(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059749
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】滴下投与用燻蒸配合物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/18 20060101AFI20240423BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240423BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20240423BHJP
A01P 5/00 20060101ALI20240423BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20240423BHJP
A01N 41/12 20060101ALI20240423BHJP
A01N 47/14 20060101ALI20240423BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20240423BHJP
A01M 17/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A01N25/18 102A
A01P3/00
A01N25/00 102
A01P5/00
A01P7/04
A01N41/12
A01N47/14 A
A01N25/02
A01M17/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024023179
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2022513841の分割
【原出願日】2020-08-24
(31)【優先権主張番号】1909556
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】フイレ、ティエリー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有害生物駆除剤処理の方法、および滴下投与に適した燻蒸剤配合物を提供する。
【解決手段】土壌および/または基質の燻蒸による有害生物駆除剤処理の方法であって、配合物Fが滴下投与され、配合物Fが、水と、配合物F中の水の総体積に対して0.10体積%~0.40体積%の組成物Cと、を含み、組成物Cが、組成物Cの総重量に対して少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の少なくとも1種の燻蒸剤化合物と、組成物Cの総重量に対して0.1重量%~20重量%の少なくとも1種の界面活性剤と、任意選択で、臭気マスキング剤と、を含む、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌および/または基質の燻蒸による有害生物駆除剤処理の方法であって、
配合物Fが滴下投与され、
前記配合物Fが、水と、前記配合物F中の水の総体積に対して0.10体積%~0.40体積%の組成物Cと、を含み、
前記組成物Cが、
前記組成物Cの総重量に対して少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の少なくとも1種の燻蒸剤化合物と、
前記組成物Cの総重量に対して0.1重量%~20重量%の少なくとも1種の界面活性剤と、
任意選択で、臭気マスキング剤と、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記配合物Fがエマルジョンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配合物Fが、前記配合物F中の水の総体積に対して0.10体積%~0.30体積%の前記組成物Cを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記燻蒸剤化合物が、以下の一般式(1)の化合物から選択される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
R-S(O)n-Sx-R’(1)
式中、Rは、1~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキルラジカル、および2~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルケニルラジカルから選択される。nは、0、1または2に等しい。xは、0、1、2、3または4から選択される整数であり、xは、好ましくは、1、2、3または4を表す。
R’は、1~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキルラジカル、および2~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルケニルラジカルから選択される、または、n=x=0の場合に、水素原子またはアルカリ金属原子から選択される。
【請求項5】
前記燻蒸剤化合物が、ジメチルジスルフィドである、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物Cが、
前記組成物Cの総重量に対して少なくとも90重量%のジメチルジスルフィドと、
前記組成物Cの総重量に対して1重量%~10重量%の少なくとも1種の界面活性剤と、
任意選択で、前記組成物Cの総重量に対して0.1重量%~0.5重量%の臭気マスキング剤と、
を含む、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ジメチルジスルフィドが、
1,3-ジクロロプロペン、フッ化スルフリル(SO2F2)、ホスフィン、ヨウ化メチル、クロロピクリン(Cl3C-NO2)、メタムナトリウム(CH3-NHCS2Na)、テトラチオ炭酸ナトリウム(Na2CS4)、メチルイソチオシアネート(CH3NCS)、ダゾメット(テトラヒドロ-3,5-ジメチル-1,3,5-チアジアジン-2-チオン)、AITC(アリルイソチオシアネート)またはEDN(エタンジニトリル)からなる群から選択される他の燻蒸剤化合物との混合物として投与される、または、前
