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特開2024-5976空調熱源制御装置、空調熱源制御方法、及び空調熱源制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005976
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】空調熱源制御装置、空調熱源制御方法、及び空調熱源制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/83 20180101AFI20240110BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20240110BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20240110BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20240110BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240110BHJP
【FI】
F24F11/83
F24F5/00 101
F24F3/044
F24F11/46
F24F11/64
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106486
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】520410769
【氏名又は名称】株式会社えきまちエナジークリエイト
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 貴志
(72)【発明者】
【氏名】横濱 明
(72)【発明者】
【氏名】竹内 文郎
(72)【発明者】
【氏名】永野 貴大
【テーマコード(参考)】
3L053
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BB03
3L053BB05
3L260AB06
3L260BA41
3L260CA39
3L260CB42
(57)【要約】
【課題】熱源機の最適運転となるように熱源機が製造する中温冷水の温度を決定する。
【解決手段】空調熱源制御装置が、予測対象時期の気象情報を取得する気象情報取得部と、前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測する熱需要予測部と、中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測する冷水需要予測部と、前記中温冷水の温度毎に、当該温度の中温冷水の需要と前記冷水の需要の予測結果を表示する表示部と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測対象時期の気象情報を取得する気象情報取得部と、
前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測する熱需要予測部と、
中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測する冷水需要予測部と、
を含む空調熱源制御装置。
【請求項2】
前記中温冷水の温度毎に、当該温度の中温冷水の需要と前記冷水の需要の予測結果に対応する投入エネルギー量を算出するエネルギー量算出部を更に含む請求項1記載の空調熱源制御装置。
【請求項3】
前記冷水需要予測部は、前記中温冷水の温度毎に、
中温冷水コイルの入口温度と、前記中温冷水の温度に応じて定まる中温冷水コイルの出口温度と、中温冷水コイルの空気流量とに基づいて、当該温度の中温冷水の需要を予測し、
前記予測された前記熱需要と、前記予測された当該温度の中温冷水の需要との差分を、前記冷水の需要として予測する請求項1記載の空調熱源制御装置。
【請求項4】
前記エネルギー量算出部は、前記中温冷水の温度毎に、
前記予測された当該温度の中温冷水の需要と、予め求められた当該温度での中温冷水製造用の熱源機の効率とに基づいて、前記中温冷水製造用の熱源機へ投入するエネルギー量を算出し、
前記予測された前記冷水の需要と、予め求められた冷水製造用の熱源機の効率とに基づいて、前記冷水製造用の熱源機へ投入するエネルギー量を算出し、
前記中温冷水製造用の熱源機へ投入するエネルギー量と、前記冷水製造用の熱源機へ投入するエネルギー量とに基づいて、前記投入エネルギー量を算出する請求項2記載の空調熱源制御装置。
【請求項5】
前記エネルギー量算出部による算出結果に基づいて、中温冷水の温度を決定する中温冷水温度決定部と、
