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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005973
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】回復予測システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20240110BHJP
   G06Q 10/06 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
G16H10/00
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106483
(22)【出願日】2022-06-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年3月28日 トヨタ自動車株式会社のウェブサイトにて公開 https://www.toyota.co.jp/jpn/tech/partner_robot/news/202203_01.html
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 渚
(72)【発明者】
【氏名】酒井 伯文
(72)【発明者】
【氏名】長田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】河上 充佳
(72)【発明者】
【氏名】市毛 敬介
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA06
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】作業後の回復状態を正確に予測することが可能な回復予測システムを提供すること。
【解決手段】一実施形態にかかる回復予測システムS1は、人物の作業工程を解析することで、作業中において人物がとる姿勢又は動作の1以上の身体的状態の継続時間を抽出する抽出部10と、1以上の身体的状態に関する人物の身体の負荷を取得するデータ取得部11と、抽出部10が抽出した1以上の身体的状態の継続時間と、データ取得部11が取得した負荷とに基づいて、作業が終了したときの人物の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかを予測する疲労予測部31と、作業の終了後、疲労予測部31が予測した値からの疲労度の減少度合い又は残存体力の増加度合いの少なくともいずれかを予測する回復予測部32を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物の第1の作業の工程を解析することで、前記第1の作業中において前記人物がとる姿勢又は動作の1以上の身体的状態の継続時間を抽出する抽出部と、
前記1以上の身体的状態に関する前記人物の身体の負荷を取得する取得部と、
前記抽出部が抽出した前記1以上の身体的状態の継続時間と、前記取得部が取得した前記負荷とに基づいて、前記第1の作業が終了したときの前記人物の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかを予測する疲労予測部と、
前記第1の作業の終了後、前記疲労予測部が予測した値からの前記疲労度の減少度合い又は前記残存体力の増加度合いの少なくともいずれかを予測する回復予測部と、を備える
回復予測システム。
【請求項2】
前記回復予測部が、前記第1の作業の終了後、前記疲労度の値が第1の閾値まで減少する時間が所定時間以上であると予測した場合に、前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値の疲労度で実行可能な第2の作業が存在するか否かを判定し、前記第2の作業が存在する場合に、前記第2の作業を前記第1の作業の後に実行することを提案するか、又は、前記作業の終了後、前記残存体力の値が第3の閾値まで増加する時間が所定時間以上であると予測した場合に、前記第3の閾値よりも小さい第4の閾値の残存体力で実行可能な第2の作業が存在するか否かを判定し、前記第2の作業が存在する場合に、前記第2の作業を前記第1の作業の後に実行することを提案する提案部と、をさらに備える
請求項1に記載の回復予測システム。
【請求項3】
前記提案部は、前記第1及び第2の作業を実行すべき順番の情報に基づき、前記第2の作業が、前記第1の作業の後に実行可能な作業であることを確認した場合に、前記第2の作業を前記第1の作業の後に実行することを提案する、
請求項2に記載の回復予測システム。
【請求項4】
前記取得部は、前記1以上の身体的状態に関して、前記人物の身体の複数の部位における負荷を取得し、
前記疲労予測部は、前記抽出部が抽出した前記1以上の身体的状態の継続時間と、前記取得部が取得した前記複数の部位の負荷とに基づいて、前記第1の作業が終了したときの前記人物の前記複数の部位の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかを予測し、
前記回復予測部は、前記第1の作業の終了後、前記複数の部位において、前記疲労予測部が予測した値からの前記疲労度の減少度合い又は前記残存体力の増加度合いの少なくともいずれかを予測する、
請求項1に記載の回復予測システム。
【請求項5】
前記回復予測部が、前記第1の作業の終了後、1以上の前記部位において、前記疲労度の値が第1の閾値まで減少する時間が所定時間以上であると予測した場合に、前記1以上の部位において前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値の疲労度で実行可能な第2の作業が存在するか否かを判定し、前記第2の作業が存在する場合に、前記第2の作業を前記第1の作業の後に実行することを提案するか、又は、前記第1の作業の終了後、1以上の前記部位において、前記残存体力の値が第3の閾値まで増加する時間が所定時間以上であると予測した場合に、前記第3の閾値よりも小さい第4の閾値の残存体力で実行可能な第2の作業が存在するか否かを判定し、前記第2の作業が存在する場合に、前記第2の作業を前記第1の作業の後に実行することを提案する提案部と、をさらに備える
