(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059754
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】多層ブレージングシート
(51)【国際特許分類】
C22C 21/00 20060101AFI20240423BHJP
C22F 1/04 20060101ALN20240423BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C22C21/00 E
C22C21/00 J
C22C21/00 D
C22F1/04 Z
C22F1/00 614
C22F1/00 623
C22F1/00 627
C22F1/00 626
C22F1/00 630M
C22F1/00 640A
C22F1/00 651A
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691A
C22F1/00 691B
C22F1/00 692A
C22F1/00 694A
C22F1/00 691C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023357
(22)【出願日】2024-02-20
(62)【分割の表示】P 2020556960の分割
【原出願日】2019-04-11
(31)【優先権主張番号】1853307
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】517422951
【氏名又は名称】コンステリウム ヌフ-ブリザック
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM NEUF-BRISACH
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】シェアブ,べシル
(72)【発明者】
【氏名】プゲ,リオネル
(72)【発明者】
【氏名】モニエ,フロリアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】厳しい腐食性環境内での挙動を改善するためのアルミニウム合金製の多層ブレージングシート。
【解決手段】重量%で、最大0.70%のSi、最大0.70%のFe、0.20~1.10%のCu、0.70~1.80%のMn、最大0.40%のMg、最大0.30%のZn、最大0.30%のTi、各々最大0.30%のZr及び/又はCr及び/又はV、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、残りはAlで構成されるAA3xxx合金製のコア層、コア層の少なくとも片側にある、AA4xxx合金製のろう付け層、及び組成が、重量%で、1.5%から2.3%のZn、0.2%から0.45%のMn、最大0.5%のFe、最大0.5%のSi、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、残りはAlで構成される、コア層の少なくとも片側に、コア層とろう付け層との間に挿入される中間層、を含むブレージングシートとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むブレージングシート:
-重量%で、最大0.70%のSi、最大0.70%のFe、0.20~1.10%のCu、0.70~1.80%のMn、最大0.40%のMg、最大0.30%のZn、最大0.30%のTi、各々最大0.30%のZrおよび/またはCrおよび/またはV、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、残りはアルミニウムで構成されるAA3xxx合金製のコア層、
-コア層の少なくとも片側にある、AA4xxx合金製のろう付け層、および
-組成が、重量%で、1.5%~2.3%のZn、0.2%~0.45%のMn、最大0.5%のFe、最大0.5%のSi、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、残りはアルミニウムで構成される、コア層の少なくとも片側に、コア層とろう付け層との間に挿入される中間層。
【請求項2】
コア層が0.45~0.51重量%のCuを含むことを特徴とする、請求項1に記載のブレージングシート。
【請求項3】
コア層が、重量%で、0.05~0.35%のSi、最大0.40%のFe、0.25~0.70%のCu、1.10~1.60%のMn、最大0.15%のMg、0.01~0.30%のCr、最大0.30%のZn、0.01~0.20%のTi、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、残りはアルミニウムで構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載のブレージングシート。
【請求項4】
ろう付け層が、コア層の両側にあり、両方のろう付け層が、同じまたは異なる組成を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載のブレージングシート。
【請求項5】
中間層のMn含有量が、0.30~0.40重量%であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載のブレージングシート。
【請求項6】
