(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005978
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】組織化大豆たん白加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/16 20060101AFI20240110BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20240110BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20240110BHJP
【FI】
A23J3/16 501
A23L13/60 Z
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106490
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(71)【出願人】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】秦 隆志
(72)【発明者】
【氏名】西内 悠祐
(72)【発明者】
【氏名】多田 佳織
(72)【発明者】
【氏名】窪田 史郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 仁史
(72)【発明者】
【氏名】石嵜 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鎌形 潤一
(72)【発明者】
【氏名】花村 高行
【テーマコード(参考)】
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B036LC01
4B036LF13
4B036LH16
4B036LP24
4B036LT29
4B042AD20
4B042AD36
4B042AK10
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】植たん臭を低減させた組織化大豆たん白加工物の製造方法を提供する。
【解決手段】組織化大豆たん白加工物を製造する方法であって、ファインバブル水を使用して組織化大豆たん白を洗浄する工程を含んでなる、方法、を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織化大豆たん白加工物を製造する方法であって、ファインバブル水を使用して組織化大豆たん白を洗浄する工程を含んでなる、方法。
【請求項2】
ファインバブル水に含まれる気泡の90%以上がナノバブルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
組織化大豆たん白が粒状大豆たん白および/または繊維大豆たん白である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ファインバブル水が、ファインバブル発生装置を用いてファインバブルを水中で発生させた水を、含まれる気泡の90%以上がナノバブルになるまで静置することにより得られるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ファインバブル発生装置を用いて水中で発生させるファインバブルが、窒素、酸素および二酸化炭素からなる群から選択される1種以上の気体を含むものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
組織化大豆たん白の洗浄に使用するファインバブル水の量が、組織化大豆たん白100gに対して500mL~2Lである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法により製造される、組織化大豆たん白加工物。
【請求項8】
請求項7に記載の組織化大豆たん白加工物を含んでなる、食品組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の食品組成物を製造する方法。
【請求項10】
組織化大豆たん白の植たん臭を低減する方法であって、ファインバブル水を使用して組織化大豆たん白を洗浄する工程を含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織化大豆たん白加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食感改良、コストダウンの目的で大豆たん白を加えた加工食品が開発されてきた。大豆たん白は、肉粒感、弾力、繊維感など様々な食感を表現することができる。
【0003】
一方で、大豆たん白にはいわゆる「植たん臭」と呼ばれる青臭さがある。これは一般的に不快臭とされ、大豆たん白を多く添加した製品は、消費者に好まれない傾向にある。最近では、環境問題、健康などの観点から大豆ミートと呼ばれる、大豆たん白を加工したフェイクミート商品が非常に注目されている。しかし、この植たん臭が原因で消費者に好まれず、定着しないなどの問題がある。