請求項4に記載の回復予測システム。
【請求項6】
前記回復予測部は、他の作業における人物の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかの予測結果と、前記他の作業において人物が主観的に感じた主観疲労度又は主観残存体力の少なくともいずれかと、を含む前記他の作業のデータと、前記回復予測部が予測した前記疲労度の減少度合い又は前記残存体力の増加度合いの少なくともいずれかと、を参照することで、前記第1の作業の終了後における、人物が主観的に感じる主観疲労度又は主観残存体力の少なくともいずれかをさらに予測する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回復予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回復予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間は、肉体的な活動を継続した場合、活動に携わる筋肉に疲労(筋疲労)が発生する。これにより、活動のパフォーマンスが低下し、作業効率の低下等といった事態につながる。現在までに、この筋疲労の現象を解析するための様々な研究がなされている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、モータユニット(運動単位)をベースとした、筋肉の疲労、活性及び待機についての状態遷移モデルが定義されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ting Xia, Laura A. Frey Law, "A theoretical approach for modeling peripheral muscle fatigue and recovery", Journal of Biomechanics, 41(2008), pp.3046-3052
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工事現場等における作業計画を事業者が検討又は改善するときに、作業員の作業によって生じる疲労及びそこからの回復を考慮した計画を策定することは、作業員の健康及び効率的な計画策定の両面の観点から重要である。しかしながら、非特許文献1に記載のモデルは、疲労を含む筋肉状態の遷移を単に定義するものであって、具体的な作業内容が考慮されたものではなかった。そのため、作業員の疲労及びそこからの回復を正確に予測できないおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためのものであり、作業後の回復状態を正確に予測することが可能な回復予測システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な一態様に係る回復予測システムは、人物の第1の作業の工程を解析することで、前記第1の作業中において前記人物がとる姿勢又は動作の1以上の身体的状態の継続時間を抽出する抽出部と、前記1以上の身体的状態に関する前記人物の身体の負荷を取得する取得部と、前記抽出部が抽出した前記1以上の身体的状態の継続時間と、前記取得部が取得した前記負荷とに基づいて、前記作業が終了したときの前記人物の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかを予測する疲労予測部と、前記作業の終了後、前記疲労予測部が予測した値からの前記疲労度の減少度合い又は前記残存体力の増加度合いの少なくともいずれかを予測する回復予測部を備える。この回復予測システムにおける回復の予測は、作業中において人物がとる姿勢又は動作についての負荷と、その負荷と作業中の継続時間とに基づいて疲労度又は残存体力を予測することでなされるため、回復の予測を、具体的な作業内容に則したものとすることができる。したがって、作業後の回復状態を正確に予測することが可能となる。なお、この回復予測システムは、一例として、機械学習の手法(例えば、学習モデルをシステムで更新する手法)によって、予測精度をさらに向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、作業後の回復状態を正確に予測することが可能な回復予測システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる回復予測システムの一例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる疲労モデルの一例を示す概略図である。
図3】実施の形態1における作業中の姿勢の一例を示す。
図4】実施の形態1にかかる作業者の疲労度の遷移を示したグラフの例である。
図5】実施の形態1にかかる作業者の残存体力の遷移を示したグラフの例である。
図6】回復予測システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。
【0011】
図1は、実施の形態にかかる回復予測システムを説明するための図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる回復予測システムS1は、抽出部10、データ取得部11、予測部12、格納部13及び表示部14を備える。以下、回復予測システムS1の各部について説明する。
【0012】
抽出部10は、人物のある作業工程を解析することで、その作業中において人物がとる姿勢又は動作の1以上の身体的状態の継続時間を少なくとも抽出する。なお、解析対象となる作業工程はログデータとして格納部13に格納されており、抽出部10はそのログデータを用いて解析及び抽出処理を実行する。また、抽出部10は、作業工程を解析することで、作業中における1以上の身体的状態の継続時間及びその継続が生じるタイミングを抽出しても良い。
