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特開2024-59760輸送溶液によって間葉系幹細胞を輸送する方法および幹細胞を創傷に投与する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059760
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】輸送溶液によって間葉系幹細胞を輸送する方法および幹細胞を創傷に投与する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20240423BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240423BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240423BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240423BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240423BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240423BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20240423BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20240423BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20240423BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K35/28 ZNA
A61P17/02
A61K47/02
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/36
A61K31/355
A61K9/08
A61K47/22
A61P3/10
C12N5/0735
C12N5/074
C12N5/0775
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023576
(22)【出願日】2024-02-20
(62)【分割の表示】P 2020556307の分割
【原出願日】2019-04-09
(31)【優先権主張番号】62/655,198
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519096688
【氏名又は名称】セルリサーチ コーポレイション プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ファン トアン タン
(72)【発明者】
【氏名】フリード ブライアン エム.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】幹細胞集団を輸送する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、液体担体と接触させた幹細胞集団を輸送する段階を含む、幹細胞集団を輸送する方法に関する。好ましい態様において、液体担体はHypothermosolであり、トロロックスを含み、例えばHypothermosol-FRSである。加えて、本発明は、創傷などの疾患を有する対象を処置する方法に関係し、該方法は、規定された間葉系幹細胞集団を対象に局所投与する段階を含み、この場合、該間葉系幹細胞集団は、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約96時間以内に投与される。また、臍帯の羊膜由来などの規定された間葉系幹細胞集団を含む単位投与量にも関係し、該細胞の少なくとも90%が、CD73、CD90、CD105の各々を発現する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i) トロロックス、
ii) Na+
iii) K+
iv) Cl-
v) H2PO4 -
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む液体担体と接触させた幹細胞集団を輸送する段階を含む、幹細胞集団を輸送する方法。
【請求項2】
輸送が約7日またはそれ未満にわたって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
輸送が約6日、約5日、約4日、約3日、約2日、約1日、または約1日未満にわたって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
輸送が約48時間もしくは約24時間またはそれ未満にわたって行われる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
輸送が約-5℃~約15℃の温度で行われる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
輸送が約2℃~約8℃の温度で行われる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
輸送が、約-5℃を超える、約-10℃を超える、約-15℃を超える、または約-20℃を超える温度で実施される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
幹細胞集団が、担体1 ml当たり約7000万個の細胞、担体1 ml当たり約6000万個の細胞、担体1 ml当たり約5000万個の細胞、担体1 ml当たり約4000万個の細胞、担体1 ml当たり約3000万個の細胞、担体1 ml当たり約2000万個の細胞、担体1 ml当たり約1000万個の細胞、担体1 ml当たり約500万個の細胞、担体1 ml当たり約400万個の細胞、担体1 ml当たり約300万個の細胞、担体1 ml当たり約200万個の細胞、担体1 ml当たり約100万個の細胞、担体1 ml当たり約50万個の細胞、担体1 ml当たり約10万個の細胞、または担体1 ml当たり10万個未満の細胞の濃度で輸送される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
幹細胞集団が、担体1 ml当たり約1000万個の細胞から担体1 ml当たり約100万個の細胞の濃度で輸送される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
幹細胞集団が、胚性幹細胞集団、成体幹細胞集団、間葉系幹細胞集団、または誘導多能性幹細胞集団である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
幹細胞集団が、間葉系幹細胞集団、好ましくはヒト間葉系幹細胞集団である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
間葉系幹細胞集団が、臍帯の羊膜の単離された間葉系幹細胞集団、好ましくは臍帯の羊膜の単離されたヒト間葉系幹細胞集団である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)の発現を欠いている、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
単離された間葉系幹細胞集団の細胞の少なくとも97%もしくはそれ以上、約98%もしくはそれ以上、または約99%もしくはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
幹細胞集団を、輸送前に担体と接触させる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
幹細胞集団を、その回収後に担体と接触させる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
幹細胞集団を、その回収の約0分後、約1分後、約5分後、約10分後、約30分後、約45分後、約60分後、またはそれより長い時間の後に、担体と接触させる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
回収が、幹細胞集団を培養液から分離することを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
分離が、培養液中の幹細胞を遠心分離し、かつ該培養液をデカントすることによって行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
接触が、幹細胞集団を、約7000万個/ml、約6000万個/ml、約5000万個/ml、約4000万個/ml、約3000万個/ml、約2000万個/ml、約1000万個/ml、約500万個/ml、約400万個/ml、約300万個/ml、約200万個/ml、約100万個/ml、約50万個/ml、約10万個/ml、または10万個未満の細胞の密度で担体中に懸濁することによって行われる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
接触が、幹細胞集団を約1000万個/mlの密度で担体中に懸濁することによって行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
担体と接触させた幹細胞が、約50 ml、約20 ml、約10 ml、約5 ml、約4 ml、約3 ml、約2 ml、約1 ml、約0.5 ml、約0.25 ml、または0.25 ml未満の担体の体積でバイアルに分取される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
担体と接触させた幹細胞が、約1 mlの量でバイアルに分取される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項26】
担体が輸送培地または賦形剤である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
解凍または凍結段階を含まない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
担体が、双極性非プロトン性溶媒、特にDMSOを含まない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
輸送前の生存幹細胞の量と比較して、前記集団の幹細胞の多くても約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、または約10%未満が輸送中に死滅する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
輸送後に、幹細胞集団が輸送前とほぼ同量のTGFベータ-1を分泌する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
PDGF-BBおよび/またはIL-10が、輸送前および/または輸送後に本質的に検出されない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
輸送後に、間葉系幹細胞集団が、輸送前とほぼ同量のVEGF、PDGF-AA、Ang-1、および/またはHGFを分泌する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項12~16のいずれか一項において規定される間葉系幹細胞集団の約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞を含む、単位投与量。
【請求項34】
約1000万個、約900万個、約800万個、約700万個、約600万個、約500万個、約400万個、約300万個、約200万個、約100万個、約50万個、約25万個、または約10万個の細胞を含む、請求項33に記載の単位投与量。
【請求項35】
約1000万個の細胞を含む、請求項33または34に記載の単位投与量。
【請求項36】
1 mlバイアル中に含まれる、請求項33~35のいずれか一項に記載の単位投与量。
【請求項37】
単位用量が液体担体中に含まれ、該液体担体が、
i) トロロックス、
ii) Na+、
iii) K+、
iv) Cl-、
v) H2PO4 -
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の単位投与量。
【請求項38】
細胞が生存細胞である、請求項33~37のいずれか一項に記載の単位投与量。
【請求項39】
担体がHypoThermosolである、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
幹細胞集団を輸送するための液体担体の使用であって、該液体担体が、
i) トロロックス、
ii) Na+、
iii) K+、
iv) Cl-、
v) H2PO4 -
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む、前記使用。
【請求項41】
疾患を有する対象を処置するための薬学的組成物の製造のための、請求項12~16のいずれか一項において規定される臍帯の羊膜の単離された間葉系幹細胞集団である間葉系幹細胞集団の使用であって、
該間葉系幹細胞集団が、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約96時間以内に局所投与されること
を含む、前記使用。
【請求項42】
間葉系幹細胞集団が、約1000万個の細胞の単位投与量で適用される、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
間葉系幹細胞集団が、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約72時間以内に、約48時間以内に、約24時間以内に、約12時間以内に、約6時間以内に、またはそれ未満で適用される、請求項41または42に記載の使用。
【請求項44】
前記疾患が、皮膚疾患または創傷である、請求項41~43のいずれか一項に記載の使用。
【請求項45】
創傷が、熱傷、咬傷、外傷、手術、または疾患に起因する、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
創傷が糖尿病に起因し、創傷が好ましくは糖尿病性創傷である、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
創傷が糖尿病性足部潰瘍である、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞の単位投与量が、週に1回または2回投与される、請求項41~47のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞の単位投与量が、3週間、4週間、もしくは5週間、もしくは6週間、もしくは7週間、もしくは8週間、もしくは10週間、またはそれ以上の週の期間にわたって、週に1回または2回投与される、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
間葉系幹細胞集団が局所的に適用され、かつフィルムまたは包帯で覆われる、請求項41~49のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月9日に出願された米国仮特許出願第62/655,198号の優先権の恩典を主張し、その内容はすべての目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、液体担体と接触させた幹細胞集団を輸送する段階を含む、幹細胞集団を輸送する方法に関する。加えて、本発明は、疾患を有する対象を処置する方法に関係し、該方法は、規定された間葉系幹細胞集団を対象に局所投与する段階を含み、ここで、間葉系幹細胞集団は、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約96時間以内に投与される。また、規定された間葉系幹細胞集団の約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞を含む単位投与量にも関係する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
臍帯の羊膜から単離された間葉系幹細胞およびその創傷治癒特性は、最初に米国特許出願2006/0078993(特許文献1)(登録された米国特許第9,085,755号(特許文献2)、米国特許第9,737,568号(特許文献3)、および米国特許第9,844,571号(特許文献4)につながる)ならびに対応する国際特許出願WO2006/019357(特許文献5)において報告された。それ以来、臍帯組織は、複能性細胞の供給源として注目を集めている;臍帯、および具体的には臍帯の羊膜から単離された幹細胞(「臍帯ライニング (cord lining) 幹細胞」とも称される)は、広く入手可能であるため、再生医療用の細胞の優れた代替供給源と見なされている。Jeschke et al. Umbilical Cord Lining Membrane and Wharton's Jelly-Derived Mesenchymal Stem Cells: the Similarities and Differences; The Open Tissue Engineering and Regenerative Medicine Journal, 2011, 4, 21-27(非特許文献1)を参照されたい。
【0004】
その後の研究では、臍帯の羊膜(臍帯ライニング (CL-MSC))、臍帯血 (CB-MSC)、胎盤 (P-MSC)、およびワルトン膠様質 (WJ-MSC) に由来するヒト間葉系幹細胞 (MSC) の表現型、増殖速度、遊走、免疫原性、および免疫調節能が比較された (Stubbendorf et al, Immunological Properties of Extraembryonic Human Mesenchymal Stromal Cells Derived from Gestational Tissue, STEM CELLS AND DEVELOPMENT Volume 22, Number 19, 2013, 2619-2629(非特許文献2))。Stubbendorfらは、胚外妊娠組織に由来するMSC集団が、免疫応答を回避する、および免疫調節効果を発揮する多様な能力を示すと結論づけた。CL-MSCが低い免疫原性を示し、また増殖能および遊走能の増強を示すため、これらの細胞が細胞ベースの療法の最も有望な可能性を示すことを、著者らはまた見出した。そのため、今後の研究は、CL-MSCが投与され得る最良の疾患モデルに焦点を合わせるべきである。
【0005】
羊膜の間葉系幹細胞は、米国特許出願2006/0078993(特許文献1)および国際特許出願WO2006/019357(特許文献5)に記載されたプロトコールを用いて容易に得ることができるが、高度に均一でありしたがって臨床試験に使用され得る、これらの臍帯ライニングMSCの集団を単離できるようにする方法が手元にあることは、これらの臍帯ライニングMSCを用いる臨床試験のために有利である。
【0006】
臍帯の羊膜に由来する間葉系幹細胞のそのような高度に均一な集団は、2017年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/404,582号(特許文献6)に対する優先権を主張する2018年10月5日に出願された同時係属中の米国特許出願第15/725,913号(特許文献7)(これらの両方の内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる)において、および同様に2017年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/404,582号(特許文献6)に対する優先権を主張する2018年10月5日に出願された同時係属中のPCT出願PCT/SG2017/050500(特許文献8)において初めて報告され、細胞療法に使用されるべき間葉系幹細胞の基準を満たす(米国特許出願第15/725,913号(特許文献7)の実験の項、Dominici et al, 「Minimal criteria for defining multipotent mesenchymal stromal cells. The International Society for Cellular Therapy position statement」, Cytotherapy (2006) Vol. 8, No. 4, 315-317(非特許文献3)、またはSensebe et al,.「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a, review」, Stem Cell Research & Therapy 2013, 4:66(非特許文献4)もまた参照されたい)。
【0007】
しかしながら、上記の間葉系幹細胞などの幹細胞は、典型的にはそれらが生成された場所で患者に適用/投与されるわけではない。多くの場合、細胞の回収とさらなる利用との間には、かなりの時間が経過している。したがって、細胞の輸送または貯蔵のために典型的に使用される期間にわたって細胞を生存可能かつ健常に維持するある特定の担体を提供する必要性がある。
【0008】
よって、この必要性を満たす、特に臍帯の羊膜に由来する間葉系幹細胞の集団の幹細胞を輸送/貯蔵する方法を提供することが、本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願2006/0078993
【特許文献2】米国特許第9,085,755号
【特許文献3】米国特許第9,737,568号
【特許文献4】米国特許第9,844,571号
【特許文献5】WO2006/019357
【特許文献6】米国仮特許出願第62/404,582号
【特許文献7】米国特許出願第15/725,913号
【特許文献8】PCT/SG2017/050500
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Jeschke et al. Umbilical Cord Lining Membrane and Wharton's Jelly-Derived Mesenchymal Stem Cells: the Similarities and Differences; The Open Tissue Engineering and Regenerative Medicine Journal, 2011, 4, 21-27
【非特許文献2】Stubbendorf et al, Immunological Properties of Extraembryonic Human Mesenchymal Stromal Cells Derived from Gestational Tissue, STEM CELLS AND DEVELOPMENT Volume 22, Number 19, 2013, 2619-2629
【非特許文献3】Dominici et al, 「Minimal criteria for defining multipotent mesenchymal stromal cells. The International Society for Cellular Therapy position statement」, Cytotherapy (2006) Vol. 8, No. 4, 315-317
【非特許文献4】Sensebe et al,.「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a, review」, Stem Cell Research & Therapy 2013, 4:66
【発明の概要】
【0011】
この目的は、独立請求項の特徴を有する方法および単位投与量によって達成される。
【0012】
第1局面において、本発明は、幹細胞集団を輸送する方法を提供し、該方法は、
i) トロロックス、
ii) Na+
iii) K+
iv) Cl-
v) H2PO4 -
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む液体担体と接触させた該幹細胞集団を輸送する段階を含む。
【0013】
第2局面において、本発明は、疾患を有する対象を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団を対象に局所投与する段階を含み、ここで、間葉系幹細胞集団は、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約96時間以内に投与される。
【0014】
第3局面において、本発明は、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団の約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞を含む単位投与量を提供する。
【0015】
第4局面において、本発明は、幹細胞集団を輸送するための液体担体の使用を提供し、該液体担体は、
i) トロロックス、
ii) Na+、
iii) K+、
iv) Cl-、
v) H2PO4-、
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む。
[本発明1001]
i) トロロックス、
ii) Na+
iii) K+
iv) Cl-
v) H2PO4 -
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む液体担体と接触させた幹細胞集団を輸送する段階を含む、幹細胞集団を輸送する方法。
[本発明1002]
輸送が約7日またはそれ未満にわたって行われる、本発明1001の方法。
[本発明1003]
輸送が約6日、約5日、約4日、約3日、約2日、約1日、または約1日未満にわたって行われる、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
輸送が約48時間もしくは約24時間またはそれ未満にわたって行われる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1005]
輸送が約-5℃~約15℃の温度で行われる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1006]
輸送が約2℃~約8℃の温度で行われる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1007]
輸送が、約-5℃を超える、約-10℃を超える、約-15℃を超える、または約-20℃を超える温度で実施される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1008]
幹細胞集団が、担体1 ml当たり約7000万個の細胞、担体1 ml当たり約6000万個の細胞、担体1 ml当たり約5000万個の細胞、担体1 ml当たり約4000万個の細胞、担体1 ml当たり約3000万個の細胞、担体1 ml当たり約2000万個の細胞、担体1 ml当たり約1000万個の細胞、担体1 ml当たり約500万個の細胞、担体1 ml当たり約400万個の細胞、担体1 ml当たり約300万個の細胞、担体1 ml当たり約200万個の細胞、担体1 ml当たり約100万個の細胞、担体1 ml当たり約50万個の細胞、担体1 ml当たり約10万個の細胞、または担体1 ml当たり10万個未満の細胞の濃度で輸送される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1009]
幹細胞集団が、担体1 ml当たり約1000万個の細胞から担体1 ml当たり約100万個の細胞の濃度で輸送される、本発明1008の方法。
[本発明1010]
幹細胞集団が、胚性幹細胞集団、成体幹細胞集団、間葉系幹細胞集団、または誘導多能性幹細胞集団である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1011]
幹細胞集団が、間葉系幹細胞集団、好ましくはヒト間葉系幹細胞集団である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1012]
間葉系幹細胞集団が、臍帯の羊膜の単離された間葉系幹細胞集団、好ましくは臍帯の羊膜の単離されたヒト間葉系幹細胞集団である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1013]
単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、本発明1011または1012の方法。
[本発明1014]
単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、本発明1013の方法。
[本発明1015]
単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)の発現を欠いている、本発明1011~1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
