IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ティーイー コネクティビティ ソリューソンズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンクの特許一覧

<>
  • 特開-差圧センサデバイス 図1
  • 特開-差圧センサデバイス 図2
  • 特開-差圧センサデバイス 図3
  • 特開-差圧センサデバイス 図4
  • 特開-差圧センサデバイス 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059734
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】差圧センサデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01L 13/00 20060101AFI20240423BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01L13/00 A
H01L29/84 A
H01L29/84 B
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022660
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2019203660の分割
【原出願日】2019-11-11
(31)【優先権主張番号】18206582.1
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518345815
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ソリューソンズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ブルネ,イスマエル
(72)【発明者】
【氏名】アルノルト,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ドゥリヤカ,プレトラーク
(72)【発明者】
【氏名】ル・ニール,ジャン フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ビロッド,ジャン・リュック
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大気圧をより確実に蓄積および維持できる差圧センサデバイスを提供する。
【解決手段】この差圧センサデバイスは、基板と、基板の主面上に形成されている別層と、膜によって互いに分離されている第1のキャビティおよび第2のキャビティと、を備える。第1のキャビティは、通気孔と流体連通しているチャネルと流体連通しており、この通気孔を通して、センサデバイスの周囲環境から空気が進入できる。チャネルは、基板内で、主面と実質的に平行な平面内に延在する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差圧センサデバイス(200)であって、
前記差圧センサデバイス(200)は、
- 基板(210)と、
- 前記基板(210)の主面上に形成されている別層(204、405)と、
- 膜(M)によって互いに分離されている第1のキャビティ(C)および第2のキャビティ(C)とを備え、
前記第1のキャビティ(C)は、通気孔(208、406)と流体連通しているチャネル(209、407)と流体連通しており、
前記チャネル(209、407)は、前記基板(210)における、前記基板(210)の前記主面と実質的に平行な平面内に延在するとともに、

前記通気孔(208、406)は、前記第1のキャビティ(C)内に大気圧または規準圧力を蓄積できるように、前記差圧センサデバイス(200)の周囲環境と流体連通するように構成されており、

前記第2のキャビティ(C)は前記膜(M)の上方に位置しており、前記第2のキャビティ(C)は前記第1のキャビティ(C)内に蓄積される前記大気圧または規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体を収容するために設けられている、
ことを特徴とする、

差圧センサデバイス(200)。
【請求項2】
- 前記第2のキャビティと流体連通している別のチャネルと、
- 試験媒体のリザーバと、を更に備える、
請求項1に記載の差圧センサデバイス(200)。
【請求項3】
前記基板(210)の前記主面の反対側にある前記基板(210)の別の主面に接着されたプリント回路板を更に備える、
請求項1または2に記載の差圧センサデバイス(200)。
【請求項4】
特定用途向け集積回路ASIC(206)、および/または、微小電気機械システムMEMS(205)もしくは別の感圧素子を更に備え、
前記MEMS(205)は、前記膜(M)が感知した圧力変動を示す電気信号を前記ASIC(206)に出力するように構成されており、