【0013】
ここで「姿勢」は、人物がとっている身体の構えをいい、「動作」は、人物が一連の複数の姿勢を取ることをいう。動作の例として、例えば荷物を運ぶ、柱に穴を開ける、治具の受け渡しをする、釘を抜くといった内容が想定される。解析対象とする作業には、1以上の身体的状態が持続する区間が複数含まれていても良い。これは、人物が同じ姿勢を所定の時間以上継続し、その姿勢を一旦とらなくなった後、再び同じ姿勢を所定の時間以上継続する場合や、被験者がある姿勢を所定の時間以上継続した後、それと異なる姿勢を所定の時間以上継続する場合が該当する。
【0014】
データ取得部11は、ある人物の作業中においてその人物がとる1以上の身体的状態に関する人物の負荷のデータを取得する。取得対象となる1以上の身体的状態は、抽出部10で抽出対象となる身体的状態と同じものである。詳細には、データ取得部11は、センサ部21、姿勢推定部22、姿勢継続時間判定部23及び負荷算出部24を有する。
【0015】
センサ部21は、被験者の身体の各部位(例えば、上肢、下肢、体幹、頭といった箇所の少なくともいずれか)に取り付けられる複数の慣性センサを含む。各慣性センサは、負荷のデータを取得する対象となる姿勢(作業の際にとる姿勢)を被験者がとっているときに、各部位の慣性運動に関するデータを取得する。センサ部21からのデータは、被験者の作業が終了するまでの間、取得される。
【0016】
姿勢推定部22は、センサ部21から得られた各慣性センサのデータを統合して解析することにより、作業中の各時刻における被験者の身体の各部位の位置及び向き、すなわち身体の姿勢を推定する。換言すれば、姿勢推定部22によって、各慣性センサのデータが姿勢データに変換される。また、姿勢継続時間判定部23は、測定対象となる作業の時間内において、姿勢推定部22が推定した1以上の姿勢がどの程度の期間継続されたかを、姿勢毎に判定する。
【0017】
負荷算出部24は、測定において姿勢の継続時間が所定の閾値時間以上、又は測定時間内に対して所定の割合以上であると姿勢継続時間判定部23が判定した1以上の姿勢を特定する。そして、予め格納部13に格納された算出モデルに対し、その姿勢データを適用することで、特定された1以上の姿勢において被験者の身体の各部位にかかる筋力負荷を算出する。算出モデルは、特定された姿勢において身体の各部位(例えば、各関節)に作用する外力の大きさ及び向きのデータを算出することで、各部位における筋力負荷を算出する。各部位の筋力負荷は、例えばMVC(Maximum Voluntary Contraction)に対する割合である%MVCの数値として算出されるが、その他の種類の数値として算出されても良い。また、この筋力負荷は、時刻に応じて変化し得るものである。各姿勢についての筋力負荷は、このように算出される。
【0018】
なお、センサ部21は、慣性センサに代えて、変位センサ又は曲げセンサ等のセンサが複数含まれても良い。この場合でも、姿勢推定部22は、センサ部21から得られたデータに基づいて、被験者がとっている姿勢を推定することが可能である。
【0019】
また、センサ部21に代えて、静止画又は動画で被験者の姿勢を撮影するカメラが設けられても良い。姿勢推定部22は、カメラが撮影した映像を画像認識技術で解析することにより、被験者がとっている姿勢を推定する。姿勢推定部22は、機械学習の手法によって、被験者の姿勢を判定しても良いし、システムが姿勢推定のモデルを更新してもよい。このように、データ取得部11における被験者の姿勢に関するデータの測定及び取得したデータに基づく姿勢の推定については、既存の任意のモーションキャプチャ技術を用いることができる。
【0020】
また、データ取得部11は、上述のように被験者の姿勢に関する実際のデータを取得することで負荷データを算出するのではなく、コンピュータシミュレーションを用いて被験者の姿勢を仮定し、その姿勢における負荷データを算出しても良い。また、データ取得部11は、回復予測システムS1以外の他の装置が計測又は予測した身体的状態に関する負荷のデータを、他の装置から単に取得するインタフェースであっても良い。
【0021】
次に、予測部12について説明する。予測部12は、疲労予測部31と回復予測部32を有する。予測部12は、抽出部10が抽出した、1以上の身体的状態の継続時間のデータと、負荷算出部24が算出した被験者の各部位にかかる1以上の姿勢の筋力負荷データとを取得する。
【0022】
疲労予測部31は、各姿勢に関して、その姿勢における疲労度を、その姿勢の継続時間において累積する計算をする。これにより、疲労予測部31は、1以上の姿勢が継続してなされる作業が終了したときの、人物の疲労度を予測する。なお、作業終了後だけでなく、作業中の疲労度についての予測がなされても良い。また、回復予測部32は、作業の終了後、疲労予測部31が予測した値からの疲労度の減少度合いを予測する。
【0023】
図2を用いて、予測部12が人物の疲労度を予測するのに用いるモデルの例を説明する。この例で説明するモデルは、非特許文献1に記載されたモデルであり、予め格納部13に格納されている。このモデルでは、身体のある部位における筋肉内に所定のモータユニット(運動単位)があると仮定し、各モータユニットの時間における状態遷移を計算することで、特定部位における筋疲労の状態を判断可能とするものである。各モータユニットは、待機状態、活性状態及び疲労状態のいずれかの状態にあり、待機状態にあるモータユニット数をMuc、活性状態にあるモータユニット数をMA、疲労状態にあるモータユニット数をMFとする。そして、総モータユニット数をM0(=Muc+MA+MF)とした場合に、待機状態又は活性状態にあるモータユニット数の割合((Muc+MA)/M0)を、残存体力と定義し、疲労状態にあるモータユニット数の割合(MF/M0)を、疲労度として定義する。
【0024】
