特開 2024-59788 フラックスレスろう付け用途向けのアルミニウム合金、その製造方法、及びその使用

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024059788

(43)【公開日】2024-05-01

(54)【発明の名称】フラックスレスろう付け用途向けのアルミニウム合金、その製造方法、及びその使用

(51)【国際特許分類】

   C22C 21/00 20060101AFI20240423BHJP

   C22C 21/02 20060101ALI20240423BHJP

   C22F 1/04 20060101ALI20240423BHJP

   C22F 1/043 20060101ALI20240423BHJP

   C22F 1/00 20060101ALN20240423BHJP

【ＦＩ】

C22C21/00 J

C22C21/02

C22C21/00 L

C22F1/04 Z

C22F1/043

C22F1/04 B

C22F1/00 603

C22F1/00 623

C22F1/00 626

C22F1/00 627

C22F1/00 640A

C22F1/00 651A

C22F1/00 681

C22F1/00 683

C22F1/00 685Z

C22F1/00 686A

C22F1/00 691A

C22F1/00 691B

C22F1/00 691C

C22F1/00 692A

C22F1/00 694B

【審査請求】有

【請求項の数】15

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2024025089

(22)【出願日】2024-02-22

(62)【分割の表示】P 2021568913の分割

【原出願日】2020-04-20

(31)【優先権主張番号】62/849,938

(32)【優先日】2019-05-19

(33)【優先権主張国・地域又は機関】US

(71)【出願人】

【識別番号】506110243

【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド

【氏名又は名称原語表記】ＮＯＶＥＬＩＳ ＩＮＣ．

(74)【代理人】

【識別番号】100106518

【弁理士】

【氏名又は名称】松谷 道子

(74)【代理人】

【識別番号】100221501

【弁理士】

【氏名又は名称】式見 真行

(72)【発明者】

【氏名】カダリ，ジョティ

(57)【要約】      （修正有）

【課題】フラックスを用いることなく、他の金属部品と傷みのないろう付け接合部を作製可能な、改善されたクラッドアルミニウム合金及びろう付けプロセスを提供する。
【解決手段】ろう付け用途のために、クラッドアルミニウム合金製品において、１つ以上のクラッド層（複数可）として使用するための、新規のアルミニウム合金を提供する。クラッド層（複数可）は、接合される金属部品の酸化被膜を破壊して取り除き、腐食性フラックスを用いることなく高強度のろう付け接合部を作製する構成要素を含む。アルミニウム合金クラッド層（複数可）及びアルミニウム合金コアのうちの１つまたはそれ以上を含む、耐食アルミニウムシートパッケージもまた、本明細書で提供する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】

【請求項1】

８．０～１２．０重量％のＳｉ、０．１５～０．５０重量％のＦｅ、０．３０～０．５０重量％のＣｕ、０．０５～０．２０重量％のＭｎ、０．０１～０．４０重量％のＭｇ、０．０５～０．４０重量％のＺｎ、０．０４～０．４０重量％のＢｉ、０．２５重量％以下のＳｂ、０．１５重量％以下のＳｒ、０．１０重量％以下のＮａ、０．２０重量％以下のＴｉ、０．０５重量％以下の各々の不純物、０．１５重量％以下の合計の不純物、及びＡｌからなる、アルミニウム合金。

【請求項2】

９．０～１０．５重量％のＳｉ、０．１５～０．２５重量％のＦｅ、０．３０～０．４０重量％のＣｕ、０．０５～０．１５重量％のＭｎ、０．１５～０．３０重量％のＭｇ、０．１０～０．３０重量％のＺｎ、０．１０～０．３５重量％のＢｉ、０．１５重量％以下のＳｂ、０．０５重量％以下のＳｒ、０．０５重量％以下のＮａ、０．１０重量％以下のＴｉを含む、請求項１に記載のアルミニウム合金。

【請求項3】

アルミニウム合金が直接チル鋳造、続いて熱間圧延及び冷間圧延により作製される、請求項１～２のいずれか１項に記載のアルミニウム合金。

【請求項4】

アルミニウム合金が、ろう付けの後、外気での腐食試験の間に穿孔を行うことなく、少なくとも２８日間耐える、請求項１～３のいずれか１項に記載のアルミニウム合金。

【請求項5】

クラッドアルミニウム合金製品であって、
コア層と、
請求項１～４のいずれか１項に記載のアルミニウム合金を含む、少なくとも１つのクラッド層と、
を含む、クラッドアルミニウム合金製品。

【請求項6】

コア層が、０．２５重量％以下のＳｉ、０．３５重量％以下のＦｅ、０．５０重量％～０．６０重量％のＣｕ、１．４重量％～１．６重量％のＭｎ、、０．０６重量％～０．６２重量％のＭｇ、０．０５重量％以下のＣｒ、０．０４重量％以下のＺｎ、０．１０重量％～０．２０重量％のＴｉ、０．０５重量％以下のＳｒ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含むアルミニウム合金を含む、請求項５に記載のクラッドアルミニウム合金製品。

【請求項7】

コア層が第１の面及び第２の面を有する、コア層と、
第１の面または第２の面の上に少なくとも１つのクラッド層と、を含むクラッドアルミニウム合金製品であって、
少なくとも１つのクラッド層が、８．０～１２．０重量％のＳｉ、０．１５～０．５０重量％のＦｅ、０．３０～０．５０重量％のＣｕ、０．０５～０．２０重量％のＭｎ、０．０１～０．４０重量％のＭｇ、０．０５～０．４０重量％のＺｎ、０．０４～０．４０重量％のＢｉ、０．２５重量％以下のＳｂ、０．１５重量％以下のＳｒ、０．１０重量％以下のＮａ、０．２０重量％以下のＴｉ、０．０５重量％以下の各々の不純物、０．１５重量％以下の合計の不純物、及びＡｌからなる、クラッドアルミニウム合金製品。

【請求項8】

コア層が、０．２５重量％以下のＳｉ、０．３５重量％以下のＦｅ、０．５０重量％～０．６０重量％のＣｕ、１．４重量％～１．６重量％のＭｎ、、０．０６重量％～０．６２重量％のＭｇ、０．０５重量％以下のＣｒ、０．０４重量％以下のＺｎ、０．１０重量％～０．２０重量％のＴｉ、０．０５重量％以下のＳｒ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含むアルミニウム合金を含む、請求項７に記載のクラッドアルミニウム合金製品。

【請求項9】

請求項７または８に記載のクラッドアルミニウム合金製品を含む腐食耐性ブレージングシート。

【請求項10】

請求項７または８に記載のクラッドアルミニウム合金製品を含む熱交換器。

【請求項11】

１つ以上の金属部品を準備する工程と、
１つ以上の金属部品上、またはその間にクラッドアルミニウム合金製品を準備してアセンブリを形成する工程であって、クラッドアルミニウム合金製品が少なくとも１つのクラッド層を備える、アセンブリを形成する工程と、
アセンブリを、フラックスを塗布することなくクラッドアルミニウム合金製品及び１つ以上の金属部品に接合して、ろう付けされたアセンブリを作製する工程と、
ろう付けされたアセンブリを冷却する工程と、を含む、ろう付け接合部の形成方法であって、
少なくとも１つのクラッド層が、８．０～１２．０重量％のＳｉ、０．１５～０．５０重量％のＦｅ、０．３０～０．５０重量％のＣｕ、０．０５～０．２０重量％のＭｎ、０．０１～０．４０重量％のＭｇ、０．０５～０．４０重量％のＺｎ、０．０４～０．４０重量％のＢｉ、０．２５重量％以下のＳｂ、０．１５重量％以下のＳｒ、０．１０重量％以下のＮａ、０．２０重量％以下のＴｉ、０．０５重量％以下の各々の不純物、０．１５重量％以下の合計の不純物、及びＡｌからなる、ろう付け接合部の形成方法。

【請求項12】

不活性ガスを含む制御された雰囲気のろう付け炉内でろう付けが生じ、
制御された雰囲気のろう付け炉が１００ｐｐｍ未満の酸素を含む、請求項１１に記載の方法。

【請求項13】

制御された雰囲気のろう付け炉が－４０℃未満の露点を有する、請求項１２に記載の方法。

【請求項14】

アセンブリが５９０℃～６１０℃のろう付け温度でろう付けされ、
制御された雰囲気のろう付け炉が５分未満で、ろう付け温度まで加熱される、請求項１２～１３のいずれか１項に記載の方法。

【請求項15】

窒素雰囲気中で、５０ｐｐｍ未満の酸素濃度及び－４０℃未満の露点を有する制御された雰囲気のろう付け炉内で、アセンブリが、６００℃にて３分間ろう付けされる、請求項１１～１４のいずれか１項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

関連出願の相互参照
本出願は、２０１９年５月１９日に出願された米国特許仮出願第６２／８４９，９３８号の利益を主張し、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。

【0002】

本開示は、材料科学、材料化学、冶金学、アルミニウム合金、アルミニウム製作、及び関連分野の分野に関する。より具体的には、本開示は、フラックスレスろう付けのための新規のクラッドアルミニウム合金に関し、その製造方法に関する。さらに、本開示は、例えば熱交換器を含む、様々なろう付け用途で使用可能な、クラッドアルミニウム合金に関する。

【背景技術】

【0003】

アルミニウム合金は、その高強度、腐食耐性、高い熱伝導率、及び軽重量によって、自動車用部品（例えば熱交換器）の重要な材料源となっている。したがって、アルミニウム合金はますます、エアコン、自動車などに組み込まれる熱交換器を作製するために使用されている。しかし、アルミニウム部品の製作（例えば、自動車の熱交換器でのろう付け）のために使用するプロセスにおいて、金属部分に存在する表面酸化被膜の安定性が、不安定なろう付けの接合をもたらす。ろう付けの間に、酸化被膜は、接合部形成に必要な溶加材の濡れ及び流れに対するバリアとして作用する。一般に、酸化物の除去、及び再酸化の防止が、従来のアルミニウム接合法には必要とされる。

【0004】

アルミニウム合金部品を他の金属部品（例えば、銅含有部品、アルミニウム含有部品、鋼鉄部品など）に接合するために、フラックスろう付け法が多くの場合使用され、この方法では、アルミニウム－シリコン合金からなる溶融クラッド層を用いることにより、ろう付けが行われる。本プロセスにおいては、フッ化物ベースのフラックスがクラッド層に塗布された後、非酸化環境で（例えば、窒素ガス雰囲気下にて）加熱が行われる。しかし、フラックスろう付け法では、フラックス塗布量が不十分である場合に、金属部品の表面に存在する酸化被膜の破壊が不十分となり得るリスクがある。酸化被膜を除去するために、自動車用部品（例えば熱交換器）は、洗浄／エッチングプロセスを経て、均一なフラックスコーティングを実現する。フラックスコーティングプロセスに使用する有害なエッチャントに加えて、フラックススラリーは多くの場合、アルコールなどの揮発性極性溶媒を含む。これらの溶媒は比較的多量に使用され、結果としてろう付けプロセスのコスト増加及び非効率さがもたらされる。さらに、揮発性有機化合物を用いることは、環境及び安全上の懸念をもたらす。

【0005】

ろう付け法の中には、傷みのない接合部を作製するものもある一方で、フラックスを用いることなく、他の金属部品と傷みのないろう付け接合部を作製可能な、改善されたクラッドアルミニウム合金及びろう付けプロセスが必要とされている。

【発明の概要】

【0006】

包含される本発明の実施形態は、この発明の概要ではなく、特許請求の範囲によって定義される。この発明の概要は、本発明の様々な態様の高次の概要であり、以下の発明を実施するための形態のセクションでさらに説明されるいくつかの概念を紹介している。この発明の概要は、特許請求された主題の重要な、または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、また、特許請求された主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図されていない。主題は、明細書全体、任意のまたは全ての図面、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。

【0007】

いくつかの実施形態では、本開示は、約７．０～１４．０重量％のＳｉ、約０．０５～１．０重量％のＦｅ、約０．０１～０．６０重量％のＣｕ、約０．０１～０．３０重量％のＭｎ、約０．０１～０．５０重量％のＭｇ、約０．０～０．６０重量％のＺｎ、約０．００１～０．５０重量％のＢｉ、約０．３０重量％以下のＳｂ、約０．２０重量％以下のＳｒ、約０．２０重量％以下のＮａ、約０．２５重量％以下のＴｉ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含むアルミニウム合金に関する。いくつかの実施形態では、アルミニウム合金は、約８．０～１２．０重量％のＳｉ、約０．１０～０．９０重量％のＦｅ、約０．０１～０．５０重量％のＣｕ、約０．０５～０．２０重量％のＭｎ、約０．０１～０．４０重量％のＭｇ、約０．０５～０．４０重量％のＺｎ、約０．０１～０．４０重量％のＢｉ、約０．２５重量％以下のＳｂ、約０．１５重量％以下のＳｒ、約０．１０重量％以下のＮａ、約０．２０重量％以下のＴｉ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。いくつかの実施形態では、アルミニウム合金は、約８．５～１１．０重量％のＳｉ、約０．１５～０．５０重量％のＦｅ、約０．０１～０．４０重量％のＣｕ、約０．０５～０．１５重量％のＭｎ、約０．０５～０．３０重量％のＭｇ、約０．１０～０．３０重量％のＺｎ、約０．０５～０．３０重量％のＢｉ、約０．２０重量％以下のＳｂ、約０．１０重量％以下のＳｒ、約０．０６重量％以下のＮａ、約０．１５重量％以下のＴｉ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。いくつかの実施形態では、アルミニウム合金は、約９．０～１０．５重量％のＳｉ、約０．１５～０．２５重量％のＦｅ、約０．３０～０．４０重量％のＣｕ、約０．０５～０．１５重量％のＭｎ、約０．１５～０．３０重量％のＭｇ、約０．１５～０．３０重量％のＺｎ、約０．１０～０．３５重量％のＢｉ、約０．１５重量％以下のＳｂ、約０．０５重量％以下のＳｒ、約０．０５重量％以下のＮａ、約０．１０重量％以下のＴｉ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。いくつかの実施形態では、アルミニウム合金は、約９．５～１０．５重量％のＳｉ、約０．３０～０．５０重量％のＦｅ、約０．０１～０．０５重量％のＣｕ、約０．０５～０．１５重量％のＭｎ、約０．０１～０．０５重量％のＭｇ、約０．２０～０．２５重量％のＺｎ、約０．１０～０．２０重量％のＢｉ、約０．０１～０．０５重量％のＳｂ、約０．００１～０．０２重量％のＳｒ、約０．０１重量％以下のＮａ、約０．１０重量％以下のＴｉ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。いくつかの実施形態では、合金は直接チル鋳造、続いて熱間圧延及び冷間圧延により作製される。いくつかの実施形態では、合金は、ろう付け後に測定すると、６６０～７２０ｍＶ以下の腐食電位を有する。いくつかの実施形態では、合金は、ろう付けの後、外気での腐食試験の間に穿孔を行うことなく、少なくとも２８日間耐える。

【0008】

いくつかの実施形態では、本開示は、コア層と、本明細書に記載するアルミニウム合金を含む少なくとも１つのクラッド層と、を備えるクラッドアルミニウム合金製品に関する。いくつかの実施形態では、コア層は、約０．２５重量％以下のＳｉ、約０．３５重量％以下のＦｅ、約０．５０～０．６０重量％のＣｕ、約１．４～１．６重量％のＭｎ、約０．０６～０．６２重量％のＭｇ、約０．０５重量％以下のＣｒ、約０．０４重量％以下のＺｎ、約０．１０～０．２０重量％のＴｉ、約０．０５重量％以下のＳｒ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含むアルミニウム合金を含む。

【0009】

いくつかの実施形態では、本開示は、コア層であって、当該コア層が第１の面（第１の側）及び第２の面（第２の側）を有する、上記コア層と、上記第１の面または上記第２の面の少なくとも１つのクラッド層と、を含むクラッドアルミニウム合金製品であって、上記少なくとも１つのクラッド層が、約７．０～１４．０重量％のＳｉ、約０．０５～１．０重量％のＦｅ、約０．０１～０．６０重量％のＣｕ、約０．０１～０．３０重量％のＭｎ、約０．０１～０．５０重量％のＭｇ、約０．０～０．６０重量％のＺｎ、約０．００１～０．５０重量％のＢｉ、約０．３０重量％以下のＳｂ、約０．２０重量％以下のＳｒ、約０．２０重量％以下のＮａ、約０．２５重量％以下のＴｉ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、上記クラッドアルミニウム合金製品に関する。いくつかの実施形態では、コア層は、約０．２５重量％以下のＳｉ、約０．３５重量％以下のＦｅ、約０．５０～０．６０重量％のＣｕ、約１．４～１．６重量％のＭｎ、約０．０６～０．６２重量％のＭｇ、約０．０５重量％以下のＣｒ、約０．０４重量％以下のＺｎ、約０．１０～０．２０重量％のＴｉ、約０．０５重量％以下のＳｒ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含むアルミニウム合金を含む。いくつかの実施形態では、腐食耐性ブレージングシートは、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品を含む。いくつかの実施形態では、熱交換器は、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品を含む。いくつかの実施形態では、熱交換器は自動車用熱交換器である。いくつかの実施形態では、自動車用熱交換器は、ラジエーター、コンデンサー、エバポレーター、オイルクーラー、インタークーラー、チャージエアクーラー、またはヒーターコアである。いくつかの実施形態では、管は、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品で作製される。