前記ASIC(206)は、前記電気信号を、増幅および/またはアナログ-デジタル変換および/またはノイズフィルタリングによって処理するように構成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の差圧センサデバイス(200)。
【請求項5】
前記膜(M)の表面上に複数の抵抗器、または複数のピエゾ抵抗素子が形成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の差圧センサデバイス(200)。
【請求項6】
前記通気孔(208、406)は、前記第1のキャビティ(C)内に前記大気圧を蓄積できるように、前記差圧センサデバイス(200)の周囲環境と流体連通している、
請求項1から5のいずれか一項に記載の差圧センサデバイス(200)。
【請求項7】
前記基板(210)は複数の下位層を備える多層基板であり、
前記チャネル(209、407)は前記複数の下位層のうちの1つに形成されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の差圧センサデバイス(200)。
【請求項8】
差圧センサデバイス(200)を製造する方法であって、
前記方法は、
- 基板(210)を形成するステップと、
- 前記基板(210)の主面上に別層(204、405)を形成するステップと、
- 前記基板(210)における、前記基板(210)の前記主面と平行な平面内に、チャネル(209、407)を、前記チャネル(209、407)が前記基板(210)の、前記基板(210)の前記主面に対して垂直に向く短面に通気孔(208、406)を形成するように、形成するステップと、
- 前記別層(204、405)を貫通し前記チャネル(209、407)に接続している貫通通路を形成するステップと、

前記別層(204、405)の上に膜(M)を形成することによって前記別層(204、405)の上に第1のキャビティ(C)を形成するステップとを含み、
前記貫通通路は前記第1のキャビティ(C)につながるように形成されており、

前記通気孔(208、406)は、前記第1のキャビティ(C)内に大気圧または規準圧力を蓄積できるように、前記差圧センサデバイス(200)の周囲環境と流体連通するように構成されており、

前記膜(M)の上方に、第2のキャビティ(C)を部分的に形成するハウジングを提供するステップをさらに含み、前記第2のキャビティ(C)は、前記第1のキャビティ(C)内に蓄積される前記大気圧または規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体を収容するために設けられている、

差圧センサデバイス(200)を製造する方法。
【請求項9】
前記差圧センサデバイス(200)は、ゲージ圧センサデバイスである、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記チャネル(209、407)は前記基板(210)に形成されており、
前記通気孔(208、406)は前記基板(210)の前記短面に形成されており、
前記基板(210)の形成は、
- 第1の基板下位層(401)を形成することと、
- 前記第1の基板下位層(401)の上に、犠牲材料を部分的に含む第2の基板下位層(403)または第2の基板下位層に隣接している犠牲材料を含む犠牲層のいずれかを形成することと、
- 前記犠牲材料を部分的に含む前記第2の基板下位層(403)上にまたは前記犠牲材料を含む前記犠牲層および前記隣接している第2の基板下位層の両方上に、第3の基板下位層(404)を形成することとを含み、
前記基板(210)への前記チャネル(209、407)の形成は、前記第3の基板下位層(404)の形成後に前記犠牲材料を除去することを含む、
請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板(210)の前記主面の反対側にある前記基板(210)の別の主面にコンタクトパッドを形成することと、
プリント回路板を他の主要部表面に接着することと、
前記別層(204、405)の上に、特定用途向け集積回路ASIC、および、微小電気機械システムMEMS、を形成することと
を更に含む、
請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記膜(M)の表面上に複数の抵抗器、または複数のピエゾ抵抗素子を形成することを更に含む、
請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか一項に記載の方法によって得ることのできる、
差圧センサデバイス(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は差圧センサデバイスに関し、詳細には、チャネルを備える基板および別層(another layer)を備える差圧センサデバイスに関し、本発明は更に、かかるデバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