記他の燻蒸剤化合物とは別に投与される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物Cの投与装置を含む滴下灌注装置によって滴下投与が行われる、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
水と、配合物F中の水の総体積に対して0.10体積%~0.40体積%の組成物Cと、を含む配合物Fであって、
前記組成物Cが、
前記組成物Cの総重量に対して少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の少なくとも1種の燻蒸剤化合物と、
前記組成物Cの総重量に対して0.1重量%~20重量%の少なくとも1種の界面活性剤と、
任意選択で、臭気マスキング剤と、
を含む、
配合物F。
【請求項10】
土壌および/または基質を燻蒸するための、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の配合物Fの使用であって、
前記配合物Fが、好ましくは、前記土壌および/または基質に滴下投与される、
使用。
【請求項11】
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の組成物Cと、
前記組成物Cの投与装置と、
を含む、
土壌および/または基質の滴下燻蒸用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌および/または基質の燻蒸の分野に関し、より具体的には、滴下投与に適した燻蒸剤配合物、およびその使用に関する。本発明はまた、滴下投与されるそのような配合物を使用する土壌および/または基質の燻蒸による有害生物駆除剤処理の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燻蒸剤は、植物に破壊および/または害をもたらす、線虫、真菌、昆虫、雑草などの生物を抑制または殺す周知の化学物質である。燻蒸剤は、多くの場合、揮発性の液体、固体、または気体の形態をとる。燻蒸剤は、投与後に、気体状態で、処理される土壌および/または基質内において拡散する特性を有する。
【0003】
土壌燻蒸の技術は、現在、多くの状況(農業、樹木栽培、園芸、市場向け農園)で、幅広い作物に使用されている。より具体的には、燻蒸は、例えば、トマト、イチゴ、メロン、キュウリ、およびピーマン作物などの高付加価値植物作物だけでなく、ジャガイモ、ニンジン、ブドウ、果樹および切り花作物などの主要作物にも使用される。
【0004】
最大の効果を保証するために、燻蒸剤は通常、土壌の上に堆積させるか、注入によって土壌中に導入する。現在、燻蒸剤の投与に一般的に使用されている技術は2つある。つまり、数センチメートル~数十センチメートルの深さまで土壌に注入できるシャンクの使用、および、土壌上に配置するか土壌中に埋めたシステムでの滴下である。
【0005】
滴下燻蒸の主な利点は、燻蒸剤の投与ベクトル(溶媒)が水であることを考えると、実施の容易さ、使用の柔軟性、および毒性の低減である。
【0006】
既知の燻蒸剤の中で、ジメチルジスルフィド(DMDSとも呼ばれる)は、殺線虫、殺真菌、殺虫および殺菌特性を有する広域スペクトル燻蒸剤として出願WO02/074083に記載されている。単独で使用することも、他の燻蒸剤と一緒に使用することもできる。
【0007】
ただし、使用される燻蒸剤、特にDMDSは、水にあまり溶けない場合がある。したがって、滴下投与は、処理される区画での燻蒸剤の投与に問題を引き起こし得る。溶解度が低いため、燻蒸剤は均一に分配せず、一部の領域に蓄積し、他の領域は十分に処理されない場合がある。したがって、地面の湿度、大気条件、および実施され得る補完的散布の条件に応じて、DMDSを含む燻蒸剤は、土壌または基質の特定の領域に多かれ少なかれ蓄積し、作物に対する局所的な過剰投与または過少投与のリスクをもたらし得る。
【0008】
更に、燻蒸剤は、単独で使用した場合に滴下器を詰まらせ、滴下器ラインに悪影響を与え、使用する機器および燻蒸の有効性レベルに関する問題を引き起こし得る。特定の燻蒸剤、特にDMDSは、大部分のプラスチックとの適合性がない。
【0009】
したがって、処理される土壌および/または基質上で使用される燻蒸剤の均一な拡散を確実にしつつ、効果的な有害生物駆除剤処理を可能にする燻蒸剤配合物が必要である。同様に、十分な可溶化を可能にし、滴下投与に適した、安定した燻蒸剤配合物が必要である。
【0010】
したがって、本発明の目的の1つは、滴下投与に適した燻蒸剤配合物を提供することで
ある。
【0011】
本発明の別の目的は、特にエマルジョンの形態で、安定した燻蒸剤配合物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、効果的であり、処理される土壌および/または基質に燻蒸剤を均一に分散させることができる、使いやすさが向上した、滴下燻蒸による有害生物駆除剤処理の方法を提供することである。
【0013】
したがって、本発明は、水と、配合物F中の水の総体積に対して0.10体積%~0.40体積%の組成物Cと、を含む配合物Fであって、
組成物Cが、
組成物Cの総重量に対して少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の少なくとも1種の燻蒸剤化合物と、
組成物Cの総重量に対して0.1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~10重量%の少なくとも1種の界面活性剤と、
任意選択で、臭気マスキング剤、例えば、組成物Cの総重量に対して0.1重量%~0.5重量%の臭気マスキング剤と、
を含む、
配合物Fに関する。
【0014】
本発明による配合物Fは、好ましくはエマルジョンであり、より好ましくはマイクロエマルジョンである。例えば、エマルジョンの粒子は、0.1μm以下のサイズを有する。
【0015】
配合物Fは、具体的には、配合物F中の水の総体積に対して0.10体積%~0.30体積%、好ましくは0.15体積%~0.25体積%の組成物Cを含み得る。配合物Fは、配合物F中の水の総体積に対して0.15体積%~0.40体積%の組成物Cを含み得る。
【0016】
したがって、本発明は、水および組成物Cを含む配合物Fであって、
組成物Cが、
組成物Cの総重量に対して少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の少なくとも1種の燻蒸剤化合物と、
