体、断片、バリアント、誘導体または免疫コンジュゲートは、医薬組成物中で唯一の活性剤として、または任意の好適な薬剤もしくは他の従来の処置と組合せて使用され得る。
【0187】
抗体または抗体断片は、約0.0001~10.0ミリグラム、または約0.001~5ミリグラム、または約0.001~1ミリグラム、または約0.001~0.1ミリグラム、または約0.1~1.0もしくは約10ミリグラムの抗体または抗体断片を送達するために、医薬組成物中に処方され得る。選択された時間間隔で複数回投与が可能である。
【0188】
免疫疾患の治療または重症度の軽減のために、本発明の組成物の適切な用量は、治療される疾患の種類、疾患の重症度および経過、組成物が予防または治療目的で投与されるかどうか、以前の治療、患者の臨床履歴および化合物に対する反応、ならびに主治医の裁量に依存するであろう。
【0189】
例えば、疾病の型および重症度に応じて、抗体または抗体断片の約1μg/kg~約15mg/kg(例えば、0.1~20mg/kg)は、例えば、1回以上の別々の投与によるものであろうと、または連続注入によるものであろうと、患者への投与のための最初の候補用量である。典型的な1日用量は、上記の因子に応じて、約1μg/kg~約100mg/kgまたはそれ以上の抗体または抗体断片であり得る。数日間以上にわたる反復投与については、病態に応じて、治療は 疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続され得る。この治療法の進歩は、従来の技術およびアッセイによってモニターすることができる。
【0190】
抗IL-22抗体、抗体断片または免疫コンジュゲートを含む医薬組成物は、所望の純度を有する抗体または抗体断片を、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、1つ以上の任意の薬学的に許容可能な担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))と混合することによって、医薬組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができる。
【0191】
薬学的に許容可能な担体は、レシピエントに対して一般的に毒性がない用量および濃度が採用され、限定されないが、以下のものを含む:リン酸、クエン酸および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール; 3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物; EDTAなどのキレート剤; ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖; ナトリウムなどの塩形成対イオン; 金属錯体(例:Zn-タンパク質複合体); および/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。
【0192】
薬学的に許容可能な担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であってもよい。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンの使用により、分散液の場合には要求される粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらすことができる。多くの場合、等張化剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射組成物の吸収延長は、その組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによりもたらすことができる。
【0193】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、注射され得る配合物のために薬学的に許容可能なビヒクルを含有する。これらは、特定の等張無菌生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウムもしくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムなどまたはそのような塩の混合物)、または例えば、無菌水もしくは生理食塩水の添加時に注射液の構成を可能とする乾燥、特に凍結乾燥組成物中で存在し得る。
【0194】
一部の実施形態において、「安定剤」として公知であることもある、薬学的に許容可能な等張化剤は、組成物中の液体の等張性を調整または維持するために存在する。大型荷電生体分子、例えば、タンパク質および抗体とともに使用される場合、それらは、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それにより分子間および分子内相互作用の潜在性を減少させ得るため「安定剤」と称されることが多い。等張化剤は、医薬組成物の0.1重量%~25重量%、または1~5%の任意の量で存在し得る。例示的等張化剤としては、多価糖アルコール、例えば三価またはより高級の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールが挙げられる。
【0195】
医薬組成物に含有することができる追加の、薬学的に許容可能な賦形剤としては、以下の1つ以上として機能し得る薬剤が挙げられる:(1)増量剤、(2)溶解度向上剤、(3)安定剤、および(4)変性または容器壁への接着を防止する薬剤。賦形剤としては、多価糖アルコール(上記列挙);アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなど;有機糖または糖アルコール、例えば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えばイノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;単糖(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース);二糖(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖(例えば、ラフィノース);ならびに多糖(例えば、デキストリンまたはデキストラン)を挙げることができる。
【0196】
医薬組成物は、薬学的に許容可能な非イオン性界面活性剤または洗浄剤(「湿潤剤」としても公知)を、抗体または抗体断片を溶解させるのに役立ち、および撹拌誘導性凝集から抗体または抗体断片を保護するために含むことができ、さらにそれにより、抗体または抗体断片の変性を引き起こさずに剪断表面応力への組成物の曝露を可能とする。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/ml、または約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの濃度範囲で存在し得る。
【0197】
好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポリオキサマー(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用することができる陰イオン性洗浄剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムが挙げられる。陽イオン性洗浄剤としては、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0198】
抗体または抗体断片は、中性または塩形態の医薬組成物に配合することができる。薬学的に許容可能な塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)が挙げられ、それは無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸、または例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸を用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩も、無機塩基、例えば、水酸化カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは鉄、および例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から誘導することができる。
【0199】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1つの抗IL-22抗体または抗体断片と、併用療法において投与される少なくとも1つの他の治療薬または予防薬との組合せを含む。他の治療薬または予防薬は、サイトカイン阻害剤、増殖因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性剤、および細胞増殖抑制剤であり得、これは以下により詳しく記載される。1つの実施形態において、もう1つの治療薬は、関節炎のための標準治療であり、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);プレドニゾロン、プレドニゾン、コルチゾン、およびトリアムシノロンを含むコルチコステロイド;ならびにメトトレキサート、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)およびスルファサラジン、レフルノミド(アラバ)などの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD);エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)(メトトレキサートを伴うまたは伴わない)、およびアダリムマブ(ヒュミラ)を含む腫瘍壊死因子阻害剤、抗CD20抗体(リツキサンなど)、アナキンラ(キネレット)などの可溶性インターロイキン-1受容体、金、ミノサイクリン(ミノシン)、ペニシラミン、およびアザチオプリン、シクロホスファミド、およびシクロスポリンを含む細胞毒性剤を含むが、これらに限定されない。このような併用療法は、投与された治療薬のより低い用量を有利に利用することができ、したがって、様々な単独可能なに関連する考えられる毒性または併発症を回避することができる。さらに、本明細書に開示されている他の治療薬は、IL-22/IL-22R/IL-10R2経路に加えてまたは異なる経路に作用することができ、したがって、抗IL-22抗体の効果を増強および/または相乗作用することが期待される。