また、各モータユニットは、待機状態から活性状態に遷移すること、その逆に活性状態から待機状態に遷移すること、活性状態から疲労状態に遷移すること、及び疲労状態から待機状態に遷移することが可能である。待機状態から活性状態への遷移又はその逆方向の遷移の度合いについては、活性強度パラメータCを定義し、活性状態から疲労状態への遷移の度合いについては、疲労強度パラメータFを定義し、疲労状態から待機状態への遷移の度合いについては、回復強度パラメータRを定義する。これらのパラメータは、筋肉の活性、疲労及び回復の過程を規定する。
【0025】
本モデルでは、Muc、MA及びMFの経時的な変化として、以下の式を定義する。
【数1】
・・・(1)
【数2】
・・・(2)
【数3】
・・・(3)
活性強度パラメータC(t)は時刻tの変数(時刻tにおける筋力負荷に応じた値)であり、予測部12は、姿勢推定部22によって推定された姿勢の経時的な変化に応じてCを決定することが可能である。なお、C(t)は、パラメータ%MVC(身体の各部位にかかる筋力負荷を示す指令値)の値に応じて、以下のように定義される。
【数4】
・・・(4)
(4)におけるLD及びLRは所定の係数である。なお、%MVC(指令値)が小さい(0に近い値である)場合には、筋肉内の血管拡張を考慮して、回復強度パラメータRに所定の係数rを乗算しても良い。この詳細は、John M. Looft, Nicole Herkert, Laura Frey-Law, "Modification of a three-compartment muscle fatigue model to predict peak torque decline during intermittent tasks", Journal of Biomechanics, 77(2018), pp.16-25に記載の通りである。
【0026】
疲労予測部31は、以上に示したモデルの式(1)-(4)に対して、特定された姿勢における各部位の筋力負荷と、作業中におけるその姿勢の継続時間をパラメータとして適用することにより、ある作業が終了した時点における、MF又はMuc+MAの少なくともいずれかの値を算出する。
【0027】
また、回復予測部32は、式(1)-(4)に対して、作業終了時点からの回復時間(筋力負荷が掛からない又は著しく小さい期間であり、例えば休憩時間)をパラメータとして適用することにより、回復時間が経過した時点における、MF又はMuc+MAの少なくともいずれかの値を算出する。ただし、疲労予測部31及び回復予測部32の予測方法は、この具体例に限られない。
【0028】
なお、特定された姿勢が継続する区間が作業中に複数存在する場合、疲労予測部31は、その区間毎に、その姿勢の継続時間にわたって累積されたMFを算出することができる。これにより、疲労予測部31は、作業終了時における、被験者の疲労度(MF/M0)又は残存体力((Muc+MA)/M0)の少なくともいずれかを予測することができる。また、回復時間の区間が作業中に複数存在する場合であっても、回復予測部32は、各回復時間が経過した時点における、被験者の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかを予測することができる。
【0029】
格納部13は、上述の通り、抽出部10が用いる作業工程のログデータ、並びにデータ取得部11及び予測部12が用いるモデルを格納する。表示部14は、予測部12が算出した予測結果を表示してユーザに提示する、ディスプレイ等のインタフェースである。なお、表示部14は、予測結果又は何らかの通知若しくは提案をユーザに報知するインタフェースとして、スピーカ等を含んでも良い。
【0030】
次に、予測部12が算出する予測結果の例を示す。
【0031】
図3は、測定対象となる作業において所定の閾値時間以上継続される複数の姿勢の一例を示す。姿勢1-3は、それぞれ、作業1-3において、人物Pが荷物B1-B3を持つ状態を示している。このとき、荷物の重量は荷物B2、B1、B3の順に重くなるため、被験者の特定の部位(例えば、腕又は腰)にかかる筋力負荷Lは、L2、L1、L3の順に大きくなる。
【0032】
抽出部10は、所定の作業工程を解析することで、その作業中における作業1-3の各継続時間を抽出する。データ取得部11は、各作業1-3の筋力負荷LであるL1-L3を取得する。予測部12は、抽出された各作業の継続時間と、筋力負荷L1-L3とに基づいて、作業中及び作業終了時の人物の疲労度を、図4記載のグラフの通りに予測する。
【0033】
図4は、予測部12が算出する、作業者(被験者)の疲労度(MF/M0)[%]の遷移を示したグラフの例である。このグラフは、作業1が期間t1だけ継続し、その後期間(t2-t1)の休憩時間(休憩1)を挟んだ後、作業2が期間(t3-t2)だけ継続し、その後期間(t4-t3)の休憩時間(休憩2)を挟んだ後、作業3が期間(t5-t4)だけ継続した状況を示す。時刻0では疲労度は0であったのに対し、疲労予測部31は、作業1が終了した時刻t1における疲労度をF1と算出する。しかしながら、回復予測部32は、休憩1が終了した時刻t2における疲労度をF2(<F1)と算出する。疲労予測部31は、休憩1の後の作業2が終了した時刻t3における疲労度をF3と算出する。しかしながら、回復予測部32は、作業2の後の休憩2が終了した時刻t4において、疲労度をF4(<F3)と算出する。そして、疲労予測部31は、休憩2の後の作業5が終了した時刻t5における疲労度をF5と算出する。上述の通り、筋力負荷LがL2、L1、L3の順に大きくなるため、疲労度の上昇度合いは、作業2、作業1、作業3の順に大きくなる。予測部12は、この算出したグラフを、表示部14に表示させる。これにより、ユーザは、作業中の疲労度の遷移及び作業終了後の疲労度を知ることができる。
【0034】