組成物Cの総重量に対して0.1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~10重量%の少なくとも1種の界面活性剤と、
任意選択で、臭気マスキング剤と、
を含み、
配合物Fが、[組成物C]/[水]の体積比が、0.10/100~0.40/100(すなわち、0.0010~0.004)、好ましくは0.10/100~0.30/100(すなわち、0.0010~0.003)、より好ましくは0.15/100~0.25/100(すなわち、0.0015~0.0025)であることを特徴とする、
配合物Fに関する。
【0017】
この種の配合物を調製するために、具体的には、エマルジョン化可能な燻蒸剤濃縮物を使用することが可能である。1つの特に好ましい実施形態によれば、エマルジョン化可能な濃縮物は、上記で定義された組成物Cに相当する。それは、非常に好ましくは、アルケマによってパラディン(登録商標)EC、アコレード(登録商標)ECおよびアトマル(登録商標)13の名称で販売されているジメチルジスルフィド組成物に相当し得る。一実施形態によれば、組成物Cは水を含まない。組成物Cは、組成物Cの総重量に対して、少なくとも厳密には90重量%超の、好ましくは厳密には90重量%超~95重量%の量の
少なくとも1種の燻蒸剤、好ましくはDMDSを含み得る。
【0018】
組成物Cは、好ましくは、
組成物Cの総重量に対して少なくとも90重量%、例えば90重量%~95重量%のジメチルジスルフィドと、
組成物Cの総重量に対して1重量%~10重量%の少なくとも1種の界面活性剤と、
任意選択で、組成物Cの総重量に対して0.1重量%~0.5重量%の臭気マスキング剤と、
を含む。
【0019】
組成物Cは、具体的には、
組成物Cの総重量に対して少なくとも90重量%の燻蒸剤、例えばジメチルジスルフィドと、
組成物Cの総重量に対して1重量%~10重量%、好ましくは1重量%~6重量%の少なくとも1種の(C10-C13)アルキルベンゼンスルホン酸塩と、
任意選択で、組成物Cの総重量に対して0.1重量%~0.5重量%の臭気マスキング剤と、
を含む、または、それらからなる。
【0020】
本発明による配合物Fおよび組成物Cは、当業者に周知の技術によって調製することができる。例えば、以下の方法を使用することができる。
その成分の単純な混合によって、任意選択で攪拌および加熱を行って、組成物Cを調製する(成分の添加順序は、組成物Cに影響しない)。
次に、得られた組成物Cに、任意選択で攪拌を行いながら、水を加えることにより、配合物Fを調製する。
【0021】
配合物Fはまた、すぐに使用できる形態であり得る。
【0022】
本発明者らは、滴下投与が意図される場合、燻蒸剤の効力と、処理される土壌および/または基質における均一な分配との間の最良のバランスは、安定したエマルジョンが得られることを可能にする特定の配合物を使用することにあることを見出した。
【0023】
有害生物駆除剤処理とは、具体的には、特に植物病原性生物に対して、殺線虫、殺真菌、殺虫、除草および殺菌効果から選択される少なくとも1つの効果を有する処理を意味する。
【0024】
基質とは、具体的には、植物、特に地上作物の栽培に一般的に使用される、堆肥、泥炭、ロックウール、または他の基質を意味する。
【0025】
燻蒸剤化合物
【0026】
燻蒸剤化合物は知られており、文献に広く記載されている。燻蒸剤は、土壌および/または基質の消毒に実際に使用できるようにするために、特に以下の3つの条件を満たす必要がある。
一般的な有害生物駆除特性(具体的には、殺線虫、殺真菌、除草、殺虫、殺菌から選択される少なくとも1つの特性)を有していること。
気体の形態で、処理される土壌および/または基質の厚さ全体に急速に拡散することができること。
存在する植物病原性生物を殺すのに十分な気体濃度をもたらすこと。
【0027】
燻蒸剤には、具体的には、1,3-ジクロロプロペン、フッ化スルフリル(SO2F2)、ホスフィン、ヨウ化メチル、クロロピクリン(Cl3C-NO2)、メタムナトリウム(CH3-NHCS2Na)、テトラチオ炭酸ナトリウム(Na2CS4)、MITC(CH3-NCS)、ダゾメット(MITCを生成する)、AITC(アリルイソチオシアネート)、EDN(エタンジニトリル)、およびDMDSを含む以下の式(1)の化合物が含まれる。
【0028】
国際出願WO2002/074083には、具体的には、硫黄化合物をベースとする燻蒸剤が、具体的には、以下の一般式(1)に適合する化合物が記載されている。
R-S(O)n-Sx-R’(1)
【0029】
式中、Rは、1~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキルラジカル、および2~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルケニルラジカルから選択される。nは0、1、または2に等しい。xは、0、1、2、3または4から選択される整数であり、xは、好ましくは、1、2、3または4を表す。R’は、1~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキルラジカル、および2~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルケニルラジカル、または、n=x=0の場合に、水素原子またはアルカリ金属原子から選択される。
【0030】
ラジカルRおよびR’の非限定的な例には、メチル、プロピル、アリルおよび1-プロペニルラジカルが含まれる。
好ましくは、n=0であり、したがって、化合物は、式(1’)に適合する。
【0031】
R-S-Sx-R’(1’)
【0032】
式中、同一または異なり、好ましくは同一であるRおよびR’は、互いに独立して、1~4個の炭素原子を含む、線状または分枝状のアルキルまたはアルケニルラジカル、好ましくはアルキルラジカルを表し、xは、1、2、3または4を表す。
【0033】
本発明による1つの特に好ましい化合物は、ジメチルジスルフィド(DMDS)である。
【0034】
本発明の1つの変形例によれば、2種以上の燻蒸剤を、混合物として、または別々に、交互にまたは連続的に使用することができる。したがって、2種以上の燻蒸剤が投与される場合、それらは、
配合物F中に一緒に存在する、または、
交互にまたは連続的に投与され、燻蒸剤の少なくとも1つは配合物Fの形態である。したがって、配合物Fは、本発明に従って、他の燻蒸剤と組み合わせてまたは相補的に使用することができる。
【0035】