【0200】
いくつかの実施形態において、抗IL-22抗体または断片と組合せて使用される他の治療薬または予防薬は、自己免疫反応およびその後の炎症反応の様々な段階を妨害する治療薬であり得る。1つの実施形態において、本明細書に記載される少なくとも1つの抗IL-22抗体は、少なくとも1つのサイトカインおよび/または増殖因子アンタゴニストと共に製剤化および/または併用投与され得る。アンタゴニストは、可溶性受容体、ペプチド阻害剤、小分子、リガンド融合、抗体およびその結合断片(サイトカインまたは増殖因子またはその受容体または他の細胞表面分子と結合する)、および「抗炎症性サイトカイン」およびそのアゴニストを含み得る。
【0201】
これらの治療薬または予防薬の非限定的な例としては、少なくとも1つのインターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-12(またはそのサブユニットp35もしくはp40の1つ)、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17A-F (例えば、IL-17A/IL-17Fヘテロダイマーを含む)、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、およびIL-23(またはそのサブユニットp19もしくはp40の1つ));サイトカイン(例えば、TNFα、LT、EMAP-II、およびGM-CSF);ならびに増殖因子(例えば、FGFおよびPDGF)のアンタゴニストが挙げられる。治療薬はまた、インターロイキン、サイトカイン、および増殖因子に対する少なくとも1つの受容体のアンタゴニストを含むが、これらに限定されない。抗IL-22抗体は、さらに、CD2、CD3、CD4、CD8、CD20(例えば、リツキサン)、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、またはそれらのリガンド(例えば、CD154(gp39、CD40L))、またはLFA-1/ICAM-1およびVLA-4/VCAM-1(Yusuf-Makagiansar et al. (2002) Med Res Rev 22(2):146-67))などの細胞表面分子に対する阻害剤(例えば、抗体またはその結合断片)と併用することができる。
【0202】
特定の実施形態において、本明細書に記載される抗IL-22抗体と組合せて使用することができるアンタゴニストは、IL-1、IL-12(またはそのサブユニットp35もしくはp40の1つ)、TNFα、IL-15、IL-17A-F (それらのヘテロダイマー、例えばIL-17A/IL-17Fヘテロダイマーを含む)、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、およびIL-23(またはそのサブユニットp19もしくはp40の1つ)、ならびにそれらの受容体のアンタゴニストを含み得る。
【0203】
1つの実施形態において、他の治療薬または予防薬は、IL-12アンタゴニスト(IL-12(例えば、WO 00/56772を参照)またはそのサブユニットp35もしくはp40の1つに結合する抗体など); IL-12受容体阻害剤(IL-12受容体に対する抗体など);および可溶性IL-12受容体およびその断片から選択される。1つの実施形態において、他の治療薬は、IL-15アンタゴニスト、例えば、IL-15またはその受容体、IL-15受容体の可溶性断片、およびIL-15結合タンパク質から選択される。
1つの実施形態において、他の治療薬は、IL-18に対する抗体、IL-18受容体の可溶性断片、およびIL-18結合タンパク質 (IL-18BP, Mallet et al. (2001) Circ.Res.28)などのIL-12アンタゴニストから選択される。1つの実施形態において、他の治療薬は、IL-1アンタゴニスト、例えばインターロイキン-1変換酵素(ICE)阻害剤(例えば、Vx740)、IL-1アンタゴニスト(例えば、IL-1RA (ANIKINRA、AMGEN))、sIL-1RII (Immunex)、および抗IL-1受容体抗体から選択される。
【0204】
1つの実施形態において、他の治療薬または予防薬は、TNFに対する抗体(例えば、ヒトTNFα)、例えばD2E7(ヒト抗TNFα抗体、米国特許第6,258,562号、Humira(登録商標); CDP-571/CDP-870/BAY-10-3356(ヒト化抗TNFα抗体、セルテック/ファルマシア); cA2(キメラ抗TNFα抗体、Remicade(登録商標)、Centocor);および抗TNF抗体断片(例えば、CPD870)から選択される。他の例は、可溶性TNF受容体(例えば、ヒトp55またはp75)断片および誘導体、例えばp55 kdTNFR-IgG (55 kD TNF受容体-IgG融合タンパク質、Lenercept(登録商標)および75 kdTNFR-IgG (75 kD TNF受容体-IgG融合タンパク質、Enbrel(登録商標)、Immunex、参照、例えば Arthritis & Rheumatism (1994) Vol. 37, S295; J. Invest.Med.(1996) Vol.44, 235A)を含む。さらなる例は、酵素アンタゴニスト(例えば、TNFα変換酵素阻害剤、例えば、α-スルホニルヒドロキサム酸誘導体(WO 01/55112)またはN-ヒドロキシホルムアミド阻害剤(GW 3333、-005、または-022)およびTNF-bp/s-TNFR (可溶性TNF結合タンパク質、参照、例えばsee e.g., Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No. 9 (supplement), S284; およびAm.J. Physiol.Heart Circ.Physiol.(1995) Vol. 268, pp. 37-42)を含む。TNFアンタゴニストは、可溶性TNFレセプター(例えば、ヒトp55またはp75)断片および75 kdTNFR-IgGのような誘導体;およびTNFα変換酵素(TACE)阻害剤であり得る。
【0205】
1つの実施形態において、他の治療薬または予防薬は、可溶性IL-13受容体および/または抗IL-13抗体などのIL-13アンタゴニスト;およびIL-2融合タンパク質(例えば、DAB 486-IL-2および/またはDAB 389-IL-2、セラジェン(参照、Arthritis & Rheumatism (1993) Vol.36, 1223)および抗IL-2R抗体(例えば、抗Tac (ヒト化抗体、Protein Design Labs, see Cancer Res. 1990 Mar. 1; 50(5):1495-502))などのIL-2アンタゴニストから選択される。
【0206】
1つの実施形態において、他の治療薬または予防薬は、IDEC-CE9.1/SB 210396(抗CD4抗体、IDEC/SmithKline)などの非除去性抗CD4阻害剤から選択される。1つの実施形態において、他の治療薬は、CD80(B7.1)およびCD86(B7.2); ICOSL、ICOS、CD28、およびCTLA4(例えばCTLA4-1g); P-セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL);およびその抗炎症性サイトカインおよびアゴニスト(例えば抗体)などの共刺激分子のアンタゴニスト(抗体、可溶性受容体、またはアンタゴニストなど)から選択される。抗炎症性サイトカインは、IL-4(DNAX/Schering); IL-10(SCH 52000、組換えIL-10、DNAX/Schering); IL-13;およびTGFを含み得る。
【0207】
1つの実施形態において、他の治療薬または予防薬は、抗炎症薬、免疫抑制薬、代謝阻害剤、および酵素阻害剤から選択される。本明細書に記載されているIL-22アンタゴニストと組み合わせて使用できる薬剤または阻害剤の非限定的な例には、非限定的に以下の少なくとも1つを含む:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID) (例えばibuprofen, Tenidap (参照、例えば Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No. 9 (supplement), S280))、ナプロキセン(例えば、Neuro Report (1996) Vol.7、pp.1209-1213)、メロキシカム、ピロキシカム、ジクロフェナク、およびインドメタシン);スルファサラジン(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39、No. 9 (supplement), S281)を参照)、コルチコステロイド(プレドニゾロンなど)、サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID)、ヌクレオチド生合成の阻害剤(プリン生合成の阻害剤(例えば、メトトレキサートなどの葉酸拮抗薬)など)およびピリミジン生合成阻害薬(レフルノミド等のジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHODH) 阻害薬(参照、例えば, Arthritis & Rheumatism, vol. 39, No. 9 (supplement), S131, 1996; Inflammation Research, vol.45, pp. 103-107, 1996))。