ろう付け層および中間層がそれぞれ、ブレージングシートの全厚みの3~30%の厚みを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載のブレージングシート。
【請求項7】
中間層におけるZn/Mnの割合が2から11であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載のブレージングシート。
【請求項8】
中間層の厚みが最大65μmであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載のブレージングシート。
【請求項9】
自動車の熱交換器の製造のための、請求項1から8のいずれか一つに記載のブレージングシートの使用。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一つに記載のブレージングシートから部分的に製造されることを特徴とする、自動車の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用熱交換器のような、熱交換器システムにおいて使用されるべきアルミニウムブレージングシートに関するものである。ブレージングシートは理想的には、そのような熱交換器の管またはプレートを作製するために使用される。熱交換器は例えば、給気冷却器(CAC)、排気ガス再循環(EGR)冷却器、蒸発器、凝縮器または放熱器であり得る。
【0002】
本発明はとりわけ、給気冷却器(Charge Air Cooler、CAC)用途のための、ブレージングシートの新しい解決法に関するものである(
図1および
図2を参照)。CAC熱交換器は使用中、冷却時に、圧縮された排気ガスと空気との混合物からの刺激性の酸性の凝縮水に曝され、このことにより、さらに高い耐腐食性を伴うアルミニウムブレージングシートが必要となる。
【背景技術】
【0003】
自動車産業向け熱交換器は今日では、優れた熱伝導、使い易さおよび優れた耐腐食性を確保しながら、特に銅合金と比べて重量節減を可能にするその低密度を理由として主にアルミニウム合金で作られている。
【0004】
以下の説明中で分かるように、合金および質別の呼称は、他に指示がない限り、全て米国アルミニウム協会によって出版されている、Aluminum Standards and Data and the Registration Recordsにおけるアルミニウム協会呼称を参照している。
【0005】
熱交換器は一般に、内部流体の循環のための、上下に積み重ねられる管または対のプレート、内部流体と外部流体との間の熱伝達を増大させるためのフィン、およびフィンと同じ目的をもつ、管または対のプレートの内側の任意のタービュレータを含む。CAC用途について、内部流体は、構成に応じて、冷却されるべきガスまたは冷媒であり得る。内部流体は、管の中または対のプレートによって形成される流路の中を流れる。外部流体は、構成に応じて、空気または冷却されるべきガスであり得る。外部流体は、管間または対のプレート間、また任意のフィンを通って流れる。
【0006】
放熱器の用途について、内部流体は冷却されるべき流体であり、また外部流体は空気である。
【0007】
蒸発器の用途について、内部流体は冷媒であり、また外部流体は空調用に冷却されるべき空気である。
【0008】
熱交換器の作製は、機械的組立てによってまたはろう付けによって行われる。作製プロセスの第1のステップは、シートを製造することであり、該シートはそれから管またはプレートを得るために使用される。管は一般に、シートロールフォーミングならびに溶接またはろう付けによって得られる。プレートは一般に、シートの打抜きによって得られる。流体が中を流れることができる流路を形成するために、2つのプレートは対をなす。
【0009】
ブレージングシートの通常の構成は次の通りである。すなわち、概してAA3xxx系のアルミニウム合金で作られるコア層は、概してAA4xxx系のいわゆるろう付け層で片側または両側がクラッドされている。ろう付け層は、コア層の融解温度より低い温度で融解する利点を有し、そのためろう付け用熱サイクルの適用により、組み立てるべき2つの材料間の結合を作り出すことができる。
【0010】
3層構成は
図3において示されており、ここでコア層には参照番号2が付されており、またろう付け層には、参照番号1が付されている。ろう付け層は、同じまたは異なる組成を有し得る。フィンは、管の相違する列間にまたは対のプレートの相違する列間に(すなわち管または対のプレートの外側に)位置決めされるものであり、AA3xxx系合金で構成され、該合金はクラッドされるかもしれないしまたはされないかもしれない。管または対のプレートへのフィンのろう付けは、管または対のプレートの外側に位置決めされる、AA4xxx系で作られるろう付け層によって確保される。管またはプレートのコア層用に使用されるAA3xxx系の合金は、ほとんどの場合いわゆる「ロングライフ」合金製、すなわち塩分による外部腐食に対する優れた耐性を有する合金製である。
【0011】
しかしながら、一般的な3層ブレージングシート解決法は概して、シートのコア層への急速な腐食貫通が原因で、CACタイプの熱交換器に適さない。
【0012】
一般に、ブレージングシートの耐腐食性を改善するために、解決法は、管またはプレートのコア層とAA4xxx系で作られるろう付け層との間に、AA1xxx系またはAA7xxx系の合金で作られる中間層を挿入することにある。
【0013】
このような構成は、