【0004】
これまで、大豆たん白を使う商品では、植たん臭を消すために、煮沸、洗浄、調味等多くのことが検討されてきたが、その効果は不十分であった。また洗浄においては、大量の水を使用することによって、多くの廃水が発生し環境負荷をかけるという問題もあった。
【0005】
大豆製品の青臭みを抑える方法として、例えば、特許文献1において、豆乳の製造方法が開示されており、この方法ではマイクロバブル含有水が原料として使用されている。
【0006】
一方で、植たん臭を低減させた大豆製品の製造方法が現在でも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本開示は、植たん臭を低減させた組織化大豆たん白加工物の製造方法を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示者らは、組織化大豆たん白加工物を製造する方法であって、ファインバブル水を使用して組織化大豆たん白を洗浄する工程を含んでなる、方法、により、植たん臭を低減させた組織化大豆たん白加工物を調製することが出来ることを見出した。本開示はこの知見に基づくものである。
【0010】
したがって、本開示の製造方法によれば、植たん臭を低減させた組織化大豆たん白加工物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一つの実施態様によれば、組織化大豆たん白加工物を製造する方法は、ファインバブル水を使用して組織化大豆たん白を洗浄する工程を含んでなる。ファインバブル水を使用して組織化大豆たん白を洗浄することにより植たん臭を低減させた組織化大豆たん白加工物を調製することが可能である。また、本開示の組織化大豆たん白加工物を用いることにより、植たん臭を低減させた食品組成物を調製することも可能である。また、本開示の方法を用いることにより組織化大豆たん白の植たん臭を低減することも可能である。また、植たん臭を低減することにより、組織化大豆たん白およびそれを含んでなる食品組成物の風味の改善、香りの改善も可能である。
【0012】
本開示の「組織化大豆たん白」とは、多孔質状に組織化された大豆たん白を意味し、粒状大豆たん白および/または繊維状大豆たん白が好適な例として挙げられる。組織化大豆たん白は、市販品を購入できる他、公知の方法により調製することも可能である。例えば、大豆に由来する原料を主体とし、必要に応じて、適量の水、でんぷん類、糖類、塩類等の副原料を加え、エクストルーダーを用いて、混練し、加圧し、加熱し、かつ常圧下に押し出す方法によって調製することができる。
【0013】
本開示の「組織化大豆たん白加工物」とは、組織化大豆たん白を、ファインバブル水を使用して洗浄する工程を含む処理を施すことにより加工等したものをいう。
【0014】
本開示の「ナノバブル」とは、1μm未満の粒径を有する気泡のことをいい、国際標準化機構(ISO)によって「ウルトラファインバブル」(登録商標)という名称により定義されている。本開示のナノバブルは、好ましくは15~800nmである。
【0015】
本開示の「ファインバブル水」はナノバブルを含んでなり、さらにマイクロバブルを含んでいてもよいが、含まれるマイクロバブルは少ないことが好ましく、マイクロバブルが含まれないことがより好ましい。また、本開示の「ファインバブル水」は、好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の90%以上がナノバブルであり、より好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の95%以上がナノバブルであり、より好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の98%以上がナノバブルであり、より好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の99%以上がナノバブルであり、より好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の99.9%以上がナノバブルであり、より好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の100%がナノバブルである。
【0016】
一般に、大豆製品の植たん臭は、大豆製品の加工工程中で、大豆に存在するリポキシゲナーゼの作用や外的要因(例えば、酵素反応以外の脂質の酸化)等により発生するもので、その臭気成分には、例えば、アセトアルデヒド、アセトン、ヘキサナール、エチルビニルケトン、ノナナール、2-オクテナール等のカルボニル化合物、ヘキサノール等のアルコール類、アミン類、フェノール類、脂肪酸類等が含有される。
【0017】
本開示のファインバブル水を使用した組織化大豆たん白の洗浄は、植たん臭を低減するものであれば特に限定されないが、洗浄前の組織化大豆たん白と比較して、好ましくは組織化大豆たん白加工物に含有されるカルボニル化合物が減少しているものであり、例えば、組織化大豆たん白加工物に含有されるヘキサナール、ノナナール、2-オクテナール等のカルボニル化合物が減少しているものである。