図5は、図4と同様の状況において、予測部12が算出した、作業者の残存体力((Muc+MA)/M0)[%]の遷移を示したグラフの例である。時刻0では残存体力は100であったのに対し、作業1が終了した時刻t1では、残存体力はA1(=100-F1)となり、休憩1が終了した時刻t2では、残存体力はA2(=100-F2)となり、作業2が終了した時刻t3では、残存体力はA3(=100-F3)となり、休憩2が終了した時刻t4では、残存体力はA4(=100-F4)となり、作業3が終了した時刻t5では、残存体力はA5(=100-F5)となる。このように、予測部12は、残存体力の遷移状態を算出し、それを表示部14によってユーザに提示しても良い。
【0035】
なお、以上に示した例では、予測部12は、1以上の姿勢についての各部位の筋力負荷と、作業中におけるその各姿勢の継続時間を用いて、作業中及び作業終了時点での疲労度又は残存体力を予測していた。しかしながら、複数の姿勢を含む動作についても、1以上の動作における各部位の筋力負荷と、作業中におけるその各動作の継続時間を用いて、作業中及び作業終了時点での疲労度又は残存体力を予測することが可能である。また、姿勢が継続する区間と動作が継続する区間が作業中に混在する場合でも、同様の予測が可能である。予測処理の詳細は上述と同様であるため、説明を省略する。
【0036】
以上に示したように、回復予測システムS1における予測は、作業中において人物がとる姿勢又は動作についての負荷と、作業工程を解析することで抽出された作業中の継続時間とに基づいて疲労度又は残存体力を予測することでなされるため、回復の予測を、具体的な作業内容に則したものとすることができる。したがって、作業後の回復状態を正確に予測することが可能となる。例えば、本発明は、作業内容が変化し得る工事現場等での回復状態の予測に有用である。
【0037】
また、作業において1以上の身体的状態が持続する区間が複数含まれる場合であっても、予測部12は、各区間において算出した疲労度を累積することで、作業終了時の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかを予測することができる。そのため、様々な姿勢又は動作を含む作業についても、作業後の回復状態の正確な予測が可能となる。
【0038】
さらに、本発明は、以下のようなバリエーションをとることも可能である。
【0039】
回復予測システムS1は、工事において複数の作業工程が存在する場合に、作業工程の変更を適宜提案することが可能な提案部をさらに備えても良い。工事に必要な作業の種類、各作業に割り当てられる作業時間、作業者が各作業を実行することが可能な疲労度又は残存体力の閾値、各作業を実行すべき順番の情報、及び当初設定された工事のスケジュール情報(例えば、作業1を時間T1継続し、その後作業2を時間T2継続するといった情報)は、格納部13に格納されている。各作業を実行すべき順番の情報とは、例えば、工事が作業1-3を含む場合に、作業1は作業2の前後いずれのタイミングで実行されても良いが、作業3は作業1及び2の後に実行されなくてはいけない、といった情報である。提案部は、必要に応じてその情報を参照することで、作業工程の変更をユーザに対して提案する。提案は、表示部14等によってユーザに報知される。
【0040】
例えば、回復予測部32が、第1の作業の終了後、疲労度の値が第1の閾値まで減少する時間が所定の閾値時間(一例として、決められた休憩時間)以上であると予測した場合に、提案部は、第1の閾値よりも大きい第2の閾値の疲労度で実行可能な第2の作業が存在するか否かを判定する。そのような第2の作業が存在する場合に、提案部は、第2の作業を第1の作業の後に実行することを提案する。なお、提案部は、第1の作業の終了後、残存体力の値が第3の閾値まで増加する時間が所定時間以上であると予測され、第3の閾値よりも小さい第4の閾値の残存体力で実行可能な第2の作業が存在する場合に、第2の作業を第1の作業の後に実行することを提案しても良い。これにより、提案部は、工事期間を短縮しつつ、作業者の負担を抑制する作業工程を提案することができる。
【0041】
ここで、提案部は、第1及び第2の作業を実行すべき順番の情報を参照し、第2の作業が、第1の作業の後に実行可能な作業であることを確認した場合に、第2の作業を第1の作業の後に実行することを提案し、第2の作業が、第1の作業の後に実行できない場合には、その提案をしないようにしても良い。これにより、提案部は、工事期間を短縮しつつ、作業手順を変えることによる手戻り等の問題を抑制する提案をすることができる。
【0042】
また、上述のバリエーションにおいて、第1の閾値又は第3の閾値は、予め設定された第3の作業において要求される疲労度の閾値であっても良い。この場合、提案部は、第1の作業の後に実行する作業を、第3の作業から第2の作業に変更することを提案することになる。そのため、作業者の作業負担を軽減しながら、工事期間を可能な限り短縮することが可能となる。
【0043】
特に、第1-第3の作業は、単一の工事工程に含まれる作業であることが格納部13で予め定義されていても良い。提案部は、その定義を参照することで、第1の作業の後に実行可能な作業が、第2の作業、第3の作業のいずれでも良いことを確認した後で、第1の作業の後に実行する作業を、第3の作業から第2の作業に変更することを提案する。これにより、提案部は、異なる工事工程の作業を並行して進めるのではなく、単一の工事工程を早期に終了させる提案ができるため、工事を効率的に進捗させることができる。
【0044】
また、予測部12は、被験者の身体の1の部位だけでなく、複数の部位について、その疲労度又は残存体力を予測することができる。この予測方法の詳細は、上述の通りである。これにより、作業者の各部位のうちどこが疲労若しくは回復しやすいか、又はしにくいかを可視化することができるため、効率の良い、又は作業者の総合的な負担が少ない作業計画を立てることが可能になる。このとき、少なくとも1つの部位において、第1の作業の終了後、疲労度の値が第1の閾値まで減少する時間が所定の閾値時間以上であると予測した場合に、提案部は、第1の閾値よりも大きい第2の閾値の疲労度で実行可能な第2の作業が存在するか否かを判定することもできる。そのような第2の作業が存在する場合に、提案部は、第2の作業を第1の作業の後に実行することを提案する。また、提案部は、疲労度ではなく残存体力について、複数の部位に関して同様の判定を実行することで、第2の作業を第1の作業の後に実行することを提案することができる。また、第2の作業を提案するための詳細な方法についても、上述と同様の手法を実行することができる。