【0208】
抗体に結合させる他の治療薬または予防薬は、以下に記載する少なくとも1つである:コルチコステロイド(経口、吸入および局所注射);免疫抑制薬(シクロスポリンおよびタクロリムス(FK-506)など);mTOR阻害薬(シロリムス(ラパマイシン)またはラパマイシン誘導体(CCI-779などのエステルラパマイシン誘導体(Elit. L. (2002) Current Opinion Investig.Drugs 3(8):1249-53; Huang, S. et al. (2002) Current Opinion Investig.Drugs 3(2):295-304));TNFαおよびIL-1(例えば、IRAK、IKK、p38またはMAPキナーゼ阻害剤);COX2阻害剤(例えば、celecoxibおよびそのバリアント (MK-966)Arthritis & Rheumatism, vol.39, No. 9 (supplement), S81 1996を参照);ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、R973401、Arthritis & Rheumatism, vol. 39, No. 9 (supplement), S282 1996を参照);トリフルオロメチルケトン類似体などのホスホリパーゼ阻害剤(例えば、cPLA2)特許第6,350,892号);血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の阻害剤;ならびに血管新生の阻害剤。
【0209】
医薬組成物は、対象への注射に適していてもよい。そのような組成物は、ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む無菌の水溶液または分散物;および滅菌注射液または分散物の即時調製のための無菌粉末であり得る。組成物は無菌でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流体でなければならない。それらは、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌のような微生物の混入を防がなければならない。
【0210】
無菌注射液は、要求量の抗体を適切な溶媒中に、必要であれば上記に議論された他の成分の1つ以上とともに取り込み、次いで滅菌濾過することにより調製される。一般に、分散液は、種々の滅菌された抗体溶液を、基礎分散媒体および上記に列挙されるものから要求される他の成分を含有する無菌ビヒクル中に取り込むことにより調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、例示的調製法は、活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末を予め滅菌濾過されたその溶液から生じさせる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0211】
医薬組成物は、宿主細胞中への抗体または抗体断片の導入のためにリポソームおよび/またはナノ粒子の形態であってもよい。リポソームおよび/またはナノ粒子の形成および使用は、当業者に公知である。リポソームは、水性媒体中で分散するリン脂質から形成され、多重膜同心円状二層小胞(多層膜ベシクル(MLV)とも称される)を自発的に形成する。MLVは、一般に25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、コア中で水溶液を含有する200~500Åの範囲の直径を有する小さな一枚膜ベシクル(SUV)の形成をもたらす。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度および二価陽イオンの存在に依存する。
【0212】
抗IL-22抗体、抗体断片または免疫コンジュゲートは、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセルにカプセル化され得る。例えば、それぞれ、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)中またはマクロエマルション中の、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルを用いることができる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示される。ナノカプセル剤は、一般に、安定した再現性のある手法で化合物を捕捉し得る。細胞内へのポリマーの過剰負荷に起因する副作用を回避するため、このような超微細粒子(サイズは約0.1μm)が、インビボで分解し得るポリマーを使用して一般に設計される。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が本発明における使用のために企図され、このような粒子は容易に作製することができる。徐放性製剤を調製することができる。
【0213】
徐放性製剤の好適な例としては、抗体または抗体断片を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、そのマトリクスは、成形品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態であり得る。
【0214】
製剤化に際して、医薬組成物は、用量製剤と適合する様式で、および治療効果があるようなそのような量で投与されるであろう。組成物は、上述の注射用溶液の型のような種々の用量形態で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用することができる。
【0215】
E.治療法と予防法
1つの態様において、本発明は、抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物を用いる治療法および予防法を提供する。このような方法には、in vitro、エクスビボ、およびin vivoの治療法および予防法が含まれる。1つの実施形態において、IL-22媒介シグナル伝達経路を阻害する方法が提供される。ThIL-17細胞機能を刺激または阻害する方法を提供する。炎症性および/または自己免疫障害を治療する方法も提供される。IL-22シグナリングに関連する障害を治療する方法をさらに提供する。ThIL-17媒介障害を治療する方法も提供される。
【0216】
1つの実施形態において、生物系においてIL-22媒介シグナル伝達経路を阻害する方法が提供される。本方法は、抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物を生物系に提供することを含む。
【0217】
別の実施形態では、ThIL-17細胞機能を阻害する方法が提供される。本方法は、ThIL-17細胞を抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物に曝露することを含む。例示的なThIL-17細胞機能は、限定されるわけではないが、細胞媒介免疫の刺激(遅延型過敏症);炎症部位への骨髄細胞(例えば、単球および好中球)のような自然免疫細胞の動員;および組織への炎症細胞浸潤の刺激を含む。
【0218】
抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物を用いて、免疫関連疾患、血栓性疾患(血栓症およびアテローム血栓症)、および心血管疾患を治療することができる。免疫疾患には、関節炎、自己免疫疾患、慢性炎症、炎症、炎症性腸疾患、乾癬、T細胞仲介疾患がある。抗IL-22抗体または抗体断片は、IL-22に対するアンタゴニストとして作用して、固体組織中の上皮細胞に作用し下流の免疫応答を間接的に調節するような、例えばTH17T細胞を含むT細胞サブセットの拡大をブロックするような、少なくとも1つのIL-22媒介免疫応答を調節することができる。1つの実施形態において、抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物が、免疫反応を調節するための手法において使用される。
この方法は、IL-22を本発明の抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物と接触させ、それによって免疫反応を調節することを含む。1つの実施形態において、免疫反応は、細胞増殖、細胞溶解活性、サイトカイン分泌、またはケモカイン分泌を含む。
【0219】
したがって、本発明の抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物を用いて、免疫細胞または造血細胞(例えば、骨髄系、リンパ系、または赤血球系の細胞、またはその前駆細胞)の活性(例えば、増殖、分化、および/または生存)を直接的または間接的に阻害することができ、したがって、様々な免疫障害および過剰増殖性障害を治療するための手法に用いることができる。治療可能な免疫障害の非限定的な例としては、例えば、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、ループス関連関節炎または強直性脊椎炎を含む)、強皮症、全身性エリテマトーデス、HIV、シェーグレン症候群、脈管炎、多発性硬化症、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎を含む)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、糖尿病(I型);皮膚(例えば、乾癬)、心血管系(例えば、アテローム性動脈硬化症)、神経系(例えば、アルツハイマー病)、肝臓(例えば、肝炎)、腎臓(例えば、腎炎)および膵臓(例えば、膵炎);心血管障害、例えば、コレステロール代謝障害、酸素フリーラジカル損傷、虚血;創傷治癒に関連する障害 ;呼吸器障害、例えば、喘息およびCOPD (例えば、のう胞性線維症);急性炎症状態(例えば、エンドトキシン血症、敗血症(sepsis)および敗血症(septicaemia)、トキシックショック症候群および感染症);移植拒絶反応およびアレルギーを含むがこれらに限定されない。1つの実施形態において、IL-22関連障害は、関節炎性障害、例えば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、または強直性脊椎炎の1つ以上から選択される障害;呼吸障害、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD);または、皮膚(例えば、乾癬)、心臓血管系(例えば、アテローム性動脈硬化症)、神経系(例えば、アルツハイマー病)、肝臓(例えば、肝炎)、腎臓(例えば、腎炎)、膵臓(例えば、膵炎)、および胃腸器官、例えば、大腸炎、クローン病およびIBD;急性炎症状態、例えば、エンドトキシン血症、敗血症(sepsis)および敗血症(septicaemia)、トキシックショック症候群および感染症、多臓器不全、呼吸器疾患(ARD)、アミロイドーシス、糸球体硬化症、膜性腎症、腎動脈硬化症、糸球体腎炎、腎の線維増殖性疾患などの腎障害、並びにその他の腎機能障害および腎腫瘍である。IL-22は上皮に作用するので、抗IL-22抗体は、上皮癌、例えば癌腫、黒色腫その他の治療に使用することができる。これら及び他の疾患におけるIL-22阻害の理論的根拠の説明については、WO 2003/083062(p.58-75)を参照されたい。