単離された間葉系幹細胞集団の細胞の少なくとも97%もしくはそれ以上、約98%もしくはそれ以上、または約99%もしくはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、本発明1015の方法。
[本発明1017]
幹細胞集団を、輸送前に担体と接触させる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1018]
幹細胞集団を、その回収後に担体と接触させる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1019]
幹細胞集団を、その回収の約0分後、約1分後、約5分後、約10分後、約30分後、約45分後、約60分後、またはそれより長い時間の後に、担体と接触させる、本発明1018の方法。
[本発明1020]
回収が、幹細胞集団を培養液から分離することを含む、本発明1018または1019の方法。
[本発明1021]
分離が、培養液中の幹細胞を遠心分離し、かつ該培養液をデカントすることによって行われる、本発明1020の方法。
[本発明1022]
接触が、幹細胞集団を、約7000万個/ml、約6000万個/ml、約5000万個/ml、約4000万個/ml、約3000万個/ml、約2000万個/ml、約1000万個/ml、約500万個/ml、約400万個/ml、約300万個/ml、約200万個/ml、約100万個/ml、約50万個/ml、約10万個/ml、または10万個未満の細胞の密度で担体中に懸濁することによって行われる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1023]
接触が、幹細胞集団を約1000万個/mlの密度で担体中に懸濁することによって行われる、本発明1022の方法。
[本発明1024]
担体と接触させた幹細胞が、約50 ml、約20 ml、約10 ml、約5 ml、約4 ml、約3 ml、約2 ml、約1 ml、約0.5 ml、約0.25 ml、または0.25 ml未満の担体の体積でバイアルに分取される、本発明1022または1023の方法。
[本発明1025]
担体と接触させた幹細胞が、約1 mlの量でバイアルに分取される、本発明1022または1023の方法。
[本発明1026]
担体が輸送培地または賦形剤である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1027]
解凍または凍結段階を含まない、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1028]
担体が、双極性非プロトン性溶媒、特にDMSOを含まない、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1029]
輸送前の生存幹細胞の量と比較して、前記集団の幹細胞の多くても約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、または約10%未満が輸送中に死滅する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1030]
輸送後に、幹細胞集団が輸送前とほぼ同量のTGFベータ-1を分泌する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1031]
PDGF-BBおよび/またはIL-10が、輸送前および/または輸送後に本質的に検出されない、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1032]
輸送後に、間葉系幹細胞集団が、輸送前とほぼ同量のVEGF、PDGF-AA、Ang-1、および/またはHGFを分泌する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1033]
本発明1012~1016のいずれかにおいて規定される間葉系幹細胞集団の約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞を含む、単位投与量。
[本発明1034]
約1000万個、約900万個、約800万個、約700万個、約600万個、約500万個、約400万個、約300万個、約200万個、約100万個、約50万個、約25万個、または約10万個の細胞を含む、本発明1033の単位投与量。
[本発明1035]
約1000万個の細胞を含む、本発明1033または1034の単位投与量。
[本発明1036]
1 mlバイアル中に含まれる、本発明1033~1035のいずれかの単位投与量。
[本発明1037]
単位用量が液体担体中に含まれ、該液体担体が、
i) トロロックス、
ii) Na+、
iii) K+、
iv) Cl-、
v) H2PO4 -
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む、本発明1033~1035のいずれかの単位投与量。
[本発明1038]
細胞が生存細胞である、本発明1033~1037のいずれかの単位投与量。
[本発明1039]
担体がHypoThermosolである、本発明1001~1032のいずれかの方法。
[本発明1040]
幹細胞集団を輸送するための液体担体の使用であって、該液体担体が、
i) トロロックス、
ii) Na+、
iii) K+、
iv) Cl-、
v) H2PO4 -
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む、前記使用。
[本発明1041]
疾患を有する対象を処置するための薬学的組成物の製造のための、本発明1012~1016のいずれかにおいて規定される臍帯の羊膜の単離された間葉系幹細胞集団である間葉系幹細胞集団の使用であって、
該間葉系幹細胞集団が、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約96時間以内に局所投与されること
を含む、前記使用。
[本発明1042]
間葉系幹細胞集団が、約1000万個の細胞の単位投与量で適用される、本発明1041の使用。
[本発明1043]
間葉系幹細胞集団が、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約72時間以内に、約48時間以内に、約24時間以内に、約12時間以内に、約6時間以内に、またはそれ未満で適用される、本発明1041または1042の使用。
[本発明1044]
前記疾患が、皮膚疾患または創傷である、本発明1041~1043のいずれかの使用。
[本発明1045]
創傷が、熱傷、咬傷、外傷、手術、または疾患に起因する、本発明1044の使用。
[本発明1046]
創傷が糖尿病に起因し、創傷が好ましくは糖尿病性創傷である、本発明1045の使用。
[本発明1047]
創傷が糖尿病性足部潰瘍である、本発明1046の使用。
[本発明1048]
約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞の単位投与量が、週に1回または2回投与される、本発明1041~1047のいずれかの使用。
[本発明1049]
約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞の単位投与量が、3週間、4週間、もしくは5週間、もしくは6週間、もしくは7週間、もしくは8週間、もしくは10週間、またはそれ以上の週の期間にわたって、週に1回または2回投与される、本発明1048の使用。
[本発明1050]
間葉系幹細胞集団が局所的に適用され、かつフィルムまたは包帯で覆われる、本発明1041~1049のいずれかの使用。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、非限定的な実施例および図面と併せて考慮した場合に、詳細な説明を参照してより良く理解されるであろう。
【0017】
図1-1】図1は、実験の項において本発明の培地 (PTT-6) の実例を作製するために使用したDMEMのカタログ番号を含む、ダルベッコ改変イーグル培地に関するLonzaの技術情報シートを示す。
図1-2】図1-1の説明を参照のこと。
図2】ハムF12培地に関するLonzaの技術情報シートを示す。
図3】実験の項において本発明の培地 (PTT-6) の実例を作製するために使用したDMEM:F12 (1:1) 培地のカタログ番号を含む、DMEM:F12 (1:1) 培地に関するLonzaの技術情報シートを示す。
図4-1】図4は、実験の項において本発明の培地 (PTT-6) の実例を作製するために使用したM171培地のカタログ番号を含む、M171培地に関するLife Technologies Corporationの技術情報シートを示す。
図4-2】図4-1の説明を参照のこと。
図5】培地PTT-6を作製するために実験の項において使用した成分のリストを、それらの商業的供給業者およびカタログ番号を含めて示す。
図6a図6は、臍帯から単離された間葉系幹細胞を、間葉系幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105の発現について解析した、フローサイトメトリー実験の結果を示す。これらの実験のために、3種の異なる培養液中で臍帯組織を培養することにより、間葉系幹細胞を臍帯組織から単離し、続いて各培地中で間葉系幹細胞を継代培養した。これらの実験において、以下の3種の培養液を使用した:a) 10 % FBS (v/v) を補充した90% (v/v/ DMEM、b) 90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる、米国特許出願2006/0078993および対応する国際特許出願WO2006/019357に記載されている培養液PTT-4(WO2006/019357のパラグラフ [0183] を参照されたい)、ならびにc) 本明細書においてその組成が記載される、本発明の培養液PTT-6。このフローサイトメトリー解析において、臍帯ライニング間葉系幹細胞 (CLMC) 集団の2つの異なる試料を、使用した3種の培養液の各々について解析した。結果を図6a~6cに示す。より詳細には、図6aは、DMEM/10% FBS中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、図6bは、PTT-4中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、ならびに図6cは、PTT-6中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示す。
図6b図6aの説明を参照のこと。
図6c図6aの説明を参照のこと。
図7a図7は、臍帯から単離された間葉系幹細胞を、細胞療法に対する複能性ヒト間葉系幹細胞の適合性を規定するために使用される幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105、CD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)のそれらの発現について解析し、骨髄間葉系幹細胞によるこれらのマーカーの発現と比較した、フローサイトメトリー実験の結果を示す。この実験のために、本発明の培養液PTT-6中で臍帯組織を培養することにより、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞を臍帯組織から単離する一方で、標準的なプロトコールを用いて、ヒト骨髄から骨髄間葉系幹細胞を単離した。図7aは、PTT-6培地中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、図7bは、CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された骨髄間葉系幹細胞の割合を示す。
図7b図7aの説明を参照のこと。
図8】異なる担体の比較のための実験設定を示す。最初に、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団を細胞培養フラスコ中で増殖させた。生存間葉系幹細胞の量を計数し、次いで細胞200万個/バイアルを、PlasmaLyte-A中またはHypoThermosol(商標)-FRS中のいずれかで様々な期間貯蔵した。貯蔵後、1~5日目に毎日、≦50μlの試料で細胞を計数し(液体取り出し総量250μl)、細胞をトリパンブルーで染色することにより生存率を調べた。さらに、1日目、3日目、および5日目に、≦80μlの試料を採取し解析した。加えて、上清を得て凍結した。次いで、PDGF-AA、PDGF-BB、VEGF、IL-10、Ang-1、HGF、およびTGFβ1を、FLEXMAP 3Dシステムにより測定した。
図9】生存率データを要約する。左側のグラフからわかるように、HypoThermosol(商標)中での貯蔵の7日後に、貯蔵を開始した際の全細胞数(約95%)の73%がなお生存可能であった。それに反して、PlasmaLyte-A中での7日間の貯蔵後には、貯蔵を開始した際の全細胞数(約94%)の42%のみがなお生存可能であった。計数はすべて、互いに10%以内である2つ組の読み取り値に基づいた(SOP CR D2.600.1に従う)。計数中、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された細胞は、滑らかでかつ明確な輪郭を有して、著しくより小さかった。対照的に、Plasmalyte-A中の細胞は様々なサイズで出現した。HypoThermosol(商標)は、6日間の期間にわたって、膜の完全性およびおそらくは生存を著しく支持する。同様の結果はまた、右側のグラフにおいても示される。
図10】細胞の細胞直径を測定した際に得られた結果を示す。HypoThermosol(商標)中で維持された場合の本明細書に記載される間葉系幹細胞集団は、PlasmaLyteA中で維持された細胞と比較して、直径範囲がより狭い。比較は3日間の貯蔵後に行った。
図11】HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、貯蔵の48時間後の上清中のTGFβ1濃度を示す。右側のグラフからわかるように、細胞は、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合とほぼ同量のTGFβ1を分泌する。一般的に、時間経過と共に、分泌されるTGFβ1の量は減少した(右側のグラフ)。
図12】対照実験を示す。ここでは、PDGF-BB濃度を、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、48時間の上清中で測定した。PDGF-BBは、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団によって通常分泌されないため、PDGF-BBはいずれの試料においても検出可能ではなかった。
図13】対照実験を示す。ここでは、IL-10濃度を、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、48時間の上清中で測定した。IL-10は、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団によって通常分泌されないため、IL-10はいずれの試料においても検出可能ではなかった。
図14】HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、48時間の上清中のVEGF濃度を示す。右側のグラフからわかるように、細胞は、0日目に、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された場合にほぼ同量のVEGFを分泌する。1日目および5日目には、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合に、より多くのVEGFを分泌した。注目すべきことには、3日間貯蔵された場合、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合よりもHypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、より多くのVEGFを分泌した。したがって、貯蔵の3日目まで、HypoThermosol(商標)はPlasmaLyte-Aよりも優れている。より多くのVEGFが検出されればされるほど、培養物はより健常である。したがって、PlamsaLyte-A中で貯蔵された場合よりもHypoThermosol(商標)中での3日間の貯蔵後に、より多くのVEGFを分泌することによって、細胞はPlamsaLyte-A中よりもHypoThermosol(商標)中でより健常であった。5日目からは、PlasmaLyte中での貯蔵がより有利になると考えられるが、それは、その時点で、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞がより多くのVEGFを分泌したからである。一般的に、時間経過と共に、分泌されるVEGFの量は減少した(右側のグラフ)。
図15】HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、48時間の上清中のPDGF-AA濃度を示す。右側のグラフからわかるように、細胞は、0日目に、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合とほぼ同量のPDGF-AAを分泌する。1日目および5日目には、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合に、より多くのPDGF-AAを分泌した。注目すべきことには、3日間貯蔵された場合、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合よりもHypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、より多くのPDGF-AAを分泌した。したがって、貯蔵の3日後、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞よりもより健常である。5日間の貯蔵以降は、PlasmaLyteがより有利な担体になると考えられるが、それは、その時点で、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞がより多くのPDGF-AAを分泌したからである。一般的に、時間経過と共に、分泌されるPDGF-AAの量は減少した(右側のグラフ)。
図16】HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、48時間の上清中のAng-1濃度を示す。右側のグラフからわかるように、細胞は、0日目および3日目に、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された場合にほぼ同量のAng-1を分泌する。5日目に、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合に、より多くのAng-1を分泌した。注目すべきことには、1日貯蔵された場合、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合よりもHypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、はるかにより多くのAng-1を分泌した。したがって、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合よりも、3日間の貯蔵までは少なくとも48時間にわたって、より健常であると考えられる。5日目からは、PlasmaLyteがより有利な担体になると考えられるが、それは、この時点で、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞がより多くのAng-1を分泌したからである。一般的に、時間経過と共に、分泌されるAng-1の量は減少した(右側のグラフ)。
図17】HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、貯蔵の48時間後の上清中のHGF濃度を示す。右側のグラフからわかるように、細胞は、0日目に、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合と比較して、ほぼ同量のHGFを分泌する。3日目および5日目には、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合に、より多くのHGFを分泌した。注目すべきことには、1日貯蔵された場合、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合よりもHypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、はるかにより多くのHGFを分泌した。したがって、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞よりも、3日間の貯蔵までは少なくとも1日(48時間)の間、より健常であると考えられる。3日以降は、PlasmaLyte-Aがより有利な担体になると考えられるが、それは、3日および5日の時点で、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞がより多くのHGFを分泌したからである。一般的に、時間経過と共に、分泌されるHGFの量は減少した(右側のグラフ)。
図18-1】図18は、本発明の間葉系幹細胞集団をブタに用いた前臨床試験から得られた写真である。ブタを120 mg/kgストレプトゾトシンを用いて糖尿病にし、45日間回復させてから、それらの背中に5 cm×5 cmの全層創傷を6個作製した。ブタ (n = 2) を、1 cm2当たり105個の本明細書に記載されるヒト間葉系幹細胞集団で、週に2回、4週間にわたって処置した。2匹の対照ブタはPBSで処置した。術後0日目(PO 0日目)、および術後35日目まで7日ごとに、創傷を撮影した。創傷を、ImageJによって表面積サイズについて解析した。35日目までに、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団の添加により、PBS処置された対照創傷の12個中3個のみ (25%) と比較して、12個中10個の糖尿病性創傷 (83%) が閉鎖した。創傷治癒の速度は、対照動物における0.6 cm2/日と比較して、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団を用いて0.8 cm2/日であり、33%の改善であった。
図18-2】図18-1の説明を参照のこと。
図18-3】図18-1の説明を参照のこと。
図18-4】図18-1の説明を参照のこと。
図18-5】図18-1の説明を参照のこと。
図19-1】図19は、Tocrisから入手可能なトロロックスのデータシートである。
図19-2】図19-1の説明を参照のこと。
図20-1】図20は、Sigma Aldrichから入手可能なNaClのデータシートを示す。
図20-2】図20-1の説明を参照のこと。
図21】Sigma Aldrichから入手可能なKH2PO4のデータシートを示す。
図22-1】図22は、Sigma AldrichからのHEPESのデータシートを示す。
図22-2】図22-1の説明を参照のこと。
図23-1】図23は、COMBI-BLOCKSからのラクトビオン酸ナトリウムの製品シートを示す。
図23-2】図23-1の説明を参照のこと。
図23-3】図23-1の説明を参照のこと。
図24-1】図24は、Sigma Aldrichからのスクロースの製品シートを示す。
図24-2】図24-1の説明を参照のこと。
図25-1】図25は、avantorからのマンニトールの製品シートを示す。
図25-2】図25-1の説明を参照のこと。
図26】Sigma Aldrichからのグルコースの製品シートを示す。
図27-1】図27は、Sigma Aldrichからのデキストラン-40の製品シートを示す。
図27-2】図27-1の説明を参照のこと。
図28】Sigma Aldrichからのアデノシンの製品シートを示す。
図29】Sigma Aldrichからのグルタチオンの製品シートを示す。
図30】STEMCELL TechnologiesからのHypoThermosol(商標)-FRS (HTS-FRS) の製品シートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
上記で説明したように、第1局面において、本発明は、幹細胞集団を輸送/貯蔵する方法を対象にし、該方法は、
i) トロロックス、
ii) Na+
iii) K+
iv) Cl-
v) H2PO4 -
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む液体担体と接触させた該幹細胞集団を輸送/貯蔵する段階を含む。
【0019】
本明細書に記載される液体担体、および具体的にはHypoThermosol(商標)などの液体担体を使用することが、例えばPlasmaLyte(登録商標)などの他の薬学的に承認された担体と比較して幹細胞の優れた生存をもたらすことが、本出願において驚くべきことに見出された。例えば、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団をHypoThermosol(商標)中で7日間貯蔵した後、細胞の約70%がなお生存可能であった。反対に、PlasmaLyte(登録商標)中で7日間貯蔵した後では、細胞の約40%のみがなお生存可能であった(血球計算盤で測定した場合の、実施例を参照されたい)。このように、本明細書に記載される液体担体を使用することで、細胞の生存能を実質的に失うことなく、幹細胞をある期間にわたって輸送/貯蔵することが可能になる。特に、実験の項において詳細に記載されているように、幹細胞は一般に、PlasmaLyte-A中で貯蔵した後よりも多くの因子を分泌したため、3日またはそれ未満のより短い期間にわたるHypoThermosol(商標)中での貯蔵は、特に有益であると考えられる。
【0020】
本明細書で用いられる場合、「輸送」または「輸送する」という用語は、任意の輸送を意味する。そのような輸送は、自動車、電車、および飛行機などの任意の乗り物を用いて、または液体担体と接触させた幹細胞を含む容器をある場所から別の場所へ運搬/輸送する人によって行われ得る。1つの態様において、輸送は、関心対象の幹細胞集団が生成された場所から幹細胞を投与する場所へ(例えば、関心対象の幹細胞集団が生成されたGMP施設から、幹細胞集団を投与する場所、例えばクリニックまたは診療所へ)と実施される。しかしながら、「輸送する」という用語は、同じ場所でのある期間にわたる細胞の貯蔵に関することもまた想定される。例えば、幹細胞は、回収後、ある場所で対象に適用されるまで貯蔵してもよい。幹細胞を貯蔵または輸送することができる容器は、本発明の方法に適した任意の容器であってよい。
【0021】
輸送/貯蔵は任意の期間にわたって行うことができる。例えば、輸送/貯蔵は、約7日またはそれ未満にわたって行うことができる。輸送/貯蔵が約6日、5日、4日、3日、2日、1日、またはそれ未満にわたって行われ得ることもまた想定される。したがって、輸送/貯蔵が約48時間もしくは約24時間またはそれ未満にわたって行われることが可能である。
【0022】
輸送/貯蔵が、本発明の方法に適した任意の温度で行われることもまた企図される。例えば、輸送/貯蔵は約-5℃~約15℃の温度で行うことができる。したがって、輸送/貯蔵が約2℃~約8℃の温度で行われ得ることもまた想定される。輸送は、約-5℃を超える、約-10℃を超える、約-15℃を超える、または約-20℃を超える温度で実施することもできる。さらに、輸送/貯蔵が、20℃未満、18℃未満、15℃未満、12℃未満、または10℃未満の温度で行われることが想定される。
【0023】
本発明の方法はまた、幹細胞集団が任意の適切な濃度で貯蔵されるまたは輸送されることを想定する。幹細胞集団は、例えば、担体1 ml当たり約7000万個の細胞、担体1 ml当たり約6000万個の細胞、担体1 ml当たり約5000万個の細胞、担体1 ml当たり約4000万個の細胞、担体1 ml当たり約3000万個の細胞、担体1 ml当たり約2000万個の細胞、担体1 ml当たり約1000万個の細胞、担体1 ml当たり約500万個の細胞、担体1 ml当たり約400万個の細胞、担体1 ml当たり約300万個の細胞、担体1 ml当たり約200万個の細胞、担体1 ml当たり約100万個の細胞、担体1 ml当たり約50万個の細胞、担体1 ml当たり約10万個の細胞、または担体1 ml当たり細胞10万個未満の細胞の濃度で輸送/貯蔵することができる。したがって、幹細胞集団は、担体1 ml当たり約1000万個の細胞から担体1 ml当たり約100万個の細胞の濃度で輸送/貯蔵することができる。
【0024】
