(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059794
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】自己免疫疾患の治療のためのRNA
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20240423BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240423BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240423BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20240423BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240423BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240423BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240423BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P37/06 ZNA
A61K31/7105
A61K31/7115
A61K9/14
A61K9/127
A61K47/44
A61K48/00
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025246
(22)【出願日】2024-02-22
(62)【分割の表示】P 2022082384の分割
【原出願日】2018-04-10
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/058651
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509146023
【氏名又は名称】バイオエヌテック エスエー
【氏名又は名称原語表記】BIONTECH SE
【住所又は居所原語表記】An der Goldgrube 12 55131 Mainz Germany
(71)【出願人】
【識別番号】515123258
【氏名又は名称】トロン- トランスラショナル オンコロジー アン デア ウニヴェリジテーツメディツィン デア ヨハネス グーテンベルク-ウニヴェルシテート マインツ ゲマインニューツィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRON- Translationale Onkologie an der Universitaetsmedizin der Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz gemeinnuetzige GmbH
【住所又は居所原語表記】Freiligrathstr. 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】サヒン, ウグル
(72)【発明者】
【氏名】クライター, ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クリエンケ, クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ペチェンカ, ユッタ
(72)【発明者】
【氏名】クランツ, レナ マレーン
(72)【発明者】
【氏名】ディケン, ムスタファ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自己免疫疾患の有効な治療法および自己免疫疾患の治療法のための薬剤を提供する。
【解決手段】被験体において自己免疫疾患を治療する方法であって、自己抗原もしくはその断片、または前記自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを前記被験体に投与することを含む方法、また、該非免疫原性RNAを含む医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において自己免疫疾患を治療する方法であって、自己抗原もしくはその断片、または前記自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを前記被験体に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記自己免疫疾患がT細胞媒介性自己免疫疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験体において自己反応性T細胞に対する寛容を誘導する方法であって、自己抗原もしくはその断片、または前記自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを前記被験体に投与することを含む方法。
【請求項4】
前記被験体が自己免疫疾患を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記自己免疫疾患がCNSの自己免疫疾患である、請求項1、2および4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項1、2、4および5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非免疫原性RNAが、投与されたとき、樹状細胞の活性化、T細胞の活性化および/またはIFN-αの分泌をもたらさない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非免疫原性RNAが、修飾ヌクレオチドの組み込みおよびdsRNAの除去によって非免疫原性にされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記修飾ヌクレオチドが、自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記修飾ヌクレオチドが、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記修飾核酸塩基が修飾ウラシルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-プソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(m1s4Ψ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(m3Ψ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acp3Ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2'-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2'-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2'-O-メチル-プソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2'-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2'-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2'-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2'-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2'-F-アラ-ウリジン、2'-F-ウリジン、2'-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、および5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群より選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが、プソイドウリジン(Ψ)、N1-メチル-プソイドウリジン(m1Ψ)または5-メチル-ウリジン(m5U)である、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが1-メチル-プソイドウリジンである、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記非免疫原性RNAがmRNAである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記非免疫原性RNAがインビトロ転写RNAである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記自己抗原が自己免疫疾患に関連する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記自己抗原がT細胞抗原である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記自己抗原がCNS由来である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記自己抗原がミエリン抗原である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記自己抗原がミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
自己抗原もしくはその断片、または前記自己抗原もしくは断片の変異体を含む前記ペプチドまたはポリペプチドが、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のアミノ酸35~55を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記非免疫原性RNAが前記被験体の細胞において一過性に発現される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記非免疫原性RNAが樹状細胞に送達される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記樹状細胞が未成熟樹状細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記非免疫原性RNAが送達ビヒクルに製剤化される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記送達ビヒクルが粒子を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記送達ビヒクルが脂質を含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記脂質がカチオン性脂質を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記脂質が、前記非免疫原性RNAと複合体を形成するおよび/または前記非免疫原性RNAをカプセル化する、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記非免疫原性RNAがリポソームに製剤化される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
自己抗原もしくはその断片、または前記自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを含む医薬組成物。
【請求項33】
前記非免疫原性RNAが、投与されたとき、樹状細胞の活性化、T細胞の活性化および/またはIFN-αの分泌をもたらさない、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記非免疫原性RNAが、修飾ヌクレオチドの組み込みおよびdsRNAの除去によって非免疫原性にされる、請求項32または33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記修飾ヌクレオチドが、自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記修飾ヌクレオチドが、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換を含む、請求項34または35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記修飾核酸塩基が修飾ウラシルである、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-プソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(m1s4Ψ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(m3Ψ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acp3Ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2'-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2'-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2'-O-メチル-プソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2'-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2'-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2'-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2'-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2'-F-アラ-ウリジン、2'-F-ウリジン、2'-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、および5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群より選択される、請求項36または37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが、プソイドウリジン(Ψ)、N1-メチル-プソイドウリジン(m1Ψ)または5-メチル-ウリジン(m5U)である、請求項36~38のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが1-メチル-プソイドウリジンである、請求項36~39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記非免疫原性RNAがmRNAである、請求項32~40のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記非免疫原性RNAがインビトロ転写RNAである、請求項32~41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記自己抗原が自己免疫疾患に関連する、請求項32~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記自己抗原がT細胞抗原である、請求項32~43のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記自己抗原がCNS由来である、請求項32~44のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記自己抗原がミエリン抗原である、請求項32~45のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記自己抗原がミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)である、請求項32~46のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
自己抗原もしくはその断片、または前記自己抗原もしくは断片の変異体を含む前記ペプチドまたはポリペプチドが、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のアミノ酸35~55を含む、請求項32~47のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記非免疫原性RNAが、前記医薬組成物を投与された被験体の細胞において一過性に発現される、請求項32~48のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記非免疫原性RNAが、前記医薬組成物を投与された被験体の樹状細胞に送達される、請求項32~49のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記樹状細胞が未成熟樹状細胞である、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記非免疫原性RNAが送達ビヒクルに製剤化される、請求項32~51のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記送達ビヒクルが粒子を含む、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記送達ビヒクルが脂質を含む、請求項52または53に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記脂質がカチオン性脂質を含む、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記脂質が、前記非免疫原性RNAと複合体を形成するおよび/または前記非免疫原性RNAをカプセル化する、請求項54または55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記非免疫原性RNAがリポソームに製剤化される、請求項32~56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
請求項1~31のいずれか一項に記載の方法において使用するための、請求項32~57のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非免疫原性RNAを述べる。このRNAは、自己抗原に対する寛容を誘導するため、したがって自己免疫疾患の治療のための治療薬の開発の基礎を形成する。
【背景技術】
【0002】
免疫系の進化により、2つのタイプの防御:自然免疫および適応免疫に基づく非常に効果的なネットワークの脊椎動物がもたらされた。病原体に関連する一般的な分子パターンを認識する不変受容体に依存する進化的に古い自然免疫系とは対照的に、養子免疫は、B細胞(Bリンパ球)およびT細胞(Tリンパ球)上の高度に特異的な抗原受容体ならびにクローン選択に基づく。B細胞は抗体の分泌による体液性免疫応答を惹起するが、T細胞は、認識された細胞の破壊につながる細胞性免疫応答を媒介し、ヒトおよび動物の細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たす。
【0003】
成熟T細胞は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合し、標的細胞の表面に提示される免疫原性ペプチド(エピトープ)と相互作用する抗原特異的受容体(TCR)を介して抗原を認識し、抗原に応答する。例えば、細胞傷害性T細胞は、MHC-Iタンパク質に関連して提示される抗原に応答する。ヘルパーT細胞は、MHC-IIタンパク質上に提示される抗原を認識する。TCR活性化の最も即時の結果は、T細胞のクローン拡大、細胞表面の活性化マーカーの上方調節、エフェクター細胞への分化、細胞傷害性またはサイトカイン分泌の誘導、およびアポトーシスの誘導をもたらすシグナル伝達経路の開始である。TCRは、TCR α鎖およびβ鎖のヘテロ二量体複合体、共受容体CD4またはCD8、およびCD3シグナル伝達モジュールを含む複雑なシグナル伝達機構の一部である。CD3鎖は細胞内で活性化シグナルを伝達するが、TCRα/βヘテ二量体は抗原認識のみに関与する。
【0004】
T細胞が免疫応答に果たす重要な役割に加えて、樹状細胞(DC)も同様に重要である。DCは、自己抗原に対する寛容の維持ならびに外来抗原に対する自然免疫および適応免疫の活性化において重要な調節的役割を有する専門的な抗原提示細胞である。
【0005】
免疫系は望ましくない作用も生じさせ得る。例えば、自己免疫疾患は、自己抗原に対する寛容の喪失、自己抗原に対して反応性のリンパ球の活性化、および標的器官の病理学的損傷を特徴とする。
【0006】
自己免疫疾患の現在の治療法は、主に症候性応答および全体として免疫系を緩和することに集中している。抗原特異的治療法は、自己免疫疾患の潜在的治療法として最近浮上してきたが、適切な免疫応答を惹起するのは難しいことが判明しており、これらの治療法は限られた成功しか収めていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、自己免疫疾患の有効な治療法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
自己免疫疾患の治療法のための薬剤を提供することが本発明の目的であった。この目的は、特許請求の範囲の主題により本発明に従って達成される。
【0009】
本発明は、自己抗原に対する寛容を誘導するための組成物、方法および使用を包含する。本発明によれば、それに対する免疫応答が自己免疫疾患の特徴である自己抗原を、自己抗原もしくはその断片、または自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAの形態で投与する。好ましい一実施形態で投与されるRNAは、自然免疫受容体のRNA媒介活性化を抑制するRNA修飾ヌクレオチドに組み込み、二本鎖RNA(dsRNA)を除去することによって非免疫原性にされる。非免疫原性RNAによるマウスの免疫化は自己免疫疾患の徴候を完全にブロックしたことが本発明に従って実証される。また、単一の疾患駆動エピトープの投与が十分であり得ることも実証される。
【0010】
本発明の一態様は、自己抗原もしくはその断片、または自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを被験体に投与することを含む、被験体において自己免疫疾患を治療する方法に関する。
【0011】
一実施形態では、自己免疫疾患はT細胞媒介性自己免疫疾患である。
【0012】
本発明の一態様は、自己抗原もしくはその断片、または自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを被験体に投与することを含む、被験体において自己反応性T細胞に対する寛容を誘導する方法に関する。
【0013】
一実施形態では、被験体は自己免疫疾患を有する。一実施形態では、自己免疫疾患はT細胞媒介性自己免疫疾患である。一実施形態では、T細胞は、自己抗原と、または、自己抗原を発現し好ましくは提示する細胞と、自己反応性である。
【0014】
本発明の方法の一実施形態では、自己免疫疾患はCNSの自己免疫疾患である。本発明の方法の一実施形態では、自己免疫疾患は多発性硬化症である。
【0015】
本発明の方法の一実施形態では、非免疫原性RNAは、投与されたとき、樹状細胞の活性化、T細胞の活性化、および/またはIFN-αの分泌をもたらさない。
【0016】
本発明の方法の一実施形態では、非免疫原性RNAは、修飾ヌクレオチドの組み込みおよびdsRNAの除去によって非免疫原性にされる。一実施形態では、修飾ヌクレオチドは、自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する。一実施形態では、修飾ヌクレオチドは、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換を含む。一実施形態では、修飾核酸塩基は修飾ウラシルである。一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-プソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(m1s4Ψ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(m3Ψ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acp3Ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2'-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2'-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2'-O-メチル-プソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2'-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2'-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2'-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2'-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2'-F-アラ-ウリジン、2'-F-ウリジン、2'-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、および5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群より選択される。一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、プソイドウリジン(Ψ)、N1-メチル-プソイドウリジン(m1Ψ)または5-メチル-ウリジン(m5U)である。一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは1-メチル-プソイドウリジンである。
【0017】
本発明の方法の一実施形態では、非免疫原性RNAはmRNAである。本発明の方法の一実施形態では、非免疫原性RNAはインビトロ転写RNAである。
【0018】
本発明の方法の一実施形態では、自己抗原は自己免疫疾患に関連する。本発明の方法の一実施形態では、自己抗原はT細胞抗原である。本発明の方法の一実施形態では、自己抗原はCNS由来である。本発明の方法の一実施形態では、自己抗原はミエリン抗原である。本発明の方法の一実施形態では、自己抗原はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)である。本発明の方法の一実施形態では、自己抗原もしくはその断片、または自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のアミノ酸35~55を含む。
【0019】
本発明の方法の一実施形態では、非免疫原性RNAは被験体の細胞において一過性に発現される。
【0020】
本発明の方法の一実施形態では、非免疫原性RNAは樹状細胞に送達される。一実施形態では、樹状細胞は未成熟樹状細胞である。
【0021】
本発明の方法の一実施形態では、非免疫原性RNAは送達ビヒクルに製剤化される。一実施形態では、送達ビヒクルは粒子を含む。一実施形態では、送達ビヒクルは脂質を含む。一実施形態では、脂質はカチオン性脂質を含む。一実施形態では、脂質は、非免疫原性RNAと複合体を形成し、および/または非免疫原性RNAをカプセル化する。本発明の方法の一実施形態では、非免疫原性RNAはリポソームに製剤化される。
【0022】
本発明の一態様は、自己抗原もしくはその断片、または自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを含む医薬組成物に関する。
【0023】
一実施形態では、非免疫原性RNAは、投与されたとき、樹状細胞の活性化、T細胞の活性化および/またはIFN-αの分泌をもたらさない。
【0024】
一実施形態では、非免疫原性RNAは、修飾ヌクレオチドの組み込みおよびdsRNAの除去によって非免疫原性にされる。一実施形態では、修飾ヌクレオチドは、自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する。一実施形態では、修飾ヌクレオチドは、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換を含む。一実施形態では、修飾核酸塩基は修飾ウラシルである。一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-プソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(m1s4Ψ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(m3Ψ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acp3Ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2'-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2'-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2'-O-メチル-プソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2'-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2'-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2'-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2'-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2'-F-アラ-ウリジン、2'-F-ウリジン、2'-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、および5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群より選択される。一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、プソイドウリジン(Ψ)、N1-メチル-プソイドウリジン(m1Ψ)または5-メチル-ウリジン(m5U)である。一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは1-メチル-プソイドウリジンである。