【0220】
さらに別の実施形態では、自己免疫障害を治療する方法が提供される。この方法は、このような処置を必要とする哺乳動物に、有効量の抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物を投与することを含む。自己免疫疾患には、結合組織疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、炎症性関節炎(例えば、リウマチ関節炎)、自己免疫性肺炎症、ギラン-バレー症候群、自己免疫性甲状腺炎、インスリン依存性糖尿病、ブドウ膜炎、重症筋無力症、移植片対宿主病、自己免疫性炎症性眼疾患、乾癬、自己免疫に関連する関節炎(例えば、リウマチ関節炎)、脳の自己免疫性炎症、および炎症性腸疾患が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、自己免疫障害はIL-23媒介自己免疫障害である。
【0221】
一実施形態では、乾癬症状を特徴とする乾癬および/または障害の治療方法が提供される。乾癬は、免疫系のT細胞が皮膚のタンパク質を認識し、タンパク質が見つかった領域を攻撃し、新たな皮膚細胞の急速すぎる増殖および痛みを伴う隆起した鱗状の病変を引き起こす自己免疫疾患と考えられる。これらの病変は、ケラチノサイトの過剰増殖および乾癬病変の表皮における活性化T細胞の蓄積を特徴とする。最初の分子的原因は不明であるが、遺伝子の連関は少なくとも7つの乾癬の感受性ローカス(Psor1:6p21.3、Psor2:17q、Psor3:4q、Psor4:1cent-q21、Psor5:3q21、Psor6:19p13、Psor7:1p)にマッピングされている。これらの遺伝子座のいくつかは、リウマチ関節炎、アトピー性皮膚炎、および炎症性腸疾患(IBD)を含む他の自己免疫/炎症性疾患と関連している。乾癬の治療に対する現行のアプローチは、IL-12またはTNF-αアンタゴニストの投与を含む。例えば、Nickoloff et al. (2004) J. Clin.Invest., vol.113, pp. 1664-1675; Bowcock et al. (2005) Nat.Rev.Immunol., vol.5, pp. 699-711; Kauffman et al. (2004) J. Invest.Dermatol., vol.123, pp. 1037-1044を参照のこと。乾癬の病因には、異なるIL-23/IL-22シグナル伝達経路が関与していることが知られている。したがって、このシグナル伝達経路を調節する治療薬は、乾癬治療の他の手法に代わるものを提供するか、または補完する可能性がある。
【0222】
1つの実施形態において、乾癬を治療する方法は、患者に抗IL-22抗体、抗体断片,バリアント,誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物の有効量を投与することを含む。様々な実施形態において、本方法は、さらに、(同一の医薬組成物または別個の医薬組成物のいずれかにおいて)少なくとも1つの追加の治療薬を投与することを含む。1つのそのような実施形態において、追加の治療薬は、IL-19、IL-20、およびIL-24から選択されるサイトカインの少なくとも1つのアンタゴニストである。このようなアンタゴニストには、IL-19、IL-20、IL-24、IL-20Ra、IL-20Rb、またはIL-10R2と結合する抗体が含まれるが、これらに限定されない。任意の数のそのような抗体は、任意の組合せにおいて選択され得る。別の実施形態では、追加の治療薬は乾癬の治療に効果的であることが知られている薬剤である。そのような治療薬の特定については、例えばNickoloff et al. (2004) J. Clin.Invest.113:1664-1675; Bowcock et al. (2005) Nat.Rev.Immunol.5:699-711; oyobi Kauffman et al. (2004) J. Invest.Dermatol.123:1037-1044に記載されている。そのような治療薬としては、T細胞を標的とする治療薬、例えばエファリズマブおよび/またはアレファセプト;IL-12のアンタゴニスト、例えばIL-12またはその受容体に結合する遮断抗体;およびTNF-αのアンタゴニスト、例えばTNF-αまたはその受容体に結合する遮断抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
1つの実施形態において、多発性硬化症を治療する方法が提供される。本方法は、抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物の有効量物を患者に投与することを含む。多発性硬化症は、炎症およびミエリン鞘(神経を隔離し、適切な神経機能のために必要とされる脂肪物質)の喪失を特徴とする中枢神経系疾患である。
【0224】
1つの実施形態において、関節炎を治療する方法は、患者に抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物の有効量を投与することを含む。関節炎は関節の炎症を特徴とする病気である。リウマチ関節炎は関節炎の中で最も頻度が高く、結合組織と滑膜(関節を覆う膜)の炎症を伴う。炎症を起こした滑膜はしばしば関節に浸潤し、関節軟骨や骨を損傷する。IL-22およびIL-22Rタンパク質および/または転写物は、両方のヒト疾患と関連している。RA滑膜生検では、IL-22タンパク質はビメンチン+滑膜線維芽細胞および一部のCD68+マクロファージで検出され、IL-22Rは滑膜線維芽細胞で検出される。滑膜線維芽細胞をIL-22で処理すると、単球走化性タンパク質-1、MCP-1の産生、ならびに全身代謝活性が誘導される(Ikeuchi, H., et al., (2005) Arthritis Rheum., vol.52, pp. 1037-46).。IL-22の阻害剤は、リウマチ関節炎の症状を改善する(WO 2005/000897 A2;米国特許第6,939,545号)。炎症性サイトカインおよびケモカインの分泌増加、さらに重要なことに、IL-22に依存する免疫応答に起因する疾患の増加は、本発明の方法によって治療され得る。同様に、本発明の方法は、ヒトにおけるRAまたは他の関節炎疾患の治療に使用され得る。
【0225】
1つの実施形態において、移植拒絶反応を治療する方法は、患者に抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物の有効量を投与することを含む。移植拒絶反応とは、ドナー由来の組織が宿主の免疫細胞に特異的に「攻撃」される免疫学的現象であり、「攻撃」するのはT細胞であり、そのT細胞レセプターはドナーのMHC分子を「異物」として認識する。この認識によりT細胞が活性化され、増殖して様々なサイトカインや細胞溶解タンパク質を分泌し、最終的に移植片を破壊する。混合リンパ球反応(MLR)および移植モデルは、Current Protocols in Immunology, Second Edition, Coliganら編、John Wiley & Sons,1994; Kasaianら(Immunity (2002)16: 559-569); Fulmerら(Am. J. Anat. (1963)113: 273-285);およびLenschowら(Science (1992)257: 789-792)によって記載されている。本発明の方法は、MLRを減少させ、IL-22に依存するヒトにおける移植拒絶および関連疾患(例えば、移植片対宿主病)を治療するために使用され得る。
【0226】