本発明の方法は、幹細胞の輸送/貯蔵に関係する。原則として、任意の幹細胞を本発明の方法において使用することができる。幹細胞の1つの特徴的な特性は、自己複製するその能力である。「自己複製」とは、未分化状態を維持しながら細胞分裂の多数の細胞周期を経る能力である。細胞が自己複製する能力を有するかどうかを試験するための方法は、当業者に公知である。例えば、自己複製は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30回、またはそれ以上の継代数を超えて細胞を継代培養することによって試験することができる。継代培養は、単一細胞懸濁液として再プレーティングする前に細胞を分割する段階を含む。幹細胞のさらなる特徴は、本明細書の他所にも記載されるように、その複能性または多能性である。原則として、複能性または多能性は、該幹細胞を異なる系列に分化させることによって試験することができる。
【0025】
特に、本発明の方法において使用される幹細胞集団は、胚性幹細胞集団、成体幹細胞集団、間葉系幹細胞集団、または誘導多能性幹細胞集団であってよい。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「胚性幹細胞集団」は「多能性幹細胞集団」である。本明細書で言及される場合の多能性細胞は、自己複製の能力および異なる細胞型に分化する可能性を有する細胞型に関する。多能性幹細胞は、ほぼすべての細胞、すなわち、外胚葉、内胚葉、および中胚葉の3つの一次胚葉のいずれかに由来する細胞に分化することができる。多能性幹細胞という用語はまた、胚盤胞として公知である初期胚の内部細胞塊に由来する幹細胞も包含する。注目すべきことに、胚性幹細胞研究の最近の進歩は、例えば、胚の発生能を妨げない割球生検ベースの技法を使用することによって、胚を破壊せずに新たな胚性幹細胞株を作出する可能性をもたらした (Klimanskaya (2006) 「Embryonic stem cells from blastomeres maintaining embryo viability.」 Semin Reprod Med. 2013 Jan;31(1):49-55)。さらに、多数の樹立された胚性幹細胞株が当技術分野で利用可能である。したがって、胚の破壊を必要とせずに胚性幹細胞を扱うことが可能である。多能性幹細胞は、ヒト胚の破壊によって取得されたものではない胚性幹細胞であってよい。したがって、多能性幹細胞は、胚を破壊せずに胚から取得された胚性幹細胞である。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「成体幹細胞集団」は複能性幹細胞集団である。複能性幹細胞集団は、限定された数の細胞型を生じさせることができ、したがってそれらは体細胞の運命が限定されている。例えば、神経幹細胞は、神経細胞およびグリア細胞の両方を生じさせることができる。成体幹細胞は自己複製する能力を有し、任意の適切な供給源から取得され得る。例えば、成体幹細胞は、骨髄、末梢血、脳、脊髄、歯髄、血管、骨格筋、皮膚および消化器系の上皮、角膜、網膜、肝臓、または膵臓から取得され得る。
【0028】
本発明の方法において使用される幹細胞集団はまた、間葉系幹細胞集団であり得る。これに関連して、本明細書において記載される培養液(例えばPTT-6)によって、間葉系幹/前駆細胞を分化させることなく間葉系幹/前駆細胞の細胞増殖を可能にする条件下で、羊膜から間葉系幹細胞集団(本明細書において「間葉系幹細胞」とも称される)を単離することが可能になることが留意される。したがって、本明細書に記載されるように羊膜から間葉系幹細胞を単離した後、単離された間葉系幹/前駆細胞集団は、例えば米国特許出願2006/0078993、米国特許第9,085,755号、国際特許出願WO2006/019357、米国特許第8,287,854号、またはWO2007/046775に記載されるように、複数の細胞型に分化する能力を有する。例えば米国特許出願2006/0078993に記載されるように、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞は、紡錘形を有し、遺伝子POU5f1、Bmi-1、白血病抑制因子 (LIF) を発現し、かつアクチビンAおよびフォリスタチンを分泌する。本発明において単離された間葉系幹細胞は、これらに限定されないが、脂肪細胞、皮膚線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、腱細胞、靱帯維芽細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、ムチン産生細胞、インスリン産生細胞(例えば、β島細胞)などの内分泌腺由来の細胞、または神経外胚葉細胞などの、間葉系細胞のいかなる型にも分化させることができる。本明細書において記載される方法に従って単離された幹細胞は、後に医療目的で分化細胞を使用するために、インビトロで分化させることができる。そのようなアプローチの実例は、間葉系幹細胞のインスリン産生β島細胞への分化であり、この細胞は次いで、糖尿病などのインスリン欠乏に罹患している患者に、例えば移植によって投与することができる(この点において、WO2007/046775もまた参照されたい)。あるいは、本明細書において記載される間葉系幹細胞は、例えば、熱傷または慢性糖尿病創傷の処置などの創傷治癒の目的で、細胞ベースの療法のために未分化状態で使用することができる。これらの治療適用において、本発明の間葉系幹細胞は、周囲の罹患組織と相互作用することによって創傷治癒を促進するのに役立ち得るか、またはそれぞれの皮膚細胞にも分化し得る(例えば、再度WO2007/046775を参照されたい)。
【0029】
これに関連して、本明細書において記載される間葉系幹細胞集団は、臍帯組織が羊膜(「臍帯ライニング」とも称される)を含有する限りにおいて、任意の臍帯組織から単離し培養することができる(すなわち、任意の臍帯組織に由来する)ことが留意される。よって、間葉系幹細胞集団は、本出願の実験の項に記載されているように、臍帯全体(からの小片)から単離することができる。したがってこの臍帯組織は、羊膜に加えて、臍帯の任意の他の組織/構成成分を含有してもよい。例えば、米国特許出願2006/0078993または国際特許出願WO2006/019357の図16に示されるように、臍帯の羊膜は、臍帯を覆っている、臍帯の最も外側の部分である。加えて、臍帯は、1本の静脈(酸素化し栄養分に富んだ血液を胎児に運ぶ)および2本の動脈(脱酸素化され栄養分が枯渇した血液を胎児から運び出す)を含有する。保護および機械的支持のために、これら3本の血管は、主にムコ多糖のゼラチン状物質であるワルトン膠様質内に包埋されている。よって、本明細書において用いられる臍帯組織はまた、この1本の静脈、2本の動脈、およびワルトン膠様質を含み得る。臍帯のそのような全体(無傷)部分の使用は、羊膜を臍帯の他の構成成分から分離する必要がないという利点を有する。これによって、単離段階が減少し、ひいては本明細書において記載される方法が、より簡便になり、より迅速になり、間違いが起こりにくくなり、かつより経済的になる‐これらはすべて、間葉系幹細胞の治療適用に必要なGMP生産の重要な局面である。したがって間葉系幹細胞の単離は、組織外植片から開始することができ、その後、より多くの量の間葉系幹細胞が例えば臨床試験において使用するために所望される場合には、単離された間葉系幹細胞を続いて継代培養(培養)することができる。あるいは、最初に臍帯の他の構成成分から羊膜を分離し、培養液、例えばPTT-6中で羊膜を培養することによって、羊膜から間葉系臍帯ライニング幹細胞を単離することもまた可能である。この培養はまた、組織外植片で行うこともでき、任意にその後、単離された間葉系幹細胞の継代培養が行われる。これに関連して、「組織外植片」または「組織外植片法」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味で用いられて、ひとたび回収された組織またはその組織片が、培養液(増殖培地)を含む細胞培養ディッシュ中に配置され、時間と共に幹細胞が組織からディッシュの表面上に遊走する方法を指す。次いでこれらの初代幹細胞を、本明細書においても記載されるように、大量増殖 (micropropagation)(継代培養)により、さらに増大させ、新たなディッシュに移すことができる。これに関連して、治療目的のための細胞の生成の観点において、臍帯から羊膜間葉系幹細胞を単離する第1段階において、単離された間葉系幹細胞のマスター細胞バンクが得られ、その後の継代培養においてワーキング細胞バンクが得られ得ることが留意される。特定の態様において、幹細胞集団はしたがって間葉系幹細胞集団である。
【0030】
間葉系幹細胞集団は、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で培養する段階を含む方法により、臍帯の羊膜から単離することができる。そのような培地を使用することにより、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞集団が単離され、その細胞の90%超またはさらには99%もしくはそれ以上は3種の間葉系幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105に関して陽性であり、それと同時にこれらの幹細胞はCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いており(実験の項を参照されたい)、このことは、この集団の99%またはさらにはそれ以上の細胞が幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現しながら、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DRを発現しないことを意味する。そのような極めて均一でありかつ明確に規定された細胞集団は、2017年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/404,582号に対する優先権を主張する2018年10月5日に出願された同時係属中の米国特許出願第15/725,913号(これらの両方の内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる)において、および同様に2017年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/404,582号に対する優先権を主張する2018年10月5日に出願された同時係属中のPCT出願PCT/SG2017/050500において初めて報告され、この幹細胞集団が、例えば、例えばDominici et al,「Minimal criteria for defining multipotent mesenchymal stromal cells. The International Society for Cellular Therapy position statement」, Cytotherapy (2006) Vol. 8, No. 4, 315-317、Sensebe et al,.「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a, review」, Stem Cell Research & Therapy 2013, 4:66)、Vonk et al., Stem Cell Research & Therapy (2015) 6:94、またはKundrotas Acta Medica Lituanica. 2012. Vol. 19. No. 2. P. 75-79によって規定されるような、細胞療法に使用されるべきヒト間葉系幹細胞に関して一般に許容される基準を十分に満たすという理由で、臨床試験および細胞ベースの療法の理想的な候補である。また、Quantum細胞増殖システムなどのバイオリアクターを使用することで、1回の実行当たり3~7億個の間葉系幹細胞といった多数の間葉系幹細胞を得ることが可能である(実験の項もまた参照されたい)。したがって、本発明により、費用効率の高い様式で、創傷治癒における使用などの治療適用に必要な量の幹細胞を輸送/貯蔵することが可能になる。加えて、本発明の培養液を作製するために使用される構成成分はすべて、GMP品質で市販されている。よって、本発明は、GMP生産されかつ高度に均一な、臍帯の羊膜由来の間葉系幹細胞集団を輸送/貯蔵するためのルートを開く。
【0031】
したがって、いくつかの態様において、間葉系幹細胞集団は、臍帯の羊膜の単離された間葉系幹細胞集団である。単離された幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現することがさらに想定される。例えば、単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現する。加えて、またはその代わりに、単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、以下のマーカーの発現を欠いている:CD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)。
【0032】
マーカーCD73は当業者に公知である。これに関して、CD73は、5'-ヌクレオチダーゼ (5'-NT) またはエクト-5'-ヌクレオチダーゼとしても公知である表面抗原分類73を指す。ヒトCD73タンパク質の配列は、SEQ ID NO. 1の配列を有し得る。マーカーCD90は当業者に公知である。これに関して、CD90は、胸腺細胞分化抗原1 (Thy-1) としても公知である表面抗原分類90を指す。ヒトCD90タンパク質の配列は、SEQ ID NO: 2の配列を有し得る。マーカーCD105は当業者に公知である。CD105は、エンドグリン (ENG) としても公知である。ヒトCD105タンパク質の配列は、SEQ ID NO: 3の配列を有し得る。
【0033】
本発明の間葉系幹細胞集団(具体的には、そのうちの少なくとも約98%または99%が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、間葉系幹細胞の集団)が、臨床試験のためにまたは認可された治療として用いられる場合には、この目的のためにワーキング細胞バンクの細胞集団が典型的に用いられる。説明したように、間葉系幹細胞集団は、以下のマーカーの発現を欠き得る:CD34、CD45、およびHLA-DR。これに関連して、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DRが当業者に公知であることが留意される。ヒトCD34タンパク質は、SEQ ID NO. 4の配列を有し得る。ヒトCD45タンパク質は、SEQ ID NO: 5の配列を有し得る。ヒトHLA-DRタンパク質は、SEQ ID NO: 6の配列を有し得る。
【0034】
単離段階の幹細胞集団(マスター細胞バンクを構成し得る)および継代培養段階の幹細胞集団(ワーキング細胞バンクを構成し得る)はいずれも、例えば凍結保存形態で貯蔵することができる。
【0035】
上記のように、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離する本方法は、本発明の培養液中で使用される構成成分がすべてGMP品質で入手可能であり、したがって、間葉系幹細胞がその後の治療的投与のためにGMP条件下で単離される可能性をもたらすという利点を有する。
【0036】
したがって、幹細胞集団はまた誘導多能性幹細胞集団であってもよい。「誘導多能性幹細胞」は、本明細書で用いられる場合、胚性幹細胞の決定的な特性を維持するのに重要な遺伝子および因子を強制的に発現させることによって、胚性幹細胞様の状態に遺伝的に再プログラミングされた成体体細胞を指す。したがって、誘導多能性幹細胞は、非多能性細胞から誘導/作製され得る。
【0037】
誘導多能性幹細胞は、胚を使用せずに多能性幹細胞を取得することを可能にするため、幹細胞研究の重要な進歩である。マウスiPSCは2006年に初めて報告され (Takahashi, K; Yamanaka, S (2006). 「Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors」. Cell 126 (4): 663-76)、ヒトiPSC (hiPSC) は2007年に初めて報告された (Takahashi et al. (2007) 「Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors.」 Cell; 131(5):861-72)。マウスiPSCは、幹細胞マーカーの発現、3つの胚葉すべてに由来する細胞を含む腫瘍を形成すること、および非常に初期の発生段階のマウス胚に注入されると多くの異なる組織に寄与し得ることを含め、多能性幹細胞の重要な特徴を示す。ヒトiPSCもまた、幹細胞マーカーを発現し、3つの胚葉すべてに特徴的な細胞を生成することができる。そのような幹細胞マーカーには、Oct3/4、Sox2、Nanog、アルカリホスファターゼ (ALP)、ならびに幹細胞特異的抗原3および4 (SSEA3/4) が含まれ得る。また、iPSCのクロマチンメチル化パターンも、胚性幹細胞のものと類似している (Tanabe, Takahashi, Yamanaka (2014) 「Induction of pluripotency by defined factors.」 Proc. Jpn. Acad., 2014, Ser. B 90)。
【0038】
加えて、iPSCは、インビトロで自己複製し、3つの胚葉すべてに分化することができる。iPSCの多能性または異なる細胞型に分化する可能性は、例えば、神経細胞もしくはグリア細胞へのインビトロ分化、または胚盤胞注入による生殖系列キメラ動物の作製によって試験することができる。
【0039】
ヒト誘導多能性幹細胞の作製方法は当業者に公知であり、例えばWO2009115295、WO2009144008、またはEP2218778に記載されている。したがって、当業者は任意の方法によってiPSCを取得することができる。原則として、誘導多能性細胞は、(対象の)任意の成体体細胞から取得され得る。例示的な体細胞には、血液由来の末梢血単核細胞 (PBMC)、または皮膚組織生検から取得された線維芽細胞が含まれる。
【0040】
本発明の方法は、本明細書に記載される幹細胞集団を液体担体と接触させることを含む。本発明の方法において、本明細書に記載される幹細胞集団を、輸送/貯蔵の前に担体と接触させることが想定される。加えて、またはその代わりに、幹細胞集団は、その回収後に担体と接触させる。どのように回収が行われ得るかは、本明細書の他所におよび実験の項に詳細に記載される。例えば、幹細胞集団は、その回収の約0分後、約1分後、約5分後、約10分後、約30分後、約45分後、約60分後、またはそれより長い時間の後に、担体と接触させることができる。
【0041】
回収は、幹細胞集団を培養液から、例えばPTT-6から分離することを含み得る。そのような分離に適切な技法は、当業者に公知である。例えば、分離は、培養液中の幹細胞を遠心分離し、かつ培養液をデカントすることによって行うことができる。
【0042】
幹細胞集団は、
i) トロロックス、
ii) Na+
iii) K+
iv) Cl-
v) H2PO4 -
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む液体担体と接触させる。
【0043】
「トロロックス」は、CAS番号53188-07-1の6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸を意味する。これはビタミンEの水溶性類似体であり、酸化ストレスまたは損傷を軽減することが示唆されている。図19は、Tocrisから入手可能なトロロックスのデータシートを示す。これはまたSigma Aldrichからも市販されている(製品番号:238813)。
【0044】
NaおよびCl-はいずれも周知のイオンである。当業者は、これらを得る方法を知っている。例えば、これらのイオンはNaCl塩として担体に添加してもよい。GMP品質のNaClは、Sigma Aldrichから入手することができる。図20は、Sigma Aldrichから入手可能なNaClのデータシートを示す。
【0045】
KおよびH2PO4 (リン酸二水素)もまた、当業者に周知である。これは、例えばSigma Aldrichから入手可能なKH2PO4として使用することができる。図21は、Sigma Aldrichから入手可能なKH2PO4のデータシートを示す。
【0046】
4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(CAS番号7365-45-9)とも命名されているHEPESは、双性イオン性有機化学緩衝剤として一般的に使用される。当業者はまた、HEPESをどこで入手すべきかを知っており、それは市販されている。例えば、Sigma Aldrichからこれを入手することができる;図22に示される対応するデータシート。
【0047】
ラクトビオナートは、ラクトビオン酸のカルボン酸陰イオンである。ラクトビオン酸(4-O-β-ガラクトピラノシル-D-グルコン酸)は、糖酸である。ラクトビオナートは、異なる方法で使用することができる。ラクトビオン酸カリウムとして使用される場合、それは、例えば浸透圧支持を提供し、細胞膨張を防ぐことができ、ナトリウムと組み合わせた場合には、それは保存機能を有し得る。あるいは、ラクトビオン酸のミネラル塩を、ミネラル補給のために使用することができる。薬学的適用のために、多くの場合、抗生物質エリスロマイシンはとりわけエリスロマイシンラクトビオナートとして使用することができる。当業者はまた、ラクトビオナート、例えばラクトビオン酸ナトリウム(Cas番号:27297-39-8)をどこで入手すべきかを知っており、すなわち例えばCOMBI-BLOCKSからであり、図23の製品シートを参照されたい。
【0048】
D-Glc-(1→2)-β-D-Fru、α-D-グルコピラノシルβ-D-フラクトフラノシド、β-D-フラクトフラノシル-α-D-グルコピラノシド、D(+)-サッカロース、または糖(CAS番号57-50-1)としても公知であるスクロースは、他の物質と同じく商業的に入手することができ、当業者は同様にそれをどこで購入すべきかを知っている。Sigma Aldrichからのスクロースの対応する製品シートを図24に示す。
【0049】
マンニトールは、糖アルコールの一種である(CAS登録番号:69-65-8)。当業者は、マンニトールを入手する方法を知っている。例えば、これはAvantorから入手することができる。それぞれの製品シートを図25に示す。
【0050】
グルコース(CAS番号:50-99-7)もまた当業者に周知であり、市販されている。Sigma Aldrichのからのそれぞれの製品シートを図26に示す。
【0051】
デキストランは、直鎖状α(1→6)結合グルコース単位およびα(1→3)結合開始枝から構成される分岐グルカンである。デキストランのサイズは、10,000~150,000 Kdの範囲である。デキストランは、体積増量剤、安定化剤、マトリックス構成成分、結合プラットフォーム、潤滑剤、および物理的構造構成成分などの多くの適用において使用される。本明細書に記載される担体中で使用されるデキストラン40(CAS番号:9004-54-0)は、典型的には、臓器移植用の新たな改良型保存溶液の開発において使用される。デキストラン40は、細胞の堅固性および細胞層を介する流動パラメータを決定するために使用することができる。デキストラン40はまた、コロイド血漿増量剤として使用することができる。デキストラン-40は市販されており、とりわけSigma Aldrichから入手することができる(図27に示される製品シート)。
【0052】
アデノシン(CAS番号58-61-7)は、β-N9-グリコシド結合を介してリボース糖分子(リボフラノース)部分に結合したアデニンの分子から構成されるプリンヌクレオシドである。アデノシンは、とりわけSigma-Aldrichから市販されている(対応する製品シートを図28に示す)。
【0053】
グルタチオンは、(2S)-2-アミノ-4-{[(1R)-1-[(カルボキシメチル)カルバモイル]-2-スルファニルエチル]カルバモイル}ブタン酸としても公知である。この構成成分は市販されており、とりわけSigma Aldrichから入手することができる(図29に示される対応する製品シート)。
【0054】
原則として、上記のi)~xiii)に列挙される物質を含む任意の液体担体を、本発明の方法において使用することができる。担体は液体担体である。したがって、溶液/懸濁液を形成するために、i)~xiii)に列挙される物質を液体中に溶解することが可能である。液体は、任意の適切な液体であってよい。例えば、液体は、培養液、水、緩衝液、または同様のものであってよい。
【0055】
担体は、さらなるpH緩衝剤、エネルギー基質、フリーラジカルスカベンジャー、および浸透圧/膠質安定化剤を付加的に含んでもよく‐これらはすべて当業者に公知である。さらに、液体担体は、無血清および/またはタンパク質不含であってよい。液体担体は、例えばDMSOなどの双極性非プロトン性溶媒を含まなくてよい。特に、液体担体は、WO2010/064054に記載される担体であってよい。担体は、HypoThermosol(商標)またはHypoThermosol(商標)-FRS (HTS-FRS) であってよい。HypoThermosol(商標)-FRS (HTS-FRS)は、STEMCELL Technologiesから購入することができる(図30に示されるそれぞれの製品シートに従う)。
【0056】
担体が輸送/貯蔵培地または賦形剤であることが、さらに想定される。輸送/貯蔵培地は天然培地であってよく、これは、本明細書に記載されるようなi)~xiii)に列挙される物質を付加的に含む、天然に存在する生体液のみからなる。培地はまた、本明細書に記載されるようなi)~xiii)に列挙される物質、ならびに(さらなる)栄養素(有機および無機の両方)、ビタミン、塩類、O2およびCO2気相、血清タンパク質、炭水化物、ならびに/または補因子の添加を含むものであってよい。特定の態様において、培地は無血清および/またはタンパク質不含である。
【0057】
担体はまた賦形剤であってもよい。「賦形剤」は、医薬品の有効成分と共に製剤化される物質である。本方法において、有効成分は幹細胞集団である。
【0058】
担体は、生体適合性足場またはマイクロキャリアをさらに含み得る。足場またはマイクロキャリアは、例えば、生分解性高分子物質、最も好ましくはポリ(D,L乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA) であってよい。あるいは、足場またはマイクロキャリアは、ポリ-L-ラクチド (PLLA)、コラーゲン、フィブロネクチン、グリコサミノグリカン (GAG)、フィブリン、デンプン、セルロース アラビノガラクタン(カラマツガム)、アルギン酸、寒天、カラギーナン、キチン、ヒアルロン酸、デキストラン、ジェランガム、プルラン、ヒドロキシアパタイト、ポリヒドロキシアルカン酸 (PHA)、ヒドロゲル、またはペプチドベースのナノ構造線維性足場などの他の自己集合性材料を含む物質を含む平滑構造、マクロ多孔性構造、または微孔性構造であってよい。
【0059】
原則として、任意の量の幹細胞を任意の量の液体担体と接触させることができる。これに関して、接触は、幹細胞集団を、約7000万個/ml、約6000万個/ml、約5000万個/ml、約4000万個/ml、約3000万個/ml、約2000万個/ml、約1000万個/ml、約500万個/ml、約400万個/ml、約300万個/ml、約200万個/ml、約100万個/ml、約50万個/ml、約10万個/ml、または1 mlの担体中に10万個未満の細胞の密度で懸濁することによって行うことができる。いくつかの態様において、接触は、幹細胞集団を約1000万個/担体1 mlの密度で懸濁することによって行われる。
【0060】
幹細胞集団を担体と接触させた後、担体と接触させた幹細胞は、約50 ml、約20 ml、約10 ml、約5 ml、約4 ml、約3 ml、約2 ml、約1 ml、約0.5 ml、約0.25 ml、または0.25 ml未満の担体の体積でバイアルに分取することができる。例えば、担体と接触させた幹細胞は、約1 mlの体積でバイアルに分取することができる。
【0061】
本発明の方法が解凍または凍結段階を含まないことが、さらに想定される。このことは、回収後に、幹細胞集団を凍結および解凍する必要なく、幹細胞集団を輸送/貯蔵することを含み得る。
【0062】
本明細書に記載される幹細胞集団を輸送/貯蔵する方法において使用される担体は、この目的に特に適している。この担体の1つの利点は、その中で輸送/貯蔵された実質的にすべての幹細胞が生存可能なままであることである。「生存細胞」とは、生存することができる細胞である。当業者は、生存細胞を検出する方法を知っている。1つのそのような方法は、色素トリパンブルーで細胞を染色することである。生存細胞はトリパンブルーでは陽性に染色されない。
【0063】
これに関して、本発明の方法では、輸送/貯蔵前の生存幹細胞の数/量と比較して、集団の幹細胞の多くても約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、または約10%未満が輸送/貯蔵中に死滅する可能性がある。
【0064】