中温冷水製造用の熱源機に対して、決定された温度の中温冷水が製造されるように予測対象時期の運転指令を出力する運転指令出力部と、
を更に含む請求項2記載の空調熱源制御装置。
【請求項6】
前記中温冷水の温度毎に、当該温度の中温冷水の需要と前記冷水の需要の予測結果を表示する表示部を更に含む請求項1記載の空調熱源制御装置。
【請求項7】
前記エネルギー量算出部による算出結果を表示する表示部を更に含む請求項2記載の空調熱源制御装置。
【請求項8】
前記空調機は、複数の空調機であって、
前記熱需要予測部は、前記気象情報に基づいて、前記複数の空調機のうちの代表的な空調機について、前記予測対象時期の熱需要を予測し、前記予測された前記予測対象時期の熱需要に、前記空調機の台数を乗算し、複数の空調機の熱需要の合計を予測する請求項1記載の空調熱源制御装置。
【請求項9】
気象情報取得部が、予測対象時期の気象情報を取得し、
熱需要予測部が、前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測し、
冷水需要予測部が、中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測する
空調熱源制御方法。
【請求項10】
予測対象時期の気象情報を取得し、
前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測し、
中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測する
ことをコンピュータに実行させる空調熱源制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調熱源制御装置、空調熱源制御方法、及び空調熱源制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷水コイルへの冷水の供給通路に設けられた冷水バルブの開度および冷温水コイルへの冷温水の供給通路に設けられた冷温水バルブの開度を制御する空調制御システムが知られている(特許文献1)この空調制御システムでは、空調制御装置は、室内温度センサで計測された室内温度計測値と室内温度設定値の偏差を零とする室内温度制御出力値を演算してバルブの開度指令値を決定し、還水温度センサで計測された還水温度計測値と還水温度設定値の偏差を零とするバルブの開度指令値を演算し、バルブの各々について、室内温度計測値に基づく開度指令値と還水温度計測値に基づく開度指令値とを比較して、2つの開度指令値のうち開度が小さな値を示す方を実際の開度指令値として選択している。この空調制御システムでは、冷温水コイルおよび冷水コイルへの冷水の過流量を抑制する。
【0003】
また、給気が通流する給気風路と、冷水を生成する熱源部と、冷水との熱交換により前記給気風路を通流する給気を冷却可能な熱交換部と、を備え、冷房負荷の変動に応じて適切な空調を実現する空調システムが知られている(特許文献2)。この空調システムでは、低温冷水と中温冷水を用いて省エネルギー化を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-204889号公報
【特許文献2】特開2019-124396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、中央管理室等で複数の空調機を一元的に制御するセントラル空調において、冷房時に空調機への熱媒として冷水のみを供給する事例が一般的であるが、近年、省エネルギー性を向上させるために冷水と中温冷水の2つの熱媒を活用する技術も知られている。ここで、冷水温度を固定し、中温冷水温度を可変とした場合には、省エネルギー性の観点で中温冷水の温度選択が最適でない可能性がある。すなわち、中温冷水の温度が高すぎる場合には、中温冷水の利用量が少ない状況が発生し、省エネルギー効果を十分確保できない可能性がある。また、中温冷水の温度が低すぎる場合には、省エネルギー性が劣後する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、熱源機の最適運転となるように熱源機が製造する中温冷水の温度を決定することができる空調熱源制御装置、空調熱源制御方法、及び空調熱源制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る空調熱源制御装置は、予測対象時期の気象情報を取得する気象情報取得部と、前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測する熱需要予測部と、中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測する冷水需要予測部と、を含んで構成されている。
【0008】