差圧センサは、2種の隔離された液体間または気体間の圧力の差を測定する。差圧センサ(またはトランスデューサ)は液体または気体の圧力の差を電気信号に変換するもので、この信号を測定して差圧値を決定することができる。一般に、ピエゾ抵抗式、圧電式、および容量式など、圧力を測定するために使用される3つの異なる変換機構がある。センサの圧力感知デバイスは、一般に、微小電気機械システム(MEMS:Micro-Electro-Mechanical System)の技法によって製造される。この技術を、エッチング技法および接着技法とともに民生用半導体を製造するために使用し、差圧を電気信号に変換する非常に小型の安価なデバイスを製作する。
【0003】
従来、容量式または抵抗式の差圧センサを製造するときには、シリコンなどの半導体材料から圧力感知ダイが形成される。ダイはシリコン構造が得られるようにシリコンウエハからダイシングなどの方法によって形成され、このシリコン構造を薄化することでキャビティが作り出され、関連するダイヤフラムが画定される。ピエゾ抵抗式の場合、素子はダイヤフラムの表面に形成または設置され、ダイヤフラムを形成する薄化された半導体材料にかかるひずみに比例した抵抗を呈するように構成される。ピエゾ抵抗素子に接続された電気回路(典型的にはホイートストンブリッジのネットワークを形成する)が、ピエゾ抵抗素子の抵抗値に一部基づいて、電気信号を生み出す。したがって、電気信号は、試験下の媒体の圧力を表している
【0004】
ゲージ型圧力センサとも呼ばれる特定の分類の差圧センサでは、ダイヤフラム(膜)の一方側に測定する必要がある加圧された液体または気体タイプの媒体が供給され、一方、膜の他方側は大気に開放されている。この場合、試験媒体の圧力は大気圧と対比して測定される。大気への接続部は一般に、通気(ventまたはventilation)孔と呼ばれる。センサが有する通気孔はセンサが大気圧を感知できるようにするためのものなので、この通気孔は常に塞がれていない状態に保たれなければならない。
【0005】
図1は、当技術分野で知られているような通気孔を有する差圧センサ10の例を示す。図1に示すように、センサ10は基板1とハウジング2とを有する。表面実装部品(SMD:Surface Mounted Device)であるコンタクトパッド3が、実装PCBに接触するように基板1の底部に設けられる。基板1上には、表面に導電性パターンを設けることのできる別層(例えば誘電層)4が形成されている。誘電層4の上に、微小電気機械システム5と、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)6と、が形成されている。感知膜は、MEMSの頂面上にまたはMEMSの頂面によって形成されている。ハウジング2内にはゲル保護材7が水平に配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上部から進入する流体(液体または気体)の圧力(下を指す幅広の矢印を参照)を、通気孔8を通る空気流(上を指す細い矢印を参照)によって蓄積された大気圧と対比させて測定することができ、この通気孔8は、基板1の底面を貫通して形成されており(かつコンタクトパッド3間に配置されており)、通気孔8から基板1および誘電層4を貫通して大気圧が蓄積されるキャビティまで延在するチャネルに接続されている。しかしながら、センサ10をプリント回路板(PCB)に装着して動作可能なデバイスの製造を完了するときに、通気孔が詰まるリスクがある。更に、PCBに、周囲環境およびセンサ10の通気孔と連通している対応する貫通孔を設ける必要がある。PCBに形成されるこの貫通孔は、例えばはんだまたは何らかの共形のコーティングによって、意図せず塞がれてしまう可能性もある。
【0007】
上記に鑑みて、大気圧を上記の技術と比較してより確実に蓄積および維持できる差圧センサデバイスを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板(例えば、多層またはバルクセラミック基板)と、基板の主(頂)面上に形成されている別層と、膜によって互いに分離されている第1のキャビティおよび第2のキャビティと、を備える、差圧(例えばゲージ圧)センサデバイスを提供することによって、上述した問題に対処する。基板は例えば、何らかの半導体基板、または高温もしくは低温同時焼成セラミックとすることができる。また、この用語には一般にプリント回路板も包含されている。別層は誘電層とすることができ、また基板と同じ材料から形成された層とすることもできる。第1のキャビティは、通気孔と流体(液体または気体)連通している少なくとも1つのチャネルと流体連通しており、この通気孔を通して、センサデバイスの周囲環境から(何らかの規準圧力リザーバまたは大気圧の空気から)空気(または別の気体)が進入できる。
【0009】