本発明の方法はまた、幹細胞集団が、輸送/貯蔵後に任意の細胞直径を有することを企図する。当業者は、細胞の直径を測定する方法を知っている。例えば、細胞のサイズ/直径は、顕微鏡画像を撮影し、二次ソフトウェアを使用して細胞の直径を測定することによって決定することができる。幹細胞集団中の幹細胞の大部分は、したがって輸送/貯蔵後に約9μm~約20μmの細胞直径を有し得る。幹細胞集団中の幹細胞の大部分が、輸送後に約12μm~約16μmの細胞直径を有することもまた想定される。
【0065】
本明細書に記載される担体中で輸送/貯蔵された幹細胞は、生存幹細胞と同じタンパク質/因子を分泌する。例えば、本発明の方法は、輸送/貯蔵後に、(間葉系)幹細胞集団が輸送/貯蔵前とほぼ同量のTGFベータ1を分泌し得ることを企図する。TGFベータ1(トランスフォーミング増殖因子ベータ、TGF-β1)は、当業者に公知であり、SEQ ID NO. 7に示される配列を含み得る。加えて、またはその代わりに、輸送/貯蔵後に、(間葉系)幹細胞集団は、輸送/貯蔵前とほぼ同量のVEGF(血管内皮増殖因子)、PDGF-AA(血小板由来増殖因子サブユニットAA)、Ang-1(アンジオゲニン-1)、および/またはHGF(肝細胞増殖因子)を分泌し得る。VEGF、PDGF-AA、Ang-1、および/またはHGFはすべて、創傷治癒へのそれらの関与に関して当業者に公知である。特に、VEGFは、SEQ ID NO. 8に示される配列を含み得、PDGF-AAは、SEQ ID NO. 9に示される配列を有し得、Ang-1は、SEQ ID NO. 10に示される配列を有し得、一方HGFは、SEQ ID NO. 11に示される配列を有し得る。加えて、またはその代わりに、PDGF-BBおよび/またはIL-10は、輸送前および/または輸送後に本質的に検出されない。PDGF-BB(血小板由来増殖因子サブユニットBB)および/またはIL-10(インターロイキン-10)はいずれもまた、当業者に公知である。PDGF-BBは、SEQ ID NO. 12に示される配列を含み得、一方IL-10は、SEQ ID NO: 13に示される配列を含み得る。これらの因子の分泌は、任意の適切な方法で、例えば、幹細胞が担体中に分泌するタンパク質(例えば、PDGF-AA、PDGF-BB、VEGF、IL-10、Ang-1、HGF、またはTGFβ1)の量を測定することによって、決定することができる。タンパク質の量は、例えばFLEXMAP 3Dシステム(Luminex Corporation、Austin, Texas, USA)などのシステムを使用して、自動化様式で市販の抗体/免疫測定法によって測定することができる。これに関連して、タンパク質アンジオポエチン1 (Ang-1)、TGF-β1、VEGF、およびHGFの創傷治癒過程への関与が当業者に公知であることが留意される。アンジオポエチン1の創傷治癒への関与については、例えば、Li et al. Stem Cell Research & Therapy 2013, 4:113 「Mesenchymal stem cells modified with angiopoietin-1 gene promote wound healing」を参照されたい。肝細胞増殖因子 (HGF) の創傷治癒、具体的には慢性/非治癒性創傷の治癒への関与については、例えば、Yoshida et al., 「Neutralization of Hepatocyte Growth Factor Leads to Retarded Cutaneous Wound Healing Associated with Decreased Neovascularization and Granulation Tissue FormationJ. Invest. Dermatol. 120:335-343, 2003、 Li, Jin-Feng et al. 「HGF Accelerates Wound Healing by Promoting the Dedifferentiation of Epidermal Cells through βl-Integrin/ILK Pathway.」 BioMed Research International 2013 (2013):470418、または Conway et al, 「Hepatocyte growth factor regulation: An integral part of why wounds become chronic」. Wound Rep Reg (2007) 15 683-692を参照されたい。血管内皮成長因子 (VEGF) の創傷治癒、具体的には慢性/非治癒性創傷の治癒への関与については、例えば、Froget et al., Eur. Cytokine Netw., Vol. 14, March 2003, 60-64、またはBao et al., 「The Role of Vascular Endothelial Growth Factor in Wound Healing」 J Surg Res. 2009 May 15; 153(2): 347-358を参照されたい。
【0066】
トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3を含む)の創傷治癒、具体的には慢性/非治癒性創傷の治癒への関与については、例えば、Ramirez et al.「The Role of TGFb Signaling in Wound Epithelialization」 Advances In Wound Care, Volume 3, Number 7, 2013, 482-491、またはPakyari et al., Critical Role of Transforming Growth Factor Beta in Different Phases of Wound Healing, Advances In Wound Care, Volume 2, Number 5, 2012, 215-224を参照されたい。
【0067】
ここで本発明において使用される培養液に目を向けると、培養液は、間葉系臍帯ライニング幹細胞の単離または培養のために、最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、最終濃度約5~15% (v/v) のF12、最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および最終濃度約1~8% (v/v) のFBSを含み得る。本明細書で用いられる「% (v/v)」という値は、培養液の最終体積に対する個々の構成成分の体積を指す。これは、DMEMが例えば最終濃度約55~65% (v/v) で培養液中に存在するのであれば、1リットルの培養液が約550~650 ml DMEMを含有することを意味する。
【0068】
他の態様において、培養液は、最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含み得る。さらなる態様において、培養液は、最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含み得る。
【0069】
上記の構成成分に加えて、培養液は、間葉系臍帯ライニング幹細胞の培養に有利な補充物質を含み得る。本発明の培養液は、例えば上皮増殖因子 (EGF) を含み得る。存在する場合には、EGFは最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlで培養液中に存在し得る。これらの態様のいくつかにおいて、培養液は最終濃度約10 ng/mlのEGFを含み得る。
【0070】
培養液はまた、インスリンを含み得る。存在する場合には、インスリンは最終濃度約1μg/ml~10μg/mlで存在し得る。これらの態様のいくつかにおいて、培養液は最終濃度約5μg/mlのインスリンを含み得る。
【0071】
培養液は、以下の補充物質のうちの少なくとも1つをさらに含み得る:アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)。そのような態様において、培養液は、アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つすべてを含み得る。これらの態様において、培養液は、最終濃度約0.05~約0.1μg/mlのアデニン、最終濃度約1~約10μg/mlのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含み得る。
【0072】
1つの態様においては、本明細書において記載され使用される高度に精製された間葉系幹細胞集団を得るために、間葉系幹細胞をPTT6培地中で培養する。これに関連して、本明細書に記載されるPTT6培地は、最終体積500 mlの培養液を得るために、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. 最終濃度2.5% (v/v) に達するためのウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml
v. 最終濃度10 ng/mlのEGF
vi. 最終濃度5μg/mlのインスリン
vii. インスリン0.175 ml(最終濃度5μg/ml)
を混合することによって得られることが留意される。
【0073】
「DMEM」とは、1969年に開発され、基本培地イーグル (BME) の改変物であるダルベッコ改変イーグル培地を意味する(Lonzaから入手可能なDMEMのデータシートを示す図1を参照されたい)。最初のDMEM処方は1000 mg/Lのグルコースを含有し、胚性マウス細胞の培養について初めて報告された。それ以来DMEMは細胞培養のための標準的な培地となり、ほんの数例の供給業者を挙げると、ThermoFisher Scientific(カタログ番号11965-084)、Sigma Aldrich(カタログ番号D5546)、またはLonzaなどの、様々な供給源から市販されている。したがって、いかなる市販のDMEMも、本発明において使用することができる。好ましい態様において、本明細書で用いられるDMEMは、Lonzaからカタログ番号12-604Fで入手可能なDMEM培地である。この培地は、4.5 g/L グルコースおよびL-グルタミンが補充されているDMEMである。別の好ましい態様において、本明細書で用いられるDMEMは、Sigma Aldrichカタログ番号D5546のDMEM培地であり、これは1000 mg/L グルコースおよび炭酸水素ナトリウムを含有するが、L-グルタミンを含まない。
【0074】
「F12」培地とは、ハムF12培地を意味する。この培地もまた標準的な細胞培養液であり、ホルモンおよびトランスフェリンと組み合わせて血清と共に使用された場合に、幅広い種類の哺乳動物細胞およびハイブリドーマ細胞を培養できるように、当初設計された栄養混合物である(LonzaからのハムF12培地のデータシートを示す図2を参照されたい)。いかなる市販のハムF12培地(例えば、ほんの数例の供給業者を挙げると、ThermoFisher Scientific(カタログ番号11765-054)、Sigma Aldrich(カタログ番号N4888)、またはLonzaからのもの)も、本発明において使用することができる。好ましい態様では、LonzaからのハムF12培地が用いられる。
【0075】
「DMEM/F12」または「DMEM:F12」とは、DMEMとハムF12培養液の1:1混合物を意味する(LonzaからのDMEM: F12 (1:1) 培地のデータシートを示す図3を参照されたい)。DMEM/F12 (1:1) 培地は、多くの異なる哺乳動物細胞の増殖を支持するために広く使用されている基本培地であり、ThermoFisher Scientific(カタログ番号11330057)、Sigma Aldrich(カタログ番号D6421)、またはLonzaなどの様々な供給業者から市販されている。いかなる市販のDMEM:F12培地も、本発明において使用することができる。好ましい態様において、本明細書で用いられるDMEM:F12培地は、Lonzaからカタログ番号12-719Fで入手可能なDMEM/F12 (1:1)培地(L-グルタミン、15 mM HEPES、および3.151 g/Lグルコースを伴うDMEM: F12である)である。
【0076】
「M171」とは、正常ヒト乳腺上皮細胞の培養および増殖のための基本培地として開発された培養液171を意味する(Life Technologies CorporationからのM171培地のデータシートを示す図4を参照されたい)。この基本培地は広く使用されており、例えばThermoFisher ScientificまたはLife Technologies Corporation(カタログ番号M171500)などの供給業者から市販されている。いかなる市販のM171培地も、本発明において使用することができる。好ましい態様において、本明細書で用いられるM171培地は、Life Technologies Corporationからカタログ番号M171500で入手可能なM171培地である。
【0077】
「FBS」とは、ウシ胎仔血清(ウシ胎児血清とも称される)、すなわち、天然の血液凝固後に残存し、続いて遠心分離によっていかなる残存赤血球も除去された血液画分を意味する。ウシ胎仔血清は、非常に低レベルの抗体を有し、より多くの増殖因子を含有し、多くの異なる細胞培養適用における多用途性を可能にするという理由で、真核細胞のインビトロ細胞培養のために最も広く使用されている血清補充物質である。FBSは、その主眼が、適切な起源追跡管理、表示の真実性、ならびに適切な規格化および監視を通した血清および動物由来製品の安全性および安全使用であるInternational Serum Industry Association (ISIA) のメンバーから入手することが好ましい。ISIAメンバーであるFBSの供給業者には、少し記述するだけでも、Abattoir Basics Company、Animal Technologies Inc.、Biomin Biotechnologia LTDA、GE Healthcare、Gibco by Thermo Fisher Scientific、およびLife Science Productionが含まれる。現在好ましい態様において、FBSはGE Healthcareからカタログ番号A15-151で得られる。
【0078】
上記のように、本発明において使用される間葉系幹細胞集団を単離するための培養液を作製する方法は、最終体積500 mlの培養液を得るために、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. 最終濃度2.5% (v/v) に達するためのウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml
を混合する段階を含む。
【0079】
上記で説明したように、DMEM/F12培地は、DMEMとハムF12培地の1:1混合物である。したがって、DMEM/F12培地118 mlは、DMEM 59 mlおよびF12 59 mlを含有する。よって、培養液を作製するこの方法を用いた場合、全体積500 mlにおける最終濃度 (v/v) は以下の通りである:
‐DMEM:250 ml + 59 ml = 309 ml、309/500 = 61.8 % (v/v) に相当する。
‐M171:118 ml、118/500 = 23.6 % (v/v) に相当する。
‐F12:59 ml、59/500 = 11.8 % (v/v) に相当する。
【0080】
培養液を作製する本方法の態様は、
v. 最終EGF濃度10 ng/mlを達成するためのEGF保存溶液 (5μg/ml) 1 ml、および
vi. 最終インスリン濃度5μg/mlを達成するためのインスリン保存溶液 (14.28 mg/ml) 0.175 ml
を添加する段階をさらに含む。
【0081】
これらの態様において、これらの構成成分i~viの上記の体積が、最終体積499.675 mlの培養液をもたらすことが、本明細書において留意される。さらなる構成成分が培養液に添加されない場合、残りの0.325 ml(合計して500 mlの体積とするため)は、例えば、DMEM、M171、DMEM/F12、またはFBSのいずれかを意味する、構成成分i~ivのいずれかであってよい。あるいは、培養液の全体積が500 mlとなるように、EGFまたはインスリンの保存溶液の濃度を当然ながら調整することもできる。加えて、構成成分i~ivは、必ずしもそれらが列挙されている順に添加しなければならないわけではなく、本発明の培養液に達するように、任意の順序を用いてこれらの構成成分を混合することも当然ながら可能であることもまた留意される。このことは、例えば、M171とDMEM/F12を共に混合し、次いでDMEMおよびFBSと組み合わせて、本明細書に記載される最終濃度、すなわち、DMEMの最終濃度 約55~65% (v/v)、F12の最終濃度 約5~15% (v/v)、M171の最終濃度 約15~30% (v/v)、およびFBSの最終濃度 約1~8% (v/v) とすることができることを意味する。
【0082】
他の態様において、本方法は、補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの1つまたは複数を0.325 mlの体積でDMEMに添加し、それによって全体積500 mlの培養液とする段階をさらに含む。この態様において、DMEM中のこれらの補充物質の最終濃度は、以下の通りであってよい:
約0.05~0.1μg/mlのアデニン、例えば約0.025μg/mlのアデニン、
約1~10μg/mlのヒドロコルチゾン、
約0.5~5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)、例えば1.36 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)。
【0083】
上記の開示と一致して、本明細書で用いられる細胞培養液は、本明細書に記載される培地を作製する方法によって取得可能である、または得られる。
【0084】
加えて、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離する方法であって、本方法によって調製された培養液中で羊膜組織を培養する段階を含む方法が、本明細書に記載される。
【0085】
したがって、本発明はまた、
‐最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、
‐最終濃度約5~15% (v/v) のF12、
‐最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および
‐最終濃度約1~8% (v/v) のFBS
を含む細胞培養液(の使用)を対象にする。
【0086】
本明細書において記載される培養液のある特定の態様において、培地は、最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む。他の態様において、培養液は、最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含み得る。
【0087】
加えて、培養液は、最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlの上皮増殖因子 (EGF) をさらに含み得る。ある特定の態様において、培養液は最終濃度約10 ng/mlのEGFを含む。本明細書に記載される培養液は、最終濃度約1μg/ml~10μg/mlのインスリンをさらに含み得る。そのような態様において、培養液は最終濃度約5μg/mlのインスリンを含み得る。
【0088】
細胞培養液は、以下の補充物質のうちの少なくとも1つをさらに含み得る:アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) 。ある特定の態様において、培養液は、アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つすべてを含む。存在する場合には、培養液は、最終濃度約0.01~約0.1μg/mlアデニンもしくは約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約0.1~約10μg/mlヒドロコルチゾンもしくは約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含み得る。
【0089】
細胞培養液の態様において、本発明の細胞培養液500 mlは、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. ウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml(最終濃度2.5%)
を含む。さらなる態様において、細胞培養液は、
v. 最終濃度10 ng/mlのEGF、および
vi. 最終濃度5μg/mlのインスリン
をさらに含み得る。インスリンおよびEGFはいずれも、培養液の全体積が500 mlを超えないように、最適な保存溶液を用いて培養液に添加することができる。
【0090】
特定の例において、本発明において使用される培養液の構成成分i~viは、図5に示される構成成分であり、これは、それらが図5に示されるカタログ番号を用いて各製造業者から入手されることを意味する。図5に示されるような構成成分i~viを混合して得られる培地は、本明細書において「PTT-6」とも称される。これに関連して、任意の他の商業的供給業者の、構成成分i~vi、および抗生物質などの任意の他の成分が、本発明の培地を作製する上で使用され得ることが再度留意される。
【0091】
加えて、本発明の細胞培養液は、最終濃度約0.01~約0.1μg/mlアデニンもしくは約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約0.1~10μg/ml、約0.5~約10μg/ml、もしくは約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.1~約5 ng/mlもしくは約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含み得る。
【0092】
本明細書において記載される間葉系幹細胞集団を得るために、臍帯組織を、適切な数の(初代)間葉系臍帯ライニング幹細胞が組織から増殖するまで培養することができる。典型的な態様では、臍帯組織を、羊膜の間葉系幹細胞の細胞増殖が約70~約80%の集密度に達するまで培養する。本明細書において、「集密度」または「集密」という用語は、細胞培養の技術分野におけるその通常の意味で用いられ、細胞によって覆われた表面の割合を参照した、培養ディッシュまたはフラスコ中の接着細胞の数の推定値/指標を意味することが留意される。例えば、50パーセントの集密とは、表面のおよそ半分が覆われており、細胞が増殖する余地がなお存在することを意味する。100パーセントの集密とは、表面が細胞によって完全に覆われており、細胞が単層として増殖する余地が残されていないことを意味する。
【0093】
ひとたび適切な数の初代細胞(間葉系臍帯ライニング幹細胞)が組織外植片による臍帯ライニング組織から得られたならば、培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞を取り出す。そうすることによって、羊膜の(初代)単離間葉系幹細胞を含有するマスター細胞バンクを得ることができる。典型的には、間葉系幹細胞は接着細胞であるため、取り出しは標準的な酵素処理を用いて行われる。例えば、酵素処理は、国際米国特許出願2006/0078993、国際特許出願WO2006/019357、または国際特許出願WO2007/046775に記載されているようにトリプシン処理を含んでよく、これは、増殖している細胞をさらなる増大のためにトリプシン処理(0.125%トリプシン/0.05% EDTA)によって回収できることを意味する。回収された間葉系幹細胞が、例えばマスター細胞バンクを作製するために用いられる場合には、本明細書において以下に説明されるように、細胞を凍結保存し、さらなる使用のために貯蔵することもできる。
【0094】
ひとたび回収されたならば、間葉系幹細胞を継代培養用の培養容器に移すことができる。継代培養はまた、凍結された初代細胞から、すなわちマスター細胞バンクから開始することもできる。継代培養のために、任意の適切な量の細胞を、細胞培養プレートなどの培養容器中に播種することができる。間葉系幹細胞を、この目的のために、例えば約0.5×106細胞/ml~約5.0×106細胞/mlの濃度で、継代培養用の適切な培地(最も好都合には、培養液PTT-6)中に懸濁することができる。1つの態様では、細胞を、継代培養のために約1.0×106細胞/mlの濃度で懸濁する。継代培養は、単純な培養フラスコ中で培養することによって行うこともできるが、例えば、インキュベーター内で積み重ねることができる、CellStack(Corning、Corning, NY, USA)またはCellfactory(Nunc、Thermo Fisher Scientific Inc.の一部、Waltham, MA, USA)などの多層システム中で培養することによって行うこともできる。あるいは、継代培養はまた、バイオリアクターなどの閉鎖自己完結型システムで行うこともできる。様々なデザインのバイオリアクターが当業者に周知であり、例えば、平行平板、中空繊維、またはマイクロ流体バイオリアクターがある。例えば、Sensebe et al. 「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a review」、前記を参照されたい。市販の中空繊維バイオリアクターの実例は、例えば、臨床試験のための骨髄間葉系幹細胞の増大に使用されているQuantum(登録商標)細胞増殖システム (Terumo BCT, Inc) である(Hanley et al, Efficient Manufacturing of Therapeutic Mesenchymal Stromal Cells Using the Quantum Cell Expansion System, Cytotherapy. 2014 August ; 16(8): 1048-1058を参照されたい)。本発明の間葉系幹細胞集団の継代培養に使用され得る市販のバイオリアクターの別の例は、GE Heathcareから入手可能なXuri細胞増殖システムである。Quantum(登録商標)細胞増殖システムなどの自動化システムにおける間葉系幹細胞の培養は、治療適用のためのワーキング細胞バンクがGMP条件下で生成されるべきであり、多数の細胞が必要である場合に、特に有効である。
【0095】
本明細書において記載される間葉系臍帯ライニング幹細胞の継代培養は、PTT-6培地などの本明細書において記載される培養液中で行われる。よって、PTT-6などの培養液は、羊膜からの間葉系幹細胞の単離、および継代培養による単離初代細胞のその後の培養の両方のために使用され得る。継代培養についても同様に、間葉系幹細胞は、適切な数の細胞が増殖するまで培養することができる。例証的な態様において、間葉系幹細胞は、それらが約70~約80%の集密度に達するまで継代培養される。
【0096】
間葉系臍帯ライニング幹細胞の集団の単離/培養は、哺乳動物細胞を培養するための標準的な条件下で行われ得る。典型的には、間葉系臍帯ライニング幹細胞の集団を単離する本発明の方法は典型的に、その細胞の由来元の種の細胞を培養するために通常用いられる条件(温度、雰囲気)で行われる。例えば、ヒト臍帯組織および間葉系臍帯ライニング幹細胞はそれぞれ、通常は5% CO2を含む空気雰囲気中で37℃で培養される。これに関連して、間葉系細胞は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジ、サル、またはヒトなどの任意の哺乳動物種に由来してよく、1つの態様においてはヒト起源の間葉系幹細胞が好ましいことが留意される。
【0097】
ひとたび所望の/適切な数の間葉系臍帯ライニング幹細胞が継代培養から得られたならば、継代培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞を取り出すことにより、それらを回収することができる。間葉系幹細胞の回収は典型的には、この場合も同様に、細胞のトリプシン処理を含む酵素処理によって行われる。単離された間葉系幹細胞をその後収集し、直接使用するかまたはさらなる使用のために保存する。典型的に、保存は凍結保存によって行われる。「凍結保存」という用語は、本明細書においてその通常の意味で用いられて、間葉系幹細胞が、(典型的に)-80℃または-196℃(液体窒素の沸点)などの氷点下の温度まで冷却することによって保存される過程を表す。凍結保存は、当業者に公知のように行うことができ、臍帯の細胞中の氷晶の形成を遅らせる、ジメチルスルホキシド (DMSO) またはグリセロールなどの凍結保護剤の使用を含み得る。
【0098】