【0010】

いくつかの実施形態では、本開示は、ろう付け接合部の形成方法であって、当該方法が、１つ以上の金属部品を提供する工程と、１つ以上の金属部品上、またはその間にクラッドアルミニウム合金製品を提供してアセンブリを形成する工程であって、当該クラッドアルミニウム合金製品が少なくとも１つのクラッド層を備える、アセンブリを形成する工程と、上記アセンブリを、フラックスを塗布することなく上記クラッドアルミニウム合金製品及び上記１つ以上の金属部品に接合して、ろう付けされたアセンブリを作製する工程と、当該ろう付けされたアセンブリを冷却する工程であって、上記少なくとも１つのクラッド層が、約７．０～１４．０重量％のＳｉ、約０．０５～１．０重量％のＦｅ、約０．０１～０．６０重量％のＣｕ、約０．０１～０．３０重量％のＭｎ、約０．０１～０．５０重量％のＭｇ、約０．０～０．６０重量％のＺｎ、約０．００１～０．５０重量％のＢｉ、約０．３０重量％以下のＳｂ、約０．２０重量％以下のＳｒ、約０．２０重量％以下のＮａ、約０．２５重量％以下のＴｉ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む工程と、を含む、上記方法に関する。いくつかの実施形態では、ろう付けは、不活性ガスを含む、制御された雰囲気のろう付け炉内で生じる。いくつかの実施形態では、制御された雰囲気のろう付け炉は、１００ｐｐｍ未満の酸素を含む。いくつかの実施形態では、制御された雰囲気のろう付け炉は、－４０℃未満の露点を有する。いくつかの実施形態では、アセンブリは、約５９０℃～約６１０℃の範囲のろう付け温度にてろう付けされる。いくつかの実施形態では、制御された雰囲気のろう付け炉は、５分未満で、ろう付け温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、窒素雰囲気中で、５０ｐｐｍ未満の酸素濃度及び－４０℃未満の露点を有する制御された雰囲気のろう付け炉内で、アセンブリは、６００℃にて３分間ろう付けされる。いくつかの実施形態では、少なくとも１つのクラッド層は、約８．０～１２．０重量％のＳｉ、約０．１０～０．９０重量％のＦｅ、約０．０１～０．５０重量％のＣｕ、約０．０５～０．２０重量％のＭｎ、約０．０１～０．４０重量％のＭｇ、約０．１０～０．４０重量％のＺｎ、約０．０１～０．４０重量％のＢｉ、約０．２５重量％以下のＳｂ、約０．１５重量％以下のＳｒ、及び約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。

【0011】

さらなる態様、対象、及び利点は、後に続く非限定的な例の詳細な説明を考慮すると明らかになる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】一実施形態に従った、キーエンス製顕微鏡を用いた、１００ｘ倍率でのろう付け接合部の光学顕微鏡画像である。

【図2】一実施形態に従った、Ｚｅｉｓｓ Ｏｐｔｉｃａｌ製顕微鏡を用いた、１００ｘ倍率でのろう付け接合部の光学顕微鏡画像である。

【図3】本明細書に記載する例示的なアルミニウム合金の降伏強さ、極限伸び、及び伸びのグラフである。

【図4】本明細書に記載する例示的なアルミニウム合金の、ろう付け後の降伏強さ、極限伸び、及び伸びのグラフである。

【図5-1】表９に提示する、２週間、３週間、及び４週間後での、実施例合金１、３～６に関する、海水酢酸試験（ＳＷＡＡＴ）サンプルの金属組織調査の結果の略図である。

【図5-2】表９に提示する、２週間、３週間、及び４週間後での、実施例合金７、１２～１４、及び比較実施例Ａに関する、海水酢酸試験（ＳＷＡＡＴ）サンプルの金属組織調査の結果の略図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

アルミニウム合金コア層と、少なくとも１つのアルミニウム合金クラッド層と、を含むクラッドアルミニウム合金製品を本明細書で記載する。コア層及び少なくとも１つのクラッド層を含む、これらのアルミニウム材料は、「クラッドアルミニウム合金製品」と呼ぶことができる。本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品は、シート（または他の製品）として製作可能であり、コア層の片面または両面にあるクラッド層がシート（または他の製品）を形成し、この場合、材料は、単数形または複数形で、「クラッドシートアルミニウム合金製品」、「クラッドアルミニウムシート」、「クラッドシート合金」、または他の関連する用語で呼ぶことができる。本明細書で使用する用語「クラッドアルミニウム合金」または「クラッドアルミニウム合金製品」、及び類似の用語は、用語「クラッドシートアルミニウム合金」及び類似の用語よりも広い範囲で使用される。換言すれば、クラッドシートアルミニウム合金は、クラッドアルミニウム合金製品の部分集合である。

【0014】

クラッドシートアルミニウム合金を含むクラッドアルミニウム合金製品は、様々な組成物及び性質を有することができる。これらの性質のいくつかは、コア及びクラッド層（複数可）の化学組成により付与されることができる一方で、他の性質は、クラッドアルミニウム合金製品の作製または製造で使用される、作製または製作プロセスにより付与されることができる。

【0015】

アルミニウム合金製品を他の金属部品（例えばアルミニウム、鋼鉄、銅部品など）に接合するプロセスにおいて、金属部品上に存在する酸化被膜は長い間、安定したろう付け接合部を形成すのに有害なものとして認識されてきた。接合される部品を化学的に洗浄することは典型的に、厚みのある酸化被膜を取り除くために必要であり、この後、ろう付け接着の間に個別の腐食性フラックスを用いることが続く。フラックスを用いることで酸化物が取り除かれ、これにより、溶融したろう付け合金が酸化物のない表面と接触し、必要な接合部を形成する。しかし、フラックスを用いることが、濡れ性及び流動性に対する補助となる一方で、その後に完全に取り除くことは困難であり、多くの場合不可能である。最終接合部にトラップされるあらゆるフラックスは、強度及び腐食の視点の両方から、有害である可能性がある。特に、熱交換器においては、高い機械的強度、腐食耐性、及び漏れのない熱交換器を実現するために、良好なろう付け接合部が必要である。本願のアルミニウム合金組成物は、クラッド層として使用するためのアルミニウム合金をもたらし、腐食性フラックスを用いることなく、ろう付けされた接合部を形成するための能力を有する。

【0016】

本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）の組成物としては、クラッドアルミニウム合金製品に接合される金属部品の表面で酸化被膜と接し、フラックスを必要とせずに酸化被膜を低減する、または取り除くための、プロモーター剤を含む。クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）内で複数のプロモーター剤を組み合わせることにより、接合される金属部品上での酸化被膜が減少し、これによりフラックスレスろう付けが可能となる。加えて、クラッド層（複数可）の組成物中のプロモーター剤は、溶融したクラッド層（複数可）が湿り、卑金属に適合する能力を改善し、結果として、固相線温度を下回って冷却されたときに、卑金属への強力な結合を形成する。クラッド層（複数可）は、溶融状態にあるときに、溶融したクラッド層（複数可）の粘度に影響を及ぼし、溶融したクラッド層（複数可）の表面張力を低下させ、クラッドアルミニウム合金製品に接合される金属部品の湿りを改善する要素の相乗組み合わせを有する。

【0017】

本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品は、クラッドアルミニウム合金製品の表面を別の金属表面に、ろう付けにより接合することを必要とし得る製作または製造プロセスで使用するのに好適である。クラッドアルミニウム合金製品は、熱交換器、または他の用途を含む、工業用途で使用することができる。熱交換器において、クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）は、熱交換器の構成要素（例えば、コア合金が取り付けられる管）用のろう付け接合部を形成する。ろう付けは、クラッドアルミニウム合金製品が、融点より上で加熱され、毛管現象により２つ以上のぴったりと合った部品の間に分配される、金属接合プロセスである。本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品がろう付けプロセスで使用されるとき、クラッド層（複数可）は溶融し、毛管現象により、ろう付けされた複数の構成要素管の接触点まで流れる溶加材となる。ろう付けのために接合される両方、または全ての部品がクラッドアルミニウム合金で作製される必要はないことが理解されるべきである。少なくともいくつかの場合においては、接合されているこれらの部品のうちのある部品のみがクラッドアルミニウム合金で作製されれば十分である。例えば、クラッド管ストックは、ラジエーターまたはエバポレーター内で、非クラッドフィン合金に接合されることができる。別の非限定的実施例において、クラッドフィンは、コンデンサー内で非クラッド押出成形管に接合されることができる。ろう付け及びその関連プロセスにおけるクラッドアルミニウム合金の使用、及び例えばろう付けを伴う製造プロセスに従って製作された物体などの得られる製品は、一般に「ろう付け用途」と呼ばれる。

【0018】

本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）は、フィラー材料の溶融を制御し、接合される金属の酸化被膜内での孔形成を促進し、プロモーター剤を輸送して、ろう付け用途の間に金属部品上で酸化被膜と接する、及び／または酸化被膜を取り除くことにより、ろう付け用途における接合部形成に必要な、改善された濡れ性及び流動性を示す。具体的には、クラッドアルミニウム合金製品（例えば、１つまたは両方のクラッド層）は、フラックスレスろう付け用途用のフィラー合金として（例えば、熱交換器内で銅またはアルミニウム合金と組み合わせて使用するためのクラッドアルミニウム合金として）特に有用な製品をもたらす、特定の量のマグネシウム（Ｍｇ）、ビスマス（Ｂｉ）、アンチモン（Ｓｂ）、ストロンチウム（Ｓｒ）、ナトリウム（Ｎａ）、チタン（Ｔｉ）、及び／または他の成分（本明細書ではプロモーター剤と呼ばれる）を含む。例えば、Ｂｉ、Ｓｂ、Ｓｒ、Ｎａ、及び／またはＴｉと組み合わせた少量のＭｇ（例えば、０．５０重量％未満）は、相乗的に作用して、溶融したクラッドアルミニウム合金（例えばフィラー）がクラックを通って流れ、フラックスを用いることなく、安定したろう付け接合部を形成するように、接合される金属部品上で表面酸化膜にクラックを入れる。プロモーター剤は、金属部品の表面で曝露された酸化被膜を破壊し、構成要素間の接合表面が、溶融したクラッド層（複数可）により充填され、安定した接合部を形成することを可能にする。プロモーター剤（例えば、Ｍｇ、Ｂｉ、Ｓｂ、Ｓｒ、Ｎａ、及び／またはＴｉ）は、連続した、及び欠損のないろう付け接合部の形成を妨げる、金属部品の表面上の酸化被膜から酸素を破壊し、場合によってはこの酸素を抽出する。

【0019】

定義及び説明：
本明細書で使用される「発明（ｉｎｖｅｎｔｉｏｎ）」、「本発明（ｔｈｅ ｉｎｖｅｎｔｉｏｎ）」、「本発明（ｔｈｉｓ ｉｎｖｅｎｔｉｏｎ）」及び「本発明（ｔｈｅ ｐｒｅｓｅｎｔ ｉｎｖｅｎｔｉｏｎ）」という用語は、本特許出願の主題の全て及び以下の特許請求の範囲を広く指すことを意図している。これらの用語を含む記述は、本明細書で説明されている主題を制限するもの、または以下の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を制限するものではないと理解されるべきである。

【0020】

この説明では、「シリーズ」または「１ｘｘｘ」などのアルミニウム業界の名称で識別される合金について言及がなされている。アルミニウム及びその合金の命名及び識別に最も一般に使用される番号名称体系の理解については、「Ｉｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌ Ａｌｌｏｙ Ｄｅｓｉｇｎａｔｉｏｎｓ ａｎｄ Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｃｏｍｐｏｓｉｔｉｏｎ Ｌｉｍｉｔｓ ｆｏｒ Ｗｒｏｕｇｈｔ Ａｌｕｍｉｎｕｍ ａｎｄ Ｗｒｏｕｇｈｔ Ａｌｕｍｉｎｕｍ Ａｌｌｏｙｓ」または「Ｒｅｇｉｓｔｒａｔｉｏｎ Ｒｅｃｏｒｄ ｏｆ Ａｌｕｍｉｎｕｍ Ａｓｓｏｃｉａｔｉｏｎ Ａｌｌｏｙ Ｄｅｓｉｇｎａｔｉｏｎｓ ａｎｄ Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｃｏｍｐｏｓｉｔｉｏｎｓ Ｌｉｍｉｔｓ ｆｏｒ Ａｌｕｍｉｎｕｍ Ａｌｌｏｙｓ ｉｎ ｔｈｅ Ｆｏｒｍ ｏｆ Ｃａｓｔｉｎｇｓ ａｎｄ Ｉｎｇｏｔ」（両方ともアルミニウム協会により発行された）を参照のこと。

【0021】

本明細書で使用する場合、「ａ」、「ａｎ」、または「ｔｈｅ」の意味は、文脈が明確に別途指示しない限り、単数及び複数の指示対象を含む。

【0022】

本明細書で使用される場合、プレートは一般に、約１５ｍｍを超える厚さを有する。例えば、プレートは、約１５ｍｍを超える、約２０ｍｍを超える、約２５ｍｍを超える、約３０ｍｍを超える、約３５ｍｍを超える、約４０ｍｍを超える、約４５ｍｍを超える、約５０ｍｍを超える、または約１００ｍｍを超える厚さを有するアルミニウム製品を指し得る。

【0023】

本明細書で使用される場合、シート（シートプレートとも称される）は一般に、約４ｍｍ～約１５ｍｍの厚さを有する。例えば、シートは、約４ｍｍ、約５ｍｍ、約６ｍｍ、約７ｍｍ、約８ｍｍ、約９ｍｍ、約１０ｍｍ、約１１ｍｍ、約１２ｍｍ、約１３ｍｍ、約１４ｍｍ、または約１５ｍｍの厚さを有し得る。

【0024】

本明細書で使用される場合、シートは一般に、約４ｍｍ未満の厚さを有するアルミニウム製品を指す。例えば、シートは、約４ｍｍ未満、約３ｍｍ未満、約２ｍｍ未満、約１ｍｍ未満、約０．５ｍｍ未満、約０．３ｍｍ未満、または約０．１ｍｍ未満の厚さを有し得る。

【0025】

本出願では、合金の質別または調質に対する言及がなされる。最も一般的に使用されている合金調質の記述を理解するためには、「Ａｍｅｒｉｃａｎ Ｎａｔｉｏｎａｌ Ｓｔａｎｄａｒｄｓ（ＡＮＳＩ）Ｈ３５ ｏｎ Ａｌｌｏｙ ａｎｄ Ｔｅｍｐｅｒ Ｄｅｓｉｇｎａｔｉｏｎ Ｓｙｓｔｅｍｓ」を参照されたい。Ｆ調質または質別は、製作されたままのアルミニウム合金を指す。Ｏ調質または質別は、アニーリング後のアルミニウム合金を指す。本明細書ではＨ調質とも呼ばれるＨｘｘ調質または質別は、熱処理（例えば、アニーリング）の有無にかかわらず、冷間圧延後のアルミニウム合金を指す。好適なＨ調質としては、ＨＸ１、ＨＸ２、ＨＸ３、ＨＸ４、ＨＸ５、ＨＸ６、ＨＸ７、ＨＸ８、またはＨＸ９調質が挙げられる。例えば、アルミニウム合金は冷間圧延した場合のみ、可能なＨ１９調質となり得る。さらなる例では、アルミニウム合金を冷間圧延し、かつアニーリングして、可能なＨ２３調質となり得る。

【0026】

本明細書で使用される場合、「電気化学ポテンシャル」は、酸化還元反応に対する材料の影響の受けやすさを指す。電気化学ポテンシャルを使用して、本明細書に記載のアルミニウム合金製品の耐食性を評価することができる。マイナスの値は、プラスの電気化学ポテンシャルを有する材料と比較した場合に、容易に酸化する材料（例えば、電子を喪失する、または酸化状態を増加させる材料）を記述することができる。プラスの値は、マイナスの電気化学ポテンシャルを有する材料と比較した場合に、容易に還元する材料（例えば、電子を獲得する、または酸化状態を減少させる材料）を記述することができる。本明細書で使用される電気化学ポテンシャルは、大きさ及び方向を表すベクトル量である。

【0027】

本明細書で使用される場合、「室温」の意味は、約１５℃～約３０℃の温度、例えば、約１５℃、約１６℃、約１７℃、約１８℃、約１９℃、約２０℃、約２１℃、約２２℃、約２３℃、約２４℃、約２５℃、約２６℃、約２７℃、約２８℃、約２９℃、または約３０℃を含み得る。

【0028】

本明細書に開示の範囲は全て、それらに包含される任意のあらゆる部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、記載された範囲「１～１０」は、最小値１及び最大値１０間の（且つこれらを含む）任意のあらゆる部分範囲を含むと考えられるべきであり、すなわち、全ての部分範囲は、１以上の最小値、例えば、１～６．１から始まり、かつ１０以下の最大値、例えば、５．５～１０で終わる。

【0029】

本明細書で使用する場合、用語「制御された雰囲気でのろう付け」または「ＣＡＢ」とは、ろう付けプロセスで不活性雰囲気、例えば窒素、アルゴン、またはヘリウムを利用するろう付けプロセスを意味する。