【0025】
本発明の医薬組成物の一実施形態では、非免疫原性RNAはmRNAである。本発明の医薬組成物の一実施形態では、非免疫原性RNAはインビトロ転写RNAである。
【0026】
本発明の医薬組成物の一実施形態では、自己抗原は自己免疫疾患に関連する。本発明の医薬組成物の一実施形態では、自己抗原はT細胞抗原である。本発明の医薬組成物の一実施形態では、自己抗原はCNS由来である。本発明の医薬組成物の一実施形態では、自己抗原はミエリン抗原である。本発明の医薬組成物の一実施形態では、自己抗原はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)である。本発明の医薬組成物の一実施形態では、自己抗原もしくはその断片、または自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のアミノ酸35~55を含む。
【0027】
本発明の医薬組成物の一実施形態では、非免疫原性RNAは、医薬組成物を投与された被験体の細胞において一過性に発現される。
【0028】
本発明の医薬組成物の一実施形態では、非免疫原性RNAは、医薬組成物を投与された被験体の樹状細胞に送達される。一実施形態では、樹状細胞は未成熟樹状細胞である。
【0029】
本発明の医薬組成物の一実施形態では、非免疫原性RNAは送達ビヒクルに製剤化される。一実施形態では、送達ビヒクルは粒子を含む。一実施形態では、送達ビヒクルは脂質を含む。一実施形態では、脂質はカチオン性脂質を含む。一実施形態では、脂質は、非免疫原性RNAと複合体を形成し、および/または非免疫原性RNAをカプセル化する。本発明の医薬組成物の一実施形態では、非免疫原性RNAはリポソームに製剤化される。
【0030】
本発明の一態様は、本発明の方法で使用するための本発明の医薬組成物に関する。
【0031】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】F12リポソームと複合体化したルシフェラーゼRNAの投与後の脾臓免疫細胞の活性化、サイトカインの放出およびタンパク質の発現。BALB/cマウス(n=7)に非免疫原性LUC mRNA-LPX 10μgを後眼窩神経叢に静脈内注射し、24時間後に(A)樹状細胞(n=3)(CD86の上方調節によって明らかになった)、T細胞、B細胞およびNK細胞(CD69の上方調節によって明らかになった)の成熟状態を調べた。BALB/cマウスへのmRNA-LPX注射の6時間後、(B)IFNαの血清濃度を評価した。(C)インビボ生物発光イメージングによる、ルシフェラーゼRNAのBALB/cマウス(n=4)へのmRNA-LPX注射の6、24、48および72時間後のインビボでのルシフェラーゼ活性測定。データは、n=3匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。LLOD=検出の下限。
【
図2】セルロース処理またはHPLC精製のいずれかによって精製した非免疫原性MOG35-55 mRNAのドットブロット分析。曝露時間20秒。
【
図3】DCによるMOG35-55抗原提示はEAEに対する寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。EAE誘導後7日目および10日目に、セルロースまたはHPLC法のいずれかによって精製した非免疫原性MOG35-55をコードするmRNAを後眼窩神経叢に静脈内注射した。対照マウスには150mM NaClを投与した。データは平均値として示している。n=6匹のマウス/群。
【
図4】APCによるMOG35-55抗原提示は、抗原特異的T細胞増殖を誘導する。ナイーブ、細胞トレースバイオレット(CTV)標識、Thy1.1
+2D2
+CD4
+T細胞を、Thy1.2
+C57BL/6対照マウスに養子移入した。翌日、非免疫原性MOG35-55コードmRNA 10、20または40μgでマウスを免疫した。対照マウスは非免疫原性の無関係な対照mRNA 20μgで処置した。2番目の対照群には、さらに150mM NaClを投与した。4日後、マウスを犠死させ、脾臓をThy1.1
+細胞の増殖について分析した。データは、n=3匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。
【
図5】誘導された抗原特異的Treg細胞によるMOG35-55 T細胞増殖のインビトロ抑制。(A、B)2D2 Foxp3-eGFPマウスを、非免疫原性MOG35-55コードmRNAで4回(0日目、3日目、6日目、9日目)免疫した。対照マウスは、免疫原性MOG35-55コードmRNAまたは非免疫原性の無関係な対照mRNAで処置した。3番目の対照群には150mM NaClをさらに投与した。最後のmRNA処置の4日後、マウスを犠死させ、MOG35-55特異的CD4
+細胞をFoxp3-eGFP発現について分析した(C)。各処置群の細胞(サプレッサー)を未処置のナイーブマウスのCTV標識2D2 CD4
+T細胞(レスポンダー細胞)と共培養し、MOG35-55ペプチド負荷BMDCによってインビトロで72時間再刺激した。レスポンダー細胞の増殖をFACS(CTV
+細胞でゲートした)によるCTV希釈によって決定した。サプレッサー細胞の抑制能力を、レスポンダー細胞に対して4つの異なる比率で測定した。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。CD4
+Foxp3
+細胞の頻度の統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって、***p≦0.001で評価した。
【
図6】DCによるMOG35-55抗原提示はEAEに対する寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。EAE誘導後7日目および10日目に、非免疫原性MOG35-55をコードするmRNA、および非免疫原性の無関係なmRNAを後眼窩神経叢に静脈内注射した。対照マウスには150mM NaClを投与した。データは平均値として示している。n=6~8匹のマウス/群。群ごとの各マウスの最大EAEスコアの統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって決定した。曲線下面積(AUC)を使用して、様々なEAE疾患発症曲線の一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって統計的有意性を決定した。
【
図7】DCによるMOG35-55抗原提示は、実際の治療環境でEAEに対する寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。マウスが1~2のEAEスコアに達した後、非免疫原性MOG35-55コードmRNA、および非免疫原性の無関係なmRNAを後眼窩神経叢に静脈内注射した。対照マウスには150mM NaClを投与した。データは平均値として示している。n=6~9匹のマウス/群。群ごとの各マウスの最大EAEスコアの統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって評価した。曲線下面積(AUC)を使用して、様々なEAE疾患発症曲線の一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって統計的有意性を決定した。
【
図8】DCによる抗原提示はEAEに対する寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFAによる免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目と10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μgまたは150mM NaClで処置した。疾患誘導後16日目に、EAEに罹患し、mRNA処置したマウスから器官を採取し、ブレフェルジンAの存在下に、MOG35-55ペプチドの存在下で6時間培養した。CD40Lの発現をCD4
+CD44
+T細胞の細胞内サイトカイン染色によって調べた。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。CD4
+Teff細胞の統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって、*p≦0.05で評価した。
【
図9】MOG35-55ペプチド特異的Th1およびTh17細胞は、治療的に処置したマウスにおいて有意に減少する(7日目/10日目)。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFAによる免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目と10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μgまたは150mM NaClで処置した。EAE誘導後16日目に脳および脊髄を採取し、ブレフェルジンAの存在下に、MOG35-55ペプチドの存在下で6時間、細胞をインビトロで再刺激した。次に、CD4
+T細胞を細胞内サイトカイン染色によってIFNγおよびIL-17Aの発現について分析し、IFNγ
+およびIL-17A
+CD4
+T細胞の割合を計算した。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって、*p≦0.05で評価した。
【
図10】F12リポソームと複合体化した非免疫原性(m1Y)および免疫原性(U)mRNAの異なるMOG35-55-mRNA混合物の投与後の脾臓免疫細胞の活性化およびサイトカイン放出。C57BL/6マウスに全MOG35-55 mRNA-LPX 20μgを後眼窩神経叢に静脈内注射し、24時間後に樹状細胞(CD86の上方調節によって明らかになった)、T細胞およびNK細胞(CD69の上方調節によって明らかになった)の成熟状態を調べた。C57BL/6マウスへのmRNA-LPX注射の6時間後、IFNαの血清濃度を評価した。データは、n=3匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。
【
図11】非免疫原性および免疫原性mRNAの異なるMOG35-55-mRNA混合物のドットブロット分析。曝露時間20秒。破線は、dsRNA 320pgのドット強度の100%として設定している。
【
図12】非免疫原性MOG35-55 mRNAはEAEに対する完全な寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。EAE誘導後7日目および10日目に、非免疫原性(m1Y)および免疫原性(U)MOG35-55コードmRNAの異なる混合物を後眼窩神経叢に静脈内注射した。対照マウスには150mM NaClを投与した。データは平均値として示している。n=6~8匹のマウス/群。群ごとの各マウスの最大EAEスコアの統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって、**p≦0.01で評価した。
【
図13】ヌクレオシド修飾のみでは認識の喪失を誘導しない。F12リポソームと複合体化した様々なヌクレオシド修飾mRNAの投与後の脾臓免疫細胞の活性化およびサイトカイン放出。C57BL/6マウスに全mRNA-LPX 10μgを後眼窩神経叢に静脈内注射し、24時間後に樹状細胞(CD86の上方調節によって明らかになった)、T細胞およびNK細胞(CD69の上方調節によって明らかになった)の成熟状態を調べた。C57BL/6マウスへのmRNA-LPX注射の6時間後、IFNαの血清濃度を評価した。データは、n=3匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。
【
図14】非免疫原性MOG35-55コードmRNA-LPX処置は抗原特異的CD4
+エフェクター細胞の拡大をもたらさない。ナイーブC57BL/6マウスを、0、3、7、および10日目に非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μgで処置した。対照マウスは非免疫原性の無関係な対照mRNA 20μgで処置した。2番目の対照群には150mM NaClを投与した。最初のmRNA処置後13日目に、マウスを犠死させ、脾細胞を、IFNγ ELISpot(A)およびMOG35-55ペプチドで再刺激した細胞の上清中のMultiplex ELISAによるサイトカインの検出(BおよびC)によって炎症誘発性および抗炎症性サイトカインの分泌について分析した。データは、n=4~5匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。
【
図15】共阻害分子は、非免疫原性MOG35-55をコードするmRNA-LPXで処置すると上方調節される。ナイーブC57BL/6マウスを、0、3、7、および10日目に非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μgで処置した。対照マウスは非免疫原性の無関係な対照mRNA 20μgで処置した。さらに、2番目の対照群には150mM NaClを投与した。最初のmRNA処置後13日目に、マウスを犠死させ、脾臓からのMOG35-55 CD4
+T細胞を共阻害分子の上方調節についてフローサイトメトリで分析した。データは、n=4~5匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって評価した。
【
図16】非免疫原性MOG35-55コードmRNA-LPXでの治療的ワクチン接種は、CNSへのリンパ球の浸潤を減少させる。ナイーブThy1.1
+2D2 CD4
+T細胞を1日目にThy1.2
+C57BL/6マウスに養子移入した。EAEを、MOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目および10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μg、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは150mM NaClで処置した。疾患誘導後16日目に、異なる処置を受けたマウスから器官を採取した。Thy1.1
+CD4
+MOG35-55特異的細胞の浸潤を調べ、Trucount(商標)チューブを使用したフローサイトメトリによって浸潤細胞の総数を測定した。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。浸潤したCD4
+Teff細胞の統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって評価した。
【
図17】MOG35-55特異的Th1およびTh17細胞は、治療的に処置したマウスにおいて有意に減少する(7日目/10日目)。EAEを、C57BL/6においてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目および10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μg、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは150mM NaClで処置した。EAE誘導後16日目に脳および脊髄を採取し、ブレフェルジンAの存在下に、MOG35-55ペプチドの存在下で6時間、細胞をインビトロで再刺激した。次に、CD4
+T細胞を細胞内サイトカイン染色によってIFNγおよびIL-17Aの発現についてフローサイトメトリで分析し、CD4
+T細胞のIFNγ
+およびIL-17A
+の割合を計算した。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって評価した。
【
図18】共阻害分子は、非免疫原性MOG35-55特異的mRNA-LPX処置が成功すると、MOG35-55特異的CD4
+T細胞で上方調節される。EAEを、C57BL/6においてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目および10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μg、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは150mM NaClで処置した。疾患誘導後16日目に、異なる処置を受けた群から脾臓を切除した。MOG35-55特異的CD4
+T細胞をテトラマー特異的MACSによって単離し、テトラマー染色によってフローサイトメトリで表現型解析した。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって評価した。
【
図19】PD-1およびCTLA-4は、非免疫原性mRNA誘導の抗原特異的寛容の維持に必要である。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目および10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μgまたは非免疫原性の無関係なmRNA 20μgで処置した(n=8匹のマウス/群)。mRNA処置マウスを、抗PD-1もしくは抗CTLA-4遮断抗体または対応するIgG対照で同時に処置した。EAEの発症を毎日の健康モニタリングによって評価した。EAE曲線下面積(AUC)を使用して、様々な疾患発症曲線の一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって統計的有意性を決定した。
【
図20】非免疫原性抗原特異的mRNAでの処置による抗原特異的寛容の誘導は、EAE疾患モデルとは無関係である。(A)非免疫原性PLP139-151をコードするmRNA-LPXでの治療的ワクチン接種は、再発寛解型EAEに対する寛容を誘導する。EAEを、SJLマウスにおいてPLP139-151-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。EAE誘導後7日目および10日目から開始して週に2回、非免疫原性PLP139-151をコードするmRNA 20μg、および非免疫原性の無関係なmRNAを後眼窩神経叢に静脈内注射した。(B)非免疫原性マルチエピトープをコードするmRNA-LPXでの治療的ワクチン接種は、複雑なEAEにおいて寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6およびSJL/JRjのF1ハイブリッドマウスにおいてMOG35-55、PLP139-151、PLP178-191、MBP84-104およびMOBP15-36-CFA(0日目)ならびに百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。EAE誘導後7日目および10日目から開始して週に2回、非免疫原性マルチエピトープコードmRNA 40μg、非免疫原性MOG35-55 mRNA 20μg、および非免疫原性の無関係なmRNA 20μgを後眼窩神経叢に静脈内注射した。EAEの発症を毎日の健康モニタリングによって評価した。データは平均値として示している。n=6~8匹のマウス/群。EAE曲線下面積(AUC)を使用して、様々な疾患発症曲線の一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって統計的有意性を決定した。
【
図21】非免疫原性mRNAによるサイトカインの共送達は、EAEモデルでの非免疫原性抗原特異的mRNA-LPX処置の寛容原性効力を改善する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目および10日目に、それぞれ非免疫原性mIL-10(A)またはmIL-27(B)mRNA 15μgと共に非免疫原性MOG35-55 mRNA 5μgでマウスを処置した。対照マウスには、非免疫原性MOG35-55 mRNA 5μgを非免疫原性の無関係なmRNA 15μg、非免疫原性のサイトカインコードmRNA 15μg、または非免疫原性の無関係なmRNA 20μgと共に投与した。EAEの発症を毎日の健康モニタリングによって評価した。データは平均値として示している。n=6~8匹のマウス/群。EAE曲線下面積(AUC)を使用して、様々な疾患発症曲線の一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって統計的有意性を決定した。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を以下で詳細に説明するが、本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0034】
以下において、本発明の要素を説明する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、それらは、追加の実施形態を創製するために任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に説明される例および好ましい実施形態は、本発明を明示的に記述される実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明示的に記述される実施形態を任意の数の開示される要素および/または好ましい要素と組み合わせた実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願において記述されるすべての要素の任意の並び替えおよび組み合わせは、文脈上特に指示されない限り、本出願の説明によって開示されていると見なされるべきである。
【0035】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)",H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl,Eds.,(1995)Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerlandに記載されているように定義される。
【0036】
本発明の実施は、特に指示されない限り、当技術分野の文献(例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989参照)で説明されている生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。
【0037】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈上特に必要とされない限り、「含む」という語および「含むこと」などの変形は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含を意味するが、いかなる他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の排除も意味しないと理解され、しかしいくつかの実施形態では、そのような他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群が排除され得る、すなわち主題は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含に存する。本発明の説明に関連して(特に特許請求の範囲に関連して)使用される「1つの」および「その」という用語および同様の言及は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に属する各々別々の値を個別に言及することの簡略方法として機能することが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。
【0038】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図し、特許請求される本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠な、特許請求されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
【0039】
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される資料(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書等を含む)の各々は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のためにそのような開示に先行する権利を有さないことの承認と解釈されるべきではない。
【0040】
本発明は、自己免疫疾患に関連する自己抗原に対する免疫系の寛容を誘導することによる自己免疫疾患の治療または予防を想定する。自己抗原に対する寛容は、非免疫原性RNAを投与することによって誘導される。非免疫原性RNAは、自己抗原もしくはその断片、または被験体に投与されたとき前記自己抗原に対する免疫応答を抑制する自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする配列を含む。
【0041】
様々な実施形態では、本明細書に記載の非免疫原性RNAは、200~20000ヌクレオチド、500~5000ヌクレオチド、500~2500ヌクレオチド、特に600~2500ヌクレオチドまたは800~2000ヌクレオチドの長さを有する。
【0042】
本発明によれば、ナノ粒子製剤、特にリポプレックス製剤などの担体または送達ビヒクルに製剤化された本明細書に記載の非免疫原性RNAを投与することが好ましい。したがって、本明細書に記載の非免疫原性RNA分子は、本明細書に記載のナノ粒子またはナノ粒子製剤、特にリポプレックス製剤などの担体または送達ビヒクルに製剤されて存在し得る。
【0043】
一実施形態では、全身投与後に脾臓中の樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞に非免疫原性RNA分子を送達する送達ビヒクルを使用し得る。例えば、RNAとリポソームからの電気的に中性のまたは負に帯電したリポプレックス、例えばDOTMAとDOPEまたはDOTMAとコレステロールを含むリポプレックスなどの、粒子の正味の電荷がゼロに近いかまたは負である既定の粒径を有するナノ粒子RNA製剤は、全身投与後に脾臓DCへのRNAの実質的な送達をもたらす。ナノ粒子中の正電荷と負電荷の電荷比が1.4:1以下である、および/またはナノ粒子のゼータ電位が0以下であるナノ粒子RNA製剤が本発明に従って特に好ましい。一実施形態では、ナノ粒子内の正電荷と負電荷の電荷比は、1.4:1~1:8、好ましくは1.2:1~1:4、例えば1:1~1:3、例えば1:1.2~1:2、1:1.2~1:1.8、1:1.3~1:1.7、特に1:1.4~1:1.6、例えば約1:1.5である。一実施形態では、ナノ粒子のゼータ電位は、-5以下、-10以下、-15以下、-20以下または-25以下である。様々な実施形態では、ナノ粒子のゼータ電位は、-35以上、-30以上または-25以上である。一実施形態では、ナノ粒子は、0mV~-50mV、好ましくは0mV~-40mVまたは-10mV~-30mVのゼータ電位を有する。一実施形態では、正電荷は、ナノ粒子中に存在する少なくとも1つのカチオン性脂質によって与えられ、負電荷はRNAによって与えられる。一実施形態にでは、ナノ粒子は少なくとも1つのヘルパー脂質を含む。ヘルパー脂質は、中性またはアニオン性脂質であり得る。
【0044】
一実施形態では、ナノ粒子は、DOTMAとDOPEを10:0~1:9、好ましくは8:2~3:7、より好ましくは7:3~5:5のモル比で含むリポプレックスであり、ここで、DOTMAの正電荷とRNAの負電荷の電荷比は1.8:2~0.8:2、より好ましくは1.6:2~1:2、さらにより好ましくは1.4:2~1.1:2、さらにより好ましくは約1.2:2である。
【0045】
一実施形態では、ナノ粒子は、DOTMAとコレステロールを10:0~1:9、好ましくは8:2~3:7、より好ましくは7:3~5:5のモル比で含むリポプレックスであり、ここで、DOTMAの正電荷とRNAの負電荷の電荷比は1.8:2~0.8:2、より好ましくは1.6:2~1:2、さらにより好ましくは1.4:2~1.1:2、さらにより好ましくは約1.2:2である。
【0046】
一実施形態では、ナノ粒子は、DOTAPとDOPEを10:0~1:9、好ましくは8:2~3:7、より好ましくは7:3~5:5のモル比で含むリポプレックスであり、ここで、DOTMAの正電荷とRNAの負電荷の電荷比は1.8:2~0.8:2、より好ましくは1.6:2~1:2、さらにより好ましくは1.4:2~1.1:2、さらにより好ましくは約1.2:2である。
【0047】
一実施形態では、ナノ粒子は、DOTMAとDOPEを2:1~1:2、好ましくは2:1~1:1のモル比で含むリポプレックスであり、ここで、DOTMAの正電荷とRNAの負電荷の電荷比は1.4:1以下である。
【0048】
一実施形態では、ナノ粒子は、DOTMAとコレステロールを2:1~1:2、好ましくは2:1~1:1のモル比で含むリポプレックスであり、ここで、DOTMAの正電荷とRNAの負電荷の電荷比は1.4:1以下である。
【0049】
一実施形態では、ナノ粒子は、DOTAPとDOPEを2:1~1:2、好ましくは2:1~1:1のモル比で含むリポプレックスであり、ここで、DOTAPの正電荷とRNAの負電荷の電荷比は1.4:1以下である。
【0050】
一実施形態では、本発明による非免疫原性RNAは、F12またはF5リポソーム、好ましくはF12リポソームに製剤化される。
【0051】
本発明によれば、「F12」という用語は、DOTMAとDOPEを2:1のモル比で含むリポソーム、およびそのようなリポソームを使用して形成される、RNAを含むリポプレックスを表す。
【0052】