図4において概略的に示されており、ここで管またはプレートのコア層には参照番号2が付されており、AA4xxx系の合金で作られるろう付け層(類似組成または異なる組成を有し得る)には参照番号1が付されており、また概してAA1xxx系またはAA7xxx系の合金で作られる中間層には、参照番号3が付されている。
【0014】
このような中間層は、2つの機序によって腐食挙動を改善する。中間層は第一に、ろう付け中の、ろう付け層から管またはプレートのコア層への成分(例えばケイ素)の拡散を制限し、またコア層からろう付け層への成分(例えば銅)の拡散も制限する。中間層は第二に、中間層の腐食電位がコア層の腐食電位より低い場合に犠牲陽極保護を提供するか、またはコア層よりも耐腐食性が高い。
【0015】
これらの多層シートは、当業者により知られており、特に、以下の特許出願に記載されている。株式会社神戸製鋼所、神鋼アルコア輸送機材株式会社の特開2003-027166号公報、神鋼アルコア輸送機材株式会社の特開2005-224851号公報、Alcoa Incの国際公開第2006/044500号および国際公開第2009/142651号、Corus Aluminium Walzprodukte GmbHの国際公開第2007/042206号、Novelisの米国特許出願公開第2010/0159272号明細書等。
【0016】
排気ガス通路を伴う給気冷却器における、このタイプの多層シートの使用は、Modine Mfg Co.の国際公開第2008/063855号の中で記載されている。
【0017】
この使用はまた、刊行物「New Advanced Materials-New Opportunities for Brazed HX Folded Tubes & Hydro MultiClad Materials」、Hartmut Janssen、7th Aluminium Brazing Conference、2012年においても、また以下の特許出願、「Sapa Heat Transfer AB」の国際公開第2009/128766号、「Alcoa Inc.」の国際公開第03/089237号、欧州特許出願公開第2065180号明細書、国際公開第2006/044500号、「Corus Aluminium Walzprodukte GmbH」の国際公開第2007/042206号および仏国特許出願公開第2876606号明細書においても記載されている。
【0018】
しかしながら、このような構成は、管またはプレートの耐腐食性を改善できはするものの、低いpHを特に特徴とする排気ガスの再循環を受ける熱交換器の場合にそうであるように、特に厳しい腐食条件下では、不十分である可能性がある。
【0019】
解決法として、これらのブレージングシートの耐腐食性を改善するために、Znを含有する中間層を使用することが知られている。一般的な中間層は例えば、Znを含むAA7072合金またはAA3003合金で作られる。Znを含有する中間層は犠牲陽極の役割を果たし、局部的な孔食または粒間腐食によってコア層に貫入する代わりに、側方へ熱交換器の内表面を攻撃することを腐食に強いる。
【0020】
他の解決法はとりわけ、Alerisの欧州特許第1934013号明細書中に記載されており、ここで2つの4xxx層と、3xxxコア層(0.55~1%のCuを含有)と、0.1~5%のZnおよび0.5~1.5%のMnを含む3xxx中間層とを用いた4層ブレージングシート解決法が記述されている。
【0021】
その上、高温で低い流動応力を有する中間層を伴う多層サンドイッチ構造の熱間圧延は、非常に困難である。この場合の中間層の選択は、中間層と周囲層との間の結合が困難にならないようにまたはさらには不可能にならないように、慎重になされる必要がある。
【0022】
圧延を容易にするための解決法は、特に硬化性元素を添加することにより、中間層の高温での流動応力を増大させることである。「Sapa Heat Transfer AB」の国際公開第2009/128766号の中で言及されている通り最大0.3%レベルのチタンの場合がそれである。固溶体による硬化剤として、マンガンも同様に引用されている。
【0023】
上述の出願ならびに「Alcoa Inc.」の国際公開第2009/142651号は、AA3xxx合金中間層を特許請求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2003-027166号公報
【特許文献2】特開2005-224851号公報
【特許文献3】国際公開第2006/044500号
【特許文献4】国際公開第2009/142651号
【特許文献5】国際公開第2007/042206号
【特許文献6】米国特許出願公開第2010/0159272号明細書
【特許文献7】国際公開第2008/063855号
【特許文献8】国際公開第2009/128766号
【特許文献9】国際公開第03/089237号
【特許文献10】欧州特許出願公開第2065180号明細書
【特許文献11】仏国特許出願公開第2876606号明細書
【特許文献12】欧州特許第1934013号明細書
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】New Advanced Materials-New Opportunities for Brazed HX Folded Tubes & Hydro MultiClad Materials」、Hartmut Janssen、7th Aluminium Brazing Conference、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の主目的は、過剰な使用材料、大きな重量が無く、かつ実施の容易さおよびコストの観点から見て従来技術の解決法と少なくとも同等である製造条件を許容しつつ、自動車の排気ガスの再循環によって、そしてそれよりは低いレベルで空調用蒸発器によって作り出されるもののような厳しい腐食性環境内での挙動を改善するために、アルミニウム合金製の多層複合材料または多層ブレージングシートの組成、詳細にはコア層および中間層の組成を最適化することである。