少なくとも1つのチャネルは、別層または基板における、主面と実質的に平行な平面内に延在する。少なくとも1つのチャネルはまた、基板およびまたは別層の頂面まで達してもよい。特に、基板は複数の下位層を備える多層基板とすることができ、少なくとも1つのチャネルはこの場合、基板の複数の下位層のうちの1つに形成されていてもよい。特に、別層、例えば誘電層は、複数の下位層を備える多層の層とすることができ、少なくとも1つのチャネルはこの場合、別層の複数の下位層のうちの1つに形成されていてもよい。
【0010】
通気孔およびチャネルを提供することにより、例えば、第1のキャビティ内に大気圧を蓄積および維持することができる。このことにより、リザーバから別のチャネルを通して第2のキャビティ内へと供給される試験媒体の圧力を、大気圧と対比させて測定することが可能になる。ここでおよび以下の説明において、大気圧を制限する必要はないことに留意すべきである。実際には、大気圧を対応する規準圧力リザーバによって供給される任意の基準圧力で置き換えることができる。
【0011】
圧力差は膜によって感知される。膜の表面上に、ホイートストンブリッジのネットワークを形成し得る抵抗器、例えばピエゾ抵抗素子が形成されていてもよい。各々の抵抗器は、適用されるひずみの変化とともに変動する抵抗を有する。差圧センサデバイスは、膜によって感知される圧力変動を示す電気信号を生成するためのMEMSと、電気信号を更に処理するためのASICと、を更に備えてもよく、これらASICおよびMEMSは基板の主面の上に形成される。
【0012】
上記の技術とは対照的に、第1のキャビティを通気孔を介して(例えば大気圧にある)周囲環境と接続するチャネルが、主面と平行な平面に形成されるが、このことは、基板の(主(頂)面の反対側の)底面には通気孔が形成されていないことを暗に示す。このことにより、上記の技術と比較して通気孔が詰まるリスクが大きく減少する。実際には、基板の装着面、すなわち底面からの通気孔の距離は、基板および別層の、主面に対して垂直な方向である積層の厚さ(垂直)方向に沿って任意に選択することができ、この距離は、基板を装着可能な実装PCBの何らかの共形のコーティングによる詰まりを防止するのに十分な高さを有するように選択することができる。実装PCBに通気用の孔に対応する貫通孔を形成する必要はない。このことにより、回路板の他方側の設置面積が小さくなるので、スペースが節約される。
【0013】
上述した問題はまた、差圧(ゲージ圧)センサデバイスを製造する方法であって、以下のステップ、すなわち:
(例えば、セラミック材料またはPCBから製作されるかまたはそれを含む)基板を形成するステップと、
基板の主(頂)面上に、(例えば、誘電性材料からまたは基板と同じ材料から形成可能な)別層を形成するステップと、
別層または基板における基板の主面と平行な平面内に、少なくとも1つのチャネルを、このチャネルが、基板の主面に対して垂直に向く、別層または基板の(主面に対して垂直に向く)短面に通気孔を形成するように形成するステップと、
(例えば、主面に対して垂直な平面内に)別層を貫通してチャネルに接続している貫通通路を形成するステップと、を含む方法によっても解決される。貫通通路はまたキャビティにも接続しており、この中には何らかの規準圧力を蓄積する必要がある。
【0014】
別層および基板の上にセンサセルを形成することができる。センサセルは、規準圧力を提供するための第1のキャビティを備える。したがって、上述した方法は、別層の上に膜を形成することによって別層の上に第1のキャビティを形成することを含んでもよく、この場合、貫通通路は、通気孔(および少なくとも1つのチャネル)を通した規準圧力(例えば、大気圧)の蓄積を可能にする目的で、第1のキャビティに接続するように形成されている。複数の抵抗器、特に複数のピエゾ抵抗素子が、抵抗式差圧センサデバイスを製造する目的で、膜の表面上に形成されている。
【0015】
通気孔が別層に形成される場合、この別層の形成は、・基板(単層または多層基板)上に第1の下位誘電層を形成することと、・第1の下位誘電層上に、犠牲材料を部分的に含む第2の下位誘電層を形成することまたは犠牲材料で製作されている犠牲層を第2の下位誘電層に隣接させて形成することと、・犠牲材料を部分的に含む第2の下位誘電層上にまたは犠牲材料で製作されている犠牲層および隣接している第2の下位誘電層の両方上に、第3の下位誘電層を形成することと、を含んでもよい。この場合、チャネルの形成は、例えば第3の下位誘電層の形成後にアニール処理を実行することによって、犠牲材料を除去することを含む。
【0016】
通気孔が基板に形成される場合、この基板の形成は、基板(単層または多層基板)上に第1の基板下位層を形成することと、第1の基板下位層上に、犠牲材料を部分的に含む第2の基板下位層を形成することまたは犠牲材料で製作されている犠牲層を第2の基板下位層に隣接させて形成することと、犠牲材料を部分的に含む第2の基板下位層上にまたは犠牲材料で製作されている犠牲層および隣接している第2の基板下位層の両方上に、第3の基板下位層を形成することと、を含んでもよい。この場合、チャネルの形成は、例えば第3の基板下位層の形成後にアニール処理を実行することによって、犠牲材料を除去することを含む。