【0018】
本開示のファインバブル水を調製する方法は特に限定されないが、例えば、ファインバブル発生装置を用いてファインバブルを水中で発生させている水をファインバブル水としてもよく、ファインバブル発生装置を用いてファインバブルを水中で発生させた水を静置することなくすぐに得た水をファインバブル水としてもよい。本開示のファインバブル水は、好ましくは、ファインバブル発生装置を用いてファインバブルを水中で発生させた水を静置する(例えば、含まれる気泡の数の90%以上がナノバブルになるまで静置する)ことにより調製される。このように調製されるファインバブル水は、好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の90%以上がナノバブルであり、より好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の95%以上がナノバブルであり、より好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の98%以上がナノバブルであり、より好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の99%以上がナノバブルであり、より好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の99.9%以上がナノバブルであり、より好ましくはファインバブル水に含まれる気泡の数の100%がナノバブルである。
【0019】
本開示における「ファインバブル」とは100μm未満の微細気泡をいい、ISOによって定義されている。ファインバブルは、一般的には、「マイクロ・ナノバブル」に相当するものである。ファインバブルは気体を微細化することにより、ミリメーターサイズやセンチメーターサイズの気泡とは異なる特異的な性質を持つようになると考えられている。例えば、センチメーターサイズの単一気泡と同じ容積となる複数個のファインバブルの総表面積は格段に大きく、例えば、気液界面での化学反応、物理的吸着、物質輸送が飛躍的に向上することが知られている。また、獲得した巨大な総表面積から内包気体の溶解効率が向上するといった性質を持つことも知られている。このような性質を持つことから、食品分野を含む多くの産業において利用されている。
【0020】
本開示におけるファインバブルは、マイクロバブルおよびナノバブルからなり、また、本開示における「ファインバブル水」とは、主にマイクロバブルおよびナノバブルを含んでなる水のことをいう。本開示における「マイクロバブル」とは、100μm未満かつ1μm以上の粒径を有する気泡のことをいい、ISOによって定義されている。
【0021】
本開示におけるファインバブルを構成する気体は、好ましくは窒素、酸素および二酸化炭素からなる群から選択される1種以上を含む気体であり、より好ましくは窒素、酸素および二酸化炭素を含む気体である。該気体の分圧は限定されるものではないが空気と同じ比率とすることができる。本開示の一つの実施態様によれば、ファインバブルを構成する気体は空気とされる。
【0022】
本開示におけるファインバブル発生装置は特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。
【0023】
本開示におけるファインバブル発生装置の気体流量は特に限定されるものではないが、例えば、10~1000mL/分、50~400mL/分としてもよい。
【0024】
本開示におけるファインバブル発生装置を用いてファインバブルを水中で発生させる時間は特に限定されるものではないが、例えば、10~40分としてもよい。
【0025】
本開示におけるファインバブル水を得るためにファインバブル発生装置を用いてファインバブルを水中で発生させた水を静置する条件は特に限定されるものではないが、例えば、常温常圧で、5分以上、10分以上としてもよい。
【0026】
本開示における組織化大豆たん白の洗浄に使用するファインバブル水の量は特に限定されるものではないが、組織化大豆たん白100gに対して、好ましくは500mL~2Lであり、より好ましくは1.5~2Lである。
【0027】
本開示における食品組成物が適用される加工食品としては、限定されるわけではないが、例えば、ハンバーグ、ミートボール等の食肉加工食品、メンチカツ等の揚げ物、肉まん、肉焼売、肉餃子等の麺帯や生地で包まれた加工食品等が挙げられ、特にハンバーグが好ましい。
【0028】
本開示における食品組成物は、その原料として一定量の動物肉を含んでいてもよく、または動物肉が全く含まれていなくてもよい。前記動物肉としては、鶏、豚、牛由来の食用肉、およびそれらの混合物が挙げられる。また、玉ねぎ、パン粉、牛乳、卵などの副原料を含んでいても良い。
【0029】
また、本開示の一実施形態によれば、以下の(1)~(10)を提供することができる。
(1)組織化大豆たん白加工物を製造する方法であって、ファインバブル水を使用して組織化大豆たん白を洗浄する工程を含んでなる、方法。