本発明によれば、「F5」という用語は、DOTMAとコレステロールを1:1のモル比で含むリポソーム、およびそのようなリポソームを使用して形成される、RNAを含むリポプレックスを表す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、粒子を、特に核酸の全身投与、特に非経口投与に適したものにする直径、典型的には1000ナノメートル(nm)未満の直径を有する任意の粒子を指す。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は600nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は400nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約50nm~約1000nm、好ましくは約50nm~約400nm、好ましくは約100nm~約300nm、例えば約150nm~約200nmの範囲の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約200~約700nm、約200~約600nm、好ましくは約250~約550nm、特に約300~約500nmまたは約200~約400nmの範囲の直径を有する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子製剤」という用語または同様の用語は、少なくとも1つのナノ粒子を含有する任意の物質を指す。いくつかの実施形態では、ナノ粒子製剤は、ナノ粒子の均一な集合体である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子製剤は分散液またはエマルジョンである。一般に、分散液またはエマルジョンは、少なくとも2つの不混和性材料が組み合わされた場合に形成される。
【0055】
「リポプレックス」または「核酸リポプレックス」、特に「RNAリポプレックス」という用語は、脂質と核酸、特にRNAの複合体を指す。リポプレックスは、しばしば中性の「ヘルパー」脂質も含む、カチオン性リポソームが核酸と混合された場合に自発的に形成される。
【0056】
本発明が正電荷、負電荷もしくは中性の電荷、またはカチオン性化合物、陰性化合物もしくは中性化合物などの電荷に言及する場合、これは一般に、言及される電荷が生理的pHなどの選択されたpHで存在することを意味する。例えば、「カチオン性脂質」という用語は、生理的pHなどの選択されたpHで正味の正電荷を有する脂質を意味する。「中性脂質」という用語は、正味の正電荷も負電荷も有さない脂質を意味し、生理的pHなどの選択されたpHで無電荷または中性両性イオンの形態で存在し得る。本明細書における「生理的pH」とは、約7.5のpHを意味する。
【0057】
本発明での使用を企図される脂質担体などのナノ粒子担体には、RNAなどの核酸が、例えば核酸と複合体を形成することによって、または核酸が封入またはカプセル化された小胞を形成することによって会合することができる任意の物質またはビヒクルが含まれる。これは、裸の核酸と比較して核酸の安定性の増加をもたらし得る。特に、血液中の核酸の安定性が増加され得る。
【0058】
カチオン性脂質、カチオン性ポリマーおよび正電荷を有する他の物質は、負に荷電した核酸と複合体を形成し得る。これらのカチオン性分子を使用して核酸を複合体化し、それによって、例えばいわゆるリポプレックスまたはポリプレックスをそれぞれ形成することができ、これらの複合体は核酸を細胞に送達することが示されている。
【0059】
本発明で使用するためのナノ粒子核酸調製物は、様々なプロトコルによって、および様々な核酸複合体化化合物から得ることができる。脂質、ポリマー、オリゴマー、または両親媒性物質は典型的な複合体化剤である。一実施形態では、複合体化化合物は、プロタミン、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニンまたはヒストンからなる群より選択される少なくとも1つの作用物質を含む。
【0060】
本発明によれば、プロタミンはカチオン性担体剤として有用である。「プロタミン」という用語は、アルギニンに富み、様々な動物(魚など)の精子細胞において体細胞ヒストンの代わりに特にDNAと会合して見出される、比較的低分子量の様々な強塩基性タンパク質のいずれかを指す。特に、「プロタミン」という用語は、強塩基性で、水に可溶性であり、熱によって凝固せず、加水分解時に主にアルギニンを生成する、魚の精子に見出されるタンパク質を指す。精製形態では、それらは、インスリンの長時間作用型製剤において、ヘパリンの抗凝固作用を中和するために使用される。本発明によれば、本明細書で使用される「プロタミン」という用語は、その断片を含む天然源または生物源から得られるまたはそれに由来する任意のプロタミンアミノ酸配列、および前記アミノ酸配列またはその断片の多量体形態を含むことを意味する。さらに、この用語は、人工的であり、特定の目的のために特別に設計され、天然源または生物源から単離することができない(合成された)ポリペプチドを包含する。本発明に従って使用されるプロタミンは、硫酸プロタミンまたはプロタミン塩酸塩であり得る。好ましい実施形態では、本明細書に記載のナノ粒子の製造のために使用されるプロタミン源は、等張塩溶液中に10mg/ml(5000ヘパリン中和単位/ml)を超えるプロタミンを含有するプロタミン5000である。
【0061】
リポソームは、リン脂質などの小胞形成脂質の1つ以上の二重層をしばしば有する微視的な脂質小胞であり、薬物をカプセル化することができる。多重層小胞(MLV)、小型単層小胞(SUV)、大型単層小胞(LUV)、立体的に安定化されたリポソーム(SSL)、多小胞性小胞(MV)および大型多小胞性小胞(LMV)、ならびに当技術分野で公知の他の二重層形態を含むがこれらに限定されない、様々な種類のリポソームを本発明に関連して使用し得る。リポソームのサイズおよびラメラリティは調製方法に依存し、使用される小胞の種類の選択は好ましい投与方式に依存する。超分子組織化には、ラメラ相、六方晶相および逆六方晶相、立方相、ミセル、単層からなる逆ミセルを含む脂質が水性媒体中に存在し得る、超分子構造のいくつかの他の形態が存在する。これらの相はDNAまたはRNAと組み合わせて得ることもでき、RNAおよびDNAとの相互作用は相状態に実質的に影響を及ぼし得る。記載される相は、本発明のナノ粒子状核酸製剤に存在し得る。
【0062】
核酸とリポソームから核酸リポプレックスを形成するために、想定される核酸リポプレックスを提供する限り、リポソームを形成する任意の適切な方法を使用し得る。リポソームは、逆相蒸散法(REV)、エタノール注入法、脱水-再水和法(DRV)、超音波処理または他の適切な方法などの標準的な方法を用いて形成し得る。
【0063】
リポソーム形成後に、リポソームをサイズ分類し、実質的に均一なサイズ範囲を有するリポソームの集団を得ることができる。
【0064】
二重層を形成する脂質は、典型的には2本の炭化水素鎖、特にアシル鎖、および極性または非極性のいずれかの頭部基を有する。二重層形成脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、およびスフィンゴミエリンなどのリン脂質を含む、天然に存在する脂質または合成起源の脂質のいずれかで構成され、ここで、2本の炭化水素鎖は、典型的には約14~22炭素原子長であり、様々な不飽和度を有する。本発明の組成物に使用するための他の適切な脂質には、糖脂質およびステロール、例えばリポソームにも使用できるコレステロールおよびその様々な類似体が含まれる。
【0065】
カチオン性脂質は、典型的にはステロール鎖、アシル鎖またはジアシル鎖などの親油性部分を有し、全体として正味の正電荷を有する。脂質の頭部基は、典型的には正電荷を担持する。カチオン性脂質は、好ましくは1~10価の正電荷、より好ましくは1~3価の正電荷、より好ましくは1価の正電荷を有する。カチオン性脂質の例には、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA);ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジミリストイルオキシプロピル-1,3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE)、および2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミウムトリフルオロアセテート(DOSPA)が含まれるが、これらに限定されない。DOTMA、DOTAP、DODAC、およびDOSPAが好ましい。DOTMAが最も好ましい。
【0066】
加えて、本明細書に記載のナノ粒子は、好ましくは、構造安定性などを考慮して中性脂質をさらに含む。中性脂質は、核酸-脂質複合体の送達効率を考慮して適切に選択することができる。中性脂質の例には、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、ステロール、およびセレブロシドが含まれるが、これらに限定されない。DOPEおよび/またはDOPCが好ましい。DOPEが最も好ましい。カチオン性リポソームがカチオン性脂質と中性脂質の両方を含む場合、カチオン性脂質と中性脂質のモル比は、リポソームの安定性などを考慮して適切に決定することができる。
【0067】
一実施形態によれば、本明細書に記載されるナノ粒子はリン脂質を含み得る。リン脂質はグリセロリン脂質であり得る。グリセロリン脂質の例には、限定されることなく、以下の3種類の脂質が含まれる:(i)例えばホスファチジルコリン(PC)、卵黄ホスファチジルコリン、天然、部分水素化または完全水素化形態の大豆由来PC、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、スフィンゴミエリン(SM)を含む、双性イオン性リン脂質;(ii)例えばホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジパルミトイルPG、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG);メトキシ-ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(mPEG-DSPE)の場合のようにコンジュゲートが双性イオン性リン脂質を負に帯電させる合成誘導体を含む、負に帯電したリン脂質;および(iii)例えば、そのホスホモノエステルがO-メチル化されてカチオン性脂質を形成するホスファチジルコリンまたはスフィンゴミエリンを含む、カチオン性リン脂質。
【0068】
脂質担体への核酸の会合は、例えば、担体が核酸を物理的に捕捉するように、担体の間隙空間を満たす核酸によって、または共有結合、イオン結合もしくは水素結合によって、または非特異的結合による吸着によって起こり得る。
【0069】
「免疫応答」という用語は、免疫系の反応、好ましくは抗原に関するものであり、好ましくは細胞性免疫応答、体液性免疫応答、またはその両方を指す。本発明によれば、抗原、細胞または組織などの標的に関する「への免疫応答」または「に対する免疫応答」という用語は、標的に対して向けられる免疫応答に関する。
【0070】
免疫系は、自然免疫系と適応免疫系の2つの部分に分けられる。適応免疫応答は、特定の抗原に特異的なBおよびTリンパ球に依存する。自然免疫系は、大多数の脅威が共有する共通の構造に応答する。これらの共通の構造は、病原体関連分子パターンまたはPAMPと呼ばれ、toll様受容体またはTLRによって認識される。細胞TLRに加えて、自然免疫系の重要な部分は、PAMP認識機構を介して病原体をオプソニン化し、死滅させる体液性補体系である。これらの高度に保存された可溶性の膜結合タンパク質は、集合的にパターン認識受容体(PRR)と呼ばれ、自然免疫系を始動させるのはPAMP/PRR相互作用である。
【0071】
TLRは自然免疫系の細胞によって発現される膜貫通タンパク質であり、侵入微生物を認識し、免疫および炎症応答を開始させるシグナル伝達経路を活性化して侵入物を破壊する。種々のTLRが、細菌の細胞壁成分、ウイルスの二本鎖RNAおよび小分子抗ウイルス化合物または免疫調節化合物を含む、多様なリガンドに対する受容体としての機能を果たす。ヒトでは、TLR3、7、8、および9は、主にウイルスおよび細菌由来の核酸ベースのPAMPに応答する。
【0072】
「細胞性免疫応答」、「細胞性応答」、「細胞媒介性免疫」または同様の用語は、抗原の発現および/またはクラスIもしくはクラスII MHCを用いた抗原の提示によって特徴付けられる、細胞に対する細胞性応答を含むことを意味する。細胞性応答は、「ヘルパー」または「キラー」のいずれかとして作用するT細胞またはTリンパ球と呼ばれる細胞に関連する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも称される。)は、免疫応答を調節することによって中心的な役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞またはCTLとも称される。)は、疾患細胞などの細胞を死滅させる。
【0073】
「体液性免疫応答」という用語は、作用物質および生物に応答して抗体が産生され、最終的にそれらを中和および/または排除する、生存生物における過程を指す。抗体応答の特異性は、単一特異性の抗原に結合する膜結合受容体を介してTおよび/またはB細胞によって媒介される。適切な抗原の結合および様々な他の活性化シグナルの受け取り後、Bリンパ球が分裂し、記憶B細胞および抗体分泌形質細胞クローンを産生し、それぞれが、その抗原受容体によって認識されたのと同一の抗原エピトープを認識する抗体を産生する。記憶Bリンパ球は、その後それらの特異的抗原によって活性化されるまで休眠状態のままである。これらのリンパ球は記憶の細胞基盤を提供し、特異的抗原に再曝露されたときに抗体応答の増大を生じさせる。
【0074】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗原上のエピトープに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。特に、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質を指す。「抗体」という用語には、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、および前記のいずれかの組み合わせが含まれる。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)で構成される。可変領域および定常領域は、本明細書ではそれぞれ可変ドメインおよび定常ドメインとも称される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が間に組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域にさらに細分化することができる。各VHおよびVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された、3つのCDRと4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。VHのCDRはHCDR1、HCDR2およびHCDR3と称され、VLのCDRはLCDR1、LCDR2およびLCDR3と称される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は重鎖定常領域(CH)および軽鎖定常領域(CL)を含み、CHは、定常ドメインCH1、ヒンジ領域、ならびに定常ドメインCH2およびCH3(以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置されている:CH1、CH2、CH3)にさらに細分化することができる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。抗体は、天然源または組換え供給源に由来する無傷の免疫グロブリンであり得、無傷の免疫グロブリンの免疫活性部分であり得る。抗体は、典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。抗体は、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに一本鎖抗体およびヒト化抗体を含む様々な形態で存在し得る。
【0075】
本明細書に記載の抗体には、IgA1またはIgA2などのIgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgM、およびIgD抗体が含まれる。様々な実施形態では、抗体はIgG1抗体、より特定するとIgG1、カッパまたはIgG1、ラムダアイソタイプ(すなわちIgG1、κ、λ)、IgG2a抗体(例えばIgG2a、κ、λ)、IgG2b抗体(例えばIgG2b、κ、λ)、IgG3抗体(例えばIgG3、κ、λ)またはIgG4抗体(例えばIgG4、κ、λ)である。
【0076】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質、好ましくは抗体またはB細胞受容体(BCR)などの抗原受容体に関する。免疫グロブリンは、特徴的な免疫グロブリン(Ig)フォールドを有する構造ドメイン、すなわち免疫グロブリンドメインを特徴とする。この用語は、膜結合免疫グロブリンおよび可溶性免疫グロブリンを包含する。膜結合免疫グロブリンは、表面免疫グロブリンまたは膜免疫グロブリンとも称され、一般にBCRの一部である。可溶性免疫グロブリンは一般に抗体と称される。免疫グロブリンは一般に、いくつかの鎖、典型的にはジスルフィド結合を介して連結された2本の同一の重鎖と2本の同一の軽鎖を含む。これらの鎖は、主に、VL(可変軽鎖)ドメイン、CL(定常軽鎖)ドメイン、VH(可変重鎖)ドメイン、ならびにCH(定常重鎖)ドメインCH1、CH2、CH3およびCH4などの免疫グロブリンドメインで構成される。哺乳動物免疫グロブリン重鎖には5つの種類、すなわちα、δ、ε、γおよびμがあり、これらは抗体の異なるクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMを構成する。可溶性免疫グロブリンの重鎖とは対照的に、膜または表面免疫グロブリンの重鎖は、膜貫通ドメインおよびそのカルボキシ末端に短い細胞質ドメインを含む。哺乳動物には、2種類の軽鎖、すなわちラムダとカッパがある。免疫グロブリン鎖は可変領域と定常領域を含む。定常領域は、免疫グロブリンの異なるアイソタイプ内で本質的に保存されており、可変部分は高度に多様であり、抗原認識を構成する。
【0077】
本発明によれば、「抗原」または「免疫原」という用語は、免疫応答の標的であるおよび/または免疫応答を惹起する任意の物質、好ましくはペプチドまたはタンパク質を包含する。特に、「抗原」は、抗体またはTリンパ球(T細胞)と特異的に反応する任意の物質に関する。本発明によれば、「抗原」という用語は、B細胞またはT細胞エピトープなどの少なくとも1つのエピトープを含有する任意の分子を含む。好ましくは、本発明に関連して抗原は、場合によりプロセシング後に、好ましくは抗原または抗原を発現する細胞に特異的な免疫反応を誘導する分子である。抗原は、アレルゲン、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物ならびに他の感染因子および病原体を含んでもよくもしくはそれらに由来してもよく、または抗原は腫瘍抗原であってもよい。
【0078】
「自己抗原」は、通常の状況ではその生物の免疫系によって認識されないが、免疫攻撃の標的となり得、自己免疫疾患を生じさせ得る生物に由来する抗原である。
【0079】
好ましい実施形態では、自己抗原は自己免疫疾患に関連する。「自己免疫疾患に関連する自己抗原」という用語は、自己免疫疾患にとって病理学的に重要な自己抗原を指す。一実施形態では、自己免疫疾患に関連する自己抗原は、自己免疫疾患を有する患者において免疫反応が向けられる少なくとも1つのエピトープを含む分子である。
【0080】
自己抗原もしくはその断片、または本発明に従って被験体に提供される自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドは、前記ペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを投与することによって、自己抗原に対する免疫応答の低下をもたらすはずである。したがって、自己抗原もしくはその断片、または本発明に従って提供される自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドは、自己免疫疾患に関連する自己抗原、またはその変異体(自己抗原およびその変異体の断片を含む)に対応し得るまたはそれを含み得る。一実施形態では、そのような断片または変異体は、自己抗原と同様に、その提供が、自己抗原または自己抗原を発現し、場合によりMHC分子に関連して自己抗原を提示する細胞を標的とする自己反応性T細胞に対する寛容をもたらすという点で、自己免疫疾患に関連する自己抗原と免疫学的に等価である。したがって、自己抗原もしくはその断片、または本発明に従って提供される自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドは、自己免疫疾患に関連する自己抗原と同一であってもよく、自己免疫疾患に関連する自己抗原またはその部分もしくは断片を含んでもよく、または自己免疫疾患に関連する自己抗原またはその部分もしくは断片に相同な抗原を含んでもよい。自己抗原もしくはその断片、または本発明に従って提供される自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドが、自己免疫疾患に関連する自己抗原の部分もしくは断片、または自己免疫疾患に関連する自己抗原に相同な抗原の部分もしくは断片を含む場合、前記部分または断片は、自己免疫疾患に関連する自己抗原のエピトープ、特に自己反応性T細胞が標的とする自己免疫疾患に関連する自己抗原のエピトープを含み得る。したがって、本発明によれば、自己抗原もしくはその断片、または自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドは、自己免疫疾患に関連する自己抗原のペプチド断片などの、自己免疫疾患に関連する自己抗原の免疫原性断片を含み得る。本発明による「自己抗原の免疫原性断片」は、好ましくはT細胞応答を刺激することができる自己抗原の部分または断片に関する。本発明に従って提供される場合、前記部分または断片はまた、自己反応性T細胞に対する寛容性を誘導することも可能であり得る。自己抗原もしくはその断片、または本発明に従って提供される自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドは、組換えペプチドまたはポリペプチドあってもよく、および/または本発明に従ってそれらをコードする非免疫原性RNAは、組換えRNAであってもよい。
【0081】
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価なアミノ酸配列などの免疫学的に等価な分子が、同じもしくは本質的に同じ免疫学的特性を示し、および/または、例えば免疫学的作用の種類に関して、同じもしくは本質的に同じ免疫学的作用を及ぼすことを意味する。本発明に関連して、「免疫学的に等価」という用語は、好ましくは抗原または抗原変異体の免疫学的作用または特性に関して使用される。
【0082】
本発明の一実施形態では、非免疫原性RNAの投与により本発明に従って提供されるペプチドまたはポリペプチドは、好ましくは本明細書に記載の自己免疫疾患状態などの自己免疫疾患状態において認識される自己抗原である自己抗原からの少なくとも1つのエピトープを含む。一実施形態では、本発明に従って提供されるペプチドまたはポリペプチドは、被験体が自己反応性であるエピトープを含む。
【0083】
「エピトープ」という用語は、抗原などの分子中の抗原決定基、すなわち免疫系によって認識される、すなわち結合される、例えば抗体またはT細胞受容体によって認識される分子の一部または断片を指す。例えば、エピトープは、免疫系によって認識される、抗原上の別個の三次元部位である。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常は特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープと非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われ、後者への結合は失われないという点で区別される。好ましくは、この用語は、エピトープを含む抗原の免疫原性部分に関する。タンパク質のエピトープは、好ましくは前記タンパク質の連続または不連続部分を含み、好ましくは5~100、好ましくは5~50、より好ましくは8~30、最も好ましくは10~25アミノ酸長であり、例えばエピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長であり得る。本発明に関連してエピトープは、T細胞エピトープであることが好ましい。
【0084】
本明細書で使用される場合、「T細胞エピトープ」という用語は、T細胞受容体によって認識される立体配置でMHC分子に結合するペプチドを指す。典型的には、T細胞エピトープは抗原提示細胞の表面に提示される。好ましくは、T細胞エピトープはMHCクラスIおよび/またはクラスII提示ペプチドである。好ましくは、T細胞エピトープは、抗原の断片のアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含む。好ましくは、抗原の前記断片は、MHCクラスIおよび/またはクラスII提示ペプチドである。MHC分子、特にクラスI MHC分子への結合に適したペプチドは、好ましくは7~20アミノ酸長、より好ましくは7~12アミノ酸長、より好ましくは8~11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長である。一実施形態では、抗原提示細胞のMHCなどのMHCに関連して提示される場合のT細胞エピトープは、T細胞受容体によって認識される。T細胞受容体によって認識される場合、T細胞エピトープは、適切な共刺激シグナルの存在下で、T細胞エピトープを特異的に認識するT細胞受容体を担持するT細胞のクローン拡大を誘導することが可能であり得る。
【0085】
本発明によれば、自己抗原のT細胞エピトープなどのエピトープは、非免疫原性RNAを、エピトープのみよりも自己抗原のより多くを含む配列、および/または1つもしくは複数の自己抗原の複数のエピトープを含むポリペプチドなどの、より大きな実体の一部として投与することによって本発明に従って提供されるペプチドまたはポリペプチド中に存在し得る。提示されるペプチドまたはT細胞エピトープは、適切なプロセシング後に生成される。また、T細胞エピトープは、TCR認識またはMHCへの結合に必須ではない1つ以上の残基で修飾され得る。そのような修飾されたT細胞エピトープは、免疫学的に等価と見なされ得る。
【0086】
本明細書に記載される非免疫原性RNAは、自己免疫疾患などの免疫寛容を必要とする様々な疾患に対してカスタマイズすることができ、また個々の患者に対してカスタマイズすることもできる。所与の患者の血液中を循環する免疫細胞が、試験される特定のペプチドに対する免疫応答を発現するかどうかを判定するために、様々なイムノアッセイが存在する。あるいは、選択される抗原またはエピトープは、患者のクラスで見られる最も一般的な反応性に基づくことができる。
【0087】
「細胞表面」は、当技術分野におけるその通常の意味に従って使用され、したがってタンパク質および他の分子による結合にアクセス可能な細胞の外側を含む。抗原は、それが前記細胞の表面に位置し、例えば細胞に加えられた抗原特異的抗体による結合にアクセス可能である場合、細胞の表面で発現される。一実施形態では、細胞の表面に発現される抗原は、細胞外部分を有する内在性膜タンパク質である。
【0088】
本発明に関連して「細胞外部分」または「エキソドメイン」という用語は、細胞の細胞外空間に面しており、好ましくは、例えば細胞の外側に位置する抗体などの分子に結合することによって前記細胞の外側からアクセス可能であるタンパク質などの分子の一部を指す。好ましくは、この用語は、1つ以上の細胞外ループもしくはドメインまたはその断片を指す。
【0089】
「部分」または「パート」という用語は、本明細書では互換的に使用され、アミノ酸配列などの構造の連続的または不連続的エレメントを指す。「断片」という用語は、アミノ酸配列などの構造の連続的エレメントを指す。構造の部分、パートまたは断片は、好ましくは1つ以上の機能的特性、例えば前記構造の抗原性、免疫学的および/または結合特性を含む。タンパク質配列の部分またはパートは、好ましくはタンパク質配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、または少なくとも100個の連続するおよび/また不連続なアミノ酸を含む。タンパク質配列の断片は、好ましくはタンパク質配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含む。
【0090】
「免疫原性」という用語は、免疫反応を誘導する抗原の相対的有効性に関する。
【0091】
「免疫刺激性」という用語は、本明細書では全体的な免疫応答の増加を指すために使用される。
【0092】
「免疫寛容」、「免疫学的寛容」、または単に「寛容」とは、免疫応答を惹起する能力を有する物質または組織に対する免疫系の不応答性の状態を表す。自己認識時に免疫原性応答が発現するのを防ぐ免疫寛容は、主に、さもなければ自己抗原の供給源である細胞および組織を潜在的に攻撃し、ならびに/またはこれらの自己抗原に対して反応する抗体のB細胞による産生を支持する自己反応性T細胞の排除、阻害、または変換をもたらす方法での、CD4+またはCD8+T細胞への「自己」ペプチドの提示を含む、いくつかの機構によって媒介される。寛容が確立される機構は異なるが、結果として生じる作用は同様である。特定の組織からの自己抗原に対する寛容の不十分な誘導は、組織特異的な自己免疫疾患の主要な原因である。通常の条件下では、組織特異的自己抗原は寛容誘導(寛容原性)細胞によって提示され、この細胞は、反応性T細胞が細胞死、不応答性、またはTreg型への変換を受けるようにプログラムする。自己免疫疾患では、これらの同じ自己抗原が、十分に提示されず、指示に対する自己反応性T細胞の関与を制限するか、または不適切に提示されて、抗原を自己として寛容する代わりに免疫応答を開始するように特定のT細胞に指示する。これらの自己抗原を全身的にまたは粘膜を介して強力な寛容原性細胞に送達する抗原特異的療法は、一部には、不適切に活性化された病原性T細胞に対抗することができるサプレッサーT細胞の生成を介して、部分的に寛容を回復させることができる。
【0093】
「標的」という用語は、免疫応答の標的である細胞などの作用因子を意味する。標的には、抗原または抗原エピトープ、すなわち抗原プロセシングを通して抗原に由来するペプチド断片を提示する細胞が含まれる。
【0094】
「抗原プロセシング」とは、抗原の断片であるプロセシング産物への抗原の分解(例えばタンパク質のペプチドへの分解)、ならびに細胞による、好ましくは抗原提示細胞による特定のT細胞への提示のためのMHC分子とこれらの断片の1つ以上との会合(例えば結合による)を指す。
【0095】
抗原提示細胞(APC)は、その表面に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に関連して抗原を表示する細胞である。T細胞は、そのT細胞受容体(TCR)を使用してこの複合体を認識し得る。抗原提示細胞は抗原をプロセシングし、T細胞に提示する。抗原提示細胞には、単球/マクロファージ、B細胞および樹状細胞(DC)が含まれるが、これらに限定されない。本発明によれば、「抗原提示細胞」という用語は、プロフェッショナル抗原提示細胞およびノンプロフェッショナル抗原提示細胞を含む。