【0030】

本明細書で使用する場合、「フィラー」とは、コアを他の材料物品にろう付けするために使用される、その液相線温度を上回って溶融するクラッドアルミニウム合金を意味する。

【0031】

以下のアルミニウム合金は、合金の総重量に基づく重量パーセント（重量％）での元素組成の観点から説明される。各合金の特定の例では、残部はアルミニウムであり、不純物の合計の最大重量％が、０．１５％である。

【0032】

クラッドアルミニウム合金製品
用語「クラッド化（ｃｌａｄｄｉｎｇ）」、「クラッド（ｃｌａｄ）」、「クラッド層（ｃｌａｄｄｉｎｇ ｌａｙｅｒ）」、「クラッド層（ｃｌａｄ ｌａｙｅｒ）」、及び関連する用語は概して、クラッドアルミニウム合金製品の、比較的薄い表面層を指すために使用される。用語「コア」、「コア層」、及び関連する用語は、クラッドアルミニウム合金製品の比較的厚い層を指すために使用される。いくつかの例では、クラッドアルミニウム合金製品（例えば、クラッドシートアルミニウム合金）は、コア層の両面（両側）にクラッド層を有することができ、この場合、コア層は実際、アルミニウム材料の内層である。しかし、クラッドアルミニウム合金製品（例えば、クラッドシートアルミニウム合金）は代替的に、コア層の一方の面のみにクラッド層を有することができ、この場合も、コア層は表面に存在することができる。コア層及びクラッド層（複数可）は典型的には、異なる化学組成を有する。場合によっては、クラッドアルミニウム合金製品は、異なる組成及び性質を有する、２つの異なるクラッド層を有することができる。

【0033】

ろう付け用途に好適なクラッドアルミニウム合金製品は必ずしも、１つのコア層と、１つまたは２つのクラッド層とを含有する必要がないことと理解されるべきである。クラッドアルミニウム合金製品は他の層（例えば、多層のアルミニウム材料を形成するための）を含有することができ、これらのいくつかは、「中間層」、「外層」、「ライナー」と、及び他の関連する用語により呼ばれることができる。例えば、クラッドアルミニウム合金製品は、それぞれが特定の機能を有する、２、３、４、５、６個、またはそれ以上の別個の層を有することができる。より一般的には、クラッドアルミニウム合金製品は、１つ以上の操作で互いに積層され結合可能なのと同じ数の層を有することができる。商業的な文脈において、１つの可能性のある制限因子は、作製コスト、及び／またはクラッドアルミニウム合金製品の作製中に生成されるスクラップであり、これらは、クラッドアルミニウム合金製品に対して層数が増加すると、多くなりすぎて商業的に利用不可能となる可能性がある。ろう付け用途に好適なクラッドアルミニウム合金製品の文脈において、１つ以上のクラッド層は、ろう付けサイクルの間に溶融する製品の一部であることができる。ライナーは、ろう付けサイクル中に溶融すると予想されず、クラッドアルミニウム合金製品に、腐食耐性または強度増加などの、いくつかの他の効果を付与し得る層であることができる。コアはまた、主たるコア層の片面または両面に、１つ以上の中間層などの複数層を含むことができる。

【0034】

いくつかの実施形態では、クラッドアルミニウム合金製品は、コア層と、少なくとも１つのクラッド層と、を含む。場合によっては、クラッドアルミニウム合金製品は、コア層と、第１のクラッド層と、第２のクラッド層と、を含む。これらの場合において、第１のクラッド層は、コア層の第１の面に隣接して接し、第１の界面を形成することができる（即ち、いかなる層も、第１のクラッド層とコア層の第１の面との間に介在しない）。第２のクラッド層は、コア層の第２の面に隣接して接し、第２の界面を形成することができる（即ち、いかなる層も、第２のクラッド層とコア層の第２の面との間に介在しない）。第１のクラッド層及び第２のクラッド層はそれぞれ、本明細書に記載する合金組成物を含むことができる。いくつかの実施形態では、コア層は片面のみが覆われている（クラッドされている）。その他の実施形態では、コア層は両面が覆われている（クラッドされている）。その他の実施形態では、コア層は、コア層の１つの面が覆われており（クラッドされており）及び水サイドライナーまたは他の層がコア層の他の面に配置されている。

【0035】

クラッドアルミニウム合金製品の１つ以上のクラッド層（複数可）の組成物としては、クラッドアルミニウム合金製品に接合される金属部品の表面で酸化被膜と接し、フラックスを必要とせずに酸化被膜を低減する、または取り除くための、プロモーター剤（例えば、Ｍｇ、Ｂｉ、Ｓｂ、Ｓｒ、Ｎａ、Ｔｉなど）を含む。クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）内で複数のプロモーター剤を組み合わせることにより、酸化アルミニウム被膜が減少し、これにより、製品のフラックスレスろう付けが可能となる。例えば、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）は、狭い範囲の温度にわたって溶融して流れ、クラッドアルミニウム合金製品に接合される金属部品の表面上の酸化被膜を破壊して充填し、傷みのない冶金接合部を形成する。

【0036】

クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）は溶融して、毛管現象により、ろう付けされる複数の構成要素間の接触点まで流れる溶加材となる。クラッド層（複数可）の組成物中のプロモーター剤は、溶融したクラッド層（複数可）が湿り、卑金属に適合する能力を改善し、結果として、固相線温度を下回って冷却されたときに、当該金属への強力な結合を形成する。加えて、クラッド層（複数可）の組成は、溶融したクラッド層（複数可）の改善された流動性（例えば、溶融したクラッド層が溶融状態で、その元の位置から、毛管力作用により移動する距離）もまた示す。クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）は、その組成が、卑金属の溶解により変化し得る場合でも、その液相線温度が測定可能な程度まで増加することはない。ろう付け操作は一般に、液相線温度の非常に近くで行われるため、このことはアルミニウムのろう付けにおいて重要である。いくつかの実施形態では、湿潤性及び流動性は、クラッドアルミニウム合金製品の溶融したクラッド層（複数可）とコア層との両方の機能である。

【0037】

本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品及び方法は、犠牲部品、充填剤部品、熱放散、包装、及び建築材料を含む、工業用途にて使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品は、熱交換器のアルミニウム合金部品で使用することができる。具体的には、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品は、フラックス操作を必要とすることなく、熱交換器のアルミニウム合金部品及び／または他の金属部品（例えば銅部品）との間で、ろう付けされた接合部を形成することができる。このようなクラッドアルミニウム合金製品で使用するのに好適なクラッド層及びコア層を、以下で説明する。

【0038】

クラッド層（複数可）
新規のアルミニウム合金を、本明細書で提供する。一実施形態では、アルミニウム合金は、コア層と組み合わせて１つ以上のクラッド層として使用し、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品を形成することができる。得られたクラッドアルミニウム合金製品は、管類の製作における腐食耐性ブレージングシートパッケージとしての使用を含む、様々な用途での使用に好適である。

【0039】

いくつかの例では、本明細書に記載するクラッド層として任意に使用するためのアルミニウム合金は、表１に示す以下の元素組成を有することができる。

【0040】

表１

【0041】

いくつかの例では、本明細書に記載するクラッド層として任意に使用するためのアルミニウム合金は、表２に示す以下の元素組成を有することができる。

【0042】

表２

【0043】

いくつかの例では、本明細書に記載するクラッド層として任意に使用するためのアルミニウム合金は、表３に示す以下の元素組成を有することができる。

【0044】

表３

【0045】

いくつかの例では、本明細書に記載するクラッド層として任意に使用するためのアルミニウム合金は、表４に示す以下の元素組成を有することができる。

【0046】

表４

【0047】

いくつかの例では、本明細書に記載するクラッド層として任意に使用するためのアルミニウム合金は、表５に示す以下の元素組成を有することができる。

【0048】

表５

【0049】

アルミニウム合金は、異なる濃度でケイ素（Ｓｉ）を含み、ろう付け用途に必要な、様々な溶融範囲を提供することができる。いくつかの例では、開示した合金は、合金の総重量に基づいて、約７．０％～約１４．０％（例えば、約８．０％～約１３．０％、約８．５％～約１１．０％、または９．０％～１０．５％）の量のＳｉを含む。例えば、合金は、約７．０％、約７．１％、約７．２％、約７．３％、約７．４％、約７．５％、約７．６％、約７．７％、約７．８％、約７．９％、約８．０％、約８．１％、約８．２％、約８．３％、約８．４％、約８．５％、約８．６％、約８．７％、約８．８％、約８．９％、約９．０％、約９．１％、約９．２％、約９．３％、約９．４％、約９．５％、約９．６％、約９．７％、約９．８％、約９．９％、約１０．０％、約１０．１％、約１０．２％、約１０．３％、約１０．４％、約１０．５％、約１０．６％、約１０．７％、約１０．８％、約１０．９％、約１１．０％、約１１．１％、約１１．２％、約１１．３％、約１１．４％、約１１．５％、約１１．６％、約１１．７％、約１１．８％、約１１．９％、約１２．０％、約１２．１％、約１２．２％、約１２．３％、約１２．４％、約１２．５％、約１２．６％、約１２．７％、約１２．８％、約１２．９％、約１３．０％、約１３．１％、約１３．２％、約１３．３％、約１３．４％、約１３．５％、約１３．６％、約１３．７％、約１３．８％、約１３．９％、または約１４．０％のＳｉを含むことができる。全てのパーセンテージが重量％で表される。

【0050】

本明細書に記載するアルミニウム合金は、加工後に、固溶体中に比較的少量の鉄（Ｆｅ）を含むことができる。Ｆｅは、Ｍｎ、Ｓｉ、及び他の元素を含み得る、金属間成分を形成することができる。組成物中のＦｅ含有量を制御して、クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層の有益な性質に寄与しない大部分の成分を排除することが有益である。いくつかの例では、合金は、合金の総重量に基づいて、約０．０５％～約１．０％（例えば、約０．１０％～約０．９０％、約０．１５％～約０．５０％、または０．１５％～０．２５％）の量のＦｅを含む。例えば、合金は、約０．０５％、約０．０６％、約０．０７％、約０．０８％、約０．０９％、約０．１０％、約０．１１％、約０．１２％、約０．１３％、約０．１４％、約０．１５％、約０．１６％、約０．１７％、約０．１８％、約０．１９％、約０．２０％、約０．２１％、約０．２２％、約０．２３％、約０．２４％、約０．２５％、約０．２６％、約０．２７％、約０．２８％、約０．２９％、約０．３０％、約０．３１％、約０．３２％、約０．３３％、約０．３４％、約０．３５％、約０．３６％、約０．３７％、約０．３８％、約０．３９％、約０．４０％、約０．４１％、約０．４２％、約０．４３％、約０．４４％、約０．４５％、約０．４６％、約０．４７％、約０．４８％、約０．４９％、約０．５０％、約０．５１％、約０．５２％、約０．５３％、約０．５４％、約０．５５％、約０．５６％、約０．５７％、約０．５８％、約０．５９％、約０．６０％、約０．６１％、約０．６２％、約０．６３％、約０．６４％、約０．６５％、約０．６６％、約０．６７％、約０．６８％、約０．６９％、約０．７０％、約０．７１％、約０．７２％、約０．７３％、約０．７４％、約０．７５％、約０．７６％、約０．７７％、約０．７８％、約０．７９％、約０．８０％、約０．８１％、約０．８２％、約０．８３％、約０．８４％、約０．８５％、約０．８６％、約０．８７％、約０．８８％、約０．８９％、約０．９０％、約０．９１％、約０．９２％、約０．９３％、約０．９４％、約０．９５％、約０．９６％、約０．９７％、約０．９８％、約０．９９％、または約１．０％のＦｅを含むことができる。全てのパーセンテージが重量％で表される。

【0051】

本明細書に記載するアルミニウム合金は、アルミニウム合金の強度を増加させるために銅（Ｃｕ）を含むことができる。濃度に応じて、Ｃｕは例えば、クラッド層としてのアルミニウム合金を含むクラッドアルミニウム合金製品の腐食耐性に効果を及ぼすことができる。例えば、いくつかの実施形態に従ったアルミニウム合金において、固溶体中のＣｕは、マトリックスの腐食電位と、共晶系中でのＳｉ粒子との間の広がりを低下させることにより、腐食耐性を増加させることができる。いくつかの例では、開示した合金は、合金の総重量に基づいて、約０．０１％～約０．６０％（例えば、約０．０１％～約０．５０％、約０．０１％～約０．４０％、または０．３０％～０．４０％）の量のＣｕを含む。例えば、合金は、約０．０１％、約０．０２％、約０．０３％、約０．０４％、約０．０５％、約０．０６％、約０．０７％、約０．０８％、約０．０９％、約０．１０％、約０．１１％、約０．１２％、約０．１３％、約０．１４％、約０．１５％、約０．１６％、約０．１７％、約０．１８％、約０．１９％、約０．２０％、約０．２１％、約０．２２％、約０．２３％、約０．２４％、約０．２５％、約０．２６％、約０．２７％、約０．２８％、約０．２９％、約０．３０％、約０．３１％、約０．３２％、約０．３３％、約０．３４％、約０．３５％、約０．３６％、約０．３７％、約０．３８％、約０．３９％、約０．４０％、約０．４１％、約０．４２％、約０．４３％、約０．４４％、約０．４５％、約０．４６％、約０．４７％、約０．４８％、約０．４９％、約０．５０％、約０．５１％、約０．５２％、約０．５３％、約０．５４％、約０．５５％、約０．５６％、約０．５７％、約０．５８％、約０．５９％、または約０．６０％のＣｕを含むことができる。全てのパーセンテージが重量％で表される。

【0052】

いくつかの例では、合金は、合金の総重量に基づいて、約０．０１％～約０．３０％（例えば、約０．０５％～約０．２０％、約０．０５％～約０．１５％、または０．１０％～０．１５％）の量のマンガン（Ｍｎ）を含むことができる。例えば、合金は、約０．０１％、約０．０２％、約０．０３％、約０．０４％、約０．０５％、約０．０６％、約０．０７％、約０．０８％、約０．０９％、約０．１０％、約０．１１％、約０．１２％、約０．１３％、約０．１４％、約０．１５％、約０．１６％、約０．１７％、約０．１８％、約０．１９％、約０．２０％、約０．２１％、約０．２２％、約０．２３％、約０．２４％、約０．２５％、約０．２６％、約０．２７％、約０．２８％、約０．２９％、または約０．３０％のＭｎを含むことができる。全てのパーセンテージが重量％で表される。

【0053】

アルミニウム合金は少量のＭｇを含み、合金がクラッドアルミニウム合金製品でクラッド層として使用されるときに、ろう付け性能を改善することができる。ろう付け用途において、Ｍｇは酸化被膜内の酸素を引き出し、クラックを入れて膜が連続的にならないようになる。少量のＭｇは、フラックス非含有ろう付け法における良好なろう付け能力を提供する。いくつかの例では、合金は、合金の総重量に基づいて、約０．０１％～約０．５０％（例えば、約０．０５％～約０．４０％、約０．１０％～約０．３５％、または０．１５％～０．２５％）の量のＭｇを含むことができる。例えば、合金は、約０．０１％、約０．０２％、約０．０３％、約０．０４％、約０．０５％、約０．０６％、約０．０７％、約０．０８％、約０．０９％、約０．１０％、約０．１１％、約０．１２％、約０．１３％、約０．１４％、約０．１５％、約０．１６％、約０．１７％、約０．１８％、約０．１９％、約０．２０％、約０．２１％、約０．２２％、約０．２３％、約０．２４％、約０．２５％、約０．２６％、約０．２７％、約０．２８％、約０．２９％、約０．３０％、約０．３１％、約０．３２％、約０．３３％、約０．３４％、約０．３５％、約０．３６％、約０．３７％、約０．３８％、約０．３９％、約０．４０％、約０．４１％、約０．４２％、約０．４３％、約０．４４％、約０．４５％、約０．４６％、約０．４７％、約０．４８％、約０．４９％、または約０．５０％のＭｇを含むことができる。全てのパーセンテージが重量％で表される。

【0054】

いくつかの例では、合金は、合金の総重量に基づいて、最大約０．６０％（例えば、約０％～約０．６０％、約０．０１％～約０．５０％、０．０５％～０．４０％、または約０．１０％～約０．３０％）の量の亜鉛（Ｚｎ）を含む。例えば、合金は、約０．０１％、約０．０２％、約０．０３％、約０．０４％、約０．０５％、約０．０６％、約０．０７％、約０．０８％、約０．０９％、約０．１０％、約０．１１％、約０．１２％、約０．１３％、約０．１４％、約０．１５％、約０．１６％、約０．１７％、約０．１８％、約０．１９％、約０．２０％、約０．２１％、約０．２２％、約０．２３％、約０．２４％、約０．２５％、約０．２６％、約０．２７％、約０．２８％、約０．２９％、約０．３０％、約０．３１％、約０．３２％、約０．３３％、約０．３４％、約０．３５％、約０．３６％、約０．３７％、約０．３８％、約０．３９％、約０．４０％、約０．４１％、約０．４２％、約０．４３％、約０．４４％、約０．４５％、約０．４６％、約０．４７％、約０．４８％、約０．４９％、約０．５０％、約０．５１％、約０．５２％、約０．５３％、約０．５４％、約０．５５％、約０．５６％、約０．５７％、約０．５８％、約０．５９％、または約０．６０％のＺｎを含むことができる。いくつかの例では、Ｚｎは合金中に存在しない（即ち、０％である）。全てのパーセンテージが重量％で表される。