【0017】
別法として、基板または別層に、犠牲材料を形成せずに、レーザエッチング、化学エッチング、ソーイングなどによって、チャネルまたは複数のチャネルが形成される。
【0018】
実施形態によれば、別層の上にMEMSまたは別の感圧素子とASICと膜とが形成されており、膜の下方(別層への方向)に上述した第1のキャビティを、および膜の上方に第2のキャビティを、部分的に形成し得るハウジングが提供され、この場合、第2のキャビティは、第1のキャビティ内に蓄積した規準圧力と対比して圧力が測定されることになる試験媒体を収容するために設けられる。更に、主(頂)面の反対側にある基板の別の主(底)面にプリント回路板を接着することができ、これには適切なコンタクトパッドを設けることができる。
【0019】
本発明の追加の特徴および利点について、図面を参照して説明する。この説明では、本発明の好ましい実施形態を図示することが意図されている添付の図を参照する。かかる実施形態は本発明の全範囲を表してはいないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来技術の例に係る差圧センサデバイスの概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る、別層に1つまたは複数のチャネルが形成されている差圧センサデバイスの図である。
図3】本発明の別の実施形態に係る、基板に1つまたは複数のチャネルが形成されている差圧センサデバイスの図である。
図4】通気孔が別層に形成されている、差圧センサデバイスを製造するステップの図である。
図5】通気孔が基板に形成されている、差圧センサデバイスを製造するステップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は差圧センサデバイス、例えば、試験媒体の圧力が何らかの規準圧力と対比して、例えば大気圧と対比して測定される差圧センサデバイス(ゲージ圧センサデバイス)を提供する。本発明の差圧センサデバイス100の実施形態が図2に示されている。差圧センサデバイス100は基板110とハウジング102とを備える。
【0022】
基板110はセラミック材料、特に導電性セラミック材料から製作されていてもよい。(例えばイットリウムおよび/もしくはサマリウムおよび/もしくはスカンジウムでドープされた)ドープ酸化ジルコニウム、ならびに/または、(例えばガドリニウムおよび/もしくはスカンジウムでドープされた)ドープ酸化セリウム(doped ceroxide)が、セラミック材料の例である。他の材料、特に銅、コバルト、および/もしくは他の遷移金属、ならびに/または合金が含有されてもよい。
【0023】
ハウジング102は、シリコンまたは他の半導体材料、ガラス、金属、プラスチック、セラミック、ならびに他の好適な材料などの材料から製作されてもよい。ハウジング102の上面および基板110の下面に、例えばOリングシールを使用して、シールが形成されてもよい。ハウジング102を、何らかの接着剤、はんだ、またはガラスフリットを介して、基板110に取り付けてもよい。
【0024】
別層104は、基板110の(図2において水平方向に向く)上部の主面上に形成されている。別層104は例えば、誘電性材料、例えば何らかの酸化物材料から製作されても、それを含んでもよい。基板110の主底面上に、実装PCBへの電気的接触のためのコンタクトパッド103が形成されている。
【0025】
ハウジング102内の、基板110の上部の主面および誘電層104の上方に、MEMS105およびASIC106が設けられている。MEMSの頂面上にまたはMEMSの頂面によって、感知膜が形成されている。ハウジング102内にはゲル保護材107が更に設けられて、2つのキャビティを互いに分離している。例えば、測定される媒体に接触する可撓性の膜は、ステンレス鋼を含んでもよい。可撓性の膜は、結果として得られる媒体の正味の圧力差により可撓性の膜の表面に力が及ぼされると屈曲するように構成されている。膜の表面上に、ホイートストンブリッジのネットワークを形成し得る抵抗器R、例えばピエゾ抵抗素子が形成されていてもよい。
【0026】
膜の第1の表面に第1の圧力を適用し、同時に第1の表面の反対側の膜の第2の表面に第2の圧力を適用することによって、膜は第1の表面および第2の表面に適用される圧力の間の圧力差を表す力を受けることになる。ピエゾ抵抗素子は、膜に適用されるこの正味の圧力差を表す抵抗を示すことになる。MEMS105は、膜(の抵抗器)が感知した圧力変動を示す電気信号を、MEMSのASIC106に出力する。ASIC106は、所望に応じてアナログ-デジタル変換および/または増幅、ノイズフィルタリングなどを行うように電気信号を処理してもよい。ハウジング102は、圧力測定中の強作用性の媒体が感知膜およびASIC106およびMEMS105と接触するのを防止する、オイルを充填された隔離された容積などの、他の圧力センサ構成要素を含んでもよい。何らかの適切なコーティングによって保護を提供することもできる。