(2)ファインバブル水に含まれる90%以上がナノバブルである、(1)に記載の方法。
(3)組織化大豆たん白が粒状大豆たん白および/または繊維大豆たん白である、(1)または(2)に記載の方法。
(4)ファインバブル水が、ファインバブル発生装置を用いてファインバブルを水中で発生させた水を、含まれる気泡の90%以上がナノバブルになるまで静置することにより得られるものである、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)ファインバブル発生装置を用いて水中で発生させるファインバブルが、窒素、酸素および二酸化炭素からなる群から選択される1種以上の気体を含むものである、(4)に記載の方法。
(6)組織化大豆たん白の洗浄に使用するファインバブル水の量が、組織化大豆たん白100gに対して500mL~2Lである、(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の方法により製造される、組織化大豆たん白加工物。
(8)(7)に記載の組織化大豆たん白加工物を含んでなる、食品組成物。
(9)(8)に記載の食品組成物を製造する方法。
(10)組織化大豆たん白の植たん臭を低減する方法であって、ファインバブル水を使用して組織化大豆たん白を洗浄する工程を含んでなる、方法。
【実施例0030】
以下、本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。なお、特段の記載のない限り、単位および測定方法は、日本産業規格(JIS)の規定に従う。
【0031】
ファインバブル水に含まれる気泡の物性評価
坂本技研社製の高濃度型ファインバブル発生装置(カスケードポンプ型FB-S15AI)を使用し、以下に記載する方法でファインバブル水を調製し、気泡の数密度および粒度分布を測定した。
【0032】
以下表1に示す条件で水中でファインバブルを発生させた水を10分間静置し、ファインバブル水を調製した。このファインバブル水におけるマイクロバブルの数および大きさをPartAn SI(マイクロトラック・ベル社製)を用いて計測し、マイクロバブルの数密度および粒度分布の値を得た。マイクロバブルの数および大きさの測定は再現性が良好なため測定回数を1回とした。
【0033】
【0034】
以下表2にファインバブル水におけるマイクロバブルの数密度を、表3に気体流量50mL/分で調製したファインバブル水におけるマイクロバブルの粒度分布を、表4に気体流量200mL/分で調製したファインバブル水におけるマイクロバブルの粒度分布を、表5に気体流量400mL/分で調製したファインバブル水におけるマイクロバブルの粒度分布を示す。ファインバブル水におけるマイクロバブルの数密度は気体流量により影響を受けやすいが気体流入時間には影響を受けにくい傾向が見られた。また、粒度分布は、気体流量および気体流入時間によらず40μm付近を頂点とする比較的幅の狭いピークを有する傾向が見られた。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
次に、上記の方法により調製したファインバブル水におけるナノバブルの数および大きさをZetaView(Particle Metrix社製)を用いて計測し、ナノバブルの数密度および粒度分布の値を得た。測定回数は3回とした。
【0040】
以下表6にファインバブル水におけるナノバブルの数密度を、表7に気体流量50mL/分で調製したファインバブル水におけるナノバブルの粒度分布を、表8に気体流量200mL/分で調製したファインバブル水におけるナノバブルの粒度分布を、表9に気体流量400mL/分で調製したファインバブル水におけるナノバブルの粒度分布を示す。ファインバブル水におけるナノバブルの数密度は気体流量および気体流入時間の両方により影響を受けやすいことが示唆された。また、粒度分布は、気体流量および気体流入時間によらず100nm付近を頂点とする比較的幅の広いピークを有する傾向を示した。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
以上の結果より、表1に示す条件で、水中でファインバブルを発生させた水を10分間静置することにより得られたファインバブル水に含まれる気泡の90%以上がナノバブルであることが示された。
【0046】
ファインバブル水の植たん臭の脱臭効果評価
一般的な大豆たん白(アペックス950、ニューフジニックBSN(不二製油社製))を使用し、通常の水で洗浄した時およびファインバブル水で洗浄した時の植たん臭の脱臭効果を評価した。
【0047】
実施例1
坂本技研社製の高濃度型のファインバブル発生装置を気体圧力0.45MPa、気体流量400mL/分の条件で20分間稼働させ、18Lのイオン交換水中(pH6.3)にファインバブルを発生させ、それを10分間静置し、ファインバブル水を調製した。250gの粒状大豆たん白(ニューフジニックBSN(不二製油社製))または繊維状大豆たん白(アペックス950(不二製油社製))を、調製したファインバブル水(5L)に入れ、150rpmで5分間攪拌し、洗浄した。洗浄した大豆たん白を1分間遠心分離により脱水した。脱水した大豆たん白を-35℃で急速冷凍したのち、-18℃で冷凍保存した。