【0055】

いくつかの例では、合金は、合金の総重量に基づいて、約０．００１％～約０．５０％（例えば、約０．０１％～約０．４０％、約０．０５％～約０．３０％、または０．１０％～０．２５％）の量のＢｉを含む。例えば、合金は、約０．００１％、約０．００２％、約０．００３％、約０．００４％、約０．００５％、約０．００６％、約０．００７％、約０．００８％、約０．００９％、約０．０１％、約０．０２％、約０．０３％、約０．０４％、約０．０５％、約０．０６％、約０．０７％、約０．０８％、約０．０９％、約０．１０％、約０．１１％、約０．１２％、約０．１３％、約０．１４％、約０．１５％、約０．１６％、約０．１７％、約０．１８％、約０．１９％、約０．２０％、約０．２１％、約０．２２％、約０．２３％、約０．２４％、約０．２５％、約０．２６％、約０．２７％、約０．２８％、約０．２９％、約０．３０％、約０．３１％、約０．３２％、約０．３３％、約０．３４％、約０．３５％、約０．３６％、約０．３７％、約０．３８％、約０．３９％、約０．４０％、約０．４１％、約０．４２％、約０．４３％、約０．４４％、約０．４５％、約０．４６％、約０．４７％、約０．４８％、約０．４９％、または約０．５０％のＢｉを含むことができる。全てのパーセンテージが重量％で表される。

【0056】

いくつかの例では、合金は、合金の総重量に基づいて、約０．３０％以下（例えば、約０％～約０．３０％、約０．００１％～約０．２０％、または約０．０１％～約０．１５％）の量のＳｂを含む。例えば、合金は、約０．００１％、約０．００２％、約０．００３％、約０．００４％、約０．００５％、約０．００６％、約０．００７％、約０．００８％、約０．００９％、約０．０１％、約０．０２％、約０．０３％、約０．０４％、約０．０５％、約０．０６％、約０．０７％、約０．０８％、約０．０９％、約０．１０％、約０．１１％、約０．１２％、約０．１３％、約０．１４％、約０．１５％、約０．１６％、約０．１７％、約０．１８％、約０．１９％、約０．２０％、約０．２１％、約０．２２％、約０．２３％、約０．２４％、約０．２５％、約０．２６％、約０．２７％、約０．２８％、約０．２９％、または約０．３０％のＳｂを含むことができる。場合によっては、Ｓｂは合金中に存在しない（即ち０％である）。全てのパーセンテージが重量％で表される。

【0057】

いくつかの例では、合金は、合金の総重量に基づいて、約０．２０％以下（例えば、約０％～約０．１５％、約０．００１％～約０．１０％、または約０．０１％～約０．０５％）の量のＳｒを含む。例えば、合金は、約０．００１％、約０．００２％、約０．００３％、約０．００４％、約０．００５％、約０．００６％、約０．００７％、約０．００８％、約０．００９％、約０．０１％、約０．０２％、約０．０３％、約０．０４％、約０．０５％、約０．０６％、約０．０７％、約０．０８％、約０．０９％、約０．１０％、約０．１１％、約０．１２％、約０．１３％、約０．１４％、約０．１５％、約０．１６％、約０．１７％、約０．１８％、約０．１９％、または約０．２０％のＳｒを含むことができる。場合によっては、Ｓｒは合金中に存在しない（即ち０％である）。全てのパーセンテージが重量％で表される。

【0058】

いくつかの例では、合金は、合金の総重量に基づいて、約０．２０％以下（例えば、約０％～約０．１５％、約０．０００１％～約０．１０％、または約０．０００４％～約０．１０％）の量のＮａを含む。例えば、合金は、約０．０００１％、約０．０００２％、約０．０００３％、約０．０００４％、約０．０００５％、約０．０００６％、約０．０００７％、約０．０００８％、約０．０００９％、約０．００１％、約０．００２％、約０．００３％、約０．００４％、約０．００５％、約０．００６％、約０．００７％、約０．００８％、約０．００９％、約０．０１％、約０．０２％、約０．０３％、約０．０４％、約０．０５％、約０．０６％、約０．０７％、約０．０８％、約０．０９％、約０．１０％、約０．１１％、約０．１２％、約０．１３％、約０．１４％、約０．１５％、約０．１６％、約０．１７％、約０．１８％、約０．１９％、または約０．２０％のＳｂを含むことができる。場合によっては、Ｎａは合金中に存在しない（即ち０％である）。全てのパーセンテージが重量％で表される。

【0059】

いくつかの例では、合金は、合金の総重量に基づいて、約０．２５％以下（例えば、約０％～約０．２５％、約０．００１％～約０．２０％、または約０．０１％～約０．１０％）の量のＴｉを含む。例えば、合金は、約０．００１％、約０．００２％、約０．００３％、約０．００４％、約０．００５％、約０．００６％、約０．００７％、約０．００８％、約０．００９％、約０．０１％、約０．０２％、約０．０３％、約０．０４％、約０．０５％、約０．０６％、約０．０７％、約０．０８％、約０．０９％、約０．１０％、約０．１１％、約０．１２％、約０．１３％、約０．１４％、約０．１５％、約０．１６％、約０．１７％、約０．１８％、約０．１９％、約０．２０％、約０．２１％、約０．２２％、約０．２３％、約０．２４％、または約０．２５％のＴｉを含むことができる。場合によっては、Ｔｉは合金中に存在しない（即ち０％である）。全てのパーセンテージが重量％で表される。上述の量のチタンが、溶融状態のクラッドアルミニウム合金の湿潤性を改善することができることが発見された。

【0060】

いくつかの例では、合金は、合金の総重量に基づいて、約０．１０％以下（例えば、約０％～約０．０５％、約０．００１％～約０．０４％、または約０．０１％～約０．０３％）の量のクロム（Ｃｒ）を含む。例えば、合金は、約０．００１％、約０．００２％、約０．００３％、約０．００４％、約０．００５％、約０．００６％、約０．００７％、約０．００８％、約０．００９％、約０．０１％、約０．０２％、約０．０３％、約０．０４％、約０．０５％、約０．０６％、約０．０７％、約０．０８％、約０．０９％、または約０．１０％のＣｒを含むことができる。場合によっては、Ｃｒは合金中に存在しない（即ち０％である）。全てのパーセンテージが重量％で表される。

【0061】

任意により、合金組成物は、それぞれ、約０．０５％以下、０．０４％以下、０．０３％以下、０．０２％以下、または０．０１％以下の量の、不純物と呼ばれる場合がある他の微量元素もさらに含み得る。これらの不純物は、Ｇａ、Ｖ、Ｎｉ、Ｓｃ、Ａｇ、Ｂ、Ｚｒ、Ｌｉ、Ｐｂ、Ｓｎ、Ｃａ、Ｈｆ、またはそれらの組み合わせを含んでよいが、これらに限定されない。したがって、Ｇａ、Ｖ、Ｎｉ、Ｓｃ、Ａｇ、Ｂ、Ｚｒ、Ｌｉ、Ｐｂ、Ｓｎ、Ｃａ、またはＨｆは、０．０５％以下、０．０４％以下、０．０３％以下、０．０２％以下、または０．０１％以下の量で合金中に存在してもよい。特定の態様では、全ての不純物の合計は、０．１５％を超えない（例えば、０．１０％）。
全てのパーセンテージが重量％で表される。特定の態様では、合金の残りのパーセンテージは、アルミニウムである。

【0062】

クラッド層（複数可）の厚さは、１マイクロメートルから１００マイクロメートルであることができる。例えば、クラッド層（複数可）は、５マイクロメートル～９０マイクロメートル、１０マイクロメートル～８０マイクロメートル、１５マイクロメートル～７０マイクロメートル、２０マイクロメートル～６０マイクロメートル、２５マイクロメートル～５５マイクロメートル、３０マイクロメートル～５０マイクロメートル、５マイクロメートル～５０マイクロメートル、１０マイクロメートル～４０マイクロメートル、または１５マイクロメートル～３５マイクロメートルであることができる。

【0063】

クラッド層（複数可）の厚さはそれぞれ、クラッドアルミニウム合金製品内のコア層の厚さの４０％以下であることができる。例えば、クラッド層（複数可）は、クラッドアルミニウム合金製品内のコア層の厚さの４０％、３９％、３８％、３７％、３６％、３５％、３４％、３３％、３２％、３１％、３０％、２９％、２８％、２７％、２６％、２５％、２４％、２３％、２２％、２１％、２０％、１９％、１８％、１７％、１６．５％、１６％、１５．５％、１５％、１４．５％、１４％、１３．５％、１３％、１２．５％、１２％、１１．５％、１１％、１０．５％、１０％、９．５％、９％、８．５％、８％、７．５％、７％、６．５％、または６％であることができる。

【0064】

いくつかの実施形態では、クラッド層（複数可）の開始温度は、ろう付けした接合部の性質を制御するのに重要である。開始温度とは、アルミニウム合金、この場合、クラッド層（複数可）が溶融を開始する温度（即ち、溶融の開始）を意味する。本明細書に記載するクラッド層（複数可）は、アルミニウム合金製品（例えば熱交換器）での、コア層と他の構成要素との間での、溶融クラッド層（複数可）の良好な拡大を促進する開始温度を有する。クラッド層（複数可）の開始温度が高い（例えば、６００℃以上である）場合、溶融したクラッド層（複数可）が十分に拡大せず、固体接合部を形成しないために、良好なろう付け接合部を形成する能力が低下する。いくつかの実施形態では、クラッド層（複数可）の開始温度は、約５００℃～約６００℃（例えば、約５１０℃～約５９５℃、約５２５℃～約５９０℃、約５４０℃～約５８５℃、約５５０℃～約５８０℃、または約５６０℃～約５７５℃）である。いくつかの実施形態では、クラッド層（複数可）の開始温度は、約５６０℃～約５８０℃である。

【0065】

加えて、低い溶融温度を有するクラッド層（複数可）は、溶融時に増加した流動性を示す。クラッド層（複数可）の溶融点が高い場合、固体接合部を形成するために利用可能な、溶融したクラッド層が十分に存在しないため、加工性、または良好なろう付け接合部を形成する能力が低下する。いくつかの実施形態では、クラッド層（複数可）の溶融点は、約６００℃～約７００℃（例えば、約６１０℃～約６９０℃、約６１５℃～約６８０℃、約６２０℃～約６７０℃、約６３０℃～約６６０℃、または約６４０℃～約６６５℃）である。いくつかの実施形態では、１つ以上のクラッド層（複数可）は異なる組成を有し、故に異なる開始温度及び溶融点を有する。

【0066】

コア層
本開示は、少なくとも１つのクラッドアルミニウム合金層と、１つのコア層と、を含むクラッドアルミニウム合金製品をさらに提供する。コアアルミニウム合金は、「長寿命コア合金」と一般に呼ばれる合金であることができ、コア層が、コアを通して腐食を遅らせるメカニズムを用いることを意味する。このような合金の一例は、米国特許第９，５４６，８２９号に記載されており、その内容が参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第９，５４６，８２９号に記載のとおり、コア合金中のＳｉ含有量が多いと、ＡｌＭｎＳｉ分散質の形成がもたらされ、マトリックスの分散質強化をもたらす。結果は、Ｓｉが存在することにより、ろう付けの間に、最大０．４％の高いＳｉ含有量においてさえも、効果的な高密度析出物バンド（ＤＰＢ）の形成がもたらされることもまた示し、これにより、ろう付け後の腐食耐性の改善がもたされれる。加えて、本特許は、多くのＦｅ含有量が存在することにより、ろう付け後のより高い強度がもたらされることを開示する。Ｆｅ含有量が多いと、コア層での有害な腐食挙動をもたらし得るものの、この効果は、ろう付け後条件にてＴｉを添加し、Ｔｉ豊富なバンドを作製することにより緩和され、腐食挙動が改善された。理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金を、Ｔｉを含むコアアルミニウム合金と共に用いることで、ろう付けパッケージに、改善された腐食耐性が効果的に付与されたことが発見された。

【0067】

いくつかの実施形態では、コア層は、３ｘｘｘシリーズのアルミニウム合金、または、６ｘｘｘシリーズのアルミニウム合金である。本明細書に記載するコア層で使用するための、好適な３ｘｘｘシリーズのアルミニウム合金としては、例えば、ＡＡ３００２、ＡＡ３１０２、ＡＡ３００３、ＡＡ３１０３、ＡＡ３１０３Ａ、ＡＡ３１０３Ｂ、ＡＡ３２０３、ＡＡ３４０３、ＡＡ３００４、ＡＡ３００４Ａ、ＡＡ３１０４、ＡＡ３２０４、ＡＡ３３０４、ＡＡ３００５、ＡＡ３００５Ａ、ＡＡ３１０５、ＡＡ３１０５Ａ、ＡＡ３１０５Ｂ、ＡＡ３００７、ＡＡ３１０７、ＡＡ３２０７、ＡＡ３２０７Ａ、ＡＡ３３０７、ＡＡ３００９、ＡＡ３０１０、ＡＡ３１１０、ＡＡ３０１１、ＡＡ３０１２、ＡＡ３０１２Ａ、ＡＡ３０１３、ＡＡ３０１４、ＡＡ３０１５、ＡＡ３０１６、ＡＡ３０１７、ＡＡ３０１９、ＡＡ３０２０、ＡＡ３０２１、ＡＡ３０２５、ＡＡ３０２６、ＡＡ３０３０、ＡＡ３１３０、及びＡＡ３０６５が挙げられる。

【0068】

本明細書に記載するコア層で使用するための、好適な６ｘｘｘシリーズのアルミニウム合金としては、例えば、ＡＡ６１０１、ＡＡ６１０１Ａ、ＡＡ６１０１Ｂ、ＡＡ６２０１、ＡＡ６２０１Ａ、ＡＡ６４０１、ＡＡ６５０１、ＡＡ６００２、ＡＡ６００３、ＡＡ６１０３、ＡＡ６００５、ＡＡ６００５Ａ、ＡＡ６００５Ｂ、ＡＡ６００５Ｃ、ＡＡ６１０５、ＡＡ６２０５、ＡＡ６３０５、ＡＡ６００６、ＡＡ６１０６、ＡＡ６２０６、ＡＡ６３０６、ＡＡ６００８、ＡＡ６００９、ＡＡ６０１０、ＡＡ６１１０、ＡＡ６１１０Ａ、ＡＡ６０１１、ＡＡ６１１１、ＡＡ６０１２、ＡＡ６０１２Ａ、ＡＡ６０１３、ＡＡ６１１３、ＡＡ６０１４、ＡＡ６０１５、ＡＡ６０１６、ＡＡ６０１６Ａ、ＡＡ６１１６、ＡＡ６０１８、ＡＡ６０１９、ＡＡ６０２０、ＡＡ６０２１、ＡＡ６０２２、ＡＡ６０２３、ＡＡ６０２４、ＡＡ６０２５、ＡＡ６０２６、ＡＡ６０２７、ＡＡ６０２８、ＡＡ６０３１、ＡＡ６０３２、ＡＡ６０３３、ＡＡ６０４０、ＡＡ６０４１、ＡＡ６０４２、ＡＡ６０４３、ＡＡ６１５１、ＡＡ６３５１、ＡＡ６３５１Ａ、ＡＡ６４５１、ＡＡ６９５１、ＡＡ６０５３、ＡＡ６０５５、ＡＡ６０５６、ＡＡ６１５６、ＡＡ６０６０、ＡＡ６１６０、ＡＡ６２６０、ＡＡ６３６０、ＡＡ６４６０、ＡＡ６４６０Ｂ、ＡＡ６５６０、ＡＡ６６６０、ＡＡ６０６１、ＡＡ６０６１Ａ、ＡＡ６２６１、ＡＡ６３６１、ＡＡ６１６２、ＡＡ６２６２、ＡＡ６２６２Ａ、ＡＡ６０６３、ＡＡ６０６３Ａ、ＡＡ６４６３、ＡＡ６４６３Ａ、ＡＡ６７６３、Ａ６９６３、ＡＡ６０６４、ＡＡ６０６４Ａ、ＡＡ６０６５、ＡＡ６０６６、ＡＡ６０６８、ＡＡ６０６９、ＡＡ６０７０、ＡＡ６０８１、ＡＡ６１８１、ＡＡ６１８１Ａ、ＡＡ６０８２、ＡＡ６０８２Ａ、ＡＡ６１８２、ＡＡ６０９１、及びＡＡ６０９２が挙げられる。

【0069】

いくつかの実施形態では、クラッドアルミニウム合金製品は腐食耐性を有し、熱交換器用管類の製作で使用するためのろう付けパッケージを提供する。いくつかの実施形態では、クラッドアルミニウム合金製品は、約０．１０重量％～約０．２０重量％のＴｉを含むアルミニウム含有合金のコア層を含む。いくつかの実施形態では、コア層は、約０．２５重量％以下のＳｉ、約０．３５重量％以下のＦｅ、約０．５０重量％～約０．６５重量％のＣｕ、約１．４重量％～約１．６重量％のＭｎ、約０．０６重量％～約０．６２重量％のＭｇ、約０．０５重量％以下のＣｒ、約０．０４重量％以下のＺｎ、約０．１０重量％～約０．２０重量％のＴｉ、約０．０５重量％以下のＳｒ、約０．１５重量％以下の不純物、及びアルミニウムを含む合金で作製される。いくつかの実施形態では、コア層は、約０．２５重量％以下のＳｉ、約０．２５重量％以下のＦｅ、約０．５０重量％～約０．６５重量％のＣｕ、約１．４重量％～約１．６重量％のＭｎ、約０．０６重量％～約０．１４重量％のＭｇ、約０．０５重量％以下のＣｒ、約０．０４重量％以下のＺｎ、約０．１０重量％～約０．２０重量％のＴｉ、約０．０５重量％以下のＳｒ、約０．１５重量％以下の不純物、及びアルミニウムを含む合金で作製される。