本明細書において記載される単離方法によって得られた間葉系臍帯ライニング幹細胞の単離された集団は、高度に明確でありかつ高度に均一である。本方法の典型的な態様において、単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、以下のマーカーを発現する:CD73、CD90、およびCD105。加えて、これらの態様において、単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、以下のマーカーの発現を欠き得る:CD34、CD45、およびHLA-DR。特定の態様において、単離された間葉系幹細胞集団の約97%もしくはそれ以上、約98%もしくはそれ以上、または約99%もしくはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105を発現しながら、CD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている。
【0099】
したがって、上記の開示と一致して、臍帯の羊膜から単離された間葉系幹細胞集団であって、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞は以下のマーカーの各々を発現する:CD73、CD90、およびCD105。好ましい態様において、単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73+、CD90+、かつCD105+であり、このことは、単離された細胞集団のこの割合が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現することを意味し(本出願の実験の項を参照されたい)、本明細書において使用され得る。加えて、単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、以下のマーカーの発現を欠き得る。特定の態様において、単離された間葉系幹細胞集団の約97%もしくはそれ以上、約98%もしくはそれ以上、または約99%もしくはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105を発現しながら、CD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている。臍帯の羊膜に由来する間葉系幹細胞のそのように高度に均一な集団は、2016年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/404,582号、および2017年10月5日に出願された同時係属中の米国特許出願第15/725,913号、および同様に2017年10月5日に出願された同時係属中のPCT出願PCT/SG2017/050500において初めて報告され、細胞療法に使用されるべき間葉系幹細胞の基準を満たす(実験の項、および例えばSensebe et al.「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a review」、前記もまた参照されたい)。これに関連して、この間葉系幹細胞集団は、本発明の単離方法によって得ることができるが、必要に応じて、細胞選別などの異なる方法によって得ることもできることが留意される。
【0100】
本明細書において記載される間葉系幹細胞を単離するための培養液を作製する方法は、最終体積500 mlの培養液を得るために、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. 最終濃度2.5% (v/v) に達するためのウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml
を混合する段階を含む。
【0101】
上記で説明したように、DMEM/F12培地は、DMEMとハムF12培養液の1:1混合物である。
【0102】
したがって、DMEM/F12培地118 mlは、DMEM 59 mlおよびF12 59 mlを含有する。よって、培養液を作製するこの方法を用いた場合、全体積500 mlにおける最終濃度 (v/v) は以下の通りである:
DMEM:250 ml + 59 ml = 309 ml、309/500 = 61.8 % (v/v) に相当する。
M171:118 ml、118/500 = 23.6 % (v/v) に相当する。
F12:59 ml、59/500 = 11.8 % (v/v) に相当する。
【0103】
本発明はまた、疾患を有する対象を処置する方法に関し、該方法は、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団を対象に局所投与する段階を含み、ここで、間葉系幹細胞集団は、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約96時間以内に投与される。
【0104】
同様に、本発明はまた、対象の疾患を処置する方法において使用するための本明細書に記載される間葉系幹細胞集団に関し、ここで、間葉系幹細胞集団は、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約96時間以内に局所投与される。
【0105】
処置されようとする対象は、任意の適切な対象であってよい。対象は、脊椎動物、より好ましくは哺乳動物であってよい。哺乳動物には、家畜、競技用動物、ペット、霊長類、イヌ、ウマ、マウス、およびラットが含まれるが、これらに限定されない。哺乳動物はまた、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、マウス、ラット等であってもよい。したがって、1つの態様において、対象は脊椎動物である。対象はまた、ヒト対象であってもよい。したがって、対象は処置を必要とする対象であってよい。そういうものとして、対象は、本明細書の他所に記載される疾患に罹患している可能性がある。いくつかの態様において、対象は、慢性足部潰瘍を伴うI型またはII型糖尿病に罹患している。好ましくは、対象は、間葉系幹細胞集団に対するHLA抗体について陰性である。
【0106】
間葉系幹細胞集団は、任意の投与量で適用することができる。投与量は、治療的に有効であってよい。「治療的に有効な量/投与量」は、当業者に明らかなように、使用される細胞の活性、患者の体内での細胞の安定性、緩和されるべき状態の重症度、処置されようとする患者の年齢および感受性、有害事象、ならびに同様のものを含むがこれらに限定されない因子によって変動し得る。様々な因子が経時的に変化するにつれて、投与の量を調製することができる。
【0107】
間葉系幹細胞が適用される投与量はまた、単位投与量であってもよい。例えば、間葉系幹細胞集団は、約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞の単位投与量で適用することができる。特定の態様において、間葉系幹細胞集団は、約1000万個の細胞の単位投与量で適用される。
【0108】
間葉系幹細胞は、同一対象に対して数回適用することができる。例えば、幹細胞は、週に1回、2回、3回、またはそれ以上適用される。原則として、間葉系幹細胞の任意の単位投与量を、疾患を治癒または緩和するのに適した回数だけ適用することができる。例えば、間葉系幹細胞集団は、週に1回、2回、3回、またはそれ以上適用することができる。間葉系幹細胞集団はまた、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、またはそれ以上にわたって適用することができる。
【0109】
したがって、約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞の単位投与量が、週に1回または2回投与される。約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞の単位投与量を、3週間、4週間、もしくは5週間、もしくは6週間、もしくは7週間、もしくは8週間、もしくは10週間、またはそれ以上の週の期間にわたって、週に1回または2回投与することもできる。
【0110】
間葉系幹細胞集団が細胞約1000個/cm2~細胞約500万個/cm2の投与量で適用されることもまた、本発明の処置の方法によって企図される。ここで、cm2という表現は、幹細胞が適用される創傷/皮膚の面積を意味する。間葉系幹細胞集団が、約100,000個の細胞/cm2、300,000個の細胞/cm2、または500,000個の細胞/cm2の投与量で適用されることもまた想定される。間葉系幹細胞集団はまた、細胞約100,000個/cm2、細胞約300,000個/cm2、または細胞約500,000個/cm2の投与量で、約8週間にわたって週に2回適用することができる。
【0111】
間葉系幹細胞集団は、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約96時間以内に投与される。どのように回収が行われ得るかは、本明細書の他所に記載される。間葉系幹細胞集団は、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約72時間以内に、約48時間以内に、約24時間以内に、約12時間以内に、約6時間以内に、またはそれ未満で適用されることもまた可能である。回収時と適用時との間に、間葉系幹細胞集団は、本発明の輸送/貯蔵の方法によって輸送または貯蔵され得る。したがって、本出願の輸送/貯蔵の方法について記載される局面は、必要な変更を加えて、本発明の処置の方法に等しく関連する。
【0112】
本発明の処置の方法は、対象が罹患する疾患を緩和するのに役立つ。原則として、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団によって処置され得る任意の疾患がここでは意味される。特に、疾患は皮膚疾患または創傷であってよい。創傷は、任意の原因に、例えば、熱傷、咬傷、外傷、手術、または疾患に起因し得る。創傷はまた、糖尿病によっても生じ得る。したがって、創傷はまた糖尿病性創傷であってもよい。創傷はまた、糖尿病性足部潰瘍であってもよい。注目すべきことには、間葉系幹細胞集団を、例えば、熱傷または糖尿病創傷などの創傷上に直接配置してもよい(国際特許出願WO2007/046775を参照されたい)。
【0113】
本明細書に記載されるように、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団の回収と対象へのそれらの適用との間に、該細胞は、本明細書において規定される担体中で輸送/貯蔵することができる。したがって、対象を処置する本発明の方法はまた、間葉系幹細胞集団を対象に投与する前に、間葉系幹細胞集団を担体から分離する段階を含み得る。当業者は、担体から細胞の分離を行う方法を知っている。例えば、間葉系幹細胞集団の担体からの分離は、遠心分離を含み得る。加えて、またはその代わりに、間葉系幹細胞集団の担体からの分離は、シリンジによってバイアルから細胞集団を取り出す段階を含み得る。
【0114】
幹細胞を担体から分離した後、または間葉系幹細胞を回収した後、または任意の他の方法によって本明細書に記載される間葉系幹細胞集団を得た後、これらの細胞は対象に局所的に適用される。原則として、局所投与の任意の方法が本明細書において意味される。間葉系幹細胞集団の投与は、シリンジによって行うことができる。しかしながら、間葉系幹細胞を対象に適用する前に、間葉系幹細胞をクリーム、軟膏、ゲル、懸濁液、または任意の他の適切な物質中に接触させることも可能である。対象に適用した後の間葉系幹細胞集団は、例えばTegaderm(登録商標)ドレッシング材などのドレッシング材およびTegaderm(登録商標)ドレッシング材を覆うためのクレープ包帯によって、所定の位置に保持してもよい。細胞のより均一な分布のために、適用部位を優しくマッサージしてもよい。
【0115】
本発明はまた、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団の約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または細胞25万個未満の細胞を含む単位投与量に関する。
【0116】
単位投与量が、約1000万個、約900万個、約800万個、約700万個、約600万個、約500万個、約400万個、約300万個、約200万個、約100万個、約50万個、約25万個、または約10万個の細胞を含むこともまた想定される。好ましくは、単位投与量は約1000万個の細胞を含む。単位投与量が約1000個の細胞~約500万個の細胞を含むことがさらに想定される。単位投与量は、約100,000個の細胞、300,000個の細胞、または500,000個の細胞の投与量で適用することができる。本明細書に記載されるように、単位投与量は局所的に適用され得る。例えば、単位投与量は、1 cm2当たりに局所的に適用され得る。
【0117】
単位投与量は、週に1回、2回、3回、またはそれ以上適用することができる。例えば、単位投与量は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、またはそれ以上にわたって適用することができる。約100,000個の細胞、約300,000個の細胞、または約500,000個の細胞を含む単位投与量は、好ましくは1 cm2に対して、8週間にわたって週に2回適用することができる。
【0118】
単位投与量は、任意の適切な容器中に含まれ得る。例えば、単位投与量は1 mlバイアル中に含まれ得る。そのような場合、例えばバイアルの0.1 mlを対象に対して、好ましくは1 cm2当たりに適用することができる。単位投与量はあるいは、シリンジ中に含まれてもよい。
【0119】
本発明の単位投与量では、細胞は、本明細書において規定される液体担体と接触していてよい。この場合には、間葉系幹細胞は、投与前に担体から分離される。例えば、対象に投与する前に、細胞を遠心分離し、単離することができる。担体は、HypoThermosol(商標)またはHypothermosol(商標)-FRSなどの、本明細書に記載される任意の担体であってよい。
【0120】
本発明の処置の方法および単位投与量は、生存細胞の利用を含み得る。生存率がどのように試験され得るかは、本明細書の他所に記載される。
【0121】
本発明は、以下の非限定的な実験実施例によってさらに例証される。
【0122】
本明細書で用いられた配列を、以下の表1に示す。
【0123】
(表1)本明細書で用いられた配列
【実施例0124】
実験実施例
1. 間葉系幹細胞を単離する前の臍帯組織の凍結保存
臍帯組織(臍帯は、母親のインフォームドコンセントを得て供与された)を、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞をその後単離するために、以下のように処理した。
【0125】
1.1 臍帯組織試料の洗浄:
a. 外科用メスを保護カバーから外す。
b. 鉗子を用いて臍帯をしっかりと保持し、外科用メスを用いて臍帯を10 cm長の小片に切断する。未使用の臍帯は、元の組織カップに戻す。
c. 10 cm長の臍帯小片を新たな150 mm培養ディッシュに移す。150 mm培養ディッシュをカップの代わりに使用することもできる。
d. 150 mm培養ディッシュのカバーを、鉗子および外科用メスの置き場所として使用する。
e. 30 mlシリンジでPlasmalyte A(Baxter、カタログ# 2B2543Q)25 mlを取り出す。片手でシリンジを45°の角度に保持し、Plasmalyte Aを臍帯組織上に直接分注する。
f. 培養ディッシュをわずかな角度で保持しながら、30 mlシリンジおよび鈍針でPlasmalyte Aを除去する。
g. 使用済みのPlasmalyte Aを、廃物容器となる300 mlトランスファーバッグ中に収集し、それをバイオハザードゴミ箱中に処分する。
h. 必要に応じて各洗浄につき新たな培養ディッシュを用いて、洗浄手順を繰り返す。表面上の血塊がすべて除去されたことを確認する。組織の清浄化が必要である場合には、さらなるPlasmalyte Aを使用することができる。
i. 組織をラベル付きの新たな組織培養ディッシュに入れて、組織の切断を継続する。切断中に組織が乾燥しないように、20 mlのPlasmalyte Aをディッシュ中に入れる。
j. 臍帯を同等のおよそ1-cm切片になるよう切断し、合計で10個の切片とする。
k. 各1 cm切片を、切片当たりおよそ0.3 cm×0.3 cm~0.5 cm×0.5 cmのより小さな小片になるようさらに切断する。
l. ディッシュ中のPlasmalyte Aをすべて除去する。
m. 元のPlasmalyte Aバッグから30 mlシリンジでPlasmalyte A 25 mlを引き出しし、臍帯組織片上に直接分注する。
n. 培養ディッシュを斜めに保持して、組織の洗浄に使用したすべてのPlasmalyte Aを片側に収集し、シリンジおよび鈍針でそれを除去する。
o. 洗浄をもう一度繰り返す。いかなる血塊も残ってはならない。
【0126】
注記:臍帯を直ちに凍結しない場合には、凍結直前まで臍帯組織をPlasmalyte A中で維持する。
【0127】
1.2 臍帯組織の凍結保存:
a. 凍結保存溶液を調製する:
i. 60% Plasmalyte A、30%の5%ヒト血清アルブミン、および10%ジメチルスルホキシド (DMSO) からなる凍結溶液 50mlを調製する。
ii. 150 mlトランスファーバッグに「組織凍結溶液」のラベルを貼り、無菌技法を用いて血漿トランスファーセットをポートに取り付ける。
iii. 元のPlasmalyte Aバッグから30 mlシリンジでPlasmalyte A 30 mlを取り出し、溶液の作製日時と共に「組織凍結溶液」のラベルが貼られたトランスファーバッグ中に移す。
iv. 20 mlシリンジで15 mlの5%ヒト血清アルブミンを取り出し、それをラベル付きのトランスファーバッグ中に移す。
v. DMSO 5 mlをトランスファーバッグに添加する。
vi. 十分に混合し、凍結溶液の混合を記録する。
b. 凍結溶液を添加する前に、組織からPlasmalyte Aを除去する。
c. 60 mlシリンジを用いて、全50 mlの凍結溶液をシリンジ中に引き出し、臍帯組織を含む150 mm細胞培養ディッシュに凍結溶液およそ30 mlを添加する。鈍針をシリンジ上に取り付けて、それを無菌状態に保つ。
d. 組織および凍結溶液を含む培養ディッシュを10分間にわたって1分ごとに旋回させる。
e. 鉗子を用いて、ランダムに選択された切片8個を選び、それらを4本の4 mlクライオバイアルの各々に入れる。ランダムに選択された切片4個を選び、それらを1本の1.8 mlクライオバイアルに入れる。これらの切片は、血塊を含んではならない。
f. 臍帯組織を含む各クライオバイアルに、残っている凍結溶液を、4 mlチューブについては3.6 ml充填線まで、および1.8 ml Nuncバイアルについては1.8 ml線まで満たす。
g. Bactec Lytic/10 - Anaerobic/Fボトル1本およびBactec Pluc Aerobic/Fボトル1本に組織IDのラベルを貼る。
h. シリンジおよび鈍針で培養ディッシュから凍結溶液20 mlを取り出し、Bactecバイアルをアルコール綿で拭いた後、鈍針を18g針に交換し、好気性および嫌気性Bactecボトルにそれぞれ10 mlを接種する。
i. 制御速度フリーザーを起動する。
j. 制御速度フリーザーが完了した後、ユニットをさらなる使用時まで連続温度モニター付き液体窒素フリーザー中に置いておく。
【0128】
2. 臍帯組織からの間葉系臍帯ライニング幹細胞の単離
2.1. 臍帯組織からMSCを処理するための培地の調製:
a. PTT6(培養液/増殖培地) 500 mlを作製するため、以下のものを列挙されている順に添加する:
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM F12 118 ml
iv. FBS 12.5 ml(最終濃度2.5%)
v. EGF 1 ml(最終濃度10 ng/ml)
vi. インスリン0.175 ml(最終濃度5μg/ml)。
【0129】
構成成分i~viの上記の体積は、最終体積499.675 mlの培養液をもたらす。さらなる構成成分が培養液に添加されない場合、残りの0.325 ml(合計して500 mlの体積とするため)は、例えば、DMEM、M171、DMEM/F12、またはFBSのいずれかを意味する、構成成分i~ivのいずれかであってよい。あるいは、培養液の全体積が500 mlとなるように、EGFまたはインスリンの保存溶液の濃度を当然ながら調整することもできる。あるいは、ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンなどの抗生物質の保存溶液を、最終体積500 mlとなるように添加することもできる。補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの1つまたは複数を0.325 mlの体積で培養液に添加し、それによって全体積500 mlの培養液とすることも可能である。
【0130】
vii. ボトルに、培地の調製日、操作者のイニシャル、および「有効期限」という語句とそれに続く有効期限日と共に、「PTT6」のラベルを貼る。有効期限日は、構成成分のいずれかの最も早い有効期限日か、または調製日から1ヵ月後かの、いずれか早い方である。
【0131】
b. リンス培地(カルシウムおよびマグネシウム不含かつ5% FBS含有ハンクス緩衝塩類溶液 (HBSS))を作製するため、50 ml遠心管中のHBSS 47.5 mlにFBS 2.5 mlを添加する。チューブに、操作者のイニシャルおよび培地の作製日と共に、「リンス培地」のラベルを貼る。
c. Bactec Lytic/10 - Anaerobic/F (Becton Dickinson & Company) およびBactec Plus + Aerobic/F (Becton Dickinson & Company) を用いて、すべての培地を無菌性について試験する。調製済みの培地20 mlを各ボトルに注入する。
【0132】
2.2 MSC回収のための臍帯組織の解凍:
a. 操作者がクリーンルーム内で試料を処理する準備ができた時点で、解凍を開始する。バイアルが同じドナーに由来する場合を除いて、一度に2本以上のバイアルを解凍してはならない。
b. ウォーターバスを消毒剤および続いて70%イソプロパノールで拭き、これを滅菌水1 Lで満たす。ウォーターバスを36~38℃まで加熱する。
c. クリーンルーム内のバイオセーフティキャビネット下で、70%~90% PlasmaLyte Aからなるリンス培地10 mlを調製する。10 mlシリンジに取り付けられた0.2-μmシリンジフィルターでこの溶液を滅菌濾過し、使用時まで溶液を冷蔵して維持する。
d. 50 mlコニカルチューブに処理ラベルを貼る。
e. ウォーターバス温度が36~38℃であることを確認する。
f. 液体窒素貯蔵から組織のバイアルを取り出し、滅菌水1 Lで満たされた37℃ウォーターバス内で迅速に解凍する。Mr. Frosty Nalgene Cryo 1℃凍結容器のバイアルホルダーは、バイアルを所定の位置に収めて浮遊し、試料を解凍する場合に浮遊ラックとして使用することができる。
g. ウォーターバスからバイアルを取り出し、それらに70%イソプロパノール溶液をスプレーする。ウォーターバスからバイアルを引き上げるのに適したタイミングは、バイアル中に小さな氷が浮いているのが見える時である‐バイアルの内部温度が37℃未満であることを示唆する。
h. バイアルをパススルーに置き、クリーンルーム処理技術者に知らせる。
【0133】
2.3 組織処理の準備:
a. 臍帯組織処理は、環境モニター (EM) クリーンルーム内で行わなければならない。各シフトの終了時には、部屋およびフードの完全な清掃を行う。
b. バイオセーフティキャビネットを準備/清掃する。
c. バイオセーフティキャビネット内での作業中は、生物粒子計数を行う。
d. 包装の破損および有効期限日についてそれぞれチェックしながら、必要な物品をすべてバイオセーフティキャビネット内に集める。シリンジ、血清用ピペット、滅菌鉗子、外科用メス、組織プレート、および針を取り扱う場合には、滅菌生成物と接触するであろう表面に決して触れないようにする。注射筒、管類、プランジャーチップ、および/または針のキャップもしくはケースの外部のみ、安全に取り扱ってもよい。表面に触れるか、または表面が非滅菌表面に触れた場合には、物品を廃棄する。
e. 使用するすべての試薬および物品のロット番号および有効期限日(該当する場合)を記録する。
f. 70%アルコールで湿らせたリントフリーワイプでバイアルを清浄化してから、バイオセーフティキャビネット内に移動させることにより、解凍バイアルを受け取る。
g. シリンジに装着した吸引用針を用いて、バイアルからできるだけ多くの液体を抜き取る。組織を吸引しないようにする。
h. 滅菌鉗子を用いて、組織を滅菌100 mmペトリ皿に移す。
i. 組織断片に一定分割量5 mlのリンス培地を添加する。
j. 内容物を15~30秒間旋回させ、次いでピペットまたは吸引針付きシリンジでリンス培地を除去する。このリンス過程を2回繰り返す。
k. 組織が乾燥しないように、リンス培地 2 mLを組織に添加する。
【0134】
2.4. 組織からのMSC増殖の開始:
a. 6ウェルプレートの底に、MSCロット番号または臍帯組織IDおよび増殖の開始日と共に、「増殖1」のラベルを貼る。60 mm組織培養ディッシュを使用する場合には、ディッシュの底にグリッドを描いて、プレートを4つの区分に分割する。
b. 滅菌使い捨て鉗子を用いて、3×3 mm~5×5 mmの組織1個を各ウェルに入れる。60 mm組織培養ディッシュを使用する場合には、組織を各区分の中央に置いて組織を離しておく(互いに1 cm超)。
c. 各ウェルをPTT6 3 mlで満たす。
d. 30 mlシリンジに連結した吸引用針を用いて、組織をかろうじて覆う程度に十分な培地を抜き取る。プレートを傾けてはならない。吸引針でウェルの底を触れてはならない。
e. 倒立光学顕微鏡を用いて、細胞増殖を毎日観察する(24±6時間)。光学顕微鏡の代わりに、リアルタイム細胞培養イメージングシステムを使用してもよい。
f. 培地を毎日交換する。必ず使用前に培地を室温に平衡化する。
i. 培地を吸引除去する。
ii. PTT6 3 mlを添加する。
iii. 組織が培地中にかろうじて浸っている状態まで、吸引する。
g. 組織から細胞増殖が観察された時点で、プレートに「増殖2」のラベルを貼ることを除いて上記の4.a~4.eと同じ手順を用いて、組織を新たな6ウェルプレートに移す。PTT6 2 mlを各ウェルに添加することにより、「増殖1」プレート中の細胞増殖を維持する。集密度について毎日観察する。培地を2~3日ごとに置換する(必ず使用前に培地を室温に平衡化する)。
h. 「増殖2」プレート中で細胞増殖が観察された時点で、プレートに「増殖3」のラベルを貼ることを除いて段階4.a~4.eを繰り返す。PTT6 2 mlを各ウェルに添加することにより、「増殖2」プレート中の細胞増殖を維持する。集密度について毎日観察する。培地を2~3日ごとに置換する(必ず使用前に培地を室温に平衡化する)。
i. 「増殖3」プレート中で増殖が観察された時点で、組織を廃棄する。組織が非常に小さく、細胞増殖を妨げないようであれば、継代培養の際に組織を処分する。
j. 細胞が40~50%の集密度に達した時点で、細胞を毎日観察して過剰な増大を防ぐ。
k. 細胞が70~80%の集密度に達した時点で、細胞を継代培養する。細胞を80%の集密を超えるまで増大させてはならない。
【0135】
組織外植片のサイズが約1~3 mmであり、組織外植片/細胞の培養が175 mm角型培養ディッシュ中で行われる場合、外植片から回収される間葉系幹細胞の平均数は、典型的に細胞約4,000~6,000個/外植片である。よって、間葉系幹細胞を外植片48個から同時に増殖させる場合、約300,000個の細胞が回収時に得られ得る。外植片から収集されたこれら300,000個の間葉系幹細胞は次いで、以下の実施例2.5に記載されるように、175 cm2細胞培養フラスコにそのような300,000個の細胞を播種することにより、継代培養に使用することができる(これは継代1代目と称され得る)。次いでこの継代1代目から得られた間葉系幹細胞を用いて、以下の実施例2.5に記載されるように、再度175 cm2フラスコに播種し(継代2代目)、細胞を増大させることができる。継代1代目および継代2代目の両方から得られた細胞を凍結保存によって「バンク化」することができ、継代2代目後に得られた間葉系幹細胞がマスターセルバンクを表すと見なし、これは、以下の実施例2.7において説明されるように、例えばバイオリアクター中で間葉系幹細胞をさらに増大させるためのものとなる。
【0136】
2.5. 細胞培養ディッシュ中でのMSCの継代培養
a. バイオセーフティキャビネット内での作業中は、生物粒子計数を行う。使用前にすべての培地を室温に平衡化する。
b. 細胞増殖が約70~80%の集密度に達した時点で、細胞を継代培養する。
i. ペトリ皿からPTT6を除去する。
ii. カルシウムおよびマグネシウム不含HBSSでリンスする。
iii. 1×TrypLE-EDTA 0.2 mlを添加し、1~2分間旋回させる。
iv. ディッシュを30~45°傾けて、細胞が重力流により下方に移動できるようにする。プレートの側面を穏やかにタッピングして、脱離を促進させる。
v. PTT6 1 mlを添加する。ピペットで穏やかに上下させ、次いで細胞を15 ml遠心管に移す。各ウェルごとに清潔なピペットチップを使用する。全6ウェルからの細胞を単一の15 mlチューブ中にプールする。
vi. 1200 rpmで10分間遠心分離する。
vii. 上清を除去し、PTT6 5 mlで細胞を再懸濁する。
c. MSCを継代培養する。