【0027】
本発明の別の目的は、中間層の犠牲的性質を最適化し、またこうしてシートの表面での腐食のラテラリゼーションを増進させ、またこうしてコア層への腐食の貫入をできる限り遅延させることである。
【0028】
ブレージングシートの腐食挙動は、「CACテスト」と呼ばれる、合成酸性凝縮物を使用する特異的サイクル腐食試験によって評価されることができる。このテストは、以下の実施例において記述されている。
【0029】
上述のとおり、一般的な3層ブレージングシート解決法は概して、シートのコア層への急速な腐食貫入が原因で、CACタイプの熱交換器に適さない。CACの腐食条件を満たすために、犠牲的中間層が4xxxろう付け層とコア層との間に添加される4層解決法が開発された。しかしながら、耐腐食性がありまた同時に熱間圧延に適したシートを得るのは困難なままである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
出願人は、Mnを含有する中間層へのZnの添加によって、コア層と比べて中間層の犠牲的側面を最適化することを可能にする多層ブレージングシートを開発した。この新たに開発された中間層は、シートの熱間圧延を実行可能にするのに十分なMnを含み、かつ既存の解決法と比べてCACテストで腐食耐性における改善を示している。
【0031】
本発明の対象の一つは、以下を含む、好ましくは実質的に以下で構成される、より好ましくは以下で構成されるブレージングシートである:
-重量%で、最大0.70%(好ましくは0.10~0.30%)のSi、最大0.70%(好ましくは最大0.40%、さらに好ましくは最大0.25%)のFe、0.20~1.10%(好ましくは0.30~1.00%)のCu、0.70~1.80%(好ましくは1.10~1.60%)のMn、最大0.40%(好ましくは最大0.30%)のMg、最大0.30%(好ましくは最大0.20%)のZn、最大0.30%(好ましくは最大0.20%)のTi、各々最大0.30%のZrおよび/またはCrおよび/またはV、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、残りはアルミニウムを含むAA3xxx合金製のコア層、
-コア層の少なくとも片側(好ましくは両側)にある、AA4xxx合金(例えばAA4343またはAA4045、好ましくは5~13重量%のSiを含む)製のろう付け層、および
-組成が、重量%で、1.5%から2.3%のZn、0.2%(好ましくは0.3%)から0.75%(好ましくは0.45%)のMn、最大0.5%(好ましくは0.4%)のFe、最大0.5%(好ましくは0.4%)のSi、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、残りはアルミニウムを含む(好ましくは実質的にそれらで構成され、より好ましくはそれらで構成される)、コア層の少なくとも片側(一実施形態によると両側)に、コア層とろう付け層との間に挿入される中間層。
【0032】
本発明の別の対象は、自動車の熱交換器、好ましくは給気冷却器(CAC)、排気ガス再循環(EGR)冷却器、蒸発器、凝縮器または放熱器の製造のための、本発明によるブレージングシートの使用である。
【0033】
本発明の別の対象は、熱交換器の製造のための本発明によるブレージングシートの使用であって、熱交換器は、冷却されるべきガスが外側に流れる管または対のプレートによって形成される流路を含む水冷式給気冷却器であり、前記管またはプレートは、中間層が前記外側に位置する、本発明によるブレージングシートから作られ、また前記外側に固定される、1.25重量%から3.00重量%のZn含有量を有するアルミニウム合金製のフィンを含み、また中間層のZn含有量は、フィンのZn含有量の120%未満、好ましくはその100%未満である。
【0034】
本発明の別の対象は、本発明によるブレージングシートから部分的に製造されることを特徴とする自動車の熱交換器、好ましくは給気冷却器(CAC)、排気ガス再循環(EGR)冷却器、蒸発器、凝縮器または放熱器、より好ましくは給気冷却器である。
【0035】
本発明の別の対象は、上述のような熱交換器であって、熱交換器は、冷却されるべきガスが外側に流れる管または対のプレートによって形成される流路を含む水冷式給気冷却器であり、前記管またはプレートは、中間層が前記外側に位置する、本発明によるブレージングシートから作られ、また前記外側に固定される、1.25重量%から3.00重量%のZn含有量を有するアルミニウム合金製のフィンを含み、また中間層のZn含有量は、フィンのZn含有量の120%未満、好ましくはその100%未満である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】空冷式給気冷却器(空冷式CAC)の管(ロール成形ならびにろう付けまたは溶接された管)の概略的な長手方向断面図を示している。
【
図2】水冷式給気冷却器(水冷式CAC)の管(対のプレートによって形成された流路)の概略的な長手方向断面図を示している。
【
図3】概略的な3層ブレージングシート構造を示している。