【0070】

いくつかの実施形態では、コア合金は、約０．０４重量％～約０．４０重量％のＳｉ、約０．５０重量％～約１．０重量％のＣｕ、約０．００５重量％～約０．１５重量％のＴｉ、約０．２０重量％～約０．５０重量％のＦｅ、約０．０重量％～約０．２９重量％のＭｇ、約１．４重量％～約１．７０重量％のＭｎ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。さらに別の実施形態では、コア合金は、約０．０５重量％～約０．３４重量％のＳｉ、約０．５０重量％～約０．９５重量％のＣｕ、約０．０１重量％～約０．１５重量％のＴｉ、約０．２５重量％～約０．４５重量％のＦｅ、約０．０重量％～約０．２７重量％のＭｇ、約１．４５重量％～約１．６５重量％のＭｎ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。別の実施形態では、コア合金は、約０．１６重量％～約０．５０重量％のＳｉ、約０．５０重量％～約１．１重量％のＣｕ、約０．００１重量％～約０．２０重量％のＴｉ、約０．１５重量％～約０．５５重量％のＦｅ、約０．０重量％～約０．３５重量％のＭｇ、約１．３重量％～約１．８重量％のＭｎ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。さらに別の実施形態では、コア合金は、約０．１６重量％～約０．４０重量％のＳｉ、約０．５０重量％～約１．０重量％のＣｕ、約０．００５重量％～約０．１５重量％のＴｉ、約０．２０重量％～約０．５０重量％のＦｅ、約０．０重量％～約０．２９重量％のＭｇ、約１．４重量％～約１．７重量％のＭｎ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。さらに別の実施形態では、コア合金は、約０．１６重量％～約０．４０重量％のＳｉ、約０．５０重量％～約１．０重量％のＣｕ、約０．００５重量％～約０．１５重量％のＴｉ、約０．２０重量％～約０．４０重量％のＦｅ、約０．０重量％～約０．２９重量％のＭｇ、約１．４重量％～約１．７重量％のＭｎ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。別の実施形態では、コア合金は、約０．１６重量％～約０．３４重量％のＳｉ、約０．５０重量％～約０．９５重量％のＣｕ、約０．０１重量％～約０．１５重量％のＴｉ、約０．２５重量％～約０．４５重量％のＦｅ、約０．０重量％～約０．２７重量％のＭｇ、約１．４５重量％～約１．６５重量％のＭｎ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。さらに別の実施形態では、コア合金は、約０．２０重量％～約０．５０重量％のＳｉ、約０．５２重量％～約０．８０重量％のＣｕ、約０．１１重量％～約０．２０重量％のＴｉ、約０．２５重量％～約０．５５重量％のＦｅ、約０．０重量％～約０．２０重量％のＭｇ、約１．５１重量％～約１．８０重量％のＭｎ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。さらに別の実施形態では、コア合金は、約０．２０重量％～約０．５０重量％のＳｉ、約０．５２重量％～約０．７５重量％のＣｕ、約０．１１重量％～約０．２０重量％のＴｉ、約０．２５重量％～約０．５５重量％のＦｅ、約０．０重量％～約０．２０重量％のＭｇ、約１．５１重量％～約１．８０重量％のＭｎ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。さらに別の実施形態では、コア合金は、約０．２０重量％～約０．４０重量％のＳｉ、約０．５２重量％～約０．７０重量％のＣｕ、約０．１１重量％～約０．１８重量％のＴｉ、約０．２５重量％～約０．５５重量％のＦｅ、約０．０重量％～約０．２０重量％のＭｇ、約１．５１重量％～約１．７５重量％のＭｎ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。別の実施形態では、コア合金は、約０．２５重量％以下のＳｉ、約０．１５重量％～約０．５５重量％のＦｅ、約０．５０重量％～約０．６０重量％のＣｕ、約１．４重量％～約１．６重量％のＭｎ、約０．０６重量％～約０．１４重量％のＭｇ、約０．０５重量％以下のＣｒ、約０．０４重量％以下のＺｎ、約０．１０重量％～約０．２０重量％のＴｉ、約０．０５重量％以下のＳｒ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。さらに別の実施形態では、コア合金は、約０．１６重量％～約０．２５重量％のＳｉ、約０．１５重量％～約０．５５重量％のＦｅ、約０．５０重量％～約０．６０重量％のＣｕ、約１．４重量％～約１．６重量％のＭｎ、約０．０６重量％～約０．３０重量％のＭｇ、約０．０５重量％以下のＣｒ、約０．０４重量％以下のＺｎ、約０．１０重量％～約０．２０重量％のＴｉ、約０．０５重量％以下のＳｒ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。さらに別の実施形態では、コア合金は、約０．１６重量％～約０．２５重量％のＳｉ、約０．１５重量％～約０．５５重量％のＦｅ、約０．５０重量％～約０．６０重量％のＣｕ、約１．４重量％～約１．６重量％のＭｎ、約０．０重量％～約０．３０重量％のＭｇ、約０．０５重量％以下のＣｒ、約０．０４重量％以下のＺｎ、約０．１０重量％～約０．２０重量％のＴｉ、約０．０５重量％以下のＳｒ、約０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む。

【0071】

コア層の厚さは、約１００マイクロメートル～約４０００マイクロメートルであることができる。例えば、コア層は、約１５０マイクロメートル～約３５００マイクロメートル、約２００マイクロメートル～約３０００マイクロメートル、約２５０マイクロメートル～約２５００マイクロメートル、約３００マイクロメートル～約２０００マイクロメートル、約３５０マイクロメートル～約１５００マイクロメートル、約４００マイクロメートル～約１０００マイクロメートル、約４５０マイクロメートル～約９００マイクロメートル、約５００マイクロメートル～約８００マイクロメートル、または約５５０マイクロメートル～約７００マイクロメートルであることができる。

【0072】

コア層として使用するための上述の合金は、腐食耐性を有し、良好な機械的特性を有する。合金は、第１及び第２の界面（即ち、コア合金と、第１及び第２のクラッド層との間）にて、高密度析出物の犠牲バンドを作製するために配合される。本明細書で使用する場合、犠牲とは、高密度析出物バンド領域が、コア層よりも優先して腐食することを意味する。高密度析出物バンド領域は、ろう付けサイクルの間に形成することができる。このバンドは、全体が本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第５，０４１，３４３号、同第５，０３７，７０７号、同第６，０１９，９３９号、及び、国際特許出願番号第ＷＯ９４／２２６３３号に記載されているように、外側からの管の穿孔を防止し、コア層の腐食耐性を増強する。高密度析出物のバンドは典型的には、約２０～５０μｍ（例えば、約２５～４０μｍ）の厚さを有する。

【0073】

ブレージングシートパッケージ
クラッドアルミニウム合金製品は、当業者に既知の任意の製品方法を用いて、１つ以上のクラッド層（複数可）及び１つのコア層から作製することができる。例えば、クラッドアルミニウム合金製品は、熱間金属圧延などで、１つ以上のクラッド層（複数可）をコア層に接着することにより作製することができる。クラッドアルミニウム合金製品は、以下でより詳細に記載するように、溶融鋳込により形成することができる。任意により、クラッドアルミニウム合金製品は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第２００５／００１１６３０号に記載されているように、複合鋳造インゴットを熱間圧延及び冷間圧延することを含むプロセスにより作製することができる。得られたクラッドアルミニウム合金製品は、金属部品にろう付けされたときに、腐食に対する良好な耐性を付与する。

【0074】

いくつかの実施形態では、クラッドアルミニウム合金シートは、一旦形成されると、当業者に既知の管形成の任意の方法により、管形体に変換することができる。例えば、クラッドアルミニウム合金シートは、折り畳みまたは溶接により管形体に変換することができる。得られた管は例えば、熱交換器で使用することができる。任意により、クラッドアルミニウム合金シートから形成したシートまたは管に、フィンを取り付けることができる。

【0075】

調製及び加工方法
特定の態様では、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品の作製プロセスまたは製作プロセス、加えて、クラッドアルミニウム合金製品を用いる物体の製作プロセスもまた、本開示の範囲に含まれる。本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品は、本文書で記載及び図示する技術工程の少なくともいくつかを含むプロセスにより製作することができる。本文書に含有されるプロセスの説明及び図示は、非限定的なものであると理解されるべきである。本明細書に記載するプロセス工程は様々な方法で組み合わせて変更することができ、クラッドアルミニウム合金製品または形体、及びこのような合金製の物体を製作するために好適に用いることができる。本明細書では明示的に記載されていないものの、冶金、ならびにアルミニウム加工及び製作の領域で一般的に用いられるプロセス工程及び条件もまた、本開示の範囲に収まるプロセスに組み込むことができる。クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層の調製プロセスは、以下でより詳細に説明される。

【0076】

鋳造
本明細書に記載のクラッドアルミニウム合金製品のクラッド層は、当業者に知られているような鋳造方法を使用して鋳造され得る。例えば、鋳造プロセスは、直接チル（ＤＣ）鋳造プロセスを含み得る。ＤＣ鋳造プロセスは、当業者に知られている基準に従い行われる。ＤＣプロセスにより、インゴットをもたらすことができる。任意により、インゴットは後続加工の前に表面を削ることができる。任意により、鋳造プロセスは、ＤＣ鋳造プロセスの代わりに、連続鋳造（ＣＣ）プロセスを含み得る。

【0077】

いくつかの実施形態では、クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層は、商品名ＦＵＳＩＯＮ（商標）（Ｎｏｖｅｌｉｓ、Ａｔｌａｎｔａ、ＵＳ）とも呼ばれる場合があり、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第７，４７２，７４０号に記載されている、「溶融鋳込」を用いて鋳造することができる。一般に、溶融鋳込は、複合または多層金属インゴットを鋳造するプロセスである。ＦＵＳＩＯＮ（商標）（Ｎｏｖｅｌｉｓ、Ａｔｌａｎｔａ、ＵＳ）による鋳造が、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品の作製のために用いられる場合、クラッド層として用いるためのアルミニウム合金は、部分的に固体化したコア合金の１つのまたは両方の表面で固体化される。溶融鋳込プロセスは典型的には、供給端及び出口端を備えるモールドを用いる。溶融金属は供給端にて添加され、固体化したインゴットはモールドの出口端から抽出される。仕切壁を使用して、供給端を、少なくとも２つの個別の供給チャンバに仕切る。仕切り壁は、モールドの出口端の上で終了する。各供給チャンバは、少なくとも１つの他の供給チャンバに隣接する。隣接する供給チャンバの各対に対して、第１の合金の流れを、一対のチャンバのうちの１つに供給して、第１のチャンバ内で金属プールを形成する。第２の合金の流れを、一対の供給チャンバの第２のものを通して供給し、第２のチャンバ内で金属プールを形成する。第１の金属プールは、一対のチャンバの間の仕切壁と接触して第１のプールを冷却し、仕切壁に隣接する自立面を形成する。第２の金属プールは次いで、第１のプールと接するようになり、第２のプールがまず、自立面の温度が第１の合金の固相線温度を下回る箇所において、第１のプールの自立面と接する。２つの合金プールが２つの層として合わさって冷却され、複合または多層インゴットを形成し、これは「パッケージ」とも呼ぶことができる。溶融鋳込により得た多層インゴットは、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品の範囲に含まれる。

【0078】

次に、鋳造アルミニウム合金はさらなる処理工程に供することができる。例えば、本明細書に記載する加工方法は、均質化、熱間圧延、冷間圧延、及び／またはアニーリングの工程を含むことができる。

【0079】

均質化
均質化工程は、約、または、少なくとも約５７０℃（例えば、少なくとも約５７０℃、少なくとも約５８０℃、少なくとも約５９０℃、少なくとも約６００℃、少なくとも約６１０℃、またはこれらの間の任意の温度）の均質化温度を得るために、本明細書に記載する鋳造アルミニウム合金を加熱することを含むことができる。例えば、鋳造アルミニウム合金は、約５７０℃～約６２０℃、約５７５℃～約６１５℃、約５８５℃～約６１０℃、または約５９０℃～約６０５℃の温度まで加熱することができる。場合によっては、均質化温度までの加熱速度は、約１００℃／時以下、約７５℃／時以下、約５０℃／時以下、約４０℃／時以下、約３０℃／時以下、約２５℃／時以下、約２０℃／時以下、約１５℃／時以下、または約１０℃／時以下であることができる。他の場合によっては、均質化温度までの加熱速度は、約１０℃／分～約１００℃／分（例えば、約１０℃／分～約９０℃／分、約１０℃／分～約７０℃／分、約１０℃／分～約６０℃／分、約２０℃／分～約９０℃／分、約３０℃／分～約８０℃／分、約４０℃／分～約７０℃／分、または約５０℃／分～約６０℃／分）であることができる。

【0080】

いくつかの実施形態では、鋳造アルミニウム合金を次に、一定時間浸漬する（即ち、示した温度で保持する）。非限定的一実施例に従うと、鋳造アルミニウム合金は、約５時間以下（例えば、包括的に、約１０分～約５時間）で浸漬させる。例えば、鋳造アルミニウム合金は、少なくとも５７０℃の温度にて、１０分、２０分、３０分、１時間、２時間、３時間、４時間、５時間、またはこれらの間の任意の時間、浸漬することができる。

【0081】

いくつかの実施形態では、鋳造アルミニウム合金は、第１の温度から、第１の温度よりも低い第２の温度まで冷却することができる。いくつかの例では、第２の温度は、約５５５℃より高い（例えば、約５６０℃より高い、約５６５℃より高い、約５７０℃より高い、または約５７５℃より高い）。例えば、鋳造アルミニウム合金は、約５５５℃～約５９０℃、約５６０℃～約５７５℃、約５６５℃～約５８０℃、約５７０℃～約５８５℃、約５６５℃～約５７０℃、約５７０℃～約５９０℃、または約５７５℃～約５８５℃の第２温度まで冷却することができる。第２の温度への冷却速度は、約１０℃／分～約１００℃／分（例えば、約２０℃／分～約９０℃／分、約３０℃／分～約８０℃／分、約１０℃／分～約９０℃／分、約１０℃／分～約７０℃／分、約１０℃／分～約６０℃／分、約４０℃／分～約７０℃／分、または約５０℃／分～約６０℃／分）であることができる。

【0082】

いくつかの実施形態では、鋳造アルミニウム合金は次いで、一定時間、第２の温度にて浸漬させることができる。特定の場合においては、インゴットを約５時間以下（例えば、包括的に、１０分～５時間）浸漬させる。例えば、インゴットは、約５６０℃～約５９０℃の温度にて、１０分、２０分、３０分、１時間、２時間、３時間、４時間、５時間、またはこれらの間の任意の時間、浸漬することができる。

【0083】

熱間圧延
均質化工程に続いて、熱間圧延工程が実施され得る。特定の場合においては、鋳造アルミニウム合金は、約５６０℃～約６００℃のホットミル入口温度に熱間圧延される。例えば、入口温度は約５６０℃、約５６５℃、約５７０℃、約５７５℃、約５８０℃、約５８５℃、約５９０℃、約５９５℃、または約６００℃であることができる。特定の場合においては、熱間圧延出口温度は、約２９０℃～約３５０℃（例えば、約３１０℃～約３４０℃）の範囲であることができる。例えば、熱間圧延出口温度は、約２９０℃、約２９５℃、約３００℃、約３０５℃、約３１０℃、約３１５℃、約３２０℃、約３２５℃、約３３０℃、約３３５℃、約３４０℃、約３４５℃、約３５０℃、またはこの間の任意の温度であることができる。

【0084】

特定の場合においては、鋳造アルミニウム合金は、約２ｍｍ～約１５ｍｍ厚のゲージ（例えば、約２．５ｍｍ～約１２ｍｍ厚のゲージ）まで熱間圧延することができる。例えば、鋳造アルミニウム合金は、約２ｍｍ厚のゲージ、約２．５ｍｍ厚のゲージ、約３ｍｍ厚のゲージ、約３．５ｍｍ厚のゲージ、約４ｍｍ厚のゲージ、約５ｍｍ厚のゲージ、約６ｍｍ厚のゲージ、約７ｍｍ厚のゲージ、約８ｍｍ厚のゲージ、約９ｍｍ厚のゲージ、約１０ｍｍ厚のゲージ、約１１ｍｍ厚のゲージ、約１２ｍｍ厚のゲージ、約１３ｍｍ厚のゲージ、約１４ｍｍ厚のゲージ、または約１５ｍｍ厚のゲージまで熱間圧延することができる。特定の場合においては、鋳造アルミニウム合金は、１５ｍｍを超えるゲージ（即ち、プレート）まで熱間圧延することができる。他の場合、鋳造アルミニウム合金は４ｍｍ未満のゲージ（即ち、シート）まで熱間圧延することができる。