第1の発明に係る空調熱源制御装置によれば、気象情報取得部によって、予測対象時期の気象情報を取得する。熱需要予測部によって、前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測する。冷水需要予測部によって、中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測する。
【0009】
このように、中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測することにより、熱源機の最適運転となるように熱源機が製造する中温冷水の温度を決定することができる。
【0010】
また、第2の発明に係る空調熱源制御方法は、気象情報取得部が、予測対象時期の気象情報を取得し、熱需要予測部が、前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測し、冷水需要予測部が、中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測する。
【0011】
また、第3の発明に係る空調熱源制御プログラムは、予測対象時期の気象情報を取得し、前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測し、中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測することをコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の空調熱源制御装置、空調熱源制御方法、及び空調熱源制御プログラムによれば、中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測することにより、熱源機の最適運転となるように熱源機が製造する中温冷水の温度を決定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る空調熱源制御システムを示すブロック図である。
図2】熱源機から冷水、中温冷水を、空調機へ供給する方法を説明するための図である。
図3】本発明の実施の形態に係るサーバの構成を示すブロック図である。
図4】空気線図の一例を示す図である。
図5】表示例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係るサーバにおける空調熱源制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図7】中温冷水温度と総投入エネルギーとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
<空調熱源制御システムのシステム構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る空調熱源制御システム100は、エネルギーセンター側に設けられたサーバ10と、複数の熱源機20A、20Bと、熱源機20A、20B毎に備えられた制御装置22A、22Bと、複数の空調機30A、30Bと、空調機30A、30B毎に備えられた制御装置32A、32Bと、を備えている。
【0016】
空調熱源制御システム100は、例えば、同一の街区内に設けられている。制御装置22A、22B、サーバ10は、LANやインターネットなどのネットワークNを介して相互に接続されている。なお、サーバ10が、空調熱源制御装置の一例である。また、熱源機は3つ以上であってもよく、空調機は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0017】
熱源機20Aは、冷水を製造する熱源機であり、例えば、冷水を製造する冷凍機(ターボ冷凍機等)である。
【0018】
熱源機20Bは、中温冷水を製造する熱源機であり、例えば、中温冷水を製造する冷凍機(ターボ冷凍機等)である。
【0019】
エネルギー製造効率(COP)は、熱源機20Bの方が熱源機20Aよりも高い。これは、熱源機20Bの方が、冷水製造温度が高く高効率運転が可能なためである。
【0020】
図2に示すように、熱源機20A、20Bと、空調機30A、30Bとの間に、水蓄熱槽24が設けられている。なお、水蓄熱槽24がない場合であってもよい。
【0021】
また、補機設備として、冷却塔および冷水ポンプ、冷却水ポンプ、熱交換器、建物側に熱媒を搬送する冷水送水ポンプが設けられていてもよい。
【0022】
空調機30A、30Bは、以下の(1)~(2)の何れかの構成である。
(1)冷水と中温冷水を利用するダブルコイルの機種及び冷水循環ポンプ
(2)冷水のみ、あるいは中温冷水のみのシングルコイルの機種(潜顕分離空調)及び冷水循環ポンプ
【0023】
制御装置22A、22Bの各々は、接続されている熱源機20A、20Bの運転を制御する。
【0024】