1つの実施形態において、本発明は、IL-22応答性細胞およびIL-22R/IL-10R2応答性細胞の異常な活性に関連する過剰増殖性障害を治療する方法を提供する。この方法は、対象においてIL-22および/またはIL-22Rおよび/またはIL-10R2応答性細胞の過剰増殖を阻害または減少させるために、抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物を投与することを含む。IL-22およびIL-22R発現は、限定されるわけではないが、膵臓、肺臓、皮膚、腸、肝臓、腎臓を含む多数の組織の上皮細胞で構成的である(Kotenko, S. V. et al. (2001) J. Biol.Chem., vol.276, pp. 2725-32; Xie, M. H. et al. (2000) J. Biol.Chem., vol.275, pp. 31335-9; Wolk, K. et al. (2004) Immunity, vol.21, pp. 241-54)。さらに、IL-22受容体複合体はまた、罹患した関節および正常腸由来の線維芽細胞の表面上で発現される(Ikeuchi, H. et al. (2005) Arthritis Rheum., vol.52, pp. 1037-46; Andoh, A. et al. (2005) Gastroenterology, vol.129, pp. 969-84)。これらの細胞型の腫瘍性誘導体は、IL-22に対して過剰反応性であり、これらの細胞の生体内での生存能力を調節する。従って、本発明の方法は、以下に記載のような新生物の進行を阻害するために使用され得る:扁平上皮がん、基底細胞癌、移行上皮乳頭腫および移行上皮がん、腺腫、腺癌、形成性胃組織炎、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、ビポーマ、肝内胆管癌、肝細胞癌、アデノイド、 虫垂のカルチノイド腫瘍、プロラクチノーマ、膨大細胞腫、ヒュルトレ細胞腺腫、腎細胞癌、Grawitz腫瘍、多発性内分泌腺腫、子宮内膜性腫瘍、付属器および皮膚付属器新生物、粘膜表皮の新生物、のう胞性、粘液性および漿液性新生物、のう胞腺腫、腹膜偽粘液腫、管、小葉および髄様新生物、腺房細胞新生物、複合体上皮新生物、Warthin腫瘍、胸腺腫、特殊な性腺腫瘍、性索間質性腫瘍、莢膜細胞腫、顆粒膜腫、卵巣男性胚腫、セルトリ-ライディッヒ細胞腫、傍神経節腫、褐色細胞腫、グロムス腫瘍、メラノサイト系母斑、悪性黒色腫、黒色腫、結節性黒色腫、異形成母斑、悪性黒色腫、表在拡大型黒色腫、または末端部黒子様黒色腫。
【0227】
さらに別の実施形態では、腫瘍進行を阻害する方法が提供される。該方法は、有効量の抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む。
【0228】
別の実施形態では、本発明は、対象における急性期反応を減少、阻害または減少させる方法を提供する。本法は、対象に、抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物を、対象における急性期反応を減少、阻害または減少させるのに充分な量で投与することを含む。1つの実施形態において、対象は、例えば、呼吸障害、炎症性障害および自己免疫障害を含む、本明細書に記載されるIL-22関連障害を患っている哺乳動物、例えばヒトである。1つの実施形態において、IL-22結合剤は、局所的に、例えば、局所的に、皮下的に、または全身循環しない他の投与を行う。
【0229】
別の実施形態では、本発明は、CD20、CD11a、CD18、ErbB2、EGFR、ErbB3、ErbB4、または血管内皮因子(VEGF)に結合する抗体などの他の免疫疾患関連抗原または腫瘍関連抗原に対する抗体と、抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物を同時にまたは連続的に投与する方法を提供する。代わりに、または加えて、本明細書に開示されている同一または2以上の異なった抗原を結合する2以上の抗体を患者に同時投与してもよい。特定の実施形態に、患者に1種以上のサイトカインを投与することも有益であろう。特定の実施形態に、本発明の抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物を、増殖阻害剤と同時投与する。例えば、成長阻害剤は、組成物の投与の前、後、または同時に投与することができる。増殖抑制剤に適した用量は、現在使用されているものであり、増殖抑制剤とその組成物の併用作用(相乗作用)により低下する可能性がある。
【0230】
上記の各および全ての方法では、本発明の抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、または任意の上記医薬組成物は治療において、単独で、免疫コンジュゲートとして、又は他の薬剤との併用で使用することができる。例えば、本発明の抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、または任意の上記医薬組成物は、単独で、免疫コンジュゲートとして、または他の薬剤との組合せで治療法において使用することができる。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療薬と同時投与することができる。ある実施形態において、追加の治療薬は、抗血管新生剤である。ある実施形態において、追加の治療薬は、VEGFアンタゴニスト(一部の実施形態において、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)である。ある実施形態において、追加の治療薬は、EGFRアンタゴニスト(一部の実施形態において、エルロチニブ)である。ある実施形態において、追加の治療薬は、化学療法剤および/または細胞増殖抑制剤である。ある実施形態において、追加の治療薬は、タキソイド(例えば、パクリタキセル)および/または白金剤(例えば、カルボ白金(carboplatinum))である。ある実施形態において、追加の治療薬は、患者の免疫または免疫系を向上させる薬剤である。
【0231】
上記のこのような併用療法は、併用投与(同一または別個の配合物中に2つ以上の治療薬が含まれる)、および別個の投与を包含し、別個の投与の場合、抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物の投与は、追加の治療薬および/またはアジュバントの投与前、投与と同時に、および/または投与後に行うことができる。抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物は、放射線療法との組合せで使用することもできる。
【0232】
F.診断方法
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物は、生物学的試料におけるIL-22の存在を定量的または定性的に検出するために使用することができる。ある実施形態において、生物学的試料は、細胞または組織、例えば、乳房、膵臓、食道、肺および/または脳細胞または組織を含む。
【0233】
例示的実施形態において、本発明の抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物は、検出可能な分子または物質、例えば、上記の蛍光分子、放射性分子または当分野において公知の任意の他の標識により標識することができる。例えば、本発明の抗体は、放射性分子により標識することができる。好適な放射性分子としては、限定されるものではないが、シンチグラフィー試験に使用される放射性原子、例えば、123I、124I、111In、186Re、および188Reが挙げられる。あるいは、本発明の抗体または抗体断片は、核磁気共鳴(NMR)イメージング用のスピン標識、例えば、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄により標識することもできる。抗体の投与後、患者内の放射性標識抗体の分布を検出する。任意の好適な公知の方法を使用することができる。一部の非限定的な例としては、コンピュータ断層撮影(CT)、ポジトロン放出断層撮影(PET)、磁気共鳴イメージング(MRI)、蛍光、化学発光および超音波診断が挙げられる。
【0234】
ある実施形態において、標識は、直接検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色団、高電子密度、化学発光、および放射性標識)、および間接的に、例えば、酵素反応または分子相互作用を介して検出される酵素またはリガンドのような部分が挙げられる。例示的な標識としては、限定されるものではないが、放射性同位体32P、14C、125I、3H、および131I、フルオロフォア、例えば希土類キレートまたはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号明細書)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素、例えば、HRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼとカップリングしている複素環オキシダーゼ、例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカルなどが挙げられる。
【0235】
1つの実施形態において、哺乳動物における乾癬を診断する方法が提供され、方法は、哺乳動物から得られた組織細胞の試験試料におけるIL-22またはIL-22Rポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルを検出することを含み、対照試料(例えば、同じ細胞型の既知の正常組織細胞の試料)と比較して、試験試料におけるより高い発現レベルが、試験試料が得られた哺乳動物における乾癬の存在を示す、方法が提供される。検出は定性的であっても定量的であってもよい。1つの実施形態において、試験試料は血液または血清を含む。1つの実施形態において、IL-22またはIL-22Rポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルを検出することは、(a)抗IL-22抗体または抗IL-22R抗体、抗体断片と哺乳動物から得られた試験試料とを接触させること、および(b)抗体と試験試料中のIL-22またはIL-22Rポリペプチドとの間の複合体の形成を検出することを含む。抗体は、検出可能な標識に連結され得る。複合体形成は、例えば、光学顕微鏡検査、フローサイトメトリー、蛍光測定法、または当該技術分野で公知の他の技術によって監視することができる。乾癬の疑いのある個体から試験試料を得ることができる。
【0236】