【0085】

冷間圧延
冷間圧延工程を、熱間圧延工程の後に行うことができる。特定の態様では、熱間圧延工程で圧延された製品を冷間圧延によりシート（例えば、約４．０ｍｍ未満）にすることができる。特定の態様では、圧延した製品を、約０．４ｍｍ～約１．０ｍｍ、約１．０ｍｍ～約３．０ｍｍ、または約３．０ｍｍ～約４．０ｍｍ未満の厚さまで冷間圧延する。特定の態様では、合金は、約３．５ｍｍ以下、約３ｍｍ以下、約２．５ｍｍ以下、約２ｍｍ以下、約１．５ｍｍ以下、約１ｍｍ以下、約０．５ｍｍ以下、約０．４ｍｍ以下、約０．３ｍｍ以下、約０．２ｍｍ以下、または約０．１ｍｍ以下まで冷間圧延される。例えば、圧延した製品は、約０．１ｍｍ、約０．２ｍｍ、約０．３ｍｍ、約０．４ｍｍ、約０．５ｍｍ、約０．６ｍｍ、約０．７ｍｍ、約０．８ｍｍ、約０．９ｍｍ、約１．０ｍｍ、約１．１ｍｍ、約１．２ｍｍ、約１．３ｍｍ、約１．４ｍｍ、約１．５ｍｍ、約１．６ｍｍ、約１．７ｍｍ、約１．８ｍｍ、約１．９ｍｍ、約２．０ｍｍ、約２．１ｍｍ、約２．２ｍｍ、約２．３ｍｍ、約２．４ｍｍ、約２．５ｍｍ、約２．６ｍｍ、約２．７ｍｍ、約２．８ｍｍ、約２．９ｍｍ、約３．０ｍｍ、約３．１ｍｍ、約３．２ｍｍ、約３．３ｍｍ、約３．４ｍｍ、約３．５ｍｍ、約３．６ｍｍ、約３．７ｍｍ、約３．８ｍｍ、約３．９ｍｍ、約４．０ｍｍ、またはこの間の任意の厚さまで冷間圧延することができる。

【0086】

ある場合において、本明細書に記載するアルミニウム合金の加工方法は、以下の工程を含むことができる。均質化工程は、本明細書に記載する鋳造アルミニウム合金を加熱して、約１２時間の期間にわたり、約５９０℃の均質化温度を得ることであって、鋳造アルミニウム合金が約５９０℃の温度で約２時間浸漬される、上記均質化温度を得ることにより行うことができる。鋳造アルミニウム合金を次に、約５８０℃まで冷却して、５８０℃で約２時間浸漬させることができる。鋳造アルミニウム合金を次に、好適なゲージまで熱間圧延することができる。鋳造アルミニウム合金を次に、所望のゲージまで冷間圧延することができる。

【0087】

アニーリング
任意により、アルミニウム合金を、室温から約２００℃～約４００℃（例えば、約２１０℃～約３７５℃、約２２０℃～約３５０℃、約２２５℃～約３４５℃、または約２５０℃～約３２０℃）のアニーリング温度まで加熱することによりアニールすることができる。場合によっては、アニーリング温度までの加熱速度は、約１００℃／時以下、約７５℃／時以下、約５０℃／時以下、約４０℃／時以下、約３０℃／時以下、約２５℃／時以下、約２０℃／時以下、約１５℃／時以下、または約１０℃／時以下であることができる。合金は、一定時間、当該温度で浸漬することができる。特定の態様においては、合金を、約６時間以下（例えば、包括的に、約１０秒～約６時間）浸漬させる。例えば、合金は、約２０秒、約２５秒、約３０秒、約３５秒、約４０秒、約４５秒、約５０秒、約５５秒、約６０秒、約６５秒、約７０秒、約７５秒、約８０秒、約８５秒、約９０秒、約９５秒、約１００秒、約１０５秒、約１１０秒、約１１５秒、約１２０秒、約１２５秒、約１３０秒、約１３５秒、約１４０秒、約１４５秒、約１５０秒、約５分、約１０分、約１５分、約２０、約２５分、約３０分、約３５分、約４０分、約４５分、約５０分、約５５分、約６０分、約６５分、約７０分、約７５分、約８０分、約８５分、約９０分、約９５分、約１００分、約１０５分、約１１０分、約１１５分、約１２０分、約２．５時間、約３時間、約３．５時間、約４時間、約４．５時間、約５時間、約５．５時間、約６時間、またはこの間の任意の時間の間、約２３０℃～約３７０℃の温度で浸漬することができる。いくつかの例では、合金はアニールされていない。

【0088】

いくつかの例では、合金は、約４０℃／時～約５０℃／時の一定速度で、約２００℃～約４００℃のアニーリング温度まで加熱される。いくつかの態様では、合金は、約３時間～約５時間（例えば、約４時間）、アニーリング温度で浸漬される。場合によっては、合金は、約４０℃／時～約５０℃／時の一定速度で、アニーリング温度から冷却される。いくつかの例では、合金はアニールされていない。

【0089】

性質及び利点
クラッドアルミニウム合金製品の機械的特性は、所望の使用に応じた様々な加工条件により制御することができる。クラッドアルミニウム合金製品は、Ｈ調質（例えば、ＨＸ１、ＨＸ２、ＨＸ３、ＨＸ４、ＨＸ５、ＨＸ６、ＨＸ７、ＨＸ８、またはＨＸ９調質）で作製（または提供）することができる。一例として、クラッドアルミニウム合金製品はＨ１９調質で作製（または提供）することができる。Ｈ１９調質は、冷間圧延された製品を指す。別の例として、クラッドアルミニウム合金製品はＨ２４調質で作製（または提供）することができる。Ｈ２４調質は、冷間圧延され、部分的にアニールされた製品を指す。さらなる例として、クラッドアルミニウム合金製品は、Ｏ条件または調質で作製（または提供）することができる。

【0090】

いくつかの非限定例では、クラッドアルミニウム合金製品は、Ｈ調質（例えば、Ｈ１９調質及びＨ２４調質）の高強度、及びＯ調質の高成形性（即ち、曲げ特性）を有する。いくつかの非限定例では、クラッドアルミニウム合金製品は、従来のクラッドアルミニウム合金製品と比較して、Ｈ調質（例えば、Ｈ１９調質及びＨ２４調質）、ならびにＯ調質での、良好な腐食耐性を有する。

【0091】

本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品は、腐食性フラックスを用いることなく、従来のクラッド化合金よりも良好に腐食に抵抗するろう付け接合部を作製することができる。本願のクラッドアルミニウム合金製品の利点は、ろう付け後に作製される、硬化したフィラー合金が、従来のクラッド化合金により作製された硬化フィラー合金よりも良好に、腐食に対抗することができる、という点である。改善された腐食耐性は、従来のクラッド化合金と比較して、クラッドアルミニウム合金製品で使用するクラッド化合金にプロモーターが存在することに因るものである。ろう付けに供した部品及び物体での、保護腐食耐性コーティングとして作用可能な、残りのクラッドの腐食性に有益に影響を及ぼすことができる、このようなさらなるプロモーターの数少ない例は、Ｂｉ、Ｓｂ、Ｓｒ、Ｎａ、及びＴｉである。クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）に特定の量で存在するとき、クラッドアルミニウム合金製品と、接合される金属部品との接合部をろう付けする際に、フラックス操作を必要としない。接合部の腐食電位に負の影響を及ぼすろう付け接合部を作製する際には、フラックス操作を必要としないため、これにより、クラッドアルミニウム合金製品の腐食電位が改善される。

【0092】

特定の態様では、クラッドアルミニウム合金製品は、ＡＳＴＭ Ｇ６９規格に従い試験した場合、約－６５０ｍＶ～約－７６０ｍＶ（例えば、約－６６０ｍＶ～約－７５０ｍＶ、約－６７０ｍＶ～約－７４０ｍＶ、約－６８０ｍＶ～約－７３０ｍＶ、約－６９０ｍＶ～約－７２０ｍＶ、約－７００ｍＶ～約－７１０ｍＶなど）の、負の腐食電位または電気化学ポテンシャル（Ｅｃｏｒｒ）をもたらす腐食耐性を有することができる。特定の場合では、負の腐食電位または電気化学ポテンシャル（Ｅｃｏｒｒ）は、約－６５０ｍＶ、約－６６０ｍＶ、約－６７０ｍＶ、約－６８０ｍＶ、約－６９０ｍＶ、約－７００ｍＶ、約－７１０ｍＶ、約－７２０ｍＶ、約－７３０ｍＶ、約－７４０ｍＶ、約－７５０ｍＶ、または約－７６０ｍＶ、またはこの間の任意の電圧であることができる。

【0093】

特定の態様では、クラッドアルミニウム合金製品は、Ｈ調質である場合に、約１５０ＭＰａ～約２５０ＭＰａ（例えば、約１６０ＭＰａ～約２４０ＭＰａ、約１６５ＭＰａ～約２２５ＭＰａ、約１７０ＭＰａ～約２１０ＭＰａ、約１７０ＭＰａ～約２００ＭＰａ、約１７５ＭＰａ～約１９５ＭＰａなど）の降伏強さを有することができる。特定の場合では、クラッドアルミニウム合金製品は、Ｈ調質である場合に、約１６０ＭＰａ、約１６５ＭＰａ、約１７０ＭＰａ、約１７５ＭＰａ、約１８０ＭＰａ、約１８５ＭＰａ、約１９０ＭＰａ、約１９５ＭＰａ、約２００ＭＰａ、約２０５ＭＰａ、約２１０ＭＰａ、約２１５ＭＰａ、約２２０ＭＰａ、約２２５ＭＰａ、約２３０ＭＰａ、約２３５ＭＰａ、約２４０ＭＰａ、約２４５ＭＰａ、または約２５０ＭＰａの降伏強さを有することができる。

【0094】

特定の態様では、クラッドアルミニウム合金製品は、Ｈ調質である場合に、約１７５ＭＰａ～約２５０ＭＰａ（例えば、約１８０ＭＰａ～約２４０ＭＰａ、約１８５ＭＰａ～約２４５ＭＰａ、約１９０ＭＰａ～約２４０ＭＰａ、約１９５ＭＰａ～約２３５ＭＰａ、約２００ＭＰａ～約２３０ＭＰａなど）の極限引張強さを有することができる。特定の場合では、クラッドアルミニウム合金製品は、Ｈ調質である場合に、約１７５ＭＰａ、約１８０ＭＰａ、約１８５ＭＰａ、約１９０ＭＰａ、約１９５ＭＰａ、約２００ＭＰａ、約２０５ＭＰａ、約２１０ＭＰａ、約２１５ＭＰａ、約２２０ＭＰａ、約２２５ＭＰａ、約２３０ＭＰａ、約２３５ＭＰａ、約２４０ＭＰａ、約２４５ＭＰａ、または約２５０ＭＰａの極限引張強さを有することができる。

【0095】

特定の態様では、クラッドアルミニウム合金製品は、Ｈ調質である場合に、約１１％～約１８％（例えば、約１２％～約１７．５％、約１２．５％～約１７％、約１３％～約１６．５％、約１４％～約１６％など）の伸びを有することができる。特定の場合では、クラッドアルミニウム合金製品は、Ｈ調質である場合に、約１１％、約１１．５％、約１２％、約１２．５％、約１３％、約１３．５％、約１４％、約１４．５％、約１５％、約１５．５％、約１６％、約１６．５％、約１７％、約１７．５％、または約１８％の伸びを有することができる。

【0096】

クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層がろう付け接合部を形成する場合に、このろう付け接合部は、加速大気腐食試験に供されたときに良好な腐食耐性を示すことが想到されている。具体的には、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品のクラッド層から形成したろう付け接合部は、海水酢酸試験（ＳＷＡＡＴ）をＡＳＴＭ Ｇ８５：Ａ３に従い行った際に、良好な空気面（空気側）腐食レーティングを示し得る。例えば、クラッドアルミニウム合金製品は、２週間、３週間、及び４週間、ＳＷＡＡＴ試験に供することができる。これらの例のそれぞれにおいて、少なくとも２８日間、クラッドアルミニウム合金においては最低限の腐食活性が形成され、穿孔は形成されないと予想される。

【0097】

ろう付け方法
本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品は、フラックスを用いないろう付け用途に好適である。驚くべきことに、クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）の構成成分は、接合される金属部品の酸化被膜を貫通して、表面の酸化被膜を破壊するかまたは取り除き、これによってフラックスの必要性が完全になくなることが発見された。したがって、本開示の実施形態において、様々なろう付けプロセス及び技術工程を好適に用いることができる。この方法において、クラッドアルミニウム合金製品は、クラッド層の合金組成物中に、ある量のＭｇ、Ｂｉ、Ｓｂ、Ｓｒ、Ｎａ、Ｔｉなどを組み込んで、接合される金属部品の表面上の酸化被膜を破壊して取り除くことにより、フラックスを用いることなく不活性ガス雰囲気でろう付けすることができる。例えばアルゴン、ヘリウム、窒素などを含む、任意の好適な不活性ガスを用いることができる。ろう付け用途の間、クラッド層を溶融することで形成したフィラー合金は、クラックした酸化被膜を流れて濡らし、腐食性フラックスを用いることなく、構造的に傷みのないろう付け接合部を形成することができる。

【0098】

このため、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品は、フラックスを塗布しない、制御された雰囲気ろう付け（「ＣＡＢ」）に好適である。ろう付けサイクルに関して、クラッドアルミニウム合金製品は不活性雰囲気のＣＡＢ炉内で加熱することができる。フラックスを用いるろう付けプロセスにおいて、接合部材料（ベース材料）及びコア材料での元素は、特定の元素がフラックスと負に反応するため、厳格に制御される。本明細書に記載するクラッド層の合金組成物は、フラックス操作を必要としないため、異なる組成を有する様々な金属部品へのクラッドアルミニウム合金製品のろう付けを許容する。これにより、ろう付け後も強度と耐食性が維持される合金を用いることが可能となる。

【0099】

いくつかの実施形態では、クラッドアルミニウム合金製品に接合される金属部品の表面は、ろう付け前に調製（例えば、前処理）される。いくつかの実施形態では、接合される金属部品は、クラッドアルミニウム合金製品及び金属部品の接着を促進するために使用可能な１つ以上の前処理に供せられる。金属部品、例えばクラッドアルミニウム合金製品のクラッド層への、クラッドアルミニウム合金製品の接着は、クラッドアルミニウム合金製品が堆積する金属部品の外側表面を前処理して、良好なろう付け接合部を作製することにより改善され得る。いくつかの実施形態では、前処理は、金属部品の表面が処理されてグリース、油、バフ研磨材、圧延潤滑剤、または切削油が取り除かれる、予備洗浄工程を含む。これは様々な方法で、例えば、蒸気脱脂、溶媒洗浄、溶媒エマルション洗浄、機械研磨、またはマイルドエッチングにより実現することができる。

【0100】

いくつかの実施形態では、接合される金属部品の表面をエッチングして、残った微量の油及びグリースを圧延プロセスから取り除き、酸化被膜をより薄くする。例えば、調製プロセスは、苛性クリーナー（例えば、１０％ＮａＯＨ）を用いて金属部品の表面をエッチングし、極微量の油またはグリースを全て取り除くことを伴う。いくつかの実施形態では、表面をエッチングすることで、良好なろう付け接合部を形成するのに重要な表面特性を生み出すことができる。具体的には、表面粗さは材料表面の重要な性質であり、表面粗さが増加することで、酸化反応及び酸化被膜層の面積が増加することができる。いくつかの実施形態では、機械研磨により、表面粗さが増加する。表面粗さは、良好なろう付け接合部を得るために、約０．１マイクロメートル～約２．０マイクロメートル（例えば、約０．２マイクロメートル～約１．５マイクロメートル、約０．３マイクロメートル～約１．０マイクロメートル、または、約０．４マイクロメートル～約０．８マイクロメートル）であることができる。

【0101】

ろう付けプロセスは、雰囲気中で酸素をほとんど、または全く伴わない乾燥雰囲気で行われる。いくつかの実施形態では、ろう付けプロセスは窒素、アルゴン、またはヘリウムの不活性雰囲気で行われる。ＣＡＢ炉内の雰囲気は、１００ｐｐｍ未満の酸素、例えば、９０ｐｐｍ未満、８０ｐｐｍ未満、７０ｐｐｍ未満、６０ｐｐｍ未満、５０ｐｐｍ未満、４０ｐｐｍ未満、３０ｐｐｍ未満、２５ｐｐｍ未満、２０ｐｐｍ未満、１０ｐｐｍ未満、または５ｐｐｍ未満の酸素を含むことができる。酸素濃度が低ければ、ろう付けプロセス中の、アルミニウム合金部品での再酸化を防ぐことができる。

【0102】

いくつかの実施形態では、ＣＡＢ炉内の雰囲気は、－３０℃未満、例えば、－３２℃未満、－３４℃未満、－３６℃未満、－３８℃未満、－４０℃未満、－４２℃未満、－４４℃未満、－４６℃未満、－４８℃未満、－５０℃未満、－５２℃未満、－５４℃未満、－５６℃未満、－５８℃未満、－６０℃未満、－６２℃未満、－６４℃未満、－６６℃未満、－６８℃未満、または－７０℃未満の露点を有することができる。例えば、ＣＡＢ炉内の露点は、約－３０℃～約－７０℃、約－３５℃～約－６５℃、約－４０℃～約－６０℃、または約－４５℃～約－５５℃であることができる。