具体的には、1,3-ジクロロプロペン、フッ化スルフリル(SO2F2)、ホスフィン、ヨウ化メチル、クロロピクリン(Cl3C-NO2)、メタムナトリウム(CH3-NHCS2Na)、テトラチオ炭酸ナトリウム(Na2CS4)、MITC(CH3-NCS)、ダゾメット(MITCを生成)、AITC(アリルイソチオシアネート)、EDN(エタンジニトリル)、および式(1)の化合物、具体的にはジアルキルジスルフィド、例えばDMDSから選択される、例えば、相補的または相乗的特性を有する、2種以上の燻蒸剤を、上記したように、使用することができる。
【0036】
より好ましくは、本発明による配合物Fは、DMDSと、1,3-ジクロロプロペン、フッ化スルフリル(SO2F2)、ホスフィン、ヨウ化メチル、クロロピクリン(Cl3
C-NO2)、メタムナトリウム(CH3-NHCS2Na)、テトラチオ炭酸ナトリウム(Na2CS4)、MITC(CH3-NCS)、ダゾメット(MITCを生成)、AITC(アリルイソチオシアネート)およびEDN(エタンジニトリル)からなる群から選択される少なくとも1種の他の燻蒸剤と、を含む。
【0037】
より好ましくは、DMDSは、1,3-ジクロロプロペン、クロロピクリン(Cl3C-NO2)、メタムナトリウム(CH3-NHCS2Na)、AITC(アリルイソチオシアネート)またはEDN(エタンジニトリル)と組み合わせることができる。たとえば、DMDSをEDNと組み合わせることができる。好ましくは、DMDSはクロロピクリンと組み合わせることができる。
【0038】
従来の有害生物駆除剤(すなわち、非燻蒸剤系有害生物駆除剤)を本発明による配合物Fと交互にまたは相補的に使用することは、本発明の範囲を超えないであろう。
【0039】
本発明による燻蒸剤、特にDMDSはまた、例えば出願PCT/US2019/016448に記載されている種類の新しい有害生物駆除剤または殺生物剤と交互にまたは相補的に使用することができる。
【0040】
具体的には、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素(H2O2)、または過酢酸、過酸化ナトリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過酸化尿素、有機ヒドロペルオキシド(RaOOH)、有機過酸化物(RaOORa)、およびスーパーオキシドなどの過酸化物源を使用することができる。ここで、Raは、1~12個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキル、アルケニルまたはアルキニル、または好ましくは6個の炭素原子を有する芳香環、または芳香環の組み合わせであり、または反応性酸素を生成することができる他の化合物である。
【0041】
この種の交代的または補完的処理は、本発明に従って、好ましくは後処理として、配合物Fの投与の前または後に実施することができる。
【0042】
本発明の文脈において、非常に特別な優先性が、唯一の燻蒸剤としてDMDSを含む配合物Fに与えられる。
【0043】
界面活性剤
【0044】
本発明による配合物Fは、少なくとも1種の界面活性剤を燻蒸剤化合物に添加し、次いで、得られた混合物を特定量の水と混合して、エマルジョン、好ましくはマイクロエマルジョンを与えることによって得ることができる。非常に好ましくは、本発明による配合物Fは、(溶媒として水を有する)水性エマルジョンである。
【0045】
これらのエマルジョンまたはマイクロエマルジョンの調製に特に適しているのは、主に親水性界面活性剤、すなわち、8以上のHLB(親水性親油性バランス)を有するものであり、これは、本質的にアニオン性、カチオン性、非イオン性または両性であり得る。
【0046】
陰イオン性界面活性剤の非限定的な例には、以下が含まれる。
【0047】
アルキル-、アリール-もしくはアルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムもしくはトリエタノールアミン塩、塩基性pHの脂肪酸、スルホコハク酸、またはスルホコハク酸のアルキル、ジアルキル、アルキルアリールもしくはポリオキシエチレン-アルキルアリールエステル;
硫酸、リン酸、ホスホン酸またはスルホ酢酸のエステルのアルカリ金属またはアルカリ
土類金属塩、ならびに、飽和または不飽和脂肪アルコールおよびそれらのアルコキシル化誘導体;
アルキルアリール硫酸、アルキルアリールリン酸およびアルキルアリールスルホ酢酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、およびそれらのアルコキシル化誘導体。
【0048】
使用することができるカチオン性界面活性剤は、例えば、第四級アルキルアンモニウム、スルホニウムまたは酸性pHの脂肪アミンのクラスからのもの、ならびにそれらのアルコキシル化誘導体である。非イオン性界面活性剤の非限定的な例には、アルコキシル化アルキルフェノール、アルコキシル化アルコール、アルコキシル化脂肪酸、グリセロール脂肪エステルまたは糖の脂肪誘導体が含まれる。
【0049】
使用できる両性界面活性剤は、例えば、アルキルベタインまたはアルキルタウリンである。
【0050】
本発明による配合物Fを調製するための好ましい界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩および/またはアルコキシル化アルキルフェノール系化合物である。より具体的には、(ベンゼンスルホン酸のC10-C13アルキル誘導体の塩とも呼ばれる)(C10-C13)アルキル-ベンゼンスルホン酸塩、例えばベンゼンスルホン酸のC10-C13アルキル誘導体のカルシウム塩(CAS番号1335202-81-7)、特に任意の比率のそれらの混合物が使用される。前記(C10-C13)アルキル-ベンゼンスルホン酸塩は、他の界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤と、任意選択で、2-エチルヘキサン-1-オールなどの有機溶媒の存在下で、混合されていてもいなくてもよい。
【0051】
使用される界面活性剤は、市販の組成物、例えば、Crodaによって販売されているAtlox(商標)4851B、Harcros Chemicalsによって販売されているT-Mulz(登録商標)TE-CPの形態であり得る。
【0052】
臭気マスキング剤
【0053】