【0045】
なお、回復予測部32が、第1の作業の終了後、疲労度の値が第1の閾値まで減少する時間、又は残存体力値が第3の閾値まで増加する時間が所定の閾値時間以上であると予測した場合に、提案部は、第1の作業の作業時間又は作業内容を変更することを提案することもできる。
【0046】
また、回復予測部32は、作業者が主観的に感じる負担感を予測することも可能である。ここで、回復予測部32は、格納部13に格納された、予測対象となる作業とは異なる他の作業のデータを用いる。他の作業のデータは、他の作業における人物の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかの予測結果と、他の作業において人物が主観的に感じた主観疲労度又は主観残存体力の少なくともいずれかとを含む。ここで、他の作業における疲労度又は残存体力の予測は、上述に示した、予測対象となる作業に関する予測と同様の手法で実現される。この予測を実行するのは、予測部12であっても良いし、回復予測システムS1とは別の予測システムであっても良い。
【0047】
主観疲労度又は主観残存体力は、作業におけるあるタイミング(例えば作業終了直後、又は作業終了後から所定時間経過後)に作業者が回答した、自身の疲労度又は残存体力を示す主観的な情報であって、定量的な(数値化された)情報でも良いし、定性的な情報であっても良い。同じ作業内容でも、作業者によって、異なる主観疲労度又は主観残存体力の回答をすることがある。定量的な情報の一例としては、疲労度(又は残存体力)を大きい順に5から1の値まで示すことが挙げられる。定性的な情報の一例としては、「疲れた」「やや疲れた」「あまり疲れていない」「疲れていない」といった、疲労度(又は残存体力)の大きさを示す表現が挙げられる。しかしながら、用いることが可能な定量的又は定性的な情報は、これに限られない。
【0048】
他の作業のデータに含まれる、疲労度又は残存体力の予測結果と、その予測結果に対応する主観疲労度又は主観残存体力は、他の作業終了直後又は作業終了から所定時間経過後といった、他の作業における同じ(又は対応する)タイミングでの値及び回答である。このタイミングには、他の作業における1以上の任意のタイミングが含まれ得る。また、他の作業のデータとして、1の作業ではなく、複数の作業に関する、各作業の予測結果、及び、主観疲労度又は主観残存体力の少なくともいずれかを含むデータが格納されていても良い。
【0049】
回復予測部32は、格納された他の作業のデータと、回復予測部32が予測した疲労度の減少度合い又は残存体力の増加度合いの少なくともいずれかと、を参照することで、作業終了後における、人物が主観的に感じる主観疲労度又は主観残存体力の少なくともいずれかをさらに予測する。なお、回復予測部32は、この予測に際して、疲労予測部31が予測した作業終了時の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかをさらに用いても良い。予測対象となるタイミングは、例えば、作業終了後に所定時間(休憩時間)が経過したタイミングである。ただし、作業終了後の任意の複数のタイミングについて予測がなされても良い。回復予測部32は、この予測を、所定のアルゴリズムを用いて実行しても良いし、AIを用いたモデルを用いて実行しても良い。
【0050】
予測対象となるタイミングにおいて予測された定量的な主観疲労度が所定の閾値以上、又は、予測された定量的な主観残存体力が所定の閾値未満の少なくともいずれかである場合、提案部は、ユーザにその旨を通知しても良い。あるいは、提案部は、実行予定の作業の時間短縮若しくは内容変更、又は疲労回復後の後続の作業の時間短縮若しくは内容変更の少なくともいずれかを提案しても良い。予測された定性的な主観疲労度又は主観残存体力が特定の情報を示す場合であっても、提案部は、ユーザに対して同様の通知又は提案をすることができる。例えば、予測された定量的な主観疲労度が「5」又は「4」である場合や、予測された定性的な主観疲労度が「疲れた」又は「やや疲れた」であるような場合に、回復予測部32は、ユーザに対して上述の通知又は提案をすることが可能である。
【0051】
提案部は、後続の作業の内容変更を提案する場合、格納部13に格納された各作業に関する情報を参照し、予測された定量的又は定性的な主観疲労度又は主観残存体力で実行可能な作業を特定して、その特定された作業を後続の作業として実行するように提案しても良い。ここで、上述の通り、提案部は、作業を実行すべき順番の情報を参照し、予測結果に基づいて実行可能と特定された作業(第2の作業)が、先に実行される作業(第1の作業)の後に実行可能な作業であることを確認することもできる。提案部は、第2の作業が第1の作業の後に実行可能な場合に、第2の作業を第1の作業の後に実行することを提案し、第2の作業が第1の作業の後に実行可能でない場合には、その提案を実行しない。
【0052】
また、提案部が後続の作業に関する提案を実行するか否かの判定に用いる、第1の作業終了後の予測対象となるタイミングにおける定量的な主観疲労度又は主観残存体力の閾値は、後続で実行されるように予め設定された第3の作業の実行に関する閾値であっても良い。例えば、予測対象となるタイミングにおける定量的な主観疲労度が「4」であり、第3の作業を実行する際に要求される定量的な主観疲労度が「3」以下である場合、この閾値の判定において、作業者の負担が大きすぎるために第3の作業が実行できないと判定される。そのため、提案部は、第1の作業の後に実行する作業を、第3の作業から、作業を実行する際に要求される定量的な主観疲労度が「4」以下である、第2の作業に変更することを提案する。また、第1-第3の作業は、単一の工事工程に含まれる作業であることが格納部13で予め定義されていても良い。提案部は、その定義を参照することで、第1の作業の後に実行可能な作業が、第2の作業、第3の作業のいずれでも良いことを確認した後で、第1の作業の後に実行する作業を、第3の作業から第2の作業に変更することを提案する。