制御装置32A、32Bの各々は、接続されている空調機30A、30Bの運転を制御する。
【0025】
サーバ10は、所定温度の中温冷水と冷水の需要を予測し、中温冷水を使い切った後に、冷水を使うように、各熱源機20A、20B及び各空調機30A、30Bの運転計画を決定し、運転計画に応じた運転指令を各制御装置22A、22B、32A、32Bへ送信する。
【0026】
具体的には、図3に示すように、サーバ10は、通信部50と、演算部52とを備えている。演算部52は、気象情報取得部54と、熱需要予測部56と、冷水需要予測部58と、エネルギー量算出部60と、表示部62と、中温冷水温度決定部64と、運転指令出力部66とを備えている。
【0027】
通信部50は、気象情報、建物情報、人員情報、各熱源機20A、20B、及び各空調機30A、30Bの過去実績、機器仕様、機器特性、並びにイベント情報を受信する。通信部50は、運転指令を、各熱源機20A、20Bの制御装置22A、22B、及び各空調機30A、30Bの制御装置32A、32Bへ送信する。
【0028】
気象情報取得部54は、予測対象時期(例えば、翌日)の気象情報を取得する。
【0029】
熱需要予測部56は、予測対象時期の気象情報に基づいて、予測対象時期の空調機の熱需要を予測する。具体的には、蓄積した各熱源機20A、20B及び各空調機30A、30Bの熱需要の時間変化の実績と、予測対象時期(例えば、翌日)の気象情報とに基づいて、予測対象時期の熱需要を予測する。予測するスパンは短いスパンとし、例えば、時間単位とする。より具体的には、前日の熱需要を、予測対象時期の気象情報、建物情報、イベント情報、街の未利用エネルギー量に基づいて修正し、予測値とする。
【0030】
冷水需要予測部58は、中温冷水の温度毎に、熱需要の予測値を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測する。
【0031】
具体的には、冷水需要予測部58は、中温冷水の温度毎に、中温冷水コイルの入口温度と、当該中温冷水の温度に応じて定まる中温冷水コイルの出口温度と、中温冷水コイルの空気流量とに基づいて、当該温度の中温冷水の需要を予測し、予測された熱需要と、予測された当該温度の中温冷水の需要との差分を、冷水の需要として予測する。
【0032】
より具体的には、中温冷水の需要Aは、中温冷水温度Bに応じて、以下に式に従って計算される。
【0033】
中温冷水の需要A=空気と中温冷水との熱交換器における空気の出入口温度差[℃]×空気の流量[kg/s]×空気の比熱[kJ/(kg・℃)]
【0034】
熱交換機出口の空気温度は、空調機特性および中温冷水温度Bによって算出される。以上より、空気の比熱、流量、熱交換器入口の空気温度、中温冷水温度Bから、中温冷水の需要Aが求められる。
【0035】
冷水の需要Cは、予測された熱需要と中温冷水の需要Aとの差から求められる(図4参照)。
【0036】
以下、具体的な計算例を示す。ここで、予測された熱需要を1000kW、空気流量を70kg/s、比熱を1kJ/(kg・℃)、中温冷水温度を14℃、空気の熱交換器入口温度を25℃とし、空気の熱交換器出口温度は中温冷水温度と等しくなるものとする。
【0037】
中温冷水の需要Aは、以下のように計算される。
(25-14)*70*1=770kW
【0038】
また、冷水の需要Cは、以下のように計算される。
1000-770=230kW
【0039】
例えば、上記がある1箇所の空調機とした場合、建物全体、さらに街区全体では、上記のような各空調機の熱量の合計値が地域冷暖房施設で製造する必要がある熱量となる。本実施形態では、街区の各空調機全部の個別計算を行うのではなく、代表的な箇所で需要想定および上記のような熱計算を行う。ここで、建物用途(事務所、商業、ホテル等)、居室の位置(方角、フロア、ペリメーターゾーン、インテリアゾーン)、居室の特性(専用部、共用部、ホール等大空間等)、空調機タイプ、稼働特性(24時間、日中のみ)等を踏まえた分類をした上で、代表的な箇所を選定すればよい。また、分類した空調機タイプ別に、街全体での稼働台数を想定し、それを合計して街区全体の中温冷水、冷水の熱需要総和を求める。
【0040】
エネルギー量算出部60は、中温冷水の温度毎に、当該温度の中温冷水の需要と前記冷水の需要の予測結果に対応する投入エネルギー量を算出する。
【0041】
具体的には、エネルギー量算出部60は、中温冷水の温度毎に、予測された当該温度の中温冷水の需要と、予め求められた当該温度での中温冷水製造用の熱源機20Bの効率とに基づいて、中温冷水製造用の熱源機20Bへ投入するエネルギー量を算出し、予測された冷水の需要と、予め求められた冷水製造用の熱源機20Aの効率とに基づいて、冷水製造用の熱源機20Aへ投入するエネルギー量を算出し、中温冷水製造用の熱源機20Bへ投入するエネルギー量と、冷水製造用の熱源機20Aへ投入するエネルギー量とに基づいて、投入エネルギー量を算出する。