一部の燻蒸剤には、強い、不快な、または攻撃的な臭いがある。特に、DMDSは、非常に臭いのある不純物の存在と、この分子に固有のニンニクとエーテルの臭いのために、強くて攻撃的な臭いを有している。同じことが大多数の有機硫化物にも当てはまる。
【0054】
一般的に言えば、これらの有機硫化物の酸化物、特にDMSOは、攻撃性の低い臭気を有している。それにもかかわらず、不純物の濃度によっては、この臭いはエンドユーザーにとって不快で厄介なものであり得る。
【0055】
したがって、本発明によれば、配合物Fは、臭気マスキング剤を更に含み得る。任意の既知のタイプの臭気マスクを使用することができる。「臭気マスキング剤」とは、使用される燻蒸剤の臭気を低減、抑制、またはマスキングすることを可能にする化合物またはいくつかの化合物を含む組成物を意味する。
【0056】
挙げられ得る例は、臭化メチルを臭気化するために一般的に使用されるクロロピクリンである。
【0057】
具体的には、参照により本明細書に組み込まれる出願WO2011/012815に記載されているような臭気マスキング剤を使用することが可能である。
【0058】
前記臭気マスキング剤は、少なくとも1種のモノエステル、少なくとも1種のジエステルおよび/またはトリエステル、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のケトン
、および任意選択で少なくとも1種のテルペンを含み得る。
【0059】
1つの好ましい実施形態によれば、臭気マスキング剤は、
【0060】
a1)1重量%~40重量%の少なくとも1種のモノエステルと、
a2)10重量%~70重量%の少なくとも1種のジエステルおよび/またはトリエステルと、
a3)1重量%~30重量%の少なくとも1種のアルコールと、
a4)0.5重量%~20重量%の少なくとも1種の式Ra-CO-Rbのケトン(式中、Raは、1~6個の炭素原子を含み、二重結合の形態での1つまたは複数の不飽和を任意選択で含む線状または分枝状炭化水素鎖を表す;Rbは、任意選択だが好ましくは環状構造で置換された環状炭化水素鎖または線状または分枝状炭化水素鎖を表し、Rbは、6~12個の炭素原子を含み、任意選択で、二重結合の形態の1つまたは複数の不飽和を含み、任意選択で、1つまたは複数のヒドロキシル基で置換されている)と、
a5)任意選択で、20重量%以下の少なくとも1種のテルペンと、
を含む。
【0061】
a1、a2、a3、a4、およびa5のパーセンテージは、臭気マスキング剤の総重量に対する重量パーセンテージである。
【0062】
特に明記されていない限り、「ppm」は重量での100万分の1を意味する。
【0063】
したがって、前記臭気マスキング剤は、臭気マスキング剤の総重量に対して、1重量%~40重量%、好ましくは2重量%~35重量%、より好ましくは5重量%~30重量%の、a1)に記載されている少なくとも1種のモノエステルを含み得る。
【0064】
a1)に記載されているモノエステルの実例であるが非限定的な例には、飽和または不飽和のC2-C20酸のエステル、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2-メチルブチル、イソアミル、ヘキシル、ベンジル、フェニルエチル、メンチルおよびカルビルアセテート、プロピオネート、ブチレート、メチルブチレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ヘプタノエート、カプロエート、オレエート、リノレートおよびリノレネート、およびそれらの混合物が含まれる。
【0065】
特により好ましいのは、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酪酸2-メチルブチル、酪酸イソアミル、酢酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、およびこれらの化合物の混合物である。
【0066】
臭気マスキング剤は、少なくとも1種のジエステルおよび/またはトリエステルa2)を、臭気マスキング剤の総重量に対して10重量%~70重量%、好ましくは15重量%~65重量%、より好ましくは20重量%~60重量%の量で更に含み得る。オルトフタル酸ジエチルなどのオルトフタル酸エステル、クエン酸トリエチルなどのクエン酸エステル、およびマロン酸ジエチルなどのマロン酸エステルから選択される少なくとも1種のジエステルおよび/またはトリエステルを、非限定的に挙げることができる。
【0067】
臭気マスキング剤は、臭気マスキング剤の総重量に対して1重量%~30重量%、好ましくは5重量%~25重量%の少なくとも1種のアルコールa3)、有利には1~30個の炭素原子、好ましくは6~20個の炭素原子、より好ましくは8~11個の炭素原子を含む少なくとも1種のモノアルコール、を更に含み得る。前記炭素原子は、二重結合の形態で1つまたは複数の不飽和を任意選択で含み、飽和、または完全もしくは部分的に不飽和である5員または6員の環状構造を任意選択で含む、線状または分枝状鎖を形成してい
る。
【0068】
上記で定義されたアルコールは、好ましくはモノアルコールであり、ヒドロキシル官能基は好ましくはsp2炭素原子によって保持されている。ヒドロキシル官能基はまた、上記で定義された環状構造に含まれる炭素原子によって保持されていてもよいことを理解されたい。
【0069】
臭気マスキング剤に使用される、上記で定義されたアルコールは、有利であり、非限定的な例として、メントール、ネオメントール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、シトロネロール、ジヒドロミルセノール、ジヒドロテルピネオール、ジメトール、エチルリナロール、ゲラニオール、リナロール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロミルセノール、ネロール、その他、およびそれらの2つ以上の混合物から選択される。
【0070】
上記a4)に示すケトンは、非限定的な例として、好ましくは、ダマスコン、ダマセノン、イオノン、イリソン、メチルイオノン、フランビノン(CASNo.5471-51-2)など、ならびそれらの混合物から選択される。ケトンの量は、臭気マスキング剤の総重量に対して、有利には0.5重量%~20重量%、好ましくは1重量%~10重量%である。
【0071】
臭気マスキング剤は、任意選択で、臭気マスキング剤の総重量に対して20重量%以下、好ましくは1重量%~10重量%の少なくとも1種のテルペンを更に含み得る。
【0072】