【0048】
実施例2
坂本技研社製の高濃度型のファインバブル発生装置を気体圧力0.45MPa、気体流量400mL/分の条件で20分間稼働させ、18Lのイオン交換水中(pH6.3)にファインバブルを発生させ、それを10分間静置し、ファインバブル水を調製した。この時水槽は、窒素が純ガスボンベよりファインバブル発生装置に導入する気体弁に常に供給されている、状態にあった。250gの粒状大豆たん白(ニューフジニックBSN(不二製油社製))または繊維状大豆たん白(アペックス950(不二製油社製))を、調製したファインバブル水(5L)に入れ、150rpmで5分間攪拌し、洗浄した。洗浄した大豆たん白を1分間遠心分離により脱水した。脱水した大豆たん白を-35℃で急速冷凍したのち、-18℃で冷凍保存した。
【0049】
実施例3
坂本技研社製の高濃度型のファインバブル発生装置を気体圧力0.45MPa、気体流量400mL/分の条件で20分間稼働させ、18Lのイオン交換水中(pH6.3)にファインバブルを発生させ、それを10分間静置し、ファインバブル水を調製した。250gの粒状大豆たん白(ニューフジニックBSN(不二製油社製))または繊維状大豆たん白(アペックス950(不二製油社製))を、調製したファインバブル水(1.25L)に入れ、150rpmで5分間攪拌し、洗浄した。洗浄した大豆たん白を1分間遠心分離により脱水した。脱水した大豆たん白を-35℃で急速冷凍したのち、-18℃で冷凍保存した。
【0050】
実施例4
坂本技研社製の高濃度型のファインバブル発生装置を気体圧力0.45MPa、気体流量400mL/分の条件で20分間稼働させ、18Lのイオン交換水中(pH6.3)にファインバブルを発生させ、それを10分間静置し、ファインバブル水を調製した。この時水槽は、酸素が純ガスボンベよりファインバブル発生装置に導入する気体弁に常に供給されている、状態にあった。250gの粒状大豆たん白(ニューフジニックBSN(不二製油社製))または繊維状大豆たん白(アペックス950(不二製油社製))を、調製したファインバブル水(5L)に入れ、150rpmで5分間攪拌し、洗浄した。洗浄した大豆たん白を1分間遠心分離により脱水した。脱水した大豆たん白を-35℃で急速冷凍したのち、-18℃で冷凍保存した。
【0051】
実施例5
坂本技研社製の高濃度型のファインバブル発生装置を気体圧力0.45MPa、気体流量400mL/分の条件で20分間稼働させ、18Lのイオン交換水中(pH6.3)にファインバブルを発生させ、それを10分間静置し、ファインバブル水を調製した。この時水槽は、二酸化炭素が純ガスボンベよりファインバブル発生装置に導入する気体弁に常に供給されている、状態にあった。250gの粒状大豆たん白(ニューフジニックBSN(不二製油社製))または繊維状大豆たん白(アペックス950(不二製油社製))を、調製したファインバブル水(5L)に入れ、150rpmで5分間攪拌し、洗浄した。洗浄した大豆たん白を1分間遠心分離により脱水した。脱水した大豆たん白を-35℃で急速冷凍したのち、-18℃で冷凍保存した。
【0052】
実施例6
坂本技研社製の高濃度型のファインバブル発生装置を気体圧力0.45MPa、気体流量400mL/分の条件で20分間稼働させ、18Lのイオン交換水中(pH6.3)にファインバブルを発生させた。250gの粒状大豆たん白(ニューフジニックBSN(不二製油社製))または繊維状大豆たん白(アペックス950(不二製油社製))を、調製してすぐのファインバブル水(5L)に入れ、150rpmで5分間攪拌し、洗浄した。洗浄した大豆たん白を1分間遠心分離により脱水した。脱水した大豆たん白を-35℃で急速冷凍したのち、-18℃で冷凍保存した。
【0053】
実施例7
250gの粒状大豆たん白(ニューフジニックBSN(不二製油社製))または繊維状大豆たん白(アペックス950(不二製油社製))を、坂本技研社製の高濃度型のファインバブル発生装置を気体圧力0.45MPa、気体流量400mL/分の条件で20分間稼働させ、5Lのイオン交換水中(pH6.3)にファインバブルを発生させているファインバブル水に入れ、150rpmで5分間攪拌し、洗浄した。この時、常に上記ファインバブル水はファインバブル発生装置と循環している状態にあった。洗浄した大豆たん白を1分間遠心分離により脱水した。脱水した大豆たん白を-35℃で急速冷凍したのち、-18℃で冷凍保存した。
【0054】
比較例1
250gの粒状大豆たん白(ニューフジニックBSN(不二製油社製))または繊維状大豆たん白(アペックス950(不二製油社製))を、イオン交換水(pH6.3)5Lに入れ、150rpmで5分間攪拌し、洗浄した。洗浄した大豆たん白を1分間遠心分離により脱水した。脱水した大豆たん白を-35℃で急速冷凍したのち、-18℃で冷凍保存した。
【0055】
実施例および比較例の大豆たん白を使用した大豆ハンバーグの製造