【0103】

ろう付けプロセスは、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品を加熱して、約、または、少なくとも約５６０℃（例えば、少なくとも約５７０℃、少なくとも約５８０℃、少なくとも約５９０℃、少なくとも約６００℃、少なくとも約６１０℃、またはこれらの間の任意の温度）のろう付け温度を得ることを含むことができる。例えば、クラッドアルミニウム合金製品は、約５６０℃～約６２０℃、約５７０℃～約６１５℃、約５８０℃～約６１０℃、または約５９０℃～約６０５℃の温度で加熱することができる。場合によっては、ろう付け温度への加熱速度は、約２００℃／時以下、約１８０℃／時以下、約１６０℃／時以下、約１４０℃／時以下、約１２０℃／時以下、約１００℃／時以下、約７５℃／時以下、約５０℃／時以下、約４０℃／時以下、約３０℃／時以下、約２５℃／時以下、約２０℃／時以下、約１５℃／時以下、または約１０℃／時以下であることができる。他の場合によっては、ろう付け温度までの加熱速度は、約１０℃／分～約２００℃／分（例えば、約１０℃／分～約１７５℃／分、約１０℃／分～約１５０℃／分、約１０℃／分～約１００℃／分、約２０℃／分～約９０℃／分、約３０℃／分～約８０℃／分、約４０℃／分～約７０℃／分、または約５０℃／分～約６０℃／分）であることができる。いくつかの実施形態では、ＣＡＢ炉内でのピーク温度への加熱速度は、３分未満である。

【0104】

いくつかの実施形態では、クラッドアルミニウム合金製品はＣＡＢ炉内で、５２０℃の温度に達するまで、１００℃／分の速度で加熱することができる。クラッドアルミニウム合金製品を次に、６０５℃の温度に達するまで、２５℃／分の速度で加熱し、続いて６０５℃で３分間加熱浸漬することができる。クラッドアルミニウム合金製品を次に、５７０℃まで冷却し、炉から取り出して室温で冷却することができる。クラッドアルミニウム合金製品は、酸素濃度が５０ｐｐｍ未満であり、露点が（窒素雰囲気中で）－４０℃未満であるろう付け雰囲気下にて、ＣＡＢ炉内で６００℃で３分間加熱される。

【0105】

いくつかの実施形態では、ろう付けにより接合された物品、例えば熱交換器、または、ろう付けされた構成要素のアセンブリの製造方法が提供される。方法は、少なくとも１つが本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品から作製される構成要素を提供することを含むことができる。方法は、構成要素、例えば、波形化フィンストック材料と、管などの他の構成要素とをアセンブリに組み立てることを含むことができる。方法は、構成要素のアセンブリにろう付け用フラックスを塗布することなく、アセンブリをろう付けすることをさらに含むことができる。アセンブリ全体は、様々な構成要素を接合するフィラーが溶融及び拡大するのに十分な長さの期間、例えば、１～５分の対流時間の間、ろう付け温度で、典型的には、約５６０℃～６２０℃の範囲の温度で、制御された不活性ガス雰囲気にてろう付けされる。ろう付け雰囲気中での酸素含有量は、できる限り合理的に低くなければならず、好ましくは約１００ｐｐｍ未満、及びより好ましくは約５０ｐｐｍ未満、例えば２５ｐｐｍ以下である。方法は、ろう付けされたアセンブリを、典型的には約１００℃未満、例えば、室温まで、例えば空気の吹き込み、または任意の他の好適な冷却媒体を用いて冷却することをさらに含む。

【0106】

この操作において、クラッドアルミニウム合金製品に接合される金属部品から酸化被膜を取り除くためのフラックスは必要ではない。ろう付けのための高温において、クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層内の構成成分は、ろう付け操作の間に酸化被膜を取り除くか、または少なくとも破壊し、溶融したフィラーが金属部品と接し、接合部を形成することが可能となる。特定の態様では、クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層は、ろう付けにより接合された物品、例えば熱交換器、またはろう付けされた構成要素のアセンブリの製造方法用のフィラー合金として使用される。本開示の限定を意図することなく、クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層の合金組成物は、クラッド層の溶融を制御してフィラー材料を形成し、クラッドアルミニウム合金製品に接合される金属部品の酸化被膜内での孔の形成を促進し、プロモーター剤を輸送して、ろう付け塗布の間に、酸化被膜を減少させるか、または取り除く。

【0107】

文書全体を通じて、アルミニウム合金の物品などの金属部品が説明されているが、方法及び物品はあらゆる金属に適用される。いくつかの例では、金属部品は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム系材料、チタン、チタン系材料、銅、銅系材料、鋼、鋼系材料、青銅、青銅系材料、真鍮、真鍮系材料、複合材料、複合材料に使用されるシート、またはその他の好適な金属または材料の組み合わせである。

【0108】

使用方法
本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品及び方法は、犠牲部品、熱放散、包装、及び建築材料を含む、工業用途にて使用することができる。本明細書に記載のクラッドアルミニウム合金製品の使用及び用途は、本明細書に記載のクラッドアルミニウム合金製品で製作されたか、またはそれらを含む物体、形態、装置及び同様のものと同様に、本発明の範囲内に含まれる。そのような物体、形態、装置、及び同様のものを製作する、生産する、または製造するためのプロセスもまた、本発明の範囲内に含まれる。

【0109】

本発明の製品を用いて作製可能な、いくつかの他の例示的な物体は、米国特許第８，３４９，４７０号に記載及び図示され、この内容は参照により本明細書に組み込まれている。このような物体のいくつかの非限定例は、エバポレータープレート、エバポレーター、ラジエーター、ヒーター、ヒーターコア、コンデンサー、コンデンサーチューブ、様々な管及びパイプ、マニホールド、ならびに、サイドサポートなどのいくつかの構造フィーチャーである。本明細書に開示するクラッドアルミニウム合金製品の使用は、コア合金または中間層合金上への、クラッド化合金のろう付けを伴うプロセスに限定されない。例えば、クラッド化ろう付けアルミニウム合金は、引線から作製されるフィラーリングのために作製することができる。別の例において、シート形体で作製したクラッドアルミニウム合金製品を、フィラーシムとして使用することができる。シム材料は、用途に応じて、数マイクロメートル～１ミリメートルの間の厚みを有することができる。本明細書に記載するアルミニウム合金は、現在用いられている合金と比べて、良好な腐食性能及び高い強度をもたらす。

【0110】

アルミニウム合金、クラッドアルミニウム合金製品、及び方法の実例
実例１は、７．０～１４．０重量％のＳｉ、０．０５～１．０重量％のＦｅ、０．０１～０．６０重量％のＣｕ、０．０１～０．３０重量％のＭｎ、０．０１～０．５０重量％のＭｇ、０．０～０．６０重量％のＺｎ、０．００１～０．５０重量％のＢｉ、０．３０重量％以下のＳｂ、０．２０重量％以下のＳｒ、０．２０重量％以下のＮａ、０．２５重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含むアルミニウム合金である。

【0111】

実例２は、８．０～１２．０重量％のＳｉ、０．１０～０．９０重量％のＦｅ、０．０１～０．５０重量％のＣｕ、０．０５～０．２０重量％のＭｎ、０．０１～０．４０重量％のＭｇ、０．０５～０．４０重量％のＺｎ、０．０１～０．４０重量％のＢｉ、０．２５重量％以下のＳｂ、０．１５重量％以下のＳｒ、０．１０重量％以下のＮａ、０．２０重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、前述または後述の実例のいずれかに記載のアルミニウム合金である。

【0112】

実例３は、８．５～１１．０重量％のＳｉ、０．１５～０．５０重量％のＦｅ、０．０１～０．４０重量％のＣｕ、０．０５～０．１５重量％のＭｎ、０．０５～０．３０重量％のＭｇ、０．１０～０．３０重量％のＺｎ、０．０５～０．３０重量％のＢｉ、０．２０重量％以下のＳｂ、０．１０重量％以下のＳｒ、０．０６重量％以下のＮａ、０．１５重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、前述または後述の実例のいずれかに記載のアルミニウム合金である。

【0113】

実例４は、９．０～１０．５重量％のＳｉ、０．１５～０．２５重量％のＦｅ、０．３０～０．４０重量％のＣｕ、０．０５～０．１５重量％のＭｎ、０．１５～０．３０重量％のＭｇ、０．１５～０．３０重量％のＺｎ、０．１０～０．３５重量％のＢｉ、０．１５重量％以下のＳｂ、０．０５重量％以下のＳｒ、０．０５重量％以下のＮａ、０．１０重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、前述または後述の実例のいずれかに記載のアルミニウム合金である。

【0114】

実例５は、９．５～１０．５重量％のＳｉ、０．３０～０．５０重量％のＦｅ、０．０１～０．０５重量％のＣｕ、０．０５～０．１５重量％のＭｎ、０．０１～０．０５重量％のＭｇ、０．２０～０．２５重量％のＺｎ、０．１０～０．２０重量％のＢｉ、０．０５重量％以下のＳｂ、０．０２重量％以下のＳｒ、０．０１重量％以下のＮａ、０．１０重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、前述または後述の実例のいずれかに記載のアルミニウム合金である。

【0115】

実例６は、合金が直接チル鋳造、続いて熱間圧延及び冷間圧延により作製される、前述または後述の実例のいずれかに記載のアルミニウム合金である。

【0116】

実例７は、合金が、ろう付け後に測定すると、６６０～７２０ｍＶ以下の腐食電位を有する、前述または後述の実例のいずれかに記載のアルミニウム合金である。

【0117】

実例８は、合金が、ろう付けの後、外気での腐食試験の間に穿孔を行うことなく、少なくとも２８日間耐える、前述または後述の実例のいずれかに記載のアルミニウム合金である。

【0118】

実例９は、コア層と、前述または後述の実例のいずれかに記載のアルミニウム合金を含む少なくとも１つのクラッド層と、を含むクラッドアルミニウム合金製品である。

【0119】

実例１０は、コア層が、０．２５重量％以下のＳｉ、０．３５重量％以下のＦｅ、０．５０重量％～０．６０重量％のＣｕ、１．４重量％～１．６重量％のＭｎ、０．０６重量％～０．６２重量％のＭｇ、０．０５重量％以下のＣｒ、０．０４重量％以下のＺｎ、０．１０重量％～０．２０重量％のＴｉ、０．０５重量％以下のＳｒ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含むアルミニウム合金を含む、先行または後続の実例のいずれかに記載のクラッドアルミニウム合金製品である。

【0120】

実例１１は、コア層であって、当該コア層が第１の面及び第２の面を有する、上記コア層と、上記第１の面または上記第２の面に少なくとも１つのクラッド層と、を含むクラッドアルミニウム合金製品であって、上記少なくとも１つのクラッド層が、７．０～１４．０重量％のＳｉ、０．０５～１．０重量％のＦｅ、０．０１～０．６０重量％のＣｕ、０．０１～０．３０重量％のＭｎ、０．０１～０．５０重量％のＭｇ、０．０～０．６０重量％のＺｎ、０．００１～０．５０重量％のＢｉ、０．３０重量％以下のＳｂ、０．２０重量％以下のＳｒ、０．２０重量％以下のＮａ、０．２５重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、上記クラッドアルミニウム合金製品である。

【0121】

実例１２は、コア層が、０．２５重量％以下のＳｉ、０．３５重量％以下のＦｅ、０．５０重量％～０．６０重量％のＣｕ、１．４重量％～１．６重量％のＭｎ、０．０６重量％～０．６２重量％のＭｇ、０．０５重量％以下のＣｒ、０．０４重量％以下のＺｎ、０．１０重量％～０．２０重量％のＴｉ、０．０５重量％以下のＳｒ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含むアルミニウム合金を含む、先行または後続の実例のいずれかに記載のクラッドアルミニウム合金製品である。

【0122】

実例１３は、前述または後述の実例のいずれかに記載のクラッドアルミニウム合金製品を含む腐食耐性ブレージングシートである。

【0123】

実例１４は、前述または後述の実例のいずれかに記載のクラッドアルミニウム合金製品を含む熱交換器である。

【0124】

実例１５は、熱交換器が自動車用熱交換器である、前述または後述の実例のいずれかに記載の熱交換器である。

【0125】

実例１６は、自動車用熱交換器が、ラジエーター、コンデンサー、エバポレーター、オイルクーラー、インタークーラー、チャージエアクーラー、またはヒーターコアである、前述または後述の実例のいずれかに記載の自動車用熱交換器である。

【0126】

実例１７は、前述または後述の実例のいずれかに記載のクラッドアルミニウム合金製品を含む管である。

【0127】

実例１８は、ろう付け接合部の形成方法であって、当該方法が、１つ以上の金属部品を提供する工程と、１つ以上の金属部品上、またはその間にクラッドアルミニウム合金製品を提供してアセンブリを形成する工程であって、当該クラッドアルミニウム合金製品が少なくとも１つのクラッド層を備える上記工程と、上記アセンブリを、フラックスを塗布することなく上記クラッドアルミニウム合金製品及び上記１つ以上の金属部品に接合して、ろう付けされたアセンブリを作製する工程と、当該ろう付けされたアセンブリを冷却する工程であって、上記少なくとも１つのクラッド層が、７．０～１４．０重量％のＳｉ、０．０５～１．０重量％のＦｅ、０．０１～０．６０重量％のＣｕ、０．０１～０．３０重量％のＭｎ、０．０１～０．５０重量％のＭｇ、０．０～０．６０重量％のＺｎ、０．００１～０．５０重量％のＢｉ、０．３０重量％以下のＳｂ、０．２０重量％以下のＳｒ、０．２０重量％以下のＮａ、０．２５重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む上記工程と、を含む、上記方法である。

【0128】

実例１９は、ろう付け工程が、不活性ガスを含む、制御された雰囲気のろう付け炉内で生じる、前述または後述の実例のいずれかに記載のろう付け接合部の形成方法である。

【0129】

実例２０は、制御された雰囲気のろう付け炉が１００ｐｐｍ未満の酸素を含む、前述または後述の実例のいずれかに記載のろう付け接合部の形成方法である。

【0130】

実例２１は、制御された雰囲気のろう付け炉が－４０℃未満の露点を有する、前述または後述の実例のいずれかに記載のろう付け接合部の形成方法である。

【0131】

実例２２は、アセンブリが５９０℃～６１０℃の範囲のろう付け温度でろう付けされる、前述または後述の実例のいずれかに記載のろう付け接合部の形成方法である。

【0132】

実例２３は、制御された雰囲気のろう付け炉が、５分未満で、ろう付け温度まで加熱される、前述または後述の実例のいずれかに記載のろう付け接合部の形成方法である。

【0133】

実例２４は、窒素雰囲気中で、５０ｐｐｍ未満の酸素濃度及び－４０℃未満の露点を有する制御された雰囲気のろう付け炉内で、アセンブリが、６００℃にて３分間ろう付けされる、前述または後述の実例のいずれかに記載のろう付け接合部の形成方法である。

【0134】

実例２５は、少なくとも１つのクラッド層が、８．０～１２．０重量％のＳｉ、０．１０～０．９０重量％のＦｅ、０．０１～０．５０重量％のＣｕ、約０．０５～０．２０重量％のＭｎ、０．０１～０．４０重量％のＭｇ、０．１０～０．４０重量％のＺｎ、０．０１～０．４０重量％のＢｉ、０．２５重量％以下のＳｂ、０．１５重量％以下のＳｒ、０．０６重量％以下のＮａ、０．１５重量％以下のＴｉ、及び０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、前述または後述の実例のいずれかに記載のろう付け接合部の形成方法である。

【0135】

以下の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つが、しかしながら、そのいかなる限定も構成しない。これに対して、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の趣旨から逸脱することなく当業者にそれ自体を示唆し得る、様々な実施形態、それらの改変物及び均等物が用いられ得ると明らかに理解されるべきである。以下の例に記載される研究中、別段記述されない限り、従来の手順に従った。手順の一部が、説明のために以下で記載されている。

【実施例0136】

実施例１：アルミニウム合金組成物及び性質
表６に示す実施例及び比較合金を、以下に記載する方法に従い調製した。合金１～１４は、クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層用の例示的な合金である。比較合金Ａは、クラッド層用の比較合金である。

【0137】

表６

全てが重量％として表される。０．１５重量％以下の不純物、残りはＡｌである。

【0138】

表６のクラッド層組成物は、直接チル鋳造プロセスを用いてインゴットを鋳造することで作製した。次に、インゴットを、本明細書に記載の方法に従い均質化、熱間圧延、及び冷間圧延し、最終ゲージアルミニウム合金製造物を作製した。

【0139】

表６に記載するクラッド層を使用して、クラッド層及びコア層を含むクラッドアルミニウム合金製品（例えばクラッドシートアルミニウム合金）を作製した。コア層は、表７に示す組成を有する、３ｘｘｘシリーズのアルミニウム合金を含んだ。