【
図4】概略的な4層ブレージングシート構造を示している。
【
図5】(a)「CACテスト」前の、先行技術のロングライフ材料、すなわち、試料の背面および縁が、寄生腐食を避けるために接着剤およびシリコーンで保護されている。(b)「CACテスト」および熱湯での濯ぎから2週間後の、先行技術のロングライフ材料を示している。
【
図6】SWAAT試料(試料縁を保護しているシリコーンジョイントを取り除いた後)での横断面切断工程の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[コア層]
コア層は、3xxx合金製である。
【0038】
コア層は好ましくは重量%で以下を含み、より好ましくは実質的に以下で構成される:
最大0.70%、好ましくは0.05~0.35%、より好ましくは0.10~0.30%のSi、
最大0.70%、好ましくは最大0.40%、より好ましくは最大0.25%のFe、
0.20~1.10%、好ましくは0.30~1.00%、より好ましくは0.35~0.60%のCu、
0.70~1.80%、好ましくは1.10~1.60%、より好ましくは1.20~1.50%のMn、
最大0.40%、好ましくは最大0.30%、より好ましくは最大0.15%、さらにより好ましくは最大0.10%のMg、
最大0.30%、好ましくは最大0.20%のZn、
最大0.30%、好ましくは最大0.20%、より好ましくは0.01~0.20%、さらにより好ましくは0.02~0.15%のTi、
各々最大0.30%、好ましくは0.01~0.30%、より好ましくは0.02~0.25%のZrおよび/またはCrおよび/またはV、
各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、
残りはアルミニウム。
【0039】
本発明によるブレージングシートのコア層は好ましくは、0.40~0.54重量%、より好ましくは0.45~0.51重量%のCuを含む。
【0040】
本発明による3つの適切なコア層合金が、重量%で、以下の表1中に記述されている。
【0041】
【0042】
一実施形態によると、本発明による適切なコア層合金は、重量%で、0.05~0.35%のSi、最大0.40%のFe、0.25~0.70%のCu、1.10~1.60%のMn、最大0.15%のMg、0.01~0.30%のCr、最大0.30%のZn、0.01~0.20%のTi、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、残りはアルミニウムで構成される。
【0043】
コア層の質別は、部分的に焼きなましされたH24ような回復した構造、または完全に焼きなましされた質別Oであり得る。当業者に一般的に知られているように、質別は、例えば規格BS EN 515において定義されている。
【0044】
〔ろう付け層〕
ろう付け層のSi含有量は好ましくは、5~13重量%である。
【0045】
ろう付け層の組成は好ましくは、AA4045またはAA4343である。
【0046】
AA4045組成は例えば、重量%で、9~11%のSi、最大0.8%のFe、最大0.30%のCu、最大0.05%のMn、最大0.05%のMg、最大0.10%のZn、最大0.20%のTi、各々0.05%未満で合計0.15%未満の他の元素、残りはアルミニウムである。
【0047】
AA4343組成は例えば、重量%で、6.8~8.2%のSi、最大0.8%のFe、最大0.25%のCu、最大0.10%のMn、最大0.05%のMg、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、残りはアルミニウムである。
【0048】
一実施形態によると、コア層の質別はH24であり、またろう付け層は、コア層の片側のみ、好ましくは中間層側に存在する。
【0049】
ろう付け層は好ましくはコア層の両側にあり、中間層が存在する場合にはその上に、さもなければコア層の上に直接にあり、両方のろう付け層は、同じまたは異なる組成を有する。
【0050】
〔中間層〕
本発明による中間層は重量%で以下を含み、好ましくは実質的に以下で構成され、より好ましくは以下で構成される:1.5%から2.3%のZn、0.2%(好ましくは0.3%)から0.75%(好ましくは0.45%)のMn、最大0.5%(好ましくは0.4%)のFe、最大0.5%(好ましくは0.4%)のSi、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、残りはアルミニウム。
【0051】
本発明によるブレージングシートの中間層のMn含有量は好ましくは、0.3~0.4重量%である。中間層におけるMnのこの特定範囲の効果は、以下の実施例によって示されている。
【0052】
本発明によるブレージングシートの中間層のZn含有量は好ましくは、1.5~2.3重量%である。中間層におけるZnのこの特定範囲の効果は、以下の実施例によって示されている。
【0053】
中間層におけるZn/Mnの割合は好ましくは2から11であり、より好ましくは3から7である。
【0054】
Tiは、腐食電位を上昇させる可能性があり、またこうしてコア層と比べて中間層の犠牲度をより低いものにし得る。したがって、中間層におけるTi含有量は、好ましくは0.05重量%未満である。
【0055】
中間層の厚みは好ましくは最大65μmであり、より好ましくは最大55μmである。
【0056】
一実施形態によると、本発明によるブレージングシートは、例えば