【0053】
なお、提案部は、この判定処理において、定量的な主観疲労度又は主観残存体力の閾値でなく、定性的な主観疲労度又は主観残存体力の情報を用いることも可能である。例えば、予測対象となるタイミングにおける定性的な主観疲労度が「やや疲れた」であり、第3の作業を実行することができない定性的な主観疲労度が「疲れた」又は「やや疲れた」であるような場合、この閾値の判定において、作業者の負担が大きすぎるために第3の作業が実行できないと判定される。そのため、提案部は、第1の作業の後に実行する作業を、第3の作業から、作業を実行する際に要求される定性的な主観疲労度が「やや疲れた」以下である、第2の作業に変更することを提案する。
【0054】
また、回復予測部32は、作業者が作業を現実に実行し、その作業者の疲労度又は残存体力をリアルタイムで取得する場合であっても、取得したその値と、上述の他の作業のデータとを参照することで、作業終了後における主観疲労度又は主観残存体力をリアルタイムで予測することもできる。ここで、データ取得部11及び予測部12は、作業者の作業データを取得することで、これまでの1以上の身体的状態(姿勢又は動作)の継続時間と、その負荷を取得し、その取得データを用いてリアルタイムでの疲労度又は残存体力の少なくともいずれかを導出することができる。あるいは、異なるデバイス(例えば、作業者に取り付けられたウェアラブルデバイス)によって、疲労度又は残存体力のリアルタイムのデータが取得されても良い。作業終了後の所定のタイミングにおいて、予測された定量的な主観疲労度が所定の閾値以上、予測された定量的な主観残存体力が所定の閾値未満、又は予測された定性的な主観疲労度若しくは主観残存体力が特定の情報を示す少なくともいずれかの状態であるとき、回復予測部32はその状態を検知する。回復予測部32は、それをトリガとして、作業者の負担が過大になっていることを通知することができる。あるいは、予測部12は、予定している後続の作業の中止、又は後続の作業の変更といった、作業者の負担を緩和させるための提案をすることも可能である。
【0055】
以上に示したバリエーションは、作業者の身体の複数の部位における少なくとも1つの部位の疲労度又は残存体力に関する判定としても実現可能である。例えば、作業終了後の所定のタイミングにおいて、少なくとも1つの部位における定量的な主観疲労度が所定の閾値以上、又は定量的な主観残存体力が所定の閾値未満であるとする。この場合に、提案部は、上述に示した通知又は後続の作業に関する提案(時間短縮又は内容変更の少なくともいずれか)をすることができる。なお、定量的な閾値の代わりに、定性的な情報を用いても、同様の判定処理及び通知又は提案処理をすることができる。
【0056】
予測部12が用いる予測モデルは、上述のものに限られない。また、ユーザは、表示部14によって表示された予測結果についての正誤を示すフィードバックを、回復予測システムS1に入力しても良い。回復予測システムS1は、フィードバックに基づき、AIを用いて、予測モデルを更新することができる。これにより、予測精度をさらに向上させることも可能である。
【0057】
以上に示した実施の形態では、この発明をハードウェアの構成として説明した。しかしながら、本発明は、上述の実施形態において説明された回復予測システムS1の処理(ステップ)を、コンピュータ内のプロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0058】
図6は、以上に示した各実施の形態の処理が実行される情報処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。図6を参照すると、この情報処理装置90は、信号処理回路91、プロセッサ92及びメモリ93を含む。
【0059】
信号処理回路91は、プロセッサ92の制御に応じて、信号を処理するための回路である。なお、信号処理回路91は、送信装置から信号を受信する通信回路を含んでも良い。
【0060】
プロセッサ92は、メモリ93と接続されて(結合して)おり、メモリ93からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された装置の処理を行う。プロセッサ92の一例として、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Demand-Side Platform)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のうち一つを用いてもよいし、そのうちの複数を並列で用いてもよい。
【0061】
メモリ93は、揮発性メモリや不揮発性メモリ、またはそれらの組み合わせで構成される。メモリ93は、1個に限られず、複数設けられてもよい。なお、揮発性メモリは、例えば、DRAM (Dynamic Random Access Memory)、SRAM (Static Random Access Memory)等のRAM (Random Access Memory)であってもよい。不揮発性メモリは、例えば、PROM (Programmable Random Only Memory)、EPROM (Erasable Programmable Read Only Memory) 等のROM (Read Only Memory)、フラッシュメモリや、SSD(Solid State Drive)であってもよい。
【0062】
メモリ93は、1以上の命令を格納するために使用される。ここで、1以上の命令は、ソフトウェアモジュール群としてメモリ93に格納される。プロセッサ92は、これらのソフトウェアモジュール群をメモリ93から読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された処理を行うことができる。なお、メモリ93は、任意の場所に配置することが可能である。