【0042】
より具体的には、熱源機への投入エネルギー[kW]は、熱源機の出力[kW]÷熱源機の効率(COP)[-]で求められる。またCOPは、熱源機特性と送水温度(ここでは中温冷水温度、冷水温度)から定められる。以上より、予測された中温冷水及び冷水それぞれの需要(熱源機の出力に相当)に対して、熱源機20A、20Bへの投入エネルギー量が算出される。
【0043】
以下、具体的な計算例を示す。ここで、冷水製造用の熱源機20AのCOPを4.00、中温冷水製造用の熱源機20BのCOPを4.50、中温冷水及び冷水それぞれの需要を、上記で算出した値とする。
【0044】
このとき、熱源機20A、20Bへの投入エネルギー量の和は以下のように計算される。
230÷4.00+770÷4.50=228.6kW
【0045】
ここでは簡易的に熱源機20A、20Bへの投入エネルギー量のみを示しているが、これに限定されるものではない。ポンプ動力や二次側空調機への投入エネルギー量も同様に、機器特性や条件などから算出して投入エネルギー量に含めるようにしてもよい。
【0046】
表示部62は、中温冷水の温度毎に、当該温度の中温冷水の需要と前記冷水の需要の予測結果を表示する。表示部62は、更に、エネルギー量算出部60による算出結果を表示する。
【0047】
例えば、図5に示すように、中温冷水の温度毎に、当該温度の中温冷水の需要と前記冷水の需要の割合を表示すると共に、投入エネルギー量の算出結果を表示する。図5では、13℃の中温冷水の供給するパターン1において、当該温度の中温冷水の需要と前記冷水の需要の比率が20:80であり、投入エネルギー量が19.1である例を示している。また、14℃の中温冷水の供給するパターン2において、当該温度の中温冷水の需要と前記冷水の需要の比率が40:60であり、投入エネルギー量が18.7である例を示している。15℃の中温冷水の供給するパターン3において、当該温度の中温冷水の需要と前記冷水の需要の比率が70:30であり、投入エネルギー量が19.0である例を示している。
【0048】
中温冷水温度決定部64は、エネルギー量算出部60による算出結果に基づいて、中温冷水の温度を決定する。例えば、中温冷水温度決定部64は、投入エネルギー量が最小となるときの中温冷水の温度を、中温冷水の温度として決定する。上記図4の例では、中温冷水の温度が14℃であるとき、投入エネルギー量が最小となるため、14℃を、中温冷水の温度として決定する。
【0049】
運転指令出力部66は、中温冷水製造用の熱源機20Bに対して、決定された温度の中温冷水が製造されるように予測対象時期の運転指令を出力する。
【0050】
<空調熱源制御システム100の動作>
次に、本実施の形態に係る空調熱源制御システム100の動作について説明する。
【0051】
サーバ20により、図6に示す空調熱源制御処理ルーチンが実行される。
【0052】
まず、ステップS100において、気象情報取得部54は、例えば、気象情報を提供するサーバから、予測対象時期(例えば、翌日)の気象情報を取得する。
【0053】
そして、ステップS102において、熱需要予測部56は、蓄積した各熱源機20A、20B及び各空調機30A、30Bの熱負荷の時間変化の実績と、予測対象時期の気象情報とに基づいて、前日の熱需要を、予測対象時期の気象情報、建物情報、イベント情報、街の未利用エネルギー量に基づいて修正し、予測対象時期の熱需要を予測する。
【0054】
ステップS104において、冷水需要予測部58は、中温冷水の温度毎に、中温冷水コイルの入口温度と、当該中温冷水の温度に応じて定まる中温冷水コイルの出口温度と、中温冷水コイルの空気流量とに基づいて、当該温度の中温冷水の需要を予測し、予測された熱需要と、予測された当該温度の中温冷水の需要との差分を、冷水の需要として予測することにより、熱需要の予測値を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測する。
【0055】
ステップS106において、エネルギー量算出部60は、中温冷水の温度毎に、予測された当該温度の中温冷水の需要と、予め求められた当該温度での中温冷水製造用の熱源機20Bの効率とに基づいて、中温冷水製造用の熱源機20Bへ投入するエネルギー量を算出し、予測された冷水の需要と、予め求められた冷水製造用の熱源機20Aの効率とに基づいて、冷水製造用の熱源機20Aへ投入するエネルギー量を算出する。そして、エネルギー量算出部60は、中温冷水の温度毎に、中温冷水製造用の熱源機20Bへ投入するエネルギー量と、冷水製造用の熱源機20Aへ投入するエネルギー量とに基づいて、投入エネルギー量の和を算出する。
【0056】