i. 細胞懸濁液50μlを分取し、トリパンブルー排除アッセイによりTNCおよび生存率についてアッセイする。
ii. 血球計算盤を用いて細胞を計数する。細胞20~100個/区画を計数するよう予測する。数が100よりも多い場合には、元の試料を1:5に希釈し、血球計算盤を用いてトリパンブルー法を繰り返す。
iii. 生存細胞/mlおよび全生存細胞を計数する:
1. 生存細胞/ml = 生存細胞数×希釈係数×104
2. 全生存細胞 = 生存細胞数×希釈係数×全体積×104
iv. %生存率を計数する:
1. %生存率= 生存細胞数×100 /(生存細胞数 + 死細胞数)
v. 細胞懸濁液を1.0×106細胞/mlに希釈する:
1. 「X」体積 = 全生存細胞/106細胞/ml
2. 例えば、全生存細胞数が1.0×107個である場合;
3. 「X」= 107/106細胞/ml、すなわち10 mlであり、したがって、細胞懸濁液(5 mlである)に5 mlを添加することにより、全細胞体積を10 mlにする。
vi. 細胞懸濁液が106個/ml未満である場合には、各150 mmペトリ皿または175 cm2フラスコに細胞2×106個を播種するのに必要な体積を決定する。
1. 細胞2×106個に対する体積 = 細胞2×106個÷生存細胞/ml
2. 例えば、生存細胞/mlが8×105細胞/mlである場合、細胞2×106個÷8×105細胞/ml、すなわち2.5 mlが必要である。
vii. MSCマーカー解析のために0.5 mlを取り分けておく。
viii. 細胞2×106個をPTT6 30 mlで各150 mmペトリ皿または175 cm2フラスコに播種する。
ix. 接着、コロニー形成、集密について、3日ごとに観察する。細胞が40~50%の集密に達した時点で、細胞を毎日~2日ごとに観察して過剰な増大を防ぐ。細胞を80%の集密を超えるまで増大させてはならない。光学顕微鏡の代わりに、リアルタイム細胞培養モニタリングシステムを使用することができる。
x. 培地を2~3日ごとに置換する。
【0137】
2.6 MSC細胞の凍結保存
a. バイオセーフティキャビネット内での作業中は、生物粒子計数を行う。
b. 細胞が70~80%の集密に達した時点で、各150 mmペトリ皿または175 cm2フラスコに対して1×TrypLE-EDTA 2 mlを用いて細胞を脱離させる。
i. ペトリ皿からPTT6を除去する。
ii. カルシウムおよびマグネシウム不含のHBSSまたはPBS 5 mlで洗浄する。
iii. 1×TrypLE-EDTA 2 mlを添加し、1~2分間旋回させる。
iv. ディッシュを30~45°傾けて、細胞が重力流により下方に移動できるようにする。ペトリ皿の側面を穏やかにタッピングして、脱離の促進を助ける。
v. PTT6 10 mlを添加して、TrypLEを不活性化する。十分に混合して、細胞塊を解離させる。
vi. パスツールピペットを用いて、細胞を15 ml遠心管に移す。
vii. 1200 rpmで10分間遠心分離する。
viii. 培地を吸引し、PTT6 10 mlで再懸濁する。
ix. 50μlを分取し、上記のように全生存細胞数および%生存率を決定する。細胞が凝集し始める可能性があるため、細胞計数は15分以内に行う必要がある。
c. 凍結保存用の細胞を調製する。
i. 細胞懸濁培地および凍結保存培地を調製し、細胞を凍結させる。
【0138】
2.7. Quantumバイオリアクター (Terumo BTC, Inc.) 中でのMSCの継代培養(増大)
Quantumバイオリアクターを用いてMSCを増大させることも可能である。Quantumバイオリアクター中で増大させるための出発細胞数は、1回の実行当たり2000~3000万個の細胞であるべきである。1回の実行当たりの典型的な収量は、回収時に3~7億個のMSCである。バイオリアクターは、製造業者のプロトコールに従って操作される。そのようにして得られた間葉系幹細胞は典型的に凍結保存され(以下を参照されたい)、ワーキング細胞バンクとなる。
【0139】
材料/試薬:
1. Quantum増大セット
2. Quantum廃液バッグ
3. Quantum培地バッグ
4. Quantumインレットバッグ
5. PTT6
6. PBS
7. フィブロネクチン
8. TrypLE
9. 3 mlシリンジ
10. グルコース試験紙
11. 乳酸試験紙
12. 60 ml細胞培養プレートまたはその同等物
13. 医療等級5% CO2気体混合物
14. 50 mlコンビチップ
【0140】
装置:
1. バイオセーフティキャビネット
2. グルコース測定器(Bayer Healthcare/Ascensia Contour血糖測定器)
3. Lactate Plus (Nova Biomedical)
4. ヘッドを備えた蠕動ポンプ
5. 遠心分離機、Eppendorf 5810
6. 滅菌チューブコネクター
7. M4連続ピペッター
8. RFシーラー
【0141】
手順:
1. Quantumバイオリアクターの準備
a) Quantumバイオリアクターの事前準備
b) バイオリアクターのコーティング:
1) バイオセーフティキャビネット内でフィブロネクチン溶液を調製する。
1) 凍結乾燥フィブロネクチンを室温に順化させる(室温で≧15分)。
2) 滅菌蒸留水5 mlを添加する;旋回も撹拌もしてはならない。
3) 30分間かけてフィブロネクチンを溶液の状態にする。
4) 18g針を取り付けた10 mlシリンジを用いて、PBS 95 mlを含む細胞インレットバッグにフィブロネクチン溶液を移す。
2) バッグを「試薬」ラインに接続する。
3) 気泡をチェックする(気泡は、「IC空気の除去」または「EC空気の除去」を使用することにより、およびインレット供給源として「洗浄」を使用することにより、除去することができる)。
4) バイオリアクターのコーティングのプログラムを開くまたは設定する(図1、段階3~5)。
5) プログラムを実行する。
6) プログラムを実行してバイオリアクターをコーティングしている間に、PTT6培地4 Lの培地バッグを準備する。
7) 滅菌チューブコネクターを用いて、培地バッグをIC培地ラインに接続する。
8) バイオリアクターのコーティング段階が完了した時点で、RFシーラーを用いて、フィブロネクチン溶液に使用した細胞インレットバッグを取り外す。
c) 過剰なフィブロネクチンの洗浄除去
d) 培地によるバイオリアクターの馴化
2. Quantumバイオリアクター中での細胞の培養
a) 均一な懸濁液を用いた細胞の負荷および接着:
b) 細胞の栄養補給および培養
1) 培地流速を選択して細胞に栄養を補給する。
2) 乳酸およびグルコースについて毎日サンプリングする。
3) 乳酸レベルが上昇するにつれて、培地の流速を調整する。実際の最大の許容乳酸濃度は、細胞の由来元のフラスコ培養物によって規定される。十分なPTT6培地が培地バッグ中に入っているかを確認する。必要に応じて、PTT6培地バッグを新たなPTT6培地バッグと交換する。
4) 流速が所望の値に達した時点で、乳酸レベルを8~12時間ごとに測定する。乳酸レベルが低下しない場合、または乳酸レベルが上昇し続ける場合、細胞を回収する。
3. Quantumバイオリアクターからの細胞の回収
a) 乳酸濃度が低下しない時点で、乳酸およびグルコースについて最後にサンプリングした後、細胞を回収する。
b) 細胞の回収:
1) 滅菌チューブコネクターを用いて、TrypLE 100 mlで満たした細胞インレットバッグを「試薬」ラインに接続する。
2) 十分なPBSがPBSバッグ中に入っていることを確かめる。そうでない場合には、滅菌チューブコネクターを用いて、少なくとも1.7リットルのPBSが入った新たなバッグを「洗浄」ラインに接続する。
3) 回収プログラムを実行する。
4. 細胞の凍結保存
1) ひとたび細胞が回収されたならば、細胞を50 ml遠心管に移して、細胞をペレット化する。
2) 冷細胞懸濁溶液25 mlを用いて再懸濁する。SysmexまたはBiorad細胞計数器を用いて、細胞を計数する。細胞数レポートを各Quantum処理バッチ記録に添付する。
3) 細胞濃度を2×107個/mlに調整する。
4) 等体積の凍結保存溶液を添加し、十分に混合する(振盪もボルテックスもしてはならない)。
5) 連続ピペッターを用いて、凍結保存剤中の細胞懸濁液1 mlを各1.8 mlバイアル中に添加する。制御速度フリーザーを用いて、SOP D6.100 CB凍結保存に記載されているように、CRFプログラムを用いて凍結保存する。
6) バイアルを指定の液体窒素貯蔵スペース内に貯蔵する。
7) CRF実行レポートを各MSC P3-Quantum処理バッチ記録の用紙に添付する。
【0142】
3. 異なる培養液を用いて臍帯組織から単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞集団における幹細胞マーカー発現の解析
フローサイトメトリー実験を実施して、臍帯から単離された間葉系幹細胞を間葉系幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105の発現について解析した。
【0143】
これらの実験のために、実施例2に記載されるように、3種の異なる培養液中で臍帯組織を培養することにより、間葉系幹細胞を臍帯組織から単離し、続いて各培地中で間葉系幹細胞を継代培養した。
【0144】
これらの実験において、以下の3種の培養液を使用した:a) 10% FBS (v/v) を補充した90% (v/v/ DMEM、b) 90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる、米国特許出願US2008/0248005および対応する国際特許出願WO2007/046775に記載されている培養液PTT-4(WO2007/046775のパラグラフ [0183] を参照されたい)、ならびにc) 本明細書においてその組成が記載される、本発明の培養液PTT-6。このフローサイトメトリー解析において、臍帯ライニング間葉系幹細胞 (CLMC) 集団の2つの異なる試料を、使用した3種の培養液の各々について解析した。
【0145】
フローサイトメトリー解析のために以下のプロトコールを使用した。
【0146】
材料および方法
【0147】
手順
a) 臍帯ライニング膜からの細胞の単離および培養
1. 実施例2で説明されているように、外植片組織試料を細胞培養プレート内でインキュベートし、各培地中に浸漬させ、次いで37℃のCO2インキュベーター内でこれを維持した。
2. 3日ごとに培地を交換した。
3. 組織培養外植片からの細胞増殖を光学顕微鏡下でモニターした。
4. 約70%の集密の時点で、細胞をトリプシン処理(0.0125%トリプシン/0.05% EDTA)によってディッシュから分離し、フローサイトメトリー実験に使用した。
b) 実験用の細胞のトリプシン処理
1. 細胞培養プレートから培地を除去する。
2. FBSはトリプシンの酵素作用を妨げるため、滅菌1×PBSで穏やかにリンスして微量のFBSを除去する。
3. 1Xトリプシンを細胞培養プレートに添加し、37℃で3~5分間インキュベートする。
4. 顕微鏡下で細胞を観察して、それらが除去されたことを確実にする。FBSを含有する完全培地(10% FBSを含むDMEM)を添加することにより、トリプシンを中和する。
5. ピペットを使用して、培地中でプレートの壁に対して細胞をピペッティングすることによって細胞塊を破壊する。細胞懸濁液を収集し、50 ml遠心管に移す。
6. 滅菌1×PBSをプレートに添加しこれをリンスし、細胞懸濁液を同じ遠心管に収集する。
7. これを1800 rpmで10分間遠心分離する。
8. 上清を廃棄し、細胞ペレットをPBA培地で再懸濁する。
c) 細胞の計数
1. 好ましくは血球計算盤およびそのカバーガラスを70%エタノールで洗浄し、乾燥させてからキムワイプ(リントフリー紙)で拭くことにより、それらが清潔でかつ乾燥していることを確実にする。
2. 懸濁状の少量の細胞を微量遠心管に分取し、BSCフードから取り出す。
3. 等体積のトリパンブルーで懸濁状の細胞を染色する、例えば、懸濁液500μlに対してトリパンブルー500μlを添加する(希釈係数 = 2X、0.2%トリパンブルー溶液となる)。
4. トリパンブルーは毒性であり、非生存細胞の増加につながり、偽細胞数を生じるため、細胞をトリパンブルーに30分よりも長く曝露しないようにする。
5. 細胞懸濁液混合物20μlを血球計算盤の各チャンバーに添加し、光学顕微鏡下で見る。
a. 上部および下部チャンバー内の合計8つの区分について、血球計算盤の各区分内の生存細胞(明るい細胞;非生存細胞は容易にトリパンブルーを取り込み、したがって色が濃い)の数を計数する。全細胞数は、(平均細胞数/区分)×104細胞/mlとして与えられる。
d) 細胞の染色
i. 細胞を染色する前の準備
・それぞれ50,000個の細胞を含有する細胞懸濁液を、2つ組で3本のチューブ(CD73、CD90、CD105)および2本のチューブ(陰性対照)に分取する。
ii. 一次抗体 (Ab) による染色
・一次抗体1μl [0.5 mg/ml Ab] を細胞懸濁液100 ulに添加する、4℃で45分間インキュベートする。
・PBAで1 mlに合わせる。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・PBA 1 mlを添加し、ペレットを再懸濁する。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・PBA 100 ul中に再懸濁する。
iii. 二次Abによる染色‐暗下で
・二次抗体1 ul [0.5 mg/ml ab] を細胞懸濁液100 ulに添加する、4℃で30分間インキュベートする。
・PBAで1 mlに合わせる。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・PBA 1 mlを添加し、ペレットを再懸濁する。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・フローサイトメトリー解析のために、PBA 200~300 ul中に再懸濁する。
・BD FACS CANDOフローサイトメトリーで読み取るために、細胞をFACSチューブに移す。
【0148】
フローサイトメトリー解析の結果を図6a図6cに示す。図6aは、DMEM/10% FBS中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、図6bは、PTT-4中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、ならびに図6cは、PTT6-中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示す。図6aからわかるように、培養液培養としてDMEM/10% FBSを用いて単離された集団は、約75% CD73+細胞、78% CD90+細胞、および80% CD105+細胞(2つの実験の平均値)を有するのに対して、PTT-4培養液を用いて臍帯組織を単離/培養した後の(図6bを参照されたい)、CD73陽性、CD90陽性、およびCD105陽性である間葉系幹細胞の数は、2つの実験の平均値で約87%(CD73+細胞)、93% /CD90+細胞)、および86%(CD105+細胞)である。本発明のPTT-6培地中で培養することによって得られた間葉系幹細胞集団の純度は、3つすべてのマーカー(CD73、CD90、CD105)について少なくとも99.0%であり、このことは、この細胞集団の純度が、PTT-4培地またはDMEM/10% FBSを用いた培養の場合よりも有意に高いことを意味する。加えて、およびさらにより重要なことには、PTT-6中で培養することによって得られた間葉系幹細胞集団は、本質的に100%純粋でかつ明確な幹細胞集団である。これにより、本発明の幹細胞集団は、幹細胞ベースの療法の理想的な候補となる。したがって、間葉系臍帯ライニング幹細胞のこの集団は、そのような幹細胞ベースの治療アプローチの至適基準になり得る。
【0149】
図6に示される知見は、図7aおよび図7bに示されるフローサイトメトリー解析の結果によってさらに裏付けられる。図7aは、PTT-6培地中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞(臍帯の羊膜の間葉系幹細胞)の割合を示す。図7aに示されるように、間葉系幹細胞集団は97.5%の生存細胞を含有し、そのうちの100%がCD73、CD90、およびCD105の各々を発現するのに対して(「CD73+CD90+」および「CD73+CD105+」の列を参照されたい)、幹細胞集団の99.2%がCD45を発現せず、かつ幹細胞集団の100%がCD34およびHLA-DRを発現しなかった(「CD34-CD45-」および「CD34-HLA-DR-」の列を参照されたい)。したがって、PTT-6培地中で培養することによって得られた間葉系幹細胞集団は、間葉系幹細胞が細胞療法に使用されることを実現させるための基準(幹細胞集団の95%またはそれ以上がCD73、CD90、およびCD105を発現する一方で、幹細胞集団の98%またはそれ以上がCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、Sensebe et al. 「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a review」、前記を参照されたい)を満たす、本質的に100%純粋でかつ明確な幹細胞集団である。本明細書において、本発明の羊膜の間葉系幹細胞が標準的な培養条件においてプラスチックに対して接着性であり、インビトロで骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨芽細胞に分化し、米国特許第9,085,755号、米国特許第8,287,854号、またはWO2007/046775を参照されたい、したがって細胞療法における間葉系幹細胞の使用に関して一般に許容される基準を満たすことが留意される。
【0150】
図7bは、CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された骨髄間葉系幹細胞の割合を示す。図7bに示されるように、骨髄間葉系幹細胞集団は94.3%の生存細胞を含有し、そのうちの100%がCD73、CD90、およびCD105の各々を発現するのに対して(「CD73+CD90+」および「CD73+CD105+」の列を参照されたい)、骨髄幹細胞集団の62.8%のみがCD45の発現を欠き、かつ幹細胞集団の99.9%がCD34およびHLA-DRの発現を欠いていた(「CD34-CD45-」および「CD34-HLA-DR-」の列を参照されたい)。したがって、間葉系幹細胞の至適基準であると見なされる骨髄間葉系幹細胞は、本出願の(臍帯の羊膜の)間葉系幹細胞集団よりも、幹細胞マーカーに関して均一性/純度がはるかに低い。この知見から、本発明の幹細胞集団が、幹細胞ベースの療法の理想的な候補となり得、幹細胞ベースの治療アプローチの至適基準になり得ることもまた示される。
【0151】
本発明の間葉系幹細胞集団がHypoThermosol(商標)中で輸送/貯蔵され得ることを示す実験:
異なる貯蔵または輸送担体中の本明細書に記載される間葉系幹細胞の健常性および生存率を解析するために、2つの異なる担体を互いに比較した。すなわち、担体HypoThermosol(商標)-FRSを担体PlasmaLyte-Aと比較した。両方とも市販されている。HypoThermosol(商標)-FRSの製品シートは図30に示され、その組成は本明細書の他所に記載される。PlasmaLyte各100 mLは、526 mgの塩化ナトリウム、USP (NaCl);502 mgのグルコン酸ナトリウム (C6H11NaO7);368 mgの酢酸ナトリウム三水和物、USP (C2H3NaO2・3H2O);37 mgの塩化カリウム、USP (KCl);および30 mgの塩化マグネシウム、USP (MgCl2・6H2O) を含有する。PlasmaLyteは抗菌剤を含有しない。PlasmaLyteのpHは、水酸化ナトリウムで7.4(6.5~8.0)に調整される。
【0152】
比較のための実験設定を図8に示す。最初に、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団を細胞培養フラスコ中で増殖させた。生存間葉系幹細胞の数を計数し、次いで細胞200万個/バイアルを、PlasmaLyte-A中またはHypoThermosol(商標)-FRS中のいずれかで様々な期間貯蔵した。貯蔵後、1~5日目に毎日、≦50μlの試料で細胞を計数し(液体取り出し総量250μl)、細胞をトリパンブルーで染色することにより生存率を調べた。さらに、1日目、3日目、および5日目に、≦80μlの試料を採取し解析した。加えて、上清を得て凍結した。次いで、PDGF-AA、PDGF-BB、VEGF、IL-10、Ang-1、HGF、およびTGFβ1を、FLEXMAP 3Dシステムにより測定した。
【0153】
図9は生存率データを要約する。左側のグラフからわかるように、HypoThermosol(商標)中での貯蔵の7日後に、貯蔵を開始した全細胞(約95%)の73%がなお生存可能であった。それに反して、PlasmaLyte-A中での7日間の貯蔵後には、貯蔵を開始した全細胞(約94%)の42%のみがなお生存可能であった。計数はすべて、互いに10%以内である2つ組の読み取り値に基づいた(SOP CR D2.600.1に従う)。計数中、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された細胞は、滑らかでかつ明確な輪郭を有して、著しくより小さかった。対照的に、Plasmalyte-A中の細胞は様々なサイズで出現した。HypoThermosol(商標)は、1週間の期間(6日間)にわたって、膜の完全性およびおそらくは生存を著しく支持する。同様の結果はまた、右側のグラフにおいても示される。
【0154】
図10は、細胞の細胞直径を測定した際に得られた結果を示す。HypoThermosol(商標)中で維持された場合の本明細書に記載される間葉系幹細胞集団は、PlasmaLyteA中で維持された細胞と比較して、直径範囲がより狭い。比較は3日間の貯蔵後に行った。
【0155】
図11は、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、貯蔵の48時間後の上清中のTGFβ1濃度を示す。右側のグラフからわかるように、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合とPlasmaLyte-A中で貯蔵された場合とでは、細胞はほぼ同量のTGFβ1を分泌する。一般的に、時間経過と共に、分泌されるTGFβ1の量は減少した(右側のグラフ)。
【0156】
図12および13は対照実験を示す。ここでは、PDGF-BBおよびIL-10濃度を、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、48時間の上清中で測定した。PDGF-BBもIL-10も、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団によって通常分泌されないため、PDGF-BBもIL-10も、いずれの試料においても検出可能ではなかった。
【0157】
図14は、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、48時間の上清中のVEGF濃度を示す。右側のグラフからわかるように、細胞は、0日目に、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された場合にほぼ同量のVEGFを分泌する。1日目および5日目には、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合に、より多くのVEGFを分泌した。注目すべきことには、3日間貯蔵された場合、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合よりもHypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、より多くのVEGFを分泌した。したがって、貯蔵の3日後、HypoThermosol(商標)はPlasmaLyte-Aよりも優れている。より多くのVEGFが検出されればされるほど、培養物はより健常である。したがって、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合よりもHypoThermosol(商標)中での3日間の貯蔵後に、より多くのVEGFを分泌することによって、細胞はPlasmaLyte-A中よりもHypoThermosol(商標)中でより健常である。5日間の貯蔵以降は、PlasmaLyteがより有利な担体になると考えられるが、それは、5日の時点で、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞がより多くのVEGFを分泌したからである。一般的に、時間経過と共に、分泌されるVEGFの量は減少した(右側のグラフ)。
【0158】
図15は、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、48時間の上清中のPDGF-AA濃度を示す。右側のグラフからわかるように、細胞は、0日目に、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合と比較して、ほぼ同量のPDGF-AAを分泌する。1日目および5日目には、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合に、より多くのPDGF-AAを分泌した。注目すべきことには、3日間貯蔵された場合、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合よりもHypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、より多くのPDGF-AAを分泌した。したがって、貯蔵の3日後、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞よりもより健常である。5日間の貯蔵以降は、PlasmaLyteがより有利な担体になると考えられるが、それは、5日の時点で、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞がより多くのPDGF-AAを分泌したからである。一般的に、時間経過と共に、分泌されるPDGF-AAの量は減少した(右側のグラフ)。
【0159】
図16は、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、48時間の上清中のAng-1濃度を示す。右側のグラフからわかるように、細胞は、0日目および3日目に、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された場合にほぼ同量のAng-1を分泌する。5日目に、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合に、より多くのAng-1を分泌した。注目すべきことには、1日貯蔵された場合、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合よりもHypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、はるかにより多くのAng-1を分泌した。したがって、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合よりも、3日間の貯蔵までは少なくとも48時間にわたって、より健常であると考えられる。5日間の貯蔵以降は、PlasmaLyteがより有利な担体になると考えられるが、それは、この時点で、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞がより多くのAng-1を分泌したからである。一般的に、時間経過と共に、分泌されるAng-1の量は減少した(右側のグラフ)。
【0160】
図17は、HypoThermosol(商標)またはPlasmaLyte-A中で貯蔵された本明細書に記載される間葉系幹細胞集団からの、貯蔵の48時間後の上清中のHGF濃度を示す。右側のグラフからわかるように、細胞は、0日目に、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合と比較して、ほぼ同量のHGFを分泌する。3日目および5日目には、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合に、より多くのHGFを分泌した。注目すべきことには、1日貯蔵された場合、細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された場合よりもHypoThermosol(商標)中で貯蔵された場合に、はるかにより多くのHGFを分泌した。したがって、HypoThermosol(商標)中で貯蔵された細胞は、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞よりも、3日間の貯蔵までは少なくとも1日(48時間)の間、より健常であると考えられる。3日以降は、PlasmaLyte-Aがより有利な担体になると考えられるが、それは、3日および5日の時点で、PlasmaLyte-A中で貯蔵された細胞がより多くのHGFを分泌したからである。一般的に、時間経過と共に、分泌されるHGFの量は減少した(右側のグラフ)。