図2で示されているように、水冷式給気冷却器において使用される。この特定実施形態において、中間層は管または対のプレートの外側にあり、またフィンは前記外側に固定されている。この場合、管または対のプレートの外側は、冷却されるべきガスと接触する側である。この実施形態において、中間層のZn含有量は好ましくは、フィンのZn含有量未満である。この特定実施形態は、以下でさらに説明されることになる。
【0057】
[シート]
本発明によるブレージングシートは好ましくは、ろう付け層および中間層がそれぞれ、ブレージングシートの全厚みの3~30%、好ましくは5~15%、より好ましくは8~12%の厚みを有することを特徴とする。
【0058】
本発明は、特に給気冷却器または空調用蒸発器において材料が使用中に受ける厳しい腐食条件に適応した多層タイプのブレージングシートを製作するための、コア層、中間層およびろう付け層のそれぞれの合金の賢明な選択に存する。
【0059】
中間層の合金の構成元素に課せられる濃度範囲はとりわけ、以下の理由により説明される:
-Siは、耐孔食性および/または耐粒界腐食性に対する不利な影響を有する。このため、その含有量は、0.5重量%未満、また好ましくは0.4重量%未満でなければならない、
-Feは、概してアルミニウムにとっての不純物と考えられ、また孔食の開始の優先的部位を構成する。このため、その含有量は、0.5重量%未満、またより好ましくは0.4重量%未満でなければならない、
-Cuも同様に腐食電位を上昇させ、こうして中間層の犠牲陽極効果を削減する。合金内部におけるその分布が均質でないことから、ガルバニック腐食のリスクも増大させる可能性があり、特に、結晶粒界におけるAl2Cuタイプの相の存在による粒間腐食にも有利に作用し得る。このため、その含有量は、不純物の含有量、つまり0.05重量%未満に制限されなければならない、
-Mnは、硬化性元素であり、固溶体でのおよび微細分散質の形での硬化により、ろう付け後の強度に対しプラスの効果を有する。最も重要なことに、Mnは、合金の熱間流動応力を改善し、共圧延を大幅に容易にする。しかし、Mnが多すぎると、腐食攻撃が側方へ向けられないので中間層レベルに保たれず、コア層が腐食によって攻撃される可能性があるという点において耐腐食性は低下する。その上、Mnが多すぎると、中間層はコア層と比べて犠牲度がより低くなる、
-Mgは、機械的強度に対しプラスの影響を有するが、ろう付け層の表面へ移動するということからろう付け性に有害であり、特に「Nocolok(登録商標)」タイプの制御雰囲気ろう付け(CAB)の場合、ろう付けの特性を不利な方向に修正する酸化物層を形成する。かかる理由から、このようなむずかしい利用分野については、その含有量は、0.02%または0.01%にさえ制限されることができる、
-Znは、耐腐食性に影響を及ぼす。その含有量は、Mnの含有量とバランスが取れていなければならない。Znが多すぎると、中間層の腐食電位は過度に低いかもしれない。この場合、中間層は過度に急速に劣化し得、特に中間層がフィン側に位置するとき、中間層は、(保護用のはずの)フィンよりも速く腐食する可能性がある。中間層におけるZnの含有量はしたがって、好ましくは1.5重量%から2.3重量%である。
【0060】
中間層の存在は、コア層からろう付け層への銅のプロファイルの減少を生み出すことを可能にする。その結果、耐腐食性に対する亜鉛の作用は増強される。
【0061】
中間層側と反対側にあるコア層側は、AA4xxx系の合金製ろう付け層で直接クラッドされてよい。ろう付け層は、同じまたは異なる組成を有し得る。
【0062】
しかしながら、この構成の有利な一変形形態は、対称な多層複合材料であり、すなわちコア層の両側に中間層を備え、一方が内部腐食に対する耐性を保証し、もう一方が外部腐食に対する耐性を保証し、これはCACタイプの熱交換器の場合において非常に有利である。この実施形態においても同様に、ろう付け層は、同じまたは異なる組成を有し得る。これは2つの中間層についても当てはまる。
【0063】
〔製造過程〕
本発明によるブレージングシートは、あらゆる既知のプロセスを利用して製造してよい。プロセスは概して、以下の連続するステップを含み得る:
-さまざまな合金を鋳造してブロックを得る、
-塊を両側でスカルピングする、
-中間層を任意に均質化する、
-400~550℃でろう付け用合金および中間層合金の塊を予熱する、
-所望のクラッド比を得るために所望のクラッド厚みまで、ろう付け用合金および中間層合金の塊を熱間圧延する、
-少なくとも1時間、好ましくは1~20時間の間、550~630℃で、コア層合金の塊を任意に均質化する、
-塊を組み立ててサンドイッチ構造を得る、
-400~550℃でサンドイッチ構造を予熱する、
-例えば2~4.5mmである中間厚みまでサンドイッチ構造を熱間圧延する、
-例えば0.15~1.20mmである所望の最終厚みまで、熱間圧延されたサンドイッチ構造を冷間圧延し、ブレージングシートを得る、
-少なくとも30分間、250~450℃で焼きなましする。
【0064】
焼なましステップの目標は、例えばH24または質別Oである、所望の質別を達成することである。
【0065】
それからブレージングシートは、同じまたは別の構成を有し得る他のシートにろう付けされることができる。ろう付けプロセスは好ましくはフラックスを使用し、それは例えばNocolok(登録商標)と呼ばれる既知のプロセスである。
【0066】
このようなブレージングシートは、以下の実施例中に示されるように、とりわけ打抜きにおける優れた挙動ならびに著しく改善された腐食挙動のために、熱交換器、好ましくは給気冷却器(CAC)、排気ガス再循環(EGR)冷却器、蒸発器、凝縮器または放熱器、より好ましくは給気冷却器(CAC)の製造に特に適している。