【0140】

表７

【0141】

コア層は、後述の方法に従い調製した。表７のコアアルミニウム合金組成物を直接チル鋳造し、インゴットを作製した。その後、インゴットの表面を削った。表面を削ったインゴットをその後、約１２時間、約４８０℃～約５２０℃の均質化温度まで加熱した。インゴットを、約５時間～約６時間、均質化温度で浸漬した。均質化したインゴットを次いで、１９ｍｍのゲージ厚まで熱間圧延した。表６に記載のクラッドアルミニウム合金を次に、１９ｍｍ厚コア層の１つの面（片側）に溶接し、クラッドアルミニウム合金製品を作製した。溶接後、クラッドアルミニウム合金製品を、約４５～約６０分間、約４５０℃の温度まで再加熱し、続いて、クラッドアルミニウム合金製品を熱間圧延して、約３ｍｍ～約４ｍｍのゲージ厚にした。クラッドアルミニウム合金製品を続いて冷間圧延し、約１ｍｍ～約２ｍｍの初期ゲージ厚にした。次に、クラッドアルミニウム合金製品をさらに冷間圧延し、約３００μｍの最終ゲージ厚にした。クラッド層は、約２５μｍ～約３０μｍのゲージ厚を有し、クラッドアルミニウム合金製品の総厚の約７％～約１３％であった。最終ゲージアルミニウム合金製造物を部分的に、３０℃／時の温度傾斜でアニーリングした後、３０５℃で３時間浸漬し、Ｈ２４調質の条件を実現した。

【0142】

本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）は、フィラー材料の溶融を制御し、クラッドアルミニウム合金製品に接合される金属部品の酸化被膜層内での孔の形成を促進し、プロモーター剤を輸送して、ろう付け塗布の間に、酸化被膜と接触させる。具体的には、クラッド層の合金組成物は、フラックスレスろう付け用途のためのフィラー合金として特に有用であり得る、特定の量のＭｇ、Ｂｉ、Ｓｂ、Ｓｒ、Ｎａ、及び／またはＴｉ構成成分を含む。例えば、Ｂｉ、Ｓｂ、Ｓｒ、Ｎａ、及び／またはＴｉと組み合わせた少量のＭｇ（例えば、０．５０重量％未満）は、相乗的に作用して、溶融したクラッドアルミニウム合金がクラックを通って流れ、フラックスを用いることなく、安定したろう付け接合部を形成するように、表面酸化膜にクラックを入れる。本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品はまた、腐食耐性と共に機械的強度が所望される他の状況においても使用可能である。

【0143】

下表８は、合金１～１４、及び比較合金Ａのクラッド層の、開始温度及び溶融点を示す。

【0144】

表８

【0145】

実施例１～１４のクラッド層は、５７５℃未満の開始温度を有した。実施例１～１４のクラッド層の開始温度は、良好なろう付け接合部を作製するのに有利である。実施例１～１４のクラッド層は、アルミニウム合金製品（例えば熱交換器）での、コア層と他の構成要素との間での、溶融クラッド層の良好な拡大を促進する開始温度を有する。したがって、実施例１～１４のクラッド層は、アルミニウム合金製品内のコア層と他の構成要素との間での、良好なろう付け接合部形成を有利に促進することができる。加えて、実施例１～１４のクラッド層は、６３０℃～６６０℃の溶融温度を有した。したがって、実施例１～１４のクラッド層は、増加した流動性を溶融時に示し、良好なろう付け接合部を形成する。

【0146】

これは、図１及び図２によりさらに証拠が示され、これらの図は、それぞれキーエンス及びＺｅｉｓｓ Ｏｐｔｉｃａｌ製顕微鏡を１００ｘ倍率で用いて撮影した、本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品から形成した例示的なろう付け接合部の光学画像を示す。具体的には、実施例合金４及び６のクラッド層を含むクラッドアルミニウム合金製品をろう付けプロセスに供し、それぞれ図１及び図２に示す接合部を作製した。ろう付けプロセスは、雰囲気中で酸素をほとんど、または全く伴わない乾燥雰囲気で、ＣＡＢ炉内で行った。クラッドアルミニウム合金製品を、約６００℃～約６０５℃の温度で約３分～約５分間、ＣＡＢ炉内で加熱し、その後空気冷却した。示すように、実施例合金４及び６は、フラックスを用いることなく、優れたろう付け接合部を形成した。十分な期間、十分に高温で加熱したとき、クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）が溶融し溶加材を形成し、これが、ろう付けにより接合されている部品間でろう付け接合部を形成する。以前に示したように、クラッド層に組み込まれたプロモーター剤が、ろう付け接合部の質を改善した。

【0147】

実施例合金１、３～７、１２、１３、１４、及び比較例１４のそれぞれの引張特性を、クラッドアルミニウム合金を部分的にＨ２４調質までアニーリングした後、及び、ろう付けプロセスの後で測定した。測定した引張特性には、降伏強さ、伸長率、及び極限引張強さが含まれた。図３は、Ｈ２４調質のクラッドアルミニウム合金の引張特性を示し、図４は、ろう付け後のクラッドアルミニウム合金の引張特性を示す。これらの結果から、実施例合金１、３～７、１２、１３、及び１４の降伏強さ（ＹＳ）は、比較合金Ａに匹敵した。同様に、実施例合金１、３～７、及び１２の極限引張強さ（ＵＴＳ）及び伸び（ＥＬ）特性は、比較合金Ａに匹敵した。実施例合金１３及び１４は、比較合金Ａよりも大きなＵＴＳ及び伸びを示した。

【0148】

ＡＳＴＭ Ｇ６９規格に従い、実施例合金１、３～７、１２～１４、及び比較例Ａの、開回路腐食に対する電位値を試験した。高密度析出物バンド（ＤＰＢ）とクラッド層との間での腐食電位の差を測定した。ＤＰＢ測定を、研削及び研磨により行い、露出表面がＤＰＢ領域内に収まるようにした。加えて、空気に対する腐食（ＳＷＡＡＴ）を、ＡＳＴＭ Ｇ８５規格の付記３に従い行った。２．８～３．０のｐＨを有する酸性化した合成海水（４２ｇ／ｌの合成海水塩＋１０ｍｌ／ｌの氷酢酸）を使用した。次に、サンプルを５０％の基準酸で１時間洗浄し、４つの異なる場所に区分けし、腐食の試験をした。ＳＷＡＡＴ試験のサンプルを提出した後で、腐食の深刻度を評価するために、腐食を順に、低、中、深刻、及び非常に深刻、と特徴付ける定性スケールを用いた。腐食の深刻度を、（ｉ）低：ＤＰＢ領域内での腐食発生；（ｉｉ）中：ＤＰＢ領域を腐食し尽くす腐食の発生；（ｉｉｉ）深刻：穿孔なしでコア厚さの４分の１～３分の１まで腐食した腐食の発生；及び（ｉｖ）非常に深刻：穿孔をもたらす腐食の発生、として特徴付けた。実施例合金１、３～７、１２～１４、及び比較例Ａの開回路電位（ＯＣＰ）腐食値、及びＳＷＡＡＴ試験結果を、表９に示す。

【0149】

【0150】

表９に示すように、実施例合金は－６７２～－６９６ｍＶの腐食電位を有した。実施例１～１４の腐食電位値は、残留したクラッド層が、４ｘｘｘシリーズアルミニウム合金に特有の腐食電位を有し、効果的にコア合金を保護するように犠牲的に作用することを示す。具体的には、実施例合金３、４、６、７、１３、及び１４は、比較合金Ａよりも負の腐食電位が低かった。実際の用途において、実施例合金３、４、６、７、１３、及び１４のクラッド層を用いて作成したクラッドアルミニウム合金製品が、負の腐食電位が高いフィンストックと結合したときに、フィンストックはクラッド層に犠牲的に作用し、熱交換体部品（例えば管）を腐食から保護する。いくつかの実施形態では、フィンストックは亜鉛、アルミニウム、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、フィンストックは、約１重量％～約１０重量％のＺｎ（例えば、１．１重量％～８重量％、１．２重量％～６重量％、１．３重量％～５重量％、１．４重量％～４重量％、または１．５重量％～３．５重量％）を含むことができる。

【0151】

ＳＷＡＡＴ試験の結果は、図５にまとめられている。図５は、表９に示す、２週間、３週間、及び４週間後の、実施例合金１、３～７、１２、１３、１４、及び比較実施例ＡのＳＷＡＡＴ腐食試験の冶金学的検査の結果の略図を示す。実施例合金１、３～７、１２、１３、及び１４のそれぞれは、２週間、３週間、及び４週間後に、比較合金よりも良好な腐食耐性を示した。本明細書に記載するクラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）は、腐食性フラックスを用いることなく、従来のクラッド化合金よりも良好に腐食に抵抗するろう付け接合部を作製することができることを、図５は示す。本明細書で論ずるとおり、改善された腐食耐性は、従来のクラッド化合金と比較して、ろう付けに供される部品及び物体で、保護耐食コーティングとして作用可能な、クラッドアルミニウム合金製品で用いられるクラッド化合金にプロモーターが存在することに因る。クラッドアルミニウム合金製品のクラッド層（複数可）に特定の量で存在するとき、クラッドアルミニウム合金製品と、接合される金属部品との接合部をろう付けする際に、フラックス操作を必要としない。フラックスが接合部に負に影響を及ぼすために、ろう付け接合部を作製する際に、フラックス操作を必要としないため、クラッドアルミニウム合金製品の腐食電位は改善される。

【0152】

上で引用されている全ての特許及び出版物及び要約は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態が、本発明の様々な目的を実現させる中で説明されてきた。これらの実施形態は、本発明の原理を例示するに過ぎないことが認識されるべきである。それらの多数の改変及び改造は、以下の特許請求の範囲で定義されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者に容易に明らかになる。

【0153】

本発明の好ましい態様は次のとおりである。
［１］
７．０～１４．０重量％のＳｉ、０．０５～１．０重量％のＦｅ、０．０１～０．６０重量％のＣｕ、０．０１～０．３０重量％のＭｎ、０．０１～０．０５重量％のＭｇ、０．０～０．６０重量％のＺｎ、０．００１～０．５０重量％のＢｉ、０．３０重量％以下のＳｂ、０．２０重量％以下のＳｒ、０．２０重量％以下のＮａ、０．２５重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含むアルミニウム合金。
［２］
８．０～１２．０重量％のＳｉ、０．１０～０．９０重量％のＦｅ、０．０１～０．５０重量％のＣｕ、０．０５～０．２０重量％のＭｎ、０．０１～０．４０重量％のＭｇ、０．０５～０．４０重量％のＺｎ、０．０１～０．４０重量％のＢｉ、０．２５重量％以下のＳｂ、０．１５重量％以下のＳｒ、０．１０重量％以下のＮａ、０．２０重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、［１］に記載のアルミニウム合金。
［３］
８．５～１１．０重量％のＳｉ、０．１５～０．５０重量％のＦｅ、０．０１～０．４０重量％のＣｕ、０．０５～０．１５重量％のＭｎ、０．０５～０．３０重量％のＭｇ、０．１０～０．３０重量％のＺｎ、０．０５～０．３０重量％のＢｉ、０．２０重量％以下のＳｂ、０．１０重量％以下のＳｒ、０．０６重量％以下のＮａ、０．１５重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、［１］に記載のアルミニウム合金。
［４］
９．０～１０．５重量％のＳｉ、０．１５～０．２５重量％のＦｅ、０．３０～０．４０重量％のＣｕ、０．０５～０．１５重量％のＭｎ、０．１５～０．３０重量％のＭｇ、０．１０～０．３０重量％のＺｎ、０．１０～０．３５重量％のＢｉ、０．１５重量％以下のＳｂ、０．０５重量％以下のＳｒ、０．０５重量％以下のＮａ、０．１０重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、［１］に記載のアルミニウム合金。
［５］
９．５～１０．５重量％のＳｉ、０．３０～０．５０重量％のＦｅ、０．０１～０．０５重量％のＣｕ、０．０５～０．１５重量％のＭｎ、０．０１～０．０５重量％のＭｇ、０．２０～０．２５重量％のＺｎ、０．０１～０．２０重量％のＢｉ、０．０１～０．０５重量％のＳｂ、０．００１～０．０２重量％のＳｒ、０．０１重量％以下のＮａ、０．１０重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、［１］に記載のアルミニウム合金。
［６］
前記アルミニウム合金が直接チル鋳造、続いて熱間圧延及び冷間圧延により作製される、［１］～［５］のいずれか１項に記載のアルミニウム合金。
［７］
前記アルミニウム合金が、ろう付け後に測定すると、６６０～７２０ｍＶ以下の腐食電位を有する、［１］～［６］のいずれか１項に記載のアルミニウム合金。
［８］
前記アルミニウム合金が、ろう付けの後、外気での腐食試験の間に穿孔を行うことなく、少なくとも２８日間耐える、［１］～［７］のいずれか１項に記載のアルミニウム合金。
［９］
クラッドアルミニウム合金製品であって、
コア層と、
［１］～［８］のいずれか１項に記載のアルミニウム合金を含む、少なくとも１つのクラッド層と、
を含む、前記クラッドアルミニウム合金製品。
［１０］
前記コア層が、０．２５重量％以下のＳｉ、０．３５重量％以下のＦｅ、０．５０重量％～０．６０重量％のＣｕ、１．４重量％～１．６重量％のＭｎ、、０．０６重量％～０．６２重量％のＭｇ、０．０５重量％以下のＣｒ、０．０４重量％以下のＺｎ、０．１０重量％～０．２０重量％のＴｉ、０．０５重量％以下のＳｒ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含むアルミニウム合金を含む、［９］に記載のクラッドアルミニウム合金製品。
［１１］
クラッドアルミニウム合金製造物であって、
コア層であって、前記コア層が第１の面及び第２の面を有する、前記コア層と、
前記第１の面または前記第２の面に少なくとも１つのクラッド層と、を含み、
前記少なくとも１つのクラッド層が、７．０～１４．０重量％のＳｉ、０．０５～１．０重量％のＦｅ、０．０１～０．６０重量％のＣｕ、約０．０１～０．３０重量％のＭｎ、０．０１～０．５０重量％のＭｇ、０．０～０．６０重量％のＺｎ、０．００１～０．５０重量％のＢｉ、０．３０重量％以下のＳｂ、０．２０重量％以下のＳｒ、０．２０重量％以下のＮａ、０．２５重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、前記クラッドアルミニウム合金製品。
［１２］
前記コア層が、０．２５重量％以下のＳｉ、０．３５重量％以下のＦｅ、０．５０重量％～０．６０重量％のＣｕ、１．４重量％～１．６重量％のＭｎ、、０．０６重量％～０．６２重量％のＭｇ、０．０５重量％以下のＣｒ、０．０４重量％以下のＺｎ、０．１０重量％～０．２０重量％のＴｉ、０．０５重量％以下のＳｒ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含むアルミニウム合金を含む、［１１］に記載のクラッドアルミニウム合金製品。
［１３］
［１１］または［１２］に記載のクラッドアルミニウム合金製品を含む腐食耐性ブレージングシート。
［１４］
［１１］または［１２］に記載のクラッドアルミニウム合金製品を含む熱交換器。
［１５］
ろう付け接合部の形成方法であって、
１つ以上の金属部品を準備する工程と、
前記１つ以上の金属部品上、またはその間にクラッドアルミニウム合金製品を準備してアセンブリを形成する工程であって、前記クラッドアルミニウム合金製品が少なくとも１つのクラッド層を備える、前記アセンブリを形成する工程と、
前記アセンブリを、フラックスを塗布することなく前記クラッドアルミニウム合金製品及び前記１つ以上の金属部品に接合して、ろう付けされたアセンブリを作製する工程と、
前記ろう付けされたアセンブリを冷却する工程と、を含み、
前記少なくとも１つのクラッド層が、７．０～１４．０重量％のＳｉ、０．０５～１．０重量％のＦｅ、０．０１～０．６０重量％のＣｕ、約０．０１～０．３０重量％のＭｎ、０．０１～０．５０重量％のＭｇ、０．０～０．６０重量％のＺｎ、０．００１～０．５０重量％のＢｉ、０．３０重量％以下のＳｂ、０．２０重量％以下のＳｒ、０．２０重量％以下のＮａ、０．２５重量％以下のＴｉ、０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、前記方法。
［１６］
不活性ガスを含む制御された雰囲気のろう付け炉内でろう付けが生じ、
前記制御された雰囲気のろう付け炉が１００ｐｐｍ未満の酸素を含む、［１５］に記載の方法。
［１７］
前記制御された雰囲気のろう付け炉が－４０℃未満の露点を有する、［１５］または［１６］に記載の方法。
［１８］
前記アセンブリが５９０℃～６１０℃のろう付け温度でろう付けされ、
前記制御された雰囲気のろう付け炉が５分未満で、前記ろう付け温度まで加熱される、［１５］～［１７］のいずれか１項に記載の方法。
［１９］
窒素雰囲気中で、５０ｐｐｍ未満の酸素濃度及び－４０℃未満の露点を有する前記制御された雰囲気のろう付け炉内で、前記アセンブリが、６００℃にて３分間ろう付けされる、［１５］～［１８］のいずれか１項に記載の方法。
［２０］
前記少なくとも１つのクラッド層が、８．０～１２．０重量％のＳｉ、０．１０～０．９０重量％のＦｅ、０．０１～０．５０重量％のＣｕ、約０．０５～０．２０重量％のＭｎ、０．０１～０．４０重量％のＭｇ、０．１０～０．４０重量％のＺｎ、０．０１～０．４０重量％のＢｉ、０．２５重量％以下のＳｂ、０．１５重量％以下のＳｒ、０．０６重量％以下のＮａ、０．１５重量％以下のＴｉ、及び０．１５重量％以下の不純物、及びＡｌを含む、［１５］～［１９］のいずれか１項に記載の方法。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5-1】

【図5-2】