【0096】
プロフェッショナル抗原提示細胞は、食作用または受容体媒介エンドサイトーシスのいずれかによって抗原を内部移行し、次いでクラスII MHC分子に結合した抗原の断片をその膜上に表示することにおいて非常に効率的である。T細胞は、抗原提示細胞の膜上の抗原-クラスII MHC分子複合体を認識し、それと相互作用する。次に、追加の共刺激シグナルが抗原提示細胞によって生成され、T細胞の活性化をもたらす。共刺激分子の発現は、プロフェッショナル抗原提示細胞の決定的な特徴である。
【0097】
プロフェッショナル抗原提示細胞の主な種類は樹状細胞であり、これらは最も広範囲の抗原提示を有し、おそらく最も重要な抗原提示細胞、マクロファージ、B細胞、および特定の活性化上皮細胞である。
【0098】
ノンプロフェッショナル抗原提示細胞は、ナイーブT細胞との相互作用に必要なMHCクラスIIタンパク質を構成的には発現せず、これらは、IFNγなどの特定のサイトカインによってノンプロフェッショナル抗原提示細胞が刺激されたときにのみ発現される。
【0099】
樹状細胞(DC)は、MHCクラスIIおよびIの両方の抗原提示経路を介して、周辺組織で捕捉された抗原をT細胞に提示する白血球集団である。樹状細胞は免疫応答の強力な誘導因子であり、これらの細胞の活性化が免疫誘導の重要な工程であることは周知である。
【0100】
樹状細胞は、好都合には「未成熟」細胞および「成熟」細胞として分類され、これらは、よく特徴付けられた2つの表現型を区別する簡単な方法として使用することができる。しかし、この命名法は、分化のすべての可能な中間段階を除外すると解釈されるべきではない。
【0101】
未成熟樹状細胞は、Fcγ受容体およびマンノース受容体の高発現と相関する、抗原取り込みおよびプロセシングの高い能力を有する抗原提示細胞として特徴付けられる。成熟表現型は、典型的にはこれらのマーカーのより低い発現、しかしクラスIおよびクラスII MHC、接着分子(例えばCD54およびCD11)ならびに共刺激分子(例えばCD40、CD80、CD86および4-1 BB)などのT細胞活性化に関与する細胞表面分子の高発現を特徴とする。
【0102】
樹状細胞の成熟は、そのような抗原提示樹状細胞がT細胞プライミングを引き起こす樹状細胞活性化の状態と称され、一方未成熟樹状細胞による提示は寛容をもたらす。樹状細胞の成熟は、主に、生得的受容体によって検出される微生物特徴を有する生体分子(細菌DNA、ウイルスRNA、エンドトキシン等)、炎症誘発性サイトカイン(TNF、IL-1、IFN)、CD40Lによる樹状細胞表面のCD40の連結、およびストレスによる細胞死を受けている細胞から放出される物質によって引き起こされる。樹状細胞は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)および腫瘍壊死因子αなどのサイトカインと共にインビトロで骨髄細胞を培養することによって得ることができる。
【0103】
「抗原の提示を特徴とする細胞」または「抗原を提示する細胞」または同様の表現は、MHC分子、特にMHCクラスI分子に関連して、例えば抗原のプロセシングによって抗原または前記抗原に由来する断片を提示する抗原提示細胞などの細胞を意味する。同様に、「抗原の提示を特徴とする疾患」という用語は、特にクラスI MHCと共に抗原を提示することを特徴とする細胞が関与する疾患を意味する。
【0104】
本発明に関連して「免疫反応性細胞」または「エフェクター細胞」という用語は、免疫反応中にエフェクター機能を発揮する細胞に関する。「免疫反応性細胞」は、好ましくは、抗原、または抗原もしくはエピトープの発現および/もしくは提示を特徴とし、免疫応答を媒介する細胞に結合することができる。例えば、そのような細胞は、サイトカインおよび/またはケモカインを分泌し、微生物を死滅させ、抗体を分泌し、感染細胞または癌性細胞を認識し、場合によりそのような細胞を排除する。例えば、免疫反応性細胞には、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、および樹状細胞が含まれる。
【0105】
好ましくは、「免疫反応性細胞」は、特に抗原提示細胞の表面などにMHC分子に関連して提示される場合、ある程度の特異性で抗原またはエピトープを認識する。好ましくは、前記認識は、抗原またはエピトープを認識する細胞が応答性または反応性になることを可能にする。細胞が、MHCクラスII分子に関連して抗原またはエピトープを認識する受容体を担持するヘルパーT細胞(CD4+T細胞)である場合、そのような応答性または反応性は、サイトカインの放出ならびに/またはCD8+リンパ球(CTL)および/もしくはB細胞の活性化を含み得る。細胞がCTLである場合、そのような応答性または反応性は、例えばアポトーシスまたはパーフォリン媒介細胞溶解を介した、MHCクラスI分子に関連して提示される細胞、すなわちクラスI MHCと共に抗原を提示することを特徴とする細胞の除去を含み得る。本発明によれば、CTL応答性は、持続的なカルシウム流動、細胞分裂、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生、CD44およびCD69などの活性化マーカーの上方調節、ならびに抗原を発現する標的細胞の特異的細胞溶解死滅を含み得る。CTL応答性はまた、CTL応答性を正確に示す人工レポータを使用して判定し得る。抗原またはエピトープを認識し、応答性または反応性であるそのようなCTLは、本明細書では「抗原応答性CTL」とも称される。細胞がB細胞である場合、そのような応答性は免疫グロブリンの放出を含み得る。
【0106】
「T細胞」または「Tリンパ球」という用語は、様々な細胞性免疫反応に関与する胸腺由来細胞に関連し、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)を含む。
【0107】
T細胞は、リンパ球として公知の白血球の群に属し、細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たす。これらは、T細胞受容体(TCR)と呼ばれるこれらの細胞表面上の特別な受容体の存在によって、B細胞およびナチュラルキラー細胞などの他の種類のリンパ球と区別することができる。胸腺は、T細胞の成熟に関与する主要な器官である。それぞれ別個の機能を有する、T細胞のいくつかの異なるサブセットが発見されている。
【0108】
Tヘルパー細胞は、数ある機能の中でも、B細胞の形質細胞への成熟ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む、免疫学的過程において他の白血球を補助する。これらの細胞は、その表面にCD4タンパク質を発現するため、CD4+T細胞としても公知である。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面に発現されるMHCクラスII分子によってペプチド抗原と共に提示された場合に活性化される。ひとたび活性化されると、これらは速やかに分裂し、能動免疫応答を調節または補助するサイトカインと呼ばれる小さなタンパク質を分泌する。
【0109】
細胞傷害性T細胞は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊し、移植片拒絶反応にも関与する。これらの細胞は、その表面にCD8糖タンパク質を発現するため、CD8+T細胞としても公知である。これらの細胞は、身体のほぼあらゆる細胞の表面上に存在する、MHCクラスIに関連する抗原に結合することによってその標的を認識する。
【0110】
T細胞の大部分は、いくつかのタンパク質の複合体として存在するT細胞受容体(TCR)を有する。実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体アルファおよびベータ(TCRαおよびTCRβ)遺伝子から生成され、α-TCR鎖およびβ-TCR鎖と呼ばれる2本の別々のペプチド鎖からなる。γδ T細胞(ガンマデルタT細胞)は、その表面に異なるT細胞受容体(TCR)を有するT細胞の小さなサブセットである。しかし、γδ T細胞では、TCRは1本のγ鎖と1本のδ鎖で構成される。このT細胞の群は、αβ T細胞よりもはるかにまれである(全T細胞の2%)。
【0111】
T細胞受容体の構造は、抗体の腕の軽鎖と重鎖の組み合わせとして定義される領域である、免疫グロブリンFab断片に非常に類似する。TCRのそれぞれの鎖は免疫グロブリンスーパーファミリーの成員であり、1つのN末端免疫グロブリン(Ig)可変(V)ドメイン、1つのIg定常(C)ドメイン、膜貫通/細胞膜貫通領域、およびC末端に短い細胞質尾部を有する。TCR α鎖とβ鎖の両方の可変ドメインは3つの超可変または相補性決定領域(CDR)を有し、一方β鎖の可変領域は、通常は抗原と接触せず、したがってCDRとは見なされない追加の超可変領域(HV4)を有する。CDR3は、プロセシングされた抗原の認識に関与する主要なCDRであるが、α鎖のCDR1は抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用することが示されており、一方β鎖のCDR1はペプチドのC末端部分と相互作用する。CDR2はMHCを認識すると考えられている。β鎖のCDR4は、抗原認識には関与しないと考えられているが、スーパー抗原と相互作用することが示されている。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、2本の鎖の間にリンクを形成する短い連結配列からなる。
【0112】
「B細胞」または「Bリンパ球」という用語は、抗体を分泌することによって体液性免疫において機能するリンパ球サブタイプの白血球の一種に関する。さらに、B細胞は、抗原を提示し、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)として分類され、サイトカインを分泌する。B細胞は、その細胞膜上にB細胞受容体(BCR)を発現する。BCRは、B細胞が特定の抗原に結合することを可能にし、それに対して抗体応答を開始する。B細胞受容体は、2つの部分、すなわち内在性膜ドメインの存在を除いて分泌型と同一である1つのアイソタイプの膜結合免疫グロブリン分子(IgD、IgM、IgA、IgG、またはIgE)、およびジスルフィド架橋によって一緒に結合されたIg-α/Ig-βと呼ばれるヘテロ二量体であるシグナル伝達部分(CD79)で構成される。二量体の各成員は原形質膜にまたがっており、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を担持する細胞質尾部を有する。
【0113】
B細胞の活性化は、脾臓およびリンパ節などの二次リンパ器官で起こる。B細胞は、骨髄で成熟した後、血液を介して二次リンパ器官に移動し、循環リンパを介して絶えず抗原の供給を受ける。B細胞がそのBCRを介して抗原に結合した場合、B細胞の活性化が始まる。異なるB細胞サブセットは、T細胞依存性活性化またはT細胞非依存性活性化を受ける。
【0114】
「主要組織適合遺伝子複合体」という用語および「MHC」という略語は、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子を含み、すべての脊椎動物で生じる遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質または分子は、免疫反応においてリンパ球と抗原提示細胞または疾患細胞との間のシグナル伝達に重要であり、MHCタンパク質または分子はペプチドに結合し、T細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は、細胞の表面に発現され、T細胞に対して自己抗原(細胞自体からのペプチド断片)と非自己抗原(例えば侵入微生物の断片)の両方を表示する。
【0115】
MHC領域は、クラスI、クラスII、およびクラスIIIの3つのサブグループに分けられる。MHCクラスIタンパク質は、α鎖およびβ2ミクログロブリン(15番染色体によってコードされるMHCの一部ではない)を含む。それらは、抗原断片を細胞傷害性T細胞に提示する。ほとんどの免疫系細胞、特に抗原提示細胞では、MHCクラスIIタンパク質はα鎖とβ鎖を含み、抗原断片をTヘルパー細胞に提示する。MHCクラスIII領域は、補体成分やサイトカインをコードするものなどの他の免疫成分をコードする。
【0116】
ヒトでは、細胞表面の抗原提示タンパク質をコードするMHC領域の遺伝子は、ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子と称される。しかし、MHCという略語は、しばしばHLA遺伝子産物を指すために使用される。HLA遺伝子には、9つのいわゆる古典的MHC遺伝子:HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DRA、およびHLA-DRB1が含まれる。
【0117】
本発明のすべての態様の好ましい一実施形態では、MHC分子はHLA分子である。
【0118】
本発明に関連して「免疫エフェクター機能」または「エフェクター機能」という用語は、例えば細胞の死滅をもたらす免疫系の成分によって媒介される任意の機能を含む。好ましくは、本発明に関連して免疫エフェクター機能は、T細胞媒介エフェクター機能である。そのような機能は、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)の場合、T細胞受容体によるMHCクラスII分子に関連した抗原または抗原由来の抗原ペプチドの認識、サイトカインの放出、ならびに/またはCD8+リンパ球(CTL)および/もしくはB細胞の活性化を含み、CTLの場合は、T細胞受容体によるMHCクラスI分子に関連した抗原または抗原由来の抗原ペプチドの認識、例えばアポトーシスまたはパーフォリン媒介細胞溶解を介した、MHCクラスI分子に関連して提示された細胞の除去、すなわちクラスI MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞の除去、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生、ならびに抗原を発現する標的細胞の特異的細胞溶解性死滅を含む。
【0119】
「toll様受容体」または「TLR」という用語は、自然免疫系において重要な役割を果たすタンパク質のクラスに関する。それらは、微生物由来の構造的に保存された分子を認識する、通常はマクロファージおよび樹状細胞などのセンチネル細胞で発現される単一の膜貫通非触媒受容体である。ひとたびこれらの微生物が皮膚または腸管粘膜などの物理的障壁を突破すると、免疫細胞応答を活性化するTLRによって認識される。
【0120】
本発明の一実施形態では、自己抗原もしくはその断片、または自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを被験体に投与する。RNAの翻訳産物は、被験体の細胞内で形成され得、自己抗原を標的とする自己反応性T細胞に対する寛容を誘導するために免疫系に対して表示され得る。
【0121】
あるいは、本発明は、自己抗原もしくはその断片、または自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドを発現する非免疫原性RNAを、エクスビボで抗原提示細胞などの細胞に導入する実施形態、例えば患者から採取した抗原提示細胞、および場合によりエクスビボでクローン拡大した細胞を同じ患者に移植する実施形態を想定する。トランスフェクトされた細胞を、当技術分野で公知の任意の手段を使用して、好ましくは静脈内、腔内、または腹腔内投与によって滅菌形態で、患者に再導入し得る。適切な細胞には、抗原提示細胞が含まれる。抗原提示細胞は、好ましくは樹状細胞、マクロファージ、B細胞、間葉系間質細胞、上皮細胞、内皮細胞および線維芽細胞であり、最も好ましくは樹状細胞である。したがって、本発明はまた、本明細書に記載の非免疫原性RNAを発現する単離された抗原提示細胞を必要とする被験体に投与することを含む、自己免疫疾患を治療する方法も含む。細胞は、被験体に対して自己、同種異系、同系または異種であり得る。
【0122】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、cDNA、mRNA、組換え生産された分子および化学合成された分子などのデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を含むことが意図されている。核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。本発明によれば、RNAは、インビトロ転写RNA(IVT RNA)または合成RNAを含む。本発明によれば、核酸は、好ましくは単離された核酸である。さらに、本明細書に記載の核酸は組換え分子であり得る。
【0123】
「単離された核酸」という用語は、本発明によれば、核酸が、(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってインビトロで増幅された、(ii)クローニングによって組換え生産された、(iii)例えば切断およびゲル電気泳動による分離によって精製された、または(iv)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。核酸は、例えばDNA鋳型からのインビトロ転写によって調製され得るRNAの形態で、細胞への導入、すなわち細胞のトランスフェクションのために使用することができる。RNAは、適用の前に配列の安定化、キャッピング、およびポリアデニル化によってさらに修飾することができる。
【0124】
本発明に関連して、「DNA」という用語は、デオキシリボヌクレオチド残基を含み、好ましくは完全にまたは実質的にデオキシリボヌクレオチド残基からなる分子に関する。「デオキシリボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2'位のヒドロキシル基を欠くヌクレオチドに関する。「DNA」という用語は、部分的または完全に精製されたDNA、本質的に純粋なDNA、合成DNA、および組換え生成されたDNAなどの単離されたDNAを含み、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然に存在するDNAとは異なる修飾DNAを含む。そのような改変は、例えばDNAの1つ以上のヌクレオチドでのDNAの末端(一方もしくは両方)または内部などへの非ヌクレオチド物質の付加を含み得る。DNA分子中のヌクレオチドは、非天然のヌクレオチドまたは化学的に合成されたヌクレオチドなどの非標準のヌクレオチドも含み得る。これらの改変されたDNAは、類似体または天然に存在するDNAの類似体と称され得る。
【0125】
本発明に関連して、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含み、好ましくは完全にまたは実質的にリボヌクレオチド残基からなる分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的または完全に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAを含む。そのような改変は、例えばRNAの1つ以上のヌクレオチドでのRNAの末端(一方もしくは両方)または内部などへの非ヌクレオチド物質の付加を含み得る。RNA分子中のヌクレオチドは、非天然のヌクレオチドまたは化学的に合成されたヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドなどの非標準のヌクレオチドも含み得る。これらの改変されたRNAは、類似体または天然に存在するRNAの類似体と称され得る。本発明によれば、「RNA」という用語は、「メッセンジャーRNA」を意味する「mRNA」を含み、好ましくはこれに関し、およびDNAを鋳型として使用して生成され得、ペプチドまたはタンパク質をコードする転写物に関する。mRNAは、典型的には5'非翻訳領域(5'-UTR)、タンパク質またはペプチドコード領域、および3'非翻訳領域(3'-UTR)を含む。mRNAは、細胞中およびインビトロで限られた半減期を有する。好ましくは、mRNAは、DNA鋳型を使用したインビトロ転写によって生成される。本発明の一実施形態では、RNAは、インビトロ転写または化学合成によって得られる。インビトロ転写の方法は当業者に公知である。例えば、様々なインビトロ転写キットが市販されている。
【0126】
本発明によれば、RNAの安定性および翻訳効率は、必要に応じて改変し得る。例えば、安定化作用を有するおよび/またはRNAの翻訳効率を高める1つ以上の修飾によってRNAを安定化し、その翻訳を増加させ得る。本発明に従って使用されるRNAの発現を増加させるために、コード領域内、すなわち発現されるペプチドまたはタンパク質をコードする配列内で、好ましくは発現されるペプチドまたはタンパク質の配列を変化させずに、GC含量を増加させてmRNAの安定性を高め、コドン最適化を実施し、したがって細胞中での翻訳を増強するようにRNAを修飾し得る。
【0127】
本発明で使用されるRNAに関連して「修飾」という用語は、前記RNA中に天然には存在しないRNAの任意の修飾を含む。
【0128】
本発明の一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAは、キャップされていない5'-三リン酸を有さない。そのようなキャップされていない5'-三リン酸の除去は、RNAをホスファターゼで処理することによって達成できる。
【0129】
本発明によるRNAは、その安定性を高めるおよび/または細胞毒性を低下させるために修飾リボヌクレオチドを有し得る。例えば、一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAにおいて、シチジンを5-メチルシチジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。あるいはまたは加えて、一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAにおいて、ウリジンをプソイドウリジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。
【0130】
一実施形態では、「修飾」という用語は、RNAに5'-キャップまたは5'-キャップ類似体を提供することに関する。「5'-キャップ」という用語は、mRNA分子の5'末端に認められるキャップ構造を指し、一般に独特の5'-5'三リン酸結合によってmRNAに連結されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態では、このグアノシンは7位でメチル化されている。「従来の5'-キャップ」という用語は、天然に存在するRNAの5'-キャップ、好ましくは7-メチルグアノシンキャップ(m7G)を指す。本発明に関連して、「5'-キャップ」という用語には、RNAキャップ構造に類似し、好ましくはインビボおよび/または細胞中で、RNAに結合した場合RNAを安定化するおよび/またはRNAの翻訳を増強する能力を有するように修飾されている5'-キャップ類似体が含まれる。
【0131】
RNAはさらなる修飾を含み得る。例えば、本発明で使用されるRNAのさらなる修飾は、天然のポリ(A)尾部の伸長もしくは切断、または前記RNAのコード領域に関連しない非翻訳領域(UTR)の導入などの5'-UTRまたは3'-UTRの改変、例えばα2グロビン、α1グロビン、βグロビン、好ましくはβグロビン、より好ましくはヒトβグロビンなどのグロビン遺伝子に由来する1コピー以上、好ましくは2コピーの3'-UTRと既存の3'-UTRとの交換、またはグロビン遺伝子由来の1コピー以上、好ましくは2コピーの3'UTRの挿入であり得る。
【0132】
マスクされていないポリA配列を有するRNAは、マスクされたポリA配列を有するRNAよりも効率的に翻訳される。「ポリ(A)尾部」または「ポリA配列」という用語は、典型的にはRNA分子の3'末端に位置するアデニル(A)残基の配列に関し、「マスクされていないポリA配列」は、RNA分子の3'末端のポリA配列がポリA配列のAで終了し、ポリA配列の3'末端、すなわち下流に位置するA以外のヌクレオチドが後続していないことを意味する。さらに、約120塩基対の長いポリA配列は、RNAの最適な転写産物安定性および翻訳効率をもたらす。
【0133】
したがって、本発明に従って使用されるRNAの安定性および/または発現を増加させるために、好ましくは10~500、より好ましくは30~300、さらにより好ましくは65~200、特に100~150個のアデノシン残基の長さを有するポリA配列と共に存在するようにRNAを修飾し得る。特に好ましい実施形態では、ポリA配列は約120個のアデノシン残基の長さを有する。本発明に従って使用されるRNAの安定性および/または発現をさらに増加させるために、ポリA配列を脱マスク化することができる。
【0134】
RNAの「安定性」という用語は、RNAの「半減期」に関する。「半減期」は、分子の活性、量、または数の半分を除去するのに必要な期間に関する。本発明に関連して、RNAの半減期は、前記RNAの安定性の指標である。RNAの半減期は、RNAの「発現の持続時間」に影響を及ぼし得る。長い半減期を有するRNAは長期間発現されると予想することができる。
【0135】
言うまでもなく、本発明に従ってRNAの安定性および/または翻訳効率を低下させることが望ましい場合、RNAの安定性および/または翻訳効率を高める上記の要素の機能を妨げるようにRNAを修飾することが可能である。
【0136】
本発明に従って投与されるRNAは非免疫原性である。本明細書で使用される「非免疫原性RNA」という用語は、例えば哺乳動物に投与したとき免疫系による応答を誘導しない、または非免疫原性RNAを非免疫原性にする修飾および処理に供されていないという点においてのみ異なる同じRNAによって誘導されるよりも弱い応答を誘導するRNAを指す。好ましい一実施形態では、非免疫原性RNAは、自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する修飾ヌクレオチドをRNAに組み込み、二本鎖RNA(dsRNA)を除去することによって非免疫原性にされる。
【0137】
修飾ヌクレオチドの組み込みによって非免疫原性RNAを非免疫原性にするために、RNAの免疫原性を低下させるまたは抑制する限り、任意の修飾ヌクレオチドを使用し得る。自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する修飾ヌクレオチドが特に好ましい。一実施形態では、修飾ヌクレオチドは、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換を含む。一実施形態では、修飾核酸塩基は修飾ウラシルである。一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-プソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(m1s4Ψ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(m3Ψ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acp3Ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2'-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2'-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2'-O-メチル-プソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2'-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2'-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2'-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2'-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2'-F-アラ-ウリジン、2'-F-ウリジン、2'-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、および5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群より選択される。特に好ましい一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、プソイドウリジン(Ψ)、N1-メチル-プソイドウリジン(m1Ψ)または5-メチル-ウリジン(m5U)、特に1-メチル-プソイドウリジンである。
【0138】
修飾核酸塩基を含む例示的なヌクレオシドの構造は、1-メチルプソイドウリジンm1Ψ:
【化1】
である。
【0139】
一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%のウリジンの置換を含む。
【0140】
T7 RNAポリメラーゼを使用したインビトロ転写(IVT)によるmRNAの合成中に、酵素の異常な活性のために二本鎖RNA(dsRNA)を含む有意の量の異常な産物が生成される。dsRNAは、炎症性サイトカインを誘導し、エフェクター酵素を活性化して、タンパク質合成の阻害をもたらす。dsRNAは、例えば非多孔性または多孔性のC-18ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)マトリックスを使用したイオン対逆相HPLCによって、IVT RNAなどのRNAから除去することができる。あるいは、ssRNAではなくdsRNAを特異的に加水分解し、それによってIVT RNA調製物からdsRNA混入物を除去する大腸菌(E.coli)RNaseIIIを用いた酵素ベースの方法を使用することができる。さらに、セルロース材料を使用することによってdsRNAをssRNAから分離することができる。一実施形態では、RNA調製物をセルロース材料と接触させ、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を許容しない条件下で、ssRNAをセルロース材料から分離する。
【0141】
本明細書で使用される場合、「除去する」または「除去」という用語は、dsRNAなどの第2の物質の集団の近傍から分離されている、非免疫原性RNAなどの第1の物質の集団の特徴を指し、ここで、第1物質の集団は必ずしも第2物質を欠くわけではなく、第2物質の集団は必ずしも第1物質を欠くわけではない。しかしながら、第2物質の集団の除去を特徴とする第1物質の集団は、第1物質と第2物質の分離されていない混合物と比較して第2物質の含有量が測定可能なほど低い。
【0142】
核酸は、物理的、化学的または生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。
【0143】