ステップS108において、表示部62は、中温冷水の温度毎に、当該温度の中温冷水の需要と冷水の需要の割合を表示すると共に、エネルギー量算出部60による算出結果を表示する。
【0057】
ステップS110において、中温冷水温度決定部64は、エネルギー量算出部60による算出結果に基づいて、投入エネルギー量が最小となるときの中温冷水の温度を、中温冷水の温度として決定する。
【0058】
ステップS112において、運転指令出力部66は、中温冷水製造用の熱源機20Bに対して、決定された温度の中温冷水が製造されるように予測対象時期の運転指令を出力する。
【0059】
<実施例>
上記実施の形態で説明した、中温冷水の需要と冷水の需要の予測、及び投入エネルギー量の算出の具体例について説明する。
【0060】
まず、空調機の熱需要を、予測対象時期の気象情報に基づいて予測する。ここでは、予測された熱需要が1295kWであったとする。また、各状態点の温度及び比エンタルピは表1の通りとする。
【0061】
【表1】
【0062】
このとき、空気流量は熱需要を冷却コイル出入口の空気の比エンタルピ差[kJ/kg]で除することにより求められるため、上記条件における空気流量は70kg/sとなる。
【0063】
次に、中温冷水の温度毎に中温冷水及び冷水それぞれの需要を算出する。ここでは、空気の湿度変化は冷水との熱交換で生じることを仮定し、空気流量×中温冷水との熱交換コイル出入口の空気温度差により、中温冷水の需要を算出する。中温冷水の温度毎の算出結果を以下の表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表3に示すように、中温冷水の温度毎に熱源機への投入エネルギーを算出し、投入エネルギーが最小となるときの中温冷水の温度を、最適な温度として決定する。表3の例では、中温冷水の温度が13℃のときに熱源機への投入エネルギーが最小となるので、中温冷水の温度は13℃に決定される(図7参照)。このとき、熱源機効率は、表4の通り算出されているものとする。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る空調熱源制御システムによれば、中温冷水の温度毎に、熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測し、熱源機への投入エネルギーが最小となるポイントを探索することで、中温冷水の温度を決定することができる。
【0069】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0070】
例えば、投入エネルギー量が最小となるように中温冷水の温度を決定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。中温冷水の温度毎に算出した投入エネルギー量を表示し、ユーザからの選択を受け付けて、中温冷水の温度を決定するようにしてもよい。
また、中温冷水と冷水の両方の温度を可変とする場合もある。また、空調機の熱媒として冷水のみを利用する場合でも、需要想定に基づいた供給温度可変での運用に活用できる可能性がある。また、暖房時の温水供給の場合にも同様に活用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0071】
10 サーバ
20A、20B 熱源機
22A、22B 制御装置
24 水蓄熱槽
30A、30B 各空調機
32A、32B 制御装置
50 通信部
52 演算部
54 気象情報取得部
56 熱需要予測部
58 冷水需要予測部
60 エネルギー量算出部
62 表示部
64 中温冷水温度決定部
66 運転指令出力部
100 空調熱源制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-10-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測対象時期の気象情報を取得する気象情報取得部と、
前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測する熱需要予測部と、
中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測する冷水需要予測部と、
熱源機への投入エネルギー量が最小となるように中温冷水製造用の熱源機によって製造される中温冷水の温度を決定する中温冷水温度決定部と、
を含み、
前記中温冷水及び前記冷水は、熱源機によって製造され、かつ、熱媒として、前記空調機における熱交換に利用される空調熱源制御装置。
【請求項2】
予測対象時期の気象情報を取得する気象情報取得部と、
前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測する熱需要予測部と、