本発明の本発明の抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物は、IL-22過剰発現に関連する癌および疾患の診断および病期分類に有用であり得る。IL-22過剰発現に関連する癌としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、膵臓癌、グリア細胞腫瘍、例えば、膠芽細胞腫および神経線維腫症、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、黒色腫、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)、腎臓癌(renal cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞腫、肉腫、血液癌(白血病)、星状細胞腫、種々のタイプの頭頸部癌、および他のIL-22発現または過剰発現の過剰増殖性疾患を挙げることができる。
【0237】
本発明の抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物が、IL-22過剰発現に関連する癌および疾患の診断および病期分類のための方法において使用され得る。本発明の抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記医薬組成物を、IL-22発現が増加または減少している免疫系の疾患を診断するための方法に使用することができる。特定の実施態様において、本発明は、IL-22の発現または過剰発現に関連する疾患を診断する方法を提供する。このような疾患の例としては、免疫関連疾患、血栓性疾患(血栓症およびアテローム血栓症)、および心血管疾患が挙げられる。免疫関連疾患には、関節炎、自己免疫疾患、慢性的炎症、炎症、炎症性腸疾患、乾癬、T細胞介在疾患などがある。
【0238】
1つの実施形態において、診断方法または検出方法に用いるための抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記の医薬組成物が提供される。さらなる態様において、生体試料中のIL-22の存在を検出する方法が提供される。さらなる態様において、生体試料中のIL-22の量を定量する方法が提供される。特定の実施形態に、この方法は、IL-22への結合を許容する条件下で、本明細書に記載される抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物と生物学的試料を接触させ、複合体が形成されるか否かを検出することを含む。このような方法は、in vitroまたはin vivoで実施することができる。1つの実施形態において、抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物は、治療に適格な対象を選択するために使用される。いくつかの実施形態において、治療は、抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲート、または任意の上記の医薬組成物の対象への投与を含むであろう。
【0239】
別の実施形態では、本発明は、適当なパッケージング中に抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物を含む診断キットに関する。キットには、IL-22またはIL-22Rポリペプチドを検出するために組成物を使用するための説明書が含まれていてもよい。一態様では、診断キットは乾癬の診断キットである。
【0240】
G.製品およびキット
本発明の別の態様において、上記障害の治療、予防および/または診断に有用な抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物を含有する製品が提供される。製品は、容器および容器上または容器に伴うラベルまたは添付文書を含む。好適な容器としては、例えば、瓶、バイアル、注射器、IV溶液バッグなどが挙げられる。容器は、種々の材料、例えばガラスまたはプラスチックから形成することができる。容器は、組成物それ自体、または病態の治療、予防、および/もしくは診断に有効な別の組成物との組合せである組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針により貫通可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選択される病態の治療に使用されることを示す。さらに、製品は、(a)抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物を含む組成物を中に含有する第1の容器;および(b)さらなる細胞毒性剤または他の治療薬を含む組成物を中に含有する第2の容器を含み得る。本発明のこの実施形態における製品は、組成物を特定の病態を治療するために使用することができることを示す添付文書をさらに含み得る。あるいは、またはさらに、製品は、薬学的に許容可能な緩衝液、例えば、注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液およびデキストロース溶液を含む第2(または第3)の容器をさらに含み得る。これは、商業的および使用者の見地から望ましい他の材料、例として、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針および注射器をさらに含み得る。
【0241】
上記製品のいずれも、1つ以上の抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物を含み得ることが理解される。
【0242】
最後に、本発明はまた、少なくとも1つの本発明の抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物を含むキットを提供する。キットは、IL-22発現(増加または減少)の検出において、または治療もしくは診断アッセイにおいて使用され得る。本発明のキットは、固体担体、例えば、組織培養プレートまたはビーズ(例えば、sepharoseビーズ)にカップリングしている抗IL-22抗体、抗体断片、バリアント、誘導体、免疫コンジュゲートまたは任意の上記医薬組成物を含有し得る。例えば、ELISAまたはウェスタンブロットにおける、インビトロでのIL-22の検出および定量のための抗体を含有するキットを提供することができる。検出に有用なこのような抗体は、標識、例えば、蛍光または放射標識とともに提供することができる。
【0243】
キットは、その使用に関する説明書をさらに含有する。一部の実施形態において、説明書は、U.S.Food and Drug Administrationによりインビトロ診断キットに要求される説明書を含む。一部の実施形態において、キットは、試料中の脳脊髄液の存在または不存在を、前記試料中のIL-22の存在または不存在に基づき診断するための説明書をさらに含む。他の実施形態において、キットは、1つ以上の酵素、酵素阻害剤または酵素活性化剤をさらに含む。さらに他の実施形態において、キットは、1つ以上のクロマトグラフィー化合物をさらに含む。さらに他の実施形態において、キットは、分光光度アッセイ用の試料を調製するために使用される1つ以上の化合物をさらに含む。さらなる実施形態において、キットは、指示薬の強度、色スペクトル、または他の物理的属性に従ってIL-22の存在または不存在を解釈するための比較参照材料をさらに含む。
【0244】
以下の実施例は、限定されるものではないが、本開示のIL-22抗体の説明のためのものである。当分野において通常見出され、当業者に明らかである種々の条件およびパラメータの他の好適な改変および適合が本開示の範囲内である。
【実施例0245】
実施例1:抗IL-22抗体
マウスをヒトIL-22で免疫し、ヒトIL-22(hIL-22)に結合するマウスモノクローナル抗体(3C3 mAb)を発現する機能性ハイブリドーマクローン3C3を作製した。3C3 mAbのhIL-22に対する結合親和性は約100pMである(SPR分析測定)。しかし、3C3 mAbはマウスIL-22(mIL-22)に結合できなかった。3C3 mAbは、HepG2細胞においてhIL2によるStat3リン酸化の誘導を阻止することができる。3C3 mAbをヒト化し、ヒト化抗体hum10を作製した。
【0246】
Hum10を包括的位置進化(CPE(登録商標))のために選択してHum10バリアントを含むCPE(登録商標)ライブラリーを作成した。hum10の6つのCDRにおける各位置を少なくとも15アミノ酸で置換し、抗体バリアントを作成した。hum10中のCDRの位置を
図1に示し、いくつかの例示的な置換を示す。6つのCDRには合計63の位置がある。CPE(登録商標)ライブラリーには、全部で1068の抗体バリアント(軽鎖CDRに変異を有する472の変異体と重鎖CDRに変異を有する596の変異体)が含まれていた。各抗体バリアントは配列決定により検証した。CPE(登録商標)バリアントを96ウェルフォーマットでCHO細胞にトランスフェクトし、上清をトランスフェクション後48時間で採取した。上清中のCPE(登録商標)バリアントの発現量は、市販の精製ヒトIgGを基準とした定量ELISA法で測定した。
【0247】
CPE(登録商標)ライブラリーは、ヒトIL-22とマウスIL-22の両者に高親和性で結合できる抗体についてスクリーニングした。具体的には、CPE(登録商標)バリアントを、マウスIL-22(mIL-22)結合親和性についてアフィニティーELISAによりスクリーニングした。対照としてhum10を親和性ELISAプレートごとに含めた。hum10と比較してmIL-22への結合親和性が増加したCPE(登録商標)バリアントを、一次CPE(登録商標)ヒットとしてスコア化した。一次CPE(登録商標)のヒットを再アレイ化し、再トランスフェクトし、親和性ELISAによって再度スクリーニングし、またmIL-22とhIL-22の両方に結合する抗体についてmIL-22とヒトIL-22(hIL-22)の両方を用いた滴定ELISAによってもスクリーニングした。スクリーニングにより、表1に示す10種類の変異体抗体が同定された。これらの10種類の変異体抗体は、ELISAデータおよび配列の多様性、スケールアップおよび精製の能力に基づいて選択した。
【0248】
実施例2:精製抗IL-22抗体
選択した抗IL-22抗体をCHO細胞で発現させ、発現した抗体を精製してさらなる試験を行った。抗体の純度を確認するために、それらを10% SDS PAGEゲル中に装填した。抗体は、非還元条件下で単一バンドを示し(