使用可能なa5)に示されるテルペンの例としては、これらに限定されないが、テルピネン、ミルセン、リモネン、テルピノレン、ピネン、サビネン、カンフェンなど、それらの2つ以上の混合物、およびテルペンをベースとするエッセンス、特にこれらの成分を含むものが挙げられる。
【0073】
更に、本発明の文脈で使用することができる臭気マスキング剤は、香料の分野で一般的に使用される他の薬剤(香料)、具体的には環状ケトンおよび/またはアルデヒド官能基を有する1種または複数種の化合物を少量含み得る。そのような化合物としては、限定されないが、ゲラニアール、ネラル、シトロネラール、メントン、イソメントン、1,8-シネオール、アスカリドール、フラボノン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0074】
適切な場合、および必要な場合に、臭気マスキング剤は、当該分野で一般的に使用される1種または複数種の添加剤を更に含み得る。そのような添加剤は、例えば、溶媒、顔料、染料、防腐剤、殺生物剤などから選択することができるが、これらに限定されない。
【0075】
溶媒の中で、特に好ましい例は、アルコール、エーテル、エステルおよびグリコールである。特に有利には、溶媒は、フタル酸ジエチル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびそれらの混合物から選択され、更に有利には、フタル酸ジエチル、ジプロピレングリコール、およびそれらの混合物から選択される。
【0076】
典型的な臭気マスキング剤組成物は、(臭気マスキング剤の総重量に対する重量%で)以下を含む。
【0077】
5重量%~30重量%の、酢酸イソアミル、メチル-2-酪酸エチル、酪酸イソアミル、酢酸フェニルエチル、カプロン酸エチル、酢酸ベンジル、酢酸ヘキシルおよびそれらの混合物から選択される、少なくとも1種のモノエステルa1)。
20重量%~60重量%の、オルトフタル酸ジエチルなどのオルトフタル酸エステル、
クエン酸トリエチルなどのクエン酸エステル、およびマロン酸ジエチルなどのマロン酸エステル、およびそれらの混合物、から選択される、少なくとも1種のジエステルおよび/またはトリエステルa2)。
5重量%~25重量%の、a3)で上記した、少なくとも1種のアルコール、好ましくは少なくとも2種のアルコール、より好ましくは少なくとも3種のアルコール。
1重量%~10重量%の、a4)で上記した、少なくとも1種のケトン、好ましくは少なくとも2種のケトン、より好ましくは少なくとも3種のケトン。
1重量%~10重量%の、a5)で上記した、少なくとも1種のテルペン、好ましくは少なくとも2種のテルペン、好ましくはテルペンの混合物。
【0078】
臭気マスキング剤の代表的かつ非限定的な例を以下に再現した。ここで、各成分は、記載された化合物の1つ、複数、またはすべてを含む。
【0079】
成分a1):16.00%
酢酸ベンジル、酢酸ヘキシル、酢酸イソアミル、酢酸フェニルエチル、カプロン酸エチル、メチル-2-酪酸エチル
成分a2):50.00%
マロン酸ジエチル、フタル酸ジエチル
成分a3)20.60%
フェニルエチルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、シス-3-ヘキセノール
成分a4):4.50%
1-(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-3-オン、アルファ-イリソン
成分a5):7.00%
オレンジテルペン
その他:1.90%
シトラール、エチルマルトール、エチルメチルフェニルグリシデート
【0080】
これらの組成物は例として示されている。
【0081】
滴下燻蒸での投与
【0082】
本発明は、土壌および/または基質を燻蒸するための上記で定義された配合物Fの使用に関する。配合物Fは、好ましくは、処理される土壌および/または基質に滴下投与される。
【0083】
本発明はまた、土壌および/または基質の燻蒸による有害生物駆除剤処理の方法に関する。上記で定義された配合物Fは、滴下投与される。
【0084】
したがって、本発明による土壌および/または基質の燻蒸は、果物、野菜、花および観賞植物、具体的には、トマト、イチゴ、メロン、キュウリ、ナス、ピーマン、ジャガイモ、ニンジン、パイナップル、ズッキーニ、スイカ、タマネギ、ニンニク、ブドウ、果樹および切り花の成長に有用である。
【0085】
配合物Fは滴下投与に特に適している。それは、燻蒸剤、具体的にはDMDSの可溶化を可能にする。燻蒸剤は安定して可溶化されるため、滴下器に蓄積して詰まらせることが防止される。配合物Fは、具体的には、少なくとも30分間安定している。更に、それは、過少投与または過剰投与の領域(後者は明らかに望ましくない)を伴わずに、燻蒸の持続時間を通して、処理される表面全体にわたる燻蒸剤の均一拡散を可能にする。
【0086】
特に、DMDSが本発明の条件下で、特に配合物Fの形態で、滴下投与で使用される場合、この燻蒸剤の最大の効力を得ることが可能である。
【0087】
処理は、処理される作物、土壌および/または基質の性質、および気候条件に従って、当業者によって容易に適応され得る。
【0088】
滴下投与は、従来の滴下灌注システムで行うことができる。滴下灌注用のこれらの種類のシステムまたは装置(トリクル灌注システムまたはマイクロ灌注システムとも呼ばれる)は、広く知られており、水および任意選択で液体肥料などの灌注液を、農地の土壌、プランテーションまたは他の基質において栽培される植物に供給するために、一般的に使用されている。本発明によれば、これらのシステムは、本発明による燻蒸剤配合物Fを送達する場合、滴下燻蒸システムとも呼ばれる。
【0089】
従来の灌注装置に加えて、これらのシステムは、例えば、上記で定義された組成物Cの供給部および/または貯蔵容器、および任意選択で組成物Cの投与装置を含む。
【0090】
組成物Cは、それ自体が既知の任意の手段によって、例えばそれを含む貯蔵容器から供給され得る。国際出願WO2014/147034に記載されているように、貯蔵容器は、ポンプを備え、有利にはプランジャーチューブを備え得る。
【0091】
滴下灌注は、組成物Cの投与装置を含む滴下灌注装置によって非常に好ましく行われる。
【0092】
したがって、配合物Fは、燻蒸が行われる場所で水と混合することによって、投与装置によって有利に調製される。投与は、Atexポンプ(可燃性または非常に可燃性の製品を使用するための爆発性雰囲気用ポンプ)またはベンチュリシステムまたは容積計量ポンプを使用して実施できる。