【0063】
以上に説明したように、上述の実施形態における各装置が有する1又は複数のプロセッサは、図面を用いて説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを実行する。この処理により、各実施の形態に記載された疲労度予測方法が実現できる。
【0064】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0065】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
人物の第1の作業の工程を解析することで、前記第1の作業中において前記人物がとる姿勢又は動作の1以上の身体的状態の継続時間を抽出する抽出部と、
前記1以上の身体的状態に関する前記人物の身体の負荷を取得する取得部と、
前記抽出部が抽出した前記1以上の身体的状態の継続時間と、前記取得部が取得した前記負荷とに基づいて、前記第1の作業が終了したときの前記人物の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかを予測する疲労予測部と、
前記第1の作業の終了後、前記疲労予測部が予測した値からの前記疲労度の減少度合い又は前記残存体力の増加度合いの少なくともいずれかを予測する回復予測部と、を備える
回復予測システム。
(付記2)
前記回復予測部が、前記第1の作業の終了後、前記疲労度の値が第1の閾値まで減少する時間が所定時間以上であると予測した場合に、前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値の疲労度で実行可能な第2の作業が存在するか否かを判定し、前記第2の作業が存在する場合に、前記第2の作業を前記第1の作業の後に実行することを提案するか、又は、前記作業の終了後、前記残存体力の値が第3の閾値まで増加する時間が所定時間以上であると予測した場合に、前記第3の閾値よりも小さい第4の閾値の残存体力で実行可能な第2の作業が存在するか否かを判定し、前記第2の作業が存在する場合に、前記第2の作業を前記第1の作業の後に実行することを提案する提案部と、をさらに備える
付記1に記載の回復予測システム。
(付記3)
前記提案部は、前記第1及び第2の作業を実行すべき順番の情報に基づき、前記第2の作業が、前記第1の作業の後に実行可能な作業であることを確認した場合に、前記第2の作業を前記第1の作業の後に実行することを提案する、
付記2に記載の回復予測システム。
(付記4)
前記取得部は、前記1以上の身体的状態に関して、前記人物の身体の複数の部位における負荷を取得し、
前記疲労予測部は、前記抽出部が抽出した前記1以上の身体的状態の継続時間と、前記取得部が取得した前記複数の部位の負荷とに基づいて、前記第1の作業が終了したときの前記人物の前記複数の部位の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかを予測し、
前記回復予測部は、前記第1の作業の終了後、前記複数の部位において、前記疲労予測部が予測した値からの前記疲労度の減少度合い又は前記残存体力の増加度合いの少なくともいずれかを予測する、
付記1に記載の回復予測システム。
(付記5)
前記回復予測部が、前記第1の作業の終了後、1以上の前記部位において、前記疲労度の値が第1の閾値まで減少する時間が所定時間以上であると予測した場合に、前記1以上の部位において前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値の疲労度で実行可能な第2の作業が存在するか否かを判定し、前記第2の作業が存在する場合に、前記第2の作業を前記第1の作業の後に実行することを提案するか、又は、前記第1の作業の終了後、1以上の前記部位において、前記残存体力の値が第3の閾値まで増加する時間が所定時間以上であると予測した場合に、前記第3の閾値よりも小さい第4の閾値の残存体力で実行可能な第2の作業が存在するか否かを判定し、前記第2の作業が存在する場合に、前記第2の作業を前記第1の作業の後に実行することを提案する提案部と、をさらに備える
付記4に記載の回復予測システム。
(付記6)
前記回復予測部は、他の作業における人物の疲労度又は残存体力の少なくともいずれかの予測結果と、前記他の作業において人物が主観的に感じた主観疲労度又は主観残存体力の少なくともいずれかと、を含む前記他の作業のデータと、前記回復予測部が予測した前記疲労度の減少度合い又は前記残存体力の増加度合いの少なくともいずれかと、を参照することで、前記第1の作業の終了後における、人物が主観的に感じる主観疲労度又は主観残存体力の少なくともいずれかをさらに予測する、
付記1乃至5のいずれか1項に記載の回復予測システム。
(付記7)
前記第1の閾値又は第3の閾値は、予め設定された第3の作業において要求される疲労度の閾値であり、前記提案部は、前記第1の作業の後に実行する作業を、前記第3の作業から前記第2の作業に変更することを提案する、
付記2又は3に記載の回復予測システム。
(付記8)
前記第1乃至第3の作業は、単一の工程に含まれる作業であることが予め定義され、
前記提案部は、前記工程の定義を参照することによって、前記第1の作業の後に実行する作業を、前記第3の作業から前記第2の作業に変更することを提案する、
付記7に記載の回復予測システム。
【0066】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記によって限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0067】
S1 回復予測システム 10 抽出部
11 データ取得部 12 予測部
13 格納部 14 表示部
21 センサ部 22 姿勢推定部
23 姿勢継続時間判定部 24 負荷算出部
31 疲労予測部 32 回復予測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6