【0161】
上記のデータから要約すると、HypoThermosol(商標)中での本発明の間葉系幹細胞集団の貯蔵は、特に最初の3日間の貯蔵に関して、PlasmaLyte-A中での貯蔵よりも優れていると結論づけることができる。
【0162】
ブタの局所処置によって、本発明の間葉系幹細胞集団が創傷治癒特性を有することを示す実験:
10週齢の雌のヨークシャー・ランドレースブタ (50 kg) を用いて、前臨床試験もまた行った。処置は、シンガポールのSingHealth Experimental Medicine Centreで行われた。ブタを120 mg/kgストレプトゾトシンを用いて糖尿病にし、45日間回復させてから、それらの背中に5 cm×5 cmの全層創傷を6個作製した(図18を参照されたい)。ブタ (n = 2) を、1 cm2当たり105個の本明細書に記載されるヒト間葉系幹細胞集団で、週に2回、4週間にわたって処置した。2匹の対照ブタはPBSで処置した。術後0日目(PO 0日目)、および術後35日目まで7日ごとに、創傷を撮影した。創傷を、ImageJによって表面積サイズについて解析した。35日目までに、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団の添加により、PBS処置された対照創傷の12個中3個のみ (25%) と比較して、12個中10個の糖尿病性創傷 (83%) が閉鎖した。創傷治癒の速度は、対照動物における0.6 cm2/日と比較して、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団を用いて0.8 cm2/日であり、33%の改善であった。本試験の結果を図18に要約する。
【0163】
ブタモデルは自然発生的ではないが、皮膚構造はヒトに最も酷似している。このデータにより、本発明の臍帯ライニング間葉系幹細胞集団が、重篤な有害副作用のリスクなしに創傷治癒を改善することが示唆される。したがってこれらのデータにより、本明細書に記載されるヒト臍帯ライニング間葉系幹細胞集団が、炎症を抑制し、血管新生を促進することによって、慢性創傷の治癒を促進することができるという仮説が強く支持される。さらに、異種間葉系幹細胞をマウスまたはブタのいずれに使用しても、炎症の徴候は明らかに存在せず、したがって、同種間葉系幹細胞がヒトにおいて任意の重篤な有害作用をもたらす可能性は非常に低い。
【0164】
本明細書に記載される間葉系幹細胞がヒトの局所処置において有効であることを示す実験:
本明細書に記載される間葉系幹細胞がヒトの局所処置において有効であることを示す実験は、WO 2007/046775に記載されている。特に、WO 2007/046775の実施例23~26に説明されているように、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞 (UCMC) は、全層性熱傷(実施例23)、部分層創傷(実施例24)、非治癒性の放射線創傷(実施例25)、ならびに非治癒性の糖尿病性創傷および非治癒性の糖尿病性足創傷(実施例26)を緩和することができた。注目すべきことには、WO 2007/046775の実施例2に従って、間葉系幹細胞はPTT-4培地中に再懸濁された。
【0165】
注目すべきことには、図6bおよび図6cにおいて示されるように、PTT6(本明細書で使用された)培養液を使用した場合の培養によって得られた幹細胞集団は、PTT4培地(WO 2007/046775において使用された)を使用することによって得られた細胞の集団よりも、顕著により均一である。WO 2007/046775の実施例23~26では、PTT-4が間葉系幹細胞のための培地として使用されたため、PTT-6(本明細書で使用された)中での培養後に単離された、さらにより均一な間葉系幹細胞集団が、全層性熱傷、部分層創傷、非治癒性の放射線創傷、ならびに非治癒性の糖尿病性創傷および非治癒性の糖尿病性足創傷などの創傷治癒適用において同様の有益な効果を有することは明らかである。
【0166】
本明細書に記載される間葉系幹細胞がヒトの局所処置において有効であることを示す実験:
これは、Aurora, ColoradoのUniversity of Colorado Anschutz Medical Campusにおいて行われた、本明細書に記載されるように得られた間葉系幹細胞集団の漸増用量の計画試験である。本試験の目的は、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団(ヒト臍帯ライニング間葉系幹細胞)の安全な用量を決定することである。これは、3つの用量レベルのそれぞれに5名の被験者を登録して合計15名の被験者を対象とする、単一施設の用量漸増試験である。患者5名の第1群は、MSC 100,000個/cm2(皮膚/創傷領域)を8週間にわたって週に2回受ける。患者5名の第2群は、MSC 300,000個/cm2を8週間にわたって週に2回受ける。患者5名の第3群は、MSC 500,000個/cm2を8週間にわたって週に2回受ける。このスケジュールは、最高用量に到達するまで、または用量レベルにおける少なくとも2名の被験者が、本明細書において得られた間葉系幹細胞集団に関連していると疑われる≧グレード2のアレルギー反応を起こすか、または用量レベルにおける2名もしくはそれ以上の被験者が、本明細書に記載されるように得られた間葉系幹細胞集団の初回用量後14日以内に、予期せぬ、処置に関連した重篤な有害事象もしくは用量制限毒性を経験するまで、継続される。患者全員を、処置の30日後に、抗HLA抗体の産生および創傷閉鎖について評価する。現時点では、HLA抗体の産生が特定の用量の絶対的な禁忌であると見なしてはいないが、それは安全性の総合的な評価の要因となる。これは非盲検試験であり、すべての被験者が試験薬を服用し、すべての試験担当者はそれぞれの被験者が受ける用量を知ることになる。本試験の二次エンドポイントは、創傷の状態の有意な改善である。このエンドポイントは、Silhouette Wound Measurement and Documentation Systemを使用して測定された創傷閉鎖の速度、創傷面積が順調に閉鎖された割合、および創傷が完全に閉鎖された割合に基づいている。この装置は、この目的のためにFDAによって承認されている。
【0167】
被験者集団
少なくとも30日間の従来の治療の後でも治癒していない慢性足部潰瘍を伴うI型またはII型糖尿病患者で、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団に対するHLA抗体について陰性である患者。患者は、登録時に開始される最初の2週間は従来の創傷治処置を継続し、その時点で既に、30日間治癒していない糖尿病性足部潰瘍のスクリーニングを受けている。この時点で、創傷パラメータの写真記録および測定を開始する。最初の2週間は、従来のドレッシング材交換を週に2回行い、その後、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団を、指定された濃度で週に2回創傷に適用する。本明細書に記載される間葉系幹細胞集団で処置した創傷はまた、Tegaderm(登録商標)およびクレープドレッシング材で覆う。
【0168】
用量レベル
本試験の目的は、さらなる試験のために、本明細書に記載されるヒト臍帯ライニング間葉系幹細胞の安全な用量を決定することである。患者を、3つの用量:細胞100,000個/1 cm2の皮膚/創傷部位、細胞300,000個/cm2、または細胞500,000個/cm2のうちの1つで、8週間にわたって週に2回処置する。それぞれ細胞100,000個の用量は、HypoThermosol中に細胞100万個/mlを含むバイアルからの、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団0.1 mlを表す。
【0169】
投与計画
これは、本明細書に記載される間葉系幹細胞の漸増用量の安全性および忍容性試験である。本試験の目的は、さらなる試験のために、本明細書に記載されるヒト臍帯ライニング間葉系幹細胞の安全な用量を決定することである。3つの用量レベルのそれぞれに5名の被験者を登録する。患者5名の第1群は、MSC 100,000個/1 cm2の皮膚/創傷部位を8週間にわたって週に2回受ける。患者5名の第2群は、MSC 300,000個/cm2を8週間にわたって週に2回受ける。患者5名の第3群は、MSC 500,000個/cm2を8週間にわたって週に2回受ける。このスケジュールは、最高用量に到達するまで、または用量レベルにおける少なくとも2名の被験者が、本明細書に記載される間葉系幹細胞に関連していると疑われる≧グレード2のアレルギー反応を起こすか、または用量レベルにおける2名もしくはそれ以上の被験者が、本明細書に記載される間葉系幹細胞集団の初回用量後30日以内に、予期せぬ、処置に関連した重篤な有害事象もしくは用量制限毒性を経験するまで、継続される。患者全員を、処置の30日後に、抗HLA抗体の産生および創傷閉鎖の程度について評価する。現時点では、HLA抗体の産生が特定の用量の絶対的な禁忌であると見なしてはいないが、それは安全性の総合的な評価の要因となる。これは非盲検試験であり、すべての被験者が試験薬を服用し、すべての試験担当者はそれぞれの被験者が受ける用量を知ることになる。
【0170】
投与経路
本明細書に記載される間葉系幹細胞集団は、創傷清拭した糖尿病性足部潰瘍に局所適用し、Tegaderm(登録商標)包帯によって所定の位置に保持する。
【0171】
投与手順
必要に応じて適切な創傷清拭の後に、患者を腹臥位にし、罹患した脚を90°の角度で曲げる。本明細書に記載される間葉系幹細胞集団のこのバイアルを、細胞の均等な分布を確実にするために穏やかに旋回させる。次いで、滅菌シリンジを用いてバイアルから1 cm2当たり100,000個 (0.1 ml)~500,000個 (0.5 ml) の細胞を取り出し、それを創傷の中心に配置することにより、高くした足を処置する。次いで、創傷をTegaderm(登録商標)膜で密封し、細胞を均一に分布させるために優しくマッサージする。細胞が定着して付着するように、足を高い状態で5分間維持する。次いで、Tegaderm(登録商標)ドレッシング材を覆うように、足にクレープ包帯を巻く。
【0172】
本発明は、以下の項目によってさらに特徴づけられる。
1. i) トロロックス、
ii) Na+
iii) K+
iv) Cl-
v) H2PO4 -
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む液体担体と接触させた幹細胞集団を輸送する段階を含む、幹細胞集団を輸送する方法。
2. 輸送が約7日またはそれ未満にわたって行われる、項目1の方法。
3. 輸送が約6日、約5日、約4日、約3日、約2日、約1日、または約1日未満にわたって行われる、項目1または2の方法。
4. 輸送が約48時間もしくは約24時間またはそれ未満にわたって行われる、前記項目のいずれか一つの方法。
5. 輸送が約-5℃~約15℃の温度で行われる、前記項目のいずれか一つの方法。
6. 輸送が約2℃~約8℃の温度で行われる、前記項目のいずれか一つの方法。
7. 輸送が、約-5℃を超える、約-10℃を超える、約-15℃を超える、または約-20℃を超える温度で実施される、前記項目のいずれか一つの方法。
8. 幹細胞集団が、担体1 ml当たり約7000万個の細胞、担体1 ml当たり約6000万個の細胞、担体1 ml当たり約5000万個の細胞、担体1 ml当たり約4000万個の細胞、担体1 ml当たり約3000万個の細胞、担体1 ml当たり約2000万個の細胞、担体1 ml当たり約1000万個の細胞、担体1 ml当たり約500万個の細胞、担体1 ml当たり約400万個の細胞、担体1 ml当たり約300万個の細胞、担体1 ml当たり約200万個の細胞、担体1 ml当たり約100万個の細胞、担体1 ml当たり約50万個の細胞、担体1 ml当たり約10万個の細胞、または担体1 ml当たり細胞10万個未満の細胞の濃度で輸送される、前記項目のいずれか一つの方法。
9. 幹細胞集団が、担体1 ml当たり約1000万個の細胞から担体1 ml当たり約100万個の細胞の濃度で輸送される、項目8の方法。
10. 幹細胞集団が、胚性幹細胞集団、成体幹細胞集団、間葉系幹細胞集団、または誘導多能性幹細胞集団である、前記項目のいずれか一つの方法。
11. 幹細胞集団が、間葉系幹細胞集団である、前記項目のいずれか一つの方法。
12. 間葉系幹細胞集団が、臍帯の羊膜の単離された間葉系幹細胞集団である、前記項目のいずれか一つの方法。
13. 単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、項目11または12の方法。
14. 単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、項目13の方法
15. 単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)の発現を欠いている、項目11~14のいずれか一つの方法。
16. 幹細胞集団を、輸送前に担体と接触させる、前記項目のいずれか一つの方法。
17. 幹細胞集団を、その回収後に担体と接触させる、前記項目のいずれか一つの方法。
18. 幹細胞集団を、その回収の約0分後、約1分後、約5分後、約10分後、約30分後、約45分後、約60分後、またはそれより長い時間の後に、担体と接触させる、項目17の方法。
19. 回収が、幹細胞集団を培養液から分離することを含む、項目17または18の方法。
20. 分離が、培養液中の幹細胞を遠心分離し、かつ該培養液をデカントすることによって行われる、項目19の方法。
21. 接触が、幹細胞集団を、約7000万個/ml、約6000万個/ml、約5000万個/ml、約4000万個/ml、約3000万個/ml、約2000万個/ml、約1000万個/ml、約500万個/ml、約400万個/ml、約300万個/ml、約200万個/ml、約100万個/ml、約50万個/ml、約10万個/ml、または10万個未満の細胞の密度で担体中に懸濁することによって行われる、前記項目のいずれか一つの方法。
22. 接触が、幹細胞集団を約1000万個/mlの密度で担体中に懸濁することによって行われる、項目21の方法。
23. 担体と接触させた幹細胞が、約50 ml、約20 ml、約10 ml、約5 ml、約4 ml、約3 ml、約2 ml、約1 ml、約0.5 ml、約0.25 ml、または0.25 ml未満の担体の体積でバイアルに分取される、項目21または22の方法。
24. 担体と接触させた幹細胞が、約1 mlの量でバイアルに分取される、項目21または22の方法。
25. 担体が輸送培地または賦形剤である、前記項目のいずれか一つの方法。
26. 解凍または凍結段階を含まない、前記項目のいずれか一つの方法。
27. 担体が、双極性非プロトン性溶媒、特にDMSOを含まない、前記項目のいずれか一つの方法。
28. 輸送前の生存幹細胞の量と比較して、前記集団の幹細胞の多くても約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、または約10%未満が輸送中に死滅する、前記項目のいずれか一つの方法。
29. 幹細胞集団中の幹細胞の大部分が、輸送後に約9μm~約20μmの細胞直径を有する、前記項目のいずれか一つの方法。
30. 幹細胞集団中の幹細胞の大部分が、輸送後に約12μm~約16μmの細胞直径を有する、前記項目のいずれか一つの方法。
31. 輸送後に、幹細胞集団が輸送前とほぼ同量のTGFベータ-1を分泌する、前記項目のいずれか一つの方法。
32. PDGF-BBおよび/またはIL-10が、輸送前および/または輸送後に本質的に検出されない、前記項目のいずれか一つの方法。
33. 輸送後に、間葉系幹細胞集団が、輸送前とほぼ同量のVEGF、PDGF-AA、Ang-1、および/またはHGFを分泌する、前記項目のいずれか一つの方法。
34. 項目12~15のいずれか一項において規定される間葉系幹細胞集団を対象に局所投与する段階を含む、疾患を有する対象を処置する方法であって、間葉系幹細胞集団が、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約96時間以内に投与される、前記方法。
35. 間葉系幹細胞集団が、約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞の単位投与量で適用される、項目34の方法。
36. 間葉系幹細胞集団が、約1000万個の細胞の単位投与量で適用される、項目34または35の方法。
37. 間葉系幹細胞集団が、該間葉系幹細胞集団が回収された時点から約72時間以内に、約48時間以内に、約24時間以内に、約12時間以内に、約6時間以内に、またはそれ未満で適用される、項目34~36のいずれか一つの方法。
38. 疾患が皮膚疾患または創傷である、項目34~37のいずれか一つの方法。
39. 創傷が、熱傷、咬傷、外傷、手術、または疾患に起因する、項目38の方法。
40. 創傷が糖尿病に起因し、創傷が好ましくは糖尿病性創傷である、項目39の方法。
41. 創傷が糖尿病性足部潰瘍である、項目40の方法。
42. 約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞の単位投与量が、週に1回または2回投与される、項目34~41のいずれか一つの方法。
43. 約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞の単位投与量が、3週間、4週間、もしくは5週間、もしくは6週間、もしくは7週間、もしくは8週間、もしくは10週間、またはそれ以上の週の期間にわたって、週に1回または2回投与される、項目42の方法。
44. 間葉系幹細胞集団が局所的に適用され、かつフィルムまたは包帯で覆われる、項目34~43のいずれか一つの方法。
45. 間葉系幹細胞集団が細胞約1000個/cm2~細胞約500万個/cm2の投与量で適用される、項目34~44のいずれか一つの方法。
46. 間葉系幹細胞集団が、細胞約100,000個/cm2、細胞約300,000個/cm2、または細胞約500,000個/cm2の投与量で適用される、項目34~45のいずれか一つの方法。
47. 間葉系幹細胞集団が、週に1回、2回、またはそれ以上の回数で適用される、項目34~46のいずれか一つの方法。
48. 間葉系幹細胞集団が、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、またはそれ以上にわたって適用される、項目34~47のいずれか一つの方法。
49. 間葉系幹細胞集団が、細胞約100,000個/cm2、細胞約300,000個/cm2、または細胞約500,000個/cm2の投与量で、約8週間にわたって週に2回適用される、項目34~48のいずれか一つの方法。
50. 間葉系幹細胞集団を担体から分離した後、間葉系幹細胞集団が対象に投与される、項目34~49のいずれか一つの方法。
51. 間葉系幹細胞集団の担体からの分離が遠心分離を含む、項目50の方法。
52. 間葉系幹細胞集団の担体からの分離が、シリンジによってバイアルから細胞集団を取り出すことを含む、項目50および51の方法。
53. シリンジによって間葉系幹細胞集団を投与する段階を含む、項目34~52のいずれか一つの方法。
54. 項目12~15のいずれか一項において規定される間葉系幹細胞集団の約2000万個の細胞、約1500万個の細胞、約1000万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、約100万個の細胞、約50万個の細胞、約25万個の細胞、または25万個未満の細胞を含む、単位投与量。
55. 約1000万個、約900万個、約800万個、約700万個、約600万個、約500万個、約400万個、約300万個、約200万個、約100万個、約50万個、約25万個、または約10万個の細胞を含む、項目54の単位投与量。
56. 約1000万個の細胞を含む、項目54または55の単位投与量。
57. 約1000個の細胞~約500万個の細胞を含む、項目54~56のいずれか一つの単位投与量。
58.約100,000個の細胞、300,000個の細胞、または500,000個の細胞の投与量で適用される、項目54~57のいずれか一つの単位投与量。
59. 局所的に適用される、項目54~58のいずれか一つの単位投与量。
60. 1 cm2当たりに局所的に適用される、項目54~59のいずれか一つの単位投与量。
61. 週に1回、2回、3回、またはそれ以上の回数で適用される、項目54~60のいずれか一つの単位投与量。
62. 1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、またはそれ以上にわたって適用される、項目54~61のいずれか一つの単位投与量。
63. 項目のいずれか一つの約100,000個の細胞、約300,000個の細胞、または約500,000個の細胞を含む単位投与量が、8週間にわたって週に2回適用される、項目54~62のいずれか一つの単位投与量。
64. 1 mlバイアル中に含まれる、項目54~63のいずれか一つの単位投与量。
65. バイアルの0.1 mlが適用される、項目64の単位投与量。
66. 細胞が、項目1において規定される液体担体と接触している、項目54~65のいずれか一つの単位投与量。
67. 細胞が、対象への投与前に遠心分離され単離される、項目54~66のいずれか一つの単位投与量。
68. 担体がHypoThermosol(商標)である、項目54~67のいずれか一つの単位投与量。
69. 細胞が生存細胞である、項目34~53のいずれか一つの方法および項目54~68のいずれか一つの単位投与量。
70. 担体がHypoThermosolである、項目1~33のいずれか一つの方法。
71. 幹細胞集団を輸送するための液体担体の使用であって、該液体担体が、
i) トロロックス、
ii) Na+、
iii) K+、
iv) Cl-、
v) H2PO4-、
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii)グルタチオン
を含む、前記使用。
72. 輸送が約7日またはそれ未満にわたって行われる、項目71の使用。
73. 輸送が約6日、約5日、約4日、約3日、約2日、約1日、または約1日未満にわたって行われる、項目71または72の使用。
74. 輸送が約48時間もしくは約24時間またはそれ未満にわたって行われる、前記項目71~73のいずれか一つの使用。
75. 輸送が約-5℃~約15℃の温度で行われる、前記項目71~74のいずれか一つの使用。
76. 輸送が約2℃~約8℃の温度で行われる、前記項目71~75のいずれか一つの使用。
77. 輸送が、約-5℃を超える、約-10℃を超える、約-15℃を超える、または約-20℃を超える温度で実施される、前記項目71~76のいずれか一つの使用。
78. 幹細胞集団が、担体1 ml当たり約7000万個の細胞、担体1 ml当たり約6000万個の細胞、担体1 ml当たり約5000万個の細胞、担体1 ml当たり約4000万個の細胞、担体1 ml当たり約3000万個の細胞、担体1 ml当たり約2000万個の細胞、担体1 ml当たり約1000万個の細胞、担体1 ml当たり約500万個の細胞、担体1 ml当たり約400万個の細胞、担体1 ml当たり約300万個の細胞、担体1 ml当たり約200万個の細胞、担体1 ml当たり約100万個の細胞、担体1 ml当たり約50万個の細胞、担体1 ml当たり約10万個の細胞、または担体1 ml当たり10万個未満の細胞の濃度で輸送される、前記項目71~77のいずれか一つの使用。
79. 幹細胞集団が、担体1 ml当たり約1000万個の細胞から担体1 ml当たり約100万個の細胞の濃度で輸送される、項目78の使用。
80. 幹細胞集団が、胚性幹細胞集団、成体幹細胞集団、間葉系幹細胞集団、または誘導多能性幹細胞集団である、前記項目71~79のいずれか一つの使用。
81. 幹細胞集団が、間葉系幹細胞集団である、前記項目71~80のいずれか一つの使用。
82. 間葉系幹細胞集団が、臍帯の羊膜の単離された間葉系幹細胞集団である、前記項目71~81のいずれか一つの使用。
83. 単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、項目81または82の使用。
84. 単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、項目83の使用。
85. 単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)の発現を欠いている、項目81~84のいずれか一つの使用。
86. 幹細胞集団を、輸送前に担体と接触させる、前記項目71~85のいずれか一つの使用。
87. 幹細胞集団を、その回収後に担体と接触させる、前記項目71~86のいずれか一つの使用。
88. 幹細胞集団を、その回収の約0分後、約1分後、約5分後、約10分後、約30分後、約45分後、約60分後、またはそれより長い時間の後に、担体と接触させる、項目87の使用。
89. 回収が、幹細胞集団を培養液から分離することを含む、項目87または88の使用。
【0173】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に開示された本発明に対して種々の置き換えおよび修正を行うことができることは、当業者に容易に明白であろう。
【0174】
本明細書において言及されるすべての特許および出版物は、本発明が関連する当技術分野における当業者のレベルを示す。特許および出版物はすべて、個々の出版物が具体的にかつ個別に参照により組み入れられることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0175】
本明細書において例示的に記載された発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限の不在下で適切に行うことができる。したがって、例えば、「含む (comprising)」、「含む (including)」、「含有する」等の用語は、包括的にかつ非限定的に読み取られるものとする。さらに、本明細書において使用される用語および表現は、限定の用語ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用には、示されかつ説明された特徴またはその一部のいかなる等価物も除外する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明を好ましい態様および任意選択の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書において開示されているその中で具体化された発明の修正および変更が、当業者に委ねられてよいこと、ならびにそのような修正および変更が本発明の範囲内であると見なされることが理解されるべきである。本発明は、本明細書において幅広くかつ総称的に記載されている。総称的な開示の範囲内に入るより狭い種および亜属集団の各々もまた、本発明の一部を形成する。これには、除かれた題材が本明細書において具体的に挙げられているか否かにかかわらず、任意の主題を属から除外する条件付きのまたは負の限定を用いた本発明の総称的記載も含まれる。加えて、本発明の特徴または局面がマーカッシュ群の観点から記載されている場合、当業者は、本発明がまたそれにより、そのマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点からも記載されていることを認識するであろう。本発明のさらなる態様は、添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0176】
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、各値または範囲(pH、濃度、割合、モル濃度、アミノ酸の数、時間等)において、所与の値の5%まで、10%まで、15%まで、またはこれを含め20%までであってよい変動が存在し得ることを意味すると理解される。例えば、製剤が約5 mg/mlの化合物を含むとすると、これは、製剤が4~6 mg/ml、好ましくは4.25~5.75 mg/ml、より好ましくは4.5~5.5 mg/ml、およびさらにより好ましくは4.75~5.25 mg/mlを有してよく、最も好ましくは5 mg/mlであることを意味すると理解される。本明細書で用いられる場合、「X~Y」と規定される間隔は、「XとYとの間」と規定される間隔と同等と見なす。いずれの間隔も、上限およびまた下限を明確に含む。これは、例えば「5 mg/ml~10 mg/ml」または「5 mg/mlと10 mg/mlの間」という間隔は、5、6、7、8、9、および10 mg/ml、ならびに任意の所与の中間値の濃度を含むことを意味する。
【0177】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> CELLRESEARCH CORPORATION PTE. LTD.