【0067】
本発明は、圧延適性と耐腐食性との間の最高の折衷を構成する。本発明は、少なくとも、中間層におけるMnおよびZnの総量の特異的選択という点で、公知の先行技術と異なっている。
【0068】
[使用]
本発明によるブレージングシートは、自動車の熱交換器、好ましくは給気冷却器(CAC)、排気ガス再循環(EGR)冷却器、蒸発器、凝縮器または放熱器、より好ましくは給気冷却器(CAC)の製造において使用されることができる。知られているように、CACの主な種類は2つあり、すなわち空冷式CACおよび水冷式CACである。
【0069】
空冷式CACは、
図1で例証され得る。
図1は、空冷式給気冷却器(空冷式CAC)の管の概略的な長手方向断面図を示している。
【0070】
図1で例証されているような空冷式CACの管は、4層ブレージングシートで作られている。ブレージングシートは、同じまたは異なる組成を有し得るろう付け層1を2つ、コア層2および中間層3を含む。参照番号4は、フィンを表している。別の実施形態によると、ブレージングシートが、第1の中間層に比べて同じまたは異なる組成を有する第2の中間層を反対側に含み得ることが理解される。
【0071】
冷却されるべきガス5は、管の内側8(=中間層側)の中を流れる。空気6は、管の外側9(=中間層の反対側)を流れる。フィン4は、管の外側9に位置決めされる。中間層3は、冷却されるべきガス5が流れる、管の内側8に位置決めされる。
【0072】
水冷式CACは、
図2で例証され得る。
図2は、水冷式給気冷却器(水冷式CAC)の管(または対のプレートによって形成された流路)の概略的な長手方向断面図を示している。
【0073】
図2で例証されているような水冷式CACの管(または対のプレートによって形成された流路)は、4層ブレージングシートで作られている。ブレージングシートは、同じまたは異なる組成を有し得るろう付け層1を2つ、コア層2および中間層3を含む。参照番号4は、フィンを表している。別の実施形態によると、ブレージングシートが、第1の中間層に比べて同じまたは異なる組成を有する第2の中間層を反対側に含み得ることが理解される。
【0074】
冷却液7は、管または対のプレートによって形成された流路の内側8(=中間層の反対側)の中を流れる。冷却されるべきガス5は、管または対のプレートによって形成された流路の外側9(=中間層側)を流れる。フィン4は、管または対のプレートによって形成された流路の外側9にある。中間層3は、冷却されるべきガス5が流れる、管または対のプレートによって形成された流路の外側9に位置決めされる。
【0075】
一実施形態によると、本発明によるブレージングシートは、自動車の熱交換器、好ましくは給気冷却器(CAC)、排気ガス再循環(EGR)冷却器、蒸発器、凝縮器または放熱器、好ましくは給気冷却器(CAC)の製造用に使用されることができる。
【0076】
別の実施形態によると、本発明によるブレージングシートは、熱交換器が、冷却されるべきガスが外側に流れる管または対のプレートによって形成される流路を含む水冷式給気冷却器であり、前記管またはプレートが、中間層が前記外側に位置する、本発明によるブレージングシートから作られ、また前記外側に固定される、1.25重量%から3.00重量%のZn含有量を有するアルミニウム合金製のフィンを含み、また中間層のZn含有量が、フィンのZn含有量の120%未満、好ましくはその100%未満である、熱交換器の製造用に使用されることができる。
【0077】
フィン合金は好ましくは、Znの総含有量が1.25重量%から3.00重量%であるようにZnが添加される3003合金を含み、より好ましくは該合金で構成される。3003合金は概して、重量%で、最大0.60%のSi、最大0.70%のFe、0.05%から0.20%のCu、1.00%から1.50%のMn、最大0.10%のZn、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の他の元素、残りはアルミニウムを含む。
【0078】
本発明は、その詳細において、以下に例証される実施例を用いて、より良く理解されるものであるが、これらの実施例は限定的なものではない。
【0079】
本明細書で示した文書のすべては、参照によりそれらの全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0080】
本明細書中および以下の特許請求の範囲中で使用されるように、「the」、「a」および「an」のような冠詞は、単数形または複数形であることを含意することができる。
【0081】
本明細書中および以下の特許請求の範囲中で、列挙される数値の範囲について、そのような値は、正確な値と、記載された値からの実体のない変更になるであろう、その値に近い値とに言及するものであることを目的としている。
【実施例0082】
図4および表2は、調査された材料の構成および組成を要約したものである(重量%)。解決法の全ては、ろう付け前に質別Oでありまた厚みが400ミクロンであった。中間層の厚みは、40μmであった。
【0083】
図4によると、ろう付け層1は、AA4343製であり、全厚みの7.5%を占め、ブレージングシートの両側にあった。中間層3は全厚みの10%を占め、コア層2は全厚みの75%を占めていた。
【0084】
【0085】