図4、左半分)、対になった軽鎖および重鎖を有する完全な抗体を示した。還元条件下では、抗体はL鎖と重鎖に分離され、各レーンで2本のバンドとして示された(
図4、右半分)。レーンMはゲル上にマークされた各バンドについてkDaでの分子量マーカーを示した。
【0249】
精製された抗体はまた、流速:0.3ml/分のSuperdex200 5/150 GLカラム上でサイズ排除クロマトグラフィー分析によって分析された。洗浄緩衝液は1x PBS緩衝液とした。全部で50μlの抗体をカラムに注入した。SEC分析は単一のピークを生じ(
図5A-5C)、抗体が高純度であることを示した。
図5AはCPS02の純度を示し、
図5BはCPS09の純度を示す。市販のヒトIgG標準品を対照として使用し、その結果を
図5Cに示す。単一ピークは、精製された抗体が十分に純粋であり、試験条件下で凝集体を形成しないことを示した。
【0250】
実施例3:抗IL-22抗体の特異性
表1の10種類の抗体の特異性を、ヒトおよびマウスIL-22の両方、ならびに関連抗原(ヒトIL19、ヒトIL20、ヒトIL24、ヒトIL26、INFアルファA、INF-γ、INF-λ1、INF-2および非特異的抗原)を用いてELISAでアッセイした。プレートは1μg/mlの濃度で100μlの抗原で被覆した。このプレートを100ng/mlの濃度で抗体に曝露した。ELISAアッセイにより抗hIgG-HRPで結合抗体を検出した。
【0251】
表1の10種類の抗体は、同等の親和性でヒトおよびマウスのIL-22に結合できることが見出されたが、それらは関連抗原に対して非常に低い親和性を示した(
図6)。このことは、10種類の抗体がヒトおよびマウスのIL-22に特異的であり、他の関連抗原にはほとんど親和性がないことを示している。
【0252】
実施例4:抗IL-22抗体のmIL-22及びhIL-22に対する結合親和性
表1の10種類の抗体の親和性は、SPR-2装置(シエラセンシオルズ、ハンブルク、ドイツ)での捕捉アッセイを用いて、表面プラズマ共鳴(SPR)により測定した。抗原hIL-22とmIL-22をチップ上に固相化した。アッセイ用のランニング緩衝液はpH7.4、500mM NaCl、および0.05% TWEEN(登録商標)20の10mM HEPESを含んでいた。緩衝液はアッセイ中25μl/分の流速であった。off-rateは6分間測定した。結合定数は曲線適合ソフトウェアAnalyzer2(Sierra Sensors)を用いて計算した。センサーグラムは機器固有ソフトウェアおよびBIA評価4.1ソフトウェアで分析した。結合データは、Langmuir 1:1モデル(ヒトIL-22)または不均一リガンドモデル(マウスIL-220)を用いて分析した。
【0253】
各抗体の4つの種々の濃度で抗体を試験した:hIL-22については0.33nM、0.67nM、3.3nM、6.7nM;mIL-22については1、2、10、20nM。対照として、抗体CPE-LC-E049Kを用いた。結合曲線を作成し、表2に示す抗体のKa、KdおよびKDを算出するために用いた。
【0254】
実施例5:Stat3のリン酸化の誘導
30,000ヒトHepG2細胞を96ウェルプレートに播種し、一晩血清飢餓状態にした。0.11μg/mL、0.33μg/mL、1μg/mL、及び3μg/mLの濃度の抗IL-22抗体及び対照hum10抗体の3倍希釈液を、200ng/mLのhIL-22又はmIL-22と37℃で1時間インキュベートした後、血清飢餓ヒトHepG2細胞に添加した。HepG2細胞を抗体-IL-22混合物と37℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、HepG2細胞をPBSで洗浄し、溶解した。細胞溶解物の半分を用いて、ベンダーのプロトコルに従ってCell Signaling kit #7300を用いてリン酸化Stat3のレベルを測定し、他の半分の細胞溶解物を用いて、ヒトStat3に対するSanta Cruzウサギポリクローナル抗体(Sc-7179)を用いたウエスタンブロット分析により、総Stat3のレベルを測定した。
【0255】
ヒトIL-22への結合を介する抗IL-22抗体によるStat3リン酸化の阻害を
図7Aに示し、マウスIL-22への結合を介するStat3リン酸化の阻害を
図7Bに示す。陰性対照ヒトIgG抗体はStat3リン酸化の阻害を示さなかった。選択された抗IL-22抗体はStat3リン酸化の用量依存的阻害を示した(
図7A-7B)。
【0256】
実施例6:CXCL1産生の抑制
種々の濃度の抗IL-22抗体を、通常サイトカインCXCL1を産生するHT29細胞とインキュベートした。HT29細胞によるCXCL1の産生を経時的に測定し、その結果を
図8に示す。抗体によるCXCL1産生の阻害は用量依存性であり、サイトカイン産生の阻害における抗体の役割を示した。
【0257】
実施例7:マウスにおける抗IL-22抗体の薬物動態
2種類の抗IL-22抗体CPS02とCPS09をNOD SCIDマウスで試験した。抗体を0.3mg/kgと10mg/kgの2用量で静脈注射した。各用量群に3匹のマウスを用いた。血液標本を、静脈注射後10分、1時間、3時間、7時間、24時間、48時間、96時間、168時間、240時間および336時間で、マウスから回収した。血液試料中の注射抗体の濃度を固相ELISAで測定した。
【0258】
抗体の半減期は、CPS02については
図9A-9B、CPS09については
図10A-10Bに示されるように、マウスにおいて長かった。マウスにおけるCPS02の半減期は10mg/kg注射後約18時間であった。マウスにおけるCPS09の半減期は10mg/kg注射後約16時間であった。
【0259】
実施例8:IL-22による急性期反応の抑制
5μgのmIL-22を用いて、マウスにおける急性期反応を刺激した。急性期反応はマウスの血液中の血清アミロイド(SAA)濃度で測定した。抗IL-22抗体を2つの異なった用量で投与し、IL-22誘導急性期反応:5μgと50μgを阻害した。各用量群に5匹のマウスを用いた。SAA濃度を、IL-22および/または抗体の注射後24時間で測定し、結果を
図11に示す。
【0260】
mIL-22のみをマウスに注射すると、マウスは高レベルのSAAを産生した。抗IL-22抗体のみをマウスに注射した場合、マウスにおけるSAA濃度は、刺激の欠如のために低かった(mIL-22、
図11の右パネル)。mIL-22および抗IL-22抗体の両方をマウスに注射した場合、マウスのSAA濃度はmIL-22のみを用いた場合よりも有意に低く、抗IL-22抗体がマウスの急性期反応を効果的に阻害したことを示している(
図11の左パネル)。
【0261】
実施例9:マウスにおけるイミキモド誘発乾癬の処置
本発明の2つの抗IL-22抗体、CPS02およびCPS09を、マウスにおけるイミキモド(IMQ)誘発乾癬の処置に使用した(
図12)。マウスは、雄BALB/cマウスであり、これは、ハウスマウスのアルビノ、実験室で繁殖させた系統であった。体重18~20gの計70匹のマウスを7日間馴化した後、乾癬を誘発した。
【0262】
70匹のマウスを7群(各群10匹)に無作為に割り付けた。1群(第1群)を陰性対照として用い、イミキモドをマウスに投与せず、代わりにワセリンに置き換えた。したがって、この陰性対照群は乾癬を誘発しなかった。他の6群(第2~7群)には、0日目から7日目までイミキモドを82.5mg/マウス (5%クリーム)を1日1回(qd)8日間連続して局所投与(左耳20mg、剃毛背部62.5mg)し、乾癬を誘発した。背面のスキンは、2x3cm2の領域を露出するようにシェービングされた。ワセリン対照群については、0日目から7日目まで82.5mg/マウス1日1回(qd)、8日間連続でワセリンを塗布した(左耳20mg、剃毛背部62.5mg)。
【0263】
第3群~第7群のマウスにのみ乾癬処置を施したため、第1群~第2群は表5に示すように無処置とした。2群は、未処置で対照群として役立つ乾癬誘導マウスの群であった。第3群~第7群は、表5に示すような様々な処置レジメンで処置した。投与期間はイミキモド塗布期間(0日目~7日目)と完全に重複していた。第2群については、8日間(0日目~7日目)の各日に、マウスにイミキモドとデキサメタゾンの両方を投与した。静脈内(I.V.)注射を受けた群については、0日目と3日目にI.V.注射後1時間以内にイミキモドを適用した。
【表5】
【0264】
第3群は、乾癬に用いられる現行の治療的処置であるステロイドデキサメサゾンで処置した。デキサメタゾンは8日間、1日2回(BID)局所適用された。第4群はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で処置し、これを陰性対照とした。第5群には、陰性対照としても働くアイソタイプ対照抗体を投与した。第6群~第7群には、それぞれ抗IL-22抗体CPS02(A)およびCPS09(B)を投与した。第4群~第7群の処置は、0日目と3日目各単回静脈内(I.V.)注射により投与した。第6群の3匹のマウスは第0日に死亡し、2匹は第1日に死亡した。3日目に、この群のI.V.注射用量は10mg/kgに減少した。
【0265】
8日間の投与期間中、0、3、5および7日目に耳厚を測定した。体重と種々の皮膚スコアを毎日記録した。0日目、3日目、5日目および7日目に乾癬部位の写真を撮影した。1日目と4日目に、約60μlの血液を24時間にわたって後眼窩出血を介して採取し、エチレンジアミン四酢酸二カリウム(K
2EDTA)でコーティングしたBDマイクロテイナー(登録商標)チューブに入れた。その後、血漿を採取し(少なくとも20μlの血漿を得るため)、-80℃で保存した。これらの試料をさらに分析し、結果を
図12に示す。
【0266】
紅斑、鱗屑および厚さの皮膚スコアは、確立された等級付けシステムに従って毎日測定した。紅斑、鱗屑および厚さは、0~4:0(なし)、1(軽度)、2(中等度)、3(著明)、4(非常に著明)の評価でそれぞれ独立してスコア化した。累積(総)皮膚スコアも算出した。