<120> A METHOD OF TRANSPORTING MESENCHYMAL STEM CELLS BY MEANS OF A
TRANSPORTING SOLUTION AND A METHOD OF ADMINISTERING STEM CELLS
TO WOUNDS
<150> US 62/655,198
<151> 2018-04-09
<160> 13
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 574
<212> PRT
<213> human
<400> 1
Met Cys Pro Arg Ala Ala Arg Ala Pro Ala Thr Leu Leu Leu Ala Leu
1 5 10 15
Gly Ala Val Leu Trp Pro Ala Ala Gly Ala Trp Glu Leu Thr Ile Leu
20 25 30
His Thr Asn Asp Val His Ser Arg Leu Glu Gln Thr Ser Glu Asp Ser
35 40 45
Ser Lys Cys Val Asn Ala Ser Arg Cys Met Gly Gly Val Ala Arg Leu
50 55 60
Phe Thr Lys Val Gln Gln Ile Arg Arg Ala Glu Pro Asn Val Leu Leu
65 70 75 80
Leu Asp Ala Gly Asp Gln Tyr Gln Gly Thr Ile Trp Phe Thr Val Tyr
85 90 95
Lys Gly Ala Glu Val Ala His Phe Met Asn Ala Leu Arg Tyr Asp Ala
100 105 110
Met Ala Leu Gly Asn His Glu Phe Asp Asn Gly Val Glu Gly Leu Ile
115 120 125
Glu Pro Leu Leu Lys Glu Ala Lys Phe Pro Ile Leu Ser Ala Asn Ile
130 135 140
Lys Ala Lys Gly Pro Leu Ala Ser Gln Ile Ser Gly Leu Tyr Leu Pro
145 150 155 160
Tyr Lys Val Leu Pro Val Gly Asp Glu Val Val Gly Ile Val Gly Tyr
165 170 175
Thr Ser Lys Glu Thr Pro Phe Leu Ser Asn Pro Gly Thr Asn Leu Val
180 185 190
Phe Glu Asp Glu Ile Thr Ala Leu Gln Pro Glu Val Asp Lys Leu Lys
195 200 205
Thr Leu Asn Val Asn Lys Ile Ile Ala Leu Gly His Ser Gly Phe Glu
210 215 220
Met Asp Lys Leu Ile Ala Gln Lys Val Arg Gly Val Asp Val Val Val
225 230 235 240
Gly Gly His Ser Asn Thr Phe Leu Tyr Thr Gly Asn Pro Pro Ser Lys
245 250 255
Glu Val Pro Ala Gly Lys Tyr Pro Phe Ile Val Thr Ser Asp Asp Gly
260 265 270
Arg Lys Val Pro Val Val Gln Ala Tyr Ala Phe Gly Lys Tyr Leu Gly
275 280 285
Tyr Leu Lys Ile Glu Phe Asp Glu Arg Gly Asn Val Ile Ser Ser His
290 295 300
Gly Asn Pro Ile Leu Leu Asn Ser Ser Ile Pro Glu Asp Pro Ser Ile
305 310 315 320
Lys Ala Asp Ile Asn Lys Trp Arg Ile Lys Leu Asp Asn Tyr Ser Thr
325 330 335
Gln Glu Leu Gly Lys Thr Ile Val Tyr Leu Asp Gly Ser Ser Gln Ser
340 345 350
Cys Arg Phe Arg Glu Cys Asn Met Gly Asn Leu Ile Cys Asp Ala Met
355 360 365
Ile Asn Asn Asn Leu Arg His Thr Asp Glu Met Phe Trp Asn His Val
370 375 380
Ser Met Cys Ile Leu Asn Gly Gly Gly Ile Arg Ser Pro Ile Asp Glu
385 390 395 400
Arg Asn Asn Gly Thr Ile Thr Trp Glu Asn Leu Ala Ala Val Leu Pro
405 410 415
Phe Gly Gly Thr Phe Asp Leu Val Gln Leu Lys Gly Ser Thr Leu Lys
420 425 430
Lys Ala Phe Glu His Ser Val His Arg Tyr Gly Gln Ser Thr Gly Glu
435 440 445
Phe Leu Gln Val Gly Gly Ile His Val Val Tyr Asp Leu Ser Arg Lys
450 455 460
Pro Gly Asp Arg Val Val Lys Leu Asp Val Leu Cys Thr Lys Cys Arg
465 470 475 480
Val Pro Ser Tyr Asp Pro Leu Lys Met Asp Glu Val Tyr Lys Val Ile
485 490 495
Leu Pro Asn Phe Leu Ala Asn Gly Gly Asp Gly Phe Gln Met Ile Lys
500 505 510
Asp Glu Leu Leu Arg His Asp Ser Gly Asp Gln Asp Ile Asn Val Val
515 520 525
Ser Thr Tyr Ile Ser Lys Met Lys Val Ile Tyr Pro Ala Val Glu Gly
530 535 540
Arg Ile Lys Phe Ser Thr Gly Ser His Cys His Gly Ser Phe Ser Leu
545 550 555 560
Ile Phe Leu Ser Leu Trp Ala Val Ile Phe Val Leu Tyr Gln
565 570

<210> 2
<211> 161
<212> PRT
<213> human
<400> 2
Met Asn Leu Ala Ile Ser Ile Ala Leu Leu Leu Thr Val Leu Gln Val
1 5 10 15
Ser Arg Gly Gln Lys Val Thr Ser Leu Thr Ala Cys Leu Val Asp Gln
20 25 30
Ser Leu Arg Leu Asp Cys Arg His Glu Asn Thr Ser Ser Ser Pro Ile
35 40 45
Gln Tyr Glu Phe Ser Leu Thr Arg Glu Thr Lys Lys His Val Leu Phe
50 55 60
Gly Thr Val Gly Val Pro Glu His Thr Tyr Arg Ser Arg Thr Asn Phe
65 70 75 80
Thr Ser Lys Tyr Asn Met Lys Val Leu Tyr Leu Ser Ala Phe Thr Ser
85 90 95
Lys Asp Glu Gly Thr Tyr Thr Cys Ala Leu His His Ser Gly His Ser
100 105 110
Pro Pro Ile Ser Ser Gln Asn Val Thr Val Leu Arg Asp Lys Leu Val
115 120 125
Lys Cys Glu Gly Ile Ser Leu Leu Ala Gln Asn Thr Ser Trp Leu Leu
130 135 140
Leu Leu Leu Leu Ser Leu Ser Leu Leu Gln Ala Thr Asp Phe Met Ser
145 150 155 160
Leu

<210> 3
<211> 658
<212> PRT
<213> human
<400> 3
Met Asp Arg Gly Thr Leu Pro Leu Ala Val Ala Leu Leu Leu Ala Ser
1 5 10 15
Cys Ser Leu Ser Pro Thr Ser Leu Ala Glu Thr Val His Cys Asp Leu
20 25 30
Gln Pro Val Gly Pro Glu Arg Gly Glu Val Thr Tyr Thr Thr Ser Gln
35 40 45
Val Ser Lys Gly Cys Val Ala Gln Ala Pro Asn Ala Ile Leu Glu Val
50 55 60
His Val Leu Phe Leu Glu Phe Pro Thr Gly Pro Ser Gln Leu Glu Leu
65 70 75 80
Thr Leu Gln Ala Ser Lys Gln Asn Gly Thr Trp Pro Arg Glu Val Leu
85 90 95
Leu Val Leu Ser Val Asn Ser Ser Val Phe Leu His Leu Gln Ala Leu
100 105 110
Gly Ile Pro Leu His Leu Ala Tyr Asn Ser Ser Leu Val Thr Phe Gln
115 120 125
Glu Pro Pro Gly Val Asn Thr Thr Glu Leu Pro Ser Phe Pro Lys Thr
130 135 140
Gln Ile Leu Glu Trp Ala Ala Glu Arg Gly Pro Ile Thr Ser Ala Ala
145 150 155 160
Glu Leu Asn Asp Pro Gln Ser Ile Leu Leu Arg Leu Gly Gln Ala Gln
165 170 175
Gly Ser Leu Ser Phe Cys Met Leu Glu Ala Ser Gln Asp Met Gly Arg
180 185 190
Thr Leu Glu Trp Arg Pro Arg Thr Pro Ala Leu Val Arg Gly Cys His
195 200 205
Leu Glu Gly Val Ala Gly His Lys Glu Ala His Ile Leu Arg Val Leu
210 215 220
Pro Gly His Ser Ala Gly Pro Arg Thr Val Thr Val Lys Val Glu Leu
225 230 235 240
Ser Cys Ala Pro Gly Asp Leu Asp Ala Val Leu Ile Leu Gln Gly Pro
245 250 255
Pro Tyr Val Ser Trp Leu Ile Asp Ala Asn His Asn Met Gln Ile Trp
260 265 270
Thr Thr Gly Glu Tyr Ser Phe Lys Ile Phe Pro Glu Lys Asn Ile Arg
275 280 285
Gly Phe Lys Leu Pro Asp Thr Pro Gln Gly Leu Leu Gly Glu Ala Arg
290 295 300
Met Leu Asn Ala Ser Ile Val Ala Ser Phe Val Glu Leu Pro Leu Ala
305 310 315 320
Ser Ile Val Ser Leu His Ala Ser Ser Cys Gly Gly Arg Leu Gln Thr
325 330 335
Ser Pro Ala Pro Ile Gln Thr Thr Pro Pro Lys Asp Thr Cys Ser Pro
340 345 350
Glu Leu Leu Met Ser Leu Ile Gln Thr Lys Cys Ala Asp Asp Ala Met
355 360 365
Thr Leu Val Leu Lys Lys Glu Leu Val Ala His Leu Lys Cys Thr Ile
370 375 380
Thr Gly Leu Thr Phe Trp Asp Pro Ser Cys Glu Ala Glu Asp Arg Gly
385 390 395 400
Asp Lys Phe Val Leu Arg Ser Ala Tyr Ser Ser Cys Gly Met Gln Val
405 410 415
Ser Ala Ser Met Ile Ser Asn Glu Ala Val Val Asn Ile Leu Ser Ser
420 425 430
Ser Ser Pro Gln Arg Lys Lys Val His Cys Leu Asn Met Asp Ser Leu
435 440 445
Ser Phe Gln Leu Gly Leu Tyr Leu Ser Pro His Phe Leu Gln Ala Ser
450 455 460
Asn Thr Ile Glu Pro Gly Gln Gln Ser Phe Val Gln Val Arg Val Ser
465 470 475 480
Pro Ser Val Ser Glu Phe Leu Leu Gln Leu Asp Ser Cys His Leu Asp
485 490 495
Leu Gly Pro Glu Gly Gly Thr Val Glu Leu Ile Gln Gly Arg Ala Ala
500 505 510
Lys Gly Asn Cys Val Ser Leu Leu Ser Pro Ser Pro Glu Gly Asp Pro
515 520 525
Arg Phe Ser Phe Leu Leu His Phe Tyr Thr Val Pro Ile Pro Lys Thr
530 535 540
Gly Thr Leu Ser Cys Thr Val Ala Leu Arg Pro Lys Thr Gly Ser Gln
545 550 555 560
Asp Gln Glu Val His Arg Thr Val Phe Met Arg Leu Asn Ile Ile Ser
565 570 575
Pro Asp Leu Ser Gly Cys Thr Ser Lys Gly Leu Val Leu Pro Ala Val
580 585 590
Leu Gly Ile Thr Phe Gly Ala Phe Leu Ile Gly Ala Leu Leu Thr Ala
595 600 605
Ala Leu Trp Tyr Ile Tyr Ser His Thr Arg Ser Pro Ser Lys Arg Glu
610 615 620
Pro Val Val Ala Val Ala Ala Pro Ala Ser Ser Glu Ser Ser Ser Thr
625 630 635 640
Asn His Ser Ile Gly Ser Thr Gln Ser Thr Pro Cys Ser Thr Ser Ser
645 650 655
Met Ala

<210> 4
<211> 385
<212> PRT
<213> human
<400> 4
Met Leu Val Arg Arg Gly Ala Arg Ala Gly Pro Arg Met Pro Arg Gly
1 5 10 15
Trp Thr Ala Leu Cys Leu Leu Ser Leu Leu Pro Ser Gly Phe Met Ser
20 25 30
Leu Asp Asn Asn Gly Thr Ala Thr Pro Glu Leu Pro Thr Gln Gly Thr
35 40 45
Phe Ser Asn Val Ser Thr Asn Val Ser Tyr Gln Glu Thr Thr Thr Pro
50 55 60
Ser Thr Leu Gly Ser Thr Ser Leu His Pro Val Ser Gln His Gly Asn
65 70 75 80
Glu Ala Thr Thr Asn Ile Thr Glu Thr Thr Val Lys Phe Thr Ser Thr
85 90 95
Ser Val Ile Thr Ser Val Tyr Gly Asn Thr Asn Ser Ser Val Gln Ser
100 105 110
Gln Thr Ser Val Ile Ser Thr Val Phe Thr Thr Pro Ala Asn Val Ser
115 120 125
Thr Pro Glu Thr Thr Leu Lys Pro Ser Leu Ser Pro Gly Asn Val Ser
130 135 140
Asp Leu Ser Thr Thr Ser Thr Ser Leu Ala Thr Ser Pro Thr Lys Pro
145 150 155 160
Tyr Thr Ser Ser Ser Pro Ile Leu Ser Asp Ile Lys Ala Glu Ile Lys
165 170 175
Cys Ser Gly Ile Arg Glu Val Lys Leu Thr Gln Gly Ile Cys Leu Glu
180 185 190
Gln Asn Lys Thr Ser Ser Cys Ala Glu Phe Lys Lys Asp Arg Gly Glu
195 200 205
Gly Leu Ala Arg Val Leu Cys Gly Glu Glu Gln Ala Asp Ala Asp Ala
210 215 220
Gly Ala Gln Val Cys Ser Leu Leu Leu Ala Gln Ser Glu Val Arg Pro
225 230 235 240
Gln Cys Leu Leu Leu Val Leu Ala Asn Arg Thr Glu Ile Ser Ser Lys
245 250 255
Leu Gln Leu Met Lys Lys His Gln Ser Asp Leu Lys Lys Leu Gly Ile
260 265 270
Leu Asp Phe Thr Glu Gln Asp Val Ala Ser His Gln Ser Tyr Ser Gln
275 280 285
Lys Thr Leu Ile Ala Leu Val Thr Ser Gly Ala Leu Leu Ala Val Leu
290 295 300
Gly Ile Thr Gly Tyr Phe Leu Met Asn Arg Arg Ser Trp Ser Pro Thr
305 310 315 320
Gly Glu Arg Leu Gly Glu Asp Pro Tyr Tyr Thr Glu Asn Gly Gly Gly
325 330 335
Gln Gly Tyr Ser Ser Gly Pro Gly Thr Ser Pro Glu Ala Gln Gly Lys
340 345 350
Ala Ser Val Asn Arg Gly Ala Gln Glu Asn Gly Thr Gly Gln Ala Thr
355 360 365
Ser Arg Asn Gly His Ser Ala Arg Gln His Val Val Ala Asp Thr Glu
370 375 380
Leu
385

<210> 5
<211> 1304
<212> PRT
<213> human
<400> 5
Met Tyr Leu Trp Leu Lys Leu Leu Ala Phe Gly Phe Ala Phe Leu Asp
1 5 10 15
Thr Glu Val Phe Val Thr Gly Gln Ser Pro Thr Pro Ser Pro Thr Gly
20 25 30
Leu Thr Thr Ala Lys Met Pro Ser Val Pro Leu Ser Ser Asp Pro Leu
35 40 45
Pro Thr His Thr Thr Ala Phe Ser Pro Ala Ser Thr Phe Glu Arg Glu
50 55 60
Asn Asp Phe Ser Glu Thr Thr Thr Ser Leu Ser Pro Asp Asn Thr Ser
65 70 75 80
Thr Gln Val Ser Pro Asp Ser Leu Asp Asn Ala Ser Ala Phe Asn Thr
85 90 95
Thr Gly Val Ser Ser Val Gln Thr Pro His Leu Pro Thr His Ala Asp
100 105 110
Ser Gln Thr Pro Ser Ala Gly Thr Asp Thr Gln Thr Phe Ser Gly Ser
115 120 125
Ala Ala Asn Ala Lys Leu Asn Pro Thr Pro Gly Ser Asn Ala Ile Ser
130 135 140
Asp Val Pro Gly Glu Arg Ser Thr Ala Ser Thr Phe Pro Thr Asp Pro
145 150 155 160
Val Ser Pro Leu Thr Thr Thr Leu Ser Leu Ala His His Ser Ser Ala
165 170 175
Ala Leu Pro Ala Arg Thr Ser Asn Thr Thr Ile Thr Ala Asn Thr Ser
180 185 190
Asp Ala Tyr Leu Asn Ala Ser Glu Thr Thr Thr Leu Ser Pro Ser Gly
195 200 205
Ser Ala Val Ile Ser Thr Thr Thr Ile Ala Thr Thr Pro Ser Lys Pro
210 215 220
Thr Cys Asp Glu Lys Tyr Ala Asn Ile Thr Val Asp Tyr Leu Tyr Asn
225 230 235 240
Lys Glu Thr Lys Leu Phe Thr Ala Lys Leu Asn Val Asn Glu Asn Val
245 250 255
Glu Cys Gly Asn Asn Thr Cys Thr Asn Asn Glu Val His Asn Leu Thr
260 265 270
Glu Cys Lys Asn Ala Ser Val Ser Ile Ser His Asn Ser Cys Thr Ala
275 280 285
Pro Asp Lys Thr Leu Ile Leu Asp Val Pro Pro Gly Val Glu Lys Phe
290 295 300
Gln Leu His Asp Cys Thr Gln Val Glu Lys Ala Asp Thr Thr Ile Cys
305 310 315 320
Leu Lys Trp Lys Asn Ile Glu Thr Phe Thr Cys Asp Thr Gln Asn Ile
325 330 335
Thr Tyr Arg Phe Gln Cys Gly Asn Met Ile Phe Asp Asn Lys Glu Ile
340 345 350
Lys Leu Glu Asn Leu Glu Pro Glu His Glu Tyr Lys Cys Asp Ser Glu
355 360 365
Ile Leu Tyr Asn Asn His Lys Phe Thr Asn Ala Ser Lys Ile Ile Lys
370 375 380
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Leu Asn Leu Asp Lys Asn Leu Ile Lys Tyr Asp Leu Gln Asn Leu Lys
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Asn Ser Met His Val Lys Cys Arg Pro Pro Arg Asp Arg Asn Gly Pro
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<210> 11
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<213> human
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225 230 235 240
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275 280 285
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Trp Asn Gly Ile Pro Cys Gln Arg Trp Asp Ser Gln Tyr Pro His Glu
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340 345 350
Tyr Cys Arg Asn Pro Asp Gly Ser Glu Ser Pro Trp Cys Phe Thr Thr
355 360 365
Asp Pro Asn Ile Arg Val Gly Tyr Cys Ser Gln Ile Pro Asn Cys Asp
370 375 380
Met Ser His Gly Gln Asp Cys Tyr Arg Gly Asn Gly Lys Asn Tyr Met
385 390 395 400
Gly Asn Leu Ser Gln Thr Arg Ser Gly Leu Thr Cys Ser Met Trp Asp
405 410 415
Lys Asn Met Glu Asp Leu His Arg His Ile Phe Trp Glu Pro Asp Ala
420 425 430
Ser Lys Leu Asn Glu Asn Tyr Cys Arg Asn Pro Asp Asp Asp Ala His
435 440 445
Gly Pro Trp Cys Tyr Thr Gly Asn Pro Leu Ile Pro Trp Asp Tyr Cys
450 455 460
Pro Ile Ser Arg Cys Glu Gly Asp Thr Thr Pro Thr Ile Val Asn Leu
465 470 475 480
Asp His Pro Val Ile Ser Cys Ala Lys Thr Lys Gln Leu Arg Val Val
485 490 495
Asn Gly Ile Pro Thr Arg Thr Asn Ile Gly Trp Met Val Ser Leu Arg
500 505 510
Tyr Arg Asn Lys His Ile Cys Gly Gly Ser Leu Ile Lys Glu Ser Trp
515 520 525
Val Leu Thr Ala Arg Gln Cys Phe Pro Ser Arg Asp Leu Lys Asp Tyr
530 535 540
Glu Ala Trp Leu Gly Ile His Asp Val His Gly Arg Gly Asp Glu Lys
545 550 555 560
Cys Lys Gln Val Leu Asn Val Ser Gln Leu Val Tyr Gly Pro Glu Gly
565 570 575
Ser Asp Leu Val Leu Met Lys Leu Ala Arg Pro Ala Val Leu Asp Asp
580 585 590
Phe Val Ser Thr Ile Asp Leu Pro Asn Tyr Gly Cys Thr Ile Pro Glu
595 600 605
Lys Thr Ser Cys Ser Val Tyr Gly Trp Gly Tyr Thr Gly Leu Ile Asn
610 615 620
Tyr Asp Gly Leu Leu Arg Val Ala His Leu Tyr Ile Met Gly Asn Glu
625 630 635 640
Lys Cys Ser Gln His His Arg Gly Lys Val Thr Leu Asn Glu Ser Glu
645 650 655
Ile Cys Ala Gly Ala Glu Lys Ile Gly Ser Gly Pro Cys Glu Gly Asp
660 665 670
Tyr Gly Gly Pro Leu Val Cys Glu Gln His Lys Met Arg Met Val Leu
675 680 685
Gly Val Ile Val Pro Gly Arg Gly Cys Ala Ile Pro Asn Arg Pro Gly
690 695 700
Ile Phe Val Arg Val Ala Tyr Tyr Ala Lys Trp Ile His Lys Ile Ile
705 710 715 720
Leu Thr Tyr Lys Val Pro Gln Ser
725

<210> 12
<211> 241
<212> PRT
<213> human
<400> 12
Met Asn Arg Cys Trp Ala Leu Phe Leu Ser Leu Cys Cys Tyr Leu Arg
1 5 10 15
Leu Val Ser Ala Glu Gly Asp Pro Ile Pro Glu Glu Leu Tyr Glu Met
20 25 30
Leu Ser Asp His Ser Ile Arg Ser Phe Asp Asp Leu Gln Arg Leu Leu
35 40 45
His Gly Asp Pro Gly Glu Glu Asp Gly Ala Glu Leu Asp Leu Asn Met
50 55 60
Thr Arg Ser His Ser Gly Gly Glu Leu Glu Ser Leu Ala Arg Gly Arg
65 70 75 80
Arg Ser Leu Gly Ser Leu Thr Ile Ala Glu Pro Ala Met Ile Ala Glu
85 90 95
Cys Lys Thr Arg Thr Glu Val Phe Glu Ile Ser Arg Arg Leu Ile Asp
100 105 110
Arg Thr Asn Ala Asn Phe Leu Val Trp Pro Pro Cys Val Glu Val Gln
115 120 125
Arg Cys Ser Gly Cys Cys Asn Asn Arg Asn Val Gln Cys Arg Pro Thr
130 135 140
Gln Val Gln Leu Arg Pro Val Gln Val Arg Lys Ile Glu Ile Val Arg
145 150 155 160
Lys Lys Pro Ile Phe Lys Lys Ala Thr Val Thr Leu Glu Asp His Leu
165 170 175
Ala Cys Lys Cys Glu Thr Val Ala Ala Ala Arg Pro Val Thr Arg Ser
180 185 190
Pro Gly Gly Ser Gln Glu Gln Arg Ala Lys Thr Pro Gln Thr Arg Val
195 200 205
Thr Ile Arg Thr Val Arg Val Arg Arg Pro Pro Lys Gly Lys His Arg
210 215 220
Lys Phe Lys His Thr His Asp Lys Thr Ala Leu Lys Glu Thr Leu Gly
225 230 235 240
Ala

<210> 13
<211> 178
<212> PRT
<213> human
<400> 13
Met His Ser Ser Ala Leu Leu Cys Cys Leu Val Leu Leu Thr Gly Val
1 5 10 15
Arg Ala Ser Pro Gly Gln Gly Thr Gln Ser Glu Asn Ser Cys Thr His
20 25 30
Phe Pro Gly Asn Leu Pro Asn Met Leu Arg Asp Leu Arg Asp Ala Phe
35 40 45
Ser Arg Val Lys Thr Phe Phe Gln Met Lys Asp Gln Leu Asp Asn Leu
50 55 60
Leu Leu Lys Glu Ser Leu Leu Glu Asp Phe Lys Gly Tyr Leu Gly Cys
65 70 75 80
Gln Ala Leu Ser Glu Met Ile Gln Phe Tyr Leu Glu Glu Val Met Pro
85 90 95
Gln Ala Glu Asn Gln Asp Pro Asp Ile Lys Ala His Val Asn Ser Leu
100 105 110
Gly Glu Asn Leu Lys Thr Leu Arg Leu Arg Leu Arg Arg Cys His Arg
115 120 125
Phe Leu Pro Cys Glu Asn Lys Ser Lys Ala Val Glu Gln Val Lys Asn
130 135 140
Ala Phe Asn Lys Leu Gln Glu Lys Gly Ile Tyr Lys Ala Met Ser Glu
145 150 155 160
Phe Asp Ile Phe Ile Asn Tyr Ile Glu Ala Tyr Met Thr Met Lys Ile
165 170 175
Arg Asn
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18-1】
図18-2】
図18-3】
図18-4】
図18-5】
図19-1】
図19-2】
図20-1】
図20-2】
図21
図22-1】
図22-2】
図23-1】
図23-2】
図23-3】
図24-1】
図24-2】
図25-1】
図25-2】
図26
図27-1】
図27-2】
図28
図29
図30
【配列表】
2024059760000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間葉系幹細胞集団の単位投与量であって、
該間葉系幹細胞集団が、臍帯の羊膜の単離された間葉系幹細胞集団であり、
該単離された間葉系幹細胞集団の細胞の少なくとも97%以上が、CD73、CD90およびCD105のそれぞれを発現し、かつCD34、CD45およびHLA-DRのそれぞれの発現を欠き、および
該単位投与量が、約50万個の細胞~約2,000万個の細胞を含む、
前記間葉系幹細胞集団の単位投与量。
【請求項2】
約1,500万個の細胞、約1,000万個の細胞、約900万個の細胞、約800万個の細胞、約700万個の細胞、約600万個の細胞、約500万個の細胞、約400万個の細胞、約300万個の細胞、約200万個の細胞、または約100万個の細胞の間葉系幹細胞集団を含む、請求項1に記載の単位投与量。
【請求項3】
約1,000万個の細胞を含む、請求項1または2に記載の単位投与量。
【請求項4】
1mlバイアルに含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の単位投与量。
【請求項5】
液体担体に含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の単位投与量。
【請求項6】
前記液体担体が、
i) トロロックス、
ii) Na+
iii) K+
iv) Cl-
v) H2PO4 -
vi) HEPES、
vii) ラクトビオナート、
viii) スクロース、
ix) マンニトール、
x) グルコース、
xi) デキストラン-40、
xii) アデノシン、および
xiii) グルタチオン
を含む、請求項5に記載の単位投与量。
【請求項7】
前記担体が、HypoThermosol(商標)を含む、請求項5または6に記載の単位投与量。
【請求項8】
前記細胞が、生存細胞である、請求項1~7のいずれか一項に記載の単位投与量。
【請求項9】
ヒト臍帯組織の羊膜からのヒト間葉系幹細胞集団が、
a) 羊膜を組織外植片として
最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、
最終濃度約5~15% (v/v) のF12、
最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および
最終濃度約1~8% (v/v) のウシ胎児血清(FBS)
を含む培養培地中で培養すること、および
b) 培養工程中に羊膜から成長した細胞を回収して初代単離間葉系幹細胞を提供すること、および
c) 初代単離間葉系幹細胞を培養培地中で継代培養して、ヒト間葉系幹細胞集団を提供すること
を含む方法によって単離されたものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の単位投与量。
【請求項10】
前記ヒト臍帯組織の羊膜からのヒト間葉系幹細胞集団が、
a) 羊膜を組織外植片として
最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、
最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、
最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および
最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のウシ胎児血清(FBS)
を含む培養培地中で培養すること
を含む方法によって単離されたものである、請求項9に記載の単位投与量。
【請求項11】
前記ヒト臍帯組織の羊膜からのヒト間葉系幹細胞集団が、
a) 羊膜を組織外植片として
最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、
最終濃度約11.8% (v/v) のF12、
最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および
最終濃度約2.5% (v/v) のFBS
を含む培養培地中で培養すること
を含む方法によって単離されたものである、請求項9または10に記載の単位投与量。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024059760000001.xml