核酸を宿主細胞に導入する物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等が含まれる。
【0144】
関心対象の核酸を宿主細胞に導入する生物学的方法には、DNAおよびRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用される方法になっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス等に由来し得る。
【0145】
核酸を宿主細胞に導入する化学的手段には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームなどの脂質ベースの系が含まれる。インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして使用するための好ましいコロイド系は、リポソーム(すなわち人工膜小胞)である。そのような系の調製および使用は当技術分野で周知である。
【0146】
「コードする」とは、定義されたヌクレオチドの配列または定義されたアミノ酸の配列のいずれかを有する生物学的過程における他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として機能する、核酸中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。したがって、核酸の発現(翻訳および場合により転写)が細胞または他の生体系でタンパク質を産生する場合、核酸はタンパク質をコードする。
【0147】
「発現」という用語は、本発明に従ってその最も一般的な意味で使用され、例えば転写および/または翻訳による、RNAおよび/またはペプチドもしくはポリペプチドの産生を含む。RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、特にペプチドまたはポリペプチドの産生に関する。また、核酸の部分的発現も含む。さらに、発現は一過性または安定であり得る。
【0148】
本発明に関連して、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される過程に関する。その後、RNAはタンパク質に翻訳され得る。本発明によれば、「転写」という用語は「インビトロ転写」を含み、「インビトロ転写」という用語は、RNA、特にmRNAが、好ましくは適切な細胞抽出物を使用して、無細胞系においてインビトロで合成される過程に関する。好ましくは、クローニングベクターを転写産物の生成に適用する。これらのクローニングベクターは、一般に転写ベクターと称され、本発明によれば「ベクター」という用語に包含される。本発明によれば、本発明で使用されるRNAは、好ましくはインビトロ転写RNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られ得る。転写を制御するためのプロモータは、任意のRNAポリメラーゼについての任意のプロモータであり得る。RNAポリメラーゼの特定の例は、T7、T3、およびSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは、本発明によるインビトロ転写は、T7またはSP6プロモータによって制御される。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することによって得られ得る。cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。
【0149】
本発明による「翻訳」という用語は、メッセンジャーRNAの鎖が、ペプチドまたはポリペプチドを作製するようにアミノ酸の配列のアセンブリを指令する、細胞のリボソームにおける過程に関する。
【0150】
本発明によれば、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAなどの核酸は、インビトロまたは被験体内に存在し得る細胞に取り込まれるまたは導入される、すなわちトランスフェクトまたは形質導入されると、前記ペプチドまたはタンパク質の発現をもたらすことが好ましい。細胞は、コードされたペプチドまたはタンパク質を細胞内で(例えば細胞質および/または核内で)発現してもよく、コードされたペプチドまたはタンパク質を分泌してもよく、またはそれを表面で発現してもよい。
【0151】
本発明によれば、「発現する核酸」および「コードする核酸」などの用語または同様の用語は、本明細書では互換的に使用され、特定のペプチドまたはポリペプチドに関して、核酸が、適切な環境、好ましくは細胞内に存在する場合、発現されて前記ペプチドまたはポリペプチドを生成できることを意味する。
【0152】
「移入する」、「導入する」、「トランスフェクトする」または「形質導入する」などの用語は、本明細書では互換的に使用され、核酸、特にRNAなどの外因性または異種核酸の細胞への導入に関する。本発明によれば、細胞はインビトロまたはインビボで存在することができ、例えば細胞は器官、組織および/または生物の一部を形成することができる。本発明によれば、トランスフェクションは一過性または安定であり得る。トランスフェクションのいくつかの適用では、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性に発現されるだけで十分である。トランスフェクションの過程で導入された核酸は、通常、核ゲノムに組み込まれないため、外来核酸は有糸分裂によって希釈されるかまたは分解される。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞株は、希釈率を大幅に低下させる。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞およびその娘細胞のゲノムに残ることが望ましい場合は、安定なトランスフェクションが起こらなければならない。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。
【0153】
本発明によれば、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって共有結合で連結された2個以上、好ましくは3個以上、好ましくは4個以上、好ましくは6個以上、好ましくは8個以上、好ましくは10個以上、好ましくは13個以上、好ましくは16個以上、好ましくは21個以上、および好ましくは8、10、20、30、40または50個、特に100個までのアミノ酸を含む物質を指す。
【0154】
「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、すなわちポリペプチド、好ましくは100個を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は同義語であり、本明細書では互換的に使用される。
【0155】
本発明は、本明細書に記載の自己抗原などのペプチド、タンパク質、またはアミノ酸配列の「変異体」も含む。
【0156】
本発明の目的のために、アミノ酸配列の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。
【0157】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列における1個または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1個以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、結果として生じる産物の適切なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。
【0158】
アミノ酸付加変異体は、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合物を含む。
【0159】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50、またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失はタンパク質の任意の位置にあってよい。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。
【0160】
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なタンパク質もしくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列の位置にある修飾、および/またはアミノ酸を類似の性質を有する他のアミノ酸で置換することが好ましい。好ましくは、タンパク質変異体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち同様に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化には、その側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換が含まれる。天然に存在するアミノ酸は一般に、酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸の4つのファミリーに分類される。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。
【0161】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%であるアミノ酸領域に関して与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、または約200個のアミノ酸、好ましくは連続するアミノ酸に関して与えられる。類似性または同一性の程度は、好ましくは、少なくとも80、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも150、少なくとも180、少なくとも200または少なくとも250個のアミノ酸のセグメントに関して与えられる。好ましい実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長に関して与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最良配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、マトリックス:Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を用いて行うことができる。
【0162】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸の割合を示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、これらの配列間で同一であるアミノ酸の割合を示す。
【0163】
「同一性パーセント」という用語は、特に、比較する2つの配列間の最適なアラインメントにおいて同一であるアミノ酸残基の割合を指すことが意図されており、前記割合は純粋に統計的であって、2つの配列間の相違は配列の全長にわたってランダムに分布していてもよく、比較する配列は、2つの配列間の最適なアラインメントを得るために、参照配列と比較して付加または欠失を含んでいてもよい。2つの配列の比較は、通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアラインメント後に、セグメントまたは「比較ウィンドウ」に関して前記配列を比較することによって実施される。比較のための最適なアラインメントは、手操作によって、またはSmith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所相同性アルゴリズムを用いて、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所相同性アルゴリズムを用いて、およびPearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索アルゴリズムを用いて、または前記アルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)を援用して実施し得る。
【0164】
同一性パーセントは、比較する配列が一致する同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数で除して、この結果に100を乗じることによって得られる。
【0165】
相同なアミノ酸配列は、本発明によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を示す。
【0166】
本発明によれば、アミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質の変異体、断片、パートまたは部分は、好ましくは、それぞれ、それが由来するアミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質の機能的特性を有する、すなわち機能的に等価である。一実施形態では、アミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質の変異体、断片、パートまたは部分は、それぞれ、それが由来するアミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質と免疫学的に等価である。一実施形態では、機能的特性は免疫学的特性である。
【0167】
本発明は、「ペプチド」および「タンパク質」という用語に含まれる本明細書に記載のペプチドまたはタンパク質の誘導体を含む。本発明によれば、タンパク質およびペプチドの「誘導体」は、タンパク質およびペプチドの修飾形態である。そのような修飾には、任意の化学修飾が含まれ、ならびに炭水化物、脂質および/またはタンパク質もしくはペプチドなどの、タンパク質またはペプチドに関連する任意の分子の単一または複数の置換、欠失および/または付加が含まれる。一実施形態では、タンパク質またはペプチドの「誘導体」には、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミトイル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護基/ブロッキング基の導入、タンパク質分解切断、または抗体もしくは別の細胞リガンドへの結合から生じる修飾類似体が含まれる。「誘導体」という用語はまた、前記タンパク質およびペプチドのすべての機能的な化学的等価物に及ぶ。好ましくは、修飾ペプチドは、増加した安定性および/または増加した免疫原性を有する。
【0168】
「由来する」という用語は、本発明によれば、特定の実体、特に特定の配列が、それが由来する物体、特に生物または分子中に存在することを意味する。アミノ酸または核酸配列、特に特定の配列領域の場合、「由来する」は、特に、関連するアミノ酸配列または核酸配列が、それが存在するアミノ酸配列または核酸配列に由来することを意味する。
【0169】
「細胞」または「宿主細胞」という用語は、好ましくは無傷の細胞、すなわち酵素、細胞小器官、または遺伝物質などのその通常の細胞内成分を放出していない無傷の膜を有する細胞である。無傷の細胞は、好ましくは生存可能な細胞、すなわちその通常の代謝機能を実施することができる生細胞である。好ましくは、前記用語は、本発明によれば、外因性核酸で形質転換またはトランスフェクトすることができる任意の細胞に関する。「細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えば大腸菌)または真核細胞(例えば樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、HEK293細胞、HELA細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。外因性核酸は、(i)それ自体で自由に分散して、(ii)組換えベクターに組み込まれて、または(iii)宿主細胞のゲノムまたはミトコンドリアDNAに組み込まれて、細胞の内部で見出され得る。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、および霊長動物からの細胞などの哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は、多数の組織型に由来し、一次細胞および細胞株を含み得る。
【0170】
例えば核酸でトランスフェクトされた、核酸を含む細胞は、好ましくは核酸によってコードされるペプチドまたはタンパク質を発現する。
【0171】
「拡大」という用語は、特定の実体が増加する過程を指す。本発明の一実施形態では、この用語は、リンパ球が抗原によって刺激され、増殖し、前記抗原を認識する特定のリンパ球が増幅される免疫学的応答に関連して使用される。好ましくは、クローン拡大はリンパ球の分化をもたらす。
【0172】
本明細書で使用される「単離された」は、他の細胞物質などの他の分子を実質的に含まない分子を指すことが意図されている。
【0173】
本発明に関連して「組換え」という用語は、「遺伝子操作を介して作製された」ことを意味する。好ましくは、本発明に関連して組換え細胞または核酸などの「組換え物体」は、天然には存在しない。
【0174】
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、物体が自然界で見出され得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人によって意図的に改変されていないペプチドまたは核酸は、天然に存在する。
【0175】
「低減する」、「阻害する」または「減少させる」などの用語は、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上のレベルの全体的な減少を生じさせる能力に関する。これらの用語には、完全なまたは本質的に完全な阻害、すなわちゼロまたは本質的にゼロへの低減が含まれる。
【0176】
「増加させる」、「増強する」、「促進する」、「刺激する」、または「誘導する」などの用語は、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、50%以上、75%以上、100%以上、200%以上、または500%以上のレベルの全体的な増加を生じさせる能力に関する。これらの用語は、ゼロまたは測定不能もしくは検出不能なレベルから、ゼロ超または測定可能もしくは検出可能なレベルへの増加、増強、促進、刺激、または誘導に関連し得る。あるいは、これらの用語はまた、増加、増強、促進、刺激、または誘発の前に特定のレベルが存在し、増加、増強、促進、刺激、または誘導後にレベルがより高いことも意味し得る。
【0177】
本明細書に記載の薬剤および組成物は、自己免疫疾患の治療または予防のために哺乳動物の免疫応答を抑制する方法に有用である。特に、本明細書に記載の薬剤および組成物は、自己抗原に対する免疫反応の存在を特徴とする自己免疫疾患を有する被験体を治療するために使用できる。本発明によれば、自己抗原もしくはその断片、または自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを被験体に投与する。
【0178】
「疾患」という用語は、個体の身体に影響を及ぼす異常な状態を指す。疾患はしばしば、特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、感染症などの外部からの要因によって引き起こされ得るか、または自己免疫疾患などの内部機能障害によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」はしばしば、罹患した個体に疼痛、機能障害、困難、社会的問題、もしくは死を引き起こす、または個体と接触するものに対して同様の問題を引き起こす状態を指すためにより広く使用される。このより広い意味では、疾患は時に、損傷、無力、障害、症候群、感染、孤立した症状、逸脱した挙動、および構造と機能の非定型のバリエーションを含むが、他の状況および他の目的では、これらは区別可能なカテゴリーと見なされ得る。多くの疾患を患い、それと共に生活することは人生観および人格を変える可能性があるため、疾患は通常、身体的にだけでなく感情的にも個体に影響を及ぼす。本発明によれば、「疾患」という用語は自己免疫疾患を含む。
【0179】
本発明に従って治療される疾患は、好ましくは自己抗原が関与する疾患または自己抗原に関連する疾患である。
【0180】
「自己免疫疾患」または「自己免疫障害」という用語は、身体が自らの組織の何らかの成分に対して免疫原性(すなわち免疫系)応答を生じる任意の疾患/障害を指す。言い換えると、免疫系は、体内の何らかの組織または系を自己として認識するその能力を喪失し、それが異物であるかのごとくに標的とし、攻撃する。自己免疫疾患は、主に1つの器官が侵されるもの(例えば溶血性貧血および自己免疫性甲状腺炎)と、自己免疫疾患の過程が多くの組織を介して拡散するもの(例えば全身性エリテマトーデス)に分類することができる。例えば、多発性硬化症は、脳および脊髄の神経線維を取り囲む鞘を攻撃するT細胞によって引き起こされると考えられている。これは、協調の喪失、衰弱、および視朦をもたらす。自己免疫疾患の例には、とりわけ、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性耳下腺炎、クローン病、糖尿病(I型)、栄養障害型表皮水疱症、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン-バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節炎、甲状腺炎、脈管炎、白斑、粘液水腫、悪性貧血、潰瘍性大腸炎、およびI型糖尿病が含まれるが、これらに限定されない。
【0181】
以下は、特定の自己免疫疾患に関連することが公知の抗原のリストである。これらの抗原からのエピトープは、自己抗原もしくはその断片、または本発明による自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチド中に含まれ得る。
【0182】
多発性硬化症(MS)/(+動物モデルEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎))
MSの可能性のある候補自己抗原には、ミエリン抗原、ニューロン抗原および星状細胞由来抗原が含まれる。ミエリン塩基性タンパク質(MBP)(例えばMBP84-102、MBP83-99、MBP13-32、MBP144-163、MBP143-168、MBP151-170)、プロテオリピドタンパク質(PLP)(例えばPLP139-151)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、CNPアーゼ(2',3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ)、S100βタンパク質、およびトランスアルドラーゼHなどのミエリンタンパク質のタンパク質成分は、本発明に従って使用するのに特に興味深い。
【0183】
関節リウマチ(RA)
RAの可能性のある候補自己抗原には、II型コラーゲン、ヒト軟骨糖タンパク質39、およびアグリカンG1が含まれる。
【0184】
1型糖尿病
1型糖尿病の可能性のある候補自己抗原には、インスリン、プロインスリン、グルタミン酸脱炭酸酵素65(GAD65)、インスリノーマ関連タンパク質2(IA-2)、インスリノーマ関連タンパク質2ベータ(IA-2β)、膵島細胞自己抗原(HSP)、グリマ38、膵島細胞自己抗原(ICA69)、p52、亜鉛輸送体8(ZnT8)、膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、およびクロモグラニンAが含まれる。
【0185】
重症筋無力症
重症筋無力症の可能性のある自己抗原候補には、nAChR、MuSK、およびLRP4が含まれる。
【0186】
MS、RA、1型糖尿病、重症筋無力症、IBD、および乾癬などの疾患における他の自己抗原は、その一部が本明細書に記載されており、その他も当技術分野において公知であるが、本発明での使用が企図される。公知の自己抗原および自己免疫エピトープの数は増加しつつある。今後公知となるそのような抗原およびエピトープも、本発明での使用が企図される。
【0187】
「自己抗原に関連する疾患」または「自己抗原が関与する疾患」という用語は、自己抗原に関係する任意の疾患、例えば自己抗原または自己抗原を発現する細胞に対する免疫反応の存在を特徴とする疾患を指す。
【0188】
「治療」または「治療的処置」という用語は、個体の健康状態を改善する、および/または寿命を延長させる(増加させる)任意の治療に関する。前記治療は、個体の疾患を除去し、個体の疾患の発症を停止もしくは遅延させ、個体の疾患の発症を阻害もしくは遅延させ、個体の症状の頻度もしくは重症度を減少させ、および/または現在疾患を有しているかもしくは以前に有していたことがある個人の再発を減少させ得る。
【0189】
「予防的治療」または「予防的処置」という用語は、個体、特に疾患の危険性がある個体において疾患が発生するのを防ぐことを意図された任意の治療に関する。「予防的治療」または「予防的処置」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0190】
「危険性がある」とは、一般集団と比較して疾患を発症する可能性が通常よりも高いと特定された被験体、すなわち患者を意味する。加えて、疾患を有していたことがある、または現在有している被験体は、引き続き疾患を発症する可能性があるため、疾患を発症する危険性が高い被験体である。
【0191】
「インビボ」という用語は、被験体における状況に関する。
【0192】
「個体」または「被験体」という用語は、脊椎動物、特に哺乳動物に関する。例えば、本発明に関連して哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長動物、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ等のような飼いならされた哺乳動物、マウス、ラット、ウサギ、モルモット等のような実験動物、ならびに動物園の動物などの飼育下の動物である。「被験体」という用語は、鳥類(特にニワトリ、アヒル、ガチョウ、七面鳥などの飼いならされた鳥)、および魚類(特に養殖魚、例えばサケまたはナマズ)などの非哺乳類脊椎動物にも関連する。本明細書で使用される「動物」という用語には、ヒトも含まれる。好ましくは、「患者」という用語は罹患した個体に関する。
【0193】
「自家」という用語は、同じ被験体に由来するものを表すために使用される。例えば、「自家移植」は、同じ被験体に由来する組織または器官の移植を指す。そのような手順は、さもなければ拒絶反応をもたらす免疫学的障壁を克服するため、有利である。
【0194】
「同種異系」という用語は、同じ種の異なる個体に由来するものを表すために使用される。1つ以上の遺伝子座の遺伝子が同一でない場合、2つ以上の個体は互いに同種異系であると言われる。
【0195】
「同系」という用語は、同一の遺伝子型を有する個体または組織、すなわち同じ近交系の同一の双生児もしくは動物、またはそれらの組織に由来するものを表すために使用される。
【0196】
「異種」という用語は、複数の異なる要素からなるものを表すために使用される。一例として、ある個体の骨髄の異なる個体への移入は、異種移植を構成する。異種遺伝子は、被験体以外の供給源に由来する遺伝子である。
【0197】
本明細書に記載される薬剤は、任意の適切な医薬組成物の形態で投与し得る。「医薬組成物」という用語は、治療上有効な薬剤またはその塩を、好ましくは緩衝剤、防腐剤および張性調整剤などの医薬賦形剤と共に含む製剤に関する。前記医薬組成物は、前記医薬組成物を個体に投与することによって疾患または障害を治療または予防するのに有用である。医薬組成物は、当技術分野では医薬製剤としても知られる。医薬組成物は、局所的または全身的に投与することができる。
【0198】
「全身投与」という用語は、薬剤が個体の体内に有意の量で広く分布するようになり、生物学的作用を発現するような治療上有効な薬剤の投与を指す。本発明によれば、投与は非経口投与によることが好ましい。
【0199】
「非経口投与」という用語は、薬剤が腸を通過しないような治療上有効な薬剤の投与を指す。「非経口投与」という用語には、静脈内投与、皮下投与、皮内投与または動脈内投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0200】
本発明の方法はまた、好ましくは被験体に免疫抑制化合物を提供することをさらに含む。免疫抑制化合物がペプチドまたはポリペプチドである場合、免疫抑制化合物またはRNAなどの核酸、特に、免疫抑制化合物をコードする本明細書に記載のRNAなどの非免疫原性RNAを投与することによって被験体に提供することができる。免疫抑制化合物は、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン1受容体拮抗薬(IL-1RA)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン27(IL-27)、インターロイキン35(IL-35)、プログラム死リガンド1(PD-L1)、誘導性T細胞共刺激リガンド(ICOSL)、B7-H4、CD39、CD73、FAS、FAS-IL、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ2(IDO2)、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ1(ALDH1)/レチナールアルデヒドデヒドロゲナーゼ(RALDH)、アルギナーゼ1(ARG1)、アルギナーゼ2(ARG2)、亜酸化窒素シンターゼ(NOS2)、ガレクチン-1、ガレクチン-9、セマフォリン4A、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択することができる。さらに、本明細書に記載の組成物は、そのような免疫抑制化合物またはそのような免疫抑制化合物をコードするRNAなどの核酸を含み得る。
【0201】
本発明による医薬組成物は、一般に「薬学的に有効な量」および「薬学的に許容される製剤」で適用される。
【0202】
「薬学的に有効な量」という用語は、単独でまたはさらなる用量と共に、所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻止に関する。これは、疾患の進行を遅くすること、特に疾患の進行を妨げるまたは逆転させることを含む。疾患の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の防止であり得る。本明細書に記載の組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズおよび体重を含む患者の個々のパラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路ならびに類似の因子に依存する。したがって、本明細書に記載の組成物の投与量は、様々なそのようなパラメータに依存し得る。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(または異なる、より局所的な投与経路によって達成される実質的により高い用量)を使用し得る。