【0093】
投与は、好ましくは電気を使用せずに、好ましくはDosatron International(登録商標)またはFLUIDEO(登録商標)から入手可能なポンプなどの、容積計量ポンプ、好ましくは比例計量用の水圧容積測定ポンプを使用して有利に実施される。この種のポンプは、例えば、出願WO2006/016032に記載されている。したがって、そのようなポンプを使用して、配合物Fの投与は、水の流量に依存して行われ、したがって、燻蒸の期間を通して一定であり得る。
【0094】
滴下燻蒸システムは、具体的には、主供給ラインに接続された滴下ライン(またはパイプ)を含み得、主供給ラインは、上記したように投与装置に接続され得る。
【0095】
一実施形態によれば、滴下ラインは、互いに約20cm~1.5mの間隔で配置される。各滴下ラインには、特に滴下器が装備されており、滴下器は、互いに10cm~50cmの間隔で配置され、0.5~4L/時の流量を有することができる。本発明による配合物Fの投与時間は、45分~5時間、好ましくは1時間~2時間であり得る。
【0096】
水の量は、処理される表面の10~50L/m2、好ましくは10~30L/m2、例えば、約20L/m2であり得る。滴下器ラインの水圧は、0.2~3バール、好ましくは1~1.5バールであり得る。
【0097】
本発明による燻蒸システムは、処理される土壌および/または基質の表面上に設置され得るか、または例えば5cm~2mの深さで、好ましくは5cm~80cmの深さで地中に埋められ得ることが理解される。
【0098】
滴下器を含むライン全体、または滴下燻蒸システム全体、更には処理される土壌および/または基質は、配合物Fを投与する前に、バリアフィルム(すなわち、燻蒸剤からの蒸気または燻蒸剤に対して不浸透性のフィルム)で覆われていてもよい。これにより、燻蒸剤が大気中に放散するのを防ぎ、作業員を保護し、環境を保護することができる。土壌や基質の燻蒸処理に現在使用されているバリアフィルムには、SIF(半不浸透性フィルム)、VIF(実質的に不浸透性のフィルム)、TIF(完全に不浸透性のフィルム)など、さまざまな種類がある。前記バリアフィルムは、出願WO2013/030513に記載されているような光触媒フィルム、または出願WO2016/075392に記載されているような自己接着性または粘着性フィルムであり得る。たとえば、アルケマが販売しているNFT54-195-1/2 CL2 BARRIER-FILMフィルム、Accolade(登録商標)フィルム、Paladin(登録商標)フィルムを使用することができる。
【0099】
本発明はまた、上記で定義された組成物C、組成物Cの投与装置、および任意選択で上記で定義された滴下装置(具体的には、滴下器ラインおよび水と組成物Cの供給のためのシステムを含む)を含む、土壌および/または基質の滴下燻蒸用キットに関する。
【0100】
前記キットは、本発明による配合物Fが、投与によって組成物Cから調製されることを可能にし、そして任意選択で、それが滴下システムで投与されることを可能にする。
前記キットは、任意選択で、上記したようなバリアフィルムを含み得る。
【実施例0101】
実施例1:本発明によるDMDSを含む配合物F、および比較
【0102】
組成物Cを水と混合する。
組成物Cは、およそ、
94.75重量%のDMDSと、
0.25重量%の臭気マスキング剤と、
5.00重量%の、ベンゼンスルホン酸のC10-C13アルキル誘導体のカルシウム塩をベースとする界面活性剤と、
からなる。
【0103】
得られた結果は以下のとおりである。
【0104】
【0105】
本発明による配合物Fは、DMDSの効果的かつ安定したエマルジョン化をもたらす。
約0.25体積%の組成物Cの用量まで、少なくとも30分間安定である澄んだマイクロエマルジョンが得られる。
組成物Cが0.25体積%超~0.4体積%の場合、わずかに濁っているが、少なくとも30分間安定であるエマルジョンが得られる。
組成物Cの用量が0.40体積%を超える場合、エマルジョン化は不十分であり、エマルジョンは安定しない。
【0106】
実施例2:本発明による燻蒸処理
【0107】
本発明による配合物FにおけるDMDSの有効性を、単独で、または他の燻蒸剤と組み合わせて、トルコの温室における栽培区画で栽培されたカーネーションで試験した。
【0108】
I.機器と技術
【0109】
試験は、ランダムに選択された6つの区画の実験スキームを使用して実施され、6つの異なる処理で処理され、処理ごとに4つの試験が行われた。区画のサイズは50m2であり、使用した水の量は20L/m2であった。
カーネーションを植える1か月前に、(DMDSではDosatron(登録商標)ポンプを使用し、メタムナトリウムでは電動ポンプを使用した)滴下灌注システムを使用して、水と共にDMDSおよび/またはメタムナトリウムを投与した。
DMDSで処理されたすべての区画は、完全に不浸透性のフィルム(TIF)で4週間覆われた。メタムナトリウムで処理された区画は、ポリエチレンフィルムで覆われた。
【0110】
処理は以下の通りであった。
使用された組成物Cは、およそ、
94.75重量%のDMDSと、
0.25重量%の臭気マスキング剤と、
5.00重量%の、ベンゼンスルホン酸のC10-C13アルキル誘導体のカルシウム塩をベースとする界面活性剤と、
からなる。
メタムナトリウムについては、水溶液(510g/Lのメタムナトリウムを含む)が使用され、水流に注入される。メタムナトリウムは、DMDSの投与後に注入される。
【0111】
【0112】
II.観察結果と統計分析
【0113】
カーネーションが植えられてから90日後と180日後に土壌を評価した。
枯死率は、区画あたり300の植物で評価された。データはアボットの公式で処理され、燻蒸処理の有効性のパーセンテージが計算された。
分散分析は、ダンカン検定(0.05)を使用して実施された。
試験区画では、感染したカーネーションのサンプルが採取された。単離研究を使用して、フザリウム属菌種がカーネーションの根腐れを引き起こす感染病であると判断された。
【0114】
III.結果
【0115】
植え付けから90日後、次の処理が最高の有効性を示した。
配合物1:79.4%の有効性
配合物3:84.8%の有効性
配合物4:90.9%の有効性
植え付けから180日後、燻蒸処理は全て、未処理と比較して、フザリウム属菌種に対する有意に優れた有効性を示し、DMDSでの処理は全て、1200L/haで、メタムナトリウムの単独投与と比較して、フザリウム属菌種の著しく優れた制御を示した。