【0027】
通気孔108が別層104に形成されており、図2において水平に延在する1つのチャネルまたは複数のチャネル109によって入口120に接続されている。チャネル109は、誘電層104における、誘電層104が表面に形成されている基板110の上部の主面と実質的に平行な平面内に形成されている。チャネル109は、通気孔108および入口120と流体連通している。このことにより、通気孔108が自然の環境への入口を表している場合、一部が膜で構築されているキャビティのうちの下側のキャビティの中に、大気圧を蓄積および維持することができる(図2の矢印を参照)。別法として、大気圧とは異なる任意の規準圧力を提供する任意のリザーバを、通気孔108に接続することができる。
【0028】
図3は、本発明の差圧センサデバイス200の代替の実施形態を示す。差圧センサデバイス200は、少なくとも3つの下位層211、212、および213を含む多層基板210と、ハウジング202と、を備える。多層基板210上には別層204(例えば誘電層)が形成されている。ハウジング202には、MEMS205と、ASIC206と、ゲル保護材207と、が収容されている。様々な構成要素の材料は、図2に示す実施形態の説明の文脈において上述したものと同様に選択することができる。ホイートストンブリッジ(Wheatstone bridges)のネットワークを形成し得る抵抗器R、例えばピエゾ抵抗素子が、MEMS205の頂面上にまたはこの頂面によって形成されている、膜Mの表面上に形成されていてもよい。膜Mは、第1のキャビティCを第2のキャビティCから分離している。
第2のキャビティC内に試験(測定)媒体を導入することができ、試験媒体の圧力は、第1のキャビティC内に導入される規準媒体の圧力と対比して測定することができる。規準媒体は大気圧を有する空気であってもよい。
【0029】
図2に示す実施形態とは異なり、基板210の下位層211、212、213のうちの1つまたは複数における、基板210の上部の主面と平行な平面内に、1つまたは複数のチャネル209が形成されており、このチャネル209は入口220に接続されている。更に、チャネル209は、基板210の(主面に対して垂直に向く)短面に形成されている、通気孔208に接続されている。通気孔208が自然の環境へと導かれている場合、第1のキャビティC内に大気圧を蓄積および維持することができる。
【0030】
上記した実施形態では、通気孔と、通気孔に接続され基板の上部の主面と平行に延在する1つまたは複数のチャネルと、が、通気孔の詰まりのリスクを回避または少なくとも低減するように設けられている。以下では、差圧センサデバイス、例えば図2および図3にそれぞれ示す差圧センサデバイス100および差圧センサデバイス200の一方を製造するための例示的な手順を、図4および図5を参照して記載する。
【0031】
本発明の実施形態に係る差圧センサデバイスは、基板と、基板上に形成されている別層と、を備える。差圧センサデバイスの動作構成要素は、基板および誘電層の上に形成されている。以下の説明では、例示の目的で、別層が誘電層であると想定している。図4には、基板と基板上に形成されている誘電層とを備える多層積層体の形成が示されており、この場合、誘電層に規準圧力を提供するための通気孔が形成されている。図5には、基板と基板上に形成されている別層とを備える多層積層体の形成が示されており、この場合、基板に規準圧力を提供するための通気孔が形成されている。
【0032】
図4に示す実施形態では、基板301が提供される(図4の一番上の列を参照)。基板301はセラミック材料、特に導電性セラミック材料を含んでも、これから成っていてもよい。(例えばイットリウムおよび/もしくはサマリウムおよび/もしくはスカンジウムでドープされた)ドープ酸化ジルコニウム、ならびに/または、(例えばガドリニウムおよび/もしくはスカンジウムでドープされた)ドープ酸化セリウムが、セラミック材料の例である。他の材料、特に銅、コバルト、および/もしくは他の遷移金属、ならびに/または合金が含有されてもよい。基板301は、バルク基板または多層基板の形態で提供されてもよい。
【0033】
図4の上から2番目の列に示す製造ステップにおいて、基板301上に誘電層302が形成される。誘電層302は何らかの酸化物層であってもよい。図4の上から3番目の列に示すように、誘電層302上に部分的な犠牲層303が形成される。部分的な犠牲層303は、更なる処置の間に除去されることになる、犠牲材料303aの部分(図4において点で示す)を備える。特に、部分的な犠牲層303は、除去されることになる材料を含み、多層積層体の縁部(図4に示す構成では左側)まで延在する。犠牲材料は、適切なドーピングまたは堆積パラメータの適合によって形成されてもよい。実施形態によれば、部分的な犠牲層303を形成することは、誘電層302上に犠牲材料の層303aを形成することと、誘電層302上にこの層303aに隣接させて誘電性材料の別層303bを形成することと、を含む。
【0034】