【0203】
「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
【0204】
本発明の医薬組成物は、塩、緩衝剤、防腐剤、担体および場合により他の治療薬を含み得る。好ましくは、本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含む。
【0205】
「賦形剤」という用語は、結合剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、または着色剤などの、活性成分ではない医薬組成物中のすべての物質を示すことが意図されている。
【0206】
「希釈剤」という用語は、希釈するおよび/または希薄にする作用物質に関する。さらに、「希釈剤」という用語には、流体、液体または固体の懸濁液および/または混合媒体のいずれか1つ以上が含まれる。
【0207】
「担体」という用語は、ヒトへの投与に適した1つ以上の適合性の固体または液体の充填剤または希釈剤に関する。「担体」という用語は、活性成分の適用を容易にするために活性成分と組み合わせる天然または合成の有機または無機成分に関する。好ましくは、担体成分は、鉱油、動物、または植物、例えば落花生油、大豆油、ゴマ油、ヒマワリ油等に由来するものを含む、水または油などの滅菌液体である。塩溶液および水性デキストロースおよびグリセリン溶液も、水性担体化合物として使用し得る。
【0208】
治療的使用のための薬学的に許容される担体または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R Gennaro edit.1985)に記載されている。適切な担体の例には、例えば炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどが含まれる。適切な希釈剤の例には、エタノール、グリセロールおよび水が含まれる。
【0209】
医薬担体、賦形剤または希釈剤は、意図される投与経路および標準的な薬務に関して選択することができる。本発明の医薬組成物は、担体(1つまたは複数)、賦形剤(1つまたは複数)または希釈剤(1つまたは複数)として、またはそれらに加えて、任意の適切な結合剤(1つまたは複数)、潤滑剤(1つまたは複数)、懸濁剤(1つまたは複数)、コーティング剤(1つまたは複数)および/または可溶化剤(1つまたは複数)を含み得る。適切な結合剤の例には、デンプン、ゼラチン、グルコースなどの天然糖、無水ラクトース、自由流動性ラクトース、βラクトース、トウモロコシ甘味料、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウムなどの天然および合成ゴム、カルボキシメチルセルロースならびにポリエチレングリコールが含まれる。適切な潤滑剤の例には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。防腐剤、安定剤、染料、さらには香味剤を医薬組成物に提供してもよい。防腐剤の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。酸化防止剤および懸濁剤も使用し得る。
【0210】
一実施形態では、組成物は水性組成物である。水性組成物は、場合により溶質、例えば塩を含んでもよい。一実施形態では、組成物は凍結乾燥組成物の形態である。凍結乾燥組成物は、それぞれの水性組成物を凍結乾燥することによって得られる。
【0211】
本発明を以下の図面および実施例によってさらに説明するが、これらは本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0212】
図面
図1:F12リポソームと複合体化したルシフェラーゼRNAの投与後の脾臓免疫細胞の活性化、サイトカインの放出およびタンパク質の発現。BALB/cマウス(n=7)に非免疫原性LUC mRNA-LPX 10μgを後眼窩神経叢に静脈内注射し、24時間後に(A)樹状細胞(n=3)(CD86の上方調節によって明らかになった)、T細胞、B細胞およびNK細胞(CD69の上方調節によって明らかになった)の成熟状態を調べた。BALB/cマウスへのmRNA-LPX注射の6時間後、(B)IFNαの血清濃度を評価した。(C)インビボ生物発光イメージングによる、ルシフェラーゼRNAのBALB/cマウス(n=4)へのmRNA-LPX注射の6、24、48および72時間後のインビボでのルシフェラーゼ活性測定。データは、n=3匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。LLOD=検出の下限。
図2:セルロース処理またはHPLC精製のいずれかによって精製した非免疫原性MOG35-55 mRNAのドットブロット分析。曝露時間20秒。
図3:DCによるMOG35-55抗原提示はEAEに対する寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。EAE誘導後7日目および10日目に、セルロースまたはHPLC法のいずれかによって精製した非免疫原性MOG35-55をコードするmRNAを後眼窩神経叢に静脈内注射した。対照マウスには150mM NaClを投与した。データは平均値として示している。n=6匹のマウス/群。
図4:APCによるMOG35-55抗原提示は、抗原特異的T細胞増殖を誘導する。ナイーブ、細胞トレースバイオレット(CTV)標識、Thy1.1
+2D2
+CD4
+T細胞を、Thy1.2
+C57BL/6対照マウスに養子移入した。翌日、非免疫原性MOG35-55コードmRNA 10、20または40μgでマウスを免疫した。対照マウスは非免疫原性の無関係な対照mRNA 20μgで処置した。2番目の対照群には、さらに150mM NaClを投与した。4日後、マウスを犠死させ、脾臓をThy1.1
+細胞の増殖について分析した。データは、n=3匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。
図5:誘導された抗原特異的Treg細胞によるMOG35-55 T細胞増殖のインビトロ抑制。(A、B)2D2 Foxp3-eGFPマウスを、非免疫原性MOG35-55コードmRNAで4回(0日目、3日目、6日目、9日目)免疫した。対照マウスは、免疫原性MOG35-55コードmRNAまたは非免疫原性の無関係な対照mRNAで処置した。3番目の対照群には150mM NaClをさらに投与した。最後のmRNA処置の4日後、マウスを犠死させ、MOG35-55特異的CD4
+細胞をFoxp3-eGFP発現について分析した(C)。各処置群の細胞(サプレッサー)を未処置のナイーブマウスのCTV標識2D2 CD4
+T細胞(レスポンダー細胞)と共培養し、MOG35-55ペプチド負荷BMDCによってインビトロで72時間再刺激した。レスポンダー細胞の増殖をFACS(CTV
+細胞でゲートした)によるCTV希釈によって決定した。サプレッサー細胞の抑制能力を、レスポンダー細胞に対して4つの異なる比率で測定した。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。CD4
+Foxp3
+細胞の頻度の統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって、***p≦0.001で評価した。
図6:DCによるMOG35-55抗原提示はEAEに対する寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。EAE誘導後7日目および10日目に、非免疫原性MOG35-55をコードするmRNA、および非免疫原性の無関係なmRNAを後眼窩神経叢に静脈内注射した。対照マウスには150mM NaClを投与した。データは平均値として示している。n=6~8匹のマウス/群。群ごとの各マウスの最大EAEスコアの統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって決定した。曲線下面積(AUC)を使用して、様々なEAE疾患発症曲線の一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって統計的有意性を決定した。
図7:DCによるMOG35-55抗原提示は、実際の治療環境でEAEに対する寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。マウスが1~2のEAEスコアに達した後、非免疫原性MOG35-55コードmRNA、および非免疫原性の無関係なmRNAを後眼窩神経叢に静脈内注射した。対照マウスには150mM NaClを投与した。データは平均値として示している。n=6~9匹のマウス/群。群ごとの各マウスの最大EAEスコアの統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって評価した。曲線下面積(AUC)を使用して、様々なEAE疾患発症曲線の一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって統計的有意性を決定した。
図8:DCによる抗原提示はEAEに対する寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFAによる免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目と10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μgまたは150mM NaClで処置した。疾患誘導後16日目に、EAEに罹患し、mRNA処置したマウスから器官を採取し、ブレフェルジンAの存在下に、MOG35-55ペプチドの存在下で6時間培養した。CD40Lの発現をCD4
+CD44
+T細胞の細胞内サイトカイン染色によって調べた。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。CD4
+Teff細胞の統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって、*p≦0.05で評価した。
図9:MOG35-55ペプチド特異的Th1およびTh17細胞は、治療的に処置したマウスにおいて有意に減少する(7日目/10日目)。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFAによる免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目と10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μgまたは150mM NaClで処置した。EAE誘導後16日目に脳および脊髄を採取し、ブレフェルジンAの存在下に、MOG35-55ペプチドの存在下で6時間、細胞をインビトロで再刺激した。次に、CD4
+T細胞を細胞内サイトカイン染色によってIFNγおよびIL-17Aの発現について分析し、IFNγ
+およびIL-17A
+CD4
+T細胞の割合を計算した。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって、*p≦0.05で評価した。
図10:F12リポソームと複合体化した非免疫原性(m1Y)および免疫原性(U)mRNAの異なるMOG35-55-mRNA混合物の投与後の脾臓免疫細胞の活性化およびサイトカイン放出。C57BL/6マウスに全MOG35-55 mRNA-LPX 20μgを後眼窩神経叢に静脈内注射し、24時間後に樹状細胞(CD86の上方調節によって明らかになった)、T細胞およびNK細胞(CD69の上方調節によって明らかになった)の成熟状態を調べた。C57BL/6マウスへのmRNA-LPX注射の6時間後、IFNαの血清濃度を評価した。データは、n=3匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。
図11:非免疫原性および免疫原性mRNAの異なるMOG35-55-mRNA混合物のドットブロット分析。曝露時間20秒。破線は、dsRNA 320pgのドット強度の100%として設定している。
図12:非免疫原性MOG35-55 mRNAはEAEに対する完全な寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。EAE誘導後7日目および10日目に、非免疫原性(m1Y)および免疫原性(U)MOG35-55コードmRNAの異なる混合物を後眼窩神経叢に静脈内注射した。対照マウスには150mM NaClを投与した。データは平均値として示している。n=6~8匹のマウス/群。群ごとの各マウスの最大EAEスコアの統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって、**p≦0.01で評価した。
図13:ヌクレオシド修飾のみでは認識の喪失を誘導しない。F12リポソームと複合体化した様々なヌクレオシド修飾mRNAの投与後の脾臓免疫細胞の活性化およびサイトカイン放出。C57BL/6マウスに全mRNA-LPX 10μgを後眼窩神経叢に静脈内注射し、24時間後に樹状細胞(CD86の上方調節によって明らかになった)、T細胞およびNK細胞(CD69の上方調節によって明らかになった)の成熟状態を調べた。C57BL/6マウスへのmRNA-LPX注射の6時間後、IFNαの血清濃度を評価した。データは、n=3匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。
図14:非免疫原性MOG35-55コードmRNA-LPX処置は抗原特異的CD4
+エフェクター細胞の拡大をもたらさない。ナイーブC57BL/6マウスを、0、3、7、および10日目に非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μgで処置した。対照マウスは非免疫原性の無関係な対照mRNA 20μgで処置した。2番目の対照群には150mM NaClを投与した。最初のmRNA処置後13日目に、マウスを犠死させ、脾細胞を、IFNγ ELISpot(A)およびMOG35-55ペプチドで再刺激した細胞の上清中のMultiplex ELISAによるサイトカインの検出(BおよびC)によって炎症誘発性および抗炎症性サイトカインの分泌について分析した。データは、n=4~5匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。
図15:共阻害分子は、非免疫原性MOG35-55をコードするmRNA-LPXで処置すると上方調節される。ナイーブC57BL/6マウスを、0、3、7、および10日目に非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μgで処置した。対照マウスは非免疫原性の無関係な対照mRNA 20μgで処置した。さらに、2番目の対照群には150mM NaClを投与した。最初のmRNA処置後13日目に、マウスを犠死させ、脾臓からのMOG35-55 CD4
+T細胞を共阻害分子の上方調節についてフローサイトメトリで分析した。データは、n=4~5匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって評価した。
図16:非免疫原性MOG35-55コードmRNA-LPXでの治療的ワクチン接種は、CNSへのリンパ球の浸潤を減少させる。ナイーブThy1.1
+2D2 CD4
+T細胞を1日目にThy1.2
+C57BL/6マウスに養子移入した。EAEを、MOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目および10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μg、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは150mM NaClで処置した。疾患誘導後16日目に、異なる処置を受けたマウスから器官を採取した。Thy1.1
+CD4
+MOG35-55特異的細胞の浸潤を調べ、Trucount(商標)チューブを使用したフローサイトメトリによって浸潤細胞の総数を測定した。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。浸潤したCD4
+Teff細胞の統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって評価した。
図17:MOG35-55特異的Th1およびTh17細胞は、治療的に処置したマウスにおいて有意に減少する(7日目/10日目)。EAEを、C57BL/6においてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目および10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μg、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは150mM NaClで処置した。EAE誘導後16日目に脳および脊髄を採取し、ブレフェルジンAの存在下に、MOG35-55ペプチドの存在下で6時間、細胞をインビトロで再刺激した。次に、CD4
+T細胞を細胞内サイトカイン染色によってIFNγおよびIL-17Aの発現についてフローサイトメトリで分析し、CD4
+T細胞のIFNγ
+およびIL-17A
+の割合を計算した。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって評価した。
図18:共阻害分子は、非免疫原性MOG35-55特異的mRNA-LPX処置が成功すると、MOG35-55特異的CD4
+T細胞で上方調節される。EAEを、C57BL/6においてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目および10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μg、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは150mM NaClで処置した。疾患誘導後16日目に、異なる処置を受けた群から脾臓を切除した。MOG35-55特異的CD4
+T細胞をテトラマー特異的MACSによって単離し、テトラマー染色によってフローサイトメトリで表現型解析した。データは、n=4匹のマウス/群からの平均値±標準偏差として示している。統計分析は、一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって評価した。
図19:PD-1およびCTLA-4は、非免疫原性mRNA誘導の抗原特異的寛容の維持に必要である。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目および10日目にマウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μgまたは非免疫原性の無関係なmRNA 20μgで処置した(n=8匹のマウス/群)。mRNA処置マウスを、抗PD-1もしくは抗CTLA-4遮断抗体または対応するIgG対照で同時に処置した。EAEの発症を毎日の健康モニタリングによって評価した。EAE曲線下面積(AUC)を使用して、様々な疾患発症曲線の一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって統計的有意性を決定した。
図20:非免疫原性抗原特異的mRNAでの処置による抗原特異的寛容の誘導は、EAE疾患モデルとは無関係である。(A)非免疫原性PLP139-151をコードするmRNA-LPXでの治療的ワクチン接種は、再発寛解型EAEに対する寛容を誘導する。EAEを、SJLマウスにおいてPLP139-151-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。EAE誘導後7日目および10日目から開始して週に2回、非免疫原性PLP139-151をコードするmRNA 20μg、および非免疫原性の無関係なmRNAを後眼窩神経叢に静脈内注射した。(B)非免疫原性マルチエピトープをコードするmRNA-LPXでの治療的ワクチン接種は、複雑なEAEにおいて寛容を誘導する。EAEを、C57BL/6およびSJL/JRjのF1ハイブリッドマウスにおいてMOG35-55、PLP139-151、PLP178-191、MBP84-104およびMOBP15-36-CFA(0日目)ならびに百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導した。EAE誘導後7日目および10日目から開始して週に2回、非免疫原性マルチエピトープコードmRNA 40μg、非免疫原性MOG35-55 mRNA 20μg、および非免疫原性の無関係なmRNA 20μgを後眼窩神経叢に静脈内注射した。EAEの発症を毎日の健康モニタリングによって評価した。データは平均値として示している。n=6~8匹のマウス/群。EAE曲線下面積(AUC)を使用して、様々な疾患発症曲線の一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって統計的有意性を決定した。
図21:非免疫原性mRNAによるサイトカインの共送達は、EAEモデルでの非免疫原性抗原特異的mRNA-LPX処置の寛容原性効力を改善する。EAEを、C57BL/6マウスにおいてMOG35-55-CFA(0日目)および百日咳毒素(0日目および2日目)による免疫化によって積極的に誘導し、EAE誘導後7日目および10日目に、それぞれ非免疫原性mIL-10(A)またはmIL-27(B)mRNA 15μgと共に非免疫原性MOG35-55 mRNA 5μgでマウスを処置した。対照マウスには、非免疫原性MOG35-55 mRNA 5μgを非免疫原性の無関係なmRNA 15μg、非免疫原性のサイトカインコードmRNA 15μg、または非免疫原性の無関係なmRNA 20μgと共に投与した。EAEの発症を毎日の健康モニタリングによって評価した。データは平均値として示している。n=6~8匹のマウス/群。EAE曲線下面積(AUC)を使用して、様々な疾患発症曲線の一方向ANOVAおよびテューキーの多重比較検定によって統計的有意性を決定した。
【実施例0213】
(実施例1)
材料および方法
動物
C57BL/6、BALB/c、SJL/JRj野生型マウスおよびC57BL/6およびSJL/JRjのF1ハイブリッドマウスは、それぞれENVIGO RMS gmbH,NetherlandsおよびJanvier Laboratories,Franceから購入した。MHCクラスII(I-Ab)に関連してMOG35-55を認識するT細胞受容体を発現するThy1.1+2D2 TCR MOGトランスジェニックC57BL/6マウス、およびノックインFoxp3-eGFPをさらに含むThy1.1+2D2 Foxp3-eGFP TCR MOGトランスジェニックC57BL/6マウスは、Prof.Dr.Ari Waismanの研究室の好意で提供された。年齢と性別が一致する動物を実験全体で使用し、BioNTech AG Mainzの動物施設において特定病原体フリー(SPF)条件下でマウスを維持した。
【0214】
RNA構築物およびインビトロ転写
LUC-mRNAのインビトロ転写は、5'ヒトαグロビンUTR(hAg)、3'FIエレメントおよび100ヌクレオチドのポリ(A)尾部を含み、30ヌクレオチド後にリンカーを有する、pST1-hAg-CDS-FI-A30LA70プラスミド骨格に基づいた。LUC構築物はホタルルシフェラーゼ遺伝子を含む。MOG35-55、PLP139-151、PLP178-191およびMBP84-104構築物は、同じプラスミド骨格(pST1-hAg-CDS-FI-A30LA70)に基づいて設計し、それぞれMOG35-55、PLP139-151、PLP178-191およびMBP84-104コード配列の前後にmmsec(任意)およびmmMITD(任意)をさらに含んだ(pST1-hAg-mmsec(任意)-CDS-mmMITD(任意)-A30LA70)。リーダーペプチドとMHC輸送シグナル(MITD)の追加は、APCによる抗原提示を強力に改善する(Kreiter,S.et al.,2007,J.Immunol.180,309-318)。すべての抗原配列は、抗原提示を促進するために疾患関連エピトープの前後に7つの隣接アミノ酸をさらに含む。抗原配列、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)は、ペプチド配列:MOG27-63:SPGKNATGMEVGWYRSPFSRVVHLYRNGKDQDAEAQPを有する。マウスミエリンペプチド、プロテオリピドタンパク質PLP139-151の場合は、より良好なペプチド提示のためにやはり7つの隣接アミノ酸を追加した(PLP131-159:AHSLERVCHCLGKWLGHPDKFVGITYALT)。プロテオリピドタンパク質PLP178-191は、アミノ酸PLP170-199:AVPVYIYFNTWTTCQSIAFPSKTSASIGSLを含み、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)84-104は、アミノ酸MBP76-112:RTQDENPVVHFFKNIVTPRTPPPSQGKGRGLSLSRFSを含む。mRNAによる対照免疫のために、特定の抗原配列をコードしない空のベクターを使用した(pST2-hAg-mmsec(任意)-空-mmMITD(任意)-2hBg-A30LA70)。マウスインターロイキン10(mIL-10)およびマウスインターロイキン27(mIL-27)のmRNAをコードするサイトカインも、プラスミド骨格pST1-hAg-CDS-FI-A30LA70に基づいて合成した。Kreiter et al.,2007(Cancer Immunol.Immunother.56,1577-87)に記載されているように、RNAをインビトロ転写によって生成した。精製したmRNAをH2Oで溶出し、さらに使用するまで-80℃で保存した。記載されているすべてのmRNA構築物のインビトロ転写は、BioNTech RNA Pharmaceuticals GmbHによって行われた。
【0215】
非免疫原性mRNAの生成
使用する非免疫原性mRNAを生成するために、通常のヌクレオシドのウリジンの代わりに1-メチルプソイドウリジンをインビトロ転写中に使用し、mRNAをHPLCまたはセルロース処理によってさらに精製した。HPLC精製には、Weissman et al.,2013(Methods Mol Bio.969,43-43)のプロトコルを採用し、緩衝液Bの38%~70%の勾配でmRNAの溶出を実施した。生成されたすべてのmRNAから、mRNAの純度と完全性を保証するために品質管理(バイオアナライザおよびドットブロット分析)を実施した。
【0216】
使用する免疫原性mRNAを生成するために、通常のヌクレオシドのウリジンをインビトロ転写に使用し、mRNAはHPLCまたはセルロース処理によってさらに精製しなかった。
【0217】
脾細胞の活性化に対するHPLC精製またはセルロース処理の影響を検討するために、追加のHPLC精製を受けたか(pU-HPLC mRNA)、または受けなかったプソイドウリジン修飾mRNA(pU-mRNA)を使用した。対応するmRNAは、既に述べたように生成した。
【0218】
IVT mRNAの品質管理のためのドットブロット分析
インビトロで転写し、修飾およびHPLC精製したmRNAを、ドットブロットによって二本鎖mRNA(dsRNA)について分析した。様々なmRNA構築物1μgをNYTRAN SPC膜(GE Healthcare)に負荷し、ブロックし、次いでdsRNAの検出のためにJ2抗体(SCICONS English and Scientific Consulting)と共にインキュベートした。二次抗体として抗マウスHRP抗体(Jackson ImmunoResearch)を使用し、膜をBioRad ChemiDocで分析した。
【0219】
RNAリポプレックスの調製および注入
RNA-リポプレックス(RNA-LPX)を滅菌およびRNアーゼフリーの条件下で調製した。HEPES(10mM)/EDTA(0.1mM)を使用して、RNAを1mg/mlの濃度に希釈した。1.5M NaCl(5M NaClストック;Ambion)を特定の量のRNAに添加して、150mM NaClの最終濃度を得た。短時間ボルテックスした後、指定量のF12リポソームを添加し、RNAリポソーム混合物(RNA-LPX)を再度短時間ボルテックスし、最後にRNA-LPXの形成を可能にするために室温で10分間インキュベートした(Kranz et al.2016,Nature.16,396-401)。マウスごとにRNA-LPX溶液200μlをマウスの後眼窩神経叢に静脈内注射した。
【0220】
フローサイトメトリ分析
蛍光活性化細胞選別(FACS)表面および細胞内抗体は、eBioscienceまたはBD Pharmingenから購入し、製造元のプロトコルに従って使用した。使用した抗体は、CD11b、CD11c、CD19、CD25、CD4、CD44、CD40L、CD49b、CD69、CD8、CD86、CD90.1、Foxp3、ICOS、IFNγ、IL-17A、Lag-3、PD-1、TIGITおよびTim-3であった。
【0221】
異なる器官からの単一細胞懸濁液を細胞外マーカーについて4℃で30分間染色した。IFNγ、IL-17AおよびCD40Lの細胞内サイトカイン染色のために、細胞を記載したように単離し、MOG35-55ペプチド(濃度15μg/ml)、モネンシン(GolgiStop、BD-Bioscience)およびブレフェルジンAを含む培地中、37℃、5%CO2で6時間さらに刺激した。生細胞/死細胞染色(生存率染料eFluor(登録商標)506、eBioscience)および細胞表面マーカーの染色を行った後、BD BiosciencesのCytofix/CytopermおよびPerm/Wash緩衝液を使用して、製造元のプロトコルに従って細胞を固定し、透過処理した。細胞を細胞内抗体と共に4℃で30分間インキュベートし、FACS分析の前にPerm/Washで2回洗浄した。試料は、BD LSR FortessaまたはBD FACS Canto IIで取得し、FlowJo 7.6.5またはFlowJo 10.4(Tree Star)ソフトウェアを使用して分析した。
【0222】
細胞内Foxp3染色では、固定および透過処理のためにFoxp3転写因子染色緩衝液セット(Thermo Fisher Scientific)を使用した。すべての工程は、細胞外染色後に製造元の推奨に従って実施した。
【0223】