【0116】
【0117】
収穫時に、上記の表に示されているように、配合物1、3および4で最高の収穫量が得られた。
【0118】
【0119】
結論
【0120】
滴下中の組成物Cの濃度が(水の総体積に対して)0.10体積%~0.40体積%の場合
【0121】
投与は著しく進行し、土壌中における配合物の優れた拡散を伴う。
滴下システムでの投与による配合物の分配により、燻蒸手順の際にDMDSの一定かつ均一な濃度が可能になる。
DMDS配合物は、燻蒸手順の際に安定している。
【0122】
したがって、本発明による配合物は、滴下投与に非常に適しており、燻蒸装置を故障させることなく、効果的かつ均一な有害生物駆除剤処理を可能にする。
【0123】
更に、組成物Cの濃度が0.40体積%を超える配合物を用いて試験を実施した。
【0124】
滴下中の組成物Cの濃度が(水の総体積に対して)厳密に0.40体積%を超える場合
【0125】
膨張した滴下器ラインの圧力が低下したことにより、投与が停止した。その理由は、滴下器ライン(ポリエチレンの場合はPE、ポリ塩化ビニルの場合はPVC)が、これらの材料との適合性がない浮遊DMDS(したがって可溶化が不十分)と接触して膨潤するためである。滴下器ラインが膨潤して拡張し、プラスチックフィルムの下の燻蒸剤が漏れる場合がある。
滴下器が詰まる。この詰まりは、
滴下器の上流のプラスチックの化学的劣化によって、
「自己補償する」滴下器に存在する膜(このシステムにより、滴下器内の安定した流量が可能になる)の膨潤によって
起こり得る。
したがって、これらの条件下では、滴下燻蒸による処理は困難であるか不可能である。
膨張した滴下器ラインの圧力が低下したことにより、投与が停止した。その理由は、滴下器ライン(ポリエチレンの場合はPE、ポリ塩化ビニルの場合はPVC)が、これらの材料との適合性がない浮遊DMDS(したがって可溶化が不十分)と接触して膨潤するためである。滴下器ラインが膨潤して拡張し、プラスチックフィルムの下の燻蒸剤が漏れる場合がある。
滴下器が詰まる。この詰まりは、
滴下器の上流のプラスチックの化学的劣化によって、
「自己補償する」滴下器に存在する膜(このシステムにより、滴下器内の安定した流量が可能になる)の膨潤によって
起こり得る。
したがって、これらの条件下では、滴下燻蒸による処理は困難であるか不可能である。
本発明に係る態様には以下の態様も含まれる。
<1>
土壌および/または基質の燻蒸による有害生物駆除剤処理の方法であって、
配合物Fが滴下投与され、
前記配合物Fが、水と、前記配合物F中の水の総体積に対して0.10体積%~0.40体積%の組成物Cと、を含み、
前記組成物Cが、
前記組成物Cの総重量に対して少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の少なくとも1種の燻蒸剤化合物と、
前記組成物Cの総重量に対して0.1重量%~20重量%の少なくとも1種の界面活性剤と、
任意選択で、臭気マスキング剤と、
を含む、
方法。
<2>
前記配合物Fがエマルジョンである、<1>に記載の方法。
<3>
前記配合物Fが、前記配合物F中の水の総体積に対して0.10体積%~0.30体積
%の前記組成物Cを含む、<1>または<2>に記載の方法。
<4>
前記燻蒸剤化合物が、以下の一般式(1)の化合物から選択される、<1>~<3>のいずれか1つに記載の方法。
R-S(O)
n
-S
x
-R’(1)
式中、Rは、1~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキルラジカル、および2~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルケニルラジカルから選択される。nは、0、1または2に等しい。xは、0、1、2、3または4から選択される整数であり、xは、好ましくは、1、2、3または4を表す。
R’は、1~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキルラジカル、および2~4個の炭素原子を含む線状または分枝状アルケニルラジカルから選択される、または、n=x=0の場合に、水素原子またはアルカリ金属原子から選択される。
<5>
前記燻蒸剤化合物が、ジメチルジスルフィドである、<1>~<4>のいずれか1つに記載の方法。
<6>
前記組成物Cが、
前記組成物Cの総重量に対して少なくとも90重量%のジメチルジスルフィドと、
前記組成物Cの総重量に対して1重量%~10重量%の少なくとも1種の界面活性剤と、
任意選択で、前記組成物Cの総重量に対して0.1重量%~0.5重量%の臭気マスキング剤と、
を含む、
<1>~<5>のいずれか1つに記載の方法。
<7>
前記ジメチルジスルフィドが、
1,3-ジクロロプロペン、フッ化スルフリル(SO
2
F
2
)、ホスフィン、ヨウ化メチル、クロロピクリン(Cl
3
C-NO
2
)、メタムナトリウム(CH
3
-NHCS
2
Na)、テトラチオ炭酸ナトリウム(Na
2
CS
4
)、メチルイソチオシアネート(CH
3
NCS)、ダゾメット(テトラヒドロ-3,5-ジメチル-1,3,5-チアジアジン-2-チオン)、AITC(アリルイソチオシアネート)またはEDN(エタンジニトリル)からなる群から選択される他の燻蒸剤化合物との混合物として投与される、または、前記他の燻蒸剤化合物とは別に投与される、
<6>に記載の方法。
<8>
前記組成物Cの投与装置を含む滴下灌注装置によって滴下投与が行われる、<1>~<7>のいずれか1つに記載の方法。
<9>
水と、配合物F中の水の総体積に対して0.10体積%~0.40体積%の組成物Cと、を含む配合物Fであって、
前記組成物Cが、
前記組成物Cの総重量に対して少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の少なくとも1種の燻蒸剤化合物と、
前記組成物Cの総重量に対して0.1重量%~20重量%の少なくとも1種の界面活性剤と、
任意選択で、臭気マスキング剤と、
を含む、
配合物F。
<10>
土壌および/または基質を燻蒸するための、<1>~<9>のいずれか1つに記載の配
合物Fの使用であって、
前記配合物Fが、好ましくは、前記土壌および/または基質に滴下投与される、
使用。
<11>
<1>~<9>のいずれか1つに記載の組成物Cと、
前記組成物Cの投与装置と、
を含む、
土壌および/または基質の滴下燻蒸用キット。