続いて、部分的な犠牲層303上に別の誘電層304が形成される(図4の最後から2番目の列を参照)。更に、この別の誘電層304の表面上にまたは上方に層が形成されてもよい。
【0035】
全製造工程のうちの何らかの段階で、部分的な犠牲層303の犠牲材料が除去される(図4の最後の列を参照)。例えば、犠牲材料の除去は、何らかの加熱処置/(短時間の)アニーリング処置320によって達成できる。犠牲材料は、(例えば、セラミック製の)基板301の硬化中に除去されてもよい。部分的な犠牲層303aの犠牲材料の除去によって、通気孔305およびチャネル306が形成される。下位誘電層のうちのいずれか(および特に2つ以上)が犠牲材料を備えてもよいことは言うまでもない。
【0036】
犠牲材料を適切に選択することによって1つまたは複数のチャネルを形成できることが留意される。全製造工程のうち後の段階では、上に重なっている層を貫通して(例えば誘電層304を貫通して)1つまたは複数のチャネル306まで、貫通通路307が形成される。ここでおよび以下で使用される用語に関して、チャネルへと接続する貫通通路307はまた、通気孔(ここでは通気孔305)に接続されるチャネルの一部であると見なすこともできる。貫通通路、チャネル306、および通気孔305によって、圧力センサデバイスのキャビティ内に規準圧力を蓄積することができ、この場合、提供される圧力と対比させて、試験媒体の圧力を決定することができる。
【0037】
続いて、誘電層304上に差圧センサデバイスの他の構成要素が形成される(図2を参照)。
【0038】
図5は代替の製造工程のステップを示す。基板の第1の層401が提供される(図5の一番上の列を参照)。基板はセラミック材料、特に導電性セラミック材料を含んでも、これから成っていてもよい。(例えばイットリウムおよび/もしくはサマリウムおよび/もしくはスカンジウムでドープされた)ドープ酸化ジルコニウム、ならびに/または、(例えばガドリニウムおよび/もしくはスカンジウムでドープされた)ドープ酸化セリウムが、セラミック材料の例である。他の材料、特に銅、コバルト、および/もしくは他の遷移金属、ならびに/または合金が含有されてもよい。基板は多層基板の形態で提供される。
【0039】
図5の上から2番目の列に示されている製造段階において、第1の層401上に、基板の第2の層402が形成される。続いて、層402上に別層403が形成される(図5の上から3番目の列を参照)。部分的な犠牲層403は、図5において点で示されている、例えばドーピングによって形成される犠牲材料を含む。実施形態によれば、層403を形成することは、層402上に犠牲材料の層403aを形成することと、誘電層402上にこの層403aに隣接させて基板材料の別層403bを形成することと、を含む。基板の犠牲材料は、全製造工程のうちの後の段階で除去されることになる。
【0040】
更に進んだ製造段階では、犠牲材料を含む層403上に、基板の別層404が形成される(図5の上から4番目の列を参照)。続いて、層404上に誘電層405が形成される。誘電層405は単層または多層の層であってもよい。
【0041】
全製造工程のうちの何らかの段階で、部分的な犠牲層403の犠牲材料が除去される(図5の最後の列を参照)。例えば、犠牲材料の除去は、何らかの加熱処置/(短時間の)アニーリング処置によって達成できる。犠牲材料は、(例えば、セラミック製の)基板の硬化中に除去されてもよい。部分的な犠牲層403aの犠牲材料の除去によって、通気孔406およびチャネル407が形成される。基板の下位層のうちのいずれか(および特に2つ以上)が犠牲材料を備えてもよいことは言うまでもない。
【0042】
犠牲材料を適切に選択することによって1つまたは複数のチャネルを形成できることが留意される。全製造工程のうち後の段階では、誘電層405および層404を貫通して1つまたは複数のチャネル407まで、貫通通路408が形成される。貫通通路408、チャネル407、および通気孔406によって、圧力センサデバイスのキャビティ内に規準圧力を蓄積することができ、この場合、提供される圧力と対比させて、試験媒体の圧力を決定することができる。
【0043】
本開示の実施形態を、圧力感知ダイヤフラムのひずみを検出するために例えばピエゾ抵抗素子を利用するものとして記載してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく任意の好適なタイプの圧力感知技術を実装してもよいことが理解されるべきである。感知素子は必ずしもMEMSによって提供されない。他の例には、セラミック膜が含まれる。例えば、本明細書で開示されている圧力センサデバイスは、当業者が理解するであろう容量式、電磁式、圧電式、光学式、または熱的圧力感知技法を実装してもよい。
【0044】
これまで検討してきた全ての実施形態は、限定となることは意図されておらず、本発明の特徴および利点を説明する例の役割を果たす。上記した特徴の一部または全てを別の方法で組み合わせてもよいことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5