MOG35-55特異的CD4+T細胞をテトラマー染色によって検出した。MOG35-55特異的APC結合pMHCクラスIIテトラマーは、国立衛生研究所のテトラマーコア施設から入手した。マウス脾細胞の単一細胞懸濁液を、完全DC培地(培地組成については「骨髄由来DC(BMDC)の生成」を参照)中、室温で1時間、MOG35-55 APC結合テトラマーと共にインキュベートした。細胞を洗浄し、抗APC染色とその後のMACSを実施した。上記のように、細胞を細胞外抗体または細胞内抗体と共にインキュベートした。
【0224】
脾臓、脳、脊髄中の絶対CD4+MOG35-55特異的細胞数(Thy1.1+2D2 CD4+T細胞)の測定のために、Trucount(商標)Tubes(BD Biosciences)を使用した。単一細胞懸濁液を上記のように染色し、その後Trucount(商標)チューブに移し、フローサイトメトリによって絶対細胞数を測定した。
【0225】
インビボ生物発光イメージング(BLI)
脾臓細胞における非免疫原性mRNAの翻訳効率を、Xenogen IVIS Spectrumインビボイメージングシステム(Caliper Life Sciences)を使用して検討した。非免疫原性LUC-mRNAのRNA-LPX免疫化の6時間後、24時間後、48時間後、72時間後に、マウスにD-ルシフェリンの水溶液(250μl、PBS中1.6mg)(BD Biosciences)を腹腔内注射した。5分後、脾臓からのシグナル強度を定義し、関心領域(ROI)のインビボ生物発光によって測定し、IVIS Living Image 4.0ソフトウェアを使用して総光束(光子/秒)として定量化した。取得時間は、ビニング4で1分であった。生存マウスの生物発光イメージング中に、マウスを2.5%イソフルラン/酸素混合物の用量で麻酔した。生存動物の放出された光子のLUCシグナル強度はグレースケール画像として表し、黒色は最も弱く、白色は最も強い生物発光シグナルである。IVIS Living Image Softwareを使用してマウスの画像を分析した。
【0226】
磁気活性化細胞選別(MACS)
Thy1.1+2D2 TCR MOGトランスジェニックC57BL/6マウスまたはThy1.1+2D2 Foxp3-eGFP TCR MOGトランスジェニックC57BL/6マウスのThy1.1+2D2 CD4+T細胞を、MACS(Miltenyi Biotec)を製造元の指示に従って使用した陽性選択によって脾臓およびリンパ節から単離した。CD4+T細胞を、CD4(L3T4)マイクロビーズを使用して精製した。
【0227】
CD4+MOG35-55特異的T細胞を、MOG35-55特異的APC結合pMHCクラスIIテトラマー染色後に、抗APCマイクロビーズを使用してMACS濃縮した。製造元のプロトコルに従って濃縮を行った。
【0228】
骨髄由来DC(BMDC)の生成
C57BL/6マウスの大腿骨および脛骨から骨髄(BM)細胞を抽出し、組織培養フラスコ中37℃で、10%FBS(Biochrom)、1%ピルビン酸ナトリウム100x(Gibco)、1%MEM NEAA 100x(Gibco)、0.5%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)、50μM 2-メルカプトエタノール(Life Technologies)および1000U/ml樹状細胞(DC)分化因子、顆粒球マクロファージコロニー-刺激因子(GM-CSF)(Peprotech)を添加したRPMI 1640+GlutaMAX-I培地(Gibco)で培養した。6日目に、2x106DC/mlをMOG35-55ペプチド(15μg/ml)と共に37℃で3時間プレインキュベートし、次いで96ウェルプレート中、総量200μlの培地でT細胞と共培養した。
【0229】
インビトロTreg抑制アッセイ
インビトロ Treg抑制試験のために、CTV標識(CellTrace Violet細胞増殖キット、Thermo Fisher Scientific)ナイーブCD4+2D2トランスジェニック(Thy1.1+)T細胞(3x104細胞/ウェル)を、サプレッサーとレスポンダー2D2 T細胞の異なる比率(1:1、2:1、4:1、8:1)で繰り返しmRNA免疫したマウスの、単離およびCFSE標識(5μM)したCD4+2D2-Foxp3-eGFPトランスジェニック細胞と共培養した。2D2-Foxp3-eGFPマウスに、非免疫原性および免疫原性のMOG35-55 mRNA、ならびに非免疫原性の無関係なmRNAおよび生理食塩水を0日目、3日目、6日目および9日目に後眼窩神経叢に静脈内注射した。CTV標識レスポンダー2D2 T細胞の増殖を、MOG35-55ペプチド負荷BMDC(最終濃度15μg/ml MOG35-55ペプチド)による再刺激の72時間後にフローサイトメトリで分析した。
【0230】
養子T細胞移入およびインビボ増殖アッセイ
増殖試験のために、濃縮CD4+2D2トランスジェニック(Thy1.1+)T細胞を製造元の指示に従ってCTV標識(CellTrace Violet細胞増殖キット、Thermo Fisher Scientific)し、計数し、7x106細胞をPBS 200μl中で麻酔下のナイーブC57BL/6(Thy1.2+)レシピエントマウスの後眼窩神経叢に静脈内注射した。翌日、C57BL/6マウスを、MOG35-55エピトープをコードする非免疫原性mRNA 10、20または40μgで免疫した。対照マウスには、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは生理食塩水を投与した。T細胞移入の4日後、マウスを犠死させ、細胞の増殖をフローサイトメトリによって分析した。
【0231】
EAEマウスの7日目および10日目のmRNA処置の成功後の脾臓、脳および脊髄におけるCD4+MOG35-55特異的T細胞の絶対細胞数の決定、ならびにこれらの細胞の表現型分析のために、CD4+2D2トランスジェニック(Thy1.1+)T細胞を、MACSによってCD4細胞を濃縮したThy1.1+2D2 TCR MOGトランスジェニックC57BL/6マウスから単離し、PBS 200μl中の7~10x106細胞を、酸素-イソフルラン気化器(2.5%イソフルラン/酸素)を使用した麻酔下のナイーブC57BL/6(Thy1.2+)レシピエントマウスの後眼窩神経叢に静脈内注射した。翌日、EAEをC57BL/6マウスにおいて積極的に誘導した。
【0232】
ELISA
マウスIFN-αの検出を、製造元の指示に従って標準ELISAアッセイを使用して、マウス血清でのRNA免疫の6時間後にELISA(PBL)によって実施した。
【0233】
mRNAで繰り返し処置したマウスの再刺激脾細胞の細胞培養上清中に存在するTh1/Th2/Th9/Th17/Th22およびTregサイトカインを、17プレックスマウスELISAアッセイキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量化した。マウスから単離した脾細胞(5x105細胞)の単一細胞懸濁液を0、5、10、20または100μg/mlのMOG35-55ペプチドで72時間刺激し、上清のサイトカイン含量を分析した。
【0234】
IFNγ酵素結合免疫スポットアッセイ(ELISpot)
MOG35-55応答性T細胞の頻度をインターフェロンγ(IFNγ)ELISpotで調べた。マウスを0、3、7および10日目に非免疫原性MOG35-55 mRNA、非免疫原性の無関係なmRNAまたは生理食塩水で処置した。最初の処置後13日目に、異なる処置群の脾臓を単離し、単一細胞懸濁液を調製した。CD4+T細胞を、CD4(L3T4)マイクロビーズを使用してMACSによって精製した。ELISpotキットを使用して、MOG35-55ペプチドでの再刺激後にIFNγ応答性の抗原特異的T細胞の定量化を実施した。96ウェルELISpotプレート(MultiScreenHTS IP Filter Plate、Merck Millipore)をIFNγ特異的捕捉抗体(抗マウスIFNγ抗体、Mabtech)で一晩被覆した。完全培地でブロッキングした後、プレートを洗浄し、5x105CD4+T細胞を1x105MOG35-55ペプチド負荷BMDC(ペプチド濃度15μg/ml)と共にプレートした。対照として、CD4+T細胞を無関係なペプチド負荷BMDCと共にインキュベートした。すべての細胞を37℃、5%CO2加湿インキュベータで16時間培養した。細胞を洗浄し、ビオチン化抗IFNγ検出抗体(抗マウスIFNγビオチン化抗体、Mabtech)と共に37℃、5%CO2で2時間インキュベートした。この二次抗体を、ExtrAvidin-アルカリホスファターゼ(Sigma)を添加することによって視覚化し、1時間のインキュベーション後、BCIP/NBT液体基質(Sigma)を添加し、水道水を流しながらプレートをすすぐことによって1~3分後に反応を停止させた。ELISpot Reader(S6 Macro Analyzer;CTL)でスポットの定量化を行った。
【0235】
EAEの誘導およびmRNAによるマウスの処置
EAEを、8~10週齢の雌性C57BL/6マウスにおいて、10mg/mlの熱不活性化ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37RA(Difco Laboratories)を添加したCFA(Difco Laboratories)に乳化したMOG35-55ペプチド(アミノ酸配列:MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK)50μgを尾の基部に皮下(s.c.)注射して積極的に誘導した。免疫の日および2日後に、マウスに百日咳毒素(List Biological Laboratories,INC.,Campbell,CA)150ngを腹腔内(i.p.)投与した。マウスの体重を測定し、次の基準に従って、免疫後10日目から開始して毎日採点した:0、疾患なし;1、尾の緊張の低下;2、立ち直り反射の障害;3、部分的な後肢麻痺;4、完全な後肢麻痺;5、部分的な前肢麻痺を伴う後肢麻痺;および6、瀕死または死亡。
【0236】
さらに、雌性SJL/JRjマウス(8-10週齢)において、10mg/mlの熱不活性化ヒト型結核菌H37RAを添加したCFAに乳化したPLP139-151ペプチド(アミノ酸配列:HSLGKWLGHPDKF)200μgを尾の基部に皮下注射してEAEを積極的に誘導した。免疫の日および2日後に、マウスにPTX 200ngを腹腔内投与した。マウスの体重を測定し、既に述べた採点基準に従って、免疫後8日目から開始して毎日採点した。
【0237】
複雑なEAEを、C57BL/6およびSJL/JRjの雌性F1ハイブリッドマウス(8~10週齢)においてペプチド混合物(MOG35-55、PLP139-151、PLP178-191(アミノ酸配列:NTWTTCQSIAFPSK)、MBP84-104(アミノ酸配列:VHFFKNIVTPRTPPPSQGKGR)、MOBP15-36(アミノ酸配列:QKFSEHFSIHCCPPFTFLNSKR))250μgで積極的に誘導した。各ペプチドのうち50μgを使用した。ペプチド混合物を、10mg/mlの熱不活性化ヒト型結核菌H37RAを添加したCFAに乳化し、尾の基部に皮下注射した。免疫の日および2日後に、マウスにPTX 200ngを腹腔内投与した。マウスの体重を測定し、既に述べた採点基準に従って、免疫後8日目から開始して毎日採点した。
【0238】
C57BL/6マウスにおける防御免疫を測定するために、疾患誘導後7日目および10日目に、または1~2のEAEスコア時に、マウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μg、非免疫原性の無関係な対照mRNA 20μgまたは生理食塩水で処置した。
【0239】
SJLマウスにおける再発寛解型EAEの治療的処置を、EAE誘導後7日目および10日目から開始して週に2回、非免疫原性PLP139-151 mRNA 20μgを用いて行った。対照マウスには、非免疫原性の無関係な対照mRNA 20μgを投与した。
【0240】
非免疫原性単一エピトープmRNA処置と非免疫原性マルチエピトープ処置を比較する実験では、複雑なEAEマウスを、非免疫原性マルチエピトープコードmRNA 40μg(各非免疫原性エピトープコードmRNA(MOG35-55、PLP139-151、PLP178-191、MBP84-104)10μgを使用した)、非免疫原性MOG35-55 mRNA 20μgまたは非免疫原性の無関係な対照mRNA 20μgで処置した。mRNAを、EAE誘導後7日目および10日目から開始して週2回注射した。
【0241】
サイトカインをコードするmRNAと抗原特異的mRNA処置の組み合わせ効果を試験するために、EAE誘導後7日目および10日目に非免疫原性MOG35-55をコードするmRNA 5μgを非免疫原性mIL-10またはmIL-27をコードするmRNA 15μgと共に注射した。対照マウスには、非免疫原性MOG35-55 mRNA 5μgを非免疫原性の無関係なmRNA 15μg、非免疫原性のサイトカインコードmRNA 15μg、または非免疫原性の無関係なmRNA 20μgと共に投与した。
【0242】
すべての実験について、mRNAを、酸素-イソフルラン気化器(2.5%イソフルラン/酸素)を使用した麻酔下で後眼窩神経叢に静脈内注射した。
【0243】
抗体処置
C57BL/6マウスを、EAE誘導後7、10、14および17日目に、PD-1(最初の処置500μg、その後の処置250μg、クローンRMP1-14、BioXcell)またはCTLA-4(最初の処置500μg、その後の処置250μg、クローン9H10、BioXcell)ブロッキング抗体またはアイソタイプが一致する対照抗体(ラットIgG2aおよびゴールデンハムスターIgG、BioXCell)で処置した。抗体をPBSで希釈し、腹腔内に適用した。
【0244】
脾臓、LNおよびCNS浸潤物の単離
すべての細胞ベースの分析は、脾臓、リンパ節およびCNS器官の単一細胞懸濁液で実施した。簡単に説明すると、脾臓およびLNを1mg/mlコラゲナーゼDおよび0.1mg/ml DNアーゼIと共に15分間インキュベートし、次いで、PBSで洗浄しながら70μmのセルストレーナに通した。脾細胞の単一細胞懸濁液で、赤血球溶解(低張溶解緩衝液:H2O 1lおよび0.5M EDTA 200μlに溶解したKHCO3 1gおよびNH4Cl 8.25g)を実施した。PBSでさらに洗浄した後、Vi-Cellセルカウンタ(Beckman Coulter)で細胞を計数した。
【0245】
脳および脊髄からCNS浸潤物を単離するために、マウスをケタミン-ロンプンで麻酔し、0.9%NaClを使用して左心室を灌流した。脳と脊髄を手操作で除去し、小片に切断し、コラゲナーゼD(1mg/ml)およびDNアーゼI(0.1mg/ml)を含むPBS++(カルシウムとマグネシウムを含むPBS、Gibco)中、37℃で20分間消化した。次に、消化した組織を、手操作で組織片をシリンジに吸い上げ、再び15mlのファルコンチューブの壁に押し付けてホモジナイズした。これを、断片が見えなくなるまで最大10回実施した。単一細胞懸濁液を70%パーコールに再懸濁し、30:37のパーコール勾配下で層にした。最終的なパーコール勾配は30:37:70%であり、室温で40分間、300gで遠心分離した。さらなる分析の前に、70%と37%パーコールの相間にある単核細胞層を2%FCS/PBSで洗浄した。
【0246】
統計分析
統計的有意性は、2つより多い群を比較する場合、テューキーの比較検定係数で補正した一方向ANOVAを用いるGraphPad Prism 7ソフトウェア(Graphpad Software,Inc.)を使用して評価した。単一マウスの疾患発症曲線下面積(AUC)を計算することによってEAE発症曲線を比較した。p≦0.05の値を統計的に有意であると見なした;*p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001。使用した検定は、それぞれの図の凡例で言及している。
【0247】
(実施例2)
脾細胞の活性化に関する非免疫原性mRNAの検査
脾細胞の活性化および使用した非免疫原性mRNAの翻訳効率を分析するために、BALB/cマウスに、F12リポソームと複合体化したルシフェラーゼ-mRNA(10μg)を後眼窩神経叢に静脈内注射した。ルシフェラーゼ活性を、RNA-LPX注射の6、24、48、72時間後のインビボイメージングによって評価し、代表的なマウスを
図1Cに示す。非免疫原性mRNAによるマウスの免疫化は、LUC-mRNAの持続的な高翻訳をもたらした。その結果、mRNA免疫後72時間までLUCタンパク質発現を検出することができた。
【0248】
さらに、
図1Aに見られるように、非免疫原性mRNAによるマウスの免疫化は、未処置対照マウスにおけるようにDC上の活性化マーカーCD86およびリンパ球上のCD69の上方調節をもたらさなかった。非免疫原性LUC-mRNAで免疫したマウスでは、mRNA免疫の6時間後にIFNαも血液中で検出することができなかった(
図1B)。
【0249】
(実施例3)
非免疫原性mRNAの特性付け
非免疫原性mRNAを使用して、治療用途で特定の疾患関連抗原を樹状細胞に送達し、免疫活性化を伴わずに抗原提示を保証する。1-メチルプソイドウリジンのmRNAへの組み込みは、細胞内のタンパク質発現を高め、哺乳動物細胞株およびマウスのインビボでのmRNAの免疫原性を低下させることが示されている(Andries et al.,2015,J Control Release.217,337-344)。この作用は、エンドソームのToll様受容体および下流の自然免疫シグナル伝達の活性化を回避するmRNAの能力の増加に依存する可能性が最も高い(Andries et al.,2015)。インビトロ転写中のmRNAへの組み込みにヌクレオシドウリジンの代わりに1-メチルプソイドウリジンを使用することに加えて、合成mRNAのHPLC精製は、免疫活性化をさらに排除し、ヌクレオシド修飾されたタンパク質コードmRNAの翻訳を改善する(Kariko et al.,2011,Nucleic Acids Res.39,e142)。HPLC精製によって、mRNAのインビトロ転写後に残存する二本鎖mRNA混入物が除去され、インターフェロンシグナル伝達および炎症性サイトカインを誘導しないmRNAが生じる(Kariko et al.,2011)。ヌクレオシド精製されたmRNAを精製する別の方法は、セルロース精製である(PCT/EP2016/059056)。
【0250】
治療用途に使用されるmRNAが本当に非免疫原性であるかどうかを調べるために、バイオアナライザおよびドットブロット分析を行って、mRNAの完全性と純度を確認した。
図2は、セルロース処理またはHPLC精製のいずれかによって精製した非免疫原性MOG35-55 mRNAのドットブロット分析を示す。dsRNAに特異的なJ2抗体は、分析したMOG35-55 mRNAのセルロースまたはHPLC精製後、使用したmRNAの40ng~1μgの範囲でシグナルを示さなかった。この品質管理は、両方のmRNAバッチについて非免疫原性mRNA特性を保証し、EAE治療において有益な治療効果を達成することができる。EAEを、C57BL/6マウスにおいて積極的に誘導し、疾患誘導後7日目および10日目に、セルロースまたはHPLC法のいずれかで精製した抗原特異的MOG35-55をコードする非免疫原性mRNAでマウスを処置した。両方の群は、EAE誘導に対して完全に耐性であった(
図3)。非免疫原性抗原特異的mRNAによる治療的ワクチン接種についてのより詳細な説明を以下の実施例で述べる。
【0251】
(実施例4)
抗原特異的T細胞の増殖に対する非免疫原性MOG35-55 mRNAの免疫の効果
非免疫原性MOG35-55 mRNA-LPXの免疫がDCによるT細胞へのMOG35-55抗原の提示をもたらすかどうかを検討するために、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)特異的T細胞受容体を保有する抗原特異的CD4
+T細胞(CD4
+2D2 T細胞)の増殖を調べた。Cell-Trace-Violet(CTV)標識Thy1.1
+MOG35-55特異的CD4
+2D2 T細胞をThy1.2
+C57BL/6マウスに移入した。24時間後、レシピエントマウスを異なる濃度(10、20または40μgのmRNA)のMOG35-55エピトープをコードする非免疫原性mRNAで免疫し、さらに4日後にMOG35-55特異的CD4
+2D2 T細胞の増殖を分析した。対照マウスには、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは生理食塩水を投与した。2D2 T細胞は、対照マウスと比較して非免疫原性MOG35-55 mRNAでマウスを処置した場合に増殖し(
図4)、抗原提示細胞(APC)が抗原をコードする非免疫原性mRNAを正しく翻訳し、プロセシングして、MOG35-55ペプチドを提示することを示した。さらに、用量を10μgから40μgに増加した非免疫原性MOG35-55 mRNAによるマウスの免疫化は、抗原特異的T細胞集団の増加も示した。
【0252】
(実施例5)
抗原特異的非免疫原性mRNAによる免疫化は、ナイーブマウスにおいて制御性T細胞の発生を誘導する
Tregは、様々な免疫応答を制御するうえでの基礎であり、寛容の誘導と維持に重要である。動物モデルでの前臨床試験は、Tregの養子移入が、自己抗原に対する免疫寛容を回復することによって、自己免疫疾患を含むいくつかのT細胞媒介疾患を予防または治療できることを示している。いくつかのCD4+制御性T細胞が記述されており(Shevach,E.M.,2006,Immunity 25,195-201)、2つの主要なサブグループ:天然Tregおよび様々な寛容原性条件下で末梢において生成される誘導性Tregに分類されている。Treg細胞は、自己反応性T細胞の拡大と分化を制限することによってそのプライミングを制御する(Sakaguchi,S.et al.,2008,Cell 133,775-87)。
【0253】
対応するT細胞表現型に対する抗原特異的非免疫原性mRNAによる免疫の効果をさらに調べるために、2D2-Foxp3-eGFP融合タンパク質をTh1.1陽性マウスのT細胞にトランスフェクトした。これらのマウスを非免疫原性および免疫原性MOG35-55 mRNA、ならびに非免疫原性の無関係なmRNAまたは生理食塩水で繰り返し免疫した(0日目、3日目、6日目および9日目)。非免疫原性MOG35-55 mRNAによるマウスの免疫化は、最後のmRNA処置の4日後(13日目)に分析すると、マウスにおいてFoxp3
+細胞の発生をもたらした。免疫原性抗原特異的mRNAまたは無関係な非免疫原性mRNAで処置したマウスは、Foxp3細胞集団の増加を示さず、生理食塩水で処置した対照マウスと同様のFoxp3陽性細胞の頻度を有していた(
図5AおよびB)。
【0254】
誘導されたFoxp3
+細胞が抑制的に作用するかどうかをインビトロ抑制アッセイによって評価した(
図5C)。そのため、免疫マウスの全CD4
+細胞をCFSEで標識し、CTVでさらに標識したナイーブMOG35-55特異的CD4
+2D2 T細胞と共に異なるサプレッサー対レスポンダー比で72時間共培養した。重要な点として、非免疫原性MOG35-55 mRNAで免疫したマウスからの誘導された制御性細胞は、MOG35-55ペプチド負荷BMDCの存在下で2D2エフェクターT細胞増殖の用量依存的抑制を媒介した。対照的に、他のすべての群は抑制作用を及ぼさなかった。
【0255】
合わせると、これらの結果は、非炎症性条件下でのAPC特異的抗原提示が機能的制御性T細胞の発生を媒介したことを示す。
【0256】
(実施例6)
疾患モデルEAEにおける非免疫原性MOG35-55 mRNAによる治療的ワクチン接種の影響
疾患モデルにおける抗原特異的非免疫原性mRNAによるmRNA免疫の寛容原性作用を解明するために、C57BL/6マウスにおいてEAEを積極的に誘導し、疾患誘導後7日目および10日目にマウスを抗原特異的MOG35-55コード非免疫原性mRNA、および非免疫原性の無関係なmRNAで処置した。処置は、強力なDC活性化および成熟シグナルならびに最初のT細胞プライミングが既に起こった時点で開始した。非免疫原性抗原特異的mRNAによるRNA免疫はEAEの徴候を完全にブロックし(
図6)、6匹のmRNA免疫マウスのうち1匹も疾患を発症しなかった。
【0257】
同時に、無関係なエピトープをコードする非免疫原性mRNAによるマウスの処置は、マウスを疾患から保護せず、6匹のマウスのうち5匹がEAEを発症した(
図6)。これらの所見は、未成熟DCによるMOG提示がEAEを下方調節することができ、非免疫原性抗原特異的mRNAで処置した動物のみがEAE誘導に完全に耐性であることを示す。
【0258】
さらに、疾患の症状が目に見え、マウスが1~2の疾患スコアに達した、疾患進行のより後の時点でEAEを治療することができるかどうかを調べた。意外にも、非免疫原性MOG35-55コードmRNAによるRNA免疫後、スコア1で処置した場合、EAEマウスは重度のEAEを発症せず、症状を軽減できることが示された(
図7)。マウスをスコア2で処置した場合でも、急速な疾患進行を止めることができた。マウスは2~3の最大疾患スコアを示しただけであったが、未処置対照マウスのほぼすべてが最大スコア4の完全なEAEを発症した。非免疫原性MOG35-55コードmRNAで処置したEAEマウスと比較して、非免疫原性の無関係なmRNAでの治療的処置は、疾患の進行に有益な作用を及ぼさず、動物は未処置対照マウスと同様のEAEを発症した。
【0259】
mRNA処置が誘導する寛容の分子機構を検討し、非免疫原性抗原特異的mRNAによるmRNA免疫およびそれによるDCによるMOG35-55の提示がエフェクターT細胞(Teff)に直接影響するかどうかを確認するために、C57BL/6マウスにおいて再びEAEを誘導し、疾患誘導後7日目と10日目および最後のmRNA処置の6日後に、動物を非免疫原性MOG35-55コードmRNAで処置し、脾臓、LN、脳および脊髄を単離した。様々な器官からの細胞を、MOG35-55ペプチドを用いて6時間、インビトロで再活性化し、次いでCD40リガンド(CD40L)Teff細胞でゲートした。CD40Lは、活性化後にT細胞上で迅速に発現されるため、MOG特異的Teff細胞のマーカーとして使用した。
図8に見られるように、非免疫原性MOG35-55 mRNAの投与は、脳および脊髄において非免疫原性抗原特異的mRNAで処置した群の抗原特異的CD4
+T細胞の頻度の有意な減少をもたらす。機能レベルでは、CD4
+T細胞は、未処置対照マウスと比較して非免疫原性MOG35-55コードmRNAで処置したマウスでは、脳におけるインターフェロンγ(IFNγ)および脊髄におけるインターロイキン17A(IL-17A)の分泌が有意に少ないことが示された(
図9)。これらのデータは、非免疫原性MOG35-55 mRNAによるmRNA処置が記憶T細胞およびTeff細胞を不活性化することができ、これらの細胞の減少をもたらすことを示す。
【0260】
(実施例7)
EAEの治療効率に対するmRNA純度の影響
ウリジンを含む免疫原性mRNA(U)と、1-メチルプソイドウリジンを含み、セルロース精製で精製した非免疫原性mRNA(m1Y)との組み合わせによる実験は、脾細胞の活性化(DC上の活性化マーカーCD86およびリンパ球上のCD69の上方調節によって検査した)ならびにIFNα分泌が、使用された免疫原性mRNAの量と相関することを明らかにした。非免疫原性mRNA(m1Y MOG35-55 mRNA 20μg)では活性化がほとんど達成されず、免疫原性mRNA(U MOG35-55 mRNA)の添加によって活性化は着実に増加した(
図10)。U mRNA 5μg+m1Y mRNA 15μgは、U mRNA 20μgよりもわずかに低い活性化を示したが、m1Y mRNA 20μgはやはり免疫系を全く活性化しなかった。異なるmRNA混合物の対応するドットブロット分析も、100%の非免疫原性(m1Y)mRNAのみがdsRNAのシグナルを示さないことを明らかにした(
図11)。
【0261】
EAEの治療効果に対する使用したmRNAの純度の影響をさらに調べるために、同じmRNA混合物を進行中のEAEを治療するために使用した。再び、EAEをC57BL/6マウスにおいて積極的に誘導し、疾患誘導後7日目および10日目にマウスを抗原特異的mRNAで処置した。この実験では、非免疫原性および免疫原性MOG35-55 mRNAの同じmRNA混合物を、先の「活性化」実験と同じように使用した。100%非免疫原性(m1Y)mRNAとは異なり、非免疫原性mRNAと免疫原性mRNAの混合物(U MOG35-55 mRNA 2.5μg+m1Y MOG35-55 mRNA 17.5μgおよびU MOG35-55 mRNA 5μg+m1Y MOG35-55 mRNA 15μg)は疾患発症を完全には予防することができず、一部のマウスは100%免疫原性mRNAで処置したマウスと同様の疾患を発症し始める(
図12)。これらの結果は、EAEの効果的な治療のためには、純粋な非免疫原性(m1Y)mRNAが必要であることを示す。
【0262】
HPLCによって精製したまたは精製しなかった未修飾および修飾mRNAの脾細胞活性化に関するさらなる比較を行った。
図13に示すように、プソイドウリジン(pU)などのヌクレオシド修飾のみでは、免疫系によるmRNAの認識の喪失を誘導しないが、精製工程が違いを生じさせる。非精製pU-mRNAは依然として免疫原性であり、脾細胞の活性化(DC上のCD86の強力な上方調節、B細胞、T細胞およびNK細胞上のCD69の上方調節)ならびにIFNα分泌に関して通常のmRNA(U-mRNA)のように機能する。対照的に、dsRNA(pU-HPLC mRNA)を除去するためにHPLCでさらに精製したpU-mRNAは、未処置対照マウスと同様にDC、B細胞、T細胞およびNK細胞の活性化ならびにその結果としてIFNαの分泌を防ぐ。これらの結果は、ウリジン修飾とIVT mRNAのさらなる精製の組み合わせのみが、ナイーブマウスで観察されたように、mRNAの免疫原性をゼロに、すなわち寛容が誘導され得るレベルに最小化することを強調する。したがって、非免疫原性mRNA(mRNA精製と組み合わせたウリジン修飾)は、寛容誘導の目的のために最適なmRNAである。
【0263】
(実施例8)
非免疫原性MOG35-55特異的mRNAによる処置は、抗原特異的CD4
+T細胞の新規プライミングを誘導しないが、ナイーブマウスにおけるアネルギーT細胞の拡大をもたらす
末梢性寛容の維持と誘導は、表面上にCD86またはCD40のような低レベルの共刺激分子を発現するAPCによる自己抗原の提示に依存する。非免疫原性mRNAによる処置の際に、APCによる共刺激分子の発現およびサイトカイン産生がないことが実施例2、
図1に示されている。その結果、mRNA処置時に、APCは、活性化刺激の非存在下で非免疫原性mRNAによってコードされるエピトープをプロセシングして提示する。共刺激シグナルの非存在下でのTCRの関与は、エフェクターT細胞の拡大をもたらさず、むしろアポトーシスまたはT細胞アネルギーを生じさせる(Mueller,D.L.,2010,Nat.Immunol.11,21-7)。対照的に、エフェクターT細胞のプライミング中、DCは特定のサイトカインを放出し、これは、抗原提示および共刺激分子の発現と共に、CD4