【0267】
処置終了時(7日目)に、以下のエンドポイントを収集した:
・ 脾臓指数(脾臓重量/体重)
・ 採血し、-80℃で分離保存した血清
・ 背部および左耳から採取した罹患皮膚(1)各マウスについて、背部皮膚用スライド1枚、左耳用スライド1枚、(2)代表的な写真1枚/群
・ 背部皮膚試料のリアルタイムPCRを実施した。罹患した背部皮膚から全mRNAを抽出し、IL-23、IL-22、CCL3、CXCL3、NPG、IL-17A、S100A7およびロリクリン(対照としてβ-actin)の発現を決定するために、リアルタイムPCRにかけた。
【0268】
処置の効果は、二元配置分散分析(ANOVA、Bonferroniポストテスト)または一元配置ANOVA分析を用いて統計学的に分析した。処置群と対照群との比較については、
図13-18にp値が0.05未満の場合は(*)、0.01未満の場合は(**)、または0.001未満の場合は(***)として示す。
【0269】
デキサメタゾンを処置したマウスと比較して、抗IL-22抗体CPS02(A)およびCPS09(B)は、処置したマウスの体重減少を少なくすることが観察された。実際、抗IL-22抗体CSP09(B)は、PBS緩衝液陰性対照と同様の体重減少をもたらした。これは、本発明の抗IL-22抗体が、デキサメタゾンによる既知の処置と比較した場合に、少なくとも1つの有害な副作用を減少させたという明確な指摘である。
図13参照。
【0270】
乾癬の症状は、皮膚の厚さ、紅斑および鱗屑を観察して測定する。より薄い皮膚の厚さは、より成功した処置の指標である。抗IL-22抗体CSP02(A)およびCSP09(B)で処置したマウスでは、陰性対照、アイソタイプ一致抗体、PBSおよびビヒクル処置で処置したマウスよりも耳皮膚厚が薄かった。デキサメタゾンで処置したマウスの耳の厚さは、イミキモド誘導を受けなかったマウスのそれと同様であった。
図14参照。
【0271】
抗IL22抗体CSP02(A)とCSP09(B)で処置したマウスの皮膚紅斑スコアも、陰性対照、アイソタイプ一致抗体、PBSとビヒクル処置で処置したマウスで観察された皮膚紅斑スコアより低かった。この場合も、デキサメタゾンを投与したマウスの皮膚紅斑スコアは、イミキモドを投与しなかったマウスと同程度であった。
図15参照。
【0272】
抗IL-22抗体CSP02(A)およびCSP09(B)で処置したマウスの皮膚鱗屑スコアも、陰性対照、アイソタイプ一致抗体、PBSおよびビヒクル処置で処置したマウスの皮膚鱗屑スコアより低かった。ここでも、デキサメタゾンで処置したマウスの皮膚鱗屑スコアは、イミキモド誘導を受けなかったマウスの皮膚鱗屑スコアと同様であった。
図16参照。
【0273】
抗IL-22抗体CSP02(A)およびCSP09(B)で処置したマウスの皮膚厚も、陰性対照、アイソタイプ一致抗体、PBSおよびビヒクル処置したマウスの皮膚厚よりも低かった。この場合も、デキサメタゾンを投与したマウスの皮膚の厚さは、イミキモドを誘発しなかったマウスの皮膚の厚さと同程度であった。
図17参照。
【0274】
最後に、皮膚の全体的な状態を、投与マウスの総皮膚スコアとして評価した。抗IL-22抗体CSP02(A)とCSP09(B)で処置したマウスの総皮膚スコアも、陰性対照、アイソタイプ一致抗体、PBSとビヒクル処置で処置したマウスの総皮膚スコアより低かった。抗IL-22抗体CSP09(B)を投与したマウスは特に総皮膚スコアが良好であった。この場合も、デキサメタゾンを投与したマウスの総皮膚スコアは、イミキモド誘発を受けなかったマウスの総皮膚スコアと同程度であった。
図18参照。
【0275】
以上より、抗IL-22抗体は、皮膚の厚さ、紅斑、鱗屑の乾癬症状を改善することにより、マウスモデルにおける乾癬の処置に効果的であることが示された。同時に、条件的に活性な抗IL-22抗体は、乾癬に対する既知の処置に比べて副作用の減少を示した。抗IL-22抗体CSP09(b)はとくに乾癬の処置に効果があり、副作用も軽微であった。
【0276】
しかし、本発明の数多くの特徴および利点が、本発明の構造および機能の詳細と共に前述の記載に示されていても、本開示は例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲で表された用語の広義で示される全ての程度で、特に本発明の原理内で部品の形状、寸法、および配置に関して、変更が詳細に施され得ることが、理解されなければならない。
【0277】
本明細書に挙げられる全ての文献は、参照により全体として、少なくとも特に依拠する開示を提供するために本明細書に援用される。本出願人らは、任意の開示実施形態を公的に提供する意図はなく、任意の開示の改変または変更が特許請求の範囲の範囲内に文字通り収まり得ない程度で、それらは、均等論のもと、その一部とみなされる。
【0278】
抗IL-22抗体またはその抗原結合性抗体断片を含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、抗IL-22抗体またはその抗原結合性抗体断片がSASSSVSX1MH(配列番号1)から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)、X2TX3KLX4S(配列番号2)から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)、およびQQWSSNPYIT(配列番号3)のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)を含む軽鎖可変領域、ならびに
GYIFX5SYWIH(配列番号4)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)、RIYPGTGX6TYYNX7KFKG(配列番号5)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)、およびSYX8X9SVX10Y(配列番号6)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)を含む重鎖可変領域を含み、
X1はYまたはKであり、X2はEまたはKであり、X3はSまたはRであり、X4はAまたはLであり、X5はTまたはRであり、X6はNまたはRであり、X7はEまたはRであり、X8はDまたはMであり、X9はSまたはYであり、X10はAまたはGであり、
但し、a)X1からX10が、それぞれY、E、S、A、T、N、E、D、S、およびAであることはできず、
b)X1からX4のうち3つまでが同時にそれぞれY、E、S、およびA以外になり、X5からX10のうち5つまでが同時にそれぞれT、N、E、D、S、およびA以外になることができる、
医薬組成物。
自己免疫疾患を治療するための医薬の製造における抗IL-22抗体またはその抗原結合性抗体断片の使用であって、抗IL-22抗体またはその抗原結合性抗体断片がSASSSVSX1MH(配列番号1)から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)、X2TX3KLX4S(配列番号2)から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)、およびQQWSSNPYIT(配列番号3)のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)を含む軽鎖可変領域、ならびに
GYIFX5SYWIH(配列番号4)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)、RIYPGTGX6TYYNX7KFKG(配列番号5)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)、およびSYX8X9SVX10Y(配列番号6)から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)を含む重鎖可変領域を含み、
X1はYまたはKであり、X2はEまたはKであり、X3はSまたはRであり、X4はAまたはLであり、X5はTまたはRであり、X6はNまたはRであり、X7はEまたはRであり、X8はDまたはMであり、X9はSまたはYであり、X10はAまたはGであり、
但し、a)X1からX10が、それぞれY、E、S、A、T、N、E、D、S、およびAであることはできず、
b)X1からX4のうち3つまでが同時にそれぞれY、E、S、およびA以外になり、X5からX10のうち5つまでが同時にそれぞれT、N、E、D、S、およびA以外になることができる、
使用。
軽鎖可変領域が配列番号7~12から選択されるアミノ酸配列を有し、重鎖可変領域が配列番号13~18から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の医薬組成物または請求項2に記載の使用。
抗体またはその抗原結合性抗体断片が、互いの±20%、±15%、±10%または±5%以内の親和性でヒトIL-22および哺乳動物IL-22に結合する、請求項6または7に記載の医薬組成物または使用。
抗体またはその抗原結合性抗体断片が、少なくとも1つの動物またはヒトにおける免疫応答を阻害することが可能である、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物または使用。
抗IL-22抗体またはその抗原結合性抗体断片が、オリゴ糖、非タンパク質性部分、治療薬、予防薬および診断薬から選択される少なくとも1つの部分の付加により改変されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物または使用。
抗IL-22抗抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項2に記載の使用。
抗IL-22抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域および配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項2に記載の使用。