中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測する冷水需要予測部と、
中温冷水製造用の熱源機によって製造される中温冷水の温度毎に算出した、熱源機への投入エネルギー量を表示して、ユーザからの前記中温冷水の温度の選択を受け付けるように構成される表示部と、
を含み、
前記中温冷水及び前記冷水は、熱源機によって製造され、かつ、熱媒として、前記空調機における熱交換に利用される空調熱源制御装置。
【請求項3】
前記中温冷水の温度毎に、当該温度の中温冷水の需要と前記冷水の需要の予測結果に対応する投入エネルギー量を算出するエネルギー量算出部を更に含む請求項1又は2記載の空調熱源制御装置。
【請求項4】
前記冷水需要予測部は、前記中温冷水の温度毎に、
中温冷水コイルの入口温度と、前記中温冷水の温度に応じて定まる中温冷水コイルの出口温度と、中温冷水コイルの空気流量とに基づいて、当該温度の中温冷水の需要を予測し、
前記予測された前記熱需要と、前記予測された当該温度の中温冷水の需要との差分を、前記冷水の需要として予測する請求項1又は2記載の空調熱源制御装置。
【請求項5】
前記エネルギー量算出部は、前記中温冷水の温度毎に、
前記予測された当該温度の中温冷水の需要と、予め求められた当該温度での中温冷水製造用の熱源機の効率とに基づいて、前記中温冷水製造用の熱源機へ投入するエネルギー量を算出し、
前記予測された前記冷水の需要と、予め求められた冷水製造用の熱源機の効率とに基づいて、前記冷水製造用の熱源機へ投入するエネルギー量を算出し、
前記中温冷水製造用の熱源機へ投入するエネルギー量と、前記冷水製造用の熱源機へ投入するエネルギー量とに基づいて、前記投入エネルギー量を算出する請求項記載の空調熱源制御装置。
【請求項6】
前記エネルギー量算出部による算出結果に基づいて、中温冷水の温度を決定する中温冷水温度決定部と、
中温冷水製造用の熱源機に対して、決定された温度の中温冷水が製造されるように予測対象時期の運転指令を出力する運転指令出力部と、
を更に含む請求項記載の空調熱源制御装置。
【請求項7】
前記中温冷水の温度毎に、当該温度の中温冷水の需要と前記冷水の需要の予測結果を表示する表示部を更に含む請求項1又は2記載の空調熱源制御装置。
【請求項8】
前記エネルギー量算出部による算出結果を表示する表示部を更に含む請求項記載の空調熱源制御装置。
【請求項9】
前記空調機は、複数の空調機であって、
前記熱需要予測部は、前記気象情報に基づいて、前記複数の空調機のうちの代表的な空調機について、前記予測対象時期の熱需要を予測し、前記予測された前記予測対象時期の熱需要に、前記空調機の台数を乗算し、複数の空調機の熱需要の合計を予測する請求項1又は2記載の空調熱源制御装置。
【請求項10】
気象情報取得部が、予測対象時期の気象情報を取得し、
熱需要予測部が、前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測
し、
冷水需要予測部が、中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測し、
中温冷水温度決定部が、熱源機への投入エネルギー量が最小となるように中温冷水製造用の熱源機によって製造される中温冷水の温度を決定する
ことを含み、
前記中温冷水及び前記冷水は、熱源機によって製造され、かつ、熱媒として、前記空調機における熱交換に利用される空調熱源制御方法。
【請求項11】
気象情報取得部が、予測対象時期の気象情報を取得し、
熱需要予測部が、前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測
し、
冷水需要予測部が、中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測し、
表示部が、中温冷水製造用の熱源機によって製造される中温冷水の温度毎に算出した、熱源機への投入エネルギー量を表示して、ユーザからの前記中温冷水の温度の選択を受け付ける
ことを含み、
前記中温冷水及び前記冷水は、熱源機によって製造され、かつ、熱媒として、前記空調機における熱交換に利用される空調熱源制御方法。
【請求項12】
予測対象時期の気象情報を取得し、
前記気象情報に基づいて、前記予測対象時期の空調機の熱需要を予測し、
中温冷水の温度毎に、前記熱需要を満たす、当該温度の中温冷水の需要と前記中温冷水より温度が低い冷水の需要を予測し、
熱源機への投入エネルギー量が最小となるように中温冷水製造用の熱源機によって製造される中温冷水の温度を決定し、若しくは、中温冷水の温度毎に算出した投入エネルギー量を表示してユーザからの選択を受け付ける
ことをコンピュータに実行させる空調熱源制御プログラムであって、
前記中温冷水及び前記冷水は、熱源機によって製造され、かつ、熱媒として、前記空調機における熱交換に利用される空調熱源制御プログラム