+T細胞のTh1、Th2またはTh17細胞への分化を促進することによってエフェクター免疫応答を分極する。実際に、非免疫原性抗原特異的mRNA処置時のエフェクターT細胞の生成は、より多くのエフェクターT細胞が治療的処置ではなく疾患のより重度の経過につながる可能性さえあるので、自己免疫疾患では意図されない。
【0264】
抗原に対するT細胞応答の生成を調べるため、ナイーブC57BL/6マウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μg、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは生理食塩水で繰り返し処置した(0、3、7、および10日目)。4回のmRNA免疫後、13日目に脾臓からCD4
+T細胞を単離し、IFNγ ELISpotを実施した。
図14Aは、非免疫原性MOG35-55をコードするmRNAで処置したマウスが、抗原特異的mRNA処置時に抗原認識に応答するIFNγ
+CD4
+エフェクターT細胞を発生しなかったことを示す。
【0265】
これらの結果によれば、様々な濃度のMOG35-55ペプチド(0、5、10、20、100μg)による48時間の脾臓CD4
+T細胞の再刺激も、ELISAによって上清で測定した場合、TNFαおよびGM-CSFなどの他の炎症性サイトカインの分泌を生じさせなかった(
図14B)。抗炎症性サイトカインIL-10の分泌のみが、非免疫原性抗原特異的mRNAで処置したマウスで検出されたが、非免疫原性の無関係なmRNA処置マウスでは検出されなかった(
図14C)。さらに、この群においてのみ、IL-4およびIL-5のようなTh2サイトカインの分泌を検出することができた(データは示していない)。非免疫原性の抗原特異的mRNAに応答したIL-10の産生は、抗原特異的制御性T細胞(Treg)が処置に応答して活性化されることの証拠を提供する。Tregは、様々な免疫応答を制御するうえで重要である。誘導性Tregの多くの異なるサブセットが報告されており、特にCD25
+Foxp3
+およびTr1細胞は高レベルのIL-10の産生を特徴とする。これらの制御性T細胞は、自己反応性T細胞の拡大と分化を制限することによってそのプライミングを制御する。
【0266】
非免疫原性抗原特異的mRNA処置後のCD4表現型を調べるために、C57BL/6マウスを0、3、7および10日目に非免疫原性抗原特異的MOG35-55 mRNA 20μg、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは生理食塩水で繰り返し免疫した。非免疫原性MOG35-55コードmRNAで処置したマウスからのCD4
+MOG35-55テトラマー
+細胞上のTIGIT、Tim-3、PD-1およびLag-3の発現を、非免疫原性の無関係なmRNA処置マウスおよび未処置対照マウスの全CD4
+細胞と比較した。非免疫原性抗原特異的mRNAによる反復免疫は、非免疫原性の無関係なmRNAで処置したマウスと比較してTIGIT、Tim-3、PD-1およびLag-3の上方調節をもたらす(
図15)。
【0267】
これらのマーカーの上方調節は、アネルギーT細胞の表現型と相関する。アネルギーは、機能的不応答性の獲得状態であり、CD28を介した共刺激を伴わないT細胞受容体(TCR)の関与の結果である(Jenkins,M.K.et al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84,5409-13;Quill,H.& Schwartz, R.H.,1987,J.Immunol.138,3704-3712;Jenkins,M.K.et al.,1990,J.Immunol.144,16-22)。さらに、それは末梢性寛容を与える1つの手段を構成する。アネルギーT細胞は機能的に不活性であり、完全な共刺激の存在下で抗原に遭遇した場合でも、生産的な免疫応答を開始することはできない。明確な表現型および遺伝子発現プログラムを備えたアネルギーCD4+T細胞は、制御性T細胞に変換することもでき、これが次に、病原性CD4+T細胞のアネルギーを促進し、自己免疫を抑制することができる(Kalekar,L.A.et al.,2016,Nat.Immunol.17,304-14)。Lag-3、Tim-3、ICOSおよびTIGITはエフェクターT細胞に対する共抑制機能を媒介し、これらの分子の過剰発現はT細胞の枯渇に関連する(Anderson,A.C.et al.,2016,Immunity 44,989-1004)。T細胞の表面上の複数の共抑制性受容体の蓄積は、機能障害の増加にさえも関連する(Blackburn,S.D.et al.,2009,Nat.Immunol.10,29-37)。TIGIT自体は、T細胞の増殖を直接下方調節するだけでなく、DCの成熟を防ぎ、IL-12分泌を低下させ、免疫抑制性サイトカインIL-10の産生を誘導することによって、共抑制分子として作用する(Yu,X.et al.,2009,Nat.Immunol.10,48-57;Joller,N.et al.,2011,J.Immunol.186,1338-1342)。Lag-3は、T細胞の恒常性とエフェクターT細胞の応答の調節において役割を果たす(Workman,C.J.et et al.,2002,J.Immunol.169,5392-5395;Workman,C.J.&Vignali,D.A.A.,2003,Eur.J.Immunol.33,970-979;Workman,C.J.&Vignali,D.A.A.,2005,J.Immunol.174,688-695)。
【0268】
さらに、プログラム死1受容体(PD-1)および細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のような免疫チェックポイント分子は、免疫応答の負の調節に関与し、結果として末梢性自己寛容の維持に関与する共抑制分子である。共抑制分子は一般に、T細胞の活性化時に上方調節され、フィードバック抑制によってエフェクター応答を抑制する。PD-1およびそのリガンド、例えばPD-L1およびPD-L2は、T細胞の活性化と寛容のバランスを調節する抑制シグナルを伝達する(Keir,M.E.et al.,2008,Annu.Rev.Immunol.26,677-704)。自己抗原に対する免疫応答は、寛容を維持するために特定のバランスの取れた応答を必要とし、これは、様々な共抑制性受容体およびそのリガンドによって媒介される。PD-1エフェクターの上方調節によって、T細胞応答は遮断され、次に組織が免疫細胞を介した損傷から保護される。
【0269】
これらの共抑制性受容体はすべて、自己免疫疾患の調節において中心的な役割を果たしており、これらの分子のいくつかの欠損でさえも自己免疫につながる。
【0270】
(実施例9)
疾患モデルEAEにおける非免疫原性抗原特異的mRNA処置時のMOG35-55特異的CD4
+T細胞のより詳細な特性付け
実施例6、
図8および9に示す結果によれば、MOG35-55特異的CD4
+T細胞の養子細胞移入実験も同じ結果を示した。2D2 TCRトランスジェニックマウスのMOG35-55特異的Thy1.1
+CD4
+T細胞をThy1.2
+C57BL/6マウスに移入し、24時間後にレシピエントマウスにおいてEAEを誘導した。疾患誘導後7日目および10日目に、マウスを非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μg、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは生理食塩水で処置した。最後のmRNA処置の6日後に、脳と脊髄を単離した。これらの組織からの細胞を、MOG35-55ペプチドを用いてインビトロで6時間再活性化し、Thy1.1
+CD4
+T細胞でゲートした。
図16に示すように、非免疫原性MOG35-55コードmRNAの投与は、脳および脊髄におけるMOG35-55特異的CD4
+T細胞の頻度の有意の減少をもたらした。機能レベルでは、CD4
+T細胞は、対照マウスと比較して非免疫原性MOG35-55コードmRNAで処置したマウスの脳および脊髄では、IFNγおよびインターロイキン17A(IL-17A)の分泌が有意に少ない(
図17)。これらのデータは、再び、非免疫原性MOG35-55 mRNAによるmRNA処置がTeff細胞を不活性化することができ、脳および脊髄へのこれらの細胞の浸潤の減少をもたらすことを示す。
【0271】
処置の成功後の抗原特異的CD4 T細胞の表現型を調べるために、EAEを積極的に誘導し、疾患誘導後7日目および10日目に、動物を非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μg、非免疫原性の無関係なmRNA 20μgまたは生理食塩水で処置した。疾患のピーク時(疾患誘導後16日目)に、脾臓のCD4 T細胞表現型をMOG35-55テトラマー染色によって調べた。実施例5および8に示した実験によれば、EAE疾患設定においても、非免疫原性抗原特異的mRNAによって誘導される抗原特異的寛容は、脾臓のMOG35-55特異的CD4
+T細胞上の共抑制分子Lag-3、ICOS、TIGITおよびTim-3の上方調節によって媒介される(
図18A)。アネルギーおよび負の共刺激のような免疫寛容を媒介する細胞内因性機構に加えて、細胞外因性(Treg細胞媒介寛容)機構も非免疫原性抗原特異的mRNAの治療効果を媒介することができる。既に論じたように、Tregは抗原特異的寛容において重要な役割を果たす(Sakaguchi,S.et al.,1985,J.Exp.Med.161,72-87)。さらに、MOG35-55特異的CD4
+T細胞のFACS分析は、Treg集団の有意な拡大を示した(
図18B)。加えて、抗原特異的非免疫原性mRNAで処置したマウスの脾臓のTregは高レベルのCD69を発現し、非常に活性化されていることを示す。
【0272】
負の共刺激分子の発現が寛容の誘導と維持に必要であるかどうかを判定するために、EAEのmRNA治療中にPD-1またはCTLA-4をブロックした。抗PD-1または抗CTLA-4抗体と組み合わせた非免疫原性MOG35-55コードmRNAによる疾患誘導後7日目および10日目のEAEの治療は、IgG対照と組み合わせた非免疫原性MOG35-55コードmRNAで処置したマウスと比較してEAEからの保護の逆転をもたらした(
図19)。これは、mRNA治療と並行したPD-1およびCTLA-4の抗体遮断が、非免疫原性抗原特異的mRNA処置によって媒介される寛容誘導の有効性の著しい低下をもたらしたので、PD-1およびCTLA-4が非免疫原性抗原特異的mRNAによって誘導される抗原特異的寛容の長期的な維持に重要であることを明らかにする。
【0273】
合わせると、示した実験は、抗原特異的非免疫原性mRNAでの処置による抗原特異的寛容誘導のこの新しい治療アプローチの作用機序を検討した。結果は、抗原特異的非免疫原性mRNA処置が、自己免疫における有害な免疫応答を変化させて保護を与える有効な方法であることを示す。ナイーブマウスおよび疾患に罹患したマウスで示した実験は、非免疫原性抗原特異的mRNAによる処置が末梢の寛容を媒介するアネルギーおよび制御性T細胞の誘導をもたらし、進行中の自己免疫疾患の治療の成功につながることを明らかにする。治療効果は、各実施例で論じた文献に記載されているように、寛容誘導のための既に十分に説明された機構に依存することが示された。これらの機構は、自己免疫疾患の種類に依存しない寛容誘導のために重要で基本的なものである。したがって、非免疫原性抗原特異的mRNA治療によって媒介される寛容の機構は、他の任意の種類の自己免疫疾患に移行することができる。
【0274】
(実施例10)
非免疫原性抗原特異的mRNAでの処置による抗原特異的寛容誘導はEAE疾患モデルとは無関係である
前述のすべてのEAE実験は、単相型の疾患進行をもたらすMOG35-55ペプチドで誘導したC57BL/6マウスにおいて実施した。EAEの別のモデルは、SJLマウスにおいて再発寛解型の疾患経過を導く、異なる関連エピトープ(PLP139-151)に起因する再発性疾患を特徴とする。より臨床的に関連のある疾患設定での寛容誘導を実証するためにこのモデルを採用した。
図20Aは、再発寛解型疾患モデルにおける非免疫原性PLP139-151コードmRNAによるEAE誘導後7日目および10日目から開始した週2回のmRNA処置が、これらのマウスが非免疫原性の無関係な対照mRNAで処置したマウスよりもはるかに弱い疾患進行を示したため、EAE発症にプラスの作用を及ぼすことを示す。
【0275】
MSの状況をさらにより良くシミュレートするために、複数の病原性自己反応性T細胞クローンに関連する複雑なEAEを使用した。MSの確定診断時には、「エピトープの広がり」のために、この疾患が既に複雑な抗ミエリン自己反応性と関連している可能性が高いので、マルチエピトープ治療アプローチの有効性を検討した。
図20Bに示すように、複雑なEAEは、MOG35-55、PLP139-151、PLP178-191およびMBP84-104をコードする4つの異なる非免疫原性疾患エピトープコードmRNAの混合物によって成功裏に治療された。各非免疫原性疾患エピトープコードmRNAについて10μgを使用し、効率的な治療のために40μgを得た。非免疫原性MOG35-55コードmRNA 20μgについて示したように、単一エピトープ処置はいずれも同様の治療結果をもたらすことができなかった。
【0276】
これらの結果は、様々な実験で観察された抗原特異的寛容誘導が特定のエピトープに依存せず、様々な疾患関連エピトープによって媒介され得ることを示す。さらに、データは、複雑な病原性自己免疫過程を伴う複雑な進行中の疾患でさえも、複数の非免疫原性ミエリン特異的mRNA構築物の投与によって成功裏に治療できることを強調する。
【0277】
(実施例11)
免疫調節性サイトカインの共送達は、非免疫原性抗原特異的mRNA-LPX治療の寛容原性作用を改善する
IL-10などのいくつかの免疫調節分子は、Treg機能を支持することができる。さらに、抗炎症性サイトカインIL-10は、寛容原性DCを誘導し(Torres-Aguilar,H.et al.,2010,Autoimmun.Rev.10,8-17;Torres-Aguilar,H.et al.,2010,J.Immunol.184,1765-1775;Steinbrink K.et al.,1997,J.Immunol.159,4772-4780)、T細胞増殖およびサイトカイン応答を抑制する(Gu,Y.et al.,2008,Eur.J.Immunol.38,1807-1813;Guo,B.,2016,J.Clin.Cell Immunol.7,1-16)ことが公知である。また、IL-27は抗炎症特性を有することが公知のサイトカインであり、EAEの試験において、このサイトカインが疾患の重症度を軽減することが示されている(Mascanfroni,I.D.et al.,2013,Nat.Immunol.14,1054-63;Thom,R.et al.,2017,Front.Immunol.8,1-14)。EAE実験のセットでは、非免疫原性mRNAによってコードされるIL-10およびIL-27のような免疫調節性サイトカインと非免疫原性抗原特異的mRNAの共送達を、免疫応答の調節および寛容誘導の効率の改善に関して検討すべきである。
【0278】
単一抗原特異的mRNA-LPX処置の寛容原性を高める免疫調節性サイトカインの共送達の能力を、EAEマウスの「治療量以下」の処置を使用して評価した。非免疫原性抗原特異的mRNA-LPX処置は、以前の実験で堅固な寛容誘導を実証したため、治療への寄与を特定するために、追加の非免疫原性サイトカインコードmRNA処置の組み合わせアプローチをEAEモデルにおいて治療量以下の用量で検討した。
【0279】
疾患モデルでの非免疫原性抗原特異的mRNAに対する非免疫原性サイトカインコードmRNA処置の有益な作用を調べるために、EAEをC57BL/6マウスにおいて積極的に誘導し、マウスを疾患誘導後7日目と10日目に非免疫原性抗原特異的MOG35-55コードmRNA、非免疫原性mIL-10(
図21A)またはmIL-27(
図21B)コードmRNAと組み合わせた非免疫原性MOG35-55コードmRNA、非免疫原性サイトカインコードmRNA単独、および非免疫原性の無関係なmRNAで処置した。
【0280】
図21に示す結果は、非免疫原性mRNAによってコードされる免疫調節性サイトカインの共送達が抗原特異的状況における寛容を増強することを示唆する。さらに、単一のサイトカインをコードするmRNA処置は、対照マウスと比較してEAEの進行に変化を示さなかったため、免疫応答を広く抑制しない。
前記自己抗原が、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性耳下腺炎、クローン病、糖尿病(I型)、栄養障害型表皮水疱症、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン-バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節炎、甲状腺炎、脈管炎、白斑、粘液水腫、悪性貧血、潰瘍性大腸炎、およびI型糖尿病からなる群より選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
前記自己抗原が、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性耳下腺炎、クローン病、糖尿病(I型)、栄養障害型表皮水疱症、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン-バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節炎、甲状腺炎、脈管炎、白斑、粘液水腫、悪性貧血、潰瘍性大腸炎、およびI型糖尿病からなる群より選択される、請求項5に記載の使用。
一実施形態では、組成物は水性組成物である。水性組成物は、場合により溶質、例えば塩を含んでもよい。一実施形態では、組成物は凍結乾燥組成物の形態である。凍結乾燥組成物は、それぞれの水性組成物を凍結乾燥することによって得られる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 被験体において自己免疫疾患を治療する方法であって、自己抗原もしくはその断片、または前記自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを前記被験体に投与することを含む方法。
2. 前記自己免疫疾患がT細胞媒介性自己免疫疾患である、1.に記載の方法。
3. 被験体において自己反応性T細胞に対する寛容を誘導する方法であって、自己抗原もしくはその断片、または前記自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを前記被験体に投与することを含む方法。
4. 前記被験体が自己免疫疾患を有する、3.に記載の方法。
5. 前記自己免疫疾患がCNSの自己免疫疾患である、1.、2.および4.のいずれか一つに記載の方法。
6. 前記自己免疫疾患が多発性硬化症である、1.、2.、4.および5.のいずれか一つに記載の方法。
7. 前記非免疫原性RNAが、投与されたとき、樹状細胞の活性化、T細胞の活性化および/またはIFN-αの分泌をもたらさない、1.~6.のいずれか一つに記載の方法。
8. 前記非免疫原性RNAが、修飾ヌクレオチドの組み込みおよびdsRNAの除去によって非免疫原性にされる、1.~7.のいずれか一つに記載の方法。
9. 前記修飾ヌクレオチドが、自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する、8.に記載の方法。
10. 前記修飾ヌクレオチドが、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換を含む、8.または9.に記載の方法。
11. 前記修飾核酸塩基が修飾ウラシルである、10.に記載の方法。
12. 修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-プソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(m1s4Ψ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(m3Ψ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acp3Ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2'-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2'-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2'-O-メチル-プソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2'-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2'-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2'-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2'-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2'-F-アラ-ウリジン、2'-F-ウリジン、2'-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、および5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群より選択される、10.または11.に記載の方法。
13. 修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが、プソイドウリジン(Ψ)、N1-メチル-プソイドウリジン(m
1
Ψ)または5-メチル-ウリジン(m
5
U)である、10.~12.のいずれか一つに記載の方法。
14. 修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが1-メチル-プソイドウリジンである、10.~13.のいずれか一つに記載の方法。
15. 前記非免疫原性RNAがmRNAである、1.~14.のいずれか一つに記載の方法。
16. 前記非免疫原性RNAがインビトロ転写RNAである、1.~15.のいずれか一つに記載の方法。
17. 前記自己抗原が自己免疫疾患に関連する、1.~16.のいずれか一つに記載の方法。
18. 前記自己抗原がT細胞抗原である、1.~17.のいずれか一つに記載の方法。
19. 前記自己抗原がCNS由来である、1.~18.のいずれか一つに記載の方法。
20. 前記自己抗原がミエリン抗原である、1.~19.のいずれか一つに記載の方法。
21. 前記自己抗原がミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)である、1.~20.のいずれか一つに記載の方法。
22. 自己抗原もしくはその断片、または前記自己抗原もしくは断片の変異体を含む前記ペプチドまたはポリペプチドが、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のアミノ酸35~55を含む、1.~21.のいずれか一つに記載の方法。
23. 前記非免疫原性RNAが前記被験体の細胞において一過性に発現される、1.~22.のいずれか一つに記載の方法。
24. 前記非免疫原性RNAが樹状細胞に送達される、1.~23.のいずれか一つに記載の方法。
25. 前記樹状細胞が未成熟樹状細胞である、24.に記載の方法。
26. 前記非免疫原性RNAが送達ビヒクルに製剤化される、1.~25.のいずれか一つに記載の方法。
27. 前記送達ビヒクルが粒子を含む、26.に記載の方法。
28. 前記送達ビヒクルが脂質を含む、26.または27.に記載の方法。
29. 前記脂質がカチオン性脂質を含む、28.に記載の方法。
30. 前記脂質が、前記非免疫原性RNAと複合体を形成するおよび/または前記非免疫原性RNAをカプセル化する、28.または29.に記載の方法。
31. 前記非免疫原性RNAがリポソームに製剤化される、1.~30.のいずれか一つに記載の方法。
32. 自己抗原もしくはその断片、または前記自己抗原もしくは断片の変異体を含むペプチドまたはポリペプチドをコードする非免疫原性RNAを含む医薬組成物。
33. 前記非免疫原性RNAが、投与されたとき、樹状細胞の活性化、T細胞の活性化および/またはIFN-αの分泌をもたらさない、32.に記載の医薬組成物。
34. 前記非免疫原性RNAが、修飾ヌクレオチドの組み込みおよびdsRNAの除去によって非免疫原性にされる、32.または33.に記載の医薬組成物。
35. 前記修飾ヌクレオチドが、自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する、34.に記載の医薬組成物。
36. 前記修飾ヌクレオチドが、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換を含む、34.または35.に記載の医薬組成物。
37. 前記修飾核酸塩基が修飾ウラシルである、36.に記載の医薬組成物。
38. 修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-プソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(m1s4Ψ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(m3Ψ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acp3Ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2'-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2'-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2'-O-メチル-プソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2'-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2'-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2'-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2'-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2'-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2'-F-アラ-ウリジン、2'-F-ウリジン、2'-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、および5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群より選択される、36.または37.に記載の医薬組成物。
39. 修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが、プソイドウリジン(Ψ)、N1-メチル-プソイドウリジン(m
1
Ψ)または5-メチル-ウリジン(m
5
U)である、36.~38.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
40. 修飾核酸塩基を含む前記ヌクレオシドが1-メチル-プソイドウリジンである、36.~39.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
41. 前記非免疫原性RNAがmRNAである、32.~40.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
42. 前記非免疫原性RNAがインビトロ転写RNAである、32.~41.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
43. 前記自己抗原が自己免疫疾患に関連する、32.~42.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
44. 前記自己抗原がT細胞抗原である、32.~43.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
45. 前記自己抗原がCNS由来である、32.~44.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
46. 前記自己抗原がミエリン抗原である、32.~45.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
47. 前記自己抗原がミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)である、32.~46.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
48. 自己抗原もしくはその断片、または前記自己抗原もしくは断片の変異体を含む前記ペプチドまたはポリペプチドが、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のアミノ酸35~55を含む、32.~47.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
49. 前記非免疫原性RNAが、前記医薬組成物を投与された被験体の細胞において一過性に発現される、32.~48.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
50. 前記非免疫原性RNAが、前記医薬組成物を投与された被験体の樹状細胞に送達される、32.~49.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
51. 前記樹状細胞が未成熟樹状細胞である、50.に記載の医薬組成物。
52. 前記非免疫原性RNAが送達ビヒクルに製剤化される、32.~51.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
53. 前記送達ビヒクルが粒子を含む、52.に記載の医薬組成物。
54. 前記送達ビヒクルが脂質を含む、52.または53.に記載の医薬組成物。
55. 前記脂質がカチオン性脂質を含む、54.に記載の医薬組成物。
56. 前記脂質が、前記非免疫原性RNAと複合体を形成するおよび/または前記非免疫原性RNAをカプセル化する、54.または55.に記載の医薬組成物。
57. 前記非免疫原性RNAがリポソームに製剤化される、32.~56.のいずれか一つに記載の医薬組成物。
58. 1.~31.のいずれか一つに記載の方法において使用するための、32.~57.のいずれか一つに記載の医薬組成物。