異なるコア層合金および中間層合金を用いた幾つかの4層シートが試作された。試作されたシートの全てについて、両側にろう付け層として、AA4343合金が使用された。実施例1、実施例2および実施例3と示されたシートは、本発明によるものである。リファレンス1-Mn、リファレンス2-Mn、リファレンス3-Mnおよびリファレンス-Znと示されたシートは、比較例である。
【0086】
コア-1の合金は、重量%で以下の組成を有していた:
Si:0.18 Fe:0.15 Cu:0.65 Mn:1.35 Ti:0.08 各々0.05未満でかつ合計0.15未満の他の元素、残りはアルミニウム。
【0087】
コア-2の合金は、重量%で以下の組成を有していた:
Si:0.19 Fe:0.13 Cu:0.51 Mn:1.33 Cr::0.09 Zn:0.02 Ti:0.01 各々0.05未満でかつ合計0.15未満の他の元素、残りはアルミニウム。
【0088】
AA4343合金は、重量%で以下の組成を有していた:
Si:7.2 Fe:0.15 Cu:0.1未満 Mn:0.1未満 Ti:0.05未満 各々0.05未満でかつ合計0.15未満の他の元素、残りはアルミニウム。
【0089】
ブレージングシートの製造プロセスは、以下の通りであった:
-さまざまな合金を鋳造して塊を得る、
-得られた塊を両側でスカルピングする、
-500℃でろう付け用合金および中間層合金の塊を予熱する、
-所望のクラッド比を得るために所望のクラッド厚みまで、ろう付け用合金および中間層合金の塊を熱間圧延する、
-8時間の間、620℃で、コア層合金の塊を均質化する、
-塊を組み立ててサンドイッチ構造を得る、
-500℃でサンドイッチ構造を予熱する、
-3.5mmの厚みまでサンドイッチ構造を熱間圧延する、
-0.4mmの厚みまで冷間圧延する、そして
-1時間の間、350℃で焼きなましして、質別Oを獲得する。
【0090】
次に、シートを、40℃/分の割合で最大550℃まで、次に20℃/分の割合で最大600℃までの温度上昇を含むろう付けサイクルのシミュレーションに付した。この温度は2分間維持された。次に冷却を、炉内においておよそ-25℃/分で行なった。
【0091】
獲得された材料は次に、腐食試験を受けた。
【0092】
〔腐食試験〕
調査された材料の、腐食性環境における耐久性の最初のおおまかな評価として、ASTM G85A3-SWAATテストが一般に、気候室内において実施される。手順は、30分の噴霧+90分の浸漬のサイクルに基づいている。pH3の5%合成海塩溶液を、凝縮物として使用する。SWAATテストは熱交換器をテストするために広く利用されているとはいえ、この手順は、大気中腐食に結びついており、空調用蒸発器のような熱交換器の外側の耐久性に関するものである。
【0093】
給気冷却器(CAC)の特定ケースに関して、SWAATテストの効果は非常に限られている。それゆえに、特化した腐食試験が、CAC熱交換器における腐食をシミュレーションするために開発された。CAC内を循環する排気ガスが主にCO2、H2O、NOXおよびSO2(ディーゼル-硫黄のレベルによる)で構成されることが分かっているので、凝縮物形成が起こると、強酸(HNO3、H2SO4)および腐食性の低い有機酸が発生する。排気ガス凝縮物の組成および露点は、燃料組成、燃焼過程、空気比、エンジン負荷、処理後の排気ガス、エンジン始動段階などによる。その上、EGR(Exhaust Gas Recirculation 排気ガス再循環)システムは、エンジンの速度および温度に応じた、連続する湿潤および乾燥環境に頻繁に曝されることになる。流動性の酸性の濃縮物がコンポーネント上に残りかつ乾燥し得る状態は、危機的である。これらの評価から、3ステップ4時間サイクルに基づいた、以下で「CACテスト」と呼ばれる腐食試験が設けられた(以下の図式を参照)。この腐食試験は、使用中に見られる耐腐食性を評価することを目指すものであり、硫酸と硝酸(H2SO4+HNO3)との等モル溶液で作られる合成凝縮物を使用する噴霧段階だけでなく、乾燥および湿潤サイクルも含む。試験は、6週間の間、pH2および1000ppmCl-で行われた。
【0094】
【0095】
45mm(L)×65mm(TL)×0.48mm(TC)の試料が、各リファレンスから切り取られた(
図5参照)。試料は、アセトンを用いて脱脂され、次に、テストすべき正面のみ曝すためにマスキングされた。縁と背面とはそれぞれ、シリコーンと接着テープとで保護された。それゆえに、テスト表面は、約40mm(L)×60mm(TL)であり、約2400±100mm
2の曝露表面をもたらした。
【0096】
SWAATテストが完了したとき、曝露面の腐食形態を調査するために、L-ST面における横断面顕微鏡写真が撮影された。
図6で示されるように、40mm(L)×10mm(TL)の4つの断面が切り取られ、攻撃モードを表現する信頼できる写真を得るために、2つの異なる倍率(すなわち×50および×100)を用いて光学顕微鏡法で観察された。
【0097】
光学顕微鏡法による観察の結果は、以下の表3中に示されている。
【0098】
【0099】
上の表3中で、「-」は、中間層における腐食のラテラリゼーションの不在、またはコア層の腐食の重度の存在を意味し、「+」は、コア層の腐食またはラテラリゼーションの中程度の存在を意味し、また「++」は、中間層における腐食のラテラリゼーションの十分に効果的な程度の存在、またはコア層の腐食の不在を意味する。結果は、顕微鏡写真の観察に基づいている。
【0100】
上の表3中に示された結果は、本発明による組成用の下部のコア層の貫通の不在と同時に、犠牲的役割を果たす中間層における腐食のラテラリゼーションを裏付けるものである。