解凍した実施例1~7および比較例1の大豆たん白100g(アペックス950またはニューフジニックBSN)に対し水を100g加え、30分間静置した。次に、粉末大豆たん白(フジプロFR###(不二製油社製))40gに、水を240g加え、フードプロセッサー(MK-K61-W(Panasonic社製))で1分間高速攪拌し、さらにフードプロセッサーを攪拌させながら、大豆油40gを徐々に加え、1分間高速攪拌し、エマルジョンカードを調製した。このエマルジョンカード(粉末大豆たん白:水:大豆油=1:6:1)を大豆たん白100gに対し、80g加え、ケンミックス(シェフPRO KPL9000S(愛工舎製作所社製))で150rpm、1分間混合した。次に、コーンスターチY(コーンスターチ(三和澱粉工業社製))、乾燥卵白No.5(乾燥卵白(キユーピータマゴ社製))、マツノリンCM(コーンスターチα化澱粉(松谷化学工業社製))を1:2:1で混合した粉体を大豆たん白100gに対し32g加え、ケンミックスで150rpm、1分間混合した。次に、大豆たん白100gに対し食塩:上白糖を1:1で混合した粉体を8g加え、ケンミックスで150rpm、1分間混合した。次に、大豆たん白100gに対し、みじん切りにしておいた5mm角の玉ねぎを60g加え、ケンミックスで150rpm、1分間混合した。次に、大豆たん白100gに対し、LH-28(微粉パン粉(共栄フード社製))を20g加え、ケンミックスで150rpm、1分間混合した。次に、混合し終わった種を、60g、厚さ2cmで小判型に成形し、コンベクションオーブン(iConbi Pro(フジマック社製))のスチームモードで5分間(風力設定3)加熱した。最後に、70℃達温を確認した後、フライパンで弱火30秒片面加熱し、速やかに凍結板に移動し、-35℃により凍結させた。
【0056】
調製したハンバーグを電子レンジで加熱し、以下の基準に基づいて専門パネル5人により、香り(喫食前の臭いを嗅いだ時に鼻に抜ける香り)および風味(喫食時の味及び鼻に抜ける香り)について官能評価を行った。また、実施例1~7および比較例1の粒状大豆たん白についても同様に官能評価を行った。
【0057】
<香り>
水で洗浄した粒状大豆たん白またはそれを使用して調製したハンバーグの植たん臭を3.0点とし、それよりも植たん臭が強いものを2.0点、より強いものを1.0点、逆にそれよりも植たん臭が無いものを4.0点、より無いものを5.0点とし、専門パネル5人が評価を行った。評価結果は、スコア(点数)の平均値および標準偏差として示した。
【0058】
<風味>
水で洗浄した粒状大豆たん白またはそれを使用して調製した大豆ハンバーグの植たんの風味を3.0点とし、それよりも植たんの風味が強いものを2.0点、より強いものを1.0点、逆にそれよりも植たんの風味が無いものを4.0点、より無いものを5.0点とし、専門パネル5人が評価を行った。評価結果は、スコア(点数)の平均値および標準偏差として示した。
【0059】
官能評価結果を以下の表10~13に示す。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
実施例1~7の大豆たん白およびそれらを使用して調製された大豆ハンバーグのいずれも比較例1の大豆たん白およびそれらを使用して調製された大豆ハンバーグと比較して植たん臭が同等以上に良好であると評価され、特に、ファインバブルを発生させた水を静置することにより得られたファインバブル水を用いて洗浄した、実施例1~5の大豆たん白およびそれらを使用して調製された大豆ハンバーグは植たん臭が非常に良好であると評価された。以上より、本開示の方法を使用することで、植たん臭が改善された大豆たん白および大豆ハンバーグを調製が可能であることが示された。
【0065】
GC-MSによる香気分析
実施例1~3、6、7および比較例1の大豆たん白の香気成分であるヘキサナール、ノナナールおよび2-オクテナールの測定を以下の方法により実施した。各大豆たん白からの香気成分抽出は、ダイナミックヘッドスペース(DHS)法により行った。バイアル瓶に試料を3.0g秤量し、これとは別に外部標準としてシクロヘキサノール溶液(2ppm、2ml)を用意した。調製した試料をガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)に供した。測定条件を以下表14に示す。
【0066】
【0067】
上記条件による測定により、得られたクロマトグラムから、ヘキサナール、ノナナールおよび2-オクテナールのピーク面積の算出を、解析ソフトAMDISを使用して行った。測定はそれぞれ3回ずつ行った。分析結果を以下の表15および16に示す。
【0068】
【0069】
【0070】
以上より、実施例1~3、6、7の大豆たん白のいずれも比較例1の大豆たん白と比較してヘキサナール、ノナナールおよび2-オクテナールの含量が少なくなることが示され、特に、ファインバブルを発生させた水を静置することにより得られたファインバブル水を用いて洗浄した、実施例1~3の大豆たん白はヘキサナール、ノナナールおよび2-オクテナールの含量が顕著に少なくなることが示された。